復興住宅、入居しやすく
税滞納・保証人なしOK広がる
復興住宅、入居しやすく 税滞納・保証人なしOK広がるhttp://www.nikkei.com/article/DGXLASDG03H1C_T01C15A2CC0000/
東日本大震災や東京電力福島第1原子力発電所事故の被災者が仮設住宅などから移り住む災害公営住宅(復興住宅)の入居条件を緩和する動きが広がり始めた。これまでは住民税の滞納や連帯保証人がいない場合は入居を認めない自治体が多かったが、条例改正などで被災者の住宅確保を優先するケースが増えている。復興庁も同様の対策を進めるよう各自治体に通知を出した。
岩手、宮城、福島の被災3県の自治体などが建設している復興住宅は、計画されている約3万戸のうち、今年10月末までに約1万3000戸が完成している。
自宅が津波で流失した被災者向けの復興住宅410戸の整備が3月に終わった福島県相馬市では、市議会が9月、「市営住宅の設置及び管理に関する条例」を改正した。
市営住宅の入居希望者に求める条件のうち、(1)住民税を滞納していない(2)連帯保証人を確保する――の2つについて、復興住宅に限り免除した。市建築課の担当者は「入居条件を満たせない世帯が一定数あり、復興を進めるために必要な条例改正」と強調する。
「行き先の無いまま追い出されないか、ずっと不安だった」。相馬市の仮設住宅に住む男性(63)は条例改正を歓迎する。震災前は建設会社に勤めていたが、同居する母の認知症が避難生活のストレスで悪化し、介護離職した。その後、母が亡くなるまで無職だったため住民税を滞納した。
今は除染作業員として働き、滞納分を支払い続けている。条例改正で復興住宅に入居できるようになった男性は「長い仮設暮らしからようやく抜け出せる」と話した。
震災で仕事や財産を失ったり、親族を亡くしたりするなどして、復興住宅への入居条件をクリアできない被災者も少なくない。このため、仮設住宅の解消を急ぐ各自治体では入居条件を緩和し、復興住宅への転居を後押ししている。
原発事故の避難者向けの復興住宅約4400戸を整備する計画の福島県も今年6月、入居希望者に対し、近隣に住む連帯保証人の確保を求める条例の解釈を変更し、入居条件を緩和した。
これまで県営住宅は路上生活者が入居する場合のみ連帯保証人は不要だったが、2親等以内に親族がいなかったり、依頼できる知人が見つからなかったりする避難者も免除の対象にした。県建築住宅課は「原発事故による広域避難で親族や知人が近くにいないなど、やむを得ない事情を考慮した」と話す。
入居条件緩和の動きを広げようと、復興庁と国土交通省は9月、岩手、宮城、福島の3県で復興住宅を運営する各自治体に、連帯保証人を不要とするよう通知を出した。
日本弁護士連合会も9月、税金滞納者や連帯保証人を確保できない被災者にも入居を認めるべきだという意見書を各自治体に出した。意見書の作成に携わった宇都彰浩弁護士は「半壊のまま残っている自宅を持つ被災者は入居できないなど、ほかにも見直すべき入居条件を設けている自治体は多い。住宅再建から取り残される人を出さないためにもさらに緩和を進めるべきだ」と話している。