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新4K8K衛星放送 4K番組表 今週のイチオシ!  NHK BS民放 BS日テレ BS TBS BS朝日 BSテレ東 BSフジ 苦難の船出

2024年07月21日 19時56分21秒 | 国際放送センター(IBC)
イチオシ!ピュア 4K番組ガイド
2024年7月21日(日) 高精細ピュア4K番組を見よう!
NHKBS/民放系列BS4K

🌸大河ドラマ光る君へ
🌸あなたの知らない京都旅刀剣の秘密 
🏯【BS時代劇】大岡越前7
🗻富士山 変わりゆく山




 出典 L’Express
イダルゴパリ市長 セーヌ川を泳いで水質改善アピール
 セーヌ川開会式まであと1週間、かねてから「セーヌ川を泳ぐ」と公言していたアンネ・イダルゴ市長はエスタンゲ大会組織委員会長と7月17日、セーヌ川に入って泳ぎ、水質の懸念を払拭した。
 セーヌ川は1923年から水質の悪化で遊泳が禁止されてたが、イダルゴ市長は「セーヌ川で泳ぐ」を掲げ、新たな浄水施設を整備して水質改善に取り組んできた。Paris2024ではトライアスロン(スイム)とマラソンスイミングを開催する。イダルゴ市長クロールで息継ぎをしながら、セーヌ川を50メートルほど泳いだ。




出典 大相撲協会

大相撲名古屋場所 4K生中継  照ノ富士、ただ一人6連勝

7月14日 (日)~28日(日)13:00~18:00 NHKBS4K
■七日目(中日)結果

・照ノ富士、頭から当たっていき押し出しで湘南乃海を下し8連勝、全勝で中日勝ち越し

・琴櫻、突き出しで宇良を下し完勝 6勝2敗を堅持 6勝敗は琴櫻、正大、美ノ海の三人

・大の里、押し出しで翔猿を破り5勝3敗に

・貴景勝、立ち合いから圧倒し押し出しで霧島を破る。貴景勝は3勝5敗 霧島4勝4敗に後退


大の里 出典 日本相撲協会
大相撲名古屋場所 大の里が所要7場所で初の関脇に 大関とりが視野に
 先場所、初優勝を果たした24歳の大の里が幕下付け出しの力士としては昭和以降、2番目に並んで早い所要7場所で初めて関脇に昇進。
 大関昇進が視野に入ったが、昇進の条件は「直近3場所を三役で33勝」とされている。大の里は、先場所12勝で優勝、今場所は「三役2場所目、11勝は確保したい。
 一方、先場所、右足首のけがの影響で休場した尊富士は十両に陥落、今場所も無念の休場。優勝から所要1場所で十両に陥落するのは史上初。
 2場所連続休場で崖っぷちの横綱照ノ富士は出場が決定、しかし横綱にふさわしい星を上げなければ引退が視野に。カド番大関貴景勝継は勝ち越しで大関の座を守れるか。先場所大関を陥落した霧島の再起はなるか。名古屋場所で10勝以上を挙げれば大関に復帰可能。
 先場所、前頭2枚目で9勝6敗の成績を残した24歳の平戸海が新三役となる小結に昇進、前頭筆頭で11勝を挙げた大栄翔が2場所ぶりの三役となる小結に復帰した。



🌸大河ドラマ 光る君へ (28)  一帝二后
7月21日(日) 12:15~13:00 18:00~18:45 NHKBS4K
年の暮れ、まひろ(吉高由里子)は道長(柄本佑)との子を出産。宣孝(佐々木蔵之介)は子を賢子と名付け、約束通り我が子として育て始める。一方、道長は入内させた娘の彰子(見上愛)を中宮にし、定子(高畑充希)と后を二人にする「一帝二后」を、国家安寧のためにもくろんでいた。詮子(吉田羊)や行成(渡辺大知)が一条天皇(塩野瑛久)の説得にあたるが、当の彰子が一条天皇の心を捉えられる気配はなく…





出典 NHK





🏯【BS時代劇】大岡越前7 (5)夜の奉行
7月21日(日) 18:45~19:28 NHKBS4K
7月26日(金)19:30~20:13  NHKBS4K
待望の第7シリーズは新しい大岡忠相に高橋克典を迎え、エネルギッシュで人間味豊かな名奉行の活躍を描きます。人情で泣き笑い、事件解決に拍手喝采の時代劇決定版!
役人と結託し私腹を肥やす商家を襲う「夜の奉行」と名乗る盗賊が暗躍し、庶民から拍手喝さいを浴びていた。忠相(高橋克典)は夜の奉行を捕まえよと吉宗(徳重聡)から命ぜられ、旗本の近藤右門(神尾佑)が怪しいと調べをつける。だが当の右門が忠相を訪ね、世直しのため夜の奉行と手を組むなら仲介すると持ちかけるが、忠相は断る。





出典 NHK



🎵新・BS日本のうた ▽歌手人生に影響を与えた1曲!天童・小柳・神野・大江
7月21日(日)19:30~21:00 NHKBS4K
歌手を志すきっかけになった歌、憧れの先輩の歌、素人時代に出たのど自慢で歌った思い出の歌…それぞれの思いとともに熱唱。オリジナルヒット曲や和歌山ご当地ソングも!
【出演】浅田あつこ,大江裕,古都清乃,小柳ルミ子,神野美伽,天童よしみ,徳永ゆうき,西方裕之,原田波人,森山愛子,山西アカリ,【司会】渡辺健太,【出演】中尾唱,BS日本のうた楽団
出典 NHK





🌷青春ウォルダム 呪われた王宮 (16)
7月21日(日)19:00~20:00 NHKBS4K
呪われた世継ぎと家族殺害犯にされた娘が陰謀と謎を解き明かしていく青春ミステリー。ファンは護衛官テガンと一緒に10年前の事件のことを知る元補佐官に会いにいくが…。
亡きウィヒョン世子(セジャ)に死因となった桃をあげたと言い出したミョンアン大君(テグン)に驚く王妃。そこに王がやってくる。ファンは護衛官テガンと一緒に10年前にチョ・ウォンボから大金を受け取っていた元補佐官パク・ハンスに会いにいくことにする。

出典 NHK





🌸あなたの知らない京都旅~1200年の物語 特別編 刀剣の秘密 ~日本の刀はなぜ人を惹きつけるのか?~
7月21日(日) 21:00~22:00 BS朝日4K
今回は、日本を代表する刀匠・河内國平さんが、その手で名刀をつくりあげる姿に迫る特別編。俳優・歌手の中村雅俊さんが、昔から刀剣の産地として知られる奈良県東吉野へ。美しい山々に囲まれて建つ工房を訪ねる。
河内國平さんは、刀剣界の最高賞である「正宗賞」を受賞した刀匠で、黄綬褒章の受賞者。國平さんの真骨頂といえるのが、「乱れ映り」。刀身の表面に滲むように浮き出た、白や黒の線のことで、河内一門にしか作ることのできない刀。

出典 BS朝日



🗻富士山 変わりゆく山 再放送
7月21日(日)22:00~22:50 NHKBS4K
日本一の山・富士山。美しい姿とうらはらに、何度も噴火を繰り返し、山の形を変えてきた。裾野に広がる青木ヶ原樹海や、山麓の街なかに残る溶岩流など、巨大噴火の痕跡をたどり富士山誕生の秘密を探る。また、ほんの300年前、江戸時代の噴火で富士山の中腹に生まれた新山や、美しい山の形を大きく変えてしまうといわれる大崩壊地などを訪ね、変わりゆく山・富士山の知られざる姿を紹介する。旅人は山岳ライターの小林千穂さん。



出典 NHK





🎵歌える!J-POP黄金のベストアルバム30M(61)Bro.KORN
7月21日(日)22:50~24:20 NHKBS4K
J-POPの貴重な音楽映像を使い、1980~2000年代の音楽シーンを楽しむ。今回のテーマは「ソウル」。ソウルフルな名曲たちをたっぷりと!廣瀬アナウンサーもディスコステップを披露!紹介VTR1鈴木聖美with鈴木雅之「ロンリー・チャップリン」2バブルガム・ブラザーズ「WON’T BE LONG」3MISIA「つつみ込むように…」4平井堅「瞳をとじて」出演:DJKOO、廣瀬智美アナ、Bro.KORN
出典 NHK



🎼プレミアムシアター オランダ国立バレエ団ジゼル/ハンブルクバレエ 夏の夜の夢
7月21日(日)23:20~27:33 NHKBS4K
オランダ国立バレエ団「ジゼル」 元ボリショイ・バレエ団プリンシパル、オリガ・スミルノワ登場!▽ハンブルク・バレエ「夏の夜の夢」 振付:ノイマイヤー出典 NHK





😺岩合光昭の世界ネコ歩き 選「フランス・ブルゴーニュ」 再放送
7月22日(月)18:00~19:00 NHKBS4K
【出演】岩合光昭,【語り】相武紗季
ワイン好きの動物写真家岩合光昭さん、ブドウ畑とネコを見たいとフランス・ブルゴーニュに行った。まず美しく小さな村の古いお城でネコに出会う。村の風景とネコ、どこで撮っても絵になると大喜び。そして愛好家があこがれるワインを生みだすブドウ畑へ。ここでネコはパトロールしたり、木の支柱で爪とぎも。そして、ネコはワインの貯蔵庫へ、出荷を待つ3万本のボトルを背にポーズをとった
出典 NHK





🌐体感グレートネイチャー選 「激写!“世界一”の御神渡り〜北海道東部 氷の大地〜」 再放送
7月22日(月)19:30~21:00 NHKBS4K
厳冬期、凍りつく北海道東部に、極寒の大地ならではの不思議な絶景が次々と現れる。満開に咲き誇る「氷の華」、七色の輝きを放つ「氷の宝石」、そして全面結氷した湖面を延々と走る“神が歩いた跡”御神渡り。屈斜路湖の御神渡りは、長さ10kmにも及び、“世界一”の規模という。神出鬼没で撮影困難とされてきた御神渡り誕生の瞬間の記録に挑む。全面結氷した湖にカメラを据えて待ち続けると、ごう音とともに氷が動き出し…。



出典 NHK





🏞️新日本風土記 「おやつの時間」 新作
7月22日(月)21:00~22:00 NHKBS4K
幸せなひと時をもたらし、仕事の大切な役割も担うおやつの時間。宮大工の10時と3時のおやつは仕事中の張り詰めた緊張を緩和させ、鳥羽の海女のかまどを囲むおやつは命預けあう仲間の絆を深める。遠く離れた故郷を思うサーターアンダギー、地元野菜で子供たちを応援するコロッケ、くるみの里で受け継がれるおもてなしおはぎ、田植えの時期だけのよもぎのお菓子、建設現場の作業員を熱中症から守る塩バナナ…日本全国おやつの時間。





出典 NHK



🍶吉田類の酒場放浪記 中山「鳥忠(とりただ)」
7月22日(月)21:00~22:00 BS-TBS4K
中山駅すぐ。呑み屋が立ち並ぶ緑新栄会通りの入口でプレハブとブルーシートで営業する鳥忠(とりただ)。店の主は横浜元町でラーメンとおでんの屋台をやっていた経歴を持つ。どことなく屋台の雰囲気が残る今の店舗は、紆余曲折を経てご常連とともに建てたという。店を営むのは、笑顔とハチマキがトレードマークのマスターとツンデレだが実は優しいママさんの二人。
出典 BS-TBS



🐟釣りびと万歳 地元発の釣法でシマアジ乱舞 ~チャンカワイ 三重・紀北町~
7月22日(月) 22:00~22:30 NHKBS4K
三重県紀伊長島の海で、強烈な引きで人気のシマアジを狙う。しかし、シマアジは警戒心が強いうえ、口がガラスの唇に例えられるほど弱く、針がかかったとしても外れることが多く難易度の高い魚でもある。果たして地元ならではの釣法で釣り上げることができるのか。食べてみようのコーナーでは脂ののったシマアジをカルパッチョ、シマアジの肉団子パスタ、そしてメインディッシュには一夜干しとイタリアンにアレンジし堪能する。
出典 NHK





💐4Kプレミアムカフェ 関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅 オランダ(2015年)
7月22日(月) 22:30~24:09 NHKBS4K
関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅 オランダ(2015年)フェルメールが生まれ育った街デルフトを出発、列車を乗り継ぎながら、チーズの里ハウダ、風車の家、ベルギーの飛び地があるバールレ・ナッソー、白い家が並ぶ美しい街トルンなどをめぐっていく。首都アムステルダムからは一気に北上、大堤防を渡り、最北端の駅ローデスホールをめざす。関口さんならではの出会いと発見が列車の内外であふれた10日間、約千キロの旅。”





出典 NHK





サウナを愛でたい 北海道東川町 キトウシの森きとろん
7月22日(月)22:30~22:54 BS朝日4K
濡れ頭巾ちゃんプロデュース北海道サウナ旅。今回は2023年8月、建築家の隈研吾が監修し、東川町に誕生した「キトウシの森きとろん」さんを愛でる。蛇口から雪どけの地下水がでるこの町で、まさに神水質の水風呂にヒャダイン、濡れ頭巾ちゃん大絶賛!サウナはオートロウリュとセルフロウリュができる2つのサウナ室を堪能。豊かな水と広大な大地でととのう。

出典 BS朝日





🎥【ドラマ10】家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった 🈟(2)
7月23日 (火)18:15~19:00 NHKBS4K
この家族から目が離せない!実話にもとづいた、笑って泣けると話題の令和の新しいホームドラマ。面倒くさくて愛おしい、そんな“家族”の物語…。(全10話)
七実(河合優実)は、パパ・耕助(錦戸亮)も行きたかった大学へ合格した!それぞれが亡くなった耕助への思いを抱えている。ひとみ(坂井真紀)は耕助がいた頃を懐かしみ、思い出のアルバムをめくる。「またいつか旅行行ってみたいな…」そんな言葉を聞いてしまったら、七実はやるしかない。





出典 NHK





🦁ワイルドライフ 薩南諸島 洋上の火山群 水中オーロラと巨大魚たちの海に迫る
7月23日(火)19:30~21:00 NHKBS4K 
鹿児島の南には世界最大級の海底噴火でできた鬼界カルデラがある。海面上に出ているそのヘリの一部が、今も噴煙を上げる薩摩硫黄島だ。火山ガスや熱水は海底からも噴出し、火山の海ならではの生態系が広がっている。海水がオーロラの様な色に染まる奇跡的な絶景にも遭遇した。写真家中村卓哉さんと共にそんな火山島群をさらに南へ向かうと、黒潮のど真ん中に浮かぶトカラ列島でロウニンアジやマンタなど巨大魚たちの群れが現れた。



出典 NHK



✅ダークサイドミステリー お化け屋敷の進化が止まらない!〜“怖い”は楽しい!の秘密〜 再放送
7月23日(火)21:00~22:00 NHKBS4K
光と闇のナビゲーター 栗山千明
住宅街の一軒家に!かわいい幼稚園に!路上に!あなたの部屋に!どこにでも現れ演出も技術も超進化したお化け屋敷の最新形とは?恐怖を楽しさに変えるエンタメ技術に迫る!
出典 NHK





🤗ウチ、“断捨離”しました! 病をかかえ独りぼっちの娘 諦めるな!なにわの救出作戦
7月23日(火)21:00~21:54  BS朝日4K(HDアップコン)
今回は、大阪府で12羽のセキセイインコと暮らすともこさん。昨年父を亡くし、母は認知症と診断されて現在は施設に入居中。生まれ育った家はため込み屋の両親のモノで溢れかえっていた。さらに、ともこさんは幼い頃、先天性の病で心臓の手術をし、現在も心不全と診断され通院する日々を送っている。
出典 BS朝日





💐関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅 クロアチア(2016年) アーカイブス番組 
7月23日(火) 22:00~24:10 NHKBS4K
関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅 クロアチア(2016年)今回の舞台はアドリア海をはさみイタリアの隣にあるクロアチア。今、世界中から観光客が訪れる魅力あふれる国。最南端の美しい街スプリットを出発、国を一周し首都ザグレブへ向かう10日間。乾いた大地に広がる“奇跡の森”、農民たちが描く世界でも珍しい絵画、そして、かつての激しい紛争を乗り越え生き抜こうとする人々…。





出典 NHK



世界遺産ミディ運河  出典 世界遺産オンライン
🌐フランス リバークルーズ 世界遺産ミディ運河を行く 
7月23日(火)23:40〜24:40 NHKBS4K
▽フランス・リバークルーズ、世界遺産・ミディ運河をツアーで旅する▽300年以上前に造られた世界最古の運河。壮観な水門や奇観なトンネルが今でも使われ、きれいに植えられた並木や川の上に運河がかかる不思議な光景も楽しめる▽古城や歴史ある教会、地元の新鮮な食材が集まる市場など好きな場所に立ち寄れるのもツアーの魅力▽クルーの手厚いおもてなしに豪華な船室、腕利きシェフのとっておきのフランス料理も堪能する!
出典 NHK



🏆NHK特集 選 オリンピックの群像「不敗の勇者 山下泰裕」
7月24日 (水)18:10〜19:00 NHKBS4K
「日本柔道最強の男」と呼ばれた山下泰裕は、ロサンゼルスオリンピックの金メダルをめざして、どんな練習を重ねたのか。天才といわれながらも愚直に精進する姿に密着した。
取材当時、山下泰裕は26歳。それまで世界選手権3連覇、全日本選手権8連覇の輝かしい戦歴を含め、194連勝を続けていた。山下は、少年の日の夢であったオリンピックの金メダルへ燃えていた。そのために、あえて激しい稽古に挑んだ。オリンピック代表をかけた全日本柔道選手権では、強豪を倒して9連覇をめざした。夢に向かってトレーニングを重ね、ひたすら努力する不敗の勇者を見つめたドキュメントである。
出典 NHK





🌼 美の壺 「日本の夏 花火」
7月24日(水)19:30~20:00 NHKBS4
夏の風物詩、花火▽夜空に大輪を咲かせる打ち上げ花火。内閣総理大臣賞を受賞した花火師の職人技▽長野・軽井沢町の長倉神社花火大会の舞台裏▽迫力満点!愛知・豊橋の手筒花火。竹の切り出しから放揚まで手筒花火にかける地元の青年に密着▽東京・浅草橋の手作りミニ花火大会▽福岡・みやま市の線香花火の工房。火薬の量から巻き方まで、線香花火に秘められたこだわりとは?400年続く花火の魅力を再発見!<File585>





出典 NHK



🏯英雄たちの選択 選「渋沢栄一 知られざる顔 〜“論語と算盤(そろばん)”を読み解く」
7月24日(水)20:00~21:00 NHKBS4
新1万円札の顔に決まり、注目を集めている渋沢栄一。明治時代、500もの会社を設立し、「日本資本主義の父」と言われる渋沢のもうひとつの顔を紹介する。
実業家渋沢栄一のもうひとつの顔は、生涯にわたる福祉事業家として、600もの事業を立ち上げたこと。「貧しい人を助けることは、日本の資本主義を豊かにするためにも、必要なこと」と主張する渋沢に対し、「税金で貧民を助けることは『惰民』を増やすだけだ」と、東京府議会は真っ向から攻撃し、論争になった。鹿鳴館で貴婦人たちによるチャリティーバザーを開くなど、日本の福祉事業への道を切り開いた渋沢の挑戦をたどる。

渋沢栄一 出典 国会図書館
出典 NHK





🐟魚が食べたい!「魚が食べたい!」福井県大島漁港でお魚さがし (若狭グジ、ツバス、トビウオ)
7月24日(水)21:00~21:54 BS朝日4K
若狭湾に面し、「地魚の聖地」とも呼ばれ、古くは「御食国(みけつくに)」といい朝廷に海産物を納めていた土地を日本酒も大好きなディレクターが調査。漁師歴20年で親子で漁をするアカアマダイ漁師の延縄漁に密着。
アカマダイは500グラム以上を「若狭グジ」と呼ばれ、超高級魚。中でも大きいものを「若狭グジ極」と呼ばれる。果たして釣ることは出来るのか⁉
記録的な大漁!で漁師さん大喜び!
絶品!若狭グジの皮つき刺身&炙り、レンコダイの刺身満喫&名店で「若狭焼き」も満喫!

出典 BS朝日





(c)1984 Universal City Studios LLLP. All Rights Reserved.
🎥ジェシカおばさんの事件簿  (3)「テニスのスター 天に昇る」 制作1984年(40年前)
7月24日(水)21:00~21:44 NHKBS4K
アンジェラ・ランズベリー×森光子の演技が光る名作ミステリー!テニスのチャリティー試合で殺人事件が!ジェシカの教え子が犯人?彼女の抱えている秘密とは…?
ジェシカはテニスのチャリティー・トーナメントの名誉会長を引き受け、トーナメントには数々のスタープレイヤーが参加しているが、キャロルは彼らのわがままに手を焼いていた。パーティーの夜、キャロルの婚約者ブライアンがキャロルの車を使おうとしたところ、車が爆発。ブライアンは死んでしまう。
出典 NHK



🛤️美しい日本に出会う旅 絶景!満腹!山形で夏休み 米沢牛•山寺•蔵王温泉•ジンギスカン
7月24日(水)21:00~21:54 BS-TBS4K
旅の案内人・語り:松下洸平
旅は米沢からスタート。米沢牛の最も美味しい食べ方を学んだら、山形の夏の風物詩「花笠まつり」の菅笠を60年作り続けるおばあちゃんを訪ねる。
山形では東北を代表する宝珠山立石寺、通称“山寺”へ。蔵王温泉で湯めぐりをしたら、意外な名物ジンギスカンをぱくり。
旅の最後はエメラルドグリーンに輝く湖面が神秘的な蔵王の御釡。

出典 BS-TBS



🎼駅ピアノ「リヨン」
7月24日(水)21:45〜22:30  NHKBS4K
パリ、マルセイユに次ぐフランス第3の都市リヨン。ピアノが置かれているのは街の中心パールデュー駅。訪れた人々はどんな思いでどんな曲を弾くのか。定点カメラで見つめた
フランス・リヨン。ローマ帝国時代から交易都市として栄え、旧市街は世界遺産に登録。高速鉄道TGVも乗り入れるパールデュー駅のピアノ。祖父母のためにアニメ曲を弾く少女。ワイナリーを巡るツアーに出かけるソムリエ。リヨンの女性とのデートのためスイスから来た弁護士。テイラー・スウィフトのコンサート帰りの女性。病気で視力を失った後、ピアノを覚え音楽学校に進学した若者。様々な人々が心のメロディーを奏でていく。
出典 NHK



🏞️ヒロシのぼっちキャンプ #101「ヒロシから山の空気を贈ります」(再) #102「夏の終わりをあたためて」(再)
7月24日(水) 22:00~22:54 BS-TBS4
8月下旬、埼玉県飯能市のキャンプ場へ向かう途中立ち寄ったお肉屋さんで大好きな焼肉弁当を買い込んだヒロシ。
山深い渓谷のキャンプ場に到着し、渓流沿いのサイトを見つけたヒロシはあまりの涼しさに言葉を失う。
やがて、お弁当を温めようと川のそばで焚き火の準備を始めたヒロシだったが、山の空気の心地よさに誘われて、ある意外な行動に出てしまう・・・。

出典 TBS





💐4Kプレミアムカフェ 関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅 ポルトガル(2017年)
7月24日(水) 22:30~24:33 NHKBS4K
関口知宏のヨーロッパ鉄道の旅 ポルトガル(2017年)スペインとの国境の街ヴァレンサを出発し、北部地方、中部地方をめぐって首都リスボンへ。リスボンでは、酒場で歌い継がれる“庶民の心の歌”ファドに胸打たれる。大西洋に面した港町ナザレでは、伝統の踊りを体験。さらに南下し、大航海時代の痕跡が残るユーラシア大陸の最西南端サグレスをめざす10日間の鉄道旅。





出典 NHK





😺ねこ自慢
7月24日(水)23:00~23:54 BS-TBS4K(HDアップコン)
元AKB48倉持明日香がネコのために購入した自宅をテレビ初公開!さらにペットの緊急時、深夜に駆けつけるアニマルドクターカーに密着ーそのオドロキの仕事ぶりとは?
出典 BS-TBS



🍁大河ドラマアンコール】独眼竜政宗(16)「南北の敵」 アーカイブ番組 1987年放送(37年前)
7月25日(木)18:15~19:00 NHKBS4K *4Kリマスター
凶暴なまでの激しさと御仏の慈悲を併せ持つ男。知恵と才覚を駆使して苦境を乗り越え、一代で仙台62万石の基礎を築いた伊達政宗の波乱の生涯。1987年放送の大河ドラマ
天正16年1月、政宗(渡辺謙)は、大崎氏の内紛を鎮めるため、母の里・最上家の本家筋の大崎へ出兵する。この出兵をめぐって、政宗と母・お東の方(岩下志麻)の意見が対立し、政宗は「母上は、伊達家よりお里の最上家が大切か」と強く非難。戦況の方も、黒川月舟斎の裏切りと、大崎氏の頑強な抵抗や大雪にもたたられて伊達の軍勢は総崩れとなってしまう。


出典 NHK





🗻にっぽん百名山 「三嶺 〜秘境の奥の“別世界”〜」
7月25日(木)19:30~20:00 NHKBS4K
四国山地の東、徳島と高知の県境にそびえる「三嶺(みうね、1894m)」。秘境とも言える山深い集落の奥にある。だが、そこには、思わぬ光景の数々が待ち受けていた!
今回は、日帰りの山旅。まずは、広葉樹の森へ。“頭のいい″ヤドリギや“平家の落人”ゆかりのカズラと出会う。高度が上がると、森は針葉樹へ。ここで、三嶺を代表するのが、ウラジロモミ。そして森を抜けると、今度は、笹原と巨大な岩が待ち受ける“別世界”。



出典 NHK





🏰世界ふれあい街歩き スウェーデン「ビスビー編」 再放送
7月25日(木)20:00~21:00 NHKBS4K
スウェーデン最大の島、ゴットランド島にあるビスビー。13世紀に造られた城壁に囲まれた旧市街全体が世界遺産だ。バイキングが街を作り、海洋貿易の拠点になった島には、数々の不思議な伝説が語り継がれ、多くの妖精がすむという。神秘的な教会の遺跡の数々、三角屋根のこじんまりした家々、花でいっぱいの路地…街はまるでおとぎの国のようだ。歴史に誇りを持って伝説や過去を大切にし、人への愛情にあふれる人びとと出会う。
出典 NHK 



出典 トラベルJP
🚊 SL人吉 最後の日々〜時代を駆けた102年〜 再放送
7月25日(木)21:00~22:00 NHKBS4
102年の歴史を閉じる現役最古の蒸気機関車SL人吉に密着。戦前の動員列車から昭和平成令和の阿蘇球磨川の観光列車まで時代を背負い九州に刻んだ足跡と人々の思いを描く
出典 NHK





🌸あなたの知らない京都旅~1200年の物語
7月25日(木) 20:00~22:54 BS朝日4K

出典 BS朝日




🐟釣り百景 #548 北海道洞爺湖に魅せられて 夏季解禁/トラウトフィッシング
7月25日(木)22:00~22:54 BS-TBS4K
雄大な自然が広がる北海道・道央エリアに位置する洞爺湖は、良型トラウトが釣れる有名な湖。夏季解禁になった6月上旬にやって来たのは、トラウトフィッシングに精通するプロアングラー佐藤文紀さん。過去にも洞爺湖を訪れている佐藤さんによると、初夏に岸から狙えるのは主にヒメマス。他にも大型サクラマス、ニジマスも手にできるチャンスがあると言う。
出典 BS-TBS





2024年1月1日
Copyright (C) 2023 IMSSR

*******************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
imssr@a09.itscom.net
*******************************************

コメント (2)
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パリオリンピック2024 テロの悪夢 テロ警戒レベル最高 プランB セキュリティ ドローン対策

2024年07月14日 09時42分13秒 | 国際放送センター(IBC)


「ミュンヘンオリンピック事件」 National Geografic
五輪史上最大の惨劇 ミュンヘン五輪「黒い9月」事件
 オリンピックを巡るテロ事件で鮮烈に記憶に残っているのは、1972年ミュンヘン五輪の“悪夢”である。
 1972年9月5日にオリンピック・ミュンヘン大会の選手村で起きた人質殺害事件は、現代オリンピックの歴史に特に暗い影を落とす史上最大の惨劇となった。
 自由なドイツ、開かれたドイツを世界に示そうと西ドイツはオリンピック開催に希望を託していた。開催地はミュンヘン、ヒトラーを独裁者へと成長させた街である。期間中に警察官ばかりが目立つとその過去を彷彿とさせるかもしれないという懸念を抱き、バイエルン州と市は、警備を通常の増員体制でいくことにした。
しかし時局はテロの危険を示していた。1972年上半期だけでも、黒い九月がハンブルクとオランダのエネルギー施設を爆破、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)がサベナ航空572便をハイジャック、ドイツ赤軍(RAF)がカールスルーエなどで連続5件の爆破、PFLPから依頼された岡本公三ら日本赤軍3名がテルアビブのロッド国際空港ターミナルで無差別乱射と断続的に発生。イスラエルの国際オリンピック委員会(IOC)は特別警戒を求めたが、西ドイツは過激派テロの反社会性を甘く見ていたふしがある。
 大会開催中の1972年9月5日、4時40分頃、パレスチナの過激派「黒い9月」の武装パレスチナ人テロリスト8名が敷地のフェンスを乗り越えて侵入した。レスチナ人が選手村に押し入り、AK-47等の自動小銃や手榴弾などで武装・覆面した上で、選手村内のイスラエル選手団宿舎へ突入した。犯人グループは上階のイスラエル選手団居住フロアに侵入、イスラエル代表チームの選手5人とコーチ6人の11人を人質にとった。
襲撃時にレスリング選手だったガド・ツォバリが窓から脱出しており、唯一の生存者となった。
武装勢力はイスラエルの刑務所に収容されているパレスチナ人などの解放を要求し、ウェイトリフティング選手のユセフ・ロマーノとレスリングコーチのモシェ・ワインバーグの2名を抵抗したとして殺害した。
テロリストは9人を国外へ連れ出そうと近くの飛行場へ向かったが、武装勢力と西ドイツ警察が銃撃戦になり、イスラエル人9人全員と西ドイツ警官1人、「黒い9月」のメンバー5人が死亡した。
翌日、IOCはオリンピックスタジアムで追悼式を開き、数々の人種差別発言ですでに辞任を求められていたブランデージ会長が、怒号渦巻く中で大会続行を宣言する。「The game must go on!」。
救出作戦失敗の原因について分析されたのは後々のことであり、ドイツ当局は当初から落ち度を認めなかった。殺されたイスラエル人選手の遺族から起こされた賠償請求にバイエルン州が応じると決めたのはなんと28年後の2000年9月だった。
平和と友好の祭典、オリンピックの理念は完全に打ち砕かれた惨劇だった。
 フランスは、テロの脅威からParis2024を守るために、毎日、約4万5000人のフランス警察と治安部隊、2万人の民間警備員、約1万5000人の軍隊を動員、史上最大規模の警備を実施する。
 開会式の7月27日には最大7万人を動員する計画である。


出典 Insidethegames
Paris2024 テロの“悪夢”
 華やかな国際都市パリは、テロの脅威に常にさらされている都市でもある。
 2015年11月に発生したパリ同時多発テロ事件の強烈なインパクトが今でも残る。
 パリ市街と郊外(バンリュー)のサン=ドニ地区ので、イスラム過激派よる銃撃おや爆発が同時多発的に発生し、死者130名、負傷者300名以上の犠牲者を出した大惨事となった。
 爆発が起きたサン=ドニにあるスタジアム、スタッド・ド・フランスでは、男子サッカーのフランス対ドイツ戦が行われており、フランスのオランド大統領とドイツのシュタインマイアー外務大臣も観戦していたという。
 フランスの治安専門家は、「オリンピックは治安リスクの悪夢になるだろう」と述べている。
 Paris2024には、世界各国から1,200 万人の観光客が訪れるが、その安全を確保すると共に、オリンピック選手村や競技場エリアに出入りする大会関係者を監視しなければならない。
 最大の問題は、セーヌ川で開催される開会式である。当初は60万人(その後30万人に半減)を超える観客が殺到することが予想され、「無差別テロ」のリスクは極めて高い。
 フランスは、テロの脅威からParis2024を守るために、毎日、約4万5000人のフランス警察と治安部隊、2万~3万3000人の民間警備員、約1万5000人の軍隊を動員、史上最大規模の警備を実施する。
 セキュリティ経費の膨張も悩みの種で、3 億 2,000 万ユーロ (約450億円)に増加し、ウクライナ戦争の泥沼化に伴う治安情勢の悪化で、さらに増額する可能性が大きい。
 一方、フランスの国内情報機関DGSIも警察や治安部隊を支援するために、特別なオリンピック情報センターを設立し、総力戦でテロ対策にあたる。
 テロの脅威からParis2024をどう守るか、フランス警備当局に最大の試練が待ち構えている。

ドローン・テロの脅威
 フランス国防省は、Paris2024向けレーザー兵器システムのプロトタイプを 配備する。
 このシステムは「HELMA-P」と呼ばれる対ドローン用レーザー兵器システムで、強力なレーザー ビームを発射して、ミニまたはマイクロ ドローンを無力化することが可能だ。
 またアンチドローンシステムには、ドローンの位置を特定するのに役立つレーダーや無線周波数センサーも含まれている。
 セキュリティ専門家は、ドローンの脅威は近年、オリンピックなどの大きなイベントなどで指数関数的に増加しているとしている。

 2024年3月、フランス・パリ近郊のヴィラクブレー軍空軍基地で、夏季オリンピックの開催に先立ち、対ドローン防衛装備、対ドローンライフルの演習が行われた。
 フランスは無人機対策部隊の支援を受けて大会の安全確保に向けてあらゆる手段を講じる。ィラクブレー軍事基地は、ドローン対策調整センターの本拠地となり、警察、憲兵、陸軍将校が連携してドローンの脅威を封じ込める。
 ドローン対策調整センターでは、「他の目的使用されたドローンを兵器に変えるのは容易だとうということを痛切に感じている」と話す。
 セキュリティ担当者は、オリンピック会場の地上でレーダー、カメラ、妨害アンテナを備えた対ドローンユニットを配置してオリンピック期間中に航空交通を監視する。危険なドローンを識別して、数キロ離れたドローンを無力化する。
 ドローンの無線信号をスクランブルしたり、レーザーで撃墜したりする対ドローンライフルも自由に使用することが可能だ。
 対ドローン作戦が難しのは、「ドローンはメディアだけでなく、一部の競技では審判にも使用されているため、完全に禁止することはできないことだ」と話す。
 フランスの警備責任者は、武器や爆発物のテロの脅威に対しては相当程度、警備が可能になってきたが、「ドローンはまったく新しい脅威だ」と述べ、「戦場でない市街地に爆発物を積んだドローンが登場するのは初めて、この脅威が現実になるかどうかは分からないが、阻止するのは最も難しい。」と述べた。
 ドローン攻撃に対抗するための新しい防空技術は、ラグビーワールドカップ・フランス大会で試験導入された。
 開会式はセーヌ川の全長6キロメートルに沿って3時間以上かけて行われ、200カ国以上からの選手や関係者を乗せた約100隻のボートが参加する史上初の競技場外の開催となる。国家元首や政府首脳を始め30万人(当初は60万人)の観客がこのルートに集まる。川沿いには80の巨大スクリーンが設置され生中継される。開会式はテロ攻撃の格好の標的になる懸念が大きい。
 またマラソン、パリ市庁舎をスタートし、ルーヴル美術館、ヴェルサイユ宮殿、エッフェル塔などの歴史手的名所を巡る42.195kmのコース、まさにパリが世界に誇る観光名所をアピールする狙いが込められている。五輪マラソンと同一のコースで市民参加マラソンも行われるのも目玉だ。
 しかし、その警備は極めて困難なものとなりそうだ。


パリ市内の監視カメラ  出典 BBCニュース
警備の主役は街中に設置された無数の監視カメラとAIテクノロジー プライバシーとセキュリティのバランスで議論噴出
 警備当局が重要視するのはスマートカメラ監視システムをパリ市内に無数の設置することである。
 不審な動作を発見する大規模なリアルタイム・AI監視カメラシステムの導入に期待をかけている。
 AIアルゴリズムによってサポートされるこのシステムを有効に機能させるためには「監視権限拡大」が必要となる。警戒すべき群衆の動きなどの不審な行動や放置された不審な荷物を発見するアルゴリズムや顔認識テクノロジーを作動さなければならない。
 しかし、不特定多数の群衆を監視するAI監視カメラはプライバシー侵害、フランスが「監視国家」に変貌してしまうのではないかと懸念も強まっている。「オリンピックはセキュリティ技術業界が長年待ち望んでいた措置を通過させるための口実として利用されている」という批判が強まっている。
 マクロン大統領は、多数の議員らが懸念を表明したことを受けて、フランス政府はすでに顔認証技術の導入は撤回した。 また、国のデータ保護当局と最高行政裁判所から、導入にあたってはより多くのプライバシー保護手段を組み込むように命令された。
 その上でリアルタイム・AI監視カメラシステムの導入は、「実証実験」として実施することを認める法案が通過した。「実証実験」は9月と10月にフランスで開催されたラグビーワールドカップから始まり、Paris2024大会終了から10か月後の2025年6月に終了する計画である。
 この法案ではスポーツ・イベントだけでなく、通常のイベントや文化的な集まりについても適用されるため、オリンピック後に「実証実験」が終了した時に監視カメラに搭載された AIデバイスをどうするかが問題になりそうだ。
 AI監視テクノロジーのソフトウェアは、Atos、Idemia、XXII、Datakalab などのフランス企業が提供可能としている。
 テロの脅威に対してリアルタイム・AI監視カメラシステムは果たして有効に機能するのだろうか。

ドローン対策ユニットはパリ 2024 大会の安全を守る新しいツール
 2024年3月、フランス・パリ近郊のヴィラクブレー軍空軍基地で、夏季オリンピックの開催に先立ち、対ドローン防衛装備、対ドローンライフルの演習が行われた。
 フランスは無人機対策部隊の支援を受けて大会の安全確保に向けてあらゆる手段を講じる。ィラクブレー軍事基地は、ドローン対策調整センターの本拠地となり、警察、憲兵、陸軍将校が連携してドローンの脅威を封じ込める。
 ドローン対策調整センターでは、「他の目的使用されたドローンを兵器に変えるのは容易だとうということを痛切に感じている」と話す。
 セキュリティ担当者は、オリンピック会場の地上でレーダー、カメラ、妨害アンテナを備えた対ドローンユニットを配置してオリンピック期間中に航空交通を監視する。危険なドローンを識別して、数キロ離れたドローンを無力化する。
 ドローンの無線信号をスクランブルしたり、レーザーで撃墜したりする対ドローンライフルも自由に使用することが可能だ。
 対ドローン作戦が難しのは、「ドローンはメディアだけでなく、一部の競技では審判にも使用されているため、完全に禁止することはできないことだ」と話す
 フランス警察は人工知能を活用した群衆のビデオ監視のテストを開始した。


モスクワ劇場テロ銃乱射事件 133人死亡 コンサート会場 火災も発生 2024年3月22日 出典 NEXTA

マクロン大統領 テロ警戒レベルを最高水準に引き上げ、モスクワ乱射事件受け
 2024年3月、マクロン大統領はモスクワで発生した銃乱射事件を受け、フランスの警戒レベルを最高に引き上げると発表した。この決定は「”イスラム国」(IS)”が犯行声明を発表したことと、わが国に対する脅威の増大を受けたもの」と説明し、犯行声明を出したISの組織は「フランス国内でもこの数か月、複数回テロを企てようとした」ことを明らかにして危機感をあらわにした。
 フランスのテロ警戒レベルは3段階あり、最高レベルは国内外でテロが発生した場合と、テロ発生の危険が迫っているとみなされた場合に発動される。鉄道の駅や空港、宗教施設などの公共の場における軍による巡回強化といった例外的治安措置が認められる。
 フランスでは2023年10月、ガザ地区で軍事衝突が発生した直後、高校教師がイスラム教徒の男に殺害される事件が発生、このとき3段階ある警戒レベルを、最高水準に引き上げたが、その後、引き下げた


マクロン大統領とバッハIOC会長 出典 IOC
マクロン大統領、セキュリティ上の懸念あれば会場変更も パリ五輪開会式
 2024年4月、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は、セキュリティ上の脅威が生じた場合、Paris2024の開会式会場がセーヌ(Seine)川からスタッド・ド・フランス(Stade de France)に変更される可能性があると述べた。
 マクロン大統領は選手団がボートでセーヌ川をパレードする代わりに、式典をトロカデロ広場(Trocadero Square)」の建物内に限定するか、あるいは「スタッド・ド・フランス」に移すこともできる」と語った。 ウクライナ戦争やパレスチナ自治区ガザ(Gaza Strip)での戦闘が激化しているが、大会組織委員会(COJOP)は開会式が別会場に変更される可能性をこれまで否定していた。  
 大統領は「この開会式は世界初だ。私たちにはできるし、やるつもりだ」とししながら、会場を変更する「プランBやプランCがある」と述べ、「リアルタイムで分析を行う」とした。
 史上初のセーヌ川開会式が実現するかどうか予断を許さない。
 


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水質汚染深刻 お台場海浜公園 「トイレの臭いがある」 トライアスロン・マラソン水泳 Media Close-up Report


国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2024年7月1日
Copyright (C) 2024 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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パリオリンピック IBC(国際放送センター) OBS パリ五輪2024 4K AI Paris2024

2024年07月10日 15時20分24秒 | 国際放送センター(IBC)

史上最も華麗なセーヌ川開会式で幕を開けるParis2024

Paris2024 セーヌ川開会式 出典 Paris2024

2024年パリ夏季五輪大会(Paris2024)は、7月26日から8月11日まで開催され、32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞った。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。
 主要競技会場は、、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッド廃兵院などのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
 異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計41の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
 オリンピック選手村は、パリ北部のサンドニに約20億ユーロ(約3200億円)を投じて建設された、約70%が民間資金で、公的資金は6億5000万(約1000億円)ユーロが投入された。
 大会期間中は約14000人の選手や関係者の宿泊施設となる。大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイススペースも整備される。
 開催経費は、インフレの影響で当初予算から約35%増加し、組織委員会予算で約44億ユーロ(約7400億円)、競技会場やインフラ整備を担当するオリンピック施設庁(SOLIDEO)予算で約45億ユーロ(約7600億円、合計89億ユーロ(約1兆5000億円)程度とされている。
 ちなみにTokyo2020では組織委員会経費が6404億円、国や東京都が7834億円、計1兆4238億円、ほぼTokyo2020と同額の開催経費となった。
 開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
 Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、数千人を乗せた80隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料席22万2000人)に半減された。
 パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能な席は無くなった。
 そして観客のためにルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設けられる。
 またコンコルド広場(Concorde suare)やエッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)にはイベント広場が設置され、各国首脳と政府や国際機関の関係者など約200人も出席する予定だ。
  Paris2024では、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。

パリオリンピック 競技会場 完全ガイド  Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report



Paris2024 IBC(国際放送センター)

IBC(国際放送センター) CDU 東京2020 出典 OBS
 Paris2024の放送・デジタルストリーミングのメディアの拠点、国際放送センター(IBC/International Broadcast Centre)は、ル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)のホール2B、3,4,5の4つのホールを占有して設置される。ホール3は大会開催を契機に新設された。
 国際放送センター(IBC/International Broadcasting Center)は、世界各国のテレビ、ラジオ、デジタルサービスなどの放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は、五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるオリンピック放送機構(OBS/Olympic Broadcasting Services )が行う。
 OBSは、開閉会式などのイベントや全競技の国際映像・音声信号(ITVR:International Television and Radio Signals/World Feed)のライブ中継制作や信号の伝送、各放送機関等の専用ユニーポジションの設置やオペレーションの支援、記者リポートポジションやビューティカメラの設置、信号の伝送や配信などを行う。
 IBCのOBSエリアには、コントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置され、オフチューブ・コメンタリー・スタジオやSNGサテライトファームなども整備される。また放送機関(MRHs)エリアには、各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・スペースを設置、ユニー・オペレーションを行う。

IBC OBSエリア 出典 OBS
  OBSは、Paris2024で41競技場(内サーフィンはタヒチ)で開催される32競技329種目のすべてを4KUHD(Ultra High Definition )/HDR(RHigh Dynamic Range)、音声は 5.4.1 immersive audioでライブ中継を行い、テレビ、ラジオ、デジタルサービスのライツホルダー(MRHs)に4KUHD、HD、デジタル・ストリーミングなどさまざまなフォーマットで配信される。総配信時間は史上最高の 11,000 時間超(東京2020では1万200時間 リオデジャネイロ2016では7100時間)、 エグザーチョス(Yiannis Exarchos)OBS会長は「全部合わせると1年半以上かかる」と自慢した。この内、 3,800 時間から 4,000 時間はライブ中継( 競技と開閉会式や式典) である。
 オリンピックを支えるメディアの果たす役割は極めて大きい。国際オリンピック委員会(IOC)は、メディア戦略を重要な柱として位置付けている。とりわけ競技中継を世界各国で行う放送メディアは、オリンピックの存立基盤を握るとまで言われている。そのメディア戦略を担うのがIBCなのである。

CCTVのサテライト・スタジオ IBC   出典 OBS

 IBCの建物やオーバーレー(仮設スペース)、電源、空調、光ファーバーなどのインフラの整備は開催都市が行い、 2024 年 1 月にOBSに引き渡された。そしてOBSのIBC 建設チームがパーティションなどの内装工事や放送機器を設置し、ホストブロードキャスターとしてのオペレーション環境を整える。 5月にはライツホルダーの放送機関等(MHBs)が 入居を開始、それぞれの放送オペレーションの拠点を作り上げる。IOCから放送権を取得したMHBsは26、世界100各国以上の80の放送機関等に配信する。OBSがIBCの開設準備は通常26か月(約2年)前に始められる。
 IBCの開所は6 月 26 日、以降、会期終了まで24時間オープンする。
 ホストブロードキャスター業務に従事するOBSは、約8300人の放送専門家集団を投入する。OBSのパーマネントスタッフは160人余りだが、大会階ごとに世界約100か国から8000人以上のスタッフを雇い入れる。その他1,300人のフランス人学生が研修プログラム(BTP/Broadcast Trainning Programme)で参加し、OBSをサポートする。
 IBCに参加する放送機関等(MHBs)のスタッフは、約4000人程度と思われ、IBCに参加するスタッフは計1万2000人程度と思われる。

 ル・ブルジェのIBCの面積は、東京2020のIBCが設置された東京ビッグサイトに比べて約13%(MRHsの面積は18%)縮小される。使用電力量は東京2020に比べて44%、リオデジャネイロ2016に比べると配信時間は2倍に増えたが約72%も削減される。 
 OBSは、IBCのIP化とクラウドの導入を進めることで、ライツホルダー(MRHs)の自国でのリモート制作を可能にした。これまで放送機関はIBCに放送機材を設置して要員を派遣してオペレーションを行ってきたが、それが不要になり経費を大幅に効率化できるようなった。主要放送局はいずれもIBCでのオペレーションを削減、その結果がIBCの規模縮小につながった。
 また 東京2020から、OBSはMRHsとのアクセスを効率化するために集中テクニカルアリア(CTAs:Centralised Technical Areas)を設けIBCのレイアウトを大幅に見直した。CTAsに両者が映像・音声信号を送受信する放送機材を集中的に設置することで、熱、換気、空調を抑えて、電力消費削減を達成して省エネ効果を上げることも可能になる。以前のIBCレイアウトでは各エリアに分散していたが、CTAsの設置でIBCスペースをより効率的に使用してスリム化を果たした。

CTAs:Centralised Technical Areas  出典 OBS

ル・ブルジェIBC
 IBCが設置されるル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)は、パリの北部、シャルル・ド・ゴール空港から南に13km、オリンピック・パラリンピック選手村から東に8kmに位置する。ホール 2B、3、4、5 合計 4 つのホール (Hall3は新設) を使用して整備され、総面積は 40,000 平方メートル。大会期間中、OBS と MHBs(Media Rights-Holders) のさまざまな放送機材や管理的施設が設置されて、テレビ、ラジオ、インタネットなどのメディアの主要活動拠点となる。

ル・ブルジェ・コンベンションセンター(Le Bourget exhibition and convention centre)  出典 Le Bourget exhibition and convention centre
 2年に一度開催されるパリ・エアショー(パリ国際航空宇宙ショー)で世界的に有名なコンベンションセンター。航空宇宙業界の国際見本市で世界最大規模を誇る。1909年に創設され、航空機や戦闘機のデモンストレーション飛行も行われるダイナミックな見本市としても知られている。2019年ではフランス国内外から2,453社が出展・139,840人の業界関係者が来場し、フランスにおいて航空業界の発展を牽引している。2023年にも開催され、2025年にも開催予定。

 5つの展示場ホールを有し展示場面積の合計は約80,000平方メートル、隣接した飛行場を備えるユニークなコンベンションセンターである。

オリンピックの視聴者数は世界で30億5000万人
 国際オリンピック委員会(IOC)では、東京2020で、オリンピック関連の番組やニュースをテレビやデジタル・プラットフォームで見た視聴者数は、世界で30億5000万人、視聴時間は総計230億時間に及ぶと推定している。この内約64%の視聴者はテレビとデジタル・プラットフォームの両方で視聴したとしている。
 デジタル・プラットフォームは280億ビュー、22億4000万人のユニーク・ビューヤーを記録し、リオデジャネイロ2016に比べてビュー数は139%増、ユニーク・ビューヤー数は74%増と大幅に増加したとしている。

出典 IOC/OBS


OBS Team  出典 OBS
ホストブロードキャスター OBS
 OBSは、2001年に国際オリンピック委員会(IOC)が五輪大会のホストブロードキャスター業務を担う組織として全額出資して設立した“子会社”である。
 スペインのマドリッドに本部があり、スイスのローザンヌにも拠点がある。30の国と地域の約160人の常勤スタッフが在籍するグローバルな組織である。OBSの運営に関わる財政的負担はIOC責任を持つ。
 現在のIBS CEOは、イヤニス・イグザーチョス(Yiannis Ezachos)氏、 1964年ギリシャ生まれで、アテネ法律大学で法律と映画を専攻、卒業後、文化・芸術関連のテレビ・ラジオ番組を制作、ギリシャ国営放送、ERTの執行役員を歴任して、2012ロンドン夏季五輪後にOBSのCEOに就任した。
 これまで五輪大会のホストブロードキャスター業務は、開催都市組織委員会(OCOG)の責任だった。大会ごとにOCOGが開催国の放送機関と協力してホスト・ブロードキャスターを担う組織をゼロから作り上げる必要があった。しかし大会規模が拡大るにつれて、ホストブロードキャスター業務を担うために大量の機材と人員を確保することが強いられて、開催地の負担になった。
 ちなみに1964年東京夏季五輪や1972年札幌冬季五輪、1998年長野冬季五輪はNHKがホストブロードキャスターを務めた。
 一方、メディア戦略を最重要視する戦略をとる国際オリンピック委員会(IOC) にとっては、すべての大会で放送サービスの最高水準の品質を維持して、ライツホルダー(MRHs)にサービスすることが重要である。IOCの収入の70~80%は放送権収入で占められているからである。放送権収入が入らなくなったらオリンピック存続の死活問題となる。高額の放送権料に見合うサービスをMRHsに提供し続けることはIOCに課せられた最重要の課題だ。
 大会開催都市が世界各地に広がる中で、IOCはコンテンツの品質水準を確保するために、常設のホストブロードキャスターを担う常設組織の必要性を痛切に感じるようになり、全額出資をしてオリンピック放送機構(OBS)を設立することに踏み切った。IBCの設営・運営や中継業務などホストブロードキャスター業務を実施するための機材や要員、経費をIOCが責任を持ち、開催都市への支援(Contoribution)とした。その原資はIOCが放送機関等から受け取る放送権料である。
 このスキームで、これまで開催都市に課されていた財政的負担と放送機材や要員の確保の負担が軽減され、オリンピック大会が欧米だけなく発展途上国など世界各国で開催される可能性を開いた。
 OBSは、2005年にマドリードに本部を設立して組織を整え、2007年には常勤スタッフを18名から146名に一気に増大させた。
 2028年北京夏季五輪では、開催都市の組織委員会(OCOG)、北京五輪組織委員会(実働部隊は中国中央電視台[CCTV])とジョイント・ベンチャーを組みホストブロードキャスター業務を行った。中国国内の配信業務はCCTVが請け負った。
そして2010年バンクーバ委冬季五輪で、初めて単独でホストブロードキャスターを担い、国際信号の制作や配信業務、IBCの設営・運営などを行った。
 2018年平昌冬季五輪からは、パラリンピックを含めて、OBSが全面的にホストブロードキャスターを務めるようになった。東京2020でもホストブロードキャスターはOBSである。

 OBSは7つのミッションを掲げている。
・ITVR(国際映像・音声信号)の制作
・国際放送センター(IBC)の企画・設計、設営、運営、撤収
・競技会場や競技施設の放送オペレーション設備の企画・設計、設営、運営、撤収
・大会組織委員会が担当するOBSやRHBsが使用する会場の放送インフラの企画・設計、設営の支援
・RHBsの大会組織委員会への要請の取りまとめ
・オリンピック・アーカイブスの運営
・新たな放送技術開発の開発と導入

OBSのホストブロードキャスター業務
 OBSは、ホストブロードキャスターとして中継車(OB-VAN)50台やブロードキャスト・コンパウンド(Broadcast Compaundを設置して競技やイベントの映像・音声信号の制作を行う。
 ライブ中継用に1,000台以上のカメラを配置、パリの象徴的な風景を撮影する12台のビューティカメラも設置して超高解像度でライブ中継、さらに、3,600本のマイクを設置して試合の感動を伝える。
ブロードキャスト・コンパウンド(Broadcast Compaund)には、OBSのベニューオペレーション拠点でIBCへの映像・音声、データ信号の送受信ポイントとなるTOC(Technical Operation Centre)が整備される。
競技場内にはCamera Position(OBS用・放送機関ユニー用の中継カメラ設置エリア)やMix Zone(アスリートインタビュー・エリア)、インフォ―メーション・オフイス(BIO)が設けられ、電源・通信インフラ・高速インターネット、各種のケーブリング等が準備される。
MRHsに対しては、ユニーカメラ・ポジション(Uni-Camera Position)、コメンタリー・ポジションCommentary Positions)、アナウンス・ポジション(Announce Positions)、プレゼンテーション・ポジション(Occasional Presentation Positions)、記者リポート・ポジション(Stand-up Position)、ソーシャルメディア・ポジション(Social Media Position)、ベニューTVサテライトスタジオ(TV Studio Facilities)などのサービスが提供される。
そしてパリ市内のビューティポイントに複数のOBS TV Towerを建設し、MRHsのユニーTVスタジオの設置を可能にする。このスタジオからParis2024の象徴的な風景を背景にしてキャスターやゲストが出演することになる。

Mix Zone 東京2020 出典 OBS

中継オペレーションの高度化
 Parais2024で、OBSの技術力が最も示される重要な瞬間はセーヌ川の開会式。 OBS は 3 隻の特別建造船を準備し、船上とセーヌ川沿いの要所に設置された 130 台以上のカメラで、開会式パレードをライブ中継する。 高品質で安定した画像を提供するために、OBSが特別に設計した機材が使用され入念な調整も行われた。2023年7月には大規模な技術リハーサルを実施、OBSによるとシステムは順調に動き、微調整も完了し準備は万端、7月26日の開会式には世界の約15億人の視聴者に高品質の画像と音声を提供できると自信を示す。
 Paris2024ではOBSでは、新たな中継テクノロジーを導入した。
・被写界深度がより浅い映画用レンズ(Cinematic Lenses)を初めて使用
視聴者に迫力の臨場感あふれた映像サービス、アスリートの表情をリアルに伝える。
・マルチカメラ再生システム(Multi-camera replay system)
東京2020の倍の20台に増やす。
・空中懸架ケーブルカメラ(Spider Camera)
 4-Pointのワイヤーで動作させる最新鋭のカメラ
・ドローン搭載カメラ
・アスリートの瞬間(Athelete Monmets)
 競技場にモニターを設置して、協議終了後にアスリートの家族や友人とライブで結ぶ。
・Dynamic Graphics
 より多くのデータを提供することを強化することで、ストーリー性を強化し、より没入型のソリューションを提供する。ライブピンニングや生体認証データなどのダイナミックグラフィックスを導入する。
・バーチュアル・スタジオ・バックドロップ(Vertual Studio Backdrop)
 バーチャル・スタジオを設置して、さまざまな背景映像でリポーターやアスリートが出演する。

マルチカメラ生システム(Multi-camera system) 出典 OBS

4-Point スパイダーカメラ   出典 OBS

アスリートの瞬間(Athelete Monmets) 出典 OBS

Dynamic Graphics  出典 OBS

ビューティカメラ   出典 OBS

Paris2024はAI五輪 人工知能 (AI) 自動ハイライト生成システムの導入
 最近開催された 2024 年江原冬季ユースオリンピック期間中、OBS は制作および編集ワークフローに人工知能 (AI) 自動化を導入して、オペレーションの効率を飛躍的に高めた。
・OBS 自動ハイライト生成とOBS 生成支援編集システム
OBSはIntel と協力して開発したOBS 自動ハイライト生成とOBS 生成支援編集システムを開発した。
・Mix Zoneのインタビューの英語スクリプト自動生成
・映像ファイルのキャプション・サブタイトル自動生成


人工知能(AI)プロセッサー、「Intel Xeon」
AI五輪を推進するIntel
国際オリンピック員会(IOC)のTOPスポンサーのインテルは、Paris2024で公式「ワールドワイド AI プラットフォームパートナー」の称号を獲得した。インテルが開発した人工知能(AI)テクノロジーを世界最大の舞台で実装する。
インテルはOBSと協力して、最新鋭の人工知能(AI)プロセッサー、「Intel Xeon」を搭載した自動ハイライト生成システムを開発して導入する。これによりハイライト映像の制作と編集作業が大幅にスピードアップ・効率化され、より迅速に視聴者に提供できるようになる。
またインテルはサムスンと協力して、AI で競技映像を解析して、アーカイブ練習映像と照合して一人一人のアスリートを自動的に識別して、プロフィールを自動的に画面に表示するシステムも開発した。
さらにインテルは、 「Intel Xeon」 上に構築された AI を活用して、競技施設の 3D モデルが作成して、スマホアプリを介して屋内および音声ナビゲーションをサービスする。観客サービスにもAIが活躍する。
Paris2024ではエンドツーエンドの8K ライブ OTT ブロードキャスト配信ワークフローにも挑む。このサービスはインターネット上で配信する8K解像度の低遅延ライブストリーミングで、「Intel Xeon」AIプロセッサーを搭載したブロードキャスト・サーバーを使用する。OBSとNHKは開会式やコンコルド広場で開催されるアーバン・スポーツを8Kで中継制作するが、この8Kライブ信号を60FPS/HDR/48Gbps、VVCコーディックで圧縮して、最新のインテルベースの PCやラップトップにわずか数秒の遅延で配信する。8Kテレビでも視聴可能で、世界中の視聴者が最高の解像度を誇る8Kライブストリーミングでオリンピック競技を楽しむ道を開いた。
インテルがマクドナルドの撤退を受けてTOPパートナーになったのは2018年、平昌冬季五輪2018では5Gタイムスライス映像、360度全方向VR、1218機のドローン編隊飛行などを披露、東京2020では3Dアスリート・トラッキングや VR トレーニングを導入し、北京冬季五輪2022では 初の5G初のライブ・ブロードキャストを実現させて、オリンピックの舞台でITテクノロジーのトップランナーとして名を馳せている。そしてParis2024ではAIオリンピックを掲げて登場する。


Live Cloud Broadcasting   出典 OBS
OBS Could Live Cloud Broadcasting
OBSはParis2024から初めてすべての国際映像信号(ホスト映像信号 ITVR)の配信をOBS Cloudで行う。OBS Cloudは世界4カ国の14か所のデータセンター(内2か所は高性能施設)に実装された。これまではIBCに大量の配信サーバーを仮設で設置してMRHsに配信していが、この配信オペレーションが大幅に効率化され負担低減を可能にした。世界中で高速・大容量の光ファイバー網のインフラ基盤が整備されたことがクラウド化実現の大きな要因である。
さらにクラウド化することで、MRHsのニーズに応じて映像・音声信号フォーマットのコンバートが自由に行うことができる。
世界中のMRHsは、自国の放送拠点でHD、4KUHD、SD、デジタル・ストリームなどニーズに応じたフォーマットを選択しての国際映像信号を受け取ることができる。MRHsは、開催都市のIBCに大量の放送機材や要員を派遣しないで、自国の放送オペレーション拠点での作業が可能になる。
OBSとMRHs双方の利便性は増し、大幅な効率化や経費節減が可能になった。
 クラウド化に成功した鍵は、中国のIT企業、阿里巴巴集団(Alibaba Group)が提供する巨大なクラウドシステムである。Alibaba Groupは2017年に、国際オリンピック委員会(IOC)最高位スポンサー「TOP」となり、2028年まで3回の冬季・夏季五輪をIT分野でサポートすることになった。
 「TOP」スポンサーの立場を活かして、2018年9月、Alibaba とOBSはクラウド上で作動する革新的なブロードキャスティング・ソリューション、OBS Cloudを立ち上げることで合意、ライブ中継信号の配信、ストレージ、コンテンツの制作をクラウド上でスムーズに行うことを可能にした。
OBS Cloudには最先端の Intel® Xeon® スケーラブル プロセッサが実装され、IBCやMRHsの高速・大容量接続などオリンピックの厳しい要件を考慮したソリューションを提供する。
東京2020で部分的に導入され、Paris2024では初めて100%のCloud Broadcastingが実施される。
 高速・大容量の光ファイバー網が整備されていない発展途上国等に対しての国際映像の配信は、依然として衛星による配信に頼ることになる。

OBS/Alibaba OBS Cloudを立ち上げで合意 2018年9月 出典 IOC

SDIからIPへ SMPTE ST-2110準拠したIPインターフェース(Internet Protocol Interface)実装
OBSは東京2020大会からIBCのシステムをすべて放送コンテンツのIP送信標準規格、SMPTE ST-2110に準拠したIPインターフェース(Internet Protocol Interface)を実装してIPプロダクションを実現した。
 OBSは国際映像の制作に伴う映像・音声信号の処理や機器間の接続はすべてIP信号で行う。
 IPプロダクションの実現で、IBCシステムの機器や要員は大幅に簡素化された。
 4K/UHDの登場で、OBSが処理する信号フォーマットは、4K、HD、デジタル・サービスと多様化し、処理するデーター量も飛躍的に増加してIBCシステムの肥大化に拍車をかけている。また配信するコンテンツや時間数も飛躍的に増えて、従来のSDIのオペレーションでは機器や処理が膨大になり支障が出始めてきた。
 IP化すれば、映像・音声信号に加えて制御信号、同期信号などの情報も同時に伝送可能になり、放送機器やケーブルを省力化することが可能になる。またマルチ・チャンネル配信が可能になるのでケーブリングは大幅に省力化を実現できる。
 IPインタフェースの基盤を確立するの成功した鍵も、中国のIT企業、阿里巴巴集団(Alibaba Group)が提供する巨大なクラウドシステムでだ。
 IP化の実現で、東京2020ではIBCの「肥大化」抑制に歯止めがかかり、面積で約30%(2016リオデジャネイロ大会比)、放送設備で約21%(同)の削減に成功した。
 OBSのオペレーションはすべてIP化されて、IBCは「国際放送センター」から「国際データセンター」に変貌していった。

SMPTE ST 2110
 世界の放送技術の標準化を定めるSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers 米国映画テレビ技術者協会)は、2017年9月、IPライブプロダクション相互運用性を図るSMPTE ST 2110規格を承認した。
  ST 2110規格は、IPネットワークで伝送される多様な基本情報ストリームの運搬、同期、および記述をリアルタイムで指定する新しい企画標準で、ライブプロダクションから放送プレイアウトまで使用可能。従来のSDIをIPに置き換え、IPプロトコル(IP protocol)とインフラストラクチャーを活用する新たな放送オペレーションを可能にする。(8)
 ST 2110規格では、映像信号や音声信号、補助データ信号の3種類の信号を別々にパケット化して伝送することが可能になり、各信号間の同期が精確にとれる仕組みが加わる。そのため、キャプションや字幕、多様なテキスト情報、複数の言語音声の処理などのオペレーションが容易になった。
SDIからIPへ
 放送オペレーションでは、これまで、映像制作から伝送まで放送分野の独自規格、SDIで運用されてきた。しかし、映像の高精細化(HD/4K/8K化)にともなって、情報量が飛躍的に増え、HD(2K)の画素数は1920×1080px(pixel)、4Kでは3860×2160pxと4倍になり、8Kでは7680×4320pxとさらに4倍になる。
 画質を改善するために、画像走査方式はインターレース・スキャン方式から、プログレッシブ・スキャン方式に変わり、ビットレートは約倍になる。
 また動きの速い映像でも滑らかに表示できる高フレームレート化も進み、30pから60p、120pに向上し、色表現の画質に関わるビット深度(Bit Depth)も、8bitから10/12bitに高度化することで情報量は飛躍的に増加する。
 伝送容量は、SD(270Mbps)からHD/1080i(1.5GBps)、HD/60P(3Gbps)、4K/30P(6Gbps)、4K/60P(12Gbps)、8K/120P(144Bbps)と増大し、伝送性能が追い付かなくなった。
 これに対して、イーサーネットを利用したIP伝送では、2000年には10Gbpsだったが、光デジタルコヒーレント方式(coherent)が開発され2010年には100Gbps、現在では400Gbpsや600Gpsを実現し、800Gbpsの開発も進んでいる。
 SDIでは同軸ケーブル1本で、HD1チャンネルの映像伝送が基本だが、イーサーネットIP伝送では、伝送容量の拡大に伴って、光ケーブル1本でHD/1080iが60チャンネル、4K/30Pが15チャンネルが伝送可能で、映像・音声信号の他に、制御信号、同期信号、インカムなど中継オペレーションに関わるすべての信号の伝送が可能になる。
 SDIの機器間の接続は、機器間の同期をとるために外部同期信号が必要となるが、IP接続では、各機器は外部同期信号は不要で、スイッチングハブに接続するだけのシンプルな構成となり、機器やケーブルなどのシステムの簡素化が大幅に可能となった。
 さらに放送オペレーション上で重要なのは、SDI伝送では片方向通信で送信側と受信側が固定されるが、伝送は双方向通信で、リモート制作などの柔軟性の高いシステム構築が可能になる。

OBSの国際映像の配信
 OBSはすべての競技や開閉会式を含むイベントは4KUHD/HDRでライブ中継制作(開会式や一部の競技は8K制作も実施)を行い、4KUHD/HDRを中心に、HD、デジタル・フォーマットにダウンコンバートして配信する。配信サービスの中核は“VandA Package”と呼ばれ、SDIとIPでサービスする。
・UHD VandA Package(12G-SDI)  
映像:3840×2160 pixels 音声:5.4.1immersive audio BT2100-2/BT2020 ITU準拠
OBSの配信の中心になるUHD VandA Packageの信号フォーマットは4K UHD/HDR映像、immersive5.4.1 音声。81チャンネルの中継Feedと72チャンネルの素材Feedが行われる。
・HD VandA Package(SDI)(1.485G-SDI 50Hz/59.94Hz)
映像:1920×1080i 音声:5.4.1immersive audio or Stereo SMPTE292M準拠
 4K UHD をダウンコンバートしてHD映像もサービス、82チャンネルで配信される。音声はステレオsound。
・IP VandA Package
18Mbps/2.4Mbpsで動画配信。MCFサービスの主力配信チャンネル。
 デジタルプラットフォームやソーシャルメディアはIP VandA Packageを利用する。
・8Kライブ中継コンテンツ配信 8K 7680×4320 pixels
NHKはOBSと協力してセーヌ川開会式やコンコルド広場のアーバンスポーツ(ブレイキング、スケートボード、バスケットボール3×3、BMXフリースタイル)を8Kライブ中継。8KコンテンツはIBCで希望するMLHsに配
信される。

PoPs (Point of Presence)
OBSでは、IPデジタル配信を強化するために、世界中に5か所のアクセスポイント、PoPsを設置した。アクセスポイントはParis1&2, Frankfurt, Miami, Tokyoの5か所に設置される。放送用インターネット通信速度は100Gbps、Posの帯域幅は東京2020に比べて32%増加させ、広帯域、高速、低遅延、安定性などのコネクティビティを改善した。
 MRHsは、IBCで国際映像の分配と受けて自国に伝送するオペレーションを行わず、PoPSにアクセスして国際映像を安定的に受け取ることができ、IPリモートプロダクションも容易に行うことができる。

MDS(Multi-Distribution-Service Platform)
マルチチャンネル配信サービス(MDS)は、英語のコメントやグラフックスが入っている「完プロ」コンテンツを放送機関(RHBs)に配信するサービスで、13チャンネルが配信(12×Sorts Channel,1×Olympic News Channnel)される。MRHsはそのまま放送することが可能なコンテンツだ。ウオームアップエリアのアスリートの様子やミックスゾーンの選手インタビューも含まれる。衛星やCouldでサービスされる。
 フルターンキーソリューションのMDSは費用対効果が高く、MRHsの放送オペレーション・スタイルを一変させた。MRHsは大会開催地に送る機材や人員を最小限に抑えて、自局で放送オペレーションを行うことが可能になる。MDSを利用して、が開催都市のIBCに放送機器を設置せず、要員を派遣しないで五輪中継放送を実施するMRHsが急増している。
 東京2020でMDSに参加したMRHsは52(2012年ロンドンでは23)、198の国と地域でこの配信サービスを利用して五輪大会のライブ中継放送が行われた。MDSで配信されるコンテンツは、英語のコメント音声やグラフィック付きで、13チャンネル(12スポーツチャンネル+オリンピックニュースチャンネル)がサービスされた。

マルチチャンネル配信サービス(MDS)   出典 OBS

MCF(Multi-Clip-Feed)
 スロー映像素材、別線カメラ素材、b-roll素材(補足映像、風景、資料映像)Behind the scenes素材(選手団の競技場の到着、ウオームアップエリア、競技場の雰囲気等)、Mix Zoneインタビュー素材、ビューティカメラ素材、会見素材などをライブ配信する。中継番組やニュースで使用される放送機関向けの「素材フィード」である。
 Paris2024では28Feed、合計2350時間のMCFサービスが行われる。
 主要放送機関はMCFで配信される多様な映像素材を使用して独自の番組やニュースを制作する。

MCF(Multi-Clip-Feed)

Content+
 すべてのコンテンツは、クラウド・ベース(Coud-base portal)でMRHsにサービスする。競技ライブ中継素材やbihind-the-scenes素材、ショート・ストリー企画、ソーシャルメディア用素材などが配信される。

OVP(Olympic Video Player)
 オリンピックビデオプレーヤー(OVP)は、デジタルプラットフォーム、Websites、apps、Social Media向けの高度なマルチプラットフォームビデオプレーヤーである。
 すべての競技中継がHD画質でライブとオンデマンド配信が行われる。ハイライト素材もサービスされる。
 Rio 2016で夏季オリンピック大会では初めてサービスを開始した。
 OVPはユーザーが自由にカスタマイズ可能なホワイトラベルソリューションで映像素材を提供する。 MRHsはコンテンツをそのまま放送に使用することも可能で、独自のコンテンツや映像素材、ライブコメント、他のチャンネルなどを追加してサービスするかを自由に選択できる。
 Rio2016では14のMRHsがOVPプラットフォームをカスタマイズして放送に利用した。

Olympic News Channnel
 OBSがMix zoneのインタビュー素材、b-roll素材、Behind the scenes素材、競技のハイライト、アスリートや競技の企画ストーリー(コメント付き)をOBS Media Serverから配信し、MRHsはそれぞれのニュース・番組で使用する。


マクロン仏大統領とバッハIOC会長  出典 IOC Media
史上初のセーヌ川開会式は“夢”に終わるか 瀬戸際のピンチ
 今年4月、マクロン仏大統領は、安全上の脅威が生じた場合、開会式の会場をセーヌ川から、トロカデロ広場やスタッド・ド・フランスに変更する可能性があると述べ、「プランB」や「プランC」に初めて言及した。これまではセーヌ川の開会式を変更する可能性について触れなかった。
しかしウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻で戦闘が激化、モスクワ劇場銃撃事件を起こしたイスラム過激派組織「イスラム国」はフランスでも過去数カ月の間に複数のテロを計画していたことが明らかになったとして、全土の警戒レベルを最高に引き上げた。
 “華麗”と“安全”の狭間でフランスの苦悩は開会式まで続く。

出典 Paris2024


OBS Paris2024 出典 OBS








パリオリンピック 競技会場 完全ガイド  Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report

パリオリンピック選手村 Paris2024 サン・ドニ地区 建設費20億ユーロ 70%民間資金Media-closeup Report

Paris2024 セーヌ川浄化作戦 「泳げるセーヌ川」を取り戻す Media-closeup Report

パリオリンピック 国際放送センター(IBC) OBS 4K AI ル・ブルジェ・コンベンションセンター Media Close-up Report

パリオリンピック2024 Paris2024 開催経費 高額チケット批判 テロの脅威 警備費膨張 Media Close-up Report

2024年五輪開催都市 ロサンゼルス パリ 2024年オリンピック 招致レース 相次いだ撤退 リマIOC総会 Media Close-up Report



2024年6月10日
© 2024 IMSSR

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廣谷 徹  Hiroya Toru
国際メディアサービスシステム研究所(IMSSR)
代表
横浜市青葉区あざみ野3-1-7-101 〒225-0011
Tel   045-903-9685 Fax 045-903-9685
Mobile 080-5059-3261
e-mail thriya@r03.itscom.net imssr@a09.itscom.met
Media-closeup Report
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G7広島サミット 国際放送センター(IBC) 検証 岸田首相はリーダーシップを発揮できるか? 成果は?

2023年05月31日 11時43分03秒 | 国際放送センター(IBC)
G7広島サミット 国際放送センター(IBC) 
検証 岸田首相はリーダーシップを発揮できるか? 成果は? 政権の浮上は?


国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



内閣支持率46%に急上昇 G7で「指導力を発揮」60%

G7広島サミットの総括会見に臨む岸田首相 Source G7 HIROSHIMA2023
 岸田内閣の支持率は、46%と前回4月調査から8%も急上昇し、不支持率42%を始めて上回った(朝日新聞調査)。サミット効果が支持率を押し上げた。
 ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃訪問で、G7広島サミットの注目度は意気に上がり、岸田首相は「国際社会の結束を高める、歴史を刻むサミットになった」と意義を強調、自民党内では「首相のリーダーシップが評価されている」という声が広がり、「大成功だ」と自賛 焦点は衆院解散・総選挙に移った。

非核の道筋は示されず
 被爆地・広島での初の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発表、米英仏の核保有国を含むG7首脳が広島に集い、平和記念公園への訪問で「被爆の実相」に触れたうえで、広島から核軍縮を訴えた。
 核兵器削減の継続をうたった一方で、一方的な核軍縮を否定、核兵器の役割について「防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、戦争や威圧を防止する」として、自らの核抑止力維持の正当性を強調している。
 「核のリスク軽減」を強調したこれまでの宣言よりも、後退したとも思われる内容で終わったのは残念である。 
 一方、毎回サミットでは議論をリードして主役となる米国は、米債務上限問題を抱えたバイデン大統領が存在感を欠き、F16のウクライナ提供容認問題を除き、ほとんど発言が注目されることはなかった。米国が表に出ない異例の展開となった。

「公邸忘年会」報道 岸田首相、秘書官の長男更迭 「異次元の親ばか」の声も 
 5月29日、岸田文雄首相が、長男で政務秘書官を務める翔太郎氏の更迭に追い込まれた。翔太郎氏は昨年末に首相公邸で親族らと「忘年会」を開いて記念撮影をしていたことが報じられ、批判を浴びた。ようやく事実上の更迭、しかし判断は遅きに失した。
 G7広島サミット閉幕後、各社の世論調査では内閣支持率が急上昇したが、翔太郎氏の公邸「忘年会」問題で支持率は一気に急落、5月26日~28日に日本経済新聞が実施した世論調査では、「支持する」が5%急降下して47%、「支持しない」が4%上昇して44%となった。G7広島サミット効果は完全に帳消しとなった。

G7広島サミットは“ウクライナ・サミット” 主役の座を奪ったゼレンスキー大統領 対ロシアの結束で成果

G7広島サミット閉会後、国際会議場で会見するゼレンスキー大統領



ウクライナ特別セッション 以下 Source Zelensky Twitter

5月21日、午前11時前からウクライナのゼレンスキー大統領が参加して、「ウクライナ情勢」をテーマにした特別セッションが1時間近く行われた。

G7首脳との集合写真 Source Zelensky Twitter
米国がF16提供容認、欧州要望受け転換
 5月21日、米国バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と広島市内で会談した。米国は欧州からウクライナへの米F16戦闘機の提供を認める方針に転じ、今回のG7で欧州首脳に表明した。さらに米国は、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」用の弾薬や対戦車兵器、装甲車両など3億7500万ドル(約517億円)の軍事支援も発表し、バイデン氏はウクライナ支援を続ける姿勢を明らかにした。

Source Presudent Biden Twitter

ゼレンスキー大統領はG7首脳に熱烈な歓迎を受けた Source Ursula von der Leyen Twitter


岸田首相、ゼレンスキー大統領会談 Source G7 HIROSHIMA2023

ゼレンスキー大統領、平和記念公園の慰霊碑に Source G7 HIROSHIMA2023
ゼレンスキー大統領 G7で対ロ包囲網 積極攻勢
20日午後にフランスが提供した政府機で広島に到着したウクライナのゼレンスキー大統領は、イタリア・メローニ首相、英国・スナク首相、フランス・マクロン大統領、ドイツ・ショルツ首相、インド・モディ首相と相次いで精力的に会談、ウクライナへの支援を訴えた。今日は岸田首相と会談する。米国・バイデン大統領との会談があるかどう5月21日、午前11時前からウクライナのゼレンスキー大統領が参加して、「ウクライナ情勢」をテーマにした特別セッションが1時間近く行われた。かはいまのところ不明。ロシア。プーチン大統領を刺激するを警戒か。
ゼレンスキー大統領の“サプライズ登場”で、G7広島サミットはさながら“ウクライナ・サミット”となった。


英国・スナク首相と抱き合うゼレンスキー大統領 Source UK Prime Minister

英国・スナク首相と会談するゼレンスキー大統領 Source UK Prime Minister

フランス・マクロン大統領と会談するゼレンスキー大統領 フランスはゼレンスキー大統領の訪日にあたって政府専用機を提供した  Source Zelensky Twitter

インド・モディ首相と会談するゼレンスキー大統領 Source Zelensky Twitter


Source Zelensky Twitter
ゼレンスキー大統領、広島空港に到着…G7広島サミットに出席へ
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日午後、フランス政府の航空機で広島空港に到着した。
 今月14日にゼレンスキー大統領がパリを訪問した際、フランスのマクロン大統領にG7広島サミットに出席する意向を示し、航空機の手配を頼んだことがわかった。フランス外交筋が明らかにした。ゼレンスキー氏は、訪問先のサウジアラビア西部ジッダから、フランスの政府専用機で広島に20日午後到着した。
 フランス外交筋によると、今回の準備が始まったのは、ゼレンスキー氏が今月14日、G7サミットを前に、イタリアとドイツに続いてパリを訪問した時だった。ゼレンスキー氏とマクロン仏大統領は同日夜にフランス大統領府で夕食をともにしながら会談。この際に、ゼレンスキー氏が「G7に出席したい」と述べ、マクロン氏に航空機の手配を直接依頼したという。(以上朝日新聞)


G7首脳ファミリーフォト 広島グランドプリンスホテル 宇品島 Source G7Hiroshima2023


Source G7Hiroshima2023
G7首脳の原爆資料館視察 慰霊碑に献花
 G7広島サミット初日、G7首脳が、広島平和記念資料館(原爆資料館)を視察、G7首脳がそろって資料館を訪れるのは初めてだ。被爆者とも対話し、慰霊碑に献花も行った。原爆投下した米国の現職大統領であるバイデン氏や核保有国の英仏首脳への配慮から、具体的な視察の内容やどんな展示を見たかは非公表とされた。
資料館の視察は約40分にわって行われたが、原爆が投下され、爆発する様子を再現した模型展示など原爆の悲惨さが展示されている本館はまわらず東館だけにとどまった。さらにG7首脳の視察する様子の取材は認めず、館内のどこで、何を見たのか、詳細も公表しない。
 米国内では、原爆投下を正当化する意見が根強くあり、大統領選が来年に控えている中で、こうした意見に配慮せざるを得なかっただろう。
 また米英仏は核保有国、ロシアのプーチン大統領が核攻撃の威嚇を再三にわたってちらつかせている中で、核抑止力の存在を堅持する必要があり、核廃絶の発信には慎重にならざるをえない。
 G7首脳がそろって資料館を訪れるのは実現したが、なにかすっきりしない印象が色濃く残る。


3月21日、岸田首相、 ウクライナ電撃訪問 Source Ukraine Presidency Office
ゼレンスキー大統領が21日訪日へ
 ウクライナ政府で安全保障を担当する国家安全保障 ・国防会議のダニロフ書記は19日、現地の公共放送のインタビューに対し、ゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに対面で出席することを明らかにした。
 ダニロフ氏は、「非常に重要なことがサミットで決まる。ウクライナの利益を守るためにも、ゼレンスキー大統領が現地に行くことが重要だ」と述べ、サミットに出席する意義を強調した。
 政府関係者によると、20日に来日し、21日に開かれるウクライナ情勢を議題とするセッションに参加する方向とされている。
ゼレンスキー氏は訪日すればロシアによるウクライナ侵攻後、初めて。G7サミットではウクライナ情勢も主要議題の一つで支援強化を訴えるとみられる。岸田首相やバイデン米大統領との個別会談も調整する。(各紙、NHK)
 G7広島サミットは、“ウクライナ・サミット”になりそうな情勢となった。


Souce 首相官邸
5月18日、G7広島サミットの開幕を明日に控えて、岸田首相とバイデン大統領との日米首脳会談を市内のリーガロヤル広島で開催した。サミット前に日米間で事前のすり合わせを行ったと思われる。ウクライナのゼレンスキー大統領は21日に、特別セッションでオンラインで参加するとしているが、“サプライズの訪日”の可能性も一部に取りざたされている。


Bakhmut Source MilitaryLandnet
ウクライナ軍 東部要衝のバクムト戦線で反転攻勢 ロシア軍を撃退して一部の重要拠点を奪還
 ウクライナの反転攻勢が始まろうとしている。ウクライナ侵略戦争は重大な局面を迎えている。
 ドイツを訪問中のウクライナのゼレンスキー大統領は、「(反転攻勢)を非常に真剣準備している。ロシアは確実に実感することになる」と明言。ウクライナの反転攻勢の成否は欧米の兵器支援がカギとなる。米国に続いて、ドイツは兵器支援を倍増、イギリスは射程250km以上の長距離巡行ミサイル「ストーム・シャドウ」を提供、クリミア半島全域が攻撃可能に。イタリアも支援強化を表明。欧米が支援を約束した戦車などの兵器の98%がウクライナに到着したとされる。こうした中でG7はどんな表現でロシアに対して強固な声明を出すか。岸田首相の議長としてリーダーシンップが問われる。

Russian President Vladimir Putin Source Lapinou Twitter


岸田首相と尹錫悦大統領 出典 内閣広報室
日韓首脳会談 「シャトル外交」再開
5月7日、岸田首相は訪韓し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領とソウルの大統領府で首脳会談を行った。「シャトル外交」が再開された。焦点の徴用工問題では、岸田首相は「心が痛む思い」と述べ、「個人的な思い」として踏み込んだ発言をして韓国側に配慮した。「シャトル外交」は2012年に竹島問題や慰安婦問題で中断、12年ぶりに再開された。G7広島サミットを前に、日韓関係の改善を果たした岸田首相の外交手腕を高く評価したい。


権力の中枢、クレムリンに2機のドーン攻撃
 ロシアの「自作自演」の「偽旗作戦」か、ロシア国内のパルチザンの攻撃の可能性が強い。いずれにしてもロシアはこの攻撃を口実に、ウクライナに対する報復攻撃を宣言しておりウクライナ戦争は緊迫度を増す。5月10日はロシアの戦勝記念日、ロシア軍とワグネルは10日までに国民に戦果をアピールするためにバクムトの完全制圧を果たすとしており、ここ数日間の戦況は目を離せない。 
画像出典 MilitaryLandnet


衆参補選 自民「薄氷」の勝利 4勝一敗
 自民党幹部の評価は、辛勝でも「勝ちは勝ち」、とりわけ立憲民主には完勝したの大きい。岸田首相は「選挙の顔」として十分。維新の勢いは脅威だが、その勢いが増す前に解散総選挙に打って出る。野党共闘が整わない内に、早ければG7広島サミット後、通常国会会期末の6月末との見方も浮上。
画像 在留邦人スーダン退避の記者会見(4月24日) 出典 首相官邸


2023年3月21日、岸田首相はウクライナの首都キーウを電撃訪問、ゼレンスキー大統領と会談。各国首脳がいずれもキーウを訪問している中で、ようやくG7会合の議長としての「体面」を保つ 画像出典 Defense of Ukraine


ANNの世論調査(4月)で岸田内閣の支持率は先月より10.2ポイント上昇、45.3%に急上昇。 「支持しない」は34.6%。G7広島サミットの成果をアピールして、支持率低迷を脱してさらに支持率アップを果たし解散総選挙を狙うという岸田首相の目論見は果たせるか? 画像出典 首相官邸


G7サミット誘致、被爆地・広島は3回目の挑戦でようやく成功
 2021年11月30日、広島市は、悲願の被爆地で初となる主要7カ国首脳会議(G7サミット)の実現に向け、2023年サミットの誘致に名乗りを上げた。3度目の挑戦である。
 2021年9月、菅義偉前首相の任期満了に伴い自民党の総裁選挙が行われ、岸田文雄氏が対抗馬の高市早苗氏や河野太郎氏を破り、自民党総裁のポストを手中にした。首相に就任した岸田氏は、衆議院を解散、10月31日に行われた総選挙で「大勝」して岸田政権は信任された。
 そして、広島市は、2023年サミットの誘致に正式に名乗りを上げた。
 広島市は、これまでに2回、誘致に挑んだが、2000年は沖縄、2016年は伊勢志摩に敗れた。
 松井一実・広島市長は 「開催基準をおおむね満たしたと思っていたが、他都市に競り勝てなかった」として肩を落とす場面が続いた。
 今回が3回目の挑戦、近年の国際都市としての実績を強調し、16年のG7外相会合や米オバマ大統領の訪問、19年のローマ教皇の訪問などを例に出し、要人を受け入れる態勢が整っていることを強調、また湯崎英彦知事は被爆地で開催する意義を指摘。「核兵器保有国を含む首脳が集う。核廃絶への具体的な進展への新たな一歩を踏み出せる」として、誘致成功に自信満々の様子だった。
 G7サミットの開催地は、伝統的に時の首相の専決案件ととされている。
 広島が地元の岸田氏が首相に就任したことで、広島開催に一気に追い風が吹いて「本命」されることなった。
 広島県と市は12月中旬に、具体的な誘致計画などをまとめ、を外務省に提出した。ライバルはすでに誘致に名乗りを上げている福岡や名古屋である。

首脳会合場となる広島グランドプリンスホテル 瀬戸内海の小島、宇品島に立地し、本土とは一本の橋で結ばれる。警備には格好の条件。 画像出典 日本ホテル協会

国際メディアセンターの設置される広島県総合体育館、広島グリーンアリーナ 約5000人のメディアが参加する取材拠点 画像出典 広島グリーンアリーナ

筆者撮影

国際メディアセンターは約3500平方メートルのアリーナを占有して設置

開催地誘致に一番で名乗りを上げた名古屋
 G7サミット開催地に最初に名乗りを上げたのは名古屋市、2020年12月に市議会で意向を表明した。愛知県などと官民一体で誘致をめざす推進協議会が昨年12月9日に設立され、河村たかし市長が会長に就任した
 河村氏は「国際的知名度や都市ブランドが上がるための大きなチャンス。コロナ禍で落ち込んだ地域経済を復興させる起爆剤になる」と誘致のねらいを説明した。
 名古屋市の誘致計画案では、首脳会議の会場は熱田区の名古屋国際会議場、国内外の記者が集まる国際メディアセンターは港区の市国際展示場を想定している。
 名古屋市も2016年のG7サミット開催地にも応募したが、決まったのは三重県・伊勢志摩だった。2019年の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では愛知県が立候補したが大阪市に敗れた。
 しかし、名古屋市は県との連携に問題を抱えているという重大な欠陥を抱えている。愛知県の大村秀章知事は推進協の顧問に就いたものの、設立総会には出席しなかった。昨年、大村氏への解職請求(リコール)の署名活動を河村氏が支援するなど、両氏は激しく対立している。さらに2016年が隣県・三重だったため同じ東海地方での開催は難しいという見方が支配的である。

福岡 弱点の高級ホテル不足「克服」、リベンジには熱気
 福岡市、福岡県は、広島より早く2021年10月にG7サミットの誘致を表明した。高島宗一郎市長は「G20サミットを大阪に取られた悔しい思いが残っている。リベンジしたい」と述べた。2022年1月には首相官邸を訪れ、「アジアと世界をつなぐ日本の役割を国際社会に強くアピールできる」などと岸田首相に「誘致」を直談判した。
大阪、愛知と争った19年のG20サミットは当初、福岡市が最有力と目されたが、土壇場で大阪に苦杯を喫し、財務相・中央銀行総裁会議の開催にとどまった。
海外の要人が宿泊できる高級ホテルの不足がネックになったとされる。
 弱点解消に向けて福岡市が期待を寄せるのが、2023年春に開業する外資系高級ホテルのザ・リッツ・カールトンである。
 市は、ほかの高級ホテルと合わせて計3万2千室の確保を見込み、G7開催の要件は満たせるし、福岡空港から中心部まで車で約10分というアクセスの良さも要人警護の観点から強みだとアピールしている。
 誘致計画の詳細な内容は非公表だが、首脳会議の会場は、G20財務相・中央銀行総裁会議でも主会場だったホテル「ヒルトン福岡シーホーク」(中央区)、取材拠点のメディアセンターは隣接する「福岡ペイペイドーム」を想定しているという。

G7サミット2023、広島開催表明
 2022年5月23日、岸田文雄首相は2023年に日本で予定される主要7カ国首脳会議(G7サミット)について、被爆地で首相の地元の広島市で開催する方針を表明した。日米首脳会談でバイデン米大統領に伝え、支持を得たと会談後の共同会見で明らかにした。
 首相は会見で、「来年のG7サミットでは武力侵略も、核兵器による脅かしも、国際秩序の転覆の試みも断固として拒否するというG7の意思を歴史に残る重みをもって示したい」と強調。「広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はない」と述べた。
 日米首脳会談の場で、「広島開催」を明らかにしたのは、米国に対する配慮の現れである。米国内には、原爆投下は戦争終結を早めたとして、広島、長崎の原爆投下を肯定する意識が未だに根強く残る。こうした米国内の世論に配慮したものと見られる。G7伊勢志摩サミットの際に、オバマ大統領(当時)はサミット終了後、広島を訪問したが、政権内部でも異論を示す向きがあり、調整は難航したが、結局、オバマ大統領の英断で広島訪問が実現した。「広島」は米国にとっってはセンシティブな案件だ。
 松野博一官房長官は同日午後の会見で、広島開催について核保有国の英仏を含む全てのG7各国の支持を得たと明らかにした。首相は衆院広島1区の選出で「核兵器のない世界」をライフワークに掲げる。外相時代の16年には、G7外相会合を広島で開催し、当時のオバマ米大統領の広島訪問の実現にも尽力した。

日米首脳会談 2023年5月23日 出典 首相官邸

G7サミット、広島で2023年5月開催 「核兵器のない世界」がテーマに
 G7サミットの開催地や日程は、開催の前年のG7会合の席で、各国首脳に明らかにするのが慣例である。
 2022年6月、岸田文雄首相はドイツ・エルマウで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の閉幕後に記者会見を行い、次回の広島サミットを2023年5月19~21日に開催すると表明した。ウクライナに侵攻するロシアへの制裁強化のほか、インド太平洋地域でも中国を念頭に国際秩序の堅持に向けてG7の連携を進める考えを示した。
 首相はG7サミットの議論を振り返り、ウクライナ侵攻などによる物価高について「世界の平和秩序の枠組みに突きつけられた挑戦だ」と指摘。「国際社会と連携して、この困難を乗り越えていく決意を共有した」と述べた。
 広島を開催地としたことにについては、「G7首脳が広島の地から核兵器の惨禍を二度と起こさない、武力侵略は断固として拒否するとの力強いコミットメントを世界に示したい」とし、「核兵器のない世界」に向けた議論を主導するとした。
 岸田首相としては、広島を開催地に選んだ以上、「核廃絶」で指導力を発揮して、会合の成果をアピールしなければならない。しかし、プーチン大統領がウクライナ戦争を巡り核使用の可能性を唱えて頻繁に威嚇している中で、核抑止力の重要性がますます増し、G7各国首脳にも「核廃絶」に対する意識の変化も現れている。日本もアメリカの「核の傘」に頼っている以上、どこまで踏み込んだ「核廃絶」のアピールが出せるか、岸田首相は正念場を迎える。

G7エルマウ・サミット2022

G7首脳ファミリーフォト 背景はドイツ最高峰のツークシュピッツェ山(Zugspitze)の山並み ドイツとオーストリアの国境線にある 出典 G7-gipfel-elmau

G7首脳ファミリーフォト 出典 G7-gipfel-elmau

議長国ドイツのショルツ首相と岸田首相

G7サミットの数奇な「ジンクス」
 G7サミットと政権には、数奇な「ジンクス」があるとされてきた。
 2000年九州・沖縄サミットは、開催地を決めたのは小渕恵三首相(当時)、しかし小渕氏は開催直前の4月に脳梗塞を発症して辞任、5月に逝去した。代わって会合で議長を務めたのは森喜朗首相(当時)だった。森内閣は任期を通して内閣支持率は低く、とにかく人気がなかった。「神の国発言」など「失言」がたび重なり、支持率は急降下していった。そして「えひめ丸事故」の危機管理対応が批判され、2001年4月、辞任に追い込まれた。
 2008年北海道洞爺湖サミットでは、開催地を決めたのは安倍晋三首相(当時)、しかし安倍氏は2007年7月に参議院選挙で大敗、過半数を下回ってしまった。9月には体調が悪化して入院、そして首相を辞職した。代わって会合で議長を務めたのは福田康夫首相(当時)だった。福田政権は、「衆参のねじれ国会」の打撃を抱え、連立を組む公明党の軋轢が表面開始、党内に「福田おろし」が巻き起こりサミット直後の9月に退陣する。
 2016年伊勢志摩サミットでは、開催地を決めたのは再び安倍晋三氏、安倍氏は2012年9月の自民党総裁選で、石破茂氏を破り、自民党総裁の座に戻る。12月の総選挙で自民党は圧勝して、公明党と連立を組み政権に復帰して第二次安倍内内閣が発足した。
 安倍首相は二回目の挑戦で、宿願の伊勢志摩ミットの議長を務めた。
 第二次安倍政権は安定した長期政権となって2020年8月24日、首相の連続在職日数が2799日となり、それまで最長だっ佐藤栄作氏(2798日)を抜き歴代最長となった。
 政権は盤石かと思われ、安倍氏は東京五輪2020の成功を手中して、自民党総裁選での4選も視野に入れていたが、2020年8月、安倍氏は持病の潰瘍性大腸炎が再発したとして辞任を発表した。コロナ感染拡大で安倍氏が力を入れていた東京五輪は「1年延期」となったいた。翌年の2021年に開催された五輪の開会式に首相として参列したのは菅義偉首相(当時)だった。
 そして2023年、安倍氏は参議院選挙の応援演説中に凶弾に倒れ命を失う。
 2023年5月、G7広島サミットが開かれ、岸田文雄首相が議長を務める。サミット後の岸田氏には果たしてどんな運命が待ち構えているいるのだろうか。

議長会見に臨む安倍首相(当時) 背景は英虞湾 演出効果満点のローケーション 筆者撮影


アウトリーチ首脳 インド・韓国など8各国首脳 ゼレンスキー大統領はオンラインで参加
 G7広島サミットへの招待国は、G20(主要20カ国・地域)議長国のインドのほか、インドネシア、オーストラリア、韓国、クック諸島、コモロ、ブラジル、ベトナムの各国。
 韓国は、両国の最大の懸案だった徴用工問題をめぐり、韓国側が「解決策」を発表。日本側もこれを評価して4月16日に首脳会談が開かれた。関係改善が急速に進み、両国の首脳が互いに相手国を訪問する「シャトル外交」の再開でも合意し、G7で来日し関係改善にはずみがつくことが期待される。
 オーストラリアは「準同盟国とも言える存在」され、岸田首相は2022年10月にオーストラリアを訪問し、アルバニージー首相と2007年以来となる新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名。クアッド(日米豪印)メンバーの各国が広島にそろうことになる。
 インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)、クック諸島は太平洋諸島フォーラム(PIF)、コモロはアフリカ連合(AU)のそれぞれの議長国を務めている。ベトナムはASEANの主要国で高い経済成長を記録している。日本は途上国援助(ODA)などを通じて支援に力を入れている。
 中南米からはブラジルを招く。日本は、中南米諸国を「重要なパートナー」と位置づけて、関係を深めたいとしている。ブラジルは中ロを含む新興5カ国(BRICS)のメンバーでもあり、日米欧側に引き寄せたい狙いもある。
 国際機関は、国連、国際エネルギー機関(IEA)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)が参加する。


2016年伊勢志摩サミットの外相会合は広島で開催、一行は厳島を訪問。当時、岸田氏は外相でホストを務めた。 2023広島サミットでは、首脳会合の一部のセッションやフォトセッションなどの開催が計画されている。画像出典 外務省フォト


G7広島サミットの開催経費は?
 外務省は、G7広島サミットの開催経費として、2023年度、170億8000万円を計上、2022年度分の88億6000万円を合わせると約259億4000万円に上る。
伊勢志摩サミット(231億6千万円)と比べると12・0%(27億8千万円)増加した。都市部での開催などで経費が膨らんだとしている。
 また年々急増している警備費については、今年度、警察庁は120億8800万円を計上、これまでの累計で300億円程度されている。
 警備態勢については、2016年のG7伊勢志摩サミットの約2万3000人(全国応援1万5000人)、4年前のG20大阪サミットの約3万2000人(全国応援1万8000人)規模とされているが、昨年7月の安倍元首相の銃撃事件、そして4月15日に和歌山県の漁港で発生した岸田首相襲撃事件を受けて、警備体制はさらに強化されることが予想され、史上最高の4万人に規模に膨らむことが予想され、警備費はさらに増える懸念が大きい。
 さらに首脳会合場の広島グランドプリンスホテルは、瀬戸内海に面しているため海上警備も重要となる。海上保安庁は全国から巡視船を集め史上最大の警備体制をとるとしてその警備費も加えると約400億円近くに上る可能性がある。
 ちなみに伊勢志摩サミット2016の警備は約340億円、北海道洞爺湖サミット2008では約331億円。
 地元広島県が負担する開催経費もうなぎ昇り、広島県は約83億円の予算を計上した。2016年の伊勢志摩サミットで三重県が負担したとされる約94億円に迫る勢いである。県とは別に広島市も約30億1千万円を補正予算で計上、県と市を合算すれば100億円を優に超える。
 外務省、警察省、海上保安庁、広島県、広島市の経費を合計すると開催経費の総額は700~800億円程度になる可能性がある。
 伊勢志摩サミット2016は約600億円、北海道洞爺湖サミット2008では約606億円だった。今回はこれを上回るのは確実だろう。
 また近年、外務省は開催地の決定にあたり地元自治体の負担を求める姿勢を打ち出している。2000年の九州・沖縄サミット(G8)では沖縄県が約77億円を負担、2008年の北海道洞爺湖サミット(G8)では北海道が約22億2千万円を負担している。今回は、広島県と市は、約100億円の地元負担金を背負う。
 今回のサミットでは、警備費の増加だけでなく、宮島でセッションやイベントの開催や各国の関係者が平和記念公園を訪問する機会予想され、経費はさらに膨張する思われる。
 700~800億円を投じて開催されるG7広島サミット、国際社会に強固な日本のリーダーシップを示してしっかりとした成果を上げないと国民は納得しない。

G7広島サミットの経済効果 約924億円
 G7広島サミット開催による経済効果が約924億円に上るとの試算を、関西大の宮本勝浩名誉教授が20日発表した。
 理論経済学が専門の宮本教授は「大都市での開催で警備費がかさむほか、世界的インフレによる経費高騰も考慮して計算した」と説明。「経済効果を最大限発展させるには、サミット後の観光客誘致に一層の力を入れるなど、地域を継続的に盛り上げる方策が必要」と指摘する。
 試算では、国や自治体による開催費の支出や、増加が見込まれる観光客の消費拡大で、広島県内に約674億4千万円の直接的な経済効果があると算出した。
 ちなみに、2016年伊勢志摩サミットでは、三重県は直接的な経済効果として1070億円、「ポストサミット」の経済効果として1489億円と数字を明らかにしている。

会場運営業務 委託先はコングレ 五輪談合事件で電通「排除」
 2023年3月9日、外務省は、G7広島サミットの会場運営業務を、会議場運営企業のコングレ(東京)に決めた。これまで会場運営業務を受注してきた広告最大手の電通が東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件に関わり指名停止処分を受けたため選定作業を急遽やり直した。サミット開会まで70日、「突貫作業」を余儀なくされている。
 外務省によると、グランドプリンスホテル広島(南区)での主会場設営や会議運営などを委託する。2月24日付で契約した。現時点で金額は明らかにしていないが、2016年G7伊勢志摩サミットで電通が受注した会議運営費は12億円だったという。
 外務省はは2022年11月に委託先を選ぶ入札手続きを始めたが、「万全な実施体制を確保するため」との理由で翌月に中止した。電通が五輪談合事件で東京地検特捜部の強制捜査を受けた後、入札仕様を変えたという。電通は伊勢志摩サミットのほか、大阪市で19年にあった20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の会議運営も担っていた。
 再入札を告示したのは2023年1月で、ようなく委託先が決まった。コングレは伊勢志摩サミットでも一部関連業務を担っており、外務省G7広島サミット事務局は「業務遂行に十分な能力がある」としている。

伊勢志摩サミット わずか3日間のために28億5000万円かえてIMCアネックスと建設 「無駄遣い」の批判を浴びる
 G7サミットでは、「無駄遣い」とも思われる支出が横行する懸念が毎回つきまとう。
 2016年伊勢志摩サミットでは、外務省はIMCが設置されたメインアリーナに隣接する駐車場に、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの“アネックス”を仮設で建設した。日本の先端技術や伝統文化を発信するのがその目的である。建設工事は鴻池組が受注し総工費は28億5000万円、サミット開催の4日前に駆け込みで完成した。開催後は3億円の解体費用をかけて取り壊す予定である。
 アネックスには、日本庭園や政府広報展示、三重情報館、屋外展示場を設けた。
政府広報展示については、「医療・保健」コーナーでは介護ロボット・HONDAの歩行アシストやヒト型ロボット、「インフラ・交通」コーナーでは三菱リージョナルジェット、超電導リニア、新幹線E7系、「環境・エネルギー」では温室効果ガス観測技術衛星、エネループ(ソーラーストレージ装置)など、「復興・防災」では、地震観測システムや東日本大震災の現状や復興、「宇宙・深海」では、深海探査用ドローン・ほばりん、H3ロケット、8Kスーパーハイビジョンなどを展示した。
また屋外展示場では、TOYOTAやHONDAの水素自動車や電気自動車が展示されれ試乗も行われた。
サンアリーナから首脳会合場の志摩観光ホテル(賢島)までの距離は約二十キロ。三重県は日本の環境技術を各国にアピールしようと、報道関係者らの送迎にハイブリッド・バスを利用した。
 またプレス用レストランでは、地元の海産物や伊勢うどん、地酒などの「美しの国」、三重県をアピールする料理をずらりと並べて国内外のメディア担当者に地元グルメをアピールした。プレス用レストランで提供するメニューの8割以上が三重県産食材を使用したという。
 IMCアネックス(付属棟)が利用されたのはわずか3日間、延べ8000人のメディア関係者などが訪れたが、一般市民には解放されなかった。 
 G7サミット終了後、市民からわずか3日のために28億5000万円かけて建設し、取り壊すのは“無駄遣い”の象徴だと批判が高まり、三重県と外務省では、10日間程度、地元の小学生や一市民に公開をし、11月上旬、予定通り壊された。
 28億5000万円かけて、IMCアネックスを建設する必要が本当にあったのか、しっかりと検証して今回の広島サミットを開催するにあたって教訓にしてほしい。

新設されたIBC・アネックス G7首脳会合の3日間だけのために28億5000万円をかけて新設 閉幕後解体、解体費3億円 筆者撮影

新設されたIBC・アネックス 筆者撮影

展示フロア 筆者撮影


国際放送センター(IBC)と国際放送センター(IMC)
■ 国際メディアセンター((IMC:International Media Centre)とは何か?
 国際メディアセンター(IMC)は、新聞・放送・通信社・雑誌・インターネットなどすべての報道関係者の取材・編集・送出拠点である。
 放送機関等が使用する国際放送センター(IBC  International Broadcasting Center)が通常、同一の建物内に整備される。オリンピックやFIFAワールドカップなどではIBCの利用は高額の放送権料を支払って権利を取得しているRHBs(Right Holder Broasdcastings)に限定されている。IBCエリアは完全に分離されて、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが可能となる。
 これに対してG7サミットなどの国際会議では、放送機関、新聞、通信社、ウエッブメディアなどすべてのメディアがIBCの機能を利用でき、ホスト映像・音声の配信を無償で受けることが可能。
 国際放送センター(IBC)が、放送関係者用の施設であるのに対し、国際メディアセンター(IMC)は、幅広いメディア関係者の施設の総称である。
 国際メディアセンターに参加するプレスは、最も大規模な国際会議であるG7サミットの場合、邦人プレス3000人、海外プレス1000人、合わせて4000人程度)とされている。議長会見場1か所と各国首脳会見場(米国は除く)5か所程度が設置され、英、仏、独、伊の同時通訳が準備される。国際メディアセンターの延べ床面積は約1万平方メートル程度が必要となる。
 米国の主要放送局(ABC、CBS、NBC、CNN、FOX)は、大統領が出席する国際会議にあたっては“US Pool”を組み、ホスト国が準備する国際メディアセンターには参加せず、独自に別個、“US Pool”専用のプレスセンターを設立し、取材・編集・送出拠点とする。米国大統領の会見も国際メディアセンターの首脳会見場では行わず、別途、“US Pool”専用会見場で行われ、映像・音声は“US Pool”が管理する。
 “US Pool”が管理する映像・音声を世界各国の放送機関が利用する場合は、ABC、CBS、NBC、CNN、FOXのいずれかに提供としてもらう必要がある。たとえばNHKはABCから映像・音声の提供を受ける。
 既設の建造物で、国際メディアセンター(IMC)の十分なスペースが確保できて利用可能な場所が確保できない場合には、仮設で新たに建設する場合もある。
 北海道洞爺湖サミットでは、洞爺湖町のリゾート施設の駐車場に建設した。総床面積1万1000平方メートル、プレスセンター棟とサミット議長・各国首脳会見棟からなる仮設の建物で、総工費は28億2000万円、サミット開催後は取り壊された。
 伊勢志摩サミットでは、既存施設の三重県立サンアリーナに設置された。

G7北海道洞爺湖サミット IMC ルスツ・リゾート(洞爺湖町)2008年7月 筆者撮影

伊勢志摩サミット 国際メディアセンター 三重県立サンアリーナ 筆者撮影

国際放送メディアセンター内部 三重県営サンアリーナ 筆者撮影

■ 国際放送センター(IBC:International Broadcasting Centre)とは何か?
 国際放送センター(IBC)は、オリンピックやFIFAワールドカップ、世界陸上などの国際スポーツ競技大会やG7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議の開催時に設置される放送サービス・システム。
 IBCには、会議場や競技会場、イベント会場からのライブ中継映像・音声やENG取材映像が集められ、世界各国の放送機関等に配信される。IBC内には、IBCの“心臓部”であるマスター・コントロール・ルーム(MCR:Master Control Room)が設置され、各ベニューからライブで伝送されてくる映像・音声信号の調整・配信・録画などを行う。また世界各国の放送機関等の専用ブースや特設スタジオが設置され、全世界に向けて、会議や競技、イベントの中継映像・音声や記者リポート、ニュース素材等が発信される。最初に本格的な国際放送センターが設けられたのは1964年東京オリンピック大会で、現在のNHK放送センターにIBCが設置され、世界各国の放送機関等に映像・音声が配信され、放送を通して視聴者に届けられた。
 国際メディアセンター(IMC)と共用で、各種の会見が頻繁に行わる多言語同通サービス付きの複数の会見場やプレスデスク、レストランや銀行、郵便局、各ベニューへのシャトルバス・サービスなどが整備される。
 オリンピックやFIFAワールドカップ、国際陸上などで大規模なスポーツ・イベントで設置されるIBCは、高額の放送権料を支払い放送権を獲得したライツホルダー(RHBs)しか参加できない。競技映像・音声の権利は厳密に管理されRHBsのみが利用可能である。
 これに対して、G7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議では、主催者が発行するアクレディを取得すれば、新聞社、通信社、放送機関などすべてのメディアが、すべて無償でホスト映像・音声の取得が可能である。
 国際放送センター(IBC)の設置は、国際メディアセンター(IMC)[以下参照] と同じ建物内に設置されることが多いが、ホスト映像・音声の利用がRHBsに限定されているオリンピックやFIFAワールドカップなどでは、IBCエリアを完全に分離して、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが限定される。
 一方、国際会議では、IBCエリアとプレスエリアは、同一エリアに整備されて分離はされず、すべてのプレス関係者の取材拠点となる。

東京オリンピック・パラリンピック大会のメディア施設(MPC/IBC)は東京ビックサイトに設営された。向かって左側がIBCエリア、右側がMPCエリア。オリンピックの場合、国際メディアセンター(IMC)と呼ばず、メインプレスセンター(MPC)と呼ぶ。機能的には同質の施設である。世界で最大規模のIBC/MPCを設置するのはオリンピック。筆者撮影

FIFAワールドカップQatar2022 では、ドーハ市内のWEST BAY地区にある世界最大級の展示場を有するドーハ見本市・会議場(Doha Exhibition and Convention Center)にIBC/MPCが設置された。 オリンピックに次ぐ規模である。出典 Qatar2022

■ ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)
 国際放送センター(IBC)を設置・運営する担当者をホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)と呼ぶ。ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)は、会議やイベントの主催者から指名され、国際放送センター(IBC)の設置準備、システムの設計、機材の準備、設営、運用を担い、ホスト映像(国際映像)の制作・配信を、全責任を持って対応する。さらに首脳会議場やフォトセッション、関連イベント、記者会見などについては、中継車や機材を配置し、ライブで映像・音声を中継して、IBCに伝送する。またENGクルーを複数、配置して各種の関連イベントなどを撮影しIBCに送り込む。
 国際会議の場合は、国営放送がある国では、国営放送がホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)の指名を受けることが多い。日本では、サミットやAPECなどの大型国際会議では、これまでは、外務省の要請を受けて、NHKが担当していた。
G7広島サミットでは、外務省が公募(随意契約)を行い、NHKをホスト・ブロードキャスターとして指名した。契約金額は約6億5000万円程度。
これに対して、COP10名古屋やIMF・世銀総会では、競争入札でホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)が決まった。欧州ではEBU(欧州放送連合)が指名される場合が多い。一方、米国や東南アジア、オセアニア等では、競争入札が行われ、落札した企業が担当するが、必ずしも放送事業者とは限らず、民間のメディア企業がIBC設営・運用業務を担うことが多い。
 スポーツ・イベントの場合は、主催者からイベントの放送権を独占取得した場合には、その放送事業者やメディア企業がホスト・ブロードキャスターとなる。ホスト・ブロードキャスターは、放送権を、世界各国の放送事業者やメディア企業に譲渡してビジネスにする。
 オリンピックのホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)はオリンピック放送機構(OBS)、FIFAワールドカップはホスト・ブロードキャステヒング・サービス(HBS)が独占的に担当している。

■ G7広島サミットのIBCシステムは一世代前の旧態依然としたシステム
 オリンピックやFIFAワールドカップなどのホスト映像は、4K高精細映像で制作・配信するのがデフォルトとなっている。これに対し、G7広島では、一世代前のHD画質対応、4K8K高精細映像の取り組みが一切ない。世界最先端を自負する日本の映像技術をG7各国のメディアに示す格好の機会なのに、その意気込みがまったく感じられない。
 総務省は、2018年12月、世界に先駆けて4K8K衛星放送を立ち上げ、4K8Kの普及拡大に国を挙げて邁進している。 4K8Kテレビの普及は1500万台を超え、順調に推移している。こうした中で、4K映像の取り組みを行わないのはお余りにも粗末である。
 NHKは、膨大な予算を投じて、8K高精細映像の制作・編集設備を構築した。財源は受信料。これまでオリンピックやFIFAワールドカップ、ビックイベントで8Kパブリックビューイングを実施して視聴者に還元してきた。
 G7各国の首脳やメディアが集まる場で、8K映像の威力を示すパブリックビューイングなど実施するのがNHKの責務だろう。
 それにしても、NHKは受信料値下げやBS放送の1波削減に奔走して、8Kサービスへの取り組みは完全に放棄しているように見える。
 このままの状態では、NHKは受信料の「無駄遣い」と非難されてもいたしかたない。



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2023年4月20日
Copyright (C) 2021 IMSSR

******************************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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伊勢志摩サミット 国際放送センター(IBC) 国際メディアセンター(IMC)

2023年04月24日 21時20分03秒 | 国際放送センター(IBC)
伊勢志摩サミット 国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム 徹底検証



伊勢志摩サミット 国際メディアセンター 三重県立サンアリーナ 筆者撮影


首脳会合ワーキングセッション 出典 外務省フォト


英虞湾を望むG7首脳  出典 外務省フォト 


安倍首相議長会見   出典 外務省フォト


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国際放送センター(IBC)と国際メディアセンター(IMC)
■ 国際放送センター(IBC:International Broadcasting Centre)とは何か?
 国際放送センター(IBC)は、オリンピックやFIFAワールドカップ、世界陸上などの国際スポーツ競技大会やG7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議の開催時に設置される放送サービス・システム。
 IBCには、会議場や競技会場、イベント会場からのライブ中継映像・音声やENG取材映像が集められ、世界各国の放送機関等に配信される。IBC内には、IBCの“心臓部”であるマスター・コントロール・ルーム(MCR:Master Control Room)が設置され、各ベニューからライブで伝送されてくる映像・音声信号の調整・配信・録画などを行う。また世界各国の放送機関等の専用ブースや特設スタジオが設置され、全世界に向けて、会議や競技、イベントの中継映像・音声や記者リポート、ニュース素材等が発信される。最初に本格的な国際放送センターが設けられたのは1964年東京オリンピック大会で、現在のNHK放送センターにIBCが設置され、世界各国の放送機関等に映像・音声が配信され、放送を通して視聴者に届けられた。
 国際メディアセンター(IMC)と共用で、各種の会見が頻繁に行わる多言語同通サービス付きの複数の会見場やプレスデスク、レストランや銀行、郵便局、各ベニューへのシャトルバス・サービスなどが整備される。
 オリンピックやFIFAワールドカップ、国際陸上などで大規模なスポーツ・イベントで設置されるIBCは、高額の放送権料を支払い放送権を獲得したライツホルダー(RHBs)しか参加できない。競技映像・音声の権利は厳密に管理されRHBsのみが利用可能である。
 これに対して、G7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議では、主催者が発行するアクレディを取得すれば、新聞社、通信社、放送機関などすべてのメディアが、すべて無償でホスト映像・音声の取得が可能である。
 国際放送センター(IBC)の設置は、国際メディアセンター(IMC)[以下参照] と同じ建物内に設置されることが多いが、ホスト映像・音声の利用がRHBsに限定されているオリンピックやFIFAワールドカップなどでは、IBCエリアを完全に分離して、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが限定される。
 一方、国際会議では、IBCエリアとプレスエリアは、同一エリアに整備されて分離はされず、すべてのプレス関係者の取材拠点となる。


東京オリンピック・パラリンピック大会のメディア施設(MPC/IBC)は東京ビックサイトに設営された。向かって左側がIBCエリア、右側がMPCエリア。オリンピックの場合、国際メディアセンター(IMC)と呼ばず、メインプレスセンター(MPC)と呼ぶ。機能的には同質の施設である。世界で最大規模のIBC/MPCを設置するのはオリンピック。筆者撮影

FIFAワールドカップQatar2022 では、ドーハ市内のWEST BAY地区にある世界最大級の展示場を有するドーハ見本市・会議場(Doha Exhibition and Convention Center)にIBC/MPCが設置された。 オリンピックに次ぐ規模である。出典 Qatar2022


■ 国際メディアセンター(IMC:International Media Centre)とは何か?
 国際メディアセンター(IMC)は、新聞・放送・通信社・雑誌・インターネットなどすべての報道関係者の取材・編集・送出拠点である。放送機関等が使用する国際放送センター(IBC  International Broadcasting Center)も同じ建物内に整備される。IBCはホスト映像・音声の利用がRHBsに限定されているオリンピックやFIFAワールドカップなどでは、IBCエリアを完全に分離して、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが限定される。国際放送センター(IBC)が、放送関係者用の施設であるのに対し、国際メディアセンター(IMC)は、幅広いメディア関係者の施設の総称である。
 国際メディアセンターに参加するプレスは、最も大規模な国際会議であるG7サミットの場合、邦人プレス3000人、海外プレス1000人、合わせて4000人程度)とされている。議長会見場1か所と各国首脳会見場5か所程度が設置される(米国は除く)。国際メディアセンターの延べ床面積は約1万平方メートル程度が必要となる。
 米国の主要放送局(ABC、CBS、NBC、CNN、FOX)は、大統領が出席する国際会議にあたっては“US Pool”を組み、ホスト国が準備する国際メディアセンターには入らず、独自に別個、“US Pool”専用のプレスセンターを設立し、取材・編集・送出拠点とする。米国大統領の会見も国際メディアセンターの首脳会見場では行わず、別途、設置して、映像・音声は“US Pool”が管理する。
 “US Pool”が管理する映像・音声を世界各国の放送機関が利用する場合は、ABC、CBS、NBC、CNN、FOXのいずれかに提供としてもらう必要がある。たとえばNHKはABCから映像・音声の提供を受ける。
 既設の建造物で、国際メディアセンター(IMC)の十分なスペースが確保できて利用可能な場所が確保できない場合には、仮設で新たに建設する場合もある。
 北海道洞爺湖サミットでは、洞爺湖町のリゾート施設の駐車場に建設した。総床面積1万1000平方メートル、プレスセンター棟とサミット議長・各国首脳会見棟からなる仮設の建物で、総工費は28億2000万円、サミット開催後は取り壊された。
 伊勢志摩サミットでは、既存施設の三重県立サンアリーナに設置された。


G7北海道洞爺湖サミット IMC ルスツ・リゾート(洞爺湖町)2008年7月 筆者撮影

G7エルマウサミット2022のIMC 大型テントなどを利用して仮設で市内の駐車場に設営 出典 tagessuau


■ IBC/IMCのセキュリティ管理  アクレディ管理(Accreditation Management)
 国際放送センター(IBC)や国際メディアセンター(IMC)で取材、制作、編集活動を行う放送機関等は、業務に従事するスタッフ一人一人、全員が、主催者が管理するアクレディの登録が義務付けられる。アクレディの申請には、住所、氏名、生年月日、パスポート番号などの個人情報や、所属するメディアや団体の情報が必要となる。またフリーのジャーナリスト等については、ジャーナリストとしての実績の提示が求められる。申請されたIDは、主催者によって審査され、審査をパスすれば、ID識別票が発行される。
 IBC/IMCは、世界各国のメディアに対し、取材、制作、編集活動の便宜サービスを与える場であり、ID審査は、通常、かなり厳密に行われる。
 とりわけ国際会議の場合、各国の首脳や閣僚、要人が多数集まるため、厳しいセキュリティ管理が求められる。


■ Host(主催者)/Host Country (主催国)
 国際会議や国際スポーツ競技大会の開催にあたっては、主催者(Host)がイベント全体を運営・管理する。
Host Country(主催国)は、IBC業務を担うHost Broadcasterを指名する。
 大規模な国際会議の主催者(Host)は、開催国(国)が担う。開催にあたっての運営業務は、サミットやAPECは外務省、IMF世銀総会は財務省、COPは環境省といったように所管省庁が行う。サミットやAPECのように“持ち回り”で開催される国際会議はほとんどがホスト国が会議運営の実権を握る。一方で、COPのような国連関連機関の国際会議を日本で開催するときは、会議開催の主催者は国連機関であり、日本はホスト国として会議開責任機関(事務局)となり、主催者の意向を踏まえながら、協力して会議の運営にあたる。MF世銀総会も同様で、IMF・世銀が主催者であり、会議運営の基本的な要件は決定権を持つ。しかし、会議場の設営等のロジスティックスのほとんどの実務は、ホスト国が担当することになる。会議開催に係る経費は、IMCやIBCも含めて、原則として国(各省庁)が負担する。但し、IMF世銀総会などは主催国が一部、経費を負担することがある。
 会議の開催準備を開始するにあたって、最初に、主催者とホスト国との間で、それぞれの責任範囲や経費負担について、契約書や確認書を交わすことが多い。その後、主催者の国際機関は、ホスト国に対し、詳細な記述が記載された“会議設営・運営基準(マニュアル)”を示し、ホスト国は、それに基づいて準備をしなければならない。IBC/IMCの設営・運用に関する記述も詳細に記されている場合が多い。
 国際スポーツ競技大会の場合は、“組織委員会”や競技連盟が主催者(Host)となる。オリンピックは、国際オリンピック委員会(IOC:International Olympic Committee)、FIFAワールドカップは、国際サッカー連盟(FIFA:Fédération Internationale de Football Association)、世界陸上競技選手権大会は、国際陸上競技連盟(IAAF:International Association of Athletics Federations)、ISUワールドカップ(スピード・スケート)やISUグランプリシリーズ(フィギア・スケート)は国際スケート連盟(ISU:International Skating Union)、アジア競技大会はアジアオリンピック評議会(OCA:Olympic Council of Asia)が主催者(Host)である。[注1] 

[注1] オリンピックやアジア大会などでは、国際オリンピック委員会(IOC)やアジアオリンピック評議会(OCA)の管理の下で、大会の準備・運営組織として、各都市組織員会(OCOGC)が設立される。


■ ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)
 国際放送センター(IBC)を設置・運営する担当者をホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)と呼ぶ。ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)は、会議やイベントの主催者から指名され、国際放送センター(IBC)の設置準備、システムの設計、機材の準備、設営、運用を担い、ホスト映像(国際映像)の制作・配信を、全責任を持って対応する。さらに首脳会議場やフォトセッション、関連イベント、記者会見などについては、中継車や機材を配置し、ライブで映像・音声を中継して、IBCに伝送する。またENGクルーを複数、配置して各種の関連イベントなどを撮影しIBCに送り込む。
 国際会議の場合は、国営放送がある国では、国営放送がホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)の指名を受けることが多い。日本では、サミットやAPECなどの大型国際会議では、これまでは、外務省の要請を受けて、NHKが担当していた。これに対して、COP10名古屋やIMF・世銀総会では、競争入札でホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)が決まった。欧州ではEBU(欧州放送連合)が指名される場合が多い。一方、米国や東南アジア、オセアニア等では、競争入札が行われ、落札した企業が担当するが、必ずしも放送事業者とは限らず、民間のメディア企業がIBC設営・運用業務を担うことが多い。
 スポーツ・イベントの場合は、主催者からイベントの放送権を独占取得した場合には、その放送事業者やメディア企業がホスト・ブロードキャスターとなる。ホスト・ブロードキャスターは、放送権を、世界各国の放送事業者やメディア企業に譲渡してビジネスにする。
 オリンピックのホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)はオリンピック放送機構(OBS)、FIFAワールドカップはホスト・ブロードキャステヒング・サービス(HBS)が独占的に担当している。

* オリンピック放送機構(OBS:Olympic Broadcasting Services)とは、国際オリンピック委員会(IOC)によって2001年5月に設立されたオリンピックとパラリンピックの独占的なホストブロードキャスターである。この機関が発足する以前、ホストブロードキャスターの業務は、各大会の組織委員会または第三者の放送局に委託されていた。OBSは、夏季・冬季の各大会ごとに設けられる国際放送センター(IBC)の設営し、各競技場に中継車を配備して映像・音声信号制作を行い、オピック放送の国際信号を制作して、世界各国の放送権を獲得した放送事業者((RHBs)に向けて配信する。


国際放送メディアセンター(三重県営サンアリーナ) 以下筆者撮影  

伊勢志摩サミット 国際メディアセンター(IMC)は三重県営サンアリーナに設置
  2015年9月8日、外務省は、伊勢志摩サミットの国際メディアセンター(IMC)を、伊勢市朝熊町の県営サンアリーナに設置すると発表した。
 サンアリーナは延床面積約2万4000平方メートルの三階建て施設。延床面積約1万4000平方メートルのメインアリーナと約4900平方メートルのサブアリーナやトレーニングルーム、会議室などの施設が整備されている。
 この他に隣接する駐車場に、IMCのアネックス(付属棟)、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの仮設増設棟を建設した。外観は伊勢の街並みの黒壁など、地元の伝統的なデザインを取り入れ、木の丸柱に囲まれた通路などを設置し、「和」を感じさせる建物で、事業費は約28億5000億円。 日本の先端技術、伝統文化を発信する展示スペースや、メディア用の食事の提供スペースも設けた。このアネックスはサミット終了後、数日間一般公開をした後、約3億円かけて取り壊される予定である。
 国際メディアセンター(IMC)は、世界各国から訪れる新聞、雑誌、通信社、そして放送機関などのメディアの取材・編集拠点、約4000人のメディアの参加を見込んでいる。国際メディアセンター(IMC)には、専用ワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース(約1020席 2個所)や共用ブリーフィング・ルーム(2か所)、インフォーメーション&ITヘルプデスク、IMCシャトルバス・インフォーメーション、外務省報道官室(外務省事務局)(アネックス)、展示スペース(アネックス)、プレス用レストラン(アネックス)、そして放送機関用の国際放送センター(IBC)が設置される。施設内には、CCTV(館内共聴テレビ)で、G7サミットの様子やイベント・スケジュール、各種案内が放送され、高速のWifi環境も整備された。
 国際放送センター(IBC)は、世界各国の放送機関向けに設置される施設で、首脳会合や議長会見、各国首脳会会見、関連イベントなどの映像・音声のホスト信号が配信される。映像・音声信号を調整、監視、分配するマスター・コントロール・ルーム、IBCブッキング・オフイス、共用編集室、音声ルーム、IP伝送サービスコーナーなどが設置される。  また各放送機関専用のワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース、記者リポポジションも整備された。映像・音声メディア機関の拠点が国際メディアセンター(IBC)である。
 国際放送センター(IBC)の施設は、サンアリーナだけなく、賢島内にある賢島宝生苑にサブメディアセンター1(SMC1)と議長国首脳会見場、志摩市の伊勢志摩ロイヤルホテルにサブメディアセンター2(SMC2)(各国首脳会見場)が設置された。
  SMC1は、賢島内で取材活動をするメディアの拠点で、志摩観光ホテル・クラシックや志摩観光ホテル・ベイスイートで行われたG7首脳会合やワーキング・デイナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合などのENG取材映像(代表取材)の伝送ポイントが設営されと共に、賢島内で取材活動を行う記者やカメラマンの待機場所となった。ENG伝送については、Japanプールは10回、米国プールは3回、ドイツプールは2回、EUは1回の伝送を行った。また、サミットの総括を行う議長国首脳会見場も設置された。
SMC2には、各国首脳会見場、3カ所が伊勢志摩ロイヤルホテル内に整備された。
国際放送センター(IBC)の設置・運営業務やホストブロードキャスター業務は、請負事業者を公募したが応募したのがNHKだけだった。NHKは、外務省と随意契約協議を行い、約7億3400万円で外務省から業務を受託した。

伊勢志摩サミットの映像・音声サービス

 ホスト・ブロードキャスターの中継ポイントは、G7首脳会合やワーキング・ディナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合などが行われる志摩観光ホテル・クラシックや志摩観光ホテル・ベイスイート、賢島宝生苑(SMC1、議長国会見場)、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)、各国首脳が到着する中部国際空港、伊勢神宮である。合計で中継車を4台、中継カメラ台数37台を使用した。
 志摩観光ホテルでは、中継車1台、カメラ15台、1行事当たり1台から3台を配置、賢島宝生苑では、中継車1台、カメラ3台(議長国会見場)、音声はオリジナル、同通(英・日・仏・独・伊)、伊勢志摩ロイヤルホテルでは、キャリイング・システムを使用し、カメラは1会見場当たり1台、3会見場に配置した。伊勢神宮では五十鈴橋、参道、記念植樹、本宮前など9台のカメラを配置、カメラ・ケーブルの総延長は6.5kmに及んだ。中継を担当したのはホストブロードキャスターのNHK、「行く年くる年」での中継実績が活かされた。
 記者リポポイントは、サンアリーナ(IBC)内に15枠、1枠はカメラ・音声・照明機器、ブッキング・オフイスまでの回線付、2枠はブッキング・オフイスまでの回線付、残りの12枠はスペースのみの設置とした。
また、志摩地球海村にも記者リポポイント(共用)、1枠が設置され、SNG車を配置した。
映像・音声伝送スキームは、外務省が「映像伝送回線」として調達したNTT西日本のメガリンク(40Mbps)を使用した。 回線は異なるルートで二重化、セキュリティを確保して、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)、賢島宝生苑(SMC1、議長国会見場)、中部国際空港からサンアリーナ(IBC)へHD(2K)の非圧縮で伝送した。 一方、ホストブロードキャスターは、賢島宝生苑(SMC1、ENG伝送)、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)、志摩地球海村(記者リポポイント)とサンアリーナ(IBC)間は合計15回線の光回線を設置し、中継やENG取材のホスト映像・音声信号や各社が取材するユニー映像・音声の伝送サービスが行われた。
 さらにSNG3台を配置し、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)や伊勢神宮(中継終了後、伊勢志摩ロイヤルホテルに移動)、志摩地球海村(記者リポポイント)からSNG伝送を実施した。この内、伊勢志摩ロイヤルホテルに配置したSNG車は2ch伝送が可能なSNG車を配置した。
 G7サミットの公式行事ではないが、今回、伊勢志摩ロイヤルホテル内で、G7サミットの前日に安倍首相とオバマ米大統領の二国間の首脳会談が行われ、日米共同記者発表や安倍首相の“ぶら下がり”が急遽、行われた。この映像伝送にジャパンプールはLiveUを初めて使用した。
LiveUの受信ポイントからは、Nexionのジャパンプール回線を使用して、東京へ伝送し、NHKと民放5社へ在京分岐を行った。LiveUは小型のハンディタイプの送受信装置を使用して、簡便に中継が可能なため、APTVやReutersTVなどの海外のメディアでは多用されている。しかし、映像・音声の伝送が通信環境で不安定になる懸念も大きく、日本の放送機関では試行中である。
 ENG取材では、ホストブロードキャスターが10クルー配置して、ホスト映像を撮影してIBCで各メディアに配信した。
 伊勢志摩サミットでは、資料用として、初めて4K撮影を2台のカメラで行った。
 撮影内容は「伊勢神宮宇治橋付近と雑感」(3分)、G7首脳伊勢神宮訪問(10分)、G7夫人伊勢神宮記念撮影(4分)、G7首脳記念撮影(5分20秒)、サミット雑感(13分)である。カメラはSONYのXAVC59.94を使用し、S×SからHD(2K)にダウンコンして読み込み、各社に配信した。
 国際放送センター(IBC)内で各メディアへの映像・音声のホストフィードは、G7首脳会合やワーキング・ディナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合、議長国会見、各国首脳会見場)、各国首脳到着、伊勢神宮参拝などで、2チャンネルを使用してサービスした。配信された映像信号のフォーマットは、HD-SDI 1080/59.94i、NTSC、PALの3種類で、音声はオリジナル、日、英、仏の4か国語である。ホスト映像はサーバーにストレージされクラウド配信サービスも行われた。世界各地のメディアは、IDを取得すれば、インターネットを通して映像・音声信号のダウンロードが可能で、ファイルフォーマットはMXFファイル(SONY XDcam)とMPEG4を使用した。
 MCRのルーターは、一時側でSONY・HKSP/80/81(256×245)、2次側で朋栄MFR-8000(256×256)、バックアップで、朋栄MFR-5000(128×128)を使用した。
 またサミット終了後のオバマ大統領広島訪問の関連映像素材については、外務省は極めて異例の対応として、代表取材映像を伊勢志摩サミットのIBCで世界各国のメディアに対して配信サービスを実施した。
各ブースでサービスを受けたメディアは、「2チャンネルプラン」が14機関、「2チャンネル自由選択プラン」が15機関、「ラジオ2チャンネルプラン」が2機関だった。
 北海道洞爺湖サミットでは、洞爺湖町のリゾート施設の駐車場に国際メディアセンター(IBC)を建設した。総床面積1万1000平方メートル、プレスセンター棟とサミット議長・各国首脳会見棟からなる仮設の建物で、総工費は28億2000万円、サミット開催後は取り壊された。
 三重県はサミットの誘致活動段階から既設の施設、サンアリーナを国際メディアセンター(IMC)の候補地に挙げていた。


国際放送メディアセンター(三重県営サンアリーナ)


専用ブースとCCTV


国際放送センター(IBC)MCR


IBC 映像・音声分配システム 専用ブースを持たないメディアにホスト映像・音声をサービス


ブリーフィング・ルーム


オバマ米大統領広島訪問の生中継、CCTV画面に見入る報道陣 G20で最も脚光を浴びたのは首脳会合ではなくオバマ米大統領広島訪問


議長会見場 背景は英虞湾 演出効果満点のローケーション
以上 筆者撮影


わずか3日間のために28億5000万円かえてIMCアネックスと建設 日本の先端技術や伝統文化を発信
 外務省は、IMCが設置されたメインアリーナに隣接する駐車場に、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの“アネックス”を仮設で建設した。日本の先端技術や伝統文化を発信するのがその目的である。建設工事は鴻池組が受注し総工費は28億5000万円、サミット開催の4日前に駆け込みで完成した。開催後は3億円の解体費用をかけて取り壊す予定である。
 アネックスには、日本庭園や政府広報展示、三重情報館、屋外展示場を設けた。
政府広報展示については、「医療・保健」コーナーでは介護ロボット・HONDAの歩行アシストやヒト型ロボット、「インフラ・交通」コーナーでは三菱リージョナルジェット、超電導リニア、新幹線E7系、「環境・エネルギー」では温室効果ガス観測技術衛星、エネループ(ソーラーストレージ装置)など、「復興・防災」では、地震観測システムや東日本大震災の現状や復興、「宇宙・深海」では、深海探査用ドローン・ほばりん、H3ロケット、8Kスーパーハイビジョンなどを展示した。
また屋外展示場では、TOYOTAやHONDAの水素自動車や電気自動車が展示されれ試乗も行われた。
サンアリーナから首脳会合場の志摩観光ホテル(賢島)までの距離は約二十キロ。三重県は日本の環境技術を各国にアピールしようと、報道関係者らの送迎にハイブリッド・バスを利用した。
 またプレス用レストランでは、地元の海産物や伊勢うどん、地酒などの「美しの国」、三重県をアピールする料理をずらりと並べて国内外のメディア担当者に地元グルメをアピールした。プレス用レストランで提供するメニューの8割以上が三重県産食材を使用したという。
 IMCアネックス(付属棟)が利用されたのはわずか3日間、延べ8000人のメディア関係者などが訪れたが、一般市民には解放されなかった。 
 G7サミット終了後、市民からわずか3日のために28億5000万円かけて建設し、取り壊すのは“無駄遣い”の象徴だと批判が高まり、三重県と外務省では、10日間程度、地元の小学生や一市民に公開をし、11月上旬、予定通り壊された。
 28億5000万円かけて、IMCアネックスを建設する必要が本当にあったのか、十分に検証すべきだろう。



新設されたIBC・アネックス G7首脳会合の3日間だけのために28億5000万円をかけて新設 閉幕後解体、解体費3億円


新設されたIBC・アネックス


展示フロア


次世代自動車の展示 水素自動車
以上 筆者撮影

アメリカのメディアセンターは独自に設置
 アメリカは、大統領が出席するサミットなどの国際会議に際しては、独自に別の場所にUSメディアセンターを設け、取材・編集活動を行うので、主催国が設営する国際メディアセンター(IMC)は使用しないのが通例である。大統領の会見や報道官のブリーフィングもUSメディアセンターで行われる。伊勢志摩サミットでは、鳥羽国際ホテルにUSメディアセンターは設置された。
 USメディアセンターには、ブリーフィングルーム兼プレスワーキングルームとUSプールのIBCが設けられる。アメリカの放送局は、米国大統領の参加する国際会議等には、ABC、CBS、NBC、CNN、FOXの5社でUSプールを構成してオペレーションを行う。USプールは、主催国の設置する国際放送センター(IBC)には入らず、独自の映像・音声のオペレーション拠点を構築する。プーラーと呼ばれるプールの代表は、5社が順番で務めるのが慣例だ。IBCの機材は各社で保有している機器を使用し、セッティングや調整、オペレーションを代表して行う。
国際放送センター(IBC)は、USプールに中継やENG取材のホスト映像・音声信号を光回線を使用して配信する。しかし、米国大統領の会見等USプールの映像・音声は、国際映像として国際放送センター(IBC)には配信されない。USプールの映像・音声が必要な各国放送局は、USプールを構成する5社のいずれかから配信を受けるか、APTVやローターTVなどから素材を入手しなければならない。
 実は、主催国が設置する国際メディアセンター(IMC)や国際放送センター(IBC)はアメリカの主要メディアを除いた世界各国のメディアの拠点なのである。


G7エルマウ・サミット2022


G7首脳ファミリーフォト 背景はドイツ最高峰のツークシュピッツェ山(Zugspitze)の山並み ドイツとオーストリアの国境線にある 出典 G7-gipfel-elmau

G7首脳ファミリーフォト 出典 G7-gipfel-elmau

議長国ドイツのショルツ首相と岸田首相

Schloss Elmau  開催地のカルミッシェ・パルテンクルヒュン(GarmischPartenkirchen)は1936年冬季五輪の会場 ウインタースポーツのリゾート地として有名 出典 deutshland.de

 2022年6月26日から28日の3日間、ドイツのエルマウでG7首脳会議(サミット)が開催された。日本からは岸田文雄首相が出席した。
主な議題:
• インフレおよび景気後退の懸念に対する共通の対応策
• 「気候クラブ」の前進
• インフラと投資のためのパートナーシップ強化
• 外交・安全保障問題に関する調整、ロシアへの圧力強化
• ウクライナに対する支援拡大
• エネルギー供給の確保
• 気候変動対策の迅速化
• COVID-19パンデミックの克服
• 飢餓との闘い
• 世界におけるジェンダー平等の推進

世界経済を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau

世界経済を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau

外交・安全保障を議題とするワーキングディナー 出典 G7-gipfel-elmau

焦点のウクライナ情勢を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau

気候変動・エネルギー・保健を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau
主な成果:
• ウクライナ支援
財政・人道・軍事・外交面の支援を必要な限り続け、復興支援を行う
• 「気候クラブ」の設立
気候危機に対するグローバルな対応として立ち上げる
• グローバルな食料安全保障に向けた連合
世界の人々を飢えと栄養不足から守る
• エネルギー供給の確保
排出削減目標や環境目標で妥協せず、ロシア産エネルギーへの依存を低減する
• グローバル・ヘルスの強化
パンデミックに対しより適切に備え、対応する

スピーチをする岸田首相 出典 G7-gipfel-elmau

写真撮影に向かうG7首脳 出典 G7-gipfel-elmau

写真撮影に向かうG7首脳 出典 G7-gipfel-elmau

G7首脳とアウトリーチ首脳 出典 G7-gipfel-elmau


国際メディアセンター(IMC)は カルミッシェ・パルテンクルヒュン市内の駐車場に仮設で建設 約3000人に報道陣が参加  出典 tagesshau/de

国際メディアセンター(IMC)  出典 Losberger Boar

IMCのプレス席 出典 Losberger Boar

大型テントを有効利用 出典 nussli.com

国際メディアセンターに整備された記者リポポジション 出典 Fucus on-line 

写真撮影をする各国報道陣 出典 G7-gipfel-elmau

アイスアリーナに設営された警備本部 約18000人の警察官を動員 出典 Merkur.de

警備本部がスタジアムに建設した150人収容の仮設拘置所 出典 Forcus on-len


北海道洞爺湖サミット国際放送センター(IMC/IBC)


北海道洞爺湖サミット IMC ルスツ・リゾート(洞爺湖町)2008年7月 筆者撮影
 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議 G8)は、2008年7月7日~9日まで北海道洞爺湖町のウインザー・ホテルで、福田総理の議長のもと開催された。日本でサミットが主催されるのは、平成12年の九州・沖縄サミット以来8年ぶりであった。 
 北海道洞爺湖サミットでは、7日のアフリカ諸国等とのアウトリーチ会合に始まり、8日にG8の首脳会合やワーキング・ディナー、9日に主要経済国首脳会合(MEM)が開かれ、9日午後、総理の議長国記者会見をもって閉幕した。
G8会合の主要な議題は、世界経済、環境・気候変動、開発・アフリカ及び政治問題で、G8首脳による議論が行われた。


G8首脳 洞爺湖をバックに記念写真 出典 外務省フォト


G8首脳会合 出典 外務省フォト


ウインザー・ホテル ロビーのG8首脳 出典 外務省フォト

◆ 国際メディアセンター(IMC)の設置
北海道洞爺湖サミットを取材する報道関係者のために、洞爺湖町にあるスキー・リゾートホテル、ルスツリゾートホテル内に国際メディアセンターが(IMC)設置された。国際メディアセンター主要な建物は、ルスツリゾートの駐車場のスペースに仮設で建設された。環境に配慮して建設された設計で、使用された木材は再利用可能とした。[注3 下記の図を参照]
* 開設期間(予定)
2008年7月5日正午から7月10日(木)正午まで (期間中24時間運営)
* 利用対象者
     国際メディアセンターへのアクセスが許可される北海道洞爺湖サミット取材記者証及び政府発行のID所有者。

* 主な設備とサービス
    (IMC)
     インフォメーションデスク
     代表取材者デスク(プールデスク)
     共用ワーキングスペース 
     ブリーフィングルーム
     首脳記者会見場(議長会見場、各国首脳会見場)
     議長国報道担当本部
     各国報道担当官連絡室
     サミットフォト室
     サミットテレビ(CCTV)
     レストラン
     ATM
     医務室 等
    (IBC)
     マスターコントロールルーム(MCR)
     ブッキングオフイス
     回線コントロールセンター
     光ファーバー伝送システム
     SNG伝送車
     IP高速伝送サービス・ルーム
     方式変換サービス
     編集室
     音声スタジオ
     各社専用ワーキングブース
     首脳記者会見場(議長会見場、各国首脳会見場)ホスト中継 サービス
     記者リポート・ポジション(ルスツリゾート駐車場、サイロ展望台(洞爺湖展望台)
     ウインザー・ホテル(首脳会合場)サブIBC(ルスツリゾートへの伝送拠点)
     首脳会合、ワーキングディナー等中継サービス
     ロボットカメラ(ウンザー・ホテル周辺の丘)
     関連イベントENG取材

◆ 展示
政府広報、自治体、企業等による特設コーナーを設置して、日本や北海道の魅力を紹介する他、報道関係者向け各種サービスを提供した。
 建物の入口には、環境ショーケースが設置され、屋内外を利用し、日本の環境における取り組みや省エネなど環境技術に関する展示・デモンストレーション(次世代自動車の試乗等)実施した。また地下に蓄積した雪を利用した冷房システムも設置した。
 また首脳会議場とIMC間には、環境に配慮した次世代自動車(燃料電池バス)などを活用したシャトルバスを運行した。

◆    国際メディアセンター 「IMCザ・メイン」
 国際メディアセンターは、洞爺湖町のルスツリゾートの駐車場に建設された。プレスセンター棟は鉄骨造、地上2階建。議長・各国首脳会見場棟は、鉄骨造、地上1階建。延べ面積 は2棟合わせて約11,000㎡で、報道関係者、邦人3,000人、外国人1,000人の利用を想定した。“環境サミット”とされた今回のサミットのテーマに相応しく、建物は環境に配慮した様々な機能が盛り込まれた設計になっていた。
工費は約30億円、竹中工務店・日本設計グループが建設を担当した。

■ “雪冷房”システム
雪室(雪貯蔵庫)、敷地の段差により生じたプレスセンター棟の下部に設け、サミット開催期間の冷房に必要な雪を貯蔵した。貯蔵した雪に縦穴を開け、そこに外気を通すことで冷風を生み出して、建物全体に冷風を送り冷房する。溶けた直後の温度の低い融雪水を使用して冷水をつくり、それを循環させて大きい部屋の冷房機器にも利用した。その他、シースルーソーラーパネルや、北海道産の間伐材フレームによる壁面緑化など、最新の環境技術を駆使した「環境ウォール」で建物を覆った。



■ 建設資材のリサイクル
国際メディアセンターの建物は、サミット終了後、解体することになっていたので、解体後の資材の再利用・再資源化を大前提に建設材料の選定や設計を行った。リサイクル率は、重量比で99%を達成し、2008年10月末に解体作業は完了した。



北海道洞爺湖サミット 首脳会合が開催されたウインザーホテル(洞爺湖町) 出典 JTB








(注) 国際会議のIBCの一般的なモデルのシステムをイメージ化したもので、特定の国際会議のIBCを表したのものではない




“迷走” 2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディア施設整備~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~
2020東京五輪大会 国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC) 設営場所と使用後の再活用策
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)/ MPC(メイン・プレス・センター)
オリンピックのメディア施設(IBC/MPC)はこうして整備される ~ロンドン五輪・その機能・システムと概要~
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム ~機能と設備~
国際放送センター(IBC)で使用される映像信号フォーマット(Video Signal Format
IBC International Center System (English)






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2016年4月1日
Copyright (C) 2015 IMSSR


***************************************************
Toru Hiroya
廣谷  徹
代表
国際メディアサービスシステム研究所
International Media Service System Institute (IMSSR)
E-mail imssr@a09.itscom.net
***************************************************
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東京オリンピック ボランティア批判 タダ働き やりがい搾取 暑さ対策 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

2023年01月04日 17時26分55秒 | 国際放送センター(IBC)
東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 「ただ働き」労働力ではない 
新型コロナウイルス・暑さ対策は? ボランティアの安全・安心は守られるのか? コロナ感染28人 熱中症20人以上発生



新型コロナウイルス(COVID-19) 出典 NYT/NIAID

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大会ボランティアにPCR検査実施 大半は1回だけ PCR検査体体制の杜撰な実態が明るみに 「フィールドキャスト 新型コロナウイルス感染症ガイドライン」組織委公表
* 大会ボランティアの皆さんは必読 詳細資料を添付

ボランティア7万人全員にワクチン接種へ 十分な免疫獲得は間に合わず
 6月26日、東京2020大会組織委員会は、大会ボランティアの全員約7万人にワクチン接種の案内を行うと発表した。  これまでは国際オリンピック委員会(IOC)による米ファイザー社製のワクチン無償提供により、大会関係者、職員、国内メディアなど約3万8000人の接種が進められていたが、都の協力によりモデルナ社製のワクチンや接種会場の確保ができたという。新たな対象となったボランティアは6月30日から7月3日に1回目の接種を行い、2回目の接種は五輪期間中の7月31日からとなる。接種会場 は、1回目東京都築地ワクチン接種センター、 2回目代々木公園内を予定している。
 しかし、モデルナの効果は、2回目の接種から約2週間後程度で十分な免疫が生成されるとされ、7月31日からの2回目の接種では五輪期間中に十分な免疫獲得はできない。
 丸川五輪相は、「まず1回目の接種で、1次的な免疫をつけていただく」と述べて批判を浴びている。
 後手後手に回ったボランティアへの感染防止対策の遅れのツケが顕在化した。

 参加選手や大会関係者、観客などと接触する機会が多く、感染リスクが高いボランティアの「安全・安心」の確保は置き去りにされたと言わざるを得ない。変異株の感染は、20代や30代の若者を中心に広がっている。
 選手団には、ワクチン接種、毎日の検査、選手村でのバブル環境、競技場には専用バスで送迎、相当のレベルのコロナ感染防止対策が講じられる。一方、ボランティアは、毎日、公共交通機関を使用し、人によっては片道、1~2時間かけて競技会場などに1週間以上通う。宿泊施設が必要な場合は、自力で確保する。市民と接触する場も多く、破格に感染リスクが高い。しかしその格差はあまりにも大きすぎる。
 ボランティアの「安全・安心」を確保するのは組織委員会の当然の責務だ。
 また都市ボランティアはワクチン接種や検査の対象にまったく入っていない。

ボランティア1万人辞退 コロナ感染不安

ファイザー社とビオンテック社、東京五輪選手にワクチン寄贈
 5月8日、国際オリンピック委員会(IOC)は、米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが今夏の東京五輪・パラリンピックに出場する各国・地域の選手団向けに、共同開発した新型コロナウイルスワクチンを寄贈することで合意したと発表した。
 日本オリンピック委員会(JOC)は、日本選手団への接種を6月1日に開始した。医療現場への影響を考慮し、競技団体ごとにチームドクターなどへ接種業務を依頼するよう指示をしたという。
 五輪とパラで選手1000人程度、監督・コーチ1500人程度の計約2500人が対象で、6月中の完了を想定している。
 検査体制については、感染防止対策などのルールをまとめた「プレーブック(規則集)V2」で、選手は毎日検査することが明記された。選手団に同行する監督やコーチらなどの関係者も毎日検査を受けることになった。

組織委のコロナ対策 「感染症対策リーフレット」と「マスク」、「消毒液」、「体調管理ノート」だけ
 3月1日、東京2020大会組織委員会は、ボランティアの新型コロナ対策として、日本ボランティアサポートセンターが制作協力した「感染症対策リーフレット」を始め、選択可能なマスク2枚、携帯用アルコール消毒液、体調管理ノートをボランティアに配布すると発表した。
▼ 「感染症対策リーフレット」
「基本行動」として、マスク着用、手洗い・消毒、フィジカルディスタンス(2m)の確保を上げる。
 そして「活動の場面の注意」として、「食事中・休憩中」は、密を避けて、会話を控え、なるべくマスク着用とし、「観客や仲間のコミュニケーション」では、握手・ハイタッチはしない、「観客の手荷物・写真撮影」では、使い捨て手袋着用を推奨する。
 活動中は、密集の回避、共用品の除菌、換気が重要とし、活動前には体調管理ノートをつけて体調の自主管理をすることとした。
 記載されている内容は、ごくごく一般的な感染防止対策を記載しているだけに過ぎない。
 この程度では大会組織委員会がボランティアの感染防止対策を本気で考えているどうか疑問が大きい。「安全・安心」とはほど遠いのは明らかである。


「感染症対策リーフレット」 出典 TOKYO2020

 組織委員会は、競技会場などで活動する大会ボランティア約8万人のうち、約1万人が辞退したことを明らかにした。理由は個別に聞き取っていないというが、「新型コロナウイルスの感染拡大に対する不安があるのは間違いない」と述べている。
 応募したボランティアの皆さんは、大会組織委員会のコロナ対策に不安を感じたら、辞退をして欲しい。大会運営に関わるボランティアは感染リスクは高い。各持ち場でしっかりした感染防止体制がとられているかどうか、是非、見極めて欲しい。

森会長、女性蔑視発言 ボランティアの辞退相次ぐ
 2月3日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は、JOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと発言した。この発言に対して出席者で異論を唱える人はいなく、笑い声が出たとされている。
 森氏の発言は、女性を蔑視したと受け取られ、国内内外から激しい批判を浴びた。
 翌2月4日、森会長は記者会見を開き、女性を蔑視したと受け取れる発言をしたことについて、「深く反省している。発言は撤回したい」と謝罪した。会長職については「辞任する考えはない」と述べた。
 質疑応答では「女性が多いと時間が長くなるという発言を誤解と表現していたが、誤った認識ではないのか」との質問に、「そういう風に(競技団体から)聞いておるんです」などと答え、競技団体全体にこうした認識が広がっていることを示唆した。
 これに対して、組織委員会は8日、4日以降に大会ボランティア(約8万人)辞退申し出が、約390人に上り、2人が聖火リレーランナーへの辞退を申し出たと発表した。組織委は辞退理由を公表していないが、3日に森喜朗会長が女性蔑視の発言をした影響とみられる。
 また、東京都は都市ボランティア(約3万人)の辞退申し出が93人になったと発表してている。
 こうしたボランティア辞退の動きについて、自民党の二階俊博幹事長は8日の会見で、「瞬間的」なもので、「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と語った。今後の対応については「どうしてもおやめになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と述べ、「そのようなことですぐやめちゃいましょうとかとかいうことは一時、瞬間には言っても、協力して立派に仕上げましょうということになるんじゃないか」と発言した。
 組織委員会では「五輪大会開催の成否は『大会の顔』となるボランティアの皆さんにかかっている」と高らかに唱えている。開催を半年に控えている中で、約11万人のボランティアの人たちの思いを踏みにじった女性蔑視発言、森会長の責任は重い。


オリンピックの延期を決めたバッハ会長は「東京五輪がウイルスに打ち勝った象徴的な祝典になることを願う」と述べたが…… 出典 IOC NEWS 3月30日




緊急課題 ボランティアの暑さ対策はどうなる? 五輪史上最大級の猛暑に警戒

 1999年の夏は、梅雨明けは例年に比べて遅かったが、梅雨明け後は、一転して猛暑が続き、夜になっても気温が下がらず、連日熱帯夜となった。
 来年の東京五輪大会開催期間(7月24日~8月9日)も同様の猛暑が予想され、とりあけ都心は、ヒートアイランド現象による気温上昇に加えて湿度も高く、過去の大会で最も厳しい「酷暑五輪」になると思われる。
 TOKYO2020を見据えて、1999年7月から8月にかけて、本番の大会運営を検証するためにテストイベント、「READY STEADY TOKYO TEST EVENTS」が相次いで開催された。
 7月には、近代五種(武蔵野の森総合スポーツプラザ)やウエイトリフティング(東京国際フォーラム)、アーチェリー(夢の島公園アーチェリー場)、自転車競技
(ロード)(スタート:武蔵野の森公園、ゴール:富士スピードウェイ)、バドミントン(武蔵野の森総合スポーツプラザ)、ビーチバレー(潮風公園)、8月になって、ボート(海の森水上競技場)、馬術(海の森クロスカントリーコース、馬事公苑)、ゴルフ(霞ヶ関カンツリー倶楽部)、マラソンスイミング(お台場)、トライアスロン(お台場)、セーリング(江の島ヨットハーバー)の競技大会が開かれた。
 テストイベントを行う中で、明らかになった最大の問題は、「暑さ対策」である。またトライアスロン(水泳)やマラソンスイミングでは水質や水温の問題が浮かび上がった。

連日暑さ指数31°C超「危険」
 環境庁のデータによると、テストイベントが集中した8月11日の週の暑さ指数(WGBT 環境省発表)は、31.6°C(11日)、31.2°C(12日)、32.4°C(13日)、31.4°C(14日)、31.4°C(15日)といずれも31°Cを超え、16日は台風10号の影響で、30.4°C、17日は逆にフェーン現象で33.5°Cと今年最高を記録した。
 環境省の指針によると、31°C以上は、「危険」とし、「すべての生活活動でおこる危険性」があり、「高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」としている。
 8月11日からの1週間はほぼ連日「危険」の猛暑続いたのである。
 
 記録的な猛暑は、五輪大会開催にとって大きな脅威となった。
 出場する選手は勿論、大会関係者、大会を支えるボランティア、そして競技場を訪れる大勢の観客、十分な暑さ対策を実施しないと熱中症で体調を崩す人が続出する懸念が大きい。
 
猛暑の直撃を受けるボランティア
 猛暑の直撃うけるのは、大会の運営を支えるボランティアである。大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を確保する計画である。

 この内、特に猛暑のダメージが大きいのは、屋外で行われるビーチバレーやボート、カヌー、トライアスロン、馬術クロスカントリー、アーチェリー、セーリング、ウインドサーフィン、それにマラソンや競歩、自転車(ロード)などの大会ボランティアである。長時間、猛暑の炎天下で業務にあたらなければならない。
 屋内のアリーナで開催される競技についても、観客整理、交通整理などで大勢のボランティアが炎天下で業務になる。

 五輪大会テストイベントが行われた海の森公園から帰るバスに乗り合わせたボランティアの人が、「この暑さはもう体力の限界を超える。テストイベントは本番の半分の時間、これが二倍になるになると耐えられない。是非、シフト体制を考えてもらいたい」と話していた。
 まさにボランティアの「命を守る」ための施策が迫られているのである。

ボランティアの「命を守る」対策を
 来年の夏も猛暑は避けることができないだろう。
 ボランティアを猛暑から守るためには、炎天下で業務にあたる時間を短くするほかないだろう。それぞれの担当セクションで、配置ボランティアの数を倍に増やし、休憩時間を大幅に増やすシフト体制を組む必要があるだろう。1時間、炎天下で業務に従事したら、1時間は冷房完備のシェルターで休憩する。ボランティアの「命を守る」ためには必須の条件となってきた。
 また、大会ボランティアを志望した人には、高齢者や家庭の主婦、いつも冷房の効いたオフイスで仕事をしているサラリーマンなど、猛暑の中の業務に慣れていない人が大勢いると思われる。炎天下、体感温度は35度を楽に超え、強烈な日差しが照り付ける。その中でのボランティア業務である。

 さらに問題なのは、暑さ対策、競技の開始時間が次々と早められ、早朝に競技開始が変更されていることだ。マラソンは午前6時、男子50キロ競歩は午前5時30フィン、ゴルフも午前7時、さらに今回のテストイベントの結果を踏まえて、オープンスイミングでは午前5時開始、トライアスロンも7時30分開始を検討している。今年の猛暑を鑑みて、その他の競技の開始時間も早められる可能性は大きい。
 かりに7時競技開始の会場のボランティアになると、その2時間前程度、午前5時前には会場に集合し、配置につく準備をしなければならない。自宅を出発するのは3時過ぎになるだろう。連日、3時起きで半日から1日、炎天下にさらされたら、ほとんどの人が体力の限界に達する。そもそも交通機関が動いていないので早朝に会場に来ること自体が不可能になる可能性が大きい。前日の終電で会場に入り、徹夜で朝まで周辺で待機することになるだろう。それも1日だけでなく、競技によっては10日以上は続く。今は所待機場所を確保していると情報はない。熱帯夜が連日続く中で徹夜での待機、それこそ人権問題である。大会ボランティアは「一日8時間以上、10日間以上」、こうした中で業務を行わなければならないのである。
 ボランティアに応募した人たちは、猛暑の中での業務の過酷さを冷静に見つめて欲しい。猛暑は確実に来年もやってくる。
 炎天下の仕事に自信のない人は、屋外での業務は断り、室内の涼しい場所への配置転換を希望しよう。また、集合時間を確認して、始発電車に乗っても間に合わない場合は変更を希望しよう。勿論、業務シフトや休憩時間を確認しよう。「命を守る」ための選択だ。
 大会ボランティアの場合は、「10日間以上」が条件となっている。ボランティアに応募した皆さん、連日暑さ指数、31°Cを超える中で、10日間以上、炎天下でボランティアを続ける自身がありますか? 
 奉仕精神に溢れた高い志を持ってボランティアに応募した人たちを猛暑から守る責任が課せられたのは大会組織委員会である。まさか、暑さ対策は「自己責任」とは、大会組織委員会は言わないと信じたい。同様の対応は都市ボランティアを募集した東京都にも求められる。
 あと1年、暑さ対策は早急に手を打たなければならない緊急課題となった。


暑さ対策ではついに「降雪機」も登場 海の森水上競技場 筆者撮影 9月13日


清涼感を味わえる程度で気温を下げる効果はない 報道陣に公開した実験では300kgの氷を使用してわずか5分間で終了


ビーチバレーの会場(潮風公園)の入り口に設置されたミスト 観客のラストワンマイル(駅から会場までの間)の暑さ対策で設置 ミストにあたっている間は涼しさを感じるが熱中症防止の体全体を冷やす効果はない  筆者撮影 2019年7月25日


ビーチバレーの会場内に設置された休憩所 テントの中は冷房されている こうした休憩所を各競技場に多数設置する必要がある 筆者撮影 2019年7月25日





五輪ボランティア説明会・面談会場 東京スポーツスクエア 東京都千代田区有楽町
8万人採用 12万人不採用 
  2019年9月12日、大会組織委員会は、書類選考と面談による「第一次選考」(マッチング)が終了し、大会ボランティア(フィールドキャスト)約8万人が決まったと発表した。応募した人は、約20万人、12万人が不採用となった。月内に、応募した約20万人全員に結果を通知するという。
 大会組織委員会によると、採用された人の約6割は女性で、40~50歳代が約4割に上った。応募段階では全体の36%だった20歳代は、面談への出席率が低く、採用は16%だった。
 また外国籍の人は12%で、中国、韓国、英国など約120の国と地域から採用された。
 採用された人は10月から共通研修に参加して、来年3月以降に具体的な役割と活動する会場が決まる。

五輪ボランティア説明会始まる 480名が参加
 2019年2月9日、2020東京五輪大会の応募者に対する説明会と面談が、東京都千代田区有楽町の東京スポーツスクエアで始まった。こうした説明会と面談は、北海道から九州まで全国11か所で7月末まで開かれる。
 この日は、首都圏は雪に見舞われたが、大会ボランティア(フィールドキャスト)が360人、都市ボランティア(シティキャスタト)が約120人、合わせて約480人の応募者が参加した。
 説明会は、活動内容やスケジュールについての説明をするオリエンテーションだけでなく、応募者同士の自己紹介やクイズ、ゲームなども交えて和やか雰囲気の中で進められ、ボランティア同士のコミュニケーションを図った。
 その後、大会組織委員会の担当者は応募者との面談を行い、第一回目のマッチングの審査を実施した。20万人を超える応募者から8万人に絞り込む「第一次選考」である。「第一次選考」でどの程度の絞り込みが行われるかは大会組織委員会では明らかにしていない。
 マッチングが成立した応募者には、9月頃までに研修のお知らせのメールが、順次、送付され、次の段階に進んで2019年10月から始まる共通研修に臨む。いわば「第二次選考」である。この段階で約8万超程度に絞り込みが行われると思われる。
 共通研修終了後、2020年3月以降に、大会ボランティアについては、「役割・会場のお知らせ」、都市ボランティアについては「採用通知」が送付されることで、最終的にボランティアとして採用されるかどうかが決められる。採用されたボランティアは、2020年6月から、大会ボランティアについては会場別研修、都市ボランティアについては配置場所別研修を受ける。
 なお海外在住の大会ボランティア応募者、約7万人については、2019年3月から7月にかけてテレビ電話等でオリエンテーションで行る。事実上の選考であるマッチングの審査は個別に連絡を取りながら実施すると思われるが、面談を行わないので作業は難航が予想される。マッチングが成立して採用された応募者は、来日して2020年6月以降に実施される会場別研修から参加する。渡航費用も必要となるので、果たして何人が実際に会場別研修に参加するのか懸念は残る。


大会ボランティアの受付 都市ボランティアの受付は背中合わせの隣に


大会ボランティアの説明会


都市ボランティアの面談 大会組織委員会担当者2名と応募者2名が一つのテーブルで面談


大会ボランティアの面談 事実上の「面接試験」 説明会とは違って応募者は緊張した表情


面談会場にはボランティアのユニフォームや帽子、靴が展示 試着可能


都外の説明会と面談開催スケジュール 東京スポーツスクエアでは、2月9日から5月下旬まで、90日程度開催予定


出典 東京2020大会組織員会

東京2020大会ボランティア 応募完了者20万4680人
 2019年1月25日、大会組織委員会は東京2020大会ボランティアについて、視覚に制約のある方等の募集を締め切り(2019年1月18日)、応募者完了者の合計は、204,680人となったとした。
 応募者の構成については、男性が 36%、女性が 64%、国籍は、日本国籍64%、日本国籍以外 36%、活動希望日数は、10日未満 2%、10日 37%、11~19日 33%、20~29日 12%、30日以上 16%としている。
 日本国籍以外の外国人が約4割近くも占め、応募完了者の総数を押し上げに大いに貢献した。活動希望日数が多かった理由も日本国籍以外の応募者が多かったことが上げられるだろう。
 昨年12月21日に募集は締め切られたが、応募登録手続きのプロセスにトラブルが発生し、約2万6000人が登録できなかった可能性があることが明らかになった。
 募集最終日にアクセスが集中し、応募者に最終認証用の電子メールが送れないなどの不具合が発生したのが原因とした。
 大会組織員会は、これまでに対象者には個別に連絡を取り、手続きの完了を依頼するなどの対応を完了した。

 応募完了者には、2019年1月からオリエンテーションの案内が送られ、2月以降、東京、大阪、名古屋など全国12カ所で面接や説明会などのオリエンテーションが始まる。そして応募者の希望活動分野とのマッチング(すり合わせ)が行われ、共通研修を受ける人の採用可否が決まる。採用された人は、10月以降に共通研修が行われ、2020年3月に正式に採用が決まり、活動場所や役割が通知される。

都市ボランティア、応募者は3万6649人 2万人の募集枠を大幅に上回る 
 2018年12月26日、東京都は2万人の募集枠に対し、3万6649人の応募者があったことを発表した。
 約1カ月前の11月21日では、応募者は1万5180人にとどまり、まだ約5000人足りなかったが、終盤になって一気に応募者が増え、1週間前の12月19日に発表した応募者数は2万8689人と募集枠の2万人を上回った。さらに最後の1週間で約1万人の駆け込み応募があった。
 応募者の性別は、男性が約40%で女性が60%で、幅広い世代に広がっているという。また外国籍の応募者は約10%とした(小池都知事 12月17日)。
 2019年1月には、応募者に対して案内状が送られ。2月から面接・説明会などのオリエンテーションが始まる。そして共通研修を受ける人の採用者が決まり、採用された人は9月から共通研修を受ける。2020年3月に、正式に採否が決まり、採用された人には活動場所や活動内容が通知される。
 
 12月21日、都教育委員会は、「都市ボランティア」の募集をめぐって、ある都立高校で担任の教諭がクラスの生徒に応募用紙を配り、「全員出して」と言っていたを明らかにした。担任の教諭に強制する意図はなかったとする一方、「強制と感じた生徒もいるようで、参加は任意だという説明が足りなかった」と指摘した。
 「都市ボランティア」は」、2020年4月時点で18歳以上の人が参加可能だ。募集締め切りの直前、12月19日にツイッター上で応募用紙の写真を添えて「とりあえず書いて全員出して!って言われたんだけど都立高の闇でしょ!」との投稿があり、「学徒出陣だ」といったコメントとともに拡散したという。(朝日新聞 12月22日)

東京2020大会ボランティア、目標の8万人達成 外国籍の応募者44% 新たな課題浮上
 2018年11月21日、大会組織委員会は、大会ボランティアの応募者が、20日午前9時時点で8万1035人に上り、目標の8万人を達成したと発表した。 注目されるのは応募者の44%が外国籍で半数近くに達したことである。希望活動分野は「競技」が最も多く、「式典」「運営サポート」も人気が高かった。これに対して「移動サポート」などは希望者が少なく12月21日まで募集を継続するとしている。
 大会ボランティアの募集は2018年9月26日に開始し、当初は「1日8時間程度、合計10日以上」といった応募条件が「厳しすぎる」との懸念が出ていたが、2カ月弱で目標に達した。
 応募完了者の8万1035人に対し、応募登録者は132,335人に達している。
 募集にあたっては、英語サイトも開設し応募を受け付けた。日本語を話せることは条件はない。結果、外国籍に応募者が半数近くの44%にも達した。 
 大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「多くの方に応募していただき、感謝している」と述べた上で、外国籍の人が多かった理由については「確たることを言うのは難しい。海外でのボランティア活動への積極的な受け止め方もあるのだろう」との見方を示し、「(応募者と活動内容の)マッチングを適切にしたい」と語った。
 組織委によると過去の大会では、採用された外国籍の人の割合は10%以下が多かったという。
 応募者の全体で見ると、男女別では女性が60%、男性が40%。年齢層は20代が最多の32%で、10代から80歳以上まで幅広い年代にわたった。
 しかし、日本国籍の応募者に限ると50代(22%)が最も多く、20代(12%)、30代(11%)は少なかったという。
 応活動希望日数は、10日が33%、11日以上が65%で、30日以上が19%となっている。
 応募締切は、2018年12月21日(金)17時だが、視覚に制約がある応募者は、2019年1月18日(金)17時の締切(専用の応募フォーム提出期限)となっている。

 東京2020大会のボランティア募集がこれだけ海外から注目を浴びたのは喜ばしいことではあるが、日本語を話せることが条件ではないため、活動分野のカテゴリーによっては、大会関係者とのコミュニケーションがうまく行かない懸念も生じる。また、「土地勘」がない場所でのボランティア体験には、ボランティア自身がとまどう状況も十分想定しなければんらない。
 さらに、国内籍の応募者は、2019年1月~7月の間にオリエンテーション(説明会・面接)や2019年10月からは共通研修、2020年4月からは役割別・リーダー研修、そして6月からは会場別研修に参加しなければならないが、外国籍の応募者は2020年6月の会場別研修から参加すれば良いことになっている。明らかに日本籍と外国籍の応募者の間には研修内容に有意差があり、十分なトレーニングが行うことができるか疑念が残る。(下記 ボランティアジャーニー参照)
 大会運営上の観点だけで考えると、日本国籍の応募者を主体にする方が効率的かもしれない。
 また来日する外国籍のボランティアに対して、宿泊などは自己責任としながらも、大会組織委員会はきめ細かなサポート体制を整える必要も迫られてきた。
 外国籍のボランティア、長期に渡る滞在施設の確保や航空券の手配などハードルが高いため、ボランティアに採用されても来日を断念するケースも多発する懸念がある。
 大会組織委員会では、「マッチングを適切にしたい」とし、暗に外国籍ボランティアの採用を厳しく審査する方向性を示唆している。
 しかし、応募者の半分近くに達した外国籍のボランティアの採用数が、日本国籍と外国籍との間で大幅な格差が生じた生じると、国際社会からは「差別」だと見られて大きな批判を招く可能性がある。大会組織委員会が採用の審査を適切に実施した結果だと説明にしても、審査の結果、外国籍の採用数が何人になるかが問われることになるだろう。外国籍のボランティアの採用数を抑えることは、国境を越えた連帯を掲げるオリンッピク精神に明らかに背くことになる。
 「外国籍の応募者44%」、大会組織委員会は大きな難題を抱えた。 

東京2020競技会場マップ


都市ボランティアの募集 出典 東京都
東京都は広瀬すずが出演したボランティアの募集のCMの制作に約4000万円かけた。



ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!


東京2020大会ボランティア募集開始
 2018年9月26日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と東京都は、大会を支えるボランティアの募集を開始した。インターネットなどで12月上旬まで応募を受け付け、計11万人の人員確保を目指す。
 大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を募集する。
 「都市ボランティア」3万人の内、1万人は東京都観光ボランティアや2019年に開催されるワールドカップで活動したボランティア、都内大学からの希望による参加者、都内区市町村 からの推薦者(5,000 人程度)などが含まれるとしている。
 対象は20年4月1日時点で18歳以上の人。原則として大会ボランティアは休憩や待機時間を含めて1日8時間程度で計10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度で計5日以上の活動が条件となる。
 食事やユニホーム、けがなどを補償する保険費用は支給され、交通費補助の名目で全員に1日1000円のプリペイドカードを提供するが、基本的に交通費や宿泊費は自己負担となる。また、大会ボランティアは希望する活動内容を三つまで選択できるが、希望順を伝えることはできない。
 ボランティアの応募者は、書類選考を得て、説明会や面接、研修などに参加した後、2020年3月頃に最終的に採用が決まる。4月からは役割や会場に応じて複数回の研修を受けて、7月からの本番に臨む。
 いずれもユニホームや食事が提供されるほか、交通費についても有識者会議で「近郊交通費ぐらいは出せないか」との意見が出たため、1日1千円のプリペイドカードを支給するこことが決まった。
 応募期間は12月上旬までとしているが、必要数に達しない場合は再募集も行う。
 大会ボランティアは組織委ホームページ(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/)から、都市ボランティアはボランティア情報サイト「東京ボランティアナビ」(http://www.city-volunteer.metro.tokyo.jp/)などで申し込みができる。
 組織委と都は26日午後1時の募集開始に合わせ、新宿駅西口広場でPRチラシを配布し、応募を呼びかけた。
 募集担当者は「今後はボランティアに関する情報をきちんと伝えていきたい。大会を自分の手で成功させたいと思っている人にぜひ応募してほしい」と話している。
 しかし、東京2020大会ボランティア募集については、早くから「10日以上拘束されるのに報酬が出ない」とか「交通費や宿泊費が自己負担」などの待遇面や募集条件が厳しいことで、「タダ働き」、「やりがい搾取」、「動員強制」との批判が渦巻いている。
 東京オリンピックは、果たしてボランティアが支える対象としてふさわしい大会なのだろうか、疑念が湧いてくる。

大会ボランティアの活動内容は?
 大会ボランティアは、競技会場や選手村、その他の大会関連施設で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアのサポート等、大会運営に直接携わる活動をする。
 大会ボランティアの活動分野は9つのカテゴリーに分かれている。








出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

大会ボランティアは「経験」と「スキル」を要求する業務 ボランティアの役割の域を超えている
 大会ボランティアの活動分野の内、「案内」(1万6000人~2万5000人)は、“日本のおもてなし”の思いやりあふれたホスピタリティを実現させるサービスとして、ボランティアの本来活動分野としてふさわしいだろう。また「式典」(1000人~2000人)も同様と思える。
 しかし、「競技」(1万5000人~1万7000人)、「移動サポート」(1万人~1万4000人)、「アテンド」(8000人~1万2000人)、「運営サポート」(8000人~1万人)、「ヘルスケア」(4000人~6000人)、「テクノロジー」(2000人~4000人)、「メディア」(2000人~4000人)ともなると、相応の経験をスキルが要求され、明らかにボランティアの活動領域を超えている。大会運営に関わるまさに根幹業務で基本的に大会スタッフが担当すべきだ。
 「運営サポート」では、IDの発行もサポートするとしているが、IDの発行は、セキュリティ関わるまさに重要な業務で、個人情報の管理も厳しく問われる。ボランティアが携わる業務として適切でない。組織委員会が責任を持って雇いあげた大会専任スタッフが行うべきだ。
 また「案内」のセキュリティーチェックに関わる業務もボランティアがやるべきではない。大会専任スタッフが担当すべきだ。
 「競技」では、競技の運営そのものに関わるとしているが、これは競技運営スタッフが行うものでボランティアが担う役割ではないだろう。競技運営スタッフは事前に十分なトレーニングと習熟を得なければならない。当然、経験とスキルが要求される。
 「移動サポート」は、運転免許証を要求するので、「補助」ではなく、「ドライバー」なのである。大会開催時には、組織委員会は輸送バス2200台、輸送用車両2500台を運行する予定で、ドライバーなどの輸送支援スタッフを3万人/日を有償で確保する。さすがに輸送用バスをボランティアのドライバーが運転することはないだろうが、8人乗り程度のVANの運転はボランティアに頼ることになりそうだ。大会車両の運転は安全性の確保の責任が大きく、運転はボランティアではなく、大会運営スタットとして雇われた「ドライバー」が担うべきだ。安易なボランティア頼みは問題である。
 海外からの選手が多い五輪大会の「アテンド」は語学のスキルが要求される。英語はもとより、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、多様な言語のスキルを持ったスタッフを揃えなければならない。言語のスキルを持つ人に対しては、スキルに対して相応の報酬を払うが当然だ。
 例えば、大会スタッフとして雇用された通訳には1日数万円の報酬が支払わられ、その一方でボランティア通訳は「ただ働き」、これは差別としかいいようがない。スキルと経験に差があるというなら、スキルと経験や業務内容に応じて報酬は支払うべきだろう。仕事の内容は程度に差はあれほぼ同一なのに、「現場監督」は有償で、「部下」はボランティアという名目で「タダ働き」、あまりにも理不尽である。
 「ヘルスケア」、「テクノロジー」はまさに専門職のスキルが必要で、ボランティアの活動領域に当たらない。
 「メディア」対応も、運営スタッフの専門領域だ。もっともメディアの人混み整理程度の仕事ならボランティアで可能だろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の期間(ソチ五輪、リオデジャネイロ五輪)に、世界の放送機関から41億5700万ドル(約4697億円)という巨額の放送権料を手に入れている。国際オリンピック委員会(IOC)や組織員会は、責任を持ってメディア対応スタッフを有償で雇い上げて、メディアにサービスをしてしかるべきだ。

 大会の運営にあたって、組織委員会はさまざまな分野で大勢の大量の大会運営スタッフを雇い入れる。輸送、ガードマン、医師・看護婦、通訳、競技運営、その数は10万人近くになるだろう。大会運営スタッフは、業務経験やスキル、業務内容に応じてその待遇は千差万別だが、報酬が支払わられ、交通費や出張を伴う業務を行う場合には宿泊費、日当も支払われるだろう。
 業務内容に程度の差はあれ、ほとんど同じ分野の業務を担って、ボランティアは無報酬で「タダ働き」、交通費も宿泊費も自己負担というスキームは納得がいかない。有償の大会運営スタッフとボランティアの差は一体なにか、組織委員会は果たして明確に説明でるのだろうか?

ウエッブの応募サイトを開くと更に疑問が噴出 
 「東京2020大会ボランティア」の応募登録サイト(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/method/)
を開くと、まず驚くのは「応募フォームの入力には約30分かかります」という注意書きが赤い文字で書かれていることだ。
 入力フォームは、STEP 6まであり、入力しなければならない情報はかなり多い。
▼ STEP1 氏名、性別、生年月日、写真、必要な配慮・サポート 等
▼ STEP2 住所・連絡先、緊急連絡先 等
▼ STEP3 ボランティア経験、就学・就労状況
▼ STEP4 語学、スポーツに関する経験、運転免許証の有無 等
▼ STEP5 希望する活動(期間、日数、場所、分野) 等
▼ STEP6 参加規約・プライバシーポリシーへの同意
 STEP 1とSTEP2は、常識的な入力項目だが、STEP3になると、これがボランティア応募の入力フォームかと疑念がわき始めた。
 STEP3では、「ボランティア経験がありますか?」とボランティア経験が聞かれる。
 「はい」と答えると、「ボランティア経験の種類」、「活動内容」が聞かれる。
 また「ボランティアリーダーの経験ありますか?」と聞かれ、同様に「活動内容」が訊ねられる。
 さらにスポーツに関わる活動を選択した人に対しては、「国際レベルの大会に選手として参加」、「全国レベルの大会に選手として参加」、「その他の大会に選手として参加」など選手として競技大会に参加経験があるが聞かれる。
 そして「審判としての経験」、「指導経験」、「競技運営スタッフとしての経験」などが問われる。
 語学のスキルや希望する活動分野(10項目から選択)についても聞かれる。
 これを元に書類選考し、まずふるいにかけるのである。

 この「応募フォーム」はまるで大会スタッフ応募のエントリーシートのようである。就職試験のエントリーシートとも見間違う。
 業務経験とスキルを重視する姿勢は、善意と奉仕を掲げるボランティア精神とはまったくかけ離れている。
 やはり、「大会ボランティア」の募集とは到底考えられず、「大会スタッフ」の募集フォームなのである。
 本来は、大会スタッフとして、報酬を払い、交通費、宿泊費を支払って雇用すべき業務分野なのである。
 それを「ただ働き」させるのは、筆者はまったく納得がいかない。
 「大会ボランティア」は善意と奉仕の精神を掲げボランティアの活動領域ではない。ボランティアに応募する善意と奉仕の精神に甘えきった「やりがい搾取」である。

事前の説明会、研修で大幅に拘束されるボランティア
 ボランティアとして採用されるには、事前に何回も説明会や研修に参加することが義務付けられている。
 大会ボランティアの場合、2019年1月から7月頃までに、オリエンテーション(説明会)や面談に呼び出される。
 10月からは共通研修が行われ、2020年4月からは役割別の研修やリーダーシップ研修が始まる。6月からは会場別の研修が行われ、ようやく本番に臨むことになる。
 実は、ボランティアとして活動するためには、オリンピック開催期間中に最低10日間(都市ボランティアは5日間)を確保すれば済むわけではないのである。頻繁に、説明会や面談、研修などに参加しなければならない。そのスケジュールは、現時点ではまったく不明で、組織委員会の都合で、一方的に決められるだろう。
 約1年半程度、あれこれ拘束されるのである。
 仮に地方からボランティアとして活動しようとしている人は、そのたびに交通費や宿泊費などの自己負担をしいられる。首都圏在住の人も交通費は負担しなければならないし、なによりスケジュールを空けなければならない。1日1000円のプリぺードカードが支給されるかどうかも不明だ。
 組織委員会が雇い上げる大会スタッフには、事前のオリエンテーション(説明会)や研修に対しても1日いくらの報酬が支払わられるだろう。
 要するに、大会開催経費を圧縮するために、ボランティアというツールを利用する構図なのである。
 「オリンピックの感動を共有したい」、「貴重な体験をしたい」、「人生の思い出に」、ボランティアに応募する人は、善意と奉仕の精神に満ち溢れている。
 こうしたボランティアの人たちへの「甘え」の構図が見えてくる。
 やはり、「やりがい搾取」という疑念が筆者には拭い去れない。
 ボランティアは「自発的」に「任意」で参加しているから問題ないとするのではなく、オリンピックが「やりがい搾取」という構図で成り立っていることが問題なのである。
 無償のボランティアが11万人も働く一方で、オリンピックというビック・ビジネスで膨大な利益を上げている企業や最高で年間2400万円とされる高額の報酬を得ている組織委員会関係者を始め、ボランティアとほぼ同様の業務を担う有償で雇う膨大な数の大会スタッフが存在することが問題なのである。
 ちなみに森組織委会長は、報酬を辞退して、「ボランティア」として大会組織委員会業務を担っている。
 
 
出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

都市ボランティアは、ボランティアにふさわしい活動領域
 経験とスキルが要求される大会ボランティアに比べて、東京都が募集している都市ボランティアの活動領域は、本来ボランティアが担うのにふさわしい領域だろう。世界最高の「おもてなし」、優しさあふれたホスピタリティ、まさに東京大会レガシーにしたい。世界各国や日本各地から東京を訪れる人たちに、東京のよさをアピールする恰好の機会だ。
 筆者も海外各国を出張や旅行でたびたび訪れたが、初めての都市では、地下鉄やバスの切符の買い方、目的地までの道順など戸惑うことがたびたびである。空港や駅、繁華街、観光地、競技場周辺など、ボランティアが活躍する場は多い。
 外国人に接する場合も、簡単な日常会話ができれば問題なく、高度な語学力の専門知識も不要で、年齢、職業、スキルを問わず活動ができる。
 「5日間以上」とか事前の説明会や研修等への出席などの要求条件は若干厳しいが、ボランティアの本来の概念に合致している。
 東京大会でボランティアの参加を目指す学生の皆さん、「ブラックボランティア」の疑念が多い大会ボランティアでなく、都市ボランティアを目指すのをお勧め!

「企業ボランティア」はボランティアではない
 9月7日、大会ボランティアとして参加予定の社員324人を集めてキックオフイベントを開いて気勢を上げて話題になった。
 富士通は東京大会に協賛するゴールドパートナーで、語学力などなどを生かしたボランティア活動を社員に呼びかけ、手を挙げた約2千人から選抜したという。
 今後、リーダー役を担うための同社独自の研修や、他イベントでの実地訓練などを行う予定という力の入れようだ。
 ボランティア活動には積み立て休暇や有休を利用して参加してもらう予定だという。
 富士通の広報担当者は「当社はこれまでにも、さまざまなボランティア活動に参加しており、今回もボランティア活動を通じて良い経験を積んで、仕事に生かして欲しい」と話している。
 大会組織委員会は、8万人のボランティアの公募に先だって、大会スポンサーになっている45社の国内パートナーに1社当たり300人のボランティアを参加してほしいと要請を出したという。公募だけで8万人を確保するのが難しいと考えたと思える。

 しかし、冷静によく考えてみると、富士通のボランティアは、「企業派遣ボランティア」で、本来のボランティアではなく、企業のイメージアップを狙う「社会貢献」の範疇だろう。富士通のボランティアは、休暇を利用するにしても、有給休暇で、給料は保証されているである。
 大会組織委員会には、電通、JTB、NTT、東京都などから派遣されたスタッフが大量に働いている。いずれも、組織委員会からは報酬を受け取っていない。しかし、給料は派遣元の組織からしっかり支払われているので「奉仕」でもなんでもない。
 電通、JTB、NTTからボランティアが参加したにしても、富士通のボランティアと同様に給料はしっかり保証されている。さらに、こうした企業は、大会開催の業務を組織員会から受注し、数千億円の収入を得る「業者」なのである。
 もはや、そこには善意も奉仕も感じ取ることはできない。
 巨大なオリンピック・ビジネスの一端を担っている企業のビジネス活動の一環と見なすのが妥当だろう。

「平成の学徒動員」? 文科省とスポーツ庁 ボランティア参加を促す通知
 7月26日、文部科学省とスポーツ庁は、東京オリンピックのボランティアの参加を促す通知を全国の大学や高等専門学校に出した。
 通知では、東京オリンピックのボランティアの参加は、「競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義がある」とし、「学生が、大学等での学修成果等を生かしたボランティア活動を行うことは、将来の社会の担い手となる学生の社会への円滑な移行促進の観点から意義がある」とした。そして「特例措置」として、東京オリンピック・パラリンピックの期間中(2020年7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)は、「授業・試験を行わないようにするため、授業開始日の繰上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能であり、学則の変更や文部科学大臣への届出を要しない」とした。
 学生がボランティアに参加しやすくするために、大会期間中は授業は休みにし、期末試験も行わなず、連休などの祝日に授業を行って欲しいという要請で、こうした対応は文科省への届け出なしに各大学や高等専門学校の判断で自由にできるとしたのである。
 また、これに先立って、4月下旬には、「各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、オリンピック・パラリンピック競技大会等の会場や、会場の周辺地域等におけるボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」とする通知を出し、学生のボランティア参加を促すために、単位認定を大学に求めるている。
 とにかく異例の通知である。
 東京オリンピックのボランティアは、大会ボランティアが8万人、都市ボランティアが3万人、合計11万人を確保する計画だが、これだけ大量の人数が確保できるかどうか疑問視する声が起きて、危機感が漂っていた。
 ボランティアの要求条件は、大会ボランティアで「10日間以上」、都市ボランティアで「5日間以上」、さらに事前の説明会や研修への参加義務があり、働いている人にとってはハードルが高い。一方で「2020年4月1日で18歳以上」という年齢制限がある。そこで大学生や高等専門学校、専門学校の学生が「頼みの綱」となる。
 この「特例措置」対して、明治大、立教大、国士舘大などが東京五輪期間中の授業、試験の取りやめを決定した
 明治大は「自国でのオリンピック開催というまたとない機会に、本学学生がボランティア活動など、様々な形で大会に参画できる機会を奪ってしまう可能性がある」(7月26日)として、五輪期間中の授業を取りやめ、穴埋めとして同年のゴールデンウィークの祝日をすべて授業に振り替えるという。
 立教大も「学生のボランティア活動をはじめとする『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』への多様な関わりを支援するため」(8月9日)休講に。国士舘大も「学生の皆さんがボランティアに参加しやすいよう2020年度の学年暦では以下の特別措置を準備しています。奮って応募してください」(18年8月9日)と呼びかけている。(WEBRONZA 小林哲夫 8月31日)
 しかし、一方で「平成の学徒動員」と反発する声も強い。
 大会組織委員会や東京都が、ボランティアへの参加を呼びかけるのは当然だが、文科省やスポーツ庁が乗り出し、「特例措置」まで設けてボランティアの参加を後押しするのは行き過ぎだろう。「平成の学徒動員」という批判だ巻き起きるのも理解できる。
 善意と奉仕の精神と自発性を重んじるボランティアの理念と相いれない。


ボランティア募集 大会組織委員会/日本財団

オリンピックは巨大なスポーツ・ビジネス
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の4年間(ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ夏季五輪)で51億6000万ドル(約5830億8000万円)の収入を得た。2017年から2020年の4年間(平昌冬季五輪、東京夏季五輪)では60億ドルを優に超えるだろう。また、IOCとは別に2020東京大会組織員会の収入は6000億円を見込んでいるので両者を合わせると1兆円を上回る巨額の収入が見込まれているのである。
 もはやオリンピックは巨大スポーツ・ビジネスで、非営利性とか公共性とは無縁のイベントといっても良い。スポーツの感動を商業化したビック・イベントなのである。
 オリンピックの過度な商業主義と膨張主義は、批判が始まってから久しい。
 そもそも、善意と奉仕を掲げるボランティアの精神とオリンピックは相いれない。
 東日本大震災や熊本地震、北海道胆振地震、西日本豪雨で活躍している災害ボランティアとは本質的に違う。
 
 2012年ロンドン五輪では、7万人の大会ボランティアと8000人に都市ボランティアが参加し、2016年リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアと1700人のシティ・ホストが参加した。
 リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアの内、1週間で1万5000人が消えてしまい、大会運営に支障が出て問題になったのは記憶に新しい。
 また平昌冬季五輪では、2万2000人のボランティアが参加したが、組織委員会から提供された宿泊施設(宿泊料は組織委員会が提供し無料)の温水の出る時間が制限されたり、氷点下の寒さの中で1時間以上、送迎バスを待たされたりして、2400人が辞めてしまった。
 勿論、ボランティアは無償(リオ五輪のシティ・ホストは有償 但しリオ市内の貧困層を対象とした福祉政策の一環)、報酬は一切支払われていない。国際オリンピック委員会(IOC)の方針なのである。
 無報酬のボランティアの存在がなければオリンピックの開催は不可能だとIOCは認識しているのである。
 東京大会組織委の担当者が日当を払うことの是非について、IOCに尋ねた際、「それだとボランティアではなくなる」などと言われたという。IOCのコーツ副会長は9月12日の記者会見で「今後もボランティアに日当を払うことはない。やりたくなければ応募しなければいい」と強い調子で話した。(朝日新聞 9月27日)
 一方、「ブラックボランティア」の著書がある元広告代理店社員の本間龍氏は「今のオリンピックはアマチュアリズムを装った労働詐欺だ」と多額の金が集まるオリンピックでボランティアは大きな役割を担うのだから必要な人員は給料を払って雇うべきだと主張する。(TBS ニュース23 9月26日 「五輪ボランティア募集開始 『ブラックだ』批判のワケ」)
 これに対し、小池東京都知事は、「ボランティアへの待遇は過去の大会と遜色のないものになっている。何をもってブラックだと言うのか分からない」と真っ向から反論した。

 
五輪開催経費、1兆3500億円の削減を迫られている大会組織委と東京都
五輪開催経費(V3) 1兆3500億円維持 圧縮はできず
  12月21日、大会組織委員会と東京都、国は、東京2020大会の開催経費の総額を1兆3500億円(予備費1000億円~3000億円除く)とするV3予算を公表した。
 1年前の2017年12月22日に明らかにしたV2予算、1兆3500億円を精査したもので、経費圧縮は実現できず、V2予算と同額となった。
 2017年5月、IOCの調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮し、総額を1兆3000億円以下にすることを求めたが、これに対し大会組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。
 しかし開催計画が具体化する中で、V2では計上していなかった支出や金額が明らかになったほか、新たに生まれた項目への支出が増えたとして、「圧縮は限界」としV2予算と同額となった。
 
 支出項目別で最も増えたのは組織委負担分の輸送費(350億円)で、選手ら大会関係者を競技会場や練習会場へ輸送するルートなどが決まったことで計画を見直した結果、100億円増となった。一方で、一度に多くの人が乗車できるよう大型車に変更するなど輸送の効率化も図ったとしている。
 また、交通費相当で1日1000円の支給が決まったボランティア経費増で管理・広報費は50億円が増え、1050億円となり、さらに猛暑の中で食品を冷やし、安全に運ぶためのオペレーション費も50億円が増え、650億円となり、支出の増加は合わせて200億円となった。
 これに対して収入は、国内スポンサー収入が好調で、V2と比較して100億円増の3200億円となった。しかし、V2予算では、今後の増収見込みとして200億円を計上していたため、100億円の縮減となり、収支上では大会組織員会の収入は6000億円でV2と同額となっている。
 支出増の200億円については、新たな支出に備える調整費などを200億円削減して大会組織委員会の均衡予算は維持した。
 1兆3500億円の負担は、大会組織委員会と東京都が6000億円ずつ、国が1500億円とする枠組みは変えていない。
 今回の予算には、酷暑対策費や聖火台の設置費、聖火リレーの追加経費、さらに今後新たに具体化する経費は盛り込まれておらず、今後、開催経費はさらに膨らむ可能性もある。
 組織委は今後も経費削減に努めるとしているが、「数百億円単位、1千億円単位の予算を削減するのは現実的に困難」としている。
 大会開催までまだ1年以上もあり来年が開催準備の正念場、さらに支出が増えるのは必至だろう。今後、V3予算では計上することを先送りにした支出項目も次々に明るみになると思われる。「1兆3500億円」を守るのも絶望的だ。
 とにかく「1兆3500億円」は「つじつま合わせ」の予算というほかない。
 
 東京2020大会の開催費用は、「3兆円」に達するとされ、とどまることを知らない経費膨張に強い批判が浴びせられている。国際オリンピック委員会(IOC)もオリンピックの膨張主義批判を意識して、2020東京大会の開催費用の膨張に危機感を抱いて、その削減を強く要請しているのである。
 大会ボランティアの8万人に、仮に1日8000円で10日間、一人当たり8万円を支払うと総額は64億円に達する。
 組織委員会が無償ボランティアにこだわる背景が見えてくる。
 有償の大会スタッフの雇い上げをなるべく少なくして、無償のボランティアで対応し、人件費を削減する、そんな思惑が垣間見える。

 一方、2020東京大会の組織委員会が手に入れるローカル・スポンサー料収入は極めて好調で、V3予算では昨年より100億円増の3200億円を確保したとしている。
 2020東京大会の大会組織員会の予算は6000億円、64億円はそのわずか1%なのである。東京都や国も含めた開催費総額はなんと1兆3500億円、なんとか捻出できる額と思えるが……。
 2020東京大会は、巨大スポーツビジネスイベント、オリンピックの「甘えの構造」を転換するチャンスだ。

 2012ロンドン大会、2016リオデジャネイロ大会にはともに20万人を超えるボランティアの応募があったとされている。
 2020東京大会のボランティアに果たして何人の応募があるのだろうか。


“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」

東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2018年9月27日 初稿
2020年3月8日 改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR

***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
***************************************




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東京オリンピック 朝日新聞社説批判 開催支持 メディア批判

2023年01月04日 10時04分00秒 | 国際放送センター(IBC)


東京オリンピック 朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 「五輪開催」支持


朝日新聞社説 2021年5月26日

5月26日朝刊 朝日新聞社説 「東京五輪 中止の決断を求める」(全文)


8月8日 2020東京五輪大会は閉会式 日本の獲得メダル数 金メダル27 銀メダル14 銅メダル17 過去最高 五輪のバトンは北京冬季五輪2022とパリ夏季五輪2024に  出典 TOKYO2020


大竹しのぶさんが子供たちと一緒に登場し、宮沢賢治作曲作詞の「星めぐりの歌」を合唱し,聖火が消える場面を飾った。
閉会式終了後にInstagramに投稿した大竹さんのコメントはまさに筆者のTOKYO2020への思いと重なる。

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東京オリパラ閉幕 朝日新聞は東京オリパラに対する報道姿勢を検証せよ
 9月5日、東京パラリンピックの閉会式が、13日間の熱戦に幕を閉じた。大会では22競技539種目が開催され、日本は前回リオデジャネイロ大会でゼロだった金メダルを13個獲得。銀は15個、銅23個で、総メダル数は51と過去3大会を大きく上回り、史上最多だった2004年アテネ大会の52個に迫り、パラアスリートの活躍で、多くの「感動」と「勇気」をもらった。
 閉会式は、「多様性の街」をテーマにした演出だったが、なにか雑然とパーフォーマンスが続き、開会式の「片翼のない飛行機」のようなインパクトはなかった印象を持った。
 その中で強烈なインパクトがあったのは「Paris2024」のパラ・アスリートたちのパーフォーマンス、五輪の閉会式に引き続き、「Paris2024」の圧勝。さすが「文化と芸術」の国、フランスには脱帽。
 五輪・パラの閉幕を迎え、最大の問題はメディアの報道姿勢である。五輪に対しては徹底的なバッシングを浴びせ、パラリンピックに対してはまったく沈黙する。その「手のひら返し」姿勢には唖然である。
 コロナ感染状況は、五輪開催時よりパラリンピック開催時の方がはるかに悪化、東京の感染者数は、パラリンピック開催直前には5000人(8月18日)を突破、医療逼迫は現実化して、感染しても治療も受けられない状況に陥っていた。五輪開催時に朝日新聞は、繰り返し医療逼迫の懸念を唱えていた。パラリンピック開催については医療逼迫は黙認するのか。
 パラリンピックの参加者は約4400人、規模は五輪の約半分以下だが、超ビックな国際イベントには変わりはない。
 障害者の祭典、「共生社会」の実現という大義名分があれば、コロナ感染拡大のリスクを黙認していいのか。五輪バッシングに奔走したメディアは、パラリンピック開催に沈黙した「手のひら返し」報道姿勢を明快に説明すると共に、報道対応を冷静に検証すべきだろう。
 朝日新聞は、一面で東京本社社会部長・隅田佳孝の署名記事で「大会を通して突きつけられた社会の自画像から目を背けず、選手たちがまいてくれた気づきの種を育てよう。その先に大会のレガシーはある」と五輪レガシーについて言及する始末。
 また社説では、「パラ大会閉幕 将来に何をどう残すか」と見出しで、「障害の内容や程度は違っても、自らが秘めている能力に気づき、伸ばすことによって、新たな世界が開ける。13日間にわたる選手たちの躍動を通じて、人間のもつ可能性を肌で感じ取った人は多いだろう」として、「選手のプレーに感動し、それをただ消費して終わるのではなく、次代につながる、まさにレガシー(遺産)を残すことに英知を集めねばならない」とレガシー論を述べている。
 まさに「なにをかいわんや」である。朝日新聞は、東京オリンピック・パラリンピックを全否定して「開催中止」を主張したのではないか。

 女子マラソンの道下美里選手やボッチャ個人での杉本英孝選手は、メディアのインタビューで、涙を流して、悲願の金メダルを勝ち取った喜びとコロナ禍で1年延期された上に、開催されるかどうかわからないという不安に包まれる中で、苦悶しながら大会に向けてトレーニングを積んだ苦しさにさいなまれた日々を語った。
 メディアの五輪バッシングが激しく浴びせされる中で、アスリートの五輪大会開催を願う声は完全に封殺された。
 BBCニュースは、「東京五輪、国民が支持を表明しにくい日本」と見出しを掲げ、「アスリートが五輪に出たいと言えない、やってほしいという声があげられなくなっている」と「異論が許されない」日本の異常さを指摘している。
 競技後のインタビューで、アスリートは、口々に、この1年、コロナ禍で練習の場の確保もままならず、歯をくいしばって大会を目標にしてトレーニングを続けた苦悶の日々を語っている。アスリートたちを追い詰めたのはメディアの激しい五輪バッシング報道だ。
 こうしたアスリートたちの活躍で、メダルラッシュに沸き、大きな「感動」と「勇気」がもたらされた。コロナ禍で閉塞した社会に陥っていた日本にほっとする「清涼剤」になったのは間違いない。
 産経新聞は、パラリンピックが閉幕した9月6日の「主張」で、「開催は間違っていなかった。可能性を示した選手に拍手を」と述べた。筆者はこの「主張」を全面的に支持する。
 東京オリンピック・パラリンピック大会については、消え去った「復興五輪」、開催経費の肥大化、女性蔑視発言、開会式演出担当者の相次ぐ辞任など多くの問題点を抱え、批判されてしかるべきである。
 しかしながら、東京オリンピック・パラリンピック大会を全否定をするメディアの報道姿勢には納得できない。

 東京パラリンピック大会終了を待たずに、菅首相は突如、退陣表明。日本は一転して政局の季節に突入した。安倍長期政権とそれ引き継いだ菅政権、日本の政治は節目を迎える。
 いずれにしてもコロナ禍で開催された2020東京オリンピック・パラリンピックは、1964大会に並ぶ、「歴史に残る」大会になったのは間違いない。


9月6日 朝日新聞社説 「パラ大会閉幕 将来に何をどう残すか」

東京パラリンピック開幕 パンデミックの中での「強行」ではないのか?
 朝日新聞は、五輪開会式の日(7月23日)の朝刊で、「五輪きょう開会式 分断と不信、漂流する祭典」という見出しで社説を掲載、「東京五輪の開会式の日を迎えた。鍛え抜かれたアスリートたちがどんな力と技を披露してくれるか。本来ならば期待に胸躍るときだが、コロナ禍に加え、直前になって式典担当者の辞任や解任が伝えられ、まちには高揚感も祝祭気分もない。(中略)
 社説はパンデミック下で五輪を強行する意義を繰り返し問うてきた。だが主催する側から返ってくるのは中身のない美辞麗句ばかりで、人々の間に理解と共感はついに広がらなかった。分断と不信のなかで幕を開ける、異例で異様な五輪である」とした。
 そして、「感染防止を最優先で この1年4カ月は、肥大化・商業化が進んで原点を見失った五輪の新しい形を探る好機だった。実際、大会組織委員会にもその機運があったという。ところがいざ実行に移そうとなると、関係者の思惑が絡み合い、何より国際オリンピック委員会(IOC)と、その背後にいる米国のテレビ局や巨大スポンサーの意向が壁となって、将来につながる挑戦にはほとんど手をつけられなかった」と厳しく批判した。
 これに対して、パラリンピックの開催式が行われた翌日、朝日新聞は、1面で「<視点>共生社会へ、人々つなぐ大会に」という見出しの記事を掲載した。
 パラリンピック・アスリートに対しては、「大会延期決定から1年。選手たちは自国開催への思いを声高に語ることはできず、もどかしさを抱く」としてアスリートを思いやるコメントをのせた。
 そして、「残された体の機能を最大限に生かし、競技で表現する選手の姿は、たしかに心に響くものがある。それでも、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、大会を開く意義は何か。記者も問い直す日々が続く。この大会が、違いを認め合い、わたしたちが生きる希望を見いだせるきっかけになれば、と願う。(中略)4400人の選手たちがそれぞれの思いを胸に臨む。人々がつながるための気づきがきっとある」とパラリンピック開催を「歓迎」し「賛美」するコメントで締めくくった。
 「五輪」と「パラリンピック」に対するこの違いは一体、どうなっているのだろうか。まったく納得できない。「五輪」のアスリートの思いにはまったく「無視」して、「パラリンピック」のアスリートには「共感」を寄せる、朝日新聞はその姿勢の違いを論理的に説明すべきだ。
 「五輪」に対する批判記事を執筆した朝日新聞の記者や論説委員、それに有識者や外部評論家は、パラリンピック開催についてどう考えているかコメントすべきだ。沈黙するのはあまりにもお粗末な対応だろう。
 パラリンピックもさらに深刻化したコロナ・パンデミックの中で「強行」された国際スポーツイベントなのである。

朝日新聞社説 パラリンピック開催は支持「安全対策に万全期して」


朝日新聞社説(8月24日) 「東京パラ大会 安全対策に万全期して」 上記の「東京五輪 中止の決断を求める」の社説と読み比べて欲しい

 今日(8月24)、東京パラリンピックは開会式を開催する。
 朝日新聞は、五輪開催については激しく攻撃を繰り返していたが、パラリンピック開催についてこれまで沈黙を続けていた。
 新型コロナウイルスの「感染爆発」という危機的な状況の中で、「世界各地から選手を招き、万単位の人を動員して巨大な祭典を開くことに、疑問と不安を禁じ得ない」としたが、開催については、「手のひら返し」をして「延期」や「中止」を主張せず、「安全対策に万全期して」して開催して欲しいとする。
 その一方で、「五輪を強行しながらパラを見送れば、大会が掲げる共生社会の理念を否定するようで正義にもとる。そんな思いも交錯して、五輪が終わった後、議論を十分深める機会のないまま今日に至ったというのが、率直なところではないか」と「言い訳」をした。
 「議論を十分深める機会」がなかったとして、世論の責任に転嫁しているが、朝日新聞はパラリンピック開催については「議論を十分深める」ことを行ったのか。これまで沈黙していたのではないか。メディアとしての責任を問う。
 そして、パラリンピック大会開催意義として「選手たちの輝き」を上げ、「大会では障害の程度に応じて多様な競技が展開される。一人ひとりが向き合っているハンデやその前に立ちはだかる壁を、自らに重ね合わせてプレーを見れば、人間のもつ可能性に驚き、励まされることだろう」とし、「純粋なスポーツとしてパラに関心を寄せ、楽しむ人も広がっている。選手たちの安全と健闘を心から祈る」と締めくくった。「五輪」とは一変して「暖かさ」にあふれたコメントだ。
 五輪大会中止を掲げた社説と読み比べて、五輪大会とパラリンピック大会に対する報道姿勢の違いに唖然とする。五輪のアスリートには「輝き」や「人間のもつ可能性に驚き、励まされる」ことはないのか。偏見に満ち溢れた不公正な論評に対して筆者はまったく納得しない。朝日新聞は五輪大会でのアスリートの姿に「感動」や「勇気」を感じ取っていないのか。
 繰り返すが筆者は、障害者の世界最大のスポーツの祭典であるパラリンピックの開催意義は高く評価し、コロナ禍でもその開催を強く支持している。コロナ禍だからこそ「感動」と「勇気」がもらえる大会開催は極めて大きな意味がある。
 朝日新聞は、朝日新聞のコマーシャルで、「スポーツは希望になる」として、1964東京大会の開催に尽力した朝日新聞記者の田畑政治氏を取り上げ、「若者が世界に挑戦する舞台を作り続けた」とし、「憧れを絶やすな」「スポーツのすそ野を広げていく」と宣言している。五輪バッシングを激しく続けた姿勢はどこにいったのか。
 しかし、新型コロナウイルスの感染状況は五輪開催時より更に深刻化して、「感染爆発」、「災害クラス」、医療崩壊は現実化して中での開催を批判しない朝日新聞などのメディアは糾弾に値する。

パラリンピック明日開幕 朝日新聞は、パラリンピックの開催中止をなぜ主張しない
 明日8月24日から、8月8日に閉幕した2020東京五輪大会に引き続き、8月24日から9月5日まで、パラリンピックが開催される。22競技、539種目が1都3県の21の競技会場で開催され、約4400人が参加する世界最大の障害者スポーツの祭典である。
 コロナ禍の大会開催となり、一般観客はすべての会場で受け入れないが、「学校連携プログラム」による小中高生の感染は認めることになった。

 五輪閉幕後も新型コロナウイルスの感染拡大は、更に加速し、「感染爆発」、「制御不能」、「災害レベルの感染猛威」という事態を迎えている。
 全国の新規感染者数(8月20日)は2万5876人、五輪が開幕した時は4377人(7月23日)は4377人、約6倍増、東京では1359人に対して5405人で約4倍と感染爆発が止まらない。
 8月22日、組織委員会は、東京パラリンピックの選手2人を含む、大会関係者30人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表した。パラリンピック関係者の1日の陽性者数としては、過去最多を記録した。
 医療逼迫の懸念は五輪時よりはるかに高まっている。
 東京の入院者数(軽傷中等症)は3968人に達し、病床使用率は66.5%、重症者数は271人に重症床使用率は69.1%、入院が必要な患者が病床が足らなくて入院できないケースが常態化している。医療崩壊が現実化しているのである。
 競技会場で大会関係者に傷病者が出た場合に受け入れる「指定病院」の都立墨東病院が、救急で重症者を受け入れは行うが、「新型コロナウイルス感染症を最優先としながら対応する」という。苦渋の選択である。こうした動きは他の病院にもあるという。都立墨東病院は「開催の是非」を議論すべきだとした。(8月19/20日 朝日新聞)
 こうした状況の中で、朝日新聞はパラリンピック開催の是非を論評する記事を掲載しない。唯一、「パラ学校観戦 割れる判断」(8月18日朝刊)だけが論評記事である。
 あれだけ、五輪開催については激しく批判していた報道姿勢とは一変をしたのには唖然とする。
 五輪開催時には、医療崩壊を理由に五輪開催を激しく批判したに対し、パラリンピック開催については、医療崩壊が現実化しているにも関わらす、開催を一切批判しない。
 朝日新聞はメディアとしての責任をどう考えているか。パラリンピック開催に関する批判をファクトを踏まえて掲載すべきだ。
 新型コロナウイルスの感染状況は、五輪開催を直前に控えた7月上旬より、今の方がはるかに深刻化している。もはや「感染爆発」、「制御不能」、「災害レベル」の感染猛威なのである。
 「オリンピック」と「パラリンピック」とでは開催の理念が異なり、「パラリンピック」は障害者スポーツの祭典であることは十分理解した上で、その開催意義は高く評価したい。
 にもかかわらず、残念だが、今の深刻なコロナ禍の中では、五輪大会以上に、アスリートや大会関係者の感染拡大リスクは「制御不能」と言わざるを得ない。
 また五輪開催で、国民の感染対策に「気の緩み」が生じると激しく批判したが、パラリンピック大会の開催で「気の緩み」は懸念しなくてよいのか。論理的に説明して欲しい。
 朝日新聞は、こうした状況を踏まえて、「パラリンピック」開催是非について、社説などで見解を表明すべきだろう。「沈黙」はメディアとしての責任放棄である。

宮崎商業 東北学院 試合を辞退 大阪桐蔭ブラスバンド 部員感染、甲子園での応援断念
 8月17日、高校野球大会本部は、選手ら5人の新型コロナウイルス陽性が確認された宮崎商業と東北学院が試合を辞退し、これを受理したと発表した。
 宮崎商業では今月14日の夕方、選手1人が発熱し、PCR検査で陽性反応を示していましたが、宿舎に入っているチーム関係者35人が医療機関で検査を受けた結果、発熱した選手を含め13人の感染がわかり、さらに保健所から8人が濃厚接触者と判断された。東北学院は、選手1人の陽性が確認され、選手3人と朝日新聞社の記者1人が濃厚接触者となった。
 高野連と朝日新聞社は、今大会で出場の可否を判断する際「個別感染」か「集団感染」かを重要視していて、宮崎商業については「集団感染」に該当すると判断し学校側に伝え、17日午前、宮崎商業から19日の初戦を前に出場を辞退するという申し出があり受理したとした。東北学院については、大会本部は「個別感染」としたが、東北学院は、出場するれば感染者や濃厚接触者が特定される恐れがありり、生徒の将来に影響を及ぼす可能性を懸念して「辞退」という判断に至ったという。東北学院副校長は「大変残念だが、生徒のプライバシーを守りたい」と述べた。
 宮崎商業と東北学園の対戦予定校は不戦勝になる。宮崎商は13年ぶり5回目の出場、東北学院が初出場だった。
 朝日新聞は、五輪大会では、コロナ感染で棄権した選手が出たことに言及し、「コロナ禍で涙をのんだ選手たちにとって、この五輪は公平だったと言えるのか。悩みながら出場した選手たちの思いは、報われたのだろうか」と主張した。高校野球については同じ主張はしないのか。高校野球の選手たちの思いは受け止めないのか。
 一方、大阪桐蔭吹奏楽部はブラスバンド演奏による応援を予定していたが、同部内に新型コロナウイルス感染者が発生したため、急きょ応援を取りやめた。同部OB会の公式ツイッターが「大切なお知らせ」と題し、「この度、吹奏楽部で新型コロナウイルス感染者が判明したため、本日予定していた甲子園での応援を取りやめる事になりました。楽しみにして頂いていた皆様には大変申し訳ございません」と投稿した。
 ついにコロナ感染は、選手や学校関係者に及び、前代未聞の2校の出場校辞退という状況に追い込まれた。
 更に悪天候の影響で、今日(8月18日)の試合開催も中止、史上最多の6度目の「延期」となり、選手の健康を守るために設けられた「休息日」も3日が設定されていたが、準々決勝後の1日だけに削減された。「強硬日程」に対しての批判記事は一切ない。
 こうした状況の中で、朝日新聞は高校野球の開催をこのまま継続することが適切なのか、論評する記事を一切掲載していない。五輪開催を激しく批判した報道姿勢はどこにいったのか。メディアとしての責任が問われる。

東海大菅生-大阪桐蔭 豪雨に見舞われ8回表でコールドゲーム 7対4で大坂桐蔭が勝利
 大会3日目の第一試合、東海大菅生-大阪桐蔭の試合は8回の表、東海大菅生の攻撃の最中に中断、甲子園球場は豪雨でグランドは水浸しになっていた。 雨は降りやまず、その後、ノーゲームが宣告され、8回表でコールドゲームとなり7対4で大坂桐蔭の勝利となった。しかし問題は、「中断」の判断は遅すぎたことだ。雨は5回頃から激しさを増し、中継映像を見ていても雨で明らかに視界がなくなり、グランドは水たまりになっていた。なぜ試合が成立する7回前に判断してノーゲームとして再試合にしなかったのだろうか。雨で延期が相次いでいる中で、強引に試合消化を優先させた運営姿勢は非難されてしかるべきだろう。とくかく大会本部は、なにがなんでも「開催ありき」、明らかにアンフェアな判断だった。
 NHKは、生中継番組で、「続行やむなし」を言い続けて、7回に入る前に「中断」について言及しなかったNHKアナウンサーと解説者の責任も問われる。

甲子園に入場認める学校関係者の範囲を制限
 8月20日、高野連と朝日新聞社は、阪神甲子園球場に来場できる代表校の学校関係者を、野球部員とその家族らに制限すると発表した。新型コロナウイルス感染の急拡大や、球場がある兵庫県が緊急事態宣言の対象になったことを受けた措置で、22日から適用する。
 来場者は代表校の校長が健康状態を管理できる野球部員や家族(選手・指導者1人につき3人まで)、教職員のみとする。吹奏楽部員やチアリーダー、一般の生徒らは来場できなくなる。
 これに先立って大会本部は16日に、学校関係者を生徒、保護者、教職員、野球部OB・OGらに限定し、それ以外の卒業生などを対象から外し、入場を認めている学校関係者の範囲を大会第5日(17日)から制限すると発表した。学校関係者の定義を生徒、保護者、教職員、野球部員だった卒業生とし、校長が氏名、連絡先などを管理できる人にした。
 第7日(19日)までについては返券に応じ、この措置に伴っての移動、宿泊のキャンセル料は主催者が負担するとした。
 しかし、「校長が氏名、連絡先などを管理できる人に限る」としたことで、これまでの「学校関係者」とは一体何だったのかという疑問がわく。学校が甲子園で観戦したいという人を募って、一般市民でも幅広く観戦が可能だったのではという疑念が生まれる。だとすればなんとも杜撰な「制限」と言わざるを得ない。
 また、代表校の関係者の感染者が出ても、「個別感染」か「集団感染」かを見極めて「個別感染」と見なされれば、チームとしての試合の出場は認められる可能性があるとしている。しかし、代表校の関係者は同じ宿舎に宿泊をしていて、練習、移動などは常に同一行動、マスク着用で「密」は避けるにしても、感染者が発生したら、「個別感染」か「集団感染」にかかわらず、感染リスクは極めて高くなるのは明らかだろう。朝日新聞は五輪大会で「個別感染」か「集団感染」の区別について言及したのか。高校野球だけなぜ特別扱いするのか説明を求めたい。
 「開催ありき」の姿勢はまさに高校野球にある。

朝日新聞は高校野球関係者のコロナ感染者を公表せよ 選手1人陽性 朝日新聞記者も濃厚接触者で待機

速報 宮崎商業の選手ら5人がコロナ感染
 高野連=日本高校野球連盟や朝日新聞は、宮崎商業の選手1人が14日夕方に発熱し、15日に病院でPCR検査を受けたところ陽性反応を示し、これを受けてほかの選手などもPCR検査を受けた結果、16日朝までに新たに選手など4人の感染が確認されたことを明らかにした。
 感染が確認された5人を含むチームの関係者は濃厚接触者について保健所の判断が出るまで宿舎の個室でそれぞれ待機している。
 宮崎商業は18日、第1試合で智弁和歌山高校との初戦に臨む予定になっている。
 大会主催者は、出場の可否について、濃厚接触者についての保健所の判断を待って緊急対策本部の会議を開き決定するとしている。
 一方、政府は今月31日までを期限に「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を適用している兵庫、京都、福岡にも新たに「緊急事態宣言」を発令する方向で検討が進められている。朝日新聞は、「緊急事態宣言」のが発令された東京で、五輪開催を行うことに対して強く批判をした。兵庫に「緊急事態宣言」が発令されたら、朝日新聞は「高校野球開催」を予定通り無批判に続けるのだろうか。主催者として、メディアとしての説明を強く求める。

朝日新聞社は「高校野球大会中止」を検討しないのか
 日本人選手のメダルラッシュで沸いている五輪大会の開催中の7月27日、東京都の新型コロナ新規感染者数が過去最多となったことを受け、菅首相は、オリンピックを中止するという選択肢はあるかとの質問に対して、オリンピック中止の可能性を否定した。
 菅首相は、コロナ感染の再拡大が進む中で、朝日新聞社を始め、メディア各社から、オリンピック中止の可能性を再三に渡って問われていた。
 8月12日、朝日新聞は、一面トップで「31都道府県『感染爆発』」とい見出しを掲げ、厚労省の専門家組織は首都圏を中心に「もはや災害時の状況に近い局面」だと強い危機感を示したと伝えた。最早、日本は「感染爆発」の危機に立たされているのである。
 こうした中で8月10日に朝日新聞社と高野連が主催する夏の甲子園大会が開催されている。今日は雨のために中止となり、試合は明日以降に順延となった。
 朝日新聞などメディアは、五輪開催については、コロナ感染者が急速に増加している中、「中止の可能性」について、必要に菅首相に迫った。
 しかし、「感染爆発」の危機に突入したという局面の中でも、主催者である朝日新聞社は「高校野球中止」問題について言及をしない。開催を懸念する記事すら一切ない。
 筆者はこうした朝日新聞の報道姿勢にまったく納得しない。
 朝日新聞やメディアが五輪に対しては「中止の可能性」について菅首相に迫ったと同様に、高校野球の「中止」の可能性を朝日新聞社に問いたい。メディアとしての良心と正義が問われている。
 コロナ感染者爆発の危機は、明らかに五輪開催時を上回っている。


8月12日 朝日新聞1面 「31都道府県『感染爆発』」

朝日新聞は「高校野球」だけを特別扱いするな!
 8月10日、夏の高校野球大会が開幕した。開会式の選手宣誓で、小松大谷(石川)の木下仁緒主将は、「1年前、甲子園という夢がなくなり、泣き崩れる先輩たちの姿がありました。しかし、私たちはくじけませんでした。友の笑顔に励まされ、家族の深い愛情に包まれ、世界のアスリートから刺激を受け、一歩一歩歩んできました」と述べ、「人々に夢を追いかけることの素晴らしさを思いだしてもらうために、気力、体力を尽くしたプレーで、この夢の甲子園で高校球児のまことの姿を見せることを誓います」力強く締めくくった。
 「夢の甲子園」で高校球児が見せる「感動」と「勇気」そして、「希望」は、コロナ禍の中で閉塞感が溢れている今の日本の中で、後世に残るレガシーになる大会になることは間違いない。
 しかし、筆者は、朝日新聞の「五輪」に対する激しい批判と「高校野球」に対する報道姿勢に大きな疑問を抱く。
 五輪大会を目指したアスリートへの思いは無視して、高校球児の思いはしっかり受け止める、五輪あるリートの思いと高校球児の思いに違いはあるのか、朝日新聞に問いたい。
 五輪大会を社説で「中止勧告」をしたり、五輪バッシングを執拗に繰り返した姿勢への反省が一切ない。五輪は開催反対で、高校野球はなぜ開催なのか明快な説明が欲しい。
 夏の甲子園大会は、夏のスポーツビックイベントして全国的に絶大な人気がある。甲子園大会の関心の高まりは、出場校のある地域などを中心に、「人流」が増え、市民のコロナ対策への「気の緩み」を誘発するのは間違いない。
 朝日新聞は、五輪開催で市民の「気の緩み」が生まれ、「人流」が増加して、コロナ感染が増加する懸念を繰り返し指摘した。しかし、夏の甲子園大会ではその懸念がないのか。朝日新聞は明快な説明をすべきだ。五輪大会だけ、批判をして高校野球の悪影響には眼をつぶる報道姿勢には、まったく唖然とする。
 新型コロナウイルスの新規感染者は、高校野球が開幕した8月9日、全国で1万2073人、重症者は1190人と五輪が開催された7月23日に比べて倍以上になり、感染状況は更に悪化している。地元大阪や兵庫の新規感染者数は、大阪で995人、兵庫で275人に及び、病床占有率は40%を超えている。コロナのパンデミックは、五輪開催の時よりも更に悪化している。

 朝日新聞は、五輪開催による医療体制逼迫を厳しく警告した。しかし、夏の甲子園大会の開催で、地元の大坂、神戸の医療体制逼迫を警告する記事は一切ない。大坂、神戸の医療体制は崩壊寸前であろう。なぜ医療体制に言及しないのか朝日新聞は説明するべきだ。ちなみに五輪関係者で、コロナ感染で入院した人は、わずか4人で、五輪関係者のコロナ感染による「医療崩壊」は起きなかった。また、海外から来日した選手や大会関係者から、日本の市民にコロナの感染が広まったというファクトは今の所はない。
 また、多くの専門家やメディアは、五輪開催で「気の緩み」が生じて、「人流」が増して感染拡大に輪をかけたとしているが、印象論に基づいた発言、エビデンスがない。五輪開催で本当に「人流」は増えたのか。むしろ「巣ごもり観戦」で外出は減ったのではないかと筆者は分析する。

 8月10日、東京都医学総合研究所は、GPS の移動パターンからレジャー目的の人流・滞留を推定して、主要繁華街にレジャー目的で移動・滞留したデータを抽出して、主要繁華街 滞留人口を推定した。
 その結果によると、夜間滞留人口は、前週より 4.5 % 減少、6週連続の減少となった。7週前(6/20-26)と比較すると 30.2 % 減 となる。昼間滞留人口や、前週より 2.5% 減少、5週連続の減少となった。6週前(6/27-7/3)に比較して:19.7% 減 である。このデータを見ると、五輪開催が「人流増」につながったとするエビデンスはない。
 五輪と「人流増」の関係は、印象論でなく、エビデンスで論議するべきだろう。

 今年の夏の甲子園大会では、一般の観客は入れないが、参加各校の関係者や応援団などは1校当たり2000人を限度に入場を認めた。全国から選手や学校関係者が、交通機関や貸し切りバスを連ねて甲子園に集まる。
 政府や専門家は、感染防止策としてお盆を迎える中で「県境超える移動」の自粛を強く要請している。高校野球の開催はこうした要請に明らかに背反していることは間違いない。主催者の朝日新聞はこれをどう説明するのか。

 朝日新聞の論説委員・郷富佐子氏は「日曜に想う 『パラレルワールド』で起きたこと」とタイトルで、ボート競技のイタリア男子代表、ブルーノ・ロゼッティ選手 
がコロナ検査で陽性となり試合への出場ができなくなったり、サーフィン男子のポルトガル代表など、コロナ感染で棄権した選手が複数いたことに言及し、「おそらく今晩の閉会式で、バッハ会長は、高らかに「困難を乗り越えた東京五輪の成功」を宣言するだろう。 だが、いま一度、問いたい。コロナ禍で涙をのんだ選手たちにとって、この五輪は公平だったと言えるのか。悩みながら出場した選手たちの思いは、報われたのだろうか」と結論づけた。
 筆者は、郷富佐子氏に問いたい。
 今年の高校野球大会では、優勝候補筆頭の東海大相模高校で関係者31人が感染するというクラスターが発生し、県大会の出場を辞退、強豪校の福井商業や星稜(金沢市)、中越(長岡市)も感染者を出して県大会の出場を辞退している。
 こうした状況の中で、今年の高校野球は、「公平」だと言えるのか。
 朝日新聞の、ファクトを無視したアンフェアな五輪バッシング報道姿勢には唖然とする。

 さらに問題なのは、社説で「五輪反対」を唱えながら、五輪大会を支援するオフイシャル・サポーターを辞退せず、「経営と記事は別」として、スポンサーとしての営業活動を続けたことだろう。日本選手のメダルラッシュに沸くと、朝日新聞は、「手のひら返し」で五輪批判記事を引っ込めて、アスリートの「感動」と「称賛」の記事で紙面は溢れかえった。開催期間中は連日号外を発行し、日本選手の活躍を讃えている。号外には、しっかりスポンサーの広告も掲載、広告料収入もしっかり得ている。五輪を激しく批判しておきながら、アスリートへの「感動」を「売り物」にしている営業姿勢は問われてしかるべきだ。

 ライバルの読売新聞が7~9日に実施した全国世論調査では、東京五輪が開催されてよかったと「思う」は64%に上り、「思わない」の28%を大きく上回った。
 朝日新聞は、8月9日の1面で、東京本社スポーツ部長・志方浩文氏は「確かな理念を伝えられぬまま、東京五輪は終わった。でも、まだできることはある。組織委がすべての反省点を洗い出し、持続可能な五輪につなげる提案ができたなら、レガシーと言えるものになる」と述べた。
 しかし、検証しなければならいのは、組織委だけでなく、五輪ネガティブ報道に終始した朝日新聞の報道姿勢にある。朝日新聞の記者はすべて五輪ネガティブ報道を支持したのか。異論はなかったのか。社内で、五輪ネガティブ報道に対して、「ものを言えない」雰囲気がなかったのか。
 激しく五輪開催を批判する記事を執筆した記者の人たちに問いたい。
 五輪開催時よりより深刻になっているコロナの感染状況の中で、高校野球を開催することに何の疑問も持たないのか? 朝日新聞が主催するイベントだから批判はしないのか。ジャーナリストとしての正義が微塵も感じられない。
 
 朝日新聞を中心とするメディアの激しい五輪バッシング報道で、社会全体に、「五輪開催支持」だがそれを唱えられないという雰囲気が蔓延した。メディアに登場する評論家や有識者の多くは、ほとんど盲目的に五輪反対に追随した。まるで五輪反対を主張しないとまづいのではと思っているがごとくの無節操な大合唱を繰り返した。冷静にファクトを見つめる姿勢がない。
 こうした五輪バッシング報道で、追い詰められたのは、五輪を目指してきたアスリートたちである。
 競泳日本代表の池江璃花子選手は、ツイッターで「(東京五輪代表を)辞退してほしい」「(五輪の開催に対して)反対の声をあげてほしい」といったメッセージが複数寄せられていることを明かした。
 池江選手は「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然のことだと思っています」としながら、2019年2月に白血病と診断されたことを受けて、「持病を持ってる私も開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています」と書いた。
 そして、「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」とコメント。「この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守ってほしいなと思います」と苦しい胸を内を明らかにした。
 アスリートの多くは、「五輪開催」を唱えたくても唱えられない状況に追い込まれたいただろう。社会全体に「ものを言えない」閉塞状況が覆った。まさに五輪反対ファシズム、冷静な議論の場を確保するデモクラシー社会を放棄した。
 こうした状況を生み出したのは朝日新聞を中心とするメディアの責任だ。メディアの責任は極めて重い。

 筆者は、改めて明快にしておきたいのは、熱烈は高校野球ファン、毎年、テレビ中継に1日中かじりついている。去年は中止になり本当にがっかりした。コロナ禍の中でも、感染防止対策を進めながら開催する姿勢を支持したい。コロナとの戦いは長期戦になるのは間違いない。コロナ禍だからこそ、スポーツイベントの開催を簡単に諦めるのではなくて、なんとか開催して、国民に「感動」と「勇気」を与えていくことが必須だろう。
 「五輪」も「高校野球」もまったく同じだ。

 一方で、筆者は五輪の在り方に全面的に賛同しているわけではない。
 止まることを知らない肥大化、膨大に膨れ上がる開催経費と地元負担の重圧、過度な商業主義、国際オリンピック委員会(IOC)の閉鎖的な体質や「浪費」体質、賄賂が横行する腐敗体質など厳しく批判を続けてきた。
 また完全に吹き飛んだ「復興五輪」の開催理念や招致を巡る贈収賄疑惑、放射能汚染水を巡る安倍前首相の発言問題も問い続けたい。この姿勢は変わることはない。
 しかし、筆者はオリンピックの開催理念、「多様性」と「調和」は支持したい。
 「分断」と「対立」を超えるツールとして「スポーツの力」を信じたい。


7月27日 朝日新聞号外

メダリストの涙の裏に「追い詰められた1年」の苦悶を見た
 五輪開催に対してメディアは連日のように激しい「五輪バッシング」を浴びせ続けた。
 BBCニュース(6月12日)は、「(日本)国内の議論は極めて感情的なものとなった。異なる意見は許されず、開催に前向きな思いをもつ人はそれを表明するのを恐れた。その影響はアスリートにも及んだ。白血病から復帰して競泳の東京五輪代表に内定し、多くの人に感動を与えた池江璃花子選手には、出場辞退を求める声がソーシャルメディアで寄せられた。彼女は、『このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事』である反面、『それを選手個人に当てるのはとても苦しい』とツイートした。中村知春選手も、『東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかってるから。 別に何も考えてない訳じゃない』とツイッターに投稿した」と伝えた。
 アスリートが五輪に出たいと言えない、開催してほしいいう声が上げられなくなっていた。
 アスリートを追い詰めたのは、メディアの激しい「五輪バッシング」だったのは間違いない。
  メダルを獲得して表彰台に上がったアスリートには、笑顔と同時に涙があった。筆者は、涙の裏に、コロナ化で練習もできない一方で、目標としている五輪大会開催に激しい批判が浴びせられて苦悶し続けていた姿をアスリートの姿を見た。
 柔道、競泳、卓球、ソフトボール、そして史上最年少の金メダリストが出たスケートボード、五輪大会には、「感動」と「勇気」がもらえる。
 朝日新聞は、五輪大会の「感動」と「勇気」を伝える資格がない。

「金メダルラッシュ」 コロナ禍の中で「感動」と「勇気」を与えてくれるアスリート
 2020東京五輪大会は、開会式のNHK中継番組が、56・4%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)という「驚異的」視聴率を獲得し、1964年東京五輪の61・2%に迫った。瞬間最高は61・0%に達したという。
 序盤戦の日本人選手の活躍は目覚ましく、「金メダル」ラッシュである。柔道では阿部詩選手と阿部一二三選手の兄妹が揃って金メダルに輝く。兄妹の同時金メダルは初の快挙である。競泳400メートル個人メドレーでは大橋悠依選手が完勝して金メダル、新種目のスケートボードでは堀米雄斗選手も金メダルを獲得した。
 そして、今日(7月26日)は、スケートボード女子ストリートで13歳の西矢椛選手が日本選手で史上最年少となる金メダルを獲得、また、16歳の中山楓奈選手が銅メダルを獲得した。五輪大会の新競技で2人の10代のメダリストが誕生した。夜になって柔道男子73キロ級で、大野将平選手が二連覇を達成した。
 こうした日本人選手の大健闘で、東京五輪大会の熱気は一気に高まった。アスリートの活躍は、コロナ禍で閉塞感が溢れる中で、ひときわ感動と勇気をもたらしてくれる。
 朝日新聞は、7月26日の朝刊の1面トップで初めて、「大橋 堀米 阿部一 阿部詩 金 兄妹で『金』 家族とともに」という見出しで、五輪大会での選手の活躍を讃える記事を掲載した。スポーツ面でも同様な趣旨の特集記事を掲載している。五輪大会に対する「熱気」を明らかに高める記事だ。
 これまで、朝日新聞は、五輪大会に対して痛烈な批判を繰り返してきた。その姿勢はどこにいったのか? 金メダルラッシュが続けば五輪批判はやめるのか? 余りにも節操がない「手のひら返し」のお粗末な報道姿勢である。
 朝日新聞は「五輪開催中止」を声高に社説に掲げて、五輪開催の意義すら否定したことを忘れたのだろうか。
 メディアは姿勢の一貫性が求められる。さもないとメディアとして最も重要な「信頼性」を失うだろう。


「大橋 堀米 阿部一 阿部詩 金 兄妹で『金』 家族とともに」 一転して日本選手の活躍を1面トップで報道 朝日新聞 7月26日 朝刊1面 

夏の高校野球大会 一般観客はなし 学校関係者は入場は認める
 7月22日、朝日新聞社と日本高等学校野球連盟は、第103回全国高等学校野球選手権大会を8月9日から25日まで(雨天順延)、北海道、東京から2校ずつ、45府県から1校ずつの計49代表校が出場して、阪神甲子園球場(西宮市)で開催すると発表した。選手や大会役員・スタッフらがPCR検査を複数回受けるなどの新型コロナウイルス感染防止対策に万全を期すとしている。
 焦点の観客の受け入れについては、一般の観客の入場は止めて、代表校の学校関係者に限り受け入れることとした。
 観客受け入れの可否については、政府や兵庫県などの大規模イベント実施の指針、「観客上限1万人」を踏まえた上で、入場者数を大幅に制限するケースを検討してきたが、全国各地から観客が来場し、長時間観戦することで感染リスクが高まる恐れがあることから、今回の判断になったという。
 なお、各代表校の生徒や保護者らについては当該試合に限り、入場可能とした。
朝日新聞社は「五輪中止」と主張して「高校野球」は「開催」するのか
 新型コロナウイルスの新規感染者は、東京で約2000人、全国で約5000人と爆発的増加が止まらない。お盆が終わる8月末には、更に増えるという予測がされている。
 状況は更に悪化しているのは間違いない。
 「五輪中止」の根拠として、大会を開催すると、県境を越えて全国からの「人流」が増加することを上げている。高校野球を開催したら、全国各都道府県から49代表校が甲子園に集まる。さらに1校当たり約2000人の学校関係者の入場を認めるために、全国から延べ10万人近い人が甲子園にやってくる。参加者の満載した専用バスを何十台も連ねて、甲子園から遠い地域では12時間以上かけて往復する光景が繰り広げられる。狭い社内に缶詰状態になり感染リスクは極めて高い。
 政府や感染が拡大している首都圏は、「県境をまたぐ不要不急の移動は控える」、「ステイホーム」を訴えている。
 高校野球の開催は、こうした方針に明らかに背くもものである。
 「五輪開催」は、こうした「人流」増は、感染者の増加を招き、医療の逼迫を招くと主張していたのではないか。
 また、「五輪開催」で、大会の雰囲気が高まり、気が緩むのが問題とする論拠も出された。高校野球は夏のスポーツイベントとして、絶大な人気を誇る。地元の高校が勝ち進めば、熱気が沸き上がるのは当然であろう。高校野球で熱気が沸き上がるのは許されて、五輪大会ではなぜだめなのか。納得のいく説明が欲しい。
 また高校野球の宿舎は、西宮周辺の旅館やホテルだが、選手たちは個室ではなく、「大部屋」と宿泊となる。五輪の選手村の環境よりはるかに悪い。
 筆者は、高校野球を「中止」を主張しない。高校球児の夢と希望をかなえるために是非開催すべきだと考える。学校関係者を受け入れるのも賛成である。
 同様に、五輪開催は支持、無観客ではなくて限定的ではあるが有観客で開催すべきだ。
 五輪に参加する世界のアスリートの夢と希望は、高校野球球児と同様に大切にすべきだろう。
 朝日新聞は、五輪報道、そして高校野球報道で、こうした疑問に答えて欲しい。 


朝日新聞 7月22日 「全国高校野球選手権大会 8月9日開幕 ころな対策に万全を期します」



「前例なき五輪、光も影も報じます」 朝日新聞表明
 7月21日、朝日新聞は、「前例なき五輪、光も影も報じます」という見出しで、ゼネラルエディター兼東京本社編集局長の坂尻信義氏の署名入り記事を1面で掲載した。
 「緊急事態宣言下の東京を主な舞台に、過去に例のない五輪が始まろうとしています。(中略)選手や関係者たちは、延期が決まってからの1年4カ月間、不安や葛藤にさいなまれてきたはずです。今日から始まる競技では、選手たちが重ねてきた努力の成果を存分に発揮してほしいと心から願っています」とした。
 一方で、選手や関係者は、外部との接触が制限される「バブル」の状況にほころびが目立ち、クラスター(感染者集団)が発生する恐れがあるとして、医療体制に負担をかけ、「平和の祭典」が、人々の健康や生命を脅かしかねないとした。
 五輪開催による感染拡大の批判は、当初は、大量の観客がスタジアムに押し寄せることに感染リスクに対してであった。しかし、「無観客」となって、「1万人」ともされた大会関係者の参加に批判が向けられたが、大会関係者が大幅に縮減されることになり、五輪リスクを主張する根拠がなくなった。そもそも、国立競技場などスタジアムの感染リスクはほとんどない。プロ野球やJリーグで観客のパンデミックが発生したことはない。科学的なファクトを無視している。
 そうすると、今度は、五輪開催で国民の間に高揚感が高まり、「人流」増可や、気が緩んで感染防止対策が甘くなり感染リスクが増すと主張が変わった。まさに、感情的な印象論での批判で、科学的なファクトの裏付けがない。
 問題は、五輪ではなくで、全国で3758人、東京で1387人に達した新規感染者の「爆発」だろう。渋谷や新宿の繁華街の「人流」は緊急事態宣言が出されたにも拘わらず、減少する様子はない。この「感染爆発」は、五輪は関係なく、五輪はむしろ「感染爆発」の被害者なのである。
 選手や大会関係者の「バブル体制」には、確かに「ほころび」があるが、それが原因でパンデミックが広がっている状況はない。選手や大会関係者の陽性者連日のように報告され、計67人(内選手3人、7月20現在)が出ているが、連日検査体制を実施すればある程度の陽性者が出るのは「想定内」だろう。
 2012ロンドン大会で公衆衛生ディレクターを務めたブライアン・ライアン氏は、IOCの会見で、「感染者は想定より少ない。選手村は安全だ」と語った。
無症状感染者は有症症状感染者の数割以上は存在すると考えるのが常識だ。東京で検査体制を充実させたら、連日300人近い、陽性者が新たに検出されるに違いない。
 五輪開催で医療体制の崩壊を指摘しているが、今の所、選手や大会関係者で入院している人はいない。医療体制に対する負荷はない。
 医療体制の逼迫は、全国で3758人、東京で1387人の新規感染者で引き起こされるのである。五輪のせいにするのは筋違いだ。
 坂尻氏は、「無謀な続行は、五輪の精神にもとる」として、「パンデミックのさなかに再延期や中止を選択しなかったことの是非は、問われ続ける」と明言した。
 筆者は、コロナ禍で社会全体を覆っている閉塞感を拭いさるため、少しでも「感動」と「勇気」がもらえる五輪大会は開催すべきと考える。勿論、感染防止対策は、最大限、実施するのは条件だ。
 新型コロナウイルスとの闘いは、長期間になることは必至の情勢だ。そこで必要になるのは、「withコロナの時代のニューノーマル」への模索である。五輪大会も、スポーツイベントも「中止」ではなくて開催の道を模索すべきだろう。感染防止策を講じながら、飲食店、酒類の提供、ショッピングセンター、劇場、コンサートの再開を目指し、市民生活を極力もとに戻すための知恵が求められる。
 「緊急事態宣言」、「重点措置」、「人流」の抑制、飲食店規制の手法では、最早、国民の支持は得られず、「コロナに打ち勝つ」ことはできない。
 コロナ・パンデミックの中で、開催をやり遂げることで、感染症の脅威にさらされ続ける時代へのレガシーにして欲しい。
それにしても「大会中止」を主張した朝日新聞は、五輪報道を自粛して、スポンサーを辞退すべきだ。


7月21日朝刊 朝日新聞 「前例なき五輪、光も影も報じます」

朝日新聞は「大会を盛り上げる」記事の掲載は止めるべきだ
 いよいよ23日には、開会式を迎え、五輪大会が始まる。
 朝日新聞を始め、各紙やテレビは、「反五輪」の主張を繰り返し、その論拠として、五輪開催期間中に日本選手の活躍などがあると五輪大会の機運醸成が巻き起こり、「人流」が増えたり、市民の気が緩んで感染対策が甘くなり、感染者が急増して医療崩壊が起きることを上げている。尾身茂政府分科会の論拠も同じである。
 しかし、大会の雰囲気を盛り上げるのは新聞各紙やテレビなどのメディアであろう。片方で懸念を示しながら、片方で「雰囲気を盛り上げ報道」に加担するのは納得がいかない。「反五輪」の主張を繰り返した筋を是非貫いて、五輪の「雰囲気を盛り上げ報道」は止めるべきだろう。
 日本人選手が金メダルをとろうが、日本代表チームが大健闘しようが、大会の雰囲気を盛り上げる報道は、自粛してほしい。
 社説で、「五輪開催反対」を唱えたことを忘れるべきでなない。

東京オリンピック メディア批判 「五輪開催」すべき 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末
開催実現で「Withコロナの時代のニューノルマル」をレガシーに


羽鳥慎一モーニングショー批判 玉川徹批判 ファクトチェック 検証五輪バッシング報道 五輪ポピュリズムを廃す 
 

朝日新聞「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」 社説掲載。
 5月26日掲載された社説では「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」主張した。
 これまで、朝日新聞は、五輪開催に関しては「疑問」は提起したが、「中止」を明確に掲げることはなかった。
 しかし、この社説は、「冷静」に事実を認識する姿勢に欠ける思考停止状態のメディアの典型で、納得できない。
 五輪を中止すれば、コロナ感染拡大は収まる、すべては五輪が「悪者」とする単純化した構図が透けて見える。
 しかし、五輪を中止しても感染は収まらない。感染拡大が収まらないのは、未だに「三密回避」、「マスク着用」、「人流抑制」に頼る前世紀型のコロナ対策のお粗末さである。ワクチンや検査体制で、世界で圧倒的に遅れたツケである。批判すべきなのは、政府の感染防止対策の失敗だろう。
 筆者はあくまで「開催支持」、TOKYO2020を開催して「Withコロナの時代のニューノルマル」を示すべきだと考える。
 
 社説では、「生命・健康が最優先」を掲げ、「国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長が先週、宣言下でも五輪は開けるとの認識を記者会見で述べた。
 だが、ただ競技が無事成立すればよいという話ではない。国民の感覚とのずれは明らかで、明確な根拠を示さないまま「イエス」と言い切るその様子は、IOCの独善的な体質を改めて印象づける形となった」とする。
 「生命・健康が最優先」は当然だが、五輪開催が引き金になって「生命・健康」が脅かされる可能性はどの位のリスクがあるか印象論ではなく、科学的に冷静に分析してほしい。
 4月下旬に国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会が発表した「プレイブックV2」はこれまでにない厳格なコロナ対策が示された。さらに、来日する選手などの約80%はワクチン接種を終えているという。
 こうした対策で感染拡大が発生するリスクは少ないと考える。印象論で五輪開催を批判するのは誤りだ。
 5月23日に発表された東大院准教授のグループの「感染者試算」によれば、海外の選手や関係者ら入国者数は10万5千人、ワクチン接種率が50%として試算した結果、都内における1週間平均の新規感染者数で約15人、重症患者数で約1人、上昇させる程度にとどまり、「入国・滞在の影響は限定的」と結論づけた。
 こうした分析を朝日新聞はどう分析しているのか。

「開催中止」を主張しながら、「五輪のレガシー」論を展開した支離滅裂の紙面
 朝日新聞社が社説で、「中止の決断を首相に求める」という記事を掲載した同じ日の朝刊では、「ジェンダー平等を五輪のレガシーに 橋本聖子・大会組織委会長に聞く」という朝日新聞が開催してフォーラムを元にした記事を掲載している。フォーラムには大会組織委ジェンダー平等推進チームの小谷実可子氏や元女子サッカー日本代表の大滝麻未氏なども加わっている。
 社説で「開催中止」を主張しておきながら、もう一方で、「ジェンダー平等」を2020東京五輪大会開催のレガシーにしようと訴える記事を掲載するのは、どう考えても矛盾する。大会を中止するなら。レガシー論はまったく不要である。東京2020大会の開催経費は、組織委の予算だけでも1兆6440億円、開催を中止すれば、この膨大な金額が吹き飛ぶ。まさに空前の「負のレガシー」となるのは必須である。「開催中止」を主張するなら、「ジェンダー平等を五輪のレガシーに」ではなくて、次世代に重くのしかかる「負のレガシー」を検証する記事を掲載すべきだろう。
 今後、朝日新聞は、紙面で「開催中止」を念頭に置いた五輪報道紙面を構成すべきだ。さもないとジャーナリズムとしての信頼は喪失するだろう。

 社説とコラムなどの評論記事は基本的に違う。コラムなどの評論記事は、さまざまな意見を持つ人々が活発に議論を展開する場である。五輪開催支持論、中止論、双方が記事されるのが望ましい。読者は多角的な主張を期待している。
 一方、社説は、「新聞社」としての主張である。コラムなどの評論記事とは位置づけが違う。朝日新聞社は社説の重みを理解しているのだろうか。

東京オリンピック 朝日新聞は東京五輪の「オフイシャルパートナー」を返上せよ
 朝日新聞社は、2020東京五輪大会の「オフイシャルパートナー」になり、東京五輪大会の協賛社に名を連ねている。朝日新聞社が大会組織委員会に支払う協賛金は、約60億円(推定)以上とされ、昨年末、「1年延期」に伴い、追加の協賛金を支払うことに合意している。
 朝日新聞社は、「tier2」の「オフイシャルパートナー」になることで、呼称の使用権(東京2020オリンピック競技大会、東京2020パラリンピック競技大会など)やマーク類の使用権(東京2020大会エンブレム、東京2020大会マスコット)を得て、朝日新聞のPRに利用することができる。
 60億円以上支払って五輪開催をサポートをすることで、五輪のブランド力を利用して部数拡大やメディアとしてのプレゼンスに寄与させるのがその狙いであろう。
 ライバルの読売新聞社、毎日新聞社、産経新聞社もいずれもスポンサーに加わっており、朝日新聞社としても五輪で遅れをとるわけにはいかない。
 5月26日、朝日新聞は「中止の決断を首相に求める」という社説を掲載。「誰もが安全・安心を確信できる状況にはほど遠い」として、「五輪を開く意義はどこにあるのか」と疑問を投げかけ、「そもそも五輪とは何か。社会に分断を残し、万人に祝福されない祭典を強行したとき、何を得て、何を失うのか。首相はよくよく考えねばならない」として、五輪開催をほぼ全否定した。
 しかし、朝日新聞社は「オフイシャルパートナー」を続けて、五輪のブランド力をフルに活用することで営業力の強化につなげる一方で「五輪中止」を社説で掲げるのは、まったく納得できない。
 朝日新聞社は、社としての方針と紙面は違うと釈明するが、「見識」が求めらるジャーナリズムとしては、余りにも恥ずべき発言だろう。
 朝日新聞は、今後、紙面で五輪開催を後押しするようなポジティブな内容の記事は掲載するべきでない。社説の主張と相反する記事も排除してほしい。
 「オフイシャルパートナー」は即刻、撤退すべきだ。

 テレビや新聞は、連日のように「五輪中止」の大合唱を繰り広げて、選手や大会関係者の感染防止対策「頑や五輪の観客問題などで徹底したネガティブ報道を重ねているが、五輪大会が始まり、日本選手の活躍が目覚ましくなってきたら、手の平を返したように「頑張れ!日本」と報道するのだろうか。筆者はまったく納得がいかない。テレビや新聞で五輪批判を続けるコメンテーター、ジャーナリスト、評論家は、五輪大会でのアスリートの活躍を見る資格がない。道理が通らない。
 とりわけ、五輪のスポンサーでありながら、五輪中止を唱えた朝日新聞はどうするのか。「頑張れ!日本」、「日本、金メダル獲得!」を掲げた紙面が踊るようだったら、無節操の誹りは免れない。メディアとしての信頼感を喪失する。それ位の覚悟を持った上で、「五輪中止」、「五輪バッシング」の大合唱を繰り広げるべきだ。

「東京2020オフィシャルパートナーとして」(朝日新聞 5月26日)


購読料値上げを明らかにした朝日新聞(6月10日) 五輪「オフイシャルパートナー」の60億円問題を放置して読者へ負担増をしいる姿勢は疑問

「Withコロナの時代のニューノルマル」を示せ
 コロナとの長期戦で、世界はコロナ感染リスクをある程度抱えながら、社会・経済活動を維持していかなければならない。
 Withコロナの時代のニューノルマルの確立が、社会全体に求められる。スポーツイベントやコンサート、飲食産業、ショッピングセンター、どうやって維持していくか、その知恵と努力が問われている。
 TOKYO2020は。「安全・安心な大会」を達成して、「Withコロナの時代のニューノルマル」を世界に示すべきた。五輪開催で得るものはある。
 2020東京五輪大会開催のレガシーは「Withコロナの時代のニューノルマル」に違いない。


東京オリンピック 尾身会長批判 五輪リスク 「ワクチン」「検査体制」「医療体制」一体何を提言したのか

「ぼったくり」は米国五輪委員会 バッハ会長は「ぼったくり男爵」ではない メディアはファクトを凝視せよ




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2021年5月26日
Copyright (C) 2021 IMSSR



******************************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
******************************************************
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平昌五輪 国際放送センター IBC メディアセンター メディア施設 平昌オリンピック

2022年08月31日 09時58分47秒 | 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)


東京五輪 国際放送センター(IBC) 最新情報はこちら
Media-closeup Report 深層情報 東京五輪2022 国際放送センター(IBC)

北京冬季五輪 国際放送センター(IBC) 最新情報はこちら
Media-closeup Report 深層情報 北京冬季五輪2022 国際放送センター(IBC)





平昌冬季五輪 国際放送センター(IBC)  出典 PyeongChang2018 POCOG






三度目の挑戦で成功 平昌冬季五輪
 首都ソウルから東に約130キロ、韓国の北東部に位置する平昌は、2003年大会と2007年大会に立候補したが失敗し、2011年大会にようやく悲願の冬季五輪の誘致に成功した。
 平昌が属する江原道(Gangwon-do)は、日本でも大人気となった、“韓ドラ”のシンボルと、「冬のソナタ」の撮影地になったことで知られている。
 平昌は、ジャガイモやソバの畑が広がる豊かな自然に包まれた山岳地域で、夏は避暑地、冬はスキーリゾートとして韓国国内から観光客が訪れる。しかし、冬は零下10度を超える寒さと強い北風が吹きまくる、厳しい自然条件を抱えた地域として知られていた。
 ソウルからは高速バスで約3時間、2018年1月には仁川(Incheon)国際空港と競技会場エリアを約2時間で結ぶ高速鉄道(KTX)が開通した。
 韓国政府は、平昌を冬期五輪の開催地に選んだ理由について、韓国内で最も開発が遅れているとされているこの地域を再開発して、地域振興を図るためだとしている。
 平昌五輪の開催で、韓国では、1988年のソウルで開催された夏季五輪に引き続き、二回目の五輪開催となる。五輪大会は、今回の平昌冬季五輪、2020年の東京夏季五輪、2022年の北京冬季五輪と三回連続でアジアで開催することになっている。
 韓国では、最も人気のあるスポーツは、伝統的にサッカーや野球だが、冬季スポーツではスケートが最も盛んである。ソチ五輪大会では、金メダル3、銀メダル2、銅メダル2をスピード・スケートやショート・トラック、フィギア・スケートの競技で獲得している。
 平昌五輪は、2018年2月9日から25日の17日間に渡って、冬季五輪では過去最多の92カ国・地域から2900人の選手が参加し、これも過去最多の15競技、102種目が行われる。


平昌冬季五輪開会式 出典 PyeongChang2018 POCOG




五輪のメディア・オペレーションの中核、国際放送センター(IBC)
 平昌五輪国際放送センター(IBC)は、2017年6月5日に完成して、平昌五輪組織委員会(POCOG)からOBS(Olympic Broadcasting Services)に引き渡された。
 平昌五輪組織員会のLee Hee-beom会長は、「大会開催まであと8か月、IBCをOBSに引き渡すことができて、重要な一歩を踏み出した。IBCは世界中の人々に平昌五輪をつたえる拠点で、組織員会は最良のコンディションで引き渡すことができた」と語った。
 IBCは、スノー競技の開催される山岳エリアのマウンテン・クラスター(Mountain Cluster)の中心地域、アルペンジア・リゾート(Alpensia resort)に建設された。IBCは、世界各国の放送機関(ライツホルダー RHB)に対し、五輪大会の競技映像・音声を配信する設備で、OBS(Olympic Broadcasting Services)が設営・運営を行う。
 ホストブロードキャスターであるOBSは、このメディア施設で平昌冬季五輪関連映像が合計5000時間以上を放送機関(ライツホルダー RHB)に配信する。その内、850時間はライブ配信である。
 IBCから世界の数十億人の視聴者に向けて大会期間中の17日間に競技映像がサービスされるのである。五輪大会のメディア・オペレーションのまさに中核の施設である。
 IBCでは、4325人以上のOBSスタッフが働き、放送機関(ライツホルダー RHB)に対し24時間サービスを実施する。
 配信されるコンテンツは、20チャンネルのHD Multilateral Feedsと7チャンネルのUHD Multilateral Feedsである。
さらに9チャンネルのハイライト映像や記者会見などのMulti-clip Feedsを行う。
 IBCには、67の世界各国・地域から、45の放送機関、7000人のスタッフが参加する。放送機関の内、最大規模を誇るのはアメリカの三大ネットワークのNBCで、二番目はヨーロッパ各国をサービス・エリアに持つEurosportである。



平昌冬季五輪 国際放送センター(IBC)  出典 SVG PyeongChang2018 


IBC内に設置されたNBCの“プライムタイム・スタジオ” 出典 SVG PyeongChang2018

新聞、雑誌、通信社などのメディア施設、MPC(Main Press Center)
 IBCに他に、新聞、雑誌、通信社などのメディア施設、MPC(Main Press Center)もアルペンジア・リゾート(Alpensia resort)に設置され、徒歩で約5分の場所にメディア用の宿泊施設(Media Village)も建設された。
 24時間オープンのMPCには、共用プレス席や各メディアの専用エリア、会見場、ラウンジ、レストランなどが設けられ、世界各国・地域のメディア関係者約3000人が取材活動を行う。
 これまでの冬季五輪では、MPCはスケート競技会場付近に設置されたが、平昌冬季五輪では、スノー競技が実施される平昌に設けられた。
 MPCは3棟の建物で構成され、MPC1には共用ワークルーム(プレス400席・フォト100席)や記者会見場、レストラン、ラウンジ、洗濯室などが設けられた。MPC2には500人が収容できるメイン記者会見場が設置され、国際オリンピック委員会(IOC)の公式記者会見などが行われる。6言語の同時通訳サービスも提供される。MPC3は各メディアの専用エリアで、大規模な報道陣を派遣するメディア・ブースが設けられる。聯合ニュースやAP通信、共同通信、時事通信、新華社など33社の通信社、新聞社などが利用する。
 一方マウンテン・クラスター(Mountain Cluste)から約42kmほど離れたスケート競技場のある海岸エリアのコースタル・クラスター(Coastal Cluster)には、Coastal Media Center (CMC)も整備され、プレス席180席を提供した。フィギュアスケートやアイスホッケー、カーリングなどの取材に訪れるプレスの取材活動を支援する。
 アルペン競技場やスライディング競技場、スケート競技場などの各競技場(Venue)には、仮設(Overlay)のメディア・ワーキングスペースが設置される。



MPC  出典 PyeongChang2018 POCOG
 

MPC  出典 PyeongChang2018 POCOG


出典 Architecture of the Games

鉄骨平屋造りのIBCに建物
 IBCは、2015年12月に工事が開始され、約17カ月で完成した。敷地面積は、約12万2400平方メートル、建物の総床面積は約5万1000平方メートル、OBSとライツホルダーが使用する放送エリアは、約3万4000平方メートル、平昌冬季五輪では最大の建築物である。
 IBCを建設したのは韓国で最大の鉄鋼メーカーのPOSCOである。
 建物は、事務棟(3階建て)を除き平屋造りで、POS-Hと呼ばれるスチール鋼板を使用した鉄骨構造で、熱間圧延鋼板や厚板を使用し、厚板を構造材としたクラッド構造である。
 POSCOはIBCの建設工事にこの工法を採用し、工期を短縮して、通常では18カ月必要だが、17カ月で完成させた。
 IBCの建物にあたっては、耐火構造を重視し、通常は柱に耐火塗料を塗装して処理されるが、今回は耐火物質をすべての柱に覆う“耐火クラディング構造”を採用した。

経費節減、環境対策がキーワード
 IBCの設計は、OBSが平昌五輪組織員会(POCOG)と密接に協議しながら取り組んだが、経費節減や環境にも配慮することも重要なポイントであった。
・ 当初計画の2階建から1階建ての建物に変更して、80%の面積を削減
・ IBCの電力使用量を効率化して、電力関連施設を約30%(従来のIBC比較)削減
・ 外部にスタジオを設置する放送機関には、電力、セキュリティ、交通、ケータリングなどで、IBCがサポート
 さらに重要なポイントは、平昌五輪のIBCは、暖房、冷房、換気をコントロールする空調システム(HVAC)を導入して設計されたことである。IBCはIT機器が大量に設置されているため、通常は膨大な空調機能が要求されている。しかし、平昌五輪では、氷点下十度という寒い山岳地帯の気温を利用して、外気をIBC建物内に入れるという“冷却システム”を導入して、エネルギー効率を高めるとともに快適な空間を保つようにした。

 平昌冬季五輪では、これまでの冬季五輪のIBCとは違って、サブIBCを設置しなかった。
 過去の大会では、小規模のサブIBCを、アルペン競技などが行われる山岳エリアに設置した。メインIBCがアイス・アリーナなどの室内競技や開会式・閉会式が行われるオリンピック・スタジアムが整備される都市部に設置されたため、アルペン競技場からは遠距離となるからである。
平昌五輪組織員会では、IBCを山岳エリア(Mountain Cluster)のAlpensia resortに設置し、海岸エリア(Gangnueng Coastal Cluster)のサブIBCの設置は取りやめにした。このため、IBCは、海岸エリア(Gangnueng Coastal Cluster)からは42kmほど離れていて、IBCと海岸エリアの往来は、24時間サービスのシャトルバスが提供されているが、30分から1時間が必要となった。
 ちなみに、海岸エリア(Gangnueng Coastal Cluster)には、取材拠点のCoastal Media Center (CMC)が整備されている。
 IBCが一本化されたことで、放送関連施設の整備は効率され、開催都市の負担軽減に成功した。
 またOBSは環境にも配慮して、仮設モジュラーパネルはリオデジャネイロ五輪で使用したものを再利用するなどで、約2,800台分のトラックの輸送量を削減した。
 こうした設営工事(Fit-out Works)は、2017年10月まで、4カ月間、続けられる。
 最初の放送機関(ライツホルダー)は、2017年10月にIBCに入り、4カ月ほどかけて準備作業を始める。正式なIBCのオープンは2018年1月9日、開会式の1カ月前である。

IBCのコア設備、OBSのテクニカルエリア
 OBCのテクニカルエリアは、コントルール(contribution)ルームや 配信(distribution)ルーム、伝送(transmission)ルーム、ユニー・サービス(unilateral)ルームがある。
 コントロール・ルーム(Contribution)では、各競技場から送られてくる映像・音声信号を受信し、監視・調整する。不良な映像・音声信号が発生した場合は、バックアップの正常な映像信号に置き換える。
 コンロロール・ルームから配信ルーム(Distribution)に送られた映像・音声信号は、HD-SDI信号でライツホルダーに配信される。国際音声(ナチュラルサウンド)はブラック・バースト信号やカラーバー信号と共に、SDI信号に重畳される。
配信ルーム(distribution)では、回線で結ばれた各放送機関のサテライトスタジオとIBCの間で送受信されるユニー映像・音声信号の監視作業を行う。さらに、コメンタリー・スイッチングでは、各放送機関やOBSのコメンタリーやコーディネーション音声を受け入れ、ライツホルダーに送る。


CDR(OBS)  出典 SVG PyeongChang2018


Multi Channel Distribution Room(OBS)  出典 SVG PyeongChang2018


Media Server Room(OBS)  出典 SVG PyeongChang2018

11の放送機関エリアを設置
 IBCには、放送機関(ライツホルダー)が専用で使用する11の放送機関エリア区画が整備された。OBSは、各放送機関(ライツホルダー)の要請を聞きながら、ホストブロードキャスターを務めるOBSの放送設備やサービス機能エリアやこうした放送機関エリアをどう配置するかの作業を2017年6月下旬から行い、IBCのレイアウトを策定し、各放送機関にスペースを割り当てた。
 各放送機関(ライツホルダー)は、割り当てられたスペースに、各社専用のスタジオ、コントロール・ルーム、編集機、サーバーなどを放送機器を設置し、スタッフを配置して、自国に向けてのオペレーションを行う。
 IBCの建物屋上には、各局のTVスタジオや共用の記者リポート・ポイントなどが整備されている。Alpensiaの雪山やジャンプ台、Sliding Centreなどの競技施設を見渡しながらライブ中継が可能だ。
 IBCのメイン・ビルディングに隣接し、4階建てのオフイス棟が建設され、OBSや平昌五輪組織員会(POCOG)のスペースになっている。
 IBCには、放送機関のスタッフが快適に作業を行えるように、レストランやカフェ、ショップ、インフォーメイションなどが設置され、様々なサービスが用意されている。


平昌冬季五輪の国際放送センター(IBC)の屋上の眺望 ジャンプ台が見える  出典 PyeongChang2018 OCOG


IBCの屋上に設置されたNBCの“ロッジ・スタジオ”

初めてUHD(4K)の映像制作に乗り出したOBS
 平昌冬季五輪で、ホストブロードキャスターのOBSは初めて、4K中継車を配置して、アイスホッケー、カーリング、フリースタイル(モーグル)、スノーボード(ハーフパイプ)の4つの競技と閉会式を4K/SDRライブ中継を実施する。
 これに対し、NHKは8K HDR中継車2台、22.2サラウンド音声中継車2台を、平昌の五輪会場に送り込み、開会式、フィギアスケート、ショートトラック、スキージャンプ、スノーボード(ビックエア)を、それぞれ10台の8K中継カメラを配置して、合計90時間の8K/HDRライブ中継を実施する。
NHKが中継した8K/HDR映像・音声は、OBSがIBCで4K/HDRにダウンコンバートし、OBSが制作した4K/SDR映像・音声信号と共に、ライツホルダーに4Kホストフィードとして配信される。
 IBCでは、8KHD、4KHDR、4KSDR、HD1080iSDRの映像・音声信号がホストフィードとして世界各国の放送機関(ライツホルダー)に配信される。

全米で4Kサービスを開始したNBC
 NBCユニバーサルは、平昌冬季五輪の開会式や、アイスホッケー、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)の4K/HDRコンテンツを、一日遅れでケーブルテレビや衛星放送、インターネットでサービスする。2月10日から2月26日まで、毎日、一日最大4つのイベントを全米でサービスした。
 NBCユニバーサルが、五輪競技映像をUHDで、全米で配信するのは五輪史上、初めてで、臨場感あふれた繊細画質、UHD(4K HDR)映像サービスがケーブルテレビや衛星放送を通して視聴者に届けられることになった。
 リオデジャネイロ五輪では、OBSは、NHKが制作した8K映像の五輪競技ライブ中継コンテンツを、4Kにダウンコンバートして、初めて4Kコンテンツをライツホルダーに配信したが、 NBCユニバーサルは、4K映像・音声信号の技術的な検証・評価行ったが、一般の視聴者サービスまでは実施しなかった。NBCユニバーサルのリオデジャネイロ五輪映像は、従来通りHD画質で配信し、地上波のNBCネットワークやケーブルテレビ、衛星放送、インターネットでサービスした。
 平昌冬季五輪では、NBCユニバーサルは、OBSが配信した4K/HDRの競技映像を使用し、4K/HDR五輪中継番組を制作し、ケーブルテレビや衛星放送、IPTVへの配信サービスに乗り出した。
 フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)については、NHKが制作した8KHDRをダウンコンバートしたコンテンツで、アイスホッケーは、今回初めてOBSが行った4K/SDR中継映像を、NBCが4K/HDR映像に変換して使用した。
 4K/HDRサービスを行ったのは、全米最大のケーブルテレビComcast傘下のXfinityや、衛星放送プラットフォームでは全米No1、AT&T傘下で2100万件の契約者を抱えるDirecTV、全米第二位で約1300件の契約者を抱えるDish Networkである。
 しかし、競技開催から“1日遅れ”のサービスである。“1日遅れ”で放送したのは、五輪放送の主力である地上波のNBCネットワークで、HDで放送されるチャンネル・サービスに影響を与えないように配慮したと思われる。
 米国の視聴者が4KHDRコンテンツを楽しむためには、ケーブルテレビや衛星放送、IPTVのプラットフォームと契約し、各社専用の4K HDRセットボックスを設置して、4K HDR対応のテレビ受像機を購入しなければならない。米国では4KはPay-TVサービスとして始まった。
 スポーツ中継はライブが基本、“1日遅れ”でサービスする4K HDRは、臨場感あふれた高品質の映像が売り物にしても、魅力的なコンテンツにはならないだろう。競技の結果を知ってからから見るスポーツ中継は、醍醐味がない。全米で平昌冬季五輪を4K HDRで視聴した人は極めて限定的だと思える


フェニックス・スノー・パークのOB-VAN  出典 SVG PyeongChang2018


4Kカメラ(手前)とHSSMカメラ(中央)  出典 SVG PyeongChang2018

8Kライブ中継を実施したNHK
 8K HDRは、現在の技術水準で実現できる世界最高のクォーリティを誇り、その臨場感あふれる繊細な映像は4Kをはるかに凌ぐ圧倒的な迫力がある。
 NHKはIBCの中に350インチの8K HDR大スクリーンを設置した“8K Theater”を設け、世界のメディアに8K HDR映像の素晴らしさをアピールしている。
 NHKは8Kライブ中継コンテンツを日本に伝送し、昨年開始した8K試験放送(衛星放送)で、OBSが制作した4K競技映像を含めて放送した。
 また、全国のNHKの放送局や全国5か所の会場でパブリック・ビューイングを開催して、8K HDR映像の迫力を視聴者に実感してもらった。
 ただし、家庭用の8K専用の衛星チューナーや受像機はまだ市販されていないため一般の家庭では視聴できない。
 NHKがライブ中継した8Kコンテンツは、OBSがIBCで各国のライツホルダーに配信したが、8K HDRを視聴者サービスを行った放送機関はなかった。しかし、いくつかの海外の放送機関は調査・研究目的で8Kコンテンツの配信を受けて、2020年の東京五輪では、8Kシネマやパブリック・ビューイングなどのサービス開始について、検討を始めていると伝えられている。


NHKの8K中継車  出典 NHK


IBC内に設置された“8K Theater”  出典 SVG PyeongChang2018

2020東京五輪 8K HDR、4K HDR、4K SDR、HD、主役はどうなる
 アメリカのNBCユニバーサルは、配信された4K HDR競技映像を使用して、4K HDRの五輪特別番組を制作し、ケーブルテレビや衛星放送局に配信して、視聴者に送り届けたのである。
 勿論、NBCユニバーサルにとっては、ソチ五輪を上回る冬季五輪では2400時間に及ぶHDコンテンツの五輪映像が主力で、4K HDRサービスは極めて限定的なサービスに留まっている。
 韓国では、4K地上波放送が競技場エリアやソウルなど一部の地域で開始された。
 一方、ヨーロッパ各国の主要放送機関は、4Kサービスに乗り出していない。
 BBCは、iPlayeでは、すでに自然番組など4Kサービスを開始しているが、平昌冬季五輪の4Kサービスの実施は見送った。ワールドカップ・モスクワ大会でのBBCの対応が注目される。
 結局、OBSは、8K HDR、4K HDR、4K SDR、HD1080i SDRの4種類のホスト映像をライツホルダーに配信し、小型の4K SDRの中継車も使用することになった。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、あと2年、HDに代わって4Kが主役の座に就くのか、4KHDRと4KSDRはどちらが主流になるのか、8Kは世界にどれだけ浸透するのか、まだまだ不透明だ。

VRサービスは視聴者に受け入れられるか?
 平昌冬季五輪のホストブロードキャスター、OBSは、冬季五輪大会では初めて、このVRコンテンツをホスト映像としてライブで配信した。開会式・閉会式や、アルペンスキー、スノーボード、ビックエア、スケルトン、ボブスレー、フィギアスケート、ショートトラック、カーリング、アイスホッケーなどの競技、合計55時間を1日1競技以上サービスした。
 NBCユニバーサルはNBC Sports VR appを立ち上げて、このVRコンテンツを全米の視聴者に配信した。
 NBC Sports VR appのVRコンテンツを視聴するには、Windows Mixed Reality headsets、Samsung Gear VR、 Google Cardboard、Google Daydream and compatible iOS or Android devicesが必要で、NBCユニバーサルのケーブルテレビか、衛星放送、IPTVサービスの契約をしなければならない。
 NBC Sports VR appでは、ライブストリームされたVRコンテンツを、1日間は再放送し、前日に放送された競技はハイライト・コンテンツに編集してサービスする。
 日本では、NHKがVR映像を、「360°映像ライブ」(ライブストリーミング)や「360°映像見逃しハイライト」(VOD)サービスとして視聴者に配信した。
 VRサービスによって、視聴者は、韓国のオリンピック・ワールドを自由に飛び回りながら、五輪競技場ツアーのバーチャル体験を楽しむことができるようになった。
 確かに魅力的なコンテンツだが、世界の視聴者がVRサービスにどの程度関心を示すか、まだ未知数である。平昌冬季五輪のVRサービスの結果に注目したい。


OBSが配信した360°VR映像サービス   出典 NHKピョンチャン2018 360°VR/OBS

VRサービスに乗り出したIntel
 平昌冬季五輪のVRライブ中継の技術を支えたのはIntelである
 平昌冬季五輪では、Intelが開発した“Intel True VR”が導入され、双方向の360度全方位映像を、ライブでサービスした。小型VRカメラを競技場の随所に設置し、さまざまな視点からの競技映像を撮影して配信する。音声は、ナチュラル・サウンドである。
 視聴者は、競技場に行かなくても、臨場感あふれた観戦体験を得ることが可能になった。 競技の結果や順位、得点表がリアルタイムで表示され、前の競技結果もサービスされる。
 Intelは、放送・コンテンツ分野にも乗り出して、VR専門会社、VOKE買収するなど積極的な姿勢を展開し、米主要放送局と協力して、2019年には360度VR放送を実現させた。 Intelは「好みに合わせ視聴者が選択可能な映像技術の導入で、スポーツ競技視聴方式に革命を起こす」としている。
 五輪大会のTOPスポンサーとなり、2018平昌冬季五輪、2020東京夏季五輪、2022北京冬季五輪、2024年のパリ夏季五輪の情報・通信企業分野で五輪オペレーションで優先的な地位と手中にしたIntelは、平昌冬季五輪では、5Gネットワーク、VRサービス、開会式のドローン・ショーなど、五輪の表舞台に全力投入して登場してきた。2020東京五輪では、5Gネットワーク、VRサービス、開会式のドローン・ショーを更に進化させて登場させるだろう。次世代の主役となる5G移動通信と多様な映像テクノロジーを連携させて展開することで、Intelは世界で情報・通信分野で主導権を握るという戦略が見えてきた。


Intel True VR   出典 Intel HP


アルペンスキー競技で使用されたIntel True VR   出典 Intel HP

Intel True VR at Olympic Winter Games PyeongChang 2018
Intel/Youtube

IBCで最大のエリアを占めるNBC
 NBCは、IBCの中で、最大のフロアを占める放送機関である。“Peacock’s Area”と呼ぶNBCの占有エリアは、総面積7万5000平方メートル、ふたつのコントロール・ルームが設置された。17室に38台のAvid Mediaのコンポーザーを配置し、380TBのNexusのストレージを設置した。すべてのインジェストは、Harmonic Media Decksで行われ、コンテンツの再生用にEVS XT3のサーバーや約60台の多様なサーバーが使用された。
 NBCの光ファーバーネットワークは、12心(Strand)のシングルモード・ファイバーで構築された。光ファイバーのコネクターはMPOコネクターを使用した。144×72のファイバー・パネルがIBC内に設置され、編集室やAvid Storage、LAN、Videoなど、クロス・コネクトが可能である。
 2400時間に及ぶ五輪コンテンツを、地上波のNBCネットワークやケーブルテレビ、衛星放送、IPTV、インターネット、ソーシャル・メディアを総動員して、HD1080i、4KHDR、VRなどの多様なサービスで展開するNBCにとって、平昌冬季五輪はその真価が問われる大会となった。 



新たな映像制作テクノロジーに挑んだOBS
 平昌冬季五輪の合計29競技の映像制作に450台のカメラが使用され、その内、50台以上のハイスピードカメラ(HSSM)が導入された。また、競技周辺の風景やソウルの街並みを撮影する12のビューティカメラの映像信号が、ライツホルダー提供される。
 冬季五輪では初めて、4本のワイヤーで懸架してリンク上を動きまわる4-Pointケーブルシステムや2-Pointケーブルシステムが導入され、アイスホッケーやフィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート競技の中継で使用された。
 選手のヘルメットなどに装着して撮影を行うPOVカメラもフリースタイルスキーやスノーボードに導入され、ref POVはホッケーに、Pop-upカメラはスライディング競技に、Coneカメラはスピード競技に使用された。レールカメラもボブスレーやスケルトン競技に使われた。
 もちろん、ドローンカメラも、開会式や閉会式のイベントなどで、空中撮影を行う。
 5G移動通信も実用化され、新しい映像技術を支えるバックボーンとなった。
 平昌のアルペン・スライディング・センターにあるボブスレー競技場では、5G移動通信ネットワークが整備され、時速140キロの高速でコースを滑降するソリ(Sled)の先端に4Kカメラを取り付けて高画質の映像を撮影し、“遅延ゼロ”の超高速で送信し、臨場感あふれた迫力のある新たな映像サービスに初めて挑む。


ボブスレーのソリの先端に付けられたPOBカメラの映像 5G移動通信ネットワークを利用して映像はライブで伝送された
出典 IOC Olympic Channel

Exclusive 4K POV Bobsleigh run Olympics Channel IOC
Olympics Channel IOC/Youtube

 平昌冬季五輪では、五輪では初めて、4K/8KHDRが、ライツホルダーに配信される。8KHDR は、NHKが開会式・閉会式や主要競技を中継し、4KHDRは8KHDRをダウンコンバートしてホストフィードとしてライツホルダーにサービスする。
 IBCの施設内には350インチのプロジェクター・スクリーンで8K HDRのパブリック・ビューイングが行われる。

 競技中継で使用するグラフックス作成映像御術も充実・強化された。
 アルペンスキーはフィギアスケートでは、動きのある映像を時間差で選手の動きを撮影した映像を連続して合成する「ストロモーション」(StroMotion)映像を制作する。
 「ストロモーション」は、アスリートの動きの軌跡映像、ゴースト・イメージ(ghost image)を合成し、アスリートの動きや、テクニック、パーフォーマンス、戦術の展開が、時間と空間の中で表現される。フィギア・スケート競技や体操競技などで使用され、効果的な映像が制作可能である。
 スピード・スケートやショート・トラックでは、リアルタイムで、他の選手の動きと比較しながらライブ中継を見ることができる「サイマルカム」(Simulcam Replay)を導入した。スピード・スケートなどで使用され、世界記録や五輪大会記録を出した選手、これまで一番良い記録を出した選手などの動きと比較しながら視聴することができる。
 「ストロモーション」や「サイマルカム」は、スイスのDartfish社が開発した映像処理技術である。

 フィギアスケートやアイスホッケーでは、競技場内に多数のカメラを配置し、様々な視点や角度から撮影された映像を配信し、視聴者は見たい映像を自由に選択して視聴することができる。
 クロスカントリーでは、コースに設置された多数のカメラで、視聴者は地点カメラを選択し、見たい選手の走行シーンをリアルタイム見えることができる。選手の走行位置や走行スピード、選手同士の距離なども表示する。
 フリースタイル・スキーやスノーボードでは、ジャンプの解析をするグラフィックスを作成し、クロス、スロープスタイル、ハーフパイプ、スノー  スノーボード・ビックエア競技では、ジャンプの距離や高さ、回転数、ハングタイム、スピードなどの情報を表示する。

 2014年ソチ冬期五輪から、OBSはマルチクリップフィード(MCF)を開始し、ソチ冬期五輪ではアルペン競技で実施した。平昌冬季五輪ではMCFは、アイスホッケー、フィギア、スピードスケート、ショートトラック、スキージャンプ、フリースタイルスキー、ノルディック複合、スノーボード、スライディング競技で実施して、ソチ冬期五輪より大幅にサービスを拡大した。
 また平昌冬季五輪では、MCF映像のコンテンツの内容を充実させ、ホストフィードには含まれていないクリップ映像を配信した。ハイスピード・スローモーション(HSSM)映像やスーパー・スローモーション映像、POVカメラ映像素材などである。
 五輪大会では初めて、競技解析をしたグラフィックスも、放送機関が競技終了の分析に使用できるように配信した。


HSSM and SSM hard camera   出典 SVG PyeongChang2018


4K Camra   出典 SVG PyeongChang2018


Jib Camera  出典 SVG PyeongChang2018


Horizontal Gyrostabilized Trackcam  出典 SVG PyeongChang2018


For Point Cable System   出典 SVG PyeongChang2018

5Gネットワークで、新たな映像中継サービスを開始 
 平昌冬季五輪では5G移動通信が構築され、新たな五輪中継映像サービスが誕生した。
 マルチアングルの映像を任意の時間で選択して視聴できる、「タイムスライス」(time-sliced views)、選択地点の疾走シーンが視聴可能な「オムニビュー」(Omni View)、高速で移動する選手や物体から高画質のUHD映像でライブ中継する「シンク」(Sync View)と呼ばれる新たな映像サービスである。
 フィギアスケートとショートトラック競技が行われた江陵アイスアリーナには、100台の小型カメラが設置して、選手の動きをさまざま角度から撮影し、合成して連続して見せる新たな映像技術、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)に挑んだ。
 100台のカメラは、リンクの壁面に一定の間隔で設置され、動きの速い被写体の決定的なシーンを、アングルを動かしたい方向に順番に連続撮影していく。
 撮影された画像は、一枚一枚切り出して合成し、連続して見せる映像技術である。高速で移動する被写体の動きを少しづつアングルを変えて、スローモーションのように見せるというインパクトあふれた映像表現が可能だ。映画「MATRIX」では、「パレットタイム」と呼ぶこの“time-sliced views”のテクノロジーで撮影されたシーンが評判を呼び、新たな映像技術として注目されている。
 また観客は、100台のカメラの中から、さまざまなアングルのカメラを選択し、リアルタイムで選手の動きを見ることができる。
 「オムニビュー」(Omni View)では、多数のカメラをあちこちの地点に配置し、視聴者は自由に選択して、その地点の選手の走行シーンをリアルタイムで見ることができる。競技結果、順位、選手のプロフィールなど情報もサービスされる。
 クロスカントリーでは、全長3.75キロメートルのコースに、17台のカメラを設置し、撮影した選手の姿を5Gネットワークで伝送し、観客は自分の見たいポイントのカメラを選んで、疾走している選手の姿を見ることができた。
 バイアスロンなどでは、選手のユニフォームに装着したGPSセンサーの位置情報を5Gネットワークで送信し、観客はスマートフォンで選手の位置などをリアルタイムで確認できるサービスも行われた。
視聴者は、見たい選手を自由に選択し、選手が今、どこにいるかがリアルタイムで確認しながら、ライブ・ストリーミングで走行シーンを楽しむことができる。
 「シンクビュー」(Sync View)では、POV(Point of View)カメラを、選手のヘルメットやユニフォーム、ソリなどに取り付けて、選手視点での競技をライブで中継する映像テクノロジーである。ボブスレーではソリの全面にPOVカメラや5G無線通信のモジュールとアンテナを設置して、高速で迫力ある映像をライブでサービスする。
 UHD(4K)などの高画質で撮影されてライブで伝送されるこうした新しい映像サービスを支えているのが、超高速の5Gネットワークである。Samsungは5G対応のデモ機を開発して、5Gを搭載したタブレットPCをを競技場に配置し、新しい映像サービスの醍醐味を観客に楽しんでもらうサービスを展開した。


フィギアスケートで使用された、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion) 出典 Olympic Channel/IOC


スノーボードで使用された「タイムスライス」(time-sliced views)  出典 Intel

Intel at the 2018 Olympics: 5G Olympic Vision
Intel/Youtube

そして2020東京オリンピック・パラリンピック
 

“ICT Olympic”を掲げた平昌冬季五輪 KT Pavilion   出典 KT 

 韓国は、平昌冬季五輪を開催するにあたって掲げたテーマは、“ICT五輪”、第五世代移動通信5G、超高繊細テレビUHD、モノ・インターネットIoT、人工知能AI、VR(Virtual Reality)の5つの分野で、世界最先端の“ICT五輪”を実現して、“Passion Connected”をスローガンに掲げ、世界各国にアピールする戦略である。
 “ICT五輪”は、2020東京五輪で、今、日本が総力を挙げて取り組んでいるキャッチフレーズだ。“ICT五輪”は、平昌冬季五輪に、先を越された感が否めない。 
 平昌冬季五輪で、5Gサービス、自動運転車、AIロボット、自動翻訳機、4K地上波放送、VRなど“ICT五輪”のフレームを提示することに成功したようであるが、5Gサービスは競技場周辺や一部のエリアのみで、4K地上波放送も一部地域に限定され、まだユニバーサル・サービスとするには課題が山積で、“ICT社会”の実現には程遠い。
 2020東京五輪で目指すのは、単に“ICT五輪”ではなくて、世界で最先端の“ICT社会”の実現である。5G、4K/8K、AI、Iotを、ユニバーサル・サービスとして日本社会全体に幅広く浸透させることであろう。しかし、5Gネットワークは、ようやく実証実験が始まったばかり、5Gに割り当てる周波数帯も決まっていない。4K/8Kは今年の年末から本放送が始まるが、果たして2020までに一般の家庭でどれだけ視聴されるのかまったく未知数である。平昌冬季五輪を前に4Kテレビは飛ぶように売れたが、専用チューナーは発売されておらず、平昌冬季五輪中継は一般家庭では視聴できないという失態を演じている。8Kに至っては、そもそも一般家庭用で視聴するための8K専用チューナーや8Kテレビが開発できるのだろうか懸念がある。たとえ発売されも高額で一般の視聴者には手が届かないという事態も予想される。
 勝負は“ICTユニバーサル社会”を実現できるかどうかであろう。そこで初めて、“ICT社会”の実現を2020東京五輪のレガシーにすることができるだろう。
 2020東京大会まで残された時間はあと二年余り、まさに日本の真価が試されている。


 
International Broadcast Centre Facts & Figures
出典 Architecture of Games

Overview
• Location: PyeongChang Mountain Cluster, Alpensia resort
• Construction Start: December 2015
• IBC Shell Completion: May 2017
• IBC Handover to OBS: 5 June 2017
• Site Area: 122,410.02 sqm
• Gross Floor Area: 51,024.15 sqm
• Functional Space Area
• OBS and RHB broadcast space: Approx. 34,000 sqm
• POCOG & OBS Offices: 5,765,54 sqm
• Common Services: 1,812.04 sqm

Sudios inside the OBC
• TV Studios       17
• Radio Studios       5

Studios on the Rooftop
• Studios         9
• Stand-up Positions 10

Floors
• (Ground floor) RHB compartments, common service area, OBS Offices
• (1st floor) Common service area
• (2nd floor) OBS offices
• (3rd floor) OBS & POCOG offices
• (4th floor) Rooftop TV Studios

Structure
• 6,700 tonnes of steel used in the construction of the IBC
• 616 foundation bearing piles support the structure

Building Size
• Height: 28.55m
• Length: 290m
• Width: 139m
• Parking Lots: 502
• Number of Elevators: Two for people (capacity: 24 people), One for people & cargo (capacity: 38 people)
• Air Handing Units (AHU): If all the AHUs were connected altogether, the total length would be 13.64km
• Bus Ducts: If all the bus ducts were connected altogether, the total length would be 14.5km
• Power : 14400 kVA


PyeongChang2018 Venue Map


出典 PyeongChang2018 POCOG




★ 2018平昌冬季五輪
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
>平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至

★ 国際放送センター(IBC)
“迷走” 2020年東京五輪大会のメディア施設~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~
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2018年2月20日
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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東京五輪 メディア批判 ファクトチェック 五輪バッシング 

2021年09月06日 12時06分59秒 | 国際放送センター(IBC)


東京オリンピック メディア批判 五輪バッシング 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末


羽鳥慎一モーニングショー批判 玉川徹批判 ファクトチェック 検証 五輪バッシング報道

東京オリンピック 尾身会長批判 五輪リスク 「ワクチン」「検査体制」「医療体制」一体何を提言したのか

「ぼったくり」は米国五輪委員会 バッハ会長は「ぼったくり男爵」ではない メディアはファクトを凝視せよ

深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 世論調査で「開催支持」50%に 東京五輪開催、プレイブックV3公表 1都3県、北海道、福島は「無観客」

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




東京オリパラ閉幕 メディアは東京オリパラに対する報道姿勢を検証せよ
 9月5日、東京パラリンピックの閉会式が、13日間の熱戦に幕を閉じた。大会では22競技539種目が開催され、日本は前回リオデジャネイロ大会でゼロだった金メダルを13個獲得。銀は15個、銅23個で、総メダル数は51と過去3大会を大きく上回り、史上最多だった2004年アテネ大会の52個に迫り、パラアスリートの活躍で、多くの「感動」と「勇気」をもらった。
 閉会式は、「多様性の街」をテーマにした演出だったが、なにか雑然とパーフォーマンスが続き、開会式の「片翼のない飛行機」のようなインパクトはなかった印象を持った。
 その中で強烈なインパクトがあったのは「Paris2024」のパラ・アスリートたちのパーフォーマンス、五輪の閉会式に引き続き、「Paris2024」の圧勝。さすが「文化と芸術」の国、フランスには脱帽。
 五輪・パラの閉幕を迎え、最大の問題はメディアの報道姿勢である。五輪に対しては徹底的なバッシングを浴びせ、パラリンピックに対してはまったく沈黙する。その「手のひら返し」姿勢には唖然である。
 コロナ感染状況は、五輪開催時よりパラリンピック開催時の方がはるかに悪化、東京の感染者数は、パラリンピック開催直前には5000人(8月18日)を突破、医療逼迫は現実化して、感染しても治療も受けられない状況に陥っていた。五輪開催時に朝日新聞は、繰り返し医療逼迫の懸念を唱えていた。パラリンピック開催については医療逼迫は黙認するのか。
 パラリンピックの参加者は約4400人、規模は五輪の約半分以下だが、超ビックな国際イベントには変わりはない。
 障害者の祭典、「共生社会」の実現という大義名分があれば、コロナ感染拡大のリスクを黙認していいのか。五輪バッシングに奔走したメディアは、パラリンピック開催に沈黙した「手のひら返し」報道姿勢を明快に説明すると共に、報道対応を冷静に検証すべきだろう。
 朝日新聞は、一面で東京本社社会部長・隅田佳孝の署名記事で「大会を通して突きつけられた社会の自画像から目を背けず、選手たちがまいてくれた気づきの種を育てよう。その先に大会のレガシーはある」と五輪レガシーについて言及する始末。
 また社説では、「パラ大会閉幕 将来に何をどう残すか」と見出しで、「障害の内容や程度は違っても、自らが秘めている能力に気づき、伸ばすことによって、新たな世界が開ける。13日間にわたる選手たちの躍動を通じて、人間のもつ可能性を肌で感じ取った人は多いだろう」として、「選手のプレーに感動し、それをただ消費して終わるのではなく、次代につながる、まさにレガシー(遺産)を残すことに英知を集めねばならない」とレガシー論を述べている。
 まさに「なにをかいわんや」である。朝日新聞は、東京オリンピック・パラリンピックを全否定して「開催中止」を主張したのではないか。
 その一方で、菅首相は突如、退陣表明。日本は一転して政局の季節に突入した。安倍長期政権とそれ引き継いだ菅政権、日本の政治は節目を迎える。
 いずれにしてもコロナ禍で開催された2020東京オリンピック・パラリンピックは、1964大会に並ぶ、「歴史に残る」大会になったのは間違いない。

東京パラリンピック開幕 パンデミックの中での「強行」ではないのか?
 朝日新聞は、五輪開会式の日(7月23日)の朝刊で、「五輪きょう開会式 分断と不信、漂流する祭典」という見出しで社説を掲載、「東京五輪の開会式の日を迎えた。鍛え抜かれたアスリートたちがどんな力と技を披露してくれるか。本来ならば期待に胸躍るときだが、コロナ禍に加え、直前になって式典担当者の辞任や解任が伝えられ、まちには高揚感も祝祭気分もない。(中略)
 社説はパンデミック下で五輪を強行する意義を繰り返し問うてきた。だが主催する側から返ってくるのは中身のない美辞麗句ばかりで、人々の間に理解と共感はついに広がらなかった。分断と不信のなかで幕を開ける、異例で異様な五輪である」とした。
 そして、「感染防止を最優先で この1年4カ月は、肥大化・商業化が進んで原点を見失った五輪の新しい形を探る好機だった。実際、大会組織委員会にもその機運があったという。ところがいざ実行に移そうとなると、関係者の思惑が絡み合い、何より国際オリンピック委員会(IOC)と、その背後にいる米国のテレビ局や巨大スポンサーの意向が壁となって、将来につながる挑戦にはほとんど手をつけられなかった」と厳しく批判した。
 これに対して、パラリンピックの開催式が行われた翌日、朝日新聞は、1面で「<視点>共生社会へ、人々つなぐ大会に」という見出しの記事を掲載した。
 パラリンピック・アスリートに対しては、「大会延期決定から1年。選手たちは自国開催への思いを声高に語ることはできず、もどかしさを抱く」としてアスリートを思いやるコメントをのせた。
 そして、「残された体の機能を最大限に生かし、競技で表現する選手の姿は、たしかに心に響くものがある。それでも、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、大会を開く意義は何か。記者も問い直す日々が続く。この大会が、違いを認め合い、わたしたちが生きる希望を見いだせるきっかけになれば、と願う。(中略)4400人の選手たちがそれぞれの思いを胸に臨む。人々がつながるための気づきがきっとある」とパラリンピック開催を「歓迎」し「賛美」するコメントで締めくくった。
 「五輪」と「パラリンピック」に対するこの違いは一体、どうなっているのだろうか。まったく納得できない。「五輪」のアスリートの思いにはまったく「無視」して、「パラリンピック」のアスリートには「共感」を寄せる、朝日新聞はその姿勢の違いを論理的に説明すべきだ。
 「五輪」に対する批判記事を執筆した朝日新聞の記者や論説委員、それに有識者や外部評論家は、パラリンピック開催についてどう考えているかコメントすべきだ。沈黙するのはあまりにもお粗末な対応だろう。
 パラリンピックもさらに深刻化したコロナ・パンデミックの中で「強行」された国際スポーツイベントなのである。

朝日新聞社説 パラリンピック開催は支持「安全対策に万全期して」
 今日(8月24)、東京パラリンピックは開会式を開催する。
 朝日新聞は、五輪開催については激しく攻撃を繰り返していたが、パラリンピック開催についてこれまで沈黙を続けていた。
 新型コロナウイルスの「感染爆発」という危機的な状況の中で、「世界各地から選手を招き、万単位の人を動員して巨大な祭典を開くことに、疑問と不安を禁じ得ない」としたが、開催については、「手のひら返し」をして「延期」や「中止」を主張せず、「安全対策に万全期して」して開催して欲しいとする。
 その一方で、「五輪を強行しながらパラを見送れば、大会が掲げる共生社会の理念を否定するようで正義にもとる。そんな思いも交錯して、五輪が終わった後、議論を十分深める機会のないまま今日に至ったというのが、率直なところではないか」と「言い訳」をした。
 「議論を十分深める機会」がなかったとして、世論の責任に転嫁しているが、朝日新聞はパラリンピック開催については「議論を十分深める」ことを行ったのか。これまで沈黙していたのではないか。メディアとしての責任を問う。
 そして、パラリンピック大会開催意義として「選手たちの輝き」を上げ、「大会では障害の程度に応じて多様な競技が展開される。一人ひとりが向き合っているハンデやその前に立ちはだかる壁を、自らに重ね合わせてプレーを見れば、人間のもつ可能性に驚き、励まされることだろう」とし、「純粋なスポーツとしてパラに関心を寄せ、楽しむ人も広がっている。選手たちの安全と健闘を心から祈る」と締めくくった。「五輪」とは一変して「暖かさ」にあふれたコメントだ。
 五輪大会中止を掲げた社説と読み比べて、五輪大会とパラリンピック大会に対する報道姿勢の違いに唖然とする。五輪のアスリートには「輝き」や「人間のもつ可能性に驚き、励まされる」ことはないのか。偏見に満ち溢れた不公正な論評に対して筆者はまったく納得しない。朝日新聞は五輪大会でのアスリートの姿に「感動」や「勇気」を感じ取っていないのか。
 繰り返すが筆者は、障害者の世界最大のスポーツの祭典であるパラリンピックの開催意義は高く評価し、コロナ禍でもその開催を強く支持している。コロナ禍だからこそ「感動」と「勇気」がもらえる大会開催は極めて大きな意味がある。
 朝日新聞は、朝日新聞のコマーシャルで、「スポーツは希望になる」として、1964東京大会の開催に尽力した朝日新聞記者の田畑政治氏を取り上げ、「若者が世界に挑戦する舞台を作り続けた」とし、「憧れを絶やすな」「スポーツのすそ野を広げていく」と宣言している。五輪バッシングを激しく続けた姿勢はどこにいったのか。
 しかし、新型コロナウイルスの感染状況は五輪開催時より更に深刻化して、「感染爆発」、「災害クラス」、医療崩壊は現実化して中での開催を批判しない朝日新聞などのメディアは糾弾に値する。

朝日新聞社説 パラリンピック開催は支持「安全対策に万全期して」


朝日新聞社説(8月24日) 「東京パラ大会 安全対策に万全期して」 上記の「東京五輪 中止の決断を求める」の社説と読み比べて欲しい


パラリンピック明日開幕 メディアは、パラリンピックの開催中止をなぜ主張しない
 明日8月24日から、8月8日に閉幕した2020東京五輪大会に引き続き、8月24日から9月5日まで、パラリンピックが開催される。22競技、539種目が1都3県の21の競技会場で開催され、約4400人が参加する世界最大の障害者スポーツの祭典である。
 コロナ禍の大会開催となり、一般観客はすべての会場で受け入れないが、「学校連携プログラム」による小中高生の感染は認めることになった。

 五輪閉幕後も新型コロナウイルスの感染拡大は、更に加速し、「感染爆発」、「制御不能」、「災害レベルの感染猛威」という事態を迎えている。
 全国の新規感染者数(8月20日)は2万5876人、五輪が開幕した時は4377人(7月23日)は4377人、約6倍増、東京では1359人に対して5405人で約4倍と感染爆発が止まらない。
 8月22日、組織委員会は、東京パラリンピックの選手2人を含む、大会関係者30人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表した。パラリンピック関係者の1日の陽性者数としては、過去最多を記録した。
 医療逼迫の懸念は五輪時よりはるかに高まっている。
 東京の入院者数(軽傷中等症)は3968人に達し、病床使用率は66.5%、重症者数は271人に重症床使用率は69.1%、入院が必要な患者が病床が足らなくて入院できないケースが常態化している。医療崩壊が現実化しているのである。
 競技会場で大会関係者に傷病者が出た場合に受け入れる「指定病院」の都立墨東病院が、救急で重症者を受け入れは行うが、「新型コロナウイルス感染症を最優先としながら対応する」という。苦渋の選択である。こうした動きは他の病院にもあるという。都立墨東病院は「開催の是非」を議論すべきだとした。(8月19/20日 朝日新聞)
 こうした状況の中で、五輪バッシング報道を繰り返した朝日新聞や毎日新聞はパラリンピック開催の是非を論評する記事を掲載しない。唯一、「パラ学校観戦 割れる判断」(8月18日朝刊)だけが論評記事である。
 あれだけ、五輪開催については激しく批判していた報道姿勢とは一変をしたのには唖然とする。
 五輪開催時には、医療崩壊を理由に五輪開催を激しく批判したに対し、パラリンピック開催については、医療崩壊が現実化しているにも関わらす、開催を一切批判しない。
 メディアとしての責任をどう考えているか。パラリンピック開催に関する批判をファクトを踏まえて掲載すべきだ。
 新型コロナウイルスの感染状況は、五輪開催を直前に控えた7月上旬より、今の方がはるかに深刻化している。もはや「感染爆発」、「制御不能」、「災害レベル」の感染猛威なのである。
 「オリンピック」と「パラリンピック」とでは開催の理念が異なり、「パラリンピック」は障害者スポーツの祭典であることは十分理解した上で、その開催意義は高く評価したい。
 にもかかわらず、残念だが、今の深刻なコロナ禍の中では、五輪大会以上に、アスリートや大会関係者の感染拡大リスクは「制御不能」と言わざるを得ない。
 また五輪開催で、国民の感染対策に「気の緩み」が生じると激しく批判したが、パラリンピック大会の開催で「気の緩み」は懸念しなくてよいのか。論理的に説明して欲しい。
 朝日新聞や毎日新聞は、こうした状況を踏まえて、「パラリンピック」開催是非について、社説などで見解を表明すべきだろう。「沈黙」はメディアとしての責任放棄である。

メダリストの涙の裏に「追い詰められた1年」の苦悶を見た
 五輪開催に対してメディアは連日のように激しい「五輪バッシング」を浴びせ続けた。
 BBCニュース(6月12日)は、「(日本)国内の議論は極めて感情的なものとなった。異なる意見は許されず、開催に前向きな思いをもつ人はそれを表明するのを恐れた。その影響はアスリートにも及んだ。白血病から復帰して競泳の東京五輪代表に内定し、多くの人に感動を与えた池江璃花子選手には、出場辞退を求める声がソーシャルメディアで寄せられた。彼女は、「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事」である反面、「それを選手個人に当てるのはとても苦しい」とツイートした。中村知春選手も、「東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかってるから。 別に何も考えてない訳じゃない」とツイッターに投稿した」と伝えた。
 アスリートが五輪に出たいと言えない、開催してほしいいう声が上げられなくなっていた。
 アスリートを追い詰めたのは、メディアの激しい「五輪バッシング」だったのは間違いない。
 メダルを獲得して表彰台に上がったアスリートには、笑顔と同時に涙があった。筆者は、涙の裏に、コロナ化で練習もできない一方で、目標としている五輪大会開催に激しい批判が浴びせられて苦悶し続けていた姿をアスリートの姿を見た。
 柔道、競泳、卓球、ソフトボール、そして史上最年少の金メダリストが出たスケートボード、五輪大会には、「感動」と「勇気」がもらえる。
 五輪バッシングを浴びせ続けてアスリートを苦境に追い込んだメディア、五輪大会の「感動」と「勇気」を伝える資格がない。

「金メダルラッシュ」 コロナ禍の中で「感動」と「勇気」を与えてくれるアスリート
 2020東京五輪大会は、開会式のNHK中継番組が、56・4%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)という「驚異的」視聴率を獲得し、1964年東京五輪の61・2%に迫った。瞬間最高は61・0%に達したという。
 序盤戦の日本人選手の活躍は目覚ましく、「金メダル」ラッシュである。柔道では阿部詩選手と阿部一二三選手の兄妹が揃って金メダルに輝く。兄妹の同時金メダルは初の快挙である。競泳400メートル個人メドレーでは大橋悠依選手が完勝して金メダル、新種目のスケートボードでは堀米雄斗選手も金メダルを獲得した。
 そして、今日(7月26日)は、スケートボード女子ストリートで13歳の西矢椛選手が日本選手で史上最年少となる金メダルを獲得、また、16歳の中山楓奈選手が銅メダルを獲得した。五輪大会の新競技で2人の10代のメダリストが誕生した。夜になって柔道男子73キロ級で、大野将平選手が二連覇を達成した。
 こうした日本人選手の大健闘で、東京五輪大会の熱気は一気に高まった。アスリートの活躍は、コロナ禍で閉塞感が溢れる中で、ひときわ感動と勇気をもたらしてくれる。
 朝日新聞は、7月26日の朝刊の1面トップで初めて、「大橋 堀米 阿部一 阿部詩 金 兄妹で『金』 家族とともに」という見出しで、五輪大会での選手の活躍を讃える記事を掲載した。スポーツ面でも同様な趣旨の特集記事を掲載している。五輪大会に対する「熱気」を明らかに高める記事だ。
 これまで、朝日新聞は、五輪大会に対して痛烈な批判を繰り返してきた。その姿勢はどこにいったのか? 
 同様に、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」などの情報番組や毎日新聞なども同じ責が問われる。
 金メダルラッシュが続けば五輪批判はやめるのか? 余りにも節操がないお粗末な報道姿勢である。
 とりわけ朝日新聞は「五輪開催中止」を声高に社説に掲げて、五輪開催の意義を否定したことを忘れたのだろうか。
 メディアは報道姿勢の一貫性が求められる。さもないとメディアとして最も重要な「信頼性」を失う。
 こうしたメディアに、五輪のアスリートのもたらす「感動」と「勇気」を伝える資格がない。

五輪開会式の楽曲作曲担当 小山田圭吾氏辞任 開会式の曲の一部削除
 7月23日、東京五輪組織委は、午後10時から、急遽行われた緊急記者会見で、五輪開会式のクリエーティブチームのメンバーとして音楽を担当していたミュージシャン、小山田圭吾氏の辞任を発表し、小山田氏の担当した開会式のオープニングの楽曲の内、4分間を削除するとした。
 小山田氏は90年代の音楽雑誌でのインタビューなどで、障がいを持つ同級生をいじめていたことを得意げに語っていた。組織委員会が開会式の楽曲担当メンバーの一人と発表した直後から、小山田が当時の記事がネット上で拡散。「多様性と調和」を掲げる東京五輪・パラリンピックにふさわしくないとの批判がSNS上で相次いだ。

電通の責任重大 
 相次いで開会式の担当者が辞任したことで、開会式のプロデュースを電通に「丸投げ」している体質の欠陥が露呈したといえるだろう。
 勿論、「丸投げ」をしている組織委員会の責任は免れるものではない。
 しかし、開会式・閉会式を始め、五輪関係の主要イベントを独占している電通の責任は重大だろう。
 渡辺直美さんの容姿を侮辱して辞任した演出統括のクリエーティブディレクターの佐々木宏氏、その後任で統括を努める日置貴之氏、いずれも「電通ファミリー」のイベント・プロデューサーである。
 今回開閉会式の演出陣として起用された人たちは、佐々木宏氏や日置貴之氏が選んだ人たちでいわゆる「電通ファミリー」に名を連ねるイベント・クリエーターであろう。
 辞任した小山田氏を始め、こうしたイベントクリー・エーターを、武藤事務総長を始め組織委員会の幹部はほとんど知らないのは間違いない。組織委員会の幹部とは「違う」世界で活躍している人たちだからである。電通グループの「いいなり」で、演出陣の人選が進めれたのでであろう。
 その電通がモラル崩壊を起こし、渡辺直美さんを侮辱したり、いじめを自慢したりというお粗末な不祥事を続発させた。「多様性と調和」を掲げる五輪大会の理念を全く理解しない「電通ファミリー」は、最早、五輪にかかわる資格はない。
 さらに問題なのは、電通にスポンサーを握られているテレビ、新聞メディアは、電通の責任を追及しないことだ。

「無観客開催要請」をした仙台市長、ファクトを踏まえないお粗末 五輪反対ポピュリズムのシンボル
 7月13日、郡和子仙台市長は、宮城スタジアム(宮城県利府町)で21~31日にある東京五輪男女サッカー競技を無観客試合とするよう、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長に文書で要請した。県外の観客が市内を経由して移動し、滞在するケースが想定され、新型コロナウイルス感染再拡大を懸念していることがその理由だ。
 これに対して、宮城県の村井嘉浩知事は、県内では現在、プロ野球やJリーグなどの大規模会場で、観客を1万人以上入れて開催しているのに、「五輪サッカーのお客は観戦できませんというのは、極めて不平等」と強調。「他のイベントと同じ扱いをする」とした。
 県は、試合がある6日間のうち、観客が1万人になるのは2日間で、残りは約3千~約8千人だと説明。東北地方の人が7、8割で、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出ている首都圏の4都県からは1割前後という。
 さらに村井知事は「東京から通常仕事などでお越しの人数を考えると、それほど大きな人数ではない」と説明。「重点措置などにならない限りは、このままの形で進められるのでは」との考えを示した。
 仙台市内でも、楽天のホームグランドの仙台球場ではプロ野球、コンサートや各種イベントが頻繁に開催され、首都圏からも多くの参加者も訪れている。隣の利府町ではサッカーJリーグも開催され、首都圏の観客は仙台市内に宿泊する。感染リスクを主張するなら、なぜ、こうしたイベント開催を容認しているのか、筆者にはその理由が理解できない。
 また、ビジネスや観光で仙台を訪れる人は、五輪の観客をはるかに上回っているのは間違いない。感染リスクは、こうしたビジネスや観光の人流の方がはるかに大きい。なぜ、仙台市はビジネスや観光の人流を抑制する対応をとらないのかまったく整合性に欠ける。感情的な五輪バッシングとしか思えない。
 郡和子仙台市長の「無観客要請」発言は、反五輪のネガティブ発想に凝り固まった科学的根拠やファクトを無視している。
 新型コロナウイルスの不安を扇動するような姿勢では、withコロナのニューノーマルの時代は乗り切れないは明らかだ。

「残念だが無観客」 メディアは「残念」というな!
 2020東京五輪大会の観客は、1都3県、北海道、福島では「無観客」開催になることが決まった。
 テレビ情報番組のコメンテーターは、「残念ですが、無観客になりました」と「残念」という言葉を付け加える。
 「五輪中止」、「無観客」の大合唱を繰り返し続けながら、「残念」というのはまったく筋が通らない。「無観客は当然」と言って欲しい。
 とにかく、メディアの五輪バッシングは眼に余る。
 筆者は、「無観客」の決定はやはりおかしいと思う。
 プロ野球、Jリーグなどの試合は、「収容人員の50%」か「1万人上限」で、有観客で開催している。その結果、パンデミックが発生していない。
 この点では、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、「日本のプロスポーツが有観客で開催されている。五輪と別の対応で理解に苦しむ」と無観客に不満を示したが、まったく同感である。
 五輪大会のチケット購入者の70%以上は、首都圏とされている。遠方から来る観客は少ない。そもそも感染者急増は東京の問題で、地方は沈静化している。そして海外からの観客はいない。首都圏での無観客は根拠が薄い。北海道や福島についても、首都圏かくる観客は一体どの位いるのだろうか。データが示されていなく、感染リスクのエビデンスがない。
 茨木県の「学校連携」で小中高の生徒を受けいれる判断は極めて合理的だ。教師が引率し感染防止対策を取れば、感染リスクはほとんどない。一般市民の観客とは違い、生き帰りに飲食店で酒を飲んだり、大騒ぎをする可能性はない。県外から来る可能性もない。
 EURO2000の決勝戦はイングランドのウェンブリー・スタジアムで6万人の観客を入れて開催した。観客にはワクチン証明書か陰性証明書の提出を義務付けたが、マスク着用の義務はない。英政府は、大規模イベントの「実証実験」として6万人の観客を容認した。英国では「イベント調査プログラム」(Events Research Programme)があり、このプログラムで承認されると、特例で現在政府の行っている規制より大人数の観客を受け入れることが可能になる。
 英国内では各地でパブリックビューイングも開催され、熱狂的なファンで会場は埋め尽くされた。マスクをしている人はいない。
 これに対して、日本人はあまりにも過度の「完璧主義」に凝り固まっているのが問題だろう。「一人も感染者を出してはならない」という姿勢は現実的ない。
 この発想では、with Coronaのニューノーマルの時代は生き残れない。


朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき


1都3県、北海道、福島は「無観客」 宮城、福島、茨城(学校連携のみ)は「有観客」
 これを受けて、7月8日夜、大会組織委員会、東京都、国、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)は「五者協議」を開催し、「緊急事態宣言」が発出された東京都内の全会場の無観客開催にすることで合意した。また「緊急事態宣言」が発出されていない埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県や、茨城、宮城、福島、静岡、北海道の会場については、それそれの地域の感染状況を踏まえて、自治体の首長と協議の上、具体的阻止を決めることで合意した。「無観客」でもIOCなど大会関係者は運営に関わる人に人数を絞った上で入場を認める方針。
 「五者協議」に引き続き、東京都以外で競技会を開催する、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県や茨城、宮城、福島、静岡、北海道も加わり、「関係自治体等連絡協議会」が開かれ、茨城、宮城、福島、静岡、北海道は、「収容定員の50%」か「上限1万人」の少ない方で、「有観客」で開催することに合意した。
 しかし、その後、合意内容は直ちに撤回され、埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県は「無観客」、茨木は「学校連携」のみとすると発表した。
 北海道は、札幌で開催されるサッカー予選の5セッションは「収容定員の50%」か「上限1万人」の少ない方で、有観客することで合意していたが、鈴木北海道知事は、記者会見で、試合終了が午後9時を過ぎる試合については引き続き検討するとし、首都圏の1都3県から観客が訪れないように大会組織委員会に求めたことを明らかにした。
 北海道は、翌7月9日、一転して、サッカー予選は「無観客」とする発表した。感染が拡大している首都圏などから来訪者で道外からの人流が増えることで、感染拡大の懸念に配慮した措置である。
 また、7月10日、福島あずま球場で開催されるソフトボール予選6試合(日本対豪州戦を含む)と野球予選1試合(日本対ドミニカ戦)はすべて「無観客」とすると発表した。
 野球・ソフトボールの福島開催は、東京2020大会の開催意義として掲げている「復興五輪」のシンボルとなっていただけに、関係者や地元市民の落胆は大きい。
 この結果、2020東京五輪大会では、42会場で750セッションが開催されるが、この内、「無観客」は37会場724セッション、96.5%にも及び、「有観客」は、茨城、宮城のサッカー予選と静岡の自転車競技の5会場26セッションとなった。
 大会組織委員会は、1年延期前には448万枚のチケットの販売を完了していたが、今回の措置で、ほとんどが払い戻しの対象となり、大会組織委員会のチケット収入約900億円は宙に浮くことなる。大会組織委員会の収入(V5)は、合計7210億円、約12.5%を占める。大会組織委員会の財政調整額は150億円を計上しているが、900億円の収入が消えれば、大幅な赤字転落は必至である。
 大会組織委員会が赤字になった場合は、一義的には東京都が負担、東京都が負担しきれない場合は、国が負担するという原則になっている。
 東京都と国で、「負の遺産」の押し付け合いが今後激化するだろう。

感染防止対策の大失敗 その責任は菅首相と尾身会長 メディアは批判の矛先をバッハ会長でなくて菅首相と尾身会長に向けるべきだ
 結局、万策尽き果てて、5回目の「緊急事態宣言」、五輪「無観客」に追い込まれ、菅首相や尾身会長のコロナ対策の無策ぶりが露呈した。海外からの見方は、日本は、感染者数は圧倒的に少ないのに、なんでそんなにうろたえているのかという見方が支配的である。
 菅首相や尾身会長が進めたコロナ対策は、「緊急事態宣言」と「重点措置」での「人流抑制」、それに飲食店や酒類をスケープゴードにするだけで、感染拡大防止には効果がなく大失態となった。
 いまだにワクチン接種率は世界でも最低水準、検査体制の充実も進まず、感染源のトレースもやらない、医療逼迫の懸念はいうが医療体制の充実は進めない。尾身会長の率いる専門家グループも感染拡大の分析と予測には熱心だが、どうしたら感染拡大を阻止できるのか、対策は何も提言しない。お粗末な専門家は資格を剥奪すべきだろう。
 そのお粗末さのツケが、四回目の「緊急事態宣言」と「無観客」になったということだろう。
 東京で900人超の感染者が急増して第五波を招いたのは、「五輪」はまったく関係なく、菅首相と尾身会長の感染防止策の大失態。
 菅首相と尾身会長(分科会の専門家たち)は、その責任をとるべきである。
 メディアは五輪批判の矛先をバッハIOC会長に向けるのではなくて、感染防止に失敗した菅首相と尾身会長の責任を追及すべきだ。
 今回のコロナ対応で、日本はまた世界に「お粗末」さを曝してしまった。

東京五輪観客上限1万人 5者協議決定 感染拡大なら無観客検討
 6月21日、東京2020大会組織委員会と政府、東京都は、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)の代表者を交えた5者協議をオンラインで開き、東京五輪の観客上限を会場定員の50%以内で最大1万人と決定した。今後感染状況が悪化し、緊急事態宣言などが再発令された場合は無観客も検討する。
 IOCやNOC(各国国内委員会)、IF(国際スポーツ競技団体)、スポンサー関係者、メディア関係者は、「観客」ではない大会関係者であるとして、最大「1万人」の枠には含めず、別枠とした。
 また子供たちに観戦機会を提供する「学校連携観戦チケット」も「別枠」とした。
 開会式については、議論に上らなかったが、一部報道で大会関係者を含めると「2万人」と伝えられてが、組織委の武藤敏郎事務総長は「(出席する)大会関係者は観客ではない。(2万人より)少ない数字になる」とした。8月24日開幕のパラリンピック大会は7月16日まで観客上限の判断を先送りした。
 五者協議の冒頭挨拶で、小池百合子知事(68)は「感染状況や医療体制に急激な変化がある場合、状況に応じては無観客を含め、対応を検討する必要がある」と述べ、無観客の可能性に言及した。
 また、菅首相は、5者協議に先立ち、大会期間中に緊急事態宣言を発令した場合には「安全安心のために無観客も辞さない」と明言している。
 しかし、五輪が本当に有観客で開催することが可能なかどうかは、コロナ感染状況によって最終的に決まることになる。6月21日に11都道府県に出されていた「緊急事態宣言」が沖縄県を除いて解除され、東京都など7都道府県は「まん延防止等重点措置」に切り替え、埼玉、千葉、神奈川の3県は「まん延防止等重点措置」が延長された、期限は7月11日で、その時点で、感染防止措置がどうなるかによって、無観客も含めて対応が変わる可能性が残る。不透明な状況が7月11日まで続きそうだ。
 
 
 IOC、IPC、組織委員会、都、国の五者協議 6月21日 提供 TOKYO2020

「反五輪」、「無観客」の大合唱 ネガティブ報道に邁進するメディア
 5者協議で、「観客上限を会場定員の50%以内で最大1万人」が決まると、予想していた通りテレビ、新聞などメディアは、「尾身提言」を無視した暴挙と大合唱である。
 記者や評論家、テレビのコメンテーターは、いずれも「暴挙」としないと立場が守れないと非難を浴びせかける。
 しかし、有観客で五輪大会を開催すると、本当に感染拡大リスクはいわれているほど飛躍的に高まるのか筆者は大いに疑問を持つ。果たして、大会開催リスクを、冷静に科学的に分析しているのだろうか。
 新聞やテレビには感情論に走るタイトルが躍る。冷静な分析は一切ない。最近は、ヒステリック」とも思われる激しい発言が多く、異論に耳をかさない姿勢は批判に値する。
 東京新聞は、政治部長の評論で、「国民の命を危険にさらしてまでなぜ…五輪「観客1万人開催」を掲載した。「1万人開催」で本当に、国民の命が深刻にさらされる状況になるのか、国民の不安を煽っているとしか思えない。
 一方、朝日新聞は、「抱きしめた後、羽交い締め 五輪に突き進むIOCの力学 『ぼったくり男爵』 今年上半期の流行語大賞があれば、ノミネートに値するインパクトがある」とした。
 しかし、筆者は、IOCの肥大化体質や「五輪貴族」に対しては厳しく批判はするが、「ぼったくり」は米国オリンピック員会で、IOCではない。IOCの資金の流れをしっかり分析して発言してもらいたい。印象論だけで書いたお粗末な記事である。ファクトを大切して欲しい。

 テレビや新聞は、連日のように「五輪中止」の大合唱を繰り広げて、選手や大会関係者の感染防止対策「頑や五輪の観客問題などで徹底したネガティブ報道を重ねているが、五輪大会が始まり、日本選手の活躍が目覚ましくなってきたら、手の平を返したように「頑張れ!日本」と報道するのだろうか。筆者はまったく納得がいかない。テレビや新聞で五輪批判を続けるコメンテーター、ジャーナリスト、評論家は、五輪大会でのアスリートの活躍を見る資格がない。道理が通らない。
 とりわけ、五輪のスポンサーでありながら、五輪中止を唱えた朝日新聞はどうするのか。「頑張れ!日本」、「日本、金メダル獲得!」を掲げた紙面が踊るようだったら、無節操の誹りは免れない。メディアとしての信頼感を喪失する。それ位の覚悟を持った上で、「五輪中止」の大合唱を繰り広げるべきだ。
 コロナ禍の陰鬱な状況が続く中で、「感動」と「勇気」をもらえる五輪大会は、一筋の「光明」と考える。五輪に対して建設的な提言をせず、無節操にメガティブ報道を続けるメディアは、競技会のTV中継に「目隠し」して見ないことを勧告する。

朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき

朝日新聞は東京五輪の「オフイシャルパートナー」を返上せよ

変質する「感染リスク」の根拠 感情論でファクトをないがしろに
 「有観客開催」はコロナ感染リスクを高めるという主張は、IOCや政府、組織委員会の感染防止対策が明らかになる従って大きく変遷していることは見逃せない。
 当初は、海外から来日する選手や大会関係者が、新型コロナウイルスを持ち込み、日本国内で感染拡大をもたらすという主張だった。しかし、ワクチン接種や検査体制、行動規制などの強化で、選手や大会関係者が感染源になる懸念は薄らぎ、感染リスクはパーフェクトではないにしても、かなり効果がることを認識し始めた。選手や大会関係者、パートナー、メディアなど分野別に出された「プレイブック」、コロナ対策指針は、評価が高く、尾身茂分科会長でさえ、評価をしている。
 代わって、感染リスクの焦点は、五輪開催によって巻き起こされる「人流」による感染者増に移っていた。
 その根拠は、五輪を開催すれば、通常のスポーツイベントとは比較にならいほどの膨大な「人流」が発生し、感染者を増大させ、医療逼迫を起こすという懸念である。
 しかし、「人流」ついていえば、観客数は海外観客もなくなり国内だけで1日で最大20万人程度とされている。ところが、首都圏の「人流」を分析すると、通常時は1日で、東京都で679万人(都内在住で都内への通勤・通学者)、都内に流入する隣接三県で282万人(都内への通勤・通学者)のあわせて約1000万人、さらに買い物など私事で外出する人は数百万人を超えるだろう。五輪開催期間は、外出自粛や在宅勤務などの影響で、約半減とみても700~800万人と推計される。
 「700~800万人」の「人流」がある中で、「20万人」という数は大きな意味があるのだろうか。専門家は本気で「人流」の分析をしているのだろうか。
 印象論だけで、「人流」増→感染増加をいう構図を主張するのが妥当なのか疑問だ。専門家は、科学的なエビデンスを示して警告をすべきだろう。
 また遠方からの観客の移動が問題だとするが、チケットの購入者の70~80%程度は競技場隣接地域の住民で、遠方から新幹線や航空機を使用して泊りがけで観戦に来る人は限定的だということが明らかになっている。
 大野裕埼玉県知事は、埼玉県内で開催される競技の観客について、県外の観客の受け入れは止めるべきだと発言したが、埼玉県の住民の80万人以上が毎日、県境を越えて東京に通勤・通学をしていることが分かっているのだろうか。埼玉県内で開催されるのはバスケットボール(埼玉スーパーアリーナ 約37000人)、男女サッカー(埼玉スタジアム 約63000人)、ゴルフ(朝霞カンツリー倶楽部)、射撃(陸上自衛隊朝霞訓練場)の4競技、1日の観客数は最大で3万人程度、その内県外から来る人は約半分の1~2万人程度、毎日の「80万人」の感染リスクと冷静に比較して欲しい。

 「人流」について、明確な科学的エビデンスが示せないとわかると、専門家は「五輪で開放的になった東京で気が緩んで数百人規模で感染増加も」と警告する。
 五輪開催のお祭りムードの高まりで、開催が「外出」「飲みに行く」口実に
なり、スポーツバーで応援する人や友人同士で集まる人が増えるとする。五輪の観戦後に仲間と食事に行くことも、感染拡大のリスクがあるという。
 「お祭りムード」の助長がやり玉に上げられた。何か論理的で科学的でない。首を傾げるばかりだ。

「お祭りムード」を巻き起こすのは「元凶」はメディア 「お祭りムード」を懸念するなら五輪報道を自粛したら如何?
 「お祭りムード」を巻き起こす主役は、テレビ・新聞・雑誌などメディアの五輪報道であることは間違いない。連日、新聞の1面の記事で、「日本選手、メダル獲得!」とか「世界新記録誕生!」などの記事や写真が氾濫する。テレビは、史上最高の放送時間で関連番組を放送する。
 その威力は絶大で、日本全国の国民に五輪大会を熱狂に巻き込む。
 「お祭りムード」の高まりで気の緩みが生じて感染リスクが増すと専門家は警告するが、それを主張するならメディアの五輪報道に「自粛」を要請するのが筋だろう。「1万人上限」の観客規制が行われ、競技場で観戦が可能なのは1日最大で20万人程度、パブリックビューイングも中止となり、市民は盛り上がりようがない。唯一、メディアの報道である。テレビや新聞のメディアの皆さん、感染リスクの高まりを主張するなら、そのリスクを低減するために「報道自粛」を宣言したらいかが。
 また、テレビや新聞のメディアは、「大会関係者」の人数の規模を批判する。しかし、「大会関係者」の中には、約2万人のメディア関係者も含まれる。
 海外から来日するメディア関係者の感染拡大リスクを盛んに懸念するが、メディア関係者の7~80%は国内メディアである。大手メディアの中には1社で数百規模の取材陣を繰り出す。「大会関係者」の人数削減は必要だが、メディア関係者だけを「聖域」にするのは納得できない。日本のメディアは、率先して取材陣削減を行い、「大会関係者」の削減に協力すべきだろう。
 開会式に出席するIOCやIF、スポンサーなどの大会関係者の削減だけを主張して、数千人は優に超えると思われるメディア関係者を削減しないのは筋が通らない。
 
感情論に支配されるメディアと世論
「五輪反対の世論」には2種類ある。一つは、与えられた試算や研究者の意見など科学的根拠をもとに反対する世論。もう一つは、感情的な世論」と社会学者の 佐藤俊樹氏は主張する。(朝日新聞 6月12日)
 そして「科学を生かせず、感情的な反対論を生み出した」とする。
 筆者は、五輪開催の行方を、尾身茂氏一人だけにすべてを委ねる風潮には断固反対をする。尾身氏は、五輪開催について異論を唱える専門家とどれだけ真摯に対話を重ねたのだろうか。尾身氏の主張をすべて「善」とするメディアの姿勢も問題がある。
 「五輪開催反対」、「支持」という二者択一ではなく、どうやったら開催できるのか、できないのか、きちんと議論をしてもらいたい。「無観客」、「有観客」も同様だ。
 現代の科学技術では、感染者数の予測や状況ごとの感染リスクなどを分析しようとすれば可能だろう。その成果を元に科学的、論理的な分析を進めるべきだ。



東京五輪「開催」50%、「中止」48%…読売世論調査
 6月6日、読売新聞社は、4~6日に実施した全国世論調査で、東京五輪・パラリンピックについて聞くと、「開催する」が50%、「中止する」は48%で、世論が二分されたと報道した。「中止」を求める声は、前回(5月7~9日調査)の59%から11ポイント減った。「開催」の内訳をみると、「観客数を制限して開催」が24%(前回16%)、「観客を入れずに開催」は26%(同23%)だった。海外から来る選手や関係者への感染対策は、十分だと「思わない」が63%と多数を占めたとしている。
 一方、JNNが実施した世論調査では、東京オリンピック・パラリンピックについてJNNの世論調査で尋ねたところ、「開催すべき」と答えた人が44%に達する一方、「中止すべき」「延期すべき」もそれぞれ31%、24%と回答が割れたと伝えた。
 世論調査の数字を見ても、確実に開催支持が増えている。



「開催中止」の大合唱 思考停止状態のメディアのお粗末

 2020東京五輪大会「中止」を唱える声が、溢れかえっている。
 毎日のように、テレビのワイドショーや情報番組、ラジオ番組に主演するコメンテータは異口同音に、声高に「中止」を主張する。新聞や週刊誌も「中止」を掲げる記事が連なり、過激な論調で溢れかえる。2020東京五輪大会は、まさに四面楚歌である。
 まるで、東京五輪を中止すれば、新型コロナウイルスの感染拡大は収まるといっているがごとくの感がある。世論調査で五輪中止を支持する人が7割~8割に達する背景には、緊急事態宣言が延長、延長を重ねながらい一向に感染拡大が収まらない状況に対するフラストレーションがたまって爆発寸前な状況があるだろう。
 「中止」を主張する根拠は、新型コロナウイルスの感染拡大リスクである。緊急事態宣言を出しして一向に感染拡大が収まらない中で、五輪を開催して感染拡大を更に加速させることになるリスクをどうして負わなければならないのかということである。
 次に多いのは、オリンピックの商業主義化や肥大化を批判してオリンピックの存在そのものに反対する「反五輪主義」である。
 その二つの論点を混ぜ合わせて、「開催中止」を主張する。
 筆者は、五輪の商業主義や肥大化、五輪組織の腐敗体質については厳しく批判をして五輪改革の必要性を主張している。とりわけ2020東京五輪大会の開催費用膨張や国立競技場など大盤振る舞いの競技会場の建設については厳しく批判を続けてきた。
 しかし、今の時点で、五輪開催か中止かを議論するためにには、「新型コロナウイルス」の問題は、「反五輪主義」の論点とは切り離して議論すべきだ。
 この数日気になるのは、テレビに出演するコメンテーターは、「開催中止」ほぼ一色で、「開催中止」を主張しないと「流れに乗れない」とまさに思考停止に陥っている。週刊誌や雑誌は「五輪中止」を派手な見出しに掲げ、読者を引き付けて販売部数の拡大を図る。
 まさに五輪「魔女狩り」の様相を呈している。五輪開催支持を唱えると「白い目」で見られるのを避けているのだろうか。しかし、五輪を批判するのは合理的で科学的な論拠に基づいて発言すべだ。


週刊現代6月5日号の新聞広告

コロナ感染防止対策で何が欠けているか冷静に分析を
 新型コロナウイルスの感染リスクの懸念を述べるなら、開催にともなって一体どこの部分に感染リスがあるのか、冷静に見つめて欲しい。
 「医療体制」を圧迫するというなら、本当に感染者や重症者がどの位でそうなのか、「医療崩壊」は起きる可能性があるのか検証をしてほしい。
 東京都のコロナ病床使用率は、40.6%、重症病棟使用率は16.4%である。五輪開催で「医療体制崩壊」が引き起こされる可能性がるのだろうか。
 4月下旬、国際オリンピック委員会(IOC)と組織委員会は、選手や選手団スタッフ、大会関係者、メディアに分けて、新型コロナウイルスのプレーブック(規則集)を公表した。2月に公表した第1版よりかなり厳しい内容となった。
 入国前には、▼出国前14日間の経過観察、▼出国前96時間以内に2回のウイルス検査、▼出国前72時間以内の陰性証明を提出、▼COCOAと健康観察アプリのダウンロード、▼各団体・組織ごとにコロナ対策責任者(CLO:COVID19 Liaison Officer)の設置、▼日本での治療費を賄う保険加入、▼日本入国時に空港での検査を義務付ける。
 選手は、一定の条件を満たせば入国初日から練習が認められ、入国後3日目の検査で陰性となれば試合に参加できる。
 2月に初めて策定した第1版では4日に1回だった検査も、原則毎日に改定された。
 検査で陽性が確定した場合、競技に出場することはできない。濃厚接触者も隔離される。
 選手に同行するチーム役員やスタッフも毎日検査を実施。すべての大会関係者も最初の3日間は毎日検査を義務付けられる。滞在中は、活動計画書に記載した活動に限定。移動に関しては、原則として組織委が用意する大会会専用車両だけ利用することが許され、で公共交通機関は使用できない。
 大会関係者やメディアは、入国後3日間はホテルで待機、毎日検査。条件を満たせば一部活動可能。4日目から会場などで活動可能。検査は、選手との接触度合いに応じて毎日~7日に一度実施。
 しかし14日目までは、外出は競技会場など限られた場所に限定され、繁華街、飲食店、ショッピング、観光は不可。
 食事については、コロナ対策が実施されている場所(大会会場におけるケータリング施設、宿泊先内レストラン、自室内でのルームサービスやデリバリー)に限定されるなどこれまでの大会とはまったく様変わりした。
 さらに、IOCはファイザーのワクチンを無償提供、選手や大会関係者の約75%はしでのワクチンを接種済で、開催時に選手村に入る人の約80%がワクチンを接種しているとIOCでは予想している。
 こうした状況でパンデミックが起きることはほぼ考えられない。テレビやラジオ番組のコメンテーターは、こうしたコロナ対策を果たして読み込んでいるのだろうか。
 その上で、開催に伴う選手や大会関係者、メディアの感染リスクをどう評価しているのか、冷静に科学的に分析をして評論してほしい。
 (参照 下記 「五輪選手ら入国の影響『限定的』 東大院准教授ら感染者試算」)

 新型コロナウイルスの感染拡大リスクが懸念されるのは、「人流」増加であろう。
 海外からの観客は断念したので、問題は国内の観客やイベント開催による「人流」増加である。
 大会組織委員会と東京都は、代々木公園や井之頭公園に大規模パブリックビューイング会場の設置を予定している。この他、大会期間中には関連イベントも計画され、人流増加で、感染リスクが高まることが懸念される。パブリックビューイングや関連イベントの開催にあたっては、規模は最小限にした上で、十分な感染防止対策を講じる必要があるだろう。観客を入れるにしても、観客数は制限されるの当然だろう。しかし、大規模イベント開催に伴う観客制限、上限「5000人」は緊急事態宣言下の東京都のルールである。
 飲食店もデパートも、ショッピングセンターも市場も「閉鎖」するのではなく、感染防止対策を講じて営業するのである。そうしなければ、長引くコロナ禍の中で社会はもたない。
 なぜ五輪大会だけはだめなのか、なぜプロ野球やJリーグならいいのか、筆者にはその理由が理解できない。合理的に科学的な説明をしてほしい。

 まるで五輪大会を中止すれば、コロナ禍は収まるような発言が満ち溢れている。
 新型コロナウイルスのパンデミックは収束しないのは、一重に国や都などのコロナ感染防止対策に「失敗」したからである。口を開けば、「マスク着用」、「三密回避」、「外出自粛」を繰り返す。「人流抑制」に頼るコロナ対策は、まったく前世紀の発想、現代の感染防止対策は、ワクチン、治療薬、検査体制、医療体制であろう。コロナ禍に見舞われてすでに2年近く経つが、今世紀型のこうした対策は、まったく進んでいない。ワクチン接種は、先進国は最下位、検査体制はいまだに拡充されていない。ロンドンやニュー欲ではだれでも無料で検査を受けることができる。医療体制の充実ついても、コロナ専門病院の整備は、東京都は2か所を整備したがその後、まったく進展がない。病床数の顕著な拡充もない。医療体制が逼迫しているなら、医療体制を公的資金を投入してなぜ拡充しないのか。感染拡大防止に重要な情報が得られる感染ルートの追跡は、保健所の負担が大きいとして東京都などは、止めてしまった。ほとんど役に立たなかったアベノマスクに260億円を投じ、GO TO トラベルには初期で1兆3500億円以上、「延長」で約1兆円を予算化しながら、検査体制や医療体制の充実は一向に進めない。新型コロナウイルスの感染拡大は、まさに「人災」といえる。
 メディアは、五輪をバッシングするのではなく、菅政権のコロナ対策を批判することに傾注すべきだ。

「Withコロナの時代のニューノルマル」を示せ
 新型コロナウイルスは、いまだかってない強力な感染力を保つ感染症である。
 人類はこのウイルスと長期間戦っていかなければならない。感染者がゼロに近い状態になるには数十年は必要だろう。あるいは、永遠に来ないかもしれない。
 その間、世界はコロナ感染リスクをある程度抱えながら、社会・経済活動を維持していかなければならない。
 Withコロナの時代のニューノルマルの確立が、社会全体に求められる。スポーツイベントやコンサート、飲食産業、ショッピングセンター、どうやって維持していくか、その知恵が問われている。
 「安全・安心な大会」を達成して、「Withコロナの時代のニューノルマル」を五輪開催で是非示して欲しい。
 2020東京五輪大会開催のレガシーは「Withコロナの時代のニューノルマル」に違いない。


五輪選手ら入国の影響「限定的」 東大院准教授ら感染者試算

 5月23日、東京大大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授と藤井大輔特任講師が、選手や関係者の入国による東京都内の感染拡大は限定的で、国内在住者の人流増加の抑制がポイントとなるとの試算をまとめて公表した。
 試算は、緊急事態宣言の解除日や国内のワクチン接種のペースなど複数の条件で影響を検証した。
 海外の選手や関係者ら入国者数は10万5千人、ワクチン接種率が50%として試算した結果、都内における1週間平均の新規感染者数で約15人、重症患者数で約1人、上昇させる程度にとどまり、「入国・滞在の影響は限定的」(仲田氏)と結論づけた。
 この試算では海外選手らが日本の居住者と同じように行動すると仮定しており、仲田氏らは「現実には選手らは選手村などである程度隔離されるため、影響はより小さくなる可能性がある」としている。
 一方、国内居住者の観戦やパブリックビューイングなどの応援イベントによる人流増加のリスクは大きいとした。  6月中旬に緊急事態宣言を解除し、ワクチン接種が全国で1日60万回進むと仮定したケースでは、五輪を中止した場合の新規感染者は10月第3週に822人とした。
 五輪を開催した場合では、無観客などで国内居住者の人流増加を完全に抑制できれば20人程度の増加にとどまるが、応援イベントなどによって人の流れが1%増えるだけでも180人程度増加する可能性があるとし、仲田氏は「国内居住者の人流をいかに抑制するかを考えるのがより重要だ」と指摘した。  
 また政府が目指す1日100万回のワクチン接種を達成することで増加は抑えられ、重症者数も現状より大幅に悪化することはないとしている。
 仲田氏らは「『新型コロナウイルス禍の応援様式』を推奨し、街中で大勢の観戦は禁止すべきかもしれない」としている。
(参考 産経新聞 5月23日他)

米の「渡航中止」勧告報道 騒ぎ過ぎたメディアのお粗末 
 米国務省は24日、日本への渡航を最も警戒レベルが高い「渡航中止」に引き上げた。オリンピックまで、2カ月を切ったタイミングで、米国が日本の感染状況を深刻に捉えたことで、世界各国が東京五輪開催を不安視する声を強めるとして、各メディアは一斉に、開催は窮地に追い込まれるという論調を繰り広げた。

 しかし、米国務省が日本への「渡航中止」勧告を出したことは、そんな「深刻」なことなのだろうか。冷静に見る必要がある。
 米国務省の渡航警戒レベルは、レベル2の「注意を強化」(韓国、シンガポール、ベトナムなど16ヵ国)、レベル3の「渡航再検討」(韓国、中国、タイ、オーストラリア、イスラエルなど42ヵ国)、そしてレベル4の「渡航中止」は、感染拡大が深刻なインド、ブラジル、ロシアを始め、ドイツ、フランス、スペイン、カナダなど150ヵ国(日本を含めると151ヵ国)にも及び、世界の主要国の大半が含まれているのである。
 勿論、日本がレベル4に引き上げられたことは、しっかり受け止めて感染防止に努めなければならないのは当然だが、危険極まる深刻なパンデミックに襲われている国と見なしたわけでなないだろう。
 渡航情報は、米国務省が公開情報のほか、米疾病対策センター(CDC)の分析などをもとに、数日間隔で更新していが、CDCの判断基準は主に直近28日間の感染者数が人口10万人あたり100人を上回れば、検査数に関係なく、最高レベルに該当する。日本は今月8日以降に100人を超えており、23日時点では119人になっていたという。
 またCDCは日本については「ワクチン接種を終えた人でも変異株に感染し、感染を広める可能性がある」と指摘している。
 しかし、変異株の感染拡大は、日本だけでなく、米国内で進行しているのに、バイデン政権は、「ピークは越えた」として「安全宣言」を出している。変異株のリスクは、日米は同程度のはずである。
 感染者数にしても、米国は、1日に30万人近い新規感染者を出したが、最近は2~3万人に激減、ワクチン接種率も大半の州で50%を超えたとしている。
 しかし、まだ、1日に新規感染者約2万7000人、死者1325人(5月28日)が発生している。これに対して日本は、新規感染者約3700人、死者95人にとどまる。米国は感染者で約7.3倍、死者で約14倍にも及んでいるのである。
 日本の感染状態を「さざ波」と呼ぶのは言語道断だが、数字の意味は冷静に見つめる必要がある。
 また、米国務省は米国民への入国規制や飛行機の運航状況なども踏まえているという。
 そもそも日本は、米国をコロナの感染国として、米国からの入国を認めていない。
 とにかく、米国の「渡航中止」勧告で、なぜ五輪中止論が加速するのか、筆者にはまったく理解できない。
 米ブルームバーグ通信は、日本への「渡航中止」勧告については、「アメリカは、オリンピック開幕まで2か月を切った東京の計画に疑問を投げかけた」「開催の準備ができていることを国民と国際社会に納得させるのに苦労している国にとって新たな打撃だ」などと伝えた。
 この報道に盲目的に引きずられて、日本のメディアは、こぞって、開催は窮地に追い込まれると伝えた。
 ジャーナリストとして、事実を分析する冷徹な目が失われているのは残念である。
 ちなみに、米ホワイトハウスのサキ報道官は「我々の立場は変わっていない」と述べ、引き続き開催に向けた日本の努力を支持する意向を示し、米国五輪・パラリンピック委員会(USOPC)も、「選手やスタッフに対する感染予防策を講じるほか、日本への渡航前と到着後、五輪期間中にも検査を受けるので米国選手の安全な参加に自信を持っている」として東京五輪への米国代表の出場に影響はないとする声明を出した。




深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催 コーツIOC副会長

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2021年5月24日
Copyright (C) 2020 IMSSR



******************************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
******************************************************



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東京オリンピック IBC MPC 東京ビックサイト 国際放送センター メディアセンター 混迷! 見本市中止問題

2021年05月28日 14時32分07秒 | 国際放送センター(IBC)
迷走 東京五輪大会のメディア施設
IBC/MPC




朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき


朝日新聞社説 2021年5月26日

朝日新聞は東京五輪の「オフイシャルパートナー」を返上せよ

「五輪開催」すべき 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末 根拠なし パンデミック・リスク 
開催実現で「Withコロナの時代のニューノルマル」をレガシーに


東京オリンピック 渡航中止勧告 開催に影響なし 過剰反応 メディア批判

深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催 コーツIOC副会長 東京五輪開催、G7全首脳が「力強い支持」




『見本市 中止問題』の解決を訴える全面意見広告掲載
 「私たちは東京オリンピックによる『見本市 中止問題』の解決を要望します」
 展示会や見本市を開催する団体の日本展示協会が中心となって日本経済新聞(2018年9月26日付朝刊)に全面意見広告を掲載した。
 2020年東京五輪大会開催に伴い、東京ビックサイトは最大20カ月間に渡り、国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC)に使用されるため、約232の展示会や見本市が中止になり、中小企業をはじめ、7万8千社の出展企業が影響を受け、約2兆円の売り上げが失われるとしている。
 日本展示協会などでは、「私たちは五輪の成功を願うと同時に、全見本市が例年と同規模で開催できるよう、東京都をはじめオリンピック員会、日本政府など、すべての関係者に強く要望します」と主張している。
 東京ビックサイトは、日本で最大の展示会や見本市会場で、毎年約300のイベントが開催され、その経済効果は年間2兆円にも上るとされている。
 開催される見本市は、「東京モーターショー」や「コミックマーケット」をはじめ、「工作機械見本市」、「日本ものづくり展」、「国際ロボット展」、「Japan IT Week」、「国際宝飾展」、「おもちゃショー」など様々な業種の展示会や見本市が開催されている。
 出展社は年間約13万社、来場者は年間1469万人に及ぶ。その内、海外からの出展社は約3万社、参加者は20万人といわれている。
 日本展示協会などでは、見本市や展示会は企業にとって、築地市場と同じ「市場」であり、その規模は、築地市場の何倍も大きく、国際的な取引が行われることで日本経済への貢献度ははるかに大きいとし、東京ビックサイトが使用できなくなるのであれば、築地市場の代替施設として豊洲市場を整備したように、東京ビックサイトと同規模の代替施設が用意されるべきだとしている。


2017年6月22日 東京都都庁前で行われた展示産業関係者のデモ 出典 日展協

2020年、コミケは開催可能に 東京都、「見本市中止問題」で緩和策
 2018年9月26日の日展協意見広告掲載の2日後、9 月28 日、東京都は利用制限について、更なる緩和内容を発表した。
 ① 「西展示棟」と「南展示棟」が、2020 年5 月1 日~5 日の5 日間、使用可能
 ② 「青海展示棟」(仮設展示場)が、2020 年7 月1 日~14 日(14 日間)と9 月10 日~30 日(21 日間)、使用可能。

 さらに翌日の9 月29 日、小池都知事は定例記者会見で、前日の東京都が発表した緩和策を記者団に説明した。
 小池都知事は、「東京ビッグサイトが2020 年五輪の際、メディアセンター(放送施設)になる。その間、東京ビッグサイトのかなりの部分が占有され、展示会等が開催できないことに対し、『何とかならないか』と要望をいただいてきた。特にコミケ(コミックマーケット)と言われるコミック関係のイベントは、いつも大変な賑わいとなっている。2020 年はコミケを開けないんじゃないかと心配する声が寄せられたが、西の展示棟を調整し、5 月1 日から5 日までコミケ関連で使えるようにすることで関係者と調整して開催中だ」とした。「青海展示棟(仮設展示場)」も、7 月1 日から14 日までの14 日間、それから9 月10 日から30 日までの21 日間、合計35 日間、利用可能にした。様々工夫をしながら展示会等のイベントにも会場を提供する」と述べた。
 小池都知事が公式の場で、「見本市中止問題」について言及したのは初めてのことで、一歩、前進と評価もできるかもしれない。
 しかし、「見本市中止問題」は、コミケ(コミックマーケット)の開催を解決させば終わりではない。 年間約300回も開催される見本市・展示会全体に影響がでることが問題なのである。
 今回の緩和策で、合わせて1カ月程度の展示場の使用が可能になったが、東京ビックサイトが最大約20カ月、使用中止に追い込まれる現状の計画の中では、焼石に水だろう。しかも、最も重要な2020東京大会開催中やその前後の期間は、閉鎖されてまったく利用できないのである。
 「見本市中止問題」の抜本的な解決策とはほど遠く、問題は今後も尾を引くのは確実だ。


「見本市中止問題」で緩和策を公表する小池都知事 2017年9月29日   出展 日本展示協会

「MICE」を五輪開催のレガシーに
 東京オリンピックは、単にスポーツ・イベントをするのではなく、日本を世界に発信する格好の機会と捉えるべきである。「3兆円」超の開催経費が投入される国をあげての巨大イベントなのである。世界から日本が注目される五輪開催期間は、日本が誇る最先端技術、高度な加工技術を始め、コミュケや映像、音楽などの日本文化、伝統工芸などを発信するチャンスである。見本市や展示会、関連イベントは極めて重要なツールである。

 世界の主要都市は、都市の競争力、そして国の競争力向上につなげる成長戦略として「MICE」を重視している。
  「MICE」とは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとったもので、海外からのインバウンドで活性化しようとするものである。
 ロンドン、パリ、フランクフルト、ラスベガス、マイアミなどの欧米主要都市やシンガポール、香港、上海などのアジア主要都市はいずれもMICE戦略に力を入れている。とりわけ東京都にとっては都市の次の時代を見据えた成長戦略としてMICE戦略への取り組みは必須だ。
 これに対して、東京は大型の展示場やコンベンション施設が不足して、すでに飽和状態、海外諸国に比べて遅れをとっていると指摘されている。 
 五輪開催と有機的に結び付けて、首都圏に大型の展示ホール、国際会議場、国際ホテルなどを備えた統合型のコンベンション施設の整備に取り組むべきだろう。 東京都にとっては都市の次の時代を見据えた成長戦略としてMICE戦略への取り組みは必須だ。

 日本は、確実に少子高齢化社会に突入する。東京五輪の開催を、50年後100年後の日本を見据えた成長戦略を構築する上で、“絶好の機会”とする視点が欲しい。道路・鉄道建設や競技場整備などの“箱もの”主義の発想では、次世代の展望はまったく描けない。
 1964年の東京五輪大会の“レガシー(未来への遺産)”は、東海道新幹線、首都高速道路、地下鉄日比谷線、そしてカラーテレビだとされている。
 東海道新幹線は、いうまでもなく、日本列島の大動脈となり、日本の高度成長の牽引車となった。
 カラーテレビ”は、その後のHD、4K、8Kの開発で世界の主導権を握り、放送・エレクトロニクス産業の分野で、日本が世界のトップを疾走するきっかけとなった。
 2020年東京五輪大会の“レガシー(未来への遺産)”として、一体、何を残そうとしているのだろうか。





Japan exhibitors fear $12 billion hit from media center plan (Thu Jan 26, 2017 Reuters)
2020東京五輪大会 IBCとMPC 設営場所と閉会後の再活用策
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC/MPC
五輪のメディア施設(IBC/MPC)はこうして整備される ~ロンドン五輪・その機能・システムの概要~
周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略 東京五輪への教訓





東京ビックサイトに設置されるIBC/MPC
   東京オリンピックの世界の報道機関の拠点、国際放送センター(IBC International Broadcasting Center)とメインプレスセンター(MPC Main Press Center)は東京ビッグサイト(江東区有明地区 東京湾ベイエリア)に設置される。
 国際放送センター(IBC / International Broadcasting Center)は、世界各国。の放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は、五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるOBS(Olympic Broadcasting Services )が行う。
IBCには、国際映像・音声信号のコントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置されるエリアや各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・ブースなどを設置する放送機関エリアなどが整備される。
 メインプレスセンター(MPC / Main Press Center)は、新聞、通信社、雑誌等の取材、編集拠点である。共用プレス席、専用ワーキングスペース、フォト・ワーキングルーム、会見室・ブリーフィングルームなどが準備される。
IBCとMPCには、約2万人のジャーナリストやカメラマン、放送関係者などのメディア関係者が参加する。
 オリンピックの施設の中で、最も広大な施設は、開会式、閉会式が行われるオリンピック・スタジアムである。次に巨大な施設は、競技場ではなく、IBC/MPCと呼ばれるこのメディア関連施設だ。約10万平方メートルの広さの広大な建物が整備される。
オリンピックを支えるメディアの果たす役割は極めて大きい。国際オリンピック委員会(IOC)は、メディア戦略を重要な柱として位置付けている。とりわけ競技中継を世界各国で行う放送メディアは、オリンピックの存立基盤を握るとまで言われている。そのメディア戦略を担うのがIBC/MPCなのである。


国際放送センター・メインプレスセンター 出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会


2012年ロンドン五輪IBC CDT(Contribution, Distribution and Transmission Centre) 出典 L.A. INSTALLATIONS


日本で最大の見本市会場 東京ビックサイト 五輪に備えて拡充
 東京ビックサイトは、江東区有明地区の東京湾ベイエリアにある国際展示場で、敷地面積24万平方メートル、延べ床面積23万平方メートル、「会議棟」、「西展示棟」、「東展示棟」、「南展示棟」からなる日本で最大の国際展示場である。
 展示会や見本市会場で、年間約304件(2016年)のイベントが開催され、1469万人(2016年)の参加者が訪れ、その経済効果は数兆円にも上るとされている。

 東京都では2020東京大会のIBC/MPCを設置するために、東京ビックサイトを拡張・整備し、西展示棟の南側には新たに、敷地面積約3平方メートルに、延床面積約6万8500平方メートル、展示場面積2万平方メートルの地上5階建ての「南展示棟」を、約228億円の整備費で建設し、2019年7月開業に開業した。広さ約2万平方メートルの展示ホール(5000平方メートル×4ホール)や会議施設、立体駐車場(約350台)、事務所などが設けられる。
 また東展示棟臨時駐車場に、総工費約100億円で、総床面積約2万平方メートル、展示面積約1万6000平方メートルの「東新展示棟」(仮設)を建設した。
 さらに、東京ビックサイトが国際放送センター(IBC)の整備で閉鎖される期間の緩和策として、りんかい線東京テレポート駅に隣接した広さ約2万3000平方メートルの「青海展示棟」(仮設)も建設し、2019年4月に開業させた。「青海展示棟」は大会開催後は取り壊される予定である。
 この拡充工事で、東京ビックサイトは、本館の「会議棟」、「西展示棟」、「東展示棟」、「東新展示棟」、「南展示棟」、青海地区の「青海展示棟」の6つの展示棟、合わせて約14万平方メートルの展示会場を運営するまさに日本を代表する見本市会場となった。
 しかし、そのほとんどが肝心の五輪開催直前や開催期間中には使用できないという深刻な問題を抱えていることには変わりない。


出典 東京ビックサイト
 
迷走 東京ビックサイトの整備計画 当初は競技会場でも利用
 2020東京五輪大会の立候補ファイルの当初計画では、東京ビックサイトは、競技会場としても利用することになっており、「東展示棟」の約半分の3ホール、合わせて約2万6000平方メートルは、レスリングやフェンシング、テコンドーの競技場として利用する予定だった。
 国際放送センター(IBC)は「東展示棟」の残りの3ホール(約2万6000平方メートル)と「西展示場」(4ホール 約2万9000平方メートル)、それに「東展示棟」脇に新設する「東新展示場」(約1万6000平方メートル)を利用して、施設整備をする計画だった。
 MPCは、新設する「南展示棟」に設置する予定で、高速・大容量の光ファイバーや高密度WiFiを整備して、1階、2階にはプレス・ワーキング・エリア、3階には約1000席の会見室などを、約3万㎡のスペースを使用して設ける。東京都は総工費約228億円を投入して、「南展示棟」を「西展示場」の駐車場スペースに建設する。
 また「西展示場」には、IBC/MPC共通施設として共用サービスエリアが設けられ、インフォメーションデスク、ツーリスト・サービス、ショッピング・アーケード、コンビニ、カフェ、銀行、郵便局等が設置され、メディアに対して24時間体制で幅広サービスを提供する計画だ。IBC/MPCの事務局スペースも「西展示場」に設けられる。

 しかしその後、IBCの設営・運営の責任を持つOBS(Olympic Broadcasting Service)から、当初計画のIBCのスペースでは手狭だとの指摘を受けたため、大会組織委は東京ビックサイトに整備予定のレスリングやフェンシング、テコンドーの競技場を幕張メッセ(千葉市)に移し、「東展示場」の6ホール、約5万2000平方メートルはすべてIBCで使用することに変更した。
 IBC設置計画の変更に伴い、「西展示場」に設置予定のIBCスペースが空き、新設の「南展示場」に設置される予定のMPCが、「西展示場」に設置されることになった。
 IBC/MPC共通施設の会見室は「会議棟」に移行させた。

 この結果、新設する「南展示棟」は大会開催時のメディア施設設置スペースから除外され、東京都は、「南展示場」の建設費、約228億円を五輪施設整備予算から削除し、五輪予算を圧縮したとした。しかし、建設されるには変わりがないので「見せかけ」の五輪予算圧縮である。
 東京都では、「南展示棟」を2019年6月に前倒して完成させ、IBC/MPC施設整備工事開始に伴って閉鎖されるまでの2020年3月までの9か月は、展示場スペースとして利用可能にすることで、展示関連企業に配慮をした。
 こうして約228億円かけて新設される「南展示場」は、2020年東京大会のメディア施設としては使用しないことが決まったが、一体、なんのために「南展示棟」建設したのかという疑問が生じる。東京都では、五輪終了後は「南展示場」は国際会議や展示場施設として使用するので、東京ビックサイトの展示場機能の拡充につながる必要な投資だとしている。しかし、最も肝要な東京大会開催期間中は、空いている「南展示場」はセキュリティ上の理由で閉鎖されるので、展示会などイベント開催はまったく利用できない。なんともちぐはぐな対応である。


東京ビックサイトに建設される「南展示棟(増築棟)」の完成予想図 出典 実施段階環境影響評価書案


東京ビックサイトに建設される「南展示棟(増築棟)」の配置図 出典 実施段階環境影響評価書案

 一方、東京ビックサイトでは、東展示棟脇の臨時駐車場に、総工費約100億円で、総床面積約2万平方メートル、展示面積約1万6000平方メートルの「東新展示棟」(仮設)の建設した。「東新展示棟」は、メディア用施設が設置され、五輪開催中は、IBC/MPCのスペースとして占有される。
 「東新展示棟」の建設は、五輪開催後に予定している老朽化に伴う東京ビックサイト全体の大規模修繕で、展示会場の利用が大幅に制限されることが見込まれることなどから、展示会開催への影響を最小限に抑えるという狙いも込められていた。
 「東新展示棟」は2017年10月に完成し、2019年4月までのIBC設置の準備工事が始まるまでの期間は展示場として稼働させる。五輪大会期間中は展示場としては使用できないが、五輪終了後は、東京ビックサイト全体の老朽化改修工事伴う措置として、10年間程度展示場として使用して、その後は取り壊す計画である。


東新展示棟」完成予想図 出典 東京ビックサイト

 東京都では、東京ビックサイトが五輪大会のIBC/MPC施設が整備されることに伴い、長期間に渡って見本市会場として利用できなくなることで、展示会関連企業が被る影響を緩和させるために、りんかい線東京テレポートに隣接する都有地に、展示場面積約2万3000平方メートルの「青海展示棟」を建設することを決めた。
 「青海展示棟」は、展示場面積約1万3000平方メートルのホールを2つ備え、各種の見本市、展示会が開催できる。東京ビックサイトからは、約1キロメートルほど離れているが、参加者の便をはかるために、東京ビックサイトから無料シャトルバスが運行される。
 2019年4月に開業し、2020年11月に取り壊される仮設展示場である。
 但し、肝心の五輪大会開催中は、大会組織委員会が、五輪のスポンサー企業などのイベントスペース、「パートナーショーケーシングエリア」として利用することになっているので、一般の展示会・見本市は開催できない。
 展示会関連団体は、2020年11月以降の存続を求めてる。


青海展示棟 筆者撮影

猛反発した展示会関係者 東京ビッグサイトの利用計画公表
 2015年10月22日、東京都と東京ビックサイトは,、展示会主催者などを対象に説明会を開催し、東京オリンピックのメディア施設(IBC/IMC)の設置に伴い、2019年4月から2020年11月までの1年8か月の期間、ほとんどすべての展示場が閉鎖され、展示会場や見本市として使用することは不可能になることを明らかにした。当初予定より更に長期期間、“閉鎖”される懸念が現実化した。
 また既設の「西展示棟」と新設する「拡張棟」は、2020年4月~10月の7か月間が使用不可能になるとし、さらに「西展示棟」は「南展示棟(拡張棟)」の工事に伴い、2017年4月~2018年3月の一年間、使用不可となることも明らかにした。
 これに対し、展示会の主催団体、「日本展示会協会」は、「2020年東京オリンピックのメディア施設に、東京ビックサイトが20か月間使用されため、ほぼ展示会が中止になると懸念されている。展示会は出展者、特に中小企業にとって不可欠な営業の場、倒産などの大きな社会問題となる前に解決策を提案する」として、メディア施設を東京ビックサイトの隣接地に新たに建設するという提案を含めた要望書を、11月17日に東京オリンピック・パラリンピック担当大臣に提出した。


東京都オリンピック・パラリンピック準備局
日本展示協会資料


日本展示協会資料

 2015年11月17日、舛添知事は記者会見で、レスリングやフェンシング、テコンドーの競技場が幕張メッセに移されたことで、IBC/MPCの配置計画を見直して、IBCの設置は東展示場のみとし、MPCは西展示場に設置し、新設する「南展示場(増築棟)」は、MPCでは使用しないという方針を明らかにした。展示場開催への影響を少しでもに抑える措置と思われる。
 しかし、まったく論外の対応である。最も肝心の2020年4月から10月までの五輪開催期間は、セキュリティ上の理由で、一般参加者が出入りができず、新設する「南展示場(増築棟)」は、展示会では使用できないのである。
 当初計画ではMPCとして使用するために約228億円もかけて建設したのに、MPCとして使用しないのであればなんともムダな整備計画だろう。 一体、五輪開催期間中は、床面積6万8500平方メートル、5階建ての「拡張棟」を何に利用するのだろうか、未だに明らかにされていない。
 仮に228億円を使って、東京ビックサイトの敷地外に展示場スペースを整備したら、五輪期間中の展示場問題は避けられたであろう。
 もっとも「拡張棟」は、五輪後は展示場や会議スペースで利用できるのでまったくムダになることはないが、なんともちぐはぐな計画だ。
 IBC/MPC設置を巡る“混迷”が始まった。


東京都 修正利用計画公表
 2015年11月20日、日本展示協会の要請を受けて、東京都は都議会で、東京ビッグサイトの修正利用計画を明らかにした。
▼ 2020東京オリンピック・パラリンピックの国際放送センター(IBC)を「東展示棟」(5万1380平方メートル)と、2018年夏に完成予定の東展示棟の東側に建設される「東新展示棟」(1万6000平方メートル)に設置し、2019年4月から2020年11月まで使用する。
▼「西展示棟」(2万9280平方メートル)と「会議棟」は、2020年4月から10月までメディアプレスセンター(MPC)として使用する。
▼ 2019年12月完成予定で、西展示棟の南側に「南展示棟(拡張棟)」(2万平方メートル)を新設する。完成後、展示場として使用する。しかし、東京大会開催時にはMPCとしては使用しないことになり、東京都は建設費の228億円を五輪関連予算から除外した。しかし、2020年4月から10月まではMPCのセキュリティエリア内に入るため一般の利用客向けの展示場としての利用は不可。大会終了後は展示場として利用される。
 この結果、展示場として利用可能なスペースは、2019年4~12月は「西展示棟」(2万9280平方メートル 従来の約30%)のみで、2020年1~3月は「西展示棟」と「南展示棟」(合計4万9280平方メートル 従来の約42%)であるとした。2020年4月~10月の五輪準備・開催期間中はすべてが利用できないとした。
 ちなみに東京ビックサイトの現状の展示場面積は、拡張工事前では東展示棟と西展示棟は合わせて8万660平方メートル、「東新展示棟」と「南展示棟」の整備後は11万6660平方メートルとだされている。


日本展示協会資料

「仮設展示場」を新たに整備 変更案提示
 2016年2月23日に、東京は東京都議会で、「仮設展示場」(青海展示棟)を整備するなど変更案を明らかにした。
▼ 「南展示棟(増築棟)」の竣工時期を、2019年12月末から6月に6カ月間前倒し、6月末とする。
▼ りんかい線東京テレポート駅付近の都有地に「仮設展示場」(青海展示棟)(約2万4000平方メートル)を建設し、2019年4月から2020年3月までの1年間、開設する。その後は取り壊す予定。
 この変更案で、利用可能な展示場スペースは、2019年4~6月が5万3280平方メートル(66%)、2019年7月~2020年3月が7万3280平方メートル(90%)に増加し、2019年から2年連続で東京ビッグサイトがほとんど利用できないという状況は大幅に改善された。

 「青海展示棟(仮設展示棟)」が2020年4月以降は取り壊される理由は、セキュリティ上の理由や大会関係者の資材置き場や要員の待機場所、駐車場などのスペースとして組織委員会が確保するからだと推測されている。仮設展示場の建設費用は全額都が負担し、予算は具体的にどのようなに設備するか決定した上で算出するとして明らかにしていない。




東京都資料

 最大の問題点は、海外から東京が最も注目を浴びて、訪日客が多い、五輪直前や開催期間中に利用可能な展示場スペースがまったくないという点である。「仮設展示場」は最も肝心な五輪開催前に取り壊す計画だのだ。唖然である。
 2兆円から3兆円という巨額の開催経費を使って開催する東京五輪大会は、単にスポーツ・イベントとしてとらえるのではなく世界に向かって日本の先端技術や伝統文化を発信するショールームにすることが肝要だろう。そのためのツールとして展示会やエキジビションは重要だろう。

仮設展示場の開設期間延長へ
 東京都は、りんかい線東京テレポート駅付近の都有地に建設する「仮設展示場」(青海展示棟)(2万3千平方メートル これまでの2万4千平方メートルを変更)の開設期間を、これまでの2019年4月から2020年3月までの1年間から8か月延長して、2020年11月までとすると発表した。
 これで開催直前や直後の展示場スペース、2万3千平方メートルがようやく確保できることになったが、東京ビックサイトの展示場スペースのわずか約20%に過ぎない。
 しかし、五輪開催期間は五輪関連イベントで使用され、一般の展示会は開催できなことには変わりない。


日本展示協会資料

小池都知事に展示場問題について陳情
 2017年1月20日、日本展示協会は、小池都知事に、東京ビックサイトにメディア施設が設置されると、このままでは、約3万8千社の出展企業、特に中小企業が出展できなくなり、約1兆2千億円の売り上げを失うとし、「全ての展示会が例年通り同じ規模で開催できるようにして欲しい」と、問題の解決を求める署名8万通を渡した。
 解決策の提言として、東京ビックサイトと同規模程度の仮設展示場(約8万平方メートル)を首都圏に建設するというプランを明らかにした。
 築地市場跡や羽田空港近辺、横浜みなとみらいや幕張メッセなどに用地を確保できれば、100億円以下で、2年以内の建設することは可能で、展示会業界など国内外の様々な企業が資金を拠出することも可能だとした。
 また新たな提案として豊洲市場に五輪終了後まで、メディア施設として利用するというアイデアも明らかにした。
 高濃度汚染物質が検出され、築地市場を豊洲市場に移転するのが果たして適切なのかという議論も出ている中で、まったく現実味のないとは言えなくなったのではなかろうか。これだけ環境面で激しくイメージ・ダウンした豊洲市場が、“築地”のようなブランドイメージを獲得できるのだろうか? 敷地面積、ロケーションなどは抜群の条件で、コンベンション・センターやアミューズメント・センターへの転用もあながち悪いアイデアではない。


日本展示協会 記者会見 2017年1月26日


北京五輪、ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪のIBC/MPCは新設
 2018北京五輪では、オ リンピック・パークが建設され、その中に 有名なオリンピック・スタジアム“鳥の巣” や水泳競技場、体操競技場、そしてIBC/ MPCを設営するために巨大なコンベンショ ン・センターを新たに建設した。本館は、総 床面積約22万平方メートル、長さ約400 メートルの巨大な建物で、この中にIBC/ MPCが設置された。 
五輪開催後は、 展示ホール、国際会議場、国際ホテルを備えた最新鋭の統合エキジビション施設「国家会議中心」(China National Convention Center)に生まれ変わり、北京の新たな拠点になっている。
 2012ロンドン五輪のIBC/MPCは、ロンドン東部に建設されたオリンピック・ パーク内に新築された。IBCの建物は 総床面積6万平方メートル、ジャンボジェッ ト機5機が格納可能な広さだ。さらにMPCやケータリング・ブリッジ(プレス用レストラン[仮設])など、合計約10万平方メートルのメディア施設が整備された。
大会終了後、IBCとMPCは改装され、ロンドン の最先端のデジタル・メディア拠点として 生まれ変わった。BTスポーツ(衛星 放送局)のスタジオや大学、研究・研修施 設、イノベーション・インキュベーション企 業支援エリアなどが設けられている。
 2016リオデジャネイロ五輪のIBC/ MPCも、オリンピック・パーク内に新設された。IBCが約8万5000平方メートル、 MPCが約2万7000平方メートルの建物である。
五輪開催後は、民間企 業が管理・運営を請け負い、展示ホール、 イベント会場などの商業施設として利用する計画だ。  
こうした事例でも明らかなように、IBC/MPCは五 輪後の展開も視野に入れた上で新たに建設して、五輪のレガシー(遺産)にしているのである。


(2012年ロンドン五輪の“Media Complex” ロンドン・オリンピック・パーク 出典 London Olympic OCOG)


London Olympic IBC/MPC 出典 London Olympic OCOG


Here East 後方に見えるのがオリンピック・スタジアム   Here Eastホームページ



 五輪開催に伴って、世界から日本や東京が注目を浴びる。日本の先端技術や伝統文化を発信するショールームにすることが恰好の機会で、大きな“ビジネスチャンス”でもある。その重要なツールとして、展示会、関連イベントは極めて重要だ。
 日本が誇る最先端技術、IoT、AI、自動走行自動車、ロボット、それを支える第五世代移動通信5G、そして超高精細映像技術4K8KやAR/VRは、次世代の日本の命運が委ねられているといっても過言ではない。
 また、コミケ、アニメ、ゲーム、音楽などの新たな日本文化を発信する絶好のチャンスでもある。
 五輪開催経費は総額では「約3兆円」超の巨額の費用が使われるのである。東京五輪を単に「スポーツの祭典」と見なして欲しくない。

 世界の主要都市は、都市の競争力、ひいては国の競争力向上につなげる成長戦略として「MICE」を重視している。
「MICE」とは、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとったものである。
 しかし、東京は大型の展示場やコンベンション施設が不足して、すでに飽和状態、海外諸国に比べて遅れをとっていると指摘されている。五輪開催と有機的に結び付けて、首都圏に大型の展示ホール、国際会議場、国際ホテルなどを備えた統合型のコンベンション施設の整備に取り組むべきだろう。
 日本は、確実に少子高齢化社会に突入する。東京五輪の開催を、50年後100年後の日本を見据えた成長戦略を構築する上で、“絶好の機会”とする視点が欲しい。道路・鉄道建設や競技場整備などの“箱もの”主義の発想では、次世代の展望はまったく描けない。

 1964年の東京五輪大会の“レガシー(未来への遺産)”は、東海道新幹線、首都高速道路、地下鉄日比谷線、そしてカラーテレビだとされている。
 東海道新幹線は、いうまでもなく、日本列島の大動脈となり、日本の高度成長の牽引車となった。
 カラーテレビ”は、その後のHD、4K、8Kの開発で世界の主導権を握り、放送・エレクトロニクス産業の分野で、日本が世界のトップを疾走するきっかけとなった。
 2020年東京五輪大会の“レガシー(未来への遺産)”として、一体、何を残そうとしているのだろうか。








月刊ニューメディア 2016年1月号加筆
2018年12月1日 改訂

Copyright (C) 2018 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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アストラゼネカ コロナワクチン 厚労省 1億2000万回分のワクチン供給で合意 武田薬品 5000万回接種分を国内供給<

2020年11月25日 18時05分54秒 | 国際放送センター(IBC)


厚労省 AstraZenecaと1億2000万回分のワクチン供給で合意
 8月7日、加藤勝信厚生労働相は、AstraZeneca社とOxford大が共同開発をしているワクチン候補、ChAdOx1 nCov-19について、1億2000万回分の供給を受けることで、基本合意したことを明らがにした。加藤厚労相によると、2回の投与が必要なら6000万人分となる。 まず来年の1─3月に3000万回分の供与を受けるとしている。
 日本が支払う金額は、明らかにされていないが、米国の例を参考に推定すると約2600億円程度と思われる。
 AstraZeneca社とOxford大は、英国やブラジルで最終段階の第3相臨床試験を開始しており、9月中には欧米諸国で実用化することを目指している。日本国内でも8月から臨床試験を始める予定で、日本国内での「特例承認」目指す。
 厚生労働省は、米製薬大手Phizerと、同社とBioNTech社が開発中のワクチン、BNT162についても、安全性などが確認されて承認されれば、2021年6月末までに、日本に対し6,000万人分ワクチンを供給を受けることですでに基本合意している。BNT162は、米国内で3万人の治験者を対象にした最終段階の第三相臨床試験開始している。
 政府は、東京オリンピック・パラリンピック開幕前の来年前半までに1億2000万人分のワクチンの確保を目指しているという。
 一方、トランプ政権は11月3日の大統領選挙までにワクチンの接種を大規模に開始することで、再選に向けて優位に立とうとする戦略である。
 東京五輪開催を目指す安倍政権、再選を目指すトランプ大統領、ワクチン開発は政権の命運を左右する命題になっている。

武田薬品 モデルナのワクチン5000万回接種分を国内供給
 10月29日、武田薬品工業は29日、米モデルナ社が開発中のワクチン候補「mRNA-1273」を日本国内向けに供給することで、同社と厚生労働省と合意したと発表した。発表によると武田薬は日本国内での製造販売承認取得後に5000万回接種分を2021年前半から日本国内で供給することを予定している。
 また、モデルナ社は、米国においてmRNA-1273 、100 µgの接種用量にて実施中の臨床第3相試験に向けて、30,000例の被験者登録が完了し、既に2万5000人余りが2回目の投与を受けているという。同社はこれまで、ワクチンの有効性に関する初期の分析結果を11月遅くまでに得られる可能性があるとしている。



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モデルナのコロナワクチンで患者全員が抗体を獲得-初期臨床試験 27日ごろから後期大規模治験へ

米モデルナ、臨床試験延期の報道 株価一時7%安

米モデルナ社の新型コロナワクチン、mRNA-1273 前期治験で有望な結果 米政府 約5億ドルの開発費支援

Mederna RNA-1273 最先端の遺伝子技術を駆使して開発するmRNAワクチン

モデルナ ワクチン、mRNA-1273の第2相(フェ―ズⅡ)臨床試験を開始





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2020年11月1日
Copyright (C) 2020 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
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mRNA-1273 最先端の遺伝子技術を駆使

2020年07月03日 17時36分41秒 | 国際放送センター(IBC)


最先端の遺伝子技術を駆使 mRNA-1273
 モデルナ社のワクチン候補であるmRNA-1273は、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝子を使って生成する最新の遺伝子工学を駆使して作るワクチンである。
 新型コロナウイルスは、ウイルスの細胞の外郭に「突起」(スパイク)が付いている形状をしていて、この「突起」がヒトの細胞の受容体(外部の物質を細胞内入れる“入口”)に吸着して侵入する。「突起」は、スパイクたんぱく質で形成されている。スパイクたんぱく質はウイルスが胚細胞に侵入する際に、外部から細胞内に入る入口である受容体(Recptor)に吸着して、そのロックを解除する鍵として機能する。


mRNAワクチンのスキーム 出典 About mRNA-1273, Moderna

 このスパイクタンパク質を形成させる遺伝子、mRNAを人工的に作り上げて大量に培養して、無害化させた脂質ナノ粒子(脂肪の塊の粒子)組み入れ、疑似ウイルスを作り上げる。脂質ナノ粒子は、ウイルスベクターとして働く物質で、遺伝物質を細胞に送達させるようを作り上げた粒子である。このmRNA遺伝子が組み込まれたナノ粒子を凝縮してワクチンをつくる。
 mRNA-1273ワクチンをヒトに接種すると、新型コロナウイルスに感染した時と同じように、疑似ウイルス(ウイルスベクター)がヒトの細胞に侵入して、細胞のたんぱく質の生成・増殖システムを乗っ取り、細胞内にスパイクたんぱく質(新型コロナウイルスの「突起」[Spike]にあるたんぱく質)を増殖させる。スパイクたんぱく質は、外部の物質の細胞外にも進出するようになると、ヒトの免疫システムが反応し、これを撃退しようとキラーT細胞などの免疫抗体を総動員して対抗する。
 こうして免疫システムは、新型コロナウイルスの細胞への侵入の鍵となっているスパイクタンパク質の撃退法を学習して記憶をする。これを「免疫記憶」と呼ぶ。
 実際にヒトが新型コロナウイルスに遭遇して、ウイルスが胚細胞に侵入しようとした時には、免疫システムが記憶を呼び戻して体内の免疫抗体を総動員してウイルスの侵入をブロックして撃退する。ワクチンの接種で、免疫システムはスパイクタンパク質への対抗策を学習・記憶しているので、いち早くウイルス感染を撃退する体制を整えることが可能になっているのである。


新型コロナウイルスの侵入をブロックする免疫抗体(Y) 出典 About mRNA-1273, Moderna

 モデルナ社のワクチンは、こうした最新の遺伝子工学を利用して開発したワクチンのある。新型コロナウイルスの遺伝子構造はすでに中国が完全に解明して公開しているので、実際に新型コロナウイルスを持っていなくてもワクチン開発は可能である。
 モデルナ社は開発をスピードアップし、今年の夏には第3相(フェーズⅢ)臨床試験に向けて準備を進めており、「2021年までに」には新型コロナウイルスのワクチンとして承認を得たいとしている。
 5月7日、ニューヨーク証券取引所では、モデルナの株価は一時13%も急騰した。 今年の初め以来、同社の株式は150%以上も値上がりした。
 またワクチンを製造する世界のバイオテクノロジー企業は、いずれもワクチンの生産を急ピッチで進める体制を整えており、今年7月には備蓄の構築を開始できるとしている。 先週、モデルナ社はスイスの製薬企業であるロンザ(Lonza)との10年間の提携を発表した。
(出典 ニューヨークタイムズ 5月7日)





新型コロナウイルス 治療薬・ワクチン 開発最前線 ~レムデシベル アビガン モデルナ オックスフォード大学/アストラ・ゼネカ Johnson & Johnson臨床試験 勝者は誰が?~

ワクチンの種類 遺伝子ワクチン ウイルス・ベクター・ワクチン プロテイン・ベース・ワクチン 不活性化ワクチン

モデルナ ワクチン、mRNA-1273の第2相(フェ―ズⅡ)臨床試験を開始

新型コロナウイルスは変異する 米英の研究者が確認

BARDA   NIH(米国立衛生研究所) NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所) CDC(アメリカ疾病予防管理センター)




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2020年6月20日
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mRNA-1273 最先端の遺伝子技術を駆使

2020年06月25日 11時39分59秒 | 国際放送センター(IBC)


最先端の遺伝子技術を駆使 mRNA-1273
 モデルナ社のワクチン候補であるmRNA-1273は、メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝子を使って生成する最新の遺伝子工学を駆使して作るワクチンである。
 新型コロナウイルスは、ウイルスの細胞の外郭に「突起」(スパイク)が付いている形状をしていて、この「突起」がヒトの細胞の受容体(外部の物質を細胞内入れる“入口”)に吸着して侵入する。「突起」は、スパイクたんぱく質で形成されている。スパイクたんぱく質はウイルスが胚細胞に侵入する際に、外部から細胞内に入る入口である受容体(Recptor)に吸着して、そのロックを解除する鍵として機能する。


mRNAワクチンのスキーム 出典 About mRNA-1273, Moderna

 このスパイクタンパク質を形成させる遺伝子、mRNAを人工的に作り上げて大量に培養して、無害化させた脂質ナノ粒子(脂肪の塊の粒子)組み入れ、疑似ウイルスを作り上げる。脂質ナノ粒子は、ウイルスベクターとして働く物質で、遺伝物質を細胞に送達させるようを作り上げた粒子である。このmRNA遺伝子が組み込まれたナノ粒子を凝縮してワクチンをつくる。
 mRNA-1273ワクチンをヒトに接種すると、新型コロナウイルスに感染した時と同じように、疑似ウイルス(ウイルスベクター)がヒトの細胞に侵入して、細胞のたんぱく質の生成・増殖システムを乗っ取り、細胞内にスパイクたんぱく質(新型コロナウイルスの「突起」[Spike]にあるたんぱく質)を増殖させる。スパイクたんぱく質は、外部の物質の細胞外にも進出するようになると、ヒトの免疫システムが反応し、これを撃退しようとキラーT細胞などの免疫抗体を総動員して対抗する。
 こうして免疫システムは、新型コロナウイルスの細胞への侵入の鍵となっているスパイクタンパク質の撃退法を学習して記憶をする。これを「免疫記憶」と呼ぶ。
 実際にヒトが新型コロナウイルスに遭遇して、ウイルスが胚細胞に侵入しようとした時には、免疫システムが記憶を呼び戻して体内の免疫抗体を総動員してウイルスの侵入をブロックして撃退する。ワクチンの接種で、免疫システムはスパイクタンパク質への対抗策を学習・記憶しているので、いち早くウイルス感染を撃退する体制を整えることが可能になっているのである。


新型コロナウイルスの侵入をブロックする免疫抗体(Y) 出典 About mRNA-1273, Moderna

 モデルナ社のワクチンは、こうした最新の遺伝子工学を利用して開発したワクチンのある。新型コロナウイルスの遺伝子構造はすでに中国が完全に解明して公開しているので、実際に新型コロナウイルスを持っていなくてもワクチン開発は可能である。
 モデルナ社は開発をスピードアップし、今年の夏には第3相(フェーズⅢ)臨床試験に向けて準備を進めており、「2021年までに」には新型コロナウイルスのワクチンとして承認を得たいとしている。
 5月7日、ニューヨーク証券取引所では、モデルナの株価は一時13%も急騰した。 今年の初め以来、同社の株式は150%以上も値上がりした。
 またワクチンを製造する世界のバイオテクノロジー企業は、いずれもワクチンの生産を急ピッチで進める体制を整えており、今年7月には備蓄の構築を開始できるとしている。 先週、モデルナ社はスイスの製薬企業であるロンザ(Lonza)との10年間の提携を発表した。
(出典 ニューヨークタイムズ 5月7日)





新型コロナウイルス 治療薬・ワクチン 開発最前線 ~レムデシベル アビガン モデルナ オックスフォード大学/アストラ・ゼネカ Johnson & Johnson臨床試験 勝者は誰が?~

米FDA、「レムデシビル」のコロナ向け緊急使用を承認

レムデシビル 薬事承認 厚労省

新型コロナウイルスは変異する 米英の研究者が確認

ワクチンの種類 遺伝子ワクチン ウイルス・ベクター・ワクチン プロテイン・ベース・ワクチン 不活性化ワクチン






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2020年6月20日
Copyright (C) 2020 IMSSR

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廣谷 徹
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新国立競技場 球技専用 陸上競技の聖地 サッカー ラグビー  

2020年01月16日 11時47分10秒 | 国際放送センター(IBC)
迷走!球技専用か陸上の聖地か 新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)?(6)


深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催 コーツIOC副会長

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



新国立競技場竣工
 迷走に迷走を重ねた新国立競技場が、全体工期36か月を経て、工事計画通り11月30日に竣工した。
 新国立競技場の整備経費については、1590億円を上限として、賃金や物価変動が発生した場合のスライド、消費税10%の反映、設計変更に伴う修正などを行う契約で工事が開始されたが、最終的に21億円下回る1569億円となった。
 厳しいとされていた36カ月の工期は悠々達成し、工費も上限を下回ることで、日本の建築技術の高さが実証されてといっても良い。
 計画段階の唖然とした迷走ぶりに比べて、一転して見事な施工管理で完了した。
 問題は、五輪大会開催後の後利用の計画が未だに示されていないことである。
 計画では、今年中に後利用の計画を策定して大会後の改修工事の方向を決めて、指定管理者の選定を開始する予定だった。
 新国立競技場の後利用については、文科省が「大会後の運営管理に関する検討ワーキングチーム」を設立して、文部科学副大臣が座長となり、スポーツ庁、内閣官房、日本スポーツ振興センター(JSC)、東京都で議論を重ね、2017年11月に「基本的な考え方」を取りまとめ、政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)で了承された。
 これによると、陸上トラックなどを撤去して、観客席を増設して国内最大規模の8万人が収容可能な球技専用スタジアム改修してサッカーやラグビーの大規模な大会を誘致するとともに、コンサートやイベントも開催して収益性を確保する。観客席は6万8千席(五輪大会終了後)から国内最大規模の8万席に増設し、改修後の供用開始は2022年を目指すとした。
 しかし、陸上競技関係者などから、陸上トラックを残して、新国立競技場を「陸上競技の聖地」として存続するべきだという声が強く出され、陸上トラックは残して陸上と球技の兼用にする方向で調整も進んでいることが明るみにでた。新国立競技場の後利用の方向性が再び混迷を始めている。
 こうした中で、11月19日、萩生田光一文部科学相は、新国立競技場の後利用について、民営化の計画策定時期を大会後の2020年秋以降に先送りし、その後に指定管理者の公募を行うと明らかにした。今年半ばごろに計画を固める予定はあっさり放棄した。
 先送りした理由については、大会の保安上の理由で現時点では詳細な図面を開示できず、運営権取得に関心を持つ民間事業者側から採算性などを判断できないとの声が上がったためだと説明した。しかし、真相は後利用の事業性にめどがつかず、結論を出せないからでろあろう。
 また萩生田氏は、焦点となっている陸上トラックの存続可否については「民間の方の意見を聞いた上で最終方向は決めるが、基本的には球技専用スタジアムに改修する方向性で継続して検討を続けていきたいと思っている」と述べた。しかし、政府関係者にも「今のままでは手を挙げるところがない」という声が出ているという。
 一方、橋本聖子五輪相は後利用について「トラックを残すべきだという意見もあるというのは承知している。新国立にふさわしい運営をしていただけるような検討をお願いしたい」と語った。(11月19日 共同通信)
 新国立競技場の改修後の供用開始、2022年は大幅に遅れることは必至である。その間も、新国立競技場は年間24億円の維持管理費が必要となるとされている。当面所有者の日本スポーツ振興センター(JSC)は毎年24億円の赤字を背負うことになる。
 陸上トラックを存続して「陸上競技の聖地」として出発しても、陸上トラックを撤去してサッカーなどの球技専用のスタジアムになるにしても、6万8000人(五輪大会時6万人)収容の巨大スタジアムを維持するのは至難の業である。フランチャイズチームもたないスタジアム経営はなりたたないというのが常識である。
 一方、収益性の確保のカギとなる「多機能スタジアム」化は、経費削減で、屋根の設置が取りやめになり挫折した。
 「木と緑のスタジアム」、新国立競技場は、五輪のレガシーどころか大会後は赤字を背負ってのスタートとなるのは避けられない。
 負の遺産になる懸念は拭えない。


提供 日本スポーツ振興センター(JSC) 2019年11月撮影


トラック、ピッチの芝生工事は完了 日照不足に対応する芝生養生用の投光器に照らされて芝生の一部がオレンジ色に

聖火台「夢の大橋」設置へ 新国立競技場内は開閉会式時のみ使用の仮設聖火台


新国立競技場 「陸上の聖地」 復活か?
 2019年11月末に完成する新国立競技場について、大会後に改修して球技専用とする方針を変更し、陸上トラックを残して陸上と球技の兼用にする方向で調整が進んでいることが明らかになった。
 これを受けて、小池百合子都知事は会見で、「国から変更したとはまだ聞いていないが、球技、陸上、エンタメの3つで使えることになれば、国の施設として有効に利用できるのではないか」と話した。「球技専用になると世界大会並みの国際標準の大会ができないと、陸上ファンの方からいろんな声を聞いていた」とも述べた。(日刊スポーツ 7月6日)

 新国立の後利用については、文科省が「大会後の運営管理に関する検討ワーキングチーム」を設立して、文部科学副大臣が座長となり、スポーツ庁、内閣官房、日本スポーツ振興センター(JSC)、東京都で議論を重ね、2017年11月に「基本的な考え方」を取りまとめ、政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)で了承された。
 。
 基本運営方針として、(1)ラグビーW杯の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(4)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げ、大会後に陸上トラックなどを撤去して、観客席を増設して国内最大規模の8万人が収容可能な球技専用スタジアム改修してサッカーやラグビーの大規模な大会を誘致するとともに、コンサートやイベントも開催して収益性を確保するとした。陸上競技のトラックを撤去し、収益性を確保するため観客席を6万8千席から国内最大規模の8万席に増設する。改修後の供用開始は2022年を目指すとしている。

 しかし、その後の検討で、陸上トラックなどを撤去して客席を増設する改修工事には、100億円程度が必要な上に、サッカーの試合の開催は天皇杯や日本代表戦などに極めて限定され、頼みにしていたJリーグの公式試合の開催は絶望となり、利用効率の改善が期待できないことが明らかになった。
 またFIFA ワールドカップの開催を目指すとしてもまだまったく目途がたっていない。ラグビーW杯は今年開催され新国立競技場は完成が間に合わず、決勝トーナメントは横浜国際総合競技場と東京スタジアムで開催されることになっていて、また開催される可能性は遠い先である。
 日本スポーツ振興センター(JSC)は、民間事業化に向けて行った民間事業者へのヒアリング(マーケットサウンディング)を行ったが、球技専用に改修してもあまり収益が見込めないことが明らかになってきた。
 また収益性を高める柱となるコンサートやイベントの開催については、経費節減で屋根の設置が取りやめになり、観客席の冷房装置も設置されなかったことが大きなマイナス要素となる。
 屋根がない新国立競技場では天候に左右される上に、近隣への騒音も問題になる。8万人の大観衆を集めることができる集客力のあるイベントは自ずから限定されるのは明らかだ。
 また、コンサートなどイベント開催は、傷みやすい天然芝の上にステージや観客席を設置しなければならないことで開催回数は増やせない。イベント関係者はむしろトラックを存続した方が芝生へのダメージは防げるとしている。
 一方、陸上関係者からは、2020東京五輪大会のレガシーとして新国立競技場は陸上競技場として存続して欲しいという声は根強い。
 旧国立霞ヶ丘競技場は、「陸上の聖地」として歴史あるナショナル・スタジアムとして国民の評価を受けてきた。「陸上の聖地」が消えるのは余りにも無念ということだろう。
 陸上トラックを残しておけば、陸上競技大会開催だけでなく、イベントのない日などに市民にトラックを開放したり、市民スポーツ大会を開催したりして市民が利用できる機会が生まれて、2020東京五輪大会のレガシーにもなるだろう。
 国際的にも最高クラスの9レーンの陸上トラックを、2020東京五輪大会だけのため整備するのでは余りにももったいない。
 しかし、国立霞ヶ丘競技場の陸上トラックを存続させ、陸上競技大会や市民スポーツ大会開催を目指しても、収益性の改善にはほとんどつながらないし、そもそも陸上競技では、6万人規模のスタジアムは大きすぎて、観客席はガラガラだろう。全国大会クラスでも数万人収容規模のスタジアムで十分である。
 日本スポーツ振興センター(JSC)は、新国立競技場の長期修繕費を含む維持管理を年間約24億円としている。大会開催後の新国立競技場の収支を黒字にするのは簡単ではない。

 日本スポーツ振興センター(JSC)では、事業スキームに民間の創意工夫を最大限反映させるため、民間事業者へのヒアリング(マーケットサウンディング)を進めながら、文科省と協議して新国立競技場の大会後の在り方の検討を進め、指定管理者を公募して新国立競技場の運営管理を委託するとしている。
 新国立競技場は球技専用スタジアムになるのか、陸上競技場として存続するのか、新国立競技場の迷走は、まだまだ終わらない。

 12月21日は、「国立競技場オープニングイベント~HELLO, OUR STADIUM~」を開催することが決まった。そして2019年元旦の天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会が「こけら落とし」の大会となる。


竣工した国立競技場 「杜のスタジアム」 提供 JSC


筆者撮影 2019年12月15日
日本の伝統建築の技法、「軒庇」を取り入れる。縦格子には全国47都道府県の木材を使用


筆者撮影 2019年12月15日


筆者撮影 2019年12月15日
国産木材を使用した巨大屋根 観客席を覆う


筆者撮影 2019年12月15日
南北の3層に設置された大型スクリーン 南/9.7m×32.3m 北9.7m×36.2m フルHD画質


筆者撮影 2019年12月15日
五色に塗り分けらられた観客席 木漏れ日を表現 約6万席(五輪大会開催時)


筆者撮影 2019年12月15日
9レーンの最新鋭の「高速トラック」
 大会組織委員会はイタリアのモンド社とソールサプライヤー契約を結び、陸上競技トラックなどの陸上競技の備品の独占的供給を受ける契約を結んだ。モンド社は11大会連続で陸上競技トラックの公式サプライヤーとなった。トラックは二層の合成ゴム製で、表層はノンチップエンボス仕上げ、下層はハニカム構造のエアクッション層となっている。


提供 JSC
 芝生は鳥取県の天然の砂丘の砂地で生産された「北条砂丘芝」を採用。2019年7月、暖地型芝草(バミューダグラス系)の「ティフトン」を敷き詰めて、秋には冬芝の種をまいて冬期間の芝生の緑も保つ。

迷走! ロンドン五輪スタジアム サッカー専用か陸上競技場か



最難関の屋根工事完了 フィールド・トラック工事へ
 2019年5月17日、日本スポーツ振興センター(JSC)は2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の屋根が完成したと発表した。木材と鉄骨を組み合わせる最難関の工事とされたが、2月に工事は順調に終了したとした。
 屋根の工事がほぼ終了したことでフィールド内に置かれていた重機が撤去され、フィールド工事が本格化している。基礎工事である排水路工事を行い、玉砂利を敷き詰め、土壌を入れて天然芝を張る工事が行われる。トラック部分では9レーンの最新鋭のトラックの敷設が始まる。
 またスタンドでは約6万席の観客席の取り付け工事や歩行者デッキなどの周辺工事を行い、9月末までに主な工事を完了し、11月末の完成を目指す。



出典 新国立整備スケジュール 2019年5月17日 JCS スタンドを覆う屋根は完成


出典 新国立整備スケジュール 2019年5月17日 JCS 工事用重機は撤去されている


出典 新国立整備スケジュール 2019年5月17日 JCS


■ 新国立競技場 2019年2月12日

全容を現した新国立競技場 工期・コストも順調 工事はピーク 一日2500人の作業員が従事 出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS


屋根の鉄骨工事はヤマを越す 5月中旬には完成  出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS


フィールド工事は3月に開始  出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS


6万席の観客席の内、1万席の設置が終了  出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS



陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに
 2017年11月14日、「新国立競技場」の整備計画を検討する政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)は14日、五輪大会後はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに改修する計画案を了承した。22年後半の供用開始をめざす。
 計画案では、大会後はサッカーのワールドカップ(W杯)開催などにも対応可能するとともに収益性を確保するために、陸上競技のトラックを撤去して観客席を設けたり、スタンド上部に観客席を増設したりして、観客席を6万8000席から1万2000席増やし、国内最大規模の8万席にする。
 運営方針として、(1)サッカーのワールドカップ(W杯)の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(3)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げた。
 老朽化した国立霞ヶ丘競技場の建て替えが検討された時に、新しい国立競技場を建設して、東京の新たな“ランドマーク”にし、陸上競技の“聖地”として2020東京大会の“レガシー”にすると意気込んだ。
 しかし、陸上競技では、8万席の観客席を埋めるのは、絶望的で、オリンピックや陸上世界選手権などを除けば、せいぜい1~2万人程度が集まる程度で、スタンドはがらがらだろう。
 また陸上競技の主要大会の開催には必要不可欠なサブトラックが確保できないため、陸上競技の“聖地”にはなれないことは当初から指摘されていた。
 国際規格に適合した9レーンの最高品質のトラックは、取り壊され、まったく無駄になる。
 サッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムなら3万~5万人程度の観客が期待できる。日本代表戦のほか、天皇杯、皇后杯や国際カップ戦の決勝、大学選手権の決勝などで使用することを想定しているが、開催回数は限られている。
 年間の稼働率を上げて収益性を高めるには、Jリーグの開催を実現したいところだが、Jリーグの各チームのホーム・スタジアムは、日産スタジアム(横浜)や味の素スタジアム(調布)、埼玉スタジアム(浦和)があり、新国立競技場の開催ができるかどうか今の段階では「未定」とされ、先行き不透明だ。
 イベントやコンサートの開催は集客もあり収益性も高いことから魅力的ではあるが、イベント開催に必須な屋根の設置は取りやめた。雨天対策や近隣への騒音問題で、屋根のないスタジアムでは、自ずからイベント開催も限られる。
 子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会の積極開催を掲げているが、「8万人」の観客席を備えた巨大なスタジアムはこうしたイベントにはまったく適さない。
 大会後に新国立競技場で開催するスポーツ競技大会は年間80日、その内通常の競技会は44日で、ビックイベントは36日(サッカー20日、ラグビー5日、陸上11日)程度を見込み、コンサートや展示会などのイベントは12日程度と見込んでいる。残りの約270日は、一体、何に利用するのか。
 新国立競技場の使用料は破格に高額になることも懸念材料だ。
 イベント使用の場合、新国立競技場は、1日で「5000万円」程度を想定している。同じ都心にある東京ドームは「2000万円」、しかも屋根付きのドームスタジアムである。日産スタジアム(横浜)は「1440万円」、さいたまスタジアムは「959万円」、味の素スタジアム(調布)は「1080万円」で、とにかく新国立競技場の利用料は飛びぬけて高額だ。コンサートの開催で人気のある武道館は「480万円」、横浜アリーナは「650万円」、「5000万円」を掲げる新国立競技場のイベント会場としての競争力は果たしてどの程度あるのだろうか。
 スポーツ競技大会についても、日産スタジアム(横浜)ではアマチュア・スポーツ競技の場合は、わずか48万円、1964東京五輪のサッカー予選会場となった駒沢陸上競技場は収容人数約2万人の適正規模のスタジアム、利用料は23万円、入場料を徴収する場合でも27万3000円である。これに対して新国立競技場は通常の競技大会では200万円、サッカーやラグビー、陸上競技などのビックイベントともなると800万円程度、サッカーW杯クラスの超ビックイベントでは2000万円程度されている。
 増築後は収容人数「8万人」を有する巨大スタジアムを、破格に高額な利用料を払って、一体、誰が利用するのだろうか。
 五輪後の展望はまったく見えない。

 新国立競技場の維持管理費は長期修繕費を含めて年間約24億円とされている。これには約5億円程度とされている人件費や公租公課が含まれていないので、実質的には年間30億円程度になるだろう。経費を上回る収入確保できなければ、50年、100年、延々と赤字を背負うことになる。
 陸上競技の“聖地”とし、2020東京大会の“レガシー”するために国立競技場を立て直すのではなかったのか。本当に1984東京大会の“レガシー”になった旧国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)を取り壊す必要があったのだろうか。余りにも杜撰な計画に唖然とさせられる。
 結局、新国立競技場が“負のレガシー”(負の遺産)になるのは避けられそうもない。

JSC 794億円の資金不足に 五輪大会開催後の改修計画に見通し立たず
 新国立競技場は、2019年11月末の完成に向けて、順調に工事が進み、2017年度中に地上躯体工事が完了し、現在は屋根工事、内装仕上工事等に着手している。
 新国立競技場の整備は日本スポーツ振興センター(JSC)が実施しているが、スタジアム本体の工事だけではなく、周辺整備や設計・監理に加えて、旧競技場の解体工事、埋蔵文化財調査、計画用地内に所在する日本青年館・JSC本部棟移転、新国立競技場の通信・セキュリティ関連機器や什器の整備など幅広い業務を担う。JSCは2013年度から2017年度までの支払額はすでに計738億余円に達した。
  
 東京都の負担見込額395億円については、29年度末時点では協定書等は締結されておらず、東京都からの支払も行われていない。JSC法によれば、費用の額及び負担の方法はJSCと東京都が協議して定めることとされており、また、支払等の期限は定められていない。JSCや東京都によると、今後JSC法に基づいて協議を進めて支払うこととしているが、29年度末時点でJSCへの入金時期や入金方法等は未定となっている。
 また、JSCは、2017年度に五輪特定業務勘定から国立代々木競技場の耐震改修等工事に必要な費用として約7296万円、ナショナルトレニンセンター(NTC)の拡充整備のための用地取得等に係る費用として46億余円が支出している。
 JSCは、29年度中に支払のための資金が不足したことから、スポーツ振興くじ勘定から五輪特定勘定へ50億1000万円の資金を融通した。そして2017年度の決算に当たりスポーツ振興くじ勘定へ返済するために民間金融機関から同額の融資を受けた。

 JSCによると、新国立競技場の五輪特定勘定の収入は2020年度までは毎年、110億円程度の収入がある。また2019年度には東京都から分担経費負担額と道路上空連結デッキの整備費用の残額の約431億円が支払わられるとしている。しかし、支払いをめぐるJSCと東京都が協議は終わっていないので、入金時期の目途はたっていない。
 第Ⅱ期業務では、Wi-Fi設備、監視カメラ、入場ゲート等の通信・セキュリティ関連機器整備を約27億2715万円で整備したり、国立代々木競技場の耐震改修等工事を実施したりして、支出が膨れ上がり、その結果2018年、2019年の2年度でJSCは794億円の資金不足に陥ることが見込まれている。
 JSCは、スポーツ振興くじ勘定などからの資金の融通はこれ以上不可能なことから、2018年4月に311億円を民間金融機関から長期借入金として借り入れた。
 311億円については2023年度までに返済する計画だが、今後借り入れる予定の約500億円の借入金の返済については、返済が始まる2024年度以降はスポーツ振興くじからのJSCの収入が売上金額の5%に戻され減少するので、返済期間は長期にわたるり、難航することが見込まれている。
 この収支の見通しはまだ不確定で、想定どおり毎年度110億円程度の収入があるかは不明である。また東京都からの支払が想定どおり31年度中に行われるかはまだ決定していない。
 こうしたJSCの危機的な財務状況で、膨大な経費が必要な新国立競技場の「球技専用」改修工事は本当に実現可能なのだろうか、疑念は深まる。
 「世界に誇れる日本らしいスタジアム」の迷走は、まだ止まらない。

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(7) 新国立競技場に暗雲 破綻寸前日本スポーツ振興センター(JSC)



迷走 ロンドン五輪スタジアムの再出発 サッカースタジアムへの転用は?


ロンドン・オリンピック・スタジアム 出典 LOCOG

 2006年10月、ロンドン・オリンピック組織委員会は、McAlpine(建設会社)、POPULOUS、Buro Happold(建設コンサルタント)のコンソーシアムによるオリンピック・スタジアム設計案を採用した。スタジアムは屋根が建物をまるごと覆う独特の外観で、「筋肉が人体を支持するのと同じ構造で、スタジアム自体が人体を表現する」と、デザイン案を評価した。
 設計者のPOPULOUSは、アメリカ・ミズーリ州・カンザスシティに本社を持つ、スポーツ施設及びコンベンションセンターなどの設計を専門とする設計事務所、建設コンサルタント。スポーツ施設やコンベンションセンターの設計から大規模イベントの企画までを専門とする建築設計事務所である。

 ロンドン・オリンピック・スタジアムは、オリンピックパークの敷地の一画にあった廃止されたドッグレース場の跡地に建設された。
 着工は2007年、2011年の竣工まで4年間を要した。 オープンは2012年5月。
 スタジアムは、広さ310メートル×260メートル、高さ67.7メートルの建物で、観客席は8万席、1層の恒久エリアの観客席が2万5000席、2層の仮設エリアの観客席が5万5000席とした。
 固定式の屋根で観客席を覆っているが、全体の観客席のうち1層前方の約40%が屋根に覆われていない構造だった。

 施工者は、ロンドン五輪の競技場や交通機関などのインフラ建設・整備を担当するODA(Olympic Delivery Authority)である。
 建設費は、ロンドン五輪招致時は、2億8000万ポンド(約381億2000万円)だったが、2011年には約4億8600万ポンド(733億円)、2013年には4億2900万ポンド(約655億円)とした。
 9レーンの陸上トラックはイタリアの会社Mondoによって設計され、最新のMondotrack FTXを使用された。
 2012年のロンドン夏季オリンピックの主競技場として、開閉会式と陸上競技が開催された。
 五輪大会終了後は、観客席を5万4000席に減築して、夏季期間は陸上競技やコンサートなどのイベントで使用、冬季期間はサッカー専用スタジアムとして使用する計画とした。
 改修工事は、約2万5000席の上層部の観客席の撤去や、サッカー試合の観戦環境を改善するために陸上トラックの上を覆う「収納式」可動席の設置(約2万1000席)、観客席の全てを覆う屋根の設置(五輪大会開催時は約40%の観客席が屋根なし)をLLDC側の責任で実施する。
 2016年に改修工事は終えて、可動席を含めると約6万人収容のスタジアムとして再出発することになった。


ロンドン・スタジアム 出典 ARC 5824 Advanced Studio2 Case Study
 
英プレミアムリーグ、ウエストハムの本拠地へ
 2013年3月23日、ボリス・ジョンソンロンドン市長とニューハム評議会のロビン・ウェールズ市長は、最終的にウェストハムを長期アンカー・テナントとして選定し、ウェストハムとテナント契約を仮締結した。紆余曲折を経て難航したコンペは、ようやく決着した。
 ロンドン市側とウェストハムは、陸上トラックは残し、夏季期間は陸上競技やコンサート、その他のイベントをスタジアムで開催し、サッカーシーズンは、ウェストハムがサッカースタジアムとして使用する「多目的スタジアム」にするスキームで合意した。
 ウェストハムはこれを条件に99年間の占有使用権(テナント料)を、年間250万ポンド(約38億2000万円)を支払うことでホームスタジアムとして使用する権利を手にした。ウェストハムは年間250日程度、サッカーの試合で使用するとしている。
 仮締結が行われた際に見積もられた改修経費は、スタジアムとしては全座席を覆う最大級の片流れ式の屋根や陸上競技場のスタジアムを「サッカーモード」に改修するために整備する「格納式」可動座席、21,000席の設置などで、総額1億5400万ポンド(約235億1000万円)とした。すべてLLDC側で改修工事を行う。
 スタジアムを所有するLLDC(Boris Johnson議長)とニューハム評議会は、スタジアムの改修工事や運営を担うために、「E20スタジアムパートナーシップ」を設立した。
 * 為替レート  £=152.70円  2013年の平均レート

 ウエストハムが支払う年間250万ポンドのテナント料は、インデックス連動で変動し、2016年/ 17年に支払ったテナント料は210万ポンド(約30億3000万円)で、2017年4月1日の増税後には230万ポンド(約33億2000万円)に増えた。
 これに対し、ウエストハムのライバルのアーセナル(Arsenal Football Club)は、エミレーツスタジアム(Emirates Stadium 収容人数 6万260人)のテナント料を、300万ポンド(約44億2000万円)を支払い、新しいプレミアリーグチャンピオン、チェルシー(Chelsea Football Club)は、スタンフォードブリッジ(Stamford Bridge 収容人数 4万1631人)に200万ポンド(約29億5000万円)を支払っている。
 * 為替レート  当時の年平均レート
 ウエストハムとの契約では、スタジアムの運営経費はスタジアムを所有するロンドンレガシー開発公社(LLDC)とニューハム評議会が全額負担をするになっている。
 LLDCは、運営はコンセッション方式を採用し、フランスのインフラ運営会社、ヴィンチ(Vinci)に25年契約で委託することとした。 ヴィンチへ委託することで、五輪スタジアムの運営コストはさらに膨れ上がったとして批判が巻き起こっている。
 またウェストハムは、ホスピタリティ施設やケータリングから収入を得ることが認められた。
 こうした取引に対して、ウェストハムが納税者の費用で「今世紀の取引」を手に入れたとして批判を浴びた。
 また夏季期間(6月~7月末)の運営は、英国陸上競技連盟(UK Athletics)に対して、30年間のコンセッションを委託した。


ウェストハムのホームスタジアムになったロンドンスタジアム 出典 e-Architect

膨張した改修経費にロンドン市長、スキームの見直しを表明
 2016年5月、労働党のサディク・カーン(Sadiq Khan)氏はロンドン市長に選出された。前任者の保守党のボリス・ジョンソン氏の後任である。カーン氏はロンドン五輪スタジアムの改修費用が膨張したのは、「すべて前市政による混乱が責任」と批判した。
 2016年11月、カーン市長は、「前市長は2015年、スタジアムを改修費用が2億7200万ポンド(約401億5000万円)と発表したが、 実際には、5100万ポンド(約73億8000万円)以上の多い、3億2300万ポンド(約476億8000万円)であることが明らかになった」と述べて、スタジアム改修費用に関わるあらゆる問題について詳細な調査を指示した。
 改修費用は、当初は
 3億2300万ポンド(約476億8000万円)に増えた主な原因を、サッカーの観戦体験を改善するために設置する可動座席の費用が 1億2300万ポンド(181億6000万円)増えたことだと明らかにした。また大画面デジタルスクリーンやスタジアムの外壁を覆う「ラップ」の整備費用などが増加したこともその原因としてあげている。

 改修費用膨張の主因となった「格納式」可動座席は、設置後も座席を移動するごとに多額の経費がかかることが明らかになって、問題化している。
 カーン市長が発表したデータによると可動座席の出し入れに必要な推定年間運用コストは800万ポンド(約11億8000万円)に膨れ上がるとした。夏の一ヶ月間、陸上競技などのイベント開催のために座席を移動する経費である。
 2017年夏にはスタジアムの座席の移動作業にかかった運用経費が1180万ポンド(約17億4000万円)だったことが明らかになっている。これだけの経費をかけてもそれを上回る収入が陸上競技の開催で確保できれば問題はないが、果たして達成できるのか問題視された。
 改修工事費は、当初は1億5400万ポンド(約235億2000万円)と見積もられていたが、可動席の設置や屋根の設置費用が増えたとして2億7200万ポンド(約401億5000万円)に増えて、最終的には3億2300万ポンド(約493億2000万円)に膨れ上がった。
 * 為替レート  £=152.70円  2013年の平均レート
 3億2300万ポンド(約476億8000万円)に膨れ上がった改修経費の原資は、LLDCが拠出する1億4880万ポンド(約219億7000万円)を中核に、ニューハム評議会が4000万ポンド(約59億円)(E20スタジアムパートナーシップへの35%の出資を振替)を融資、五輪開催予算の93億ポンドから4000万ポンド(約59億円)、さらに政府が2500万ポンド(約39億9000万円)を拠出した。また英国陸上競技は100万ポンド(約14億8000万円)を投資し、ロンドンマラソン慈善信託は350万ポンド(約51億7000万円)を提供すること賄うことが決まった。
 スタジアムを本拠地にするウェストハムは、世論から巨額に膨れ上がった改修費の負担もすべきだと激しい批判を浴び、冬季期間のスタジアムのアンカーテナントとしての契約料、年間250万ポンド(約36億9000万円)を支払うことに加えて、改修費用としてさらに総額1500万ポンド(約22億1000万円)を寄付することを表明した。
 * 為替レート  £=147.62円  2016年の平均レート


ウェストハムのホームスタジアムになったロンドンスタジアム 出典 e-Architect
 
 大会終了後の改修費用が3億2300億円(約476億8000万円)に膨らんだことで、建設費用の4億2900万ポンド(633億3000万円)を加えると五輪スタジアムの総額は7億5200万ポンド(約1110億1000万円)という巨額の経費に達することが明らかになった。
 2017年12月1日、ロンドン市長は、独立調査員会の報告を公表した。

■ 報告書の骨子
•元市長はスタジアムの改修計画を適切な分析をせずに決定し、納税者にとって「高価で厄介な」取引につながった。その結果、スタジアムの改修費は3億2300万ポンド(約476億8000万円)
に膨れ上がりユナイテッドと英国陸上競技連盟との拘束力のある契約を結び、現市長の選択肢を厳しく制限した。
•2015年にラグビーワールドカップ大会を開催するが決定され、改修費用は更に膨らんだ。改修工事の追加や遅延、混乱、そしてコスト増が経費膨張の要因となった。またプレミアリーグが開始に先立って2016年7月に再オープンしなければならないというタイトな工期もコスト増につながっている。
•スタジアムは2017年から2018年の間に2400万ポンド(約34億8000万円 2017年 £=144.46円)赤字が出ると予測。今後に何らかの措置が取られなければ、スタジアムは毎年約2000万ポンド(約28億9000万円 2017年 £=144.46円)の赤字を計上すると予測し、投資額の回収は不可能である。
•ロンドン市長は、損失を最小限に抑えるための再交渉を、ニューハム評議会(Newham Council)と共に開始する。
 2016年に改修工事は終了し、スタジアムは再オープンした。
 2017年8月4日から8月13日には「世界陸上競技選手権大会」が開催され、2015年9月18日から10月31日まで開催された「ラグビーワールドカップ2015 イングランド大会」ではプール戦(予選)や三位決定戦の5試合が行われた。
 2019年6月29、30日の2日間、米大リーグ、MLBは、リーグ史上初めてロンドンで公式戦を開催し話題を集めた。歴史的な試合だったこともあり、MLBはリーグ屈指の好カードのヤンキース対レッドソックス戦を用意し、ロンドンスタジアムには2試合で約12万人(MLB発表11万8718人)の観客でスタンドは埋まった。
 MLBではすでに来年もロンドン開催を決定しており、カブス対カージナルス戦を2020年6月13、14日に行う予定になっている。


London Stadium transformed into MLB ballpark
Youtube

 ロンドンスタジアムの状況を見ると、陸上競技、サッカー、その他のスポーツやコンサートなどイベント開催を目指す巨大「多目的スタジアム」の運営は、極めて難問なことが明らかになった。


筆者作成 各種資料を参照



新国立競技場建設が浮上したのはラグビーW杯開催
 国立競技場の建て替えの突破口を開いたのはラグビーW杯である。2009年に長年の悲願であった日本大会の招致に成功。2011年に「ラグビーW杯2019日本大会成功議員連盟」が建て替えを決議し、その後、国が調査費を計上して建て替え計画が動き出した。
 ラグビーW杯は2019年9月から11月に開催される。  
 関係者が新国立競技場の2019年春の完成にこだわるのも、ラグビーW杯に間に合わせるためだ。6月28日に退任するまで10年間、日本ラグビー協会長を務めた森五輪組織委会長の存在は極めて大きかった。
 そして、建設計画が急速に具体化したのは、勿論、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致である。
 2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会では、招致を成功させる“切り札”の一つに新国立競技場の建設を位置付けた。開会式、閉会式、陸上競技を都心に整備される最新鋭のスタジアムで開催することで各国の指示を得ようとしていた。
 新国立競技場の建設は、国際“公約”になっていた
 1964のオリンピック・スタジアムとなった国立霞ヶ丘競技場(旧国立競技場)は、老朽化が激しく、耐震強度にも問題があり、建て替えか改修工事が迫られていた。
 新しい国立競技場を建設して、東京の新たなランドマークにし、陸上競技の“聖地”として2020東京大会のレガシーにすると意気込んだ。
 一方で、2011年、日本スポーツ振興センター(JSC)は大規模改修を検討していたことが明らかになっている。市民グループが情報公開で入手した内部資料によると、JSCが設計会社に詳細な耐震補強調査を依頼し、7万人収容規模への改修工事を4年の工期、総工費770億円で行えるとの試算結果がまとめられていた。
 改修案が一掃されたのは、ラグビーW杯の開催と2020東京五輪大会の招致に間違いない。
 新築か改築か、十分に議論を行わなわずに、2012年新国立競技場建設に向けて国際コンクールが行われ、建設計画が始動した。
 そして、国立霞ヶ丘競技場は、2015年3月、解体工事が開始され、9月には跡形もなく取り壊された。
 しかし、新国立競技場建設計画を巡る“迷走”と“混迷”を繰り返した結果、
招致活動の“象徴”として使用したザハ・ハディド氏の斬新な流線形のデザインの白紙撤回に追い込まれた。さらに「2019年春の完成」が間に合わなくなり、「ラグビーW杯2019」の開催も断念した。
約1500億円を投じて新たに建設する意味の半分近く失われた。
 まったくお粗末な経緯に、唖然とするほかない。


取り壊された旧国立競技場  出典 日本スポーツ振興センター(JSC)

“迷走”と“混迷”を重ねた 新国立競技場
 2020東京五輪大会の競技場の整備経費については、「新国立競技場」は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は2020東京五輪大会大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」の設計デザインは、国際デザインコンクールを行い、幅広く国内外から斬新なアイデアを求めることになった。2012年、募集が行われ世界中から46の作品が応募された。募集にあたって掲げられたスローガンは「『いちばん』をつくろう」、審査員長の安藤忠雄氏のコンセプトである。コンクール実施するにあたって、想定した総工費は「1300億円を目途」としていた。審査は紙一重の激戦だったが、安藤忠雄氏の最終的な決断で、「スポーツの躍動感を思わせるような流線形の斬新なデザイン」を評価してザハ・ハディド氏のデザインが採用された。
 ザハ・ハディド氏は、斬新なデザインの建築物を設計することで知られていたが、ユニークさが批判を浴びたり、建設費が膨大になったりして、建設中止になるケースが相次ぎ、「アンビルドの女王」と揶揄されていた。 
 「ザハ・ハディド案」も、斬新な流線型のデザインの巨大な屋根付きスタジアムは「明治神宮の景観を壊す」として反対論が巻き起こった。さらに総工費が施工予定者のゼネコンが見積もると「3000億円超」に膨張することが明らかになって、世論から激しい批判が集中した。また斬新なデザインを実現するためには難工事が見込まれて、工期も「50か月程度」が必要で、2019年3月の完成予定が8か月程度延びるとされた。2019年9月開催のラグビー・ワールドカップに間に合わない可能性も浮上して関係者に衝撃が走った。
 2015年7月、建設計画を見直し、建物の面積を22万2000平方メートルに約13%削減したり、8万人観客席のうち1万5000席を仮設席に変更したりするとともに、焦点のグランド上部の開閉式屋根については、屋根を支える2本のキールアーチは設置するが屋根の設置は五輪後に先送りにするなどして費用を圧縮して、総工費「2520億円」にするとした。
 しかし「2520億円」に縮減しても、当初予定「1300億円」の倍近い額に膨らみ、世論の批判は一向に収まらなかった。
 最終的に安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、総工費を「1100」億円削減し、「1550億円」(上限)とする方針が示された。
 「ザハ・ハディド案」は、“迷走”に“迷走”を重ねた上に、結局、白紙撤回に追い込まれた。

■ 見直しの骨子
▽ 観客席は6万8000程度とし、サッカーのワールドカップも開催できるように1万2千席を増設し8万席にすることを可能にする。
▽ 屋根は観客席の上部のみで、「キールアーチ」は取りやめる。
▽ 観客席の冷暖房施設は設置しない。
▽ スポーツ博物館や屋外展望通路の設置は取りやめて、地下駐車場も縮小する。
▽ 総面積は22万2000平方メートルから約13%減の19万4500平方メートルに縮小する。

 あれだけこだわった可動式屋根の設置は完全になくなった。
 そしてコンサートやイベント開催を視野に入れた「多目的スタジアム」も消え去った
“迷走”に“迷走”を繰り返し醜態を演じた文科省と日本スポーツセンター(JSC)の責任は重大でだろう。
 東京オリンピック・パラリンピックは、準備段階で早くも大きな汚点を残した。

 2015年9月、「ザハ・ハディド案」は白紙撤回され、新たな整備計画を作成し、総工費と工期を重視した入札事業者向けの募集要項を公開して、再公募を実施することになった。
 新整備計画ではコンサートやイベントなども開催する「多目的利用」は放棄され、陸上競技やサッカー、ラグビーなどのスタジアムへ転換することを打ち出した。
 観客席は五輪開催時には約6万8000席とし、五輪後に陸上トラック上部などに観客席を増設して8万席以上確保し、FIFA ワールドカップの開催を可能にする。屋根は開閉式を取りやめ、固定式にして観客席全体(増設後を想定)を覆うようにする。建物の最高高さは70メートル以下。フィールドを含む面積は約19万4500平方メートルで、2014年5月に策定された旧整備計画の約22万2000平方メートルから、更に約3万平方メートルを削減するとした。
 ザハ・ハディド案の当初計画では約29万平方メートル(駐車場を含む)、結局、当初計画と比べると、約9万5000平方メートル、約30%削減されることになった。
 公募には、大成建設を中心に梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループと、竹中工務店、清水建設、大林組の3社の共同企業体と日本設計、建築家の伊東豊雄氏で構成するグループが応募した。注目されたザハ・ハディド氏は、意欲は示したが、結局応募しなかった。
 2015年12月22日、審査の結果が公表され、「木と緑のスタジアム」をコンセプトにした大成建設、梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループが選ばれた。
 木材と鉄骨を組み合わせた屋根で「伝統的な和を創出する」としているのが特徴のデザインで、地上5階、地下2階建て、スタンドはすり鉢状の3層にして観客の見やすさに配慮する。高さは49・2メートルと、これまでの案の70メートルに比べて低く抑え、周辺地域への圧迫感を低減させた。
 総工費は約1490億円、完成は2019年11月末としている。
 しかし当初計画のラグビー・ワールドカップの開催は頓挫した。 





技術提案書A案のイメージ図  新国立競技場整備事業大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体作成/JSC提供

資金難深刻JSC 新国立競技場の改修計画は宙に浮く懸念
 東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」の整備をめぐり、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が今後2年間で790億円程度の資金不足を見込んでいることが会計検査院の調べで明らかになった。
 会計検査院によると、JSCは昨年度、「新国立競技場」の整備費や国立代々木競技場の耐震改修工事などの支払いに必要な資金が不足し、50億円余りを民間の金融機関から一時的に借り入れた。
 さらに、来年度までの2年間で790億円程度の巨額の資金不足が見込まれ、民間金融機関からの借り入れで対応しようとしていることが明らかになった。790億円の返済長引くことが予想されていて、JSCの資金難は深刻化しそうだ。
 国は、大会終了後、新国立競技場の9レーンの陸上競技のトラックを取り外し、観客席を張り出してサッカーやラグビーなど球技専用のスタジアムに改修する方針を決めている。そして、FIFAワールドカップ(8万席)やワールドラグビー競技が開催可能な臨場感あるスタジアムにしたいとしている。五輪大会開催後の運営については、民間事業者のノウハウと創意工夫を活用して、ボックス席の設置などホスピタリティ機能を充実する計画も打ち出している。大会終了後にすみやかにこうした改修を行い、運営については指定管理者制度を導入して、2024年後半以降の供用開始を目指すとしている。
 しかし、未だに財源や工事の内容、スケジュールについては何も決まっていない。
 そして今回の会計検査院の調査で日本スポーツ振興センター(JSC)の資金不足の深刻化が明らかになった。新国立競技場の改修計画は挫折寸前である。
 新国立競技場は、「負の遺産」に転落する瀬戸際に立たされている。





新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(7) 新国立競技場に暗雲 破綻寸前日本スポーツ振興センター(JSC)

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委

巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト

デザインビルド方式 設計施工一括発注方式は公正な入札制度か?

審査委員長の“肩書き”が泣いている 新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏

東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011千億円支出 組織委公表の倍以上に膨張 会計検査院指摘

「1725億円」は五輪開催経費隠し 検証・国の会計検査院への反論 青天井体質に歯止めがかからない

“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲

東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”

東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2018年5月1日  初稿
2019年7月10日  改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR


***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
****************************************




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国際放送センター IBC メディアセンター MPC プレスセンター ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 東京五輪

2019年11月20日 17時07分51秒 | 国際放送センター(IBC)

ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点
IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)



(2012年ロンドン五輪の“Media Complex” ロンドン・オリンピック・パーク 出典 London Olympic OCOG)

 オリンピックの開催で整備される施設で、最も巨大な施設は開会式や閉会式、陸上競技などが開催されるオリンピック・スタジアムである。オリンピック・スタジアムは、五輪のシンボルともなるため、開催地は巨額の経費を投入して建設する。2008年北京五輪の“鳥の巣”、2012年ロンドン五輪のオリンピック・スタジアム、そして、2020年東京五輪では、その建設計画を巡って迷走を続けている新国立競技場である。
 次に巨大な施設は、競技会場ではない。IBC/MPCと呼ばれるメディア関連施設だ。約10万平方メートルの広さの膨大なスペースがメディア関連施設の設営のために整備される。
 オリンピックを支えるメディアの果たす役割は極めて大きい。国際オリンピック委員会(IOC)は、メディア戦略を重要な柱として位置付けている。とりわけ競技中継を世界各国で行う放送メディアは、オリンピックの存立基盤を握るとまで言われている。ロンドン五輪では、合計5600時間の競技映像などが世界204の国と地域に配信され、48億人が視聴した。オリンピックを持続可能なスポーツ・イベントにするためには、世界各国の人々から支持をされることがキーポイントである。国際オリンピック委員会(IOC)の収入で見ると、収入総額57億(2013年~2016年)の内、約73%、41億6000万円が世界各国の放送機関が支払う放送権収入である。五輪大会の開催を支えているのはまさに放送機関に他ならない。
 そのIOCのメディア戦略の中核になる施設が、IBC/MPCなのである。




IBC/MPCとは?
 IBCとは、International Broadcasting Centerの略称である。オリンピックの競技やインタビュー、会見などの映像音声を地上波や衛星放送、CATVなどのテレビ、ラジオ、インターネットやモバイルなどのデジタルメディアでサービスする世界各国の放送機関等がオペレーションを行う施設である。
 IBCの設営・運営・管理のすべての業務を担うのはホスト・ブロードキャスターであるOBS(Olympic Broadcasting Services )である。
 映像音声信号のコントロール、配信、伝送、ストレージなど行うシステムが設置されるOBSエリアや各放送機関等がサテライト・スタジオ、ワーキング・ブースなどを設置するエリアが整備される。
 これに対し、新聞、通信社、雑誌などの記事を発信する記者やスチールカメラマンの拠点は、MPC(Main Press Center)と呼ばれる施設だ。
 プレス席、専用ワーキングスペース、フォト・ワーキングルーム、会見室などが準備される。“MPC”の設営・運用・管理は開催地の五輪組織員会、OCOG (Organising Committee for the Olympic Games )が責任を持つ。
 2012年ロンドン五輪では、IBC/MPC合わせて約2万人の放送機関のスタッフ、記者、スチールカメラマンなどのメディア関係者が参加した。
IBCとIMCは別の建物として建設される場合が多いが、同一の建物内に設置される場合でも設置エリアを分ける。管理責任が、IBCはOBS、MPCは開催地の五輪組織員会と別れているからである。
IBCやIMCの建物や電力、上下水道、通信設備などのインフラは開催地の五輪組織員会の責任で整備する。 
2012年ロンドン五輪のIBCやMPCなどの“Media Complex”の建設費は、3億5500万ポンド(約440億 2012年当時の為替レート)だった。



(2012年ロンドン五輪のMPC 出典 WWW.NEWS.CN)

IBC/MPC関連施設
 IBCとMPCのスペースには、インフォーメーション・デスク、会見室、ブリーフィング・ルーム、会議室、事務室などや、レストラン、カフェ、コンビニ、銀行、郵便局、ツーリスト・サービス、ショッピング・アーケードなどのユーティリティ施設が設けられる。これらの施設は、用施設は、IBCとMPCの共用となる。
またIBCとMPCの建物の他に、メディア専用の食堂や会見室・ブリーフィング棟、メディア専用ホテルが建設されることがある。
 ロンドン五輪では、総床面積1万2000平方メートルの広大なケータリング棟(メディア専用の食堂)が建設(仮設の建物で五輪終了後撤去)された。4000席が設けられ、1日5万食を24時間サービスした。
北京五輪では、IBCの隣に、メディア専用ホテルが建設され、大会後は国際会議センターとして再出発した施設に付属する国際ホテルとなっている。


OBS(Olympic Broadcasting Services)
 IBCの設置から運営・管理まですべての業務を担うホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)は、OBS(Olympic Broadcasting Services )である。
 OBCは、2001年、オリンピック競技のホスト・ブロードキャスターとして、国際オリンピック委員会(IOC)によって設立された。OBS発足以前は、各大会ごとに開催地の組織員会や放送機関等がホスト・ブロードキャスターを務めた。
 北京五輪からは夏季五輪、冬季五輪のすべての大会で、OBSがホスト・ブロードキャスターとして、IBCを設営・運用・管理を行い、ホスト映像音声信号(国際信号)制作から、各国放送機関への配信や伝送などを実施することになった。


IBCのシステム
 IBCのシステムの中核設備は、コントロール・ルーム(Contribution)、配信オペレーション・ルーム(Distribution)、送信オペレーションルーム(Transmission)の3つの機能で構成されたCDT(Contribution, Distribution and Transmission Centre )である。CDTは、OBSが設営、運用、管理の責任を持つ。
 各競技場で生中継される映像音声信号は、各競技場に設置されたTOC(Technical Operations Centre)から、光回線などを使用してIBCに送られてくる。この映像音声信号のゲートウエイとなるのが“Contribution”である。映像音声信号の監視・調整・処理などを行うエリアである。
 “Distribution”は、その語句の意味通り、“配信”である。“Contribution”を通過した映像音声信号を、IBC内に設けられた各放送機関等に配る機能を備える。
 “Transmission”は、各放送機関が制作した番組やニュースのコンテンツを自国に伝送する設備である。IBCには、膨大な光回線やSNG(衛星伝送車)が配備され、送信オペレーションが行われる。



(2020年ロンドン五輪IBC CDT(Contribution, Distribution and Transmission Centre) 出典 L.A. INSTALLATIONS)

 次に重要なシステムは、MDS(Multi-Channel Distribution service)である。
MDSは、の競技コンテンツを、衛星にアップリンクして、世界各国の多数のRHBsに対して、高画質の映像をライブで24時間、同時提供するサービスである。ロンドン五輪では、10チャンネルで、合計2200時間の競技コンテンツ、さらに1チャンネルで、500時間のプログラム・コンテンツ(ONC / Olympic News Channel)を配信し、世界各国のRHBが1000か所でダウンリンクした。(ONC / Olympic News Channel参照)  RHBが自国の放送局で、MDSのサーバーにリモートアクセスして、必要なプログラムをダウンロードできる「リモートプロダクション」システムも構築されている。これまでRHDは、開催地のIBCの大勢の要員を派遣し、制作・送出作業を行う必要があったが、MDSの導入で、自国にいながら制作作業が可能になり、現地への派遣要員の削減を可能にした.
 ソチ五輪では、MDSは3つの衛星を使用して合計1170時間のコンテンツが提供され、45の放送機関等が利用して、70の国と地域でサービスされた。

 OBSでは、2008年北京五輪から、オリンピック・ニュース・チャンネル(ONC / Olympic News Channel )の24時間サービスを開始した。
競技のハイライトや、選手や監督の会見・インタビュー、記者レポートなどのコンテンツを制作しRHBに提供するサービスである。各RHBへの配信は、MDSで行われる。(上記参照)
OCNの制作エリアがIBC内に設置され、OBSの制作要員が配置されオペレーションを行う。

 そのほか、ストレージ・システム(VTR Logging)、ビデオサーバー・システム、映像インジェクション・システム、編集設備、音声スタジオ、記者リポポジションを始め、CATV、館内の光回線インフラ、通信回線、サテライト・ファームなどや、ブッキング・オフイス、インフォーメーション・デスクなどが設置される。
 IBCは、新たな巨大な放送局を一つ建設するのと同じ位の壮大なスケールだ。



(OBSの配置図 出典 OBS Website)

RHBs(Rights Holding Broadcasters)
 IBCに参加してオペレーションを行うのはIOCから放送権を得たRHBs(Rights Holding Broadcasters)と呼ばれる放送機関等である。2012年ロンドン五輪では、世界各国の33の組織(単独の放送局、放送機関組織、コンソーシアム 下記のLondon2012 Rights-Holding-Broadcastersを参照)、147の放送機関等がRHBsとなった。
 OBSは、RHBからIBC内の専用スペースの申し込みを受け付け、建物中のスペースの割り当てを行う。毎回、最大のスペースを確保するのはNBCで、圧倒的な広さの専用エリアを確保する。EBU(欧州放送連合)やジャパン・プール(NHKと民放各社)、そして開催地の放送機関も広大な専用スペースを確保する。
 RHBsは、割り当てられた専用スペースに、サテライト・スタジオや放送機器、ワーキングエリアを設置する。機材の調達や要員の確保、経費は各RHBsの責任である。ロンドン五輪のIBCには約1万3000人のRHDのスタッフが参加した。
 OBSは、国際信号の制作・配信計画を作成、管理して、各RHBに対し、競技中継やインタビュー、会見などの映像音声信号などを配信する。


(CBS Comtrol Room London Olympic IOC)


(RHBsへの説明会  出典 OBS Website)




(LONDON 2012 - Rights-holding Broadcasters IOC)


(For the RHBs OBS)

IBCの映像・音声信号の種類
 ホスト・ブロードキャスターが制作する映像・音声信号を、国際映像(International Signal/ International Television and Radio Signals)、またはホスト映像(Host Signal)、と呼ぶ。ホスト映像は、各競技会場に配備された中継車やENGカメラで、撮影・制作された映像・音声で、IBCでRHBに配信(Feed)され、各RHBが共通で使用する映像・音声信号である。各RHBへの配信(Feed)をホストフィード(Host Feed)ないしワールドフィード(World Feed)と呼ぶ。
 国際映像は、各放送機関等が共通で使用する映像・音声信号なので、“公平”、“平等”な編集方針で制作される。アナウンサーや解説者のコメントはなく、ナチュラル・サウンズだけの音声が原則である。中継車でスイッティングした“完プロ”映像の他に、別カメラで撮影した映像なども同時に配信される。
 開会式や閉会式などでは、すべての国の選手団を“公平”に扱って、映像・音声信号を制作する国際映像を基本的に使用して各放送局は中継番組を放送するので、どの局の番組を見ても映像は同じだ。
 試合の経過や結果の情報やさまざま種類のアニメーションやグラフィックなども国際映像で配信される。
放送機関等は、ホストフィードされた国際映像(International Signal)を使用し、中継コメントや解説を入れて競技中継番組を制作したり、編集したりしてハイライト番組やニュースで放送する。
国際映像は、IBCですべて収録されて、アーカイブ化される。
 オリンピックの場合は、あらかじめIOCと放送権契約結んだ放送機関等(RHBs)がホスト映像を放送で使用可能となる。使用が許諾される条件は、契約書により厳密に細かく規定される。また、各放送事業者が収録し、ストレージしたホスト映像を、五輪終了後に再利用する場合も厳しく制限され、原則として新たな放送権料の支払が発生する。

▼ ユニー信号(Unilateral Signal / UNI)/ユニーフィード(UNI FEED)
国際信号(ホスト映像)は、各放送機関の“共用”映像・音声信号なのに対し、ユニー映像(UNI Signal)は、個別の放送機関のみ使用可能な映像・音声信号である。各放送機関が、独自に競技中継現場に置いたカメラの映像・音声信号や、コメンタリー・ポジションのアナウンサーや解説者の映像・音声、各局のリポーターの映像・音声などがユニー映像で、個別の放送機関のみ使用が可能である。“ユニー”は、各放送機関等が独自に機材や要員などのリソースを配置して、各放送機関等の責任で制作するもので、ホストブロードキャスター(Host Broadcaster)は、その内容に関知しない。
 しかし、各競技場からの伝送やIBC内での各放送機関等への配信・伝送は、ホスト・ブロードキャスターが担当する。

▼ プール信号(Pool Signal / Pool)/プールフィード(Pool FEED)世界各国の放送機関等がまとまって“プール”を組織し、プールの代表が、中継や取材を代表して行い、プールのメンバーだけに映像・音声信号を配信することを“プール”という。プール映像は、プールに参加したメンバーのみ使用可能である。プール中継・取材に係る経費は、プールに参加したメンバーで按分して負担することが通例である。
欧州は、EBUが欧州各国の放送機関をまとめて“プール”を結成し、日本では、NHKや民放が参加してジャパン・プールをつくる。プール映像(Pool Signal)は、各プールが独自にリソースを配置して、制作するもので、ホストブロードキャスター(Host Broadcaster)は、その内容に関知しない。
 しかし、“ユニー”と同様に各競技場からの伝送やIBC内での各放送機関等への配信・伝送は、ホスト・ブロードキャスターが担当する。


2012年ロンドン五輪のIBC/MPCの概要
(2012年6月27日から8月17日までオープン)


London Olympic IBC/MPC 出典 London Olympic OCOG

▼ IBCの概要
・ロンドン東部のストラトフォード(Stratford)のロウアー・リー・バレー(Lower Lee Valley)地区の再開発で整備されたオリンピック・パーク内にIBCを建設
・総床面積約6万2000平方メートル 2階建て フロアの天井高さ約10メートル
 長さ275メートル×幅104メートル×高さ21メートルの鉄骨構造の建築物 5機のジャンボジェットが格納可能
建物は映像素材を扱う拠点のため、太陽光が入らないように窓がほとんどない
・スタジオ・スペース 約5万2000平方メートル
(フロアの天井高さ10メートル)
・事務棟 約8000 平方メートル  5階建て (IBCの正面部分)
・147のRHB  約1万2000人のRHB要員がIBCに参加
*RHB(Rights Holding Broadcaster):IOCから放送権を取得した放送機関
・1000台のカメラを使用し、5600時間以上の映像をHDで撮影
・52台の中継車を配備
・2200時間以上のHD競技映像をライブ配信
・世界204の国と地域で10万時間以上が放送 48億人が視聴
・YouTubeでアジアとアフリカの一部の64の地域を対象に2700時間のストリーミング・サービスを始めて実施
・五輪の初 3Dを230時間配信
 33台の3Dカメラを使用 開会式、閉会式、体操、水泳、飛び込み競技
・8Kのパブリックビューイング実施(NHK)

▼ MPCの概要
・総床面積2万9000平方メートル 4階建て 事務棟
  約5600人のジャーナリストを収容可能
・ワーキングステーション 816室
・フォトワークルーム   288室
・5か所の会見室・ブリーフィング室
・メイン会見室(1か所)
  約700人のプレス席 ライブ中継設備(CATVでライブ・サービス)
  スチールカメラ席、テレビ・カメラの設置席の設置
  9か国語の同時通訳ブース設置
・サブ会見室(1か所)
  約200人のプレス席 同時通訳可能
・ブリーフィング・ルーム(3か所)
  80人のプレス席  同時通訳可能

▼ IBC/MPCの共用の関連施設
・総床面積1万2000平方メートルのケータリング棟(catering village プレス用レストラン) 4000席、1日5万食を24時間サービス
   McDonald’s Delicatesen, Barbeque, International buffet
・長さ200メートルのショッピングアーケード“High Street”
   ショップ、銀行、郵便局、トラベル・エージェント、スポーツジム、美容院等を設置。
・800人のプレスが参加可能な会見場(オードトリアム構造)

▼ Media Transport Mall(駐車場)
・総床面積約4万平方メートル
・Guest Press Office設置(アクレディ・オフイス)

▼ 建設費(IBC/MPC関連施設)
・3億5500万ポンド(出典 英スポーツ省/The Guardian)
   約500億円(当時の為替レート)
   約650億円(現在の為替レート)
   (オリンピック・パーク内で建設されたので用地代は含まず)

▼IBC/MPCのレガシー(未来への遺産)
・IBC/MPCは、大会後改装され、ロンドンの最先端のデジタル・メディア拠点“Here East”として生まれ変わった。BT Sport(衛星放送局)のスタジオや大学、研究・研修施設、イノベーション・インキュベーション企業支援エリア、オーディトリアムなどが設けられた。改装工事には、1億5000万ポンド(約230億円 当時の為替レートで換算)の経費を投資したが、ストラトフォード(Stratford)の再開発戦略の中核の一つと位置づけて整備を進めた。


出典 Here East Website


北京五輪 IBC/MPC

▼ IBC/MPCの概要
・北京郊外に整備されたオリンピック・パーク内に建設された会議センター「国家会議中心」(China National Convention Center)の中に、IBC/MPCを整備
・IBCは約5万5000平方メートル、MPCは約6万2000平方メートル
・「国家会議中心」は総床面積約27万平方メートル、長さ約400メートルの巨大な建物
・「国家会議中心」には、フェンシングと近代五種(射撃、フェンシング)の競技場も設置
・140のRHB
・五輪で初めてHD高画質フォーマットで約5000時間の競技映像を配信 
・世界200の国と地域で47億人が視聴
・ホスト・ブロードキャスターは、OBS(Olympic Broadcasting Services )と北京五輪組織員会(BOCOG)がBeijing Olympic Broadcasting (BOB)を設立してオペレーションを担当

▼ 建設費(IBC/MPC関連施設)
・「国家会議中心」の建設費は、4億ポンド(推定)
   約856億円(当時の為替レート)
  (オリンピック・パーク内で建設されたので用地代は含まず)

▼ IBC/MPCのレガシー(未来への遺産)
・統合エキジビション施設、「国家会議中心」として再出発。国際会議場、展示ホール、イベント・ホール、国際ホテルなどを備えた北京の新しい商業施設の中核に


「国家会議中心」 北京オリンピック・パーク 出典 北京五輪OCOG)


リオデジャネイロ五輪 IBC/MPC

▼ IBC/MPCの概要
・リオデジャネイロ郊外に整備されたオリンピック・パークの中に建設
・総床面積約11万平方メート 

▼ IBCの概要
・総床面積約8万5000平方メートル 2階建て 高さ21メートル 
1階12メートル 2階8メートル
・スタジオ・スペース  1区画約5000平方メートル×12区画

▼ MPCの概要
・総床面積約2万7000平方メートル(IBCとは別棟)

▼ 建設費(IBC/MPC関連施設)
・総建設費 6億4000万レアル(現在の為替レート 約242億円)
・PPP(Package of Public-Private Partnership)スキームで民間企業の負担は4億レアル(約152億円)
・公的資金の負担が2億4000万レアル(約90億円)
  空調設備や発電機の調達で巨額の経費増が発生し、州政府が負担することで合意
・公民連携スキーム(Public-Private Partnership /PPP)を採用し、五輪初の民間資金で建設。

▼ IBC/MPCのレガシー(未来への遺産)
・展示会やイベントを開催する商業施設として活用。運営はPPTスキームで民間企業が担当。


(リオデジャネイロ五輪 IBC/MPC 出典 Rio de Janeiro OCOG)




迷走 2020東京五輪大会メディア施設整備~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~
2020東京五輪大会 国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC) 設営場所と大会開催後の再活用策
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)/ MPC(メイン・プレス・センター)
オリンピックのメディア施設(IBC/MPC)はこうして整備された ~ロンドン五輪・その機能・システムと概要~
伊勢志摩サミット 最新情報 2016年G7主要国首脳会議
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム ~機能と設備~
国際放送センター(IBC)で使用される映像信号フォーマット(Video Signal Format
IBC International Center System (English)








国際放送センター(IBC) 設営・運営業務実績
国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2015年11月26日
Copyright (C) 2015 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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