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ファーウェイ副会長 逮捕 身柄引き渡し 孟晩舟CFO イラン制裁 スカイコム カナダ人拘束 ZTE制裁

2019年05月23日 21時43分04秒 | 5G



米国、孟晩舟CFO起訴 トランプ米政権、中国に対して強硬
 2019年1月28日、米司法省は、華為技術(ファーウェイ Huawai Technologies)副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟(メン・ワンツォウ Meng Wanzhou)被告を、米国の対イラン制裁をくぐり抜けようと米金融機関に虚偽の説明をしたとして、詐欺罪や司法妨害など13の罪状で起訴すると共に、華為の関連会社2社を米携帯電話大手TモバイルUS(T-Mobile 本社はドイツ・ボン)から企業秘密を盗んだ罪など10の罪状で起訴したと発表した。同日、米司法当局はカナダ当局に孟副会長の身柄引き渡しを正式に要請したと伝えられている。これに対して中国政府は、「背後に強力な政治的な意図がある」として強く反発している。
 起訴されたのは、孟氏のほか、法人としての華為技術、同社の米国の関連会社「華為デバイスUSA」、事実上の華為のイランの関連会社「スカイコム」の計3社である。

 ニューヨーク州の裁判所に提出した起訴状によると、ファーウェイがイランで事業を行うため、米国にある子会社、ファーウェイデバイスUSAと香港の通信機器販売会社スカイコム・テクとの所有・経営権を巡る関係について、取引先の大手金融機関などに対し、「華為技術はスカイコムの権益を2007年時点ですでに売却しており、スカイコムは地元のビジネス相手に過ぎない」などと虚偽の説明を続けとしている。
 スカイコムは香港にあるペーパー・カンパニーと見なされ、華為技術の指示でイランへの不正な取引を行っていたとされている。
 ロイター通信によると、スカイコムは2010年に少なくとも130万ユーロ相当のHewlett-Packard製のコンピュータ機器を、イラン制裁で禁輸品に指定されているにも拘わらず、イラン最大の携帯電話事業者に販売することを申し出ていた。 ファーウェイやスカイコムは最終的には米国の機器を提供していないと述べているという。
 さらに、ロイター通信は孟氏が2008年2月から2009年4月の間にスカイコムの取締役を務めていたことを伝えている。ファーウェイとスカイコムは、財務や人事に関連して密接な関係にあること明らかにした。

 米司法当局は、大手銀行側はファーウェイによるイラン制裁違反を認識していれば取引関係を見直していたはずだと指摘し、銀行詐欺、通信詐欺、司法妨害などの罪状が問われている。
 米金融機関は虚偽の説明に基づき、米国の法律で禁じられているイランとの金融取引を続けた。華為技術の取引先金融機関の一つは2010年から2014年の間に、スカイコム関連で1億ドル(約110億円)以上の取引を行ったという。
 起訴状ではこの銀行を特定していない。

 さらに2012年と2013年にロイター通信が報道した「スカイコムが米制裁に違反してイランにコンピュータ機器を販売しようとした」という記事に言及している。
 この報道の中でファーウェイが内容を否定したコメントをしたことが、金融機関がファーウェイやその子会社との取引を継続するか判断する材料になったと指摘している。
 米連邦捜査局(FBI)は2007年7月にファーウェイ創業者の任正非氏の聴き取りを実施したが、任氏が米輸出法違反を偽って否定したとしている。
 起訴状では、米国のイラン制裁を回避する一連の取引で、孟氏が主導的役割を果たしたと主張している
 孟氏と会合した大手銀行は、関係筋はHSBCホールディングだとしている。(Reuters 1月29日)
 一方、HSBCは、2018年12月に声明を発表し、今回の件でHSBCが捜査対象になっていないことを米司法省は確認しているとしている。
 HSBCは2012年に米国のイラン制裁や資金洗浄関連法への違反で19億2000万ドルを支払っている。

 トランプ米政権は、2015年のイラン核合意から米国が5月に離脱したことを受けて、イランおよび同国と貿易関係にある各国を対象とした制裁を全て復活させて、2018年11月に石油輸出、船舶、金融など経済の重要部門の全てが含まれる「史上最強」の制裁を発動している。
 
 またワシントン州の裁判所の案件では、米携帯大手、TモバイルUS(T-Mobile 本社はドイツ・ボン)がスマートフォンの品質試験で使用する人間の指の動きを模倣する最先端ロボット、「Tappy(タッピー)」に関連する技術を盗んだ疑いに関し、企業秘密の窃盗、通信詐欺、司法妨害など10件の罪でファーウェイの子会社2社を起訴した。
 捜査当局によると、ファーウェイの社員はTappyの写真を密かに撮影したり、複製品を作るため、ロボットを盗んで自宅に持ち帰っていたりしていたという。ファーウェイは機密を盗んだ社員らに、ボーナスを支払っていたとした。
 米連邦捜査局(FBI)は、ファーウェイは米国企業の知的財産を、組織的に盗み出す手段に打って出た。それにより、彼らは不正な方法で市場での優位性を得ようとした」と述べている。(Forbes 1月30日)

 Tモバイルはファーウェイを提訴したが、ファーウェイは一部の不良社員が行った不正行為だとした。しかし、米司法省は、社員に窃盗を指示したEメールも入手し、ファーウェイによる組織的犯罪であると主張している。
 一方、ファーウェイは2017年にこの問題は両者で協議し解決したとの見解を示している。

 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は今回の起訴について、「ファーウェイが米企業や金融機関を悪用するために取った恥知らずで執拗な行動を露呈している」と批判し、
米国内の通信網で使われている同社製品についても、「外国政府が情報を故意に変更または窃盗し、検知されないままスパイ行為を実施し、圧力や影響力の行使を可能にすることになる」として懸念を示した。 (Reuters 2019年1月29日)

 2018年12月に孟副会長はカナダ当局に逮捕されたが、保釈金を払い24時間の監視に服することなどを条件に保釈され、現在バンクーバーに在住している。ウィテカー司法長官代行は会見で、米国への身柄引き渡しの要請期限である1月30日までを念頭に「我々は身柄引き渡しの要請を正式に行う予定」と語った。
 中国外務省の耿爽副報道局長は「米国は国家の力を使って特定の中国企業を狙い撃ちし、正当な活動を抹殺しようとしてきた。背後には強力な政治的な意図がある」と反発し、華為技術への圧力をかけるのをやめ、カナダに対する孟副会長引き渡し要求を撤回するよう求めた。

 今後は、カナダが孟副会長の身柄の米国への引き渡すかどうかが、最大の焦点となった。カナダの公共放送CBCによると、カナダ司法省は、28日午後、米側から身柄引き渡しについて正式に要請を受けたと伝えた。カナダ政府によると、米国が正式に引き渡しを要請後、30日以内に手続きを始めるかを判断し、法廷での審理開始は3月上旬になるとの見方があり、結論が出るまでには相当の時間がかかると見られている。
 孟副会長の起訴は、中国の劉鶴副首相が訪米し、ワシントンで30日から始まる米中貿易紛争の閣僚級協議の直前のタイミングを選んで発表された。トランプ政権は再び中国に対して強行姿勢をとって牽制し、米中交渉で優位に立つことを狙っている。
 しかし、米中対立の影響で、米国経済の牽引車、アップル社は、2018年10~12月期の四半期決算で、主力のiPhoneの売り上げが前年同期比で15%減少したことを明らかにした。中華圏(香港を含む)市場でスマホの売れ行きが激減、米中貿易紛争や中国経済の減速が直撃した形だ。これを受けて米株式市場は大幅に急落、「アップル・ショック」に見舞われた。好調の米国経済全体の先行きに一気に暗雲が立ち込め、中間選挙を控えたトランプ政権に打撃を与えている。
 一方、中国も、減速気味の国内経済への懸念を抱え、3月初めを期限とした90日間の貿易交渉で一定の成果を出したいとしているのが本音と言われている。
 米国も中国も、内情は米中貿易紛争の影響をもろに受けて満身創痍である。

 1月29日、孟氏は保釈条件の変更をめぐる審理のため、カナダ西部バンクーバーの裁判所に出廷したとカナダのメディアが伝えた。次回期日は3月6日に設定され、米国への身柄引き渡しの審理を行うとみられている。
 米国からの身柄引き渡しの正式要請を受け、カナダの司法当局は3月1日までに身柄引き渡しの手続きを進めるか否かを決め、裁判所の判断を求める。裁判所では審理を開始し、被告の審理も行うが、その期日は当初、2月6日に設定されていたが、米国の要請を受けて約一カ月先延ばしとなった。
 一方で、90日間の米中貿易交渉が開始されており、孟副会長の身柄引き渡しは問題は米中貿易交渉の成り行きと絡んで予断を許さない状況だ。



ファーウェイの孟晩舟CFO、保釈

孟晩舟(メン・ワンツォウ Meng Wanzhou)・副会長兼最高財務責任者(CFO) 華為技術HP

 12月11日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ Huawai Technologies)の孟晩舟(メン・ワンツォウ Meng Wanzhou)・副会長兼最高財務責任者(CFO)が逮捕された事件で、カナダの裁判所は、逮捕した孟氏の保釈を認めた。現地報道によると保釈の条件として、1000万カナダドル(約8億5000万円)の保釈金やバンクーバーへの滞在制限、パスポートの没収、GPS(全地球測位システム)付きの追跡装置の装着で24時間監視などが課せられた。
 中国政府はこれに先立ち、カナダの元外交官を拘束。貿易戦争で対立している米国への直接的な強い批判は避けたが、カナダへの圧力は強めている。今後は、孟氏の米国への身柄引き渡しが焦点になり米中対立の激化は避けられない情勢だ。

カナダ元外交官が中国で拘束 中国政府の対抗措置か
 12月11日、ベルギーに本部を置く国際シンクタンク、ICG=国際危機グループは声明を発表し、カナダの元外交官で、中国や日本など北東アジア地域を専門とするマイケル・コブリグ氏が中国当局に拘束されたことを明らかにした。
 中国とカナダの関係を巡っては、中国の通信機器大手、ファーウェイの孟晩舟副会長がアメリカの要請を受けて今月1日にカナダの当局に逮捕されたことを受け、中国政府は北京駐在のカナダ大使を呼んで抗議するなど反発を強めていた。
 コブリグ氏の拘束は、中国側がこれまでに示唆していた対抗措置ではないかと思われる。
 マイケル・コブリグ氏は、所属するシンクタンク、ICG=国際危機グループで中国に批判的な報告を相次いで発表してきたという。
 このうち、先月24日の報告では、中国がアフリカ諸国と軍事面の協力を加速させ、安全保障分野でも影響力を強めようとしていると伝えたうえで、「中国がアフリカに及ぼす政治や経済の影響は、中国側の目的にかかわらず、アフリカ各国の格差の拡大や政治の腐敗、圧政の助長につながりかねない」と批判しています。
 また「一帯一路」を掲げる中国が主導してパキスタンで進めている開発について、地元から強い反発の声が上がっていることを伝えている。(NHKニュース 12月12日)

カナダ人企業家も拘束 中国・カナダは緊張関係に
 カナダのフリーランド外相は12日、オタワで記者会見し、中国滞在中のカナダ人男性が中国当局との接触があった後、連絡が取れない状態にあると明らかにした。
 ロイター通信によると、このカナダ人男性は、中国で北朝鮮との文化交流を行っているマイケル・スパバ氏と伝えた
 中国メディアは中国遼寧省丹東市の国家安全局がスパバ氏を「中国国家の安全を脅かした」として調査しているとしている。身柄を拘束され取り調べられていると思われる。
 スパバ氏は、中国東北部の中朝国境地域を拠点に長年活動し、コブリグ氏とも交流があったとされる。
 フリーランド外相は、スパバ氏の家族と接触を図っていると語ったが、「私的な事情やプライバシー上の問題もあり、これ以上は公表できない」と述べ、詳細は明かさなかった。
 12月13日、中国外務省の陸慷報道局長は記者会見で、カナダ外務省を休職中のマイケル・コブリグ氏とカナダ人企業家のマイケル・スパバ氏を拘束したと明らかにした。
 相次ぐカナダ人拘束で、中国のカナダの関係は緊張激化に陥っている。(Reuters、読売新聞 12月13日)

孟氏逮捕と距離置くトランプ政権、火種回避か
 孟氏はバンクーバーで逮捕されたのは米中首脳会談が行われた12月1日、この日、トランプ大統領は周主席との会談に臨み、来年さらに関税を引き上げ一段と厳しい制裁措置を課すとした方針を一時見送り、90日間の猶予期間を置くとした。
 米ホワイトハウス高官は、トランプ大統領は首脳会談前に逮捕の計画を知らなかったと明らかにした。この問題が米中貿易協議の新たな火種となるのを回避しようとする狙いがあったと見られている。
 この件は司法省の問題であり、ホワイトハウスと事前の調整はなかったとしている。
 また包括的な貿易協議での合意を目指す米中の取り組みは複雑になる恐れはあるものの、必ずしも打撃にはならないとの見方を示した。
 米当局は、対イラン制裁を逃れるために世界的な銀行システムを利用した疑惑を捜査していたが、華為が対イラン制裁に違反したかどうかについて少なくとも2016年から調べていたとされている。関係筋によると、最近では華為がHSBCを利用してイラン関連の違法な取引を行った容疑などで捜査が行われていた。こうした中で、孟氏が浮上したという。
 HSBCは、メキシコで犯罪組織の資金洗浄(マネーロンダリング)の疑惑や米国の経済制裁に反してイラン関連の取引をしていた疑惑で米当局の捜査を受けていたが、2012年、12月、米ブルックリンの検察局と訴追延期合意を交わし、19億2000万ドル(約1600億円)の罰金を支払った。米メディアによると銀行が米当局に支払う罰金としては過去最大となるという。HSBCは「過去の過ちに対する責任を認め、謝罪する」との声明を出した。(Reuters 12月7日)

トランプ米大統領、この問題に介入する可能性を示唆
 一方、トランプ米大統領は同日、ロイターとのインタビューで、中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕されたことについて、米国の安全保障と対中貿易協議の進展に資するなら、この問題に介入するとの考えを示した。
 孟氏の身柄引き渡しを求めないことや身柄を米国に移しても釈放する可能性を示唆したと思われる。
 また、トランプ大統領は、中国が大量の大豆を米国から購入し始めたことをロイターに明らかにした。12月1日の米中貿易戦争休止後に中国政府は大豆を購入するため「市場に復帰」したと述べた。
トランプ氏はロイターに対し、「中国が膨大な量の大豆を購入していると今日聞いた。購入し始めたばかりだ」と語った。
 ただシカゴのトレーダーによると、中国が7月に米国産大豆に25%の関税を課して以降、同国が購入を再開した形跡はないという。
 米中の貿易交渉の決裂は望んでいなが、成果を上げる必要に迫られているトランプ政権、米中の対立は予断を許すさない状況になった。


華為技術(ファーウェイ)のブース Smart City EXPO 2018 Barcelona

ファーウェイ製品、携帯4社使わず
 日本の携帯会社向けに華為技術が基地局整備事業を開始したのは、イー・アクセスが最初で、その後、イー・アクセスがソフトバンクに買収されるとソフトバンクとの取引となり、現在は主に1.7GHz、700MHz、3.5GHz帯で華為技術の基地局が導入されている。
 一方、ソフトバンクでは、基地局はエリクソンとノキアが中心だった。華為技術がソフトバンク向けの受注を伸ばしたのは、2017年度で、新規で割り当てられた3.5GHzや追加発注が多かった700MHz帯で確実に受注を重ねていった結果、同年のソフトバンクの新規基地局の6割弱を華為技術が獲得するまで成長した。
 今回のファーウェイ製品排除の政府の方針を受けて、ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」について、華為技術(ファーウェイ)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。北欧の通信機器大手エリクソンとノキアの製品に順次置き換えるとしている。今後、国内外の事業活動に影響が出かねないと判断したという。
 2019年春以降に整備を始める第五世代移動通信「5G」基地局でも中国製を排除し、エリクソンやノキアの北欧2社に発注する。
 ソフトバンクは国内通信大手で唯一、ファーウェイと中興通訊(ZTE)の基地局を使っており、全国にあるソフトバンクの基地局のうち、中国製は1割程度とみられ、数年かけてスウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの2社の製品に順次切り替えていくとしている。
 調査会社MCA(東京・千代田)によると、ソフトバンクが2015~2017年度に調達した基地局の金額は全体で767億円。このうちファーウェイ製の基地局は206億円、ZTE製は35億円だった。ソフトバンクは現在、交換費用を算定中だが、「北欧2社が受注拡大に向けて費用を一部負担する可能性もある」(MCAの天野浩徳代表)。
 ソフトバンクグループは、米国の通信子会社スプリントを同業のTモバイルUSと合併させる予定で米政府の承認を待っている。またライドシェア大手のウーバーテクノロジーズをはじめとする米国内の有力企業に出資している。中国製の通信機器を使い続ければ、米国での事業に支障を来すリスクもあった。
 NTTドコモとKDDI(au)は現在、中国製の基地局を使用しておらず、5Gの基地局でも採用を見送る方針。来年秋に携帯事業に参入する楽天も同様の方針を示している。(日本経済新聞 要約 12月13日)
 また来年10月に携帯事業に参入する楽天は、2020年に商用化予定の次世代移動通信方式「5G」の設備について、華為技術(ファーウェイ)などの中国製品を使わない見通しを明らかにした。
 KDDI(au)とNTTドコモは、現在、中国製の基地局を使用しておらず、政府の対応に同調して5Gの基地局でも採用を見送る方針である。NTTドコモは「技術面から(5G基地局など設備に)中国製品を使うのは困難」(NTTグループ幹部)としている、 
 政府は10日、「サイバーセキュリティ対策推進会議」を開いて、情報通信機器の政府調達から、華為技術(ファーウェイ)技術と中興通訊(ZTE)の中国製品を事実上排除する申し合わせをするとしている。
 トランプ政権は、中国企業が関与するスパイ活動が米国の安全保障を脅かしているとして、両社製品を米国市場から事実上締め出し、日本などの同盟国にも華為製品を排除するように要請したとされている。日本政府は米国の要請を踏まえた形で新たな方針を定め、2019年度の政府調達から適用する方針だ。
 菅義偉官房長官は記者会見で、「サイバーセキュリティーを確保する上で、情報の窃取や破壊、情報システムの停止などの悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しないことは極めて重要」と述べた。
 しかし、一方で安倍政権は中国と関係改善を進めており、中国との関係も配慮し、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の名指しは避けて、あくまで申し合わせの内容はセキュリティー上の対応といった表現にとどめ、個人向けのスマホなどの通信機器は排除しない方向とされている。
 この措置で影響を受ける両社製品がどの規模に上るかについて、首相官邸幹部は「ほとんどない」とみている。(朝日新聞他 12月13日)
 一方、NTTの澤田純社長は13日までに産経新聞のインタビューに応じ、日米政府が政府調達機器からの排除方針を示している中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)について、第5世代(5G)移動通信方式の基地局で採用しない方針を改めて示した。
 ファーウェイは通信基地局では世界シェアトップを占める。
 一方、ファーウェイ製の個人向けのスマホや通信機器をめぐっては、低価格で高性能なことからdocomoを始め、国内携帯各社で採用されている。日本政府は排除の方針を示していないが、個人の利用者からは不安視する声が寄せられているという。
 澤田氏によると、米政府は2020年年までにファーウェイ製品の端末を販売している事業者とは契約しない可能性があるので、米政府と契約ができなくなる懸念が大きいと指摘して、今後の動きを注視したいとした。(産経新聞 12月13日)
 ファーウェイをめぐる米中対立は、国内の携帯基地局市場にも大きな影響を及ぼしている
 華為技術の持つ技術力やコスト競争力は世界的に評価されていて、とりわけ第五世代5Gのトップランナーとして注目されていた。日本では2019年3月に5G向け周波数の割り当てが行われ、2020年の5G商用サービスの開始に向けて5G基地局の投資が本格化する中で、華為技術としては日本市場でトップシェアを握る格好の機会だった。
 今回の一件で、華為技術の5G基地局の導入が不可能になり、エリクソンやノキアなどの西欧企業製品に切り替えることになると、5G基地局の整備計画に大きな影響が出る懸念も生まれる。

米国の制裁で経営危機に追い込まれた中興通訊(ZTE)
 2016年、米国商務省はZTEが米の経済制裁対象になっているイランや北朝鮮に通信機器を違法に輸出していることをつかみ、司法当局に提訴した。2017年、中興通訊は米製品と技術をイランに輸出していたと不正を認め、米政府に8億9200万ドル(約1000億円)の罰金を支払った。 また、今後同様な違法行為があった場合、さらに3億ドルの追加罰金を支払うことやイランへの違法輸出に関わった社員の解雇・減俸処分にも同意した。
 商務省は、合意内容や輸出管理規則管理規則をZTEが順守することを条件に、罰金のうち3億ドルの支払いと制裁の発動を7年間執行猶予とした。
 しかし、米国当局の調査で、ZTEは一部社員のボーナスの減給を約束したが、全額支給していたことが明らかになり、ZTEが提出した合意内容の報告に関する資料で従業員への処罰の実施に関する記述内容に虚偽があり合意内容に違反したとして、商務省は執行猶予を取り消しする方針を固めた。
  2018年4月16日、米国政府は、ZTEがその後もイランに対して通信関連設備を違法に繰り返し輸出しているとして、米企業に対して中興通信との取引を7年間禁止した。
 米国のロス商務長官はZTEが虚偽報告を繰り返していると非難した。
 この措置で、米企業がスマートフォンなどの通信機器に必要なチップなどの半導体部品をZTEに直接輸出することや第3国を通じて輸出することも完全に禁止された。
 またZTEに致命的なのは、スマートフォンに搭載される米グーグル社の基本ソフト(OS)、アンドロイドのライセンスを獲得できなくなり、同社が生産するスマートフォンは米国市場だけではなく、世界各国の市場での販売が不可能になることであった。
 この影響で17日同社が上場する中国株式市場と香港株式市場での株式取引が中止となりZTEの経営不安が一気に広がった。ロイター通信によると、ZTEが米企業から輸入する部品の割合は全体の25~30%を占めるという。米政府の取引禁止令で、ZTEは事実上の経営破綻の危機に追い込まれた。
 その後、中国側は米に対して、制裁の解除を求め、2018年6月7日、ZTEとの間で制裁解除を合意した。合意内容には、ZTEが10億ドル(約1100億円)の罰金を支払うほか、米国が選任するコンプライアンスチームの設置、30日以内に取締役や経営陣を刷新、今後問題を起こした場合の4億ドル(約440億円)の罰金などが含まれていた。
 しかし、同社に対する安全保障上の懸念から米超党派の議員はこれに反発し、6月18日、米議会上院は、制裁解除を認めない条項を盛り込んだ法案を賛成多数で可決した。
 これに対して、トランプ大統領は、中国との関係改善を優先させ、議会の反対を押し切りZTEに対する制裁解除を決定した。
 2018年6月29日、ZTEは制裁解除の条件の1つとしている経営陣の人事刷新を公表した。同日、開催した同社の株主総会で4人の取締役が辞職し、新たに8人の取締役が選出され、西安微電子技術研究所副所長を務めた李自学氏(54)が、取締役会の新会長に就任した。
 西安微電子技術研究所は、中国国有航空宇宙企業「中国航天科技集団」の子会社で、コンピューター、半導体集積回路などの研究開発を担う。同社は、ZTEが創業当時から大株主を務めていた。
 ZTEは、経営再建のため大手銀行の中国銀行に300億元(約5000億円)、政策金融機関の国家開発銀行に60億ドル(約6600億円)の与信枠を設けるように求めるとしている。
 半導体チップやアンドロイド、Windowsなどの基本(OS)を握る米国のパワーが如実に示された。世界各国のICT市場の覇権を握るのはやはり米国なのだろうか?
 仮に米国が華為技術(ファーウェイ)に制裁を課したらファーウェイといえども深刻な影響が生じるのは必須である。勿論、中国も黙って見ているはずはなく、世界は大混乱に陥る懸念がある。米中の対立は、情報通信分野の覇権を巡っての第二幕を迎えた。

ファーウェイ 世界の人口の三分の一の通信環境をサポート
 華為技術(ファーウェイ HUAWEI)は、通信機器やスマートフォン(スマホ)などの携帯端末、クラウドサービスなどを手掛ける世界で最大級の情報通信企業である。世界約170か国で事業を展開し、2017年の売上高は6036億21 00万元(約9兆9000億円 約874億ドル)、営業利益は474億5500万元(約7800億円 約69億ドル)である。
 他の中国企業と違い、海外事業の比率が高い国際企業である。
 従業員数は全世界で18万人以上、本社は中国の先端技術拠点都市、深圳にある。従業員持株制による民間企業としているが詳細は不明である。
 世界各国が熾烈な主導権争いを繰り広げている第五世代移動通信5Gの分野でも、世界を一歩リードしているとされ、2018年11月20日、ファーウェイが世界の企業に抱きだって5G基地局設備を1万基出荷したことを発表している。
 2017年の通信基地局の売上高シェアは27.9%、スウェーデンのエリクソン(26.6%)やフィンランドのノキア(23.3%)を押さえて世界第一になっている。
 またスマートフォンでも、2018年第2四半期に、アップルを抜き、世界第二位に躍進した。ちなみに一位は韓国のサムスン電子である。しかし米国ではほとんどファーウェイ製の携帯端末は販売していない。
 
 ファーウェイの創業者は、現在は最高経営責任者の任正非氏(74)。大学を卒業後、人民解放軍に入隊し、建築関連のエンジニア兵をつとめたがリストラで除隊。1987年、広東省深圳で華為を創業した。カナダで逮捕された孟晩舟氏は任氏の娘だ。
 1978年、中国は改革開放路線を掲げ、計画経済から市場経済的経済に移行させ、経済改革を推進した。海外企業に対しても門戸と開き、1984年には深圳を始め、4カ所に経済特区を設け、海外企業の進出を促した。
 こうした経済改革で、1980年代は毎年10%程度の高度成長を成し遂げ、経済活動が一気に活発化していった。
 華為を創業した1987年は中国が急成長に躍動していた時期である。
 当時、中国は情報通信の近代化と急ピッチで進めていた。しかし、中国国内には有力な情報通信関連企業がなく、海外企業に頼らざると得ない中で、華為は一気に国内の情報通信企業の中核企業に急成長した。
 ファーウェイは、海外にも進出していったが、国際社会からは、欧米や日本の先端企業の製品を模倣した粗悪な製品を安売りしているとして冷ややかな眼で見られていた。
 しかし、低価格を武器にして、欧米の市場に徐々に食い込み、先行していた情報通信企業の大手、ノキヤやエリクソンとの競争に打ち勝ち、シェアを伸ばした。
 その結果、ノキヤやエリクソンの経営は窮地に陥った。未だに価格競争では圧倒的な強さを誇り、欧米や日本の企業は勝負にならない。
 さらにファーウェイの躍進を支えるのは、アフリカや南米各国への積極進出で、欧米や日本企業に大きく差をつけている。こうした国々ではいずれも情報通信の分野で活発な投資が行われ、爆発的な市場拡大が期待できる。
 ファーウェイは、こうして世界各国で事業を伸ばして中国を代表する国際企業となった。 

 ファーウェイの躍進を支えるのは、膨大な研究開発投資にあるとされている。
 毎年売上高の約14%、約1兆3500億円を研究開発(R&D)に投資し、世界14カ所に研究開発拠点を保有する。インテルやマイクロソフト、サムスンと肩を並べ、世界のトップクラスの研究開発投資額を誇る。
 毎年採用する約8千から1万人の従業員のうち約600人が博士号を、約5600人以上が修士号を持つなど人材の質も高いといわれている。
 世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)の発表によれば、国際特許(IP:International Patent)出願数は、2017年、ファーウェイ世界第一位だった。ちなみに2位がZTEである。
 ファーウェイは民間企業だが、任氏に軍歴があることもあり、欧米諸国の疑念は根深い。米国は「中国政府や人民解放軍と関係を持つファーウェイのような企業が潜在的な脅威になる」と指摘し、基幹的通信システムへ参入を阻んできた。
 中国では、政府によって命じられれば、国内企業や市民、組織は治安当局に協力と支援をする義務があると法律で定められている。ファーウェイのような国際企業であっても、政府に命じられれば、どんな要請にも全面的に従う義務がある。
 米国がファーウェイやZTEを警戒する根拠はこの法律の存在だ。

 孟氏について、米司法当局は過去11年間に少なくとも中国の旅券を4冊、香港の旅券を3冊使っていたと指摘。さらに香港の会社登記から、中国政府が海外に派遣する人向けに支給する旅券を孟氏が持っていたことが判明し、政府との関係を疑わせる要因の一つとなっている。
 ファーウェイの米国からの半導体輸入額はZTEの6倍で、インテルから7億ドル、クアルコムから18億ドルに達するという(12月7日 日本経済新聞)。米商務省は、ZTEと同様に米国の半導体の輸出を禁止する措置に踏み切るのかどうか、トランプ政権の対応が注目される。





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2019年1月30日

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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
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