“メディア・クローズアップ” 放送・通信・ICT・メディア・東京オリンピック最新情報 国際メディアサービスシステム研究所

国際会議・国際イベントのコンサルタント、国際放送センター(IBC)のシステム開発、メディア研究・調査と評論

news zero 迷走 有働由美子 ニュースキャスター失格 ニュースは「あさイチ」とは違う 報道ステーション ニュース23

2018年10月16日 16時44分24秒 | メディア

迷走! 有働由美子の「news zero」








「news zero」 有働由美子がメインキャスターに 村尾信尚氏は降板
 2018年10月1日、日本テレビの夜のニュース番組、「news zero」(毎週月~木曜23:00~、金曜23:30~)は、元NHKアナウンサーの有働由美子をメインキャスターに迎えて、キャスター陣も一新して、番組をリニューアルをした。
 これまで、メインキャスターを務めていた村尾信尚氏は降板し、ニュース番組では異色のキャスターを務めた女優、桐谷美玲や芥川賞作家の又吉直樹も降板した。
 筆者は、日本テレビのメインニュースである「news zero」は、テレビ朝日の「報道ステーション」、TBSの「ニュース23」、NHKの「ニュース7」と並んで、毎日のように見ていた。
 村尾信尚キャスターは、安保法制や森友加計問題、財務省セクハラ問題などの政治・社会問題で、批判精神を持ってコメントをしていたことを大いに評価したい。批判精神を持って現代社会と向き合う姿勢を失ったニュース番組は存在意義がない。
 また、桐谷美玲や又吉直樹が取材に出てリポートする積極的な演出も興味深かった。
 とりわけ桐谷美玲のリポートは、女優でありながら大健闘していると大いに評価していていたのに降板は残念である。

「news zero」  初週平均視聴率8.7%、前週比1.3ポイント上昇
 10月1日放送の初回の視聴率は10.0%で2ケタ発進となったが、タモリと有働の対談を放送した翌日はそれを上回る10.4%を記録。以降も、7.9%、8.4%、6.6%と好調に推移。
 村尾信尚キャスターが担当していた9月第4週(24~28日)は、9月28日が24時5分開始とレギュラーより時間が大幅に繰り下がっての放送となったこともあり、週平均は7.4%だった。
 その結果、「news zero」の初週(10月1日~5日)の平均視聴率は8.7%となり、前週から1.3ポイント上昇した。
 視聴率はさまざな条件を加味して比較する必要があるので、「1.3ポイント」の差は、「前週並み」か「微増」程度と考えたほうが良いだろう。とても「出足快調」とは言えない。
 テレビ関係者の間からは、視聴者の好感度が高いNHKの人気女性アナウンサーをキャスターに起用したのだから、視聴率は「10%」の大台に乗ってもよかったのではという声も聞こえる。

有働由美子キャスター 「あさいち」の快進撃で大きな業績
 有働由美子キャスターは、神戸女学院大学を卒業し、NHKにアナウンサーとして入局、初任地は大坂放送局、近畿ブロックのニュース・番組を担当した。
 東京のNHK放送センターに移動し、最初に担当したニュースが『NHKニュースおはよう日本』の女性キャスター、若手女性アナウンサーの登竜門である。その後はスポーツキャスターとして活躍し、『サタデースポーツ』、『サンデースポーツ』のスポーツ・ニュースのキャスターや、オリンピックの中継を担当した。
 2001年から2003年までは、『NHK紅白歌合戦』で紅組司会を担当し、アナウンサーとして幅の広さを示し、親しみ安いキャラクターで視聴者からの評価も高かった。2006年4月からは、『スタジオパークからこんにちは』の司会を務め、情報番組の司会の腕を磨いた。
 2007年6月、アナウンサー職のままで、初めてアメリカ総局(ニューヨーク)へ特派員になって赴任。
 NHK放送センターに戻って、『あさイチ』のキャスターとなり、2010年3月から2018年3月まで8年間の長期に渡って番組を支えた。2012年 - 2015年の『NHK紅白歌合戦』に再び登場し、総合司会を務めた。。
 2018年3月31日、27年間在職したNHKを退職した。「一生、現場にいたい」という思いが強かったとされている。

 有働由美子キャスターのNHK時代の最大の業績は「あさイチ」のキャスターとして、番組を支え、朝の時間帯で、これまで圧倒的に強かった民放の「ワードショー」を抑えてトップクラスに躍り出ることに成功したことである。
 これまで、NHKは「おはよう日本」から「朝の連続テレビ小説」までは、民放に常時圧勝してきたが、「連続テレビ小説」が終わると、民放の「ワードショー」に視聴者を奪われてきた。
 
 「あさイチ」では、新しいキャスター、有働由美子を迎え、番組を一新し、40代女性から50台の女性にターゲットを据え、この世代の女性に関心のある料理や家事などの生活情報や、この世代の女性の悩みや不安、不満に答えるテーマを積極的に取り上げた。
 これまでのNHKではあまり取り上げない「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」などを特集した。
 また出産後に夫婦仲が冷え込む「産後クライシス」や「発達障害特集」は大きな反響を呼び、『「あさイチ」に「有働あり」』という評価が高まった。
 「あさイチ」は、午前8時15分からの第1部で、視聴率10%前後(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で同時間帯の民放を抑えて首位に立つ。
 番組対する視聴者の評価を高めた牽引車は間違いなく、有働由美子キャスターの他には追随できない稀なキャラクターだ。
 40代女性に寄り添った目線をしっかり打ち出してテーマを扱う姿勢が視聴者の共感を集めた。有働由美子キャスターのいやみのない飾らない率直な人柄も極めて重要だ。
 そして有働由美子キャスターを支える共演者にも恵まれた。
 「イノッチ」と呼ばれ人気の高い「V6」のメンバー、井ノ原快彦の存在は極めて大きい。有働由美子キャスターに増して、視聴者との共感力が高く、視聴者の思いをしっかり受け止めていた。
 直前に放送している「連続テレビ小説」への感想を言い合う「朝ドラ受け」も、キャスター陣の発案で、視聴者の共感を得たという。
 「あさイチ」のキャスターを8年間担当したことで、有働由美子キャスターも円熟味を増して、ますます大きく成長したのは間違いない。
 キャスターが番組を育て、番組がキャスターを育てる、ポジティブなスライラルが展開した格好の例である。

有働由美子はニュースキャスターの顔にはなれない
 情報番組の「あさイチ」のキャスターとして大成功したからといって、ニュース番組のキャスターとして成功するかどうかはまったく別次元である。

 ニュース番組は、政治、経済、社会、国際、科学、文化、あらゆる分野のニュースを処理しなければならない。
 とりわけ政治、経済、国際ニュースは、キャスターは見識と知見が問われる。
 安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権、とにかく展開が早く、構図は複雑だ。ミスリードはあってはならない。
 
 「news zero」のライバル、テレビ朝日の「報道ステーション」では、元共同通信編集局長の後藤憲謙次氏とテレビ朝日の富川悠太アナウンサーと徳永有美アナウンサーがキャスターを務め、TBSの「ニュース23」では、元朝日新聞の特別編集員の星 浩氏とフリーアナウンサーの雨宮塔子氏がキャスターを務める。
 後藤憲謙次氏も星 浩氏もジャーナリストとしての見識と知見は申し分ない。
 安倍政権に対して、「ものを言う」姿勢を堅持している。
 筆者は、批判精神にないニュース番組は存在意義がないと信じている。単に情報を右から左に伝えるメッセンジャーではない。

 「news zero」には、政治、経済、社会、国際問題の今に向き合う姿勢がまったく感じられない。
 ジャーナリスト、取材者として経験が少ない有働由美子キャスターにそれを求めるのは酷であろう。
 「news zero」」には、しっかりした見識と知見を示すことができる脇を固めるニュース・キャスターが不在だ。ニュース番組は、安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権にしっかり対峙して、初めてニュース番組となる。
 生活情報や「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」といったテーマを取り上げて視聴者の共感を得ればよい情報番組とは次元が違う。
 もう一人のキャスター、櫻井翔がニュースキャスターの役割を担うのも不可能だろう。
 「ワイドショー化」、「女性週刊誌化」した「news zero」はやがて視聴者から見放されるだろう。
 もっとも民放のワイドショーは、以前は芸能情報が中心だったが、最近は小池都政問題や森友加計問題、大蔵省セクハラ問題、日大アメフト問題など政治・社会問題に積極的に取り組んでいて、「第二のニュース情報番組」に成長している。


「news zero」    日本テレビ/Youtube

検証 第一週の「news zero」は?

▼ 10月1日(月)

 「news zero」の番組の冒頭で、番組タイトルはやめて、有働由美子キャスターのワンショットのコメントでいきなり始まる。「news zero」の番組の「顔」として有働由美子キャスターを視聴者に印象付けようとする演出である。
 櫻井翔キャスターと日本テレビ解説委員で国際部デスクの小野高弘氏。小野高弘氏は「NEWS ZERO」のレギラー解説者だ。
 メイン・ニュースは「ノーベル生理・医学賞を受賞した本庶佑氏」、次は「台風24号の影響で入場規制で交通に混乱」のニュース、続いてスポーツ・ニュース。そしてようやくニュースらしいニュースが登場、「内閣改造人事固まる」で国会記者会館から日本テレビ政治部の富田徹記者がリポートした。
 しかし、焦点の沖縄県知事選については、一言も触れていない。ニュース・バリューの判断がまったく欠落している。初回から大失態だろう。
 ちなみに、テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーべル賞本庶佑氏受賞」の他に、「“日本一周”を装い逃避行」、「与党総力戦に誤算 沖縄県知事選」、TBS「ニュース23」では、「玉城氏勝利 政権に動揺広がる」、「内閣改造予想」、「48日目 ついに逮捕 “逃走男”日本縦断中に記念撮影」、「貴乃花部屋消滅」などを取り上げている。
 ニュース番組は現代社会としっかり向き合わなければならない。「news zero」にはそれが欠落している。

▼ 10月2日(火)
 有働由美子キャスターは、冒頭の挨拶では、「そもそも内閣改造、興味ありますか」と視聴者に問いかける。まるで、TwitterなどのSNSの「のり」で、ニュースキャスターならもっと伝えるべきニュース情報があると思えるが?
 この日のゲスト・コメンテーターは筑波大学准教授で若手の科学者の落合陽一氏と日本テレビ解説委員の小野高弘氏。
 落合陽一氏は「草履履き」でスタジオに登場したが、筆者は、「草履」だろうが「サンダル」だろうが、「下駄」だろうが、靴を履いていたほうがマナーとして適切だとは思うが、余り本質的な問題ではない。要はニュース報道番組のコメンテーターとして内容のある納得できるコメントをしてもらえば良いと思っているが、それができたか、いささか疑問が残る。
 メインニュースは、「静岡で続く大停電」、続いて「内閣改造」、国会記者会館から富田徹記者がリポートした。
 ここで、有働由美子キャスターの的外れな発言が早くも飛び出す。
 「そもそも内閣改造とはなんでするんですか?」、これにはさすがに富田徹記者もため息が漏れた。ニュースは短時間に情報をきちんと分析をして伝える必要がある。余計な時間を使いたくない。
 肝心の「内閣改造」の分析はほとんどなく、スタジオのコメンテーターも情報性のあるコメントを言えない。
 挙句の果ては、「大河を観ると武将人気が出るように、現役政治家のドラマを作るとか」という視聴者のお便りを紹介し、スタジオで「雑談」する。そんな時間があるなら「内閣改造」に関する本筋の情報を伝えるべきだろう。早くも、「news zero」の弱点をさらけ出した。
 そして「内閣改造」は早々に切り上げて、「特別対談 名司会者の頭の中は? タモリ×有働由美子」というスペシャル企画を放送する。
 この企画の冒頭で、有働由美子キャスターは、「3月からフリーとなって10月からZEROにお邪魔しているわけで、自分にとっては大変大きな人生の転機だったですが、この機会にどうしてもお話を聞いておきたかった人がいます」とした。
 この日のニュースの重要なテーマは「内閣改造」、有働由美子キャスターの「人生の転機」はこの日のテーマではないと思うが、有働由美子キャスターはどう考えていますか?
 「タモリ×有働由美子」のような企画は、ニュース担当者は「ヒマネタ」と呼んでいることを有働由美子キャスターも知っていると思うが如何ですか?
 ちなみに「ニュース23」では「森友文書改ざん問題 自殺職員の父が語る無念」の特集、「報道ステーション」は「『日本縦断中』の逃走を支えたものは?」を放送した。

▼ 10月3日(水)
 この日のゲストは、義足モデルとして世界で活躍してるGIMOKO氏、ニュース番組としては異色のゲスト起用で、大いに評価したい。
 トップ・ニュースは、「また台風が列島に接近 “計画運休”平日実施も」、続いて「ドウなの? 計画運休どうすればよくなる」についてスタジオでGIMOKO氏、れギラー・コメンテーターの小野高弘氏と、視聴者の声も含めて議論した。しかし、議論にに深まりはなく、情報性の薄い内容となった。議論するなら、専門性と知見を持った出演者を起用して欲しい。GIMOKO氏に“計画運休”を議論させるのは酷なような気もするが? 視聴者の共感を掲げるのはいいが、なにやら庶民の「井戸端会議」の感が否めない。
 続いて「貴ノ岩側 日馬富士に3000万円請求」や「新宿歌舞伎町 女性飛び降り巻き添え」、そして「zero culture ハロウィーン 今年は不気味グルメに注目」が登場する。ほとんど、「ワイドショー」で、とてもニュース番組とは筆者は思えない。
 NHK 「ニュース7」は、「“計画運休”平日実施」に続いて、「“全員野球内閣”本格始動」や「インドネシア地震津波」、テレビ朝日「報道ステーション」は、「中国人気女優脱税」や「トランプ大統領脱税疑惑」、TBSは「インドネシア大津波の謎」を取り上げていた。
 「「news zero」のニュースバリューに対する見識を疑う。

▼ 10月4日(木)
 今日は、日本テレビ金曜ロードSHOWプロデューサーの谷生俊美氏、トランジェンダーを公表し、日本テレビには男性として入社し現在は女性として活躍している個性的なゲストを起用した。
 谷生俊美氏は記者としてカイロ支局長も経験し、LGBT映画に向き合っているという。
 トップ・ニュースは「台風15号 沖縄に接近中」、続いての特集は「自転車で逃走48日間 カメラに顔を隠す 大胆な要求も」である。
 しかし、この「自転車で逃走48日間」のニュースは、「報道ステーション」でも「ニュース23」でも10月1日にすでに同様の内容を伝えている。二日遅れのニュースに鮮度はまったくない。
 谷生俊美氏は「容疑者は性犯罪の容疑者であることは本当に“怖い”ことだ」と指摘したが、肝心の事件の問題点の掘り下げは一切なく、印象論で終わってしまった。
 次は「元貴乃花親方 今後を語る」、「がんの免疫療法で注意 トラブル多発」、有働由美子キャスターは、癌で亡くなった母親の免疫療法についての体験を元に視聴者に注意を促した。この辺は、「あさイチ」で養った感性が発揮できたと感じた。
 「がんの免疫療法」の企画は、この週で唯一の「news zero」の独自企画だ。こうしたファクトを足で取材する地道な努力が「news zero」に課せられる。
 そして、ゲストコメンテーター用の「都がLGBT差別禁止条例案」のニュースを取り上げた。「この条例をきっかけにして市民のこの問題に対する意識が広まり、この問題を考えていくようになって欲しい」と発言した。
 レギラー解説者の小野高弘キャスターは、「これは2年後の東京五輪・パラリンピックを見据えたもので、オリンピック憲章ではいかなる差別もあってはならないとされ、その中には性別、性的志向も含まれている」と指摘した。
 これに対して、有働由美子キャスターもコメントしなければならないと思うが、「視聴者の皆さん、いろんなお考えがると思うのでお便りをお寄せください」とし、何もキャスターとしてコメントせずこの話題を終えてしまった。
 有働由美子キャスターは、「ジャーナリスト」を標ぼうするなら、ニュース番組のキャスターとしての識見と知見を示すべきだろう。
 「zero culture なぜ?タイ映画が異例のヒット!」、このコーナーは熱心に力を入れている。
 これに対して、NHK 「ニュース7」は、「会計検査院 五輪関連経費8000億円支出 五輪開催経費総額は3兆円に」や「トヨタ。ソフトバンク提携」、TBS「ニュース23」は「加計学園理事長会見へ」を取り上げた。
 「五輪開催経費3兆円」はこの日の最大のニュースだろう。


▼  10月5日(金)
 有働由美子キャスターは、「zeroは北海道を西日本豪雨から3か月の被災地を全力を上げて支えます」と冒頭で語った。
 そしてこの日のゲストは、北海道出身の人気俳優、大泉洋氏を登場させた。
 「私たちができること 地震1か月 北海道応援」というタイトルを掲げ、初めて有働由美子キャスターが、現地取材を行った。
 リポートの冒頭は、札幌の繁華街、夜のネオンが輝くすすき野、「このネオンがないと これがすすきのだなぁ」というコメントで始まる。焼き鳥屋に入って地震の影響を店長から聞く。
 そして被害の大きかった厚真町を取材し、収穫直前の稲の刈り取りもできず、未だに避難生活をしている住民を取材、「まずは厚真のコメを食べて欲しい」という農家の声に、遠く離れた場所で、「今、私たちができることは」として「① あつまの米を食べること」とした。あまりにもシンプルすぎて唖然である。わざわざ取材にいくなら、厚真町の災害復興の問題点をしっかり取材して検証して欲しい。
 続いて、被災住宅の片づけを行っているボランティアを取材、「② 土日を利用してボランティアへ」とした。その発想に納得がいかない。
 酪農農家の影響を取材し、停電で搾乳ができず、乳房炎にかかった牛がかなりの頭数になり、牛乳の出荷量は大幅に減っているという窮状を伝えた。
 そして、「③ 乳製品を飲む・食べる」。これで視聴者の共感が得られると思っているのだろうか。
 続いて、「さっぽろオータムフェスト2018」を取材し、北海道の食のフェスティバルを紹介した。会場には、北海道の海産物や厚真町のジンギスカンなど各地の名物グルメが集まる。
 礼文町のうにの踊り焼きに舌鼓を打って、「これまた濃厚な…」、いつのまにかグルメ・リポート番組になっていた。
 リポートのメッセージは「食べて応援」、余りにもお粗末はメッセージだ。地震の影響で落ち込んだ北海道の再興策にいかに取り組むか、国や北海道は何をすべきなのかを伝えようとするジャーナリストの視点が欠落している。
 続いて、西日本豪雨から3か月の被災地、広島・水尻地区を取材した。被災者の一家を訪れ、未だに物置を改装した手作りの家に住んでいる状況を伝えた。「今、私たちができることは」として「① 被災地の現状を知る」とした。その後、訪れた広島・竹原市の藤井酒造では、浸水被害を受けた築250年の蔵で、ようやく仕込みが始まる。「今、私たちができることは」として「② 買い物・観光」とした。
 いささか、「今更」という感が強い企画で、新鮮味はまったくないし、共感も最早ない。
 ちなみにNHK「ニュース7」は、「大停電で171人救急搬送 死者も」というスクープし、「築地市場あす最後の営業 日本の台所 活気に満ちた83年」という企画を放送した。テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーベル平和賞決定」のニュースを速報した。受賞したのは戦時下の性暴力と戦っている二人で、この内、イラク人女性のナディア・ムラード氏、クルド人でヤジディ教徒、過去に過激派組織、イスラム国に拉致され性暴力を受けた経験を持ち、その経験を伝えながら人身売買の撲滅を訴えてきた。もう一人は、医師のデニ・ムクエベ氏は、コンゴ民主共和国で性暴力被害にあった女性を治療し続けている。
 続いて、「五輪開催経費3兆円に」を取り上げ、さらに「麻生大臣の“強気”」、森友学園問題で自殺した近畿財務局職員の父親の告発に対し、麻生氏は「財務省に対応は間違っていなかった」としたニュースを伝えた。週末企画、「金曜特集」は、築地で引退か 寿司職人の苦悩」を伝えた。「ZERO」と違ってグルメ企画ではない、ニュース報道になっている。
 TBSの「ニュース23」では、トップ・ニュースに「原因は海水? 京成線運休に」というタイトルで、東京と成田空港を結ぶ京成電鉄が朝から全線に渡ってストップ、複数の送電線から火が出たためで、出火の原因は台風によって吹き付けられた海水とみられているとした。台風による塩害の脅威を指摘した大きなニュースである。
 「ノーベル平和賞決定」や「佐川氏は極めて有能」という麻生大臣発言などを放送した。
 「都がLGBT差別禁止条例案」を取り上げて、谷生俊美氏をゲスト起用した「NEWS ZERO」が、なぜ「ノーベル平和賞」を無視するのか、ジャーナリストとしての感性を疑う。森友加計問題、五輪開催経費問題、築地市場移転はニュースではないのか。

▼ 10月8日(月) 振替休日 (二週目を一日だけ追加)
 毎週月曜日は、櫻井翔キャスターと有働由美子キャスターが2人で番組を始める。
この日のメイン・ニュースは「築地市場移転」、「news zeroではいろんな方の視点で見ていきたい」とした。
まずは「三連休の天気 コロコロ変化 花火大会で事故 台風の影響か」のニュースを取り上げ、「ホワイトタイガーに襲われ40歳の男性飼育員が死亡」、「日本新 大迫傑 “半端ない”走りの原動力」と続く。
 そして「築地市場 83年の歴史に幕 競りストップ4日間で影響は?」、今日のメイン企画である。「いろんな方の視点」というから、これまで取り上げられていない新たな視点での取材を期待した。結果はまったく期待外れ、何度も、他局のリポートで見たい内容の「焼き直し」で、鮮度はまったくない。
最初に10月7日、夜明け前の環状二号線を通って築地市場から豊洲市場に向かうターレの列、すでに何度も放送された光景だ。続いて築地市場の歴史、これも何回もすでに見せられた。
 築地市場の移転とともに店をたたむ決断をした女性を取材、これも何度も見せられた。
 次は、移転に伴い4日間の空白の間に、築地市場から鮮魚を仕入れていた鮮魚店を取材、産地直送の航空便に頼っているとした。
 場外市場を訪れ、観光客や「場外市場は移転しない」とPRしている様子を取材したが全く鮮度はない。
 続いて豊洲市場の紹介にうつり、豊洲市場は築地市場とは違って、「閉鎖型」で空調で10.5度に保たれていることなどを伝えた。マグロの競りも衛生面に配慮して見学客はデッキの上からに見ることになるとした。同じ内容はすでに取り上げられている。
豊洲市場の屋上緑化を取材したが、この話題は、リポートの中で唯一、新しい情報だった。しかし、余り本論とは関係ない。
 築地市場の跡地利用や再開発についても説明したが、新しい情報はない。
 結果、新しい情報は、屋上緑化だけだった。「いろんな方の視点で見ていきたい」という狙いはなんだったのだろうか。新しさは何もないリポートで残念としかいいようがない。
 この次に、「落札直後“裁断”は作者のメッセージ」、ニュースそのものが極めて面白い。
 「zero culture」は、「22歳の“日本人監督”が快挙」、映画の話題だ。
 これに対し、「報道ステーション」は、「加計学園理事長会見」、安倍総理と加計学園理事長が会ったのかどうかどのように説明するか注目の会見だった。「記録を調べてもらったが事務局の方にもないといっている」としたが、疑念は晴れない。国際的に注目されている「ICPO総裁行方不明事件」も取り上げた。そして「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」、北朝鮮は核実験場に査察団を招くことを明らかにし、二回目の米朝首脳会談は早期に開く見通しになった。しかし、日程、場所の合意には至らなったとされる。さらに日朝首脳会談の可能性も開かれているとした。
 「ニュース23」でも、「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」の内容や、「加計学園理事長会見」、「ICPO総裁行方不明事件」を取り上げている。
 「news zero」はまったく素通りをしているが、祭日にも関わらず重要なニュースがあったのである。これでは、「news zero」と見ても、世の中の重要な動きはまったくわからない。さらに加計学園関連のニュースはすべて無視していて、これでは安倍政権への「忖度」ニュース番組だ。
 それでもニュースの看板を掲げるのだろうか?

 
「news zero」はいつまで続くのか?
 「news zero」は、「あさイチ」のような生活情報番組ではない。ニュース報道番組である。ニュース報道番組であるなら、ジャーナリズムとして見識と知見を示すべきだ。
 批判精神を現代社会と向き合い姿勢を失ったニュース報道番組は存在意義はない。
 鮮度のない情報を並べて、視聴者への共感だけを掲げる姿勢は納得できない。
 ニュースは「事実」を徹底して追求し、「事実」に基づいてメッセージを発信しなければならない。

 一方で、これまでのニュース番組では登場してこなかった個性的で多様なゲストが起用されているのは評価ができる。多様な意見を吸収する努力もニュース報道番組には求められるからだ。
 「news zero」がこうした戦略をとった背景には、既存のニュース報道番組とは差別化して、若者や女性など新たな視聴者層を掘り起こしたいという狙いが見える。
 とにかく、新聞を読まないしテレビニュースも見ない若者が激増しているのである。
 確かに難解な政治、経済、国際ニュースを視聴者に分かりやすく、共感を持って視聴できるようにするいう発想はニュース報道番組にとって重要な課題の一つだろう。
「news zero」は「zeroは皆さんと一緒に考えるニュース番組です」というコンセプトを掲げている。
 しかし、実態は、難解な政治、経済、国際ニュースは避けて通って、分かりやすニュースばかり取り上げるという安直な姿勢が目につく。現代社会に正面から向き合いのがニュース報道番組だろう。

 有働由美子キャスターの「news zero」は果たして視聴者に支持されるのか、一体いつまで続くのか、ジャーナリズムとは何かという視点で、大いに注目したい。





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!
大坂なおみの初優勝を台無しにしたセリーナ 全米オープンテニス決勝戦
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心 豊洲市場開場




「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 「3兆円」!の衝撃
“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか





2018年10月12日
Copyright (C) 2018 IMSSR






******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************

コメント

東京オリンピック 豊洲市場 築地市場移転 環状2号線 五輪道路 BRT 選手村 陸の孤島 交通渋滞

2018年10月15日 06時51分13秒 | 東京オリンピック

“陸の孤島” 東京五輪施設
“頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都都心



 ★ 10月13日、小池都知事は、環状二号線の築地市場内の未完成区間に暫定迂回道路を整備し、予定より1週間前倒して11月4日(日)の午後2時に、環状二号線の豊洲市場-新大橋通汐先橋付近間の2.8キロメートルを暫定開通させることを明らかにした。これで、とりあえず環状二号線は、豊洲から晴海、築地大橋までは完成した環状二号線、築地大橋から汐先橋交差点付近までは暫定迂回道路、汐先橋から東新橋一丁目(日比谷神社前)までは地上暫定道路、築地虎ノ門トンネルに入って虎ノ門までの区間が走行可能になった。しかし、暫定迂回道は片側一車線、新大橋通りや第一京浜の交差点の信号を通過しなければならないため、渋滞発生が懸念される。


暫定開通区間拡大図 東京都


豊洲市場開場 交通渋滞で混乱 築地市場解体開始
 「日本の台所」として食生活を支えた築地市場は10月6日、83年の歴史に幕を閉じ、11日豊洲市場が築地に代わる中央卸売市場として誕生した。
 環状二号線がまだ開通していないため交通渋滞が予想されていたが、懸念通り、勝どき橋を渡る晴海通りは激しい交通渋滞に見舞われた。豊洲市場では、晴海通りは渋滞しているので迂回道路を通るようにと指導したそうが、豊洲市場からはかなり離れた佃通りやレインボー・ブリッジしか、都心部と結ぶ道路はない。市場関係者も「われわれが危惧していた以上にひどい」と話していて、仲卸からも「お客さんが時間通りに来られない」、「配達が間に合わない」などの声が聞かれたという。(FNN ニュース 10月11日)
 市場関係者は大渋滞に悩まされる毎日が、当分続きそうだ。
 築地市場は解体工事が10月11日から始まり、2020東京五輪・パラリンピックで選手や大会関係者を輸送するバスや乗用車約2700台分を駐車するための車両基地として整備される。そして、五輪大会開催の最大の懸案課題である五輪選手村や国際放送センター(IBC)や競技施設と都心部を結ぶ環状2号線の未開通分の工事が始まる。






環状二号線築地大橋を通るターレ 築地大橋は開通していないが、東京都は特別措置としてターレを豊洲市場へ移動させた  出典 ANNニュース(10月6日)


「配達が間に合わない!渋滞が課題」 FNNプライム(10月11日)


閉場した築地市場水産物部 10月10日


閉場した築地市場水産物部 10月10日



豊洲市場 10月11日に開場 交通渋滞で混乱必死
 2018年7月31、小池百合子都知事は、築地市場(中央区)から移転を目指す豊洲市場(江東区)について、汚染された地下水対策のために東京都が実施していた追加の安全対策工事が終了し、「安心、安全な市場として開場する条件を整えられた」と述べ、「安全・安心宣言」を行った。
 そして、翌8月1日、東京都は農林水産相に豊洲市場の開設認可申請を行い、9月10日に、農林水産相は中央卸売市場として開設することを認可した。
 これで約30年にわたる議論を経た市場移転が正式に決まった。
 豊洲市場は10月11日に開場する予定である。
  豊洲の汚染問題では、舛添要一知事(当時)が汚染対策終了後の2014年に「安全宣言」をしたが、小池知事が移転を凍結。汚染対策の柱とされた建物の下の「盛り土」がないことが分かり、地下水から環境基準値を超えるベンゼンも検出されたとして安全性に疑念が噴出した。
 東京都は有害物質が揮発して建物に入るのを防ぐために地下の床をコンクリートで覆い、地下水位を下げるポンプの増設をするなどの追加工事を実施した。
 7月30日、都の専門家会議は、追加工事が完了し、安全性について、「科学的な安全は確保されている」との見解を示した。これを受けての小池都知事の「安全宣言」である。
 今回の追加工事費は38億円。汚染対策費は総額で897億円に上っている。今後もコンクリート補修や地下水くみ上げ設備の維持に年間数億円かかるという。
 豊洲の汚染問題のもたらしたツケは大きく、東京都民への重い負担が残された。
 豊洲市場移転と築地市場の再開発は、2020東京五輪をターゲットに完成させる予定だったが、その目論見は外れた。
 臨海部と都心を結ぶ環状二号線は、2020東京大会開催の交通渋滞対策の切り札として、臨海部と都心を結ぶ「信号のないスムーズな輸送」を目指して建設が進められていたが、築地市場の跡地に建設される地下部分の工事が間に合わず、「暫定開通」に追い込まれた。
 選手村とメイン会場となる新国立競技場は、大勢の選手や大会関係者が移動するメインの動線だ。その輸送ルートとして環状二号線を整備する計画だった。
 そして選手村の後方には、豊洲市場がある。市場関係者の車両と五輪関係者の車両で収拾がつかなくなる懸念がある。
 2020東京大会の最大の課題は、酷暑対策とならんで交通渋滞対策であろう。
 このままでは、首都圏は交通渋滞で麻痺状態になるの必死の様相だ。


環状二号線と築地市場






出典 環状二号線事業概要 東京都第一工事建設事務所

五輪開催時 環状2号線、地下は断念 暫定道路で対応
 2018年6月7日、東京都は豊洲市場への移転が大幅にずれ込んだことで、2020年東京五輪・パラリンピックで五輪のメイン会場となる新国立競技場など都心と選手村やMPC(国際メディアセンター)などを結ぶ「五輪道路」として計画されていた環状2号線を、都は地下トンネル(片側2車線)の開通を断念し、地上につくる片側1車線の暫定道路で五輪を迎えることを決めた。
 暫定迂回道路は、豊洲市場開場やく1か月後の11月4日に、第一段階として浜離宮恩賜庭園に面した築地川沿いの道路を利用し、臨海部から都心に向かう「上り」の一方通行で開通させる。そして築地市場の青果門を入り口として築地市場跡地を横切り、築地川沿いの暫定迂回道路に接続させる「下り」の片側1車線道路を開通させる。
 しかし、暫定迂回道路は片側1車線でカーブもきつく、スムーズな車両の通行が確保できず、往来する大量の車両で激しい交通渋滞が巻き起こるのは必至で、輸送力は大幅に低下するのは明らかである。豊洲市場の大量の車両の交通渋滞に対応する応急対策である。
 第二段階は、2019年末までに、築地市場の青果門を入り口として築地市場跡を横切る地上仮設道路を、環状二号線の本線建設エリアの両側に片側1車線で建設し、築地大橋とほぼ直線で結ぶ。第一段階の暫定迂回道路に比べて、きついカーブはなくなり直線の道路となるが、片側1車線であり、渋滞は避けられない。2020東京大会関連車両の応急措置だ。
 地上仮設道路の大量の車両が殺到しする汐先橋交差点は、新大橋通や首都高速の出入り口があり、激しい渋滞が予想されるだろう。また東新橋交差点は第一京浜、環状二号線虎ノ門トンネルの出入り口があり、激しい渋滞は必至である
 東京都では築地市場移転後の跡地に建設する地下トンネルの出入り口が完成して、虎ノ門まで至る環状二号線が片側2車線で全線正式に開通するのは、2022年になるとした。

 環状2号線は、JR秋葉原駅周辺(千代田区)と江東区有明地区を結ぶ全長約14キロで、築地市場の敷地を通る新橋―豊洲間(3.4キロメートル)が未開通となっている。未開通区間は築地市場部分の約500メートルで、他の区間は完成している。
 環状2号線は、虎ノ門・汐留の区間の1.25キロメートルは片側2車線の地下トンネルは工事が完成し、この内、虎ノ門・新橋の区間はすでに供用が始まっている。地下トンネルは汐留まで続き、築地市場移転後の跡地に建設する地下トンネルの出入り口で地上に出る。そして高架道路となり築地大橋で隅田川を渡り、勝どき陸橋や黎明大橋を経て晴海地区に入り、豊洲大橋を渡って豊洲市場に至る。さらに東雲運河を渡って終点の有明地区に入り、臨海道路に接続する。2020東京大会時にはオリンピック優先道路が設定される予定で、選手や大会関係者、メディア関係者などを輸送する大量の車両が往来する臨海部と都心を結ぶ大動脈である。また10月11日に開場する豊洲市場と都心部を結ぶ幹線でもある。

 築地市場跡地を通る地下トンネルはの建設は、工期がかかる開削工法で地下部分を建設することや、換気装置の設置、地盤工事などで、最低3年は必要とされていた。勿論、築地市場移転が完了しなければ工事は始められない。その築地市場移転が土壌汚染問題で約2年遅れて、「2018年10月11日」が決まり、五輪大会開催までのトンネル開通は不可能となった。片側2車線の全線の開通は、五輪大会開催後の2022年とした。
 東京都は、その間は、「暫定道路」を整備して、暫定開通させることを決めた。しかし、車両交通台数は極めて限定されることから、激しい渋滞が予想される。東京都では、「交通制御などのソフト対策」を取り入れ、信号連動を行なったり、臨海部への一般車の流入を抑えて交通量の削減を図るなどの対策の検討を進めている。しかし、いずれも渋滞対策の決め手を欠くだろう。

 虎ノ門から晴海までの約3キロメートルの区間だけで約1260億円、1キロメートル当たりの建設費がなんと400億円ととされている巨額の経費を投じて、「五輪道路」として整備していた環状2号線、肝心な築地市場区間の工事ができず、「五輪道路」の大動脈にという目論見は、事実上、“破綻”した。
 築地市場移転延期で、また一つ、東京五輪準備に大きな“誤算”が生まれている。





第一段階(2018年11月10日ごろ)供用開始 東京都建設局

一足先に環状二号線豊洲市場-築地市場間を走行体験
 2018年10月10日、翌日の豊洲市場開場を前に、移転作業があわただしく行われている中に、築地市場を訪れた。10月10日の午後6時までの期間限定で、豊洲市場への移転作業の便宜をはかるため、築地市場-豊洲市場間に大型バスを使用してシャトル便が運航されていた。コースは、豊洲市場から工事は完成したがまだ未開通部分の環状二号線にはいり、晴海、勝どきを経て、築地大橋を渡り、急カーブで築地川沿いに建設された暫定迂回道路を通り築地市場に至る。
 豊洲から築地大橋を渡るまでは片側二車線か三車線の臨海部と都心部を結ぶ大動脈に相応しい道路が完成していた。この日はシャトルバスだけでなく、市場関係者の車両の通行も、移転作業の便宜をはかり特別に許可され、資材を積んだトラックやVANなどが頻繁に往来し、4日間の最終日を迎え移転作業の最後の追い込みに入っていた。
 環状二号線の豊洲市場-築地市場間は10月11日からは、一部を除いて閉鎖され通行はできない。東京都では、臨時措置として、豊洲市場から環状二号線月島警察署交差点までの上り線を渋滞解消のために通行可能とした。しかし、都心部までは通行できず、月島警察署交差点で右折し、結局、晴海通りに合流しなければならない。渋滞解消の効果はほとんど望めない。



豊洲市場から環状二号線に入った付近 片側3車線


勝どき高架橋


隅田川を渡る築地大橋


築地大橋を渡ると急カーブして暫定迂回道路に


環状二号線は築地市場で行き止まり(築地市場側から築地大橋を見る)


築地川沿いに建設された暫定迂回道路


築地市場と築地大橋、臨海部



“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都都心
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技場や選手村、IBC/MPCが集中する東京ベイエリアと都心部を結ぶ道路や鉄道などの交通機関の輸送力不足の懸念が深刻化しそうだ。このままでは、観客や選手、報道関係者、大会運営関係者の移動で、道路は大渋滞、バスや乗用車はまったく動かず、「りんかい線」や「ゆきかもめ」は超満員でホームに人が溢れるという光景が繰り広げられるのは必至の様相である。
 築地市場の豊洲市場移転を巡って、謎の“地下空間”など次々に問題が噴出し、豊洲市場移転は、頓挫寸前である。仮に予定通り豊洲市場移転が実施されても、築地市場の跡地に建設予定の“五輪道路”と呼ばれる環状2号線の建設が2020年五輪開催に間に合うかどうか微妙になってきた。環状2号線は、都心と五輪の競技場や選手村、IBC/MPCなどが集中する東京ベイエリアを結ぶ重要な交通路なのである。
 開催まであと4年を切った2020年東京オリンピック・パラリンピック、新国立競技場や五輪エンブレムの迷走に続き、膨れ上がった開催経費問題の深刻化、それに追い打ちをかけているのが豊洲市場移転に端を発したこの交通機関問題である。
 東京五輪招致が決まったIOC総会で、安倍首相を始め、猪瀬元東京都知事や五輪招致関係者は、高らかに五輪運営のマネージメント力の能力を世界各国に訴えたがが、あれは一体何だったのだろうか。







2020年東京オリンピック・パラリンピック招致ファイル  招致委員会


2020年東京オリンピックの輸送計画について 東京オリンピック・パラリンピック招致本部


交通機関の整備が貧弱な東京臨海部
 2020年東京オリンピック・パラリンピック招致にあたって、招致委員会では、競技場や選手村、IBC/MPCの施設を「東京ベイエリア」と名付け、まだまだ開発途上で用地が容易に確保可能な臨海部に集中させる戦略をとった。東京都では埋め立て地の造成は着々と進め、東京湾臨海部には、約7000haと東京区部の約12%を占める広大な土地が生まれた。その大半がまだ利用されていない空き地だった。



東京ベイエリア21 東京臨海地域の持つ潜在力 東京都都市整備局

しかし、東京湾臨海部は、まだ開発途上、公共交通機関や道路の整備が十分になされていない。東京都は、かつて都市博覧会の開催で、一気に開発に弾みをつけることを目論んだが、開催は中止、そしてバブル経済も崩壊し、これまで交通インフラ整備はなかなか進まなかった。1988年に月島、豊洲、辰巳、新木場を結ぶ東京メトロ有楽町線が開通、2000年に月島や勝どき駅を設置した都営地下鉄大江戸線が完成、2002年に「りんかい線」が新木場-大崎間で全通、2006年には「ゆりかもめ」が新橋-豊洲間が全通し、交通インフラ整備の整備は徐々に進んでいる。 現存する主な公共交通機関は、東京臨海高速鉄道「りんかい線」と地下鉄都営大江戸線、東京メトロ有楽町線、東京臨海新交通臨海線「ゆりかもめ」である
 東京ベイエリアの道路インフラの中核は、東京湾横断する大動脈、首都高速湾岸線である。一日の通行台数は全国の高速道路でNO1、約17万台(辰巳JCT 平成22年)で、乗用車、大型トラック、バスなどで常に渋滞する幹線道路だ。
 また臨海部の最南端、中央防波堤外側埋め立て地を通る東京港臨海道路がある。この臨海道路は、首都高速湾岸線(羽田空港線)から臨海トンネルを通って“海の森公園”に至り、さらに東京ゲートブリッジ、若狭海浜公園を通って、夢の島で首都高速湾岸線につながる。この二本の幹線道路は都心部と臨海部を結ぶルートではなく、基本的に都心部を迂回する湾岸バイパスである。
 2018年3月10日、首都高速晴海線(10号線)が開通し、晴海から湾岸線に接続する動脈が完成した。五輪大会開催期間は成田空港から選手村を結ぶルートとして期待されるが、通常時はほとんど通行量のない閑散とした路線だろう。
 しかし、首都高速晴海線(10号線)は、晴海が終点で、その後は、晴海通りに接続する。隅田川を渡って都心部の環状線に接続される計画はあるが、まだ具体化していない。相変わらず都心部と臨海部を結ぶアクセスは改善されないのである。
 東京ベイエリアと都心部を結ぶ幹線道路は、墨田川にかかる勝どき橋を通る晴海通りと佃大橋を通る佃大橋通り、そしてお台場経由のレインボーブリッジの3ルートしかない。 晴海通りは、通常でも膨大な通行台数でも渋滞の“名所”である。都心部と結ぶには隅田川や東京湾を渡らなければならいにがネックになっているのだ。そこで期待されているのが第4のルートの建設で、環状二号線の開通が期待を集めていたのである。
 まだまだ“陸の孤島”は解消されていない。


激しい交通渋滞 バスや乗用車はまったく動かない! 難問・都心部とベイエリアを結ぶ道路
 築地市場の豊洲市場移転問題の“混迷”が深刻化して、移転が今の計画通り行われるにしても東京五輪には間に合わない懸念ができた。さらに豊洲市場移転自体が白紙撤回される可能性も浮上している。
 築地市場の移転は、東京臨海部の交通インフラ整備と深くからんでいることを忘れてはならない。豊洲市場への移転は、東京ベイエリアで進められている選手村や競技場、IBC/MPCなど施設と都心を結ぶ交通インフラの“切り札”、環状2号線の建設に必須なのである。東京都が築地市場の移転に全力を挙げて推進してきた大きな理由に“東京五輪”があったのである。 


“頓挫”寸前 “五輪道路” 環状2号線
 環状2号線は、JR秋葉原駅近くから都心を半円状に進み、虎ノ門や新橋、汐留、築地市場を経由して、隅田川に架かる築地大橋を通り、晴海地区の選手村、豊洲市場、有明地区の競技会場、東京ビックサイトのIBC/MPCを結ぶ全長約14キロの都道、総工費は1790億円である。東京ベイエリアの五輪施設と都心部を結ぶ重要な交通インフラとされているため、“五輪道路”と呼ばれている。
 東京五輪のメインスタジアム、新国立競技場など都心部と選手村やIBC/MPC、臨海部の競技場とを結ぶ五輪開催の最重要路線である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致ファイルでは、「環状第2号線は、2020年までに完成し、オリンピックスタジアムパーク、選手村、IOCホテル間を結ぶ大動脈で、大会開催時には、オリンピック・レーンも設置することにより、移動時間を大幅に短縮させる。例えば、選手村からオリンピックスタジアムまでの所要時間は、15分短縮し、10分となる」としているのである。
 2014年3月、環状2号線の虎ノ門─新橋間(「新虎通り」、「マッカーサー道路」)が開通した。東京五輪組織委員会がある虎ノ門ビルの脇からトンネルで新橋に抜ける区間である。新橋から築地市場を経て豊洲までの区間(3・4キロ)はまだ未開通のまま残っている。
 環状2号線は、JR神田駅前の神田佐久間町から虎ノ門までは「外堀通り」と呼ばれているが、虎ノ門から臨海部に抜ける部分は通称「マッカーサー道路」と呼ばれている。
 終戦直後の1946年、戦災復興院が、神田佐久間町から新橋まで約9.2キロ、幅100メートルの道路として都市計画決定した。GHQが虎ノ門のアメリカ大使館から東京湾の竹芝桟橋までの軍用道路を要求したという説もあったことから、いつしか「マッカーサー道路」と呼ばれるようになった。  そして「マッカーサー道路」は“五輪道路”となった。
 10月11日に開場する豊洲市場も環状2号線沿いにある。
 環状2号線は、虎ノ門から地下トンネルで新橋、汐留を通過し、築地市場の敷地内の浜離宮恩賜庭園側に地下トンネルの出口を建設して地上に出る。そして高架道路にり、築地大橋で墨田川を渡り、黎明大橋、豊洲大橋を経て、有明で湾岸道路に接続させる計画である。道路の開通のためには、築地市場の移転が条件だ。有明から豊洲までの区間はすでに供用が始まっていて、隅田川の渡る築地大橋など豊洲から築地までの区間の工事はほぼ完成し共用開始を待つばかりである。また汐留から虎ノ門の区間も供用が始まっている。ネックは築地市場区間だけに絞られた。



環状2号線 ほぼ完成した墨田川にかかる築地大橋 東京都第一建設事務所


環状二号線事業概要 東京都第一工事建設事務所


2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国土交通省の取り組み 国土交通省

 しかし東京都の築地市場(中央区)の豊洲市場(江東区)への移転が延期となり、12月に予定されていた環状2号線の築地―豊洲間(約2・8キロ)の暫定開通が事実上不可能になった。2020年東京五輪・パラリンピックまでに全線開通する予定だったが、豊洲市場の盛り土を巡る問題も浮上し、間に合うかどうかはまったく不透明になった。
 こうした中で、東京都は築地市場区間を仮設の迂回道路を建設し、2016年12月にはなんとか環状2号線を全通させようとする方針を示している。仮設道路は片側1車線で、仮設道路の入り口で大渋滞が起きるのは必至であろう。 “五輪道路”のメインルートにするという目論見はもろくも崩れ去ろうとしている。
 環状2号線は、五輪開催時の“主要幹線道路”として、五輪関係者の車両だけを通行させる「オリンピック・レーン」を上り下りの2レーンを設置する計画である。もし築地市場移転が間に合わなくなり、仮設道路のままで五輪開催を迎えると、環状2号線は一般車両の通行ができなくなる。ほかの道路に迂回する一般車両で激しい渋滞がおきるだろう。
 東京ベイエリアと都心部を結ぶ幹線道路は、勝どき橋を渡る晴海通りとお台場経由のレインボーブリッジ、佃大橋を通る佃大橋通りの3ルートしかない。
 晴海通りは、通常でも膨大な通行台数でも渋滞の“名所”である。信号も多く、「オリンピック・レーン」などを設置するのは不可能だ。五輪開催時は、一般車両も増えるだろうから、それに五輪関係の車両がさらに加わったら、まったく動きがとれない状況が発生すると思われる。佃大橋通りも同様であろう。レインボーブリッジも上り下りに2レーンの「オリンピック・レーン」が設置される可能性ある。レインボーブリッジは残りの車線に一般車両が殺到し、激しい渋滞が起きるであろう。
 築地市場の移転問題がきっかになって、東京五輪の運営に一気に暗雲が立ち込めた。


公共交通機関の“切り札” BRT 風前の灯
 東京都では、環状2号線を利用して、都心から勝どきを経由して選手村、豊洲市場、国際展示場、豊洲に至る地域において、五輪開催時には五輪関係者の輸送力を確保し、五輪開催後は、通勤・通学・観光などの需要に対応するために、都心と臨海部とを結ぶBRTの整備を行う計画を具体化している。とりわけ五輪開催後の選手村再開発で誕生するニュータウンの住民の重要な交通インフラにする計画だ。
 BRTとは、「Bus Rapid Transit」の略で、連節バスやICカードシステムを導入し、道路改良等により路面電車と比較して遜色のない乗り心地と輸送力が実現可能だ。またバスを使用するので柔軟性兼ね備えた新しい都市交通システムである。


都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する基本計画 東京都都市整備局

BRTの輸送力は?
 BRTの表定速度は20km/h以上を目標として、定員130人の連節バスを使用、運行回数を増やして、将来的には一日10万人以上の輸送力の提供が可能である。
 新橋-勝どき、選手村、国際展示場、豊洲の4路線想定し、ピーク時輸送力(時間)は、新橋-勝どきで4000人以上、新橋-選手村で3000人~3999人、新橋-国際展示場で1000人~1999人、新橋-豊洲で999人以下の輸送力を想定し、1日の輸送力は10万人以上を確保する計画だ。
2019年には、勝どきシャトルと晴海・豊洲ルート、2020年五輪開催後に幹線ルート(国際展示場・東京テレポート)、そして選手村再開発後に、選手村シャトルを開設することで、最終的には合計4ルートとなる、運行本数(平日ピーク時/毎時)は、勝どきシャトルで、2019年には6本、五輪開催後は最短4分間隔で1日15便、選手村再開発後は、1日20便の運行を計画している。
る。
 しかし、環状2号線の状況によっては、運行計画は大幅に見直しをせざるを得ないと思われる。肝心の五輪開催期間にはあまり役に立たない懸念が生まれてきた。





都心と臨海副都心を結ぶBRTに関する基本計画 東京都都市整備局

選手村は“陸の孤島”?
  環状2号線が開通しないと、都心部と臨海部の道路は大渋滞になるだろう。また公共交通機関BRTの運行は“頓挫”する懸念も生まれている。運行は開始しても、大幅にサービス内容を低下せざるを得ない。
 一番の問題は、公共交通機関のない選手村エリアだ。
 晴海地区の埋め立て地に建設される選手村は、工事費約954億円を想定して、14~17階建ての22棟のマンション型の施設を建設する。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。整備計画は素晴らしい。
 五輪開催時は、選手村の選手や大会関係者は専用バスでの移動に頼らずを得ないので、BRT運行の“頓挫”の影響は少ないかもしれない。しかし、都心のアクセスの大動脈、環状2号線が円滑に通行できなければ影響は計り知れない。迂回ルートを使用すると臨海部の激しい交通渋滞に巻き込まれるだろう。
 五輪開催後は、選手村の施設は住宅として供給する計画で、住宅棟22棟、超高層住宅棟2棟、商業棟1棟を整備して、約6000戸のニュータウンに衣替えする。開発経費は、民間事業者の出資を促し、国や都の財政負担なしに整備する方針だ。
日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指すとしている
しかし、このニュータウンは、環状2号線が完成しないと“陸の孤島”になる恐れが大きい。路線バスでは激しい交通渋滞に見舞われて十分なサービスを維持できないだろう。悲惨なのは五輪開催後だ。

問題はさらに深刻 “陸の孤島”海の森公園 
 東京五輪のボート・カヌー競技場が整備される“海の森公園”は、ごみと建設残土で作られた中央防波堤内側の埋立地で、1230万トンのごみが高さ約30メートルにわたって積み上げられた“ごみ山”だった。
この土地を東京都は緑あふれる森林公園にして東京湾の玄関口にふさわしい臨海部のランドマークにしようとするのが“海の森”プロジェクトである。2007年工事はに2007年から始まった。広さ約88ヘクタール、日比谷公園の約5.5倍の広大なスペースに約48万本の木々が植えられる計画だ。
 この“海の森公園”の防波堤内の埋立地に挟まれた水路を締め切る形でボート・カヌー競技場施設を約491億円で整備する計画だ。
 しかし、この開催計画には、現状では大きな問題がある。選手や大会関係者、観客の輸送機関の整備である。
 “海の森公園”は、とにかく都心部から遠い。しかも公共交通機関がない。道路は江東区若洲と大田区城南島結ぶ東京港臨海道路とお台場経由で都心部に行東京港く臨海道路(青海縦貫線)しかない。東京港臨海道路は、首都高速臨海線(羽田空港線)から、 “海の森公園”を抜けて、東京ゲートブリッジを通り、若狭海浜公園経由で千葉臨海部につながる。臨海道路は、基本的に大田区や羽田空港、京浜地区から千葉臨海部に抜けるバイパスであり、都心部と“海の森公園”を結ぶ道路ではない。
 朝晩に集中する選手や大会関係者、観客などの輸送はどうするのだろうか?
 いずれにしてシャトルバスで対応する他ないと思われるが、激しい渋滞でスムーズな運行は確保できるのだろうか、“陸の孤島”問題は深刻である。
 


海の森水上競技場 出典 東京都五輪準備事務局

臨海部の公共交通機関の大動脈「りんかい線」
「りんかい線」は、大崎駅から新木場まで、全長12.2km、大井町、品川シーサード、天王洲アイル、東京テレポート、国際展示場、東雲の8駅がある東京臨海副都心の大動脈だ。
長さ20メートルの車両の10両編成、1両編成の定員は約1300人である。ピーク時には4分間隔で、1時間に最大15本程度、運転可能としている。現状では、ピーク時には1時間に11本、1日143本が運転されている。輸送能力は、1時間に最大1万9500人、1日で約20万人程度とされている。
しかし、沿線にはフジテレビや東京ビックサイト、商業施設や物流施設、工場などがあり、朝晩の通勤時間帯は既に相当混雑している。
有明テニスの森や有明BMXコース、有明体操競技場、有明アリーナ、お台場海浜公園、それに東京ビックサイトに設置されるIBC/MPCに行く利用客が多いだろう。
五輪開催時には、臨海部の主力交通機関になるだろう。




観光客に大人気 「ゆりかもめ」 輸送力には難点
「ゆりかもめ」は、新橋駅から豊洲駅まで、全長14.6km、お台場海浜公園、台場、国際展示場正面、有明テニスの森、市場前(豊洲市場)などの駅がある。
ピーク時には4分間隔で、1時間に最大15本の運行が可能で、1両編成の定員は300人~350人、輸送能力は1時間で最大約5250人程度、1日で約11万人程度とされている。
「ゆりかもめ」の沿線にはフジテレビや東京ビックサイト、有明テニスの森、お台場海浜公園、船の科学館など施設があり、土日・祝日は大勢の乗客で、車体のサイズが小さく、編成も短いので、車内はいつも満杯。地下を走る「りんかい線」とはちがって、高架の軌道を走るゆりかもめは臨海部が見渡せるので、観光客には圧倒的な人気だ。
五輪開催時にも、競技場を訪れる観客を始め、大会関係者やメディア関係者でホームは乗客であふれ、車内は満員で、いつ乗れるのかわからないような状況が発生する懸念が大きい。とりわけ乗客の集中する朝晩は深刻だ。
 「ゆりかもめ」は将来の輸送能力増強を見込んで、ホームの延長用に駅周辺のスペースに余裕を持たせてあり、線路の間に駅を伸ばすスペースを残している。現在6両編成を10両編成程度にすることは可能と見られている。それでも輸送力は不足して混雑緩和にはつながらない懸念がある。五輪競技場集中地域の主力輸送機関としては十分な輸送能力に欠くと思われる。






辰巳、夢の島のアクセスを確保 東京メトロ有楽町線
  有楽町線は、辰巳地区にあるオリンピック アクアティクスセンターや辰巳国際水江場、夢の島公園のアチェリー会場にアクセス可能な唯一の公共交通機関である。
 しかし、臨海副都心地区の有明エリアや晴海・豊洲エリアにとっては、距離があるため公共交通機関としての役割は果たさせない。

晴海エリアのアクセス 都営地下鉄大江戸線
 大江戸線は門前仲町、月島、勝どき、築地市場などに駅があるが、沿線に東京五輪の施設はなく、選手村も海を隔てた隣の土地で、駅から遠く、東京五輪開催時の輸送力には貢献しないだろう。
 2016年9月28日、森組織委員会会長は、突然、築地市場の豊洲市場移転後に生まれる跡地に乗用車約4000台とバス約1000台、合計約5000台の五輪関係車両の駐車場を設けるとテレビ番組で発言し波紋を呼んでいる。仮に駐車場が設置された場合には、大江戸線有力な交通機関になると思われる。





 次世代へのレガシー(未来への遺産)を目指した臨海副都心開発事業の目玉も十分な交通インフラが整備されていない“陸の孤島”になっては、負のレガシー(負の遺産)の象徴になるだろう。
リオデジャネイロ五輪の準備で、日本のメディアは五輪施設の整備の遅れや大会運営の不備、治安の悪さ、政治混乱などネガティブ・チェックを頻繁に報道した。リオデジャネイロの市街地からオリンピックパークを結ぶ鉄道の完成が開会式直前になったことも批判の対象だった。しかし、開幕直前に完成すればまだ上々だろう。振り返って東京五輪の準備状況を冷静に見てみよう。原因はともあれ五輪の交通インフラの要である環状2号線はそもそも五輪開催までに完成しない恐れが深刻化しているのである。リオデジャネイロ五輪を批判する資格はない。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと4年を切った。まさに正念場である。




東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!



“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下)膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”

北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか







国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年9月28日 初稿 
Copyright (C) 2016 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************


コメント

5G 第5世代移動通信システム 最新情報 東京オリンピック 世界に先駆けて実現へ 5G実証実験 5GNR

2018年10月14日 14時54分47秒 | 5G

5G・第5世代移動通信
“世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ




5Gのプレサービス 2019年夏にも開始 総務省が公開ヒアリング
 総務省は2018年10月3日、5G(第5世代移動通信システム)に関する公開ヒアリングを開き、楽天モバイルネットワークを含めた携帯電話事業者4社が5Gの事業展開や利用イメージなどをプレゼンした。日本では2020年の東京オリンピック・パラリンピックが始まる前までに5Gの商用化を目指しており、2019年夏にもプレサービスが始まる見通しだ。
 NTTドコモは「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」が開催される2019年9月に合わせて、「都市部から地方まで、5Gの需要のあるところから、「プレサービス」を始める計画を明らかにした。
 プレサービスはNTTドコモはラグビーワールドカップが開幕する2019年9月に「プレサービス」を始め、2020年春から「商用サービス」をスタートする予定だ。
 プレサービスのイメージについて、「料金は徴収しない。端末は私どもから貸出するが、その台数は限られる」と説明した。本格的な商用サービスの開始は2020年春とした。



 KDDI は2019年、一部エリアから5Gを開始し、高繊細映像配信、スタジアムソリューション、、ドローン警備などを開始する計画だ。本格展開を始めるのは2020年で、「4Gとの連携による本格展開」とし、大容量のモバイル・サービス、リモート・オフイス、遠隔操作などで実用化するとしている。そして、「2021年には5Gコアを導入し、ネットワークスライシングやMEC(Multi-access Edge Computing)を活用した様々なサービスを提供していくとした。
 さらに5Gの意義の1つとして「地域課題解決と地方創生」を挙げ、そのエリア展開について「首都圏だけではなく、多くの地域に整備する」と地方へのサービス展開に力を入れるとした。

 ソフトバンクも5Gのプレサービスを2019年に始める計画で、スタジアムの臨場感を360度のVR(仮想現実)で視聴体験できる5Gイベントを2019年夏以降に開催するとしている。本格サービスが開始される2020年には、多数接続を可能にするIoT(NR)でインフラの監視や超低遅延を生かした自動車や建設機械の遠隔操作サービスを実現したいとしている。

 2019年10月携帯電話事業に参入する楽天は、移動体通信のターゲットを、インターネットサービス、フィンテック(金融)、そして通信事業の、3つの事業を上げている。
 楽天では、基地局の開設を前倒して、4Gネットワークの構築を実施する計画で、展開エリアは東名阪を中心に、2019年10月のサービス開始での自社エリアは、東京23区、名古屋市、大阪市が中心になるとしている。その後は全国の都市圏、周辺エリアに拡大していく。自社エリア以外はローミングでカバーし、通信は全国で利用できるようにする。
 楽天では、4Gネットワークの構築するにあたって、5Gの仮想化アーキテクチャーを先取りした“5G Ready”システムで構築しているため、無線ユニットの追加とネットワークのソフトウエアのアップグレードだけで4Gから5Gへの素早い移行が実現可能としている。移行に際しては、アンテナなど末端の設備は5Gで新たにハードウェアを用意する必要はあるが、その基地局の選定は、すでに5Gサービスを前提に作業を進めている。
 こうしたネットワーク構成を採用した楽天は「2020年から5Gサービスを開始したい」と表明。獲得を希望する周波数幅(28GHz帯で800MHz幅など)が実現すれば、下り10Gbpsのサービスを提供できるとした。
 またEコマースなどで、ラストワンマイルの配送を無人のロボットカーが行う研究も行っているとし、5Gと連携させたいとしている。
 楽天は、2019年10月開始予定の4Gサービスの料金について、サービス開始の「数カ月前」に発表する予定としている。

 公開ヒアリングは、携帯電話事業者の4社が一堂に集まったが、5Gの利活用の紹介では、建設機械の遠隔操作や遠隔地医療、スマート農業、スマート工場、スマート・シティなど実証実験でトライヤルしたものばかりで、新たな利活用の展開イメージは示されず、新鮮味に欠けた。なぜ5Gサービスが必要なのか、現在、主流になり始めている4G(LTE-Advanced)では十分でではないのか、依然として説得力に欠いている。またユーザーにとっては最も関心のある5Gサービスの料金設定についても、なるべく安価にしたいと曖昧な表現に留まり、明らかにされなかった。

 携帯電話事業者の他に、5G移動通信システムの導入に名乗りを上げている事業者が22社ある。
 その多くがケーブルテレビ事業者で、ケーブルテレビ富山、秋田ケーブルテレビ、イッツコム、阪神ケーブルエンジニアリング、愛媛CATV、中海テレビ放送など14社と日本ケーブルテレビ連盟である。その他にパナソニックシステムソリューションやBWAジャパン、地域ワイヤレスジャパン、CCJなど7社の通信サービス事業者が名乗りを上げていて、5Gの周波数割り当ては難航すると思われる。
 総務省は、5Gサービスを開始する事業者に対しての周波数割り当てを2018年度末に実施するとしている。


出典 総務省 5G利用に関する調査結果の概要

韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定
 2018年6月15日、韓国科学技術情報通信部は、2019年3月の5G商用サービス開始に向けて、携帯電話事業者に対し、5G周波数オークションを実施した。
 今回のオークションは、5Gで活用する二つの周波数帯(3.5GHzと28GHz)で実施し、世界初の「5G周波数オークション」として注目を浴びた。
 具体的な周波数範囲は3.5GHz帯が3420.0~3700.0 MHzの280MHz幅、28GHz帯が26500.0~28900.0 MHzの2400MHz幅、合計で2680MHz幅である。
 周波数の割当方法はオークションで、入札単位とブロック数は3.5GHz帯が1ブロックあたり10MHz幅で28ブロック、28GHz帯が1ブロックあたり100MHz幅で24ブロックである。
 1社あたり最大でそれぞれ10ブロックまで取得を認めており、3.5GHz帯が最大100MHz幅、28GHz帯が最大1000MHz幅まで取得できる。
 3.5GHz帯および28GHz帯ともに2018年12月1日より有効になり、有効期限は3.5GHz帯が2028年1月30日まで、28GHz帯が2023年1月30日までと設定されている。
 最低入札額合計は3.5GHz帯が2兆6,544億ウォン(約2,686億円)、28GHz帯が6,216億ウォン(約629億円)で、合計3兆2,760億ウォンとした。その結果、オークションの合計落札価格は3兆6,183億ウォンで決着した。

 3社の落札内容は、3.5GHz帯では、SKテレコムは100MHz幅で1兆2,185億ウォン(約1218億円)、KTは100MHz幅で9,680憶ウォン(約968億円)、LG U+は80MHz幅で8,095億ウォン(809億円)だった。
 28GHz帯では、SKテレコムは800MHz幅で2,073億ウォン(約207億円)、KTは800MHz幅で2,078憶ウォン(約207億円)、LG U+は800MHz幅、2,072億ウォン(約207億円)となった。
 
 今回のオークションでは1MHz幅当たりの最低落札価格はこれまでと比べて最も安く設定された。特にモバイルで初めて利用される高周波数帯の28GHz帯については、現時点では使い勝手も含めて不確実性が大きい点が考慮され、利用期間を5年と短く設定し、価格は大幅に引き下げた低い水準で設定された。
 3社の中で、SKテレコムは帯域幅の拡張ができる3.5GHz帯にこだわり、他社より高い応札価格で落札した。周波数は12月1日から利用が可能となる。キャリア3社は8月までに機器事業者を選定し、秋にはネットワーク構築に着手する
 一方、商用サービス開始で提供される5Gサービスの利活用についてはまだ具体的な内容があまり明らかになっていない。韓国では国を挙げて、「世界初」の低遅延・大容量・多数接続の5Gサービス開始を目指して総力を挙げている。
 2018年2月の平昌冬季五輪では5Gサービスを世界に先駆けて実施し、世界各国に技術力をアピールした。






4K8K映像、高速走行移動体、トラック隊列走行、スタジアム映像サービス、遠隔地医療 
5G実証試験の成果を報告

 2018年3月27日と28日、総務省は「5G国際シンポジウム2018」を開催し、2017年度に実施した、「5G総合実証試験」の成果の報告し、5Gの技術開発情報やさまざまな分野での利活用の事例を海外の5G開発関係者に発信した。
 「5G総合実証試験」は、総務省とNTT、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信事業者や国際電気通信基礎技術研究所、情報通信研究機構が参加し、超高速・大容量通信、高速移動体(電車・自動車)の通信、低遅延通信、同時多数接続などをテーマに実施した。


5G国際シンポジウム2018


5G総合実証試験の成果の展示

 NTTドコモ は、「PCやタブレットやスマホなどのユーザー端末で5Gbps、1基地局あたり10Gbps超の超高速通信の実現」をターゲットにして、東京スカイツリータウンと和歌山県で、4.5GHz帯および28GHz帯を使用した5G実証実験に取り組んだ。
東京スカイツリータウンには、「5Gトライヤルサイト」が設置され、4K/360度VR映像や8K映像をライブで伝送し、5Gの技術評価をした。またこのトライヤルサイトでは、「人口密集地」の屋外環境において最大10.2Gbps通信速度を実現した。
 和歌山県では、都市部の総合病院と山間部の診療所を高速通信ネットワークで結び、4K高精細映像を活用した遠隔診療サービスの実証試験を実施した。医師が診断する際に患者の患部を映し出す4K接写カメラ映像や超音波映像診断装置(エコー)・MRIなどの医療機器の映像をリアルタイムに伝送することで、遠隔診療サービスの高度化に効果が上げられるとした。

 NTTは、「高速移動時における2Gbpsの高速通信の実現」をサービス・モデルに、28GHz帯を使用し、電車・高速バスなどを想定した時速90キロで移動する高速移動体に対し4K高精細映像を5G通信で伝送する実証実験を実施した。
 富士スピードウェイ(静岡県)では、時速90キロで走行する自動車に対する伝送試験ではで最大2.24Gbpsを達成、東武鉄道日光線(栃木県)では、時速90キロで走行する電車に対する伝送試験では最大2.90Gbpsを達成した。
2020年実現を目指している自動運転自動車には、超高速・低遅延の5G通信のバックボーンは不可欠とされている。

 KDDIと国際電気通信基礎技術研究所は、2018年3月、沖縄・那覇市内にある「沖縄セルラースタジアム那覇」で、28GHz帯を使用した5G通信を利用して、4K映像のリアルタイム映像を観客席に設置した50台のタブレット端末に対して配信する実験を実施した。
KDDIは、東京・台場のシンポジウム会場でも同様のシステムのデモンストレーションを行い、25台のタブレット端末にそれぞれ異なる4K映像を同時配信した。
 スポーツの試合や音楽コンサートなどのイベントで、観客のタブレットやスマートフォンに、多地点に設置されたカメラで撮影した選手やアーティストの高精細映像をリアルタイムで配信し、観客が自由に視点を選んでイベントを楽しむサービス・モデルを想定している。平昌冬季五輪でもフィギアスケートなどで、POV(Point of view)サービスとしてすでに実現され、東京オリンピックでも同様のサービスが行われるのは確実だろう。
実証実験で使用されたタブレット端末はサムスン電子製で、同社製の5Gモデムを内蔵しており、最大で約3Gbpsの高速通信が可能とされている。
 平昌冬季五輪は、サムスンは5G対応タブレット端末の試作機約1000台を提供したが、今回KDDIが公開した端末はそれと同等機種だという。5G対応のタブレット端末が日本で公開されるのはこれが初めてで、しかもサムスン電子製。
 5Gタブレットの開発では、日本は韓国に後れをとった。




KDDIの5Gタブレットの展示

『Sharing our Future』技術解説 NTTdocomo

 ソフトバンクは、「トラックの隊列走行 車両の遠隔監視・遠隔操作」をサービス・モデルにして、「1ms(無線区間)での低遅延通信の実現」の実証実験を行った。
 時速50kmから90kmで走行中のトラックと5G実験基地局間で、4.7GHz帯を使用し5G通信の実験を実施し、無線区間(片道)の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に成功した。
 トラックの隊列走行実験では、後続車両に搭載されたカメラで撮影した4K映像を、28GHz帯を使用した5G車両間通信により先頭車両にリアルタイムで伝送する実験も行った。
 車両間だけでなく。基地局を経由した4.7GHz帯を使用して、4K映像のリアルタイム伝送実験も行った。
先頭車両のモニターで、低遅延で鮮明な4K映像を見ることができたとし、トラックやバスなどの遠隔監視や遠隔制御などでの利活用が期待される。
 今後は5G移動通信の「超高速」、「大容量」、「低遅延」のメリットを活かし、トラックの隊列走行で、先頭車両だけに運転手を配置して後続車両を無人自動運転にするなどの利活用モデルの実用化に向けて検証や評価を行なっていきたいとしている。

 実証実験を統括して5GMFの三瓶技術委員長は、「実証実験の初年度としては成果を上げたと思う。2020年、5G商用化を実現するためには、2018年度が重要な年となる」と総括した。

5Gの必要性の根拠を示せなかった実証実験
 今回の実証実験の各グループの発表を聞いて、筆者は、なぜ5Gが必要なのか、4GLTEで十分なのではないか、大きな疑問が沸いてきた。
 東京スカーイツリーの「5Gトライヤルサイト」では、4K8K映像の送信、スタジアムでのタブレットに向けての4K配信、トラック隊列走行でも4K映像のやりとり、遠隔地医療システム、5Gの実証実験というと必ず「4K8Kの高繊細映像」の伝送が登場する。
 5Gは移動通信サービスであり、5Gのユーザーは、タブレットやスマートフォンなどの移動体の端末で、大画面ではなく小さな画面で映像や画像を見るというサービス・モデルである。タブレットやスマートフォンの小画面で、HDと4Kの映像を見比べても、画面に顔を近づけてよく見ない限り優位差は感じられない。HDと4Kの画質の優位差が顕著に表れるのは50インチ以上の液晶テレビである。さらに8Kとなるとその威力はパブリック・ビューイングの大スクリーンにならないと発揮できない。
 なぜ、HD映像では不足なのか、なぜ4Kにしなければならないのか、理解に苦しむ。タブレットやスマートフォンのユーザーはHD以上の高画質を求めているのだろうか。
 スタジアムのイベントでのスマートフォンへの映像配信やトラックの隊列走行の管理映像、テレビ会議には4Kは果たして必要なのだろうか。
 HD映像でサービスを実施するなら4KLTEで十分で、膨大な新たな設備投資経費が必要な5Gは不要だ。
 遠隔地医療での利活用では4Kの高繊細映像のリアルタイム伝送が威力を発揮するということは理解できる。しかし、なぜ光ファーバーを利用しないのか。日本のほぼ100%の地域には光ファーバー網の設置が終わっている。伝送路の実証実験をするより、遠隔地医療サービスのシステム構築に力を注ぐ方が重要だろう。 
 「1ms以下」の低遅延についても、タブレットやスマートフォンのユーザー対してはほとんど意味がない。多少の遅延が生じても映像や画像を見るにはまったく支障はないだろう。
 その一方でIot時代の急速な進展で、ヒトを介さないモノ同士の通信量は、今後急速拡大すると予想されている。Iotを駆使した“スマートハウス”の実現なども想定される。またAIロボットやAI自動車は大容量のビックデータを処理しなければならなくなる。こうしたICT時代には5Gネットワークの基盤整備は必須となる。今回の実証実験で、5Gサービス実現で最重要となるIotデバイスの多数同時接続に向けた実証実験がないのは不満感が残る。
 5Gの実証実験は、4G(LTE-Advanced)では実現不可能で5Gを使用しなければならい利活用サービス・モデルを提示する必要がある。それができなければ、なぜ5Gが必要なのかについて国民の理解は得られないだろう。


出典 総務省

“2020年5G商用化の実現”に暗雲 5Gはオーバースペック
 5Gサービスの商用化を実現するためには、4G(LTE-Advanced)では不可能な新たな魅力的な利活用のサービス・モデルを提示できるかどうかにかかっている。
 今の日本で移動体通信の大半を使用しているは1億台を超えるとスマートフォンのユーザーである。
 しかし、こうしたユーザーの大半は4G(LTE-Advanced)で十分満足していて、これ以上の高スペックで高価な5Gに関心は示さないと思われる。
 幅広い市民への5Gの普及拡大は、ほぼ絶望的だという懸念が生じる。
 日本の一般の家庭や企業に対しては、光ファーバー回線がほぼ100%整備されていて、いつでも高速通信サービスが利用可能だ。光ファーバー回線が十分に普及していない米国やアジア各国では、5Gネットワークは大きな意味があるかもしれないが、光ファーバー網が整備されている日本では5Gサービスはあまり意味がない。国民の支持も得られないだろう。 
 さらに5Gに割り当てられる周波数帯域も重要である。
 今回の「5G総合実証実験」では、4.5Mbps帯域と28Mbps帯域が割り当てられた。4.5Mbps帯域を利用すると、雨や霧、建物や構造物などの障害物があっても電波はある程度回り込んで伝わり、広範囲に行き渡りるが伝送速度は上がらない。また使用可能な帯域幅も狭く、大容量の通信を行うには条件は良くない。これに対して28Mbps帯域では、伝送速度は上がるが、電波の直進性が強く、障害物があると減衰し、電波は広範囲に及ばない。使用可能な帯域幅は幅広く確保することが可能なので大容量の通信にはむいている。それぞれ一長一短なのである。
 こうした周波数の特性をクリヤーするには、膨大な数のアクセスポイントをどう設置するか、新しいネットワークシステムや5G対応機器の開発をどうすすめていくかが肝要で、5Gサービスの実現には相当なハードルが待ち構えている。5G設備投資の負担と収益性のはざまで通信企業各社は解決しなければならない難問が課せられている。

 国を挙げて取り組んでいる2020年5Gサービスの商用化、5Gのユニバーサル・サービスの実現には暗雲が立ち込めている。
 残された時間は後2年、5Gまさに正念場を迎えている。



NTTドコモの5G無線装置 13.2Gbpsの通信速度を実現している


5G総合実証試験  出典 総務省報道資料 2017年5月16日


5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP
 2017年12月21日、「3GPP TSG RAN Plenary」は、5G NR標準仕様の初版の策定が完了し、技術仕様を公表した。
 今回策定されたのは、5G NRをLTEと連携させて実現するNSA(Non-StandAlone)と呼ばれる機能を規定した。既存の4G(LTE)ネットワーク構成の中に5GNAネットワークのエリア(EPC Evolved Packet Core)を構築して、ユーザーデータは4G(LTE)と5GNAを連携させ処理し、通信制御は4G(LTE)側のコントロールチャンネルで処理する。NSA(Non-Standalone)と呼ぶ5GNRネットワーク構成を規定した。
 新たな無線方式の5GNRを、高度化した4G(LTE)と連携させて一体的に動作させることで5Gサービスを実現させた。
 これを受けて、同日、世界の主要5G移動通信キャリヤー各社は、早ければ2019年に開始を予定している5Gサービスの大規模トライアルや商用展開に向けて、5G NRの開発を本格的に開始すると共同発表を行った。
 3GPPは、これで5G標準化の「フェーズⅠ」の策定を終えて、引き続きSA(tandalone)方式の策定に入り、2018年6月には「フェーズⅡ」を策定し、「5G New Radio」の標準化を完了するとしている。
 日本では情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会技術検討作業班が、これまでNB-IoTやLTE-Mの技術条件の検討などを進めてきたが、12月22日に開かれた第4回会合から、「5G New Radio」を受けて、5Gの技術条件の検討を本格化させた。
 同作業班は今年5月に取りまとめる報告書をもとに、夏頃までに技術的条件を策定し、これに基づいて総務省は、焦点の5G向けの新周波数を2018年度末までに割り当てる方針である。
 2018年は、2020年の5G商用サービス実現に向けて重要な年となる。





出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料


5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP


平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か?
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?




第五世代移動通信5Gとは何か



第5世代移動通信システム国際ワークショップ2015 2015年11月6日 幕張メッセ
ITU、日米欧中韓の推進組織の代表が集まった *米国はビデオ参加

 「G」という言葉の意味は、英語の「Generation(世代)」の頭文字。1Gは第1世代、2Gは第2世代、3Gは第3世代、4Gは第4世代、そして次世代の通信規格、5Gは、第5世代となる。
 1Gはアナログ方式の通信規格、2Gはデジタル方式になってメールやネットの利用に対応した規格。さらに高速化された3Gでは動画サービスが開始され、iPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレットが本格的に登場し、“モバイル時代”の幕開け、そして、さらに高機能化したiPhone5やNexus 5などのモバイル端末の爆発的普及を支えた4G、そして、すでに、その次世代の5Gが“胎動”している。
 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界に先駆けて、現在の1000倍、10Gbps 以上の通信速度という第5世代移動通信システム (5G)の実現をめざし、 “オールジャパン”での取組みが強力に推進されている。


出典 2020年代に向けたワイヤレス関連の戦略 総務省


出典 情報通信技術分科会


出典 一般社団法人電波産業会[ARIB]

急増するトラヒック(通信量) 進化した移動通信システム
 iPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレッットの爆発的な普及で、移動通信へのトラヒック(通信量)は、急増している。2014年3月には671.7Gbps(月間平均 総務省調査)という膨大なトラフィックが記録されている。移動通信へのトラヒック(通信量)は、この5年で、10倍、これからの5年でさらに10倍、この5年で10倍、2020年までには1000倍になると言われている。
 2011年から2012年にかけて立て続けに起こった通信障害は記憶に新しい。急増したiPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレッットの通信量を処理できず、“つながらない”をというトラブルが日本全国で多発した。膨大な数の移動端末が、ネットワークに“つなぎっぱなし”になることが原因だったという。
 また新しいサービスモデルの登場も、トラヒック(通信量)の急増を加速させる。
 最近、注目を浴びているウエアブル端末、2015年4月、Apple Watchが発売されて、ブームは一気に加速している。2020年には、1億台以上普及するという予想もあり、今後、爆発的に普及しそうである。ウエアブル端末とは、身につけて持ち歩くことができる情報端末、時計や眼鏡などの製品に利用される。
 もう一つは、「モノとモノつなぐ通信」である。
 “M2M”(Machine to Machine)と呼ばれる人間が介在しないで、機器同士がコミュニケーションをして動作するシステムである。また“IoT” (Internet of Things)は、「モノのインターネット」と呼ばれ、社会のあらゆる"モノ"が通信でつながるシステムだ。
 こうした「モノとモノつなぐ通信」が、交通、医療、企業、公共施設、学校、家庭など社会のあらゆる分野で急速に普及している。
 こうした通信量の増大に対応するためには、移動通信の超高速化と利用周波数帯の拡大を早急に実現しなければならない。2020年、東京オリンピック・パラリンピックがターゲットである。キーワードは“ICTオリンピック”だ。


出典 一般社団法人電波産業会[ARIB]


出典 情報通信技術分科会

■ 1G
 第1世代移動通信システムは、初めて実用化されたアナログ方式の携帯電話に採用されている通信システム。これによって携帯電話が急速に普及した。
*周波数割当  800MHz帯(下り最大75Mbps)

■ 2G
 第2世代移動通信システムは、1993年に、第1世代移動通信システムの次に登場したデジタル方式の移動通信システム。デジタル化された。デジタル方式の携帯電話では、音声通話だけでなく、電子メール、インターネットが利用可能になった。
 NTTドコモでは、“mova”(ムーバ)と名付けてサービスを提供。
*周波数割当  1.5GHz帯(下り最大112.5Mbps)

■ 3G
 第3世代移動通信システムは、国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-2000」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システム。
第2世代 (2G) では互換性のない方式の移動通信システムが各国、各地域別に展開されていたため、第3世代では世界的にローミングが可能となるように統一規格の策定を目指した。
IMT-2000規格として1999年に勧告された地上系無線方式にはIMT-DS、IMT-MC、IMT-TC、IMT-SC、IMT-FTの5種類の規格が規定され、通信速度として144kbps(高速移動時)、384kbps(低速移動時)、2Mbps(静止時)が定められた。
 動画の送受信が可能になり、各種のサービスが提供され、携帯端末でも“マルチメディア時代”の幕開けとなった。

 Appleは3G対応モデルの“iPhone 3G”を発売
 ソフトバンクが“iPhone 3G”を日本で発売し、“iPhone”ブームの起爆剤になる。
 “iPhone 4S”からは、auも日本国内で発売。
 3G対応モデルのGoogle NexusSが発売開始。
 Amazonは3G対モデル、“Kindle Touch”を発売開始。
 Androidを搭載した携帯端末やタブレット用が次々と登場
 NTTドコモでは、“Foma”(フォーマ)と名付けてサービスを提供。
* 周波数割当  1.7GHz帯(下り最大150Mbps)  2GHz帯 (下り最大112.5Mbps)


■ LTE(Long Term Evolution)
 第3世代(3G)の移動通信システムをさらに高速化した規格。第4世代(4G)への橋渡しという意味で「3.9G」(第3.9世代)と呼ばれている。一般的には、LTEも「4G」という表現を使っている場合が多い。
 LTEで、通信速度が下りで最高100Mbps以上、上りで最高50Mbps以上となり、家庭向けのブロードバンド回線にほぼ匹敵する高速なデータ通信が可能となった。
従来と異なりすべての通信をパケット通信として処理するため、音声通話もデジタルデータに変換されてパケット通信に統合される。
 LTEで利用する周波数帯域や使用する帯域幅は3Gと共通にして、従来の通信サービスからのスムースな移行を目指した。
 AppleはLTE対応モデルの“iPhone 5”を発売、“iPhone”人気はさらに過熱した。
 “iPhone 5S”からはNTTも日本国内で発売開始。
 LTE対応のGoogle “Nexus5”が発売開始。“Nexus 7”は2万円を切る価格で発売され、モバイル端末の普及は さらに加速。
* 周波数割当  2.5G帯  (下り最大100Mbps~150Mbps)


■ 4G(IMT-Advanced)
  第4世代移動通信システムは、IMT-Advancedは、国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-Advanced」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システム。「LTE-Advanced」と「WiMAX 2」の2方式を採用した。
 100Mbp、200Mbps、1Gといった光ファイバーに対抗する通信速度を目指して技術開発が行われた。
 LTE-AdvancedはLTE(Long Term Evolution)をさらに発展させものである。
 WiMAX2(IEEE 802.16m)は、WiMAXをさらに発展させたもので、最高通信速度が100Mbpsから1Gbps程度に達する。
 通信スピードが超高速化されるが、第3世代移動通信システムで使用している 2GHz帯 より高い周波数帯を用いる予定であるため、サービスエリアが狭くなることや屋内への電波が届きにくくなることから、サービス時には第3世代移動通信システムと併用して利用するモデルが現実的である。4K映像や映画、ゲームなどの高繊細映像の携帯端末への配信が可能になった。
“iPhone”の登場と爆発的な普及を支えている移動通信システムである。
* 周波数割当  3~5G帯  (下り最大100Mbps~1Gbps)


出典 NTTドコモのホームページ


出典 2020電波政策懇談会

■ 5G
  総務省では、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界に先駆けて、10Gbps 以上の通信速度という第5世代移動通信システム (5G)の実現をめざし、ロードマップの大枠を示し、産学官が連携して“オールジャパン”での取組みを強力に推進している。
 5Gは通信速度で現行の100倍に当たる10Gbpsの通信速度の実現を目指しており、スマートフォンなどの移動端末に、高精細な映像や大容量の情報を超高速で伝送できるようになる。 更に重要なポイントは、ICT社会の進展であらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)が急速に普及し、通信量が爆発的に増加することである。自動車や鉄道、ロボット、工場の生産設備、社会の隅々に設置されるセンサーなどの通信を瞬時に遅延なく処理しなければならない。
 5Gの開発とサービスの実現は、スマートフォンの延長線上にある移動端末だけの通信基盤はなく、Internet of Things(IoT)などICT社会の進展を支える情報通信基盤として必須になってきた。
 総務省では、2017年度から5Gの各種の技術を統合した実証実験を開始し、 5Gのネットワークシステムやサービスモデルのイメージを作り上げていきながら、国際標準化を推進するとしている。そして、5Gサービスを実現するために重要な周波数帯の確保を行っていく計画だ。商用化開始のターゲットは勿論2020年東京オリンピック・パラリンピックである。
 2014年9月30日には、5G開発の推進組織、「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF)が発足した。発会式には、総務省幹部を始め、NTTドコモやKDDI、シャープ、ソニーなどの民間企業各社や研究所、大学関係者などが参列し、このプロジェクトへの意気込みを国内外に示した。


出典 電波政策ビジョン懇談会 総務省

焦点 5Gの国際標準化の主導権争い ハードルの高い要求水準

■ 5GMFを立ち上げた日本
 日本では、2014年9月30日、総務省は「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF The Fifth Generation Mobile Communications Promotion Forum)を設立し、産官学のオールジャパン体制で5Gの技術開発や標準化に取り組んでいる。通信関連の企業74社や専門家14人で構成されている。
 これまでにまとめられている5Gのコンセプトは、MEITISの要求水準とほぼ同様の内容である。

▼ 通話エリアあたりで現状の1000倍のトラフィックを処理する大容量化
 (システム容量=ユーザー数×通信速度)
▼ 現状の10倍程度、ピーク時で10Gbps程度の高速通信
 (ピーク速度を10倍)
  *「上り」は10Gbps、「下り」は20Gbpsを目標(ITU会合合意)
▼ 感触通信やAR(拡張現実)、M2Mといった、タイムラグが大きな影響を与える技術に対応する1ms以下の低遅延
 (遅延10分の1)
▼ リニアや新幹線など交通機関で高速で移動中の通信を可能にする
 (移動性 500km/h)
▼ 大規模イベントや災害発生直後といった大量の通信トラフィックが集中する事態に対応しうる多数の端末との同時接続
 (接続機器数100倍)
▼ 電池切れを気にせずインフラ管理などに設置・利用可能は省電力化
 (消費電力2~3分の1)
▼ 情報通信基盤として幅広く普及しやすい価格水準
 (低価格化)

 こうした要求水準をどのように実現するかは、標準化作業が終わっていないので定まっていない部分が多いが、当面の間、6GHz以下の低SHF帯(マイクロ波)を使ってLTE/LTE-Advancedと互換性を持ちながらサービスを開始していきながら、6GHz超の帯域を使って5Gサービスの本格化する方向を検討している。
 あわせてMEITISと同様に2020年に商業化を開始するというロードマップも公表し、技術的な開発や制度の整備を行うとしている。
 ターゲットは、2020年東京オリンピック・パラリンピックである。




出典 総務省



世界各国の5Gの技術開発・標準化の推進体制は?


出典 情報通信技術分科会

■ 3GPP(3rd Generation Partnership Project)
 3GPPとは、第3世代(3G)移動体通信システムの標準化プロジェクト。また、同プロジェクトによる移動通信システムの標準規格。
1998年12月、アメリカのT1(現ATIS)、ヨーロッパのETSI、日本の電波産業会(ARIB)や情報通信技術委員会(TTC)、韓国のTTAといった通信標準化団体が基になって結成され、後に中国のCWTS(現CCSA)も加わっている。
 3GPPは、NTTドコモやEricssonが推進していた日欧方式のW-CDMAを標準規格としていたが、1999年のQUALCOMM社とEricsson社の合意を受けて、QUALCOMM社のcdma2000方式も取り込んだ標準規格を最終的に採用した。
 ITU(国際通信連合)は、3GPPの標準規格を参照して、第三世代移動通信(3G)の国際標準「IMT-2000」を策定した。
 3GPPでは、2016年3月をめどに「リリース13」を確定し、LTEの高度化に向けて、無線LANとLTEを1つのネットワークとすることでアクセス機能を強化したり、遅延時間の低減、消費電力のさらなる削減、水平方向に加えて垂直方向までカバー領域を広げるマルチアンテナ技術などの技術規格を定めるとしている。「リリース13」では5Gにつなげる重要な基本コンセプトが定められる。
 引き続き「リリース14」の策定を開始し、5Gの技術要件のアウトラインを固め、2018年末までには詳細な技術要件を定めた「リリース/15」をまとめ5Gの標準化をする予定である。「リリース/15」では、6GHz未満の周波数帯域を利用した標準規格、「フェーズ1」と6GHz以上の高い周波数向けの「フェーズ2」(2019年に決定)に分けられる予定だ。


出典 2020電波政策懇談会

■ 5GPPP
 5GPPP( The 5G Infrastructure Public Private Partnership)は、2013年に欧州委員会(EC:European Commission)が、第5世代(5G)携帯電話ネットワークの実現に向けて発足させたコンソーシーアムである。 2015年、METISはその役割を終えて解散し、欧州員会が設立した“5GPPP” (5G Public-Private Partnership Association)に合流した。
通信関連企業やSMEsや研究機関が加盟し、次世代の通信基盤となる5Gのコンセプトや技術開発、標準化を推進する。
 欧州が情報通信の分野でリーダーシップを担うという戦略が込められている。

*5GPPPの掲げる要求水準
・2010 年時と比較して1000 倍の通信容量
・2010 年時と比較してエネルギー消費量を10分の1に
・サービス製作平均時間を90 時間から90 分に
・データ送受信停止時間(“zero perceived”)が感じられないような安全で信頼できるインターネット・サービスを提供
・70億人以上が利用する7 兆デバイス以上が接続する無線通信リンクの濃密な展開促進
・誰でもどこでもアクセス可能なユニバーサルで低価格なサービス
・Internet of Things(IoT)のプラットフォーム




出典 5GPPP

ロードマップでは、2014 年と2015 年に共同研究開発、2015 年の世界無線通信会議(W RC)で周波数割当の準備、2016 年頃から標準化活動開始、2019 年のW RC で周波数割当などの標準化決定、そして、2020 年の商用開始としている。


出典 5GPPP

5Gの最大の難関は周波数帯と帯域確保

■ 3G・LTEサービスの周波数帯
 従来の、3GやLTEのネットワークでは700~2GHzの周波数帯が主に使われていた。
これらの周波数帯のうち、低周波の700~900MHz帯、電波が遠くに届き、建物などの構造物を回りこみやすい上に、コンクリートなどを通りに抜ける特性があり、携帯電話などの移動通信には最適とされ、「プラチナバンド」と呼ばれ、移動通信事業者間で争奪戦が繰り広げられてきた。
 テレビ地上波のアナログ放送終了に伴い、「プラチナバンド」の700MHz帯と900MHz帯が再編成され携帯電話各社に割り当てられた。 700MHz帯は、DocomoとKDDI、それにイー・アクセスに割り当てられ、900MHz帯はソフトバンクに割り当てられた。ソフトバンクは、これまでは、1.5GHz帯や一部2GHz帯の高い周波数を使用してため、ライバルのDocomoやKDDIに比較してつながりにくいという利用者からの批判があった。周波数が高くなると電波の性質が光に似てくるのでコンクリートなどは通りにくくなるので建物の中や、基地局と見通しがきかない建物の影などは電波状態が悪くなるからである。ソフトバンクはこの調整で「プラチナバンド」を初めて手中にして、他社との競争で優位に立ったとされている。
 携帯電話の割り当て周波数帯としては、「プラチナバンド」の700~900MHz帯の他に、1.5GHzや1.7GHzの帯域も使用されている。
 いずれにしても300MHz~3Gの極超短波(SHF)帯は満杯、LTE-Advancedサービスの拡充や5Gサービスを開始する余地はない。

■ LTE-Advanced サービスの周波数帯
 2014年12月19日、 総務省は19日、第4世代(4G)の次世代移動通信サービス向けの周波数をNTTドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルの大手3社に割り当てると発表した。4Gサービスでは、現行の約10倍の高速通信ができ、3社は相次いでサービスを開始している。
 今回、新たに3社に割当られた周波数帯は、3.5GHz帯、3480〜3600MHzの合計120MHz帯域幅で、LTE-Advancedの本格的な4Gサービスで使用されて、最大1Gbps、高速走行時には100Mbpsの高速移動通信サービスを実現する。
 一般にLTEサービスは、4Gと呼ばれているが、正確には3.9Gとされている。LTE-Advancedになって初めて第4世代移動通信4Gの時代になる。
 3.5GHz帯はこれまで使用されていた周波数より高い周波数帯になるため、ひとつの基地局で広範囲なサービスエリアを作りにくいとう欠点がある。電波の直進性が強く、ビル影や山間部などでの電波状況は「プラチナバンド」に比較すると劣る。一方、周波数が高い帯域には、より高速の通信が可能にあることやアンテナを小さくできるので、携帯端末での利用でも都合が良いというメリットもある。また、周波数が高い帯域の電波は、まだ利用が進んでいなく、広い帯域を確保しやすい。
 LTE-Advancedでは大容量のデータを高速で送受信可能にするために、複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線として送受信を行うキャリアアグリゲーションや多数のユーザーの通信を束ねて処理をするOFDM、複数のアンテナを搭載するMIMO、「下り」変調方式に256QAMを採用するなど新たな通信技術を取り入れている。 携帯各社ではLTE-Advancedサービスをユーザーが集中する都市部を中心にエリアを拡張していくとしている。
 さらに情報通信審議会の答申では、LTE-Advanced用として、3.4GHzから4.2GHzまでの帯域を、将来割り当てる可能性を示唆している。現在の国際標準では、3.6-3.8GHzを移動体通信の帯域として規定しており、4.2GHzまでの規定はまだないが、今後、国際標準の動向をみて拡張すると見られている。
 2015年3月から、NTTドコモは、下り最大225Mbpsの通信速度を実現した「LTE-Advanced」のサービスを開始した。



■ 5Gの登場でさらに不足する移動通信帯域
 iPoneや携帯電話、タブレットなどの移動体端末や、Internet of Things(IoT)が急速に普及し、爆発的に増加している通信量に答えるために移動体通信に割り当てる周波数帯域の確保が急務になっている。とりわけ高速な伝送を要求される4Gや5Gは、大量の帯域が必要となる。
 現在確保されている移動体通信の周波数帯は、6GHz以下の帯域で、第3世代(3G)で490MHz幅、BWAで90MHz幅、PHSで30MHz幅、無線LANで350MHz幅、あわせて約910MHz幅である。
 この帯域を2020年には、3Gで10MHz幅増、3.9Gで200MHz幅増、4Gで600MHz幅増、そして5Gの登場で500MHz幅増、さらに携帯電話と無線LAN等で350MHz幅を追加して、約1740MHz幅を増やし、約2700MHz幅を確保するとしている。
 さらに、5G用の帯域として、6GHz以上に約23GHz幅程度の帯域を確保する方向で研究開発を進めることを明らかにした。
 第五世代移動通信システム(5G)の帯域はどのように確保するのか、5G用の周波数に関する国際標準がどう決まるのかを見分けながら難しい舵取りが必要とされるだろう。



5G開発に凌ぎを削る移動通信各社
 米欧、中国、韓国、世界各国の5G開発競争は熾烈である。
 2016年9月、米国の最大の携帯電話会社、Verizonは、5Gの商用サービスを世界に先駆けて2017年9月までに開始すると発表した。すでにVerison Technology Forumを立ち上げ、Ericsson、Nokia、Cisco、Qualcomm、Samsungなどのパートナー企業と共に開発を進めているとしている。(CNET 2016年9月8日)
 一方、2016年1月22日、Ericsson(スエーデン)は5Gの商用サービスを2018年から開始すると発表した。
 同社によると、このサービスは、スウェーデンやエストニアをはじめユーラシア大陸各地に拠点を置くTeliaSoneraの協力を得て、スウェーデンのストックホルムとエストニアのタリンで開始する。
 その際には、通信サービスのみならず、IoT(モノのインターネット)向けのサービスも提供予定とのこと。同社は、その適用分野として、医療や車載分野を示唆している。
 EricssonとTeliaSoneraは、2009年に「世界初」として4G/LTEネットワークの商業運用をスウェーデンで開始している。今回も、このサービスを世界最先端と位置づけ、まずはストックホルムとタリンでの使用状況を見て、今後のビジネスに生かしたいとしている。Ericssonの最新レポートでは、2021年末までに5G関連の契約件数は1億5000万件に至ると試算している。(日経テクノロジー 2016年1月27日)

 日本での5G開発の主導権を握っているには、ドコモだ。
2015年3月、ドコモがEricssonと共同で4.5Gbps以上の「5G」通信実験を行い、成功した発表した。
 実験は、ドコモR&Dセンタ(神奈川県横須賀市)で行われ、15GHzの高周波数帯域(400MHz帯域幅)と4×4 MIMOの通信多重化技術を使用して使われた。実験では端末に見立てた移動局を時速約10キロメートルで走行させて下り最大4.58Gbpsを計測した。
 6GHz以上の高周波数帯は電波が遠くまで届きにくく、移動体通信での利用は難しいとされる。さらに高い周波帯であるミリ波を使用した実験をNokia Networksと共同で実施、70GHz帯を使用して六本木ヒルズの建物中で2Gbps以上のデータ通信に成功している。
 サムスン電子との共同実験では、韓国・水原市にあるサムスンデジタルシティ周辺の道路で、自動車を時速60kmで走行させてデータ伝送の実験を行った。 使用周波数は、28GHz帯(800MHz幅)で、96素子のアンテナを用いたビームフォーミング機能とビーム追従機能を駆使し、移動する自動車の中でも受信で2.5Gbpsを超えるデータ伝送に成功している。
 富士通との共同実験では、小型基地局(分散アンテナユニット)の協調伝送技術により、単位面積あたりのシステム容量を増大させる検証が行われた。使用した周波数は、4.65GHz帯、超高密度分散アンテナと協調技術で4端末合計が11Gbpsの伝送速度を実現した。
 ドコモは、この他に、Alcatel Lucent、日本電気(NEC)とも5Gに関する実験協力を進めることで合意している。また30GHz~300GHzのミリ波帯の通信性能改善や6GHz未満の周波数帯の活用についての検証するため、三菱電機やファーウェイとの協力についても合意している。
 2020年7月の東京オリンピック開催までに、商用サービス開始を目指すとしている。


出典 5Gの開発協力企業 Docomo

2020年サービス開始は間に合うのか?
 総務省では、2020年東京オリンピック・パラリンピックに商用化を開始したいとしているが、いまだに標準規格が決まらない状態が続いている。
 超高速、大容量、低遅延、多数の端末接続、省エネ、低コスト、要求水準は極めて高い。
 5Gの開発を推進する各社の見解が共通するのは5Gを既存のLTEと一体化させるという戦略である。LTEやLTE-Advancedの延長線上で活用できる技術を使い5Gサービスを実現していくコンセプトだ。その標準化は、3GPPが5G NR標準仕様として明らかにしている。(上記 「5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP」参照)
 しかし肝心の使用周波数帯は、どの周波数に帯域幅をどの程度確保するのかが未だに正式に決まっていない。
 総務省では、2020年5G実現に向けて、6GHz以下では3.7GHz帯や4.5GHz帯で最大500MHz、6GHz以上の帯域では28GHz帯で最大2GHzの確保を目指すとしている。
 しかし、6GHz以下の帯域は満杯で、5G用の帯域幅が十分に確保できず、1事業者当たりの割り当て帯域幅は極めて限定され、5Gの要求水運の通信速度が達成できないだろう。
 これに対し、6GHz以上の28GHz帯は、通信速度が十分に達成できるが、電波の到達距離が短く、回り込みがほとんどないので遮蔽物に対して弱いという弱点がある。これまで移動通信では利用実績がなく、新たな無線通信技術、RAT(Radio Access Technology)を導入が必須となる。
 5Gサービスを実現するためには、基地局を中心にマクロセルとスモールセルとを重ね合わせてネット構成や、複数の周波数を束ねて送信するキャリアグリゲーション、ユーザーデータと制御情報を分けるU/C分離システム、超高速、低遅延、同時多数接続など多様な要件を持つトラフックを切り分け処理するネットワークスライシング技術、256素子のアンテナ素子を備えるMassive MIMO、電波を特定の方向に集中して端末の動きに追従させるビームフォーミングの開発など、移動通信事業者には難題が山積している。


出典 情報通信技術分科会

5Gへの設備投資が重荷に
 情報機器メーカーが5Gに積極的なのは、新たな情報端末への需要の期待感からである。“5G対応”をキャッチフレーズに、新機種を発売してビジネスチャンスを狙うだろう。
 一方、通信事業者(キャリア)は、すでに3GからLTE、そしてLTE Advancedサービスを実現するために膨大な設備投資を行っている。その設備投資はまだ続いていて、投資額の回収までにはいたっていないと思われる。それに5Gへの投資が加わると通信事業者(キャリア)の重荷は更に増すだろう。果たしてこの重荷に耐えられるのだろうか。

消費者(ユーザー)は5Gに飛びつくのか?
 消費者(ユーザー)にとって、5Gは魅力的なサービスになるのだろうか?
 3Gの登場で動画サービスが可能になり、スマートフォンの爆発的な普及を支えた。電話とメール機能中心の2Gから機能が飛躍的に進化したと言えるだろう。
 4Gになって、さらに大容量のデータの高速通信が可能になり、HDなどの高画質の動画やゲームなどが楽しめるようになった。
 5Gになると更に高画質の4K 映像などもライブで快適に視聴可能としているが、携帯端末の小さなスクリーンではそこまで高画質にしても優位差はあまり感じられず、消費者(ユーザー)は。魅力的な新しいサービスとして飛びつくのだろうか。Youtubeやインターネット、SNSを利用するにはLTEでも十分である。
 通信料の負担だけが増えて、それに見合った納得するサービスを受けられないとすれば、消費者(ユーザー)は見向きもしないだろう。
 10Gbps、遅延1msというハイスペックな5Gの性能を活かした新たなサービスとして何が考えられるのだろうか。5Gはオーバースペックで、消費者(ユーザー)にとっては4Gで充分なのではないだろうか。
 5Gの商用サービスが開始されても普及が進まなければ、通信事業者はビジネスモデルが築けなくなるという深刻な問題が生まれる。

▼ 低価格のサービスが条件 Internet of Things(IoT)の通信基盤
 ICT社会の進展であらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)が急速に普及し、通信量が爆発的に増加することである。自動車や鉄道、ロボット、工場の生産設備、社会の隅々に設置されるセンサーなどの通信を瞬時に遅延なく処理しなければならない。遅延1msというリアルタイムでの5Gの通信環境はInternet of Things(IoT)には重要である。
 しかし、Internet of Things(IoT)で利用する場合、設置されるデバイスが膨大な個数になるため通信料の負担がどの程度の水準になるかがポイントである。さらにInternet of Things(IoT)にとって5Gまでのスペックが本当に必要なのか、それとも大半は4Gの拡張で対応可能なのか、冷静に検証する必要もあるだろう。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと2年余り、5Gのユニバーサル・サービスは実現できるのだろうか?





暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か







国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年1月27日  2018年4月15日改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR




**************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
**************************************************
コメント

4K8K放送 東京オリンピック 新4K8K衛星放送 ロードマップ 右旋 左旋 暗雲4K8K  

2018年10月13日 16時52分42秒 | 4K8K
暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か?



新4K8K衛星放送12月1日スタート キャンペーン 総務省/Youtube


新4K8K衛星放送開始 総務省

熱気を欠いた4K8Kテレビ商戦 新4K8K衛星放送に視聴者は冷やか?
 2018年12月1日、いよいよ新4K8K衛星放送が開始される。
 4K8K試験放送が始まり、4K対応テレビは売れ行きが好調で、総務省では2020年には約2700万台が普及し、4K対応テレビの世帯普及率は約50%になると強気の予想をしている。しかし、肝心の4Kチューナーが市販されず、“視聴者不在”のお粗末な状況が続いていた。
 そしてようやく、4Kチューナーや4Kチューナーを内蔵したテレビの発売が始まり、4K8K時代到来の兆しが整ってきた。
 日本国内で初めて、4Kチューナーや4Kチューナー内蔵テレビを発売したのは、東芝映像ソリューションで、2018年6月6日から、順次、BS/CS 4K内蔵液晶レグザ「BM620Xシリーズ」3機種(55V型[23万前後」、50V型[19万前後]、43V型16万前後])を売り出した。
 また4Kチューナ「TT-4K100(オープン価格 市場想定価格は4万円前後)を2018年秋に発売するとしている。
 新4K BS放送チューナ×1と、地上/BS/110度CSデジタルチューナ×2を備え、別売のUSB HDDを接続すれば録画も可能。2TB HDDの場合、約129時間の4K番組を録画できる。
 しかし、いずれも10月以降に送付される「BS/CS 4K視聴チップ」を製品に装着しないと、BS・110度CSの4K放送を視聴することはできない。
 ちなみに東芝映像ソリューションは中国の新興家電製品メーカー、ハイセンスの配下に入っている。ハイセンスは2018FIFAワールドカップの公式スポンサーとなり世界化から注目を浴びた企業である。
 続いて、9月28日、シャープが4Kチューナー内蔵テレビ、「AQUOS 4K」の新モデル3機種を2018年11月17日から順次発売すると発表した。発売される3機種は、「4T-C60AN1」(60型 オープン価格 市場想定価格は280,000円前後)、「4T-C50AN1」(50型 オープン価格 市場想定価格は200,000円前後)、「4T-C45AL1」(45型 オープン価格 市場想定価格は155,000円前後)である。
 またシャープは、新4K8K衛星放送を受信できる「8Kチューナー」(価格未定)を12月1日から発売する。さらに60型の8Kテレビ(チューナ無しモデル)を「50万円程度」の価格で発売することを目指すとしている。
 一方、6月27日、パナソニックは、新4K衛星放送に対応した4Kチューナー「TU-BUHD100」を発表した。4Kビエラのリモコン1つで操作が可能だ。発売は10月中旬。市場想定価格は3万円台前半になりそうで予約販売が始まっている。
 三菱電機は、4Kチューナを内蔵した液晶テレビ「REAL 4K XS1000シリーズ」を10月に10月18日に発売を開始するとしている。40型「LCD-A40XS1000」、50型「LCD-A50XS1000」、58型「LCD-A58XS1000」の3機種で、BS4Kのダブルチューナーや4K番組が録画できるUltra HD ブルーレイを内蔵する高位タイプだ。58型は市場想定価格は34万円前後とされている。
 相次いで4K8K関連製品が発売されているが、家電業界によれば、2011年の地デジHD化の際のような消費者の熱気は感じられないという。

 CATV業界では、4Kサービスに積極的に取り組んでいるCATV各社が4Kコンテンツを制作してサービスするチャンネルを立ち上げ、4K対応セットボックスを開発して、新4K8K衛星放送の再送信を開始する準備を進めている。
 CATVで4Kコンテンツを視聴するためには、各家庭に4K対応セットボックスを設置しなければならない。
 日本ケーブルテレビ連盟の吉崎正弘氏は、CATV事業者は、「4K対応セットボックスの普及の目標は80万台」としている。CATVの契約者は全国で約3000万世帯、80万世帯は、そのわずか3%に満たない。
 視聴者の新4K8K衛星放送への冷めた眼がはっきりと見える。

 潤沢な受信料収入に支えられたNHKは、新4K8K衛星放送に積極的に取り組んでいるが、新4K8K衛星放送のキーとなる民放各局は、既存のHD地上波放送と新4K8K衛星放送を両立させるビジネスモデルが描けず、新4K8K衛星放送に力を入れることができないでいる。新4K8K衛星放送が開始されても、4Kコンテンツ「TBS系では全体の7~8%、テレビ東京系でも来年1月段階で13%程度にとどまる見込み」(朝日新聞 10月6日)という。
 新4K8K衛星放送の普及には、魅力的な4K8Kコンテンツを視聴者にいかに提供するかに尽きるだろう。12月1日、視聴者を引き付ける魅力的な4K8Kコンテンツのラインアップが果たして可能なのだろうか?
 総務省は、新4K8K衛星放送の視聴世帯を2020年で「50%」を目標に掲げているが、絶望的であろう。笛吹けど踊らず、一体、何人の視聴者が新4K8K衛星放送を見るのだろうか?


国内で初めて発売されたBS/CS4Kチューナー内蔵テレビ 東芝映像ソリューション 


出典 Panasonic

新4K8K衛星放送 2018年12月1日開始 BS日テレは1年遅れ
 2017年1月24日、総務省は4K8K放送を認める認定書を10社に交付し、新4K8K衛星放送、11チャンネルが2018年12月1日から順次開始されると発表した。
新4K8K衛星放送のうちBS「右旋円偏波」を使用する4K放送は、NHKと民放キー局系5局の計6チャンネル。NHKと民放系4局は2018年12月1日に、日本テレビホールディングス系のBS日テレは、一年遅らせて2019年12月1日に放送を始める。
 BS日テレは、「(新4K8K衛星放送の)事業性や受信機の普及状況」などを総合的に判断していきながら、来年12月の前倒しを含めて、対応、準備を進めるとしている。
 新4K衛星放送のビジネスモデルを構築するのは容易ではない。HD地上波放送は相変わらず“主力”で、そのコマーシャル収入で成り立つ民放にとって、新4K衛星放送は、収益性の乏しい所詮衛星放送のモアチャンネルにすぎず、いわば当面は“お荷物”となる。HD地上波放送で熾烈な視聴率競争を繰り広げ、コマーシャル収入を確保しなければならない民放は、主力コンテンツのトレンディドラマやエンターテインメント番組、スポーツ中継などのキラー・コンテンツは、相変わらず、収入源のHD地上波放送“優先”で展開するだろう。高繊細画質が売り物にしても、衛星放送で一体どれだけの視聴率を獲得し、どれだけのスポンサー収入が確保できるのか見通しは明るくない。新たに経費を投入して新4K衛星放送のために魅力的なオリジナル・コンテンツを制作するのは極めて難しい。HD地上波放送を4Kで制作し、新4K衛星放送でもサイマル放送するモデルは現実的だが、それでは新4K衛星放送の普及につながらず、新たな収入源にもつながらないというジレンマがある。民放は新4K衛星放送のビジネスモデルが未だに描けないのである。
 BS日テレの「1年延期」はこうした新4K衛星放送の事業性を取り巻く状況が如実にあらわれている。 TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京系の新4K衛星放送も同じ状況に変わりはない。

 BS「左旋波」では、NHKの8K放送と民間の放送事業者、WOWOW、SCサテライト放送(ショップチャンネル)、 QVCサテライト(QVC)、東北新社(映画エンタテイメント・チャンネル)の4K放送が認可された。NHKとSCサテライト放送、 東北新社は2018年12月1日、QVCサテライトは2018年12月31日、WOWOWは、2年遅れで、2020年12月1日に開始する。
 WOWOWは、新4K8K衛星放送の申請にあたって、BS「右旋波」については、「第一志望」としたが、認可後に現行のHDサービスの帯域再編に応じる「特定申請」としなかった。「第2希望」は「左旋波」とした。
 総務省では、6社が応募したBS「右旋波」は、割り当てる周波数が不足するため、あらかじめ明らかにしていた「比較審査」を実施し、「右旋波」の認定で“優先権”が得られる「特定申請」としなかったWOWOWを「右旋波」から除外し、「左旋波」で認定した。WOWOWが4Kサービス開始が2年遅らしたのは、「左旋波」4Kサービスの事業性に懸念を示したと思われる。

 一方、BS「右旋波」全体については、現状ではNHKと民放5局に割り当てる4K放送、6チャンネル分の帯域が不足するため、NHKや民放などがBSデジタル放送(HD)で使用している帯域を一部を返上するさせて帯域再編成を行い、BS7チャンネルと17チャンネルに2トランスポンダに、6チャンネル分の帯域を確保した。そしてBS「右旋波」を「第一希望」としたNHKと民放キー局系の5局に割り当てた。

 東経110 度CS「左旋波」については、スカパー・エンターテイメントと放送サービス高度化推進協会(A-PAB)(試験放送)を認定した。スカパー・エンターテイメントは、4Kで8チャンネル分の帯域を確保し、4Kサービスに対する積極姿勢が目立った。しかし、「スカパー!」グループの開始する4Kサービスの事業性については大きな懸念が拭えない。「スカパー!」はこれまで保有してきたJリーグの放送権をインターネットスポーツ中継サービスの「ダ・ゾーン」に奪われてキラー・コンテンツを失い、経営的に大きなダメージを蒙った。こうした中で、新規契約者を新たに獲得できる魅力的な4Kコンテンツを確保していくことができるのだろうか。スカパー・エンターテイメントは瀬戸際に立たされている。










総務省 報道資料

BS、CS、「左旋波」、「右旋波」、混乱必至 そしてコンテンツ不足 視聴者不在の4K8Kサービス
 「BS左旋円偏波」や「東経110度CS左旋偏波」は、対応するパラボラアンテナを新たに設置しないと視聴できない。さらに分配器、分波器、ブースター、ケーブル等の宅内受信設備の交換もは必要となる。マンションや事業所などで、共聴設備を利用して視聴している場合は、共聴設備の更新をしなければならない。果たしてどれだけの視聴者が「左旋波」を利用するのだろうか。
 まったく未知数の「左旋波」に頼らざるを得ない4K8K放送は暗雲が立ち込めている。
 「左旋波」の登場で、テレビ(空中波)は、“複雑怪奇”となった。
 地上波-BS、HD-CS、4K-BS(右旋)、4K-CS(右旋)、4K-BS(左旋)、4K-CS(左旋)、8K-BS(左旋)、新たに登場したHDR、ほとんど一般の視聴者は理解できないだろう。。
 総務省では、「右旋波」を利用する4K・8K放送は、「左旋波」が十分普及するまでの“暫定措置”としている。4K・8K放送の視聴環境は数年おきに目まぐるしく変わるだろう。
 4K・8K放送のスキームは、“視聴者無視”と言わざるを得ない
 さらに、光回線を利用するIPTVのひかりTVやインターネットを使用するNETFLEX、AMAZON TV、Fulu、アクトビラなどのテレビサービスも加えると一般の視聴者は収拾がつかななくなる。多チャンネル、マルチメディア時代という言葉は、華やかに聞こえるが受け手の負担は極めて重くなるだろう。
 4K8Kの超高繊細映像で臨場感があふれた映像が楽しめるというが、視聴者は本当にそのサービスを求めるいるのだろうか?
 視聴者のテレビ離れが問題化している中で、4K8Kサービスを開始する放送事業者は、その自信があるのだろうか?
 日本はこれから超高齢化社会に突入なかで、求められているのは視聴者に“優しいテレビサービス”だろう。

 また放送される4K8Kコンテンツの品質も大いに問題である。視聴者が望んでいる魅力的なコンテンツをNHKや民放、放送事業者は本当に揃えることができるのだろうか。依然としてテレビサービスの主力はHD地上波放送で、所詮、4K8Kサービスはモアチャンネルの衛星放送で影は薄い。地上波や衛星波のHD化が成功したのは、SD(標準画質)サービスにHDを完全に置き換えたからである。現実的な対応は、地上波のコンテンツを4Kで制作し、地上波ではHD、新4K8K衛星放送では4Kで時差放送をするスキームだ。しかし、これでは新4K8K衛星放送の普及はいつまでたっても進まない。さらに4Kコンテンツ不足を補うためにHDをアップコンバートして“4K”として放送するケースも多発する懸念がある。こうした放送を“4Kチャンネル”とするのはあまりにもお粗末だ。
 テレビが視聴者を引き付けるのは、コンテンツの魅力である。大きな共感を得るドラマ、速報性と情報性を備えたニュース・情報番組、楽しく見れるバラエティ番組、多様なニーズに答える教養番組、その多様性にあふれた強力はコンテンツ・パワーだ。 “高画質”なら視聴者を引き付けられるというのは幻想にすぎない。テレビは“面白く”なければならい。新4K8K衛星放送はこうした視聴者の期待に答えられるだろうか。

 そして4K・8K放送を開始することで地上波とBSで合わせて6チャンネルを握ることになったNHKの肥大化も重大だ。高市早苗総務相は「NHKのBS放送全体のチャンネル数は見直す」と述べている。
 NHKはチャンネル再編を行い巨大化批判に答える責務を背負う。。

 総務省が策定した4K・8K推進に向けた“新ロードマップ”では、2020年に「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K放送を楽しんでいる」と記述されているが、果たして2020年に4K・8K放送のユニバーサル・サービスの実現が可能なのだろうか、筆者は大いに疑問視している。問題山積の新4K8K衛星放送、「多くの視聴者」に普及させるのに残された時間は2年しかない。


新4K8K衛星放送を視聴するのは至難の業 ほとんどの視聴者は理解不能  資料 電波監理審議会会長会見用資料


課題山積ににもかかわらず売れ行き好調4Kテレビ  資料 総務省




4K8Kチャンネル NHK2チャンネル、民間放送事業者最大21チャンネル確保へ 
 2015年7月23日、総務省は「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」の「第二次中間報告」でロードマップ(2015)を取りまとめ、衛星基幹放送による超高精細度テレビジョン放送(4K・8K放送)の実用放送を、2018年の放送開始を目標とするとした。
 2016年3月、総務省はこのロードマップに基づき、「4K・8K放送の伝送路」や「4K・8K放送のチャンネル数」について決定した。
 「4K・8K放送の伝送路」については、高精細度テレビジョン(HD)放送又は標準テレビジョン(SD)放送はBS・CS「右旋円偏波」として、超高精細度テレビジョン(4K・8K)放送は、BS・CSの「左旋円偏波」を基本的な伝送路として位置づけた。「右旋円偏波」で行う4K放送は、現行の視聴環境を踏まえて、立ち上がり期に4K・8K放送の普及促進を図るための暫定措置とした。
 4K・8K放送の基本的な伝送路となるBS「左旋円偏波」は11チャンネルのうち8、12、14chの3チャンネル、110度CS「左旋円偏波」は13チャンネルのうち9、11、19、21、23chの5チャンネルを明示した。
 焦点の「4K・8K放送のチャンネル数の目標」は、NHKは、BS「右旋円偏波」で4K放送1チャンネル(BS17チャンネルのトランスポンダーを3チャンネルに分割してその1チャンネル)、BS「左旋円偏波」で8K放送1チャンネル(4K放送であれば2~3チャンネル分の帯域に相当)とした。ただし「左旋円偏波」による放送の受信環境が一定程度整備され、左旋円偏波によるBSによる4K・8K放送が普及した段階で、NHKのBSのチャンネルの数を見直すとしている。
 民間放送事業者(民放、衛星放送)は、BS「右旋円偏波」で4K放送2チャンネル(BS17チャンネル帯域を3チャンネルに分割してその内の2チャンネル)、帯域再編が実施されトランスポンダーがもう一つ利用できる場合は、4K放送3チャンネルが増やして、合わせて5チャンネルとした。
 またBS「左旋円偏波」で4K放送6チャンネル、110度CS「左旋円偏波」で4K放送10チャンネル(5つのトランスポンダーを2チャンネルに分割)、これにNHKの8K放送1チャンネル分を加えると、合わせて4K放送で18チャンネル程度とした。帯域再編が実施されてトランスポンダーが2つ利用できる場合は、4K放送3チャンネル分が増えて、21チャンネル程度となる。
 この方針に基づいて、総務省では「4K・8K放送」に新規放送事業者を募集を開始した。



電波監理審議会会長会見用資料

4K・8K実用放送 10放送事業者が申請
 2015年10月17日、総務省は2018年秋に始まる4K・8K超高精細画質のBS衛星放送への参入申し込みを締め切った。
 NHKは「BS右旋円偏波」で4K/1チャンネル、「BS左旋円偏波」で8K/1チャンネルの割り当ての認定申請をすでに別途行っている。
 今回申請した民間放送事業者は、「BS右旋円偏波」ではBS朝日、BSジャパン、BS-TBS、BS日本、BSフジ、WOWOWの6事業者が申し込んだ。この内、WOWOWは「第一希望」とし、「第二希望」で「BS右旋円偏波」を申請した。
 「BS左旋円偏波」ではSCサテライト放送(ショッピングチャンネル)(第一希望)、QVCサテライト(QVC)、東北新社(映画エンタテイメント・チャンネル)、そしてWOWOW(第2希望)が名乗りを上げた。
 「東経110度CS左旋偏波」では、SCサテライト放送(ショッピングチャンネル)(第2希望)やスカパー・エンターテイメントがあわせて9チャンネルの4K放送を申請した。
 4K放送ではスポーツ中継やドラマやエンターテインメント番組、ドキュメンタリーなどの4K画質で制作されたコンテンツだけでなく、HDコンテンツを4K画質にアップコンバートして放送される可能性が大きい。新たな4Kコンテンツの調達が追い付かないからだ。HDをアップコンバートしたコンテンツが並ぶチャンネルを“4Kチャンネル”と呼ぶのはふさわしくない。
 総務省は、4Kチャンネルについては、「右旋波」と「左旋波」で、合わせて12チャンネルを割り当てる方針とで、この内NHKは1チャンネル、民放は各系列ごとに1チャンネルを割り当てられるが、残りの6チャンネルは、参入を申請した既存のBS放送事業者らから選ぶと伝えられている。
 NHKは総合テレビ、教育テレビの地上波2チャンネル、BS2チャンネル、4Kチャンネル、8Kチャンネル、合わせて計6チャンネルを持つことになる。NHKの巨大化批判はさらに強まり、その対応は必須の状況となるだろう。
 総務省は、2017年始めまでには各社の申請内容を審査し、どの放送事業者にいくつのチャンネルを割り当てるかを決めるとしている。
 さらに2020年ごろまでに「BS左旋円偏波」と「東経110度CS左旋偏波」では追加割り当てを行う予定である。



放送政策の動向と展望 2016年11月 総務省

“4Kテレビ”で4K放送が見れない! 視聴者不在4Kサービス
 最大の問題はいま売られている4Kテレビでは4K放送は受信できないことである。
 2016年12月に開始する4K試験放送や2018年に開始する4K実用放送を視聴するためには、4Kチューナーや4Kチューナー内蔵の4Kテレビが必要となる。
 また「BS右旋波」で放送される4Kの6チャンネルは、現在のパラボラアンテナや共聴設備で視聴できるが、「BS左旋波」や「東経110度CS左旋波」は、「左旋波」に対応するパラボラアンテナを新たに設置しなければならない。
 さらに分配器、分波器、ブースター、ケーブル等の宅内受信設備の交換も「左旋波」を受信するためには必要となる。事務所やマンションなどで、共聴設備を利用して視聴している場合は設備の更新をしなければならない。4K放送を楽しむには単に4Kテレビを買えばよいと誤解している視聴者がほとんどだろう。
 一方、CATV、IPTV(ひかりTV)、インターネットTV(NETFLIX、アクトビラ、Amazonプライムなど)は、現在販売されている4Kテレビで、4Kサービス専用のセットボックスを設置するれば「右旋波」、「左旋波」ともに視聴可能だ。また「スカパー!4K」も、すでに提供されている4K対応専用チューナーを設置すれば視聴可能だ。
 電子情報技術産業協会(JEITA)では、総務省や家電業界と協力して、こうした状況について周知活動を始めている。現在販売されているのは「4Kテレビ」ではなく、「4K対応テレビ」なのである。
 しかし、家電業界は、「大画面を買うなら4K」と4Kテレビの販売PRに全力を上げ、4Kテレビが飛ぶように売れていが、果たして消費者にきちんと納得をしてもらって販売しているのだろうか? 疑念が大いに生じる。
 4K8K放送を見るためには、視聴者にまた新たな負担が生じる。既存のHDの地上波や衛星チャンネルの番組は“溢れる”ばかりに放送されている。それを上回る魅力的なコンテンツが4K8Kで提供されなければ、視聴者は4K8Kに見向きもしないだろう。視聴者のテレビ離れが問題化している中で、4K8Kサービスを開始する放送事業者は、その自信があるのだろうか?







平昌冬季五輪開会式 出典 PyeongChang2018

平昌冬季五輪 NHKは8K中継90時間実施 初めてUHD(4K)の配信に乗り出したOBS
 平昌冬季五輪で、ホストブロードキャスターのOBSは初めて、4K中継車を配置して、アイスホッケー、カーリングフリースタイル(モーグル)、スノーボード(ハーフパイプ)の4つの競技と閉会式の4K SDRのライブ中継を実施した。
 これに対し、NHKは8K-HDR中継車2台、22.2サラウンド音声中継車2台を、平昌の五輪会場に送り込み、開会式、フィギアスケート、ショートトラック、スキージャンプ、スノーボード(ビックエア)を、それぞれ10台の8K中継カメラを配置して、合計90時間の8K--HDR、22.2サラウンド音声のライブ中継を実施した。
 NHKが中継した8K-HDR映像・音声は、OBSがIBCで4K-HDRにダウンコンバートして、OBSが制作した4K-SDR映像・音声信号と共に、ホスト映像としてライツホルダーに配信された。
 NBCは、8K-HDRをダウンコンバートした4K-HDR競技映像を使用して、米国内の衛星放送やケーブルテレビで、全米初の4K-HDR放送サービスを開始した。
 8K HDRは、現在の技術水準で実現できる世界最高のクォーリティを誇り、その臨場感あふれる繊細な映像は4Kをはるかに凌ぐ圧倒的な迫力がある。
 NHKはIBCの中に350インチの8K HDR大スクリーンを設置した“8KTheater”を設け、世界のメディアに8K-HDR映像の素晴らしさをアピールしている。
 NHKは4K・8K中継を日本に伝送し、昨年開始した4K・8K試験放送(衛星放送)で、NHKが制作した8K競技映像を、OBSが制作した4K競技映像(4K SDR)と共に放送した。
 また、全国のNHKの放送局や全国5か所の会場でパブリック・ビューイングを開催して、8K-HDR映像の迫力を視聴者に実感してもらった。
 ただし、家庭用の8K専用の衛星チューナーがまだ市販されていないため、まだ一般の家庭では視聴できない。
 NHK以外のライツホルダーで、IBCでホスト映像として配信された8K HDRを視聴者サービスに利用した放送機関はなかったが、いくつかの放送機関は調査・研究目的で8Kコンテンツの配信を受けて、2020年東京五輪では8Kシネマやパブリック・ビューイング・サービスの検討を始めていると伝えられている。

平昌冬季五輪のNHKの8K中継システム
 NHKはフィギアスケートとショートトラックでは、メインの中継カメラとして池上通信機製のSHK-810 8Kカメラを使用した。
 HSSM(High Speed Slow Motion)再生用の中継カメラとしてはSONY 製の2台の4K・8倍速スローモーション映像撮影用カメラ、HDC-4800が使用され、8Kにアップコンバートされ、SHK-810 8Kカメラの8K映像とスイッチングして使用された。8KのHSSM中継カメラも初登場し、NHK技術研究所が開発した8K 120-fps camera のNHK STRL中継カメラ、1台が設置された。
 スキージャンプでは、池上通信機製のSHK-810 8K camerasとHSSM(High Speed Slow Motion)再生用としてSONY 製の4Kカメラ、HDC-4800 カメラが使用された。
 今回平昌冬季五輪では、8K-HDRコンテンツを制作しても、それを放送利用するのはNHKだけで、他の放送機関で、8Kコンテンツを放送サービスするところなかった。OBSは、8K HDRを4K HDRや4K SDRにダウンコンバートして、世界各国の放送機関に配信した。そのために互換性を持たせた信号フォーマットでオペレーションを行うことが必要で、NHKとBBCが共同開発したHLG(ハイブリッドログガンマ)HDR規格が採用された。
 NHK日本国内の4K8K試験放送で、8K-HDR(NHK制作)と4K SDR(OBS制作)の競技中継を放送し、NBCユニバーサル(NBCの親会社)は全米のケーブルテレビや衛星放送に4K-HDRを配信した。米国内で初めての4K-HDRサービスが開始された。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、あと2年、HDに代わって4Kが主役の座に就くのか、4K-HDRと4K-SDRはどちらが主流になるのか、8Kは世界にどれだけ浸透するのか、まだまだ不透明だ。


超高精細テレビ試験放送 4KはA-PAB 8KはNHK BS17chで1日7時間サービス開始
 2016年2月17日、総務省は、BS17チャンネルで行う超高精細テレビ放送(4K・8K放送)の試験放送の実施者を、4Kについては一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NextTV-F)、8Kについては日本放送協会(NHK)とする諮問を電波監理審議に行い、原案通り答申を受けた。4K・8K試験放送はNextTV-F(4K)とNHK(8K)が実施することが正式に決まった。

(注) NexTV-FはDpa(デジタル放送推進協会)と合併し「A-PAB」(放送サービス高度化推進協会)が4月1日発足、4K8K試験放送実施は「A-PAB」が実施。

 4K・8K試験放送は、BS17チャンネル(「衛星セーフティネット」・地デジ難視対策衛星放送)終了後の空き周波数帯域)を利用して実施される。放送時間は毎日午前10時から午後5時までの間の7時間を予定し、4Kと8Kは「時分割方式」で“相互の乗り入れ方式”でサービスされる。
 A-PABが行う4K試験放送は、毎日1時間、2chサービスで2016年12月1日から開始される。但し週1日だけは4K放送50分間と8K放送10分間も行う予定だ。期待されていたリオデジャネイロ五輪の4Kサービスは見送られた。4Kコンテンツは、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビ、WOWOWO、東北新社が提供。試験放送はコマーシャルを入れることができないので、運用経費は、A-PAB加盟メンバーの拠出金で賄われることになる。無料のノンスクランブル放送である。
 一方、NHKは一日6時間の8K試験放送を行う。但し原則毎週最終週の16時台には4K試験放送を2チャンネルで行う。8K試験放送は2016年8月1日に開始された。リオデジャネイロ五輪をターゲットに入れた戦略である。
 4K8K放送の送出やアップリンクは、4K・8K共に、NHK放送センター設備を使用することになった。
 しかし、肝心の4K8K専用チューナーは市販されていなく、誰も見れない「4K試験放送」となり、視聴者不在のちぐはぐな対応に終わりそうだ。


4Kサービスにいち早く乗り出した「スカパー!」
 2015年3月、「スカパー!」は、独自に“プレミアムサービス4K専門チャンネル”を立ち上げ、東経124/128度CS(右旋波)で4K放送を開始した。
 スカパー!の4K放送は、プロ野球、Jリーグ(2017年サービス終了)などのスポーツ中継や音楽、エンターテインメント、ドキュメンター番組などを提供する「スカパー!4K総合」、映画を提供する「スカパー!4K映画」(PPV:ペイパービュー・サービス )、4Kの魅力を体験できる「スカパー!体験」の3つのチャンネルだ。 
 「スカパー!4K総合」と「スカパー!体験」は、専用パラボラアンテナ、4K専用チューナーと4Kテレビを設置する必要があるが、“プレミアムサービス”(HD画質で約160チャンネルをサービス)の契約者には無償で提供される。
 「スカパー!4K映画」は、ハリウッド映画の4Kスキャニングリマスター版を中心にサービスする。PPV(ペイパービュー・サービス)で、見たい番組を1日単位で購入し、視聴料を後払いするシステムである。
 さらに、スカパー・エンタテインメントは、東経110 度CS「左旋波」で8チャンネル以上の新4K8K衛星放送を開始するとしている。「スカパー!」は4Kサービスの開始で、契約者減に歯止めをかけ、攻勢に転じることができるのだろうか、存立を賭けた大きな勝負となった。

HDR方式を採用 4K8K試験放送の技術仕様を公表
 次世代放送推進フォーラムとNHKは、それぞれ4K8K試験放送の技術仕様の概要を公表した。
 次世代放送推進フォーラムの技術仕様は、伝送方式はMMT・TLVの多重化方式を採用し、新たな高度広帯域の衛星伝送方式で行い、伝送容量はBS衛星放送の場合、4K放送で約35Mbps、8K放送で約100Mbpsで、トランスポンダー1つで、8K×1chまたは4K×3chの伝送が可能としている。
 使用スロット数としては、4Kについては60スロットまたは40スロット、8Kについては120スロットとし、1トランスポンダ全体は120スロットとなっている。変調方式としては16APSK、またはQPSK方式を採用する。
 映像のフォーマットについては、フレーム周波数は4K・8K放送とも59.94Hzとし、表色系はYCbCr 4:2:0、画素ビット数は10bitとしている。
 焦点のHDRに対する方針は、4K・8K放送ともHDR(High Dynamic Range)方式を採用することとした。
 その他、圧縮符号化(映像)はH.265/HEVC、マルチメディアサービスは汎用性の高いHTML5、受信制御には、B-CASに代わってセキュリティを強化した新CASを採用することした。
 超高精細映像で、世界の主流に一躍躍り出た4K-HDRは、現行の4K-SDRに比較するとその画質の優位性は明らかである。しかし、いま販売されている4K-SDRテレビとの互換性はない。数年後は、4K-HDRが主流になるのは明らかであろう。いま4Kテレビを買わされる視聴者の立場をどう考えているのだろうか? 
 NHKは、全国の放送局に設置する8Kの受信装置の標準システムの概要を明らかにし、8KデコーダーLSIを搭載した受信装置を開発し、これに85インチのHDR対応の8Kモニターを接続して8K試験放送を受信するとした。受信装置は、22.2チャンネルの音声出力があり、対応する音声アンプとスピーカーシステムを設置すれば22.2チャンネル音声サービスが可能になる。
 NHKは全国の放送局でこの受信設備を利用して、8K試験放送を一般の視聴者に公開する。
 受信装置には、4Kテレビ用の出力端子も装備され、8K試験放送を4Kにダウンコンバートして4Kテレビでも視聴可能にする。


総務省 第二次中間報告後の取組状況 付属資料




4K8K放送“新ロードマップ”公表
 2015年7月23日、総務省は「4K/8Kロードマップに関するフォローアップ会合」を開催し、第二次中間報告をまとめ、4K・8K推進に向けた“新ロードマップ”を公表した。 2014年9月に公表された“ロードマップ”の改訂版である。
 “新ロードマップ”によると、2016年にBS17チャンネルを使った4K・8K試験放送をNHKとNHK以外の基幹放送事業者の2者で開始し、2017年には110度CS(左旋波)で4K試験放送を開始、2018年にはBS17チャンネルと110度CS(左旋)で4K実用放送、さらにBS左旋においても、4K・8K放送の実用放送を開始するとしている。2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、「4K8K放送が普及して、多くの視聴者が市販のテレビで4K8K放送を楽しんでいる」とした。また2025年頃の4K8K放送の主要伝送路にはBS「左旋波」と110度CS「左旋波」を伝送路とすることも定めた。BS「右旋波」の4K8K放送は暫定的なサービスで、視聴者は4K8K放送に再び翻弄されることが明らかになった。



総務省 4K/8Kロードマップに関するフォローアップ会合第二次中間報告

キーポイントⅠ 暗雲たちこめた4K8K放送 ビジネスモデルが描けない民放4K、誰も見ないNHK-8K
 2014年9月に取りまとめられた「4K・8K放送ロードマップに関するフォローアップ会合」では、BS17chを使用して、4K試験放送(最大3チャンネル)及び8K試験放送(1チャンネル)を、「時分割方式」で、それぞれ最大1日12時間放送することを目標に掲げていた。
 今回決まった4K8K試験放送では、4K試験放送で2チャンネル一日1時間程度、8K試験放送で一日6時間程度、合わせて1日7時間程度にとどまった。
 とりわけ4K試験放送サービスの“貧弱さ”が目立つ。2014年6月、NextTV-Fが124/128度CS衛星を利用して開始した“Channel 4K” (2016年3月31日終了予定)よりもサービスは大幅に後退してしまった。しかも開始は2016年12月1日にずれ込んだ。“一日12時間、3チャンネルで4K試験放送”という総務省の目論見は早くも崩れた。
 民放各局は、未だに4Kサービスに乗り出すことに消極的になっているといわれている。HDの地上波とHD衛星デジタル放送、4Kの衛星波を併存させるビジネスモデルが描けないからだろう。民放各局はHD地上波のコマーシャルを収入源として経営が成り立っている。モア・サービスである新4K8K衛星放送が新たな収入源として期待ができれば積極的になるだろうがその可能性が読めない。一方でモアチャンネルである4Kチャンネルに視聴者を引き付けるには制作経費をかけてキラー・コンテンツを放送しなければならない。しかし、4Kチャンネルに視聴者を引き寄せれば引き寄せるほど、収入源の地上波が空洞化していくというジレンマを抱えている。民放各局は、24時間、365日、魅力的な4Kコンテンツを確保できるのだろうか?
 さらに民放キー局と系列地方局の関係も深刻だろう。民放キー局が、新4K8K衛星放送で、人気ドラマやエンタテインメント番組、スポーツ中継などキラーコンテンツを放送すると、キー局のキラーコンテンツの再送信に頼っている系列地方局のダメージは極めて大きく、番組配信料やコマーシャル収入が激減し経営が立ちいかなくなる懸念がある。当面、系列地方局との関係に配慮して、民放キー局は4Kチャンネルに力を入れることはできないのではないか? HD地上波のコンテンツ制作を4Kで行い、新4K8K衛星放送で時差サイマル放送する程度は可能だがそれで4Kチャンネルの普及が促進されるとは思えない。2020年、「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が4K・8K放送を楽しんでいる」というロードマップは“空中分解”寸前という危機感が広がっている。
 一方、8Kについては、未だに家庭用の8Kテレビや8Kチューナーが発売されていない。8K液晶モニター(85型)をシャープが発売したが、価格は約1600万円、とても家庭用とはいえない。8K試験放送を始めても一般家庭の視聴者は誰も見れないのである。公共放送NHKの放送サービスの基本は「広く、あまねく」、受信料制度で運営される放送サービスとして8K放送を開始するならこの原則を守らなければならない。8Kパブリックビューや医療分野での利活用は、放送サービスではない。8Kの「広く、あまねく」サービスの基盤整備は2018年までに構築できるのだろうか? 新4K8K衛星放送は、放送技術の“研究開発”レベルを超え、放送サービスなのである。NHKの経営責任が問われる。
 ロードマップでは、2018年中に新4K8K衛星放送を開始するとしている。早くも暗雲が立ち込めている。


キーポイントⅡ “左旋”の登場
 2014年年9月)の中間報告で、大きな課題として残された2018年以降の4K8K実用放送について、新たに左旋円偏波を使用して実施することが盛り込まれ、環境の整備を今後急ピッチで行う方針を新たに定めた。
 衛星から送信される電波は、右回りの右旋円偏波(右旋)と左周りの左旋円偏波(左旋)がある。右旋と左旋は、お互いに干渉しないので、双方を同時に使用して衛星放送を実施することができる。BS右旋は、日本に割当られ、BS左旋は韓国に割当られていた。CSは、右旋と左旋、共に、日本に割り当てられ、右旋はCSデジタル放送、左旋は通信用として使用されている。
 その後、各国間で国際調整が行われ、日本もBS左旋が利用可能になった。総務省では2020年ごろまでに、利用可能な11基のトランスポンダーの内、BS8、12、14の3チャンネル(トランスポンダー)を4K8K放送に割り当てるとしている。これで8K放送の1チャンネル、4K放送の6チャンネル(トランスポンダの帯域を3分割)の伝送路がBS「左旋円偏波」で確保されることになった。
 現在、静止軌道上でBSデジタル放送を行っている衛星「BSAT-3a」「BSAT-3b」「BSAT-3c」は、右旋(現行の衛星放送で使用)のみで、左旋に対応していない。2017年後半に打ち上げる予定の「BSAT-4a」は、Kuバンドのトランスポンダーを右旋用に12台と左旋用に12台を搭載しており、左旋を利用して、最大で8Kで12チャンネル、4kで36チャンネルの放送が新たに可能になる。
 しかし、「左旋波」を受信するためには、左旋用のパラボラアンテナや建物内配線、分配器やブースターなどの機器、チューナーなどの新たな設備が必要となるなど、視聴者の負担も生じ、「左旋波」の普及には難題を抱えている。


放送政策の動向と展望 2016年11月 総務省


「右旋波」、「左旋波」、「BS」、「CS] 4K8K放送の受信は複雑で視聴者に重荷  資料 ジョーシン WEB

 東経110度CS衛星については、現行の東経110度CS、N-SAT-110が耐用年数を迎えることから、スカパーJSATは後継機としてJCSAT-15を2016年12月22日に打ち上げた。
 JCSAT-15は、「右旋波」に加えて「左旋波」の13台のトランスポンダーを搭載し、総務省ではこの内、5トランスポンダーを使用して、4K放送、10チャンネル(トランスポンダーを2分割)の帯域を新4K8K衛星放送用に確保した。この内、8チャンネルがスカパー・エンターテインメントに割りてられた。スカパー・エンターテインメントでは、「J Sports1」、「J Sports2」、「J Sports3」、「J Sports4」、「スターチャンネル」、「日本映画・時代劇4K」、「スカチャン1 4K」、「スカチャン2 4K」をサービスする。また東北新社の「映画エンタテイメント・チャンネル」やSCサテライト放送の「ショップチャンネル」も「スカパー!」のプラットフォームに入り、「スカパー!」は合わせて10チャンネルの4K放送を開始する。さらにWOWOW4Kも「スカパー!」のプラットフォーム入る予定だ。これらの4Kサービスは、2019年夏を目途に、NTTの光回線を使用したフレッツ・テレビを通して始める予定だ。
 ちなみに東経110度CS衛星の「右旋波」については、「スカパー!」の従来の有料多チャンネルHD放送を始め、すでにサービスをしている「スカパー!4K総合」と「スカパー!体験」の2つのチャンネルを提供する。映画を提供する「スカパー!4K映画」(PPV:ペイパービュー・サービス )は2018年3月31日、サービスを終了した。
 また、BS「左旋波」については、SCサテライト放送「ショップチャンネル」、QVCサテライト「QVC」、東北新社「映画エンタテイメント・チャンネル」、WOWOWの4Kサービスの4チャンネルとNHKの8Kサービスの1チャンネルが割り当てられている。 
 一方、BS「右旋波」については、従来のHD放送に加えて、NHKと民放系列の合わせて6チャンネルの新4K8K衛星放送が加わる。
 さらに総務省では、2025年ごろにはBSと東経110度CSの「左旋波」を、4K・8K放送における中核的な伝送路として位置付けて、多用な4K・8K放送サービスを実現させるとし、そのために「右旋波」と同程度の「左旋波」の受信環境の整備に着手したいとしている。


キーポイントⅢ  BS「右旋波」の再編の実施
 総務省は、BS「右旋波」にNHKと民放系列5局の新4K衛星放送を実施するために、4K放送6チャンネル分の帯域を確保する必要があった。現在4K8K試験放送で使用しているBS17チャンネルは、放送が終了するので、新4K衛星放送3チャンネルの帯域として確保されている。残りの4K/3チャンネル分の帯域を生み出さなければならない。
 BSデジタル放送を放送している放送衛星(BSAT3A)は、8つのトランスポンダを搭載しているが、それぞれのトランスポンダ(中継器)1台当たりの帯域(1チャンネル)は48ス ロットという単位で分割されて使用している。1スロットで伝送可能な容量は約1Mbps、1秒間に1メガビットのデータを送信可能な帯域である。
 民放系列の衛星放送は1チャンネル、48スロットの帯域を2分割して、24スロットづつに分けて使用している。(NHKのBSデジタル放送2チャンネルは別扱い)
 総務省では各局が使用している帯域を放送サービスに影響のない範囲で返上してもらい、「幅寄せ」を行って「帯域再編」を実施して空いた帯域(7ch)と4K8K試験放送の帯域を使用することで、NHKと民放5局で新4K8K衛星放送を可能にした。
 BS日テレ、BS-TBS、BS朝日、BSフジ、BSジャパンは24スロットから16スロットに削減され、NHK-BS1も23スロットから20スロットへ、NHK-BSプレミアムは21.5スロットから18スロットに削減された。この結果、120スロットの空き帯域が生れ、40スロットに三分割されて、新4K8K衛星放送3チャンネルの追加が可能になった。


キーポイントⅣ  期限を2025年までに延長
 また前回の中間報告では、ロードマップの期限は2020年までとなっていたが、新ロードマップでは2025年まで延長して計画を定めた。
 新4K8K衛星放送の伝送路としてBS「左旋波」と東経110度CS「左旋波」を位置づけ、多様な超高精細4K8Kサービスを実現する。そのための基盤整備として、右旋の受信環境と同程度の受信環境を左旋でも整備したいとしている。しかし「左旋波」の普及拡大には難問が山積している。





総務省 4K/8Kロードマップに関するフォローアップ会合第二次中間報告

キーポイントⅤ  ケーブルテレビやIPTV、インターネットTVは4K8Kで先行
 IPTVやケーブルテレビ、インターネット・サービスでは相次いで4K実用放送を開始している。
 BSやCSの衛星放送で、4Kサービスを開始するには、新たな帯域を確保しなければならない。既存の衛星チャンネルは満杯で新たな4Kチャンネルが入り込む余地はほとんどない。そこで、苦肉の策として“左旋”利用が登場するということになるが、受信環境が複雑になるのが大きな課題だ。地上波は満杯、まったく論外で、総務省も地上波で4K放送を始める予定はない。
 それに比べて、大量のチャンネルのサービスが可能なケーブルテレビやIP-TVは、新たなサービスの4Kにも対応しやすいという優位性がある。
 「NTTぷらら」などが運営している「ひかりTV」は、2014年10月から、NTT東日本・NTT西日本の光回線「フレッツ 光ネクスト」を利用した4K-IPによる日本で初の「4KコンテンツVOD」を開始した。現在、約13000本の4Kコンテンツがラインアップされている。
 また2015年11月より4K-IP放送サービス、2チャンネルを立ち上げた。総合編成チャンネルの「ひかりTV 4K」(放送時間 10:00~26:00)、12月からは「エンタメ&トレンドニュース 報道チャンネル」(放送時間 10:00~26:00)を開始した。さらに2016年12月からは吉本興行と連携し、アイドルチャンネル「Kawaiian for ひかりTV 4K」を開始するなど4Kサービスに対する積極姿勢が目立つ。
 「ひかりTV」は、いち早く次世代超高精細映像、HDR(HLG)対応のVODサービスや4K-IP放送サービスに乗り出した。
 「ひかりTV」対応の4Kテレビは、5メーカー、60機種に広がり、スマホ向けの4Kサービスも開始した。
 「ひかりTV 」の視聴者は、光回線「フレッツ 光ネクスト」の加入と4K専用のセットボックスの設置と必要となる。シャープAQUOSや東芝REGZAの一部の機種では、光テレビ専用4Kチューナーが内蔵されている4Kテレビも発売されている。
 スマートフォンに4KVODコンテンツをダウンロードして、外出先や旅行先で視聴できるサービスも行っている。
 一方、 スカパー!は、IP-TVの“プレミアサービス光”で、 東経124/128度CSでサービスしていいる4K専門チャンネル、「スカパー!4K総合」や「スカパー!4K映画」、「スカパー!体験」の3つのチャンネルを、サイマル・サービスを行っている。

 総接続世帯数約2,600万を抱えるケーブルテレビ(CATV)も4K8Kサービスに積極的で、新たなビジネスチャンスと位置付けいてる。
 CATVの最大手、J:COMでは、2014年6月に4K試験放送を開始し、2015年5月に4K VODの実用サービスを開始した。
 2015年12月1日、全国のCATV事業者が協力して、4K専門チャンネル、「ケーブル4K」の放送を開始した。全国各地域のCATV事業者が地域の特色を生かした番組を制作して放送し、地域の生活を支えるメディアとしてプレゼンスを示したいとしている。
 現在62社がサービスを提供しており、将来的には、計120社以上のケーブルテレビ局がサービスを開始する予定だ。
「チャンネル4K」は、全国のケーブルテレビ各局などが制作したドキュメンタリーや紀行番組を毎日、朝6時から夜12時まで配信している。
 またチャンネル銀河、ファミリー劇場、ヒストリーチャンネルなどの専門チャンネルと連携して、スポーツ、エンターテインメント、趣味番組などの4Kコンテンツもあわせて放送する。 
 CATVでは、現在行われている「4K試験放送」の再送信を行い、2018年12月開始の新4K8K衛星放送が開始されると再送信を始めたいとしている。ケーブルテレビは新4K8K衛星放送普及の中核になりそうだ。


急成長している動画配信サービス インターネットTV(OTTサービス)
 ここ数年、インターネット回線を利用する動画配信サービスが急成長している。
 こうしたサービスは、OTT(Over-The-Top)と呼ばれているが、光回線の普及やLTEなどの移動体通信の高速化などの通信環境の基盤整備で、地上波や衛星波などの「空中波」との有意差はなくなり、超高精細の映像も容易に配信可能になった。
 インターネットTV(OTTサービス)事業者は、4Kサービスに意欲的だ。

▼ NETFLIX 4K
 2015年9月2日、日本に“上陸”する予定の世界最大のインターネットTV・オペレーター、“NETFLIX”は4Kもサービス開始している。“NETFLIX”は、映画やドラマが月額定額料金で“見放題”サービスがキャッチフレーズ、インターネット環境があれば、テレビ、スマホ、タブレット、PCなど多様な端末でサービスが利用可能だ。パナソニック、東芝、シャープ、LGでは、コントローラーに“NETFLIX”ボタンを搭載したテレビを日本国内で発売している。“NETFLIX”の4Kコンテンツは、プレミアム・サービスの契約をすれば視聴可能になる。

▼ Amazonプライム・ビデオ 4K
 2015年9月25日、世界のメディア企業の“巨人”、Amazonは、動画配信サービス“Amazonプライム・ビデオ” を日本で開始した。Amazonプライム会員になり、年会費を払えば、他のプライム会員の特典の付加サービスとして、“Amazonプライム・ビデオ”が提供するすべての映像コンテンツをいつでも見放題で楽しむことができる。“Amazonプライム・ビデオ”は、AndroidおよびiOSのスマートフォンやタブレット、ゲーム機器、SmartTVなど様々な端末で視聴可能なサービスである。サービス開始と同時に、超高精細4K Ultra HD映像のコンテンツも提供し-ている。

▼ 4Kアクトビラオ
 2014年12月11日、パナソニック、ソニー、シャープ、東芝、日立の5社のエレクトロニクス企業によって設立されたアクトビラは、“4Kアクトビラ”を立ち上げ、有料VODサービスを開始した。また2015年7月6日、4Kストリーミング・サービスも開始した。4K-VODサービスでは、映画やドラマ、ドキュメンタリー、グルメ番組、旅番組、スポーツなどを提供、4Kストリーミング・サービスでは、「NHKオンディマンド」のコンテンツ、自然番組やドラマ、旅チャンネルの旅番組を提供していが、コンテンツ不足は否めない。

▼ dTV 4Kサービス
 2015年11月25日、エイベックス通信放送は動画配信サービス「dTV」で、4Kコンテンツの配信を開始した。
 4Kサービスに対応しているのは、ソニーモバイル製スマートフォンのXperia Z5シリーズの最上位機種、世界ではじめて4Kシスプレイを搭載したスマートフォンで、5.5インチ4K(2160 × 3840)ディスプレイを搭載している。
 テレビへの4K配信についても、Android TV搭載の機種、ソニー「ブラビア」シリーズ、パナソニック「ビエラ」シリーズで対応機種が、今冬に発売される。
 4Kコンテンツの第一弾としては、人気音楽パーフォーマンス・グループ、「AAA」(トリプルA)のミュージックビデオシリーズ、2016年2月、初の4Kオリジナルドラマを制作してサービスを開始した。
 「dTV」は、NTTドコモとエイベックス・グループが設立したエイベックス通信放送が運営しているモバイル端末向けを中心にした動画配信サービス、契約者数は約468万件(2015年3月末)、配信コンテンツ約12万本、日本では最大の動画配信サービスである。
 モバイル端末向けに4K動画配信を実現した技術開発力は評価できるが、スマホなどの小さな画面で4Kサービスを行っても、その超高精細の威力はどの程度効果があるのかは、はなはだ疑問である。LTEを使用して4K動画を楽しむと、その通信料の負担増の問題が極めて大きく、あまり現実的サービスとは思われない。

こうしたインターネットTV(OTTサービス)は、いずれも4Kサービスに乗り出しているが、まだ開始して間もなく、コンテンツ不足が最大の課題である。しかし急成長している次世代動画配信サービスの勢いは、4K8Kサービスでも今後目を離せない。

総務省 衛星基幹放送による超高精細度テレビジョン放送に関する今後のスケジュール 2015年12月25日

8Kのサービス・モデルを描けないNHK その責任は?
 世界で最先端を行く超高精細8Kの技術は、NHKが独走している。NHKの技術陣が総力を挙げて開発しているだけあって、2016年の8K試験放送、2018年の8K実用放送の実現は問題ないだろう。民放各局と違って視聴料に守られた豊富な財源や技術陣に支えられているNHKは別格だ。
 しかし、技術開発は、往々にして、技術優先主義に陥って、何のために利用する技術開発なのか、どうやって使うのか、ユーザーの利便性は何かを検証することを怠るケースが往々にして発生する。新しい技術開発は常にサービス・モデル、そしてビジネス・モデルを念頭に置いて取り組むことが必須だ。
 8Kのサービス・モデルをNHKはどう考えているのだろうか? 家庭に普及させるというモデルが現実なのだろうか、冷静に分析する必要がある。  筆者は8K映像をたびたび視聴している。大画面で見る8K映像は、確かに息を飲むような高精細映像で迫力がある。映画館、劇場、公共施設等でのパブリック・ビューイングでは素晴らしい超高精細映像技術に間違いない。
 しかし、40~50インチ程度のモニターで8Kと4Kモニターを視聴して比べてみると、画面に目を近づけてみれば確かに、一目瞭然、8Kの映像の素晴らしい解像度ははっきり分かるが、4~5メートル程度離れて視聴すると有意差がはっきりわからない。次世代の高画質技術、4K-HDR(high dynamic range imaging)が登場してきた。4K-HDRと8Kを比べると有意差はさらにほとんどなくなる。
 24インチクラスの画面になると、フルハイビジョンのHD(2K)と比べてみても違いがわからなくなる。
 無論、100インチクラス以上の大画面では8Kは威力を発揮するが、一般の家庭ではあまり無縁だろう。
 SDがHDに移行したときは、32インチクラスのテレビで見ても明らかに画質に有意差があった。
 4Kテレビは価格が下がってきたこともあって、売れ行きは好調とである。
 しかし、さらに高額の8K対応のテレビやチューナーを買う視聴者は果たしてどれ位いるのだろうか? 家庭用の8K対応テレビは、70型で100万円程度でようやく発売が開始されたが、チューナーはまだ市販されていない。2018年12月の本放送開始までには発売するとしているが、このような状況の中では2020年、8Kの一般家庭の普及は絶望的だろう。視聴者は8Kに見向きもしない。
 一方、非放送系の分野からは、超高精細8K技術は注目を浴びている。
 医療分野では8K超高精細は脚光を浴びている。またセキュリティ・システムの分野でも超高精細8Kの導入が始まろうとしている。8Kの監視カメラの映像は、微細な部分まで写り込むのでセキュリティ管理には威力を発揮する。
 しかし、医療分野もセキュリティ分野の利活用も、放送法で規定されたNHKの業務範囲ではない。受信料を財源とするNHKは、放送サービスに還元しなければならない義務を負う。8Kの開発の目的を放送分野以外を主軸にすることは許されないだろう。パブリックヒビューイングも放送サービスではない。NHKは8K放送サービスを実現しなければその正当性が失われるこことを認識しなければならない。2020年、8K放送を「多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K放送を楽しんでいる」環境を作り出す責務をNHKは追っている。それが実現できなければ、放送機関としてのNHKの8K投資は受信料の“無駄遣い”と批判されるに値する。
 8K放送サービスに投じられた膨大な財源は地上波やBSデジタル放送のコンテンツの充実に振り向ければ、はるかに視聴者の利益になる。もしくは受信料値下げに結びつけるべきだ。


NHK 8K中継車
 
視聴者不在の超高精細4K・8K放送
 地上波デジタル放送(HD)、BSデジタル放送(HD)、BS-4K8K放送(右旋)、BS-4K8K放送(左旋)、110度CS(SD/HD)、110度CS(左旋 4K)、124度/128度CS(HD/4K)、4K-HDR、4K-SDR,あまりにも複雑過ぎて、筆者ですら一度では理解できない。
 まして一般の視聴者が理解するのはほとんど不可能だろう。それぞれの4K8K放送を受信するためには、専用のアンテナや共聴設備、ブースターや分配器、チューナー、対応受像機を更新する必要がある。互換機タイプの機器もすでに一部は開発され、多少は整理はされるだろうが、これだけ複雑怪奇になったテレビ・サービスに一般の視聴者はついて行くことができるのだろうか? しかも、数年おきに放送方式が目まぐるしく変わっていく。視聴者不在のスキームと言わざるを得ない。
 新4K8K衛星放送を開始するために、無理やりこれまで高画質で放送していたHD-BSデジタル放送の帯域を減らして画質を落としサービスを落とした。
 また未知数の左旋波まで繰り出すことで、受信設備更新させるなど視聴者に新たな負担を課すことになる。
 明らかに新4K8K衛星放送を開始するために相当な“無理”を強いているいることが明らかだ。こうしたスキームに視聴者は納得するのだろうか。
 超高精細4K・8K放送の伝送路は、これだけ無理をしなければできない衛星などの空中波はあきらめて、光回線やインターネット経由のサービスとして、「放送」サービスから切り離したらどうか。BS波はHDデジタル放送を充実させていけば十分で、視聴者の利益にかなうだろう。NHKと民放各社等は4K・8Kのコンテンツ制作を行い、放送とコンテンツ制作分離を行う方が合理的だ。4K・8Kサービスを衛星波で行う「新4K8K衛星放送」こだわる総務省の姿勢が問われる。

 総務省が策定したロードマップでは、2020年に「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K放送を楽しんでいる」と記述されているが、視聴者は果たして4K・8Kサービスについてくるのだろうか? 残された時間は2年しかない。
 1964年東京オリンピックでは、カラーテレビが、レガシー(未来への遺産)となった。
 それがきっかで、日本は映像技術で世界の最先端に躍り出て、その後のHDの開発でも日本は世界をリードした。8Kは2020年東京オリンピック・パラリンピックのレガシー(未来への遺産)になるのだろうか? 負のレガシー(負の遺産)に転落する懸念はないのだろうか?







初稿2016年11月20日 月刊ニューメディア掲載原稿加筆
2018年10月1日改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR





**************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
**************************************************

コメント

東京オリンピック 開催費用 小池都知事 開催経費 負の遺産 負のレガシー

2018年10月11日 10時45分21秒 | 東京オリンピック
“もったいない”五輪開催費用「3兆円」
青天井体質に歯止めがかからない!
どこへ行った「世界一コンパクトな大会」


★ 速報 会計検査院 国の五輪関連支出「8000億円」(10月4日) 開催経費の総額は約「3兆円」に

東京都 五輪関連経費 8100億円計上 開催経費総額は2兆円超
 2018年1月、東京都は新たに約8100億円を、「大会関連経費」として計上すると発表した。これまで公表していた「大会経費」の1兆3500億円、これで五輪開催経費は総額で約2兆1600億円に達することが明らかになった。
 「大会関連経費」の内訳は、バリアフリー化、や多⾔語化、各種ボランティアの育成・活⽤、教育・⽂化プログラムなどや都市インフラの整備(無電柱化等)、観光振興、東京・⽇本の魅⼒発信などである。
 問題は、膨張した五輪開催経費を削減するためのこれまでの東京都、国、組織委員会の取り組みが一瞬にして消え去ったことである。“コンパクトな五輪”の約束は一体、どこにいったのだろうか。
 未だに明らかにされていない国の“五輪開催経費”も含めると3兆円は優に超えることは必至だろう。
 依然として五輪開催経費の“青天井体質”に歯止めがかからない。



五輪開催経費 1兆3500億円 350億円削減 組織委
 2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は12月22日、大会経費について、今年5月に国や東京都などと合意した経費総額から更に350億円削減し、1兆3500億円(予備費を含めると最大で1兆6500億円)とする新たな試算(V2)を発表した。
 施設整備費やテクノロジー費など会場関係費用については仮設会場の客席数を減らしたり、テントやプレハブなど仮設施設の資材については海外からも含めて幅広く見積もりを取り、資材単価を見直したりして250億円を削減して8100億円とし、輸送やセキュリティーなどの大会関係費用については100億円削減して5400億円とした。
 開催経費の負担額は東京都と組織委が6000億円、国が1500億円でV1と同様とした。
 2016年末のV1予算では1兆5000億円(予備費を含めると最大で1兆8000億円)としたが、IOC調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮を求めており、組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。



東京都の五輪施設整備費 1828億円 413億円削減
 2017年11月6日、東京都は新たに建設する8つ競技会場の整備費は合計1828億円で、これまでの2241億円から413億円削減すると公表した。

 五輪施設整備費は、五輪招致後の策定された当初計画では4584億円だったが、2014年11月、舛添元都知事が経費削減乗り出し、夢の島ユース・プラザ゙・アリーナA/Bや若洲オリンピックマリーナの建設を中止するなど2241億円に大幅に削減した。
 2016年夏、小池新都知事は、五輪施設整備費の「見直し」に再び乗り出し、「オリンピック アクアティクスセンター」(水泳)、「海の森競技場」(ボート/カヌー)、「有明アリーナ」(バレーボール)の3競技場は、合計2125億円の巨費が投じられるとして再検討に取り組んだ。とりわけ「海の森競技場」は、巨額の建設費に世論から厳しい批判を浴び、「見直し」対象の象徴となった。
 小池都知事は都政改革本部に調査チーム(座長上山信一慶応大学教授)を設置し、開催計画の“徹底”検証を進め、開催費総額は「3兆円を超える可能性」とし、歯止めがなく膨張する開催費に警鐘を鳴らした。そして3競技場の「見直し」を巡って、五輪組織員会の森会長と激しい“つばぜり合い”が始まる。
 一方、2020年東京大会の開催経費膨張と東京都と組織委員会の対立に危機感を抱いた国際オリンピック委員会(IOC)は、2016年末に、東京都、国、組織委員会、IOCで構成する「4者協議」を開催し、調停に乗り出した。
 「4者協議」の狙いは、肥大化する開催経費に歯止めをかけることで、組織委員会が開催経費の総額を「2兆円程度」としたが、IOCはこれを認めず削減を求め、「1兆8000億円」とすることで合意した。しかし、IOCは“更なる削減”を組織委員会に強く求めた。
 小池都知事は、結局、焦点の海の森競技場は建設計画は大幅に見直して建設することし、水泳、バレーボール競技場も見直しを行った上で整備することを明らかにし、「アクアティクスセンター」(水泳)は、514~529億円、「海の森水上競技場」(ボート/カヌー)は 298億円、「有明アリーナ」(バレーボール)は339億円、計1160億円程度で整備するとした。

 今回、公表された整備計画では、小池都知事が見直しを主導した水泳、バレーボール、ボート・カヌーの3競技会場の整備費は計1232億円となり、「4者協議」で公表した案より約70億円増えた。
 「アクアティクスセンター」では、着工後に見つかった敷地地下の汚染土の処理費38億円、「有明アリーナ」では、障害者らの利便性を高めるためエレベーターなどを増設、3競技場では太陽光発電などの環境対策の設備費25億円が追加されたのが増加した要因である。
 一方、経費削減の努力も見られた。
 「有明テニスの森」では、一部の客席を仮設にして34億円を減らしたり、代々木公園付近の歩道橋新設を中止したりして23億円を削減した。
 この結果、計413億円の削減を行い、8つ競技会場の整備費は合計1828億円となった。
 五輪大会の競技場整備費は、当初計画では4584億円、舛添元都知事の「見直し」で2241億円、そして今回公表された計画では1828億円と大幅に削減された。

 新たな競技場の整備費が相当程度削減されたことについては評価したい。
 しかし最大の問題は、“五輪開催後”の利用計画にまだ疑念が残されていることである。
 海の森競技場では、ボート/カヌー競技大会の開催は果たしてどの位あるのだろうか。イベント開催を目指すとしているが成果を上げられるのだろうか。
 「アクアティクスセンター」は、すぐ隣に「辰巳国際水泳場」に同種の施設があり過剰な施設をどう有効に利用していくのか疑念が残る。
 さらに8つの競技場の保守・運営費や修繕費などの維持費の負担も、今後、40年、50年、重荷となってのしかかるのは明らかである。
 小池都知事は、膨張する五輪開催経費を「もったいない」とコメントした。
 8つの競技会場を“負のレガシー”(負の遺産)にしないという重い課題が東京都に課せられている。







開催経費「1兆3850億円」 都・国・組織委・関係自治体で費用負担大枠合意

組織委、6000億円、国、1500億円、都、6000億円
 2017年5月31日、2020年東京五輪大会の開催経費について、東京都、国、大会組織委員会、それに都外に会場がある7道県4政令市の開催自治体(「関係自治体」)は連絡協議会を開き、総額「1兆3850億円」の費用分担の大枠で合意した。
 組織委員会が6000億円、国が1500億円、東京都が6000億円としている。残りの350億円については、誰が負担するのかは、結論を先送りした。
 都外の会場の「仮設経費」は「立候補ファイル」通りに、全額東京都が負担することにした。
 しかし、東京都が「350億円」と試算した「警備、医療、輸送など開催に必要な事項」の開催関連経費については、東京都は「開催自治体」に負担を求めたが、積算根拠が不明朗で受け入れられないなどと反発が相次いで、調整がつかず、今後、整理・精査した上で、再協議をするとした。
 立候補ファイルでは、「関係自治体」は「警備や医療サービス、会場への輸送など大会開催に必要な事項を実施する」と記載されている。今回の協議会ではその負担原則を確認したが、合意の中に各自治体の具体的な負担額を盛り込むことはできなかった。
また都外の会場使用に伴う営業補償や移転補償については、都が負担し、国も補助金などの措置で「関連自治体」の負担分の軽減を検討するとした。

 協議会では、今後の経費負担のルールを確認するために「経費分担に関する基本的な方向」が了承された。
▼ 東京都
(1)会場関係費 都内・都外の仮設施設、エネルギーとテクノロジーのインフラ費、賃貸料 
(2)都内会場周辺の輸送、セキュリティ経費 
(3)パリンピックの4分の1の経費
(4)都所有の恒久施設整備費や既存施設の改修費。
▼ 組織委員会
(1)会場関係費 オーバーレイ 民間や国(JSCを含む)所有施設の仮設費
(2)エネルギーとテクノロジーのインフラ費、賃貸料
(3)大会関係費 輸送、セキュリティ、オペレーション日
(4)パリンピックの2分の1の経費 
▼ 国
(1)パリンピックの4分の1の経費 
(2)セキュリティ対策費、ドーピング対策費
(3)新国立競技場の整備費
▼ 関係自治体
(1)輸送、セキュリティ対策費
(2)関係自治体が所有する恒久施設の改修費

 東京都の小池百合子知事は「地は固まった」と評価した。
 丸川珠代五輪担当相は「地方がオールジャパンで進めていることを実感できるように国も支援したい」と述べ、補助金の活用などを検討する考えを示した。
 また、4者で仮設整備の発注などを一括で管理する「共同実施事業管理委員会」(仮称)を設置することでも合意した。

小池都知事 「1000億円」削減を強調  実質は最大「1兆6850億円」
 今回明らかになった2020東京大会の開催経費の総額は、「1兆3850億円」である。2016年12月、組織委員会が四者協議で明らかにした開催経費(V1)では「1兆5000億円」、それに予備費を1000億~3000億円とし、「1兆6000億円~1兆8000億円」とした。
 実は「1兆3850億円」も、予備費を1000億~3000億円を加えると、最大「1兆6850億円」となる。
小池都知事は「1000億円を超える額の圧縮」と強調し、負担軽減につなげたとしている。しかし、圧縮経費の詳細については、会場使用期間短縮による賃借料の縮減などを挙げたが、詳細な説明は避けた。
小池都知事にとって、五輪開催予算の圧縮は、豊洲市場問題と並んで最重要課題である。

“青天井”? 五輪開催経費 どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
 2020東京五輪大会の開催経費については、「1兆3850億円」では、到底、収まらないと思われる。
国が負担するセキュリティーやドーピング対策費は「1兆3850億円」には含まれてはいない。経費が膨張するのは必至とされているが、見通しもまったく示されていない。唖然とするような高額の経費が示される懸念はないのだろうか。
また今後、計画を詰めるに従って、輸送費や交通対策費、周辺整備費、要員費等は膨れ上がる可能性がある。
 「予備費3000億円」はあっという間に、使い果たす懸念がある。
組織委員会の収入も、2016年12月の試算から1000億円増で「6000億円」を目論んでいるが、本当に確保できるのであろうか。
 五輪関係経費は、国は各関連省庁の政府予算に振り分ける。各省庁のさまざまな予算項目に潜り込むため、国民の眼からは見えにくくなる。大会経費の本当の総額はさらに不透明となる。東京都の五輪関係経費も同様であろう。
また大会開催関連経費、周辺整備費、交通対策費などは、通常のインフラ整備費として計上し、五輪関連経費の項目から除外し、総額を低く見せる“操作”が横行するだろう。
 あと3年、2020東京五輪大会に、一体、どんな経費が、いくら投入されるのか監視を続けなければならいない。ビックプロジェクトの経費は、“大会成功”という大義名分が先行して、“青天井”になることが往々にして起きる。
新国立競技場整備費を巡っての迷走を忘れてはならない。
 2020東京大会のキャッチフレーズ、“世界一コンパクな大会”の開催理念はどこへ行ったのか。



第2回2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた関係自治体等連絡協議会の資料








4者協議トップ級会合 コーツIOC副会長はシドニーからテレビ電話で参加 2016年12月21日 Tokyo 2020 / Shugo TAKEMI

東京五輪の経費 最大1兆8000億円
 2016年12月21日、東京都、組織委員会、政府、国際オリンピック委員会(IOC)の4者協議のトップ級会合が開かれ、組織委員会が大会全体の経費について、最大1兆8000億円になると説明しました。組織委員会が大会全体の経費を示したのは今回が初めてである。
会議には、テレビ会議システムを使用され、コーツIOC副会長がシドニーで、クリストフ・デュビ五輪統括部長がジュネーブで参加した。
 冒頭に、小池都知事が、先月の会議で結論が先送りされたバレーボールの会場について、当初の計画どおり「有明アリーナ」の新設を決めとした。「有明アリーナ」は、五輪開催後はスポーツ・音楽などのイベント会場、展示場として活用すると共に、有明地区に商業施設やスポーツ施設も整備し、地区内に建設される「有明体操競技場」も加えて、、“ARIAKE LEGACY AREA”と名付けた複合再開発を推進して五輪のレガシーしたいと報告し了承された。
 「有明アリーナ」の整備費は約404億円を約339億円に圧縮し、東京都、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入して、民間資金を活用する。競技場見直しを巡る経緯について、小池都知事は「あっちだ、こっちだと言って、時間を浪費したとも思っていない」と述べた。
 これに対して、コーツIOC副会長は「協議を通して3つの会場に関して予算が削減できたし、有明アリーナの周りのレガシープランについても意見が一致した。こうした進展を喜ばしく思っている」と称賛した。



 一方、組織委員会は大会全体の経費について、1兆6000億円から1兆8000億円となる試算をまとめたことを報告し、組織委員会が5000億円、組織委員会以外が最大1兆3000億円を負担する案を明らかにした。
小池都知事は「IOCが示していたコスト縮減が十分に反映されたものということで、大事な「通過点」に至ったと認識している」と述べた。
これに対して森組織委会長は「小池都知事は『通過点』と行ったが、むしろ『出発点』だと思っている。今回の件に一番感心を持っているのは、近県の知事の皆さんである」とした。
一方、コーツIOC副会長は、「1兆8000億円にまで削減することができて、うれしく思っている。IOC、東京都、組織委員会、政府の4者はこれからも協力してさらなる経費削減に努めて欲しい」と「1兆8000億円」の開催予算を評価した。
 また開催経費分担について、小池都知事は、「コストシェアリングというのは極めてインターナルというかドメスティックな話なので、この点については、4者ではなく3者でもって協議を積み重ねていくことが必要だ」とし、「東京都がリーダーシップをとって、各地域でどのような形で分担ができるのか、早期に検討を行っていきたい」と述べ、年明けにも都と組織委員会、国の3者による協議を開き、検討を進める考えを示した。







開催経費「1兆8千億円」は納得できるか? 
 12月21日開催された4者協議で、武藤事務総長は「組織委員会の予算が、膨れ上がったのではないかいという報道があったが、そのようなものではない。ただ今申し上げた通り、IOCと協議をしつつ、立候補ファイルでは盛り込まれてはいなかった経費(輸送費やセキュリティ費)を計上して今回初めて全体像を示したものだ」と胸を張った。
 “膨れ上がってはいない”と責任回避をする認識を示す組織委員会に、さらに“信頼感を喪失した。
 東京大会の開催経費は、立候補ファイル(2012年)では、「大会組織予算」(組織委員会予算)と「非大会組織予算」(「その他」予算)の合計で7340億円(2012年価格)、8299億円(2020年価格)とした。これが、最大「1兆8千億円」、約2.25倍に膨れ上がったのは明白だ。組織委員会は“膨れ上がった”ことを認めて、その原因を説明する義務がある。
 さらに最大の問題は「1兆8千億円」の開催経費の総額が妥当かどうかである。
 海の森水上競技場の整備費の経緯を見ると大会準備体制のガバナンスの“お粗末さ”が明快にわかる。
 招致段階では、「約69億円」、準備段階の見直しで「約1038億円」、世論から強い批判を浴びると、約半分の「491億円」に縮減、小池都知事の誕生し、長沼ボート場への変更案を掲げると、「300億円台」、最終的に「仮設レベル」なら「298億円」で決着した。
 やはり東京五輪大会の運営組織のガバナンスの欠如が露呈している。
 海の森水上競技場以外に、同様に“杜撰”に処理されている案件が随所にある懸念が生まれる。「1兆8千億円」の開催経費の中に、縮減可能な経費が潜り込んでいると見るのが適切だろう。組織委員会の予算管理に対する“信用”は失墜している。
 「1兆8千億円」の徹底した精査と検証が必須でだ。
 「1兆8千億円」という総額は明らかにしたが、その詳細な内訳については、公表していない。「1兆8千億円」が妥当な経費総額なのかどうか、このままでは検証できない。まず詳細な経費内訳を公表する必要があるだろう。
 その上で、東京都、国、開催自治体の間で、誰が、いくら負担するかの議論をすべきだ。

「開催費用 1兆8千億円」だったら東京五輪招致を世論は支持した?
 組織委員会は「開催経費は決して膨れ上がっていない」と胸を張っているが、当時想定できなかった経費がその後加わったのか、想定はしていたが大会開催経費をなるべく少なく見せるために意識的に加えなかったのかはよく分からない。しかし、森喜朗会長自らTBSのニュース番組(2016年5月16日)に出演し、当初の大会予算について「最初から計画に無理があったんです。「3000億でできるはずないんですよ」と述べていた。
 舛添前都知事も「舛添要一東京都知事は、「『目の子勘定』で(予算を作り)、『まさか来る』とは思わなかったが『本当に来てしまった』という感じ」とした上で、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」とテレビ番組に出演して話している。
 あっさり「1兆8000億円」と言ってもらいたくない。
 開催費用を巡ってはまさに“無責任体制”のまま進められていたのである。
 2020東京五輪大会に立候補する際に、「開催費用 1兆8千億円」としたら、都民や国民は招致を支持しただろうか。招致の責任者の説明責任が問われてもやむを得ないだろう。

「組織委員会 5000億円」 “収支均衡”は“帳尻合わせ”の“まやかし”か?
 12月21日に開催された4者協議で、森組織委会長は「決して組織委員会のお金が5000億で、それより大きくなったので、その負担をなにか東京都と国に押し付けているのではないかいという報道がよくあるが、これはまったく違う」と述べた。
 組織委員会の提示した予算は、「組織委員会」が「5000億円」で「収支均衡予算」、東京都や国、開催自治体が「1兆3000億円」とした。
しかし、実態は、組織委員会の収入は「約5000億円」、収入から逆算して組織委員会の負担を「5000億円」に“調整”して、残りの「1兆3000億円」を、組織委員会以外の東京都、国、開催地方自治体の負担としたのであろう。なりふり構わず苦し紛れの“帳尻合わせ”予算と見るのが合理的である。
 組織委員会が負担すべき経費は、精査して積み上げたとしているが、どの経費を、いくらを合理的に積算したかは明らかでされていない。
その象徴が、仮設関連経費だ。予算書では、「組織委員会」が「800億円」、「その他」が「2000億円」としたが、どんな根拠で、どのように仕分けしたのか明らかにしていない。その他、「ソフト[大会関係]」の輸送、セキュリティ、テクノロジー、オペレーションも同様だ。「予備費」を全額「その他」に計上するのも、組織委員会の予算管理の責任を曖昧にすることにつながりかねない。
新国立競技場や海の森水上競技場、オリンピック アクアティクスセンター、有明アリーナなどの東京都が整備する恒久施設の経費は、すでに整備費が見直され、誰がどれだけ負担するか明らかになっている。同様のプロセスが必須だ。
 組織委員会の予算を、なにがなんでもなりふり構わず“均衡予算”にしないと、IOCの了解が得られなかったからであるからであろう。“みせかけ”の“均衡予算”になった。その“矛盾”は直ちに露呈するだろう。
 組織委員会が本来負担すべき経費を適正に積算して、総額がいくらなのかをまず明らかにするべきだろう。その上で、立候補ファイルの「3013億円」と比較して、経費が膨れ上った原因を明らかにすべきだ。
その上で、“帳尻”合わせの“操作”をしないで、“組織委員会の“赤字”は一体、どのくらいになるのかを明らかにし、責任の所在を明確にすることが必要だ。東京都や国、開催自治体に負担を要請するのはその後である。
 このままでは、組織委員会の開催予算管理の“杜撰”な体質が一向に改まらない懸念が大きい。

「1兆8000億円」の“仕分け”は妥当か
 そもそも「1兆8千億円」には、組織委員会が負担する経費ではなく、東京都や国が負担するのが当然と思われる経費も含まれている。立候補ファイル(2012年)でも、「大会組織予算」(組織委員会予算)と「非大会組織予算」(「その他」予算)に分けて開催予算を提示している。
 「警備費」は、「組織委員会」が「200億円」、「その他」が「1400億円」とした。 競技会場や選村、IBC/MPCなどの施設内の警備費は、組織委員会が負担するのは当然で、「200億円」は妥当な額なのだろうか疑問が残る。
 一方VIP関連、交通機関や主要道路、成田空港や羽田空港、さらに霞が関の政府機関、東京都庁や主要公共機関、電力・通信などの主要インフラ施設などの警備まで組織委員会の経費で負担させるのは合理性を欠く。また2020東京五輪の大きな課題であるサイバー攻撃対策の経費は国全体で取り組む必要があり、経費は国も応分の負担するのが適切だろう。
 伊勢志摩サミットでは国が約340億円の警備費を負担した。東京五輪大会の規模ともなるとこの数倍は楽に超えるだろう。国の負担も巨大になる。
 「輸送費」ついては、「組織委員会」が「100億円」、「その他」が「1300億円」としたが、選手や大会関係者のシャトルバス運行に伴う経費などは組織委員会が負担するのは当然だろう。地方開催の場合の選手や大会関係者の輸送も同様である。1300億円も組織委が負担すべきだ。
 しかし、VIPの選手や大会関係者の輸送に伴うオリンピック専用レーンの設置は、首都高速道路、湾岸道路などに広範囲に必須とされているが、約200億弱とされている通行制限に伴う高速道路会社への補てん費等は、東京都や国なども応分の負担するのは当然だろう。組織委員会と案分するのが筋である。
 「テクノロジー」や「オペレーション」については、それぞれ総額「1000億円」としたが、 内訳が示されていないため、経費総額の根拠が極めて曖昧になっている。
 「組織委員会」と「その他」の仕分けは、ほぼ折半とされているがこれも不明瞭だ。
 しかし今回は、「1000億円」は総額だけが記入されているまったく“白紙”同様の“請求書”を組織委員会が国、東京都に出したのである。これでは到底、納得することはできないだろう。
 「その他」の経費、「1150億円」は巨額だが内訳が明らかでない。精査する必要が必須である。
 また「3000億円」としている予備費を国や東京都などの「その他」に計上していることは納得できない。組織委員会の予算管理責任を曖昧にするからである。
 森組織委会長は「そして運営だとか場所の設定だとかその他もろもろのことがこれからある。改装の問題、エネルギーの問題、セキュリティの問題、いろいろある。セキュリティひとつにしてもどこが持つのか、やってみなければわからない。何が起きるのか不確定要素は多い。この東京大会は、特に夏だし、あるいは台風の多い時だ。何があるかこれからわからない。まだ3年、4年先の話だ」と述べている。
 自然災害や不測の事態が発生して、開催経費が膨れ上がり、予備費で補填するのはやむを得ないだろう。一方、組織委員会の予算管理を厳重に監視する必要がある。東京五輪大会の開催経費を巡る“混迷”を振り返ると、新国立競技場や海の森水上競技場など、その“青天井”体質への歯止めが必須だ。













開催費用の分担 “混迷”はさらに深刻化
 東京五輪大会開催経費の負担を巡っては、“混迷”を極めている。
 「あくまでも主催は東京都」(森組織委会長)、 「都と国の負担を注視する」(小池都知事)、「なぜ国でなければならないのか」(丸川珠代五輪担当相)、「開催経費は組織委員会が負担すべき」、互いを牽制(けんせい)する発言が飛びかい、費用負担を巡って険悪な雰囲気が立ち込めている。
12月26日、東京都以外で競技を開催する自治体の知事などが東京都を訪れ、関係する自治体のトップらが東京都の小池知事に対し、計画どおり組織委員会が全額負担するように要請した。
 これに対して、小池都知事は「年明けから関係自治体との連絡体制を強化する協議会を立ち上げる。東京都・国・組織委員会で協議を本格化させ費用分担の役割について年度内に大枠を決める」とした。
 2020東京大会では、東京都以外の競技会場が現時点で合わせて6つの道と県の13施設・15会場に及ぶ。
 その後、組織委員会を訪れ、森組織委会長と会談した。
 会議の冒頭、黒岩神奈川県知事が「費用負担は、立候補ファイルを確認して欲しい」と口火を切った。立候補ファイルには「恒久施設は自治体負担、仮設施設は組織委員会」と記載されている。
これに対して、森組織委会長は費用分担の話し合いが遅れたことを謝罪した上で、「小池さんが当選された翌日ここに挨拶に来られた。早くリオオリンピックが終わったら会議を始めて下さいとお願いした。待つこと何カ月、東京都が始めない、それが遅れた原因だ」とその責任は会場見直し問題を優先させた東京都にあるとした。
 さらに「(開催費用分担の原則を記載した)立候補ファイルは、明確に申し上げておきますが、私でも遠藤大臣でもなく東京都が作った。もちろん組織委員会さえなかったこれで組織委員会と怒られてもね。僕らがあの資料をつくったわけではないんです。私が(会長)になった時は、あれができていた」と述べた。
 サッカー競技の開催が決まっている村井宮城県知事に対しては、「村井さんの場合はサッカーのことでお見えになったんですよね。これは実は組織委員会ができる前に決まっていたんです。村井さんの立場はよく分かるけれども私どもに文句を言われるのはちょっと筋が違う」とした。
そしてボート・カヌー会場の見直しで宮城県の「長沼ボート場」が浮上した際に、村井氏が受け入れる姿勢を示したことにも触れ、「(長沼に決まっても)東京都がその分の費用を出せるはずがない。だからあなたに(当時)注意した」と牽制した。
 これに対して、村井宮城県知事は、「あの言い方ちょっと失礼な言い方ですね。組織委員会ができる前に決まったことは、僕は知らないというのは無責任な言い方ですね。オリンピックのためだけに使うものというのは当然でききますのでそれについては宮城県が負担するというのは筋が通らない」と反論した。
 12月21日の4者協議で、組織委員会、東京都、国の開催費用分担を巡って対立する雰囲気を感じ取ったコーツIOC副委員長は、組織委員会、東京都、国、開催自治体で「“経費責任分担のマトリクス”」を次の4者協議までに示して欲しい。これはクリティカルだ」と強調した。IOCからも東京五輪大会のガバナンスの“お粗末”さを、またまた印象づける結果となった。
 「準備が半年は遅れたのは東京都の責任」(森組織委会長)などと“無責任”な発言を繰り返しているようでは、東京五輪大会の“混迷”は一向に収まること知らない。

世界に“恥”をかいた東京五輪 “ガバナンス”の欠如
 2016年11月29日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者協議トップ級会合が、東京都内で開かれ、見直しを検討した3競技会場について、ボートとカヌー・スプリントは計画通り海の森水上競技場を整備し、水泳はアクアティクスセンター(江東区)を観客席2万席から1万5000席に削減して建設する方針を決めた。一方、バレーボール会場については、有明アリーを新設するか、既存施設の横浜アリーナを活用するか、最終的な結論を出さず、12月のクリスマス前まで先送りすることになった。しかし横浜アリーナの活用案は、競技団体の有明アリーナ意向が強いとして、「かなり難しい」(林横浜市長)情勢だ。
 「大山鳴動鼠一匹」、「0勝3敗」、小池都知事の“見直し”に対してメディアの見出しが躍り始めた。しかし会場変更は手段であって目的はない。目的は“青天井”のままで膨れ上がり、“闇”に包まれたままの開催経費の削減と透明化だ。
 海の森水上競技場については、11月30日放送の報道ステーションに出演した小池都知事は、「仮設というと安っぽい響きがあるので、“スマート”に名前を変えたらどうか。名前を変えるだけで随分スマートになる」とし、20年程度使用する「仮設レベル」の“スマート”施設として、建設費298億円で整備することを明らかにした。これまでの計画では約491億円とされていたのが約200億円も圧縮されたのである。
 海の森水上競技場の整備問題は、2020年東京オリンピック・パラリンピックの準備体制の“杜撰さ”を象徴している。唖然とする“お粗末”としか言いようがない。整備費の変遷を見るとその“杜撰さ”は明快だ。
 招致段階の「69億円」、見直し後の「1038億円」、舛添前都知事の見直しの「491億円」、「仮設レベル」最終案の「298億円」、その余りにも変わる整備費には“唖然”とする。「69億円」は“杜撰”を極めるし、「1038億円」をそのまま計画に上げた組織の良識を疑う。そして小池都知事が「長沼ボート場案」を掲げたら、一気に300億円台に削減されたのも“唖然”だ。やはり東京大会の運営組織のガバナンスの欠如が露呈している。海の森水上競技場以外にも同様に“杜撰”に処理されている案件が随所にある懸念が生まれる。事態は、予想以上に深刻だ。
 4者協議のトップ級会談で、組織委員会の武藤事務総長は“2兆円”を切る”と言明したが、コーツIOC副会長に「“2兆円“の上限だが、それも高い。節約の余地が残っている。2兆円よりずっと下でできる。IOCは、それははっきりさせたい」と明快に否定された。
 実は、“2兆円”の中で、新国立競技場や東京都が建設する競技場施設の整備費は20%弱程度で、大半は、組織委員会が予算管理する仮設施設やオーバーレイ、貸料、要員費などの大会運営費を始め、暴騰した警備費や輸送費などで占められているのである。IOCからはオーバーレイや施設の貸料が高すぎると指摘され、“2兆円”を大幅に削減した開催経費を年内にIOCに提出しなければならない。勿論、経費の内訳も明らかにするのは必須、都民や国民の理解を得るための条件だ。
 組織委員の収入は約5千億程度とされている。開催経費の残りの1兆円5000億円は、国、都、関係地方自治体が負担するという計算になる。一体、誰が、何を、いくら負担するのか調整しなければならない。しかし未だに実は何もできていないことが明らかになっている。
 ガバナンスの欠如が指摘されている今の組織委員会の体制で調整が可能なのだろうか?
 国際オリンピック委員会(IOC)にも危機感が生まれているだろう。世界は東京大会の運営をじっと見つめているに違いない。
 2020年まで4年を切った。


会見終了後、自ら進んで笑顔で握手して報道陣に“親密さ”アピール 12月2日 筆者撮影

海の森水上競技場、アクアティクスセンターは新設 バレー会場は先送り 4者協議
 2016年11月29日、東京大会の会場見直しや開催費削減などを協議する国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が日、東京都内で開かれ、見直しを検討した3競技会場について、ボートとカヌー・スプリント会場は計画通り海の森水上競技場を整備し、水泳競技場はアクアティクスセンター(江東区)を観客席2万席から1万5000席に削減して、大会後の「減築」は止めて、建設する方針を決めた。 一方、バレーボール会場については、有明アリーを新設するか、既存施設の横浜アリーナを活用するか、最終的な結論を出さす、12月のクリスマス前まで先送りすることになった。
 都の調査チームがボート・カヌー会場に提案していた長沼ボート場は、ボート・カヌー競技の事前合宿地とすることを、コーツIOC副会長が“確約”し、小池都知事も歓迎した。
 海の森水上競技場は当初の491億円から298億円前に整備費を縮減。アクアティクスセンターは座席数を2万から1万5000席に減らし、大会後の減築も取りやめたことで683億円から514~529億円に削減されると試算している。

 高騰が懸念されている開催経費について、組織委員会の武藤敏郎事務総長は「総予算は2兆円を切る」との見通しを示し、「これを上限としてこれ以下に抑える」とした。
 これに対し、IOCのコーツ副会長は「2兆円が上限というのは高過ぎる。削減の余地が残っている。2兆円よりはるかに下でできる」と述べ、さらに削減に努めるよう求めた。さらにコーツ副会長は、会合終了後、記者団に対し、組織委員会が示した2兆円という大会予算の上限については、「特に国際メディアの人に対して」と強調した上で、「IOCが2兆円という額に同意したと誤解してほしくない」と了承していないことを強調した。その理由については、「大会予算は収入とのバランスをとることが大切で、IOCとしては、もっと少ない予算でできると考えている。現在の予算では、調達の分野や賃借料の部分で通常よりもかなり高い額が示されているが、その部分で早めに契約を進めるなどすれば、節約の余地がある」と述べた。


小池都知事と上山特別顧問 4者協議トップ級会合 筆者撮影

小池都知事が“主導権” トップ級会合
 四者協議トップ級会合は当初、一部非公開で議論される予定だったが、小池百合子都知事の意向で完全公開となった。会合後に記者団に対して、小池知事は、「フルオープンでない部分があると聞いて、だったら最初から結論を言ったほうがいいと思って、そのようにした」と述べ、変更した理由を明らかにした。まずは異例の“全面公開”の会合にすることで小池都知事のペースで始まった。
 小池都知事は、議論を後回しにして、冒頭で「ボート・カヌー会場は海の森水上競技場、オリンピック アクアティクスセンターは予定通り建設、バレーボール会場は先送り」の東京都案を明らかにした。これに対して組織委員会は不満の意を唱えたが、進行役のコーツIOC副会長が引き取って、IOCとして東京都案を支持すると表明し、東京都案はあっさり承認された。
 小池都知事は会合開始直前に、コーツ副会長に“直談判”をして、“全面公開”と“バレーボール会場の先送り”を承諾してもらったことを、報道ステーション(11月30日)に出演して、明らかにしている。小池都知事は、ボート・カヌー会場を海の森水上競技場することの“見返りに”、バレーボール会場の先送りをIOCに認めさせたのであろう。IOCは、渋々認めたというニュアンスが、「(横浜アリーナの検証作業は)大変な作業になる。野心のレベルが高い作業だ」(コーツ氏)という発言から伺える。
 また小池都知事は、「日常的にメールでコーツ副会長とは連絡を取り合っている」(報道ステーション)と、コーツ副会長とのホットラインが築かれていることを明らかにした。どうやらIOCとのパイプは、森氏だけではなくなったようである。会合が終わって、真っ先に小池都知事がコーツ副会長に近づいて笑顔で握手をしていた。
 森組織委会長は、東京都のバレーボル会場の横浜アリーナ案について強く反発し、「クリスマスまで何を検証するのか」とか「僕の知りうる情報では横浜の方が迷惑していると聞いている」としたが、これに対して小池都知事は「横浜市にも賛同してもらったところで、お決め頂いたら是非やりたいという言葉を(横浜市から)もらっていた」と反論した。
 双方、言い分がまったく違うので、一体どうなっているのかと思ったら、会合終了後、組織委員会から記者団に対して、「先ほどの森組織委会長の発言は、“迷惑”としているのは事前に何の相談もなかった競技団体で、『横浜』ではありません」と訂正要請がされた。森組織委会長は小池都知事にボート・カヌー会場の見直しや横浜アリーナ案に対して、たびたび強い口調で批判をし、両者の間に“火花”が散っていた。
 ちなみに林横浜市長は「困惑はしていない。要請があればそこからスタートする。積極的に是非やってほしいという言い方はとてもできない」と微妙な立場を述べている。また横浜市は東京都と組織委員会に対して、書面(11月25日付)で「国際、国内の競技団体、さらにIOCの意向が一致していることが重要」とか「(民有地を利用する際の住民理解や周辺の道路封鎖などは)一義的に東京都や組織委員会が対応すべき」と事実上難色を示した内容を通知しているこが明らかになった。横浜市は、四者協議の資料として提出したもので、具体的な内容は「配慮のお願い」で新たな意思決定ではないとした。
 さらに開催費用の議論については、東京五輪大会をめぐる“迷走”ぶりを象徴している。
 森組織委会長は、「“3兆円”を国民に言われるとはなはだ迷惑だ」と都政改革本部を批判した。これに対して小池都知事は「“3兆円”は予算ではなく、大会終了後、結果として総額でいくらかかったかを試算するものだ。予算段階では公にできないものもある」と反論した。また森組織委会長は、「警備費や輸送費などは国が持つことを検討してほしい」と述べたのに対し、丸川五輪相は「平成23年の閣議了解で大会運営費は入場料収入や放送権収入でまかなうとしている」と述べ、否定的な姿勢を示した。IOCのメンバーを前に、開催費用や費用負担を巡って、組織委員会、国、都がバトルを繰り広げたのである。コーツIOC副会長は、「関心を持って聞いた」としたが、本音、何ともお粗末な東京五輪の運営体制と唖然としたに間違いないだろう。東京大会の招致で高らかに世界各国に訴えた“マネージメント力の卓越さ”は一体、どこへいったのか? 
 組織委員会は、開催費用“2兆円”とし、その概要をトップ級会合でコンセンサスを得たいという思惑があったと思える。しかし、IOCから“2兆円”は高額過ぎると厳しい批判を浴び、結局、“2兆円を切る”という程度の表現しかできず、組織委員会は東京五輪の開催経費の総額と概要を今回も示せなかった。その“2兆円”もIOCから否定されさらに大幅に削減するように求められ、組織委員会の面目はまるつぶれお粗末さを露呈した。 IOCにとって、“経費削減”、“肥大化の歯止め”は、五輪大会の持続性を確保するために至上命題なのである。“2兆円”を1兆円以上切り込む必要が迫られている。 その対象は競技場の建設費ではなく、組織委員会が管理する大会運営費である。瀬戸際に立たされたのは組織委員会だ。
 東京五輪の“迷走”と“混乱”はまだまだ続きそうだ。


海の森水上競技場 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


オリンピック アクアティクスセンター 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


有明アリーナ 東京都オリンピック・パラリンピック準備局




小池都知事VSバッハIOC会長 “軍配”は? 
 小池都知事とバッハIOC会長の会談は、当初は、冒頭のみ報道陣に公開する予定だったが、小池都知事の要請で異例の全面公開となった。殺到した取材陣は合計139人、午後2時過ぎに行われたこともあって、民放の情報番組では生中継で会談の模様を伝えた。
 11月に開催される4者協議も、小池都知事はオープンにしたいと要請し、バッハ会長もこれを承諾したとされている。
 翌朝の朝刊各紙は、「同床異夢」(朝日新聞)、「四者協議 都にクギ」(読売新聞)、「IOC会長 先制パンチ」(毎日新聞)、スポーツ紙では「小池知事タジタジ、IOC会長にクギ刺されまくる」(日刊スポーツ)などの見出しが並んだ。
 小池都知事は、都政改革本部が主導して海の森水上競技場など3会場の抜本的な見直しをまとめ、東京都が主導権をとって、IOCや競技団体と協議を行うという作戦だったと思える。ところがコーツIOC会長は、経費削減という総論には賛同しながら、具体的な方策については、「四者協議」の設置を提案し、東京都、組織委員会、政府、IOCの四者で競技場の見直し協議を行うことを提案した。「四者協議」の設置が合意された。国際オリンピック委員会(IOC)からはコーツ副会長が、出席し、IOCの代表を一任される。コーツ副会長は、元オリンピック選手で国際ボート連盟の“ドン”と言われ、五輪開催地の競技場整備の指導・監督をするIOCの調整委員会の委員長で、大きな権限を握る実力者だ。コーツ副会長は、「シドニー(コーツ氏の地元)では海水でボート・レースをやっているから問題はない。日本人は気にすべきでないしIOCとしても問題ない」とし、海の森水上競技場を暗に支持する発言を繰り返している。
 小池都知事の思惑からすれば、「四者協議」は誤算だったに違いない。小池都知事と森組織委会長の対立激化に懸念を深めたバッハIOC会長が業を煮やして混乱の収拾に乗り出して、小池都知事にクギを刺して、組織委員会に“助け船”を出したということだろう。
 これまで五輪を巡るさまざま局面で難題を処理してきたコーツIOC会長の巧みな対応は、さすがということだ。
 しかし、小池都知事は決して“敗北”はしていいない。
 「四者協議」で、都政改革本部が提案した3つ競技場の見直しがたとえうまくいかなくても、“失点”にならないと思える。
海の森水上競技場の見直しでいえば、小池都知事が“仕掛けている”長沼ボート場への変更についても、仮に現状のまま、海の森水上競技場の開催で決着しても、それは、組織委員会や競技団体、IOCが反対したからだと説明すれば、責任回避ができる。
 また、海の森水上競技場は、埋め立て地という地盤条件や自然条件を無視して建設計画が進められていて、極めて難しい整備工事になるのは間違いない。海面を堰き止めて湖のような静かな水面を保つのも至難の業で、難題、風と波対策がうまくいくかどうがわからないし、施設の塩害対応も必要だろう。つまり、海の森水上競技場は計画通り建設しても、実際に競技を開催しようとすると不具合が次々と露見して、追加工事や見直しは必須だろう。まだ誰もボート・カヌーを実際に漕いだ選手はいないのである。競技運営も天気まかせで、開催日程通り進められるかどうか、極めてリスクも多い。
 その責任は、海の森水上競技場を推進した組織委員会や競技団体がとるべきだろうと筆者は考える。整備費、約491億円の中に、なんと約90億円の巨額の予備費が計上されている。つまりかなりの追加工事が必要となる難工事になると想定しているからである。経費削減で予備費も無くそうとしているが、追加工事が必要となったらどうするのか? 風や波対策の追加工事の必要になったらその請求書を東京都は組織委員会や競技団体送り付けたら如何だろうか?
 ボート・カヌー競技の長沼ボート場への誘致に力を入れて取り組んだ宮城県にとっても、たとえ誘致がうまくいかなくても、いつのまにか忘れさられていた「復興五輪」という東京五輪のスローガンを国民に蘇らせることができたのは大いにプラスだろう。これまでほとんど誰も知らなかった長沼ボート場は一躍に全国に名前が知られるようになった。
 また、バッハIOC会長は安倍総理との会談で、追加種目の野球・ソフトボールの被災地開催を検討したいと述べ、結果として「復興五輪」は更に前進することになりそうである。小池都知事が強調した「復興五輪」は、野球・ソフトボールの被災地開催が実現する方向で検討されることになり、形は変わるが小池都知事の“功績”に間違いない。
 開催経費削減についても、海の森水上競技場でいえば、小池都知事と都政改革本部が「長沼ボート場」移転案を掲げたことで、あっという間に、整備費用が約491億円から約300億円に、なんと約190億円削減されることになりそうだ。小池都知事が動かなかったら、東京都民は約190億円ムダにしていたところだ。さらに東京都が再試算すると、オリンピック アクアティクスセンターで約170億円、有明アリーナで約30億円、3施設の合わせて、最大で約390億円削減できる見通しとなったとされている。
 約390億円は“巨額”だ。これも小池都知事の大きな“功績”、東京都民は“感謝”しなければならないだろう。
 小池都知事は「四者協議」の設置で、IOCと同じテーブルにつき、直接、議論をする場を確保した。また「四者協議」で具体的な見直し案を提出できるのは東京都しかと思われる。組織委員会や競技者団体は、経費削減の具体的な対案を提出する能力はないだろう。結局、“受け身”の姿勢をとらざるを得ない。やはり都政改革本部が見直しの主導権を握っているのだろう。しかし、IOCも絡んできたことで、“混迷”は更に深刻化したことは間違いない。一体、誰がどのように収束させるのだろうか?まったく見通せない状況になった。



五輪ボート・カヌー会場見直し 3案に絞り込み検討 彩湖は除外
 2016年10月20日、都政改革本部の調査チームは、ボート・カヌーの会場について「海の森水上競技場」を現在の計画どおり整備するだけでなく、大会後に撤去する仮設施設として整備することを新たな提案として加え、宮城県のボート場に変更する提案とともに、3つの案に絞り込んで検討を進めることを明らかにした。
 1案は、海の森水上競技場をコスト削減したうえで現在の計画通り、恒久的な施設として整備するという案、2案は、海の森水上競技場を大会後に撤去する仮設施設として整備する案、3案は、宮城県登米市にある「長沼ボート場」に変更する案でこの3つの案に絞り込んで検討を進めているとした。
 また調査チームは、これまで候補地として提案されていた埼玉県の彩湖については、洪水や渇水対策のための調整池であり、国土交通省の管轄のため難しいという見解を示し、検討をすすめる候補地から除外するとした。
 都政改革本部の上山信一特別顧問は「海の森水上競技場は工事が始まっているので明らかに本命であるが、今回はそれ以外も考えようとしている。アスリートの声は大前提として重要だが、実現可能性の確率が高く、時間がかからないことが絶対的な条件だ」と述べた。
 さらに都の調査チームは、3つの案について、公表されている資料を基に、整備費用などを示した。
 「海の森水上競技場」を現在の計画どおり、恒久的な施設として整備する場合は、都がコストを見直した結果として300億円前後とする試算に加え、観客席など仮設の設備のための整備費用が加わるとしている。
 「海の森水上競技場」を大会後に撤去する仮設施設として整備する場合は、どのような施設にするかなどについて、チームで精査している状況とした。
 宮城県の「長沼ボート場」に変更する場合は、県の試算として150億円から200億円としている。
 調査チームは競技会場の建設費を始め、大会後にレガシー・遺産として残るかや大会後に必要な維持費も検討したうえで、さらに詳細な報告書を小池知事に提出し判断材料にしてもらうとしている。

小池知事がコスト削減説明 バッハIOC会長は理解示す 4者会合開催で合意
 2016年10月18日、会談は東京都庁にバッハ会長が訪れて開かれた。
 冒頭、“3兆円”に膨れ上がったとされる開催費用のコスト削減について、小池都知事は「(競技場)の見直しについては80%以上の人たちが賛成をしているという状況にある。都政の調査チームが分析し、3つの競技会場を比較検討した。そのリポートを受け取ったところで、今月中には都としての結論を出したい。オリンピックの会場についてはレガシー(未来への遺産)が十分なのか、コストイフェクティブ(費用対効果)なのか、ワイズスペンディングになっているのか、そして招致する際に掲げた『復興五輪』に資しているかということがポイントになる」と述べた。
 これに対し、バッハ会長は「“もったいない”ことはしたくない。IOCとしてはオリンピックを実現可能な大会にしていきたい。それが17億ドル(約1770億円)を(組織委員会に)拠出する理由だ」と語り、小池都知事は親指を挙げて笑顔で答えた。
 そして、バッハ会長は、コスト削減を検討する新たな提案として、「東京都、組織委員会、日本政府、IOCの四者で作業部会を立ち上げ、一緒にコスト削減の見直しを行うということだ。こうした分析によってまとめられる結果は必ず“もったいない”ということにはならないと確信している」とした。
 これに対して小池都知事は、「来月(11月)にも開けないか」と応じた。
 また抜本的な見直しの検討が進められている海の森水上競技場については、会談に中では、長沼ボート場や彩湖の具体的な候補地は出されなかった。
 バッハ会長は、「東京が勝ったのは非常に説得力のある持続可能で実行可能な案を提示したからです。東京が開催都市として選ばれた後に競争のルールを変えないことこそ日本にとっても東京にとってもIOCにとっても利益にかなっていると思う」と暗に海の森水上競技場の見直しを牽制した。
 会談は、当初は、冒頭のみ報道陣に公開する予定だったが、小池都知事の要請で異例の全面公開となった。殺到した取材陣は合計139人、午後2時過ぎに行われたこともあって、民放の情報番組では生中継で会談の模様を伝えた。
 11月に開催される4者協議も、小池都知事はオープンにしたいと要請し、バッハ会長もこれを承諾したとされている。
 翌朝の朝刊各紙は、「同床異夢」(朝日新聞)、「四者協議 都にクギ」(読売新聞)、「IOC会長 先制パンチ」(毎日新聞)、スポーツ紙では「小池知事タジタジ、IOC会長にクギ刺されまくる」(日刊スポーツ)などの見出しが並んだ。
 小池都知事は、東京都が主導で3会場の抜本的な見直しをまとめ、その後、組織委員会やIOCと協議を行うという作戦だったが、コーツ会長の「四者協議」提案で、思惑通りいかない状況になってきたのは誤算だっただろう。しかし、「四者協議」の具体的な見直し案を提出できるのは東京都しかないだろう。東京都の掲げる「復興五輪」を組織委員会も国も反対できない。しかし、IOCも絡んできたことで、“混迷”は更に深刻化したことは間違いない。一体、誰がどのように収束させるのだろうか?まったく見通せない状況になった。

東京五輪費用「3兆円超」 都チーム推計 3施設見直し案 ボート・カヌー会場は長沼(宮城県)を提言
★ 東京五輪費用「3兆円超」
 「結果から申し上げると今のやり方のままでやっていると3兆円を超える、これが我々の結論です」
 2016年9月29日、2020年東京五輪・パラリンピックの開催経費の検証する都政改革本部の調査チーム座長の上山信一慶応大学教授はこう切り出し、大会経費の総額が「3兆円を超える可能性がある」とする報告書を小池都知事に提出した。
 大会経費は、新国立競技場整備費(1645億円)、都の施設整備費(2241億円)、仮設整備費(約2800億円)、選手村整備費(954億円)に加えて、ロンドン五輪の実績から輸送費やセキュリティー費、大会運営費などが最大計1兆6000億円になると推計。予算管理の甘さなどによる増加分(6360億円程度)も加味し、トータルで3兆円を超えると推計した。 招致段階(13年1月)で7340億円とされた大会経費は、その後、2兆円とも3兆円とも言われたが、これまで明確な積算根拠は組織委員会や国や東京都など誰も示さず、今回初めて明らかにされた。
調査チームは「招致段階では本体工事のみ計上していた。どの大会でも実数は数倍に増加する」と分析。その上で、物価上昇に加えて、国、都、組織委の中で、全体の予算を管理する体制が不十分だったことが経費を増加させたと結論付けた。 

★ 「司令塔」不在
 上村座長は、「お金の管理ですが、そもそも一体いくらかかるのか誰も計算していない。内訳なども全く情報開示されず積み上げもどれだけされているのかよく分からない。都民の負担を考えるとこれでは際限なく各組織が良い仕事をすればするほど請求書が全部東京都に回ってくる」とし、「今回の準備体制は驚いたことに社長がいない、財務部長がいないという構造になっている。全体を『こう変えていこう』、『こうしよう』と先取りしてビジョンを出す役割の人がそもそも存在しない状況になっている」として司令塔不在の運営体制を強く批判した。
そして、「国と都と組織委員会が別々に予算を管理する『持ち寄り方式』にある。総額に上限を定めた上で、国か都が予算を一元管理すべき」と提言した。
 小池都知事も「「ガバナンスの問題が、結局、ここ一番、難しいところだと思っている。この辺も加速度的に進めていくためにガバナンスの問題は極めて大きな問題だ」と語り、東京都が主導権をとっていく姿勢を明確にした。


都政改革本部 調査チーム調査報告書

★ 3施設の整備見直しを提言 
 ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」は、当初計画の7倍の約491億円に膨れ上がった経費に加えて、「一部の競技者が会場で反対している」「大会後の利用が不透明」だとして、宮城県長沼ボート場を代替地に提言した。「復興五輪」の理念にも合致するとしている。
 観客席2万席で設計した水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」は、大会後に74億円をかけて5000席に減らす計画を疑問視し、規模縮小や近くにある「東京辰巳国際水泳場」の活用の検討を提言した。バレーボール会場の「有明アリーナ」は、規模縮小のほか、展示場やアリーナの既存施設の活用を提案した。「有明アリーナ」については、既存施設の「横浜アリーナ」への変更を検討していることが報道されている。
仮設施設整備については、約2800億円に膨れ上がった整備について、国や組織委、東京都の費用負担の見直しにも言及し、都内に整備する仮設施設の内、最大1500億円は都が負担し、都外については「開催自治体か国」が負担するよう提言した。
 また東京都は、組織委に58億5000万円の拠出金を出し、245名もの東京都職員を出向させていることから、組織委を「管理団体」にするなど、都の指導監督を強化する必要性も指摘した。
これに対し、森組織委会長は、「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べた。
 また海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)がいいと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いしてみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と語った。
 一方、IOCのバッハ会長は、東京五輪の開催費用の増加について、「東京における建設費の高騰はオリンピック計画だけでなく、東日本大震災からの復興など、そのほかの理由もあるだろう」とし「建設的な議論をしたい」として柔軟に対応する姿勢で、今後東京都や組織委員会と協議を始める意向を示した


都政改革本部 五輪調査チーム調査報告書

オリンピックの“感動”は競技場からは生まれない
 2016年8月に行われたリオデジャネイロ五輪、日本選手の活躍に大いに沸き、感動を残した。
感動を残したのは、マツタカペアの金メダル、女子卓球団体で銅メダルを手にした“愛ちゃん”、伊調選手の5連覇、水泳陣の活躍、そして男子400目メートルリレーの銀メダル、選手の活躍だ。
 しかし、陸上競技場やオリンピックプール、バドミントンや卓球、レスリングの競技場の施設がどんな建物だったか記憶にある人はいるのだろうか。オリンピックで感動を与えるのは、競技場ではない。
 北京五輪のオリンピックスタジアムとして“鳥の巣”が建設された。そのユニークなデザインと壮大な規模に世界は目を見張った。しかし、立派な施設を造ったなと感心はしたが、感動した人はだれもいないだろう。“鳥の巣”は、直後は観光の名所になったが、その後は競技会の開催も少なく、閑散としているという。北京市は施設の維持管理費の重荷に悩まされている。「世界で一番をめざそう!」というキャッチフレーズで始まった新国立競技場の建設計画は“迷走”に“迷走”を重ねたうえ、挫折したのは記憶に新しい。ザハ・ハディド氏の斬新な流線形のデザインは確かに目を見張るものがあった。 しかし、当初予算の約1300億円を大幅に超える3000億円超に膨れ上がった建設費は国民から拒否された。
 東京オリンピック・パラリンピックが開催されるのは、わずか30日間、大会後に膨大な次世代への負担を残すのは無責任だろう。
 やはり東京オリンピック・パラリンピックは“負のレガシー”を残すことになるのだろうか。




月刊ニューメディア(2016年10月号)掲載 加筆>





2018年1月20日
Copyright (C) 2018 IMSSR


******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************



コメント (9)

東京オリンピック 競技場 競技会場 最新情報(下)

2018年10月11日 08時14分39秒 | 東京オリンピック

「3兆円」! 膨張する開催経費 どこへいった五輪開催理念
“世界一コンパクトな大会”(下)




会計検査院 国の五輪関連支出「8000億円」と指摘(10月4日) 開催経費の総額は約「3兆円」に









東京オリンピック・パラリンピックの全競技会場決まる IOC承認
 2018年5月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで開いた理事会で2020年東京五輪大会のサッカー7会場を一括承認した。これで東京オリンピック・パラリンピックの43競技会場がすべて決まった。
 オリンピッックは42会場、パラリンピックで21会場(ボッチャ競技のみ幕張メッセCでパラリンピック単独で開催 その他はオリンピックと共通競技会場を使用)で開催される。
 この内、オリンピックで開催される競技数は、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を加え、合計競技数は33競技、種目数は339種目で、選手数の上限を11,900人とすることが決定されている。
 一方、パラリンピックは22の競技が開催される。
 今回、承認されたのは「札幌ドーム」、「宮城スタジアム」、「茨城カシマスタジアム」、「埼玉スタジアム」、「横浜国際総合競技場」、「新国立競技場」、「東京スタジアム」の7会場で、決勝は男子が「横浜国際総合競技場」、女子は「新国立競技場」で行う案が有力とされている。
 今回承認された43の競技会場の内、新設施設18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設25か所を整備するとしている。既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では最大限既存施設を利用したと胸を張る。
 しかし、競技会場の決定に至る経過は、相次いだ“迷走”と“混迷”繰り返した結果である。国際オリンピック委員会(IOC)や世界各国からも厳しい視線が注がれた。
 当初計画の約3倍の「3088億円」の建設に膨張し世論から激しい批判を浴び、ザハ・ハディド案を撤回して“仕切り直し”に追い込まれた「新国立競技場」、東京都の整備費が「4584億円」にも達することが判明して、「建設中止」や「会場変更」、「規模縮小」が相次いだ競技会場建設、「無駄遣い」の象徴となった「海の森水上競技場」の建設問題、唖然とする混乱が繰り返された。
 2020東京大会の開催にあたって掲げられたキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、そのキャッチフレーズはどこかに吹き飛んでしまった。
 競技場やインフラを建設すると、建設費だけでなく、維持管理、修繕費などの膨大な後年度負担が生れることは常識である。施設の利用料収入で収支を合わせることができれば問題は生まれないが、「赤字」になると、今後40年、50年、大きな負担を都民や国民が背負わされることになる。
 日本は、今後、超高齢化社会に突入することが明らかな中で、コンパクトでスリムな社会の求められている中で、競技場やインフラ整備は必要最小限にとどめるべきであろう。
 2020年東京都オリンピック・パラリンピックの開催を、負のレガシー(負の遺産)にすべきではない。

東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 競技会場の全貌 


五輪開催経費「1兆3500億円」 350億円削減 組織委
2017年12月22日、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は、大会経費について、今年5月に国や東京都などと合意した開催経費から350億円を削減し、総額1兆3500億円(予備費を含めると最大で1兆6500億円)とする新たな試算(V2)を発表した。
 試算によると、施設整備費やテクノロジー費など会場関係費用については、仮設会場の客席数を減らしたり、テントやプレハブなど仮設施設の資材について海外からも含めて幅広く見積もりを取り、資材単価を見直したりして250億円を削減して8100億円とし、輸送やセキュリティーなどの大会関係費用については、100億円削減して5400億円とした。
 開催経費の負担額は東京都と組織委が6000億円、国が1500億円となった。
 2016年末のV1予算では1兆5000億円(予備費を含めると最大で1兆8000億円)としていたが、IOC調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮を求めており、組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。



東京都の五輪施設整備費「1828億円」 413億円削減
 2017年11月6日、東京都は新たに建設する8つ競技会場の整備費は合計1828億円で、舛添元都知事の「見直し」案の2241億円から、413億円削減すると公表した。
 今回公表された整備計画では、小池都知事が見直しを主導した水泳、バレーボール、ボート・カヌーの3競技会場の整備費を計1232億円とし、計1160億円程度とした「4者協議」で明らかにした案より約70億円増えた。
 「オリンピックアクアティクスセンター」では、着工後に見つかった敷地地下の汚染土の処理費38億円、「有明アリーナ」では、障害者らの利便性を高めるためエレベーターなどを増設、3競技場では太陽光発電などの環境対策設備費25億円が追加されたのがその要因である。
 一方、経費削減の努力も行い、「有明テニスの森」では、一部の客席を仮設にして34億円を減らし、代々木公園付近の歩道橋新設を中止して23億円を削減した。
 この結果、413億円の削減が実現し、8競技会場の整備費は合計1828億円となった。
 五競技場整備費は、当初計画では4584億円、舛添元都知事の“見直し”で2241億円、そして今回公表された小池都知事の“改革”で1828億円となった。
 新たな競技場の整備費が相当程度削減されたことについては評価したい。
 最大の問題は、“五輪開催後”の利用計画にまだ疑念が残されていることである。
たとえば海の森競技場では、ボート/カヌー競技の開催は果たしてどの位あるのだろうか。イベント開催を目指すとしているが、成果を上げられるのだろうか。
 「アクアティクスセンター」は、すぐ隣に「辰巳国際水泳場」に同種の施設があり過剰な建設計画という批判を拭い去ることはできない。
 さらに保守・運営費や修繕費などの維持費の負担も、今後、40年、50年、重荷となってのしかかるのは明らかである。
 小池都知事は、かつて膨張する五輪開催経費を「もったいない」とコメントした。
 8競技会場を“負のレガシー”(負の遺産)にしないという重い課題が東京都に課せられている。



開催経費「1兆3850億円」 都・国・組織委・関係自治体で費用負担大枠合意
都「6000億円」 組織委「6000億円」、国「1500億円」、350億円は先送り

 2017年5月31日、2020年東京五輪大会の開催経費について、東京都、国、大会組織委員会、それに都外に会場がある7道県4政令市の開催自治体(「関係自治体」)は連絡協議会を開き、総額1兆3850億円(予備費含めると最大で1兆6850億円)とし、その費用分担の大枠で合意した。
 焦点の都外の会場の「仮設経費」は「立候補ファイル」通りに、全額東京都が負担することにした。
 小池都知事は、「「四者協議」で公表された2200億円から、「1000億円を超える額の圧縮」と強調し、負担軽減につなげたとした。しかし圧縮経費の詳細については、会場使用期間短縮による賃借料の縮減などを挙げたが、詳細な説明は避けた。
 「「四者協議」で示された開催経費(V1)では「1兆5000億円」、それに予備費が1000億~3000億円加わり、最大で「1兆8000億円」とした。 
 
大会開催経費 最大「1兆8千億円」 有明アリーナは建設 4者協議トップ級会合
 2016年12月21日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の「4者協議トップ級会合」が再び開かれ、組織委が大会経費を約1兆6000億~1兆8000億円とする予算案(V1)を提示した。大会予算が公表されるのは初めてである。小池都知事は今後、焦点となる費用負担や役割分担を決める政府、組織委との3者協議を年明けから再開する方針を示した。
 大会予算の内訳は選手や観客の輸送などの運営費8200億円▽施設整備費6800億円▽資材の高騰などに備えた予備費が1000億~3000億円。
 前回結論を先送りしたバレーボール会場は小池都知事が「有明アリーナ」(東京都江東区)を新設する方針を表明した。
 “ARIAKE LEGACY AREA”と名付けて、その拠点に「有明アリーナ」に据えて、有明地区を再開発して“五輪のレガシー”にする計画を示した。
 「有明アリーナ」はスポーツ・音楽などのイベント会場、展示場として活用し、周辺には商業施設や「有明体操競技場」も整備する。
 焦点の整備費は404億円を339億円に圧縮し、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入して、民間資金を活用し経費圧縮に努めるとした。

「4者協議トップ級会合」 「海の森水上競技場」、「アクアティクスセンター」は建設 バレー会場は先送り

 2016年7月、東京都知事に就任した小池百合子氏は、膨張する2020年東京五輪大会の開催経費に歯止めをかけるため、都政改革本部の中に「調査チーム」を設立し、開催計画の見直しに乗り出した。その中でターゲットにしたのは、開催経費削減と競技会場整備の再検討で、海の森水上競技場やオリンピック アクアティクスセンター、有明アリーナの“見直し”が行われた。(下記参照)
 競技会場“見直し”については、小池都知事、森組織委会長が激しく対立して、決着が着かず、国際オリンピック委員会(IOC)が調整に乗り出し、東京都、大会組織委員会、国、国際オリンピック委員会(IOC)で構成する「四者協議」を開催し、この問題の解決を図ることになった。
 2016年11月29日、小池都知事、森組織委会長、丸山五輪担当相、コーツIOC副会長による「4者協議トップ級会合」が東京都内で開かた。
 この会合で、小池都知事は見直しを検討した3競技会場について、ボートとカヌー・スプリント会場は、森水上競技場を20年程度存続の“スマート施設”(仮設レベル)として、整備費は当初の491億円から298億円に縮減して建設することを明らかにした。
 また水泳競技場は「アクアティクスセンター」(江東区)を観客席2万席から1万5000席に削減して、大会後の「減築」は止めて、683億円から514~529億円に削減して建設するとした。
 一方、バレーボール会場については、「有明アリーナ」を新設するか、既存施設の「横浜アリーナ」を活用するか、最終的な結論を出さず、先送りすることになった。
 都の調査チームがボート・カヌー会場に提案していた長沼ボート場は事前合宿地とすることをコーツIOC副会長が“確約”し、小池都知事も歓迎した。

四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委




“迷走”と“混迷”を繰り返した競技場整備


競技場整備費、約4594億円 招致計画の約3倍に膨張
 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会で、2020年夏季五輪大会の開催都市を決める最終投票が行われた。投票に先立つ最終プレゼンテーションでは、招致“Cool Tokyo”アンバサダーの滝川クリステル氏の「お・も・て・な・し」スピーチやパラリンピアンの佐藤真海氏のスピーチが行われ話題になったのは記憶に新しい。結果、ライバル都市のマドリードとイスタンブールを破り、劇的な勝利を手にした。
 しかし、招致成功に沸いた「祭り」ムードは、開催準備に乗り出すと厳しい「現実」に直面し、瞬く間に吹き飛んでしまう。
 競技会場問題の第一幕の主役は、舛添都元知事だった。

 東京都は、招致成功後、直ちに招致計画に基づく競技場整備計画の再検討を行った。 
 その結果、東京都が担当する競技場(恒久施設)整備費は、招致計画では約1538億円としたが、改めて試算すると当初予定の約3倍となる約4584億円まで膨らむことが判明したのである。
 中には、「海の森水上競技場」(ボート、カヌー)のように、招致計画では約69億円としていたが、改めて試算すると、約1038億円と10倍以上に膨れ上ったケースも含まれていた。
 招致計画時の余りにも杜撰な予算の作成にあきれる他はない。
 舛添要一東京都知事は、「『目の子勘定』で(予算を作り)、『まさか来る』とは思わなかったが『本当に来てしまった』という感じ」とテレビ番組に出演して話している。
 競技場の整備経費については、「新国立競技場」は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」は、2012年にデザイン競技公募を開始した際は、総工費は「1300億円を目途」としていたが、ザハ・ハディド案を採用して、施工予定者のゼネコンが総工費を見積もると「3088億円」に膨張することが判明し、世論から激しい批判を浴びた。
 その後、設計見直しを行い「2520」億円に圧縮したが、それでも当初予定の倍近い額となり批判は一向に収まらず、ザハ・ハディド案の白紙撤回に追い込まれた。最終的には、安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、屋根の設置を止めたりや観客席の数を見直すなどして総工費を「1550億円」(上限)とすることで決着した。“迷走”に“迷走”を繰り返して、“醜態”を演じたのは記憶に新しい。
 ところが、問題は新国立競技場にとどまっていなかったのである。

経費削減に動いた舛添都知事
 2014年11月、舛添要一東京都知事は、競技会場建設費の削減に動き、恒久施設では「夢の島ユースプラザ・アリーナA・B」と「若洲オリンピックマリーナ」、仮設施設では「ウォーターポロアリーナ」、「有明ベロドローム」、「有明MTB(マウンテンバイク)コース」、「夢の島競技場(馬術)」の建設を中止し、他の既存施設に競技場を変更した。また「オリンピックアクアティクスセンター」や「海の森水上競技場」、「大井ホッケー競技場」などは整備計画を縮小して経費を削減した。
 これにより約2000億円を削減し、約4584億円まで膨らんだ整備経費を約2469億円までに圧縮するとした。
 さらに2015年11月、IBC/MPCが設営される東京ビックサイトに建設する「拡張棟」は計画を変更してIBC/MCPとして利用しないとして、その建設費、約228億円を五輪施設整備費枠からはずして、約2241億円までに圧縮したとしている。 もっとも東京都は、東京ビックサイトの「拡張棟」を建設することには変わりはないのだから、“みせかけ”の操作と思われてもしかたがない。
 2241億円のうち、新規整備費が約1846億円、既存施設の改修費などが約395億円とした。
 東京都は、開催都市として、2006から2009年度に「開催準備基金」を毎年約1000億円、合計約3870億円をすでに積み立てていた。この「基金」で、競技施設の整備だけでなく、周辺整備やインフラの整備経費などをまかなわなければならない。東京都が負担する五輪施設整備費は、4000億円の枠内で収まらないのではという懸念が生まれている。競技場の建設だけで2241億円を使って大丈夫なのだろうか?
 また、新規に施設を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費など後年度負担が生まれることを忘れてはならない。
 五輪開催後は、整備された壮大な競技施設の収支は“赤字”にならないのだろうか? 利用料収入などで賄える展望があるのだろうか? 
 巨額の“赤字”が毎年生まれるのであれば、今後約50年間以上に渡って、東京都民は負担し続けなければならない。
 五輪開催期間はオリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。施設の新設は極力抑制しなければならない。
 日本は確実に少子高齢化社会を迎える。五輪開催は、“レガシー”(未来への遺産)どころか“負のレガシー(負の遺産)”になる懸念が強まった。



小池都知事の“五輪改革”
 第二幕は、小池百合子東京都知事の登場で始まった。
 2016年7月、公費流用問題で激しい批判を浴びた舛添要一前都知事の辞職に伴い、都知事選挙が行われ、小池百合子氏が元総務相の増田寛也氏を破り、当選した。いわゆる“小池劇場”の開幕である。
 小池氏は、知事に就任すると、2020東京五輪大会の計画再検討に素早く乗り出した。
 小池氏は、都政改革を進める司令塔、「都政改革本部」を設立し、その中に東京五輪改革を進める「調査チーム」(座長上山信一慶応大学教授)を立ち上げた。
 「調査チーム」のターゲットは、巨額に膨れ上がった開催経費の圧縮や競技会場整備の“見直し”である。
 競技会場整備の“見直し”では、海の森水上競技場やオリンピック アクアティクスセンター、有明アリーナ(バレーボル会場)がその対象となった。

「3兆円を超える」 調査チーム報告書
 「結果から申し上げると今のやり方のままでやっていると3兆円を超える、これが我々の結論です」
 2016年9、2020年東京五輪・パラリンピックの開催経費の検証する都政改革本部の「調査チーム」座長の上山信一慶応大学教授はこう切り出し、大会経費の総額が「3兆円を超える可能性がある」とする報告書を小池都知事に提出した。
 大会経費は、新国立競技場整備費(1645億円)、都の施設整備費(2241億円)、仮設整備費(約2800億円)、選手村整備費(954億円)に加えて、ロンドン五輪の実績から輸送費やセキュリティー費、大会運営費などが最大計1兆6000億円になると推計。予算管理の甘さなどによる増加分(6360億円程度)も加味し、トータルで「3兆円」を超えると推計した。 
 招致段階(13年1月)で7340億円とされた大会開催経費は、「2兆円」とも「3兆円」とも言われたが、これまで明確な積算根拠は組織委員会や国や東京都など誰も示さず、今回初めて明らかにされた。
 調査チームは「招致段階では本体工事のみ計上していた。どの大会でも実数は数倍に増加する」と分析。その上で、物価上昇に加えて、国、都、組織委の中で全体の予算を管理する体制が不十分だったことが経費を増加させたと結論付けた。

3施設の整備 大幅見直しを提言
 ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」は、当初計画の7倍の約491億円に膨れ上がった経費に加えて、「一部の競技者が会場で反対している」「大会後の利用が不透明」だとして、宮城県長沼ボート場を代替地に提言した。「復興五輪」の理念にも合致するとしている。
 観客席2万席で設計した水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」は、大会後に74億円をかけて5000席に減らす計画を疑問視し、規模縮小や近くにある「東京辰巳国際水泳場」の活用の検討を提言した。バレーボール会場の「有明アリーナ」は、規模縮小のほか、展示場やアリーナの既存施設の活用を提案した。
 仮設施設整備については、約2800億円に膨れ上がった整備について、国や組織委、東京都の費用負担の見直しにも言及し、都内に整備する仮設施設の内、最大1500億円は都が負担し、都外については「開催自治体か国」が負担するよう提言した。
 また東京都は、組織委に58億5000万円の拠出金を出し、245名もの東京都職員を出向させていることから、組織委を「管理団体」にするなど、都の指導監督を強化する必要性も指摘した。
 これに対し、森組織委会長は、「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べた。
 また海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)がいいと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いしてみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と語った。
 一方、IOCのバッハ会長は、東京五輪の開催費用の増加について、「東京における建設費の高騰はオリンピック計画だけでなく、東日本大震災からの復興など、そのほかの理由もあるだろう」とし「建設的な議論をしたい」として柔軟に対応する姿勢で、今後東京都や組織委員会と協議を始める意向を示した
 小池知事は報告書を受けて、都が整備を進めるボート会場など3施設の抜本的見直しや国の負担増、予算の一元管理など、各提案を実行するには、国際競技団体や国際オリンピック委員会(IOC)の承認を受け直す必要がある上で、国や大会組織委員会などと調整が必要で、実現には難関は多いと多いと思われる。
 “混迷”と“迷走”はさらに深刻化した。やはり新国立競技場や五輪エンブレムだけではなかった。
 競技場問題は、小池都知事、森組織委会長が激しく対立して、決着が着かず、国際オリンピック委員会(IOC)や国も加えた四者協議の場に持ち越された。

“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革”

膨張する2020東京五輪大会 追加種目 野球・空手など5競技決まる
 2015年9月28日、大会組織委員会は、追加5競技を国際オリンピック委員会(IOC)に提案することを決めた。
 組織委の種目追加検討会議座長の御手洗冨士夫・経団連名誉会長は「若者へのアピールと日本中を盛り上げるに資する競技かどうかで決めた」と説明し、野球・ソフトボールと空手については「国内で広く普及しており観客動員力が大きい」とした。ローラースポーツ(スケートボード)、突起のついた人工壁をよじ登るスポーツクライミング、サーフィンは「時代の先端を行く若者へのアピールが期待できる」と話した。
 2016年8月3日、リオデジャネイロで開催されたIOC総会で、開催都市に提案権が与えられている追加競技・種目について、野球・ソフトボール、空手、ローラースポーツ(スケートボード)、スポーツクライミング、サーフィンの5競技18種目が採択され決定した。総会の質疑応答で、野球を巡って、米大リーグ所属選手の参加が保証されていない点を不安視する意見などが出たが、最終的には全会一致で採択された。日本が強く推した野球・ソフトボールと空手に、「若者へのアピール度が高い」とIOCがこだわったスケートボードなど新興3競技を組み合わせて一括審議とした“戦略”をとったことが功を制した。バッハIOC会長は「この決定はマイルストーン(記念碑)となる」と誇らしげに語った。
 これにより1競技に統合された野球・ソフトボールは2008北京五輪以来、3大会ぶりの復帰、他の4競技は初の実施になる。
 追加競技については、2015年12月に採択されたIOCの五輪改革プラン「アジェンダ2020」の中で、開催都市による提案権が盛り込まれ、東京五輪がこの改革プランの初めての適用となった。 
 しかしこの開催都市の追加競技提案権で、五輪大会の“膨張体質”に歯止めがかからなくなったのも事実である。
 IOCの五輪改革プラン「アジェンダ2020」は、五輪大会の“膨張体質”に歯止めをかけることが主目的だったのではないか。
 「世界一コンパクト」な大会を目指した2020東京大会のスローガンはどこにいったのだろうか。




“迷走”海の森水上競技場整備
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト
デザインビルド方式 設計施工一括発注方式は公正な入札制度か?



「建設中止」、「会場変更」、“迷走”した競技開催計画
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの競技開催計画は変更が相次ぎ、招致計画から大きく変わってしまった。一体、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画はなんだったのだろうか? 新国立競技場の“迷走”も加えると、その杜撰な開催計画に唖然とさせられる。

 最終的に決まった2020東京五輪大会の開催計画では、オリンピックでは33競技、パラリンピックでは22競技をあわせて43会場で開催する。 その内、新設施設は18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設は24か所を整備するとしている。既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では最大限既存施設を利用し、大会開催の効率化に成功したと胸を張る。
 しかし競技会場の変更が相次ぎ、予定通り建設される競技場についても相次ぐ“見直し”で、“迷走”と“混乱”を繰り返した。

 建設中止の競技場(恒久施設)は、夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)、夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)、若洲オリンピックマリーナ(セーリング)の2施設、仮設施設では、ウォーターポロアリーナ(水球)(新木場・夢の島エリア)、、有明ベロドローム(自転車・トラック)、「有明MTB(マウンテンバイク)」、「夢の島競技場(馬術)」である。
 バトミントンは、「武蔵野森総合スポーツ施設」(東京都調布市)、バスケットは「さいたまスーパーアリーナ」(さいたま市)で開催することになった。
 水球については、辰巳の森海浜公園内に、「オリンピック アクアティクスセンター」に併設して総工費約76億円で約6500人の観客席を備えた水球競技場、「ウォーターポロアリーナ」(仮設施設)を建設予定だったが、これを中止し、隣接する「東京辰巳国際水泳場」に会場変更した。
 セーリング会場は、総工費322億円で建設予定の「若洲オリンピックマリーナセーリング」(恒久施設)を取りやめて、「江の島ヨットハーバー」に会場変更した。
 自転車競技4種目については、建設費の高騰で、大会組織委員会が会場見直しを提案し、トラックは「有明ベロドローム」(仮設施設)の整備を中止し、伊豆・修善寺にある「日本サイクルスポーツセンター」内にある「伊豆ベロドローム」に会場変更し、マウンテンバイク(MTB)は、「有明MTBコース」に整備を中止して、「日本サイクルスポーツセンター」内の既存コースを改修して使用することが決まった。
 しかし、BMX(フリースタイル、レーシング)については、組織委ではBMXも「日本サイクルスーツセンター」に変更したいとしたが、国際自転車連合は観客が集まりやすい首都圏での開催にこだわって難色を示し、当初計画通り東京都江東区有明周辺で開催されることになった。有明地区の“東京ベイゾーン”に5000席の観客席を備えた「有明BMXコース」(仮設施設)を予定通り建設することが決まった。
 大会組織委では「日本サイクルスーツセンター」の改修費を含めてもこの2つの会場変更で約100億円の削減につながるとしている。
 一方、ロードレースについては、当初計画では、スタート地点が皇居、ゴール地点が武蔵野の森公園としていたが、スタートとゴール共に都心で大勢の観客が訪れやすい皇居外苑に変更した。その後、競技団体の要望で、選手の実力差が出る勾配のある難しいコースが設定できるとして富士山麓が選ばれた。富士山を背景にしてテレビ映りが良いのもコース決定のポイントだった。スタートは武蔵の森公園、ゴールは富士スピードウエーに決まった。
 また個人タイムトライアルも富士スピードウェイで開催する。
 競歩については、「皇居外苑」で開催することが決まった。
 また、夢の島競技場内に仮設施設を建設する予定だった馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)の会場は整備を取りやめ、「馬事公苑」に変更した。
 馬術(クロスカントリー)は「海の森クロスカントリーコース」で予定通り行われる。
 また東京ビックサイトに設営されるIBC/MPCの設置計画が変更になり、「東京ビッグサイト・ホールA 」で開催を予定したレスリングと「東京ビッグサイト・ホールB」で開催と予定したフェンシングとテコンドー)」は「幕張メッセ」(千葉市)に変更され、「幕張メッセ」では、レスリングとフェンシング、テコンドーの3つの競技の会場となった。
 幕張メッセではパラリンピックのゴードボールも開催される。
 7人制ラグビーは、「新国立競技場」から「東京スタジアム」(東京都調布市)に変更となった。
 カヌーは、「葛西臨海公園」に建設する仮設施設計画だったが、隣接地の都有地(下水道処理施設用地)に建設地を変更した。「葛西臨海公園」の貴重な自然環境を後世に残すという設置目的などに配慮して、公園内でなく隣接地に移し、大会後は、公園と一体となったレジャー・レクリエーション施設となるように整備計画を練り直した。
 一方、トライアスロンは、「お台場海浜公園」で変更せず、計画通り行うこととなった。
 こうした会場整備計画の見直しなどで、組織委では約700億円の経費削減につながるとしている。

 追加5競技の会場については、ソフトボールの主会場は横浜スタジアム、空手が本武道館(東京都千代田区)、スポーツクライミングとスケートボードは仮設の青海アーバンスポーツ会場(東京都江東区)、サーフィンは釣ケ崎海岸サーフィン会場(千葉県一宮町)となった
 野球・ソフトの福島開催については、福島あずま球場で野球とソフトボールの予選の日本戦、二試合を開催とすることで決着した。

 一方で仮設整備経費が膨れ上がっていることも大きな問題である。有明体操競技場、有明BMXコース、海の森カントリーコース、潮風公園などの仮設競技場の建設費やオーバーレーと呼ばれる競技会場に設置されるプレハブやテント、警護用柵などの仮設施設経費、既存施設の改装費が、当初計画の732億円から、約4倍の3050億の巨額に上ることが大会組織委のV2予算で明らかになった。東京都は、恒設競技場の建設の他に、こうした仮設整備費を約2100億円、大会組織員会は約950億円を負担することになった。国際オリンピック委員会(IOC)は巨額の仮設費を縮減することを求めた。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、選手村を中心に半径8キロメートルの圏内に85%の競技場を配置すると“公約”していた。

出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

(参考)立候補ファイルの競技場プラン

出典 2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会


何処へ行った「世界一コンパクトな大会」
 新規に競技場を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費など“後年度負担”が確実に生まれる。施設利用料などの収入で賄えるのであれば問題ないが、巨額の“赤字が毎年生まれるのでは、“レガシー”(未来への遺産)どころか“次世代”への“負の遺産”になる懸念が大きい。“新設”は極力抑えなければならない。五輪開催期間は、オリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。
 また忘れてはならないのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、“ヘリテッジゾーン”と“東京ベイゾーン”の選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催すると公約していた。1964年大会のレガシーが現存する“ヘリテッジゾーン”と東京を象徴する“東京ベイゾーン”、そして2つのゾーンの交差点に選手村を整備するという開催計画である。
 しかし、相次ぐ変更で「世界一コンパクトな大会」の“公約”は完全に吹き飛んだ。

 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
舛添要一東京都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。
 結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは国民である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まであと2年余り、新国立競技場の迷走、五輪エンブレムの撤回、政治とカネにまつわるスキャンダルで舛添前都知事の辞任、そして、競技場見直しを巡っての小池都知事と森組織委員長の対立、“混迷”はまだ収まる気配はない。

「準備は1年遅れている」「誠実に疑問に答えない」 警告を受けた2020東京大会組織委
 2018年4月、2020年東京オリンピックの準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツIOC副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 これに先立ってタイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議で、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況をチェックしたのである。
 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京大会に移る中で、大会準備に関して誠実な答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。
 準備の遅れが指摘された競技種目は、柔道とセーリング、トライアスロンで、開催準備の遅れに懸念を表明した。柔道競技では、2019年に開催されるプレ大会の準備状況、セーリング競技では地元漁業者との調整の問題、トライアスロンでは東京湾の水質汚染問題が指摘されている。
 日本のビックイベントのマネージメント力は、世界から高い評価を得ていたが、どうやら海外の五輪関係者の間では、その評価は失われ、“韓国より劣る”という批判が生れているように感じられる。
 あと2年余り、2020東京五輪大会は正念場を迎えている。



東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 競技会場の全貌 




北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト” 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 「3兆円」! 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長>
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2016年12月7日 2018月10月1日改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR



******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************

google-site-verification: google0153861434c93aaf.html
コメント

東京オリンピック 競技会場 競技場 最新情報 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン 見直し (上)

2018年10月11日 08時08分27秒 | 東京オリンピック

膨張する開催経費 どこへいった五輪開催理念
“世界一コンパクトな大会”(上)
最新情報 2020東京五輪大会の競技会場の全貌


 2020東京オリンピック・パラリンピックの競技は、1964年の東京オリンピックでも使用された代々木競技場や日本武道館など過去の遺産を活かした「ヘリテッジゾーン」と、有明・お台場・夢の島・海の森など東京湾に面した「東京ベイゾーン」を中心開催する計画であった。
 選手村から半径8キロメートルの圏内に85%の競技会場を配置するという「世界一コンパクトな大会」がキャッチフレーズだったが、相次ぐ「建設中止」や「会場変更」で、「世界一コンパクトな大会」は完全に消え去った。
 競技会場は、「既存施設」と「新設」で対応するとし、「既存施設」については改修や増設工事が伴う場合があり、「新規建設」は「恒久施設」と「仮設施設」に分けられている。

 2018年5月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで開いた理事会で2020年東京五輪大会のサッカー7会場を一括承認した。これで東京オリンピック・パラリンピックの43競技会場がすべて決まった。
 この内、オリンピッックは42会場、パラリンピックで21会場(ボッチャ競技のみ幕張メッセCでパラリンピック単独で開催 その他はオリンピックと共通競技会場を使用)で開催される。
 オリンピックで開催される競技数は、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を加え、合計競技数は33競技、種目数は339種目で、選手数の上限を11,900人とすることが決定されている。
 一方、パラリンピックは22の競技が開催される。
 今回、承認されたのは「札幌ドーム」、「宮城スタジアム」、「茨城カシマスタジアム」、「埼玉スタジアム」、「横浜国際総合競技場」、「新国立競技場」、「東京スタジアム」の7会場で、決勝は男子が「横浜国際総合競技場」、女子は「新国立競技場」で行う案が有力とされている。
 今回承認された43の競技会場の内、新設施設18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設25か所を整備するとしている。既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では最大限既存施設を利用したと胸を張る。
 しかし、競技会場の決定に至る経過は、相次いだ“迷走”と“混迷”繰り返した結果である。

「3兆円」! 膨張する開催経費 どこへいった五輪開催理念 “世界一コンパクトな大会”(下)




2020東京五輪大会競技場の恒久施設

 2020東京大会競技場の「新設」(恒久施設)は、6万8000人収容可能なスタジアムへ建て替えられる「新国立競技場」(メインスタジアム)を始め、オリンピック アクアティックセンター(水泳・飛び込み・シンクロナイズドスイミング)、有明アリーナ(バレーボール)、海の森水上競技場(ボート、カヌー)、大井ホッケー競技場(ホッケー)、夢の島公園(アーチェリー)、カヌー・スラローム会場、武蔵野の森 総合スポーツ施設(近代種、バドミントン)の8施設である。
 国が建設するのは新国立競技場だけで、7か所の施設整備は東京都が担当し約1828億円で整備を行う。但し、「新国立競技場」については東京都も整備の総計約1849億円(本体工事と関連経費を含む)の内、約448億円を負担することが決まっている。

“迷走” 「新国立競技場」
 競技場の整備経費については、「新国立競技場」は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」は、2012年にデザイン競技公募を開始した際は、総工費は「1300億円を目途」としていたが、ザハ・ハディド案を採用して、施工予定者のゼネコンが総工費を見積もると「3088億円」に膨張することが判明し、世論から激しい批判を浴びた。
 2015年7月、開閉式の屋根の設置の先送りなど設計見直しを行い「2520」億円に圧縮したが、それでも当初予定の倍近い額となり批判は一向に収まらず、ザハ・ハディド案の白紙撤回に追い込まれた。最終的には、安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、屋根の設置を止めたり観客席を見直すなどして総工費を「1550億円」(上限)とすることで決着した。“迷走”に“迷走”を繰り返して、“醜態”を演じたのは記憶に新しい。
 2015年9月、新たな整備計画に基づき、総工費と工期を重視した入札事業者向けの募集要項を公開し、公募を開始した。
新整備計画ではコンサートやイベントなども開催する「多目的利用」は放棄され、陸上競技やサッカー、ラグビーなどのスタジアムへ転換することを打ち出した。
 観客席は五輪開催時には約6万8000席(旧国立競技場 約54000人)とし、五輪後に陸上トラック上部に増設して8万席以上確保する。屋根は開閉式を取りやめ、増設後の観客席全体を覆うようにする。建物の最高高さは70m以下。フィールドを含む面積は約19万4500平方メートル(同 7万2000平方メートル)で、旧整備計画の約22万4500平方メートルから約3万平方メートル削減するとした。
 公募には、大成建設を中心に梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループと、竹中工務店、清水建設、大林組の3社の共同企業体と日本設計、建築家の伊東豊雄氏で構成するグループが応募した。
 2015年12月22日、審査の結果が公表され、「木と緑のスタジアム」をコンセプトにした大成建設、梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループが選ばれた。
 木材と鉄骨を組み合わせた屋根で「伝統的な和を創出する」としているのが特徴のデザインで、地上5階、地下2階建て、スタンドはすり鉢状の3層にして観客の見やすさに配慮する。高さは49・2メートルと、これまでの案の70メートルに比べて低く抑え、周辺地域への圧迫感を低減させた。
 総工費は約1490億円、完成は19年11月末としている。


技術提案書A案のイメージ図  新国立競技場整備事業大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体作成/JSC提供

「新国立競技場」はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに 陸上競技の“聖地”の“夢”は無残にも消えた
 2017年11月14日、「新国立競技場」の整備計画を検討する政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)は14日、五輪大会後はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに改修する計画案を了承した。22年後半の供用開始をめざす。
 計画案では、大会後に陸上競技のトラックをなくし、収益性を確保するため、観客席を6万8千席から国内最大規模の8万席に増設する。
 運営方針として、(1)サッカーのワールドカップ(W杯)の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(4)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げた。
 新国立競技場の維持管理費は長期修繕費を含めて年間約24億円とされている。収入が確保できなければ、50年、100年、延々と赤字を背負うことになる。
 結局、「新国立競技場」が“負のレガシー”(負の遺産)になるのは避けられそうもない。



オリンピックアクアティクスセンター
 オリンピックアクアティクスセンターは、「競泳」、「シンクロナイズド・スイミング」、「飛び込み」の競技会場として、大規模な国際大会が開催可能な“国際水準の水泳場”として整備計画が立てられた。整備費は招致計画では総工費321億円としていたが、その後の見直しで683億円と約倍以上経費が膨れ上がった。
 整備計画では、建設時には延床面積5万7850平方㍍、約2万席の観客席とするが、大会後は屋根を低くして3階席を撤去するなどして観客席を5000席まで減らし、延床面積を3万2920平方㍍まで縮小する“減築”を行うとした。“減築”も国際大会開催時には観客席は1万席から最大1万5000席(仮設席を含む)に拡張可能とした。メインプール(50m×25m)、サブプール(50m×25m)、飛込プール(25m×25m)が整備される。
 その後、2016年の「四者協議」トップ級会合で、座席数を2万から1万5000席に減らし、大会後の「減築」は取りやめて建設することで、683億円から567億円に削減する方針を明らかにした。
 五輪開催後は都民のための水泳場としても活用するとしている。メーンプールとサブプールの床や壁を可動式にすることで多様な目的に使えるようにした。
 2016年1月、本体工事については、大林・東光・エルゴ・東熱異業種特定建設共同企業体が、469億8000万円(税込価格)で設計・施工工事を落札した。予定価格は538億円(本体工事)で落札率は87%だった。
 しかし、約300メートルほどの近接した場所に東京辰巳国際水泳場があるのに、なぜ巨額の税金を投じて「二つ」も整備するのか、当初から“過剰施設”の象徴だとして批判にさらされていた。
 東京辰巳国際水泳場は1993年に開館し、世界水泳や五輪選考会など国内外の主要大会が開かれてきた水泳競技の“聖地”。50メートルのメインとサブのプール、飛び込みのプールがあり、一般にも開放している。事業費は181億円、維持費は年間4億7000万円である。2008年には五輪競泳の金メダリスト北島康介選手が、200メートル平泳ぎで世界新記録を出したことで有名な水泳競技場である。
 ところが、辰巳水泳場は、観客席は固定席が約3600席、仮設席が約1400席、合わせて約5000席が限界である。国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準は観客席1万2000席、この基準を満たすためには、大幅な拡張工事が必要だが、建物が運河に面していて工事は不可能とされていた。またこの水泳場は、水深が両サイドの約半分は2メートルしかなく、国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準「水深2メートル」は満たしているが、推奨基準「水深3メートル」は満たしていない。「水深2メートル」の部分があるとシンクロナイズドスイミングの競技開催では支障が生じるとされている。さらに辰巳水泳場は、国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準、コース幅2.5メートルも満たしていない。
 このため東京都は、一回り大きい“国際水準の水泳場”として辰巳の森海浜公園内にオリンピックアクアティクスセンターを新設することとし、東京辰巳国際水泳場は水球競技場として使うことにした。当初は水球競技場は、オリンピック アクアティクスセンターに併設してウォーターポロアリーナを建設する計画だったが建設は中止された。

四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委

 

オリンピックアクアティクスセンター  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

都政改革本部調査チーム オリンピック アクアティクスセンターの大幅な見直しを提言
 調査チームは、国際水泳連盟や国際オリンピック委員会(IOC)の要求水準から見ると五輪開催時の観客席2万席という整備計画は過剰ではないかとし、大会開催後は減築するにしても、レガシーが十分に検討されているとは言えず、「国際大会ができる大規模な施設が必要」以上の意義が見出しづらいとした。
 「5000席」に減築するしても、水泳競技の大規模な国際大会は、年に1回、開催されるかどうかで、国内大会では、観客数は2700人程度(平均)とされている。(都政改革本部調査チーム)
 また「2万席」から「5000席」に減築する工事費も問題視されている。現状の整備計画では総額683億円の内、74億円が減築費としている。
 施設の維持費の想定は、減築前は7億9100円、減築後は5億9700万円と、減築による削減額はわずか年間2億円程度としている。(都政改革本部調査チーム) 減築費を償却するためにはなんと37年も必要ということになる。批判が起きるのも当然だろう。
 施設維持費の後年度負担は、深刻な問題で、辰巳水泳場だけでも年5億円弱が必要で、新設されるオリンピックアクアティクスセンターの年6億円弱を加えると約11億円程度が毎年必要となる。国際水泳競技場は赤字経営が必至で、巨額の維持費が、毎年税金で補てんされることになるのだろう。
 大会開催後のレガシーについては、「辰巳国際水泳場を引き継ぐ施設」とするだけで検討が十分ではなく、何をレガシーにしたいのか示すことができていない。
 また辰巳国際水泳場も大会後の利用計画が示されず、まだ検討中であることも問題だした。
 辰巳国際水泳場の観客席を増築する選択肢は「北側に運河があるから」との理由だけで最初から排除されており、検討が十分とは言えないとし、
オリンピックアクアティクスセンターは、恒久席で見ると一席あたりの建設費が1000万円近くも上りコストが高すぎるとした。
 結論として、代替地も含めてすべての可能性を検証すべきで、オリンピックアクアティクスセンターの現行計画で整備する場合でも、さらなる大幅コスト削減のプランを再考することが必要だと指摘した。
 2016年11月29日、東京大会の会場見直しや開催費削減などを協議する国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、アクアティクスセンターは観客席2万席から1万5000席に削減して、大会後の「減築」は止めて、683億円から514~529億円に削減して建設することで決着した。
 
有明アリーナ
 有明アリーナは、地上5階建てで、延べ面積約4万5600平方メートル。座席数は仮設席を含めて大会開催時には仮設を含めて約1万5000席を確保するが、五輪開催後は、約1万2700席に縮小する。メインアリーナはバレーボールコート4面又はハンドボールコート3面で競技可能な規模に、サブアリーナ はバスケットボールコート2面が配置可能な規模とする。整備費は、招致計画では、総工費約176億円としていたが、見直し後は約404億円に膨れ上がった。
 五輪開催後は、ワールドカップや日本選手権といった国内外の主要な大会の会場として利用するほか、コンサートなどの各種イベント会場としても活用するとした。そのためメーンアリーナの床はコンクリート製とし、機材搬入用の大型車が通れるようになっている。 またショップやレストランを充実させたりすることで、五輪開催後は、首都圏での新たな多目的施設を目指す。
 2016年1月、本体工事は、竹中・東光・朝日・高砂異業種特定建設共同企業体が360億2880万円(税込価格)で設計・施工工事を落札した。

都政改革本部調査チーム 既存施設で開催 有明アリーナ建設中止も
 都政改革本部調査チームでは、バレーボール会場は既存のアリーナや大規模展示場を改修するなどして開催は可能とし、まず競技開催計画の変更を検討すべきと提言した。
 既存のアリーナに会場変更する場合の候補として、「横浜アリーナ」を改修して使用する案を有力視している。
 また新設する場合でも、五輪開催後は他の既存施設でバレーボール競技大会の開催は十分運用可能なことから、有明アリーナの開催があまり見込めないとし、イベントやコンサートなど多目的展示会場の施設を目指すべきだとした。
 関東圏ではコンサートなどの利用に関しては、数万人を収容するアリーナクラスへの需要は高い水準が続くと見込まれているとしている。
 しかしイベント会場を目指すにしても、建設費については類似施設に比べ高く、404億円からさらにコストダウンの努力が必要とした。
 一方で2020年以降の適切な座席数を見積もる必要や、コンサート会場として施設整備など民間事業者を巻き込んだ事業計画の詰めが必要としている。既存施設での利用など開催計画の再検討や、新設の場合にもイベント利用に向けた計画の詰めやコストの見直しが求められた。
 これに対し、10月13日、日本バレーボール協会の木村憲治会長は、都政改革本部の調査チームのヒアリングに出席し、「国際基準である1万5000人を収容できる体育館が欲しい」と述べ、計画通り有明アリーナの建設を求めた。
 有明アリーナ建設用地については、約183億円の用地取得費を有明アリーナの整備費とは別枠で処理していることから、“五輪経費隠し”として批判されている。
 2016年12月21日、東京大会の会場見直しや開催費削減などを協議する国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、前回結論を先送りしたバレーボール会場は小池都知事が「有明アリーナ」を計画通り建設する方針を表明した。
 “ARIAKE LEGACY AREA”と名付けて、その拠点に「有明アリーナ」に据えて、有明地区を再開発して“五輪のレガシー”にする計画を示した。
 「有明アリーナ」はスポーツ・音楽などのイベント会場、展示場として活用し、周辺には商業施設や「有明体操競技場」も整備する。
 焦点の整備費は404億円を339億円に圧縮し、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入して、民間資金を活用し経費圧縮に努めるとした。


有明アリーナ  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

海の森水上競技場
 海の森水上競技場(ボート、カヌー)は、防波堤内の埋立地の間を締め切る形で競技施設を建設するが、会場レイアウトの変更や護岸延長の縮小などにより整備費を大幅に圧縮し、延床面積3万2170平方メートル規模とする。建設費については、招致ファイルでは、約69億円としたが、地盤強化や潮流を遮る堤防の追加工事が必要とわかり、五輪開催決定後、改めて試算すると、約1038億円の膨れ上がることが明らかになり、世論から激しい批判を浴び、“無駄遣い”の象徴となった。舛添元都知事は防波堤工事などを見直して約491億円に縮減した。
 五輪開催後は、国際大会開催可能なボート、カヌー場として活用するとともに、海の森公園と連携した“緑のネットワーク”を構成し、サイクリングコースや整備都民のレクリエーションの場、憩いの場とする計画だ。水辺を生かした水上イベントなどのイベントも開催して、多目的に活用するとしている。
 海の森水上競技場の本体工事については、大成・東洋・水ing・日立造船異業種特定建設共同企業体が248億9832万円(税込価格)で設計・施工を落札し着工した。
 しかし、その後も、整備費が巨額に上る上に、埋め立て地の先端に立地するた強風や波の影響を受けやすく、海水によるボートへの塩害の懸念や航空機の騒音問題などでも批判が止まず、小池都知事が設立した都改革本部の五輪調査チームは宮城県の長沼ボート場に会場変更をして建設中止をする提案をした。
 2016年11月29日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、小池都知事海の森水上競技場を20年程度存続の“スマート施設”(仮設レベル)として、整備費は当初の491億円から298億円に縮減して建設することを明らかにした。都の調査チームがボート・カヌー会場に提案していた長沼ボート場は事前合宿地とすることをコーツIOC副会長が“確約”し、小池都知事も歓迎した。

“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心


海の森水上競技場  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

カヌー・スラローム会場(葛西臨海公園隣接地)
 カヌー(スラローム)の競技場は、水路に人工的に流れを作り出し、競技を実施することができる国内で初めてのカヌー・スラロームコースである。葛西臨海公園に建設する計画だったが、隣接地の都有地(下水道処理施設用地)に建設地を変更した。葛西臨海公園の貴重な自然環境を後世に残すという設置目的などに配慮して、公園内でなく隣接地に移して整備する。 大会後は、葛西臨海公園と一体となったラフティングも楽しめるレジャー・レクリエーション施設となるように計画を練り直した。東京都の施設として整備するので、整備経費、約73億円は東京都が負担する。




カヌー・スラローム会場  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

大井ホッケー競技場
 大井ホッケー競技場は、大井ふ頭中央海浜公園内のサッカー用の第一球技場敷地にメーンピッチ(決勝など)を新設、サッカーやアメフト用の第二球技場敷地にサブピッチ(予選)を改修整備する計画である。
座席数は、メーンピッチが大会時には仮設を含めて約1万席、大会後は約2600席、サブピッチは仮設を含めて大会時5000席、大会後は536席とする。
 立候補ファイルでは、公園内の野球場6面をつぶしてメーンピッチ、サブピッチを整備する計画でいたが、地元の軟式野球連盟などが3万8千人分の反対署名を提出したため東京都で見直し作業を進めていた。 野球場は五輪開催時は一時閉鎖し大会運営に使うが、大会後はこれまでどおりの利用が可能となる。
 総事業費は約48億円を見込んでいる。


大井ホッケー競技場  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

アーチェリー場(夢の島公園)
 アーチェリー場も夢の島公園内(新木場)の緑地を極力減らさない方向で会場計画を見直した上で建設することとした。
 当初計画では、円形広場南側の緑地部分に新設するとしていた「予選会場」「決勝会場」を、公園内にある陸上競技場にスタンドを仮設するなどして決勝会場として整備し、円形広場に予選会場を作るよう計画を変更した。取り壊す予定だった「東京スポーツ文化館」も大会の選手控室として活用する。整備費は約24億円。
 夢の島公園は、運河と水路に囲まれた43haの総合公園、ごみの最終処分場であった東京港埋立地夢の島を整備して作られた。熱帯植物館や各種スポーツ施設、バーベキュー広場などが整備され、四季折々の花が咲き乱れる都会のオアシスに生まれ変わっている。せっかく整備した緑地を潰して五輪施設を建設することに対しては都民から強い批判を受けている。


夢の島公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

武蔵野総合スポーツ施設
 武蔵野総合スポーツ施設(仮称)は、東京都調布市の東京スタジアムの隣接地の約3万3500平方メートルの敷地にメインアリーナとサブアリーナを建設する。
 メインアリーナは、バレーボール4面、バスケットボール4面が可能な競技フロアを備え、観客席は固定席で6662席、仮設席対応も含めると約11000席が収容可能である。大規模なスポーツ大会やイベントの開催も可能である。
 サブアリーナは、バレーボール2面、バスケットボール2面が設営可能なフロアが整備され、可動畳で武道競技の開催も可能である。屋内プールも設置し、50m、8コースの国際公認プールとなる計画である。さらにトレーニングルームやフィットネススタジオ、カフェ等も設ける。 隣接地には陸上競技場、「西競技場」(既設)も整備されている。
 整備費は351億円。 近代五種[フェンシング、バドミントン]の競技場となる。


武蔵野総合スポーツ施設  出典:東京都

有明テニスの森公園
 有明テニスの森公園は、当初計画では既存の屋内外のコート計49面を、35面のコートや観客席などに再整備し、ショーコートを2面、建設するとしていた。しかし、日本プロテニス協会ら複数の競技団体から「コートの減少を最小限にとどめてほしい」といった要望や、ショーコートを整備予定のイベント広場についても、近隣住民らから存続を希望する声が寄せられていた。こうした要望を受け、新計画では、コートの配置を変更することで大会開催時には37面を整備し、大会終了後には元の49面に復元。また、2面整備予定のショーコートは1面を大会後撤去し、イベント広場に戻すとした。また観客席を仮設とすることで34億円縮減し、改修費は約110億円となった。


有明テニスの森公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

建設中止や会場変更をする競技施設
 恒久施設では、「夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」、「夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」、「若洲オリンピックマリーナ(セーリング)」、仮設施設では、「ウォーターポロアリーナ(水球)」、「有明ベロドローム(自転車・トラック)」、「有明MTBコース(マウンテンバイク)」、「夢の島競技場(馬術)」は建設中止となり、他の既存施設に振り替える。
 「夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」と「夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」は、招致計画では、建設費を364億円としたが、見直しの結果、683億に膨張し建設中止に追い込まれた。
 バトミントンは、武蔵野森総合スポーツ施設(東京都調布市)、バスケットはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)に会場変更された。
 「若洲オリンピックマリーナ(セーリング [ヨット・ウンドサーフィン])」は、招致計画では建設費を92億円としたが、見直しの結果、土手の造成費が新たに必要となることが明らかになり、417億円に膨れ上がり建設は取りやめられた。セーリング会場は江の島ヨットハーバー[藤沢市]に変更となった。
 水球は「東京辰巳国際水泳場」に変更となった。
 自転車(トラック)は、日本サイクルスポーツセンター内の「伊豆ベロドローム」に会場変更し、マウンテンバイク(MTB)は同じ日本サイクルスポーツセンター内のMTBコースを改修して開催することが決まった。
 また馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)は夢の島競技場内(新木場)に仮設施設を建設する予定だったが、建設は中止され、馬事公苑(世田谷区)に会場を変更した。
 カヌー・スラローム会場は、葛西臨海公園から、公園に隣接する都有地に建設地が変更された。

“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか



五輪競技場の仮設施設

 「仮設施設」では、皇居外苑コース(自転車・ロードレース)、お台場海浜公園(トライアスロン・水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、海の森クロスカントリーコース(馬術・クロスカントリー)、有明BMXコース(自転車[BMX])、陸上自衛隊朝霞訓練場(射撃)が整備される。当初は整備にかかる経費は原則として五輪組織員会が負担するとしていたが、結局、組織員会は約950億円を負担し、東京都が2100億円負担することになった。 さらに東京都は周辺整備費や道路などの交通基盤整備費の負担も背負うことになる。
 馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)は夢の島競技場内に仮設施設を建設する予定だったが、建設を中止し馬事公苑に会場を変更した。
 また馬術(クロスカントリー)については、計画通り、「海の森クロスカントリーコース」が仮設施設として整備される。
 マラソンは、スタート、ゴール共に新国立競技場で開催され、競歩は、皇居外苑の周回コースで行われる。
 そのほかの「仮設施設」では、お台場海浜公園(トライアスロン[水泳]、マラソン水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、青海アーバンスポーツ会場(バスケットボール3×3、スポーツクライミング)が整備される。
 自転車(ロードレース)は、当初計画ではスタート地点が皇居、ゴール地点が武蔵野の森公園としていたが、テレビ映りや景観を重視した国際自転車連合(UCI)から富士山を背景に走るコースを強く要請され、スタート地点を東京・武蔵野の森公園、ゴール地点を富士スピードウェイ(静岡県小山町)とすることが決まった。いた理事会で2020年東京五輪の会場計画変更を承認し、自転車ロードレースはを出発し、富士山近くのにゴールすることが決まった。



有明体操競技場
 有明体操競技場は鉄骨造・一部木造の地上3階建てで、敷地面積は約9万6400平方メートル(都有地)、延べ面積約3万9300平方メートル、観客席1万2000席の計画で整備される。3万2000平方メートルの体操競技場と約5000平方メートルのウオームアップ施設などが建設される。
 大会後は、敷地面積を3万6500平方メートル、延べ面積を約2万7600平方メートルに縮小し、面積は約1万平方メートルの展示場とする。ウオームアップ施設は撤去され、バックスペースは駐車場となる。
 有明体操競技場は当初計画では、「仮設施設」として、組織委員会が総工費約89億円で整備し、大会後は取り壊す方針だったが、「大会後に有効活用せずに取り壊すのはもったいない」との意見が出ていた。その後、資材の高騰などでさらに総工費が膨れ上がり、「恒久施設」として建設する場合と比較してもあまり経費に大きな差がなくなったが判明し、大会終了後、10年間をメドに存続させ、再活用する“半恒久”施設として整備することになった。 展示場やイベント会場などで10年程度利用され、都の関連企業の「東京ビッグサイト」が管理運営を行う方針である。
 東京都では、組織委員会が管理する「仮設施設」として仕分けしているので、「五輪開催費用」に計上していない。
 整備費の総額は「約253億円」とし、「後利用に相当する部分」を「193億円」、「大会時のみ使用する部分」を「60億円」に仕分けすることで組織委員会と合意している。「193億円」は東京都が負担することが決まったが、「60億円」の負担の割合は調整がついていない。
 2016年11月、清水建設が205億2000万円で本体工事を落札した。


有明体操競技場  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

海の森クロスカントリーコース
 海の森クロスカントリーコースは、東京湾の最先端にある中央防波堤の埋め立て地に建設される。この埋め立て地では緑化事業が進められ、海の森公園が整備され、公園内に馬術のクロスカントリーコースが仮設施設として整備され、総合馬術(クロスカントリー)が開催される。
海の森公園からは東京ゲートブリッジなど東京湾と巨大都市、東京の景観が一望に見渡すことができ、大会開催後は、「海の森」として、都民のレクレーション・エリアとなる。
ボートとカヌー競技が開催される海の森水上競技場が隣接している。


海の森クロスカントリーコース  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

青海アーバンスポーツ会場 
 選手村からも近い青海エリアの敷地に、仮設で整備される競技会場。東京湾が見える場所に位置し、都市型スポーツ競技のバスケットボールの3×3やスポーツクライミングが開催され、世界中の若者のアスリートが集う東京2020大会を象徴する会場のひとつとなる。
パラリンピックでは、5人制サッカーの競技会場となる。


青海アーバンスポーツ会場の建設地  出典 2020東京大会組織委員会

潮風公園
 潮風公園の前身は、東京港改造計画に基づいて造成された13号埋立地の一画の「13号地公園」で、この地域が臨海副都心として整備されるに伴い、全面改修工事が行われ「潮風公園」として生まれ変わった。臨海副都心内では最大の海辺の公園で、レインボーブリッジを背景とした東京湾の景観も素晴らしい。お台場海浜公園と隣接している。
 潮風公園の中心にある「太陽の広場」にビーチバレーボールの競技会場が仮設で建設される。


潮風公園 ビーチバレー競技会場 (資料:東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会)

BMXコース
 BMXについては、組織委では、「日本サイクルスーツセンター」に変更したいとしたが、国際自転車連合は観客が集まりやすい首都圏での開催にこだわって難色を示し、当初計画通り東京都江東区有明周辺で開催されることになった。有明地区に約5000席の観客席を備えた「有明BMXコース」を建設することが決まった。


有明BMXコース 出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会


有明BMXコース建設地  出典 江東区スポーツ公社


既存施設の五輪競技会場

東京辰巳国際水泳場
 水球の競技会場となる東京辰巳国際水泳場は、東京都の水泳競技場の代表的な施設として建設され、1993年にオープンした。
50m×25mで公認8レーンで、水深を1.4mから3mまで変えられる可動床が設置されているメインプールや50m×15mで7レーンのサブプール、25m×25mで水深5mの国際公認ダイビングプールを備え、全国規模の大会などが多数開催されている。観覧席は固定で3,600席、仮設で1,400席、あわせて5,000席がある。ダイビングプールの観客席はメインプールと共通である。
 この水泳場のメインプールでは、2008年に北島康介選手が世界新記録を樹立し、2017年には渡辺一平選手がその記録を塗り替えるなど、大きな話題になった。


東京辰巳国際水泳場  出典 清水建設

伊豆ベロドローム
 伊豆ベロドロームは、国際自転車競技連合(UCI)規格の周長250m木製走路を有する屋内型自転車トラック競技施設として2011年に開業した。観客席は、常設で1,800席、仮設で1,200席。全日本選手権自転車競技大会トラック・レースなど多くの国内主要大会で使用されている。また ナ  ショナルトレーニングセンターとしての役割を果たすとともに、広く一般の方も利用できる施設になっている。
 自転車(トラック)は当初計画では、「有明ベロドローム」(仮設施設)を建設する予定だったが、建設費の高騰で、会場見直しを2020東京大会組織委員会が提案し、伊豆・修善寺にある「日本サイクルスポーツセンター」内にある「伊豆ベロドローム」に会場変更することが承認された。伊豆ベロドロームでは、パラリンピックで自転車競技(トラック)も開催される。
 またマウンテンバイク(MTB)も、「海の森マウンテンバイクコース」の建設を中止して、「日本サイクルスポーツセンター」内の既存の「伊豆MTBコース」を改修して使用することが決まった。
 このコースは全長2,500m、高低差85mのオフロードコースで全日本選手権大会なども開催されている。初級者から上級者までが利用できるように、エリアやルートが分かれている。コースの途中には、富士山を望むことができるビューポイントもある。
 五輪大会のマウンテンバイク(MTB)競技は、クロスカントリーが行われ、起伏に富む山岳コースを舞台に全選手が一斉にスタートして着順を競うものでパワーとテクニックが必要である。
 1周5km以上のコースを使用し、周回数は予想競技時間(男子2時間)にあわせた周回数となる。

* 「ベロドローム」とは自転車競技場の意味で、『Velo(ベロ)』はラテン語が語源のフランス語で自転車、『drome(ドローム)』はラテン語で競技場を意味する。




伊豆ベロドローム  出典 日本サイクルスーツセンター


日本サイクルスーツセンター 出典 日本サイクルスーツセンター

 ロードレースのコースは、当初は、スタートとゴール共に、観客の集まりやすい皇居外苑としていた。
 しかし、ロードレースのコースは選手の実力差が出るように勾配のある難しいコース設定が求められ、リオ五輪では終盤は高低差約500メートルの山岳ルートを周回するコースが選ばれている。競技団体から、こうした条件を満たす富士山麓のコースが求められた。しかもテレビ映りの絶好な富士山を背景にすることができることも大きな要因だった。ゴールは富士スピードウェイ(静岡県小山町)が決まり、出発点は武蔵の森公園となった。
 組織委員会としても、都内の周回コースは一般交通への影響や警備の負担が大きく、“富士山コース”を受け入れた。
 それにしても“テレビ五輪”を象徴する計画変更である。


富士スピードウェイ  出典 富士スピードウェイ 

お台場海浜公園 

マラソン水泳・トライアスロン 深刻な東京湾の水質汚染
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソンの水泳とトライアスロンの会場で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。
 組織委では、雨期に海岸から流出する細菌の量を抑制するために、お台場マリンパークに水中スクリーンを設置するなど多数の実験を行い、水質改善に努めているとした。
 コーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。今年と来年に行われる水のスクリーニング、カーテンの入れ方などの実験についてプレゼンテーションを受けた。この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。


お台場海浜公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

江の島ヨットハーバー
 江の島ヨットハーバーは神奈川県藤沢市の沖にある島「江の島」の中にある。
1964東京オリンピックのヨット競技の会場となり、江の島の北東側海岸にあった岩場を埋め立てて、ヨットハーバーを整備した。
埋め立て地の内、約330平方メートルにヨット係留施設を建設し、鉄筋3階建クラブハウスや約500台駐車可能の駐車場なども整備された。また2000t級の観光船なども発着できる岸壁も建設した。
 2020東京五輪大会ではセーリング(ヨットとウインドサーフィン)の競技会場となる。

シラス漁に影響 江の島セーリング会場
 セーリング競技については、バンコクの会議で、国際セーリング連盟は、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。
江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して争われる競技である。
 レース海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の海域に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めているのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 そこで浮上するのが漁業補償の問題だが、神奈川県と関連漁協の間の具体的な協議は始まっていない。
 漁業補償がからんでレース海面の決定は難航が予想され、セーリング開催準備も難問を抱えている。


江の島ヨットハーバー 出典 Wikipedia


セーリング  出典 日本セーリング連盟

「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委

釣ヶ崎海岸サーフィン会場
 釣ヶ崎海岸(通称志田下ポイント)は九十九里浜(千葉県一宮町)の南端の海岸で、「世界最高レベル」ともいわれる良質な波が、年間を通じて打ち寄せる海岸として知られ、多くのサーファーが訪れる。
 プロサーファーやハイレベルなサーファーが集まることから「波乗り道場」とも呼ばれ、地元出身の多くの有力選手が活躍している。
ハイレベルな大会も多数開催されており、平成28年5月と平成29年5月にはこれまで国内で開催された国際大会の中でも最高レベルにあたる「QS6000 ICHINOMIYA CHIBA OPEN」が開催され、世界トップレベルの選手達がライディイグを披露した。
 2020東京五輪大会ではサーフィン競技の会場になる。


釣ヶ崎海岸  出典  千葉県教育委員会


釣ヶ崎海岸  出典 一宮町 ホームページ

迷走 霞ケ浦CCゴルフ会場
 2017年1月4日、森喜朗組織委会長は、ゴルフ会場の霞ケ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)について「輸送を計画通りにできるのかどうか。選手の疲労なども考えると、運営側としては心配だ」と述べ、アクセス面の懸念を示した。
 東京晴海の選手村から会場までは40キロ以上も離れている上に、渋滞の激しい関越自動車道を通るため、期間中に設置される五輪専用レーンを設置しなければならない。専用レーンを利用しても1時間半程度かかるとし、「強い(上位)選手ほど帰るのが遅くなる。遅ければ選手村に午後10時ごろ。翌朝6時(始動)となれば大変だ」と述べ、4日間の日程で選手の疲労度を懸念した上で、輸送計画の精査を求めた。 
さらに、内陸部で真夏には気温が40度近くになることもあり暑さ対策の懸念も指摘した。
 森会長は、問題の解決が難しい場合、2012年招致計画の会場だった江東区の若洲ゴルフリンクス(都営パブリックコース)や、千葉県などにゴルフ場があることも指摘し、会場変更の検討にも言及した。
 一方、小池都知事は、「21世紀に女性が正会員になれないということに違和感がある」と述べ。男女平等をうたう五輪憲章に反するという懸念を示した。国際オリンピック委員会(IOC)は日本ゴルフ協会(JGA)など4団体で構成する五輪ゴルフ対策本部や大会組織委員会に対応を求めた。
また2013年の立候補ファイルでは、若洲から霞ケ浦へ変更されたが、なぜ変更されたのか、その経緯が不明朗だという批判がこれまでも巻き起こっていた。「誰がどう考えても若洲の方が良い」とする意見も強い。
 2017年3月20日、「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は、臨時の理事会を開き、規則を改定し、女性正会員を容認することを出席した理事が全員一致で議決した。
 これまで霞ヶ関カンツリー倶楽部は、女性がすべての営業日を通じて利用できる正会員になることを認めていなかった。
 「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は「時代に沿った対応をすすめるため、自主的に改定の判断をした」とのコメントを出した。


霞ヶ関カンツリー倶楽部  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

陸上自衛隊朝霞訓練場
 陸上自衛隊朝霞訓練場は、陸上自衛隊朝霞駐屯地に隣接して設置された施設で、訓練場内は自動車教習所、屋内射撃場、弾薬庫等が設置されており、一部の区域で陣地構築等の小規模な訓練も可能である。3年に一度、自衛隊記念日に中央観閲式が実施されことで知られている。
 屋内射撃場は、射撃の競技場・練習場として使用され、1964年東京五輪大会では射撃競技の会場となった。
 2020東京五輪大会時には訓練場内に仮設施設が整備され、オリンピックとパラリンピックの射撃競技が開催される。


陸上自衛隊朝霞訓練場  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

サッカーの予選開催競技場 
 サッカーの予選開催競技場は、札幌ドーム(札幌市)、宮城スタジアム(宮城県利府町)、埼玉スタジアム2002(さいたま市)、横浜国際総合競技場(横浜市)の4か所がすでに決まっている。組織員会では、4か所に加えて、茨城県立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)、豊田スタジアム(愛知県豊田市)、吹田市立スタジアム(大阪府吹田市)の3か所を追加したいとして国際サッカー連盟と調整したが、最終的に、札幌ドーム(札幌市)、宮城スタジアム(宮城県利府町)、茨城立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)、埼玉スタジアム2002(さいたま市)、横浜国際総合競技場(横浜市)、新国立競技場、東京スタジアムの7か所で開催することが決まった。
 決勝は男子が「横浜国際総合競技場」、女子は「新国立競技場」で行う案が有力とされている。
 
選手村
 中央区晴海の東京ドーム3個分に及ぶ広大な都有地、約13万4000ヘクタールの敷地に、14~17階建ての21棟のマンション型の選手村と商業施設が建設される。工事費は約954億円。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。
 大会終了後は分譲マンションとして販売する計画で、超高層住宅棟2棟を建設し、住宅棟21棟、商業棟1棟に整備して、5650戸のニュータウンに衣替えする。2016年7月、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発事業を受注し、2017年1月には着工する。基本的に国や都の財政負担なしに整備する方針だ。日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指す。
 しかし、東京都は選手村用地の盛り土や防潮堤の建設を始め、上下水道や周辺道路の整備に410億円を投入して計画だ。大会後は臨海ニュータウンになるので、社会資本整備投資経費として理解できるが、東京都の五輪開催経費、選手村整備費にはまったく算入していない。
 また都有地約13万4000ヘクタールを、周辺価格の約10分の1という“破格の優遇措置”で事業者グループに売却したことで、疑念が生まれて批判が集まった。


選手村  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

IBC/MPC
 東京オリンピックの世界の報道機関の拠点、国際放送センター(IBC International Broadcasting Center)とメインプレスセンター(MPC Main Press Center)は東京ビッグサイト(江東区有明地区 東京湾ベイエリア)に設置される。
 国際放送センター(IBC / International Broadcasting Center)は、世界各国。の放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は、五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるOBS(Olympic Broadcasting Services )が行う。
 IBCには、国際映像・音声信号のコントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置されるエリアや各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・ブースなどを設置する放送機関エリアなどが整備される。
 メインプレスセンター(MPC / Main Press Center)は、新聞、通信社、雑誌等の取材、編集拠点である。共用プレス席、専用ワーキングスペース、フォト・ワーキングルーム、会見室・ブリーフィングルームなどが準備される。
IBCとMPCには、約2万人のジャーナリストやカメラマン、放送関係者などのメディア関係者が参加する。
世界の各放送機関に対し、国際映像(ホスト映像)を配信するOBS(Olympic Broadcasting Services )エリアや、世界の各放送機関が使用する専用スペース・エリアが用意される。
 東京ビックサイトは、江東区有明地区の東京湾ベイエリアにある国際展示場で、敷地面積24万平方メートル、延べ床面積23万平方メートル、会議棟、西展示棟、東展示棟からなる日本で最大のコンベンションセンターである。
 東京ビッグサイトには、十分なスペースを確保するために既設の西展示棟南側に、延床面積約6万5000平方メートルの5層階の「増設棟」を、約228億円の整備費で建設される。広さ約2万平方メートルの展示ホールや会議施設、事務所などが設けられる。
 国際メディアセンターとなる東京ビッグサイトについては、東京都は、既存の施設の他に十分なスペースを確保するために西展示棟南側に延べ面積約4万4000平方メートル(当初計画)を、約228億円で増築する予定である。 この増築棟は、当初計画ではメイン・プレス・センター(MPC)を設置するとしていたが、その後、MPCは館内の他のスペースに移し、増設棟は五輪施設としては使用しない方針を示し、五輪施設整備予算の枠から除外した。
 東京ビックサイトをIBC/MPCに使用すると、最大20カ月に渡って占有されるため、毎年開催されているさまざな業種の約230の見本市・展示会が中止となり、約2兆円の売り上げを失うとして、見本市・展示関連企業から反発を受けている。


国際放送センター・メインプレスセンター  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

何処へ行った「世界一コンパクトな大会」
 新規に競技場を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費など“後年度負担”が確実に生まれる。施設利用料などの収入で賄えるのであれば問題ないが、巨額の“赤字が毎年生まれるのでは、“レガシー”(未来への遺産)どころか”“次世代”への“負の遺産”になる懸念が大きい。“新設”は極力抑えるのが適切だろう。五輪開催期間は、オリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。
 また忘れてはならないのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、“ヘリテッジゾーン”と“東京ベイゾーン”の選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催するとしていた。「世界一コンパクトな大会」の“公約”は消え去ってしまった。

 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
舛添要一東京都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。
 結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは国民である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催まであと2年余り、新国立競技場の迷走、五輪エンブレムの撤回、政治とカネにまつわるスキャンダルで舛添前都知事の辞任、そして、海の森水上競技場などの競技場見直しを巡るバトル、“混迷”はまだ収まる気配はない。



東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年12月7日 2018月5月1日改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR





******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************

google-site-verification: google0153861434c93aaf.html
コメント (4)

東京オリンピック 準備遅れ コーツ副会長 水質汚染 トライアスロン お台場海浜公園 江の島ヨットハーバー

2018年10月10日 09時27分05秒 | 東京オリンピック
「準備は1年遅れている」「誠実に疑問に答えない」
警告を受けた2020東京大会組織委 




「誠実に疑問に答えを」 コーツIOC副会長
 2018年4月24日、2020東京五輪大会の準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツIOC副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 4月15日から20日、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議などで、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した。
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況のチェックを行った。

 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京に移る中、大会準備に関して答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。

柔道、セーリング、トライアスロンに批判
 国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟は、柔道とセーリング、トライアスロンの種目について、開催準備の遅れに懸念を表明している。国際柔道連盟は、2019年に開催される柔道競技のプレ大会の準備状況の遅れを指摘し、国際セーリング連盟は、江の島で開催されるセーリング競技について、地元漁業者との調整が進まず、コース決定が遅れていることに不満を示した。またトライアスロン競技連盟は東京湾の水質汚染問題について強い懸念が示された。


お台場海浜公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

マラソン水泳・トライアスロン 深刻な東京湾の水質汚染
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソン水泳とトライアスロンが行われるお台場周辺の海域で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。
 この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、オリンピック開催時期の21日間、パラリンピック開催時期のうち5日間、トライアスロンとマラソンスイミングの競技会場になっているお台場海浜公園周辺の水質・水温を調査したものだ。
 調査を行った2017年8月は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
 調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化すること分かった。今回の調査期間では、国際競技団体の定める水質・水温基準達成日数は、マラソンスイミング基準では10日で約半分、トライアスロン基準はで6日で約3分の1に留まった。
 お台場海浜公園周辺の競技予定水域は、競技を開催する水質基準をはるかに上回る汚水が満ち溢れていることが示されたのである。
参加選手の健康問題を引き起こす懸念が深まった。


お台場海浜公園における水質・水温調査地点  出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局

 組織委では、雨期に東京湾から流れ込む細菌の量を抑制するために、競技予定水域を水中スクリーンを設置して東京湾から遮断するなど様々の実験を行い、水質改善に努めているとした。
 コーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。今年と来年に行われる水のスクリーニング、カーテンの入れ方などの実験についてプレゼンテーションを受けた。この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。




お台場海浜公園における水質・水温調査  出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局

 東京湾の水質改善は、着々と進んではいるが、とても海水浴ができるような“きれいな海”とはいえない。東京湾に流れ込む川からは大量の汚染水が流れ込む。海底にはヘドロが蓄積している。オリンピック開催期間は真夏、ゲリラ豪雨は避けられない。東京湾は、“汚水の海”になることは必至だ。
そもそも東京湾に、選手を泳がせて、マラソンスイミングやトライアスロンを開催しようとすること自体、無謀なのではないか。

「水面に顔をつけない」が条件の海水浴場
 2017年夏、葛西臨海公園に海水浴場がオープンした。水質改善が進んだ東京湾のシンボルとして話題になった。
かつては東京湾には葛西のほか大森海岸、芝浦など各所に海水浴場があったが、高度経済成長期に臨界工業地帯の工場排水や埋め立て工事で1960年代に水質悪化が進み、海水浴場は姿を消した。
東京湾では、約50年間海水浴が禁止され、房総半島や三浦半島までいかないと海水浴ができなかった。
 港区では、「泳げる海、お台場!」をスローガンに掲げ、お台場海浜公園に海水浴場を開設しようとする取り組みに挑んでいる。
 現在は、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため通常は遊泳禁止である。2017年7月29日(土曜)・30日(日曜)の2日間、範囲を限定し、安全面等に配慮しながら行う“海水浴体験”を開催し、訪れた親子連れは、“海水浴”ではなく、ボート遊びや水遊びを楽しんだという。
 しかし、なんと「水面に顔をつけない」ことが条件の“海水浴体験”だった。
 これでは海水浴場と到底、言えないだろう。
 お台場の海は、「水面に顔をつけない」程度の水質しか保証されていないのである。この海で、マラソンスイミング(水泳)やトライアスロンの競技を開催すれば、参加選手は“汚染”された海水に顔をつけ、海水を口に含まざると得なない。選手の健康問題を組織委員会はどう考えているのだろうか。
 なぜ、素晴らしい自然環境に囲まれたきれいな海で開催しないのか。それまでしてお台場の開催にこだわる姿勢には“良識”を疑う。

トライアスロン マラソン水泳・ 水質汚染深刻 お台場海浜公園 アスリートファーストはどこへいったか

水質汚染問題に直面したリオデジャネイロ五輪
 2016リオデジャネイロ五輪では、セーリングやトライアスロン、ボートなどの会場となるコパカバーナ地区の湾岸部、グアナバラ湾の水質汚染が深刻で選手の健康被害が懸念され、競技の開催が危ぶまれのは記憶に新しい。
 AP通信が行った独自調査によると、2015年3月以降に競技会場で採取された水から、高い数値のアデノウイルスのほか、複数のウイルスや細菌も検出されという。
 汚染の原因は下水処理整備の遅れだ。人口1000万人のリオデジャネイロの生活排水の7割近くがグアナバラ湾に最終的に流れ込むという。
さらに汚染に拍車をかけるのが、リオデジャネイロの貧民街。リオデジャネイロは世界でも有数の観光地だが、人口632万人の23%を占める143万人が貧民街に暮らしているという。ブラジルで最も貧富の差が大きい都市でもある。貧民街では下水処理施設の整備はほとんど手が付けられていない。
 グアナバラ湾は「巨大なトイレ」と揶揄されている。
 招致段階でリオデジャネイロ州政府は五輪開幕までにグアナバラ湾に流入する汚水の80%を下水処理できるようにすると公約した。この処理事業を支援しているのが日本の国際協力機構(JICA)で、現在四つの下水処理場が稼働している。 しかし、各家庭から処理場まで下水を集める配管の整備が遅々として進んでいない。リオ五輪組織委員会は、開催前年の20157月、公約としていた水質浄化が開幕まで不可能と認めている。
 大量のゴミが海面を覆い尽くしているのも汚染の原因とされているが、リオデジャネイロ市では、湾内のごみを回収する「エコポート隊」を投入するなど窮余の対策に追われた。
 水質汚染問題の抜本的な解決はできなかったが、国際オリンピック委員会(IOC)は「環境基準は満たされた」して競技は予定通り行われた。


ゴミが散乱するグアナバラ湾 Antonio Scorza / Agência O Globo
 
絶望的 東京湾の水質改善
 東京23区の下水道のほとんどが合流式で整備され、雨水と汚水を一緒に処理するシステムである。雨が大量に降ると下水道が処理できずに、そのまま河川に放流される可能性がる。東京都は下水処理能力の向上に取り組んでいるが、一瞬で大量の雨が降るようなゲリラ豪雨が発生すると処理能力の限界を超えてしまう。
 再オープンした葛西海浜公園も、大雨が降ればで、COD濃度が一気に跳ね上がり水質基準を超えて、海水浴場が再び閉鎖になる懸念と隣り合わせている。
 水質改善の抜本的な対策は、下水道を合流式から分流式に切り替えることで、分流式は雨水・汚水を区別して処理する方式のため、雨が降っても汚水が未処理のまま雨水に混ざることはない。
東京23区は、下水道整備を急ぎ、昭和30年代に経費のかからない合流式で下水道を整備した。1970年に下水道法が改正されて、下水道はようやく分流式で建設されるようになったが、現在でも合流式で整備した下水道が広いエリアで稼働している。東京都内の下水道が分流式に切り替わるには、あと30年以上はかかるとされている。
 さらに埼玉県や千葉県、茨城県からの生活排水も東京湾に流れ込む。
さらに東京湾の海底には、過去の環境汚染の“負の遺産”である汚染物質が大量に含まれているヘドロが海底には堆積したまま、未だに年間約40回程度の赤潮や4~5回程度の青潮が発生している。
 東京湾に本格的に海水浴場が蘇るのはまだまだ先になる。

 2020年東京大会まであと2年余り、この間に、東京湾の水質改善が飛躍的に進むことはありえないだろう。
 “汚染”された海、東京湾を選手に泳がす東京大会、何がアスリートファーストなのだろうか。


セーリング競技会場 江の島ヨットハーバー 出典 神奈川県


江の島ヨットハーバー 出典 Wikipedia

シラス漁に影響 江の島セーリング
セーリング競技については、バンコクで開かれた夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)の総会で、、国際セーリング連盟は、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。

 2020東京大会で江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種(1人ないし2人乗りの小型艇)によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して、指示された周回方法や周回回数で走る競技で、得点とレースの終了順位で勝者を決まる。
 競技種目には、1人乗りのレーザー級、2人乗りの49er(フォーティーナイナー)級などがあり、1984年のロサンゼルス大会からは、ウインドサーフィン種目も採用された。
 2016リオデジャネイロと同様の10種目が行われることが決まっている。 

▼ 競技種目
 ・RS:X(男子/女子)
 ・レーザー級(男子)
 ・レーザーラジアル級(女子)
 ・フィン級(男子)
 ・470級(男子/女子)
 ・49er級(男子/女子)
 ・フォイリングナクラ17(混合)

 競技を開催する海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の相模湾に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 国際セーリング連盟は、レースの実施に当たってはブイを設置するので、水深が深いところではブイを固定しづらいため、水深 40 ㍍以下が望ましいとし、沖合に海面を設定すると選手の移動負担が大きいく、なるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
 セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い海域を求めいるのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 さらに現状で計画されている競技エリア内には、定置網が2箇所設置されていて、定置網を撤去すると巨額の撤去費用や漁業補償が発生する。
 神奈川県ではこうした巨額の費用負担を避けるために、定置網の設置場所を競技エリアから外すことで調整をしたいとしてるが、未だに決着はしていない。
 漁業補償については、五輪期間中の漁業補償を支払う方針だが、ほぼ同じ海面で実施する見通しのテスト大会については、現段階では検討していない」しているが、未解決のままである。
 セーリング競技大会は、2020東京大会の前に、テストイベント(プレプレ大会、プレ大会)が、2018年9月と2019年と大会直前に合計3回の開催が予定されいる。テストイベントは本大会と同様程度の規模で開催される。
 レース海面の決定は漁業補償がからんで難航が予想され、セーリング開催準備は大きな難問を抱えている。


セーリング競技開催予定海域   出典 神奈川県

緊急課題 津波対策
 江の島の東端の海に突き出したエリアに、約5000人収容の観客席が設けられる。約2000~3000人とされている大会関係者も含めると1万人近い大勢の人が集まるだろう。
 海辺のイベントで懸念される災害は、津波である。近くには津波避難施設も少なく、「避難しやすい対岸などに観客席を移すべきだ」との声も出ている。
 神奈川県藤沢市が作成したハザードマップによると、相模湾から房総半島に至る相模トラフで大地震が発生した場合、五輪セーリング会場の江の島ヨットハーバーには8分後に4・5メートルの津波が来ると想定している。さらに「想定外をなくす」方針のもと新たに追加された予測では最大クラスで高さ11・5メートルの津波が来る可能性も指摘している。
 2017年10月には台風21号の影響による激しい風雨に高潮が重なり、高さ約6メートルの堤防を高波が乗り越えた。セーリング会場となる一帯が冠水して、競技用の大型コンテナが流されて横倒しになるなどの被害が出ている
 江の島セーリング会場の緊急課題は、短時間避難可能な避難施設の確保など津波災害対策である。
 しかし現状では、津波や高波の際、すぐ逃げられる場所は江の島ヨットハウスの隣の屋外展望台(400人収容可能)だけといわれている。
 江の島には、標高約60メートルの小山や高台もあるが、避難ルートは、飲食店や土産物店が並ぶ狭い参道など住宅地を抜ける急な上り坂が指定されているが、1万人近い群衆が短時間で避難できるかどうか懸念が多い。
 観客席を対岸に移したり、セーリング会場内に新たな津波避難施設を建設したりする安全対策が求められるのは当然だろう。 
 国際セーリング連盟も津波対策について懸念を表明してる。


セーリング競技       出典 日本セーリング連盟

難題 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約1000艇の移動
 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約200艇のクルーザーや約800艇のディンギーは、 2020東京大会開催時だけでなく、テストイベント開催時には移動させなければならい。
 2012ロンドン大会では、参加国56カ国、競技艇273艇、参加選手380人だったが、2020東京大会では、参加国同数56カ国程度、競技艇300艇、参加選手400人を想定している。
 さらに、参加チームには、コーチやスタッフが2000人から3000人参加し、合わせて40フィートコンテナが約100個、運営艇が約300艇持ち込まれる。
 神奈川県では、競技艇300艇は現在のディンギー保管エリア、運営艇300艇は現在のクルーザー係留エリアを使用するとしている。またコンテナリアは駐車場エリアや民間事業者が保有する敷地を利用することで調整しているとしている。
 現在利用している約1000艇や機材置き場を、およそ2年間に渡って移動させることが必須となるが、これが難題だ。
 神奈川県ではクルーザー等は、県内のハーバーを移動候補地として検討し、ディンギーは、県が管理する港湾等の活用について、利便性やコストを精査しながら、検討するとしている。
 利用者にとっては、移動後の係留費用も重要だ。神奈川県では、艇を他の場所に保管する際にどの様な費用が発生するか調査して今後検討していくとしている。
 また、ヨットのメンテナンスなどヨットハーバー関連の仕事に従事している人たちへの影響も深刻だ。 2年近く船が無くなると関連企業は閉鎖しなけばないない事態も起きる懸念がある。
 観光地江の島全体に与える影響もある。大会準備の工事やヨットの移動の影響で江の島自体が“閑散”となる懸念も生まれる。ヨットハーバーを訪れる人は減少し、周辺の飲食店や土産物店への影響も懸念される。
 テストイベントが開催される期間は大会関係者で賑わうだろうが、それは2カ月あまり、残りの2年間余りはは“閑散”とすると思われる。こうした状態が続いたら、なんのために江の島でセーリング競技を開催するのか批判が生れる可能性もある。


セーリング会場整備計画    出典  神奈川県


全体の想定スケジュール    出典  神奈川県

コーツ副会長から警告された組織員会 
 「あなたたには、率直に質問に答えなければならい」、記者会見でコーツ副会長は述べたが、隣に座った元首相の森喜朗委員長と武藤敏郎事務総長はまったく無表情だった。
「すべてがあなたたちに原因があるとは思わないが、疑念はますます増えるだろう」とコーツ副会長は付け加えた。
 森組織委会長は、コート副会長から個人的に受けたドバイスについて質問された。
 「沢山の案件があった」とし、「いくつかの具体的なアドバイスがあり、1つや2つのポイントだけ取り上げることはできない。 多くのポイントがあった」と内容を明らかにすることを避けた。
 これまでに開催されたいくつかの五輪大会とは異なり、東京大会は、はるかに効率的にスケジュール通りに開催準備を行われることが期待されていた。  
 しかし、東京大会の主催者は、いくつかのスポーツ連盟やオリンピック委員会が満足できる大会準備状況について、なぜか説明することを躊躇しているとIOC調査チームから警告されたのである。

 先週、世界のセーリング、柔道、トライアスロンの国際競技連盟から東京大会の準備状況に懸念を示す声が相次いだ。
 世界セーリング連盟のアンディ・ハント(Andy Hunt)会長からは、1年後に迫った大会を控え、セーリング会場となる海域での漁船の問題を指摘した。
 IOCのクリストファー・ダビ氏は「東京大会の開催準備は進んでいるとは思うが、最終決定するまでは公表しない。 それが問題だ」と述べた。

 コーツ副会長は、今年11月に、東京で開催される世界206のオリンピック国内委員会が集まる会合で、東京大会の主催者が質問攻めにあう可能性があると警告した。
 「どんな質問にも答える明快に準備ができていなければならない。彼らは答えが欲しいと思っている。それができなければ信頼を失う危険がある」と述べた。
 そして、「彼らは選手にとって最良の競技ができる環境を知りたがっている」と語った。 「今、私たちはすべての細かな競技環境がどうなるのかに関心がある。こうした細かな競技環境を高めることが重要なのである」
 東京大会まで2年余り、五輪関係者の関心は、競技場や宿泊施設、輸送、競技や選手に影響を及ぼすあらゆる分野で、極めて現実的で緊急に解決しなければならない段階に突入するのである。

混迷必至、北朝鮮五輪参加問題 
 北朝鮮の2020東京五輪参加問題も取り上げられた。
森組織委会長は、最終的に東京オリンピックで北朝鮮代表団を迎えることになることを懸念していると述べた。 日本は、北朝鮮による拉致問題を抱えていて、未だに解決されてと問題を提起した。
 日本は北朝鮮に「裏切られた」とし、「拉致事件は平和な時代に起こった。そして日本人が拉致された」と述べた。
さらに「日本は朝鮮半島に近く、北朝鮮は隣国である。 そして我々は核兵器の脅威にさらされている。我々はこうした厳しい状況の下で生きていかなければならない」と語った。
 コーツ副会長は、日本は東京オリンピックで北朝鮮の五輪選手団を受け入れることがオリンピック憲章の下で義務づけられていると基本的な姿勢を明らかにした。
 しかし、「五輪開催国の政府が、五輪選手団以外の政治指導者や関係者の受け入れを制限する権利がないと言っているわけではない」とも述べた。
 2020東京大会は、北朝鮮の五輪参加という極めて難解な問題を突き付けられている。





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!




東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
唖然とする“五輪専門家”の無責任な発言 膨れ上がった施設整備費
アクアティクスセンターは規模縮小で建設を検討か? 国際水泳連盟・小池都知事会談
東京オリンピック 海の森水上競技場 Time Line Media Close-up Report
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市








国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************

コメント

東京オリンピック 水質汚染 トライアスロン お台場海浜公園 マラソンスイミング

2018年10月10日 08時03分00秒 | 東京オリンピック
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園



お台場海浜公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会





お台場海浜公園 水質対策に疑念
 2020東京大会で、トライアスロンやオープンウォータースイミング(OWS マラソンスイミング)の競技会場になるお台場海浜公園で、2018年夏、ポリエステル製の膜、「水中スクリーン」を海中に張って大腸菌などが流れ込むのを防ぐ実験を行った。3重に「水中スクリーン」で囲った水域ではすべての日で基準値を下回り、「水中スクリーン」で囲う水質対策は効果的だとした。


出典 東京都


出典 東京都

 お台場海浜公園は、2017年夏に行われた水質調査で競技団体が定める基準値を大幅に上回る大腸菌などが検出され、水質対策が迫られていた。
 東京湾には、雨が降ると、隅田川などの河川から、生活排水などの汚水が浄化処理されないまま流れ出ることが原因で、首都圏の下水浄化システムを改善しない限り、抜本的な水質改善は不可能である。
 今回の実証実験は、組織委員会と東京都が、大会の開催期間にあたる7月から9月にかけての27日間で行い、お台場海浜公園の入り江内の2か所にポリエステル製の「水中スクリーン」を張って、大腸菌などが流れ込むのを防ぐ実験を実施した。
 「水中スクリーン」は1重に張ったエリアと3重に張ったエリアの2か所を設け、それぞれのエリアで水質改善効果を検証した。
 今年の夏は、首都圏は台風や豪雨に見舞われ、首都圏の下水が東京湾に流れ込み、「水中スクリーン」が張っていない水域では、半数近い13日間で大腸菌が基準値を上回った。台風の影響で7月29日はトライアスロンの基準値の142倍の数値を示した。
 五輪大会が開催されるのは時期は真夏、毎年、台風や集中豪雨の襲われるのは必至である。依然としてお台場海浜公園周辺の水域の水質レベルは、極めて危険なレベルにあることが明らかになった。
 一方、「水中スクリーン」スクリーンを1重に張ったエリアでは大腸菌の基準値を上回ったのがわずか2日で、3重に張ったエリアではすべての日で基準値を下回った。
 組織委員会と東京都は「『水中スクリーン』の効果が確認できた」として、2年後の東京大会で「水中スクリーン」を設置する方向で進めるとした。


出典 東京都

 しかし、今回の実証実験では、泳げる範囲がわずか60メートル四方で設置経費は7500万円だったとされる。
 トライアスロンのスイム(水泳)のコースは1.5キロメートル、周回コースだが、ほぼお台場海浜公園の入り江全域に設定されるだろう。水質改善効果を上げるためには3重の「水中スクリーン」が必須だが、広範囲に設置した場合、水質改善効果が維持できるかどうかは未知である。また設置経費も膨大なり、10億円近くにも達する懸念がある。
 さらにオープンウォータースイミング(OWS)(マラソンスイミング)では、お台場海浜公園周辺の海域に10キロメートルのコースを準備しなければならない。
 往復のコースを設定するにしても、かなり沖合まで出る必要があり、「水中スクリーン」をコースのすべてに設置するのは不可能に近い。
 マラソンスイミングの水質基準は、トライアスロンとは異なり、大腸菌数250個/100ミリリットル以下、腸球菌数100個/ミリリットル以下などが国際水泳連盟(FINA)によって定められている。これまでの東京都が実施した水質調査では、「水中スクリーン」設置などの水質改善対策を実施しないと、競技実施の水質基準が達成できないのは明らかだ。
 10キロメートルのマラソンスイミングのコースにすべて3重の「「水中スクリーン」を設置することができるのだろうか。
 このままでは大腸菌が漂っている「汚染水」の中を、マラソンスイミングの選手は長時間、泳ぐことになる。
 こうした競技運営は、「アスリートファースト」とは到底言えない。

 そもそも、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため、「遊泳禁止」、海水浴場として認められていないのある。海に入って、いわゆる「磯遊び」は可能だが、「顔を海水につけて」遊ぶことはできないのである。
 しかし、港区はトライアスロンなどのイベント開催は特別に許可をしている。
 2016年にトライアスロンにお台場海浜公園を泳いだ井ノ上陽一氏によると、「トライアスロンのスイムは、レースによっては、それほどきれいな海で泳げず、それに耐えることも大事」としている。特に東京、関東近辺の大会では、きれいな海は望めず、川や湖だともっと視界が悪い場合もあるという。必ずしも、きれいな水域を選んでレースが開催されるのではないようだ。
 井ノ上陽一氏のウエッブには、お台場海浜公園の泳いだ様子の写真が掲載されている。


お台場海浜公園の水中  出典 井ノ上陽一氏 「お台場で泳いでみた!トライアスロンスイム(海)の現実」
 
  筆者は、ほとんど泥水の中を泳いでいる様子に唖然としたが、井ノ上陽一氏によると視界が悪いのは別に驚くには当たらないとしている。
 しかし、問題なのは、水質汚染が悪化しているかどうかで、海水浴場として環境基準を満たしていない「汚染水域」で、五輪大会の競技を開催して、選手を泳がせることである。
 これまでたびたび、小池都知事や森組織委員会長から「アスリートファースト」という言葉を聞いた。「アスリートファースト」を掲げるなら、競技会場を水質基準をクリヤーしている鎌倉や房総半島のビーチに変更したら如何か? いまからでも遅くはない。
 また十億円近い無駄な追加経費が生まれる懸念がある。



リオデジャネイロ五輪のマラソンスイミング 出典 Rio2016/Youtube


リオデジャネイロ五輪のマラソンスイミング 出典 Rio2016/Youtube




お台場周辺の海域 大腸菌が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌が上限の7倍も検出
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソン水泳とトライアスロンが行われるお台場周辺の海域で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。
 この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、オリンピック開催時期の21日間、パラリンピック開催時期のうち5日間、マラソンスイミングとトライアスロンの競技会場になっているお台場海浜公園周辺の水質・水温を調査したものである。
 調査を行った2017年8月は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
 調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化すること分かった。今回の調査期間では、国際競技団体の定める水質・水温基準達成日数は、マラソンスイミング基準では10日で約半分、トライアスロン基準はで6日で約3分の1に留まった。
 お台場海浜公園周辺の競技予定水域は、競技を開催する水質基準をはるかに上回る汚水が満ち溢れていることが示されたのである。
参加選手の健康問題を引き起こす懸念が深まった。


お台場海浜公園における水質・水温調査地点  東京都オリンピック・パラリンピック事務局


水質調査結果(トライアスロン) 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


水質調査結果(マラソンスイミング) 東京都オリンピック・パラリンピック事務局

 組織委では、雨期に東京湾から流れ込む細菌の量を抑制するために、競技予定水域を水中スクリーンを設置して東京湾から遮断するなど様々の実験を行い、水質改善に努めているとした。
 コーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。今年と来年に行われる水のスクリーニング、カーテンの入れ方などの実験についてプレゼンテーションを受けた。この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。
 しかし、マラソンスイミングに関しては言及がない。


お台場海浜公園における水質・水温調査地点  東京都オリンピック・パラリンピック事務局

 東京湾の水質改善は、着々と進んではいるが、とても海水浴ができるような“きれいな海”とはいえない。東京湾に流れ込む川からは大量の汚染水が流れ込む。海底にはヘドロが蓄積している。オリンピック開催期間は真夏、ゲリラ豪雨は避けられない。東京湾は、“汚水の海”になることは必至だ。
そもそも東京湾に、選手を泳がせて、マラソンスイミングやトライアスロンを開催しようとすること自体、無謀なのではないか。

「水面に顔をつけない」が条件の海水浴場
 2017年夏、葛西臨海公園に海水浴場がオープンした。水質改善が進んだ東京湾のシンボルとして話題になった。
かつては東京湾には葛西のほか大森海岸、芝浦など各所に海水浴場があったが、高度経済成長期に臨界工業地帯の工場排水や埋め立て工事で1960年代に水質悪化が進み、海水浴場は姿を消した。
東京湾では、約50年間海水浴が禁止され、房総半島や三浦半島までいかないと海水浴ができなかった。
 港区では、「泳げる海、お台場!」をスローガンに掲げ、お台場海浜公園に海水浴場を開設しようとする取り組みに挑んでいる。
 現在は、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため通常は遊泳禁止である。2017年7月29日(土曜)・30日(日曜)の2日間、範囲を限定し、安全面等に配慮しながら行う“海水浴体験”を開催し、訪れた親子連れは、“海水浴”ではなく、ボート遊びや水遊びを楽しんだという。
 しかし、なんと「水面に顔をつけない」ことが条件の“海水浴体験”だった。
 これでは海水浴場と到底、言えないだろう。
 お台場の海は、「水面に顔をつけない」程度の水質しか保証されていないのである。この海で、マラソンスイミング(水泳)やトライアスロンの競技を開催すれば、参加選手は“汚染”された海水に顔をつけ、海水を口に含まざると得なない。選手の健康問題を組織委員会はどう考えているのだろうか。
 なぜ、素晴らしい自然環境に囲まれたきれいな海で開催しないのか。それまでしてお台場の開催にこだわる姿勢には“良識”を疑う。

水質汚染問題に直面したリオデジャネイロ五輪
 2016リオデジャネイロ五輪では、セーリングやトライアスロン、ボートなどの会場となるコパカバーナ地区の湾岸部、グアナバラ湾の水質汚染が深刻で選手の健康被害が懸念され、競技の開催が危ぶまれのは記憶に新しい。
 AP通信が行った独自調査によると、2015年3月以降に競技会場で採取された水から、高い数値のアデノウイルスのほか、複数のウイルスや細菌も検出されという。
 汚染の原因は下水処理整備の遅れだ。人口1000万人のリオデジャネイロの生活排水の7割近くがグアナバラ湾に最終的に流れ込むという。
さらに汚染に拍車をかけるのが、リオデジャネイロの貧民街。リオデジャネイロは世界でも有数の観光地だが、人口632万人の23%を占める143万人が貧民街に暮らしているという。ブラジルで最も貧富の差が大きい都市でもある。貧民街では下水処理施設の整備はほとんど手が付けられていない。
 グアナバラ湾は「巨大なトイレ」と揶揄されている。
 招致段階でリオデジャネイロ州政府は五輪開幕までにグアナバラ湾に流入する汚水の80%を下水処理できるようにすると公約した。この処理事業を支援しているのが日本の国際協力機構(JICA)で、現在四つの下水処理場が稼働している。 しかし、各家庭から処理場まで下水を集める配管の整備が遅々として進んでいない。リオ五輪組織委員会は、開催前年の20157月、公約としていた水質浄化が開幕まで不可能と認めている。
 大量のゴミが海面を覆い尽くしているのも汚染の原因とされているが、リオデジャネイロ市では、湾内のごみを回収する「エコポート隊」を投入するなど窮余の対策に追われた。
 水質汚染問題の抜本的な解決はできなかったが、国際オリンピック委員会(IOC)は「環境基準は満たされた」して競技は予定通り行われた。


ゴミが散乱するグアナバラ湾 Antonio Scorza / Agência O Globo
 
絶望的 東京湾の水質改善 アスリートファーストはどこへいった?
 東京23区の下水道のほとんどが合流式で整備され、雨水と汚水を一緒に処理するシステムである。雨が大量に降ると下水道が処理できずに、そのまま河川に放流される可能性がる。東京都は下水処理能力の向上に取り組んでいるが、一瞬で大量の雨が降るようなゲリラ豪雨が発生すると処理能力の限界を超えてしまう。
 再オープンした葛西海浜公園も、大雨が降ればで、COD濃度が一気に跳ね上がり水質基準を超えて、海水浴場が再び閉鎖になる懸念と隣り合わせている。
 水質改善の抜本的な対策は、下水道を合流式から分流式に切り替えることで、分流式は雨水・汚水を区別して処理する方式のため、雨が降っても汚水が未処理のまま雨水に混ざることはない。
東京23区は、下水道整備を急ぎ、昭和30年代に経費のかからない合流式で下水道を整備した。1970年に下水道法が改正されて、下水道はようやく分流式で建設されるようになったが、現在でも合流式で整備した下水道が広いエリアで稼働している。東京都内の下水道が分流式に切り替わるには、あと30年以上はかかるとされている。
 さらに埼玉県や千葉県、茨城県からの生活排水も東京湾に流れ込む。
さらに東京湾の海底には、過去の環境汚染の“負の遺産”である汚染物質が大量に含まれているヘドロが海底には堆積したまま、未だに年間約40回程度の赤潮や4~5回程度の青潮が発生している。
 東京湾に本格的に海水浴場が蘇るのはまだまだ先になる。

 2020年東京大会まであと2年余り、この間に、東京湾の水質改善が飛躍的に進むことはありえないだろう。
 “汚染”された海、東京湾に選手を泳がす2020東京大会、何が「アスリートファースト」なのだろうか。






“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! 「世界一コンパクトな大会」はどこへいった?
東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!


東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
唖然とする“五輪専門家”の無責任な発言 膨れ上がった施設整備費
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年5月9日
Copyright (C) 2018 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************






コメント

平昌五輪 5G VR ドローン 第5世代移動通信 韓国テレコム(KT) インテル(Intel) サムスン(Samsung)

2018年10月06日 07時00分24秒 | 5G
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略
~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~



出典 PyeongChang2018 5G White Paper




“ICT”五輪”で先を越された2020東京五輪
  開会式で握手を交わした韓国の文在寅南大統領と北朝鮮の高官代表団、南北北統一旗を掲げて入場行進を行った合同選手団、話題を独占した女性応援団、韓国と北朝鮮の融和ムードは平昌冬季五輪の象徴となった。一方、ドーピング問題も大会に影を落とした。ロシア・オリンピック委員会は、組織ぐるみのドーピング違反で五輪から締め出され、ロシアの選手は「ロシアからの五輪選手(OAR)として参加したが、国旗や国歌の使用は認められなかった。そして、日本選手団は冬季五輪では過去最高の13個のメダルを獲得して大活躍、様々な話題と感動を残して、平昌冬季五輪は、2月25日に閉幕した。
 日本国内での五輪中継番組の視聴率は、メダルラッシュに沸いて、フィギア・スケートの33%を最高に、カーリング、スキージャンプ、スピードスケート、ショートトラック、開会式などは軒並み20%を超えた。隣国韓国の開催で時差がなかったこともあり、事前の予想を覆し極めて好調だった。
 韓国は、平昌冬季五輪を開催するにあたって掲げたテーマは、“ICT五輪”、第五世代移動通信5G、超高繊細テレビUHD、モノ・インターネットIoT、人工知能AI、VR(Virtual Reality)の5つの分野で、世界最先端の“ICT五輪”を実現して、“Passion Connected”をスローガンに掲げ、世界各国にアピールする戦略である。
 “ICT五輪”は、2020東京五輪で、今、日本が総力を挙げて取り組んでいるキャッチフレーズだ。“ICT五輪”は、平昌冬季五輪に、先を越された感が否めない。


(上)2位の李相花を抱きしめる小平奈緒選手 (下)南北合同女子ホッケーチーム
出典 POCOG2018


“ICT Olympic”を掲げた平昌冬季五輪(KT Pavilion)  出典 KT

Introducing PyeongChang2018(New Version) PyeongChang2018
PyeongChang2018/Youtube


5G移動通信に挑んだ平昌冬季五輪
 韓国テレコム(Korea Telecom)は、国際オリンピック委員会(IOC)と第五世代5G移動通信ネットワークを平昌平昌冬季五輪で構築し、競技中継で利用するとともに、大会関係者や観客にサービスすることで合意した。
 世界で初めて5G通信ネットワークのサービスが平昌冬季五輪を舞台に実現したのである。
 五輪競技中継では、5G移動通信の登場で、ボブスレーのソリからの高画質映像のライブ・サービスが実現した。
 平昌のアルペンジア・スライディング・センターにあるボブスレー競技場では、5G移動通信ネットワークが整備され、時速140キロの高速でコースを滑降するソリ(Sled)の先端に4K POV(Point of View)カメラを取り付けて高画質の映像を撮影し、“遅延ゼロ”の超高速で送信し、臨場感あふれた迫力のある映像サービスに初めて挑む。
 但し、伝送はHD画質に留まるとしている。


コースを滑走するボブスレー PyeongChang2018 POCOG


ボブスレーのスレッド(そり)に取り付けられた4K POVカメラで撮影された映像  出典 Olympic Channel IOC

Exclusive 4K POV Bobsleigh run Olympics Channel IOC

Olympics Channel/Youtube

 5G移動通信サービスは、アイスアリーナやスピードスケート競技場、ホッケー競技場、オリンピック・スタジアムのある江陵オリンピック・パーク(Gangneung Olympic Park)やソウルの光化門広場(Gwanghwamun)エリアでも構築され、大会関係者や観客、ソウル市民に対象に、ギガビットで低遅延の5Gでライブ・ストリーミング映像にアクセスできるようにした。世界に先駆けて5Gサービスが実用化されたのである。
韓国は、“5G”が平昌冬季五輪のレガシーにするとして、世界各国に強力にアピールしている。

第五世代移動通信5G
 5Gは、高画質の映像など大量のデータを、低遅延(low latency)、超高速度で送信することができる次世代の無線通信技術だ。
 現在使用されている第4世代移動通信、4Gと比較して、1000倍のデータ通信量、10Gbpsという100倍の通信速度、ほとんど“ゼロ”に近い低遅延、100倍の同時接続の性能が実現される。AIロボット、自動走行自動車、ビックデータ、UHDなどの高画質映像、IoT機器の爆発的増大などで、移動通信の通信量は飛躍的に増えるとされている中で、5Gは次世代のICT社会の実現に必須のバックボーンである。日本を始めて、アメリカ、ユーロッパ各国、中国、韓国の企業がその開発競争に凌ぎを削っている。5Gの展開で世界の主導権を握れるかどうか、各国の“生き残り”がかかった競争である。


出典 情報通信審議会資料


出典 情報通信白書 総務省


五輪の舞台に登場したIntel 情報通信分野で主導権
 平昌冬季五輪で構築された5Gのプラットフォームやプロセッサー、コンピューター、それに5Gテクノロジー、FlexRANは、アメリカのIT企業、Intelが全面的に提供した。クラウドサービスの運営に使用されるサーバーもIntelが準備した。
 Intelと提携した韓国テレコム(Korea Telecom)は、韓国で最大の通信企業、光ファーバー網や移動通信ネットワークを構築した。
 Samsungもこの陣営に加わり、5G対応タブレットを開発、約1100台の試作機を製造して、競技場やパビリオンで5Gパワー体験サービスを行った。 
 平昌冬季五輪では、Intelが全面的に五輪大会に登場したのが注目される。
 Intelは、2018年平昌冬季五輪、2020東京五輪、2022年北京冬期五輪、2024年パリ五輪オリンピックのTOPスポンサーになり、五輪大会で通信関連機器やシステムを優先的にサービスする権利が認められている。
 TOPスポンサーとして初舞台となる平昌冬季五輪で、Intelは韓国テレコム(Korea Telecom)やサムスン電子(Samsung)と提携して、平昌冬季五輪を“5Gのショーケース”にするという戦略を立てて、全力を挙げて取り組んだのである。



5G Intel 出典 Intel


サムスン電子(Samsung)が開発した5G対応タブレット  出典  Samsung

Intel at the 2018 Olympics: 5G Olympic Vision
Intel/Youtube

5Gネットワークで、新たな映像中継サービスを開始
 5G移動通信の構築で、新たな五輪中継映像サービスが登場した。
韓国テレコム(Korea Telecom)は、Intelと連携して、360度のVR(Virtual Reality)映像サービスを実現した。VR(Virtual Reality)は、視聴者があらゆるアングルから競技を楽しむことができる次世代の映像技術である。
 リオデジャネイロ五輪でもVRサービスは試験的に行われたが、平昌冬季五輪では、OBSは初めてVRコンテンツをホスト映像として世界のライツホルダーに配信した。


OBSが配信した360°VR映像サービス   出典 NHKピョンチャン2018 360°VR

 さらに新しい競技中継技術も登場した。
 マルチアングルの映像を任意の時間で選択して視聴できる、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)、選択地点の疾走シーンが視聴可能な「オムニビュー」(OMNI VEIW)、高速で移動する選手や物体から高画質のUHD映像でライブ中継する"Sync View"と呼ばれる新たなサービスである。

 フィギアスケートとショートトラック競技が行われた江陵アイスアリーナには、100台の小型カメラが設置して、選手の動きをさまざま角度から撮影し、合成して連続して見せる新たな映像技術、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)に挑んだ。
100台のカメラは、リンクの壁面に一定の間隔で設置され、動きの速い被写体の決定的なシーンを、アングルを動かしたい方向に順番に連続撮影していく。
 撮影された画像は、一枚一枚切り出して合成し、連続して見せる映像技術である。高速で移動する被写体の動きを、少しづつアングルを変えて、スローモーションのように見せるというインパクトあふれた映像表現が可能だ。映画「MATRIX」で、この映像テクノロジー(映画ではパレットタイムと呼ぶ)で撮影されたシーンが評判を呼び、新たな映像技術のとして注目されている。
ま た観客は、さまざまなアングルのカメラを選択し、自由に撮影時間を選んで、選手の動きを見ることができる。
 「オムニビュー」(OMNI VEIW)では、多数のカメラを配置し、さまざまなアングルやポイントからの映像を、視聴者が自由に選択して、リアルタイムで見ることができる。競技結果、順位、選手のプロフィールなど情報もサービスされる。
 クロスカントリーでは、全長3.75キロメートルのコースに、17台のカメラを設置し、撮影した選手の姿を5Gネットワークで伝送し、観客は自分の見たいポイントのカメラを選んで、疾走している選手の姿を見ることができる。
 バイアスロンなどでは、選手のユニフォームに装着したGPSセンサーの位置情報を5Gネットワークで送信し、観客はスマートフォンで選手の位置などをリアルタイムで確認できるサービスも行われた。
 視聴者は、見たい選手を自由に選択し、選手が今、どこにいるかがリアルタイムで確認しながら、ライブ・ストリーミングで走行シーンを楽しむことができる。
 「シンクビュー」(Sync View)では、POV(Point of View)カメラを、選手のヘルメットやユニフォーム、スレッド(ソリ)などに取り付けて、選手視点での競技をライブで中継する技術である。ボブスレーではソリの全面にPOVカメラや5G無線通信のモジュールとアンテナを設置して、高速で迫力ある映像をライブでサービスする。
 UHD(4K)などの高画質で撮影されライブで伝送する新しい映像サービスを支えているのが、超高速の5Gネットワークである。Samsungは5G対応のデモ機を開発して、タブレットPCを各競技場に約200台を配置し、新しい映像サービスの醍醐味を観客に楽しんでもらうサービスを展開している。

 またドローンや小型カメラで会場を撮影し、選手や大会関係者、群衆を、顔認証技術を使用して解析して、データをリアルタイムでオリンピックのセキュリティ・コントロール・センターに送信し、セキュリティ管理に使用することも可能だとしている。


アルペンジア・スライディングセンター クロスカントリー  出典 IOC


フィギアスケートでサービスされた「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion) 出典 Olympic Channel/IOC


スノーボードでサービスされた「タイムスライス」 出典 Intel

5G移動通信ネットワークを整備した韓国テレコム(Korea Telecom)
 こうした5Gネットワークの設営のために、韓国テレコム(Korea Telecom)は、35,000本の光ファーバーを敷設し、250,000のデバイスを使用して、5,000 個所のアクセスポイントやデータセンターを設置して5G移動通信ネットワークを整備した。
 韓国の5GネットワークのプラットフォームはIntelが構築し、2016年2月に第一世代のプラットフォームが、6GHzとミリ波を使用して構築された。そして2017年、4x4 MIMOの第二世代のプラットフォームが整備された。
 そして、2018年平昌冬季五輪でIntelの第三世代のプラットフォームが登場した。
 新しいプラットフォームは、3GPPに基づいて、5G NR規格をサポートして構築され、IntelのゲートアレイのFGPA回路とCorei7をプロセッサーとして組み込んで構築された。
 5Gの使用周波数帯域は、3GPP NRとの相互運用性を図り、600-900MHzや3.3-4.2GHz、4.4-4.9GHz、5.1-5.9GHz, 28GHz、そして39GHzの帯域を使用してテストを繰り返した。
 そして最終的には、28GHzを使用し5G実用サービスを実施した。
 5G基地局の装置は、96素子(48素子×2)のMassive Mimoを設置し、帯域幅は800MHz(100MHz×8)を使用し、ピークデータレートは5GBpsだった。


平昌冬季五輪で使用したSamsung製の5G基地局(28GHZ)

 OBSの最高技責任者のStotieis Salamouris氏は、「第五世代5Gネットワークは“進化”ではなく“革命”だ。」とし、 「4Gネットワークでは、どうしても遅延が生じるが、5Gは遅延がほとんどゼロに近い。遅延が生じる原因は、モバイル端末などの通信ではなく、爆発的に増えているIoT(Internet of Things)や自家用車のインターネットで、今後もさらに激増し、4Gネットワークで処理できる処理量を超えることは明らかだ。これまでの映像伝送の技術は、何年にもわたって開発された独自仕様のシステムが混在していて、統合された伝送技術はない。これに対し、 5Gの機能はオープンで幅広く普及が可能だ。高画質の映像を“遅延ゼロ”で伝送できる5Gは、マラソンや自転車競技、ヨットなどの競技中継やヘリコプターやドローンを使用した空撮ライブ中継の伝送技術に最適だ。次世代の放送技術の要になるだろう」と話している。

韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定
 2018年6月15日、韓国科学技術情報通信部は、2019年3月の5G商用サービス開始に向けて、携帯電話事業者に対し、5G周波数オークションを実施した。
 今回のオークションは、5Gで活用する二つの周波数帯(3.5GHzと28GHz)で実施し、世界初の「5G周波数オークション」として注目を浴びた。
 具体的な周波数範囲は3.5GHz帯が3420.0~3700.0 MHzの280MHz幅、28GHz帯が26500.0~28900.0 MHzの2400MHz幅、合計で2680MHz幅である。
 周波数の割当方法はオークションで、入札単位とブロック数は3.5GHz帯が1ブロックあたり10MHz幅で28ブロック、28GHz帯が1ブロックあたり100MHz幅で24ブロックである。
 1社あたり最大でそれぞれ10ブロックまで取得を認めており、3.5GHz帯が最大100MHz幅、28GHz帯が最大1000MHz幅まで取得できる。
 3.5GHz帯および28GHz帯ともに2018年12月1日より有効になり、有効期限は3.5GHz帯が2028年1月30日まで、28GHz帯が2023年1月30日までと設定されている。
 最低入札額合計は3.5GHz帯が2兆6,544億ウォン(約2,686億円)、28GHz帯が6,216億ウォン(約629億円)で、合計3兆2,760億ウォンとした。その結果、オークションの合計落札価格は3兆6,183億ウォンで決着した。

 3社の落札内容は、3.5GHz帯では、SKテレコムは100MHz幅で1兆2,185億ウォン(約1218億円)、KTは100MHz幅で9,680憶ウォン(約968億円)、LG U+は80MHz幅で8,095億ウォン(809億円)だった。
 28GHz帯では、SKテレコムは800MHz幅で2,073億ウォン(約207億円)、KTは800MHz幅で2,078憶ウォン(約207億円)、LG U+は800MHz幅、2,072億ウォン(約207億円)となった。
 
 今回のオークションでは1MHz幅当たりの最低落札価格はこれまでと比べて最も安く設定された。特にモバイルで初めて利用される高周波数帯の28GHz帯については、現時点では使い勝手も含めて不確実性が大きい点が考慮され、利用期間を5年と短く設定し、価格は大幅に引き下げた低い水準で設定された。
 3社の中で、SKテレコムは帯域幅の拡張ができる3.5GHz帯にこだわり、他社より高い応札価格で落札した。周波数は12月1日から利用が可能となる。キャリア3社は8月までに機器事業者を選定し、秋にはネットワーク構築に着手する
 一方、商用サービス開始で提供される5Gサービスの利活用についてはまだ具体的な内容があまり明らかになっていない。韓国では国を挙げて、「世界初」の低遅延・大容量・多数接続の5Gサービス開始を目指して総力を挙げている。






5G・第5世代移動体通信 2020東京オリンピックに向けて実現に暗雲


出典 PyeongChang2018 5G White Paper

AI、5G、ドローンが支えた平昌冬季五輪開会式
 2月9日、江陵オリンピック・スタジアムで開催された平昌冬季五輪開会式は、韓国と北朝鮮の合同選手団の入場行進や、キムヨナの聖火点灯などで世界中の視聴者を沸かせた。
開会式の演出を手がけたヤン・ジョンウン監督は、メインプレスセンターで行われた「開閉会式メディアブリーフィング」で、「今回の開会式は一つの 『冬の物語』のように簡単に皆が共感できる平和の話を見せる」とし「5人の子供たちが時間旅行を通じて古代神話から出発し、人と自然が共に調和をなす場面を見て試練と苦痛を乗り越え、平和の未来へ向かう旅程を描く」と説明した。そして「開会式は人の価値に注目するが、先端技術も公演に組み合わせる」とし「人工知能(AI)と5G(5世代)技術、ドローンなどを活用したパフォーマンスを開会式公演で確認できるだろう」と胸を張った。
今や、開会式・閉会式は、AIや5Gなどの先端技術を駆使した演出が必須となってきた。




平昌冬季五輪開会式 出典 PyeongChang2018 POCOG

1218台のドローンで開会式の夜空を飾ったIntel
2月9日に開催された平昌冬季五輪の開会式、1218台のドローンが夜空に五輪マークを描く“ドローンショー”登場し、世界の人々の眼を引き付けた名場面となり、ギネスブックの世界新記録にも登録された。
しかし、結局、“ドローンショー”はライブでは展開できず、事前に収録した映像を使用するという事態となった。
平昌五輪スタジアムで行われた開会式の当日に、五輪組織委員会のサイバー攻撃を受けたのがその原因とされている。
韓国メディアなどの報道によると、開会式が始まる45分前の9日午後7時15分ごろから、組織委内部のインターネットやWi-Fi(ワイファイ)が数時間、ダウンするというトラブルに襲われた。 このため開会式では予定していた小型無人機(ドローン)を飛ばすことができず、事前に録画した映像を使用したという。
国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は「ドローンを制御するロジスティックを直前で突然変更したため、ドローンを飛行させるとこができなかった」とドローンの飛行は中止したことを認めた。システム障害の原因は明らかにしなかったが、サイバー攻撃の影響を示唆した。

 この“ドローンショー”には、インテルの「クラウド・ドローン飛行技術」が使われた。ドローンの位置を上下左右センチメートル単位で把握して伝える位置測定技術と、各ドローンの間で情報を交わす通信技術が総動員され、Intelの卓越した技術力を誇示した。
使用された1218台のドローンは、“Shooting Star drones”と呼ぶIntelが開発した無人飛行体(unmanned aerial vehicle  UAV)で、重量は330グラム、6インチのローターを備えている。機体は、Intel Falcon 8+をベースに開発した。Falcon 8+の市価は、3万5000ドル(約385万円)ほどの高価格の最高機種だ。
 開会式で使用されたドローンは、エンタテインメントで使用するためにで開発された機種で、機体には40億色の色彩が表現可能なLEDライトが取り付けられ、夜空を背景に、LEDの光で、あらゆるアニメメーションを表現することができる。
 今回のオペレーションでは、1人のオペレータで、1台のコンピューターで1218台のドローンを制御するという。

 Intelは、2014年から多数のドローンを群集飛行させるプロジェクトを始め、2015年中国のドローン会社、ユニーク(Yuneec)に6000万ドル(約66億円 1ドル=110円)を投資し、2016年にはドイツの自動パイロットソフトウェア開発企業、アセンディングテクノロジーを買収した。インテルが半導体とは距離があるドローンに関心を持つのは、ドローンから派生するICT分野の成長の可能性に注目しているからだとされている。
  ドローン・クラウド飛行技術は山火事や地震などの自然災害、作物のモニタリング・管理などの農業の分野、建設工事や地図制作など幅広い分野に適用が可能だ。
ドローンの用途も配送・撮影・防犯・救助・測量などに拡大している。特に衛星利用測位システム(GPS)とセンサーを利用して正確な位置情報に基づいて、多くのドローンを同時に制御する技術は、自動運転自動車か交通管制システムにそのまま適用可能だ。
 Intelがドローン事業に力を入れているのは、ドローンのハードウェア事業に乗りだすのではなく、あくまでコンピューティング・ソリューションのための投資と分析されている。
Intelは、五輪という世界的なイベントでドローンやバーチャルリアリティ(VR)など先端技術力を誇示し、単にパソコンの半導体企業ではなく、総合情報技術(IT)企業というイメーへの脱皮を図っているのである。


PyeongChang2018の開会式の夜空飾るドローン・ショー 出典 ABC News


PyeongChang2018の開会式の夜空飾るドローン・ショー 出典 ABC News

Intel Experience the Team in Flight at PyeongChang 2018

Intel/Youtube


Shooting Star drones 出典 Intel HP

VRにも乗り出したIntel
 今回の五輪で注目されたIntelのもう一つの技術はVRを活用した各種スポーツ競技の「VRライブ中継」である。平昌冬季五輪では、Intelが開発した“Intel True VR”が導入され、双方向の360度全方位映像をライブでサービスした。VR小型カメラを競技場の随所に設置しさまざまなアングルからの競技を撮影して配信する。 視聴者は、競技場に行かなくても、臨場感あふれた観戦体験を得ることができる。
 平昌冬季五輪のホストブロードキャスター、OBSは、冬季五輪大会では初めて、このVRコンテンツをホスト映像としてライブで配信した。音声はナチュラルサウンドに実況キャスターのコメント(英語)を加えている。開会式・閉会式を始め、アルペンスキー(滑降・大回転)、ジャンプ、フリースタイル(モーグル)、スノーボード(ビックエア・ハーフパイプ・スロープスタイル)、クロスカントリー、スケルトン、リュージュ、フィギアスケート、ショート・トラック、アイスホッケー、カーリングなどの16競技、合計55時間を1日1競技以上をサービスした。
 NBCユニバーサルはNBC Sports VR appを立ち上げ、このVRコンテンツを全米の視聴者に配信した。
 NBC Sports VR appのVRコンテンツを視聴するには、Windows Mixed Reality headsets、Samsung Gear VR、 Google Cardboard、Google Daydream and compatible iOS or Android devicesが必要で、NBCユニバーサルのケーブルテレビか、衛星放送、IPTVの契約をしなければならない。あくまで、ケーブルテレビ、衛星放送、IPTVなどの付加サービスなのである。
 NBC Sports VR appでは、ライブストリームされたVRコンテンツを、1日間は再放送を行い、翌日以降は、それぞれの競技をハイライト・コンテンツに編集してサービスする。
 一方、NHKは、「ピョンチャン2018」のホームページで、360度VR映像を「360°ライブ」(ライブストリーミング)と「見逃しハイライト」(VOD)でサービスした。日本国内であれば誰でもが利用可能なフリーサービスである・
 VRサービスによって、視聴者は平昌のオリンピック・ワールドを自由に飛び回りながら、五輪競技場のバーチャル体験を楽しむことができるようになった。VR時代の幕開けを告げる平昌冬季五輪だといえるだろう。


Intel True VRカメラ


アルペンスキー競技場に設置されたIntel True VRカメラ

Intel True VR at Olympic Winter Games PyeongChang 2018

Intel/Youtube

 Intelは、放送・コンテンツ分野にも乗り出して、VR専門会社、VOKE買収するなど積極的な姿勢をとり、2019年には米主要放送局と協力して、双方向全方位360度VR放送を実現させた。 Intelは「好みに合わせ視聴者が選択可能な映像技術の導入で、スポーツ競技視聴方式に革命を起こす」としている。

IntelがドローンやVRなどに対する投資に力を入れているのは、成熟期に入ったパソコン市場から抜け出し、新しい成長動力を見いだそうという企業戦略を抱いているからである。成長が期待できる第5世代通信、5G市場で主導権を握るという狙いもあるだろう。5Gは膨大なデータを迅速に処理するインフラとして第4次産業革命を率いる核心技術とされている。
 VR機器・ドローン・自動運転車・モノのインターネット(IoT)などにIntelが開発したチップやデバイス、ネットワークソリューションを組み込み、これらの機器がつながるプラットホームも掌握するという戦略である。
 世界初の5G技術を公開した平昌冬季五輪は、こうした Intelの戦略を明らかにする格好の舞台となった。


平昌冬季五輪のレガシーとして5G Networkを挙げている 出典 PyeongChang2018 POCOG


韓国テレコムが平昌に設置した5G Village


現代自動車、ソウル~平昌間の高速道路で自動走行実証実験
 世界各国の自動車企業は、次世代の自動車、自動走行車の開発に凌ぎを削っている。
 現代自動車は、平昌五輪で自動走行自動車のトライヤルを成功させ、世界に一歩先んじた。
 現代自動車は、平昌冬季五輪開催に先立って、ソウル~平昌間の高速道路、約190キロメートル区間で最高速度、時速100~110キロメートルの自動走行実験を成功させた。 
 この自動走行実験は、レベル4(米国自動車工学会[SAE]基準)で行われ、5Gコネクテッドカーの次世代水素電気自動車ネクソ3台とジェネシスG80自動運転車2台で行った。 レベル4は、ドライバーは同乗するが、車の走行は自動制御される。
 自動走行車両5台は、京釜高速道路のサービスエリアを出発して、新葛(シンガル)JCを経て永東(ヨンドン)高速道路に入り、大関嶺(テグァンリョン)ICを抜けて最終目的地の大関嶺まで走行した。高速道路を走る間、車線の変更や前方車両追い越し、7個のトンネル通過などがスムーズに行われた。
 現代自動車は平昌冬季五輪・パラリンピックの期間に、5Gコネクテッドカーを利用して、選手団、大会関係者、観客などを対象に、平昌市内の競技場の周辺を往来する自動運転試乗体験を実施した。 
 現代自動車は2021年までにレベル4の都心型自動運転システムの商用化を推進し、2030年までには完全自動運転技術を商用化する計画だ。


ソウル~平昌間の高速道路を走行する自動走行自動車   出典 現代自動車

“ICT五輪”のキャッチフレーズを奪われた2020東京五輪
 平昌冬季五輪組織委は、平昌五輪のもう一つの名称を「世界最初のICT五輪、平昌」に決め、韓国のICT技術力を全世界に発信する舞台にするとしている。第4次産業革命の核心となる5Gサービスをはじめ、モノのインターネット(IoT)、超高画質映像(UHD)、人工知能(AI)、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)など、最先端技術が五輪期間中に公開される予定だ。
 韓国テレコム(Korea Telecom)は、SamsungやIntelと協力して、「平昌冬季五輪5G広報館」を江陵オリンピックパークで、開会式に先立って、1月31日に開館した。
 韓国の5G技術力や人工知能(AI)、バーチャルリアリティ(VR)を世界にPRするためである。
 2020年東京五輪も、“ICT五輪”のキャッチフレーズを掲げているが、平昌冬季五輪に先を越されていしまった。
2020年東京五輪まで残された時間は、後2年余り、平昌冬季五輪をこえる“ICT五輪”をどう構築するのか、日本の真価が試されている。






北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技場最新情報 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如
開催経費1兆8000億円で合意

主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
唖然とする“五輪専門家”の無責任な発言 膨れ上がった施設整備費
アクアティクスセンターは規模縮小で建設を検討か? 国際水泳連盟・小池都知事会談
東京オリンピック 海の森水上競技場 Time Line Media Close-up Report
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月20日
Copyright (C) 2018 IMSSR





******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************


コメント

メディアクローズアップ メディアリテラシー 国際メディアサービスシステム研究所(IMSSR)

2018年10月05日 17時01分43秒 | 国際メディアサービスシステム研究所
国際メディアサービスシステム研究所
International Media Service System Research Institute (IMSSR)
E-mail imssr@a09.itscom.net

    
平成27年1月1日

 国際会議や国際イベント運営のコンサルタント、海外発信のコーディネーション、番組制作・ニュース制作のインストラクター、メディア関係の研究や評論の執筆・講演等の業務を行います。
 2020東京五輪大会や2018平昌冬季五輪大会、2016リオデジャネイロ五輪大会などのオリンピック関連や、4K8K、5G第五世代移動通信、ICT、サイバー攻撃、国際放送センター(IBC)などの分野で調査や評論を行っています。




■ 業務内容
(1)映像・音声サービス・システムの調査、研究・開発、企画・設計、コンサルタント、施工管理業務
(2)国際会議等における国際メディア・センター(IMC)や国際放送センター(IBC)の調査、研究・開発、企画・設計、コンサルタント、施工管理
(3)映像の国際展開業務
(4)映像の撮影、制作業務
(5)メディア関連の調査、研究、著作業務
(6)メディア関連の教育、講演業務
(7)メディア・リテラシーの調査、研究、著作業務
(8)著作権、肖像権の調査、研究、著作業務
(9)テレビ番組制作、ニュース制作、編成のインストラクター業務
(10) 海外放送局等の取材・制作サポート業務
(11)その他、(1)~(10)に係る業務

国際放送センター(IBC) 設営・運営業務実績



★「月刊ニューメディア」TokyoOlyPara NewsCenter連載記事執筆
2015年12月号 国際放送センター(IBC)メインプレスセンター(MPC)
            設営場所と使用後の再活用策
2015年 1月号 次世代ICT競争の決戦の場は「2020東京オリンピック・パラリンピック」 
            2016年は2020年の前哨戦 
2016年 2月号 リオ五輪開催まであと半年 巧妙な官民パワーの連携策

2016年 3月号 伊勢志摩サミットのIBC/MPCの概要決まる
            安倍首相はリーダーシップをどう発揮するのか?
2016年 4月号 テロの主戦場は“サーバー空間”
            伊勢志摩サミット・東京五輪
2016年 5月号 新国立競技場 次世代に残される巨額の負担に耐えきれるか?

2016年 6月号 特集 東京オリンピック・パラリンピック
            IBC/MPCの基礎知識
2016年 7月号 8K/Super Hi-Vision、VR
            次世代映像サービスに挑戦 リオデジャネイロ五輪
2016年 8月号 混乱極まる五輪開催都市
            リオデジャネイロ、そして東京
2016年 9月号 インターネット配信はオリンピックの“救世主”になるのか

2016年10月号 混迷 東京五輪開催経費 誰が負担するのか

2016年11月号 “異例”づくめ 海の森水上競技場

2016年11月号 映像コンテンツ海外売上高を「2018年までに3倍」という国策を机上の空論に終わらせるな

2016年12月号 “陸の孤島”東京五輪施設
            豊洲市場移転問題で“頓挫”する道路インフラ事情
2017年 1月号 2017年 世界はポピュリズム台頭のターニングポイント

2017年 2月号 相次いだ“撤退”
            どうなる2024年夏季五輪誘致
2017年 3月号 2020年はICTで「お・も・て・なし」

2017年 4月号 2024年夏季五輪 パリ・ロサンゼルス、ブタペスト
            したたかなメディア施設整備戦略
2017年 5月号 2020東京五輪はどう見られているか
            準備状況 「順調でない」80% 「開催費用不安視」77%
2017年 6月号 “空の産業革命” ドローン最前線
            高まる期待と安全性確保「飛行規制」
2017年 7月号 “最貧国”から“アジアの虎”へ
            ICT立国を目指すバングラディシュ
2017年 8月号 2020年東京オリンピック・パラリンピック
            最も重要な点は“レガシー”の実現だ!
2018年 3月号 東京ビックサイト隣接の「防災公園」に仮設見本市会場を建設するのも一案だ
            甘利明・石積忠夫対談
          戦略なき東京五輪 混迷を続ける「見本市中止問題」
2018年 5月号 “ICT”で平昌五輪に先を越された2020東京五輪
            “ICT”長期戦略の乗り出したインテル

月刊ニューメディア

★新聞・雑誌対応
2017年2月     国際イベントニュース 「メディア会場 豊洲移転提案に波紋 専門家“検討に値するアイデアだ”

2017年2月号    月刊THEMIS 「都と組織委がなすりあい 東京五輪 森喜朗組織委の“税金浪費”は止まらない」

2017年5月1日   朝日新聞夕刊 「展示場しわ寄せ ビックサイト20カ月利用制限 “商機失う” 中小悲鳴」
 
2017年7月19日  日刊ゲンダイ 「オリンピックで消える1兆円問題 見本市に五輪施設は世界の非常識」

2017年8月14日  日刊ゲンダイ 「五輪放送センターに豊洲新市場利用 一石二鳥のウルトラC」

2017年11月24日 サイゾー 
       「東京五輪・メディア施設は新設すべき」ビッグサイト使用計画に、数々の五輪を見た放送関係者からも疑問の声」 

★座談会・講演会
2015年 1月  新春座談会 「危うし! コンベンション都市東京」
「危うし! 展示会都市 東京」(日本展示協会)
2016年 3月25日 月刊「ニューメディア」研究会(ソラシティ・カンファレンスセンター)
              「東京五輪・パラリンピック プレスセンター施設構築の常識」
2016年 7月11日 雷害リスク低減オープンセミナー(秋原UDXシアター)
              「今、この瞬間を伝える ~情報伝達を途絶えさせないための備え~」 
               主催 雷害リスク低減コンソーシアム

★テレビ・ラジオ出演
TBSラジオ「森本毅郎・スタンバイ 現場にアタック」 「サミット争奪戦」 (2015年4月28日放送)
森本毅郎・スタンバイ 現場にアタック
フジテレビ 「めざましテレビ」   「東京五輪 課題は?」 (2016年8月22日放送)

フジテレビ 「みんなのニュース」  「東京五輪 課題は?」 (2016年8月23日放送)

テレビ朝日 「ワイドスクランブル」 「東京五輪国際放送センター問題」 (2016年9月5日放送)

フジテレビ 「新報道2001」   「伊勢志摩サミットメディア施設問題」 (2016年10月9日放送)




Web Magazine “Media Close-up Report”
Published by IMSSR





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

大坂なおみの初優勝を台無しにしたセリーナ 全米オープンテニス決勝戦

2018FIFAワールドカップ 4K/HDRサービスに乗り出したHBS
国際放送センターはクロクス・エキスポに設置

Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia
巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
空前の汚職スキャンダルに見舞われたFIFA 再生は果たせるか?
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料

Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?

FIFAのスポンサーは中国企業が席捲




★ 2020東京五輪
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパククトな大会”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
“迷走”海の森水上競技場
東京オリンピック 海の森水上競技場 Time Line Media Close-up Report
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
アクアティクスセンターは規模縮小で建設を検討か? 国際水泳連盟・小池都知事会談
唖然とする“五輪専門家”の無責任な発言 膨れ上がった施設整備費
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至


★ 2018平昌冬季五輪
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至

★ レガシー(未来への遺産) 負の遺産
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
ロンドン五輪 東京五輪への教訓 ~周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪

★ 新国立競技場
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(6) 陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに
巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト
デザインビルド方式 設計施工一括発注方式は公正な入札制度か?


★ 2018 FIFA World Cup Russia
2018FIFAワールドカップ 4K/HDRサービスに乗り出したHBS
国際放送センターはクロクス・エキスポに設置

Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia
巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
空前の汚職スキャンダルに見舞われたFIFA 再生は果たせるか?
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料

★ 国際放送センター(IBC)
“迷走” 2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディア施設整備~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~
2020東京五輪大会 国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC) 設営場所と使用後の再活用策

平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)/ MPC(メイン・プレス・センター)
オリンピックのメディア施設(IBC/MPC)はこうして整備される ~ロンドン五輪・その機能・システムと概要~
ロンドン五輪 東京五輪への教訓 ~周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略~~
伊勢志摩サミット 最新情報 2016年G7主要国首脳会議
国際放送センター(IBC) IMF世銀総会 東京国際フォーラム 2012年10月

北海道洞爺湖サミット国際放送センター(IBC)
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム
国際放送センター(IBC)で使用される映像信号フォーマット(Video Signal Format)
IBC(International Broadcasting Center) System (English)


★ 2016リオデジャネイロ五輪
リオデジャネイロ五輪 波乱の幕開け 競技場の全貌
ロシア・ドーピング問題 タイムライン 最新情報
VR(Virtual Reality) Super Hi-Vision 次世代映像サービスに挑戦 リオデジャネイロ五輪
NHK 8Kスーパーハイビジョン試験放送開始 リオデジャネイロ五輪 8K番組表 パブリックビューイング
リオデジャネイロ五輪 インターネット配信はオリンピックの“救世主”になるのか?
ブラジル政治混乱 政治腐敗 混乱極める五輪開催都市リオデジャネイロ、そして東京
地獄へようこそ 治安の悪さ 世界的に突出 リオデジャネイロ
リオデジャネイロ五輪開会式はこうなる


★ 4K8K 超高精細テレビ放送
暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か?
8Kスーパーハイビジョン 試験放送開始 準備着々 NHK技術研究所公開

★ 5G第五世代移動通信
5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ
5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP

★ ICT
ウエアラブル端末 NTT Future Vision 2020
岐路に立つケーブルテレビ ケーブルテレビ60年
ラストワンマイル 通信回線・勝者は誰に? 検証ICT社会

★ サイバー攻撃
サイバー攻撃  “正念場”は2020年東京オリンピック・パラリンピック開催
伊勢志摩サミット サイバー攻撃 2016年サミットは格好の標的に テロの主戦場は“サイバー空間”
“進化”するサイバー攻撃 マルウェア ~標的型攻撃 リスト型攻撃 DoS攻撃/DDoS攻撃~ 「サイバーセキュリティ立国」の脅威
“年金情報流出 標的型メール攻撃 サイバー攻撃
「サイバーセキュリティ大国」 2020年東京オリンピック・パラリンピックのキーワード 人材確保に危機感

★ 五輪エンブレム
東京五輪エンブレム A案の「組市松紋」
“迷走”五輪公式エンブレム


★ 伊勢志摩サミット
伊勢志摩サミット 最新情報 2016年G7主要国首脳会議
伊勢志摩サミット・G7外相会合 広島で開催 ~伊勢志摩サミット 最初の閣僚会議~
G7北九州エネルギー大臣会合 「北九州イニシアチブ」を採択して閉幕 日本にLNGの国際市場創設 2020年代前半に 構想表明~
エルマウ サミット ドイツ G7 Germany2015 Schloss Elmau
伊勢志摩サミット サイバー攻撃 2016年サミットは格好の標的に テロの主戦場は“サイバー空間”
伊勢志摩サミット ICTサミット “ICT立国”のショーケースを伊勢志摩サミットで!

★ メディア・リテラシー
私たちの「顔」は誰のもの? ~肖像権(Portrait rights)~
Portrait Rights Japan Who Owns our Faces? -- Portrait Rights(English)
Remastering & Restoration Film Preservation Silk Road NHK(English)

検証・大川小学校の悲劇 大川小事故報告 検証はまだ終わっていない 東日本大震災5年
阪神大震災20年 ~震災報道担当者からのメッセージ~
国連防災世界会議に「違和感」あり
「憲法改正」世論調査の“読み方
「大阪都構想」 住民投票 出口調査と投票結果 各社比較
NHKスペシャル その看板が泣いている!
米ワシントンポスト紙WEB版に沖縄意見広告が「普天間辺野古移転反対」のバナーが掲載

★ エッセイ
“まわりみち” ~横浜市青葉区 保木地区 桃源境~
“あざみ野“桜通り”





2018年5月1日
Copyright (C) 2018 IMSSR




*********************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
*********************************************************

コメント

東京オリンピック レガシー 負のレガシー 負の遺産 White Elephant ホワイト・エレファント Legacy

2018年10月05日 13時52分20秒 | 東京オリンピック

東京オリンピック レガシー(未来への遺産)
次世代に何を残すのか?




★ 会計検査院 国の五輪関連支出「8000億円」を超えたと警告 東京五輪の開催経費総額「3兆円」に 




2020年東京オリンピック・パラリンピック
“レガシー”の実現こそ最優先の課題だ

 国際オリンピック員会(IOC)は、オリンピック競技大会を開催するにあっって、“Legacy(レガシー)”という理念を強調する。
 「レガシー」とは、単にスポーツの分野だけでなく、社会の様々な分野に、“有形”あるいは“無形”の“未来への遺産”を積極的に残し、それを発展させて、社会全体の活性化に貢献しようとするものである。 
その背景には、毎回、肥大化する大会規模や商業主義への批判、開催都市の巨額の経費負担などへの危機感がある。
オリンピックは、単に競技大会を開催し、成功することがけが目的ではなく、開催によって、次世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略が求められる。
 2020年東京五輪・パラリンピックでは、直接経費でも1兆3500円(予備費を入れると1兆6500億円)、インフラ整備などの関連経費も含めるとその数倍以上が投入される大イベントである。次世代に「負の遺産」として残すことは決して避けなければならない。




東京都 五輪関連経費 8100億円計上 開催経費総額は2兆円超
 2018年1月、東京都は新たに約8100億円を、「大会関連経費」として計上すると発表した。これまで公表していた「大会経費」の1兆3500億円、これで五輪開催経費は総額で約2兆1600億円に達することが明らかになった。
 「大会関連経費」の内訳は、バリアフリー化、や多⾔語化、各種ボランティアの育成・活⽤、教育・⽂化プログラムなどや都市インフラの整備(無電柱化等)、観光振興、東京・⽇本の魅⼒発信などである。
 問題は、膨張した五輪開催経費を削減するためのこれまでの東京都、国、組織委員会の取り組みが一瞬にして消え去ったことである。“コンパクトな五輪”の約束は一体、どこにいったのだろうか。
 未だに明らかにされていない国の“五輪開催経費”も含めると3兆円は優に超えることは必至だろう。
 依然として五輪開催経費の“青天井体質”に歯止めがかからない。

  国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪の肥大化批判に答えるために「2013 OLYMPIC LRGACY」を採択した。巨額な開催経費の負担に耐え切れず立候補する開催地がなくなるのではという危機感があった。
 そのポイントは、「開催費用を削減して運営の柔軟性を高める」、「既存の施設を最大限活用する」、「一時的(仮設)会場活用を促進する」、「開催都市以外、さらに例外的な場合は開催国以外で競技を行うことを認める」などである。 
 そして2020東京大会を「アジェンダ2020」を最初に適用する大会と位置付けている。2020東京大会は「世界一コンパクト」な大会を宣言している。その意気込みはどこにいったのか?



五輪開催経費 1兆3500億円 350億円削減 組織委
 2020年東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会は12月22日、大会経費について、今年5月に国や東京都などと合意した経費総額から更に350億円削減し、1兆3500億円(予備費を含めると最大で1兆6500億円)とする新たな試算(V2)を発表した。
 施設整備費やテクノロジー費など会場関係費用については仮設会場の客席数を減らしたり、テントやプレハブなど仮設施設の資材については海外からも含めて幅広く見積もりを取り、資材単価を見直したりして250億円を削減して8100億円とし、輸送やセキュリティーなどの大会関係費用については100億円削減して5400億円とした。
 開催経費の負担額は東京都と組織委が6000億円、国が1500億円でV1と同様とした。
 2016年末のV1予算では1兆5000億円(予備費を含めると最大で1兆8000億円)としたが、IOC調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮を求めており、組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。



東京都の五輪施設整備費 1828億円 413億円削減
 2017年11月6日、東京都は新たに建設する8つ競技会場の整備費は合計1828億円で、これまでの2241億円から413億円削減すると公表した。

 五輪施設整備費は、五輪招致後の策定された当初計画では4584億円だったが、舛添元都知事が経費削減を行い、夢の島ユース・プラザ゙・アリーナA/Bや若洲オリンピックマリーナの建設中止を行うなど2241億円に大幅に削減している。
 2016年夏、小池新都知事は、五輪施設整備費の「見直し」に再び乗り出し、「オリンピック アクアティクスセンター」(水泳)、「海の森競技場」(ボート/カヌー)、「有明アリーナ」(バレーボール)の3競技場は、合計2125億円の巨費が投じられるとして再検討に取り組んだ。とりわけ「海の森競技場」は、巨額の建設費に世論から厳しい批判を浴び、「見直し」対象の象徴となった。
 小池都知事は都政改革本部に調査チーム(座長上山信一慶応大学教授)を設置し、開催計画の“徹底”検証を進め、開催費総額は「3兆円を超える可能性」とし、歯止めがなく膨張する開催費に警鐘を鳴らした。そして3競技場の「見直し」を巡って、五輪組織員会の森会長と激しい“つばぜり合い”が始まる。
 一方、2020年東京大会の開催経費膨張と東京都と組織委員会の対立に危機感を抱いた国際オリンピック委員会(IOC)は、2016年末に、東京都、国、組織委員会、IOCで構成する「4者協議」を開催し、調停に乗り出した。
 「4者協議」の狙いは、肥大化する開催経費に歯止めをかけることで、組織委員会が開催経費の総額を「2兆円程度」としたが、IOCはこれを認めず削減を求め、「1兆8000億円」とすることで合意した。しかし、IOCは“更なる削減”を組織委員会に強く求めた。
 小池都知事は、結局、焦点の海の森競技場は建設計画は大幅に見直して建設することし、水泳、バレーボール競技場も見直しを行った上で整備することを明らかにし、「アクアティクスセンター」(水泳)は、514~529億円、「海の森水上競技場」(ボート/カヌー)は 298億円、「有明アリーナ」(バレーボール)は339億円、計1160億円程度で整備するとした。

 今回、公表された整備計画では、小池都知事が見直しを主導した水泳、バレーボール、ボート・カヌーの3競技会場の整備費は計1232億円となり、「4者協議」で公表した案より約70億円増えた。
 「アクアティクスセンター」では、着工後に見つかった敷地地下の汚染土の処理費38億円、「有明アリーナ」では、障害者らの利便性を高めるためエレベーターなどを増設、3競技場では太陽光発電などの環境対策の設備費25億円が追加されたのが増加した要因である。
 一方、経費削減の努力も見られた。
 「有明テニスの森」では、一部の客席を仮設にして34億円を減らしたり、代々木公園付近の歩道橋新設を中止したりして23億円を削減した。
 この結果、計413億円の削減を行い、8つ競技会場の整備費は合計1828億円となった。
 五輪大会の競技場整備費は、当初計画では4584億円、舛添元都知事の「見直し」で2241億円、そして今回公表された計画では1828億円と大幅に削減された。

 新たな競技場の整備費が相当程度削減されたことについては評価したい。
 しかし最大の問題は、“五輪開催後”の利用計画にまだ疑念が残されていることである。
 海の森競技場では、ボート/カヌー競技大会の開催は果たしてどの位あるのだろうか。イベント開催を目指すとしているが成果を上げられるのだろうか。
 「アクアティクスセンター」は、すぐ隣に「辰巳国際水泳場」に同種の施設があり過剰な施設をどう有効に利用していくのか疑念が残る。
 さらに8つの競技場の保守・運営費や修繕費などの維持費の負担も、今後、40年、50年、重荷となってのしかかるのは明らかである。
 小池都知事は、膨張する五輪開催経費を「もったいない」とコメントした。
 8つの競技会場を“負のレガシー”(負の遺産)にしないという重い課題が東京都に課せられている。











東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~



リオデジャネイロ五輪開会式 Rio2016

破綻 リオデジャネイロ五輪の“レガシー”
 <2016年8月に開催されたリオデジャネイロ五輪では、日本は過去最多の金12、銀8、銅21の計41個のメダルを獲得し、テレビ中継にくぎ付けになった。
 そのリオデジャネイロで、半年足らずで、オリンピック施設の崩壊が急速に始まっている。開催都市が掲げたレガシー・プランは一体どこへ行ったのだろうか。
 「宴の後」は、冷酷である。
 リオデジャネイロ五輪の競技場は、マラカナン地区(4競技場)とコパカバーナ地区(選手村、4競技場)、バーラ・ダ・チジュッカ地区(オリンピック・パーク 15競技場)、デオドロ総合会場(9競技場)の三つに地区に32の競技施設が整備された。
市や大会組織委員会は、オリンピック開催後のレガシーについて、開催都市や国は、長期にわたってレガシーの恩恵が残されると宣言していた。
ニューヨーク・タイムズの報道によると、オリンピックパークにあるいくつかのスタジアムの入り口は板で封鎖され、ネジなどがグラウンドに散乱し、ハンドボールの競技場は鉄製の棒でふさがれている。IBC(国際放送センター)は半壊状態、練習用の水泳プールはゴミや泥にまみれていると伝えている。
 リオ五輪のシンボル、開会式と閉会式が開かれたマラカナン・スタジアムでは今では芝生が枯れて茶色になり、観客席は数千席も壊されてしまい、100万ドル近い電気代が滞納状態になっている。
1900万ドル(約21億円)で建設したゴルフコースは、今ではプレーをする人はいなく、打球の音よりも鳥の声がけたたましく聞こえているという。 採算が合わず管理会社が即時撤退する可能性が浮上している。
 リオ市郊外のデオドロ地区は、主会場に次いで2番目に多くの五輪施設がつくられた。カヌーのスラロームコースは、スイミングプールとして一般に開放された。しかし、昨年暮れから一般の利用は止めている。
選手村の計31棟の高層宿舎ビル(17階建て、計3604戸)は、五輪後、高級マンションとして売却されるはずだった。ところが、実際に売れたのは全体の10%に満たない。
 リオデジャネイロ市は「ホワイト・エレファント(white elephant=維持費がかかるだけの無用の長物)にはならない」と公約していた。 
 テコンドーやフェンシングの競技場は五輪後、学校の校舎に改装することになっていた。他の二つの競技場も別の場所に移築し、四つの学校として再利用する計画だった。しかし、どれもまだ実現していない。
リオ市は五輪後、オリンピックパークの運営を民間に任せるためのオークションを開いた。だが、入札に加わった会社は一つもなかった。このため運営経費などの財政負担は、結局、中央政府のスポーツ省が担うことになった。
 競技場施設の荒廃が進む背景には、開催都市や国の深刻な財政的危機がある。
 レガシーを実現するための新たな支出がまったく不可能なのである。レガシーの実現にはさらに追加経費が必要ことを忘れてはならない。

新設競技場維持は次世代の負担に
 東京大会の競技場や施設では、新国立競技場、オリンピック アクアティクスセンター、海の森競技場、有明アリーナ、葛西臨海公園、大井ホッケー競技場、夢の島公園、武蔵野森総合スポーツ施設、有明テニスの森(改装)、IBC/MPC(東京ビックサイト・増築)などが整備される。
 五輪開催後、施設をレガシーとして維持するためには、維持管理費や修繕費、大規模改修費などの後年度負担が確実に生まれる。入場料収入や施設使用料で採算をとることができれば問題ないが、結局、公費負担をせざるを得ないだろう。次世代の「負のレガシー」になる懸念が生まれる。

東京大会のレガシーは?
 1964年東京大会のレガシーは、東海道新幹線、首都高速道路、地下鉄日比谷線、そしてカラーテレビだったとされている。
 そして2020年東京大会のレガシーとしてクローズアップされているのは「世界最先端のICT社会の実現」である。2020年をターゲットに、自動運転自動車、スマート都市、AI/IoT社会の実現、4K/8K、AR/VR、第五世代移動通信5Gシステムなどに国、企業、研究機関が総力を挙げ取り組んでいる。
 いずれのテーマも、これからの日本の経済基盤を支える大黒柱で、世界各国に後れをとることは許されないだろう。
 1964年東京五輪では、大会開催を契機に日本の高度成長を確かなものにした。
 2020年東京五輪では、確実に少子高齢化を迎える次の時代の安定成長を確かなものにするレガシーを残すことを期待したい。

2017年7月1日 (月刊ニュメディア 8月号 加筆)





クローズアップされた“負のレガシー(負の遺産)”

 「“負の遺産”を都民におしつけるわけにはいきませんので」
 小池都知事は、こう宣言した。

 2016年9月29日、東京五輪・パラリンピックの開催経費の妥当性を検証している東京都の「都政改革本部」の調査チームは、大会経費の総額が「3兆円を超える可能性がある」とする報告書を小池百合子知事に提出した。都が整備を進めるボート会場など3施設の抜本的見直しや国の負担増、予算の一元管理なども求めた。
 これに先立ったって、 東京五輪・パラリンピックの関係組織、大会組織委員会や東京都、国、JOCなどのトップで構成する調整会議が午前中に、文部科学省で開かれ、小池都知事は、調査チームのまとめた調査報告書を報告した。
会議で小池都知事は、「改革本部の報告書については、大変に中味が重いものなので、それぞれ重く受け止めていると思う。これまでどんどん積みあがってきた費用をどうやってコストカットし、同時に、いかにレガシーを残すか、そういう判断をしていきたい」と述べた。
 これに対し、森組織委会長は「IOCの理事会で決まり、総会でも全部決まっていることを、日本側からひっくり返してしまうということは極めて難しい問題だろうと申し上げておいた」苦言を呈した。
 小池都知事は、「“負の遺産”を都民におしつけるわけにはいきませんので」と応じた。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催経費は、「3兆円超」とされている。これだけ巨額の経費を使い開催する東京五輪は、レガシー(未来への遺産)にしなければならないのは疑問の余地はない。決して、負のレガシー(負の遺産)として次世代に残してはならいのは明白だ。大会が開催されるのは、オリンピックで17日間、パラリンピックで13日間、合わせてもわずか30日間に過ぎない。五輪開催後のことを念頭に置かない施設整備やインフラ整備計画はあまりにも無責任である。
 日本は、これから少子高齢化社会がさらに加速する。2040年には総人口の36・1%が65歳以上の超高齢者社会になる。また人口も、2048年には1億人を割って9913万人となり、2060年には8674万人になると予測されている。五輪開催で整備される膨大な競技施設は果たして次世代に必要なのだろうか? また新たに整備される施設の巨額の維持管理費の負担は、確実に次世代に残される。毎年、赤字補てんで公費投入は必至だろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪の肥大化批判に答えるために「2013 OLYMPIC LRGACY」を採択して、開催都市に対して、大会開催にあたってレガシー(未来への遺産)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けた。
 リオデジャネイロ五輪の直前の2016年7月に、大会組織委員会では、「東京2020 アクション&レガシープラン2016」を策定した。
「スポーツ・健康」、「文化・教育」、「復興・オールジャパン・世界への発信」、「街づくり・持続可能性」、「経済・テクノロジー」の5つの柱をあげて、取り組みを進めている。
 しかし、最も肝要な施設整備を巡るレガシー(未来への遺産)については、ほとんど記述がない。新国立競技場を始め、競技施設の相次ぐ建設中止、整備計画の見直しなど“迷走”と“混乱”が深刻化している中で、「アクション&レガシープラン」どろこではないだろう。膨れ上がった開催経費の徹底した見直しを行うべきという都民や国民の声に、どう答えるかが、“レガシー”を語る前提なのは明らかだ。“美辞麗句”の並んだ「アクション&レガシープラン」には“虚しさ”を感じる。
 「世界一コンパクト」な五輪大会を宣言した意気込みはどこにいったのか?
 「都政改革本部」の調査チームの大胆な“見直し”提言で、再び、クローズアップされた“レガシー(未来への遺産)”を、もう一度、考える直すタイミングであろう。
 大会開催まで、後4年を切った。


“肥大化批判” IOC 存続の危機
 国際オリンピック委員会(IOC)もその存在を揺るがす深刻な問題を抱えている。オリンピックの“肥大化”批判である。巨額な開催経費の負担に耐え切れず立候補する開催地がなくなるのではという懸念だ。問われているのは国際オリンピック委員会(IOC)である。
 2022年冬季五輪では最終的に利候補した都市は、北京とアルマトイ(カザフスタン)だけで、実質的に競争にならなかった。2024年夏季五輪でも立候補を断念する都市が相次いでいる。
 2013年、リオデジャネイロの国際オリンピック委員会(IOC)総会で、ロゲ前会長と交代したバッハ会長は、オリンピックの肥大化の歯止めや開催費用の削減に取り組み、翌年の2014年の「アジェンダ2020」を策定する。
 「アジェンダ2020」は、合計40の提案を掲げた中長期改革である。
 そのポイントは以下の通りだ。
* 開催費用を削減して運営の柔軟性を高める
* 既存の施設を最大限活用する
* 一時的(仮設)会場活用を促進する
* 開催都市以外、さらに例外的な場合は開催国以外で競技を行うことを認める
* 開催都市に複数の追加種目を認める 
 そして2020東京大会を「アジェンダ2020」を最初に適用する大会と位置付けている。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピックの存在をかけて改革に取り組む瀬戸際に立たされているのである。

「3兆円」は「モッタイナイ」!
 「3兆円」、都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用だ。これまでオリンピックを取り巻く最大の問題、“肥大化批判”にまったく答えてこなかった。
 2020年、東京でオリンピックを開催するなら、次の世代を視野にいれた持続可能な“コンパクト”なオリンピックを実現することだろう。
「アジェンダ2020」はどこへいったのか。国際オリンピック委員会(IOC)は、2020東京大会を「アジェンダ2020」の下で開催する最初のオリンピックとするとしていたのではないか。 招致委員会が世界に宣言した「世界一コンパクな大会」はどこへいったのか。
開催費用を徹底的削減して、次世代の遺産になるレガシーだけを整備する、今の日本に世界が目を見張る壮大な競技施設は不要だし、“見栄”もいらない。真の意味で“コンパクト”な大会を目指し、今後のオリンピックの“手本”を率先して示すべきだ。
 日本は超少子高齢化社会が突入する。1964年の東京五輪とは“時代”が違う。その“時代認識”を踏まえた東京オリンピック・パラリンピックでなければならない。
 「3兆円」は「モッタイナイ」!



“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革”
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル



「五輪開催の負担に苦しみ続けている長野」
 長野五輪の開催都市、長野市はもともと堅実な財政の自治体とされ、1992年度には約602億円もの基金を蓄えていた。長野市は、五輪開催に向けてこの基金を取り崩し、それでも足りない分を、市債を発行して開催経費をまかなった。
長野市の市債発行額は1992 年度に127億円だったが、1993 年度には 406億円と 3 倍強に膨れ上がった。1997年度末、市債の発行残高は1921億円に膨張した。この借金は市民1人あたり約53万円、1世帯あたり154万円にも上った。長野市の借金の償還ピークは2002年前後で、償還額は年間約230億円にも達した。以後、約20年間、長野市は財政難に苦しみながら、借金を払い続け、ようやく2017年度に完済するとしている。
 さらに長野市には整備した競技場施設の維持管理の重荷がのしかかっている。長野市は、エムウエーブ、ビックハットなど6つの競技場施設を、約1180億円を拠出して整備した。しかし、競技場施設からの収入は約1億円程度でとても施設の維持管理費をまかなうことはできない。毎年、長野市は約10億円の経費を負担し続けている。競技場施設を取り壊さない限りこの負担は永遠に続くだろう。そして、2025年頃にやってくる大規模修繕工事では、さらに巨額の経費負担が発生する。
 そのシンボルになっているのが長野オリンピックのボブスレー・リュージュ会場として使用された“スパイラル”、長野市ボブスレー・リュージュパークである。
 “スパイラル”はボブスレー・リュージュ・スケルトン競技施設として長野県長野市中曽根に建設された。コースの全長は1,700m、観客収容人数は約1万人、101億円かけて整備された。“アジアで唯一のボブスレー・リュージュ競技の開催が可能な会場”がそのキャッチフレーズだ。
 しかし大会開催後は維持管理費の重荷に悩まされている。コースは人工凍結方式のため、電気代や作業費など施設の維持管理に年間2億2000万円もの費用がかかる。ボブスレー・リュージュ・スケルトン、3つの競技の国内での競技人口は合わせて130人から150人、施設が使用される機会は少なく、利用料収入はわずか700万円程度にとどまる。毎年約2億円の赤字は長野市や国が補填している。
 そして建設から20年経って、老朽化も進み、補修費用も増加した。長野市の試算では、今後20年間で、施設の維持管理で約56億円が必要としている。
 長野市では、平昌冬季五輪までは存続させるが、大会終了後は、存続か廃止かの瀬戸際に立たされている。
 一方、長野県も道路などのインフラ整備や施設整備に巨額の経費を拠出した。それをまかなうために県債を発行したが、県債の発行残高は1997年度末で約1兆4439億円、県民一人当り約65万円の借金、1世帯あたり約200万円の借金とされている。借金額は長野県の一般会計予算の規模より大きくなってしまった。
 長野県が借金を完済するのは平成36年度(2025年)、 長野五輪開催から約30年間、払い続けることになる。
 長野五輪の教訓は、一体、どう活かされているのだろうか?

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)第一号か?
 2020年東京大会のキャッチフレーズは「DiscoverTomorrow(未来をつかむ)」である。
 新国立競技場の建設にtotoの財源を充当する方針が進められているが、totoは、地域スポーツ活動や地域のスポーツ施設整備の助成や将来の選手の育成など、スポーツの普及・振興に寄与するという重要なミッションがある。Totoは“スポーツ振興くじ”なのである。仮にtotoを財源に1000億円を新国立競技場の建設に拠出するとしたらtotoの創設精神に反するのではないか?
 オリンピックの精神にも反するだろう。IOCの“レガシー”では、開催地は、大会開催をきっかけに国民のスポーツの振興をどうやって推進していくのかが重要な課題として問われている。東京大会の“レガシー”は、どこへいったのだろうか?
 東京大会コンセプトは「コンパクト」、繰り返し強調しているキーワードである。過去からの資産を大切にしながら明日に向かって進んでいく都市の姿を世界に伝えていくとしている。
 2013年9月、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されたIOC総会での2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致演説は何だったのだろうか。
 新国立競技場が“負のレガシー”のシンボルになる懸念が拭い去れない。

 “レガシーはお金の問題でなく「心」の問題”とする発想はも余りにもお粗末だ。美辞麗句だけが並んだ“レガシー・プラン”は無意味だろう。
 次世代に大きな負担を残す五輪開催はもう止めにしたらどうか。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックを“負のレガシー”にしないためにも。




レガシー(Legacy)とヘリテージ(Heritage

 レガシー(Legacy)の単語の意味は、「遺産」、「受け継いだもの」とされ、語源はラテン語の“LEGATUS” (ローマ教皇の特使)という。「キリスト教布教時にローマの技術・文化・知識を伝授して、特使が去ってもキリスト教と共に文化的な生活が残る」という意味が込められているという。どこか宗教的なニュアンスのある言葉である。また、legacy は,財産や資産などや、業績など成果物的なものも言う。遺言によって受け取る「遺産」という意味にも使われる。
 一方、heritage は,先祖から受け継いでいくものというような意味の遺産で,「(先祖代々に受け継がれた)遺産」などと訳されていて、お金に換算したりしない「遺産」をいう。「世界文化遺産」とか「世界自然遺産」は“Heritage”を使用している。
 また、“Legacy”は、「負の遺産」(Legacy of Tragedy)という意味でも使われ、“legacy of past colonial rule”=「植民地支配の『後遺症』」とか、“legacy of the bubble economy”=「バブル経済の名残」とかマイナスの意味が込められた表現にも使用され幅が広い。
 レガシー(未来への遺産)は、正確には“Positive Legacy”と“Positve”を付けて使用している。


登場したオリンピック“レガシー”
 国際オリンピック員会(IOC)は、毎回、オリンピック競技大会を開催するにあっって、“Legacy”という“理念”を強調する。
 ここでは“未来への遺産”と訳したい。
 この“Legacy”(レガシー)という言葉は、オリンピック100年にあたる2002年に定められた「オリンピック憲章」の中に、新たに掲げられた。

<第1章第2項「IOCの使命と役割」>の14.
・To promote a positive legacy from the Olympic Games to the host cities and countries.
・「オリンピック競技大会の“遺産”を、開催都市ならびに開催国に残すことを推進すること」

 「レガシー」とは、オリンピック競技大会を開催することによって、単にスポーツの分野だけでなく、社会の様々な分野に、“有形”あるいは“無形”の“未来への遺産”を積極的に残し、それを発展させて、社会全体の活性化に貢献しようとするものである。開催都市や開催国にとって、開催が意義あるものにすることがオリンピックの使命だとしている。

 その背景には、毎回、肥大化する開催規模や商業主義への批判、開催都市の巨額の経費負担、さらにたびたび起きる不祥事などへの批判などで、オリンピックの意味が問い直され始めたという危機感が生まれたことが大きい。

 その反省から、IOCは、開催都市に対して、単に競技大会を開催し、成功することがけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求めるようになった。


レガシー(“未来への遺産”)の理念は
 IOCは2013年に、“Olympic Legacy”という冊子を公表した。
 その冒頭に、“What is Olympic Legacy?”というタイトルで、“Legacy”(“未来への遺産”)の理念が記されている。


IOC “Olympic Legacy Booklet”


▼A lasting legacy
 The Olympic Games have the power to deliver lasting benefits which can considerably change a community, its image and its infrastructure.
As one of the world’s largest sporting events, the Games can be a tremendous catalyst for change in a host city with the potential to create far more than just good memories once the final medals have been awarded.

▼持続的」なレガシー(未来への遺産)
 オリンピックは、社会のコミュニティを変え、イメージを変え、生活基盤を変えていく持続的な“恩恵”を与える力がある。オリンピックは世界で最も大規模なスポーツイベントとして、力強いパワーを秘めており、メダル獲得の素晴らしい記憶よりはるかに大きな意味を持つ社会の変革を生み出す“刺激剤”なのである。

 さらに、“Legacy”(“未来への遺産”)の具体的な指標として「5つのタイプ」を挙げている。

・Sporting Legacy         スポーツ・レガシー(未来への遺産)
                          Sporting venues(競技施設)
                          A boost to sport(スポーツの振興)
・Socia Legacy          社会レガシー(未来への遺産)
                          A place in the world(世界の地域)
                          Excellence, friendship and respect (友好と尊崇)
                          Inclusion and Cooperation(包括と協力)

・Environmental Legacy    環境レガシー(未来への遺産)
                         Urban revitalisation(都市の再活性化)
                         New energy sources(新エネルギー)

・Urban Legacy          都市レガシー(未来への遺産)
                         A new look(新たな景観)
                         On the move(交通基盤)
・Economic Legacy       経済レガシー(未来への遺産)
                         Increased Economic Activity(経済成長)

ロンドン・オリンピックのレガシー
 2012年ロンドンオリンピックの開催にあたって、ロンドン市とイギリス政府は次のようなレガシー・プランとアクション・プランを策定した。

ロンドン市が発表したレガシー・プラン、
▼ロンドン市民がスポーツする機会を増やす、
▼ロンドン市民の新たな雇用、ビジネス、ボランティアの機会を増やす
▼東ロンドン中心部の変革
▼持続可能な大会の実現と持続可能な地域社会の発展
▼ロンドンを多様性、創造性、おもてなしのショウケースとする

イギリス政府が策定したアクション・プラン、
▼ イギリスを世界有数のスポーツ大国に
▼ ロンドン東部地域を再開発
▼ 若者世代を活性化
▼ オリンピックパークを環境に配慮した持続可能な生活モデル地域に
▼ イギリスの創造性、協調性、生活・観光・ビジネスのしやすさを世界にアピール

 そして、2013年にイギリス政府とロンドン市の合同報告によれば、
▼スポーツのある健康的な生活
▼ロンドン東部の再生
▼経済成長
▼地域社会を一つに コミュニティー
▼パラリンピック
 以上をロンドン・オリンピック開催の主な“成果”として上げている。



A joint UK Government and Mayor of London report
FACTSHEET LONDON 2012 FACTS & FIGURES NOVEMBER 2012


TOKYO 2020 立候補ファイルの“レガシー”
 2013年1月7日、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、14項目から成る立候補ファイルを国際オリンピック委員会(IOC)に提出した。
“DISCOVER TOMORROW”というキャッチフレーズを掲げたこの立候補ファイルの冒頭には「ビジョン、レガシー及びコミュニケーション」と章を設け、4Pに渡って大会開催についての基本姿勢を記述している。
その中で、「物理的なレガシー」として、施設整備やインフラ整備で首都東京の再活性化を唱えている。
「11の恒久施設」を整備すると宣言しているが、「夢の島ユース・プラザ・アリーナA」は建設中止、「国立霞ヶ丘競技場」は“迷走”に“迷走”を繰り返し当初計画は白紙撤回、「海の森水上競技場」、「オリンピックアクアティクスセンター」は膨れ上がった整備費で、見直しを迫られている。「ポジティブなレガシー」として立候補ファイルに挙げられている競技会場はすべてが、いまや“混迷”する東京五輪のシンボルになっている。

▼ 物理的レガシー: 東京の新しい中心の再活性化
 東京の新しい長期計画と完全に一致して、2020年東京大会は東京に有益な物理的レガシーを残す。
2020年東京大会は、新設または改修された競技やエンターテイメントのための会場や施設、新たな緑地を地域にとって重要なポジティブなレガシーとして提供する。それらのレガシーには次のものが含まれる。
・ 2020年東京大会に向けて国立霞ヶ丘競技場、海の森水上競技場、夢の島ユース・プラザ・アリーナA及びB、オリンピックアクアティクスセンターなど、11の恒久会場が整備される。
・ 国立代々木競技場、東京体育館、日本武道館など、1964年オリンピック大会時の施設を含む15の主要コミュニティ・スポーツ施設が改修される。
2020年東京大会の競技会場のうち、21会場は東京の新しい中心となる再生された東京ベイエリアに設置され、主要スポーツエンターテイメント・イベント用の新しい施設とともにレジャーエリアを備える。
 新たに建設される2020年大会の選手村の一部は、大会後、国際交流研究、イベント、共同プロジェクトのためのハブの役割を果たす国際交流プラザとなり、ここには国内外の文化、スポーツ、教育関連の機関が拠点を置くことが検討されている。
 また、重要な国際的レガシーとして、東京にイベント及びスポーツ技術・科学機関を創設することが検討されている。この機関は国際交流プラザに拠点を構える可能性がある。同機関はスポーツやイベントのプレゼンテーション、会場、レガシーの国際的な研究ユニットとなり、オリンピック・ムーブメントやスポーツとイベント・セクターが常に変化を続ける技術や持続可能性の要請に遅れをとらないための一助となる。



(立候補ファイル 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会)

大会開催基本計画で示されたアクション&レガシープランの基本理念
 2015年1月23日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会(森喜朗会長)は、東京都内で理事会を開き、大会開催基本計画案を承認した。基本計画案の6章では、「アクション&レガシー」の基本理念が示されている。(1)スポーツ・健康(2)街づくり・持続可能性(3)文化・教育(4)経済・テクノロジー(5)復興・オールジャパン・世界への発信-を5つの柱とし、地域スポーツの活性化やスマートエネルギーの導入、東日本大震災の復興状況の世界への発信などに取り組むとしている。
 16年リオデジャネイロ五輪開幕前に具体的な行動計画をとりまとめ、東京五輪後にもレポートを策定する方針。またパラリンピックを2度開催する初の都市となることから、武藤敏郎事務総長は「共生社会、多様性と調和を大会ビジョンに入れているので、重視したい」と話した。

“5本の柱” アクション&レガシープラン
 東京2020 大会は、単に2020 年に東京で行われるスポーツの大会としてだけでなく、2020 年以降も含め、日本や世界全体に対し、スポーツ以外も含めた様々な分野でポジティブなレガシーを残す大会として成功させなければならない。
その基本的な理念として、「スポーツ・健康」「街づくり・持続可能性」「文化・教育」「経済・テクノロジー」「復興・オールジャパン・世界への発信」の“5本の柱”を据えた。
ビジョンを構築するにあって、“東京大会によってつかみたい「Tomorrow」”というキーワードを示している。
 組織員会では、“5本の柱”について、以下の項目を上げている。

▼ スポーツ・健康
(1) 国内外へのオリンピック・パラリンピックの精神の浸透
(2) 健康志向の高まりや地域スポーツの活性化が及ぼす好影響
(3) トップアスリートの国際競技力の向上
(4) アスリートの社会的・国際的地位やスポーツ界全体の透明性・公平性の向上
(5) パラリンピックを契機とする人々の意識改革・共生社会の実現
▼ 街づくり・持続可能性
(1)大会関連施設の有効活用
(2) 誰もが安全で快適に生活できる街づくりの推進
(3) 大会を契機とした取組を通じた持続可能性の重要性の発信
▼ 文化・教育
(1) 文化プログラム等を通じた日本や世界の文化の発信と継承
(2) 教育プログラム等を通じたオリンピック・パラリンピックの精神の普及と継承
(3) 国際社会や地域の活動に積極的に参加する人材の育成
(4) 多様性を尊重する心の醸成
▼ 経済・テクノロジー
(1) 大会開催を通じた日本経済の再生と本格的成長軌道への回復への寄与
(2) 大会をショーケースとすることによる日本発の科学技術イノベーションの発信
▼ 復興・オールジャパン・世界への発信
(1) 東日本大震災の被災地への支援や復興状況の世界への発信
(2) 「オールジャパン」体制によるオリンピック・パラリンピックムーブメントの推進
(3) 大会を契機とする日本各地の地域活性化や観光振興
(4) オリンピック・パラリンピックの価値や日本的価値観の発信


東京2020大会開催基本計画 2015年2月 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会


アクション&レガシープラン2016を公表

 リオデジャネイロ五輪の直前の2016年7月、組織委員会では、“5本の柱”に基づいて、2016 年から2020 年までの具体的なアクションプランを記述して、「アクション&レガシープラン2016」として策定し公表した。
 このプランは、2020年まで毎年夏を目処に更新しながら「アクション」を実施していく。そして、2020東京大会終了後、「アクション&レガシーレポート」をまとめるとしている。


アクション&レガシープラン2016の概要


2016年8月29日 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会


■ 全員が自己ベスト
・万全の準備と運営によって、安全・安心で、すべてのアスリートが最高のパフォーマンスを発揮し、自己ベストを記録できる大会を実現。
・世界最高水準のテクノロジーを競技会場の整備や大会運営に活用。
ボランティアを含むすべての日本人が、世界中の人々を最高の「おもてなし」で歓迎。

■ 多様性と調和
・人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩。
・東京2020大会を、世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し、共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする。

■ 未来への継承
・東京1964大会は、日本を大きく変え、世界を強く意識する契機になるとともに、高度経済成長期に入るきっかけとなった大会。
・東京2020大会は、成熟国家となった日本が、今度は世界にポジティブな変革を促し、それらをレガシーとして未来へ継承していく。

大会ビジョンに基づいた大会運営と様々なアクション
・大会ビジョンを会場・インフラや、開閉会式等のセレモニーなど、大会運営のあらゆる場面において反映。
・東京2020大会は、分野的・時間的・地域的広がりを持った大会であり、政府や東京都、JOC、JPC、経済団体等を巻き込み、当初の段階から、組織横断的な検討体制を構築し、2016年に「アクション&レガシープラン」を策定。
・IOC総会で採択された「アジェンダ2020」の趣旨を具体的に大会運営に反映。東京2020大会をアジェンダ2020によるオリンピック改革のスタートに。

アクション&レガシープランの基本的な考え方
・ 『オリンピック・パラリンピックは参加することに意義がある』とあるように、できるだけ多くの方々、自治体や団体に参画していただく【アクション】。
・ 大会ビジョンで「スポーツには世界と未来を変える力がある」を掲げ、その力で、東京2020大会をきっかけにポジティブな影響を残し、聖火リレーのように、次代を担う若者や子供たちに継承していく【レガシー】。
・ 『アクション&レガシープラン』は、一人でも多くの方が参画【アクション】し、大会をきっかけにした成果を未来に継承する【レガシー】ためのプラン。
アクション&レガシープラン2016 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

アクション&レガシープランの「5本の柱」 
 アクション&レガシープランを策定するにあたって、「現状と課題:今何が課題となっているか」、「レガシー:2020年以降を見据え、何を後世に残すべきか」、「アクション:2020年を目指し、今何を行うべきか(主な例)」を、それぞれ部会を設置して検討する。

① スポーツ・健康」
<アスリート委員会、高橋尚子委員長>
▼ スポーツの力でみんなが輝く社会へ
▼ 「スポーツの力」を活かし、誰もが自分の持つ力を発揮して、みんなが輝く(活躍することのできる)社会を目指す
▼ オールジャパンで様々なアクションを推進

② 街づくり・持続可能性」
<街づくり・持続可能性委員会、小宮山宏委員長>
▼ 東京2020大会を訪れる様々な人にとって、使いやすく分かりやすい社会インフラを構築し、世界へ発信
▼ 東京2020大会を契機として、世界の人々と持続可能な社会のビジョンを共有
 ▼ 様々なアクションに取組む姿を世界へアピール

③ 文化・教育」
<文化・教育委員会、青柳正規委員長>
▼ 文化・教育の各種取組を通じて、より多くの人々を東京2020大会に巻き込み、大会成功の機運を醸成
▼ 文化の祭典としてあらゆる人々が参加する東京2020大会文化プログラム(仮称)を展開
多様な教育メニュー全体をパッケージ化した教育プログラム(愛称:ようい、ドン!)を展開

④ 経済・テクノロジー」
<経済・テクノロジー委員会、大田弘子委員長>
▼ 東京2020大会は、日本経済の力強さや最先端テクノロジーを世界にアピールする絶好の機会
▼ ジャパンブランドをアピールするキャンペーンの展開を検討

⑤ 復興・オールジャパン・世界への発信」
<メディア委員会、日枝久委員長>
▼ 東京2020大会を日本中のできるだけ多くの人の参画により盛り上げ、また、世界中から注目が集まる機会として、東北の復興した姿や日本の文化・伝統、経済・テクノロジーなどを世界へ発信
▼ 復興・オールジャパン・世界への発信を展開するアクションの検討

 アクション&レガシープランの策定する重要な視点として、「参画」、「パラリンピック」、「2018~2022年の間の大規模大会との連携」を挙げている。
 「参画」では、各ステークホルダーのアクション(イベント・事業等)に対して「認証」する仕組みをリオ大会前までに構築し、多くのアクションが全国で実施され、できるだけ多くの方々、自治体や団体に主体的に参画してもらい大会の盛り上げを図りたいとしている。
 「パラリンピック」では、障がい者の社会参加の促進や多様性への理解の推進などを推進する。
 「大規模大会との連携」では、大会を単なる一過性のイベントとするのではなく、東京、オールジャパン、そしてアジア・世界にポジティブな影響を与え、レガシーとして創出されることを企図し、2018年平昌五輪、2019年ラグビーワールドカップ、2022年北京(中国)などの大規模スポーツ大会との連携を図る計画だ。



アクション&レガシープラン2016 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

アクション&レガシープランの推進体制 
東京都、政府、スポンサー、経済界、JOC・JPC等の関係団体と連携を図り、オールジャパン体制で推進する。


アクション&レガシープラン2016 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

アクション&レガシープラン2016概要

アクション&レガシープラン2016全文

アクション&レガシープラン2017全文

アクション一覧

出典  東京2020組織委員会 

「ヘリテッジソーン」と「東京ベイゾーン」
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、“ヘリテッジゾーン”と“東京ベイゾーン”と名付けた選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催するとしていた。「世界一コンパクトな大会」の“公約”を掲げて東京に招致に成功したのである。
 「ヘリテッジソーン」には、現在の東京の首都機能があり、1964年東京オリンピックの際に主要な競技場として利用され、2020年東京オリンピックでも主要な競技場となる国立競技場や武道館、東京体育館、代々木競技場もあるからそう名付けたのであろう。国立競技場は、その“巨大”建物が議論になったが、約1625億円(周辺整備を含む)という巨額の経費をかけて建替えられることになっている。新国立競技場は、オリンピック終了後、スポーツ競技会やイベント会場として利用する計画だが、年間約35億円という巨額な維持費をまかなえる収入が確保できるか疑問視する意見もある。また、完成後50年で必要な大規模改修費は約656億円に上るという試算も明らかにしている。はたして、“レガシー”(未来への遺産)になるのか、それとも“負の遺産”になるのか?
 一方、「東京ベイゾーン」、湾岸地区は、2020年東京オリンピック開催をきっかけに、新たに競技場や選手村を建設したり、既存の施設を改修したりするなどなど、開発・整備を進め、“レガシー”(未来への遺産)にしたいとしているが、膨れ上がった施設整備費で、建設中止や整備計画見直しで、“頓挫”寸前だ。
 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
舛添要一東京都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。
 結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは国民である。
 2020年東京オリンピック・パラリンピック、あと4年、“混迷”はまだ収まりそうもない。

東京オリンピックの“レガシー”(未来への遺産)は?
 1964年の東京オリンピックの“レガシー”は、「東海道新幹線」、「首都高速道路」、「地下鉄日比谷線」、そして「カラーTV」だったと言われている。東京オリンピックをきっかけに、日本は「戦後復興」から、「高度成長期」に入り、そして「経済大国」を登りつめていく。そして「公害と環境破壊」、「バブル崩壊」。
“レガシー“”(未来への遺産)は“有形”のものだけでなく“無形”のものも求められている。
 日本では、「高度成長」の“名残り”だろうか、ビック・プロジェクトというといまだに“箱モノ”至上主義の発想から脱却できないでいる。競技場や選手村の建設や交通基盤の整備などの必要性については、勿論、理解できる。
 しかし、膨れ上がった開催経費への危機感から、施設整備やインフラ整備は徹底した見直しが必須の状況で、このままでは東京五輪は“破産”する懸念が生まれている。壮大な競技場を建設して、“国威発揚”を図る発想は、“時代錯誤”なのは明白だろう。大会が開催されるのは、オリンピックで17日間、パラリンピックで13日間、合わせてもわずか30日間に過ぎない。五輪開催後のことを念頭に置かない施設整備やインフラ整備計画はあまりにも無責任である。
日本は、これから少子高齢化社会がさらに加速する。2040年には総人口の36・1%が65歳以上の超高齢者社会、2048年には1億人を割って9913万人となると予測されている。五輪開催で整備される膨大な競技施設は果たして次世代に必要なのだろうか?
2020年東京オリンピックの“レガシー”(未来への遺産)は、“無形”の“レガシー”や“草の根”の“レガシー”をどう構築するかに重点を置いたらと考える。
 今年2月策定された基本計画では、「オリンピック・パラリンピックの価値や日本的価値観の発信」の項目には、“アクションの例”として、「『和をもって尊しとなす』や『おもてなしの心』など日本的価値観の大会への反映」をあげている。
 こうした価値観を、どのように大会に“反映”させるのだろうか?
言葉だけのスローガンにして欲しくないポイントだ。
 “超高齢化社会”を前提にするなら、壮大な競技施設を建設より、一般市民が利用するプールやグランドなどのスポーツ施設を充実させる方が、次世代にはよほど有益で、“レガシー”になるだろう。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックでは、“レガシー“”(未来への遺産)として、我々は次の世代に何を残すのだろうか?


■ レガシー参考資料
大和総研 オリンピック・レガシーの概念
大和総研 あらためて東京オリンピックのレガシーの考える
オリンピック・パラリンピックレガシーを考える 笹川スポーツ財団
MRI 三菱総合研究所 レガシー共創





ロンドン五輪 東京五輪への教訓 ~周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略~~
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
“迷走”海の森水上競技場 深刻“負の遺産”




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)







2016年10月7日 2018年4月1日改


Copyright (C) 2018 IMSSR



*******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
*******************************************************
コメント

オリンピック ボランティア批判 タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

2018年10月02日 07時18分03秒 | 東京オリンピック

ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!


大会ボランティアの募集 2020東京大会組織員会


都市ボランティアの募集 東京都
東京都は広瀬すずが出演したボランティアの募集のCMの制作に約4000万円かけた。

「東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会 ボランティア募集」CM 広瀬すず 、10代学生とサプライズCM撮影

ORICON NEWS/Youtube



★ 会計検査院 国の五輪関連支出「8000億円」を超えたと警告 東京五輪の開催経費総額「3兆円」に 



東京2020大会ボランティア募集開始
 2018年9月26日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と東京都は、大会を支えるボランティアの募集を開始した。インターネットなどで12月上旬まで応募を受け付け、計11万人の人員確保を目指す。
 大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を募集する。
 「都市ボランティア」3万人の内、1万人は東京都観光ボランティアや2019年に開催されるワールドカップで活動したボランティア、都内大学からの希望による参加者、都内区市町村 からの推薦者(5,000 人程度)などが含まれるとしている。
 対象は20年4月1日時点で18歳以上の人。原則として大会ボランティアは休憩や待機時間を含めて1日8時間程度で計10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度で計5日以上の活動が条件となる。
 食事やユニホーム、けがなどを補償する保険費用は支給され、交通費補助の名目で全員に1日1000円のプリペイドカードを提供するが、基本的に交通費や宿泊費は自己負担となる。また、大会ボランティアは希望する活動内容を三つまで選択できるが、希望順を伝えることはできない。
 ボランティアの応募者は、書類選考を得て、説明会や面接、研修などに参加した後、2020年3月頃に最終的に採用が決まる。4月からは役割や会場に応じて複数回の研修を受けて、7月からの本番に臨む。
 いずれもユニホームや食事が提供されるほか、交通費についても有識者会議で「近郊交通費ぐらいは出せないか」との意見が出たため、1日1千円のプリペイドカードを支給するこことが決まった。
 応募期間は12月上旬までとしているが、必要数に達しない場合は再募集も行う。
 大会ボランティアは組織委ホームページ(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/)から、都市ボランティアはボランティア情報サイト「東京ボランティアナビ」(http://www.city-volunteer.metro.tokyo.jp/)などで申し込みができる。
 組織委と都は26日午後1時の募集開始に合わせ、新宿駅西口広場でPRチラシを配布し、応募を呼びかけた。
 募集担当者は「今後はボランティアに関する情報をきちんと伝えていきたい。大会を自分の手で成功させたいと思っている人にぜひ応募してほしい」と話している。
 しかし、東京2020大会ボランティア募集については、早くから「10日以上拘束されるのに報酬が出ない」とか「交通費や宿泊費が自己負担」などの待遇面や募集条件が厳しいことで、「タダ働き」、「やりがい搾取」、「動員強制」との批判が渦巻いている。
 東京オリンピックは、果たしてボランティアが支える対象としてふさわしい大会なのだろうか、疑念が湧いてくる。

大会ボランティアの活動内容は?
 大会ボランティアは、競技会場や選手村、その他の大会関連施設で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアのサポート等、大会運営に直接携わる活動をする。
 大会ボランティアの活動分野は9つのカテゴリーに分かれている。








出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

大会ボランティアは「経験」と「スキル」を要求する業務 ボランティアの役割の域を超えている
 大会ボランティアの活動分野の内、「案内」(1万6000人~2万5000人)は、“日本のおもてなし”の思いやりあふれたホスピタリティを実現させるサービスとして、ボランティアの本来活動分野としてふさわしいだろう。また「式典」(1000人~2000人)も同様と思える。
 しかし、「競技」(1万5000人~1万7000人)、「移動サポート」(1万人~1万4000人)、「アテンド」(8000人~1万2000人)、「運営サポート」(8000人~1万人)、「ヘルスケア」(4000人~6000人)、「テクノロジー」(2000人~4000人)、「メディア」(2000人~4000人)ともなると、相応の経験をスキルが要求され、明らかにボランティアの活動領域を超えている。大会運営に関わるまさに根幹業務で基本的に大会スタッフが担当すべきだ。
 「運営サポート」では、IDの発行もサポートするとしているが、IDの発行は、セキュリティ関わるまさに重要な業務で、個人情報の管理も厳しく問われる。ボランティアが携わる業務として適切でない。組織委員会が責任を持って雇いあげた大会専任スタッフが行うべきだ。
 また「案内」のセキュリティーチェックに関わる業務もボランティアがやるべきではない。大会専任スタッフが担当すべきだ。
 「競技」では、競技の運営そのものに関わるとしているが、これは競技運営スタッフが行うものでボランティアが担う役割ではないだろう。競技運営スタッフは事前に十分なトレーニングと習熟を得なければならない。当然、経験とスキルが要求される。
 「移動サポート」は、運転免許証を要求するので、「補助」ではなく、「ドライバー」なのである。大会開催時には、組織委員会は輸送バス2200台、輸送用車両2500台を運行する予定で、ドライバーなどの輸送支援スタッフを3万人/日を有償で確保する。さすがに輸送用バスをボランティアのドライバーが運転することはないだろうが、8人乗り程度のVANの運転はボランティアに頼ることになりそうだ。大会車両の運転は安全性の確保の責任が大きく、運転はボランティアではなく、大会運営スタットとして雇われた「ドライバー」が担うべきだ。安易なボランティア頼みは問題である。
 海外からの選手が多い五輪大会の「アテンド」は語学のスキルが要求される。英語はもとより、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、多様な言語のスキルを持ったスタッフを揃えなければならない。言語のスキルを持つ人に対しては、スキルに対して相応の報酬を払うが当然だ。
 例えば、大会スタッフとして雇用された通訳には1日数万円の報酬が支払わられ、その一方でボランティア通訳は「ただ働き」、これは差別としかいいようがない。スキルと経験に差があるというなら、スキルと経験や業務内容に応じて報酬は支払うべきだろう。仕事の内容は程度に差はあれほぼ同一なのに、「現場監督」は有償で、「部下」はボランティアという名目で「タダ働き」、あまりにも理不尽である。
 「ヘルスケア」、「テクノロジー」はまさに専門職のスキルが必要で、ボランティアの活動領域に当たらない。
 「メディア」対応も、運営スタッフの専門領域だ。もっともメディアの人混み整理程度の仕事ならボランティアで可能だろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の期間(ソチ五輪、リオデジャネイロ五輪)に、世界の放送機関から41億5700万ドル(約4697億円)という巨額の放送権料を手に入れている。国際オリンピック委員会(IOC)や組織員会は、責任を持ってメディア対応スタッフを有償で雇い上げて、メディアにサービスをしてしかるべきだ。

 大会の運営にあたって、組織委員会はさまざまな分野で大勢の大量の大会運営スタッフを雇い入れる。輸送、ガードマン、医師・看護婦、通訳、競技運営、その数は10万人近くになるだろう。大会運営スタッフは、業務経験やスキル、業務内容に応じてその待遇は千差万別だが、報酬が支払わられ、交通費や出張を伴う業務を行う場合には宿泊費、日当も支払われるだろう。
 業務内容に程度の差はあれ、ほとんど同じ分野の業務を担って、ボランティアは無報酬で「タダ働き」、交通費も宿泊費も自己負担というスキームは納得がいかない。有償の大会運営スタッフとボランティアの差は一体なにか、組織委員会は果たして明確に説明でるのだろうか?

ウエッブの応募サイトを開くと更に疑問が噴出 
 「東京2020大会ボランティア」の応募登録サイト(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/method/)
を開くと、まず驚くのは「応募フォームの入力には約30分かかります」という注意書きが赤い文字で書かれていることだ。
 入力フォームは、STEP 6まであり、入力しなければならない情報はかなり多い。
▼ STEP1 氏名、性別、生年月日、写真、必要な配慮・サポート 等
▼ STEP2 住所・連絡先、緊急連絡先 等
▼ STEP3 ボランティア経験、就学・就労状況
▼ STEP4 語学、スポーツに関する経験、運転免許証の有無 等
▼ STEP5 希望する活動(期間、日数、場所、分野) 等
▼ STEP6 参加規約・プライバシーポリシーへの同意
 STEP 1とSTEP2は、常識的な入力項目だが、STEP3になると、これがボランティア応募の入力フォームかと疑念がわき始めた。
 STEP3では、「ボランティア経験がありますか?」とボランティア経験が聞かれる。
 「はい」と答えると、「ボランティア経験の種類」、「活動内容」が聞かれる。
 また「ボランティアリーダーの経験ありますか?」と聞かれ、同様に「活動内容」が訊ねられる。
 さらにスポーツに関わる活動を選択した人に対しては、「国際レベルの大会に選手として参加」、「全国レベルの大会に選手として参加」、「その他の大会に選手として参加」など選手として競技大会に参加経験があるが聞かれる。
 そして「審判としての経験」、「指導経験」、「競技運営スタッフとしての経験」などが問われる。
 語学のスキルや希望する活動分野(10項目から選択)についても聞かれる。
 これを元に書類選考し、まずふるいにかけるのである。

 この「応募フォーム」はまるで大会スタッフ応募のエントリーシートのようである。就職試験のエントリーシートとも見間違う。
 業務経験とスキルを重視する姿勢は、善意と奉仕を掲げるボランティア精神とはまったくかけ離れている。
 やはり、「大会ボランティア」の募集とは到底考えられず、「大会スタッフ」の募集フォームなのである。
 本来は、大会スタッフとして、報酬を払い、交通費、宿泊費を支払って雇用すべき業務分野なのである。
 それを「ただ働き」させるのは、筆者はまったく納得がいかない。
 「大会ボランティア」は善意と奉仕の精神を掲げボランティアの活動領域ではない。ボランティアに応募する善意と奉仕の精神に甘えきった「やりがい搾取」である。

事前の説明会、研修で大幅に拘束されるボランティア
 ボランティアとして採用されるには、事前に何回も説明会や研修に参加することが義務付けられている。
 大会ボランティアの場合、2019年1月から7月頃までに、オリエンテーション(説明会)や面談に呼び出される。
 10月からは共通研修が行われ、2020年4月からは役割別の研修やリーダーシップ研修が始まる。6月からは会場別の研修が行われ、ようやく本番に臨むことになる。
 実は、ボランティアとして活動するためには、オリンピック開催期間中に最低10日間(都市ボランティアは5日間)を確保すれば済むわけではないのである。頻繁に、説明会や面談、研修などに参加しなければならない。そのスケジュールは、現時点ではまったく不明で、組織委員会の都合で、一方的に決められるだろう。
 約1年半程度、あれこれ拘束されるのである。
 仮に地方からボランティアとして活動しようとしている人は、そのたびに交通費や宿泊費などの自己負担をしいられる。首都圏在住の人も交通費は負担しなければならないし、なによりスケジュールを空けなければならない。1日1000円のプリぺードカードが支給されるかどうかも不明だ。
 組織委員会が雇い上げる大会スタッフには、事前のオリエンテーション(説明会)や研修に対しても1日いくらの報酬が支払わられるだろう。
 要するに、大会開催経費を圧縮するために、ボランティアというツールを利用する構図なのである。
 「オリンピックの感動を共有したい」、「貴重な体験をしたい」、「人生の思い出に」、ボランティアに応募する人は、善意と奉仕の精神に満ち溢れている。
 こうした人たちへの「甘え」の構図が見えてくる。
 やはり、「やりがい搾取」という疑念が筆者には拭い去れない。
 ボランティアは「自発的」に「任意」で参加しているから問題ないとするのではなく、オリンピックが「やりがい搾取」という構図で成り立っていることが問題なのである。
 無償のボランティアが11万人も働いている一方で、オリンピックというビック・ビジネスで膨大な利益を上げている企業や高額の報酬を得ている人が存在することが問題なのである。
 
 
出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

都市ボランティアは、ボランティアにふさわしい活動領域
 経験とスキルが要求される大会ボランティアに比べて、東京都が募集している都市ボランティアの活動領域は、本来ボランティアが担うのにふさわしい領域だろう。世界最高の「おもてなし」、優しさあふれたホスピタリティ、まさに東京大会レガシーにしたい。世界各国や日本各地から東京を訪れる人たちに、東京のよさをアピールする恰好の機会だ。
 筆者も海外各国を出張や旅行でたびたび訪れたが、初めての都市では、地下鉄やバスの切符の買い方、目的地までの道順など戸惑うことがたびたびである。空港や駅、繁華街、観光地、競技場周辺など、ボランティアが活躍する場は多い。
 外国人に接する場合も、簡単な日常会話ができれば問題なく、高度な語学力の専門知識も不要で、年齢、職業、スキルを問わず活動ができる。
 「5日間以上」とか事前の説明会や研修等への出席などの要求条件は若干厳しいが、ボランティアの本来の概念に合致している。
 東京大会でボランティアの参加を目指す学生の皆さん、「ブラックボランティア」の疑念が多い大会ボランティアでなく、都市ボランティアを目指すのをお勧め!

「企業ボランティア」はボランティアではない
 9月7日、大会ボランティアとして参加予定の社員324人を集めてキックオフイベントを開いて気勢を上げて話題になった。
 富士通は東京大会に協賛するゴールドパートナーで、語学力などなどを生かしたボランティア活動を社員に呼びかけ、手を挙げた約2千人から選抜したという。
 今後、リーダー役を担うための同社独自の研修や、他イベントでの実地訓練などを行う予定という力の入れようだ。
 ボランティア活動には積み立て休暇や有休を利用して参加してもらう予定だという。
 富士通の広報担当者は「当社はこれまでにも、さまざまなボランティア活動に参加しており、今回もボランティア活動を通じて良い経験を積んで、仕事に生かして欲しい」と話している。
 大会組織委員会は、8万人のボランティアの公募に先だって、大会スポンサーになっている45社の国内パートナーに1社当たり300人のボランティアを参加してほしいと要請を出したという。公募だけで8万人を確保するのが難しいと考えたと思える。

 しかし、冷静によく考えてみると、富士通のボランティアは、「企業派遣ボランティア」で、本来のボランティアではなく、企業のイメージアップを狙う「社会貢献」の範疇だろう。富士通のボランティアは、休暇を利用するにしても、有給休暇で、給料は保証されているである。
 大会組織委員会には、電通、JTB、NTT、東京都などから派遣されたスタッフが大量に働いている。いずれも、組織委員会からは報酬を受け取っていない。しかし、給料は派遣元の組織からしっかり支払われているので「奉仕」でもなんでもない。
 電通、JTB、NTTからボランティアが参加したにしても、富士通のボランティアと同様に給料はしっかり保証されている。さらに、こうした企業は、大会開催の業務を組織員会から受注し、数千億円の収入を得る「業者」なのである。
 もはや、そこには善意も奉仕も感じ取ることはできない。
 巨大なオリンピック・ビジネスの一端を担っている企業のビジネス活動の一環と見なすのが妥当だろう。

「平成の学徒動員」? 文科省とスポーツ庁 ボランティア参加を促す通知
 7月26日、文部科学省とスポーツ庁は、東京オリンピックのボランティアの参加を促す通知を全国の大学や高等専門学校に出した。
 通知では、東京オリンピックのボランティアの参加は、「競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義がある」とし、「学生が、大学等での学修成果等を生かしたボランティア活動を行うことは、将来の社会の担い手となる学生の社会への円滑な移行促進の観点から意義がある」とした。そして「特例措置」として、東京オリンピック・パラリンピックの期間中(2020年7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)は、「授業・試験を行わないようにするため、授業開始日の繰上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能であり、学則の変更や文部科学大臣への届出を要しない」とした。
 学生がボランティアに参加しやすくするために、大会期間中は授業は休みにし、期末試験も行わなず、連休などの祝日に授業を行って欲しいという要請で、こうした対応は文科省への届け出なしに各大学や高等専門学校の判断で自由にできるとしたのである。
 また、これに先立って、4月下旬には、「各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、オリンピック・パラリンピック競技大会等の会場や、会場の周辺地域等におけるボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」とする通知を出し、学生のボランティア参加を促すために、単位認定を大学に求めるている。
 とにかく異例の通知である。
 東京オリンピックのボランティアは、大会ボランティアが8万人、都市ボランティアが3万人、合計11万人を確保する計画だが、これだけ大量の人数が確保できるかどうか疑問視する声が起きて、危機感が漂っていた。
 ボランティアの要求条件は、大会ボランティアで「10日間以上」、都市ボランティアで「5日間以上」、さらに事前の説明会や研修への参加義務があり、働いている人にとってはハードルが高い。一方で「2020年4月1日で18歳以上」という年齢制限がある。そこで大学生や高等専門学校、専門学校の学生が「頼みの綱」となる。
 この「特例措置」対して、明治大、立教大、国士舘大などが東京五輪期間中の授業、試験の取りやめを決定した
 明治大は「自国でのオリンピック開催というまたとない機会に、本学学生がボランティア活動など、様々な形で大会に参画できる機会を奪ってしまう可能性がある」(7月26日)として、五輪期間中の授業を取りやめ、穴埋めとして同年のゴールデンウィークの祝日をすべて授業に振り替えるという。
 立教大も「学生のボランティア活動をはじめとする『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』への多様な関わりを支援するため」(8月9日)休講に。国士舘大も「学生の皆さんがボランティアに参加しやすいよう2020年度の学年暦では以下の特別措置を準備しています。奮って応募してください」(18年8月9日)と呼びかけている。(WEBRONZA 小林哲夫 8月31日)
 しかし、一方で「平成の学徒動員」と反発する声も強い。
 大会組織委員会や東京都が、ボランティアへの参加を呼びかけるのは当然だが、文科省やスポーツ庁が乗り出し、「特例措置」まで設けてボランティアの参加を後押しするのは行き過ぎだろう。「平成の学徒動員」という批判だ巻き起きるのも理解できる。
 善意と奉仕の精神と自発性を重んじるボランティアの理念と相いれない。


オリンピックは巨大なスポーツ・ビジネス
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の4年間(ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ夏季五輪)で51億6000万ドル(約5830億8000万円)の収入を得た。2017年から2020年の4年間(平昌冬季五輪、東京夏季五輪)では60億ドルを優に超えるだろう。また、IOCとは別に2020東京大会組織員会の収入は6000億円を見込んでいるので両者を合わせると1兆円を上回る巨額の収入が見込まれているのである。
 もはやオリンピックは巨大スポーツ・ビジネスで、非営利性とか公共性とは無縁のイベントといっても良い。スポーツの感動を商業化したビック・イベントなのである。
 オリンピックの過度な商業主義と膨張主義は、批判が始まってから久しい。
 そもそも、善意と奉仕を掲げるボランティアの精神とオリンピックは相いれない。
 東日本大震災や熊本地震、北海道胆振地震、西日本豪雨で活躍している災害ボランティアとは本質的に違う。
 
 2012年ロンドン五輪では、7万人の大会ボランティアと8000人に都市ボランティアが参加し、2016年リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアと1700人のシティ・ホストが参加した。
 リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアの内、1週間で1万5000人が消えてしまい、大会運営に支障が出て問題になったのは記憶に新しい。
 また平昌冬季五輪では、2万2000人のボランティアが参加したが、組織委員会から提供された宿泊施設(宿泊料は組織委員会が提供し無料)の温水の出る時間が制限されたり、氷点下の寒さの中で1時間以上、送迎バスを待たされたりして、2400人が辞めてしまった。
 勿論、ボランティアは無償(リオ五輪のシティ・ホストは有償 但しリオ市内の貧困層を対象とした福祉政策の一環)、報酬は一切支払われていない。国際オリンピック委員会(IOC)の方針なのである。
 無報酬のボランティアの存在がなければオリンピックの開催は不可能だとIOCは認識しているのである。
 東京大会組織委の担当者が日当を払うことの是非について、IOCに尋ねた際、「それだとボランティアではなくなる」などと言われたという。IOCのコーツ副会長は9月12日の記者会見で「今後もボランティアに日当を払うことはない。やりたくなければ応募しなければいい」と強い調子で話した。(朝日新聞 9月27日)
 一方、「ブラックボランティア」の著書がある元広告代理店社員の本間龍氏は「今のオリンピックはアマチュアリズムを装った労働詐欺だ」と多額の金が集まるオリンピックでボランティアは大きな役割を担うのだから必要な人員は給料を払って雇うべきだと主張する。(TBS ニュース23 9月26日 「五輪ボランティア募集開始 『ブラックだ』批判のワケ」)
 これに対し、小池東京都知事は、「ボランティアへの待遇は過去の大会と遜色のないものになっている。何をもってブラックだと言うのか分からない」と真っ向から反論した。

 
五輪開催経費、1兆3500億円の削減を迫られている大会組織委と東京都
 2017年12月22日、2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、大会の総費用について1兆3500億円(予備費を除く)とする予算案(V2)を発表した。2017年5月に東京都、組織委、国で総額1兆3850億円とした大枠合意から、350億円削減した。
 負担割合は組織委が6000億円、東京都が6000億円、国が1500億円となる。
 費用の内訳は、競技会場の整備や電源の敷設など会場整備費(ハード)が7050億円で、選手の輸送やセキュリティー、マーケティングなど大会運営費(ソフト)が6450億円。
 5月の合意時から計画を見直した結果、会場の運営にかかる人員費などは300億円の経費増となった。一方、会場整備費の抑制や大会関係者の車両費用の見直しなどで650億円を減らし、差し引き350億円の削減となっている。
  これに対し、国際オリンピック委員会(IOC)はさらなる経費削減を求めており、IOC調整委員会のコーツ委員長(IOC副会長)は「10億ドル(約1100億円)の削減が可能」と指摘した。大会組織員会は、 今後もコスト削減の努力を約束している。
 
 2020東京大会の開催費用は、「2兆円」から「3兆円」に達するのではとされ、とどまることを知らない経費膨張に強い批判が浴びせられていた。国際オリンピック委員会(IOC)もオリンピックの膨張主義批判を意識して、2020東京大会の開催費用の膨張に危機感を抱いて、その削減を強く要請しているのである。
 大会ボランティアの8万人に、仮に1日8000円で10日間、一人当たり8万円を支払うと総額は64億円に達する。
 組織委員会が無償ボランティアにこだわる背景が見えてくる。
 有償の大会スタッフの雇い上げをなるべく少なくして、無償のボランティアで対応し、人件費を削減する、そんな思惑が垣間見える。

 一方、2020東京大会の組織委員会が手に入れるローカル・スポンサー料収入は極めて好調で、2020年2月7日、コーツ副会長は50社に迫る国内協賛契約による収入が約29億ドル(約3160億円)に達したことを明らかにしている。
 2020東京大会の予算総額は6000億円、64億円はそのわずか1%なのである。なんとか捻出できる額と思えるが……。オリンピックの「甘えの構造」を転換するチャンスだ。

 2012ロンドン大会、2016リオデジャネイロ大会にはともに20万人を超えるボランティアの応募があったとされている。
 2020東京大会のボランティアに果たして何人の応募があるのだろうか。




大坂なおみの初優勝を台無しにしたセリーナ 全米オープンテニス決勝戦




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2018年9月27日
Copyright (C) 2018 IMSSR





******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************




コメント

セリーナ 暴言 警告 醜態 性差別 コーチング 大坂なおみ セリーナは謝罪せよ 全米オープン

2018年10月01日 16時27分15秒 | 全米オープン

大坂なおみの初優勝を台無しにしたセリーナ 全米オープンテニス決勝戦


出典 ITF




ラケットを踏みつけて激怒するするセリーナの風刺画掲載 議論沸騰
 9月10日、全米オープンの決勝戦で、ラケットを踏みつけて激怒するするセリーナの風刺画がオーストラリアの大衆紙「ヘラルド・サン(Herald Sun)」に掲載されて世界各国で議論が白熱している。
 コート上で激高する様子を描いた表現に「黒人や女性への差別だ」という批判が寄せられが、風刺画の作者は「彼女の行為を批判した」と反論している。
 風刺画は、豪メルボルンの大衆紙「ヘラルドサン」風刺画作家マーク・ナイト氏(Mark Knight)の作品で、たくましい体格と分厚い唇を誇張して描かれたセレーナが、コートに叩きつけて壊したラケットをセリーナ選手が「地団太を踏み」悔しがっている様子を描いている。ラケットの横には赤ちゃんのおしゃぶりが転がっている。
 その後方では審判が大坂なおみに「彼女に勝たせてやってくれないか」と囁いている様子が描かれている。大坂なおみはなぜか金髪だ。
 この風刺画に対して、人気児童小説「ハリー・ポッター(Harry Potter)」シリーズの原作者J・K・ローリング(JK Rowling)氏は、「人種差別と性差別で冷やかすもの」と不快感をあらわにし、「よくもスポーツ界で最も偉大な女子選手を人種差別と性差別で冷やかして笑い者にし、もう一人の偉大な女性選手を顔なしのでくの坊にしてくれたものだ」とツイッターで厳しく非難した。 
 これに対して作者のナイト氏は、風刺画は人種差別や性差別ではないと否定し、「スポーツのスーパースターのみっともない悪態」を表現しようとしただけだとコメントした。(出典 AFPBB 9月11日)
 問題の風刺画が投稿されたマーク氏のツイッター(Twitter)には、世界各国から罵倒するコメントが殺到し、見の危険を感じたマーク氏は、ツイッターの閉鎖に追い込まれた。
 その一方でセリーナ選手の行為への批判から、差別とは思わないとの書き込みも見られる。また、大坂なおみ選手とみられる対戦相手が金髪の女性として描かれていることに違和感を示す声も出ている。
 ヘラルド・サン紙(電子版)は9月11日、社説で「スポーツ選手らしくない行為を正しくあざけった。その行為で大坂なおみ選手が勝利を祝う機会を奪いもした」と反論、ナイト氏の「描いたのは、セリーナ選手の哀れな振る舞いについてで、人種(差別)についてではない」と主張した。(出典 AP 朝日新聞)
 またヘラルド・サン紙のデーモン・ジョンストン編集長はナイト氏を擁護し、ホームページで「ナイト氏は差別主義者だとのレッテルを貼られたが、まったくの嘘だ」と反論し、「セリーナの風刺画は、彼女のあの日の悪態についての描いたのもで、人種は関係ない」とのコメントを掲載し、さらに、漫画は性差別でも人種差別でもなく、「テニス界の伝説のみっともない真似を、正しくあざ笑った……全員がマークを全面的にサポートする」とツイートした。



 翌日、ヘラルド・サン紙はさらに反論に出て、一面トップで問題の風刺画を含む色々な風刺画を並べて再掲載した。
 「PCワールドへようこそ」という見出しの下には、「マーク・ナイトのセリーナ・ウィリアムズ風刺画について、勝手に検閲担当を自認する連中の言うとおりにしたら、ポリティカリー・コレクト(PC)な新しい社会はとても退屈なものになる」と同紙は書いた。(出典 BBC NEWS 9月12日)
 ポリティカル・コレクト(ネス)とは、日本語で政治的に正しい言葉遣いとも呼ばれる、政治的・社会的に公正・公平・中立的で、なおかつ差別・偏見が含まれていない言葉や用語のことで、容姿・身分・職業・性別・文化・人種・民族・信仰・思想・性癖・健康・年齢・婚姻状況などに基づく差別・偏見を防ぐ目的の表現を指す。(出典 Wikipedia)

 アスリートの容姿を、とりわけ女子選手のついては、揶揄するのは極めて不適切である。しかし、暴言と悪態を行ったアスリートは非難されてもしかるべきだろう。
 「スポーツ選手らしくない行為を正しくあざけった」のか、「人種差別・性差別」なのか、この風刺画を巡っては、世界各国でさらに激しい論争が続くと思われる。



ヘラルド・サン紙(9月12日)


「平等ではない」アダムス会長の主張は崩壊 ラモス氏に謝罪
 9月14日、決勝戦の主審を務めたラモス氏は、デビスカップの準決勝で、クロアチアとアメリカ戦の主審を務めた。アダムス会長は、全米オープンの決勝戦後、初めてラモス氏と顔を合わせた。
 その場で取材していた記者によると、アダムス会長はラモス氏に謝罪したという。
(The Telegraph 9月14日)
 全米テニス協会のアダムス会長は、決勝戦の翌日に、ESPNのインタビューに答えて、セリーナの「性差別」という主張を擁護し、「私たちは男子選手がこのような暴言を浴びせているのを見ている。彼らはコートチェンジの間に主審に食い下がっている。しかし主審は何もしない。これは不公平だ」と語っていた。 
 しかし、アダムス会長の主張は、全米オープンで言い渡されたコード違反は、男子選手に対して86件、女性に対して22件だったことが明らかになり、アダムス会長の「平等ではない」という主張はあっさり崩れ去った。過去20年間のグランド・スラム・イベントの統計でも、男子1534件、女子526になることも判明している。
 コード違反は、全体で男子選手が約3倍から4倍の件数を受けているのである。
 またラケットの破壊行為違反(Racket Abuse)は、男子選手が86%以上を占めているいるだけでなく、言葉の濫用違反(Verval Abuse)も80%弱を占めている。
 しかしコーチング違反は、女子選手が男子選手の約2倍が言い渡されているという。
 女子選手とコーチの人間関係が、男子選手と場合と比較して、濃淡に差があることが影響しているかもしれない。
 そしてコーチング違反の発生率は、女子選手の間では過去10年間で増加しているとされている。
 コーチングは昨年のウインブルドンでも横行していたという。何人かの女子選手のコーチは、カロリーナ・ガルシアの父親のように、選手にシグナルを送っているのが目撃されいる。
 女子テニス協会主催のトーナメントのルールは、グランドスラムのルールと異なり、「オンサイト・コーチング」という制度があり、選手が希望すれば、コーチはコートチェンジの休憩時間にコートに入って選手にアドバイスをすることが認められている。しかしスタンドのコーチ席からのコーチングは禁じられている。
 こうしたことが女子選手やコーチの間では、コーチング違反に対して「甘い」認識が生まれる遠因なのかもしれない。



出典 BBC SPORT




東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!





大坂なおみ 全米オープン初優勝 セリーナ・ウィリアムズをストレートで破る

 テニスの4大大会最終戦、全米オープン第13日は9月8日(日本時間9日)、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで、女子シングルスの決勝が行われ、初優勝に挑む第20シードの大坂なおみ(日清食品、日本)が、元世界ランク1位で第17シードのセリーナ・ウィリアムズ(Serena Williams)(米)を6―2、6―4のストレートで破り、初優勝。男女を通じて日本勢初の快挙を達成した。
 とにかく異例の決勝戦だった。



【マッチハイライト】大坂なおみ vs セレナ・ウイリアムズ/全米オープンテニス2018 決勝【WOWOW】/Youtube
 
パワーの強烈さを印象づけた大坂なおみ 第1セット(6-2)で先行
 第一セットの最初のポイントで大坂はパワーの強烈さを印象付けた。12回続いたラリーにセリーナは根負けしたのか大坂の鋭いストロークに撃ち抜かれた。セリーナは、いつもは、序盤は慎重に滑り出すのに、このゲームでは早めに仕掛けてきた。大坂の思っていた以上のパワーに受けて分が悪いと感じとったのに違いない。
 結果は明白、ラリーが「9回以上」続いた攻防戦は大坂の7勝1敗だった。
 それでも第1ゲームはセリーナがキープした。
 そして第2ゲームは大坂がキープした。
 波乱は第3ゲームで起きた。
 サーブ、ストロークで優勢に立った大坂はゲームの主導権をセリーナに渡さなかった。
 ゲームポイントを握った大坂に対し、セリーナはプレッシャーからか、トスを乱し、ダブルフォールトでゲームを失った。
 このブレークの先行で大坂は大いに自信を深めただろう。
 大坂は第4ゲームをキープすると、続く第5ゲームでも大坂は鋭いリターンを連発し、セリーナを圧倒して再びブレーク、このゲームで圧倒的に優位に立った。
 第6ゲームは大坂はブレークポイントを握られたが、時速200km近い高速サーブで巻き返し、キープした。
 第7ゲームはウィリアムズが0―30から踏ん張り、キープ。しかし、第8ゲームは大坂はサーブの鋭いサーブでセリーナを圧倒し、第1セットを6-2で奪った。
 結果は2ブレーク・アップの大坂の圧勝だった。事前の予想を覆した大坂の1セット先取だった。
 セリーナは、大坂のパワー溢れたサーブとストロークに圧倒されゲームの主導権を握れないことに苛立っただろう。

「Patience!」(我慢)のテニスを覚えて、タフなプレーヤーに成長した大坂なおみ
 事前の予想を覆して、サーブでもストロークでもセリーナの劣勢は明らかだった。
 誰もが、グランドスラム、23回の優勝を果たし、「女子テニスのリジェンド」と呼ばれていたセリーナが、初めて全米オープンの決勝戦に臨んだ若干20歳の大坂を軽く一蹴して久しぶりに優勝すると思っていた。
 「セリーナにパワー勝負で勝てる選手はいない」、「大坂に負けるはずがない」、そんな先入観が観客やセリーナ自身にもあったのだろう。

 しかし、まだ20歳、伸び盛りの大坂は、サーシャ・バイン(Sasha Bajin)コーチの指導でめきめきと実力をつけてきた。
 バイン氏は、1984年10月4日ドイツで生まれたセルビア系ドイツ人で、今年33歳、2005年から08年にかけて選手としてATPツアーに出場するが、世界ランキングは1165位と成績が残せず引退。コーチ転身後はセリーナのヒッティングパートナーを8年間務め、その後はビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、2017年にはキャロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)のヒッティングパートナーを務め、2018年1月にウォズニアッキの世界ランク1位復帰を後押しした。
 ヒッティングパートナーなので、選手にコーチングをすることはない。
 2017年12月、バイン氏は初めてコーチとして、大坂なおみを指導することになった。
 大坂は、バイン氏の元で、オフには約7キロ体重を絞り、体幹を鍛え、体力と敏捷性を身に付けた。
 プレー・スタイルも強打一辺倒ではなく、「辛抱する」プレーを身に付け、我慢をしながらラリーを続け、チャンスを狙うテニスも覚えて、安定感が飛躍的に高まった。
 メンタル面でも、これまでは大坂はうまくプレーができないとすぐにキレれて苛立っていたのを、「辛抱」(Patience)を覚えさせ、どんな状況でも冷静な気持ちを保ち続けるタフな精神を磨き上げた。
 パイン氏は、試合後、「なおみを本当に誇りに思う。動き続けることが大事で、フィジカル面でも相手より良かった。(相手の抗議や観衆のブーイングに対しても)集中力を保って戦ってくれたことがうれしい」と語った。
 フィジカル面でも、メンタル面でも、すでに大坂はセリーナを完璧に上回っていた。
 バイン氏が大坂なおみのコーチに就任してわずか9か月で全米オープンを制覇、選手にとってコーチの存在がいかに重要かを示した格好のケースである。同時に「名選手は名コーチ」だとも、必ずしも言えないことも頭に置きたい。

「苛立ち」で自滅 3度の警告を受けたセリーナ 第2セット(大坂6―4セリーナ)
 第2セットの第1ゲームはウィリアムズがキープした。
 第一回目の波乱は第2ゲームの途中に発生した。
 大坂のサーブのゲームで、40-15で大坂がセットポイントを握ったとき、主審のカルロス・ラモス氏(Carlos Ramos)はセリーナのコーチ、パトリック・ムラトグルー氏(Patrick Mouratoglou)が、スタンドのコーチ席で、手でサインを送り、アドバイスをしたという「コーチングバイオレーション」が言い渡したのである。
 グランドスラムでは、スタンドにいるコーチは選手に対して、声を出したり、しぐさで、アドバイスをしてはならないというルールがある。テニスファンなら知っているルールだ。ましてセリーナが知らないはずがない。「コーチングバイオレーション」は、実際に選手が気が付いていたかどうかは、関係がない。コーチがサインを送ったことだけで、反則なのである。
 セリーナはこれに対して、「コーチは親指を立てて『カモン』と言っただけ。それはコーチングにならない。ルールは分かっているわよね?」と主審に詰め寄った。そして“We don't have any code.”(私たちはそんなルールは知らない)とし、“ I don’t cheat win. I’d rather lose.”(私はズルをしない! そうするなら負けたほうがましよ!)と主審に激しく抗議した。
 しかし、中継映像では、スタンドのコーチ席でムラトグルー氏が両手を広げて前後に動かしているコーチの姿が映し出されていた。ムラトグルー氏はジェスチャーの最後に、「わかったね!」という表情でうなずいている姿が確認できる。セリーナがムラトグルー氏の方を見ていたかは、中継映像からは確認できないが、ムラトグルー氏のうなずきをを見ると明らかにセリーナと目線があってとするのが自然だ。
 このジェスチャーが「コーチングバイオレーション」と判定されたのである。WOWOWの中継番組の解説者の伊達公子氏は、ボデーを狙えとか、前後に揺さぶれという指示のように考えられるとしている。さらに、この後のゲームでセリーナが絶妙のドロップショットを繰り出しポイントを奪ったが、このドロップショットはムラトグルー氏のコーチングで生まれた可能性があるとを伊達公子氏は指摘した。
 試合終了後、ムラトグルー氏は試合後、スタンドで全米中継していたESPNの取材を受け、「正直に言うけど、私はコーチングをしていた。彼女は私を見ていなかったと思うけど、私は100%コーチングをしていた。試合中、100%だ」とあっさりと非を認めた。
 しかし、ムラトグルー氏の「わかったね!」とうなずきは、セリーナと視線があったいた証拠だろう。テニスの中継では多数のカメラが常に決められた対象を撮影し録画したいる。コーチ席だけを狙うカメラ、セリーナだけを狙うカメラ、その映像はすべて録画されている。映像を検証するば、ムラトグルー氏とセリーナが嘘を付いているかは容易に明らかになるはずだ。
 問題は、コーチによる試合中の指導はルール違反と規定されているが、実際には常態化しているとムラトグルー氏が主張したことだ。
 「だが、偽善者のようなことはやめよう。サーシャだって全てのポイントでコーチングしている。この試合のチェアアンパイアはラファ(ナダル)の決勝でトニ(元コーチ)がほとんど全てのポイントで指導していたのに、警告を与えなかった。私には全く理解できない。みんなやっているさ」
 もし、ムラトグルー氏の指摘の通り、「コーチングバイオレーション」横行し、審判がこれを見過ごしていたのが実態なら、問題は深刻であろう。
 セリーナへの警告は、明らかに公正を欠き、セリーナを標的にした「差別」と批判されても致し方ない。
 これに対して全米オープンのコミッショナーは、主審のラモス氏の判定を支持し、審判として公正な判定をしたとしている。
 しかし、「コーチングバイオレーション」が横行しているという告発に対しては、これから議論が巻き起こるかもしれないとして、曖昧な姿勢をとった。
 主催者はこの件について、明確な見解を明らかにすべきで、きわめて不明朗である。
 一刻も早く、きちんとして検証をテニス連盟はすべきである。

 第2ゲームは大坂が簡単にキープしてイーブンとなった。

 セリーナは、大坂に対して劣勢が続いて思うようにプレーできない苛立ちが高まる中で、一回目の警告を受けたことで冷静さを少しずつ失い始めていた。
 その後直後の第3ゲームにその影響が表れた。セリーナは、ダブルフォールトを連発し、大坂のブレークを許す。先手を取ったのは王者、セリーナではなく大坂だった。セリーナの焦りはさらに高まったのは間違いない。
 コートチェンジの間の休憩時間に、セリーナは主審に、「私はズルをしていない」と再び抗議した。試合の流れを見ると、思うように試合の主導権を握れない苛立ちが主審の判定に向けられたのは明らかだ。
 しかし、最後に“Thank you so much”と付け加えるなど、この時点ではセリーナ冷静さを失ってはいない。テニスの試合は、選手が休憩時間に主審に抗議するのは随所で見られる普通の光景だ。



【マッチハイライト】大坂なおみ vs セレナ・ウイリアムズ/全米オープンテニス2018 決勝【WOWOW】/Youtube

 第3ゲームはジュースとなったが、セリーナがキープした。
 第4ゲームでセリーナが王者の意地を見せた。このゲームは大坂のサービスゲームで激しいストローク戦を繰り広げた。大坂は再三に渡ってセリーナに握られたブレークポイントを得意の弾丸サーブで切り抜け粘ったが、4回に渡るデュースの末、セリーナがブレークに成功する。今度は王者、セリーナが先行し、3-1とした。
 これでセリーナの猛反撃が始まり、誰しもが試合の流れはセリーナに傾いたと思った。
 グランドスラム23回の優勝を誇るセリーナである。

審判に暴言と罵声を浴びせたセリーナ
 しかし、悪夢は第5ゲームに訪れた。
 セリーナはダブルフォールトなどのミスを連発し、大坂があっさりブレークバックしたのである。
 セリーナはラケットを激しくコートにたたきつけ、ラケットをへし折った。
 このゲームでセリーナはキープすれば、第2セットは圧倒的に優位に立てる。さらにゲームの流れを支配して、決勝戦の行方にも優位に立つ。まさにこの試合でどちらが勝つかのターニングポイントであった。
 ブレークバックされたことで、セリーナのフラストレーションは頂点に達し、激高して平常心を完全に失った。
 ぐにゃぐにゃに曲がったラケットが、セリーナのベンチの背後に放り投げられてている様子が、テレビ中継の画面に映し出されていた。
 ラケットを破壊したことで、セリーナは審判から2度目の警告(Racquet Abuse)を受け、ルールに基づき、第6ゲームは大坂に1ポイント入った15-0からスタートした。結果、大坂が簡単に第6ゲームをキープした。
 これでセリーナに傾いた決勝戦の流れは断ち切られた。
 第7ゲームも大坂の鋭いリターンがセリーナを圧倒し、大坂がブレークに成功、これで第2セットも大坂が優位に立ち、今度は、流れは一気に大坂に傾いた
 ここで「事件」が起きる。
 セリーナは、主審のラモス氏に詰め寄り、“I didn't get coaching. You need to make an announcement that I don't cheat. You owe me an apology,”(私はコーチングは受けていない。あなたは私がズルをしていないことをアナウンスする必要がある。あなたは私に謝るべきだ)と叫び、"I have never cheated in my life. I have a daughter and I stand for what's right for her. I have never cheated."(私はこれまでズルをしたことはない。私には娘がいるし、常に娘に対し何が正しいかを示している。私はズルをしていない)と暴言を浴びさせた。
 セリーナのはすごい剣幕で審判に詰め寄り、恫喝したのである。
 試合の展開を見れば、明らかに大坂のブレーク許したことに苛立って、前のセットに言い渡された「コーチングバイオレーション」を持ち出して主審にフラストレーションをぶつけたのであろう。パワーでセリーナを圧倒し、何の非もない大坂に対してはどんなに悔しくても何も言えないのである。





セリーナ ラケット破壊/Youtube

前代未聞の醜態、セリーナの罵詈雑言
 前代未聞の醜態が演じられたのが第8ゲームである。
 セリーナは再び審判に詰め寄り、審判に対して決定的な暴言を放ち、怒りを爆発させた。
 "You stole a point from me. You are a thief,……"(あなたは私のポイントを奪った。盗人!)
 さらに、"You will never, ever, ever be on another court of mine as long as you live. You are the liar. When are you going to give me my apology? You owe me an apology."
 (あなたを二度と私の試合のコートに入れないだろう。あなたは嘘つきだ。いつ私に謝罪してくれるのか、あなたは謝罪すべきだ)と「嘘つき」、「謝れ」と執拗に暴言を繰り返した。まさに罵詈雑言だろう。「テニスのリジェンド」としての威厳も、「アスリート」としても品位も微塵も感じられない。
 さらに怒りが収まらないセリーナは、コートレフリーを呼び出し抗議を続けた。
 2万人観客のブーイングがコートに溢れ、観客の踏み鳴らす足音が雷のように鳴り響いた。屋根の閉まったスタジオではもの凄い音が渦巻いた。観客は親指を立ててポルトガル人の主審のラモス氏を糾弾した。
 大坂は無言で下を向いてその場から遠ざかり、コートの壁に向いて、一人、冷静さを保ったという。
 試合後、大坂は、"I didn't really hear anything because I had my back turned," (私には何も聞こえてこなかった。なぜなら私は背を向けていたから)と話している。
 初の決勝戦という大舞台で、騒然とした雰囲気の中で20歳の大坂は平常心を維持することができた。
 見事というほかない。大坂のメンタル面での強さに感動を覚えた。


出典 ITF





大坂なおみ vs セリーナ・ウィリアムズ 2-0 ハイライト 08/09/2018 ファイナルアメリカンオープ EUROSPORT/Youtube
  
セリーナにテニスプレーヤーとしての資格はない
 筆者は、生中継の画面で見ていたが、セリーナの余りにも迫力のある罵声と口汚い言葉に、驚愕し、怒りさえ覚えた。これがグランドスラムを23回の優勝した「女子テニス界のリジェンド」のとるべき態度なのか。愕然である。まるで格闘技の「バトル」を見ている思いで余りにも見苦しい。
 筆者も近隣のテニスクラブで、20年以上テニスを楽しんでいる「テニス愛好家」で、グランドスラムは毎回、テレビで視聴している。
 テニスは、スポーツマン・シッップと礼節を重んじるスポーツだと思っていた。
 対戦相手のナイスショットには、「ナイスショット!」と称え、相手へのリスペクトを常に忘れない。コードボール(ネットインのボール)で得点しても手を挙げて「申し訳ない」と態度で示す。それがテニスプレーヤーではないか。
 劣勢で、思うようにプレーができない、そんないら立ちを審判にぶつけるセリーナには、スポーツマン・シップの礼節が微塵にも感じられない。
 NBA、フットボール、サッカーやラグビーなどでは、セリーナと同じような暴挙を行ったら、「一発退場」は間違いない。
 興奮して罵声を浴びせるセリーナ、冷静にやりすごす大坂、二人はあまりにも対照的だった。この光景を見れば、女子テニス界の「真の王者」は誰なのか明らかであろう。
 セリーナは「テニスのリジェンド」の栄光と誇りをすべて失った。スポーツマン・シップを持てないプレーヤーはコートから去るべきだ。 
 執拗に審判に抗議するウィリアムズに、三度目の警告(Verval Abuse)が与えられ、このゲームは大坂に与えるというペナルティが与えられ、大坂の5-3となった。

セリーナとスタジアムの観客は大坂なおみに謝るべきだ
 スタジアムでは、「地鳴り」のようなブーイングが巻き起こり異様な雰囲気に包まれた。
 それでも第9ゲームはセリーナが執念でキープした。セリーナがポイントを取るたびに観客は大歓声を上げ、大坂のミスショットに対しても観客は拍手と大歓声を上げてこれに答えた。セリーナを応援する観客に、ミスショット(アンフォース・エラー)には、拍手と歓声ではなく、「惜しい!」と応じるのが観客のモラルだ。アメリカの市民にモラルはないのか。「アメリカン・ファースト」を声高に唱えるトランプ政権の姿勢がスタジアムを支配しているように思えた。
 ゲームポイントを握った第10ゲーム、大坂が強烈なサーブを連発し、ついに初優勝を果たした。

 勝利を手にした大坂は、コートで喜びを発散せず、サンバーザーに顔を隠して涙を流した。なんという光景なのだろうか。グランドスラム初優勝の輝かしい勝者がこんなパーフォーマンスしかできなかったことをセリーナやアメリカの観客はどう思っているのだろうか。
 これまで、筆者はグランドスラムの優勝者の何度も見てきた。コートに倒れ込んだり、飛び上がって、全身で喜びを表現する。それが勝者に与えられた栄光である。
 勝者の喜びを爆発できなかった大坂にセリーナもアメリカの観衆も詫びるべきだ。
 セリーナに、アメリカの観客に絶望した。ニューヨークはグランドスラムを開催する資格はない。



【マッチハイライト】大坂なおみ vs セレナ・ウイリアムズ/全米オープンテニス2018 決勝【WOWOW】/Youtube
母親と抱き合って勝利の涙を流す大坂なおみ これ以後大坂が流した涙は喜びの涙ではない

大坂なおみの初優勝を台無しにした2万人の観客

 表彰式は、かつてない悲惨なセレモニーになった。
 司会者がセレモニーの開始を宣言すると2万人の観衆は「地鳴り」のようなブーイングの嵐で答えた。
 悲願のグランドスラム初優勝を果した大坂なおみはサンバーザーで顔を隠して泣いていた。何度も涙を拭う。なんという残酷な光景だろう。全米オープンを制した勝者が、はちきれんばかりの笑顔と全身で喜びを表す舞台が表彰式だ。どんなに悔しくても敗者と観客は、勝者を賞賛するのがモラルだ。
 
 最初に挨拶をした全米テニス協会(USTA)のカトリーナ・アダムズ会長(Katrina Adams)のコメントが余りにもひどい。
 勝者の大坂なおみへの賞賛は後回しにして、最初に醜態を演じて決勝戦を台無しにしたセリーナを高らかに称えた。
 「セリーナ、あなたは王者の中の王者で、すべての人にとって理想の母親であり尊敬される。お帰りなさい。あなたには王者にふさわしいパワーと気品がある。決勝戦の敗戦は私たちが望んだ結末ではなかった。でもあなたは真のチャンピョン、すべての人からリスペクトされる」と述べ、最大限の賛辞を贈った。
 セリーナの隣で、この挨拶を聞きながら涙を拭っていた。大坂の涙は、全米オープンを制した喜びの涙では明らかになかっただろう。一体、大坂はどんな心境でこの挨拶を聞いていたのだろうか。
 それにしても、この挨拶にはあきれ果てる。中継番組を見ていて怒りさえ覚えた。主催者が「私たちが求めた結末ではなかった」とか「セリーナは王者の中の王者」と表彰式で述べる無神経さが到底信じられない。アダムズ会長にお粗末さは愕然である。暴言を繰り返して醜態を曝け出したセリーナのどこに「王者にふさわしいパワーと気品がある」のか。娘が成長して、興奮してラモス氏を罵倒している母親の姿を見てどう思うのか。「すべての人にとって理想の母親であり尊敬される」とどうして言えるのか。
 アダムズ会長が、まず最大限の賞賛を与えなければならないのは初優勝した大坂なおみに間違いない。 
 この件については、地元メディアからも批判が出され、「勝者を侮辱するような対応をした」と伝えている。
 主催者の全米テニス協会、2万人の観客、モラルも礼節も、勝者をリスペクトする心を微塵も持ち合わせていない。そのお粗末さに失望するだけでなく、怒りさえ覚えたのは筆者だけだろうか。





[FULL] 2018 US Open trophy ceremony with Serena Williams and Naomi Osaka ESPN/Youtube

 さすがにこれはまずいとセリーナもふと我に返ったのだろう。
 "Let's not boo any more," (ブーイングは止めて!)、セリーナは観客に語りかけて、
「ナオミは初のグランドスラムで良いプレーをした。今をベストな瞬間にしましょう。認めるべき功績を認めましょう。ポジティブになりましょう」と話した。
 そして、"Congratulations Naomi. No more booing."(なおみ、おめでとう。ブーイングは止めて!)と観客に叫んだ。
 観客はこれに答えてブーイングを止め、大坂なおみへの賞賛の声に変った。
 そして、大坂の耳元に「あなたのことは誇りに思う。この観客のブーイングはあなたに向けているのではない」と囁いたいう。

 表彰式の司会者は、優勝者へのインタビューを始めた。
 「いつかグランドスラム決勝でセリーナと戦うのが夢だと言っていました。今はどんなお気持ちですか?」と問いかけた。
 大坂は、涙を拭って、マイクロフォンを手にして、「質問への答え出ないことを話そうと思います。ごめんなさい」と涙を浮かべて話し始めた。
 そして、"I know everyone was cheering for her and I am sorry it has to end like this," (私はみんながセリーナを応援していたこと知っています。こんな終わり方になっってごめんなさい)と語り、「決勝でセレーナとプレイするのが夢でした。プレイしてくれてありがとう。そして試合を見てくれてみなさんありがとう」と話した。
 なんという勝者のスピーチだろう。筆者はこれまであらゆるスポーツ大会で、こんな言葉のスピーチをした優勝者は知らない。
 アメリカ市民の中には、セリーナがブーイングを止めてと観客を制止し、大坂におめでとうと言ったことを誉め称える声が寄せられたと伝えられている。
 まったくお門違いも甚だしい。何が問題なのかまったく理解していないアメリカ市民の鈍感なメンタリティに唖然とするばかりだ。
 NYポスト紙は、「USオープンは恥を知るべき、これ以上にスポーツマンらしくない出来事があったか思い出すのに苦労する」とセリーナとテニス協会と観客を痛烈に批判した。そして「ナオミは勝つべくして勝った、この試合から何か盗まれたものがあったとしたら、それはナオミの歓喜の姿だ」とした。
 「王者としても優雅さと気品」を保った20歳の大坂に対し、36歳のセリーナは「子供じみた泣き言」を叫び醜態を晒したと酷評されている。

国際テニス連盟、セリーナに罰金189万円
 9月10日、国際テニス連盟(ITF)は、全米オープン女子シングルス決勝でセリーナ・ウィリアムズ(米国)に3度の違反行為によるペナルティーを与えた主審カルロス・ラモス氏の判定について「適切なルールに沿っていた」と、支持する声明を発表した。
 声明文は「カルロス・ラモスはテニス界においてもっとも経験豊富でリスペクトされている審判の一人である」とし、「ラモス氏の判断は関連規則に従ったものであり、3度の侮辱的発言を行ったセリーナ・ウィリアムズに対して罰金を科した全米オープン主催者の判断によって再確認されている」とした。
 さらに国際テニス連盟は、決勝の大舞台で見せたセリーナの一連の行動を「目に余る遺憾な出来事」とし、「論争が巻き起こるは当然である。と同時にラモス氏が関連規則に従って審判の義務を果たし、常にプロフェッショナルに誠実に行動していた」と、同主審の判断を称えた。

 また全米オープンの主催者は9日、前日の女子シングルス決勝で主審に暴言を吐くなどの3度の違反行為があったセリーナ・ウィリアムズ(米国)に対し、1万7000ドル(約189万円)の罰金を科した。
 罰金1万7000ドルの内訳は、主審への暴言で1万ドル、コーチからの助言で4000ドル、ラケットの破壊で3000ドルがペナルティーとされている。罰金は準優勝の賞金185万ドル(約2億535万円)から引かれるとしている。(AP通信)

セリーナ ペナルティーは「性差別」を主張
 これに対してセレーナ・ウィリアムス(Serena Williams)は、9月8日、不正行為はなかったと主張し、ペナルティーは性差別だとして批判した。
 審判への暴言についても、男子選手が同様行為をしても罰則は与えられないはずだと主張した。
 セレーナは試合中にコーチのパトリック・ムラトグルー(Patrick Mouratoglou)氏からコーチングを受けたことはこれまでに一度もないと主張しているが、ムラトグルー氏は米スポーツ専門チャンネルESPNに対しその事実を認め、コーチ全員がしている行為だとした。
 セレーナは「パトリックには『一体何を言っているの?』とメールした。私たちにはサインなどない。サインについて話したことも一度もない」と話している。
 また、性差別と戦う女性のアイコンとして地位を築いているセレーナは、テニス界は男子選手と女子選手の扱いが違うと指摘する。
 「男子選手が審判に注文を付けるシーンをこれまでに見てきた。私は女性の権利と平等のために戦うためにここにいる」
 「私は『盗人』と言い、彼はペナルティーを科す。性差別的だと感じた」「彼は『盗人』と言った男子選手を罰したことは一度もない。それで私の心は折れてしまった。だけど、私は女性のためにこれからも戦う」(AFPBB News)
 これに対して国際テニス連盟は「この件が議論を起こすことは理解できるが、ラモス氏が誠実に、プロとしてルールを適用する義務を果たしたことも覚えておきたい」とした。(AP通信)
 またラモス氏は、9月12日、母国ポルトガルの地元紙に、騒動後に初めてコメントを出した。
 ラモス氏は「私は大丈夫」とし、「アンハッピーな状況だが、好みによる判定は存在しない。どうかわたしのことは心配しないで」と語っている。
 一方、女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン(Steve Simon)最高経営責任者(CEO)は9月9日、セリーナに3度のコードバイオレーションが科されたのは「性差別的だ」とするセレーナの主張を擁護した。
 サイモンCEOは審判について、前日の一戦では男女によって異なる基準が適用されているのではないかとする疑問に大きな注目が集まったとした上で、「WTAは、選手によって感情が表現された際、それに対する許容の基準に男女で違いがあってはならないと信じている。そして、すべての選手が平等な扱いを確実に受けられるよう、競技と一丸となって全力を尽くしている。これについては、昨日で終わりではないと考えている」と語った。(AFP時事)
 女子テニス協会(WTA)は、女子テニスの世界ツアー戦を運営する組織で、女子テニス協会(WTA)としても同じ内容の声明を出した。
 これに対して、国際テニス連盟(ITF)も声明を発表し、「ラモス氏は、テニス界で最も経験豊かで尊敬される主審の一人である。彼の決定は関連するルールに従っており、3度の警告を受けたセリーナ・ウィリアムズ選手に対し、全米オープンが罰金を課したことで、ラモス氏の決定は改めて支持されている。」とし、「この残念な出来事が、注目を浴びて議論を呼び起こすことは理解している。同時に重要なことは、ラモス氏はプロフェッショナル意識と威厳を保ち、ルールを遵守して、主審として義務を果たしたことを記憶することだ」とラモス氏の判定を支持した。

「王者」の威厳と風格を捨て去ったセリーナ
 「コーチングバイオレーション」については、明らかにムラトグルー氏はコーチ席でセリーナにサインを送っていた。それをセリーナが気が付いていたかはわからない。しかし、ムラトグルー氏がサインを送っていいた姿や「わかった?」とうなずく様子は中継映像に記録されていて言い逃れはできない。そもそもムラトグルー氏は「コーチングバイオレーション」を認めている。
 セリーナは、まずこの件について、「コーチングバイオレーション」があったことは潔く認めて、主審のラモスに浴びさせた暴言について謝罪すべきだ。「真の王者」だったらそうすべきだ。「嘘つき」はセリーナ、この批判にセリーナは答える義務がある。
 性差別を持ち出す前に、まず必要なのは謝罪であろう。
 「嘘つき」、「盗人」といった暴言を興奮して怒鳴りちらす醜態には「真の王者」の威厳と品格がまったく感じられない。あんなに執拗に暴言を浴びせる選手は、筆者はみたことがない。主審のラモス氏は恐怖すらお覚えたに違いない。
 仮にコート上ではなくて、一般社会の場で、同様の暴言を浴びせたら、パワハラ、セクハラどころではなく、名誉棄損の対象となる。
 セリーナは、暴言と醜態の責任を完全に「性差別」の問題にすり替えている。
 セリーナは真摯に反省して、ラモス氏や対戦相手の大坂ナオミに謝罪すべきだ。それが「真の王者」のとるべき態度だろう。性差別を議論する以前のアスリートとしての義務を果たすべきだ。
 「女性の権利と平等のために戦う」のはその後だ。なぜセリーナは非を認めて謝罪しないか。
 同様に、全米テニス協会会長も真摯に反省して大坂なおみに謝罪する必要があるだろう。

残された問題 性差別
 ムラトグルー氏は、「コーチングバイオレーション」をあっさり認めた一方で、コーチによる試合中の指導はルール違反と規定されているが、実際には常態化していると主張している。
 「だが、偽善者のようなことはやめよう。サーシャだって全てのポイントでコーチングしている。この試合のチェアアンパイアはラファ(ナダル)の決勝でトニ(元コーチ)がほとんど全てのポイントで指導していたのに、警告を与えなかった。私には全く理解できない。みんなやっているさ」
 国際テニス連盟は、この告発に対して、答えていない。
 もし、「コーチングバイオレーション」横行し、審判がこれを見過ごしていたのが実態なら、問題は深刻で、国際テニス連盟は真摯に取り組まなければならない。FIFAワールドカップで採用したVARのようなシステムを導入にすれば容易に監視可能だ。
 また「コーチングバイオレーション」がルールとして不適格で「コーチング」を認めるべきだというテニス関係者の意見もある。
 しかし、またしても問題のすり替えが行われている。ルールの改正が必要なら、コート上で暴言と醜態を主審に浴びせるのは言語道断、別の場で議論するべきだ。
 スポーツには公正な判定が不可欠であるのは当然だ。

 セリーナは「男子選手が審判に注文を付けるシーンをこれまでに見てきた。私は『盗人』と言い、彼はペナルティーを科す。彼は『盗人』と言った男子選手を罰したことは一度もない。それで私の心は折れてしまった」と語っている。(AFPBB News)
 このセリーナの発言についても、国際テニス連盟は、正面から答えず、曖昧にしている。ジョコビッチ、マレー、ナダルなどの男子のビックプレーヤーは、かつて何度も主審に近寄り抗議をしている。その時に、どんな言葉を浴びせて抗議をしたか、そして主審はどんな対応をしたか、国際テニス連盟は調査をして明らかにすべきだ。
 しかし、あの醜態を演じたセリーナの責任は依然として免れることはない。

 セリーナは決勝戦に敗退後、「私は『盗人』と言い、彼はペナルティーを科す。性差別的だと感じた。「彼は『盗人』と言った男子選手を罰したことは一度もない。それで私の心は折れてしまった。だけど、私は女性のためにこれからも戦う」と女性の権利と平等のために戦うと宣言した。
 筆者は、これまでテニス界に隠然と存在していた人種差別や性差別と戦いながら、グランドスラム23回の優勝を果たし、「テニスのリジェンド」の地位を手にした姿は敬意を表する。とりわけトランプ政権になって「差別」意識に変化が生まれている中で、セリーナの存在は重要さを増すだろう。
 アメリカの社会の中で、「性差別」は極めて重要な意味を持つ。
 そのことが、「性差別」というワードが出されると企業も団体も、メディアも冷静な検証を避ける傾向がある。
 今回の一件で、セリーナの「性差別」という主張に同調する主張を掲げる関係者やメディアも多い。
 しかし、「性差別」の一言で、スポーツでは何よりも大切なスポーツマンシップや対戦相手へのリスぺクト、威厳と品格、そして寛容の精神が吹き飛ばされているのは見逃すことができない。メディアの論調も「性差別」の一言が出てきた瞬間、身を引いてしまう。
 「性差別」があったのかどうか、これまでの「コーチングバイオレーション」や暴言の事実関係を冷静に検証し明らかにした上で、議論すべきだと考える。今のままでは余りにも不明瞭で感情論に流されすぎる。

 とにかく、決勝戦と表彰式を台無しにしたセリーナ、全米テニス協会アダムズ会長、2万人観客は、大坂なおみに謝ってほしい。それがスポーツマンシップの正義だ。





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!





2018年9月10日
Copyright (C) 2018 IMSSR



******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************



コメント (2)

東京オリンピック セーリング会場 シラス漁 江の島ヨットハーバー ヨットレース ウインドサーフィン

2018年09月16日 19時51分10秒 | 東京オリンピック
江の島セーリング会場 シラス漁に影響 ヨットの移設や津波対策に懸念
「準備は1年遅れている」 警告を受けた2020東京大会組織委 





2020東京大会のテストイベント第1弾
セーリングのワールドカップ(W杯)開催 はやくも開催時間を巡ってトラブルに


 9月11日、2020東京五輪のテスト大会の第1弾となるセーリングのワールドカップ(W杯)江の島大会の競技が神奈川県の相模湾で始まった。江の島は2020東京五輪大会のセーリング会場となるため、このプレイベントの開催で問題点を洗い出していくのがその目的だ。
 今回のセーリングのW杯にあたって、大会組織委は延べ200人の職員を派遣。輸送や警備など36分野に分かれ、主催のワールドセーリング(WS)などから、運営のノウハウを直接学んでいる。
 今回の大会の開催にあたっては、相模湾名物のシラスの漁場に配慮して、地元漁業者への影響をどうやって最小限に抑えるかが最大の課題だ。
 その結果、レース当日もシラス漁ができるよう、通常午前10時に設定することが多い競技開始時間を午後1時から5時までに遅らせることで実行員会は地元漁業者と合意した。
 コースは定置網を避けた六つを設定。その上で、漁業者がアクセスしやすいよう、漁港から漁場への漁船の走行ルートも確保した。地元漁協の協力を得て、英語のナレーション付きでレース地点付近の漁場の様子を説明する動画もつくられた。
 大会組織委の内藤拓也・地方会場調整担当部長は「コース設定に関しては、(シラス漁などに)十分に配慮した形になっているのではないか」と話す。今大会がうまくいけば、今回のコースが五輪本番でも使われる可能性は高くなる。
 しかし、早くも競技時間開始を巡って、地元漁業者とトラブルが発生した。
 午後1時から同5時の間に行うという合意、9月11日の初日は、一部のレースが午前11時ごろ開始された。地元漁業者の抗議を受け、実行委は、翌12日からは正午以降の開始とした。
 実行委は、事前に漁業団体と合意した開始時間をレース開始時間を決める団体「ワールドセーリング」に十分に説明できていなかったという。実行委の末木創造委員長は「一部のスタッフに業務が集中してしまった。大変申し訳ない」と語った。
 また神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会の杉山武会長は「漁業補償もない中で、譲歩し合って定めたルールではなかったのか。こんなことでは先が思いやられる」と語った。
 五輪大会中は、一定期間、漁ができない期間が発生する可能性もある。漁業者への営業補償が発生した場合、東京都が負担することになっているが、補償額やどこまでを対象とするかは未だに決まっていない。(参考 朝日新聞 産経新聞 9月11日/14日)









出典 World Saling Japan 2018




「誠実に疑問に答えを」 コーツIOC副会長
 2018年4月24日、2020東京五輪大会の準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツ国際オリンピック委員会(IOC)副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 4月15日から20日、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議などで、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した。
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況のチェックを行った。

 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京に移る中、大会準備に関して答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。

柔道、セーリング、トライアスロンに批判
 国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟は、柔道とセーリング、トライアスロンの種目について、開催準備の遅れに懸念を表明している。国際柔道連盟は、2019年に開催される柔道競技のプレ大会の準備状況の遅れを指摘し、国際セーリング連盟は、江の島で開催されるセーリング競技について、地元漁業者との調整が進まず、コース決定が遅れていることに不満を示した。またトライアスロン競技連盟は東京湾の水質汚染問題について強い懸念が示された。


江の島ヨットハーバー センリング競技会場  出典 神奈川県


江の島ヨットハーバー 出典 Wikipedia

シラス漁に影響 江の島セーリング
 セーリング競技については、バンコクで開かれた夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)の総会で、、国際セーリング連盟は、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。

 2020東京大会で江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種(1人ないし2人乗りの小型艇)によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して、指示された周回方法や周回回数で走る競技で、得点とレースの終了順位で勝者を決まる。
 競技種目には、1人乗りのレーザー級、2人乗りの49er(フォーティーナイナー)級などがあり、1984年のロサンゼルス大会からは、ウインドサーフィン種目も採用された。
 2016リオデジャネイロと同様の10種目が行われることが決まっている。 

▼ 競技種目
 ・RS:X(男子/女子)
 ・レーザー級(男子)
 ・レーザーラジアル級(女子)
 ・フィン級(男子)
 ・470級(男子/女子)
 ・49er級(男子/女子)
 ・フォイリングナクラ17(混合)

 競技を開催する海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の相模湾に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 国際セーリング連盟は、レースの実施に当たってはブイを設置するので、水深が深いところではブイを固定しづらいため、水深 40 ㍍以下が望ましいとし、沖合に海面を設定すると選手の移動負担が大きいく、なるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
 セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い海域を求めいるのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 さらに現状で計画されている競技エリア内には、定置網が2箇所設置されていて、定置網を撤去すると巨額の撤去費用や漁業補償が発生する。
 神奈川県ではこうした巨額の費用負担を避けるために、定置網の設置場所を競技エリアから外すことで調整をしたいとしてるが、未だに決着はしていない。
 漁業補償については、五輪期間中の漁業補償を支払う方針だが、ほぼ同じ海面で実施する見通しのテスト大会については、現段階では検討していない」しているが、未解決のままである。
 セーリング競技大会は、2020東京大会の前に、テストイベント(プレプレ大会、プレ大会)が、2018年9月と2019年と大会直前に合計3回の開催が予定されいる。テストイベントは本大会と同様程度の規模で開催される。
 レース海面の決定は漁業補償がからんで難航が予想され、セーリング開催準備は大きな難問を抱えている。


セーリング競技開催予定海域   出典 神奈川県

緊急課題 津波対策
 江の島の東端の海に突き出したエリアに、約5000人収容の観客席が設けられる。約2000~3000人とされている大会関係者も含めると1万人近い大勢の人が集まるだろう。
 海辺のイベントで懸念される災害は、津波である。近くには津波避難施設も少なく、「避難しやすい対岸などに観客席を移すべきだ」との声も出ている。
 神奈川県藤沢市が作成したハザードマップによると、相模湾から房総半島に至る相模トラフで大地震が発生した場合、五輪セーリング会場の江の島ヨットハーバーには8分後に4・5メートルの津波が来ると想定している。さらに「想定外をなくす」方針のもと新たに追加された予測では最大クラスで高さ11・5メートルの津波が来る可能性も指摘している。
 2017年10月には台風21号の影響による激しい風雨に高潮が重なり、高さ約6メートルの堤防を高波が乗り越えた。セーリング会場となる一帯が冠水して、競技用の大型コンテナが流されて横倒しになるなどの被害が出ている
 江の島セーリング会場の緊急課題は、短時間避難可能な避難施設の確保など津波災害対策である。
 しかし現状では、津波や高波の際、すぐ逃げられる場所は江の島ヨットハウスの隣の屋外展望台(400人収容可能)だけといわれている。
 江の島には、標高約60メートルの小山や高台もあるが、避難ルートは、飲食店や土産物店が並ぶ狭い参道など住宅地を抜ける急な上り坂が指定されているが、1万人近い群衆が短時間で避難できるかどうか懸念が多い。
 観客席を対岸に移したり、セーリング会場内に新たな津波避難施設を建設したりする安全対策が求められるのは当然だろう。 
 国際セーリング連盟も津波対策について懸念を表明してる。

難題 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約1000艇の移動
 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約200艇のクルーザーや約800艇のディンギーは、 2020東京大会開催時だけでなく、テストイベント開催時には移動させなければならい。
 2012ロンドン大会では、参加国56カ国、競技艇273艇、参加選手380人だったが、2020東京大会では、参加国同数56カ国程度、競技艇300艇、参加選手400人を想定している。
 さらに、参加チームには、コーチやスタッフが2000人から3000人参加し、合わせて40フィートコンテナが約100個、運営艇が約300艇持ち込まれる。
 神奈川県では、競技艇300艇は現在のディンギー保管エリア、運営艇300艇は現在のクルーザー係留エリアを使用するとしている。またコンテナリアは駐車場エリアや民間事業者が保有する敷地を利用することで調整しているとしている。
 現在利用している約1000艇や機材置き場を、およそ2年間に渡って移動させることが必須となるが、これが難題だ。
 神奈川県ではクルーザー等は、県内のハーバーを移動候補地として検討し、ディンギーは、県が管理する港湾等の活用について、利便性やコストを精査しながら、検討するとしている。
 利用者にとっては、移動後の係留費用も重要だ。神奈川県では、艇を他の場所に保管する際にどの様な費用が発生するか調査して今後検討していくとしている。
 また、ヨットのメンテナンスなどヨットハーバー関連の仕事に従事している人たちへの影響も深刻だ。 2年近く船が無くなると関連企業は閉鎖しなけばないない事態も起きる懸念がある。
 観光地江の島全体に与える影響もある。大会準備の工事やヨットの移動の影響で江の島自体が“閑散”となる懸念も生まれる。ヨットハーバーを訪れる人は減少し、周辺の飲食店や土産物店への影響も懸念される。
 テストイベントが開催される期間は大会関係者で賑わうだろうが、それは2カ月あまり、残りの2年間余りはは“閑散”とすると思われる。こうした状態が続いたら、なんのために江の島でセーリング競技を開催するのか批判が生れる可能性もある。
 2018年9月6日から16日には、本大会さながらのテストイベント(プレプレ大会)が始まる。
 江の島ヨットハーバーでセーリング競技を開催する準備に残された時間はわずかである。


セーリング会場整備計画   出典 神奈川県


全体の想定スケジュール   出典 神奈川県

コーツ副会長から警告された組織員会 
 「あなたたには、率直に質問に答えなければならい」、記者会見でコーツ副会長は述べたが、隣に座った元首相の森喜朗委員長と武藤敏郎事務総長はまったく無表情だった。
「すべてがあなたたちに原因があるとは思わないが、疑念はますます増えるだろう」とコーツ副会長は付け加えた。
 森組織委会長は、コート副会長から個人的に受けたドバイスについて質問された。
 「沢山の案件があった」とし、「いくつかの具体的なアドバイスがあり、1つや2つのポイントだけ取り上げることはできない。 多くのポイントがあった」と内容を明らかにすることを避けた。
 これまでに開催されたいくつかの五輪大会とは異なり、東京大会は、はるかに効率的にスケジュール通りに開催準備を行われることが期待されていた。  
 しかし、東京大会の主催者は、いくつかのスポーツ連盟やオリンピック委員会が満足できる大会準備状況について、なぜか説明することを躊躇しているとIOC調査チームから警告されたのである。

 先週、世界のセーリング、柔道、トライアスロンの国際競技連盟から東京大会の準備状況に懸念を示す声が相次いだ。
 世界セーリング連盟のアンディ・ハント(Andy Hunt)会長からは、1年後に迫った大会を控え、セーリング会場となる海域での漁船の問題を指摘した。
 IOCのクリストファー・ダビ氏は「東京大会の開催準備は進んでいるとは思うが、最終決定するまでは公表しない。 それが問題だ」と述べた。

 コーツ副会長は、今年11月に、東京で開催される世界206のオリンピック国内委員会が集まる会合で、東京大会の主催者が質問攻めにあう可能性があると警告した。
 「どんな質問にも答える明快に準備ができていなければならない。彼らは答えが欲しいと思っている。それができなければ信頼を失う危険がある」と述べた。
 そして、「彼らは選手にとって最良の競技ができる環境を知りたがっている」と語った。 「今、私たちはすべての細かな競技環境がどうなるのかに関心がある。こうした細かな競技環境を高めることが重要なのである」
 東京大会まで2年余り、五輪関係者の関心は、競技場や宿泊施設、輸送、競技や選手に影響を及ぼすあらゆる分野で、極めて現実的で緊急に解決しなければならない段階に突入するのである。

混迷必至、北朝鮮五輪参加問題 
 北朝鮮の2020東京五輪参加問題も取り上げられた。
森組織委会長は、最終的に東京オリンピックで北朝鮮代表団を迎えることになることを懸念していると述べた。 日本は、北朝鮮による拉致問題を抱えていて、未だに解決されてと問題を提起した。
 日本は北朝鮮に「裏切られた」とし、「拉致事件は平和な時代に起こった。そして日本人が拉致された」と述べた。
さらに「日本は朝鮮半島に近く、北朝鮮は隣国である。 そして我々は核兵器の脅威にさらされている。我々はこうした厳しい状況の下で生きていかなければならない」と語った。
 コーツ副会長は、日本は東京オリンピックで北朝鮮の五輪選手団を受け入れることがオリンピック憲章の下で義務づけられていると基本的な姿勢を明らかにした。
 しかし、「五輪開催国の政府が、五輪選手団以外の政治指導者や関係者の受け入れを制限する権利がないと言っているわけではない」とも述べた。
 2020東京大会は、北朝鮮の五輪参加という極めて難解な問題を突き付けられている。





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌 
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京五輪大会 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
唖然とする“五輪専門家”の無責任な発言 膨れ上がった施設整備費
アクアティクスセンターは規模縮小で建設を検討か? 国際水泳連盟・小池都知事会談
東京オリンピック 海の森水上競技場 Time Line Media Close-up Report
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************
コメント