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東京オリンピック 江の島セーリング会場 シラス漁 セーリング ウインドサーフィン

2023年04月25日 23時03分57秒 | 東京オリンピック
東京オリンピック 江の島セーリング会場 シラス漁に影響
ヨットの移設や津波対策に懸念
「準備は1年遅れている」 警告を受けた2020東京大会組織委 



2020東京大会のテストイベント第1弾
セーリングのワールドカップ(W杯)開催 はやくも開催時間を巡ってトラブルに

 9月11日、2020東京五輪のテスト大会の第1弾となるセーリングのワールドカップ(W杯)江の島大会の競技が神奈川県の相模湾で始まった。江の島は2020東京五輪大会のセーリング会場となるため、このプレイベントの開催で問題点を洗い出していくのがその目的だ。
 今回のセーリングのW杯にあたって、大会組織委は延べ200人の職員を派遣。輸送や警備など36分野に分かれ、主催のワールドセーリング(WS)などから、運営のノウハウを直接学んでいる。
 今回の大会の開催にあたっては、相模湾名物のシラスの漁場に配慮して、地元漁業者への影響をどうやって最小限に抑えるかが最大の課題だ。
 その結果、レース当日もシラス漁ができるよう、通常午前10時に設定することが多い競技開始時間を午後1時から5時までに遅らせることで実行員会は地元漁業者と合意した。
 コースは定置網を避けた六つを設定。その上で、漁業者がアクセスしやすいよう、漁港から漁場への漁船の走行ルートも確保した。地元漁協の協力を得て、英語のナレーション付きでレース地点付近の漁場の様子を説明する動画もつくられた。
 大会組織委の内藤拓也・地方会場調整担当部長は「コース設定に関しては、(シラス漁などに)十分に配慮した形になっているのではないか」と話す。今大会がうまくいけば、今回のコースが五輪本番でも使われる可能性は高くなる。
 しかし、早くも競技時間開始を巡って、地元漁業者とトラブルが発生した。
 午後1時から同5時の間に行うという合意、9月11日の初日は、一部のレースが午前11時ごろ開始された。地元漁業者の抗議を受け、実行委は、翌12日からは正午以降の開始とした。
 実行委は、事前に漁業団体と合意した開始時間をレース開始時間を決める団体「ワールドセーリング」に十分に説明できていなかったという。実行委の末木創造委員長は「一部のスタッフに業務が集中してしまった。大変申し訳ない」と語った。
 また神奈川県しらす船曳網漁業連絡協議会の杉山武会長は「漁業補償もない中で、譲歩し合って定めたルールではなかったのか。こんなことでは先が思いやられる」と語った。
 五輪大会中は、一定期間、漁ができない期間が発生する可能性もある。漁業者への営業補償が発生した場合、東京都が負担することになっているが、補償額やどこまでを対象とするかは未だに決まっていない。(参考 朝日新聞 産経新聞 9月11日/14日)









出典 World Saling Japan 2018




「誠実に疑問に答えを」 コーツIOC副会長
 2018年4月24日、2020東京五輪大会の準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツ国際オリンピック委員会(IOC)副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 4月15日から20日、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機構(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議などで、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した。
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況のチェックを行った。

 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京に移る中、大会準備に関して答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。

柔道、セーリング、トライアスロンに批判
 国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟は、柔道とセーリング、トライアスロンの種目について、開催準備の遅れに懸念を表明している。国際柔道連盟は、2019年に開催される柔道競技のプレ大会の準備状況の遅れを指摘し、国際セーリング連盟は、江の島で開催されるセーリング競技について、地元漁業者との調整が進まず、コース決定が遅れていることに不満を示した。またトライアスロン競技連盟は東京湾の水質汚染問題について強い懸念が示された。


江の島ヨットハーバー センリング競技会場  出典 神奈川県


江の島ヨットハーバー 出典 2020東京大会組織委員会

シラス漁に影響 江の島セーリング
 セーリング競技については、バンコクで開かれた夏季五輪国際競技連盟連合(ASOIF)の総会で、、国際セーリング連盟は、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。

 2020東京大会で江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種(1人ないし2人乗りの小型艇)によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して、指示された周回方法や周回回数で走る競技で、得点とレースの終了順位で勝者を決まる。
 競技種目には、1人乗りのレーザー級、2人乗りの49er(フォーティーナイナー)級などがあり、1984年のロサンゼルス大会からは、ウインドサーフィン種目も採用された。
 2016リオデジャネイロと同様の10種目が行われることが決まっている。 

▼ 競技種目
 ・RS:X(男子/女子)
 ・レーザー級(男子)
 ・レーザーラジアル級(女子)
 ・フィン級(男子)
 ・470級(男子/女子)
 ・49er級(男子/女子)
 ・フォイリングナクラ17(混合)

 競技を開催する海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の相模湾に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 国際セーリング連盟は、レースの実施に当たってはブイを設置するので、水深が深いところではブイを固定しづらいため、水深 40 ㍍以下が望ましいとし、沖合に海面を設定すると選手の移動負担が大きいく、なるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
 セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い海域を求めいるのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 さらに現状で計画されている競技エリア内には、定置網が2箇所設置されていて、定置網を撤去すると巨額の撤去費用や漁業補償が発生する。
 神奈川県ではこうした巨額の費用負担を避けるために、定置網の設置場所を競技エリアから外すことで調整をしたいとしてるが、未だに決着はしていない。
 漁業補償については、五輪期間中の漁業補償を支払う方針だが、ほぼ同じ海面で実施する見通しのテスト大会については、現段階では検討していない」しているが、未解決のままである。
 セーリング競技大会は、2020東京大会の前に、テストイベント(プレプレ大会、プレ大会)が、2018年9月と2019年と大会直前に合計3回の開催が予定されいる。テストイベントは本大会と同様程度の規模で開催される。
 レース海面の決定は漁業補償がからんで難航が予想され、セーリング開催準備は大きな難問を抱えている。


セーリング競技開催予定海域   出典 神奈川県

緊急課題 津波対策
 江の島の東端の海に突き出したエリアに、約5000人収容の観客席が設けられる。約2000~3000人とされている大会関係者も含めると1万人近い大勢の人が集まるだろう。
 海辺のイベントで懸念される災害は、津波である。近くには津波避難施設も少なく、「避難しやすい対岸などに観客席を移すべきだ」との声も出ている。
 神奈川県藤沢市が作成したハザードマップによると、相模湾から房総半島に至る相模トラフで大地震が発生した場合、五輪セーリング会場の江の島ヨットハーバーには8分後に4・5メートルの津波が来ると想定している。さらに「想定外をなくす」方針のもと新たに追加された予測では最大クラスで高さ11・5メートルの津波が来る可能性も指摘している。
 2017年10月には台風21号の影響による激しい風雨に高潮が重なり、高さ約6メートルの堤防を高波が乗り越えた。セーリング会場となる一帯が冠水して、競技用の大型コンテナが流されて横倒しになるなどの被害が出ている
 江の島セーリング会場の緊急課題は、短時間避難可能な避難施設の確保など津波災害対策である。
 しかし現状では、津波や高波の際、すぐ逃げられる場所は江の島ヨットハウスの隣の屋外展望台(400人収容可能)だけといわれている。
 江の島には、標高約60メートルの小山や高台もあるが、避難ルートは、飲食店や土産物店が並ぶ狭い参道など住宅地を抜ける急な上り坂が指定されているが、1万人近い群衆が短時間で避難できるかどうか懸念が多い。
 観客席を対岸に移したり、セーリング会場内に新たな津波避難施設を建設したりする安全対策が求められるのは当然だろう。 
 国際セーリング連盟も津波対策について懸念を表明してる。

難題 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約1000艇の移動
 江の島ヨットハーバー(湘南港)を利用している約200艇のクルーザーや約800艇のディンギーは、 2020東京大会開催時だけでなく、テストイベント開催時には移動させなければならい。
 2012ロンドン大会では、参加国56カ国、競技艇273艇、参加選手380人だったが、2020東京大会では、参加国同数56カ国程度、競技艇300艇、参加選手400人を想定している。
 さらに、参加チームには、コーチやスタッフが2000人から3000人参加し、合わせて40フィートコンテナが約100個、運営艇が約300艇持ち込まれる。
 神奈川県では、競技艇300艇は現在のディンギー保管エリア、運営艇300艇は現在のクルーザー係留エリアを使用するとしている。またコンテナリアは駐車場エリアや民間事業者が保有する敷地を利用することで調整しているとしている。
 現在利用している約1000艇や機材置き場を、およそ2年間に渡って移動させることが必須となるが、これが難題だ。
 神奈川県ではクルーザー等は、県内のハーバーを移動候補地として検討し、ディンギーは、県が管理する港湾等の活用について、利便性やコストを精査しながら、検討するとしている。
 利用者にとっては、移動後の係留費用も重要だ。神奈川県では、艇を他の場所に保管する際にどの様な費用が発生するか調査して今後検討していくとしている。
 また、ヨットのメンテナンスなどヨットハーバー関連の仕事に従事している人たちへの影響も深刻だ。 2年近く船が無くなると関連企業は閉鎖しなけばないない事態も起きる懸念がある。
 観光地江の島全体に与える影響もある。大会準備の工事やヨットの移動の影響で江の島自体が“閑散”となる懸念も生まれる。ヨットハーバーを訪れる人は減少し、周辺の飲食店や土産物店への影響も懸念される。
 テストイベントが開催される期間は大会関係者で賑わうだろうが、それは2カ月あまり、残りの2年間余りはは“閑散”とすると思われる。こうした状態が続いたら、なんのために江の島でセーリング競技を開催するのか批判が生れる可能性もある。
 2018年9月6日から16日には、本大会さながらのテストイベント(プレプレ大会)が始まる。
 江の島ヨットハーバーでセーリング競技を開催する準備に残された時間はわずかである。


セーリング会場整備計画   出典 神奈川県


全体の想定スケジュール   出典 神奈川県

コーツ副会長から警告された組織員会 
 「あなたたには、率直に質問に答えなければならい」、記者会見でコーツ副会長は述べたが、隣に座った元首相の森喜朗委員長と武藤敏郎事務総長はまったく無表情だった。
「すべてがあなたたちに原因があるとは思わないが、疑念はますます増えるだろう」とコーツ副会長は付け加えた。
 森組織委会長は、コート副会長から個人的に受けたドバイスについて質問された。
 「沢山の案件があった」とし、「いくつかの具体的なアドバイスがあり、1つや2つのポイントだけ取り上げることはできない。 多くのポイントがあった」と内容を明らかにすることを避けた。
 これまでに開催されたいくつかの五輪大会とは異なり、東京大会は、はるかに効率的にスケジュール通りに開催準備を行われることが期待されていた。  
 しかし、東京大会の主催者は、いくつかのスポーツ連盟やオリンピック委員会が満足できる大会準備状況について、なぜか説明することを躊躇しているとIOC調査チームから警告されたのである。

 先週、世界のセーリング、柔道、トライアスロンの国際競技連盟から東京大会の準備状況に懸念を示す声が相次いだ。
 世界セーリング連盟のアンディ・ハント(Andy Hunt)会長からは、1年後に迫った大会を控え、セーリング会場となる海域での漁船の問題を指摘した。
 IOCのクリストファー・ダビ氏は「東京大会の開催準備は進んでいるとは思うが、最終決定するまでは公表しない。 それが問題だ」と述べた。

 コーツ副会長は、今年11月に、東京で開催される世界206のオリンピック国内委員会が集まる会合で、東京大会の主催者が質問攻めにあう可能性があると警告した。
 「どんな質問にも答える明快に準備ができていなければならない。彼らは答えが欲しいと思っている。それができなければ信頼を失う危険がある」と述べた。
 そして、「彼らは選手にとって最良の競技ができる環境を知りたがっている」と語った。 「今、私たちはすべての細かな競技環境がどうなるのかに関心がある。こうした細かな競技環境を高めることが重要なのである」
 東京大会まで2年余り、五輪関係者の関心は、競技場や宿泊施設、輸送、競技や選手に影響を及ぼすあらゆる分野で、極めて現実的で緊急に解決しなければならない段階に突入するのである。

混迷必至、北朝鮮五輪参加問題 
 北朝鮮の2020東京五輪参加問題も取り上げられた。
森組織委会長は、最終的に東京オリンピックで北朝鮮代表団を迎えることになることを懸念していると述べた。 日本は、北朝鮮による拉致問題を抱えていて、未だに解決されてと問題を提起した。
 日本は北朝鮮に「裏切られた」とし、「拉致事件は平和な時代に起こった。そして日本人が拉致された」と述べた。
さらに「日本は朝鮮半島に近く、北朝鮮は隣国である。 そして我々は核兵器の脅威にさらされている。我々はこうした厳しい状況の下で生きていかなければならない」と語った。
 コーツ副会長は、日本は東京オリンピックで北朝鮮の五輪選手団を受け入れることがオリンピック憲章の下で義務づけられていると基本的な姿勢を明らかにした。
 しかし、「五輪開催国の政府が、五輪選手団以外の政治指導者や関係者の受け入れを制限する権利がないと言っているわけではない」とも述べた。
 2020東京大会は、北朝鮮の五輪参加という極めて難解な問題を突き付けられている。





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相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市

有働由美子 news zero批判 ニュースになっていないnews zero ニュースキャスター失格 あさイチの成功




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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東京オリンピック ライフサイクルコスト 維持管理費 老朽化対策 新国立競技場 海の森水上競技場 

2023年04月25日 21時21分21秒 | 東京オリンピック


東京オリンピック 巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか?


 2016年10月5日、日本スポーツ振興センター(JSC)は、新国立競技場の完成後50年間の維持管理費が年間約24億円、総額約1200億円との試算を明らかにした。新国立競技場の建設費は約1645億円、50年間の維持管理費はその額に並ぶほどの巨額に達するのである。
 新国立競技場の工事を請け負っている大成建設などの共同企業体(JV)が現時点で大まかな数字を算出した。警備、清掃、水道光熱費など日常的なかかる費用と、定期的に行う大規模改修費を加えて算出した。
 JSCによると、昨年白紙撤回されたザハ・ハディド氏デザインの旧計画では日常的な維持管理費は年間約40億円で、これ以外に50年間の大規模改修費が約1046億円との試算をしていた。取り壊された旧国立競技場の年間約7億~8億円だった。
 新国立競技場など競技場施設を建設すると、初期費用の建設費だけでなく、完成後50年~60以上に渡って維持管理費が発生する。さらに5年、10年ごとに施設のリニューアルや大規模修繕を行わないと施設の環境は維持できないのは常識である。
 最近は、国や地方自治体では、道路や橋、建物などの社会資本のインフラ投資を行う際は、初期投資経費、完成後の維持管理費、修繕費、更新費、大規模改修費、そして廃棄処理費なども加えたライフサイクルコストという概念を導入して、インフラ投資の妥当性を検証する材料にしている。
 小池都知事も海の森水上競技場競技場を見直すにあたって、「恒久施設」案では328億円の建設費まで削減可能としたが、建設後の修繕費が65年間で計約294億円が必要となると試算した。修繕費に年間の維持管理費3億2500万円とされる維持管理費の65年分、計約210億円を加えると、65年間のライフサイクルコストは約500億円と大幅に建設費を超えるだろう。その結果、小池都知事は「仮設レベル」で298億円で建設する案を選択した。 、「恒久施設」案の328億円と「仮設レベル」の298億円を比較すると、約40億円程度と差はわずかだが、ライフサイクルコストで比較すると巨額の差が生まれるのである。
 競技場など“箱もの”は、建設費だけ調達すればよいというわけにはいかない。巨額の後年度負担を次世代に確実に残すことになることを忘れてはならない。
 キーワードは「持続可能な開発」(Sustainable Development)である。



小池都知事と上山特別顧問 4者協議トップ級会合 11月29日 




脚光を浴びているライフサイクルマネジメント(LCM)
 2012年12月2日、中央自動車道上り線笹子トンネルの山梨県大月市側出口から約2キロメートルの地点の天井板が突然崩落し、通行車が次々と下敷きになり、9名が犠牲になるという大惨事が起きた。
天井板は約110mに渡ってV字型に崩落し、重さ約1.2tの天井板が通行車に直撃した。
この事故で、老朽化した社会資本の維持管理に係る問題点が浮き彫りとなった。
道路、橋、港湾、上下水道、公営住宅、病院、学校などの社会資本は、建設後50年で“耐用年数”を迎えるとされている。 高度成長期以降に整備、建設された膨大な量の社会資本が2020年までに、一斉に「50年」を迎える。

[建設後50年以上経過する施設の割合の例]
道路橋:  H24年3月 約16%   10年後 約40%   20年後 約65%
河川施設: H24年3月 約18%   10年後 約30%   20年後 約45%
トンネル: H24年3月 約24%   10年後 約40%   20年後 約62%
港湾岸壁: H24年3月 約7%   10年後 約29%   20年後 約56%


(国土交通省 「社会資本の維持管理・更新に関し当面講ずべき措置」)

 国土交通省では、所管する社会資本を対象に2020年までの維持管理・更新費の推計を行った。
 それによると、2011年度から2020年度までの50年間に必要な更新費は約「190兆円」で、社会資本への投資水準を横ばいと過程すると2037年の時点で維持管理・更新費すら賄えなくなる可能性があるとしている。
(国土交通省 平成23年国土交通省白書)

 一方、財務省では、財政の視点で、社会資本の維持管理問題に取り組んでいる。
 これからの社会資本整備のあり方について、「厳しさを増す財政事情の下、社会資本の整備水準の向上や今後の急速な人口減少を踏まえれば、今後の社会資本整備に際しては、一層の重点化を図るとともに、計画的かつ効率的に進める必要がある」とし、「費用の増加が見込まれる社会資本の維持管理・更新に当たっては、それぞれの管理主体が人口減少やコンパクトシティ化等を見据え、インフラ長寿命化計画(行動計画)等を策定し、これに基づき効率的に対応していかなければならない」とした。
さらに新規投資については、「我が国にとって必要とされる国際競争力強化や防災対策であっても、費用対効果を厳しく見極め、厳選する必要がある」としている。



(社会資本整備を巡る現状と課題 財務省主計局 平成26年10月20日)

 老朽化が加速する膨大な量の社会資本をどうやって維持管理するのか、更新工事の体制はどうするのか、厳しさを増す財政や加速する少子・高齢化社会を抱える中で、その悩みは深刻だ。社会資本の整備には、後年度負担も念頭に置いた戦略的なマネージメントが必須になっている。
 その中で生まれた概念がライフサイクルマネイジメント(LCM)である。


ライフサイクルマネジメント【LCM:Life Cycle Management】
 ファシリティの企画段階から、設計・建設・運営そして解体までのファシリティの生涯に着目して計画、管理を行なう考え方。ファシリティに依存する効用の最大化、ライフサイクルコスト(LCC)の最適化、資源やエネルギー消費・環境負荷の最小化、障害や災害のリスクの最小化を目標とする。例えば、施設を建替えずに改修しながら使用し続ければ、建替え時の解体費用と新設費用が節約できることに加え、それらに係る二酸化炭素排出量も大きく削減可能で、地球温暖化に大きく貢献することになる。
このような観点からも、施設の生涯にわたる効用・損失を最大化するためには、施設の長寿命化は不可欠であり、大幅な用途の変更が必要になる場合もある。

(参照 日本ファシリティマネジメント推進協会:FMガイドブック)

官公庁の施設の“ライフサイクルコスト”(LCC)試算
 官公庁の施設マネジメントを行う一般財団法人建築保全センターは、大規模な建築物などの五十年間の長期修繕費について、「すべき修繕、望ましい修繕、事後保全」は建設費の百五十四パーセント、「すべき修繕、望ましい修繕」同九十六パーセント、「すべき修繕」同五十一パーセントとしている。
 「事後保全」とは、建造物や設備にトラブルが発生したら、その都度、修理、修復、設備更新を行う修繕作業である。
 新国立競技場の場合、可動式屋根や可動式観客席、芝生養生システムや空調設備などの最新鋭設備、他の官公庁の施設に比べて、保守修繕費がかさむのは明らかであろう。
 この目論見で、新国立競技場の今後50年間の長期修繕費を試算してみると、「すべき修繕、望ましい修繕」のケースでは、建設費とほぼ同額の「2419億円」、「すべき修繕、望ましい修繕」のケースでは、「3880億円」が見込まれているのである。


(参考 国土交通省大臣官房官庁営繕部監修,財団法人建築保全センター編集・発行,財団法人経済調査会発行『建築物のライフサイクルコスト』[平成17年])

ライフサイクル・マネージメント
 建築保全センターは「建物のロングライフ化」のために、定期的に保全工事を的確に行う必要性を強調している。時間の経過と共に、建物の様々な性能・機能が劣化し、その維持のために保守工事や大規模修理が必要となるほか、時代と共に変わる要求水準を満たすために大規模更新工事が求められている。
 

(出典 一般財団法人 建築保全センター 建築等のライフサイクル・マネージメント)

 また建築保全センターでは、標準的な建物の「ライフサイクルコスト」のシミュレーションも公表している。
 「鉄筋コンクリート造 地下1階地上5階建」のビルで、耐用年数を「60年」と想定した。
 「企画設計コスト」を0.6億円、「建設コスト」を14.2億円、合わせて14.8億円を初期費用とし、「点検・保守等のコスト」、「修繕・改善コスト」、「光熱水等のコスト」、「他運用管理コスト」、「廃棄処分コスト」を試算した。
 その結果、「ライフサイクルコスト」は、初期費用も含めて86.9億円になるとした。初期費用の5.87倍に上る経費である。

 

(出典 一般財団法人 建築保全センター 建築等のライフサイクル・マネージメント)

鹿島建設の“ライフサイクルコスト”試算
 また鹿島建設では、建築物は竣工後から解体廃棄されるまでの期間に建設費のおよそ3~4倍の経費が必要で、竣工時に長期修繕計画を作成し、計画的に修繕更新を行うが重要としている。 この試算では、「2520億円」の施設を建設すると「7560億円」から「1兆80億円」の後年度負担が、今後50年間に発生することになる。
 JSCでは、約「1046億円」でさえ、早くも、ギブアップして国に財源確保を要請している。
 競技場など“箱もの”は、建設費だけ調達すればよいというわけにはいかない。巨額の後年度負担が次世代に着実に残ることになる。



(運営管理とLCC 鹿島建設)

<">新国立競技場の「ライフ・サイクル・コスト」(LCC) 「1兆円超」 建築家試算
 建築エコノミストの森山高至氏が新国立競技場について「ライフ・サイクル・コスト」(LCC)を試算したところ、1兆円を超えることして、「財政的に恐ろしい未来が待ち受けている」と警告している。
森山氏の試算によると、新国立の整備費を2520億円とすると、建設から解体まで1兆80億~1兆2600億円としている。五輪後に設置するとされる開閉式屋根の費用約300億円、資材施工費の高騰分を20%とすると、さらに増えて「天文学的な数字」となるという。解体までの50年間の物価上昇等を見込むと、「後世の国民を苦しめることになるだろう」と森山氏は指摘した。

(出典 2015年7月10日 スポーツ報知)

大規模改修費「1046億円」では維持できない?
  社会資本としえ整備される建築物は、条件によって差はあるが、概ね初期建設費用の最低でも同額から1.5倍の長期修繕費が必要とされ、更新費や修繕費に加えて、維持管理費も含めるた“ライフサイクルコスト”は、4倍以上とされている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックで整備する競技場施設は、新国立競技場の1645億円だけはなく、各競技場の施設の建設や整備で2241億円を拠出する計画だ。今後50年間の負担は、約3000億円以上、“ライフサイクルコスト”で見ると、約1兆5000億円程度という巨額の負担になる。
 一方で、道路、橋、港湾、上下水道、公営住宅、病院、学校などの高度成長期以降に整備、建設された膨大な量の社会資本が2020年までに、一斉に更新時期の「50年」を迎え、2020年までの維持管理・更新費は約「190兆円」とされている。すでに巨額の負担が国の財政にのしかかっている。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催期間は、オリンピックで17日(サッカーの予選は除く)、パラリンピックで13日、その後、50年以上使い続ける“レガシー”(未来への遺産)にしなければ意味がない。
 一過性でなく、確実に後年度負担が生まれる社会資本の新規投資には、それなりの“覚悟”が必要である。
 「持続可能な開発」(Sustainable Development)を忘れてはならない。
 次世代の人たちに“胸を張って”「これが東京五輪の“レガシー”(未来への遺産)だ」と自信を持って言える計画にしたいと思うのは筆者だけであろうか?




「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌
“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意
主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか
“選手村は一つ”、“選手村はオリンピックの魂” の矛盾 どこへ行った五輪改革
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市



新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(6) 陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2015年7月29日
Copyright (C) 2015 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************


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G7伊勢志摩サミット 安倍首相 オバマ大統領 広島 首脳宣言 成果

2023年04月24日 21時28分17秒 | G7伊勢志摩サミット
G7伊勢志摩サミットの成果は? 安倍首相はリーダーシップを発揮できたか? 
2016年G7主要国首脳会議


▼ 存在感を示せなかった安倍首相 議長としてのリーダーシップは発揮できたのか?
▼ 世界経済をけん引することを目指した「伊勢志摩経済イニシアチブ」など共同声明発表 伊勢志摩サミット閉幕
▼ 圧倒的な存在感を示したオバマ大統領 広島訪問17分に及ぶ演説“核なき世界”へのメッセージ 被爆者との対話
▼ 三重県営サンアリーナに設置された国際メディアセンター(IMC)
▼ 伊勢志摩サミット 10の閣僚会合を開催
▼ 開催地選定のポイント
▼ サミットの“ジンクス”



伊勢神宮を参拝するオバマ大統領と安倍首相((2016年5月26日午前11時過ぎ)




伊勢神宮を参拝するG7首脳とEU(ヨーロッパ連合)の欧州理事会議長と欧州委員会委員長 ((2016年5月26日午前11時過ぎ)


英虞湾を背景に記念写真(午後13時30分)


ワーキングセッション2日目

G20大阪サミット2019開催 20カ国・地域首脳会議
伊勢志摩サミット・G7外相会合 広島で開催
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム G7伊勢志摩サミット・G8北海道洞爺湖サミット



安倍首相はリーダーシップをどう発揮するのか? 伊勢志摩サミット5月26日、27日開催
  2016年、今年は伊勢志摩サミット開催の年である。5月26日と27日に三重県の賢島で開催される。日本でG7主要国首脳会議が開かれるのは、2008年の北海道洞爺湖サミット以来、8年ぶりである。前回のサミットでは、安倍首相は直前に退陣し、議長を務めたのは福田首相(当時)だった。
 初めて、国際政治の“晴れ舞台”、G7サミットの議長を務める安倍首相は、G7各国の中で、いかにリーダーシップを発揮し存在感を示すか、真価が問われることになる。
 伊勢志摩サミットの主要議題は、議長国を務める日本で検討が進められ、参加各国との調整が行われてきた。
 その結果、主要議題として、世界経済・貿易、政治・外交、気候変動・エネルギー、質の高いインフラ投資、保健、女性などが取り上げられることになった。 
 2016年、年明け早々、世界経済は中国株の暴落や原油価格の下落で世界同時株安に見舞われ、波乱含みのスタートとなった。資源化価格の下落で、ブラジルなどの新興国の経済は破綻寸前、アメリカの金利引き上げが追い打ちをかける懸念が生まれている。中国や新興国の経済の不透明さが更に増している中で、世界経済の立て直しが最大の焦点に浮かび上がってきた。日本経済も景気に停滞感が生まれ、株価は低迷、アベノミクスの成長戦略に懸念が囁かれ始めている。今回のサミットの最重要課題とされている世界経済の立て直しで焦点の財政出動は認識のG合意にはこぎつけたが、具体策は各国に一任として棚上げにした。
 さらに北朝鮮は、突然、初の「水爆実験」と主張している4回目の核実験を行い世界に衝撃を与えた。北朝鮮にG7としてどう協調して向き合っていくか、北朝鮮問題へ対応も焦点になってった。
 パリ同時テロ以降、G7各国はテロ対策の強化が至上命題になっている。テロ対策についての国際協調や過激派組織ISへの空爆強化、封じ込め策など、G7各国首脳間での突っ込んだ議論が必須だろう。その他中国の海洋進出やウクライナ情勢も重要議題になるだろう。
 また、 中米パナマの法律事務所から流出した租税回避地に関する文書、“パナマ文書”が公開され、世界各国の指導者や有名人による課税逃れ疑惑が発覚し、問題になっている。「パナマ文書」とは、タックスヘイブン(租税回避地)の会社の設立などを手がける中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書。1977年から2015年にかけて作られた1150万点の電子メールや文書類とされている。
 これを受けて、伊勢志摩サミットでは、税率の極めて低い“租税回避地(タックスヘイブン)”を利用した国際的な課税逃れ問題を議論する方向とされている。各国指導者らによる課税逃れ疑惑が表面化したのに加え、テロ組織の資金調達の温床になっている恐れがあり、対策強化を協議すると伝えられている。
 これらの問題は、実は、伊勢志摩サミットに参加しないロシアと中国が“影の主役”と言っても過言ではない。
G7の“地盤沈下”が囁かれる原因は、ロシアと中国が首脳会合に参加しないことだろう。今回のサミットでは、G7の結束強化にとどまらず、ロシアや中国なども含めた協力体制をどう構築していくかが問われるだろう。
 安倍首相は、「北朝鮮やシリア、サウジアラビアとイランの問題など、ロシアの建設的な関与が必要。G7の議長国として大統領と会って話をすることが重要だ」と語り、プーチン大統領との首脳会談に意欲を示していた。
 2016年5月6日、安倍首相はロシア南部の保養地ソチでプーチン大統領と会談した。両首脳は北方領土問題や平和条約の締結問題をめぐり、双方が受け入れ可能な解決策の作成に向けて「新たな発想に基づくアプローチで交渉を進める」として交渉を加速することで一致。9月2、3日に首相がロシアのウラジオストクを訪問し、再び首脳会談を行うことも確認した。
 プーチン氏の訪日について、首相は「最も適切な時期を探っていくことにしよう」と語った。一方、ロシアのラブロフ外相は会談後、記者団に「具体的な日付も含め、詳細について検討した。検討が終了したらロシアと日本の双方で発表するだろう」と述べている。
 一方、2016年4月30日、岸田外相は王毅外相と北京の釣魚台国賓館で会談した。 4年半ぶりに日中外相会談の開催だった。核・ミサイル開発を進める北朝鮮に、双方が深刻な懸念を表明した。両国関係の改善のため、対話を継続することでも一致したが、中国が南シナ海での海洋進出問題をめぐっては、日中双方に溝が残った。
 王毅外相は、「中日関係は絶えずギクシャクし、たびたび谷間に陥ってしまったが、原因は日本側が一番よく分かっているのではないか」と述べ、南シナ海問題などを巡る日本の対応をけん制し、岸田氏は「日中の外相往来が長きにわたって途絶えていることは望ましくない」と関係改善を呼びかけたと伝えられている。また今年後半に日本で開催予定の日中韓首脳会談についても協議したとみられる。冷え込んだ日中関係の関係改善に一歩踏み出した感はある。
 G7伊勢志摩サミットが意義のあるサミットになるかどうか、安倍首相の難しいな舵取りが求められることになる。(2016年5月1日記)




オバマ氏、米現職大統領として初の広島訪問
 2016年5月10日、オバマ米大統領は伊勢志摩サミット出席のため訪日した際、サミット終了後の27日に広島を訪問すると、日米両政府が発表した。71年前の原爆投下以降、現職の米大統領が広島を訪れるのは初めてである。平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花し、2009年のプラハ演説で自らが提唱した「核なき世界」の理念を改めて広島から世界に発信する方針だ。
 安倍首相は「唯一の戦争被爆国の首相である私と共に世界で唯一核兵器を使用した国の指導者が共に犠牲者に対して哀悼の誠を捧げる。このことがまさに犠牲になった方々、そして今も苦しむ人々の思いに答えるこのだと信じている」と語った。
 オバマ氏は09年に大統領として初訪日した際、記者会見で「広島、長崎を将来訪れることができれば非常に名誉なことだ」と述べていた。しかし広島訪問の決定は米国内への影響などを慎重に検討した結果、訪日直前までずれ込んだ。
 オバマ米大統領は、平和公園の原爆慰霊碑に献花したのち、17分間に及ぶ演説を行い、広島、長崎への原爆投下が引き起こした甚大な犠牲について所感や「核なき世界」への決意を示した。 その一方で、原爆投下について「謝罪」や原爆投下の是非には触れなかった。
 オバマ米大統領の被爆地・広島訪問が実現したことで、世界各国のメディアの関心は、一斉に「広島」に集まった。伊勢志摩サミットのプレゼンスは急速に失われ、G7首脳会合での議論の成果への注目度が一気に消え去ってしまった。圧倒的な存在感を示したのはオバマ大統領だった。
 伊勢志摩サミットの成功を謳うためには、国民を納得させる確かな成果をあげることが必須で、安倍首相の力量がまさにこれから試されることになる。
(2016年5月20日)





原爆慰霊碑に献花するオバマ大統領






被爆者との面会も実現


生中継画面に見入る報道陣(IMC)

安倍首相「リーマン・ショック級の経済危機」強調
 伊勢志摩サミットで、安倍晋三首相が強調したのは、世界経済について“リーマン・ショック級の経済危機”だった
 「リーマン・ショック前の状況に似ている」と安倍首相は首脳会議で4枚の資料を提示して悲観的な景気見通しを示した。
安倍首相は新興国向けの投資の伸び率がリーマン・ショック時を下回ることや、原油や穀物といった商品価格の下落率が当時に匹敵する55%になることなどを指摘して、そのうえで、リーマン・ショックの2カ月前に開いた北海道・洞爺湖サミットで危機を予見できなかったことに触れ「その轍(てつ)は踏みたくない」と訴えた。
“リーマン・ショック級の経済危機”が再来する可能性を強調することで、安倍首相がめざす財政出動を含む政策協調に各国の理解を得るという狙いがあった。

演出された「経済危機」 安倍首相の“思惑”
 しかし、新興国は減速しているが、米国経済は堅調で、原油価格も持ち直しているなど、「危機前」とする安倍首相に各国首脳や海外メディアから異論が噴出した。
ドイツのメルケル首相は、 「『危機』とまで言うのはいかがなものか」と 世界経済の先行きについて、「対応を誤れば、危機に陥る」と強調する安倍首相に異議を唱えた。メルケル氏は会合後、記者団に「世界経済はそこそこ安定した成長を維持している。だが、とくに新興国に弱さがある」と述べている。
フランスのオランド大統領は会見で、今後、危機に陥る可能性は排除できないとしつつも、「今はむしろ、私たちは危機の後にいる」と述べた。
英フィナンシャル・タイムズ紙は「(英国の)キャメロン首相は世界経済について楽観的な見方だ」という英政府報道官の発言を引用し、安倍首相の世界経済の悲観的な見通しに同調していないと伝えた。
英タイムズ紙(電子版)は「世界の指導者は安倍首相の懸念に同調せず」との見出しの記事を掲載。安倍首相の「リーマン級」発言について、国内の政治的難局の打開策だと報じ、公約に反して消費増税を延期するために、差し迫った金融危機への警告にG7首脳のお墨付きを得ようとしたものだと報道した。

消費税率10%への引き再延期
 5月27日、安倍首相は、G7サミットを締めくくる議長会見に臨み、「リーマン・ショック」という言葉を7回も使って「世界経済のリスク」を強調したうえで、「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率の引き上げの是非を含めて検討する」と踏み込んだ
そして、伊勢志摩サミットの直後、6月1日、安倍首相は、記者会見で消費税率10%への引き再延期を発表した。
2014年に消費税率10%への引き延期を表明した際、首相は「リーマン・ショックや東日本大震災」のような重大事がない限り再度の先送りはしないと明言した。そこで再延期にあたっての理由に、“リーマン・ショック級の経済危機”がどうしても必要だったのではないか。
 消費増税は先送りしたいが、安倍政権の看板であるアベノミクスの“失敗”を認めたくない。G7首脳会合の場を利用して、各国首脳から“お墨付き”を得ようとしたと見るのが自然である。

 伊勢志摩サミットの場は、安倍晋三首相にとって、消費増税を先送りする口実づくりの恰好の場であった。「世界経済のリスク」を理由に、「アベノミクスの失敗」という批判をかわしたいという思惑が見え隠れした。
しかし、安倍首相が強調した“リーマン・ショック級の経済危機”は、世界から“失笑”を買ったのは間違いない。
米国経済は堅調で、ニューヨーク株式市場は史上高値を更新し、原油価格も持ち直してしている。焦点の中国経済も、今年のGDP成長率6.5%は達成できという楽観論が出ている。また足踏み状態が続いている日本経済も成長軌道に向けて動き始めたという見方も出始め、日経平均株価も1万8000台をうかがう状況だ。
 “リーマン・ショック級の経済危機”は、一体どこへいったのだろうか?

伊勢志摩サミット首脳宣言要旨(抜粋)
 【世界経済】
 世界経済の回復は続いているが、成長は緩やかでばらつきがあり、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まっている。新たな危機に陥ることを回避するため、適時にすべての政策対応を行い、現在の経済に対応するための努力を強化する。すべての政策手段(金融、財政、構造改革)を個別、総合的に用いる。財政戦略を機動的に実施し、構造政策を果断に進めることについて、取り組みを強化する重要性に合意した。
 過剰な生産能力は、世界的に影響がある課題だ。


議長会見(安倍首相)

伊勢志摩サミット・首脳会合の会場は?
 首脳会合の会場となる三重県志摩市の賢島の志摩観光ホテルは、1951年開業のクラシック(6階建て、延べ床面積約1万8600平方メートル)と、2008年に開業のベイスイート(5階建て、同約1万800平方メートル)の二つの建物がある。 近鉄系列のホテルチェーン「都ホテル&リゾーツ」の国際観光ホテルだ。
クラシックは、本館が木造建築、創業当時のものである。故・山崎豊子さん原作の小説「華麗なる一族」の舞台になったことで知られている。大宴会場「真珠」では主要会合が行われる予定だ。2015年5月から、耐震補強工事と客室の改装のために来春まで休館中である。
ベイスイートは全50室がスイートルームで各国首脳の宿泊施設となる予定だ。志摩観光ホテルには、天皇陛下は皇太子時代を含めて5回も宿泊している。



*志摩観光ホテル・クラシック(左)、志摩観光ホテル・ベイスイート(右)は首脳会合場や首脳等の宿泊施設になる予定(出典 都ホテル&リゾート)


*志摩観光ホテルクラシック 耐震補強・改装工事のために、2015年5月から2016年春まで休館
(出典 都ホテル&リゾート)



*賢島宝生苑 賢島島内にある大型ホテル サミット事務局、各国事務局、サブ・メディア・センター、サミット議長会見場が設置される。各国随行員ホテル等での利用も想定される(出典 賢島宝生苑)


*伊勢志摩ロイヤルホテル 各国首脳会見場が複数設置される。各国随行員ホテル、事務局等での利用も想定される。(出典 志摩市観光協会 ホームページ


G7エルマウ・サミット (出典 G7 Germany Webpage) 伊勢志摩サミットでは英虞湾を背景に撮影

伊勢志摩サミット 国際メディアセンター(IMC)は三重県営サンアリーナに設置

  2015年9月8日、外務省は、伊勢志摩サミットの国際メディアセンター(IMC)を、伊勢市朝熊町の県営サンアリーナに設置すると発表した。
 サンアリーナは延床面積約2万4000平方メートルの三階建て施設。延床面積約1万4000平方メートルのメインアリーナと約4900平方メートルのサブアリーナやトレーニングルーム、会議室などの施設が整備されている。
この他に隣接する駐車場に、IMCのアネックス、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの仮設増設棟を建設した。外観は伊勢の街並みの黒壁など、地元の伝統的なデザインを取り入れ、木の丸柱に囲まれた通路などを設置し、「和」を感じさせる建物で、事業費は約28億5000億円。 日本の先端技術、伝統文化を発信する展示スペースや、メディア用の食事の提供スペースも設けた。このアネックスはサミット終了後、数日間一般公開をした後、約3億円かけて取り壊される予定である。
 国際メディアセンター(IMC)は、世界各国から訪れる新聞、雑誌、通信社、そして放送機関などのメディアの取材・編集拠点、約4000人のメディアの参加を見込んでいる。国際メディアセンター(IMC)には、専用ワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース(約1020席 2個所)や共用ブリーフィング・ルーム(2か所)、インフォーメーション&ITヘルプデスク、IMCシャトルバス・インフォーメーション、外務省報道官室(外務省事務局)(アネックス)、展示スペース(アネックス)、プレス用レストラン(アネックス)、そして放送機関用の国際放送センター(IBC)が設置される。施設内には、CCTV(館内共聴テレビ)で、G7サミットの様子やイベント・スケジュール、各種案内が放送され、高速のWifi環境も整備された。
 国際放送センター(IBC)は、世界各国の放送機関向けに設置される施設で、首脳会合や議長会見、各国首脳会会見、関連イベントなどの映像・音声のホスト信号が配信される。映像・音声信号を調整、監視、分配するマスター・コントロール・ルーム、IBCブッキング・オフイス、共用編集室、音声ルーム、IP伝送サービスコーナーなどが設置される。  また各放送機関専用のワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース、記者リポポジションも整備された。映像・音声メディア機関の拠点が国際メディアセンター(IBC)である。
 国際放送センター(IBC)の施設は、サンアリーナだけなく、賢島内にある賢島宝生苑にサブメディアセンター1(SMC1)と議長国首脳会見場、志摩市の伊勢志摩ロイヤルホテルにサブメディアセンター2(SMC2)(各国首脳会見場)が設置された。
SMC1は、賢島内で取材活動をするメディアの拠点で、志摩観光ホテル・クラシックや志摩観光ホテル・ベイスイートで行われたG7首脳会合やワーキング・デイナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合などのENG取材映像(代表取材)の伝送ポイントが設営されと共に、賢島内で取材活動を行う記者やカメラマンの待機場所となった。ENG伝送については、Japanプールは10回、米国プールは3回、ドイツプールは2回、EUは1回の伝送を行った。また、サミットの総括を行う議長国首脳会見場も設置された。
SMC2には、各国首脳会見場、3カ所が伊勢志摩ロイヤルホテル内に整備された。
国際放送センター(IBC)の設置・運営業務やホストブロードキャスター業務は、請負事業者を公募したが応募したのがNHKだけだった。NHKは、外務省と随意契約協議を行い、約7億3400万円で外務省から業務を受託した。



エルマウ サミット ドイツ G7 2015  G7 Germany2015 Schloss Elmau

北海道洞爺湖サミット(2008年) 国際放送センター(IBC)

伊勢志摩サミット 閣僚会合 全国10か所で開催

 2015年7月3日、菅義偉官房長官は記者会見で、伊勢志摩サミット関係閣僚会合について、科学技術大臣会合をつくば市、情報通信関係大臣会合を高松市、教育大臣会合を倉敷市、保健大臣会合を神戸市、農業大臣会合を新潟市、エネルギー大臣会合を北九州市、交通大臣会合を軽井沢町、環境大臣会合を富山市でそれぞれ開催すると発表した。
 すでに公表されている外務大臣会合(広島市)、財務大臣会合・中央銀行総裁会議(仙台市)を含めて、あわせて10会合の開催地がすべて決まった。 
 閣僚会合の開催地を決めるにあたっては、国際社会が直面する様々な課題や、「地方創生」の観点を踏まえたとしている。
 全国各地でできるだけ多くの会合を、各地域の特色を活かして、開催することで、安倍政権の看板政策である「地方創生」を強調する狙いが込められた“開催地選定”となった。
 それぞれの開催地選定のポイントとして、神戸市は、「阪神大震災からの復興と最先端医療の拠点」、つくば市は「世界で最先端の科学技術研究都市」、高松市は「情報通信を利用した遠隔地医療ネットワークの全国初の全県導入」、倉敷市は「江戸時代からの伝統的建造物や街並み、教育・文化を核にした街づくり」、新潟市は「農業特区の先進県、和食文化とおもてなし」、北九州市は「八幡製鉄所と最先端のエネルギー政策実証実験都市」、富山市は「環境モデル都市の推進、国連環境計画の事務所設置」、軽井沢町は「新幹線の開通と交通の利便性、国際的なリゾート地」を挙げている。
この他、仙台市は、「東日本大震災からの復興」、会合場は東北の名湯、秋湯温泉の温泉ホテルだ。広島市は「被爆地 平和と核廃絶」、会合場は瀬戸内海に面した宇品島のホテルである。
 首脳会合が開催される伊勢志摩を念頭に入れた上で、閣僚会合の開催地は、全国各地の地域バランスにも配慮した選定結果となった。九州地方からは北九州市、中国地方からは広島市と倉敷市、四国地方からは高松市、関西地方からは神戸市、日本海側からは富山市と新潟市、関東地方からつくば市、東北地方からは仙台市が選ばれた。
 札幌市は閣僚会合の開催地として立候補していたが選ばれず、唯一、北海道地方での伊勢志摩サミット関連会合の開催はない。
 今回の開催地の選定で注目されるのは、高松市(情報通信関係大臣会合)、倉敷市(教育大臣会合)、北九州市(エネルギー大臣会合)、富山市(環境大臣会合)で、安倍政権の伊勢志摩サミットにかける“意欲”が伺える。
 閣僚会合の会場は、各開催都市にある国際会議場や国際ホテルを使用する。
 科学技術大臣会合(つくば市)は「つくば国際会議場」、情報通信会合(高松市)は「香川国際会議場」、農業大臣会合(新潟市)は「朱鷺メッセ」が会場となる。
  一方、保健大臣会合(神戸市)や「神戸ポートピアホテル」、エネルギー大臣会合(北九州市)は「リーガロイヤル小倉」、外務大臣会合は「グランドプリンスホテル広島」、教育大臣会合(倉敷市)は「倉敷アイビースクエア」と大型国際ホテルなどを会場とした。
 ユニークなのは、財務大臣・中央銀行総裁会議で秋保温泉の「ホテル勘助」、温泉地のホテルで開催される。年明け早々、中国経済の先行き不安と原油安で世界同時株安に見舞われた2016年、温泉でくつろぎながら各国の叡智を集めて、世界経済の安定に向けて有意義な会合になるように期待したい。



NHKニュース 2015年7月3日


外務省 伊勢志摩サミット 閣僚会議

広島外相会合 G7外相平和公園訪問が実現
  伊勢志摩サミットの閣僚会合の中で、最も重要な会合でトップを切って開催されたのはG7外相会合である。
 4月10日と11日、G7外相会合は被爆地、広島市で開催された。広島市は首脳会合の開催地としも立候補していた。
 会合場は瀬戸内海に面した宇品島にあるグランドプリンスホテル広島で行われ、国際プレスセンター(IMC)や国際放送センター(IBC)は広島国際会議場に設営された。
広島外相会合で世界中のメディアから最も注目されたのは「広島宣言」や共同声明でもなく、核保有国の米英仏を含むG7外相がそろって平和記念公園を訪れ、原爆平和記念資料館や原爆ドーム視察し、原爆慰霊碑に献花したことであった。G7の核保有国の外相が平和記念公園を訪れるのは初めて、とりわけ原爆を投下した米国の現職の国務長官が参加する意義は大きい。
 広島外相会合の開催が決まると、討議の内容もさることながらG7外相の平和記念公園を訪問が実現するかどうかが最大の焦点になった。
 広島市にG7外相が訪れる以上、原爆死没者慰霊碑がある平和記念公園を訪問するのは「自然の流れ」で地元では「当然」と受け止めていた。
 しかし、核保有国の米英仏が応じるかは微妙な情勢といわれていて、とりわけ原爆投下国の米国の動向が注目されていた。
 仮に、G7外相の平和記念公園を訪問がなんらかの形でも実現しなければ、広島外相会合開催の意義がなくなる懸念が生まれていた。
 さらに政府は、核軍縮への今後の方向をまとめた「広島宣言」を発表するため各国と調整を続けており、「核兵器の非人道性」など日本の主張をどこまで盛り込めるかが注目されていた。
 次は、伊勢志摩を訪れるオバマ大統領の平和記念公園の訪問が実現するかが
最大の焦点になった。
 ワシントンで開催された核セキュリティサミットの流れを引き継ぎ、伊勢志摩サミットで日本がリーダーシップをとって停滞している核軍縮・不拡散への取り組みをさらに前進させる契機にして欲しいと期待が集まった。



原爆死没者慰霊碑に献花したG7外相

広島宣言を採択して閉幕
 5月末に開催される伊勢志摩サミット前に、広島市で開かれていたG7外相会合は2日間の日程を終えて閉幕した。
 11日午後、岸田外務大臣が記者会見し、共同声明と注目されていた「広島宣言」を発表した。
 「広島宣言」は、G7外相会合が被爆地・広島で開催されたことから、外相会合として初めて核軍縮・不拡散に特化した独立文書としてまとめられて、原爆投下を「極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難」と表現し、世界の政治指導者に被爆地の広島や長崎への訪問を促すし核軍縮の必要性を訴えた。
 核兵器自体に対して「非人道性」という指摘を避け、原爆投下の被害を「非人間的」と記述して、核保有国の米英仏との合意に持ち込んだものと見られる。核の抑止力で世界秩序の維持を掲げ核の保有を正当化する米英仏は、核兵器自体を「非人道的」とすることはできないのである。
 また、核兵器の保有の実態を明らかにしていない中国を念頭に置き、「核兵器保有の透明性を向上させたG7の核保有国の努力を歓迎する」としたうえで、に、「他国にも同様の行動を求める」とし透明の向上を求めている。
 共同声明では、欧州で頻発するテロの深刻化を受けて、「テロ・暴力的過激主義対策」を全面に出した内容となった。テロを「全世界的な喫緊の安全保障の脅威」として、テロへの具体的な対抗策を盛り込んだ「G7テロ対策行動計画」を伊勢志摩サミットで採択することなどを盛り込んでいる。
岸田外相は記者会見で、「G7各国外相が平和記念公園を訪れたことと合わせて、国際社会で核なき世界を作っていく機運を再び盛り上げる歴史的な一歩になった」とG7広島会合の成果を述べた。
 核軍縮・核不拡散に向けて初めて独立文書を採択した点は評価できる。しかし、核廃絶に向けて、核保有国と非核保有国が一致して一歩前進できたかだどうかは「広島宣言」からは読みとれない。被爆地・広島の人々の願いは、やはり核廃絶であろう。


伊勢志摩サミットはこうして決まった!
▼ 8つの自治体が開催地に“名乗り”
 2015年4月1日、菅官房長官は記者会見で、来年日本で開かれるサミット=主要国首脳会議の開催地について、現在、名乗りを上げている8つの自治体のなかから選ばれることになるという見通しを述べた。「いずれにしてもドイツで行われる、ことしのサミットに安倍総理大臣が行く前までには決定するということだ」とした。
 サミット=主要国首脳会議は2016年、8年ぶりに日本で開かれることになっており、これまでに開催地として仙台市、新潟市、長野県軽井沢町、浜松市、名古屋市、三重県、神戸市、広島市の8つの自治体が名乗りを上げている。この内、三重県は、当初は関係閣僚会合の開催地として、今年1月に最後に立候補したが、その後、「首相サイドの働き掛けで」(時事通信 4月1日)首脳会合の開催地(賢島)に切り替えたと伝えられている。


■ 2016年サミットの候補地

出典 NTV News Zero 2016年、サミットはどこで?  2015年4月13日

▼ 開催地選定のポイント “警備”と“保養地”
 首脳会合の開催地の選定で、ここ数年、重要視するのは“警備”のしやすさ。
 反グローバルリズムの抗議デモによる混乱や、テロなど不測の事態の対処が課題である
 北海道洞爺湖サミットでは、反グローバルリズムを唱える団体が、札幌市や洞爺湖町周辺に次々と集まり、サミット抗議活動を行った。7月5日には,札幌市内で行った「ピースウォーク」には、海外の団体も加わり、約2,000人が参加したという。
札幌市内と首脳会合が開かれた洞爺湖ウインザーホテルとは、かなり距離があり、会場付近はまったく混乱がなかった。
 また最近、世界各地で相次いで起きているイスラム過激派組織のテロの目標にされることも懸念されている。
 複数のメディアは、警察庁が警備上の観点から、開催地として三重県・賢島か長野県軽井沢町が望ましいとの報告を上げたと伝えている。
 軽井沢町は、首脳会合開催の誘致活動にいち早く熱心に取り組んで、他の候補地に先行していて、“本命”視されていた。皇室の静養地でVIPの訪問が多く、警備で実績があることや、保養地として高い評価を得ていたことがその背景にある。ただ、なぜ軽井沢かという理由づけが難しいとされていた。
 最近のサミットは、豊かな自然環境に囲まれた“保養地(リトリート)”を各国は好んで開催地に選んでいる。安倍首相も「美しき日本」を世界に熱心にアピールしていることも見逃せない。
 今年の6月7日と8日にドイツが議長国で開催するサミットは、オーストリアとの国境に近いアルプス山麓にあるエマウル城が舞台となる。
 こうした観点で誘致をした8つの候補地を見ると、長野県軽井沢と三重県賢島が“有利”だとされていた。
 また「交通の便」の良さや、宿泊施設が十分に確保できるかどうかなども評価のポイントとなる。
 さらに、今回の開催地選定にあったって政府首脳が繰り返し強調していたのが、“メッセージ性”である。首脳会合の開催地に政治的なメッセージを込め、国際社会に向けてG7サミットの開催の意義を発信しようとするものである。
 単に、豊かな自然環境に囲まれた“保養地(リトリート)”とか、警備がしやすいだけでは要件を満たさないとされていた。

■サミット候補地の“メッセージ性”
仙台市       東日本大震災からの“復興” 防災・減災を発信
新潟市       米や日本酒 和食のもてなし文化
長野県軽井沢町 世界的なリゾート地
浜松市       世界文化遺産富士山 徳川家康ゆかりの地・歴史と文化
名古屋市     交通の利便性 国際会議の開催実績
三重県志摩市  伊勢神宮の歴史、伝統文化と自然景観や食
神戸市       国際貿易都市 阪神大震災20年の“復興”による防災・減災都市
広島市       被爆地 平和と核廃絶


▼ “急浮上”した三重県・賢島
  三重県・賢島は、英虞湾に浮かぶ景勝地。海に囲まれて、本土側からは橋以外に交通手段がなく、警備上の観点で評価が高いという。北海道洞爺湖サミットの首脳会合の会場となったウインザーホテル洞爺は、洞爺湖を見渡す山頂に建ち、麓から登る道路は1本しかないという“警備”上の観点からはまたとない立地条件だった。
 また伊勢神宮も付近にあることもあって、三重県は「伊勢志摩サミット」として、自然だけでなく日本の伝統文化もアピールできるとして、有力な開催地として“急浮上”しているという。
 これに対して、仙台市は「東日本大震災からの復興」、国連世界防災会議の成功がアピールのポイントだ。しかし、大型国際ホテルが少なく、首脳会合を開催地としては宿泊施設の確保に懸念があるとされていた。
 阪神大震災から20年を迎えた“震災復興”を掲げる神戸市は、市街地であり要人警護などの交通規制など市民生活への影響が大きくなるのが懸念材料だ。“豊かな自然環境”という点では、賢島や軽井沢には一歩及ばないと思える。
また広島市は「被爆地・平和と核兵器廃絶」、オバマ米大統領の初訪問を呼び掛けている。“ヒロシマ”の持つ政治的“メッセージ性”は鮮明ではあるが、その“メッセージ性”にG7各国が納得するかにかかっている。


▼ 難航したサミット開催地の選定
 選定作業は、「警備のしやすさや話題性など、様々な要素が絡み合うだけに、一筋縄ではいきそうにない」(4月19日 讀賣新聞)という報道もされている。
 サミット開催地の選定にあたっては、「警備」が、最重要のポイント、その中で軽井沢町と伊勢志摩・賢島が“有力”と見られてきた。賢島は、人の出入りが規制しやすく、軽井沢町は皇室や要人がたびたび訪れていて、要人警護の経験が豊富だとされている。
 賢島については、「ただ、利便性で見ると、志摩市は首都圏から交通の便が悪く、『各国政府関係者の移動が困難』との声もある」(4月19日 読売新聞)とマイナス面を指摘する声もあったとされている。
自然豊かな保養地、警備のしやすさ、宿泊施設・交通の便という3要素を全て満たし、しかも“メッセージ性”が込められる候補地はなく、政府関係者は「どこも一長一短で決め手に欠く」と漏らしていたという。
 開催地の決定は、ドイツ・エルマウ・サミットに安倍総理が出発する日までギリギリまで延ばされた。
 最終的には安倍首相の判断で、賢島が2016G7首脳会合の開催地に選ばれたとされている。


▼ 伊勢志摩サミットを選択した安倍首相
 2015年6月5日夕方、安倍首相はウクライナとG7ドイツ・エルマウに出発したが、羽田空港で記者団に対し、来年のサミット開催地は、三重県志摩市賢島と決定したと表明した。「世界のリーダーたちに、日本の美しい自然と豊かな文化や伝統を肌で感じてもらいたい」と述べ、「伊勢・志摩サミット」とするとした。
 安倍首相の「日本の文化や伝統」を重視するという強い意向が感じられる。
 サミット開催地の発表は、前の年の首脳会合(ドイツ・エルマウ・サミット)で、次の議長国(日本)が各国首脳に正式に発表するのが慣例なっている。一方、サミット開催の準備には、会議場や施設の確保や通信・交通などのインフラ工事、警備体制などで最低1年以上の期間が必要とされている。
 開催地の決定をぎりぎりまで待って発表するというのは異例と言えるだろう。
「今回の選定作業は、安倍総理と菅官房長官らの間で極秘裏に進められた。5日、総理に会った政府与党幹部の一人は、発表を控え気合の入った様子に驚いたと語るなど、安倍政権として5日のサプライズ発表を演出するために相当力を入れていたことが伺える」(JNNニュース 2015年6月5日)と伝えている。



G7エルマウ・サミット ワーキング・ディナー (出典 G7 Germany Webpage)

伊勢志摩サミット 警備対策が最大の課題に
 2015年9月17日、政府は伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)準備会議の第2回会合を開き、「警備対策の基本方針」を決定し公表した。無人機「ドローン」によるテロやサイバーテロへの対策強化などを指摘している。政府主催の大規模国際会議に向けた警備対策の基本方針を公表するのは初めてとしている。
 基本方針では、各国首脳・要人の安全確保に加えて会議の円滑運営を目的としている。世界のサミットで多発する反グローバリズム勢力による暴動のほか、日本特有の極左・右翼集団によるテロ事件、重要インフラに対するサイバー攻撃などを想定。不審者の入国やテロ関連物資流入を防ぐ水際対策や、民間企業を含めた関連機関との連携強化も掲げた。
(参考 毎日新聞 2015年09月18日 東京朝刊)
 11月に発生したパリ同時多発テロが伊勢志摩サミットの警備対策強化を加速させている。
 テロの標的が警備の手薄ないわゆる「ソフトターゲット」向けられたことが衝撃を与えている。サミット開催地周辺や政府機関、空港だけでなく、国内各地の市民が集まる繁華街や広場、スタジアム、商業施設などの警備をどうするかが課題になっている。


伊勢志摩サミット サイバー攻撃 2016年サミットは格好の標的に テロの主戦場は“サイバー空間”
 国際政治の晴れ舞台、2016年伊勢志摩サミットや2020年東京オリンピック・パラリンピックはサイバー攻撃の恰好の標的になると思われる。攻撃者にとってのデモンストレーション効果は極めて大きい。
 日本年金機構が“サイバー攻撃”を受け、国民年金や厚生年金などの加入者と受給者の個人情報、約125万件が外部に流出した事件は、改めて、高度化したネットワーク社会の“危うさ”を露呈した。
“世界最高水準のICT”をキーワードに日本は、今、一斉に動き出している。超高速ブロードバンドやワイヤレスブロードバンド(5G・WiFi)、さらに4K、8Kの高繊細放送も実施して、“世界で最高水準”の「ICT立国”を目指そうとする計画である。2020年東京オリンピック・パラリンピックがターゲットだ。
  こうした中で、“サイバー攻撃”をどう撃退していくのか、日本の最大の課題である。2016年サミットは、その“前哨戦”だろう。
 「ICT立国」を掲げるなら「サイバーセキュリティ立国」を同時に掲げなければならいことを忘れてはならない。

2015年6月17日

伊勢志摩サミット サイバー攻撃 2016年サミットは格好の標的に” テロの主戦場は“サイバー空間

伊勢志摩サミットの開催経費は?
 伊勢志摩サミット開催に要する予算総額が約600億円に上り、うち警備関連費が約340億円になる見通しだとされている。前回2008年の北海道洞爺湖サミットとほぼ同水準だが、政府筋によると、国際会議開催に関しては、既存の資機材やノウハウを活用できるため前回より減額されるのが通例で、総額、警備費の水準維持は実質的な増額に当たるという。 (毎日新聞 2015年11月24日)
パリ同時多発テロ後の緊迫した情勢の中で、セキュリティ対策で、情報収集強化や警備態勢に万全を期すためだとしている。
 しかし、全体のサミット関連の予算の執行にあたっては経費節約に最大限努力をしなければならない。サミットで整備される施設が利用されるのは、首脳会合で約3日、閣僚会合(10か所)では約2日程度で、会議が終了したらすべて撤去する施設であることを忘れてはならない。
過去のサミット開催では不祥事も発生したり、民主党政権時代には「事業仕分け」でサミット開催経費の無駄遣いが指摘されたりした。
 サミットやオリンピックなどの国家的イベントの予算管理は往々にして“甘え”が生まれる。建設費を巡って“迷走”を繰り返した新国立競技場の失態を忘れてはならない。約340億円とされる警備費も聖域ではない。
 すべてのサミット開催経費には透明性、説明性を徹底する必要があるだろう。


伊勢志摩サミットの経済効果、開催後5年間で1110億円
 百五銀行のシンクタンク、百五経済研究所は、外国人観光客数の増加や国際会議開催件数の増加などで、三重県内の経済効果は、開催後の5年間で約1110億円に上るとの試算を発表している。
 試算では、外国人観光客の宿泊者数は2014年に比べ5倍の年90万人になると想定。観光消費額は131億円増え、外国人観光客の増加による経済効果は年185億円とした。
 そして三重県の国際会議開催件数は2009~2013年の5年間の平均で2.6回と低水準だが、サミット後は、数百人規模の国際会議が年30回開催されるとし、その効果を37億円とした。
以上を合計すると年222億円の経済効果があり、5年間で1110億円になると試算した。
 さらに国内観光客数の増加による経済効果も試算。県外からの観光客数が年240万人増え、その経済効果は年495億円になり、開催後1~2年は持続すると試算した。
 また同研究所では、運営事業費などによるサミットの直接的な経済効果が全国で510億円あり、このうち三重県内は130億円に上るとの試算も発表している。
 しかし、北海道洞爺湖サミットの開催地洞爺湖地域を見ると、サミット開催後5年間も観光客の増加など波及効果が持続すると想定するのは現実的ではなさそうである。伊勢志摩地域で、持続的な波及効果を得るには、相当の努力が必須だろう。サミット開催の経済効果が“夢物語”にしないためにも……。


「伊勢志摩サミット」で何をアピールするのか?
  安倍首相は、伊勢志摩サミット決める際に、「世界のリーダーたちに、日本の美しい自然と豊かな文化や伝統を肌で感じてもらいたい」と述べ、「日本の文化や伝統」を重視したいという強い意向を示した。
 すぐに連想されるのは、伊勢志摩の風光明媚な自然や伊勢神宮、伊勢海老などの海の幸の和食だろう。
 しかし、2016年、日本がG7首脳にアピールしなければならないのは、次世代の日本の成長戦略のカギを握るICTやIOT、人工知能AI、第五世代移動通信システム5G、そして4K/8Kの超高精細映像技術などだろう。G7首脳が一堂に会するサミットは日本の先端技術をアピールする格好のショールームだろう。


暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か
5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ


サミットの“ジンクス”
  サミット開催には、最近、奇妙な“ジンクス”がある。
 2000年の九州・沖縄サミットは、開催地に選定した小渕恵三首相が、病に倒れ、森喜朗首相が議長役を務めた。
 2008年の北海道洞爺湖サミットでは、開催地に決めたのは安倍晋三首相(第1次政権)、しかし、「健康問題」で退陣し、福田康夫首相が議長役を果たした。サミット開催地を決めた首相と議長役を務めた首相は違っていたのである。
また、サミットの議長役を務めた首相は、いずれも1年以内に退陣している。
 安倍首相は7月の参院選前に、消費増税をどうするのかを決定するとした。一気に政局の季節に突入する。
 果たして安倍首相は国際政治での晴れ舞台で「サミット議長」という大役を確実に果たし、日本のプレゼンスを世界に示すことに成功したのだろうか。伊勢志摩サミットの開催経費は600億円、“実り豊かな”サミットになったといえるのだろうか。オバマ大統領の“広島訪問”にすっかり主役の座を奪われた気がするのは言い過ぎだろうか。





国際メディアサービスシステム研究所




2016年8月1日改訂
Copyright (C) 2016 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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G7広島外相会合 原爆慰霊碑 ケリー国務長官 広島宣言 最新情報  伊勢志摩サミット

2023年04月24日 21時26分15秒 | G7伊勢志摩サミット
G7伊勢志摩サミット広島外相会合開催
~ケリー米国務長官 原爆慰霊碑に献花~




出典 広島外相会合支援推進協議会 ホームページ

G7伊勢志摩サミットの成果は? 存在感を示せなかった安倍首相


 2016年は伊勢志摩サミット開催の年である。5月26日と27日に三重県の賢島で開催される。日本でG7主要国首脳会議が開かれるのは、2008年の北海道洞爺湖サミット以来、8年ぶりである。前回のサミットでは、安倍首相は直前に退陣し、議長を務めたのは福田首相(当時)だった。
 初めて、国際政治の“晴れ舞台”、G7サミットの議長を務める安倍首相は、G7各国の中で、いかにリーダーシップを発揮し存在感を示すか、真価が問われることになる。
 伊勢志摩サミットの閣僚会合の中で、最も重要な会合の一つは、外相会合である。首脳会合に向けて、国際情勢の課題を外相間で議論を行い首脳会合の“地ならし”をする重要な会合だ。4月10日と11日に広島で開催される。
 ベルギーの連続爆弾テロ事件から間もない時期の国際会議の開催とあって、広島は厳戒態勢に包まれている。
 政府はG7外相会合の開催地として被爆地、広島市を選んだ。伊勢志摩サミット開催にあたって、平和と核廃絶のメッセージ性をアピールするのがその狙いだろう。広島市は首脳会合の開催地としても立候補していた。
 広島外相会合に参加するのは、ジョン・ケリー米国国務長官,パオロ・ジェンティローニ・イタリア外務・国際協力大臣,フィリップ・ハモンド英国外務英連邦大臣,ステファン・ディオン・カナダ外務大臣,フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー・ドイツ連邦外務大臣,ジャン=マルク・エロー・フランス外務・国際開発大臣及びフェデリカ・モゲリーニEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員。
 議題はテロ・暴力的過激主義,難民問題,軍縮・不拡散,海洋安全保障等の国際社会が直面する喫緊の課題や,北朝鮮,中東,ウクライナといった地域情勢が取り上げられる。
 4月10日午後から、グランドプリンスホテル広島で全体会合が始まり、過激派組織「イスラム国」(IS)などのテロ対策や暴力的過激主義や難民対策を議論、各国が連携を強めることで一致した。シリア、イラク、アフガニスタン、イラン、リビアなどの情勢についても議論を繰り広げた。議長の岸田外相は「価値を共有するG7の間で率直で予定の時間を大幅に超える白熱した議論が行われた」と述べている。
 しかし、ドイツのシュタインマイヤー外務大臣は機体のトラブルで到着が遅れ、初日のセッションは欠席した。
 夕方は、宮島の世界遺産・厳島神社を訪問し、舞楽(舞を伴う雅楽)を鑑賞した。その後宮島でワーキング・ディナーを開き核実験や弾道ミサイル発射など挑発を繰り返す北朝鮮の問題や、南シナ海での中国の海洋進出問題などについて意見を交わした。到着が遅れていたドイツのシュタインマイヤー外相はワーキング・ディナーから合流した。
 4月11日午前は、核軍縮・不拡散問題やウクライナ情勢を協議。午前11前、原爆投下国である米国のケリー国務長官をはじめ、核保有国の英仏を含むG7外相が広島市の平和記念公園を訪問し、広島平和記念資料館(原爆資料館)を訪れ、原爆死没者慰霊碑に献花した。G7の核保有国の現職外相が同公園を訪れるのは初めてで、被爆地、広島外相会合の中で、最も注目される象徴的なイベントだ。ケリー国務長官が献花をした際に、“おじぎ”をしなかっった点について、昼に行われた外務省のブリーフィングで、ドイツの記者から、その理由について質問が出たが、川村泰久報道管は、「ケリー国務長官に直接聞いて欲しい」としてコメントを避けた。隣にいた岸田外相が深々と礼をしていたのに対し、ケリー国務長官の直立の姿勢は、単に日米の献花のマナーの違いだったのだろうか、それとも他に何か理由があったのだろうか、筆者も気になった。
 原爆死没者慰霊碑に献花の後に、ケリー国務長官の提案で予定になかった原爆ドームも訪れた。ケリー国務長官の被爆地・広島訪問に対する積極姿勢がうかがえる。

広島宣言を採択して閉幕

 5月末に開催される伊勢志摩サミット前に、広島市で開かれていたG7外相会合は2日間の日程を終えて閉幕した。
 11日午後、岸田外務大臣が記者会見し、共同声明と注目されていた「広島宣言」を発表した。
 「広島宣言」は、G7外相会合が被爆地・広島で開催されたことから、外相会合として初めて核軍縮・不拡散に特化した独立文書としてまとめられて、原爆投下を「極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難」と表現し、世界の政治指導者に被爆地の広島や長崎への訪問を促すし核軍縮の必要性を訴えた。
 核兵器自体に対して「非人道性」という指摘を避け、原爆投下の被害を「非人間的」と記述して、核保有国の米英仏との合意に持ち込んだものと見られる。核の抑止力で世界秩序の維持を掲げ核の保有を正当化する米英仏は、核兵器自体を「非人道的」とすることはできないのである。
 また、核兵器の保有の実態を明らかにしていない中国を念頭に置き、「核兵器保有の透明性を向上させたG7の核保有国の努力を歓迎する」としたうえで、に、「他国にも同様の行動を求める」とし透明性の向上を求めている。
 共同声明では、欧州で頻発するテロの深刻化を受けて、「テロ・暴力的過激主義対策」を全面に出した内容となった。テロを「全世界的な喫緊の安全保障の脅威」として、テロへの具体的な対抗策を盛り込んだ「G7テロ対策行動計画」を伊勢志摩サミットで採択することなどを盛り込んでいる。
岸田外相は記者会見で、「G7各国外相が平和記念公園を訪れたことと合わせて、国際社会で核なき世界を作っていく機運を再び盛り上げる歴史的な一歩になった」とG7広島会合の成果を述べた。
 核軍縮・核不拡散に向けて初めて独立文書を採択した点は評価できる。しかし、核廃絶に向けて、核保有国と非核保有国が一致して一歩前進できたかだどうかは「広島宣言」からは読みとれない。被爆地・広島の人々の願いは、やはり核廃絶であろう。



外相会合 セッション1


岸田外相とケリー国務長官

ケリー米国務長官、広島初訪問に「感極まった」

 平和記念公園を米国務長官として初めて訪れたジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は報道陣に「衝撃を受けた」と語った。
 ケリー国務長官は、平和記念公園を初めて訪れた米国務長官となったことについて「非常に大きな名誉だと感じたとともに、感極まるものだったことを個人レベルで表明したい」と述べた。また、平和記念資料館(原爆資料館)について「驚異的」で「人間としてのすべての感受性を揺さぶられる衝撃的な展示だった」と語った。さらに今回、広島を訪問したことでどんなメッセージを発信したいかと尋ねられると「すべての人が広島を訪れるべきだ」と述べた 原爆資料館では、ケリー長官は芳名帳に「世界中の全ての人がこの資料館を見て、その力を感じるべきだ」と記入。「この資料館は、われわれに核兵器の脅威を終わらせる責務だけでなく、戦争そのものを避けるため全力を注ぐ義務があることをあからさまに、厳しく、切実に思い出させる。戦争は、最後の手段でなければならない。決して最初の選択肢であってはならない」などと記した。


「謝罪はしない」と米国務省高官
 ただ、被爆地訪問に先立ちケリー長官は10日、岸田文雄(Fumio Kishida)外相との会談で「今回の訪問は、過去についてのものではない。現在と未来のためだ」と語った。
 一方、ケリー長官に同行している国務省高官は同日夜、第2次世界大戦(World War II)中に約14万人が犠牲となった米軍による広島への原爆投下についてケリー長官が公式に謝罪することはないと発言。「国務長官の広島訪問は謝罪のためかと聞かれれば、答えは『ノー』だ」と記者団に述べた。(。(AFP=時事/AFP BB NEWS 4月11日)



原爆死没者慰霊碑に献花するG7外相(4月11日 午前12時前


原爆死没者慰霊碑に献花するG7外相(4月11日 午前12時前)


ホストブロードキャスター(NHK)は原爆死没者慰霊碑に献花するG7外相の様子を生中継、IBCで各メディアに配信した(4月11日 午前12時前)


原爆死没者慰霊碑(4月11日 午前10時)


厳島神社を訪問


舞楽の鑑賞(厳島神社)

実現したG7外相平和公園訪問

 G7の核保有国の米英仏の外相が平和記念公園を訪れるのは初めてである。とりわけ原爆を投下した米国の現職の国務長官が参加する意義は大きい。米国内では、未だに原爆の投下は戦争終結を早めたとして原爆投下を正当化する世論が根強い。“広島訪問は原爆投下の「謝罪」”と受け止めて反発する意見も多くこれまで実現しなかった。
 広島外相会合の焦点は、アジェンダや共同声明の内容はさることながら、G7外相の平和記念公園を訪問問題が最大の焦点になっていた。
 広島市にG7外相が訪れる以上、原爆死没者慰霊碑がある平和記念公園を訪問するのは「自然の流れ」で、地元では「当然」と受け止めていた。
 しかし、核保有国の米英仏が応じるかは微妙な情勢だとされ、とりわけ原爆投下国の米国の動向が注目されていた。
 仮に、G7外相の平和記念公園を訪問がなんらかの形でも実現しなければ、広島外相会合開催の意義がなくなるという懸念が指摘されていた。
 G7外相平和公園訪問が実現して岸田外相や外務省は胸をなでおろしているだろう。
 政府は、外相会合の共同声明とは別に、核軍縮への今後の取り組みの方向をまとめた「広島宣言」を発表したいとしている。「核兵器の非人道性」など日本の核廃絶に向けた主張をどこまで盛り込めるかが注目される。
 オバマ米大統領が主導してワシントンで開催された核セキュリティサミットでは、核物質がテロリストに渡らないよう国際社会が管理を強化するとした共同宣言を採択した。核テロ防止のために核不拡散を徹底しようとするもので、「イスラム国」(IS)や北朝鮮を念頭に置いた内容とされている。核保有国も核テロ防止であれば合意は容易である。しかし、核廃絶へ向けた議論までは至らなかった。米英仏という核保有国と非核保有国が一致して、核廃絶へ向けた力強いメッセージを打ち出せるかどうか、議長国日本の手腕が問われている。
 次は、伊勢志摩を訪れるオバマ大統領の平和記念公園の訪問が実現するかが焦点になってきた。
 2009年4月5日、オバマ大統領は、チェコの首都プラハ・フラチャニ広場で演説し、核保有国のアメリカが核兵器廃絶の先頭に立つことを宣言した。いわゆる核廃絶宣言である。この歴史的な演説と「核なき世界」に向けた姿勢が評価され、オバマ大統領はこの年のノーベル平和賞を受賞したのである。
 ワシントンで開催された核セキュリティサミットの流れを引き継ぎ、伊勢志摩サミットで日本がリーダーシップをとって停滞している核軍縮・不拡散への取り組みをさらに前進させる契機になることを期待したい。


広島宣言「核の非人道性」盛らず 政府、保有国に配慮
 日本政府は、「広島宣言」に、日本が国際会議の決議案でたびたび主張してきた「核兵器の非人道性」を盛り込まず、「核兵器の使用が壊滅的結末を想起させる」との表現にとどめる方針を固めた。核保有国の米英仏に配慮した。
 「広島宣言は」外相会合の議長国・日本がとりまとめ、G7外相が「核兵器のない世界」を目指す意志を示すものとして11日に発表する。日本政府は従来、被爆国として「核兵器の非人道性」に言及して核軍縮を訴えており、宣言の表現は事実上の後退となる。
 日本政府が「核兵器の非人道性」への言及を断念したのは、昨年の核不拡散条約(NPT)再検討会議での議論が影響している。一部の非核保有国が「核の非人道性」を核兵器の法的禁止の必要性の根拠にし、米国など核保有国が強く反発した。日本が昨秋の国連総会で「核の非人道性」を強調する核廃絶決議を提案した際には、米英仏がそろって棄権した。
 米英仏を含むG7外相は、外相会合にあわせて平和記念公園を訪問することが予定され、オバマ米大統領の広島訪問も検討されている中で、日本政府は、宣言をめぐって議論が紛糾することを避ける判断をした。外務省幹部は「米英仏にとって『非人道性』は自国の安全保障に挑戦する急進派の代名詞になっており、説得は困難だ」と話してという。(出典 朝日新聞 4月8日)


広島宣言、外務省訳に異論 「非人間的な苦難」は意訳?
 主要7カ国(G7)広島外相会合で採択された「広島宣言」の文言を巡り、一部の核問題研究者やNGO関係者らが外務省が発表した日本語訳に疑問符をつけている。核兵器使用の被害の甚大さや核軍縮・不拡散を訴えた文書だが、核保有国を含む各国の立場を乗り越え、かつ被爆地の納得を得るため意訳したのではないかとの指摘だ。
 宣言では「広島及び長崎の人々は、原子爆弾投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験」とある。この「非人間的な苦難」の部分は採択した英文の正式文書の「human suffering」を訳したものだ。
 長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は「『非人間的苦難』と訳すのには無理がある」とツイート。NGO核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の川崎哲・国際運営委員も「広島の世論も考え、『非人間的』と強引に訳して、非人道ではないがそれに近い言葉を勝ち取った。深刻な誤訳」とブログに記した。
 様々な国際会議で通訳や翻訳を手がける「オフィス赤谷」の赤谷慶子社長は朝日新聞の取材に、「非人間的苦難」にあたる英文は「inhuman suffering」、または「inhumane suffering」とし、「今回は『人的苦痛』と訳すのが適切だ」と話す。ただ「直前に『甚大な壊滅』という強い言葉があるので、ぎりぎり許される意訳だ」とも述べた。
 政府はこれまで国際会議では、被爆国として核軍縮に向けて核兵器の「非人道的結末」に言及。「humanitarian consequences」との英文を使ってきた。核軍縮問題に携わったことがある外務省の元幹部は「米国らに配慮し、日本語のみ強い言葉を使いたかったのでは」と話す。
 外務省幹部は「より広く核の悲惨さを訴える意味で、『非人間的な苦難』と訳した」と説明している。

■広島宣言の本文
The people of Hiroshima and Nagasaki experienced immense devastation and human suffering as a consequence of the atomic bombings and have rebuilt their cities so impressively.

■外務省の訳
広島及び長崎の人々は、原子爆弾投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験し、そして自らの街をこれほどまでに目覚ましく復興させた。

■赤谷慶子さんの翻訳
原爆投下により、広島と長崎の人々は甚大な壊滅と人的苦痛を経験したが、自らの街をこれほど見事に復興させた
(出典 朝日新聞 4月13日)
 
 「核の非人道性」の表現のニュアンスをなんとか込められないかという思いが「非人間的な苦難」の役につながったのではないかと筆者は考える。「人的苦痛」という訳の方が自然だろう。核兵器を巡る米英仏の核保有国と議長国日本とのせめぎ合いを彷彿させる。


被爆地・広島訪問検討へ オバマ米大統領、伊勢志摩サミット参加後
 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は9日、オバマ米大統領の補佐官らが、オバマ氏が5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に参加後、被爆地広島を訪れる可能性について検討を始めたと報じた。広島滞在は数時間という。米政権高官の話としている。
 同高官は広島訪問が実現した場合、大統領就任直後の2009年に「核兵器なき世界」の実現を訴えた「プラハ演説」を思い起こさせるような演説を行う可能性があると示唆したという。
 同紙は、最終的な決断はまだされていないと指摘。現職大統領が被爆地を訪問すれば、原爆投下への謝罪と解釈されて米国内で批判にさらされ、今年11月の大統領選に影響が出るマイナス面もホワイトハウスは十分認識していると説明した。
 オバマ氏が09年に初訪日し天皇、皇后両陛下と面会した際、深々とお辞儀したことがやゆされ、後に共和党側から「謝罪をするために世界を回っている」と批判されたことにも触れた。(共同通信 4月10日)
 ケリー国務長官は、G7外相会合終了後の記者会見で、「いつか米大統領もその『すべて』の一人となり、ここに来られることを願っている」と語った。米国に帰国後、オバマ氏と会い、「ここで見たこと、そしていつか(オバマ氏が)訪問することがいかに重要かを確実に伝える」と述べ、オバマ大統領の広島訪問を促すとした。
 4月13日、ワシントンで行われたホワイトハウスのアーネスト大統領報道官は記者会見で、「初めての核兵器の使用によって犠牲者が出た街ほど、『核なき世界』を目指す上で象徴的であり、力強い場所はない」と述べ、5月26、27日に開催される伊勢志摩サミットに合わて、広島訪問を前向きに検討していることを明らかかにした。



原爆ドーム


原爆資料館

核軍縮及び不拡散に関するG7外相広島宣言(仮訳 外務省)
 2016年4月11日

 我々は,世界にかつてない恐怖をもたらした第二次世界大戦から71年を経て,我々が広島で会合することの重要性を強調する。広島及び長崎の人々は,原子爆弾投下による極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難という結末を経験し,そして自らの街をこれほどまでに目覚ましく復興させた。
 この歴史的会合において,我々は,国際社会の安定を推進する形で,全ての人にとりより安全な世界を追求し,核兵器のない世界に向けた環境を醸成するとのコミットメントを再確認する。この任務は,シリアやウクライナ,そしてとりわけ北朝鮮による度重なる挑発行為といった,多くの地域における悪化する安全保障環境によって一層複雑なものとなっている。
 我々は,EU3+3とイランとの間の包括的共同作業計画(JCPOA)の合意及び継続的な履行を歓迎する。これは,核兵器不拡散条約(NPT)が国際的な不拡散体制の礎石として強靱であることを示している。我々は,JCPOAが完全にかつ厳格に履行され,また,そのために国際原子力機関(IAEA)の検証活動が鍵となるとの決意を有している。
 我々は,全ての側面において,我々のNPTへの強いコミットメントを強調する。我々は,未だNPTの締約国となっていない国々に対し,遅滞なくかつ無条件で加入するよう求める。我々は,NPTの三本柱(不拡散,軍縮及び原子力の平和的利用)全てにわたり,その規定の完全な履行を強く支持する。我々は,IAEA及びその保障措置制度の中心的役割を再確認する。
 いかなる国も核兵器の実験的爆発を行うべきではなく,包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を達成すべく,全ての国は遅滞なくかつ無条件でCTBTに署名・批准すべきである。優先事項として,我々は,ジュネーブ軍縮会議に対し,核兵器又はその他の核爆発装置に用いるための核分裂性物質の生産を禁止する条約についての交渉を即時に開始するよう要請する。
 長年をかけて,核兵器国の核戦力は大幅に削減された。核兵器のない世界に向けた更なる進展は,単独であれ,二国間であれ,又は多国間であれ,我々が,国際安全保障を向上させつつ,断固とした,現実的な,そして漸進的なアプローチをとることのみにより達成できる。NPT第6条に従い,我々は,今後も世界規模での継続的な核兵器の削減に関する永続的かつ積極的な支持者であり,全ての国に対してそのような努力をするよう要請する。
 我々は,透明性を向上させたG7の核兵器国によりとられた努力を歓迎する。我々は,他国にも同様の 行動を求める。
我々は,全ての国家に対し,核兵器国と非核兵器国との間を含む,全ての国家間での核軍縮・不拡散に関する有意義な対話を促進することができる実践的かつ現実的なイニシアティブに関して我々と協働するよう求める。
 国家主体及び非国家主体への大量破壊兵器の拡散を阻止するため,機微な品目及び技術に関する各国の輸出管理を引き続き強化することは極めて重要である。全ての国は,国連安全保障理事会決議1540号を含む全ての関連の国連安保理決議を完全に履行しなければならない。我々は,全ての国に対し,国際的な輸出管理レジームのガイドラインに整合した形で輸出管理を執行することにより,不拡散という目標に貢献するよう呼びかける。
 我々は,2016年核セキュリティ・サミットの最終コミュニケ及びアクション・プランを積極的に実施し,本分野におけるIAEAの中心的役割を支持していく。
我々は,原子力の平和的利用にコミットし,引き続きIAEAと協力し,最高水準の不拡散,原子力安全及び核セキュリティを推進していく。
 何十年間にわたって,我々のような政治指導者やその他の訪問者が広島及び長崎を訪れ,深く心を揺さぶられてきた。我々は,他の人々が同様に訪問することを希望する。 我々は,核兵器は二度と使われてはならないという広島及び長崎の人々の心からの強い願いを共にしている。



G7広島外相会合場はグランドプリンスホテル広島
  G7外相会合や関連イベントは、広島の中心地から南へ約6キロ、瀬戸内海に面した宇品島にあるグランドプリンスホテル広島で行われる。
 宇品島は、瀬戸内海に面した“陸続きの島“、明治時代の開拓によって陸続きとなった。島内にはホテルやマリーナ、工場、倉庫などがあるが、島の西側の大部分が公園になっていて貴重な原生林も残っている。 広島市民の“緑のオアシス”ともいわれている



グランドプリンスホテル広島

広島国際会議場に設置される国際プレスセンター(IMC)や国際放送センター(IBC)

▼ 国際プレスセンター(IMC)
 国際プレスセンター(IMC)は平和記念公園内の広島国際会議場に設営される。
IMCには、G7各国プレスオフイスや記者会見場、共用ワーキングスペース(約240席)、ダイニングスペース、放送機関等が使用する国際放送センター(IBC)などが設置される。
共用ワーキングスペースでは,インターネット環境(有線、無線),コピー機等を配備される。

▼ 国際放送センター(IBC)
 国際放送センター(IBC)は放送機関や映像を配信する通信社やインターネットメディアのための施設で、国際メディアセンター(IMC)内に開設される。
ホスト映像の配信や,記者リポートポジションの設置、放送機関が独自に取材したユニー映像の自局への伝送サービスなどを行う。


G7広島外相会合の取材は?>
 広島外相会合の会議場の冒頭取材やファミリーフォトなどの関連イベントなどの公式行事は,警備上の理由等から、映像はホストブロードキャスター,写真はホストスチルカメラマン、そして外相会合参加国代表取材メディアによる代表取材となる。
広島外相会合で最も注目されている平和記念公園訪問や原爆死没者慰霊碑に献花は代表取材となるだろう。
ホスト映像は国際放送センター(IBC)で配信され、ホスト写真は画像提供クラウドサービスで公開され、各メディアに提供されるので利用可能だ。
 記者会見やG7各国外相の空港到着や出発は、各メディアは自由に映像や写真を撮影可能だ。


外務省広島外相会合 取材情報


広島国際会議場


広島国際会議場


共用プレスワーキングスペース(IMC/IBC)


国際放送センター(IBC)


ホスト映像の分配コーナー(IBC)


NHK、民放のSNG車(IBC)


出典 広島県警察





G7伊勢志摩サミットの成果は? 存在感を示せなかった安倍首相
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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2016年4月4日
Copyright (C) 2016IMSSR

******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************
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G20大阪サミット 安倍首相 真価が問われる 外交手腕 首脳宣言 成果 国際放送センター(IBC)

2023年04月24日 21時25分07秒 | G20大阪サミット

G20大阪サミット2019開催


G20大阪サミット開催 出典 首相官邸


G20大阪サミット 首脳記念写真 出典 外務省


G20大阪サミット 首脳記念写真 G20大坂サミット開催 出典 Youtube/PAGE


G20大阪サミット ファミリーフォト 出典 外務省





G20サミット1日目が終了 迎賓館で歓迎行事と夕食会が開かれる(2019年6月28日)



板門店で事実上の3回目の「電撃」米朝会談
 2019年6月30日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領は板門店の韓国側施設「自由の家」で、事実上の3回目の米朝首脳会談を行った。
 金委員長とトランプ大統領は板門店の南北軍事境界線上で握手した後、二人で軍事境界線を越えて北側に入った。トランプ氏は初めて北朝鮮に入った現職の米大統領となった。
韓国側に移動した2人に、文氏も合流し、3人で数分間立ち話をした。米国と韓国、北朝鮮の3カ国の首脳が同時に対面し、対話をするのは初めて。
その後、自由の家に入り、53分間にわたって二人だけで会談を行った。事実上の3回目の米朝首脳会談が行われたことになる。
 トランプ氏は会談後、ポンペオ国務長官主導の下、2~3週間以内に実務チームを構成し、非核化を巡る米朝交渉を進める考えを明らかにした。北朝鮮に対する制裁も交渉過程であり得ることも示唆し、金委員長にワシントンへ招待した。
 世界を驚かせた「電撃」米朝首脳会談、G20の成果はトランプ大統領の圧倒的なプレゼンスの陰に完全に隠れてしまった。


米朝首脳が電撃会談 非核化へ実務者協議再開を合意(19/06/30)(ANNニュース))



始めて対話をした米韓朝首脳  出典 韓国大統領府


トランプ大統領会見 習主席との会談「素晴らしい」 中国の関税引き上げはしない ファーウェイへの製品輸出容認 日米安保は不平等 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)氏と会う可能性
 2019年6月29日、G20大阪サミット終了後、トランプ大統領は記者会見に臨んだ。


出典 FOX News 2019年6月29日

 記者会見の骨子

▼ この後に韓国を訪問し、北朝鮮の金正恩氏と会うことになるかもしれない。北朝鮮も前向きなようなので、38度線を訪れるので、そこで会うことにかるかもしれない。これまで北朝鮮は核実験も長距離弾道ミサイルの実験も行わなかった。人質の解放もあり、とても良いことがたくさんおこっている。
▼ 日本は議長国として素晴らしい運営をした。
▼ 習近平国家主席とは、素晴らしい会談を持つことができた。夕食も習氏とともにした。とてもいい会合だった。
今後中国と貿易交渉を続け、新たな関税引き上げはしない。しかし、今の関税を下げることはしない。3500億ドル分の追加関税引き上げが可能だったが、発動はしない。そして中断していた貿易交渉を再開する。
▼ 米国対中国貿易収支の赤字は年間5000億ドル、歴代の大統領が放置していたことは責められるべきであろう。
▼ 中国は、米国から農産物の輸入を即座に再開する。農業関係者に聞いたら中国への輸出は最大で160億ドルもあると言っていた。農業関係者がこの措置で一番恩恵を受けるだろう。
▼ 日米安全保障条約を破棄することはない。「不平等な条約」といっているだけだ。
日本が攻撃されたら米国は戦う、米国が攻撃されたら日本は戦う必要がない。ばかげたデイールで、これは変えなければならないと言った。
▼ ファーウェイについては今後どうなるのかは見極めたい。
▼ 米国はファーウェイに多くの製品を販売していて、ファーウェイの製品に使用されている。ファーウェイへの製品販売はこれからも認めていきたいと考えている。
シリコンバレーは世界で最高峰の製品を製造している。こうした製品を売ることができなければ米国企業にとって大問題になる。こうした事態を起こしてはならない。ファーウェイに対して売り続けても構わないと思っている。簡単なことではないし、ハッピーなことではないが決断した。

トランプ大統領が中国に対しての強硬な姿勢を緩和させた背景には、来年に迫った大統領選挙があるとされている。トランプ大統領の至上命題は、来年度の大統領で再選を果たすことであり、最近は選挙民にアピールする姿勢を強めている。今回は、「追加関税」と「農産物」を取引したのである。トランプ大統領は支持基盤である農業関係者に向けて中国が農産物を輸入することになったと、その成果を強調した。また、ファーウェイへの製品売却容認も、シリコンバレーの企業の危機感に配慮したもだろう。
 中国との貿易交渉では、「法改正」まで強硬に求めるビック・ディールではなくて、選挙民にアピールできる実質的なスモール・ディールで妥協する姿勢に変わり始める可能性が大きい。トランプ大統領の大統領選に向けてのなりふり構わぬ姿勢にこれから翻弄されることになりそうだ。



G20大阪サミット閉幕 首脳宣言採択 安倍首相会見
 2019年6月29日、G20大阪サミットは「力強い経済成長を牽引する」という首脳宣言を採択して閉幕し、安倍首相は共同記者会見に臨んだ。
 首脳宣言は、▼「自由・公正・無差別」で透明性があり 安定した貿易体制の基本原則を確認、▼データの国際的なルール作り「大阪トラック」を開始 「信頼性のある自由なデータの流通」を明記、▼デジタル課税 巨大IT企業への課税方法を2020年までに合意する方向を確認、▼WTO改革 機能改善に必要な改革への支持を再確認、▼「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」 海洋プラスティックごみ問題の解決へ 「2050年までに新たな汚染ごみゼロに」などが骨子になっている。
 今回のG20の最大の焦点は、米国と中国という超大国同士の貿易摩擦の緊張が極度に高まる中で、「反保護主義」をどこまで掲げることができるかであった。共同宣言では、「自由・公正・無差別な貿易及び投資環境を実現するように努力する」と言う表現を盛り込み、昨年のG20に続き、2回連続、「保護主義と闘う」という文言は入らなかった。米国が求める「公平」、中国が求める「無差別」という文言をいれたという。首脳宣言の文言では、ほとんど「建て前」を再確認しただけで、まったく実質的な意味はない。わざわざG20の首脳が一堂介して議論してまとめた内容にしては余りにもお粗末だろう。G20の無力さが明らかになり、その存在の意味が問われる。
 トランプ大統領と習主席、G20はこの二人に振り回された姿が改めて浮き彫りになった。
 米中の「仲介役」が期待され、議長国として「外交手腕」が問われた安倍首相は、世界共通の課題について参加国に議論を促し、結束したメッセージを取りまとめることに成功したとは言えないのは明らかである。G20の最大の成果は、米中首脳会談での「貿易交渉再開」、「追加関税見送り(米国)」、「農産物の輸入再開(中国)」であることに間違いない。議長国日本は、この合意には、まったく蚊帳の外にいた。


出典 外務省

米中首脳会談 貿易交渉再開で一致  米は追加関税見送り
 2019年6月29日、トランプ大統領と習近平国家主席が会談し、中断していた貿易交渉を再開することで一致し、中国の国営メディアは、アメリカは中国からの輸入品に対する追加の関税の上乗せを見送る考えを明らかにしたと伝た。
 このあとトルコとの首脳会談にのぞんだトランプ大統領は、習主席との会談について「すばらしい会談だった。さまざまなことを議論し交渉の道に戻った」と述べて、期待以上の成果があったという認識を示した。
 米中の報復関税戦争のエスカレートがなんとか当面は回避できた。しかし、決して解決したわけではなく、まだまだ予断はできない。

 1時間20分にわたった会談では、習主席が「両国の関係の方向性を決め、協調と協力、安定を基調とした関係を推し進めたい」と述べたのに対し、トランプ大統領は「貿易をもう少し公平なものにしたい。もし公平な貿易のディール=取り引きができれば、歴史的な合意になる」と応じた。
 米中両国は、アメリカが問題視する多額の貿易赤字のほか、知的財産権の侵害、中国の国有企業への優遇措置などについて交渉を重ねてきましたが、アメリカ側が中国に法改正を求めたことに中国側は強く反発し、こう着状態に陥っていました。
 アメリカによる中国の輸入品への関税の上乗せをきっかけに追加関税の応酬を繰り返し、トランプ大統領は今回の会談で進展がなければ、中国からのほぼすべての輸入品に関税を上乗せする意向も示していた。
 中国国営の新華社通信によると、習主席はトランプ大統領との会談で「アメリカ側が中国企業を公平に扱い、両国企業の貿易や投資における正常な協力を守るよう望む」と述べました。
 習主席の発言は、アメリカが中国の通信機器大手、ファーウェイに対する締めつけを強めていることを念頭にしたものとみられる。
 また習主席は「中国は、米朝の指導者による対話が維持されることを支持する。両国ができるだけ早く対話を再開し、互いの懸念を解決する方法を見いだすことを望む。中国も引き続き、建設的な役割を発揮したい」と述べ、米朝首脳会談の早期再開を求めた。
(NHKニュース 2019年6月29日)

G20開幕 米中摩擦、各国が「懸念」、自由貿易の促進強調で難航
 6月28日、日本で初開催となるG20大阪サミットが米国と中国という超大国同士の貿易摩擦の緊張が極度に高まる中で始まった。
 初日は世界経済と貿易などをテーマに議論し、米中の貿易摩擦に多くの国が懸念を表明し、米中対立を「リスク」と指摘する声が各国首脳からこぞって上がった。しかし、トランプ米大統領は、保護主義への反対を首脳宣言に明記するのは「自国への批判」ととらえ拒否する構えである。29日の閉幕時にとりまとめる首脳宣言で、自由貿易の促進を強調する文言をどこまで盛り込むことができるかが焦点である。議長国日本の手腕がまさに問われる。
 会議では、紛争解決の役割を十分に果たしていないとの指摘が出ている世界貿易機関(WTO)改革の重要性についてもG20各国で共有した。
 世界貿易機関(WTO)については、韓国なでどが福島県の水産物を放射能汚染の懸念があるとして輸入禁止措置を課しているが、日本はこの措置の撤回を求めて上級員会に提訴したが、日本の主張は退けられた経緯があり、日本は世界貿易機関(WTO)の在り方に批判を強めていた。
 また関連イベントとして、デジタル経済のルール作りを議論する有志国の首脳が参加した会合が開かれ、流通や電子取引に関するルール作りを議論する
では、急速に進むデジタル化の進展の中で、電子商取引などの膨大なデジタルデータを安全で自由に世界に流通させるための新たなルール作りについて議論を開始すること合意した。安倍首相はその枠組みを「大阪トラック(議論の道のり)」と名付けて創設を宣言した。日本がこのルール作りで主導権を握る狙いが込められている。
 6月29日、2日目の討議に入り、安倍晋三首相は討議の冒頭で、海のプラスチックごみ汚染や地球温暖化などの環境問題について「結束した姿を打ち出したい」と述べた。
 しかし、地球温暖化対策については、後ろ向きな米国と欧州などとの合意形成が難航している模様だ。
 こうした中で、議長国日本は、首脳宣言の採択に向け最終調整の追い込みに入っている。
 最大の焦点は反保護主義、自由貿易の推進姿勢への踏み込み方である。
 中国は、貿易不均衡の是正には前向きだが、米国を始め各国が問題視している国有企業の補助金については、国の体制に関わる問題だとして妥協を見せる姿勢はまったくない。
 アメリカは、中国を念頭に公正な競争を妨げる「保護主義的な慣行」と闘うと明記することを求めているとされるのに対し、中国は「保護主義、一国主義と闘う」とアメリカを牽制する文言を盛り込むことを求めていて、対立が続いている。
 共同宣言の取りまとめに向けてギリギリの最終調整は正念場だ。


トランプ大統領と習主席にはさまれて緊張した顔つきの安倍首相 デジタル経済に関する首脳特別イベント 出典 首相官邸

日米首脳、貿易重視 安保の重要性確認 安保不満発言「日米とも言及せず」 
 2019年6月28日、安倍晋三首相は、トランプ米大統領とG20大阪サミットの会場であるインテック大阪で約35分間会談した。
日米貿易交渉の早期合意をめざし、閣僚級の交渉を加速することで一致した。地域安定に向け日米の安全保障体制の重要性を確認した。
トランプ氏は会談の冒頭で「貿易や軍事、防衛装備品についても話す」と語ったが、同席した西村康稔官房副長官によると、トランプ大統領が不満を表明した日米安全保障条約の見直しの問題や、日本が警戒した防衛装備品購入に関する話題は出なかったという。

 会談ではトランプ氏は貿易問題を重視する姿勢をとり、対日の貿易赤字について言及した。
日米両国は、7月の参院選後に、貿易交渉で成果をあげることを確認している。交渉では農産品や工業品の関税の扱いが焦点になる。
米国側が農産品の関税引き下げに固執しているが、日本は農産品と工業品の関税下げはセットと主張し、隔たりは依然として大きい。
西村氏によると首脳会談で合意時期の議論はなかったとしている。
 日米安保体制については、両首脳が同盟を一層強化する認識で一致した。トランプ氏は「米国が攻撃されても日本は必ずしも助けてくれない」と述べ、日米安保条約への不満を漏らす発言をしたが、西村氏によると、首相は一連の発言について触れず、トランプ氏からも日米安保条約の見直しなどに関する言及はなかったという。
 日米両政府の説明によると、両首脳は北朝鮮とイランを含む安全保障上の共通の脅威について連携して関与することを確認したという。イラン情勢については、安倍首相は外交努力を継続する意欲を示したが、緊張緩和に向けてトランプ大統領に自重を要請することはなかった。

 安倍首相とトランプ氏の首脳会談は12回目、4月の首相の訪米、5月のトランプ氏の来日に続き、異例の3カ月連続の会談となった。
 3カ月連続となった今回の首脳会談について、安倍首相は「強固な日米同盟の証しだ」と強調し、G20サミットでは「世界経済などの課題解決へ力強いメッセージを出していきたい」と話し、トランプ大統領に協力を要請した。しかし、中国と対立を強め、保護主義を唱えるトランプ大統領に、反保護主義のメッセージを伝えることはなかったと思われる。
日米両国は、世界経済の持続的成長に向けた力強いメッセージを発出するため、協力していくことで一致したというが、本当にそう言える首脳会談だったのだろうか。トランプ大統領は本音を出すの今回は遠慮しただけのように思える。焦点の問題は棚上げにして、「蜜月関係」を強調した首脳会談だったと言えるだろう。
 むしろこれからトランプ大統領は貿易交渉と安保保障問題をからめて日本に譲歩を迫ってくる懸念が高まった。
 「米国駐留経費の負担増」、「防衛装備品の購入」、「ペルシャ湾タンカー護衛に自衛隊の派遣」などが浮上する可能性がでてきた。


日中首脳会談 習近平氏、来春国賓として来日へ


日中首脳会談 出典 人民網

 2019年6月27日夜、安倍首相は中国の習近平国家主席と会談し、来年春、習主席の国賓としての日本訪問を実現することで一致た。また習主席は先に北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長に日朝首脳会談を目指す安倍総理大臣の考えを伝えたとしたうえで、拉致問題を含め、日朝関係の改善を支持する考えを示しました。
 習氏の来日は国家副主席当時の2009年12月以来で、2013年の国家主席就任後は初めて。中国国家主席の来日は10年11月の胡錦濤氏以来約9年ぶりである。
 会談の冒頭に安倍首相は、「日中関係は完全に正常な軌道に戻りました」と切り出し「習近平主席と手を携えて、日中新時代を切り開いていきたい」と「桜の咲く頃」に国賓として招待する考えを伝えた。
 これに対して、習氏は「中日関係は新しい歴史的スタートラインに立っている」とし、「共に新しい時代の要請にふさわしい中日関係の構築に取り組んで参りたい」と述べ、国賓としての招待についても「いいアイデアだ」と返答。来春の訪日で一致した。
 西村康稔官房副長官は会談終了後、「永遠の隣国」という表現について、「お互いに引っ越すことのできない隣国である」とした上で、「恒常的かつ緊密な意思疎通を行う必要性があるということを述べたものだ」と説明した。
 しかし、中国が「核心的利益」と位置づける問題では何も解決に向かっていない。
 尖閣諸島周辺での中国公船の活動は以前にも増して活発になっていて、東シナ海のガス田共同開発に向けた協議も暗礁に乗り上げている。

 こうした中で中国が日中友好を掲げるのは理由は、米国がキーワードだ。習主席は安倍首相との首脳会談で、「多国間主義や自由貿易を守っていく明確な声を発出しよう」と投げかけた。トランプ米大統領との米中首脳会談が29日に迫る中、米国と同盟を組む日本を引きつけたい思惑が明らかである。
 一方、議長国の日本も、米中の対立が会議全体に悪影響を及ぼし、首脳宣言がまとまらない事態を避けたい。「大阪で米中が決定的に決裂したら、議長国として立場がない」という声が聞こえる。
 「外交の安倍」を掲げる安倍首相だが、北方領問題を抱える日露関係、尖閣列島問題を抱える日中関係、徴用工問題で対立する日韓関係、いずれも決して順調とは言えない。
 G20会合で成果を残し、外交でポイントを上げて、参院選を迎えるというシナリオを描く安倍首相、G20大阪サミットで成果を挙げるのは必須の条件となってきた。

トランプ大統領、「安保条約に不満」を明言
 6月26日、トランプ大統領はFOXビジネスの電話インタビューで、「日本が攻撃されればアメリカは命がけで日本を守るが、日本は我々を助ける必要がない」と述べ、日米安全保障条約に不満を示した。
 「日本が攻撃されれば我々は第3次世界大戦を戦うことになる。アメリカは命がけで戦い日本を守る」と強調。「しかし、アメリカが攻撃された場合には、日本は我々を助ける必要が全くない。彼らはそれを、ソニー製のテレビで見るだけだ」と語った。
 日米安全保障条約をめぐっては、アメリカのブルームバーグ通信が6月24日、トランプ氏が側近に対し条約は不平等だとして日米安保条約の破棄に言及したと報じたが、国務省は「根拠がない」などとして報道を否定していた。6月28日に行われる日米首脳会談で言及する可能性がある。

北方領土引き渡す計画なし=首脳会談前にけん制-ロシア大統領
 ロシアのプーチン大統領はロシアが実効支配する北方領土について、日本側に引き渡す計画はないとの認識を示した。国営テレビが22日放映のインタビューの内容をサイトで公開した。
 最近、取材で現地を訪れたという質問者が「子供たちはロシア国旗を掲げていた。(今後ロシア国旗を)降ろさざるを得ないということはないか」と聞くと、プーチン氏は「そのような計画はない」と応じた。
 大阪市で開かれる20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせ、29日に予定される日ロ首脳会談を前に日本側をけん制したと言えそうだ。
(出典 時事通信 2019年6月22日)


日露主要会談 6月29日 出典 首相官邸

トランプ大統領、イラン制裁に追加措置 ハメネイ師を制裁対象に 米国・イラン危機高まる
 2019年6月24日、トランプ大統領は、ホワイトハウスで記者団に対し、中東のホルムズ海峡周辺で起きた無人機の撃墜やタンカー攻撃に触れ、「最高指導者(のハメネイ師)は敵意に満ちた行為に関して最終的に責任を負う人物だ」と非難した。ウラン濃縮や弾道ミサイルの開発を停止すべきだとして「実現するまで圧力を強化していく」と断言し、追加制裁を科すための大統領令に署名した。ハメネイ師のほか、同師直属のイラン革命防衛隊の幹部8人も対象に指定した。国家元首に制裁に科すのは極めて異例の措置である。
 指定されると米国での保有資産が凍結され、米企業との取引も禁じられる。制裁対象と取引をした第三国の企業や人物も米国の制裁対象になる可能性があり、イランと外国企業の取引を難しくする効果がある。
 イラン側は追加制裁に強く反発し、ザリフ外相は、「Bチームが米国の利益もかえりみず外交をないがしろにして戦争をしようと望んでいる」と述べた。Bチームとは、ボルトン米大統領補佐官やイスラエルのネタニヤフ首相ら対イラン強硬派の一団を指す。イランのタスニム通信は米国の追加制裁について「でっちあげの言いがかり」に基づくと批判した。
 しかし、トランプ大統領は追加制裁と同時に、イランとの対話に応じる姿勢も示している。「米国は平和を愛する国だ。イランとの紛争を目指していない」と訴え、「イランには迅速に偉大な国になる潜在能力がある」として、核兵器の開発を断念すれば支援に動く考えを示唆した。
 またトランプ大統領は、ツイッターで、原油輸送の要衝、ホルムズ海峡を通過するタンカーは、「自国で守るべきだ」と述べ、日本などを名指しにした。 トランプ大統領は、「なぜ我々は何の代償なしに、他国のために輸送路を守っているのだ」とし、「米国は最大のエネルギー生産国になっており、そこにいる必要はない」とした。
 
 6月13日、安倍首相はイランを訪問し最高指導者のハメネイ師と会談を行い、米国との緊張緩和の「仲介役」を果たそうとしたが、イラン訪問中に日本籍のタンカーが攻撃され緊張緩和どころかむしろ緊張が高まることになった。安倍首相は、トランプ大統領と6月28日に会談する予定で、会談では当然イラン情勢もテーマになるとされているが、果たしてトランプ大統領に対イラン政策で自重を促して緊張緩和につなげることがきるかどうかが焦点となる。トランプ大統領は、逆に、安倍首相に対して米国とイランのどちらの立場を支持するのか、“See the Flag”の踏み絵を迫る可能性も残る。トランプ大統領との蜜月関係を誇る安倍首相の真価が問われる会談となる。



日韓首脳会談の開催は見送り 最大の懸案課題の日韓関係改善はその兆しすら見えない

(参考 日本経済新聞 産経新聞、朝日新聞 NHKニュース 2019年6月25日)


G20アルゼンチン2018 首脳記念写真   出典 アルゼンチン外務省


G20アルゼンチン2018 ファミリーフォト 歴史的建造物「コロン劇場」 パリのオペラ座、ミラノのスカラ座と並ぶ「世界3大劇場」と呼ばれる  出典 アルゼンチン外務省


G20アルゼンチン2018 首脳全体会合   出典 アルゼンチン外務省


G20アルゼンチン2018 首脳全体会合   出典 アルゼンチン外務省


G20アルゼンチン2018 首脳全体会合   出典 アルゼンチン外務省


G20アルゼンチン2018 首脳全体会合   出典 アルゼンチン外務省


ウシュアイア G20アルゼンチン2018の開催地 「世界最南端の都市」と呼ばれる景勝地   出典 アルゼンチン外務省






出典  外務省/Youtube


 2019年6月28日と29日に、主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が大阪湾の人工島、咲洲(さきしま)にある大阪国際展示場、インテックス大阪で開かれる。 
 日本は始めて議長国をつとめ、米国のトランプ大統領や中国の習近平国家主席、ロシアのプーチン大統領など世界のリーダーが集結する世界最大の国際会議となる。
 首脳会議(サミット)では、日本を始め米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダで構成する、先進7カ国(G7)サミットが知られているが。G7サミットは冷戦時に西側陣営に属した先進国の集まりである。これに対し、G20最大の特徴は、先進7カ国(G7)に加え、BRICS5か国や新興国7か国など、多様な国が参加することである。
 BRICSと呼ばれる5か国は、先進7カ国(G7)に肩を並べるロシアや中国、豊富な人口や資源を抱えて急成長しているインド、ブラジル、南アフリカである。
 これに、韓国、オーストラリア、トルコ、アルゼンチン、インドネシア、サウジアラビア、メキシコの7か国の新興国を加え、合わせて19カ国と欧州連合(EU)の20の国と国際機関で構成するのがG20である。G20加盟国の国内総生産(GDP)を合計すると世界の8割以上を占めるとされている。
 さらに、今年のG20では、スペイン、シンガポール、オランダ、ベトナム、チリ、タイ、エジプト、セネガルの8か国が招待国として参加し、国際連合(UN)、世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、経済協力開発機構(OECD)、アジア開発銀行(ADB)などの国際機関も参加する大規模な会議である。参加する国と国際機関は、合わせて37にも及ぶ。

 G20サミットの前身は、1999年に始まったG20財務相・中央銀行総裁会議で、タイや韓国などで通貨安が急に進んだ「アジア通貨危機」を新興国も含めて国際金融システムを話し合う場として設けられた。
 2008年秋、米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)を発端に、世界的な金融危機に見舞われた「リーマン・ショック」で襲われた世界経済危機を乗り越えるために、先進国(G7)だけでなく、力をつけてきた新興国を入れて対応を話し合うべきだと米国が主導して呼びかけ、G20の枠組みが発足した。
 2008年、米国ワシントンで、各国の参加者を首脳レベルに引き上げて、第一回G20が開催された。 正式名称は「金融・世界経済に関する首脳会合」だ。2010年まではほぼ半年ごとに、2011年以降は年1回開かれている。
 G20は、G7、BRICS、新興国など多様な立場に立つ国や地域で話し合う場なので、合意に至るのは至難の業とされている。
 最後に出される「コミュニケ」と呼ばれる共同声明は、内容や細かい文言をめぐって毎回、最後まで意見が対立し、ギリギリの調整が行われる。
 G20の議長を務める安倍首相の外交手腕が試される。


出典 大阪府警本部


G7伊勢志摩サミットの成果は? 主要国首脳会議2016
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム G7伊勢志摩サミット・G8北海道洞爺湖サミット
“迷走” 2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディア施設整備~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~



八つの関係閣僚会議を開催
 今回のG20では、八つの関係閣僚会議が開かれ、首脳会議に向けての意見調整が行われる。
 農業大臣会合(新潟市)、財務大臣・中央銀行総裁会議(福岡市)、貿易・デジタル経済大臣会合(つくば市)、持続可能な成長のためのエネルギー転換と地球環境に関わる関係閣僚会合(軽井沢町)、保健大臣会合(岡山市)、労働雇用大臣会合(松山市)、外務大臣会合(名古屋市)が開催される。


出典 警察庁

「プラごみ削減」で合意 初の国際枠組み構築
 2019年6月16日、長野県軽井沢町で開かれた20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合は、海のプラスチックごみ対策の国際枠組み構築に合意し、閉幕した。
 各国が削減に自主的に取り組み、内容を定期的に報告して対策を共有することで海の汚染低減を図る。海のプラごみ対策に特化した国際的な枠組みができたのは初めてだ。
 各国が海洋プラスチックごみの削減に向けた行動計画の進捗状況を、定期的に報告・共有する「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」を採択した。
 しかし、削減の数値目標は盛り込まれず、実効性の確保が課題になる。
 プラスチックごみ(以下、廃プラ)をめぐっては、海洋汚染に限らず、人体への悪影響の懸念から、各国が相次いで輸入制限を導入している。5月10日には、バーゼル条約の改正案が採択され、リサイクルに適さない汚れた廃プラが同条約の規制対象となった。
 同会合では、世耕弘成経済産業相が日本国内における取り組みとして、早ければ2020年4月にレジ袋有料化を義務付けるとの方針を示した。レジ袋の有料化は、「プラスチック資源循環戦略」にも含まれており、廃プラ排出量の削減を目的としている。
 国連環境計画によれば、2015年に排出された廃プラのうち、レジ袋などの包装用使い捨てプラスチックの割合は36%と高く、各国・地域でレジ袋の使用を禁止するなど対策が取られている。
(参考 JETRO ビジネス短信 2019年6月18日)

「リスクにさらなる行動用意」 財務相会議閉幕
 福岡市で開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は9日夕、2日間の討議を終えて閉幕した。採択した共同声明では世界経済が抱える下振れリスクに貿易摩擦の激化を挙げたうえで「G20はこれらのリスクに対処し続けるとともに、さらなる行動をとる用意がある」と明記し、各国が協調して対応する重要性を訴えた。
 しかし「保護主義」への対抗姿勢は打ち出せず。初の議長国を務める日本は個別課題での合意を成果としたい考えだが、G20をリードする米中両大国が対立する事態は打開できそうになく、無力感も漂っているとされる。

 会議では米中の貿易摩擦に各国から懸念が相次いだが、「保護主義」を掲げるトランプ大統領に「忖度」する姿勢に一貫して支配され、共同声明では米中の名指しはせず、今年後半から来年にかけて世界経済が緩やかに上向くとの見通しは維持しながら、「リスクは依然として下方に傾いている。何よりも、貿易と地政を巡る緊張は増大してきた」と懸念を示すのにとどまった。
 G20大阪サミットの最大のテーマは、「貿易摩擦」であることは間違いない。しかし、トランプ大統領の掲げる「保護主義」への警鐘を打ち出すことは絶望的である。G20大阪サミット開催の成果として何を残すことができるか、安倍首相の真価が問われる。
 デジタル経済に対応する新たな国際法人課税のルール、「デジタル課税」については、経済協力開発機構(OECD)がまとめた作業計画を承認し、2020年中の最終合意をめざすことを確認した。
 米グーグル、アップルなど「GAFA」を代表格とする巨大IT(情報技術)企業は国境を越えて事業展開し、従来の税制では法人税をかけるための収益の源泉がどこにあるのかとらえきれない。
 新ルールを巡っては米国、英国、新興国から3案が出ているが、G20は1つを選ぶのではなく、3つを統合させる方向とされている。しかし、対象となる多国籍企業の範囲や課税方法、税収を各国に配分する方法などを巡り、各国の考えにはまだ隔たりが大きく、具体案を絞り込むのは難航が予想される。

 財務省幹部によると、米中などの貿易摩擦を懸念する発言は「ほとんどの国から出た」。フランスのルメール経済・財務相は会議後の会見で「私たちは、みなでアメリカと中国の緊張の沈静化をよびかけた」と語った。


G20 財務大臣・中央銀行総裁会議 出典 外務省

「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」 貿易・デジタル経済相会議
 貿易・デジタル経済相会議では、安倍首相が最重要視したテーマ「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」での合意を目指した。共同声明では初めて章をつくり、DFFTは「デジタル経済の機会を活かすもの」が記された。
 しかし、肝心の「信頼」や「自由」の考え方を巡り、各国間の隔たりは大きく、共同声明では国内法の尊重や、DFFTには一定の課題があることが明記された。基本理念は合意がされたもの実行性のある具体論に至るまでは道は遠い。

米中首脳会談開催へ 米中対立解消への期待が高まる
 2019年6月18日、トランプ米大統領は、中国の習近平国家主席と電話で会談したとツイッターで明らかにし、大阪市で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて習氏と「会談を開く」と表明した。
 米ホワイトハウスは、対中貿易の「構造的障壁」の是正や「履行や検証が可能な、意味のある改革の実現」などを議論した、とする声明を出した。
 中国中央テレビのニュースサイトも、習氏が「大阪で(トランプ)大統領と会談し、中米関係発展のための基本的問題について意見交換することを望んでいる」と語ったと報じた。
 トランプ氏は「米中それぞれの(通商協議に当たる)チームが会談に先立って協議する」とも記しており、ライトハイザー米通商代表や中国の劉鶴(リウホー)副首相らによる事前調整が試みられる可能性もあると伝えられている。
 翌6月19日、中国外務省の報道官は、定例会見で、G20大阪サミットで行われる米中首脳会談について、両首脳が協議したいことをすべて議論するとの見通しを示した。 また、過去40年の米中の歴史を振り返れば、前向きな結果を出すことは常に可能だとの認識も示した。
 報道官は、米中の通商合意について、両国の利益となるだけでなく、世界の願いをかなえることになるとし、最も重要なのは、中国と米国の双方が受け入れ可能な解決策を模索することだと述べた。
 また「先走りするつもりはないが、過去40年の(米中の)交流を振り返ると、前向きな結果を出すことは常に可能だ」とも発言した。
 中国国営テレビの映画チャンネルはここ数週間、朝鮮戦争時代の中国の英雄的行為を描いた反米色の強い映画を放映していたが、19日は第2次大戦中に中国の共産党ゲリラに救出された米国人パイロットが女性戦闘員と恋に落ちる映画「黄河絶恋」を放映。G20を控えて反米色を薄めていると伝えられている。(Reuters 6月19日)
 G20大阪サミット開催の最大の成果は、G20首脳会合の議論ではなく、「米中首脳会談」になるのは間違いない。

安倍首相の真価が問われるG20
 安倍晋三首相は、G20の議長国として成果を挙げ、直後の参院選に向けて外交手腕をアピールをするという目論見である。
 G20に先立って6月26日、安倍首相は、東京でフランスのマクロン大統領との談を行い、これを皮切りに、各国首脳と連日会談を繰り広げる。マクロン大統領は8月に行われる先進7カ国首脳会議(G7サミット)議長である。
 安倍首相は27日に大阪市に移り、サミットの前日に、中国の習近平国家主席と日中首脳会談を行い、夕食を共にする方向で調整が進められている。
 今月に初訪朝した習国家主席との会談では北朝鮮問題も取り上げられるだろう。また習国家主席の国賓としての来日についても明らかになっていて、中国の孔鉉佑駐日大使は「多分近い将来に実現は可能だと思う」との見通しを示した。孔氏は「まだ時期は分からない」としつつ、「希望としては、例えば桜満開など季節の良い時に実現したい」と来春にも行われる可能性を示唆した。日中首脳会談で日中関係の改善に前進があるのか焦点だ。
 6月28日はトランプ米大統領との3カ月連続となる会談に臨む。米国とイランの軍事衝突を懸念する声が強まる中、仲介のため今月中旬にイランを訪れた首相が緊張緩和に一役買うことができるかが焦点とされている。
 6月29日には、ロシアのプーチン大統領との会談が予定されている。しかし、安倍首相は当初北方領土交渉、G20サミットに合わせた大筋合意を目指したが、プーチン氏の態度硬化で絶望的となっている。
 6月22日、プーチン大統領はロシア国営テレビのインタビューで、「(北方領土を日本に引き渡す)計画はない」と述べ、日露首脳会談を前に、北方領土問題で態度を軟化させる考えがないことを改めて示した。
 また徴用工問題などで関係が冷え込む韓国の文在寅大統領との正式な会談は見送りが濃厚である。
 G20首脳会合でも、米中対立の激化を背景に、最大のテーマである通商摩擦の解決に向けて実効性の伴う首脳宣言を出せるか不透明感が漂う。

 5月末に着任した21日、東京・内幸町の日本記者クラブで会見し、日本が要請している習近平国家主席の国賓としての来日について「多分近い将来に実現は可能だと思う」との見通しを示した。孔氏は「まだ時期は分からない」としつつ、「希望としては、例えば桜満開など季節の良い時に実現したい」と来春にも行われる可能性を示唆した。


首脳会合は、大阪湾の人工島、咲洲の国際展示場、インテックス大阪で開催


インテックス大阪(大阪国際見本市会場)     出典 Wikipedia

 首脳会合は、大阪湾を埋め立てて造成した人工島の咲洲(さきしま)にある国際展示場、インテックス大阪(大阪国際見本市会場)で開かれる。国際メディアセンターや国際放送センターもインテックス大阪(大阪国際展示場)に設置される。
 見本市会場を会場とするので、これまで開催された首脳会合の会場に比べて、極めて「質素」な会場となった。また人工島の咲洲というロケーションでは、開催都市・大阪らしい雰囲気ひゃ日本の伝統文化の香りはまったく感じることはできない。G20首脳への「おもてなし」という観点で見ると首をかしげざるを得ない。昨年のG20アルゼンチン2018の写真を見れば一目瞭然である。(前掲)
 インテックス大阪は、1985年に大阪市が、市政百周年を記念して建設した国際展示場で、インテックス大阪(Intex Osaka= International Exhibition Center)という愛称が付けられている。
 敷地面積は、12万8986平方メートル、延床面積13万2709平方メートル、総展示面積7万2978平方メートルで、日本国内では、延床面積は東京ビッグサイト(東京都)、幕張メッセ(千葉県)に次いで3番目を誇る。
 「インテックスプラザ」、「スカイプラザ」という名付けられたホールを中心に1号館から6号館まで6つの展示館が配置されている。
 インテックス大阪は、展示会・見本市を中心に、企業インセンティブ・式典・表彰式・パーティー・大規模コンベンション、イベントやコンサートを年間に200件以上開催している。
 しかし、利用状況はここ数年、横ばいか微増で、交通の便が悪い立地条件がネットとなり、厳しい経営環境が続いている。見本市の開催は、東京の一極集中が加速、とりわけ東京ビックサイトの一人勝ちとなっている中で、大阪の地盤沈下はなかなか挽回できないでいる。インテックス大阪がまとめた2017年度からの5か年計画でも、今後大幅な開催件数の伸びは期待できないとしている。
 大阪市は、埋め立て地に21世紀を展望する新しい臨海都市をつくる「テクノポート」構想を打ち出し、バブル経済の絶頂期に総工費2兆2000億円を投入して、大阪湾に咲洲(160ha)、舞洲(225ha)、夢洲(390ha)の3島を造成して、先端技術開発・国際交易・情報・通信機能の3つの中核施設の整備をすすめた。しかし、バブル経済は崩壊、「テクノポート」構想は挫折し、大阪市は4兆円を超える負債を抱えて破産寸前に陥った。咲洲に建設されたアジア太平洋トレードセンターやワールドトレードセンターはいずれも破産、今のその後遺症に苦しめられている。インテックス大阪は破産は免れたが、咲洲全体が「負の遺産」の象徴になっている場所なのである。日本で初開催となるG20の会場は、「夢と希望」に彩どられた場所ではない。

 インテックス大阪は、建設以来30年以上を経過し、施設は老朽化が激しく、大規模な改修工事が迫られている。
 その象徴がトイレ事情である。
 インテックス大阪には、「国際展示場」を掲げているにも関わらず、未だに38基の和式トイレが残っていた。今回、そのうち半分の19基を洋式に変更し、さらに女性用トイレ16基と多目的トイレ1室で構成される『トイレ棟』を新設、便器だけでなく洗面設備、床、壁、天井なども全面的に改修した。その総費用は1億2700万円という。
 また蒸し暑い大阪の初夏に備えてエアコンも更新する。参加国の政府関係者から「日本の雨期は暑いと聞くが大丈夫か?」と不安の声もあったとされ、大阪市は約9278万円をかけて空調設備を更新した。

 37の国と国際機関の代表団が集まるインテックス大阪には、首脳会合だけでなく、約200回の二国間会談(バイ会談)が開催される予定である。見本市会場のインテックス大阪には、こうしたホスピタリティー・スペースはない。このため約20の会談室を仮設で展示場内に新たに整備した。会議室は「西洋のホテル風」の豪華な内装にしつらえるという。G20の首脳が勢揃いする首脳会合場も、首脳が集まるにふさわしい豪華な内装が施されるだろう。
 「西洋のホテル風」にしつらえた会議室は会議終了後、首脳会合場を除き、解体される。展示場には20室の豪華な会議室は不要だろう。
 大阪市では、G20サミット終了後の7月2日と3日に、希望者を募り、500人程度の市民を対象に首脳会合場や会議室の見学会を催す。
 しかし、わすか数日間のためだけに、多額の経費を投入して整備される「西洋のホテル風」の会議室、無駄遣いと感じるのは筆者だけであろうか?

 大阪市は、「アジアNO1のMICEセンター」を目指して、展示場面積を10万平方メートルに拡充し、会議場も併設するオールインワン型のコンベンションコンプレックスが施設の整備が必要という提言をまとめた。また、大阪・関西に強みがあるIoT、AI、ドローン、ロボット、高齢化、ライフサイエンスなどをキーワードして展示会やイベントの誘致に力を入れていくとした。
 関係者の間では、インテックス大阪はを将来的に廃止し、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致を目指す隣の人工島・夢洲(ゆめしま)や大阪市の中心部の梅田周辺に約10万平方メートル規模の建設し、国内最大級の国際会議・展示施設を整備する案も持ち上がっているという。
 2025年大阪万博の開催にも期待を寄せているが、シンガポールや香港、中国などアジア諸国との見本市ビジネスの競争激化の中で、大阪が「「アジアNO1のMICEセンター」としてどう生き残るのか、その課題は山積している。



「大阪オートメッセ2019」 出典 インテックス大阪


インテックス大阪 西ゲート 出典 Wikipedia


インテックス大阪  センタービル 出典 Wikipedia


総展示面積7万2978平方メートル、6つの展示場を備える日本で第三位の国際展示場  出典 インテックス大阪

インテックス大阪に設置されるIMC/IBC


G20 国際メディアセンター(IMC)  出典 FNN PRIME

国際メディアセンター(IMC  International Media Center)
 G20大阪サミットを取材する報道関係者のために、インテックス大阪に、国際メディアセンター(IMC)が設置される。

■ 主な施設
・共用ワーキングスペース
・記者会見場
・ブリーフィングルーム
・プールデスク(代表取材者集合場所)
・議長国報道担当本部
・各国報道担当官連絡室
・サミットフォト室(ホストスチール撮影・配信)
・共聴テレビ(CCTV)
・インフォメーションデスク
・ダイニング
・広報展示スペース

国際放送センター(IBC  International Broadcasting Center)
 G20大阪サミットを取材する放送関係者のために、大阪市の「インテックス大阪」内に国際放送センター(IBC)が設置される。ホスト・ブロードキャスターはNHKが担い、代表中継やENG取材、IBCの設営・運営を行う。今回、ホスト映像として公式行事の一部を試験的に4K映像で制作して各放送機関等にサービスするのが注目される。

■ 主な施設と機能
・ホスト映像中継
・ホストENG取材
・マスターコントロールルーム(MCR)
・ブッキングオフイス
・回線コントロールセンター
・光伝送回線サービス
・各社専用ブース
・ホストフィード(2h)
・映像/音声信号分配コーナー
・IP高速伝送サービス・ルーム
・クラウド配信サービス
    * 映像フォーマット
          HD映像:XDCAM MXFファイル
               MPEG HD420 1080/59i (35Mbps, 16bit/48kHz/4ch)
          SD映像:MPEG4 (2Mbps, 32kHz/2ch)

    ▼ホスト映像として公式行事の一部を試験的に4K映像で制作して各放送機関等にサービス

・各社専用ワーキングブース
・記者リポート・ポジション(屋内18枠・屋外3枠)
・レンタルENGサービス



G20 咲洲に国際メディアセンター開設(読売テレビ)







G20開幕 国際メディアセンターに各国記者集う(産経ニュース)











G20メディアセンター探訪 池谷キャスター×官邸キャップ(テレ東)





史上空前の警備体制 大規模な交通規制
 警察庁は、G20大阪サミットに備え、全国からの応援体制で、史上空前の3万2千人の警察官を動員して、厳重な警備態勢をとる。大阪の街中に警備の警察官があふれることになる。 
 大阪城では、潜水士の資格を持つ大阪府警の機動隊員が内堀に潜り、爆発物などの不審物がないか水中を捜索した。大阪城公園内には警察官の姿も目立ち、物々しい雰囲気に市民や観光客は目を見張る。
 大阪の府立の学校や市立の幼稚園、小中高学校は、27日、28日は休校となり、百貨店や商店は休業、観光施設も閉鎖、空港や駅のコインロッカーはすべて封鎖される。

 大阪市内を中心に高速道路や一般道路で大規模な交通規制が行われる。大阪市周辺の経済活動や観光、市民生活に大きな影響を与えるのは必至だ。
 阪神高速環状線を中心に、6月27日から6月30日まで早朝から深夜まで通行止め規制が行われる。
 一般道にふりかえる車両で、市内は大渋滞が起こる懸念が大きい。
 VIPが往来する関西空港と大阪市内を結ぶ高速道路は、6月27日(木)と6月28日(金)は関西空港から大阪市内に向かう車線がVIPの通行時は通行止めになり、6月28日(金)と6月29日(土)は、大阪市内から関西空港に向かう車線が通行止めとなる。
 一般道路では、首脳が宿泊するホテル周辺の9エリアに、迂回エリアや煩雑に交通規制を行うエリアが設けられる。
 大規模な交通規制が行われると激しい渋滞が発生する可能性があるが、地元の13機関と団体で構成する「G20大阪サミット交通総量抑制連絡会」では、サミット開催金の総交通量を50%削減を掲げ、企業や物流関係者、市民に協力を呼び掛けている。
 連絡会では渋滞を回避するためには50%削減が必要だとしている。

 G20大阪サミットの開催が迫り、大規模な交通規制や警備の強化が行われて、好調な観光業がその影響を受ける。
 大阪城の天守閣では開催前日の27日と、28日の2日間、臨時休館を決めた。サミット期間中には各国の首脳らが出席し、大阪城にある迎賓館で晩さん会が行われる予定で、厳重な警備態勢に加え大阪市内を中心に大規模な交通規制が行われるからだ。
 大阪市内で営業を見合わせる観光施設が相次いでいる。1日4000人近くが訪れる梅田スカイビル屋上の空中庭園展望台は、外国人観光客に人気のスポットだが、サミット開催前後の27日から30日までの4日間休館する。
 大阪中心街を川面から見る水上バス「アクアライナー」も同じく4日間、運航を中止する。観光産業の痛手は避けられない。


出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日


出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日


「50%交通量削減」の効果? 一般道はガラガラ 出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日


「50%交通量削減」の効果? 一般道はガラガラ 出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日

“超厳戒”大阪から人・車が消えた!首脳が続々到着(19/06/27)

G20大阪サミットの開催経費は400億円以上
 2018年7月10日、財務省は、2019年度予算の概算要求で、日本開催とな るG20大阪サミットの開催関連経費について、政府全体で計446億円を計上すると明らかにした。首脳会議のほか、財務相など閣僚会議も全国8カ所で予定する。会議場の設営やプレスセンターの設置に加え、各国首脳の来日に備えた警備費などを盛り込まれる。
 また、2019年度予算として、外務省はG20 大阪サミットの開催経費を257 億円、警察庁は空前の3万2千人の警察官を動員するなどで警備関連経費、124億300万円を予算化している。
 G20は参加国や国際組織が合わせて37と破格に多く、開催経費も巨額に上る。
 
G20経済効果 大阪に358億円 シンクタンク試算
 2019年6月18日、民間のシンクタンクのアジア太平洋研究所(大阪市)は20カ国・地域(G20)首脳会合の大阪府への経済効果は358億5820万円との試算を発表した。減速が予測される関西経済に一定の下支え効果を発揮するとしている。
 試算によると、G20首脳会合関連の総支出額は、国は大阪府市の予算を始め、会合への参加者や運営スタッフ、海外からの報道関係者らの消費額などを加えると、合計428億4200万円と算出した。この算出額を同研究所の産業連関表を用いて分析した。
 その結果、全国での総合効果として生産誘発額は621億4,800万円、経済効果(粗付加価値誘発額)は390億3,600万円、雇用者所得誘発額は234億6,300万円と推計した。
 経済効果は、「サービス業・その他」(246億610万円)と「公務」(60億2890万円)で大半を占めた。
 警備で全国から集まる警察官や世界各国から訪日するメディア関係者などの滞在費、や飲食代などで、大阪府内のサービス業が潤うとしている。
 また過去に日本で開催された主要国首脳会議に比べると、インフラ整備関連の割合が低くなっているのが特徴とした。
 経済効果の内、関西2府4県への効果は、365億6360万円と推計。2019年度の関西の実質域内総生産(GRP)を0・04%程度押し上げると分析した。 
 同研究所では「中国経済の減速の影響が出始めている関西経済に一定の下支え効果がある」している。
 開催都市の大阪では、G20大阪サミット開催を足掛かりにして、2025年大阪万博につなげ、関西経済成長の浮揚につなげたいと期待が集まっている。

 巨額の経費をかけて開催するG20大阪サミット、直接的な経済効果はさることながら、国際社会の緊張緩和や保護貿易への歯止め、環境対策など、しっかりした成果を上げることが求められる。
 単なる政治ショーに終わらさせてはならない。議長国日本の真価が問われている。




2019年6月22日
Copyright (C) 2018 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************

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伊勢志摩サミット 国際放送センター(IBC) 国際メディアセンター(IMC)

2023年04月24日 21時20分03秒 | 国際放送センター(IBC)
伊勢志摩サミット 国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム 徹底検証



伊勢志摩サミット 国際メディアセンター 三重県立サンアリーナ 筆者撮影


首脳会合ワーキングセッション 出典 外務省フォト


英虞湾を望むG7首脳  出典 外務省フォト 


安倍首相議長会見   出典 外務省フォト


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国際放送センター(IBC)と国際メディアセンター(IMC)
■ 国際放送センター(IBC:International Broadcasting Centre)とは何か?
 国際放送センター(IBC)は、オリンピックやFIFAワールドカップ、世界陸上などの国際スポーツ競技大会やG7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議の開催時に設置される放送サービス・システム。
 IBCには、会議場や競技会場、イベント会場からのライブ中継映像・音声やENG取材映像が集められ、世界各国の放送機関等に配信される。IBC内には、IBCの“心臓部”であるマスター・コントロール・ルーム(MCR:Master Control Room)が設置され、各ベニューからライブで伝送されてくる映像・音声信号の調整・配信・録画などを行う。また世界各国の放送機関等の専用ブースや特設スタジオが設置され、全世界に向けて、会議や競技、イベントの中継映像・音声や記者リポート、ニュース素材等が発信される。最初に本格的な国際放送センターが設けられたのは1964年東京オリンピック大会で、現在のNHK放送センターにIBCが設置され、世界各国の放送機関等に映像・音声が配信され、放送を通して視聴者に届けられた。
 国際メディアセンター(IMC)と共用で、各種の会見が頻繁に行わる多言語同通サービス付きの複数の会見場やプレスデスク、レストランや銀行、郵便局、各ベニューへのシャトルバス・サービスなどが整備される。
 オリンピックやFIFAワールドカップ、国際陸上などで大規模なスポーツ・イベントで設置されるIBCは、高額の放送権料を支払い放送権を獲得したライツホルダー(RHBs)しか参加できない。競技映像・音声の権利は厳密に管理されRHBsのみが利用可能である。
 これに対して、G7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議では、主催者が発行するアクレディを取得すれば、新聞社、通信社、放送機関などすべてのメディアが、すべて無償でホスト映像・音声の取得が可能である。
 国際放送センター(IBC)の設置は、国際メディアセンター(IMC)[以下参照] と同じ建物内に設置されることが多いが、ホスト映像・音声の利用がRHBsに限定されているオリンピックやFIFAワールドカップなどでは、IBCエリアを完全に分離して、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが限定される。
 一方、国際会議では、IBCエリアとプレスエリアは、同一エリアに整備されて分離はされず、すべてのプレス関係者の取材拠点となる。


東京オリンピック・パラリンピック大会のメディア施設(MPC/IBC)は東京ビックサイトに設営された。向かって左側がIBCエリア、右側がMPCエリア。オリンピックの場合、国際メディアセンター(IMC)と呼ばず、メインプレスセンター(MPC)と呼ぶ。機能的には同質の施設である。世界で最大規模のIBC/MPCを設置するのはオリンピック。筆者撮影

FIFAワールドカップQatar2022 では、ドーハ市内のWEST BAY地区にある世界最大級の展示場を有するドーハ見本市・会議場(Doha Exhibition and Convention Center)にIBC/MPCが設置された。 オリンピックに次ぐ規模である。出典 Qatar2022


■ 国際メディアセンター(IMC:International Media Centre)とは何か?
 国際メディアセンター(IMC)は、新聞・放送・通信社・雑誌・インターネットなどすべての報道関係者の取材・編集・送出拠点である。放送機関等が使用する国際放送センター(IBC  International Broadcasting Center)も同じ建物内に整備される。IBCはホスト映像・音声の利用がRHBsに限定されているオリンピックやFIFAワールドカップなどでは、IBCエリアを完全に分離して、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが限定される。国際放送センター(IBC)が、放送関係者用の施設であるのに対し、国際メディアセンター(IMC)は、幅広いメディア関係者の施設の総称である。
 国際メディアセンターに参加するプレスは、最も大規模な国際会議であるG7サミットの場合、邦人プレス3000人、海外プレス1000人、合わせて4000人程度)とされている。議長会見場1か所と各国首脳会見場5か所程度が設置される(米国は除く)。国際メディアセンターの延べ床面積は約1万平方メートル程度が必要となる。
 米国の主要放送局(ABC、CBS、NBC、CNN、FOX)は、大統領が出席する国際会議にあたっては“US Pool”を組み、ホスト国が準備する国際メディアセンターには入らず、独自に別個、“US Pool”専用のプレスセンターを設立し、取材・編集・送出拠点とする。米国大統領の会見も国際メディアセンターの首脳会見場では行わず、別途、設置して、映像・音声は“US Pool”が管理する。
 “US Pool”が管理する映像・音声を世界各国の放送機関が利用する場合は、ABC、CBS、NBC、CNN、FOXのいずれかに提供としてもらう必要がある。たとえばNHKはABCから映像・音声の提供を受ける。
 既設の建造物で、国際メディアセンター(IMC)の十分なスペースが確保できて利用可能な場所が確保できない場合には、仮設で新たに建設する場合もある。
 北海道洞爺湖サミットでは、洞爺湖町のリゾート施設の駐車場に建設した。総床面積1万1000平方メートル、プレスセンター棟とサミット議長・各国首脳会見棟からなる仮設の建物で、総工費は28億2000万円、サミット開催後は取り壊された。
 伊勢志摩サミットでは、既存施設の三重県立サンアリーナに設置された。


G7北海道洞爺湖サミット IMC ルスツ・リゾート(洞爺湖町)2008年7月 筆者撮影

G7エルマウサミット2022のIMC 大型テントなどを利用して仮設で市内の駐車場に設営 出典 tagessuau


■ IBC/IMCのセキュリティ管理  アクレディ管理(Accreditation Management)
 国際放送センター(IBC)や国際メディアセンター(IMC)で取材、制作、編集活動を行う放送機関等は、業務に従事するスタッフ一人一人、全員が、主催者が管理するアクレディの登録が義務付けられる。アクレディの申請には、住所、氏名、生年月日、パスポート番号などの個人情報や、所属するメディアや団体の情報が必要となる。またフリーのジャーナリスト等については、ジャーナリストとしての実績の提示が求められる。申請されたIDは、主催者によって審査され、審査をパスすれば、ID識別票が発行される。
 IBC/IMCは、世界各国のメディアに対し、取材、制作、編集活動の便宜サービスを与える場であり、ID審査は、通常、かなり厳密に行われる。
 とりわけ国際会議の場合、各国の首脳や閣僚、要人が多数集まるため、厳しいセキュリティ管理が求められる。


■ Host(主催者)/Host Country (主催国)
 国際会議や国際スポーツ競技大会の開催にあたっては、主催者(Host)がイベント全体を運営・管理する。
Host Country(主催国)は、IBC業務を担うHost Broadcasterを指名する。
 大規模な国際会議の主催者(Host)は、開催国(国)が担う。開催にあたっての運営業務は、サミットやAPECは外務省、IMF世銀総会は財務省、COPは環境省といったように所管省庁が行う。サミットやAPECのように“持ち回り”で開催される国際会議はほとんどがホスト国が会議運営の実権を握る。一方で、COPのような国連関連機関の国際会議を日本で開催するときは、会議開催の主催者は国連機関であり、日本はホスト国として会議開責任機関(事務局)となり、主催者の意向を踏まえながら、協力して会議の運営にあたる。MF世銀総会も同様で、IMF・世銀が主催者であり、会議運営の基本的な要件は決定権を持つ。しかし、会議場の設営等のロジスティックスのほとんどの実務は、ホスト国が担当することになる。会議開催に係る経費は、IMCやIBCも含めて、原則として国(各省庁)が負担する。但し、IMF世銀総会などは主催国が一部、経費を負担することがある。
 会議の開催準備を開始するにあたって、最初に、主催者とホスト国との間で、それぞれの責任範囲や経費負担について、契約書や確認書を交わすことが多い。その後、主催者の国際機関は、ホスト国に対し、詳細な記述が記載された“会議設営・運営基準(マニュアル)”を示し、ホスト国は、それに基づいて準備をしなければならない。IBC/IMCの設営・運用に関する記述も詳細に記されている場合が多い。
 国際スポーツ競技大会の場合は、“組織委員会”や競技連盟が主催者(Host)となる。オリンピックは、国際オリンピック委員会(IOC:International Olympic Committee)、FIFAワールドカップは、国際サッカー連盟(FIFA:Fédération Internationale de Football Association)、世界陸上競技選手権大会は、国際陸上競技連盟(IAAF:International Association of Athletics Federations)、ISUワールドカップ(スピード・スケート)やISUグランプリシリーズ(フィギア・スケート)は国際スケート連盟(ISU:International Skating Union)、アジア競技大会はアジアオリンピック評議会(OCA:Olympic Council of Asia)が主催者(Host)である。[注1] 

[注1] オリンピックやアジア大会などでは、国際オリンピック委員会(IOC)やアジアオリンピック評議会(OCA)の管理の下で、大会の準備・運営組織として、各都市組織員会(OCOGC)が設立される。


■ ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)
 国際放送センター(IBC)を設置・運営する担当者をホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)と呼ぶ。ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)は、会議やイベントの主催者から指名され、国際放送センター(IBC)の設置準備、システムの設計、機材の準備、設営、運用を担い、ホスト映像(国際映像)の制作・配信を、全責任を持って対応する。さらに首脳会議場やフォトセッション、関連イベント、記者会見などについては、中継車や機材を配置し、ライブで映像・音声を中継して、IBCに伝送する。またENGクルーを複数、配置して各種の関連イベントなどを撮影しIBCに送り込む。
 国際会議の場合は、国営放送がある国では、国営放送がホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)の指名を受けることが多い。日本では、サミットやAPECなどの大型国際会議では、これまでは、外務省の要請を受けて、NHKが担当していた。これに対して、COP10名古屋やIMF・世銀総会では、競争入札でホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)が決まった。欧州ではEBU(欧州放送連合)が指名される場合が多い。一方、米国や東南アジア、オセアニア等では、競争入札が行われ、落札した企業が担当するが、必ずしも放送事業者とは限らず、民間のメディア企業がIBC設営・運用業務を担うことが多い。
 スポーツ・イベントの場合は、主催者からイベントの放送権を独占取得した場合には、その放送事業者やメディア企業がホスト・ブロードキャスターとなる。ホスト・ブロードキャスターは、放送権を、世界各国の放送事業者やメディア企業に譲渡してビジネスにする。
 オリンピックのホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)はオリンピック放送機構(OBS)、FIFAワールドカップはホスト・ブロードキャステヒング・サービス(HBS)が独占的に担当している。

* オリンピック放送機構(OBS:Olympic Broadcasting Services)とは、国際オリンピック委員会(IOC)によって2001年5月に設立されたオリンピックとパラリンピックの独占的なホストブロードキャスターである。この機関が発足する以前、ホストブロードキャスターの業務は、各大会の組織委員会または第三者の放送局に委託されていた。OBSは、夏季・冬季の各大会ごとに設けられる国際放送センター(IBC)の設営し、各競技場に中継車を配備して映像・音声信号制作を行い、オピック放送の国際信号を制作して、世界各国の放送権を獲得した放送事業者((RHBs)に向けて配信する。


国際放送メディアセンター(三重県営サンアリーナ) 以下筆者撮影  

伊勢志摩サミット 国際メディアセンター(IMC)は三重県営サンアリーナに設置
  2015年9月8日、外務省は、伊勢志摩サミットの国際メディアセンター(IMC)を、伊勢市朝熊町の県営サンアリーナに設置すると発表した。
 サンアリーナは延床面積約2万4000平方メートルの三階建て施設。延床面積約1万4000平方メートルのメインアリーナと約4900平方メートルのサブアリーナやトレーニングルーム、会議室などの施設が整備されている。
 この他に隣接する駐車場に、IMCのアネックス(付属棟)、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの仮設増設棟を建設した。外観は伊勢の街並みの黒壁など、地元の伝統的なデザインを取り入れ、木の丸柱に囲まれた通路などを設置し、「和」を感じさせる建物で、事業費は約28億5000億円。 日本の先端技術、伝統文化を発信する展示スペースや、メディア用の食事の提供スペースも設けた。このアネックスはサミット終了後、数日間一般公開をした後、約3億円かけて取り壊される予定である。
 国際メディアセンター(IMC)は、世界各国から訪れる新聞、雑誌、通信社、そして放送機関などのメディアの取材・編集拠点、約4000人のメディアの参加を見込んでいる。国際メディアセンター(IMC)には、専用ワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース(約1020席 2個所)や共用ブリーフィング・ルーム(2か所)、インフォーメーション&ITヘルプデスク、IMCシャトルバス・インフォーメーション、外務省報道官室(外務省事務局)(アネックス)、展示スペース(アネックス)、プレス用レストラン(アネックス)、そして放送機関用の国際放送センター(IBC)が設置される。施設内には、CCTV(館内共聴テレビ)で、G7サミットの様子やイベント・スケジュール、各種案内が放送され、高速のWifi環境も整備された。
 国際放送センター(IBC)は、世界各国の放送機関向けに設置される施設で、首脳会合や議長会見、各国首脳会会見、関連イベントなどの映像・音声のホスト信号が配信される。映像・音声信号を調整、監視、分配するマスター・コントロール・ルーム、IBCブッキング・オフイス、共用編集室、音声ルーム、IP伝送サービスコーナーなどが設置される。  また各放送機関専用のワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース、記者リポポジションも整備された。映像・音声メディア機関の拠点が国際メディアセンター(IBC)である。
 国際放送センター(IBC)の施設は、サンアリーナだけなく、賢島内にある賢島宝生苑にサブメディアセンター1(SMC1)と議長国首脳会見場、志摩市の伊勢志摩ロイヤルホテルにサブメディアセンター2(SMC2)(各国首脳会見場)が設置された。
  SMC1は、賢島内で取材活動をするメディアの拠点で、志摩観光ホテル・クラシックや志摩観光ホテル・ベイスイートで行われたG7首脳会合やワーキング・デイナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合などのENG取材映像(代表取材)の伝送ポイントが設営されと共に、賢島内で取材活動を行う記者やカメラマンの待機場所となった。ENG伝送については、Japanプールは10回、米国プールは3回、ドイツプールは2回、EUは1回の伝送を行った。また、サミットの総括を行う議長国首脳会見場も設置された。
SMC2には、各国首脳会見場、3カ所が伊勢志摩ロイヤルホテル内に整備された。
国際放送センター(IBC)の設置・運営業務やホストブロードキャスター業務は、請負事業者を公募したが応募したのがNHKだけだった。NHKは、外務省と随意契約協議を行い、約7億3400万円で外務省から業務を受託した。

伊勢志摩サミットの映像・音声サービス

 ホスト・ブロードキャスターの中継ポイントは、G7首脳会合やワーキング・ディナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合などが行われる志摩観光ホテル・クラシックや志摩観光ホテル・ベイスイート、賢島宝生苑(SMC1、議長国会見場)、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)、各国首脳が到着する中部国際空港、伊勢神宮である。合計で中継車を4台、中継カメラ台数37台を使用した。
 志摩観光ホテルでは、中継車1台、カメラ15台、1行事当たり1台から3台を配置、賢島宝生苑では、中継車1台、カメラ3台(議長国会見場)、音声はオリジナル、同通(英・日・仏・独・伊)、伊勢志摩ロイヤルホテルでは、キャリイング・システムを使用し、カメラは1会見場当たり1台、3会見場に配置した。伊勢神宮では五十鈴橋、参道、記念植樹、本宮前など9台のカメラを配置、カメラ・ケーブルの総延長は6.5kmに及んだ。中継を担当したのはホストブロードキャスターのNHK、「行く年くる年」での中継実績が活かされた。
 記者リポポイントは、サンアリーナ(IBC)内に15枠、1枠はカメラ・音声・照明機器、ブッキング・オフイスまでの回線付、2枠はブッキング・オフイスまでの回線付、残りの12枠はスペースのみの設置とした。
また、志摩地球海村にも記者リポポイント(共用)、1枠が設置され、SNG車を配置した。
映像・音声伝送スキームは、外務省が「映像伝送回線」として調達したNTT西日本のメガリンク(40Mbps)を使用した。 回線は異なるルートで二重化、セキュリティを確保して、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)、賢島宝生苑(SMC1、議長国会見場)、中部国際空港からサンアリーナ(IBC)へHD(2K)の非圧縮で伝送した。 一方、ホストブロードキャスターは、賢島宝生苑(SMC1、ENG伝送)、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)、志摩地球海村(記者リポポイント)とサンアリーナ(IBC)間は合計15回線の光回線を設置し、中継やENG取材のホスト映像・音声信号や各社が取材するユニー映像・音声の伝送サービスが行われた。
 さらにSNG3台を配置し、伊勢志摩ロイヤルホテル(各国首脳会見場)や伊勢神宮(中継終了後、伊勢志摩ロイヤルホテルに移動)、志摩地球海村(記者リポポイント)からSNG伝送を実施した。この内、伊勢志摩ロイヤルホテルに配置したSNG車は2ch伝送が可能なSNG車を配置した。
 G7サミットの公式行事ではないが、今回、伊勢志摩ロイヤルホテル内で、G7サミットの前日に安倍首相とオバマ米大統領の二国間の首脳会談が行われ、日米共同記者発表や安倍首相の“ぶら下がり”が急遽、行われた。この映像伝送にジャパンプールはLiveUを初めて使用した。
LiveUの受信ポイントからは、Nexionのジャパンプール回線を使用して、東京へ伝送し、NHKと民放5社へ在京分岐を行った。LiveUは小型のハンディタイプの送受信装置を使用して、簡便に中継が可能なため、APTVやReutersTVなどの海外のメディアでは多用されている。しかし、映像・音声の伝送が通信環境で不安定になる懸念も大きく、日本の放送機関では試行中である。
 ENG取材では、ホストブロードキャスターが10クルー配置して、ホスト映像を撮影してIBCで各メディアに配信した。
 伊勢志摩サミットでは、資料用として、初めて4K撮影を2台のカメラで行った。
 撮影内容は「伊勢神宮宇治橋付近と雑感」(3分)、G7首脳伊勢神宮訪問(10分)、G7夫人伊勢神宮記念撮影(4分)、G7首脳記念撮影(5分20秒)、サミット雑感(13分)である。カメラはSONYのXAVC59.94を使用し、S×SからHD(2K)にダウンコンして読み込み、各社に配信した。
 国際放送センター(IBC)内で各メディアへの映像・音声のホストフィードは、G7首脳会合やワーキング・ディナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合、議長国会見、各国首脳会見場)、各国首脳到着、伊勢神宮参拝などで、2チャンネルを使用してサービスした。配信された映像信号のフォーマットは、HD-SDI 1080/59.94i、NTSC、PALの3種類で、音声はオリジナル、日、英、仏の4か国語である。ホスト映像はサーバーにストレージされクラウド配信サービスも行われた。世界各地のメディアは、IDを取得すれば、インターネットを通して映像・音声信号のダウンロードが可能で、ファイルフォーマットはMXFファイル(SONY XDcam)とMPEG4を使用した。
 MCRのルーターは、一時側でSONY・HKSP/80/81(256×245)、2次側で朋栄MFR-8000(256×256)、バックアップで、朋栄MFR-5000(128×128)を使用した。
 またサミット終了後のオバマ大統領広島訪問の関連映像素材については、外務省は極めて異例の対応として、代表取材映像を伊勢志摩サミットのIBCで世界各国のメディアに対して配信サービスを実施した。
各ブースでサービスを受けたメディアは、「2チャンネルプラン」が14機関、「2チャンネル自由選択プラン」が15機関、「ラジオ2チャンネルプラン」が2機関だった。
 北海道洞爺湖サミットでは、洞爺湖町のリゾート施設の駐車場に国際メディアセンター(IBC)を建設した。総床面積1万1000平方メートル、プレスセンター棟とサミット議長・各国首脳会見棟からなる仮設の建物で、総工費は28億2000万円、サミット開催後は取り壊された。
 三重県はサミットの誘致活動段階から既設の施設、サンアリーナを国際メディアセンター(IMC)の候補地に挙げていた。


国際放送メディアセンター(三重県営サンアリーナ)


専用ブースとCCTV


国際放送センター(IBC)MCR


IBC 映像・音声分配システム 専用ブースを持たないメディアにホスト映像・音声をサービス


ブリーフィング・ルーム


オバマ米大統領広島訪問の生中継、CCTV画面に見入る報道陣 G20で最も脚光を浴びたのは首脳会合ではなくオバマ米大統領広島訪問


議長会見場 背景は英虞湾 演出効果満点のローケーション
以上 筆者撮影


わずか3日間のために28億5000万円かえてIMCアネックスと建設 日本の先端技術や伝統文化を発信
 外務省は、IMCが設置されたメインアリーナに隣接する駐車場に、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの“アネックス”を仮設で建設した。日本の先端技術や伝統文化を発信するのがその目的である。建設工事は鴻池組が受注し総工費は28億5000万円、サミット開催の4日前に駆け込みで完成した。開催後は3億円の解体費用をかけて取り壊す予定である。
 アネックスには、日本庭園や政府広報展示、三重情報館、屋外展示場を設けた。
政府広報展示については、「医療・保健」コーナーでは介護ロボット・HONDAの歩行アシストやヒト型ロボット、「インフラ・交通」コーナーでは三菱リージョナルジェット、超電導リニア、新幹線E7系、「環境・エネルギー」では温室効果ガス観測技術衛星、エネループ(ソーラーストレージ装置)など、「復興・防災」では、地震観測システムや東日本大震災の現状や復興、「宇宙・深海」では、深海探査用ドローン・ほばりん、H3ロケット、8Kスーパーハイビジョンなどを展示した。
また屋外展示場では、TOYOTAやHONDAの水素自動車や電気自動車が展示されれ試乗も行われた。
サンアリーナから首脳会合場の志摩観光ホテル(賢島)までの距離は約二十キロ。三重県は日本の環境技術を各国にアピールしようと、報道関係者らの送迎にハイブリッド・バスを利用した。
 またプレス用レストランでは、地元の海産物や伊勢うどん、地酒などの「美しの国」、三重県をアピールする料理をずらりと並べて国内外のメディア担当者に地元グルメをアピールした。プレス用レストランで提供するメニューの8割以上が三重県産食材を使用したという。
 IMCアネックス(付属棟)が利用されたのはわずか3日間、延べ8000人のメディア関係者などが訪れたが、一般市民には解放されなかった。 
 G7サミット終了後、市民からわずか3日のために28億5000万円かけて建設し、取り壊すのは“無駄遣い”の象徴だと批判が高まり、三重県と外務省では、10日間程度、地元の小学生や一市民に公開をし、11月上旬、予定通り壊された。
 28億5000万円かけて、IMCアネックスを建設する必要が本当にあったのか、十分に検証すべきだろう。



新設されたIBC・アネックス G7首脳会合の3日間だけのために28億5000万円をかけて新設 閉幕後解体、解体費3億円


新設されたIBC・アネックス


展示フロア


次世代自動車の展示 水素自動車
以上 筆者撮影

アメリカのメディアセンターは独自に設置
 アメリカは、大統領が出席するサミットなどの国際会議に際しては、独自に別の場所にUSメディアセンターを設け、取材・編集活動を行うので、主催国が設営する国際メディアセンター(IMC)は使用しないのが通例である。大統領の会見や報道官のブリーフィングもUSメディアセンターで行われる。伊勢志摩サミットでは、鳥羽国際ホテルにUSメディアセンターは設置された。
 USメディアセンターには、ブリーフィングルーム兼プレスワーキングルームとUSプールのIBCが設けられる。アメリカの放送局は、米国大統領の参加する国際会議等には、ABC、CBS、NBC、CNN、FOXの5社でUSプールを構成してオペレーションを行う。USプールは、主催国の設置する国際放送センター(IBC)には入らず、独自の映像・音声のオペレーション拠点を構築する。プーラーと呼ばれるプールの代表は、5社が順番で務めるのが慣例だ。IBCの機材は各社で保有している機器を使用し、セッティングや調整、オペレーションを代表して行う。
国際放送センター(IBC)は、USプールに中継やENG取材のホスト映像・音声信号を光回線を使用して配信する。しかし、米国大統領の会見等USプールの映像・音声は、国際映像として国際放送センター(IBC)には配信されない。USプールの映像・音声が必要な各国放送局は、USプールを構成する5社のいずれかから配信を受けるか、APTVやローターTVなどから素材を入手しなければならない。
 実は、主催国が設置する国際メディアセンター(IMC)や国際放送センター(IBC)はアメリカの主要メディアを除いた世界各国のメディアの拠点なのである。


G7エルマウ・サミット2022


G7首脳ファミリーフォト 背景はドイツ最高峰のツークシュピッツェ山(Zugspitze)の山並み ドイツとオーストリアの国境線にある 出典 G7-gipfel-elmau

G7首脳ファミリーフォト 出典 G7-gipfel-elmau

議長国ドイツのショルツ首相と岸田首相

Schloss Elmau  開催地のカルミッシェ・パルテンクルヒュン(GarmischPartenkirchen)は1936年冬季五輪の会場 ウインタースポーツのリゾート地として有名 出典 deutshland.de

 2022年6月26日から28日の3日間、ドイツのエルマウでG7首脳会議(サミット)が開催された。日本からは岸田文雄首相が出席した。
主な議題:
• インフレおよび景気後退の懸念に対する共通の対応策
• 「気候クラブ」の前進
• インフラと投資のためのパートナーシップ強化
• 外交・安全保障問題に関する調整、ロシアへの圧力強化
• ウクライナに対する支援拡大
• エネルギー供給の確保
• 気候変動対策の迅速化
• COVID-19パンデミックの克服
• 飢餓との闘い
• 世界におけるジェンダー平等の推進

世界経済を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau

世界経済を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau

外交・安全保障を議題とするワーキングディナー 出典 G7-gipfel-elmau

焦点のウクライナ情勢を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau

気候変動・エネルギー・保健を議題とする首脳セッション 出典 G7-gipfel-elmau
主な成果:
• ウクライナ支援
財政・人道・軍事・外交面の支援を必要な限り続け、復興支援を行う
• 「気候クラブ」の設立
気候危機に対するグローバルな対応として立ち上げる
• グローバルな食料安全保障に向けた連合
世界の人々を飢えと栄養不足から守る
• エネルギー供給の確保
排出削減目標や環境目標で妥協せず、ロシア産エネルギーへの依存を低減する
• グローバル・ヘルスの強化
パンデミックに対しより適切に備え、対応する

スピーチをする岸田首相 出典 G7-gipfel-elmau

写真撮影に向かうG7首脳 出典 G7-gipfel-elmau

写真撮影に向かうG7首脳 出典 G7-gipfel-elmau

G7首脳とアウトリーチ首脳 出典 G7-gipfel-elmau


国際メディアセンター(IMC)は カルミッシェ・パルテンクルヒュン市内の駐車場に仮設で建設 約3000人に報道陣が参加  出典 tagesshau/de

国際メディアセンター(IMC)  出典 Losberger Boar

IMCのプレス席 出典 Losberger Boar

大型テントを有効利用 出典 nussli.com

国際メディアセンターに整備された記者リポポジション 出典 Fucus on-line 

写真撮影をする各国報道陣 出典 G7-gipfel-elmau

アイスアリーナに設営された警備本部 約18000人の警察官を動員 出典 Merkur.de

警備本部がスタジアムに建設した150人収容の仮設拘置所 出典 Forcus on-len


北海道洞爺湖サミット国際放送センター(IMC/IBC)


北海道洞爺湖サミット IMC ルスツ・リゾート(洞爺湖町)2008年7月 筆者撮影
 北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議 G8)は、2008年7月7日~9日まで北海道洞爺湖町のウインザー・ホテルで、福田総理の議長のもと開催された。日本でサミットが主催されるのは、平成12年の九州・沖縄サミット以来8年ぶりであった。 
 北海道洞爺湖サミットでは、7日のアフリカ諸国等とのアウトリーチ会合に始まり、8日にG8の首脳会合やワーキング・ディナー、9日に主要経済国首脳会合(MEM)が開かれ、9日午後、総理の議長国記者会見をもって閉幕した。
G8会合の主要な議題は、世界経済、環境・気候変動、開発・アフリカ及び政治問題で、G8首脳による議論が行われた。


G8首脳 洞爺湖をバックに記念写真 出典 外務省フォト


G8首脳会合 出典 外務省フォト


ウインザー・ホテル ロビーのG8首脳 出典 外務省フォト

◆ 国際メディアセンター(IMC)の設置
北海道洞爺湖サミットを取材する報道関係者のために、洞爺湖町にあるスキー・リゾートホテル、ルスツリゾートホテル内に国際メディアセンターが(IMC)設置された。国際メディアセンター主要な建物は、ルスツリゾートの駐車場のスペースに仮設で建設された。環境に配慮して建設された設計で、使用された木材は再利用可能とした。[注3 下記の図を参照]
* 開設期間(予定)
2008年7月5日正午から7月10日(木)正午まで (期間中24時間運営)
* 利用対象者
     国際メディアセンターへのアクセスが許可される北海道洞爺湖サミット取材記者証及び政府発行のID所有者。

* 主な設備とサービス
    (IMC)
     インフォメーションデスク
     代表取材者デスク(プールデスク)
     共用ワーキングスペース 
     ブリーフィングルーム
     首脳記者会見場(議長会見場、各国首脳会見場)
     議長国報道担当本部
     各国報道担当官連絡室
     サミットフォト室
     サミットテレビ(CCTV)
     レストラン
     ATM
     医務室 等
    (IBC)
     マスターコントロールルーム(MCR)
     ブッキングオフイス
     回線コントロールセンター
     光ファーバー伝送システム
     SNG伝送車
     IP高速伝送サービス・ルーム
     方式変換サービス
     編集室
     音声スタジオ
     各社専用ワーキングブース
     首脳記者会見場(議長会見場、各国首脳会見場)ホスト中継 サービス
     記者リポート・ポジション(ルスツリゾート駐車場、サイロ展望台(洞爺湖展望台)
     ウインザー・ホテル(首脳会合場)サブIBC(ルスツリゾートへの伝送拠点)
     首脳会合、ワーキングディナー等中継サービス
     ロボットカメラ(ウンザー・ホテル周辺の丘)
     関連イベントENG取材

◆ 展示
政府広報、自治体、企業等による特設コーナーを設置して、日本や北海道の魅力を紹介する他、報道関係者向け各種サービスを提供した。
 建物の入口には、環境ショーケースが設置され、屋内外を利用し、日本の環境における取り組みや省エネなど環境技術に関する展示・デモンストレーション(次世代自動車の試乗等)実施した。また地下に蓄積した雪を利用した冷房システムも設置した。
 また首脳会議場とIMC間には、環境に配慮した次世代自動車(燃料電池バス)などを活用したシャトルバスを運行した。

◆    国際メディアセンター 「IMCザ・メイン」
 国際メディアセンターは、洞爺湖町のルスツリゾートの駐車場に建設された。プレスセンター棟は鉄骨造、地上2階建。議長・各国首脳会見場棟は、鉄骨造、地上1階建。延べ面積 は2棟合わせて約11,000㎡で、報道関係者、邦人3,000人、外国人1,000人の利用を想定した。“環境サミット”とされた今回のサミットのテーマに相応しく、建物は環境に配慮した様々な機能が盛り込まれた設計になっていた。
工費は約30億円、竹中工務店・日本設計グループが建設を担当した。

■ “雪冷房”システム
雪室(雪貯蔵庫)、敷地の段差により生じたプレスセンター棟の下部に設け、サミット開催期間の冷房に必要な雪を貯蔵した。貯蔵した雪に縦穴を開け、そこに外気を通すことで冷風を生み出して、建物全体に冷風を送り冷房する。溶けた直後の温度の低い融雪水を使用して冷水をつくり、それを循環させて大きい部屋の冷房機器にも利用した。その他、シースルーソーラーパネルや、北海道産の間伐材フレームによる壁面緑化など、最新の環境技術を駆使した「環境ウォール」で建物を覆った。



■ 建設資材のリサイクル
国際メディアセンターの建物は、サミット終了後、解体することになっていたので、解体後の資材の再利用・再資源化を大前提に建設材料の選定や設計を行った。リサイクル率は、重量比で99%を達成し、2008年10月末に解体作業は完了した。



北海道洞爺湖サミット 首脳会合が開催されたウインザーホテル(洞爺湖町) 出典 JTB








(注) 国際会議のIBCの一般的なモデルのシステムをイメージ化したもので、特定の国際会議のIBCを表したのものではない




“迷走” 2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディア施設整備~IBC(国際放送センター)・MPC(メインプレスセンター)~
2020東京五輪大会 国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC) 設営場所と使用後の再活用策
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)/ MPC(メイン・プレス・センター)
オリンピックのメディア施設(IBC/MPC)はこうして整備される ~ロンドン五輪・その機能・システムと概要~
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム ~機能と設備~
国際放送センター(IBC)で使用される映像信号フォーマット(Video Signal Format
IBC International Center System (English)






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2016年4月1日
Copyright (C) 2015 IMSSR


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Toru Hiroya
廣谷  徹
代表
国際メディアサービスシステム研究所
International Media Service System Institute (IMSSR)
E-mail imssr@a09.itscom.net
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G7エルマウ・サミット メルケル首相 安倍首相 国際メディアセンター

2023年04月24日 19時48分31秒 | G7伊勢志摩サミット
G7エルマウ・サミット2015 G7Germany Schloss Elmau2015

G7エルマウ・サミット閉幕 共同宣言採択
  ドイツ南部エルマウで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)は8日午後、自由や民主主義、法の支配、人権の尊重といった原則を確認し、「主権および領土の一体性の堅持に一致団結する」とした首脳宣言を採択して閉幕した。
海洋秩序と海洋安全保障については、対中国を念頭入れて、「威嚇、強制または武力行使、大規模な埋め立てを含む現状変更を試みるいかなる一方的行動に強く反対する」とした。「大規模な埋め立てを含む」という表現を入れて、中国による南シナ海での岩礁埋め立てを指摘した上で、「強く反対」と明記した。これまでより強い表現となり、 日米が協力して、G7各国首脳に危機感を訴えたことが功を奏したといえる。
 しかし、欧州各国は地理的に離れていることで南シナ海への危機感は薄く、むしろ中国との経済関係を重視したいという思惑も見え隠れし、日米との温度差が現れているという。
またウクライナ危機については、昨年3月のクリミア半島併合を改めて非難し、停戦合意の完全履行がない限り、対ロシア制裁をG7として結束して継続する決意を示した。対ロシア制裁は、「ウクライナ東部の停戦合意の完全履行とウクライナの主権の尊重に明確に関連されるべきだ」としている。
 制裁継続で合意はしたが、エネルギーの供給をロシアに頼っているなどロシアとの関係が深い欧州各国や「北方領土」を巡ってロシアとの関係改善を図りたい安倍首相とオバマ大統領との間には、ここでも“温度差”が生まれている。
また温室効果ガスについては、2050年までに10年比で最大70%削減を視野に努力する新目標を掲げた。日本は、温室効果ガスを2030年度までに13年度比で26%削減するという新しい表明した。この目標を達成するには、原子力発電の対応を含め、日本のエネルギー政策に大きな課題を背負ったと思える。
 安倍晋三首相は、G7サミットの終了後に記者会見し、「北方領土の問題を前に進めるため、(ロシアの)プーチン大統領の訪日を本年の適切な時期に実現したい」とプーチン氏の年内訪日を目指す考えを改めて表明した。
 首相は「私はプーチン大統領との対話をこれからも続けていく」と強調したが、2016年伊勢志摩サミットへのロシアの参加については「現時点では、ロシアを含めたG8で意味のある議論を行えるとは考えがたい」と否定的な考えを示したという。
 しかし、来年の伊勢志摩サミットまで1年、ロシアのサミット復帰は最大の焦点になると筆者は考える。
 いずれにしてもG7エルマウ・サミットで鮮明になったのは、“影の主役”、ロシアと中国の存在である。
 2016年伊勢志摩サミットでもロシアと中国への対応が主要テーマになることは間違いないだろう。

2015年6月9日

G7サミット・エルマウ開幕
 G7サミット(主要7か国首脳会議)が6月7日、アルプス山麓のリゾート地、ドイツの南部のエルマウで開幕した。
 昨年に引き続き、“ロシア抜き”の首脳会議となった。
 今回の首脳会合の焦点は、ウクライナ情勢を巡る対ロシアへの対応で米国と欧州で温度差が生じ始めている中で、“制裁継続”などについてG7の合意がどのようにできるかである。議長を務めるメルケル首相はプーチン大統領とパイプ役を果たしながら、今回、G7をどのようにまとめるのか手腕が問われる。
 経済問題では、欧州各国にとって重要なギリシャ危機への対応が議論される。
 また温室効果ガス削減など地球温暖化対策についてG7での合意を目指す。 
 過激派組織IS(「イスラム国」への対応や感染症対策なども主要なテーマである。
 日本が重きを置いているのは、対中国問題、AIIB・アジアインフラ投資銀行への対応や中国の南シナ海での海洋進出問題だ。しかし、AIIBについては、参加を表明しているイギリスやフランス、ドイツ、イタリアと参加を見合わせている日本、アメリカ、カナダの間で立場の違いが鮮明になっている。また中国の南シナ海の岩礁埋め立てを巡っても、中国との経済関係を重視する欧州各国との間で温度差がある中で、G7でどのような合意がされるのか注目される。

2015年6月8日

温室ガス40~70%減で一致 G7、宣言を採択 2050年目標
朝日新聞 6月9日
G7:対中国、領土現状変更を批判 サミット閉幕
毎日新聞 6月9日
東・南シナ海「緊張を懸念」…G7首脳宣言
読売新聞 6月9日
G7「結束」保てるか サミット閉幕
日本経済新聞 6月9日
中国の南シナ海埋め立てに「強い反対」明記 首脳宣言採択し閉幕
産経新聞 6月9日


メルケル首相(G7サミット議長会見)

メルケル首相(G7サミット議長会見)

ワーキング・セッション

ワーキング・ディナー

歓談するG7首脳

コンサートでG7首脳を歓迎(シュロス城)

アウトリーチとG7

記者リポートポジション


首脳会議場 エルマウ城

アルプスホルンの演奏で歓迎

民族衣装を着た子供たちに囲まれたオバマ大統領とメルケル首相(クルン)

ランチを楽しむオバマ大統領とメルケル首相(クルン)

アルプスの山並みを背景にしたG7首脳

散策するG7首脳

安倍首相夫妻

安倍首相夫妻とメルケル首相夫妻

散策する昭恵夫人

オバマ大統領とメルケル首相

安倍首相とメルケル首相

(出典 G7Germany Photo)

G7サミット・エルマウ
  G7サミット・エルマウは、2015年の6月7日と8日に、ミュンヘンから100キロメートルほど離れた高原にあるリゾート保養地で開催される。
 参加する首脳は、フランス、イタリア、日本、イギリス、アメリカ、カナダの7か国で、ロシアは参加しない。2014年3月、G7は、ロシアのクリミア併合に対抗し、強く警告する措置として、ロシアのG8への参加停止を決めた上で、2014年にロシアのソチで開催予定のサミットをボイコットして、ベルギーのブリュッセルで開催した。エルマウ・サミットでもロシアを排除してG7で開催する。
 今回の会合は、世界経済や外交、安全保障、成長戦略について焦点を当てる。各国首脳は、気候変動対策や保健衛生問題、貿易やサプライチェーン基準(supply chain standards)、女性の活用についても議論する。

 エルマウ城は、上部ババリア西山脈にある風光明媚な土地で、G7の首脳会合の開催地として理想的な場所である。2014年の初めにメルケル首相が開催地として決めた。
 ミュンヘンから100キロメートルほど離れたクルン村(Village of Krun)の近くにある。オーストリアとの国境に横たわるヴッテルシュタイン山地(Wetterstein mountain range)の山麓に位置し、標高約1,000メートルの高原にある。







エルマウ城
G7 Germany2015 Schloss Elmau


国際メディアセンター(IMC)

  国際メディアセンター(IMC)は、ガルミッシュ‐パルテンキルヘン(Garmisch-Partenkirchen)のオリンピック・アイス・スポーツ・センター(Garmisch Olympia Stadium)に設置される。
このスポーツ・センターは、ドイツのアイスホッケーチームのホーム・アリーナである。
1935年にオープンし、1936年の冬季オリンピックのフィギアスケートの会場となった。1996年にはアイスホッケーのワールドカップが開催された。ウインタースポーツの街、ガルミッシュ‐パルテンキルヘンのシンボルである。
ガルミッシュ‐パルテンキルヘン(Garmisch-Partenkirchen)はドイツ南端部の観光・保養都市。ウインタースポーツの施設が多数あるリゾート地である。








Garmisch Olympia Stadium 国際放送センター(IMC)
G7 Germany2015 Schloss Elmau

  国際メディアセンター(IMC)では、ワークスペースと食事が提供される。約900のワークステーションと87のTVとラジオ機関用の専用ブース、電子メディア用の配信機能を備えたスペースが設けられる。
プレス・ワークステーションは、Wifiサービスと電話が設置される。プリンターやコピー機、FAXが利用可能で、PCワークステーションやISDNラインも少量ではあるが設置される。
 ブリーフィングセンターは、会議場となるエルマウ城に近くに、仮設で建設される。


プレス取材情報

■ G7サミット関連の会合やイベントに係る詳細な取材マニュアルは、首脳会合の直前にGerman G7 Presidency websiteに掲載する。

■ 映像(ビデオ・写真)取材は“制限”
G7サミット関連の会合やイベントは、取材場所が制限されているため、各国プレスの取材は制限される。ホストブロードキャスター(ビデオ)や公式カメラマン(写真)が代表取材を行い、各メディアに配信する。写真はGerman G7 Presidency websiteからダウンロード可能である。
取材場所に入れないメディアには、プレスセンターのCCTV(館内放送)で、G7サミット関連の会合やイベントを視聴することができる。
G7サミット関連の会合やイベントの取材を希望する各国メディアは、各国のプレス担当に申込みをしなければならい。ドイツ国内のメディアは、メールで申し込むことができる。(medienbetreuung@bpa.bund.de)

■ ホスト・フィード(ワールド・フィード)
 G7サミット関連の会合やイベントの映像については、ドイツの公共放送や民間放送局が“Berlin model”に基づき、ホスト・ブロードキャスターとなって、“ホスト・フィード(ワールド・フィード)”を行い、各メディアに対して無償で配信する。ZDF、ARD Main Berlin Studio、EBUが担当する。

■ 記者リポート・ポジション
 記者リポート・ポジションは、プレスセンターのあるGarmisch-Partenkirchenに設置され、アルプスの山並みを背景にライブのリポートが実施できる。SNG車を持ち込む放送機関は、車種、自動車NO、高さ、幅、長さ、重量などの情報や必要な電力を記載して申し込むこと。各社独自で記者リポート・ポジションを設営することはできない。
また、首脳会合場のSchloss Elmauを背景にした記者リポート・ポジションも少数、ブリーフィングセンターに設置される。この場所には、各社はSNG車を持ち込むことはできない。ブリーフィングセンターの記者リポート・ポジションに入るためには“Aufsager Briefingcenter Elmau” (Stand-up Briefing Centre Elmau)という特別なパスが必要である。またプレスセンターからの移動は、用意された交通機関を利用しなければならない。プレスは、各社の車両で移動できない。
Munich Airportにも、記者リポート・ポジションが設置される。SNG車を持ち込む放送機関は、車種、自動車NO、高さ、幅、長さ、重量などの情報や必要な電力を記載して申し込むこと。各社独自で記者リポート・ポジションを設営することはできない。

■ メディアセンター内のワークステーション
テレビ・ラジオ放送機関用のワークステーションはEBUが管理、申し込みはEBUに行う。

■ 利用する無線の登録
無線を使用するメディアは、使用する周波数をGerman Federal Network Agencyに登録しなければならない。未登録の周波数はブロックされる。





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2015年5月22日
Copyright(C) 2015 IMSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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