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パリオリンピック2024 選手村 史上最高のエコ選手村 地下水床冷却 エアコンなし 東京オリンピック選手村比較 マンション販売苦戦 サン・ドニ地区の「産業荒廃地」再開発

2024年07月21日 22時06分07秒 | パリ五輪2024

Paris2024 オリンピック・パラリンピック選手村(Olympic‐Pararinpic Village)


Paris2024 史上最も華麗なセーヌ川開会式で幕を開けるParis2024

Paris2024 セーヌ川開会式 出典 Paris2024
2024年パリ夏季五輪大会(Paris2024)は、7月26日から8月11日まで開催され、32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞った。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。
 主要競技会場は、、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッド廃兵院などのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
 異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計41の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
 オリンピック選手村は、パリ北部のサンドニに約20億ユーロ(約3200億円)を投じて建設された、約70%が民間資金で、公的資金は6億5000万(約1000億円)ユーロが投入された。
 大会期間中は約14000人の選手や関係者の宿泊施設となる。大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイススペースも整備される。
 開催経費は、インフレの影響で当初予算から約35%増加し、組織委員会予算で約44億ユーロ(約7400億円)、競技会場やインフラ整備を担当するオリンピック施設庁(SOLIDEO)予算で約45億ユーロ(約7600億円、合計89億ユーロ(約1兆5000億円)程度とされている。
 ちなみにTokyo2020では組織委員会経費が6404億円、国や東京都が7834億円、計1兆4238億円、ほぼTokyo2020と同額の開催経費となった。
 開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
 Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、数千人を乗せた80隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料席22万2000人)に半減された。
 パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能な席は無くなった。
 そして観客のためにルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設けられる。
 またコンコルド広場(Concorde square)やエッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)にはイベント広場が設置され、各国首脳や政府や国際機関の関係者など約200人も出席する予定だ。
  Paris2024では、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。


パリオリンピック 競技会場 完全ガイド Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report


出典 Paris2024
エコ選手村を目指したParis2024 サン・ドニ地区の「産業荒廃地」再開発 
 Paris2024の選手団と大会関係者の宿泊施設となるオリンピック・パラリンピック選手村は、サン・ドニ(Saint-Denis)、サン・トゥアン(Saint-Ouen)、、リル・サン・ドニ(L'Ile-Saint-Denis)の 3 つのエリアに整備された。
 この事業の主任都市計画者で建築家であるドミニク・ペロー氏は、選手村の巨大な建物群をセーヌ川に垂直に配置し、波止場に停泊する大型ボートのように設計したという。
 選手村の中心に立地する映画スタジオ複合施設のシテ・デュ・シネマ(Cité du Cinéma)は、元発電所を復元したもので、新しい地区のシンボルである。このスペースは、選手村の中核となるメインダイニングが設置される。選手村の設置されたエリアは工場や発電所が集積した「産業荒廃地」とされ、低所得層の労働者が多く住む開発がパリ市内で遅れていた地域で、大会開催を契機に再開発してParis2024のレガシーにする計画だ。
 オリンピック期間中は14,250人の選手、パラリンピック期間中は9,000人の選手を収容する。毎日最大6万食の食事が提供され、アスリートのためのトレーニングエリア、フィットネスセンター、診療所などが常時利用可能となる。
 選手村の建設費は約 20 億ユーロ (22 億ドル 約3200億円) で、70%は不動産開発業者による投資だが、公的資金から 6 億 4,600 万ユーロ (7 億ドル 約100億円)が拠出された。
 ちなみに東京2020の選手村の建設費は、1057億円(再開発整備費[用地整備]約540億円、宿泊棟内装費約500億円)を東京都が負担し、三井不動産グループの開発総工費は約540億円とされている。
 大会後、選手村のエリアは再開発されて6000人が住むニュータウンに衣替えする。


出典 SOLIDEO
 選手村のメインストリートには実験的な屋外空気清浄機を5台設置。未確認飛行物体(UFO)のような巨大な空気清浄機の塔は、掃除機のように設計されており、汚染された空気を吸い込み、危険な粒子を除去する。製作したジェローム・ジャコモニ氏は、の装置は「あらゆる大きさの粒子状物質の95%」を浄化できると語った。5台の装置は1時間当たりオリンピック競泳用プール40個分の大気をごくわずかな電力で浄化できるという。

• 52万平方メートルの敷地 約 82 棟の建物
• 2,500棟の住宅 約6000人が居住 (約70%が個人所有)
• 770棟以上の高齢者、学生用住宅
• 2つの学校
• 80,000平方メートルのオフィスエリア(6000人のワーカー)と都市サービス
• ホテル(トゥール プレイエル Tour Pleyel)
• 3,200平方メートルの近隣商業エリア
• 3ヘクタールの公園と約7ヘクタールの庭園と公園
• セーヌ川沿いの散歩道と自転車レーン
• セーヌ川沿いの散歩道と自転車レーン
• リル・サン・ドニとその他の地域を結ぶ新しい歩道橋
• サン・ドニ・プレイエル地下鉄駅(隈研吾設計)
• 通行量の多い幹線道路A86から環境を守る防音壁








段ボール製ベット 部屋の内装は簡素なつくり
 オリンピック・パラリンピック選手村を建設するコンソーシアムは、2019年3月に活動を開始し、SOLIDEO(オリンピック施設の納入を担当する企業)の行った入札に応札した。選手村は先駆的な環境基準を遵守し、大会中のアスリートの居住施設としての要件を満たし、大会開催後は何年にも渡って地域社会に利益をもたらす「未来都市」を目指す。
オリンピック後、選手村開発事業者は2024年11月に選手村の住宅ユニットの再利用を開始する予定である。周辺一帯の再開発も進め、2025年に誕生する「未来の都市」に選手村も吸収される。
 選手村には5つの居住エリアがあり、それぞれアベス、バスティーユ、ドーフィーヌ、エトワール、フェットというパリの有名なエリアにちなんで名付けられている。 アパートメントの広さはさまざまだが、1 部屋(12平方メートル)2名が基本で最大 8 名の部屋もある。バスルームは 4 名につき 1 個所が備えられる。
 各部屋にはベッド(1万4,250個)、羽毛布団、ベッドサイドテーブル、扇風機(8,200個)、ソファ(5,535個)など備えられ、34万5,000個以上の物品を調達する。設備やサービスの大半はスポンサーが提供だ。


段ボール製ベッド 出典 Paris2024
  東京2020に引き続きベッドは段ボール製で、日本の製造メーカー、エアウィーヴ社が提供、最大 250 キログラム (約 550 ポンド) の重量に耐えることができる。アスリートの体格に合わせてカスタマイズできる約1万6000床のマットレスが供給されることになっており、バスケットボール選手用に2.2メートルまで拡張できるという。段ボール製のベッドフレームが80パーセントのリサイクル材で造られ、フランスで組み立てられる。選手村の責任者は、パリ大会後に「新たな命を吹き込む」ためにリサイクルする予定だとしている。ベッドの高さを高くすることでパラリンピアンにも使用可能で、 「車椅子に乗っている人は、実際に車椅子からベッドへの移乗が非常に簡単にできます」と関係者は語る。 ボーナスとしてリバーシブルの羽毛布団が提供され、オリンピックでは青色の面、パラリンピックでは緑色の面を使用する。パリ五輪終了後、ベッドフレームはリサイクルされ、マットレスや枕は教育機関や公共性の高い団体などに寄付されることになっている。

室内の内装は極めて簡素  出典 Paris2024

3260席のメインダイニング シェフ自慢のコース料理からベジタリアン料理まで 4つのテーマエリアで4万食を提供 

選手村のシンボル シテ・デュ・シネマ 出典 SOLIDEO
 シテ・デュ・シネマ(Cité du Cinéma) 映画監督兼プロデューサーのリュック・ベッソンに設立された映画スタジオ複合施設、1933年設立された発電所を復元・改装、エリアのシンボルになっている。この施設を改装してメイン・ダイニング・ホールが開設される。メイン・ダイニング・ホールは 座席数 3,260 席、24 時間営業で、約15,000人の選手たちに毎日 40,000 食の食事を提供する。フランス料理、アジア料理、アフリカ・カリブ料理、世界の料理の 4 つのテーマエリアが設置され、毎日、4つのカテゴリーから40種類の異なる食事が提供される。
 30種類以上の野菜が並ぶサラダバー、肉とサイドメニューを焼くグリル、チーズコーナー、ベーカリーコーナー、辛味料理のビュッフェ、デザートバー、多種多様な果物が提供されるフルーツバーなども用意される。料理の500種類にも及ぶ。
 選手はまた、フランスの最も有名な食品のひとつであるバゲット(フランスパン)の作り方を学ぶサービスも受けられる。「私たちにとって、オリンピック選手村にベーカリーがあるのは当然のことです。どうしても、選手たちのために自分たちの手でバゲットを焼きたいと思っていましたから。また、選手たちが自分自身でバゲットをこねて、オーブンで焼くワークショップも開催する」と選手村の担当者は話す。

◆メインレストランのメニュー例
フランス:
• ベジタリアン・ブルギニョン(野菜などを赤ワインで煮込んだ料理)
• ブランダード・ドゥ・モルー(塩漬けにしたタラとマッシュポテトを用いた料理)
アジア:
• 豚ひき肉とタイバジルのバスマティライス
• カリフラワーとターメリック入りのベイクドポテト
アフリカ・カリブ:
• ピーマン、玉ねぎ、トマトの卵料理(チャクチューカ)
• チェルムーラソースのフライドシュリンプ
世界の料理:
• ラム肉とミントジュースを煮詰めた料理
• ベジタブルムサカ(茄子とジャガイモの料理)


French Gastoromony フレンチフライ(ポテトフライ)はなし 料理の約半分がベジタリアン料理 出典 South China Morning Post

出典 IOC

選手村 メインダイニング 試食するTony Estangueパリ五輪組織委員会長 出典 South China Morning Post

選手村 メインダイニング 出典 delish

地下水床冷却システムを採用 エアコンは設置せず

建物の屋上の3分の1にはソーラーパネル、3分の1にはルーフガーデンを設置 出典 SOLIDEO 
 選手村の建設にあたって、重要視したのは環境への配慮、低炭素コンクリートと木材の構造物と再生可能な地下水床冷却システムと地熱暖房システムの使用により、従来の建物の二酸化炭素排出量の約半分の削減目標を達成したとしている。「ほとんどの建物は、構造か床材のいずれかが木製」と関係者話す。  ソーラーパネル、水再利用システム、空気浄化システムも設置される。
 地下水床冷却システムは、アパートメント内の温度を下げるために、近くの地熱発電所の地下70メートルの井戸から4度の自然の冷水を建物の床に設置されたパイプに送って循環させるクーリング・システムを導入した。 このシステムで外気温に比べて建物を6~10度冷やすことができて、建物レベルで制御されるが、各住戸には自動温度調節器があり、室温を上下2度の範囲で調節できる。冬には地熱暖房としても利用可能。
 パリの8 月の息苦しいほどの暑さ、2019年7月、22年7月には40度を超えた。しかし、「環境にややしい五輪」を掲げるParis2024では、選手村はエアコンを部を除いて設置しない。扇風機があるのみだ。
 米公共ラジオ局「NPR」は「パリはエアコンなしの選手村を求めている。米国代表団と他の国は穏やかではない」との見出しで記事を掲載。「フランスは昨夏、欧州での観測史上、記録的な熱波が襲った。昨年フランスでは猛暑により5000人以上が死亡している」とし、「人口密度の高いパリは、欧州の都市の中でも暑さによる死亡リスクが最も高い」、「高温は今年の五輪にとって致命的な脅威になる可能性がある」とした。
 米紙「USAトゥデー」も「パリ五輪に米国代表団がエアコンを持ち込むことについて知るべきこと」と見出しの記事を掲載。英ポーツマス大をはじめとした研究者たちが、今夏にパリを熱波が襲うことを懸念しているとし、「パリの年間気温は過去1世紀で3度上昇しているとレポートは伝えている」と報告した。
 米国オリンピック・パラリンピック委員会(USOPC)のハーシュランド最高経営責任者(CEO)は、米選手団の部屋に独自にエアコンを付けると発表した。「大会組織委の取り組みには敬意を示す」としながら、選手が全力を尽くせる環境作りが重要だと訴えた。オーストラリアもエアコン敷設のため、10万ドル(約1600万円)をかける計画だと報じられている。
 日本オリンピック委員会(JOC)は2023年12月、各競技の強化担当者によるコーチ会議でエアコン設置の方針を表明している。
 米紙ワシントン・ポストによると、日米豪のほか、イタリアやカナダ、ドイツ、デンマークなどがエアコンを独自に設置する方針だ。多くはフランスで携帯式エアコンを調達するとみられるが、ギリシャは国内から移送する予定だという。
 組織委担当者は各国・地域の選手団が大会組織委員会を通じて計約2500台の移動式エアコンを注文していると明らかにている。
 果たしてパリの猛暑をエアコンなしでアスリートは乗り切ることができるだろうか懸念は一層深まった。


木材を利用した断熱効果が期待きできる外壁 出典 CNN

フィットネスセンター、クリニック、託児所を設置
 アスリートの健康維持のために350 台を超えるトレーニング・マシンを備えるメインのフィットネス・センターには 2 つのサウナもある。 
ウェイトリフティング、近代五種、フェンシング、車椅子バスケットボールなど、特定の分野に特化したトレーニングサイトが7 か所整備された。
 敷地内には3,000平方メートルのポリクリニックが設けられ、アスリートの健康管理のため、治療、検査、MRIスキャンを24時間オープンで行う。アンチドーピングセンターも整備される。 託児所も設置される。
 村内を移動するには、200 台の自転車と電動シャトルが利用可能。約600台の洗濯機と乾燥機を備えた仮設ランドリーも設置された。
ビレッジ プラザと呼ばれる多目的集合スペースには、バー(ノンアルコール)、理容店、コンビニ、郵便局、銀行があり、巨大スクリーンが設置され試合をライブ観戦したりすることができる。

選手村マンションの販売は苦戦?
 選手村マンションの引き渡しは、2025 年の最終四半期から 2026 年の第 1 四半期の間に予定されていが、販売状況は苦戦している毛様である、アスリートの宿泊施設を標準的なアパートメントとオフィススペースに改造する時間が必要となる。
 不動産専門家は、この販売の出遅れは金利上昇に伴う不動産市場の低迷だけでなく、販売価格が高いことも原因だとしている。公証人手数料の免除とともに 1 室あたり 5,000 ユーロの割引を打ち出した販売業者も現れた。 「2019年から2020年にプロジェクトを立ち上げたとき、1平方メートルあたりの平均価格は7,500ユーロ(約120万円 80平方メートルで約9600万円)でスタートした」が、 「その後、昨年夏の市場の低迷を見て、我々は適応し、1平方メートル当たりの平均価格6,900(約110万円 約8800万円)ユーロに値下げして、販売は持ち直している」としている。
 不動産業者によると、選手村のアパートの価格はパリの中でかなり高いという。周辺の地価は 6 年間で 50% 高騰した。「市内中心部では、建物の品質や立地にもよりますが、価格は平方メートルあたり 3,000 ユーロから 5,500 ~ 6,000 ユーロの範囲」という。平方メートル当たり7,000ユーロか8,000ユーロの高額予算を持つ世帯は「選択肢が増え始めており、クルブヴォア、ルヴァロワ・ペレ、クリシーなど、パリの西または南郊外の高級住宅地に行くことができる」と指摘している。

出典 Paris2024


1924年パリ夏季五輪の選手村 キャビンの前に集まる選手たち 出典 IOC/Topical Press/Hulton Archive
 オリンピック史上初の選手村、Paris1924の選手村は、パリの中心から北西にあるコロンブのスタッド・イヴ・デュ・マノワール(イヴ・デュ・マノワール・スタジアム)に設置された。3,089名(女子135名、男子2,954名)のアスリートを受け入れ、ほとんどのアスリートは選手村に滞在した。家具が備え付けられた木造の小屋からなる選手村は質素で、閉幕後すぐに取り壊された。それから100年、Paris2024の選手村はサン・ドニ地区のニュータウンに生まれ変わる。


Paris1924 競技会場MAP




2020東京五輪大会 選手村建設費954億円 14~18階建ての21棟、約3800戸建設

選手村(空撮) 提供 TOKYO2020

中央区晴海の東京ドーム3個分に及ぶ広大な都有地、約13万4000ヘクタールの敷地に、14~17階建ての21棟のマンション型の選手村と商業施設が建設される。工事費は約954億円。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。
 大会終了後は分譲マンションとして販売する計画で、超高層住宅棟2棟を建設し、住宅棟21棟、商業棟1棟に整備して、5650戸のニュータウンに衣替えする。2016年7月、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発事業を受注し、2017年1月には着工する。基本的に国や都の財政負担なしに整備する方針だ。日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指す。
 選手村の建設は、全額民間資金を活用するとして、建設経費は東京都の五輪開催経費に算入してない。しかし、東京都は選手村用地の盛り土や防潮堤の建設を始め、上下水道や周辺道路の整備に410億円を投入する計画である。大会後は臨海ニュータウンになるので、社会資本整備投資経費とするのは理解できるが、選手村の整備に400億円超の税金が投入される。さらに都有地約13万4000ヘクタールを、周辺価格の約10分の1という「破格の優遇措置」で事業者グループに売却したという疑念が生まれて批判が集まった。


提供 TOKYO2020

 選手村は、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発した居住エリアの他に、晴海埠頭や晴海客船ターミナル、さらに臨港消防署や民間の倉庫用地も使用して付属施設を整備し、その面積は合計44ヘクタールに達する。
 選手村のゾーンは、「居住ゾーン」、「運営ゾーン」、「ビレッジプラザ」の3つのゾーンに分かれている。
 「居住ゾーン」には、居住棟はメインダイニングなどがあり、選手が居住するエリア。
 「運営ゾーン」には、選手村の運営機能集約したエリア。
 「ビレッジプラザ」は、選手の生活を支える施設で、店舗、カフェ、郵便局や宅配便、銀行、メディアセンターなどが設置されるエリア。

居住棟
 居住棟は、14~18階建ての21棟、約3800戸で、ベット数はオリンピックで約1万8000、パラリンピックで8000。広さはシングルルームで9平方メートル以上、ツインルームで12平方メートル以上、設置される寝具のベットフレームは段ボール製、100%のリサイクルが可能。
 すべてのベッドルームには窓があるので二方向換気が可能になる。
 外廊下は、車いす2台がすれ違うことができる幅員がある。


居住棟 提供 TOKYO2020


ツインルーム シンプルな内装 各部屋にTOPスポンサーのPanasonic製エアコン、合計1万5000台が設置された 酷暑の東京の夏はエアコンが必須 提供 TOKYO2020


車いす2台がすれ違うことができる外廊下 エアコンの室外機が設置されてる 提供 TOKYO2020

メインダイニングホール
 メインダイニングホールは、2階建ての仮設施設で、オリンピック時には1階に約900席、2階に約2100席、パラリンピック時には1階に約700席、2階に約1700席。24時間サービスで、1日最大4万5000食を提供する。
 料理はビュッフェ方式だが、調理スタッフが1人づつ盛り付けてサービスする。サラダなどもあらかじめ小分けにしたものを選手がピックアップ。
 全体に席数を削減して、1席ごとに飛沫防止板で区切ったり、フィジカルディスタンスのためのフットプリントを設置する。
 メニューは世界各国の選手団のさまざまな食習慣や文化・宗教に対応した幅広い選択肢の食事を用意、約700種類のメニューを提供する。
 それぞれの料理は素材そのものを活かしたプレーンな調理法を基本として、選手が自ら味付けできる多種類の調味料を用意する。
 サービスされる料理は、日本料理、ワールド、アジア、ハラール、ベジタリアン、グルテンフリー、ピザ/パスタなど。


メインダイニングルーム


飛沫防止板で区切られた座席 提供 TOKYO2020


メニューのサンプル 提供 TOKYO2020

複合施設
 選手村の中心部に位置し、各居住棟からのアクセスが容易。
 3階建ての恒久施設で、1回には総合診療所やドーピングコントロールステーション、2階にはカジュアルダイニングやレクリエーションエリア、3階にはフットネスセンターが設置される。
 ドーピングコントロールステーションでは、クリーンな競技運営を行うために効率的で精度の高いアンチ・ドーピングプログラムを実施する。アスリートのプライバシーにも配慮して、9部屋のプロセスルームを設置して、尿検体や血液検体を採取する。
 24時間対応。
 カジュアルダイニングは、オリンピック時には280席、パラリンピック時には250席が設けられ、1日最大3000食が提供される。
 複合施設は、大会後、商業施設に改装される。


複合施設 提供 TOKYO2020

仮設医療施設 発熱外来
 発熱の症状が出た選手等のための診療・検査施設で、感染症の疑いのある患者に対する診療やPCR検査を実施する。
 検体の分析は施設内に設置するブランチラボで行うので、スピーディな検査体制が確保される。検査結果が判明するまでの間の待機場所として隔離スペースを設置する。
 一方、濃厚接触者の検査エリアも設け、濃厚接触者の検査を実施する。
 陽性者が発生した場合は、感染症対策センターや保健衛生拠点と連携して対応する。


発熱外来エリア 住居棟から離れた場所にプレハブで設置 提供 TOKYO2020


発熱外来診察室 提供 TOKYO2020

選手村ビレッジプラザ
 選手村ビレッジプラザは、選手の生活を支える施設として、店舗、カフェ、郵便局、宅配便サービス、銀行などが設置される。
 ビレッジプラザは、全国の自治体から無償で提供してもらった木材約4万本を使用して建設した。木のぬくもりを大切にしたデザインで、延床面積5300平方メートル(5棟)の仮設建築物である。大会後は解体されて各自治体に返却して、公共施設などでレガシーとして再利用される。
 ビレッジプラザには、NTTドコモが協賛して、「docomo 5G LOUNGE」をオープンし、ソフトドリンクや軽食をサービスするとともに次世代通信、5Gを選手やコーチなどに体験してもらうサービスを展開する。また、Galaxyは、「Galaxyアスリートラウンジ」を設置して5GスマホなどをPRする。Canonはフォトスタジオ、アシックスがドライクリーニング・サービス、ヤマトはクーリエカウンター、日本郵政は郵便局、三井住友銀行が両替や入出金窓口を設置する。




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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2024年6月20日
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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
imssr@a09.itscom.net
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セーヌ川浄化作戦 14億ユーロ セーヌ川再生 泳げるセーヌ川 巨大地下水槽 大腸菌 トライアスロン オープンウォータースイミング パリオリンピック Paris2024

2024年07月19日 17時03分36秒 | パリ五輪2024


出典 Paris2024




 出典 L’Express
イダルゴパリ市長 セーヌ川を泳いで水質改善アピール
 セーヌ川開会式のが1週間ほどに迫った7月17日、アンネ・イダルゴ市長はエスタンゲ大会組織委員会長とセーヌ川に入って泳ぎ、水質懸念の払拭を図った。
 セーヌ川は水質の悪化などから1923年から遊泳が禁止されてたが、五輪を誘致するにあたって、イダルゴ市長は「セーヌ川で泳ぐ」を掲げ、14億ユーロ(約2500億円)を投じて大規模なセーヌ川浄化作戦を展開した。巨大地下貯水槽を建設したり浄水施設を整備して水質改善に取り組みんできた。Paris2024ではトライアスロン(スイム)とマラソンスイミングを開催する。イダルゴ市長クロールで息継ぎをしながら、セーヌ川を50メートルほど泳いた。

 パリのイダルゴ市長は、大会前に自らセーヌ川で遊泳すると公言していた。先週の水質検査では初めて細菌の濃度が基準値を下回ったが、降雨があれば依然として水質悪化の懸念は大きい。
 一方マクロン氏自身も川で泳ぐと表明したが、今のところ日程は発表していない。


セーヌ川 出典 Le monde

セーヌ川の水質検査  出典 Reuters
Paris2024 セーヌ川の水質改善 大腸菌レベルが4日連続で許容範囲内に低下
 セーヌ川の水質が改善したとの検査結果が、パリオリンピックの開幕を3週間後に控えた7月4日木曜日に示された。この日はセーヌ川で屋外水泳競技会が開催される予定だ。
パリ市長室が発表した結果によると、パリ中心部のオリンピック水泳場では、フランスの首都の暖かく晴れた天候を受けて、大腸菌レベルが4日連続で許容範囲内に低下した。
 市長室は声明で「この前向きな発展は、太陽の光と暖かさが戻ってきたこと、そしてセーヌ川の水質を改善する戦略の一環として行われた取り組みの効果の結果である」と述べた。期間は6月24日から7月2日まで。
 出発点となるパリ中心部のアレクサンドル3世橋の場所では、前週、大腸菌(糞便の存在を示す細菌)のレベルがスポーツ連盟が毎日定めている上限値を上回っていた。水泳用に。
一時、大腸菌レベルは100ミリリットルあたり1,000コロニー形成単位(cfu/ml)の上限の10倍に達し、過去2か月にわたる大雨によりオリンピック競技への懸念が生じた。セーヌ川は、7月30日から31日と8月5日のトライアスロンの水泳区間と、8月8日から9日のオープンウォータースイミングに使用される。
 しかし、先週の腸球菌の測定値(水質の 2 番目の重要な測定値)は著しく改善され、アレクサンドル 3 世橋では毎日許容範囲内に収まった。

出典 France24



パリプラージュ(Paris Plages)パラソルやビーチチェアが並ぶセーヌ川沿い 出典 Sportir Paris
Paris2024 セーヌ川浄化作戦 「泳げるセーヌ川」を取り戻す
 セーヌ川はいつの時代もパリ市民にとって特別な意味を持つ心のより所である。
パリの夏は、恒例イベント「パリプラージュ(Paris Plages)」で彩られる。プラージュとは、フランス語でビーチの意味で、期間中はセーヌ川沿いにパラソルやビーチチェアが並べられ、人工ビーチで多くの市民が日光浴を楽しむ。以前は大量の砂を運びこみセーヌ川岸に本物そっくりのビーチが作られたが、環境面への配慮などを理由として、近年は芝生や木製デッキの設置にとどめているが、セーヌ川岸では、この時期にさまざま夏のイベントも開催される。
 パリプラージュのもう一つの目玉は、パリ市内を流れる運河の中に設けられるプール。運河(ヴィレット貯水池)の一部を区切ってプールが作られ、無料で市民に開放される。定期的な水質チェックが行われるが基準は満たされているようだ。

パリプラージュ(Paris Plages) 出典 Sportir Paris

パリプラージュ(Paris Plages) 出典 Sportir Paris

ヴィレット貯水池に設けられたスイミング・プール 出典 tricolorparis

 パリ市は、Paris2024までに、セーヌ川での遊泳を可能にしようとする野心的な取り組みに挑んだ。
 1900年にパリで初の五輪が開催された時は、水泳競技の会場はセーヌ川だった。当時は市民もこの川で泳いでいたが、2回目の開催となった1924年パリ五輪の前年、水質汚染のために遊泳が禁止されてしまった。
その後、1990年に当時のパリ市長であったジャック・シラク氏(後のフランス大統領)が「セーヌ川の水質が改善されていることを示すため、自分はセーヌ川で泳ぐ」と公言したものの、残念ながら実現しなかった。しかし、約30年の時を経て、アンヌ・イダルゴパリ市長が「パリで泳ぐ(Nager á Paris)」というプロジェクトを打ち出した。このプロジェクトに基づき、2024年大会誘致にあたって、トライアスロンやオープンウォータースイミングをセーヌ川で実施すると宣言した。環境政策に取り組むパリ市にとってのParis2024の重要なレガシーとして位置付けている。
 パリ市と中心に関係機関は、2016年にセーヌ川委員会(le Comité Seine)を設立し、水質改善プロジェクトに取り組み始めた。
 セーヌ川浄化作戦に投じられる資金は約14億ユーロ(約2240億円)、そのうち、半分は国が負担する。

Paris2024のテストイベントを兼ねた世界トライアスロン大会(2023年) 出典 Inseide the Games


Pont Alexandre III  トライアスロン(スイミング)、オープンウォータースイミング競技の会場   出典  Paris2024

巨大地下貯水槽の建設など14億ユーロ(約2400億円)を投入
 パリ南東部にあるオステルリッツ駅近くに、9000万ユーロ(約144億円)を投じて巨大地下貯水槽、「オーステリッツ貯水槽」を建設した。円柱状のコンクリート施設で、直径約50メートル、深さ約30メートル、競技用プール20杯分の水をためられる。大雨の際に、下水処理場の処理能力を上回った場合には、未処理のままで生活汚染水は雨水とともにセーヌ川に放出されるが、この施設に一時的に排水を流し込んで未処理の汚染水のセーヌ川への流入を抑える。2基の浄化装置も整備した。
 またセーヌ川の汚染の大きな原因となっている路上の汚水やごみを雨水管に流していた地区の配管網も改善した。
 セーヌ川に停泊するペニッシュ(平底船)の生活排水の垂れ流しを禁止して、市の下水道を使うよう義務付けた。ペニッシュの隻数は市内で約300隻、近郊を含めると約1300隻にのぼる。
 投じられた資金の合計は約14億ユーロ(約2400億円)にも上り、うち半分を国が負担する。

巨大地下貯水槽、「オーステリッツ貯水槽」(Basin of Austerlit) 出典 rfi


浄化作戦展開前のゴミの浮かぶセーヌ川 出典 Reuters


セーヌ・アヴァル(Seine-Aval)下水処理場  出典 Seine Aval
セーヌ川浄化作戦の主役 セーヌ・アヴァル(Seine-Aval)下水処理場
 パリ郊外のセーヌ川沿いにあるセーヌ・アヴァル(Seine-Aval)下水処理場は、ヨーロッパ初、シカゴに次いで世界で 2 番目の巨大な下水処理施設である。 600 ヘクタール以上に敷地に建設された施設の処理能力は1日、1,500,000立方メートル、パリ都市圏の廃水の 60% を処理し、セーヌ川に水を戻す。1940年に操業を始め、2011 年には欧州枠組み指令の都市廃水指令 (DERU) を満たすために3 つの新しい設備 (追加の脱窒装置、汚泥処理排水汚染除去装置、汚泥濃縮装置) を建設し、下水処理施設としての近代化を果たした。
廃水処理の質を向上させ、によって課せられた良好な生態学的ステータスの目標を達成するために、最新の浄化装置と汚泥回収を備える。
Paris2024に向けてのセーヌ川浄化作戦では、数億ユーロを投じて処理能力のアップや浄化性能の改善を実施した。


お台場海浜公園 トライアスロン(スイミング) Tokyo2020 出典 IOC
Tokyo2020 お台場海浜公園 「トイレのような臭い」
 Tokyo2020ではお台場海浜公園がトライアスロンやオープンウォータースイミング競技の会場となったが、2019年に実施されたテスト大会に参加した選手から「トイレのような臭いがする」と酷評された。
 東京五輪組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)は、レインボーブリッジや都心のビル群が背景に広がる「都会的なコース」として高く評価して会場として選んだが、問題は東京湾の大腸菌汚染された海水である。東京都はポリエステル製のスクリーンで競技コースを囲み、大腸菌に汚染された水の流入を防ぐという応急対策を講じたが、大雨で大腸菌汚染が基準値を上回る、Tokyo2020のテスト大会を兼ねたパラトライアスロンのワールドカップ(W杯)では、水質が悪化したとしてスイムを中止してランとバイクのデュアスロンに変更することを余儀なくされた。実施した水質検査で大腸菌の数値が国際トライアスロン連合(ITU)が定める上限の2倍を超えという。
 東京23区の多くの地域は、台所やトイレの生活排水を、雨水と共通の下水管で集める「合流式」。大雨の時などは雨水が集中して処理しきれず、未処理のまま東京湾に直接放出される。東京湾は大腸菌の海なのである。
 東京都水道局によれば、23区部の合流式下水道を分流式下水道に改築する場合の概算事業費は総額で約10兆3000億円程度と想定しているとしている。抜本的な解決をするには分流式にすることが必要なだが膨大な経費がかかることがネックとなる。
 同じ問題を繰り返す東京とパリ、「選手ファースト」で競技会場を選ぶのではなく、「見栄え」と開催都市のPRを優先させるあからさまな姿勢が浮かび上がる。

お台場海浜公園 今も特別なイベント開催時以外は遊泳禁止 筆者撮影
水質汚染深刻 お台場海浜公園 「トイレの臭いがする」 トライアスロン・マラソン水泳 Media Close-up Report

下水道処理は「合流式」が通常 「分流式」は限定的
 日本では東京都や大阪市・名古屋市などの都市や、世界ではロンドンパリ、ニューヨークなどの多くの大都市が、雨水と汚水を合流させて処理する「合流式下水道」を採用している。これに対して雨水と汚水を分離して処理する「分離式下水道」を採用している地域は極めて限定的になっている。
「分離式下水道」の建設は、雨水の汚水の2つの配水管網を整備するコストが膨大で、豪雨の際のオーバーフローによる洪水防止との兼ね合いで、各都市は合流式を採用して下水道整備を進めてきた経緯がある。
 「合流式」を「分流式」に切り替えるためには、2017年度の都議会の質疑で、東京都は東京都23区だけでも約10兆3千億円もの財源が必要になることを明らかにしている。現在は20兆円近くに上る可能性がある。

出典 東京都下水道局


水処理のしくみ
 日本で行われている下水処理場(水再生センター)では、沈砂池、第一沈殿池、反応槽(生物処理槽)、第二沈殿池、塩素接触槽の順に、プールのような水槽下水を流す過程で行われる。このプロセスは海外でも基本的に同様である。
・水再生センターに流入した下水は、まず、沈砂池で大きなゴミを取り除き、土砂類を沈殿させる。
• 次に、第一沈殿池で下水をゆっくり流し、下水に含まれる沈みやすい汚れを沈殿させる。
• 反応槽(生物処理槽)では、下水と微生物の入った汚泥(活性汚泥)を、空気を送り込みながら6~8時間ほどかき混ぜる。下水中の汚れを微生物が分解し、細かい汚れは微生物に付着して沈みやすいかたまりにする。
• 第二沈殿池では、反応槽(生物処理槽)でできた汚泥(活性汚泥)のかたまりを3~4時間かけて沈殿させ、上澄み(処理水)と汚泥とに分離させる。
• 最後に塩素接触槽で、処理水を塩素消毒して大腸菌等を消毒してから、川や海に放流する。

出典 東京都下水道局


「合流式」の欠点 大雨の際は未処理の大量の汚水が放流される
 「合流式下水道」は、大雨が降ると大量の雨水が下水管や下水処理場に流れ込み、その能力をあっという間に上回り、街中は汚水の「洪水」に見舞われる。このため大雨の際は、配水管の各所にある「雨水吐け口」や「ポンプ所」から河川や海などに汚水の混じった雨水を未処理で排水したり、下水処理場では固形物沈殿処理して消毒剤(塩素)を混ぜるだけで、通称「簡易処理水」として放出したりする。「簡易処理水」は本来の下水処理のプロセスを大幅に省略しているので、とても「下水処理済」とはいえない。
 隅田川沿いには下水処理場(水再生センター)が多く立地していて、墨田川には大雨になると大量の未処理の汚水が流れ込む。東京湾の汚染の大きな原因となっている。

未処理の排水を流す目安
東京都下水道局では、晴天時の排水量を1Qとして、多少の雨が降った際の1Q~2Q(=1Qの倍)の間は、下水処理場(水再生センター)で完全に処理して、河川や海に排出する。
大雨が降って、2Qと超えた場合は、沈殿処理や消毒処理を行う「簡易処理水」として河川等に放流する(2Q~3Q)
豪雨となって3Q(1Qの3倍)を越えた場合は洪水を防ぐために未処理の汚水混じりの雨水を「雨水吐け口」や「ポンプ所」から排出する。
 下水処理場(水再生センター)などの貯水槽からの放流回数は、年13回、貯水管の「はけ口」からの放流化指数は14回程度としている。 
 冬期間は大雨がほとんどないので、梅雨の期間から夏から秋の台風シーズンかけては月に数回の未処理汚染水の排水が行われると思われる。

大雨時に雨水を貯める貯蔵施設を増強
 「合流式」を「分流式」変えるには膨大な時間と経費がかかるので一朝一夕には不可能だが、大雨が降った場合に、雨水を一時的に貯める貯水槽や下水処理場(水再生センター)貯蔵施設を整備すれば、下水処理能力のオーバーフローは避けることができる。東京都では貯蔵施設の能力を115万立方メートルの平成28年度)から、平成35年度まで170万立方メートルに増強する計画である。また高速ろ過装置を 東京五輪2020までに6か所の水再生センターに導入した。
 しかし、大雨の度に大量の未処理の汚染水が流れ込む東京湾、その海がきれいになる日は遠い。


出典 パリ観光サイト
セーヌ川の水質改善は前進 しかし市民から懐疑的な声
 こうした対策で、セーヌ川の水質改善は大きく進展した。今年6月初めの検査では欧州の基準を満たす「優れた結果」が出た。五輪の競技会場となる場所で2022年夏に実施した検査の結果では91%が基準に適合したという。組織委員会は事実上の安全宣言を出した。
 一方、フランスの環境NGO「サーフライダー財団(Surfrider Foundation)」は今年4月、セーヌ川のアレクサンドル3世橋で、昨年9月から今年3月にかけて採取した水のサンプル14件のうち、13件で大腸菌と腸球菌の量が、国際競技連盟の定める最大許容量レベルを超えていると公表した。大腸菌の測定値は、許容レ別の3倍以上に達した。「劣悪な」水質となった原因は、5月は豪雨に見舞われた上に、「雨から下水道の故障や接続不良のボートや動物の排泄物など」複数あると述べ、「汚染された川で競技することは選手にとってリスクになる」と指摘した。
 市民の遊泳場は、25年以降、パリ市と近郊のイルドフランス地域圏で、計23カ所(市内3カ所、郊外20カ所)が設置される計画だ。遊泳場のプールは川の中に設置され、目印のブイが設けられ、桟橋や着替えスペース、シャワー、荷物置き場を整備するとしている。ただし悪天候や局所的な水質変化もあり得るため、夏の間、毎日必ず泳げると保証することはほぼ不可能だ。
 「泳げるセーヌ川」作戦には、市民から懐疑的な声も上っている。「濁った水の色を見ると当面は泳ぐ気になれない」と話す女性や、「捨てられた冷蔵庫やソファが流れてくるような川で泳ぐ意味がどこにあるのか」、「まだ変な物が浮いている。上流をしっかりきれいにしなければ」と手厳しい意見が相次ぐ。
 また上流地域には下水設備が未整備で、生活排水をそのままセーヌ川やその支流に垂れ流している住宅などが2万戸以上あるが、対策は進んでいない。
一方、イダルゴ市長は、セーヌ川の浄化は気候変動に備えた適応策の一環でもあると説明。セーヌには生物多様性を確保する回廊(コリドー)の役割や、夏に涼をとる場所としての役割があると語り、川にすむ魚は浄化前の2種類から、最近は35に増えていると指摘した。


出典 IOC
「セーヌ川の浄化は五輪の最も重要なレガシー」 マクロン大統領
 市民のくすぶる懐疑論を打ち消すため、イダルゴ市長は再三にわたって自らが大会前にセーヌ川で泳いでみせると公言。マクロン大統領も「私も泳ぐ」と約束した。
 マクロン大統領は、セーヌ川の浄化は五輪の最も重要なレガシーになるとして、セーヌ川と支流のマルヌ川を遊泳可能にすることは「2024年に向けての目標だ」と強調した。もし成功すれば、パリの夏の風物詩だったセーヌ川での遊泳の伝統が復活することになる。
 2023年の8月、Paris2024のテストイベント、オープンウォータースイミングワールドカップとワールドトライアスロンパラカップの水泳競技は、大雨で水質が悪化して中止、テストイベントを兼ねた世界トライアスロン大会は8月後半に延期された。
 パリ五輪組織委員会は、本番の大会のスキームとして、水質が改善されない場合の「プランB」を発表、プランBとは、「競技を数日延期するが、会場は変更しない」という代替案である。
 約1か月後に開幕が迫った6月21日に、パリ市は、セーヌ川のトライアスロンやマラソンスイミングの会場付近で実施した水質調査で、大腸菌の検出値が許容上限の5倍に達した地点もあったと発表。国際大会では水100ミリリットルあたりの大腸菌コロニー形成単位(CFU)が1000を超えてはならないとされるが、6月3日以降の2週間、競技会場で許容上限を下回ったのは9日だけで、16日には2000CFUを越え、市西部では5000CFUに達した。
 パリ市は、最近数カ月間の降雨で水位が上がったのが主原因だと説明した。未処理の下水があふれ、川に流れ込んだとみている。市は天候が回復すれば、紫外線による殺菌効果が期待できると望みをかけている。
 依然として天候に左右されるリスクを抱えている。
 Paris2024ではセーヌ川で泳ぐアスリートの姿が本当に見られるのか、更にセーヌ川で泳ぐパリ市民の姿が新たな夏の風物詩となるのか注目される。

EU「水枠組指令」
【英】Directive 2000/60/EC of the European Parliament and of the Council of 23 October 2000 Establishing a
 EUは表流水,地下水,沿岸水 (海岸から 1 海里まで)などの水系の汚染について,原因や地域別に汚染防止の多数の法律を作って,水質改善を図ってきてきた。さらなる改善を図るために,地域や原因別に対策を講ずるだけでなく,集水域単位に全ての水系や汚染原因に対して包括的な取組を行うことが必要だとして,2000年10月に「水枠組指令」(「共同体の水政策の行動に関する枠組を定める指令」(Directive 2000/60/EC)を採択・施行した
 EU 加盟国が 2015 年までにすべての水域や地下水を含む) の質的および量的状態を良好にすることを義務付ける EU 指令。EU水域の水質を持続可能に利用でき、生態学的に健全な状況にすることを目的にしている。
 この指令は、従来の限界値アプローチ(基準値の設定)を規定するのではなく、共通目標を達成するための「手順を規定する」することで、「枠組み指令」としているのが特徴である。
 河川単位で浄化及び管理の取り組みを導入し、国境を越える河川も同様である点に特徴がある。本指令が掲げる期限付きの目標は、すべての水域を2015年までに良好な水質状態にするとしている。
 この目標を達成するため、2000年には水質規制対象物質のリストが欧州委員会から公表されており、このリストが採択された後に水質基準、排出規制策が策定される。
 この他、適正な水道料金の設定、産業活動のみならず農業や都市地域からの排水の汚染管理、水質管理活動へのNGOや地域の人々の参加要請といった規定もある。
 しかし、2015年までにすべてのEU水域で「良好な状態」という指令の目標は達成されず、対象となる EU 水域の 47%が目標を達成していない。

 

出典 土木技術資料




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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2024年7月1日
Copyright (C) 2024 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
imssr@a09.itscom.net
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パリオリンピック2024 Paris2024 開催経費 高額チケット批判 テロの脅威 警備

2024年07月13日 23時05分52秒 | パリ五輪2024


出典 Paris2024



マクロン仏大統領 Paris2024の開会式、7月27日前に仏政局は大混乱 画像 France24
マクロン仏大統領 Paris2024の開会式、7月27日前に仏政局は大混乱 画像 France24
🌐仏総選挙は左派連合が最大勢力に、マクロン大統領の与党連合は大敗第二党 極右第3勢力に後退 連立の行方混迷か
 7日に決選投票が実施されたフランス国民議会(下院、定数577)の総選挙で、野党の左派連合が最大勢力に躍進した。マクロン大統領率いる与党連合との候補者調整が奏功し、議会第1勢力の座が有力視された右翼「国民連合(RN)」を土壇場で失速させた。いずれの党も過半数に届かず、政局の混迷が長期化する恐れが強まっている。
 総選挙は、6月上旬の欧州議会選で与党連合がRNに大敗を喫したことを受け、マクロン氏が下院を解散し、実施された。内務省の確定結果と仏紙ルモンドの集計によると、左派の政党連合「新人民戦線(NFP)」は最大勢力となる182議席を獲得。与党連合は168議席で、解散前の250議席から大幅に減らした。一方、一時は単独過半数をうかがう勢いと伝えられたRNと右派の共闘勢力は143議席にとどまった。
 窮地に立たされたマクロン大統領は、極右と極左を除いた幅広い連立を目指すとしている。Paris2024開幕まで50日を切った。


“Games where everyone can participate”を掲げてパリ夏季五輪大会開催 開催経費は89億ユーロ(約1兆5000億円)

セーヌ川開会式  出典 Paris2024
 パリ五輪2024は、7月26日から8月11日まで開催され、32競技329種目が行われ、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞った。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる。
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。
 主要競技会場は、、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッド廃兵院などのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
 異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計41(39)の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
 オリンピック選手村は、パリ北部のサンドニに約20億ユーロ(約3200億円)を投じて建設された、約70%が民間資金で、公的資金は6億5000万(約1000億円)ユーロが投入された。
 大会期間中は約14000人の選手や関係者の宿泊施設となる。大会終了後は2220戸以上の一般市民用の住居と770戸以上の高齢者や学生向けの住居が設けられ、医療施設や学校も整備されて約6000人が暮らすニュータウンとなる。また約6000人が働くオフイススペースも整備される。

 開催経費は、インフレの影響で当初予算から約35%増加し、組織委員会予算で約44億ユーロ(約7400億円)、競技会場やインフラ整備を担当するオリンピック施設庁(SOLIDEO)予算で約45億ユーロ(約7600億円、合計89億ユーロ(約1兆5000億円)程度とされている。
 ちなみにTokyo2020では組織委員会経費が6404億円、国や東京都が7834億円、計1兆4238億円、ほぼTokyo2020と同額の開催経費となった。
 開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
 Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、数千人を乗せた100隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料席22万2000人)に半減された。
 パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能な席は無くなった。
 そして観客のためにルートに沿って 80 の巨大なスクリーンが設けられる。
 またエッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)には数十人の各国首脳と政府や国際機関の関係者、約200人が出席する予定だ。
  Paris2024では、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。

Paris2024開会式  出典 Paris2024

唯一新設したアリーナ、オリンピック・アクアスティック・センター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席) 出典 Paris2024

唯一新設したアリーナ、オリンピック・アクアスティック・センター 出典 Paris2024

パリの象徴エッフェル塔前の公園 ビーチバレー競技会場 出典 Paris2024

パリの代表的な歴史遺産 グランパレ(Grand Palais) 1990年パリ万博会場として建設 4億6600ユーロ(約760億円)をかけて大改修 フェンシングとテコンドーの競技会場 出典 Paris2024  

シャネルが2500万ユーロの協賛金を改修費用に拠出  出典 Chanel

ベルサイユ宮殿 馬術競技会場 出典 Paris2024

異例の展開 2024夏季大会招致
 Paris2024が決まったのは、極めて異例の展開の中で行われた。
 2024年夏季五輪大会に最終的に立候補したのは、ブダペスト、ローマ、ロサンゼルス、パリの4都市だった。パリは1924年パリ五輪から100周年の節目の年の開催を目指した。
しかし、暴騰する開催経費の懸念や住民の反対運動などでブダペスト、ローマが相次いで撤退し、結局残ったのはロサンゼルス、パリの二都市となってしまった。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、住民の理解が得られず五輪大会の開催地に手を挙げる都市がいなくなることに危機感を抱き、立候補したパリとロサンゼルスを24年と28年の2大会の開催都市に振り分ける異例の同時決定を行った。
 IOCはどちらの都市が先に開催するかは、二つの都市で話し合うことを求め、その結果、「100周年」を掲げるパリが24年、ロサンゼルスが28年開催で決着した。
 IOCのしたたかな戦略が浮かび上がる。

マクロン仏大統領とバッハIOC会長  出典 IOC Media

高額批判殺到 Paris2024のチケット
 Paris2024組織委員会は、1350万枚(約1000万枚は一般市民に売り出し)のチケット販売で約12億7000万ユーロ(約2100億円)(ホスピタリティパッケージを含む)の収入を得ることを想定、これは組織委員会予算の約44億ユーロ(約7260億円)の約3分の1に相当する。組織委員会の予算を黒字にするためには、スポンサー収入(12億2600万ユーロ)と並んでチケット収入の確保は必須となっといる。その結果、2012ロンドン大会や東京2020を上回り過去最高の高額チケットになったと批判が集まっている。
 Paris2024では"Games Wide Open" を掲げて多くの市民にオリンピック競技を観戦してもらいたいとしてチケットの価格設定をしたとしている。
 このの象徴として100万枚のチケットが24ユーロ(約4000円)で提供される。しかし約半数は国が買い上げて地域社会にに割り当てられ、一般市民向けに販売されるのは約半分にとどまる。一般市民向けの販売されるチケットのほぼ半分は50ユーロ(約8250円)になるとした。
 組織委員会のエスタンゲ会長は、「大規模なコンサートを見に行くと、チケットは数百ユーロかかる。遊園地に行ってもほぼ同じだ」とし、「オリンピックは100年に一度。地球上で最も偉大なチャンピオンであり、価値がある」と述べた。
 またエスタンゲ氏は、セーリング、7人制ラグビー、ゴルフ、フットボールのチケットはまだ24ユーロで、あらゆるスポーツで24ユーロのチケットが100万枚あるとした。そしてパリ2024大会は第1段階で販売されたチケットの平均コストが74ユーロ(約1万2210円)で、チケットの50%、500万枚のチケットは50ユーロ(約8250円)以下だと、「2012年のロンドンよりも『高くはない』」と語った。
 チケットの販売は158の国と地域で行われ、3分の2はフランス国内である。

 セーヌ川開会式の座席の価格は90ユーロ(約1万4850円)から2,700ユーロ(約17万5500円)。開会式のチケットは合計7万枚が販売される。
 VIP スタンドの価格はフロアで 5,500 ユーロ (約90万円) 以上、最高価格はクルーズ船からセーヌ川のスポーツ代表団を間近で見ることができるプレミアムシートで25000ユーロ(約375万円)。

 2023年3月、仏メディアが実施した世論調査では、フランス人の82%がパリ2024年のチケットは高すぎるとし、79%が発券プロセスが煩雑すぎると考えていることが明らかになった。
 批判が集まっているのは980ユーロ(約16万1700円)で販売された陸上競技のチケットである。
 世界陸連のセバスチャン・コー会長は、Paris2024noチケットは「高価」であるとし、「私たちのスタジアムがオリンピックに参加する余裕のある人だけでなく、私たちのスポーツを愛する人々で満たされることが重要だ」述べた。選手の家族が来年の五輪でキャリア最高の瞬間を逃すのではないかと懸念していると述べた。
 その一方で、「たとえチケット代が高価であっても、スタジアムを満員にするために全力を尽くすのが私の責任だ。Paris2024が国際競技連盟にとってもファンにとっても最も費用がかかる大会になることを受け入れなければならない」と弁護した。


出典 Paris2024
 第1段階の売り出しは、2023年2月23日~3月11日まで、300万枚が発売された。
 チケットの購入申請者は、同時に 3 つのイベントの入場券を購入することが義務付けられた。第1段階で325万枚のチケットパッケージを販売を達成、これは目標数字を25万枚上回った。
 チケットの価格は、格安の24ユーロ(約4000円)が13%、100ユーロ(約1万6500円)未満が70%、200ユーロ(約3万3000円)未満は4.5%で、数百万枚が50ユーロ(約8250円)程度だった。

チケット売り出しプロセス 出典 おr

 第2段階は5月11日に開始、全スポーツの150万枚のシングルチケットと開会式と閉会式を発売した。約10%が15万枚を24ユーロで販売し、200ユーロ(3万3000円)以上のチケットが10パーセントある。第一段階と第二段階で、発売される1000万枚のチケットの内、約半分が販売されることになる。
 ブレイキング、スケートボード、BMXの決勝戦のチケットは50ユーロ(約8250円)、手に入る。バスケットボールの決勝戦では、 95 ユーロ(約1万6000円)陸上競技では、最高料金が980ユーロ(約16万円)の3つのセッションがあり、特別な夜の陸上競技は125ユーロ(約20万円)である。
 セーヌ川開会式の座席の価格は90ユーロ(約1万4850円)から2,700ユーロ(約17万5500円)、スタッド・ド・フランスでの閉会式は250ユーロ。

 第3段階は2023年11月30日に開始、パリ地域のイベントの37万枚以上を含む40万枚のチケットが発売された。これまでに約1000万枚の内、約720万枚が売れている。
 発売されたチケットは、サーフィンを除く全種目で、1/3 は 50 ユーロ以下、ほぼ 2/3 は 100 ユーロ未満の価格である。
  40 万枚のチケットのうち約3万枚が陸上競技、2万4千枚がテニスである。
 組織委員会はパラリンピックのチケット280万枚の販売する計画だと発表した。。

出典 Paris2024
 最終段階の売り出しは2024年4月に開始、25万枚を売り出した。半数以上が100ユーロ未満で、その中に24ユーロのチケットが約2万枚含まれる。
・ベルサイユ宮殿の庭園で行われる馬術イベントは9000枚、24 ユーロから 420 ユーロ
・アクアスティック・センターの水泳は 15万000枚、価格は 24 ユーロから 980 ユーロ
・ベルシー アリーナの体操競技は 1万枚、24 ユーロから 690 ユーロ
・エッフェル塔スタジアムでのビーチバレーボールは3万5000枚、24ユーロから420ユーロ
・ローランギャロスでのテニスは 1万2000枚、24 ユーロから 420 ユーロ
・グラン・パレの柔道は2000枚、24ユーロから380ユーロ
・ サンカンタンアンイブリーヌ競輪場のトラックサイクリングは2000枚、24ユーロから380ユーロ
・パリ南アリーナ(ポルト・ド・ベルサイユ)の卓球は 1万2000枚、 24 ユーロから 280 ユーロ
・セーヌ川での開会式は90ユーロ、スタッド・ド・フランスでの閉会式は250ユーロ

 物価高騰で開催経費が増加し、収支のバランスを維持するのに苦戦するParis2024、チケット収入をあてにせざるを得ない中で、高額チケットの批判の市民の反発は頭が痛い深刻な問題である。根源的な問題は毎回、肥大化するオリンピック大会、スリム化に舵を切らなければ解決策は見当たらない。


出典 Insidethegames
Paris2024 テロの“悪夢”
 華やかな国際都市パリは、テロの脅威に常にさらされている都市でもある。
 2015年11月に発生したパリ同時多発テロ事件の強烈なインパクトが今でも残る。
 パリ市街と郊外(バンリュー)のサン=ドニ地区ので、イスラム過激派よる銃撃おや爆発が同時多発的に発生し、死者130名、負傷者300名以上の犠牲者を出した大惨事となった。
 爆発が起きたサン=ドニにあるスタジアム、スタッド・ド・フランスでは、男子サッカーのフランス対ドイツ戦が行われており、フランスのオランド大統領とドイツのシュタインマイアー外務大臣も観戦していたという。
 フランスの治安専門家は、「オリンピックは治安リスクの悪夢になるだろう」と述べている。
 Paris2024には、世界各国から1,200 万人の観光客が訪れるが、その安全を確保すると共に、オリンピック選手村や競技場エリアに出入りする大会関係者を監視しなければならない。
 最大の問題は、セーヌ川で開催される開会式である。当初は60万人(その後30万人に半減)を超える観客が殺到することが予想され、「無差別テロ」のリスクは極めて高い。
 フランスは、テロの脅威からParis2024を守るために、毎日、約4万5000人のフランス警察と治安部隊、2万~3万3000人の民間警備員、約1万5000人の軍隊を動員、史上最大規模の警備を実施する。
 セキュリティ経費の膨張も悩みの種で、3 億 2,000 万ユーロ (約450億円)に増加し、ウクライナ戦争の泥沼化に伴う治安情勢の悪化で、さらに増額する可能性が大きい。
 一方、フランスの国内情報機関DGSIも警察や治安部隊を支援するために、特別なオリンピック情報センターを設立し、総力戦でテロ対策にあたる。
 テロの脅威からParis2024をどう守るか、フランス警備当局に最大の試練が待ち構えている。

ドローン・テロの脅威
 フランス国防省は、Paris2024向けレーザー兵器システムのプロトタイプを 配備する。
 このシステムは「HELMA-P」と呼ばれる対ドローン用レーザー兵器システムで、強力なレーザー ビームを発射して、ミニまたはマイクロ ドローンを無力化することが可能だ。
 またアンチドローンシステムには、ドローンの位置を特定するのに役立つレーダーや無線周波数センサーも含まれている。
 セキュリティ専門家は、ドローンの脅威は近年、オリンピックなどの大きなイベントなどで指数関数的に増加しているとしている。

 2024年3月、フランス・パリ近郊のヴィラクブレー軍空軍基地で、夏季オリンピックの開催に先立ち、対ドローン防衛装備、対ドローンライフルの演習が行われた。
 フランスは無人機対策部隊の支援を受けて大会の安全確保に向けてあらゆる手段を講じる。ィラクブレー軍事基地は、ドローン対策調整センターの本拠地となり、警察、憲兵、陸軍将校が連携してドローンの脅威を封じ込める。
 ドローン対策調整センターでは、「他の目的使用されたドローンを兵器に変えるのは容易だとうということを痛切に感じている」と話す。
 セキュリティ担当者は、オリンピック会場の地上でレーダー、カメラ、妨害アンテナを備えた対ドローンユニットを配置してオリンピック期間中に航空交通を監視する。危険なドローンを識別して、数キロ離れたドローンを無力化する。
 ドローンの無線信号をスクランブルしたり、レーザーで撃墜したりする対ドローンライフルも自由に使用することが可能だ。
 対ドローン作戦が難しのは、「ドローンはメディアだけでなく、一部の競技では審判にも使用されているため、完全に禁止することはできないことだ」と話す。
 フランスの警備責任者は、武器や爆発物のテロの脅威に対しては相当程度、警備が可能になってきたが、「ドローンはまったく新しい脅威だ」と述べ、「戦場でない市街地に爆発物を積んだドローンが登場するのは初めて、この脅威が現実になるかどうかは分からないが、阻止するのは最も難しい。」と述べた。
 ドローン攻撃に対抗するための新しい防空技術は、ラグビーワールドカップ・フランス大会で試験導入された。
 開会式はセーヌ川の全長6キロメートルに沿って3時間以上かけて行われ、200カ国以上からの選手や関係者を乗せた約100隻のボートが参加する史上初の競技場外の開催となる。国家元首や政府首脳を始め30万人(当初は60万人)の観客がこのルートに集まる。川沿いには80の巨大スクリーンが設置され生中継される。開会式はテロ攻撃の格好の標的になる懸念が大きい。
 またマラソン、パリ市庁舎をスタートし、ルーヴル美術館、ヴェルサイユ宮殿、エッフェル塔などの歴史手的名所を巡る42.195kmのコース、まさにパリが世界に誇る観光名所をアピールする狙いが込められている。五輪マラソンと同一のコースで市民参加マラソンも行われるのも目玉だ。
 しかし、その警備は極めて困難なものとなりそうだ。


パリ市内の監視カメラ  出典 BBC
警備の主役は街中に設置された無数の監視カメラとAIテクノロジー プライバシーとセキュリティのバランスで議論噴出。
 警備当局が重要視するのはスマートカメラ監視システムをパリ市内に無数の設置することである。
 不審な動作を発見する大規模なリアルタイム・AI監視カメラシステムの導入に期待をかけている。
 AIアルゴリズムによってサポートされるこのシステムを有効に機能させるためには「監視権限拡大」が必要となる。警戒すべき群衆の動きなどの不審な行動や放置された不審な荷物を発見するアルゴリズムや顔認識テクノロジーを作動さなければならない。
 しかし、不特定多数の群衆を監視するAI監視カメラはプライバシー侵害、フランスが「監視国家」に変貌してしまうのではないかと懸念も強まっている。「オリンピックはセキュリティ技術業界が長年待ち望んでいた措置を通過させるための口実として利用されている」という批判が強まっている。
 マクロン大統領は、多数の議員らが懸念を表明したことを受けて、フランス政府はすでに顔認証技術の導入は撤回した。 また、国のデータ保護当局と最高行政裁判所から、導入にあたってはより多くのプライバシー保護手段を組み込むように命令された。
 その上でリアルタイム・AI監視カメラシステムの導入は、「実証実験」として実施することを認める法案が通過した。「実証実験」は9月と10月にフランスで開催されたラグビーワールドカップから始まり、Paris2024大会終了から10か月後の2025年6月に終了する計画である。
 この法案ではスポーツ・イベントだけでなく、通常のイベントや文化的な集まりについても適用されるため、オリンピック後に「実証実験」が終了した時に監視カメラに搭載された AIデバイスをどうするかが問題になりそうだ。
 AI監視テクノロジーのソフトウェアは、Atos、Idemia、XXII、Datakalab などのフランス企業が提供可能としている。
 テロの脅威に対してリアルタイム・AI監視カメラシステムは果たして有効に機能するのだろうか。


マクロン大統領とバッハIOC会長 出典 IOC
テロ警戒レベルを最高水準に引き上げ、モスクワ乱射事件受け
 2024年3月、マクロン大統領はモスクワで発生した銃乱射事件を受け、フランスの警戒レベルを最高に引き上げると発表した。この決定は「”イスラム国」(IS)”が犯行声明を発表したことと、わが国に対する脅威の増大を受けたもの」と説明し、犯行声明を出したISの組織は「フランス国内でもこの数か月、複数回テロを企てようとした」ことを明らかにして危機感をあらわにした。
 フランスのテロ警戒レベルは3段階あり、最高レベルは国内外でテロが発生した場合と、テロ発生の危険が迫っているとみなされた場合に発動される。鉄道の駅や空港、宗教施設などの公共の場における軍による巡回強化といった例外的治安措置が認められる。
 フランスでは2023年10月、ガザ地区で軍事衝突が発生した直後、高校教師がイスラム教徒の男に殺害される事件が発生、このとき3段階ある警戒レベルを、最高水準に引き上げたが、その後、引き下げという経緯がある。

マクロン大統領、セキュリティ上の懸念あれば会場変更も パリ五輪開会式
 2024年4月、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は、セキュリティ上の脅威が生じた場合、Paris2024の開会式会場がセーヌ(Seine)川からスタッド・ド・フランス(Stade de France)に変更される可能性があると述べた。
 マクロン大統領は選手団がボートでセーヌ川をパレードする代わりに、式典をトロカデロ広場(Trocadero Square)」の建物内に限定するか、あるいは「スタッド・ド・フランス」に移すこともできる」と語った。 ウクライナ戦争やパレスチナ自治区ガザ(Gaza Strip)での戦闘が激化しているが、大会組織委員会(COJOP)は開会式が別会場に変更される可能性をこれまで否定していた。  
 大統領は「この開会式は世界初だ。私たちにはできるし、やるつもりだ」とししながら、会場を変更する「プランBやプランCがある」と述べ、「リアルタイムで分析を行う」とした。
 フランスの“夢と野望”を背負った2024パリ夏季五輪、“華麗”と“安全”狭間で7月26日の開会式まで苦悩が続く。



パリオリンピック2024 テロの悪夢 テロ警戒レベル最高に セーヌ川開会式に「プランB」 Media-closeup Report

パリオリンピック 競技会場 会場一覧 Paris2024 華麗な舞台 歴史遺産 Media-closeup Report

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2024年5月15日
Copyright (C) 2024 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
imssr@a09.itscom.net
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パリオリンピック2024 競技会場 完全ガイド Paris2024 ランドマークが舞台 歴史遺産

2024年07月04日 22時08分09秒 | パリ五輪2024

史上初のセーヌ川開会式 100隻以上のボートで 出典 Paris2024
“Games where everyone can participate”を掲げてパリ夏季五輪大会開催
  1924年のパリ五輪大会から100周年を記念して開催されるParis2024、観光都市パリを世界にアピールする史上最も華麗な大会になる。
開催期間は7月26日から8月11日の17日間で、32競技329種目が行われ、206か国が参加する見込みで、参加選手数はTokyo2020より約600人少ない1万500人に絞られた。男女それぞれ5250人で、五輪史上初めて男女同数の大会となる
 前回のTOKYO2020は、新型コロナのパンデミックの影響で無観客試合となったが、コロナも収束して、再び満員の観衆を前にして熱気を取り戻した五輪大会となる。
 主要競技会場は、セーヌ川に沿って集中的に行われ、エッフェル塔やグランパレ、コンコルド広場、アンバリッドなどのパリを象徴する歴史的ランドマークが利用される。
 異色なのはサーフィン会場、タヒチのティーポオで開催され、史上初の海外開催となる。
 合計41の競技会場が整備されるが、95%が既存または仮設施設利用する。新設はアクアスティックセンター(Aquatics Center/Sant-Denis 6000席 アーティスティックスイミング、飛び込み、水球)とスポーツクライミング( Le Bourget Climbing venue/Saint-Denis)の2競技場のみだ。
  開催都市が選べる追加競技は、ブレイクダンスが初採用された。スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンはTokyo2020に続いて採用したが、野球・ソフトボールと空手は実施しない。若い世代の重視を強調した戦略だ。
 Paris2024の最大のハイライトは、史上初のセーヌ川(River Seine)で開催される開会式、206 の国と地域の選手や関係者、数千人を乗せた80隻(当初計画は160隻)以上のボートが、セーヌ川を約6km(4マイル)航行、ルートにあるパリのランドマーク、ノートルダム寺院、ルーブル美術館、オルセー美術館、、ポンヌフ(パリ最古の橋)、コンコルド広場、グラン パレ、エッフェル塔を通過する史上、最も華やかな開会式になる。 当初計画では「開かれた大会」を目指して、空前の60 万人以上の観客動員を計画したが、警備の難しさから32万6000人程度(有料席10万4000人、無料席22万2000人)に半減された。
 パレードの出発地点のオステルリッツ橋(Pont d'Austerlitz)から最終地点のエッフル塔前のイエナ橋(Pont d'Iena)の間の川岸下部エリアはチケットの購入が必要な有料席、川岸上部エリアは組織委員会の招待者専用無料席が設置される。当初計画にあった市民が自由に出入り可能なスペースは廃止された。
 またコンコルド広場(Concorde sqaure)やエッフェル塔の向かいにあるトロカデロ広場(Trocadéro square)には、巨大スクリーンを設置したイベント広場となる。
 Paris2024では、「オリンピック史上最も壮観でアクセスしやすいセレモニー」になるだろうと語った。まさに世界に冠たる観光都市、パリを前面に押し出した大会となる。


出典 Paris2024


アクアティクス センター(Aquatics Centre)
開催競技 Artistic Swimming Diving Waterpolo
観客収容数 約5000人 (大会後2500人に縮減)


 アクアティクス センターは、ル ブルジェ クライミング ウォールとともに、2024 年パリ大会に向けて建設される常設スポーツ競技施設。 Paris2024ではアーティスティック スイミング、水球、飛び込みの競技会場となる。Paris2024後を見据えて、アクアティクス センターは地元のセーヌ・サン・ドニ とフランス全土の水泳コミュニティのニーズに応えるように設計されていて、国や国際的な大規模な大会を開催できる機能を備えている。
アクアティクス センターは、高速道路 A1 に架かる歩道橋で」隣接するスタッド・ド・フランスに接続され、スポーツ施設が不足しているセーヌ・サン・ド地域にとっては有意義がある公共投資である。アクアティクス センターは柔軟性の高いモジュール式を採用、観客席は大会期間中の5,000 席から、大会後には地域イベントを開催するために 2,500 席に縮減する。
建物の建設には低炭素を徹底させ、すべての建築資材はバイオベースを使用、木造建築で屋根フレームは周囲の緑に溶け込むように設計されている。太陽光発電パネルで覆われた5,000平方メートルの屋根を備えたこの施設は、フランス最大の都市型太陽光発電施設の1つとなり、センターが必要とするすべてのエネルギーを供給する。内装設備はリサイクル素材で作られ、環境パフォーマンスにおけるフランスの技術力を示すために国内で製造される。
Paris2024終了後のレガシーとして、水泳教室からレクリエーション、ハイレベルな競技会まで、アクアティクスセンターは多目的に利用可能にし、2025年7月より、2つのプール(50メートルと25メートル)、フィットネスエリア、ボルダリングエリア、パドルテニスセクション、チームスポーツ用のピッチを含む、誰もが利用できる広大な複合スポーツ施設となる。様々な用途(赤ちゃんや子供の水泳教室など)に対応できるよう、可動床も備える。アクアティクス センターは、フランスの水泳界が何十年も待ち望んでいた最先端の施設でもあり、、フランスの一流アスリート最高水準のトレーニング施設を提供する予定であり、特にダイビングセンターの本拠地となる予定である。



グラン・パレ(Grand Palais)
開催競技 Fencing Taekwondo
観客収容数 約8000人


出典 Paris2024
グラン・パレ(Grand Palais)は、パリの中心部にあるランドマークの歴史遺産である。 1900 年のパリ万国博覧会のために当時の最先端の建築技術を駆使してパリ中心部のシャンゼリゼ通り近くに建てられた巨大な展示会場である。
壮麗な「身廊(Nave)」と呼ばれる優雅な古典的な石造りの空間とモダンなガラスの屋根で世界的に有名である。 「身廊」は、長さ200メートル、高さは最大45メートルの広大な展示スペースで、その建造には6,000トン以上の鋼鉄が使用されたという。
グラン・パレは、さまざまなスポーツや芸術のイベントのショーケースとして活躍した長い歴史を持っている。毎年世界中のアーティストによる美術展が開催され、2010 年には世界フェンシング選手権の舞台になっている。毎年 200 万人以上の来訪者が、グラン・パレで開催される豊かな文化プログラムを楽しんできた。
しかしグラン・パレは建設以来、120年を越え、全面的な修復していなかったため、老朽化が激しく進行していた。五輪開催を契機に全面的な修復を行い、Paris2024ではシンボルの競技会場にすることになった。
修復工事では内壁や6000トンを超える鉄骨の塗装が塗りなおされていたほか、天井のガラスもすべて手作業で清掃が行われ、建設された当時の明るさを取り戻したという。

出典 パリ観光サイト
また、選手が入場する際に使われる予定だという中央にある馬てい形の大階段は、アールヌーボー様式の曲線的なデザインが特徴で、建設当初の色である、深い茶色に塗りなおされていました。
安全対策やバリアフリー化のため、非常口やエレベーターが増設されていました。
さらに暑さ対策の一環としてあらたに床下にパイプが張り巡らされ、夏場に水を通すことで、屋内の温度を下げる効果が期待され、大型のエアコンを導入するより環境面での負荷も少ないという。
グラン・パレでは柔道とテコンドウの競技を開催、9000人程度の観客を収容する計画である。観客席は主に仮設で設置され、大会が終了したあとは、撤去されてもとの展示会場に戻される。
改修工事に伴う総工費は4億6600万ユーロ、日本円にしておよそ760億円で、フランス政府の補助金や、企業の文化支援事業などからも拠出される。
大規模改修工事にあたっては、Chanel (シャネル)が2500万ユーロを協賛
することになった。Chanelはこれまでも文化や芸術に対してサポートを行っていて、グラン・パレでグランパレにて数多くのショーを開催、空港やスーパーマーケットを再現したり、巨大なエッフェル塔やロケットを設けるなど、壮大な演出が大きな話題を呼んだ。

グラン・パレで開催されたChanelのイベント 出典 Chanel

グラン・パレで開催されたChanelのファッション・ショー 出典 Chanel
2020年12月から開始される大規模改装は、オリジナルのデザインは残しつつも、通路や装飾品、照明などを修復し、ファッションをはじめ、芸術やスポーツといったパリの主要なイベント会場としてグラン パレをさらに進化させて。2023年に仮オープン、そして五輪開催に合わせて2024年に完成予定だ。
大会開催後の2025 年春に完全に再開するグラン パレでは、年間を通して主要な文化イベントの舞台となる。



コンコルド広場(Place de la Concorde)
開催競技 3×3 Basketball Breaking Cycling BMX Freestyle  Skateboarding
観客収容数  約37000人


出典 Paris2024
コンコルド広場は、フランスの歴史を刻む数々の舞台となったパリのランドマークである。18世紀半ばには絶頂期のルイ15世の騎馬像が設置され「ルイ15世広場」と呼ばれた。フランス革命の象徴的な場所で、ルイ16世やマリーアントワネットが処刑された。パリ万国博覧会(1900年)では入場ゲートとなり、第一次世界大戦終結の祝勝記念や第二次世界大戦時のパリの解放の式典会場になった。
Paris2024は、招致の初期段階から、自然環境に囲まれた郊外エリアではなく、都市の中心部に都市型スポーツが定着させたいと考えていた。
 このアイデアに基づき、コンコルド広場をオープン・アリーナとして整備する計画を立案して完璧に実現した。 五輪開催を契機にコンコルド広場を持続可能な再整備をしようとする狙いが込められている。
2014年、国際オリンピック委員会(IOC)はオリンピックアジェンダ2020を発表し、大会組織委員会に対し、プログラムに追加のスポーツや新しいイベントを一時的に追加するよう呼びかけた。 Paris2024 では、ブレイキング、サーフィン、スケートボード (ストリートおよびパーク)、スポーツ クライミングの4つの競技を追加することが決まった。いずれも若者を引き付けるモダンでスペクタクルなコンセプトであふれている。 このアプローチに沿って、3X3 バスケットボール (世界ナンバーワンの都市型スポーツ) や BMX レースのアクロバティックな派生である BMX フリースタイルなどは東京2020で採用された競技Paris2024でも採用された。
パリを象徴するコンコルド広場には3X3 バスケットボール、ブレイキング、BMX フリースタイル、スケートボードの若者に人気があるアーバン・スポーツの競技会場が整備される。7 月 27 日土曜日から 8 月 10 日土曜日まで、4 つの素晴らしいアーバン・スポーツが事実上ノンストップで開催される。



ベルシー・アリーナ(Bercy Arena)
開催競技 Artistic Gymnatics Basketball Trampoline
観客収容数 約20300人


出典 Paris2024
ベルシー アリーナ(Accor Arena)は、パリおよびフランス全土の文化とスポーツの象徴的な建物で、パリ 12 区の風景の中でも特徴的なピラミッド型のデザインで設計されている。国内最大規模のアリーナ。 1984 年に建設されたこの会場では、ロレックス・パリ・マスターズ (ATP ツアーの国際男子テニストーナメント) や 2018 年ヨーロッパ女子ハンドボール選手権の最終ラウンドなどのスポーツイベントや、マドンナ、ダフト・パンク、ジョニー・アリデイ、ポール・マッカートニーなどの国際的なパフォーマーが出演するコンサートも開催された。
2014 年から 2015 年にかけてインフラを近代化するために改装されたベルシー アリーナは、現在、主要な競技会や文化イベントを開催するために機能が整備されている。
建設以来、陸上競技からバスケットボール、アイスホッケー、モトクロスに至るまで、数百ものイベントですでに 3,000 万人以上の観客を迎えている。
Paris2024開催後も、パリの主要な文化イベントやスポーツ イベントを開催し、その多機能な設計によりフランスの文化の象徴する複合施設として活用する。



出典 Paris2024
シャン・ド・マルス・アリーナ(Champ de Mars Arena)
出典 Paris2024
開催競技 Judo Wrestling
観客収容数 約8356人

 シャン・ド・マルス・アリーナは、10,000 平方メートルの仮設競技施設として整備される。Paris2024開催後も約数か月間そのまま維持される予定。
建築家ジャン=ミッシェル・ウィルモットが設計したこの木造建築アリーナは、近接するグラン・パレを意識した調和のとれた曲線と美学を備え、2021年の初めにエコール・ミリテール(軍事訓練施設の複合建築)の向かい側のシャン・ド・マルスに建設された。都市の景観にシームレスに溶け込むデザインを採用している。グラン・パレの改修中に身廊で開催されるアート、ファッション、スポーツのイベントを開催するために建設され、グラン・パレ国立美術館が主催する文化イベントの舞台としても使用される。
この仮設施設は2024年末に解体される予定。



出典 Paris2024
アレクサンドル 3 世橋(Pont Alexandre III)
開催競技 Cycling Road Marathon Swimming Triathlon
観客収容数 1000人

 パリの中心部には、セーヌ川の両岸の間に架かる橋、アレクサンドル 3 世橋。無数の歴史遺産に囲まれたこの橋は、1900 年の万国博覧会で開通して以来、この都市の最も記憶に残る歴史遺産になっており、それ自体が芸術作品であり、記念碑でもある。
この橋は幅 45 メートル、長さ 107 メートルで、金色の銅像を支える 4 本の印象的な柱で囲まれており、Paris2024のいくつかのイベントで壮観な背景を提供する。
アレクサンドル 3 世橋は、Paris2024の他の 2 つのスポーツ会場、グラン パレとアンヴァリッドを接続しており、最もよく知られ、最も愛されているランドマークに囲まれたフランスの首都の中心部でオリンピックを実現するというパリ 2024 年の目標を完璧に体現しています。この橋はコンコルド、アリーナ シャン ド マルス、イエナ橋、エッフェル塔スタジアムからも目と鼻の先にあるため、大会期間中はエリア全体がエネルギーに満ち溢れます。自転車個人タイムトライアル、水泳マラソン、トライアスロン、パラトライアスロンのゴール地点を雄大に演出します。
2024 年パリ大会では、アレクサンドル 3 世橋近くに仮設スタンドが設置され、大会後には撤去される予定。この橋はパリで最も有名なランドマークの 1 つであり続ける。



出典 Paris2024
エッフェル塔スタジアム(Eiffel Tower Stadium)
開催競技 Beach Volleyball
観客収容数 約12860人

 パリ市民にとって、シャン・ド・マルス(Champ de Mars)公園は、集い、祝う特別な場所、7 月 14 日の独立記念日に開催されるパリ祭の花火大会やサッカー・ワールドカップの決勝戦などのイベントには定期的に何千人もの人々で埋まる。 また毎日、市民がスポーツを楽しんだり、風景を眺めたり、壮大な敷地の広大な路地や芝生を散歩したりするこのエリアはパリで象徴的な安らぎの庭園の 1 つである。 Paris2024 年では、オリンピックのビーチバレーボールとパラリンピックのブラインドサッカー競技を開催するために、仮設の屋外アリーナ、エッフェル塔スタジアム(Eiffel Tower Stadium)が建設される。大会開催中は誰もがこの会場の魔法のような環境を楽しにながらスポーツを観戦することができる。
南側にはエコール・ミリテール (Ecole Militaire’s 士官学校) の印象的なファサード、セーヌ川側にはエッフェル塔、その間にあるシャン・ド・マルスは、市民が集うコミュニティ スペースとなり、Paris2024の重要な競技会場となる。



出典 Paris2024
トロカデロ(Trocadero)
開催競技 Athletics Cycling Road
 パリの最も象徴的なランドマークの 1 つ、トロカデロとエッフェル塔は、お互いに向かい合って立地している。パリ中心部にあるこのエリアは、Paris2024の主要エリアとして、オリンピック、選手、そしてそのパフォーマンスを祝うための複数のイベントを開催し、市民の幅広い活動を歓迎する。
Paris2024では、トロカデロはトライアスロン、ロードサイクリング、陸上競技 (マラソンと 20 km 競歩) イベントの観客とテレビ視聴者に素晴らしい視聴プラットフォームと体験を提供する。
大会期間中、イエナ橋にはオーバーレイ設備が完備され、アスリートたちにユニークな体験を提供しながら観客も歓迎できるようになる。



アンヴァリッド(Invalides)
出典 Paris2024
開催競技 Archery Athletics Cycling Road
観客収容数 約8000人

 アンヴァリッドのエスプラナード(Esplanade)は、パリで最も美しい記念碑の 1 つである庭園。パリ 7 区にある広大な緑地で、壮大なアンヴァリッド宮殿の向かいにあります。パリの中心部にあり、パリ市民や観光客がスポーツ、音楽、ウォーキングを楽しめる人気のレジャースポットの 1 つ。 Paris2024では、スポーツが歴史、文化、ハイレベルな素晴らしい環境と融合し、アスリートたちがオリンピックとパラリンピックのメダルを目指す。
オテル・デ・アンヴァリッドは、ルイ 14 世の治世中の 1687 年に軍事病院および退役軍人の養護施設として建てられた。現在、この世界的に有名な歴史的建造物には、フランス軍事史博物館や記念碑、ナポレオン・ボナパルトの墓がある。真向かいにはエレガントなアレクサンドル 3 世橋があり、アンヴァリッドとセーヌ川右岸のグラン パレを結んでいる。
2024 年、南北方向を特徴とするアンヴァリッドのエスプラナードがアーチェリーとパラ アーチェリーのイベントの舞台となります。西側と東側には木々が並んでいます。パリの中心部、大会専用エリアに位置するこの施設は、アスリートと観客にユニークな体験を約束します。



イヴ・デュ・マノワール スタジアム(Yves-du-Manoir Stadium)
出典 Paris2024

開催競技 Hockey
観客収容数 約15000人

 オリンピックを 2 回開催できるのは特権である。イヴ・デュ・マノワール スタジアムは、そうした幸運な会場の 1 つ。建築家ルイ フォーレ デュジャリックによって設計されたこのスタジアムは、1924 年の第 8 回パリ・オリンピックのメイン・スタジアムであり、オリンピックの開会式と陸上競技イベントが開催された。Paris2024ではホッケー競技が開催され、2 つの異なるオリンピック競技大会のイベントが開催される国内唯一の会場である。
パルク・デ・プランスが開設される 1972 年までは、フランスのラグビー選手にちなんで名付けられたイヴ・デュ・マノワールのマルチ・スポーツ施設(Yves-du-Manoir multi-sports venue)がパリ地域のメイン・スタジアムだった。パリ北西部のコロンブに位置し、過去 1 世紀にわたって、陸上競技、ラグビー、サッカー、さらにはボクシングなど、約 250 の国内および国際大会が開催されてきた。その中には 40,000 人の観客の前で開催された 1972 年の世界選手権も含まれる。
イヴ・デュ・マノワール・スタジアムは数回改修されており、この施設を所有するオー・ド・セーヌ県(Hauts-de-Seine department)は地域社会、協会、学校、大学に利益をもたらす近代化プログラムを立ち上げる予定だ。
大会後、イヴ・デュ・マノワール・スタジアムの新しい建物の 1 つには、フランス・ホッケー連盟、イル・ド・フランス・リーグ、部門別ホッケー委員会の本拠地が設置され、その後にクラブがホーム・スタジアムする予定である。 2つの人工ホッケーピッチ(1つは1,000席のスタンドを備えた競技用、もう1つはトレーニング用)が連盟のナショナルトレーニングセンター用に確保される。
2 番目の建物はサッカーとラグビー専用となり、既存の活動エリアにはサッカー場 4 面、ラグビー場 3 面、および新しい陸上トラックが整備される。



ポルト・ドゥ・ラ・シャペル・アリーナ(Porte de la Chapelle Arena)
出典 Paris2024
開催競技 Badminton Rhythmic Gymastic
観客収容数 約8000人 (Badminton 約6700人 Rhythmic Gymastic 約7000人)

 ポルト・ドゥ・ラ・シャペル・アリーナ(Adidas Arena)は、大会を超えて近隣地域社会に利益をもたらすレガシーとして考えられたエコデザインの会場で、パリ北部の新たな文化拠点として、毎日さまざまな文化イベントやパリ・バスケットボール(プロバスケットクラブ)の試合などスポーツイベントを開催している。この新しい施設は、すべての地域住民に開かれ、補完的なスペースでさまざまな市民スポーツ活動も提供できるように設計されている。 8,000 席の中規模観客席を備えていて、パリ全域で利用できるスポーツやライブ・パフォーマンス会場の選択肢をさらに強化した。
ラ シャペル アリーナのデザインは環境に優しいのが特徴、建物の表面の80パーセントは緑で覆われ、敷地を囲む公園や庭園に優雅に溶け込みむ。前面はリサイクル可能なアルミニウムで覆われ、建築材料のほとんどはバイオベース(主に木材)である。アリーナのデザインも普遍的なものとなり、メインホール、その周囲の施設、複合施設全体のテラスは誰もがアクセスできるように解放される。
パリは長い間、中規模の会場を必要としていた。この新しい 8,000 席のアリーナはそのニーズを満たし、パリ北部で主要なスポーツ イベントを開催し、ホームグランドとするパリ・バスケットボールの活躍にふさわしい本拠地を提供する。
周辺地域にもさらに多くのスポーツ施設が必要であり、アリーナに隣接する 2 つのジムがそれらを提供する。住民はアリーナでライブパフォーマンスやコンベンションなどの幅広い文化イベントを楽しむことができるようになった。  大会後は、メインホールではトップレベルのスポーツトーナメントやライブパフォーマンスなどが開催され、ジムなどの施設は地域住民のために毎日開放される。



パリ・ラ・デファンス・アリーナ(Paris La Défense Arena)
出典 Paris2024
開催競技 Swimming Water Plo
観客収容数 約17000人

 ナンテール(Nanterre)に立地するパリ・ラ・デファンス・アリーナは、その規模、収容力、テクノロジーの点で優れたアリーナで、総延長13kmのスタンド、5,500トンのフレーム、28,632平方メートルのコートとピッチを備えている。オープン以来すでに 200 万人以上の観客を迎え、国際的な一流アーティストのパフォーマンス、コンベンション、セミナーのほか、ラグビーの試合も開催するモジュール式の多目的構造の施設である。Paris2024では初めて仮設のプールが整備され水泳イベントが開催される。
このアリーナは 2017 年に初めてオープンし、建築家クリスチャン ド ポルザンパルクによる象徴的なモダンなデザインが施されている。革新的なテクノロジーを備えた世界最大のインタラクティブ巨大スクリーンと 1,400 平方メートル相当の表示エリア (テニスコート 7 面に相当) を備えている。
建物の外面を構成する 600 個のダイナミックな巨大なアルミニウムとガラスのスケールのおかげで、そこで開催されるさまざまなイベントが生き生きと見える。
大会後は、ホームグランドにしているラシン 92(Racing 92) のラグビー試合の開催に加え、さまざまなスポーツイベントや文化イベントを開催する。



スタッド・ド・フランス(Stade de France)
出典 Paris2024
開催競技 Athletics Rugby Sevens 閉会式
観客収容数 約77083人

 Paris2024では、フランス最大のスタジアムであるスタッド・ド・フランスがオリンピック・スタジアムになる。サン・ドニに立地するスタッド ド フランスは、建築家のマカリー、ズブレナ、レジェンバル、コスタンティーニによって設計された。 1998年にフランスで開催されたサッカ・ワールドカップに向けて建設されたスタジアムである。
ワールド カップ開催後、このマルチ・スポーツ・スタジアムは、2003 年の世界陸上選手権や 2007 年と 2023 年のラグビー・ワールド カップ、ユーロ 2016 サッカー選手権など、フランスで開催される最大のスポーツ イベントを開催し続けている。毎年、フランス代表サッカー・チームやラグビー・チームのホームグランドとして試合が開催されるほか、フランス内外のアーティストによる大規模なコンサートも開催される。



ル・ブルジェ・クライミング会場(Le Bourget Climbing venue)
開催競技 Sport Climbing
観客収容数 約6000人 (3000座席 3000立ち席)

 国際放送センター(IBC)が設営されるル・ブルジェ国際展示場(Le Bourget Exhibition Center)に隣接して、シャトールー射撃センター(Chateauroux Shooting Centre)とル・ブルジェ・スポーツ・クライミング・センター(Le Bourget Climbing venue 仮設)が整備される 

出典 Paris2024
 ル・ブルジェ・クライミング会場(Le Bourget Climbing venue)は、シャトールー射撃センター(Chateauroux Shooting Centre)に隣接して建設された。
 Paris2024では、41競技場施設の95%が既存の施設や仮設施設で開催され、新設される競技施設は、サン・ドニのオリンピック・アクアティクス・センターとル・ブルジェ・クライミング会場の2つである。
大会期間中は 5 つのクライミング・ウォールが使用される。1 つはウォーミング・アップ用の屋内ウォール、4 つは屋外ウォールで、そのうち 3 つは競技種目 (スピード、ボルダリング、リード) 用で、最後の 1 つは競技者がウォームアップ用として使用される。
大会のために作られた屋内施設はル・ブルジェ市のレガシーとして残され、地元のクラブ、団体、住民が日常的に使用できるようになる。 設置された仮設クライミングウォールは、Paris2024用の仮設プールや都市コンコルド広場のアーバン・スポーツ施設と同様に、大会終了後に移設される予定である。

室内トレーニング・ウオームアップ施設 出典 Paris2024



シャトールー射撃センター(Chateauroux Shooting Centre)
開催競技 Shooting

シャトールー射撃センター(Chateauroux Shooting Centre) 出典 Chateauroux Berry Tourism
 シャトールー射撃センター(Chateauroux Shooting Centre)では、オリンピックとパラリンピックの射撃競技が開催され、オリンピックで340 人の選手、パラリンピックで160 人の選手が出場する。 2018 年にフランス射撃連盟によって開設され、国立スポーツ射撃センター(The National Center for Sports Shooting)として運営されてきたこの施設は、この種の会場としてはヨーロッパ最大の会場の 1 つ。 10, 25, 50, 600メートルの複数の射撃場を備えており、オリンピックのすべての射撃競技種目を開催できる。
このセンターに、2022 年に施設が改修され、ピストルとライフル競技のすべて屋内射撃競技を開催する。シャトールー射撃センターでは射撃競技 15種目とパラリンピックの射撃競技 13種目で使用される。



サウス・パリ・アリーナ(South Paris Arena)
開催競技 Hand Ball Table Tennis Volleyball Weightlifting
観客収容数 Arena1(Volleyball) 約12000
      Arena4(Table Tennis) 約6650人
      Arena6(Weightlifting) 約5000人
          (Hand Ball)  約7300人~7800人


出典 Paris2024
 サウス・パリ・アリーナは、パリ・エクスポ見本市会場(Paris Expo Porte de Versailles)の一部であり、ヨーロッパで最も活発で、フランスでも最も多くの観光客が訪れる展示およびコンベンション センターの 1 つ。 敷地面積35 ヘクタール、フロア面積の総計は228,000 平方メートル、 8 つの展示ホールを備えるこの施設では、世界最大の国際農業ショーが開催され、毎年 750 万人の来場者が訪れる。ホール 1、4、6 は競技会場として使用されるだけでなく、その他のホールはParis2024の物流拠点となる。パリ・エクスポは大会開催の重要な拠点として機能する。
パリ・エクスポは、1923 年にパリ見本市 (フォワール ド パリ[Foire de Paris]) を開催するために建設された。以来、長年にわたって広範囲に再開発が進み、現在では幅広い要件や構成に適応できる近代的な複合施設になり、毎年、欧州を代表する見本市、Foire de Parisが開催されている。施設のインフラを近代化するために10 年間にわたる 3 つのフェーズに基づく野心的な改修プログラムが実施され、最後のフェーズは 2023 年に完了した。
サウス・パリ・アリーナを始めパリ・エキスポ・ポルト・ドゥ・ベルサイユ(Paris Expo Porte de Versailles)のホールでは、年間を通してショー、見本市、コンベンションなどが引き続き開催される。



出典 Paris2024
ノース・パリ・アリーナ(North Paris Arena)
開催競技 Boxing Modern Pentathion
観客収容数 約6000人

 シャルル・ド・ゴール空港に隣接して立地するヴィルパント展示センター(Villepinte Exhibition Centre)は、オリンピックでは「ノース・パリ・アリーナ」と呼ばれる仮設の大規模なモジュール式スポーツ施設に生まれ変わる。セーヌ・サン・ドニの中心部にある 9 つのホールを備えたこの巨大な展示センターは、フランス最大のエキシビション・センターで、もう 1 つの競技会場になるポルト・ド・ベルサイユのパリ・エキスポ展示センターが 2 位の規模となる。
ノース・パリ・アリーナは、このヴィルパント・エキシビション・センター内に仮設で整備された。大勢の参加者の集まりに対応できるように設計されたアリーナは、ヴィルパント(Villepinte)で、数千人の観客が Paris2024の試合を間近で見るのに最適なスペースとなる。
この会場では、オリンピック期間中はボクシングの予選と近代五種のフェンシングランキング戦、パラリンピック期間中はシッティングバレーボールが開催される。
ノース・パリ・アリーナは大会後に撤去されるが、ヴィルパント・エキシビション・センターの 9 つのホールでは、今後も年間を通じて大規模な国際見本市が開催される。



ベルサイユ宮殿(Palace of Versailles)
出典 Paris2024
開催競技 Equestrian Modern Pentathlon
観客収容数 約15000人~40000人

フランスの世界的歴史遺産のシンボルであるベルサイユ宮殿(Palace of Versailles) は、豊かな歴史を持つ壮大な環境の中で 2024 年のオリンピックとパラリンピックを迎える。 当初は単純な狩猟小屋として建てられたベルサイユ宮殿は、1682 年にルイ 14 世の宮廷の本拠地となり、フランス王室の中心地となった。 1883 年に国立博物館として一般公開され、1979 年にはフランスで初めてユネスコの世界遺産に登録された。
Paris2024の競技は、オーバーレイ設備を整備して、格別で歴史的な環境の中で開催することを可能にした。宮殿の庭園の中心、大運河の西にあるエトワール・ロワイヤルの遊歩道に、いくつかのスタンドが隣接させた仮設の屋外アリーナが設置される。 このアリーナでは、2 つの馬術競技 (Equestrian 障害馬術と馬場馬術) に加え、近代五種競技(Modern Pentathian)(馬術) (オリンピックとパラリンピック) が開催される。 個人競技および団体競技の馬術競技(クロスカントリー)は大運河沿いで開催される。



ゴルフ・ナショナル(Golf National)
出典 Paris2024
開催競技 Golf
観客収容数 約32720人 (2720座席 30000立ち席)

世界で最も華麗なスポーツ、ゴルフ競技を開催するには、ヨーロッパで最も権威のあるGolf Nationalが相応しい。オリンピック・トーナメントに出場する 120 人の選手が、自分たちの野心に合った環境とコースを見つけることができる。 2 つの 18 ホール コースのうち、「ラルバトロス」は最も競争力があり、複雑なコースとして際立っている。パリ郊外に立地するこのコースは、2018 年のライダーカップなどの主要な国際大会で使用された。
フランス ゴルフ連盟が所有するゴルフ・ナショナルは、ゴルフの国立テクニカル・センターの本拠地であり、毎年全仏オープンが開催される会場として 1991 年に設計された。以前は平坦だった139 ヘクタールの敷地を、2 つの 18 ホール コースと 7 ホールの初心者コースを含むユニークな会場に改装するために3 年の工事を費やした。
ゴルフ・ナショナルは、持続可能な実践に長年取り組んでおり、ゴルフ場の環境管理活動を改善し、その遺産を保護することに努めている。ゴルフナショナルチームは、これらの目標を達成するために、フランスのエコロジー、持続可能な開発、エネルギー省と協力している。
大会の後も、ゴルフ・ナショナルは引き続き国内および国際的な主要なゴルフ・コンペティションを開催する。



サン・カンタン・アン・イヴリーヌ・ベロドーム(Saint-Quentin-en-Yvelines Velodrome)
出典 Paris2024
開催競技 Cycling Track
観客収容数 約5000人

 サン・カンタン・アン・イヴリーヌ・ベロドームは、Paris2024の 10 年前にパリ郊外に建設され、運営されている優れた自転車競技施設。フランス自転車連盟の旗艦施設で、開場以来本部が置かれており、2014 年に建設されました。このハイレベルな競技場では、最新の施設でさまざまなフランスのチームが定期的に利用している。広大な中央エリアに代表されるベロドームのモジュール式の柔軟な設計により、他のスポーツのトレーニング セッションやイベントを定期的に開催することができる。
このベロドームは、国際競技会の開催を目的として特別に設立され、2014 年にフランス トラック選手権、2015 年に世界選手権、2016 年に欧州選手権が開催され、Paris2024の自転車競技の会場となる。
大会後は、フランス自転車競技連盟の本部があるフランス自転車競技場の旗艦としての役割を再開し、国際競技会が開催され、代表チームのトレーニングキャンプとなり、世界でも主要な国際サーキットの拠点となる。



サン・カンタン・アン・イブリーヌ BMX スタジアム(Saint-Quentin-en-Yvelines BMX Stadium)
出典 Paris2024
開催競技 Cycling BMX Racing
観客収容数 約3000人

 サン・カンタン・アン・イブリーヌ BMX スタジアムは、サン・カンタン・ アン・イブリーヌ競輪場複合施設(Saint-Quentin-en-Yvelines Velodrome complex)の一部で、競輪場から徒歩わずか 5 分に立地する。サン・カンタン・アン・イヴリーヌ競輪場の常設インフラには、2 つの競技会場を 1 つの会場にまとめて自転車ファンを喜ばせるのに十分なスペースを備えている。この密接な連携により、大会の BMX およびトラックサイクリングイベントの開催に必要な特定の施設を備えることが可能になる。
サンカンタン・アン・イヴリーヌ競輪場と同時に建設されたこの BMX トラックは、2024 年のパリ大会に向けて再設計され、特別にレイアウトされた。一般公開されており、あらゆるスキルレベルの人が参加できる。パリ地域だけでなく国内全体にとっても非常に価値のある施設である。観客を迎えるために大会期間中は一時的にスタンドが設置されます。
オリンピック開催のための仮設施設は解体するが、BMX トラックはオリンピック後もあらゆる年齢層のライダーを歓迎し続ける。サンカンタンアンイブリーヌ競輪場のスポーツ複合施設の日常活動に毎日貢献し続ける。



エランクール丘陵(Elancourt Hill)
出典 Paris2024
開催競技 Cycling Mountain Bike
観客収容数  約15000人(2700座席 12300立ち席)

 エランクール丘陵は標高 231 メートル、パリ地方で最も高い場所である。頂上からは、エッフェル塔、ラ・デファンス、パリ周辺の森の息を呑むような眺望が開ける。生物多様性への影響を最小限に抑えるために、敷地内に大規模なインフラは建設しない。南アフリカの専門家ニック・フロロス氏が設計したオリンピックのマウンテンバイク競技用のトレイルの95パーセントは、既存のルート上に整備する。さまざまなルートは大会の遺産として残され、子供や家族から経験豊富なライダーまで、すべてのユーザーがアクセス可能な選択肢が提供される。
人工のエランクール・ヒルは、建築業者に材料を供給していた砂岩採石場の跡地にあります。 19 世紀半ばに採石場が閉鎖された後、この場所は 1975 年に閉鎖されるまで埋め立て地だった。1980 年代に野心的な再生プログラムが実行され、丘は公共の公園に変った。
にエランクールを競技会場に選択することで、会場の環境上の利点を改善しながら、既存のスポーツ活動をさらに強化および支援することが可能になる。このプロジェクトは、スポーツ、社会、環境という 3 つのレベルでレガシーを提供する。サン・カンタン・アン・イブリーヌはサイクリングの主要な目的地となり、これまでスポーツとは無縁な地域が強力な遺産の恩恵を受けることができると同時に、地域の生物多様性の改善と促進が可能になる。
大会後は、スキル・レベルを問わないマウンテン バイク愛好家だけでなく、誰でも参加できるウォーキングやジョギングのファンにとっても格好の施設となる。この丘は、再生された自然に囲まれた安全で汚染のない環境の中で、家族連れの散歩の場所にもなる。



ローラン-ギャロス(Roland-Garros)
出典  Paris2024
開催競技 Tennis Boxing
観客収容数 約34000人 (Philippe-Chatrier Court 14,962人)

 ローランギャロスは伝説的なテニス・スタジアム、輝かしい歴史に新たなページを刻む2024年パリ大会の会場となる。ローランギャロスではテニスと車椅子テニスの競技会だけでなく、ボクシングやシッティングバレーボールも開催される。
フランスの飛行士ローランギャロスにちなんで名付けられたこのスタジアムは、デビスカップでのフランス選手の功績を称える舞台として 1928 年に建設された。ブローニュの森の外れ、パルク・デ・フランス近くに位置するローランギャロスでは、フランス・テニス連盟が主催する4つのグランドスラムの一つである全仏オープンが毎年開催されます。グランドスラムの中で唯一、クレーコートで、今年の大会では男子はアルカラス、女子はシフィオンテクが優勝した。
他のグランドスラム会場に匹敵するよう、長年にわたって何度も拡張や近代化が行われてきたローランギャロスは、現在 12 ヘクタールの敷地に広がり、18 面のクレーコートを備えている。 2015年から2021年にかけて展開された近代化計画により、メインコートのフィリップ・シャトリエに革新的なデザインの開閉式屋根を設置され、NO2コートのスーザン・ラン・ランにも開閉式屋根が整備された。



出典 Paris2024
スタッド・ピエール・モーロワ(Stade Pierre-Mauroy)
開催競技 Basketball Handball
フランス有数のサッカー クラブの 1 つであるリール・オリンピック・スポーツ クラブ (Lille Olympic Sport Club) の本拠地であるスタッド・ピエール ・モーロワは、2012 年に建設された。特徴的なデザインのモジュール式マルチ・スポーツ・ショーケースである。パリ北部、ベルギーとの国境に近いヴィルヌーヴ・ダスク(Villeneuve-d’Ascq)に位置するこの施設により、オー・ド ・フランス地域(Hauts de France region)と、国内 第4の大都市リール(Lille)は、年間を通じてさまざまな文化イベントやスポーツ イベントを開催できる優れた施設の恩恵を受けることができる。
このスタジアムには、30 分で切り替えることができる可動式屋根が設置されるなど、さまざまな最先端の技術革新が組み込まれている。またモジュラー構造と適応性のあるレイアウトのおかげで、建設以来、LOSC サッカー クラブのホーム試合に加えて、数多くのスポーツの国際大会を主催してきた。 2014年と2017年のデビスカップ・テニス決勝戦、ユーロ2016サッカー選手権の試合、2015年の欧州バスケットボール選手権、2017年の世界ハンドボール選手権など開催、Paris2024ではハンドボール競技の会場となる。またリアーナ、ジョニー アリデイ、デペッシュ・モードなどの世界的スターによるコンサートも開催された。
大会後も、モジュール式複合施設の機能を活かして、LOSC フットボール クラブのホーム試合や、スポーツ国際大会、文化イベントを一年中開催できる近代的な会場であり続ける。


ヴェール・シュル・マルヌ海洋スタジアム(Vaires-sur-Marne Nautical Stadium)
出典 Paris2024
開催競技 Canoe Slalom Canoe Sprint Rowing
観客収容数 約24000人(canoe-kayak sprint and rowing)
約12000人(canoe-kayak slalom)

 ヴェール・シュル・マルヌ・マリンスタジアムは 、パリ東部のマルヌ川沿いにあるヴェール・シュル・マルヌ湖(Lac de Vaires-sur-Marnel)に2019 年に建設された。シドニーと北京に次いで、オリンピックのカヌー・カヤックとボート競技のすべてを 1 か所で開催できる世界 3 つの施設のうちの 1 つ。フランス漕艇連盟(French Rowing Federation)とカヌー・カヤック連盟(French Canoeing-Kayaking Federation)の本拠地になる予定だ。
Paris2024では、ボートやカヌー(スプリント)、カヌー(スラローム)の競技が開催され、隣接のヴェール・トルシー・レジャー施設(Vaires-Torcy leisure base)ではパラリンピックのパラボートとパラ・カヌー・カヤックのイベントが 2024 年に開催される。
ヴェレス・トルシーの複合施設は、建築家のアウアー+ウェーバー+アソツィエルテによって設計され、湖、急流スタジアム(White Water)、リビング エリアの3 つの核で構成され、エリアには美しい屋根を持つ新しい建物が点在している。 4,400 平方メートルの広大な敷地は、300 メートルと 150 メートルの 2 つのコースで構成されている新しいカヌー・スラローム・スタジアムとフィニッシュタワーを備えた全長2,200mのボート&スプリント・コースがある。 スポーツ医学センター。 ウェイトトレーニングセンター、トレーニングおよび宿泊センターも備え、ウォーター スポーツのハブとなっている。



マルセイユ・マリーナ(Marseille Marina)
出典 Paris2024
開催競技 Sailing
観客収容数 約12262人 (2262座席, 10000立ち席)

 Paris2024のセーリング競技は、地中海へ向かう。マルセイユ市は卓越したマリーナのインフラが整備され、マリン・レジャーの地中海の拠点になっている。マルセイユ市はマリン関連イベントの主催と組織化において専門知識を蓄積し、2024 年パリ大会のセーリング(ヨット、ウインドサーフィン)競技に理想的な会場を提供する。
この大会では、艇の出発点であるルーカ・ブラン・マリーナ(Roucas-Blanc Marina/Olympic Marina)が、オリンピック開催に向けて整備された。このプログラムには、約 7,000 平方メートルの建物と 17,000 平方メートルの屋外スペースの整備のほか、マリーナ全体を再開発して優れた競技会場に変える計画が含まれている。
セーリングはパリ1900大会から実施されている歴史ある競技。アトランタアトランタ1996大会までは「ヨット」と呼ばれていが、シドニー2000大会からウインド・サーフィンが加わり、現在の「セーリング」が競技名となった。
マリーナを見渡せるルーカス ブラン海洋スタジアム(Stade nautique du Roucas Blanc)では仮設の観客席も整備され、2000人以上の観客がレースを間近で楽しむことができる。マルセイユ沖の海洋条件は、風が比較的一定しており、潮流がほとんどなく、風に対して正確に方向を示す海岸構成により、競技者にとって理想的な戦術的および戦略的条件が保証される。
マルセイユ市は、スタッド・ヴェロドローム(Stade Vélodrome)でサッカーの試合も開催する。


タヒチ・テアウポオ(Tahiti Teahupo’o)
出典 EXPLORE FRANCE
開催競技 Surfing
出典 Paris2024
観客収容数 約600人

 パリ 2024 大会は、オリンピックの創設以来、オリンピックを導いてきた精神に基づいて、祝典を新たなステージに引き上げて、観客に息を呑むようなスポーツを楽しんでもらうことを目指す。サーフィンを含む 4 つの素晴らしい分野と、それらにマッチする厳選されたスポットと会場が追加された。 2021年の東京2020大会に続き2回目の開催種目となるサーフィンは、間違いなく世界で最も美しい波の1つとされているタヒチのテアウポオの波で、競技を開催することでサーフィンの魅力を高める。
サーフィン競技会をテアウポオで開催するという決定は、大会をフランス全土に広めるというパリ2024の野心と一致している。これは、フランスの豊かで多様な伝統を紹介しながら、史上初めて、海外のフランス人やその領土をオリンピックに参加させる機会を提供する。
テアウポオの波はアスリートたちに最高難度の挑戦の機会を提供し、タヒチおよび世界中のファンに息をのむような体験を楽しむことを可能にする。タヒチは、世界中のサーファーの憧れの集めている場所で、他に類を見ないコンテストを開催できる。ティーウポオは 20 年以上にわたってプロ・タヒチ世界チャンピオンシップ・イベントを主催している。ここは多くの一流サーファーにとって夢のスポットであり、ガブリエル・メディナ、ケリー・スレーター、ジェレミー・フローレス、アンディ・アイアンズ、マーク・オキルポなどが、幸運にもこの地を制覇した。

 競技会場は、島の素晴らしい自然環境を保護するように設計されている。オリンピック選手村はモジュール式住宅で建設された。波は沖で砕けるので、海岸線への影響はない。そしてファンは、ポリネシアの文化、オリンピックの精神、パリ 2024 年の価値観を祝いながら、ライブ会場でスリルに満ちたゾクゾク感を楽しむことができる。
ティーウポオ会場では、大会後も引き続きワールド・サーフ・チャンピオンシップ ツアーが開催されます。大会のために設置されたオーバーレイ(仮設施設)は競技終了後に解体する。オリンピック村は、「ファレ」(farès)として知られるポリネシアの伝統的な家屋をモデルにした仮設施設をベースとしており、地域社会に利益をもたらす公営住宅として移転・再配置される予定だ。




2024年6月1日
Copyright (C) 20234IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
imssr@a09.itscom.net
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