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平昌五輪 5G VR ドローン 第5世代移動通信 韓国テレコム(KT) インテル(Intel) サムスン(Samsung)

2022年01月14日 18時02分33秒 | 5G
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略
~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~


北京冬季五輪2022 北京冬季五輪 5G+4K/8K AI メインメディアセンター(MMC)競技会場 最新情報


出典 PyeongChang2018 5G White Paper




“ICT”五輪”で先を越された2020東京五輪
  開会式で握手を交わした韓国の文在寅南大統領と北朝鮮の高官代表団、南北北統一旗を掲げて入場行進を行った合同選手団、話題を独占した女性応援団、韓国と北朝鮮の融和ムードは平昌冬季五輪の象徴となった。一方、ドーピング問題も大会に影を落とした。ロシア・オリンピック委員会は、組織ぐるみのドーピング違反で五輪から締め出され、ロシアの選手は「ロシアからの五輪選手(OAR)として参加したが、国旗や国歌の使用は認められなかった。そして、日本選手団は冬季五輪では過去最高の13個のメダルを獲得して大活躍、様々な話題と感動を残して、平昌冬季五輪は、2月25日に閉幕した。
 日本国内での五輪中継番組の視聴率は、メダルラッシュに沸いて、フィギア・スケートの33%を最高に、カーリング、スキージャンプ、スピードスケート、ショートトラック、開会式などは軒並み20%を超えた。隣国韓国の開催で時差がなかったこともあり、事前の予想を覆し極めて好調だった。
 韓国は、平昌冬季五輪を開催するにあたって掲げたテーマは、“ICT五輪”、第五世代移動通信5G、超高繊細テレビUHD、モノ・インターネットIoT、人工知能AI、VR(Virtual Reality)の5つの分野で、世界最先端の“ICT五輪”を実現して、“Passion Connected”をスローガンに掲げ、世界各国にアピールする戦略である。
 “ICT五輪”は、2020東京五輪で、今、日本が総力を挙げて取り組んでいるキャッチフレーズだ。“ICT五輪”は、平昌冬季五輪に、先を越された感が否めない。


(上)2位の李相花を抱きしめる小平奈緒選手 (下)南北合同女子ホッケーチーム
出典 POCOG2018


“ICT Olympic”を掲げた平昌冬季五輪(KT Pavilion)  出典 KT

Introducing PyeongChang2018(New Version) PyeongChang2018
PyeongChang2018/Youtube


5G移動通信に挑んだ平昌冬季五輪
 韓国テレコム(Korea Telecom)は、国際オリンピック委員会(IOC)と第五世代5G移動通信ネットワークを平昌平昌冬季五輪で構築し、競技中継で利用するとともに、大会関係者や観客にサービスすることで合意した。
 世界で初めて5G通信ネットワークのサービスが平昌冬季五輪を舞台に実現したのである。
 五輪競技中継では、5G移動通信の登場で、ボブスレーのソリからの高画質映像のライブ・サービスが実現した。
 平昌のアルペンジア・スライディング・センターにあるボブスレー競技場では、5G移動通信ネットワークが整備され、時速140キロの高速でコースを滑降するソリ(Sled)の先端に4K POV(Point of View)カメラを取り付けて高画質の映像を撮影し、“遅延ゼロ”の超高速で送信し、臨場感あふれた迫力のある映像サービスに初めて挑む。
 但し、伝送はHD画質に留まるとしている。


コースを滑走するボブスレー PyeongChang2018 POCOG


ボブスレーのスレッド(そり)に取り付けられた4K POVカメラで撮影された映像  出典 Olympic Channel IOC

Exclusive 4K POV Bobsleigh run Olympics Channel IOC

Olympics Channel/Youtube

 5G移動通信サービスは、アイスアリーナやスピードスケート競技場、ホッケー競技場、オリンピック・スタジアムのある江陵オリンピック・パーク(Gangneung Olympic Park)やソウルの光化門広場(Gwanghwamun)エリアでも構築され、大会関係者や観客、ソウル市民に対象に、ギガビットで低遅延の5Gでライブ・ストリーミング映像にアクセスできるようにした。世界に先駆けて5Gサービスが実用化されたのである。
韓国は、“5G”が平昌冬季五輪のレガシーにするとして、世界各国に強力にアピールしている。

第五世代移動通信5G
 5Gは、高画質の映像など大量のデータを、低遅延(low latency)、超高速度で送信することができる次世代の無線通信技術だ。
 現在使用されている第4世代移動通信、4Gと比較して、1000倍のデータ通信量、10Gbpsという100倍の通信速度、ほとんど“ゼロ”に近い低遅延、100倍の同時接続の性能が実現される。AIロボット、自動走行自動車、ビックデータ、UHDなどの高画質映像、IoT機器の爆発的増大などで、移動通信の通信量は飛躍的に増えるとされている中で、5Gは次世代のICT社会の実現に必須のバックボーンである。日本を始めて、アメリカ、ユーロッパ各国、中国、韓国の企業がその開発競争に凌ぎを削っている。5Gの展開で世界の主導権を握れるかどうか、各国の“生き残り”がかかった競争である。


出典 情報通信審議会資料


出典 情報通信白書 総務省


五輪の舞台に登場したIntel 情報通信分野で主導権
 平昌冬季五輪で構築された5Gのプラットフォームやプロセッサー、コンピューター、それに5Gテクノロジー、FlexRANは、アメリカのIT企業、Intelが全面的に提供した。クラウドサービスの運営に使用されるサーバーもIntelが準備した。
 Intelと提携した韓国テレコム(Korea Telecom)は、韓国で最大の通信企業、光ファーバー網や移動通信ネットワークを構築した。
 Samsungもこの陣営に加わり、5G対応タブレットを開発、約1100台の試作機を製造して、競技場やパビリオンで5Gパワー体験サービスを行った。 
 平昌冬季五輪では、Intelが全面的に五輪大会に登場したのが注目される。
 Intelは、2018年平昌冬季五輪、2020東京五輪、2022年北京冬期五輪、2024年パリ五輪オリンピックのTOPスポンサーになり、五輪大会で通信関連機器やシステムを優先的にサービスする権利が認められている。
 TOPスポンサーとして初舞台となる平昌冬季五輪で、Intelは韓国テレコム(Korea Telecom)やサムスン電子(Samsung)と提携して、平昌冬季五輪を“5Gのショーケース”にするという戦略を立てて、全力を挙げて取り組んだのである。



5G Intel 出典 Intel


サムスン電子(Samsung)が開発した5G対応タブレット  出典  Samsung

Intel at the 2018 Olympics: 5G Olympic Vision
Intel/Youtube

5Gネットワークで、新たな映像中継サービスを開始
 5G移動通信の構築で、新たな五輪中継映像サービスが登場した。
韓国テレコム(Korea Telecom)は、Intelと連携して、360度のVR(Virtual Reality)映像サービスを実現した。VR(Virtual Reality)は、視聴者があらゆるアングルから競技を楽しむことができる次世代の映像技術である。
 リオデジャネイロ五輪でもVRサービスは試験的に行われたが、平昌冬季五輪では、OBSは初めてVRコンテンツをホスト映像として世界のライツホルダーに配信した。


OBSが配信した360°VR映像サービス   出典 NHKピョンチャン2018 360°VR

 さらに新しい競技中継技術も登場した。
 マルチアングルの映像を任意の時間で選択して視聴できる、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)、選択地点の疾走シーンが視聴可能な「オムニビュー」(OMNI VEIW)、高速で移動する選手や物体から高画質のUHD映像でライブ中継する"Sync View"と呼ばれる新たなサービスである。

 フィギアスケートとショートトラック競技が行われた江陵アイスアリーナには、100台の小型カメラが設置して、選手の動きをさまざま角度から撮影し、合成して連続して見せる新たな映像技術、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)に挑んだ。
100台のカメラは、リンクの壁面に一定の間隔で設置され、動きの速い被写体の決定的なシーンを、アングルを動かしたい方向に順番に連続撮影していく。
 撮影された画像は、一枚一枚切り出して合成し、連続して見せる映像技術である。高速で移動する被写体の動きを、少しづつアングルを変えて、スローモーションのように見せるというインパクトあふれた映像表現が可能だ。映画「MATRIX」で、この映像テクノロジー(映画ではパレットタイムと呼ぶ)で撮影されたシーンが評判を呼び、新たな映像技術のとして注目されている。
ま た観客は、さまざまなアングルのカメラを選択し、自由に撮影時間を選んで、選手の動きを見ることができる。
 「オムニビュー」(OMNI VEIW)では、多数のカメラを配置し、さまざまなアングルやポイントからの映像を、視聴者が自由に選択して、リアルタイムで見ることができる。競技結果、順位、選手のプロフィールなど情報もサービスされる。
 クロスカントリーでは、全長3.75キロメートルのコースに、17台のカメラを設置し、撮影した選手の姿を5Gネットワークで伝送し、観客は自分の見たいポイントのカメラを選んで、疾走している選手の姿を見ることができる。
 バイアスロンなどでは、選手のユニフォームに装着したGPSセンサーの位置情報を5Gネットワークで送信し、観客はスマートフォンで選手の位置などをリアルタイムで確認できるサービスも行われた。
 視聴者は、見たい選手を自由に選択し、選手が今、どこにいるかがリアルタイムで確認しながら、ライブ・ストリーミングで走行シーンを楽しむことができる。
 「シンクビュー」(Sync View)では、POV(Point of View)カメラを、選手のヘルメットやユニフォーム、スレッド(ソリ)などに取り付けて、選手視点での競技をライブで中継する技術である。ボブスレーではソリの全面にPOVカメラや5G無線通信のモジュールとアンテナを設置して、高速で迫力ある映像をライブでサービスする。
 UHD(4K)などの高画質で撮影されライブで伝送する新しい映像サービスを支えているのが、超高速の5Gネットワークである。Samsungは5G対応のデモ機を開発して、タブレットPCを各競技場に約200台を配置し、新しい映像サービスの醍醐味を観客に楽しんでもらうサービスを展開している。

 またドローンや小型カメラで会場を撮影し、選手や大会関係者、群衆を、顔認証技術を使用して解析して、データをリアルタイムでオリンピックのセキュリティ・コントロール・センターに送信し、セキュリティ管理に使用することも可能だとしている。


アルペンジア・スライディングセンター クロスカントリー  出典 IOC


フィギアスケートでサービスされた「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion) 出典 Olympic Channel/IOC


スノーボードでサービスされた「タイムスライス」 出典 Intel

5G移動通信ネットワークを整備した韓国テレコム(Korea Telecom)
 こうした5Gネットワークの設営のために、韓国テレコム(Korea Telecom)は、35,000本の光ファーバーを敷設し、250,000のデバイスを使用して、5,000 個所のアクセスポイントやデータセンターを設置して5G移動通信ネットワークを整備した。
 韓国の5GネットワークのプラットフォームはIntelが構築し、2016年2月に第一世代のプラットフォームが、6GHzとミリ波を使用して構築された。そして2017年、4x4 MIMOの第二世代のプラットフォームが整備された。
 そして、2018年平昌冬季五輪でIntelの第三世代のプラットフォームが登場した。
 新しいプラットフォームは、3GPPに基づいて、5G NR規格をサポートして構築され、IntelのゲートアレイのFGPA回路とCorei7をプロセッサーとして組み込んで構築された。
 5Gの使用周波数帯域は、3GPP NRとの相互運用性を図り、600-900MHzや3.3-4.2GHz、4.4-4.9GHz、5.1-5.9GHz, 28GHz、そして39GHzの帯域を使用してテストを繰り返した。
 そして最終的には、28GHzを使用し5G実用サービスを実施した。
 5G基地局の装置は、96素子(48素子×2)のMassive Mimoを設置し、帯域幅は800MHz(100MHz×8)を使用し、ピークデータレートは5GBpsだった。


平昌冬季五輪で使用したSamsung製の5G基地局(28GHZ)

 OBSの最高技責任者のStotieis Salamouris氏は、「第五世代5Gネットワークは“進化”ではなく“革命”だ。」とし、 「4Gネットワークでは、どうしても遅延が生じるが、5Gは遅延がほとんどゼロに近い。遅延が生じる原因は、モバイル端末などの通信ではなく、爆発的に増えているIoT(Internet of Things)や自家用車のインターネットで、今後もさらに激増し、4Gネットワークで処理できる処理量を超えることは明らかだ。これまでの映像伝送の技術は、何年にもわたって開発された独自仕様のシステムが混在していて、統合された伝送技術はない。これに対し、 5Gの機能はオープンで幅広く普及が可能だ。高画質の映像を“遅延ゼロ”で伝送できる5Gは、マラソンや自転車競技、ヨットなどの競技中継やヘリコプターやドローンを使用した空撮ライブ中継の伝送技術に最適だ。次世代の放送技術の要になるだろう」と話している。

韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定
 2018年6月15日、韓国科学技術情報通信部は、2019年3月の5G商用サービス開始に向けて、携帯電話事業者に対し、5G周波数オークションを実施した。
 今回のオークションは、5Gで活用する二つの周波数帯(3.5GHzと28GHz)で実施し、世界初の「5G周波数オークション」として注目を浴びた。
 具体的な周波数範囲は3.5GHz帯が3420.0~3700.0 MHzの280MHz幅、28GHz帯が26500.0~28900.0 MHzの2400MHz幅、合計で2680MHz幅である。
 周波数の割当方法はオークションで、入札単位とブロック数は3.5GHz帯が1ブロックあたり10MHz幅で28ブロック、28GHz帯が1ブロックあたり100MHz幅で24ブロックである。
 1社あたり最大でそれぞれ10ブロックまで取得を認めており、3.5GHz帯が最大100MHz幅、28GHz帯が最大1000MHz幅まで取得できる。
 3.5GHz帯および28GHz帯ともに2018年12月1日より有効になり、有効期限は3.5GHz帯が2028年1月30日まで、28GHz帯が2023年1月30日までと設定されている。
 最低入札額合計は3.5GHz帯が2兆6,544億ウォン(約2,686億円)、28GHz帯が6,216億ウォン(約629億円)で、合計3兆2,760億ウォンとした。その結果、オークションの合計落札価格は3兆6,183億ウォンで決着した。

 3社の落札内容は、3.5GHz帯では、SKテレコムは100MHz幅で1兆2,185億ウォン(約1218億円)、KTは100MHz幅で9,680憶ウォン(約968億円)、LG U+は80MHz幅で8,095億ウォン(809億円)だった。
 28GHz帯では、SKテレコムは800MHz幅で2,073億ウォン(約207億円)、KTは800MHz幅で2,078憶ウォン(約207億円)、LG U+は800MHz幅、2,072億ウォン(約207億円)となった。
 
 今回のオークションでは1MHz幅当たりの最低落札価格はこれまでと比べて最も安く設定された。特にモバイルで初めて利用される高周波数帯の28GHz帯については、現時点では使い勝手も含めて不確実性が大きい点が考慮され、利用期間を5年と短く設定し、価格は大幅に引き下げた低い水準で設定された。
 3社の中で、SKテレコムは帯域幅の拡張ができる3.5GHz帯にこだわり、他社より高い応札価格で落札した。周波数は12月1日から利用が可能となる。キャリア3社は8月までに機器事業者を選定し、秋にはネットワーク構築に着手する
 一方、商用サービス開始で提供される5Gサービスの利活用についてはまだ具体的な内容があまり明らかになっていない。韓国では国を挙げて、「世界初」の低遅延・大容量・多数接続の5Gサービス開始を目指して総力を挙げている。






5G・第5世代移動体通信 2020東京オリンピックに向けて実現に暗雲


出典 PyeongChang2018 5G White Paper

AI、5G、ドローンが支えた平昌冬季五輪開会式
 2月9日、江陵オリンピック・スタジアムで開催された平昌冬季五輪開会式は、韓国と北朝鮮の合同選手団の入場行進や、キムヨナの聖火点灯などで世界中の視聴者を沸かせた。
開会式の演出を手がけたヤン・ジョンウン監督は、メインプレスセンターで行われた「開閉会式メディアブリーフィング」で、「今回の開会式は一つの 『冬の物語』のように簡単に皆が共感できる平和の話を見せる」とし「5人の子供たちが時間旅行を通じて古代神話から出発し、人と自然が共に調和をなす場面を見て試練と苦痛を乗り越え、平和の未来へ向かう旅程を描く」と説明した。そして「開会式は人の価値に注目するが、先端技術も公演に組み合わせる」とし「人工知能(AI)と5G(5世代)技術、ドローンなどを活用したパフォーマンスを開会式公演で確認できるだろう」と胸を張った。
今や、開会式・閉会式は、AIや5Gなどの先端技術を駆使した演出が必須となってきた。




平昌冬季五輪開会式 出典 PyeongChang2018 POCOG

1218台のドローンで開会式の夜空を飾ったIntel
2月9日に開催された平昌冬季五輪の開会式、1218台のドローンが夜空に五輪マークを描く“ドローンショー”登場し、世界の人々の眼を引き付けた名場面となり、ギネスブックの世界新記録にも登録された。
しかし、結局、“ドローンショー”はライブでは展開できず、事前に収録した映像を使用するという事態となった。
平昌五輪スタジアムで行われた開会式の当日に、五輪組織委員会のサイバー攻撃を受けたのがその原因とされている。
韓国メディアなどの報道によると、開会式が始まる45分前の9日午後7時15分ごろから、組織委内部のインターネットやWi-Fi(ワイファイ)が数時間、ダウンするというトラブルに襲われた。 このため開会式では予定していた小型無人機(ドローン)を飛ばすことができず、事前に録画した映像を使用したという。
国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は「ドローンを制御するロジスティックを直前で突然変更したため、ドローンを飛行させるとこができなかった」とドローンの飛行は中止したことを認めた。システム障害の原因は明らかにしなかったが、サイバー攻撃の影響を示唆した。

 この“ドローンショー”には、インテルの「クラウド・ドローン飛行技術」が使われた。ドローンの位置を上下左右センチメートル単位で把握して伝える位置測定技術と、各ドローンの間で情報を交わす通信技術が総動員され、Intelの卓越した技術力を誇示した。
使用された1218台のドローンは、“Shooting Star drones”と呼ぶIntelが開発した無人飛行体(unmanned aerial vehicle  UAV)で、重量は330グラム、6インチのローターを備えている。機体は、Intel Falcon 8+をベースに開発した。Falcon 8+の市価は、3万5000ドル(約385万円)ほどの高価格の最高機種だ。
 開会式で使用されたドローンは、エンタテインメントで使用するためにで開発された機種で、機体には40億色の色彩が表現可能なLEDライトが取り付けられ、夜空を背景に、LEDの光で、あらゆるアニメメーションを表現することができる。
 今回のオペレーションでは、1人のオペレータで、1台のコンピューターで1218台のドローンを制御するという。

 Intelは、2014年から多数のドローンを群集飛行させるプロジェクトを始め、2015年中国のドローン会社、ユニーク(Yuneec)に6000万ドル(約66億円 1ドル=110円)を投資し、2016年にはドイツの自動パイロットソフトウェア開発企業、アセンディングテクノロジーを買収した。インテルが半導体とは距離があるドローンに関心を持つのは、ドローンから派生するICT分野の成長の可能性に注目しているからだとされている。
  ドローン・クラウド飛行技術は山火事や地震などの自然災害、作物のモニタリング・管理などの農業の分野、建設工事や地図制作など幅広い分野に適用が可能だ。
ドローンの用途も配送・撮影・防犯・救助・測量などに拡大している。特に衛星利用測位システム(GPS)とセンサーを利用して正確な位置情報に基づいて、多くのドローンを同時に制御する技術は、自動運転自動車か交通管制システムにそのまま適用可能だ。
 Intelがドローン事業に力を入れているのは、ドローンのハードウェア事業に乗りだすのではなく、あくまでコンピューティング・ソリューションのための投資と分析されている。
Intelは、五輪という世界的なイベントでドローンやバーチャルリアリティ(VR)など先端技術力を誇示し、単にパソコンの半導体企業ではなく、総合情報技術(IT)企業というイメーへの脱皮を図っているのである。


PyeongChang2018の開会式の夜空飾るドローン・ショー 出典 ABC News


PyeongChang2018の開会式の夜空飾るドローン・ショー 出典 ABC News

Intel Experience the Team in Flight at PyeongChang 2018

Intel/Youtube


Shooting Star drones 出典 Intel HP

VRにも乗り出したIntel
 今回の五輪で注目されたIntelのもう一つの技術はVRを活用した各種スポーツ競技の「VRライブ中継」である。平昌冬季五輪では、Intelが開発した“Intel True VR”が導入され、双方向の360度全方位映像をライブでサービスした。VR小型カメラを競技場の随所に設置しさまざまなアングルからの競技を撮影して配信する。 視聴者は、競技場に行かなくても、臨場感あふれた観戦体験を得ることができる。
 平昌冬季五輪のホストブロードキャスター、OBSは、冬季五輪大会では初めて、このVRコンテンツをホスト映像としてライブで配信した。音声はナチュラルサウンドに実況キャスターのコメント(英語)を加えている。開会式・閉会式を始め、アルペンスキー(滑降・大回転)、ジャンプ、フリースタイル(モーグル)、スノーボード(ビックエア・ハーフパイプ・スロープスタイル)、クロスカントリー、スケルトン、リュージュ、フィギアスケート、ショート・トラック、アイスホッケー、カーリングなどの16競技、合計55時間を1日1競技以上をサービスした。
 NBCユニバーサルはNBC Sports VR appを立ち上げ、このVRコンテンツを全米の視聴者に配信した。
 NBC Sports VR appのVRコンテンツを視聴するには、Windows Mixed Reality headsets、Samsung Gear VR、 Google Cardboard、Google Daydream and compatible iOS or Android devicesが必要で、NBCユニバーサルのケーブルテレビか、衛星放送、IPTVの契約をしなければならない。あくまで、ケーブルテレビ、衛星放送、IPTVなどの付加サービスなのである。
 NBC Sports VR appでは、ライブストリームされたVRコンテンツを、1日間は再放送を行い、翌日以降は、それぞれの競技をハイライト・コンテンツに編集してサービスする。
 一方、NHKは、「ピョンチャン2018」のホームページで、360度VR映像を「360°ライブ」(ライブストリーミング)と「見逃しハイライト」(VOD)でサービスした。日本国内であれば誰でもが利用可能なフリーサービスである・
 VRサービスによって、視聴者は平昌のオリンピック・ワールドを自由に飛び回りながら、五輪競技場のバーチャル体験を楽しむことができるようになった。VR時代の幕開けを告げる平昌冬季五輪だといえるだろう。


Intel True VRカメラ


アルペンスキー競技場に設置されたIntel True VRカメラ

Intel True VR at Olympic Winter Games PyeongChang 2018

Intel/Youtube

 Intelは、放送・コンテンツ分野にも乗り出して、VR専門会社、VOKE買収するなど積極的な姿勢をとり、2019年には米主要放送局と協力して、双方向全方位360度VR放送を実現させた。 Intelは「好みに合わせ視聴者が選択可能な映像技術の導入で、スポーツ競技視聴方式に革命を起こす」としている。

IntelがドローンやVRなどに対する投資に力を入れているのは、成熟期に入ったパソコン市場から抜け出し、新しい成長動力を見いだそうという企業戦略を抱いているからである。成長が期待できる第5世代通信、5G市場で主導権を握るという狙いもあるだろう。5Gは膨大なデータを迅速に処理するインフラとして第4次産業革命を率いる核心技術とされている。
 VR機器・ドローン・自動運転車・モノのインターネット(IoT)などにIntelが開発したチップやデバイス、ネットワークソリューションを組み込み、これらの機器がつながるプラットホームも掌握するという戦略である。
 世界初の5G技術を公開した平昌冬季五輪は、こうした Intelの戦略を明らかにする格好の舞台となった。


平昌冬季五輪のレガシーとして5G Networkを挙げている 出典 PyeongChang2018 POCOG


韓国テレコムが平昌に設置した5G Village


現代自動車、ソウル~平昌間の高速道路で自動走行実証実験
 世界各国の自動車企業は、次世代の自動車、自動走行車の開発に凌ぎを削っている。
 現代自動車は、平昌五輪で自動走行自動車のトライヤルを成功させ、世界に一歩先んじた。
 現代自動車は、平昌冬季五輪開催に先立って、ソウル~平昌間の高速道路、約190キロメートル区間で最高速度、時速100~110キロメートルの自動走行実験を成功させた。 
 この自動走行実験は、レベル4(米国自動車工学会[SAE]基準)で行われ、5Gコネクテッドカーの次世代水素電気自動車ネクソ3台とジェネシスG80自動運転車2台で行った。 レベル4は、ドライバーは同乗するが、車の走行は自動制御される。
 自動走行車両5台は、京釜高速道路のサービスエリアを出発して、新葛(シンガル)JCを経て永東(ヨンドン)高速道路に入り、大関嶺(テグァンリョン)ICを抜けて最終目的地の大関嶺まで走行した。高速道路を走る間、車線の変更や前方車両追い越し、7個のトンネル通過などがスムーズに行われた。
 現代自動車は平昌冬季五輪・パラリンピックの期間に、5Gコネクテッドカーを利用して、選手団、大会関係者、観客などを対象に、平昌市内の競技場の周辺を往来する自動運転試乗体験を実施した。 
 現代自動車は2021年までにレベル4の都心型自動運転システムの商用化を推進し、2030年までには完全自動運転技術を商用化する計画だ。


ソウル~平昌間の高速道路を走行する自動走行自動車   出典 現代自動車

“ICT五輪”のキャッチフレーズを奪われた2020東京五輪
 平昌冬季五輪組織委は、平昌五輪のもう一つの名称を「世界最初のICT五輪、平昌」に決め、韓国のICT技術力を全世界に発信する舞台にするとしている。第4次産業革命の核心となる5Gサービスをはじめ、モノのインターネット(IoT)、超高画質映像(UHD)、人工知能(AI)、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)など、最先端技術が五輪期間中に公開される予定だ。
 韓国テレコム(Korea Telecom)は、SamsungやIntelと協力して、「平昌冬季五輪5G広報館」を江陵オリンピックパークで、開会式に先立って、1月31日に開館した。
 韓国の5G技術力や人工知能(AI)、バーチャルリアリティ(VR)を世界にPRするためである。
 2020年東京五輪も、“ICT五輪”のキャッチフレーズを掲げているが、平昌冬季五輪に先を越されていしまった。
2020年東京五輪まで残された時間は、後2年余り、平昌冬季五輪をこえる“ICT五輪”をどう構築するのか、日本の真価が試されている。






北朝鮮五輪参加で2020東京オリンピックは“混迷”必至
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“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲
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主導権争い激化 2020年東京オリンピック・パラリンピック 小池都知事 森組織委会長 バッハIOC会長
“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心
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唖然とする“五輪専門家”の無責任な発言 膨れ上がった施設整備費
アクアティクスセンターは規模縮小で建設を検討か? 国際水泳連盟・小池都知事会談
東京オリンピック 海の森水上競技場 Time Line Media Close-up Report
相次いだ撤退 迷走!2024年夏季五輪開催都市




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月20日
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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5G 第5世代移動通信システム 最新情報 東京オリンピック 5G実証実験 5GNR

2019年07月10日 10時52分55秒 | 5G


5G・第5世代移動通信
東京2020五輪大会に向けて実現へ




総務省、「5G」の周波数帯を楽天など携帯4社に割り当て
 総務省は4月10日、第5世代移動通信システム(5G)の周波数帯を、NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てることを発表した。
 3.7GHz帯については、KDDI/沖縄セルラー電話が2枠、NTTドコモとソフトバンク、楽天モバイルが1枠、4.5GHz帯についてはNTTドコモに1枠が割り当てられた。28GHz帯については、4事業者が1枠づつ確保した。
 この結果、NTTドコモとKDDI/沖縄セルラー電話は、建物や樹木などの障害物に対しても電波が伝わり、しかも高速・大容量の情報伝達が可能という電波特性があることで使いやすい帯域」とされる3.7GHz帯/4.5GHz帯でそれぞれ2枠づつが割り当てられ、5Gサービス競争でソフトバンク、楽天モバイルに比べて優位に立った。
 5Gサービスの料金体系については各事業者とも明らかにしていないが、現行の4Gと変わらない見通しとされている。携帯電話4社の激しい競争が始まる。

 また、問題になっている華為技術(ファーウェイ)製品については、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルの4社は、5G通信インフラ設備に華為技術など中国製の機器を採用しない方針だ。米国の呼びかけを受けた中国製品を事実上排除する政府の申し合わせに配慮した形となった。
 各社は希望する周波数を総務省に申請する際に、基地局などの機器をどの会社から調達するかについて計画を記載していた。同省は詳細を明らかにしなかったが、関係者が朝日新聞の取材に当面は中国製品を採用しない意向だと答えた。(朝日新聞 4月11日)
 しかし、華為技術の5G製品は技術面で国際的に高い評価を得ているとともに、価格面では圧倒的に優位に立っている。
 携帯事業者4社は政府の意向を尊重して華為技術を排除したが、5Gネットワーク整備に影響が出ることは避けられない。


「5G」周波数割り当て NTTドコモとKDDI/沖縄セルラー電話が優位に

5G周波数割り当ての審査方針総務省公表 地方を重視 通信事業者の重荷に



ファーウェイの孟晩舟・最高財務責任者(CFO) カナダで逮捕 イラン制裁違反の疑い
 12月5日、中国の情報通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)が、米国の要請を受けたカナダの捜査当局にバンクーバー空港で逮捕された。
 米司法省は、孟氏が米国による対イラン制裁をくぐり抜けようと、米金融機関にうその説明をした詐欺の疑いがあると主張。孟氏の身柄の引き渡しを求めている。
 これに対して中国外務省報道官は、「理由を示さないままの拘束は人権違反で、直ちに釈放するように求める」と強く批判した。
 米トランプ政権は安全保障上の理由で、ファーウェイや中興通訊(ZTE)を標的に制裁措置を重ねてきた。有力幹部の逮捕に至ったことで、米中の摩擦は更に激化することが懸念される。

 今回の逮捕の背景にあるのは、米中の第五世代移動通信、5Gを巡る覇権争いにあるとされている。
 華為は5G開発で最先端を走る企業の一つで、世界170カ国・地域の通信事業に進出している。
 トランプ政権は、中国企業が関与するスパイ活動が米国の安全保障を脅かすとし、中興通訊(ZTE)とともに米国市場から事実上、締め出してきた。
 ZTEは4月にイラン制裁違反を理由に制裁を受けて経営危機に陥り、経営陣を刷新して7月に制裁を解除された。米国は日本を含む同盟国に安全保障上のリスクがあるとして華為製品を使わないよう求め、豪州やニュージーランドは5G通信網に華為の参入を認めないとし、英国BTも基幹ネットワークから排除するとしている。またドイツテレコムやフランスのオレンジ社も調達の見直しを表明した。 
 これに対して日本も、華為技術と中興通訊の製品を政府調達から事実上、排除する方針を固めた。2社が中国情報機関との結び付きを指摘されていることを踏まえ、各府省庁のサイバー攻撃対策担当者による会議を開き確認する。ただし日中関係にも配慮して2社を名指しせず、申し合わせの内容は「安全保障上の観点を考慮する」といった表現にとどめる方向だ。(共同通信 12月7日)
 華為の技術力は米国の警戒対象で、華為はスマートフォンや通信基地局で強いブランド力を持つ。17年の売上高は6036億元(約9.9兆円)。スマホの世界シェアは米国のアップルを抜いて世界第2位、5G設備の構築では各国に攻勢をかけていて、世界各社を一歩リードしているされている


米国、孟晩舟CFO起訴 身柄の引き渡しを要求 90日間の米中貿易交渉を絡めて強硬策に出た米国 国内経済の減速で打撃を受け幕引きを画策する米国と中国


5Gのプレサービス 2019年夏にも開始 総務省が公開ヒアリング
 総務省は2018年10月3日、5G(第5世代移動通信システム)に関する公開ヒアリングを開き、楽天モバイルネットワークを含めた携帯電話事業者4社が5Gの事業展開や利用イメージなどをプレゼンした。日本では2020年の東京オリンピック・パラリンピックが始まる前までに5Gの商用化を目指しており、2019年夏にもプレサービスが始まる見通しだ。
 NTTドコモは「ラグビーワールドカップ2019 日本大会」が開催される2019年9月に合わせて、「都市部から地方まで、5Gの需要のあるところから、「プレサービス」を始める計画を明らかにした。
 プレサービスのイメージについては、「料金は徴収しない。端末は私どもから貸出するが、その台数は限られる」と説明した。
 本格的な商用サービスの開始は2020年春としている。



 KDDI は2019年、一部エリアから5Gを開始し、高繊細映像配信、スタジアムソリューション、、ドローン警備などを開始する計画だ。本格展開を始めるのは2020年で、「4Gとの連携による本格展開」とし、大容量のモバイル・サービス、リモート・オフイス、遠隔操作などで実用化するとしている。そして、「2021年には5Gコアを導入し、ネットワークスライシングやMEC(Multi-access Edge Computing)を活用した様々なサービスを提供していくとした。
 さらに5Gの意義の1つとして「地域課題解決と地方創生」を挙げ、そのエリア展開について「首都圏だけではなく、多くの地域に整備する」と地方へのサービス展開に力を入れるとした。

 ソフトバンクも5Gのプレサービスを2019年に始める計画で、スタジアムの臨場感を360度のVR(仮想現実)で視聴体験できる5Gイベントを2019年夏以降に開催するとしている。本格サービスが開始される2020年には、多数接続を可能にするIoT(NR)でインフラの監視や超低遅延を生かした自動車や建設機械の遠隔操作サービスを実現したいとしている。

 2019年10月に携帯電話事業に参入する楽天は、移動体通信のターゲットを、インターネットサービス、フィンテック(金融)、そして通信事業の、3つの事業を上げている。
 楽天では、基地局の開設を前倒して、4Gネットワークの構築を実施する計画で、展開エリアは東名阪を中心に、2019年10月のサービス開始での自社エリアは、東京23区、名古屋市、大阪市が中心になるとしている。その後は全国の都市圏、周辺エリアに拡大していく。自社エリア以外はローミングでカバーし、通信は全国で利用できるようにする。
 楽天では、4Gネットワークの構築するにあたって、5Gの仮想化アーキテクチャーを先取りした“5G Ready”システムで構築しているため、無線ユニットの追加とネットワークのソフトウエアのアップグレードだけで4Gから5Gへの素早い移行が実現可能としている。移行に際しては、アンテナなど末端の設備は5Gで新たにハードウェアを用意する必要はあるが、その基地局の選定は、すでに5Gサービスを前提に作業を進めている。
 こうしたネットワーク構成を採用した楽天は「2020年から5Gサービスを開始したい」と表明。獲得を希望する周波数幅(28GHz帯で800MHz幅など)が実現すれば、下り10Gbpsのサービスを提供できるとした。
 またEコマースなどで、ラストワンマイルの配送を無人のロボットカーが行う研究も行っているとし、5Gと連携させたいとしている。
 楽天は、2019年10月開始予定の4Gサービスの料金について、サービス開始の「数カ月前」に発表する予定としているが、楽天の参入で携帯電話事業の競争は激化するだろう。

 公開ヒアリングは、携帯電話事業者の4社が一堂に集まったが、5Gの利活用の紹介では、建設機械の遠隔操作や遠隔地医療、スマート農業、スマート工場、スマート・シティなど実証実験でトライヤルしたものばかりで、新たな利活用の展開イメージは示されず、新鮮味に欠けた。なぜ5Gサービスが必要なのか、現在、主流になり始めている4G(LTE-Advanced)では十分でではないのか、依然として説得力に欠いている。またユーザーにとっては最も関心のある5Gサービスの料金設定についても、なるべく安価にしたいと曖昧な表現に留まり、明らかにされなかった。

 携帯電話事業者の他に、5G移動通信システムの導入に名乗りを上げている事業者が22社ある。
 その多くがケーブルテレビ事業者で、ケーブルテレビ富山、秋田ケーブルテレビ、イッツコム、阪神ケーブルエンジニアリング、愛媛CATV、中海テレビ放送など14社と日本ケーブルテレビ連盟である。その他にパナソニックシステムソリューションやBWAジャパン、地域ワイヤレスジャパン、CCJなど7社の通信サービス事業者が名乗りを上げていて、5Gの周波数割り当ては難航すると思われる。
 総務省は、5Gサービスを開始する事業者に対しての周波数割り当てを2018年度末に実施するとしている。


出典 総務省 5G利用に関する調査結果の概要

携帯料金値下げ競争激化 5Gの設備投資に重荷に
 2018年11月10日、政府の規制改革推進会議は、携帯電話料金の引き下げへ向けて、通信料金と端末代金の完全な分離や、販売代理店の販売・広告に対する規律の整備、一定期間の支払総額を明示、MNO事業者との競争を阻む“差別”解消対策として、期間拘束契約や自動更新、解約時の違約金などを改めさせる措置を政府に求める答申をまとめた。政府は具体策を年度内にまとめるとしている。 
 携帯料金をめぐっては、菅義偉官房長官が今年8月に「他の国に比べて高すぎる。4割程度下げる余地がある」などと発言し、値下げ議論が加速した。
 こうした動きに対し、通信事業者側は「携帯料金が著しく高いとは思っていない」、「価格もあるが、サービスの質が問題。トータルで判断することが大事」などと反論しているが、菅氏は5Gのプレサービスが始まる来年10月には「大幅値下げ」を実現させる見通しを示した。
 これに対して、NTTドコモは、10月31日、携帯料金を2019年6月までに、2割~4割程度、値下げするし、最大4000億円(年間)を利用客に還元すると発表した。そして5Gインフラ構築のために1兆円(2019年~2023年)投資するとした。
 一方、KDDIは楽天との大型提携発表し、通信回線を楽天に貸すことを明らかにした。楽天は参入当初から全国でサービスが可能になった。回線貸し出しは2026年3月末まで、楽天は通信網の整備を進め、順次自前の回線に切り替えていく。両社はこのほか決済や物流分野でも提携を進めるとした。値下げについては同様のプランはすでに実施しているが更なる値下げを検討するとしている。またソフトバンクは、すでに分離プランの導入で2〜3割値下げしているが、モバイル通信部門の人員を4割削減して携帯料金の更なる値下げを目指すとしている。
 来年開始の5Gサービスの料金体系について各社とも明らかにしていないが、こうした値下げ競争激化がどう影響するのかが注目される。
 通信事業者は、すでに3GからLTE、そしてLTE Advancedを実現するために膨大な設備投資を行っている。3.5GHz帯の活用や、キャリアアグリゲーション(CA)、256QAM、MIMO技術の導入で、588~788Mbpsの高速LTEサービスを実現し、各社とも約50%のカバーエリアを達成している。LTEの高度化への設備投資はまだ継続している中で投資額の回収までには至っていないと思われる。さらに5Gへの投資や料金値下げが重荷になり通信事業者は生き残りを賭けた競争に突入した。5Gサービスの商用化展開は前途多難だ。

韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定



4K8K映像、高速走行移動体、トラック隊列走行、スタジアム映像サービス、遠隔地医療 
5G実証試験の成果を報告

 2018年3月27日と28日、総務省は「5G国際シンポジウム2018」を開催し、2017年度に実施した、「5G総合実証試験」の成果の報告し、5Gの技術開発情報やさまざまな分野での利活用の事例を海外の5G開発関係者に発信した。
 「5G総合実証試験」は、総務省とNTT、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの通信事業者や国際電気通信基礎技術研究所、情報通信研究機構が参加し、超高速・大容量通信、高速移動体(電車・自動車)の通信、低遅延通信、同時多数接続などをテーマに実施した。


5G国際シンポジウム2018


5G総合実証試験の成果の展示

 NTTドコモ は、「PCやタブレットやスマホなどのユーザー端末で5Gbps、1基地局あたり10Gbps超の超高速通信の実現」をターゲットにして、東京スカイツリータウンと和歌山県で、4.5GHz帯および28GHz帯を使用した5G実証実験に取り組んだ。
東京スカイツリータウンには、「5Gトライヤルサイト」が設置され、4K/360度VR映像や8K映像をライブで伝送し、5Gの技術評価をした。またこのトライヤルサイトでは、「人口密集地」の屋外環境において最大10.2Gbps通信速度を実現した。
 和歌山県では、都市部の総合病院と山間部の診療所を高速通信ネットワークで結び、4K高精細映像を活用した遠隔診療サービスの実証試験を実施した。医師が診断する際に患者の患部を映し出す4K接写カメラ映像や超音波映像診断装置(エコー)・MRIなどの医療機器の映像をリアルタイムに伝送することで、遠隔診療サービスの高度化に効果が上げられるとした。

 NTTは、「高速移動時における2Gbpsの高速通信の実現」をサービス・モデルに、28GHz帯を使用し、電車・高速バスなどを想定した時速90キロで移動する高速移動体に対し4K高精細映像を5G通信で伝送する実証実験を実施した。
 富士スピードウェイ(静岡県)では、時速90キロで走行する自動車に対する伝送試験ではで最大2.24Gbpsを達成、東武鉄道日光線(栃木県)では、時速90キロで走行する電車に対する伝送試験では最大2.90Gbpsを達成した。
 2020年実現を目指している自動運転走行車には超高速・低遅延の5G通信のバックボーンは不可欠とされている。

 KDDIと国際電気通信基礎技術研究所は、2018年3月、沖縄・那覇市内にある「沖縄セルラースタジアム那覇」で、28GHz帯を使用した5G通信を利用して、4K映像のリアルタイム映像を観客席に設置した50台のタブレット端末に対して配信する実験を実施した。
KDDIは、東京・台場のシンポジウム会場でも同様のシステムのデモンストレーションを行い、25台のタブレット端末にそれぞれ異なる4K映像を同時配信した。
 スポーツの試合や音楽コンサートなどのイベントで、観客のタブレットやスマートフォンに、多地点に設置されたカメラで撮影した選手やアーティストの高精細映像をリアルタイムで配信し、観客が自由に視点を選んでイベントを楽しむサービス・モデルを想定している。平昌冬季五輪でもフィギアスケートなどで、POV(Point of view)サービスとしてすでに実現され、東京オリンピックでも同様のサービスが行われるのは確実だろう。
実証実験で使用されたタブレット端末はサムスン電子製で、同社製の5Gモデムを内蔵しており、最大で約3Gbpsの高速通信が可能とされている。
 平昌冬季五輪は、サムスンは5G対応タブレット端末の試作機約1000台を提供したが、今回KDDIが公開した端末はそれと同等機種だという。5G対応のタブレット端末が日本で公開されるのはこれが初めてで、しかもサムスン電子製。
 5Gタブレットの開発では、日本は韓国に後れをとった。


KDDIの5Gタブレットの展示


『Sharing our Future』技術解説 NTTdocomo

 ソフトバンクは、「トラックの隊列走行 車両の遠隔監視・遠隔操作」をサービス・モデルにして、「1ms(無線区間)での低遅延通信の実現」の実証実験を行った。
 時速50kmから90kmで走行中のトラックと5G実験基地局間で、4.7GHz帯を使用し5G通信の実験を実施し、無線区間(片道)の遅延時間が1ms以下となる低遅延通信に成功した。
 トラックの隊列走行実験では、後続車両に搭載されたカメラで撮影した4K映像を、28GHz帯を使用した5G車両間通信により先頭車両にリアルタイムで伝送する実験も行った。
 車両間だけでなく。基地局を経由した4.7GHz帯を使用して、4K映像のリアルタイム伝送実験も行った。
先頭車両のモニターで、低遅延で鮮明な4K映像を見ることができたとし、トラックやバスなどの遠隔監視や遠隔制御などでの利活用が期待される。
 今後は5G移動通信の「超高速」、「大容量」、「低遅延」のメリットを活かし、トラックの隊列走行で、先頭車両だけに運転手を配置して後続車両を無人自動運転にするなどの利活用モデルの実用化に向けて検証や評価を行なっていきたいとしている。
 実証実験を統括して5GMFの三瓶技術委員長は、「実証実験の初年度としては成果を上げたと思う。2020年、5G商用化を実現するためには、2018年度が重要な年となる」と総括した。

5Gの必要性の根拠を示せなかった実証実験
 今回の実証実験の各グループの発表を聞いて、筆者は、なぜ5Gが必要なのか、4GLTEで十分なのではないか、大きな疑問が沸いてきた。
 東京スカーイツリーの「5Gトライヤルサイト」では、4K8K映像の送信、スタジアムでのタブレットに向けての4K配信、トラック隊列走行でも4K映像のやりとり、遠隔地医療システム、5Gの実証実験というと必ず「4K8Kの高繊細映像」の伝送が登場する。
 5Gは移動通信サービスであり、5Gのユーザーは、タブレットやスマートフォンなどの移動体の端末で、大画面ではなく小さな画面で映像や画像を見るというサービス・モデルである。タブレットやスマートフォンの小画面で、HDと4Kの映像を見比べても、画面に顔を近づけてよく見ない限り優位差は感じられない。HDと4Kの画質の優位差が顕著に表れるのは50インチ以上の液晶テレビである。さらに8Kとなるとその威力はパブリック・ビューイングの大スクリーンにならないと発揮できない。
 なぜ、HD映像では不足なのか、なぜ4Kにしなければならないのか、理解に苦しむ。タブレットやスマートフォンのユーザーはHD以上の高画質を求めているのだろうか。
 スタジアムのイベントでのスマートフォンへの映像配信やトラックの隊列走行の管理映像、テレビ会議には4Kは果たして必要なのだろうか。
 HD映像でサービスを実施するなら4KLTEで十分で、膨大な新たな設備投資経費が必要な5Gは不要だ。
 遠隔地医療での利活用では4Kの高繊細映像のリアルタイム伝送が威力を発揮するということは理解できる。しかし、なぜ光ファーバーを利用しないのか。日本のほぼ100%の地域には光ファーバー網の設置が終わっている。伝送路の実証実験をするより、遠隔地医療サービスのシステム構築に力を注ぐ方が重要だろう。 
 「1ms以下」の低遅延についても、タブレットやスマートフォンのユーザー対してはほとんど意味がない。多少の遅延が生じても映像や画像を見るにはまったく支障はないだろう。
 その一方でIot時代の急速な進展で、ヒトを介さないモノ同士の通信量は、今後急速拡大すると予想されている。Iotを駆使した“スマートハウス”の実現なども想定される。またAIロボットやAI自動車は大容量のビックデータを処理しなければならなくなる。こうしたICT時代には5Gネットワークの基盤整備は必須となる。今回の実証実験で、5Gサービス実現で最重要となるIotデバイスの多数同時接続に向けた実証実験がないのは不満感が残る。
 5Gの実証実験は、4G(LTE-Advanced)では実現不可能で5Gを使用しなければならい利活用サービス・モデルを提示する必要がある。それができなければ、なぜ5Gが必要なのかについて国民の理解は得られないだろう。


出典 総務省

“2020年5G商用化の実現”に暗雲 5Gはオーバースペック
 5Gサービスの商用化を実現するためには、4G(LTE-Advanced)では不可能な新たな魅力的な利活用のサービス・モデルを提示できるかどうかにかかっている。
 今の日本で移動体通信の大半を使用しているは1億台を超えるとスマートフォンのユーザーである。
 しかし、こうしたユーザーの大半は4G(LTE-Advanced)で十分満足していて、これ以上の高スペックで高価な5Gに関心は示さないと思われる。
 幅広い市民への5Gの普及拡大は、ほぼ絶望的だという懸念が生じる。
 日本の一般の家庭や企業に対しては、光ファーバー回線がほぼ100%整備されていて、いつでも高速通信サービスが利用可能だ。光ファーバー回線が十分に普及していない米国やアジア各国では、5Gネットワークは大きな意味があるかもしれないが、光ファーバー網が整備されている日本では5Gサービスはあまり意味がない。国民の支持も得られないだろう。 
 さらに5Gに割り当てられる周波数帯域も重要である。
 今回の「5G総合実証実験」では、4.5Mbps帯域と28Mbps帯域が割り当てられた。4.5Mbps帯域を利用すると、雨や霧、建物や構造物などの障害物があっても電波はある程度回り込んで伝わり、広範囲に行き渡りるが伝送速度は上がらない。また使用可能な帯域幅も狭く、大容量の通信を行うには条件は良くない。これに対して28Mbps帯域では、伝送速度は上がるが、電波の直進性が強く、障害物があると減衰し、電波は広範囲に及ばない。使用可能な帯域幅は幅広く確保することが可能なので大容量の通信にはむいている。それぞれ一長一短なのである。
 こうした周波数の特性をクリヤーするには、膨大な数のアクセスポイントをどう設置するか、新しいネットワークシステムや5G対応機器の開発をどうすすめていくかが肝要で、5Gサービスの実現には相当なハードルが待ち構えている。5G設備投資の負担と収益性のはざまで通信企業各社は解決しなければならない難問が課せられている。

 国を挙げて取り組んでいる2020年5Gサービスの商用化、5Gのユニバーサル・サービスの実現には暗雲が立ち込めている。
 残された時間は後2年、5Gまさに正念場を迎えている。



NTTドコモの5G無線装置 13.2Gbpsの通信速度を実現している


5G総合実証試験  出典 総務省報道資料 2017年5月16日


5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP
 2017年12月21日、「3GPP TSG RAN Plenary」は、5G NR標準仕様の初版の策定が完了し、技術仕様を公表した。
 今回策定されたのは、5G NRをLTEと連携させて実現するNSA(Non-StandAlone)と呼ばれる機能を規定した。既存の4G(LTE)ネットワーク構成の中に5GNAネットワークのエリア(EPC Evolved Packet Core)を構築して、ユーザーデータは4G(LTE)と5GNAを連携させ処理し、通信制御は4G(LTE)側のコントロールチャンネルで処理する。NSA(Non-Standalone)と呼ぶ5GNRネットワーク構成を規定した。
 新たな無線方式の5GNRを、高度化した4G(LTE)と連携させて一体的に動作させることで5Gサービスを実現させた。
 これを受けて、同日、世界の主要5G移動通信キャリヤー各社は、早ければ2019年に開始を予定している5Gサービスの大規模トライアルや商用展開に向けて、5G NRの開発を本格的に開始すると共同発表を行った。
 3GPPは、これで5G標準化の「フェーズⅠ」の策定を終えて、引き続きSA(tandalone)方式の策定に入り、2018年6月には「フェーズⅡ」を策定し、「5G New Radio」の標準化を完了するとしている。
 日本では情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会技術検討作業班が、これまでNB-IoTやLTE-Mの技術条件の検討などを進めてきたが、12月22日に開かれた第4回会合から、「5G New Radio」を受けて、5Gの技術条件の検討を本格化させた。
 同作業班は今年5月に取りまとめる報告書をもとに、夏頃までに技術的条件を策定し、これに基づいて総務省は、焦点の5G向けの新周波数を2018年度末までに割り当てる方針である。
 2018年は、2020年の5G商用サービス実現に向けて重要な年となる。





出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料


5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP


平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か?




第五世代移動通信5Gとは何か



第5世代移動通信システム国際ワークショップ2015 2015年11月6日 幕張メッセ
ITU、日米欧中韓の推進組織の代表が集まった *米国はビデオ参加

 「G」という言葉の意味は、英語の「Generation(世代)」の頭文字。1Gは第1世代、2Gは第2世代、3Gは第3世代、4Gは第4世代、そして次世代の通信規格、5Gは、第5世代となる。
 1Gはアナログ方式の通信規格、2Gはデジタル方式になってメールやネットの利用に対応した規格。さらに高速化された3Gでは動画サービスが開始され、iPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレットが本格的に登場し、“モバイル時代”の幕開け、そして、さらに高機能化したiPhone5やNexus 5などのモバイル端末の爆発的普及を支えた4G、そして、すでに、その次世代の5Gが“胎動”している。
 2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界に先駆けて、現在の1000倍、10Gbps 以上の通信速度という第5世代移動通信システム (5G)の実現をめざし、 “オールジャパン”での取組みが強力に推進されている。


出典 2020年代に向けたワイヤレス関連の戦略 総務省


出典 情報通信技術分科会


出典 一般社団法人電波産業会[ARIB]

急増するトラヒック(通信量) 進化した移動通信システム
 iPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレッットの爆発的な普及で、移動通信へのトラヒック(通信量)は、急増している。2014年3月には671.7Gbps(月間平均 総務省調査)という膨大なトラフィックが記録されている。移動通信へのトラヒック(通信量)は、この5年で、10倍、これからの5年でさらに10倍、この5年で10倍、2020年までには1000倍になると言われている。
 2011年から2012年にかけて立て続けに起こった通信障害は記憶に新しい。急増したiPhoneやGoogle Nexusなどのスマートフォン、タブレッットの通信量を処理できず、“つながらない”をというトラブルが日本全国で多発した。膨大な数の移動端末が、ネットワークに“つなぎっぱなし”になることが原因だったという。
 また新しいサービスモデルの登場も、トラヒック(通信量)の急増を加速させる。
 最近、注目を浴びているウエアブル端末、2015年4月、Apple Watchが発売されて、ブームは一気に加速している。2020年には、1億台以上普及するという予想もあり、今後、爆発的に普及しそうである。ウエアブル端末とは、身につけて持ち歩くことができる情報端末、時計や眼鏡などの製品に利用される。
 もう一つは、「モノとモノつなぐ通信」である。
 M2M(Machine to Machine)と呼ばれる人間が介在しないで、機器同士がコミュニケーションをして動作するシステムである。またIoT” (Internet of Things)は、「モノのインターネット」と呼ばれ、社会のあらゆる"モノ"が通信でつながるシステムだ。
 こうした「モノとモノつなぐ通信」が、交通、医療、企業、公共施設、学校、家庭など社会のあらゆる分野で急速に普及している。
 こうした通信量の増大に対応するためには、移動通信の超高速化と利用周波数帯の拡大を早急に実現しなければならない。2020年、東京オリンピック・パラリンピックがターゲットである。キーワードは“ICTオリンピック”だ。


出典 一般社団法人電波産業会[ARIB]


出典 情報通信技術分科会

■ 1G アナログ式携帯電話
 第1世代移動通信システムは、1979年初めて実用化されたアナログ方式の自動車電話に採用されている通信システム。これによって自動車電話や携帯電話が急速に普及した。
*周波数割当  800MHz帯

■ 2G デジタル化 電子メール/インターネット
 第2世代移動通信システムは、1993年に登場したデジタル方式の移動通信システム。デジタル化された携帯電話では、音声通話だけでなく、電子メール、インターネットが利用可能になった。
 NTTドコモでは、「mova」(ムーバ)と名付けてサービスを提供。
*周波数割当  1.5GHz帯 (下り最大数kbps)

■ 3G 画像/音声/ゲーム
 第3世代移動通信システムは、国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-2000」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システム。
 第2世代 (2G) では互換性のない方式の移動通信システムが各国、各地域別に展開されていたため、第3世代では世界的にローミングが可能となるように統一規格の策定を目指した。
 IMT-2000規格として1999年に勧告された地上系無線方式には5種類の規格が規定され、通信速度として144kbps(高速移動時)、384kbps(低速移動時)、2Mbps(静止時)が定められた。
 動画の送受信が可能になり、各種のサービスが提供され、携帯端末でもマルチメディア時代の幕開けとなった。

 Appleは3G対応モデルの「iPhone 3G」を発売、ソフトバンクが日本で発売を開始し、「iPhone」ブームの起爆剤になる。
 「iPhone 4S」からは、auも日本国内で発売開始。
 3G対応モデルのGoogle NexusSが発売し、Amazonは3G対応モデル、「Kindle Touch」を発売開始、Androidを搭載したスマートフォン端末やタブレット用が次々と登場する
 NTTドコモでは、「Foma」(フォーマ)と名付けてサービスを提供。
* 周波数割当  1.7GHz帯 1.8GHz帯 1.9GHz帯 2.1GHz帯 2.5GHz帯(BWA) (下り最大384kbps)


■ 3.9G LTE(Long Term Evolution) 高速化 100Mbps時代
 第3世代(3G)の移動通信システムをさらに高速化した規格。第4世代(4G)への橋渡しという意味で「3.9G」(第3.9世代)と呼ばれている。一般的には、LTEも「4G」という表現を使っている場合が多い。
 LTEで、通信速度が下りで最高100Mbps以上、上りで最高50Mbps以上となり、家庭向けのブロードバンド回線にほぼ匹敵する高速なデータ通信が可能となった。
従来と異なりすべての通信をパケット通信として処理するため、音声通話もデジタルデータに変換されてパケット通信に統合される。
 LTEで利用する周波数帯域や使用する帯域幅は3Gと共通にして、従来の通信サービスからのスムースな移行を目指した。
 AppleはLTE対応モデルの「iPhone 5」を発売、iPhone人気はさらに過熱した。
 「iPhone 5S」からはNTTも日本国内で発売開始。
 LTE対応のGoogle 「Nexus5」が発売開始。「Nexus 7」は2万円を切る価格で発売されスマートフォン端末の普及はさらに加速。
* 周波数割当  900MHz帯 900MHz帯 (下り最大100Mbps)

■ 4G(IMT-Advanced) 動画 1GBps時代
  第4世代移動通信システム(4G)は、国際電気通信連合 (ITU) が定める「IMT-Advanced」 (International Mobile Telecommunication 2000) 規格に準拠した通信システム。「LTE-Advanced」と「WiMAX 2」の2方式がある。。
 100Mbp、200Mbps、1Gといった光ファイバーに対抗する通信速度を目指して技術開発が行われた。
 LTE-AdvancedはLTEを高度化したもので、WiMAX2(IEEE 802.16m)は、WiMAXをさらに進化させたもので、最高通信速度は1Gbps程度にまでに達する。4K映像や映画、ゲームなどの高繊細映像の携帯端末への配信が可能になった。
 通信速度は超高速化されるが、第3世代移動通信システム(3G)で使用している 2GHz帯 より高い周波数帯を用いるため、サービスエリアが狭くなることや屋内への電波が届きにくくなることから、3Gと併用してサービスしている。
 4GはiPhoneの登場と爆発的な普及を支えている移動通信システムである。

* 周波数割当  3.5GHz帯 (下り最大1Gbps)



出典 NTTドコモのホームページ


出典 2020電波政策懇談会

■ 5G
  総務省では、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、世界に先駆けて、10Gbps 以上の通信速度という第5世代移動通信システム (5G)の実現をめざし、ロードマップの大枠を示し、産学官が連携して“オールジャパン”での取組みを強力に推進している。
 5Gは通信速度で現行の100倍に当たる10Gbpsの通信速度の実現を目指しており、スマートフォンなどの移動端末に、高精細な映像や大容量の情報を超高速で伝送できるようになる。 更に重要なポイントは、ICT社会の進展であらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)が急速に普及し、通信量の爆発的増加に対応しなければならない。また自動車や鉄道、ロボット、工場の生産設備、社会の隅々に設置されるセンサーなどの通信を瞬時に遅延なく処理する必要がある。
 5Gの開発とサービスの実現は、スマートフォンの延長線上にある移動端末だけの通信基盤はなく、Internet of Things(IoT)などICT社会の進展を支える情報通信基盤として必須になってきた。
 総務省では、2017年度から5Gの各種の技術を統合した実証実験を開始し、 ネットワークシステムやサービスモデルのイメージを作り上げながら実用化を推進しながら、5Gサービスを実現するために最重要の周波数帯の確保を行っていくとしている。商用化開始のターゲットは勿論2020年東京オリンピック・パラリンピックである。
 2017年9月、5G開発の推進組織、「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF)が発足した。発会式には、総務省やNTTドコモやKDDI、シャープ、ソニーなどの民間企業各社、研究所、大学関係者などが参列し、このプロジェクトへの意気込みを国内外に示した。


出典 電波政策ビジョン懇談会 総務省

焦点 5Gの国際標準化の主導権争い ハードルの高い要求水準

5GMFを立ち上げた日本
 日本では、2014年9月30日、総務省は「第5世代モバイル推進フォーラム」(5GMF The Fifth Generation Mobile Communications Promotion Forum)を設立し、産官学のオールジャパン体制で5Gの技術開発や標準化に取り組んでいる。通信関連の企業74社や専門家14人で構成されている。
 これまでにまとめられている5Gのコンセプトは、MEITISの要求水準とほぼ同様の内容である。

▼ 通話エリアあたりで現状の1000倍のトラフィックを処理する大容量化
 (システム容量=ユーザー数×通信速度)
▼ 現状の10倍程度、ピーク時で10Gbps程度の高速通信
 (ピーク速度を10倍)
  *「上り」は10Gbps、「下り」は20Gbpsを目標(ITU会合合意)
▼ 感触通信やAR(拡張現実)、M2Mといった、タイムラグが大きな影響を与える技術に対応する1ms以下の低遅延
 (遅延10分の1)
▼ リニアや新幹線など交通機関で高速で移動中の通信を可能にする
 (移動性 500km/h)
▼ 大規模イベントや災害発生直後といった大量の通信トラフィックが集中する事態に対応しうる多数の端末との同時接続
 (接続機器数100倍)
▼ 電池切れを気にせずインフラ管理などに設置・利用可能は省電力化
 (消費電力2~3分の1)
▼ 情報通信基盤として幅広く普及しやすい価格水準
 (低価格化)

 こうした要求水準をどのように実現するかは、標準化作業が終わっていないので定まっていない部分が多いが、当面の間、「使いやすい帯域」の6GHz以下の低SHF(マイクロ波)帯を使ってLTE/LTE-Advancedと互換性を持ちながら5Gサービスを開始していきながら、6GHz超の帯域も使って5Gサービスを本格化させる戦略である。
 あわせてMEITISと同様に2020年に商業化を開始するというロードマップも公表し、技術的な開発や制度の整備を行うとしている。




出典 総務省


世界各国の5Gの技術開発・標準化の推進体制は?


出典 情報通信技術分科会

標準化で主導権を握る3GPP(3rd Generation Partnership Project)
 3GPPとは、第3世代(3G)移動体通信システムの標準化プロジェクト。また、同プロジェクトによる移動通信システムの標準規格。
 1998年12月、アメリカのT1(現ATIS)、ヨーロッパのETSI、日本の電波産業会(ARIB)や情報通信技術委員会(TTC)、韓国のTTAといった通信標準化団体が基になって結成され、後に中国のCWTS(現CCSA)も加わっている。
 3GPPは、NTTドコモやEricssonが推進していた日欧方式のW-CDMAを標準規格としていたが、1999年のQUALCOMM社とEricsson社の合意を受けて、QUALCOMM社のcdma2000方式も取り込んだ標準規格を最終的に採用した。
 ITU(国際通信連合)は、3GPPの標準規格を参照して、第三世代移動通信(3G)の国際標準「IMT-2000」を策定した。
 3GPPでは、2016年3月をめどに「リリース13」を確定し、LTEの高度化に向けて、無線LANとLTEを1つのネットワークとすることでアクセス機能を強化したりして、遅延時間の低減、消費電力のさらなる削減を図り、水平方向に加えて垂直方向までカバー領域を広げるマルチアンテナ技術などの技術規格を定めるとしている。また「リリース13」では5Gにつなげる重要な基本コンセプトが定められる。
 引き続き「リリース14」の策定を開始し、5Gの技術要件のアウトラインを固め、2018年末までには詳細な技術要件を定めた「リリース/15」で、5Gの標準化をする予定である。また「リリース/15」では、6GHz未満の周波数帯域を利用した標準規格、「フェーズ1」と6GHz以上の高い周波数向けの「フェーズ2」(2019年に決定)に分けるとしている。


出典 2020電波政策懇談会



5Gの最大の難関は周波数帯と帯域確保

■ 第三世代3G・LTEサービスの周波数帯
 従来の、3GやLTEのネットワークでは700~3GHz帯(UHF帯)の周波数帯が主に使われていた。
 これらの周波数帯のうち、低周波の700~900MHz帯は、電波の到達距離が長く、建物などの構造物を回りこみやすい上に、コンクリートなどを通りに抜ける特性があり、携帯電話などの移動通信には最適とされ、「プラチナバンド」と呼ばれて移動通信事業者間で争奪戦が繰り広げられてきた。
 テレビ地上波のアナログ放送終了に伴い、「プラチナバンド」の700MHz帯と900MHz帯は再編成されて携帯電話事業者に割り当てられた。700MHz帯は、NTTドコモとKDDI(au)、それにイー・アクセスに割り当てられ、900MHz帯はソフトバンクに割り当てられた。これまでソフトバンクは、1.5GHz帯や一部2GHz帯の高い周波数を使用していため、ライバルのNTTドコモやKDDI(au)に比較してつながりにくいという批判が多かった。周波数が高くなると電波の性質が光に似てくるのでコンクリートなどは通りにくくなるので建物の中や、基地局と見通しがきかない建物の影などは電波状態が悪くなるからである。ソフトバンクはこの調整で「プラチナバンド」を初めて手中にして、他社との競争で優位に立ったとされている。
 携帯電話の割り当て周波数帯としては、「プラチナバンド」の700~900MHz帯の他に、1.5GHzや1.7GHzの帯域も使用されている。
 いずれにしても700MHz~3Gの極超短波(SHF)帯は満杯、LTE-Advancedや5Gサービスを開始する余地はない。

■ 第四世代4G・LTE-Advanced サービスの周波数帯
 2014年12月、総務省は第4世代移動通信(4G)サービス向けの周波数をNTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクモバイルの3社に割り当てると発表した。4Gサービスでは、現行の約10倍の高速通信が可能で、3社は相次いでサービスを開始した。
 今回、新たに3社に割当られた周波数帯は、3.5GHz帯(3480〜3600MHz)の合計120MHz帯域幅で、本格的な4Gサービス、LTE-Advancedの使用され、最大1Gbps、高速走行時には100Mbpsの高速移動通信サービスを実現する。
 一般にLTEサービスは、4Gと呼ばれているが、正確には3.9Gとされている。LTE-Advancedで初めて第4世代移動通信(4G)になる。
 3.5GHz帯はこれまでより高い周波数帯になるため、ひとつの基地局で広範囲なサービスエリアを作りにくいとう欠点がある。電波の直進性が強く、ビル影や山間部などでの電波到達環境は、「プラチナバンド」に比較するとかなり劣る。一方、高い周波数帯域では、より高速の通信が可能にあることやアンテナを小さくできるので、携帯端末での利用でも都合が良いというメリットもある。また、周波数が高い帯域の電波は、まだ利用が進んでいなく広い帯域を確保しやすい。
 LTE-Advancedでは大容量のデータを高速で送受信可能にするために、複数の異なる周波数帯の電波を束ねて、1つの通信回線として送受信を行うキャリアアグリゲーションや多数のユーザーの通信を束ねて処理をするOFDM、複数のアンテナを搭載するMIMO、「下り」変調方式に256QAMを採用するなど新たな通信技術を取り入れている。携帯各社ではLTE-Advancedサービスをユーザーが集中する都市部を中心にエリアを拡張していくとしている。
 さらに情報通信審議会の答申では、LTE-Advanced用として、3.4GHzから4.2GHzまでの帯域を、将来割り当てる可能性を示唆している。現在の国際標準では、3.6-3.8GHzを移動体通信の帯域として規定しており、4.2GHzまでの規定はまだないが、今後、国際標準の動向をみて拡張すると見られている。
 2015年3月から、NTTドコモは、下り最大225Mbpsの通信速度を実現したLTE-Advancedサービスを開始した。第4世代(4G)時代が始まった。



■ 5Gの登場でさらに不足する移動通信帯域
 iPoneや携帯電話、タブレットなどの移動体端末や、Internet of Things(IoT)が急速に普及し、爆発的に増加している通信量に答えるために移動体通信に割り当てる周波数帯域の確保が急務になっている。とりわけ高速な伝送を要求される4Gや5Gは、大量の帯域が必要となる。
 現在確保されている移動体通信の周波数帯は、6GHz以下の帯域で、第3世代(3G)で490MHz幅、BWAで90MHz幅、PHSで30MHz幅、無線LANで350MHz幅、あわせて約910MHz幅である。
 この帯域を2020年には、3Gで10MHz幅増、3.9Gで200MHz幅増、4Gで600MHz幅増、そして5Gの登場で500MHz幅増、さらに携帯電話と無線LAN等で350MHz幅を追加して、約1740MHz幅を増やし、約2700MHz幅を確保するとしている。
 さらに、5G用の帯域として、6GHz以上に約23GHz幅程度の帯域を確保する方向で研究開発を進めることを明らかにした。
 第五世代移動通信システム(5G)の帯域はどのように確保するのか、5G用の周波数に関する国際標準がどう決まるのかを見分けながら難しい舵取りが必要とされるだろう。




出典 情報通信技術分科会

5G開発に凌ぎを削る移動通信各社
 米欧、中国、韓国、世界各国の5G開発競争は熾烈である。
 2016年9月、米国の最大の携帯電話会社、Verizonは、5Gの商用サービスを世界に先駆けて2017年9月までに開始すると発表した。すでにVerison Technology Forumを立ち上げ、Ericsson、Nokia、Cisco、Qualcomm、Samsungなどのパートナー企業と共に開発を進めているとしている。(CNET 2016年9月8日)
 一方、2016年1月22日、Ericsson(スエーデン)は5Gの商用サービスを2018年から開始すると発表した。
 同社によると、このサービスは、スウェーデンやエストニアをはじめユーラシア大陸各地に拠点を置くTeliaSoneraの協力を得て、スウェーデンのストックホルムとエストニアのタリンで開始する。
 その際には、通信サービスのみならず、IoT(モノのインターネット)向けのサービスも提供予定とのこと。同社は、その適用分野として、医療や車載分野を示唆している。
 EricssonとTeliaSoneraは、2009年に「世界初」として4G/LTEネットワークの商業運用をスウェーデンで開始している。今回も、このサービスを世界最先端と位置づけ、まずはストックホルムとタリンでの使用状況を見て、今後のビジネスに生かしたいとしている。Ericssonの最新レポートでは、2021年末までに5G関連の契約件数は1億5000万件に至ると試算している。(日経テクノロジー 2016年1月27日)

 日本での5G開発の主導権を握っているには、ドコモだ。
 2015年3月、ドコモはEricssonと共同で4.5Gbps以上の「5G」通信実験を行い、成功した発表した。
 実験は、ドコモR&Dセンタ(神奈川県横須賀市)で行われ、15GHzの高周波数帯域(400MHz帯域幅)と4×4 MIMOの通信多重化技術を使用して使われた。実験では端末に見立てた移動局を時速約10キロメートルで走行させて下り最大4.58Gbpsを計測した。
 6GHz以上の高周波数帯は電波が遠くまで届きにくく、移動体通信での利用は難しいとされる。さらに高い周波帯であるミリ波を使用した実験をNokia Networksと共同で実施、70GHz帯を使用して六本木ヒルズの建物中で2Gbps以上のデータ通信に成功している。
 サムスン電子との共同実験では、韓国・水原市にあるサムスンデジタルシティ周辺の道路で、自動車を時速60kmで走行させてデータ伝送の実験を行った。 使用周波数は、28GHz帯(800MHz幅)で、96素子のアンテナを用いたビームフォーミング機能とビーム追従機能を駆使し、移動する自動車の中でも受信で2.5Gbpsを超えるデータ伝送に成功している。
 富士通との共同実験では、小型基地局(分散アンテナユニット)の協調伝送技術により、単位面積あたりのシステム容量を増大させる検証が行われた。使用した周波数は、4.65GHz帯、超高密度分散アンテナと協調技術で4端末合計が11Gbpsの伝送速度を実現した。
 ドコモは、この他に、Alcatel Lucent、日本電気(NEC)とも5Gに関する実験協力を進めることで合意している。また30GHz~300GHzのミリ波帯の通信性能改善や6GHz未満の周波数帯の活用についての検証するため、三菱電機やファーウェイとの協力についても合意している。
 2020年7月の東京オリンピック開催までに、商用サービス開始を目指すとしている。


出典 5Gの開発協力企業 Docomo

2020年サービス開始は間に合うのか?
 総務省では、2020年東京オリンピック・パラリンピックに商用化を開始したいとしているが、超高速、大容量、低遅延、多数の端末接続、省エネ、低コスト、5Gサービスの要求水準は極めて高い。
 5Gの開発を推進する各社の見解が共通するのは5Gを既存のLTEと一体化させるという戦略である。LTEやLTE-Advancedの延長線上で活用できる技術を使い5Gサービスを実現していくコンセプトだ。その標準化は、3GPPが5G NR標準仕様として明らかにしている。(上記 「5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP」参照)
 しかし肝心の使用周波数帯は、どの周波数に帯域幅をどの程度確保するのかが未だに正式に決まっていない。
 総務省では、2020年5G実現に向けて、6GHz以下では3.7GHz帯や4.5GHz帯で最大500MHz、6GHz以上の帯域では28GHz帯で最大2GHzの確保を目指すとしている。
 しかし、6GHz以下の帯域は満杯で、5G用の帯域幅が十分に確保できず、1事業者当たりの割り当て帯域幅は極めて限定され、5Gの要求水運の通信速度が達成できないだろう。
 これに対し、6GHz以上の28GHz帯は、通信速度が十分に達成できるが、電波の到達距離が短く、回り込みがほとんどないので遮蔽物に対して弱いという弱点がある。これまで移動通信では利用実績がなく、新たな無線通信技術、RAT(Radio Access Technology)を導入が必須となる。
 5Gサービスを実現するためには、基地局を中心にマクロセルとスモールセルとを重ね合わせてネット構成や、複数の周波数を束ねて送信するキャリアグリゲーション、ユーザーデータと制御情報を分けるU/C分離システム、超高速、低遅延、同時多数接続など多様な要件を持つトラフックを切り分け処理するネットワークスライシング技術、256素子のアンテナ素子を備えるMassive MIMO、電波を特定の方向に集中して端末の動きに追従させるビームフォーミングの開発など、移動通信事業者には難題が山積している。

ユーザーは5Gに飛びつくのか?
 消費者(ユーザー)にとって、5Gは魅力的なサービスになるのだろうか?
 3Gの登場で動画サービスが可能になり、スマートフォンの爆発的な普及を支えた。電話とメール機能中心の2Gから機能が飛躍的に進化したと言えるだろう。
 4Gになって、さらに大容量のデータの高速通信が可能になり、HDなどの高画質の動画やゲームなどが楽しめるようになった。
 5Gになると更に高画質の4K 映像などもライブで快適に視聴可能としているが、携帯端末の小さなスクリーンではそこまで高画質にしても優位差はあまり感じられず、消費者(ユーザー)は。魅力的な新しいサービスとして飛びつくのだろうか。Youtubeやインターネット、SNSを利用するにはLTEでも十分である。
 4K、VR/ARコンテンツを5Gでアクセスすると短時間でも通信量が膨大になり、通信料の負担が増す。それに見合った納得するサービスを受けられないとすれば、消費者(ユーザー)は見向きもしないだろう。
 10Gbps、遅延1msというハイスペックな5Gの性能を活かした新たなサービスとして何が考えられるのだろうか。5Gはオーバースペックで、消費者(ユーザー)にとっては4Gで充分なのではないだろうか。
 5Gの商用サービスが開始されても普及が進まなければ、通信事業者はビジネスモデルが築けなくなるという深刻な問題が生まれる。

 ICT社会の進展であらゆるモノがインターネットにつながるInternet of Things(IoT)が急速に普及し、通信量が爆発的に増加する。自動車や鉄道、ロボット、工場の生産設備、社会の隅々に設置されるセンサーなどの通信を瞬時に遅延なく処理しなければならない。遅延1msというリアルタイムでの5Gの通信環境はInternet of Things(IoT)には重要である。
 しかし、Internet of Things(IoT)の普及拡大には、設置されるデバイスが膨大な個数になるため通信料の負担をどの程度の水準になるかがポイントである。一方でそもそもInternet of Things(IoT)にとって5Gまでのスペックが本当に必要なのか、それとも大半は4Gの拡張で対応可能なのか、冷静に検証する必要があるだろう。

 2020年東京オリンピック・パラリンピックまであと2年余り、5Gのユニバーサル・サービスは実現できるのだろうか?







2016年1月27日 初稿
2019年4月11日 改訂

Copyright (C) 2019 IMSSR




**************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
**************************************************
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5G周波数帯割り当て NTTドコモ KDDI ソフトバンク 楽天モバイル 高度特定基地局 特定基地局 5G基盤展開率

2019年06月02日 15時50分43秒 | 5G

総務省、「5G」の周波数帯を楽天など携帯4社に割り当て
 2019年4月10日、総務省は、第5世代移動通信システム(5G)の周波数帯を、NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー電話(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの4社に割り当てることを発表した。
 割り当てる周波数帯は、3.7GHz帯および4.5GHz帯(100MHz幅×6枠、一社の上限2枠)と、28GHz帯(400MHz幅×4枠、一社の上限1枠)である。3.7GHz帯および4.5GHz帯については周波数特性が似ているとして一体の枠とした。割り当てる帯域は合計2200Mhz、これまでにない規模の広帯域となった。

 総務省では2020年に5Gサービスの開始を目指し、審査基準を示した上で、2019年1月から2月にかけて各事業者からの割り当て申請を受け付けた。
 これに対し、NTTドコモは、3.7GHz帯/4.5GHz帯で2枠、28GHz帯で1枠、KDDI/沖縄セルラー電話も3.7GHz帯/4.5GHz帯でHz幅を2枠、28GHz帯で1枠、ソフトバンクは3.7GHz帯/4.5GHz帯で2枠、28GHz帯で×1枠、楽天モバイルは3.7GHz帯/4.5GHz帯2枠、28GHz帯で1枠、楽天モバイルは3.7GHz帯/4.5GHz帯1枠、28GHz帯で1枠の割当を申請した。
 そして5Gサービスの開始時期は、NTTドコモが2020年春、KDDI/沖縄セルラー電話とソフトバンクは2020年3月、楽天モバイルは2020年6月とした。


第五世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設の認定 総務省総合通信基盤局 2019年4月

5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ

「絶対審査基準」と評価点を付ける「比較審査基準」

 総務省では、5G周波数割当審査を実施するにあたって、必ずクリヤーしなければならない「絶対審査基準」と評価点を付ける「比較審査基準」を設けた。
 「絶対審査基準」では、エリア展開については「5年後までに全国の5G基盤展開率を50%以上」や「2年後までに全都道府県」を求め、「設備投資に必要な資金調達計画」や「認可後、5年までに単年度黒字を達成する収支計画」、さらに「MVNOへのネットワーク提供の準備」や「既存事業者への事業譲渡は行わない」ことを求めた。
 「5G基盤展開率」とは、「5G高度特定基地局」を1つ以上設置した10キロ平方メートルメッシュの割合である。対象とするメッシュ数は4464である。
 「比較審査基準」は、エリア展開については、「5G基盤展開率がより大きい」ことや「特定基地局がより多い」ことを上げ、サービスについては「MVNOへのネットワーク・サービスが充実している」ことや、「5Gの利活用計画が充実している」ことなどのポイントを示して比較審査を行い、優位な申請者に対して高い点数を与えた。
 そして、希望が多かった3.7GHz帯/4.5GHz帯については、100MHz幅で6枠の周波数枠が設けられたが、点数の高い事業者から割当てを行い、1巡目で4事業者、残る2枠は2巡目で点数の高い申請者から割り当てた。4枠が用意されていた28GHz帯では、4事業者に1枠づつ割り当てることにした。


第五世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設の認定 総務省総合通信基盤局 2019年4月

 各社の「5G基盤展開率」については、NTTドコモが97.0%(4331メッシュ)、KDDI/沖縄セルラー電話が93.2%(4160メッシュ)としたのに対し、ソフトバンクは64.2%(2855メッシュ)、楽天が56.1%(2503メッシュ)と2グループで大きな開きが出た。特にソフトバンクはNTTドコモやKDDI/沖縄セルラー電話に決定的な差を付けられた。
 審査の結果、3.7GHz帯については、NTTドコモが18.3点、KDDI/沖縄セルラー電話が17.3点、楽天モバイルが8.7点、ソフトバンクが4.7点で、それぞれ1枠づつ割り当てられた。(1巡目) 4.5G帯については、NTTドコモが14点、KDDI/沖縄セルラー電話が10.5点、ソフトバンクが0点で、第一のNTTドコモと第二位のKDDI/沖縄セルラー電話がそれぞれ一枠ずつ割り当てを受け、ソフトバンクは割り当てから漏れた。楽天モバイルは4.5G帯は申請しなかった。


4000~4100MHzでは、第一位がNTTドコモ、第二位がKDDI/沖縄セルラー電話、ソフトバンクが0点で最下位


4500~4600MHzでは、第一位がNTTドコモ、ソフトバンクが0点で第二位
第五世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設の認定 総務省総合通信基盤局 2019年4月

 28GHz帯については、4事業者が均等に1枠づつ確保した。
 ソフトバンクは3.7GHz帯/4.5GHz帯で2枠を求めたが、「比較審査基準」では、「5G基盤展開率」や「特定基地局」、「MVNOへの対応」などで4社の中でいずれも最低だったため得点の合計は0点、2枠しかない4.5G帯は割り当てを受けられなかった。
 結局、ソフトバンクには、3.7GHz帯の1枠しか割り当てられなかった。

 また今回の周波数割り当てにあたって、総務省はソフトバンクと楽天モバイルについては、4社共通で付けられた条件の他に、個別の条件を付けた。
 ソフトバンクについては、昨年発生した大規模通信障害を踏まえて重大事故の再発防止」に努めることや西日本豪雨や北海道胆振東部地震で発生した通信障害に対して、停電対策や輻輳対策に努めることとした。
 また楽天モバイルについては、「自らネットワークを構築して事業展開を図るという原則に従い、基地局の着実な開設」に努め、「無線従事者などの技術要員や基地局開設に必要な人員の確保・配置」や「資金の確保、財務の健全性確保」に力を注ぐこととし、異例の注文が出された。
 楽天モバイルは、明らかに5Gサービスを展開する事業者としての脆弱性に懸念を示した審査結果になった。

 今回、5Gサービス展開用として各通信事業者に割り当てられた帯域は、低SHF(マイクロ波)と呼ばれる3GHzから6GHzの帯域の3.7GHz帯と4.5GHz帯の6枠と高SHF帯(マイクロ波)の28GHz帯の4枠である。
 3.7GHz帯や4.5GGHz帯域の電波特性は、伝送距離は長く、建物などの構造物や樹木などの障害物があっても電波はある程度、回り込んで伝わるため広範囲に電波が行き渡る。基地局の設置数も少なくて済む。しかし、伝送速度は28GHz帯に比べると劣る。また帯域がすでに他のサービスで占有されていて5Gで使用可能な帯域幅も狭く、広い帯域を使用する大容量通信を行うには条件が悪い。
 これに対して28Gbps帯域では、伝送速度は優れているが、電波の直進性が強く、障害物があると減衰が激しく広範囲に到達しない。従って膨大な数の基地局を設置しなければならないので設備投資の負担が大きい。一方、使用可能な帯域幅は幅広く確保することが可能なので大容量通信には適している。 
 また28Gbps帯域を使用した移動通信サービスはまだ実績がなく不安定要素が多く、事実上まだ開発途上と言える。
 それぞれ一長一短だが、広範囲に電波が到達する3.7GHz帯や4.5GHz帯の方が「使いやすい」帯域と言える。。
 総務省がこの2年間に実施した5G実証実験では、ほとんど事業者が4.5Gbps帯と28Gbpsの双方を使用して実証実験を行ったが、やはり4.5Gbpsの方が「使いやすい」帯域とされ、5Gサービスの商用化は3.7GHz帯や4.5Gbps帯を中心にして当面は開始されると思われる。28Mbps帯を使った5Gサービスの商用化は、大都市部などで、ピンポイントで行うサービスなどに極めて限定される。
 こうした状況の中では、5Gサービス競争では、3.7Gbps帯/4.5Gbps帯でそれぞれ2枠を得た NTTドコモとKDDI/沖縄セルラー電話(au)が圧倒的に優位に立ったといえるだろう。5Gサービス展開競争では、ソフトバンクは遅れをとった。


第五世代移動通信システム(5G)の導入のための特定基地局の開設の認定 総務省総合通信基盤局 2019年4月

5Gの全国展開に力点を置いた総務省 「5G基盤展開率」の導入
 今回の5G周波数割り当てを移動通信事業者に割り当てるにあたり、総務省5Gの全国展開を早急に実現することを重要視したことが注目される。
 周波数の割り当てを受ける際に守らなければならない「絶対条件」として、「5G基盤展開率」という指標を導入した。全国を10km平方メートルに区切った4866のメッシュの内、山岳部や海水面を除いた4464メッシュを対象にして、その50%以上で、「5G高度特定基地局」を5年以内に整備すること(=5G基盤展開率)を求めた。
 さらに、周波数割り当て後、2年以内に全都道府県で5Gサービスを開始することを「絶対条件」にした。
 「5G基盤展開率」については、「比較審査基準」の対象としても採点し、より「5G基盤展開率」の大きい申請者により大きな点数を与えて、割当を行う際の上位に置いた。
 移動通信各社が表明した「5G基盤展開率」は、NTTドコモが97.0%で第一位、続いてKDDI/沖縄セルラー電話が93.2%、ソフトバンクが64.0%、最下位は楽天モバイルの56.1%だった。楽天モバイルは50%の「絶対条件」はようやく上回ったが、「比較審査」では最下位にななり、NTTドコモやKDDI/沖縄セルラー電話に大きく差を付けられた。
 3Gや4Gの周波数割り当てにあたっては、「人口カバー率」を指標として、全国の「人口カバー率50%」としたことで、移動通信各社は、人口密度の多い都市部を中心に整備して、地方都市や農村部、山間地域へのサービス開始が後回しになる傾向があった。
 5Gは、その電波特性により、1基地局がカバー可能なエリアが狭く、4Gの数十倍の基地局の建設が必要となるため、これまでの「人口カバー率」を指標とすると、人口密度の少ない地域への5Gの導入が後回しされ、されにサービス開始が遅れる懸念が大きい。
 こうした懸念を除くために、「人口カバー率」を止めて、「エリアカバー率」という指標に大転換したのである。


総務省総合通信基盤局 第五世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案について

5G高度特定基地局と5G基盤展開率
 最大10Gpbs程度の通信速度の光回線を備える特定基地局で、エリア内の他の多数の特定基地局を束ねて制御する。
 今回の5G周波数割り当てに際して、総務省は、10キロ平方メートルで区切った全国のメッシュの内、海や山岳部を除く約4500のメッシュを対象にして、「高度特定基地局」を「1メッシュごとに1つ」以上設置すること想定し、「高度特定基地局」を設置するメッシュの割合を「5G基盤展開率」とし、50%以上の「5G基盤展開率」を申請各社に求めた。
 「高度特定基地局」とは、ニーズに応じた柔軟な追加展開 の基盤となる「特定基地局」の親局で、5Gの広範な全国展開を確保する通信インフラである。
 10Gbpsの大容量光回線を備え、そのエリア内に設置される多数のマクロセルやマイクロセルなどの「特定基地局」(子局)と光回線で結んで束ねて、5Gサービスを制御する基幹局(親局)である。伝送速度1Gbps超を実現可能な送信設備を備え、ビームフォーミング、Massive MIMO、64QAMや256QAMの変調方式、 キャリアアグリゲーションの最先端の通信技術を使用することが求められている。
これに対して、携帯事業者は、3.7GHz帯や4.5GHz帯については、ビームフォーミング、4×4Massive MIMO、256QAM変調方式、キャリアアグリゲーション(KDDI/沖縄セルラー電話のみ)を導入し、28GHz帯については、ビームフォーミング、2×2Massive MIMO、64QAM変調方式、キャリアアグリゲーション(ソフトバンクを除く)を導入するとしている。


高度特定基地局(親局)と特定基地局(子局)
第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針について 総務省 2018年12月

各社のサービス展開は? 大都市集中の楽天 28G帯に力を入れるKDDI エリア拡大のNTTドコモ
 建設する特定基地局数は、3.7G帯と4.5G帯では、KDDI/沖縄セルラー電話が最も多く3万107か所、続いて楽天モバイルが1万5787か所、NTTドコモが8001か所、ソフトバンクが7355か所、28G帯でも、KDDI/沖縄セルラー電話が最も多く1万2756か所、楽天モバイルが7948か所、NTTドコモが5001か所、ソフトバンクが3855か所となっている。
 KDDI/沖縄セルラー電話は、合計4万2863か所、楽天モバイルは2万3735か所の特定基地局を建設する計画だが、設備投資額はNTTドコモに比べて少ない額に抑えている。
 とりわけ楽天モバイルは、エリア展開率は56.1%とぎりぎりに抑え、設備投資額はNTTの約25%に抑制する一方で、NTTドコモを上回る2万3735か所の大量の基地局を設置する計画だ。大都市など人口密集エリアサービスに投資を集中させる戦略が明らかになった。携帯電話事業に新規参入した楽天モバイルは4G基地局を整備するにあたって、5Gサービスへの拡張性を織り込みながら整備を進めていたことが投資額抑制につながった。
 KDDI/沖縄セルラー電話は、28G帯の基地局を最も多い1万2756か所を設置する計画である。到達距離は短いが、伝送速度や同時接続で高性能を発揮できる28G帯のサービスを大都市圏を中心にピンポイントでサービス展開しようとする戦略がうかがえる。楽天モバイルも同様の戦略である。
 これに対して、NTTドコモは、全国であまねくサービス展開を方針で、カバー率を優先させている。設置する基地局の数は合計1万3002個所と、KDDI/沖縄セルラー電話や楽天モバイルに比べて控えめである。


NEC製の5G基地局 NTTドコモのブースで展示(5G Tokyo Bay Summit 2019) NTTドコモの基地局はNEC製を導入する方向

 5Gサービスを展開するためには、カバーエリアの基幹基地局となる「高度特定基地局」を設置する「高度特定基地局」は、10Gbpsの大容量の光回線を備え、そのエリア(10キロ平方メートル・メッシュ)に整備する子局(マクロセル、スモールセル)を束ねる機能を持つ。カバーエリアを確保するためには、「高度特定基地局」だけではなく、エリア内に膨大な数の「子局」(マクロセルやスモールセル)を設置しなければならない。「高度特定基地局」と「子局」(マクロセル、スモールセル)は光回線で結ばれる。
 5Gの最大の問題点は、電波到達距離が極めて短いことである。
 ビルの屋上などに設置する大型のマクロセルの電波到達距離は数キロメートル、スモールセルでは200~300メートルとされている。さらに電波の直進性が強くビルや建造物に対して電波の回り込みがなく、障害物に極めて弱い。都市部でも5Gサービスをエリア一帯で展開するのは決して容易ではない。


NEC製のスモールセルと富士通製のスモールセル NTTドコモのブースで展示(5G Tokyo Bay Summit 2019) NTTドコモのスモールセルはNEC/富士通製を採用する方向


エリクソン製のマクロセル NTTドコモのブースで展示(5G Tokyo Bay Summit 2019) NTTドコモのマクロセルはエリクソン製をを採用する方向

膨大な5G投資投資 バラ色の夢の実現には重い負担が
 5Gの基地局投資は、これから移動通信各社の重荷としてのしかかる。ようやく4Gの全国展開が一段落し、「人口カバー率」で99.9%、残りは全国の人口の1万6000人を達成したばかりだが、一息つく暇もなく、次の5G投資に取り組まなければならない。
 5G設備投資額は、申請書によると、NTTドコモが7950億円、KDDI/沖縄セルラー電話が4667億円、ソフトバンクが2061億円、楽天モバイルが1946億円となっている。
 5Gの利活用として自動走行自動車の実現が期待が集まっているが、全国の国道で4Gの電波が到達可能なエリアは60%程度で、残りの40%は4Gのサービスエリアにも入っていないとされている。5Gの基盤展開率が90%を達成しても、全国の津々浦々まで5Gサービスが可能になるのは不可能に近い。自動走行自動車の実現には基盤整備に膨大な投資が必要となる。
 4Gサービスのスマホユーザーなどの個人が対象なので、基本的に人が居住しているエリアをカバーすればよかった。しかし、5Gのユースケースは自動走行自動車や建設機材の遠隔操縦、遠隔地医療、山岳遭難対応、自然災害対応などのユースケースが想定され、人の住んでいいない地域や過疎地をサービス・エリアにする必要が生まれてくる。しかしこうした地域では、整備経費や運用コストの負担が大きいが、5G利用度が極めて少なく、採算が合わないという難題が発生する。
 気の遠くなるような5G設備投資の重荷が移動通信各社に課せられているのである。
 その一方で、携帯電話事業者は料金の大幅な値下げが強く求められ、政府の規制改革推進会議では、通信料金と端末代金の完全な分離などを打ち出し、携帯電話料金の大幅な引き下げへ向けての動きを加速している。これを受けて、携帯各社は、相次いで携帯料金の値下げプランを発表し、6月1日からは、NTTドコモやauは「最大4割値下げ」掲げた新料金プランを実施した。今年秋の楽天モバイルの携帯市場への新規参入をきっかかけに料金値下げ競争は更に拍車がかかる。こうした値下げ競争は携帯各社の経営環境に大きな影響を与えるだろう。
 また米国が強硬に推し進めている「ファーウェイ排除問題」の影響も避けられない。携帯事業者4社はいずれも、政府の方針に従って、5G基盤整備にファーウェイ製品を使用しないことを表明している。5Gに導入される機器は、エリクソンやノキア、NECは富士通の製品が想定されている。ファーウェイは5Gのコアネットワークや基地局など基盤整備システムの開発で、世界のトップ水準の技術力を持ち、高性能で、しかも低廉な価格で、5G関連機器を供給することが可能だ。5Gサービスを実現させるためには膨大な数の基地局建設が必須となり、高性能で、低コストの製品の調達が必須の課題となる。「ファーウェイ排除」によって、携帯事業者4社の負担増は避けられない。
 5Gサービスの開始で、携帯事業者は、一体どれだけの収入増を得られるのかまったく未知数である。
 まさに苦難の5Gサービス開始である。
 バラ色の夢が語られている5G時代の到来、その実現にはまだまだ難題がのしかかっている。






2019年4月11日 初稿
2019年5月31日 改訂

Copyright (C) 2019 IMSSR






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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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ファーウェイ副会長 逮捕 身柄引き渡し 孟晩舟CFO イラン制裁 スカイコム カナダ人拘束 ZTE制裁

2019年05月23日 21時43分04秒 | 5G



米国、孟晩舟CFO起訴 トランプ米政権、中国に対して強硬
 2019年1月28日、米司法省は、華為技術(ファーウェイ Huawai Technologies)副会長兼最高財務責任者(CFO)の孟晩舟(メン・ワンツォウ Meng Wanzhou)被告を、米国の対イラン制裁をくぐり抜けようと米金融機関に虚偽の説明をしたとして、詐欺罪や司法妨害など13の罪状で起訴すると共に、華為の関連会社2社を米携帯電話大手TモバイルUS(T-Mobile 本社はドイツ・ボン)から企業秘密を盗んだ罪など10の罪状で起訴したと発表した。同日、米司法当局はカナダ当局に孟副会長の身柄引き渡しを正式に要請したと伝えられている。これに対して中国政府は、「背後に強力な政治的な意図がある」として強く反発している。
 起訴されたのは、孟氏のほか、法人としての華為技術、同社の米国の関連会社「華為デバイスUSA」、事実上の華為のイランの関連会社「スカイコム」の計3社である。

 ニューヨーク州の裁判所に提出した起訴状によると、ファーウェイがイランで事業を行うため、米国にある子会社、ファーウェイデバイスUSAと香港の通信機器販売会社スカイコム・テクとの所有・経営権を巡る関係について、取引先の大手金融機関などに対し、「華為技術はスカイコムの権益を2007年時点ですでに売却しており、スカイコムは地元のビジネス相手に過ぎない」などと虚偽の説明を続けとしている。
 スカイコムは香港にあるペーパー・カンパニーと見なされ、華為技術の指示でイランへの不正な取引を行っていたとされている。
 ロイター通信によると、スカイコムは2010年に少なくとも130万ユーロ相当のHewlett-Packard製のコンピュータ機器を、イラン制裁で禁輸品に指定されているにも拘わらず、イラン最大の携帯電話事業者に販売することを申し出ていた。 ファーウェイやスカイコムは最終的には米国の機器を提供していないと述べているという。
 さらに、ロイター通信は孟氏が2008年2月から2009年4月の間にスカイコムの取締役を務めていたことを伝えている。ファーウェイとスカイコムは、財務や人事に関連して密接な関係にあること明らかにした。

 米司法当局は、大手銀行側はファーウェイによるイラン制裁違反を認識していれば取引関係を見直していたはずだと指摘し、銀行詐欺、通信詐欺、司法妨害などの罪状が問われている。
 米金融機関は虚偽の説明に基づき、米国の法律で禁じられているイランとの金融取引を続けた。華為技術の取引先金融機関の一つは2010年から2014年の間に、スカイコム関連で1億ドル(約110億円)以上の取引を行ったという。
 起訴状ではこの銀行を特定していない。

 さらに2012年と2013年にロイター通信が報道した「スカイコムが米制裁に違反してイランにコンピュータ機器を販売しようとした」という記事に言及している。
 この報道の中でファーウェイが内容を否定したコメントをしたことが、金融機関がファーウェイやその子会社との取引を継続するか判断する材料になったと指摘している。
 米連邦捜査局(FBI)は2007年7月にファーウェイ創業者の任正非氏の聴き取りを実施したが、任氏が米輸出法違反を偽って否定したとしている。
 起訴状では、米国のイラン制裁を回避する一連の取引で、孟氏が主導的役割を果たしたと主張している
 孟氏と会合した大手銀行は、関係筋はHSBCホールディングだとしている。(Reuters 1月29日)
 一方、HSBCは、2018年12月に声明を発表し、今回の件でHSBCが捜査対象になっていないことを米司法省は確認しているとしている。
 HSBCは2012年に米国のイラン制裁や資金洗浄関連法への違反で19億2000万ドルを支払っている。

 トランプ米政権は、2015年のイラン核合意から米国が5月に離脱したことを受けて、イランおよび同国と貿易関係にある各国を対象とした制裁を全て復活させて、2018年11月に石油輸出、船舶、金融など経済の重要部門の全てが含まれる「史上最強」の制裁を発動している。
 
 またワシントン州の裁判所の案件では、米携帯大手、TモバイルUS(T-Mobile 本社はドイツ・ボン)がスマートフォンの品質試験で使用する人間の指の動きを模倣する最先端ロボット、「Tappy(タッピー)」に関連する技術を盗んだ疑いに関し、企業秘密の窃盗、通信詐欺、司法妨害など10件の罪でファーウェイの子会社2社を起訴した。
 捜査当局によると、ファーウェイの社員はTappyの写真を密かに撮影したり、複製品を作るため、ロボットを盗んで自宅に持ち帰っていたりしていたという。ファーウェイは機密を盗んだ社員らに、ボーナスを支払っていたとした。
 米連邦捜査局(FBI)は、ファーウェイは米国企業の知的財産を、組織的に盗み出す手段に打って出た。それにより、彼らは不正な方法で市場での優位性を得ようとした」と述べている。(Forbes 1月30日)

 Tモバイルはファーウェイを提訴したが、ファーウェイは一部の不良社員が行った不正行為だとした。しかし、米司法省は、社員に窃盗を指示したEメールも入手し、ファーウェイによる組織的犯罪であると主張している。
 一方、ファーウェイは2017年にこの問題は両者で協議し解決したとの見解を示している。

 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は今回の起訴について、「ファーウェイが米企業や金融機関を悪用するために取った恥知らずで執拗な行動を露呈している」と批判し、
米国内の通信網で使われている同社製品についても、「外国政府が情報を故意に変更または窃盗し、検知されないままスパイ行為を実施し、圧力や影響力の行使を可能にすることになる」として懸念を示した。 (Reuters 2019年1月29日)

 2018年12月に孟副会長はカナダ当局に逮捕されたが、保釈金を払い24時間の監視に服することなどを条件に保釈され、現在バンクーバーに在住している。ウィテカー司法長官代行は会見で、米国への身柄引き渡しの要請期限である1月30日までを念頭に「我々は身柄引き渡しの要請を正式に行う予定」と語った。
 中国外務省の耿爽副報道局長は「米国は国家の力を使って特定の中国企業を狙い撃ちし、正当な活動を抹殺しようとしてきた。背後には強力な政治的な意図がある」と反発し、華為技術への圧力をかけるのをやめ、カナダに対する孟副会長引き渡し要求を撤回するよう求めた。

 今後は、カナダが孟副会長の身柄の米国への引き渡すかどうかが、最大の焦点となった。カナダの公共放送CBCによると、カナダ司法省は、28日午後、米側から身柄引き渡しについて正式に要請を受けたと伝えた。カナダ政府によると、米国が正式に引き渡しを要請後、30日以内に手続きを始めるかを判断し、法廷での審理開始は3月上旬になるとの見方があり、結論が出るまでには相当の時間がかかると見られている。
 孟副会長の起訴は、中国の劉鶴副首相が訪米し、ワシントンで30日から始まる米中貿易紛争の閣僚級協議の直前のタイミングを選んで発表された。トランプ政権は再び中国に対して強行姿勢をとって牽制し、米中交渉で優位に立つことを狙っている。
 しかし、米中対立の影響で、米国経済の牽引車、アップル社は、2018年10~12月期の四半期決算で、主力のiPhoneの売り上げが前年同期比で15%減少したことを明らかにした。中華圏(香港を含む)市場でスマホの売れ行きが激減、米中貿易紛争や中国経済の減速が直撃した形だ。これを受けて米株式市場は大幅に急落、「アップル・ショック」に見舞われた。好調の米国経済全体の先行きに一気に暗雲が立ち込め、中間選挙を控えたトランプ政権に打撃を与えている。
 一方、中国も、減速気味の国内経済への懸念を抱え、3月初めを期限とした90日間の貿易交渉で一定の成果を出したいとしているのが本音と言われている。
 米国も中国も、内情は米中貿易紛争の影響をもろに受けて満身創痍である。

 1月29日、孟氏は保釈条件の変更をめぐる審理のため、カナダ西部バンクーバーの裁判所に出廷したとカナダのメディアが伝えた。次回期日は3月6日に設定され、米国への身柄引き渡しの審理を行うとみられている。
 米国からの身柄引き渡しの正式要請を受け、カナダの司法当局は3月1日までに身柄引き渡しの手続きを進めるか否かを決め、裁判所の判断を求める。裁判所では審理を開始し、被告の審理も行うが、その期日は当初、2月6日に設定されていたが、米国の要請を受けて約一カ月先延ばしとなった。
 一方で、90日間の米中貿易交渉が開始されており、孟副会長の身柄引き渡しは問題は米中貿易交渉の成り行きと絡んで予断を許さない状況だ。



ファーウェイの孟晩舟CFO、保釈

孟晩舟(メン・ワンツォウ Meng Wanzhou)・副会長兼最高財務責任者(CFO) 華為技術HP

 12月11日、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ Huawai Technologies)の孟晩舟(メン・ワンツォウ Meng Wanzhou)・副会長兼最高財務責任者(CFO)が逮捕された事件で、カナダの裁判所は、逮捕した孟氏の保釈を認めた。現地報道によると保釈の条件として、1000万カナダドル(約8億5000万円)の保釈金やバンクーバーへの滞在制限、パスポートの没収、GPS(全地球測位システム)付きの追跡装置の装着で24時間監視などが課せられた。
 中国政府はこれに先立ち、カナダの元外交官を拘束。貿易戦争で対立している米国への直接的な強い批判は避けたが、カナダへの圧力は強めている。今後は、孟氏の米国への身柄引き渡しが焦点になり米中対立の激化は避けられない情勢だ。

カナダ元外交官が中国で拘束 中国政府の対抗措置か
 12月11日、ベルギーに本部を置く国際シンクタンク、ICG=国際危機グループは声明を発表し、カナダの元外交官で、中国や日本など北東アジア地域を専門とするマイケル・コブリグ氏が中国当局に拘束されたことを明らかにした。
 中国とカナダの関係を巡っては、中国の通信機器大手、ファーウェイの孟晩舟副会長がアメリカの要請を受けて今月1日にカナダの当局に逮捕されたことを受け、中国政府は北京駐在のカナダ大使を呼んで抗議するなど反発を強めていた。
 コブリグ氏の拘束は、中国側がこれまでに示唆していた対抗措置ではないかと思われる。
 マイケル・コブリグ氏は、所属するシンクタンク、ICG=国際危機グループで中国に批判的な報告を相次いで発表してきたという。
 このうち、先月24日の報告では、中国がアフリカ諸国と軍事面の協力を加速させ、安全保障分野でも影響力を強めようとしていると伝えたうえで、「中国がアフリカに及ぼす政治や経済の影響は、中国側の目的にかかわらず、アフリカ各国の格差の拡大や政治の腐敗、圧政の助長につながりかねない」と批判しています。
 また「一帯一路」を掲げる中国が主導してパキスタンで進めている開発について、地元から強い反発の声が上がっていることを伝えている。(NHKニュース 12月12日)

カナダ人企業家も拘束 中国・カナダは緊張関係に
 カナダのフリーランド外相は12日、オタワで記者会見し、中国滞在中のカナダ人男性が中国当局との接触があった後、連絡が取れない状態にあると明らかにした。
 ロイター通信によると、このカナダ人男性は、中国で北朝鮮との文化交流を行っているマイケル・スパバ氏と伝えた
 中国メディアは中国遼寧省丹東市の国家安全局がスパバ氏を「中国国家の安全を脅かした」として調査しているとしている。身柄を拘束され取り調べられていると思われる。
 スパバ氏は、中国東北部の中朝国境地域を拠点に長年活動し、コブリグ氏とも交流があったとされる。
 フリーランド外相は、スパバ氏の家族と接触を図っていると語ったが、「私的な事情やプライバシー上の問題もあり、これ以上は公表できない」と述べ、詳細は明かさなかった。
 12月13日、中国外務省の陸慷報道局長は記者会見で、カナダ外務省を休職中のマイケル・コブリグ氏とカナダ人企業家のマイケル・スパバ氏を拘束したと明らかにした。
 相次ぐカナダ人拘束で、中国のカナダの関係は緊張激化に陥っている。(Reuters、読売新聞 12月13日)

孟氏逮捕と距離置くトランプ政権、火種回避か
 孟氏はバンクーバーで逮捕されたのは米中首脳会談が行われた12月1日、この日、トランプ大統領は周主席との会談に臨み、来年さらに関税を引き上げ一段と厳しい制裁措置を課すとした方針を一時見送り、90日間の猶予期間を置くとした。
 米ホワイトハウス高官は、トランプ大統領は首脳会談前に逮捕の計画を知らなかったと明らかにした。この問題が米中貿易協議の新たな火種となるのを回避しようとする狙いがあったと見られている。
 この件は司法省の問題であり、ホワイトハウスと事前の調整はなかったとしている。
 また包括的な貿易協議での合意を目指す米中の取り組みは複雑になる恐れはあるものの、必ずしも打撃にはならないとの見方を示した。
 米当局は、対イラン制裁を逃れるために世界的な銀行システムを利用した疑惑を捜査していたが、華為が対イラン制裁に違反したかどうかについて少なくとも2016年から調べていたとされている。関係筋によると、最近では華為がHSBCを利用してイラン関連の違法な取引を行った容疑などで捜査が行われていた。こうした中で、孟氏が浮上したという。
 HSBCは、メキシコで犯罪組織の資金洗浄(マネーロンダリング)の疑惑や米国の経済制裁に反してイラン関連の取引をしていた疑惑で米当局の捜査を受けていたが、2012年、12月、米ブルックリンの検察局と訴追延期合意を交わし、19億2000万ドル(約1600億円)の罰金を支払った。米メディアによると銀行が米当局に支払う罰金としては過去最大となるという。HSBCは「過去の過ちに対する責任を認め、謝罪する」との声明を出した。(Reuters 12月7日)

トランプ米大統領、この問題に介入する可能性を示唆
 一方、トランプ米大統領は同日、ロイターとのインタビューで、中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕されたことについて、米国の安全保障と対中貿易協議の進展に資するなら、この問題に介入するとの考えを示した。
 孟氏の身柄引き渡しを求めないことや身柄を米国に移しても釈放する可能性を示唆したと思われる。
 また、トランプ大統領は、中国が大量の大豆を米国から購入し始めたことをロイターに明らかにした。12月1日の米中貿易戦争休止後に中国政府は大豆を購入するため「市場に復帰」したと述べた。
トランプ氏はロイターに対し、「中国が膨大な量の大豆を購入していると今日聞いた。購入し始めたばかりだ」と語った。
 ただシカゴのトレーダーによると、中国が7月に米国産大豆に25%の関税を課して以降、同国が購入を再開した形跡はないという。
 米中の貿易交渉の決裂は望んでいなが、成果を上げる必要に迫られているトランプ政権、米中の対立は予断を許すさない状況になった。


華為技術(ファーウェイ)のブース Smart City EXPO 2018 Barcelona

ファーウェイ製品、携帯4社使わず
 日本の携帯会社向けに華為技術が基地局整備事業を開始したのは、イー・アクセスが最初で、その後、イー・アクセスがソフトバンクに買収されるとソフトバンクとの取引となり、現在は主に1.7GHz、700MHz、3.5GHz帯で華為技術の基地局が導入されている。
 一方、ソフトバンクでは、基地局はエリクソンとノキアが中心だった。華為技術がソフトバンク向けの受注を伸ばしたのは、2017年度で、新規で割り当てられた3.5GHzや追加発注が多かった700MHz帯で確実に受注を重ねていった結果、同年のソフトバンクの新規基地局の6割弱を華為技術が獲得するまで成長した。
 今回のファーウェイ製品排除の政府の方針を受けて、ソフトバンクは現行の携帯電話の通信規格「4G」について、華為技術(ファーウェイ)など中国製の基地局をなくす方針を固めた。北欧の通信機器大手エリクソンとノキアの製品に順次置き換えるとしている。今後、国内外の事業活動に影響が出かねないと判断したという。
 2019年春以降に整備を始める第五世代移動通信「5G」基地局でも中国製を排除し、エリクソンやノキアの北欧2社に発注する。
 ソフトバンクは国内通信大手で唯一、ファーウェイと中興通訊(ZTE)の基地局を使っており、全国にあるソフトバンクの基地局のうち、中国製は1割程度とみられ、数年かけてスウェーデンのエリクソン、フィンランドのノキアの2社の製品に順次切り替えていくとしている。
 調査会社MCA(東京・千代田)によると、ソフトバンクが2015~2017年度に調達した基地局の金額は全体で767億円。このうちファーウェイ製の基地局は206億円、ZTE製は35億円だった。ソフトバンクは現在、交換費用を算定中だが、「北欧2社が受注拡大に向けて費用を一部負担する可能性もある」(MCAの天野浩徳代表)。
 ソフトバンクグループは、米国の通信子会社スプリントを同業のTモバイルUSと合併させる予定で米政府の承認を待っている。またライドシェア大手のウーバーテクノロジーズをはじめとする米国内の有力企業に出資している。中国製の通信機器を使い続ければ、米国での事業に支障を来すリスクもあった。
 NTTドコモとKDDI(au)は現在、中国製の基地局を使用しておらず、5Gの基地局でも採用を見送る方針。来年秋に携帯事業に参入する楽天も同様の方針を示している。(日本経済新聞 要約 12月13日)
 また来年10月に携帯事業に参入する楽天は、2020年に商用化予定の次世代移動通信方式「5G」の設備について、華為技術(ファーウェイ)などの中国製品を使わない見通しを明らかにした。
 KDDI(au)とNTTドコモは、現在、中国製の基地局を使用しておらず、政府の対応に同調して5Gの基地局でも採用を見送る方針である。NTTドコモは「技術面から(5G基地局など設備に)中国製品を使うのは困難」(NTTグループ幹部)としている、 
 政府は10日、「サイバーセキュリティ対策推進会議」を開いて、情報通信機器の政府調達から、華為技術(ファーウェイ)技術と中興通訊(ZTE)の中国製品を事実上排除する申し合わせをするとしている。
 トランプ政権は、中国企業が関与するスパイ活動が米国の安全保障を脅かしているとして、両社製品を米国市場から事実上締め出し、日本などの同盟国にも華為製品を排除するように要請したとされている。日本政府は米国の要請を踏まえた形で新たな方針を定め、2019年度の政府調達から適用する方針だ。
 菅義偉官房長官は記者会見で、「サイバーセキュリティーを確保する上で、情報の窃取や破壊、情報システムの停止などの悪意のある機能が組み込まれた機器を調達しないことは極めて重要」と述べた。
 しかし、一方で安倍政権は中国と関係改善を進めており、中国との関係も配慮し、華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の名指しは避けて、あくまで申し合わせの内容はセキュリティー上の対応といった表現にとどめ、個人向けのスマホなどの通信機器は排除しない方向とされている。
 この措置で影響を受ける両社製品がどの規模に上るかについて、首相官邸幹部は「ほとんどない」とみている。(朝日新聞他 12月13日)
 一方、NTTの澤田純社長は13日までに産経新聞のインタビューに応じ、日米政府が政府調達機器からの排除方針を示している中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)について、第5世代(5G)移動通信方式の基地局で採用しない方針を改めて示した。
 ファーウェイは通信基地局では世界シェアトップを占める。
 一方、ファーウェイ製の個人向けのスマホや通信機器をめぐっては、低価格で高性能なことからdocomoを始め、国内携帯各社で採用されている。日本政府は排除の方針を示していないが、個人の利用者からは不安視する声が寄せられているという。
 澤田氏によると、米政府は2020年年までにファーウェイ製品の端末を販売している事業者とは契約しない可能性があるので、米政府と契約ができなくなる懸念が大きいと指摘して、今後の動きを注視したいとした。(産経新聞 12月13日)
 ファーウェイをめぐる米中対立は、国内の携帯基地局市場にも大きな影響を及ぼしている
 華為技術の持つ技術力やコスト競争力は世界的に評価されていて、とりわけ第五世代5Gのトップランナーとして注目されていた。日本では2019年3月に5G向け周波数の割り当てが行われ、2020年の5G商用サービスの開始に向けて5G基地局の投資が本格化する中で、華為技術としては日本市場でトップシェアを握る格好の機会だった。
 今回の一件で、華為技術の5G基地局の導入が不可能になり、エリクソンやノキアなどの西欧企業製品に切り替えることになると、5G基地局の整備計画に大きな影響が出る懸念も生まれる。

米国の制裁で経営危機に追い込まれた中興通訊(ZTE)
 2016年、米国商務省はZTEが米の経済制裁対象になっているイランや北朝鮮に通信機器を違法に輸出していることをつかみ、司法当局に提訴した。2017年、中興通訊は米製品と技術をイランに輸出していたと不正を認め、米政府に8億9200万ドル(約1000億円)の罰金を支払った。 また、今後同様な違法行為があった場合、さらに3億ドルの追加罰金を支払うことやイランへの違法輸出に関わった社員の解雇・減俸処分にも同意した。
 商務省は、合意内容や輸出管理規則管理規則をZTEが順守することを条件に、罰金のうち3億ドルの支払いと制裁の発動を7年間執行猶予とした。
 しかし、米国当局の調査で、ZTEは一部社員のボーナスの減給を約束したが、全額支給していたことが明らかになり、ZTEが提出した合意内容の報告に関する資料で従業員への処罰の実施に関する記述内容に虚偽があり合意内容に違反したとして、商務省は執行猶予を取り消しする方針を固めた。
  2018年4月16日、米国政府は、ZTEがその後もイランに対して通信関連設備を違法に繰り返し輸出しているとして、米企業に対して中興通信との取引を7年間禁止した。
 米国のロス商務長官はZTEが虚偽報告を繰り返していると非難した。
 この措置で、米企業がスマートフォンなどの通信機器に必要なチップなどの半導体部品をZTEに直接輸出することや第3国を通じて輸出することも完全に禁止された。
 またZTEに致命的なのは、スマートフォンに搭載される米グーグル社の基本ソフト(OS)、アンドロイドのライセンスを獲得できなくなり、同社が生産するスマートフォンは米国市場だけではなく、世界各国の市場での販売が不可能になることであった。
 この影響で17日同社が上場する中国株式市場と香港株式市場での株式取引が中止となりZTEの経営不安が一気に広がった。ロイター通信によると、ZTEが米企業から輸入する部品の割合は全体の25~30%を占めるという。米政府の取引禁止令で、ZTEは事実上の経営破綻の危機に追い込まれた。
 その後、中国側は米に対して、制裁の解除を求め、2018年6月7日、ZTEとの間で制裁解除を合意した。合意内容には、ZTEが10億ドル(約1100億円)の罰金を支払うほか、米国が選任するコンプライアンスチームの設置、30日以内に取締役や経営陣を刷新、今後問題を起こした場合の4億ドル(約440億円)の罰金などが含まれていた。
 しかし、同社に対する安全保障上の懸念から米超党派の議員はこれに反発し、6月18日、米議会上院は、制裁解除を認めない条項を盛り込んだ法案を賛成多数で可決した。
 これに対して、トランプ大統領は、中国との関係改善を優先させ、議会の反対を押し切りZTEに対する制裁解除を決定した。
 2018年6月29日、ZTEは制裁解除の条件の1つとしている経営陣の人事刷新を公表した。同日、開催した同社の株主総会で4人の取締役が辞職し、新たに8人の取締役が選出され、西安微電子技術研究所副所長を務めた李自学氏(54)が、取締役会の新会長に就任した。
 西安微電子技術研究所は、中国国有航空宇宙企業「中国航天科技集団」の子会社で、コンピューター、半導体集積回路などの研究開発を担う。同社は、ZTEが創業当時から大株主を務めていた。
 ZTEは、経営再建のため大手銀行の中国銀行に300億元(約5000億円)、政策金融機関の国家開発銀行に60億ドル(約6600億円)の与信枠を設けるように求めるとしている。
 半導体チップやアンドロイド、Windowsなどの基本(OS)を握る米国のパワーが如実に示された。世界各国のICT市場の覇権を握るのはやはり米国なのだろうか?
 仮に米国が華為技術(ファーウェイ)に制裁を課したらファーウェイといえども深刻な影響が生じるのは必須である。勿論、中国も黙って見ているはずはなく、世界は大混乱に陥る懸念がある。米中の対立は、情報通信分野の覇権を巡っての第二幕を迎えた。

ファーウェイ 世界の人口の三分の一の通信環境をサポート
 華為技術(ファーウェイ HUAWEI)は、通信機器やスマートフォン(スマホ)などの携帯端末、クラウドサービスなどを手掛ける世界で最大級の情報通信企業である。世界約170か国で事業を展開し、2017年の売上高は6036億21 00万元(約9兆9000億円 約874億ドル)、営業利益は474億5500万元(約7800億円 約69億ドル)である。
 他の中国企業と違い、海外事業の比率が高い国際企業である。
 従業員数は全世界で18万人以上、本社は中国の先端技術拠点都市、深圳にある。従業員持株制による民間企業としているが詳細は不明である。
 世界各国が熾烈な主導権争いを繰り広げている第五世代移動通信5Gの分野でも、世界を一歩リードしているとされ、2018年11月20日、ファーウェイが世界の企業に抱きだって5G基地局設備を1万基出荷したことを発表している。
 2017年の通信基地局の売上高シェアは27.9%、スウェーデンのエリクソン(26.6%)やフィンランドのノキア(23.3%)を押さえて世界第一になっている。
 またスマートフォンでも、2018年第2四半期に、アップルを抜き、世界第二位に躍進した。ちなみに一位は韓国のサムスン電子である。しかし米国ではほとんどファーウェイ製の携帯端末は販売していない。
 
 ファーウェイの創業者は、現在は最高経営責任者の任正非氏(74)。大学を卒業後、人民解放軍に入隊し、建築関連のエンジニア兵をつとめたがリストラで除隊。1987年、広東省深圳で華為を創業した。カナダで逮捕された孟晩舟氏は任氏の娘だ。
 1978年、中国は改革開放路線を掲げ、計画経済から市場経済的経済に移行させ、経済改革を推進した。海外企業に対しても門戸と開き、1984年には深圳を始め、4カ所に経済特区を設け、海外企業の進出を促した。
 こうした経済改革で、1980年代は毎年10%程度の高度成長を成し遂げ、経済活動が一気に活発化していった。
 華為を創業した1987年は中国が急成長に躍動していた時期である。
 当時、中国は情報通信の近代化と急ピッチで進めていた。しかし、中国国内には有力な情報通信関連企業がなく、海外企業に頼らざると得ない中で、華為は一気に国内の情報通信企業の中核企業に急成長した。
 ファーウェイは、海外にも進出していったが、国際社会からは、欧米や日本の先端企業の製品を模倣した粗悪な製品を安売りしているとして冷ややかな眼で見られていた。
 しかし、低価格を武器にして、欧米の市場に徐々に食い込み、先行していた情報通信企業の大手、ノキヤやエリクソンとの競争に打ち勝ち、シェアを伸ばした。
 その結果、ノキヤやエリクソンの経営は窮地に陥った。未だに価格競争では圧倒的な強さを誇り、欧米や日本の企業は勝負にならない。
 さらにファーウェイの躍進を支えるのは、アフリカや南米各国への積極進出で、欧米や日本企業に大きく差をつけている。こうした国々ではいずれも情報通信の分野で活発な投資が行われ、爆発的な市場拡大が期待できる。
 ファーウェイは、こうして世界各国で事業を伸ばして中国を代表する国際企業となった。 

 ファーウェイの躍進を支えるのは、膨大な研究開発投資にあるとされている。
 毎年売上高の約14%、約1兆3500億円を研究開発(R&D)に投資し、世界14カ所に研究開発拠点を保有する。インテルやマイクロソフト、サムスンと肩を並べ、世界のトップクラスの研究開発投資額を誇る。
 毎年採用する約8千から1万人の従業員のうち約600人が博士号を、約5600人以上が修士号を持つなど人材の質も高いといわれている。
 世界知的所有権機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)の発表によれば、国際特許(IP:International Patent)出願数は、2017年、ファーウェイ世界第一位だった。ちなみに2位がZTEである。
 ファーウェイは民間企業だが、任氏に軍歴があることもあり、欧米諸国の疑念は根深い。米国は「中国政府や人民解放軍と関係を持つファーウェイのような企業が潜在的な脅威になる」と指摘し、基幹的通信システムへ参入を阻んできた。
 中国では、政府によって命じられれば、国内企業や市民、組織は治安当局に協力と支援をする義務があると法律で定められている。ファーウェイのような国際企業であっても、政府に命じられれば、どんな要請にも全面的に従う義務がある。
 米国がファーウェイやZTEを警戒する根拠はこの法律の存在だ。

 孟氏について、米司法当局は過去11年間に少なくとも中国の旅券を4冊、香港の旅券を3冊使っていたと指摘。さらに香港の会社登記から、中国政府が海外に派遣する人向けに支給する旅券を孟氏が持っていたことが判明し、政府との関係を疑わせる要因の一つとなっている。
 ファーウェイの米国からの半導体輸入額はZTEの6倍で、インテルから7億ドル、クアルコムから18億ドルに達するという(12月7日 日本経済新聞)。米商務省は、ZTEと同様に米国の半導体の輸出を禁止する措置に踏み切るのかどうか、トランプ政権の対応が注目される。





5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ
5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP
5G周波数割り当ての審査方針総務省公表 地方を重視 通信事業者の重荷に
韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定





2019年1月30日

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廣谷  徹
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5G周波数割り当て 審査指針 地方重視 重荷

2019年01月11日 07時48分22秒 | 5G

5G周波数割り当ての審査方針総務省公表 地方を重視 通信事業者の重荷に



総務省、「5G」の周波数帯を楽天など携帯4社に割り当て

5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ





 2018年11月3日、総務省は、5G・第五世代移動通信方式サービスを開始するにあたっての指針を公表し、来年3月に実施する各通信事業者への周波数割り当て審査の基本的考え方とする方針を明らかにした。
 この指針によると、割り当てる周波数は、3.7GHz帯では100MHz幅で5枠、合計で500MHz幅、4.5GHz帯では100MHz幅で1枠、28GHz帯では400MHz幅で4枠、合計で1600MHz幅となっている。また4.5GHz帯と28GHz帯では、自営用などで利用可能な割り当て枠も検討する。
 審査に当たっては、それぞれの周波数特性に考慮して、3.7GHz帯と4.5GHz帯は一体として割当て審査を実施する。

 審査の指針として、新たに5Gの「全国への広がり・展開可能性」、 「地方での早期サービス開始」、「サービスの多様性」等について評価する指標を設けた。
 都市部だけでなく、地方で早期に5Gのサービス・エリアの拡大促進を狙って指標で、超高齢化や過疎化に悩む地方創成を支えようとする施策である。
 診療所の遠隔地医療サービスや市町村の行政サービス、学校・公民館などの教育・福祉サービスなどで超高速・大容量の5Gネットワークが重要となるとしている。
 光ファーバー・サービスと違って、5G対応端末の設置以外にユーザー側にインフラ整備の必要がなく、高齢者向きの通信ネットワーク・サービスとなる可能性がある。
 具体的には、全国を10km四方の約4600のメッシュで区切り、メッシュ毎に5G高度特定基地局(ニーズに応じた柔軟な追加展開の基盤となる基地局)を整備することで、5Gの広範な全国展開の確保を図るとした。

5G高度特定基地局と5G基盤展開率
 最大10Gpbs程度の通信速度の光回線を備える特定基地局で、エリア内の他の多数の特定基地局を束ねて制御する。
 今回の5G周波数割り当てに際して、総務省は、10キロ平方メートルで区切った全国のメッシュの内、海や山岳部を除く約4600のメッシュを対象にして、「高度特定基地局」を「1メッシュごとに1つ」以上設置すること想定し、「高度特定基地局」を設置するメッシュの割合を「5G基盤展開率」とし、50%以上の「5G基盤展開率」を申請各社に求めた。
 「高度特定基地局」とは、10Gbpsの大容量光回線を備え、そのエリア内に設置される多数のマクロセルやマイクロセルなどの「特定基地局」(子局)を束ねて、光回線で結んで通信を制御する基幹局(親局)である。1Gbps超の通信速度を実現可能な性能を備え、キャリアアグリゲーションや8アンテナのMassive MIMO(マッシブマイモ) の機能が求められている。


高度特定基地局(親局)と特定基地局(子局)
第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針について 総務省 2018年12月


NEC製のスモールセルと富士通製のスモールセル NTTドコモのブースで展示(5G Tokyo Bay Summit 2019) NTTドコモのスモールセルはNEC/富士通製を採用する方向


エリクソン製のマクロセル NTTドコモのブースで展示(5G Tokyo Bay Summit 2019) NTTドコモのマクロセルはエリクソン製をを採用する方向

 これまでの周波数割り当ての指針は、「人口等のカバレッジの広さを評価する指標」で、4Gの周波数を割り当てる際は「8年後に人口の80%をカバーする」という条件を課したため、通信事業者は人口の多い大都市を優先してサービス・エリアを整備していった。
 また指針では5年以内に50%以上の地域に5Gサービス基地局をつくり、2年以内に47都道府県すべて5Gサービスを開始する
 総務省では、周波数割り当てに際して、全ての申請者の申請に対して比較審査を実施し、点数の高い者から順に希望する周波数帯枠の割当てを実施するとしている。
 5Gのサービス・エリアの整備については、通信事業者各社は、多くのユーザーが期待できる大都市部やニーズの多い地域で整備を行い、順次、地方にも拡大していく姿勢を明らかにしていたが、今回の総務省の「地方重視」の指針を受けて、投資戦略の見直しを迫られるだろう。過疎地などへの移動通信サービスは、まだ4Gサービス網も完成していない。ユーザーの少ない地方での5Gサービスの拡大は、通信事業者の重荷になることは間違いない。









総務省総合通信基盤局 第五世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針案について




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2018年11月3日
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廣谷  徹
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韓国 5G周波数オークション

2018年12月07日 12時23分27秒 | 5G

韓国 5G周波数オークション
携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定

 2018年6月15日、韓国科学技術情報通信部は、2019年3月の5G商用サービス開始に向けて、携帯電話事業者に対し、5G周波数オークションを実施した。
 今回のオークションは、5Gで活用する二つの周波数帯(3.5GHzと28GHz)で実施し、世界初の「5G周波数オークション」として注目を浴びた。
 具体的な周波数範囲は3.5GHz帯が3420.0~3700.0 MHzの280MHz幅、28GHz帯が26500.0~28900.0 MHzの2400MHz幅、合計で2680MHz幅である。
 周波数の割当方法はオークションで、入札単位とブロック数は3.5GHz帯が1ブロックあたり10MHz幅で28ブロック、28GHz帯が1ブロックあたり100MHz幅で24ブロックである。
 1社あたり最大でそれぞれ10ブロックまで取得を認めており、3.5GHz帯が最大100MHz幅、28GHz帯が最大1000MHz幅まで取得できる。
 3.5GHz帯および28GHz帯ともに2018年12月1日より有効になり、有効期限は3.5GHz帯が2028年1月30日まで、28GHz帯が2023年1月30日までと設定されている。
 最低入札額合計は3.5GHz帯が2兆6,544億ウォン(約2,686億円)、28GHz帯が6,216億ウォン(約629億円)で、合計3兆2,760億ウォンとした。その結果、オークションの合計落札価格は3兆6,183億ウォンで決着した。

 3社の落札内容は、3.5GHz帯では、SKテレコムは100MHz幅で1兆2,185億ウォン(約1218億円)、KTは100MHz幅で9,680憶ウォン(約968億円)、LG U+は80MHz幅で8,095億ウォン(809億円)だった。
 28GHz帯では、SKテレコムは800MHz幅で2,073億ウォン(約207億円)、KTは800MHz幅で2,078憶ウォン(約207億円)、LG U+は800MHz幅、2,072億ウォン(約207億円)となった。
 
 今回のオークションでは1MHz幅当たりの最低落札価格はこれまでと比べて最も安く設定された。特にモバイルで初めて利用される高周波数帯の28GHz帯については、現時点では使い勝手も含めて不確実性が大きい点が考慮され、利用期間を5年と短く設定し、価格は大幅に引き下げた低い水準で設定された。
 3社の中で、SKテレコムは帯域幅の拡張ができる3.5GHz帯にこだわり、他社より高い応札価格で落札した。周波数は12月1日から利用が可能となる。キャリア3社は8月までに機器事業者を選定し、秋にはネットワーク構築に着手する
 一方、商用サービス開始で提供される5Gサービスの利活用についてはまだ具体的な内容があまり明らかになっていない。韓国では国を挙げて、「世界初」の低遅延・大容量・多数接続の5Gサービス開始を目指して総力を挙げている。
 2018年2月の平昌冬季五輪では5Gサービスを世界に先駆けて実施し、世界各国に技術力をアピールしている。





5G・第5世代移動体通信 2020年東京オリンピックに向けて実現へ
5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP
5G周波数割り当ての審査方針総務省公表 地方を重視 通信事業者の重荷に






国際放送センター(IBC) 設営・運営業務実績

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2018年10月11日
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5GNR 3GPP 5G標準化 Non-Standalone NSA Standalone EPC

2018年06月23日 22時09分32秒 | 5G

5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP






5G NRの標準仕様(Release15)を策定した3GPP 2017年12月21日  出典 3GPP 

 2017年12月21日、「3GPP TSG RAN Plenary」は、5G NR標準仕様の初版の策定が完了し、技術仕様を公表した。
 今回策定されたのは、5G NRの機能のうち、LTEとの連携を行うNSA(Non-StandAlone)と呼ばれる機能を規定した。
 3GPPは、5Gの全機能の仕様を始めて規定するRelease15の完成に向けて、引き続き仕様策定の作業を進めていく予定である。
 3GPPは、「Third Generation Partnership Project, Technical Specification Group, Radio Access Network Plenary」の略称で、3GPP(移動通信システムの規格策定を行う標準化団体)における無線方式の仕様を規定する技術会合である。
「5G NR」は「5G New Radio」の略称で、3GPPが規定する5Gの無線方式である。

 12月21日の3GPP会合で策定された5GNRの仕様は、既存の4G(LTE)ネットワークのエリアの中に5Gのエリアを構築して、通信制御は4G(LTE)側のコントロールチャンネルで行うNSA(Non-Standalone)と呼ばれるネットワーク構成を前提としたものだ。
 新たな無線方式の5GNRを高度化した4G(LTE)と連携させ、一体的に動作させることで5Gサービスを実現させた。
 超高速通信、超低遅延、同時多接続が可能なミリ波等の高周波数を利用して、スモールセルで5Gユーザー・データを送受信を行い、カバレッジの広いマクロセルを使用して制御信号を4G(LTE)側でコントロールするという構成である。スモールセルのカバーエリアではない場所では、4G(LTE)がユーザー・データの送受信も担う。
 NSA方式の特徴はC-plane(ユーザー・データ)とU-plane(制御信号)を分離させたことである。これによって、移動体向けのサービスなども安定的に実現するすることが可能になった。
 5GNAで使用する周波数帯は、6GHz以下や6GHz以上のミリ波などの幅広い周波数帯への導入を想定している。
 早期導入の目指している日本や欧州など多くの国はこのNSA方式を採用するとしている。

 今回、3GPPでは5GNRを5Gネットワークと4Gネットネットワークの双方を利用してサービスを行うNSA(Non-Standalone)方式と5Gネットワーク単独でサービスを行うSA(Standalone)方式の2種類に分け、さらにユーザー・データを送信するコアネットワークや通信制御チャンネルを5GNRと4G(LTE)のどちらを用いるかによって、4種類のオプションを想定している。
 NSA(Non-Standalone)方式と5G単独で運用するSA(Standalone)方式の5GNRの最終仕様は、2018年6月の3GPPの会合で策定される予定である。

 これを受けて、同日、世界の主要5G移動通信キャリヤー各社は、早ければ2019年に開始を予定している5Gサービスの大規模トライアルや商用展開に向けて、5G NRの開発を本格的に開始すると共同発表を行った。
 共同発表に名を連ねたのは、AT&T、BT、チャイナモバイル、チャイナテレコム、チャイナユニコム、ドイツテレコム、エリクソン、富士通、ファーウェイ、インテル、KT、LGエレクトロニクス、LG Uplus、メディアテック、NEC、ノキア、NTTドコモ、オレンジ、クアルコム、サムスン電子、SKテレコム、ソニーモバイルコミュニケーションズ、スプリント、TIM、テレフォニカ、テリア、T-Mobile USA、ベライゾン、ボーダフォン、ZTE、世界各国の主要企業が名を連ねている。


出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料

 今回、策定された5GNRは、高度化させた4Gコアネットワークの中に、EPC(Evolved Packet Core)を実装し、ユーザー・データ(U-Plane)は5GNAと4G(LTE)で連携して送受信を実施し、通信制御情報(C-Plame)は4G(LTE)側がコントロールするNSA(NonStand-alone)と呼ばれる方式である。
 NSAは、既存のLTEネットワーク設備を利用して5Gサービスを実現させるので、低コストで、早期に5Gネットワークが構築可能な現実的なスキームだ。しかし、既存設備を利用するため通信速度や低遅延、同時接続可能数は限定的で、本来の5Gの要求水準を満たしていない。3GPPでは、NSA方式は暫定的なもので、SA((Stand-alone)方式に移行させていく方式と位置付けている。


出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料


出典 ギガビットLTEから5G   アンリツ株式会社

▼ オプション3/オプション7 
 オプション3は、高度化させた4Gコアネットワークの中に、EPC(Evolved Packet Core)を実装し、ユーザー・データ(U-Plane)と通信制御情報(C-Plame)は4G(LTE)で、4G(LTE)側でオペレーションを行うNSA(NonStand-alone)と呼ばれる方式である。
 このオプション3の方式が、今回、策定された。
 これに対し、オプション7では、ユーザー・データ(U-Plane)は5GNAで行い、通信制御チャンネルはオプション3と同様に4G(LTE)を使用方式で、いわゆるN/C分離方式で通信環境の向上を狙う。
 5GNAの設備があるエリアでは、高速・多接続の5Gサービスを行い、4G(LTE)の設備しかないエリアでは、4G(LTE)を使用する限定的な5Gサービスを行うデュアル接続方式である。
 5GNAの設備整備が部分的に留まる初期の段階で、5Gサービスを早期に開始する最も現実的な方式である。


出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料

▼ オプション4
オプション3/オプション7が、通信制御チャンネルを4G(LTE)を使用するのに対し、オプション4では、5GNAと使用する。
ユーザー・データの送受信を行うコアネットワークは、オプション3/オプション7と同様に5GNRと4G(LTE)でデュアル接続を行う。

▼ オプション2
 コアネットワーク(データ通信)と通信制御ネットワークの双方を5GNR単独で行う。SA(Standalone)方式の 5Gの要求水準を満たすサービスが、オプション2で初めて実現する。しかし、新たに5GNA設備を新たに建設しなければならないので、経費負担が大きく、かつ整備に時間が必要となる。

 3GPPでは、オプション7/オプション4/オプション2を2018年6月には策定を終えるとしている。



 5G NRの周波数帯の仕様については、日本で5G用として割り当てが検討されている3.8GHz帯や4.5GHz帯といった6GHz以下の周波数帯を対象とする「FR(Frequency Range)1」と、日・米・韓で利用が計画されている28GHz帯など6GHz以上の周波数帯向けの「FR2」の2つに分けて規定されている。
 日本では、5Gで使用する周波数帯は、3.7GHz帯(3.6~4.2GHz)と4.5GHz帯(4.4~4.9GHz)と28GHZ帯が検討されている。
 3.7GHz帯と4.5GHz帯については最大で500MHz幅、28GHZ帯では最大で2GHz幅の帯域幅の確保を目指すとしている。
 日本では情報通信審議会新世代モバイル通信システム委員会技術検討作業班は、これまでNB-IoTやLTE-Mの技術条件の検討などを進めてきたが、12月22日に開かれた第4回会合から、「5G New Radio」の「フェーズⅠ」の策定を受けて、5Gの技術条件の検討を本格化させた。
 同作業班は今年5月に取りまとめる報告書をもとに夏頃までに技術的条件を策定し、これに基づいて総務省は焦点の5G向けの新周波数を2018年度末までに割り当てる方針である。
 2018年は、2020年の5G商用サービス実現に向けて重要な年となる。


5G割り当て周波数は世界各国で異なりまとまらない  出典 新時代モバイル通信システム委員会技術検討作業班資料




5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ
暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か







国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2018年4月18日
Copyright (C) 2018 IMSSR




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