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東京オリンピック 競技会場 競技場 最新情報 東京ベイゾーン ヘリテッジゾーン 世界一コンパクトな大会 (上)

2020年01月24日 16時59分58秒 | 東京オリンピック
膨張する開催経費 
どこへいった五輪開催理念 “世界一コンパクトな大会”(上)
最新情報 東京2020 競技会場の全貌





新国立競技場 工事順調90%完成 芝生張り、陸上トラック工事に着手 12月21日にオープニングイベント 元旦の天皇杯サッカー開催



新国立競技場迷走 「陸上の聖地」復活か? 球技専用撤回へ

海の森水上競技場、完成披露式典開催
 2019年6月16日、2020東京五輪大会でボート・カヌー会場となる海の森水上競技場の完成披露式典が行われた。小池百合子都知事が「(五輪では)世界最高峰の試合が繰り広げられ、連日、世界中の多くの方々に感動を与えると確信している。大会後も、様々なイベントで活用していきたい」とあいさつした。
 ボート・カヌー会場はもともと新設予定だったが、小池知事が見直しを表明し、大会コスト削減のため、宮城県の長沼ボート場への変更が検討したが、施設の一部を仮設にするなどして、試算段階で約490億円だった整備費を約310億円に削減して新設された。
 大会後は、国際大会や国内大会など年間30大会や水上スポーツ体験や水上レジャーのイベントを開き、来場者数を年間約35万人と見込むが、収支は約1億6千万円の赤字としている。




出典 日本ボート協会



 2020東京オリンピック・パラリンピックの競技は、1964年の東京オリンピックでも使用された代々木競技場や日本武道館など過去の遺産を活かした「ヘリテッジゾーン」と、有明・お台場・夢の島・海の森など東京湾に面した「東京ベイゾーン」を中心開催する計画である。
 選手村から半径8キロメートルの圏内に85%の競技会場を配置するという「世界一コンパクトな大会」がキャッチフレーズだったが、相次ぐ「建設中止」や「会場変更」で、「世界一コンパクトな大会」は完全に消え去った。
 競技会場は、「既存施設」と「新設」があり、「既存施設」については改修や増設工事が伴う場合があり、「新規建設」は「恒久施設」と「仮設施設」に分けられている。
 2018年5月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで開いた理事会で最後に残ったサッカー7会場を一括承認し、43競技会場がすべて決まった。
 この内、オリンピッックは42会場、パラリンピックは21会場(ボッチャ競技のみ幕張メッセCをパラリンピック単独会場として使用 その他はオリンピックと共通競技会場を使用)である。
 オリンピックで開催される競技数は、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を加え、合計競技数は33競技、種目数は339種目で、選手数の上限を11,900人とすることが決定されている。一方、パラリンピックは22の競技が開催される。
 今回承認されたサッカー会場は、札幌ドーム、宮城スタジアム、茨城カシマスタジアム、埼玉スタジアム、横浜国際総合競技場、新国立競技場、東京スタジアムの7会場で、決勝は男子が横浜国際総合競技場、女子は新国立競技場で開催する。。
 また復興五輪のシンボルとなる野球・ソフトボールの福島あづま球場での開催も承認され、野球とソフトボールそれぞれ1試合(日本戦)を行う。
 43の競技会場の内、新設施設は18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設は25か所(内改修17)、既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では既存施設を最大限利用したと胸を張る。
 しかし、競技会場の決定に至る経過は、相次いだ迷走と混迷繰り返した結果であった。
* 2019年11月、四者協議で、暑さ対策でIOCの要請によりマラソンと競歩の札幌開催が決まった。

東京2020大会全競技会場マップ 最新詳細情報 必見!テストイベント開催(画像付き)

2020恒久施設(新設)の競技場

 2020東京大会競技場の「新設」(恒久施設)は、6万8000人収容可能なスタジアムへ建て替えられる「新国立競技場」(オリンピックスタジアム)を始め、東京アクアティックセンター(水泳・飛び込み・アーティスティクスイミング)、有明アリーナ(バレーボール)、海の森水上競技場(ボート、カヌー)、大井ホッケー競技場、夢の島公園アーチェリー場、カヌー・スラロームセンター、武蔵野の森総合スポーツプラザ(バドミントン 近代五種[フェンシング])の8施設である。
 国が建設するのは新国立競技場だけで、7か所の施設整備は東京都が担当し約1828億円で整備を行う。但し、新国立競技場については東京都も整備費総計約1849億円(本体工事と関連経費を含む)の内、約448億円を負担することが決まっている。

迷走を重ねた新国立競技場
 競技場の整備経費については、新国立競技場は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」は、2012年にデザイン競技公募を開始した際は、総工費は「1300億円を目途」としていたが、斬新な流線型のデザインのザハ・ハディド案が採用され、施工予定者のゼネコンが総工費を見積もると「3088億円」に膨張することが判明し、世論から激しい批判を浴びた。
 2015年7月、開閉式の屋根の設置の先送りなど設計見直しを行い「2520」億円に圧縮したが、それでも当初予定の倍近い額となり批判は一向に収まらず、ザハ・ハディド案の白紙撤回に追い込まれた。最終的に、安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、屋根の設置を止めたり観客席の規模を見直すなどして総工費を「1550億円」(上限)とすることで決着した。迷走に迷走を繰り返して醜態を演じたのは記憶に新しい。
 2015年9月、新たな整備計画に基づき、総工費と工期を重視した入札事業者向けの募集要項を公開し、公募を開始した。
 新整備計画では、開閉式の屋根は止めてコンサートやイベントなども開催する「多目的利用」は放棄され、陸上競技やサッカー、ラグビーなどの競技スタジアムへ転換することを打ち出した。
 観客席は五輪開催時には約6万8000席(旧国立競技場 約54000席)とし、五輪後にはFIFA ワールドカップの開催も可能にするために観客席を陸上トラック上部に増設して8万席以上確保する。屋根は観客席全体(8万席拡張時を想定)を覆う固定式とした。建物の最高高さは70メートル以下、フィールドを含む面積は約19万4500平方メートル(同7万2000平方メートル)で、旧整備計画の約22万4500平方メートルから約3万平方メートル削減するとした。
 公募には、大成建設を中心に梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループと、竹中工務店、清水建設、大林組の3社の共同企業体と日本設計、建築家の伊東豊雄氏で構成するグループが応募した。
 2015年12月22日、審査の結果が公表され、「木と緑のスタジアム」をコンセプトにした大成建設、梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループが選ばれた。
 木材と鉄骨を組み合わせた屋根で「伝統的な和を創出する」としているのが特徴のデザインで、地上5階、地下2階建て、スタンドはすり鉢状の3層にして観客の見やすさに配慮する。高さは49・2メートルと、これまでの案の70メートルに比べて低く抑え、周辺地域への圧迫感を低減させた。
 総工費は約1490億円、完成は2019年11月末としている。当初目指したラグビーワールドカップ2019の開催は断念した。


出典 Olympic Channel

「新国立競技場」はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに 「陸上競技の聖地」の夢は無残にも消えた
 2017年11月14日、「新国立競技場」の整備計画を検討する政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)は14日、五輪大会後はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに改修する計画案を了承した。22年後半の供用開始をめざす。
 計画案では、大会後に陸上競技のトラックをなくし、収益性を確保するため、観客席を6万8千席から国内最大規模の8万席に増設する。
 運営方針として、(1)サッカーのワールドカップ(W杯)の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(4)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げた。
 新国立競技場の維持管理費は長期修繕費を含めて年間約24億円とされている。収入が確保できなければ、50年、100年、延々と赤字を背負うことになる。
 結局、「新国立競技場」が“負のレガシー”(負の遺産)になるのは避けられそうもない。



東京アクアティクスセンター
 オリンピックアクアティクスセンターは、「競泳」、「シンクロナイズド・スイミング」、「飛び込み」の競技会場として、大規模な国際大会が開催可能な国際水準の水泳場として整備計画が立てられた。整備費は招致計画では総工費321億円としていたが、その後の見直しで683億円と約倍以上経費が膨れ上がった。
 整備計画では、建設時には延床面積5万7850平方㍍、約2万席の観客席とするが、大会後は屋根を低くして3階席を撤去するなどして観客席を5000席まで減らし、延床面積を3万2920平方㍍まで縮小する減築を行うとした。減築後も国際大会開催時には観客席を1万席から最大1万5000席(仮設席を含む)に拡張可能とした。メインプール(50m×25m)、サブプール(50m×25m)、飛込プール(25m×25m)が整備される。
 その後、2016年の「四者協議」トップ級会合で、座席数を2万から1万5000席に減らし、大会後の「減築」は取りやめて建設することで、683億円から567億円に削減する方針を明らかにした。
 五輪開催後は都民のための水泳場としても活用するとしている。メーンプールとサブプールの床や壁を可動式にすることで多様な目的に使えるようにした。
 2016年1月、本体工事については、大林・東光・エルゴ・東熱異業種特定建設共同企業体が、469億8000万円(税込価格)で設計・施工工事を落札した。予定価格は538億円(本体工事)で落札率は87%だった。
 しかし、約300メートルほどの近接した場所に東京辰巳国際水泳場があるのに、なぜ巨額の税金を投じて「二つ」も整備するのか、当初から過剰施設の象徴だとして批判にさらされていた。
 東京辰巳国際水泳場は1993年に開館し、世界水泳や五輪選考会など国内外の主要大会が開かれてきた水泳競技の「聖地」。50メートルのメインとサブのプール、飛び込みのプールがあり、一般にも開放している。整備費は181億円、維持費は年間4億7000万円である。2008年には五輪競泳の金メダリスト北島康介選手が、200メートル平泳ぎで世界新記録を出したことで有名な水泳競技場である。
 ところが、辰巳水泳場は、観客席は固定席が約3600席、仮設席が約1400席、合わせて約5000席が限界である。国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準は観客席1万2000席、この基準を満たすためには、大幅な拡張工事が必要だが、建物の北側が運河に面していて工事は不可能とされていた。またこの水泳場は、水深が両サイドの約半分は2メートルしかなく、国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準「水深2メートル」は満たしているが、推奨基準「水深3メートル」は満たしていない。「水深2メートル」の部分があるとシンクロナイズドスイミングの競技開催では支障が生じるとされている。さらに辰巳水泳場は、国際オリンピック委員会(IOC)の要求基準、コース幅2.5メートルも満たしていない。
 このため東京都は、一回り大きい国際水準の水泳場として辰巳の森海浜公園内にオリンピックアクアティクスセンターを新設することとし、東京辰巳国際水泳場は水球競技場として使うことにした。当初は水球競技場をオリンピックアクアティクスセンターに併設してウォーターポロアリーナを建設する計画だったが建設は中止された。


東京アクアティクスセンター  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

都政改革本部調査チーム オリンピックアクアティクスセンターの大幅な見直しを提言

四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆8000億円で合意


有明アリーナ
 有明アリーナは、地上5階建てで、延べ面積約4万5600平方メートル。座席数は仮設席を含めて大会開催時には仮設を含めて約1万5000席を確保するが、五輪開催後は、約1万2700席に縮小する。メインアリーナはバレーボールコート4面又はハンドボールコート3面で競技可能な規模に、サブアリーナ はバスケットボールコート2面が配置可能な規模とする。整備費は、招致計画では、総工費約176億円としていたが、見直し後は約404億円に膨れ上がった。
 五輪開催後は、ワールドカップや日本選手権といった国内外の主要な大会の会場として利用するほか、コンサートなどの各種イベント会場としても活用するとした。そのためメーンアリーナの床はコンクリート製とし、機材搬入用の大型車が通れるようになっている。 またショップやレストランを充実させたりすることで、五輪開催後は、首都圏での新たな多目的施設を目指す。
 2016年1月、本体工事は、竹中・東光・朝日・高砂異業種特定建設共同企業体が360億2880万円(税込価格)で設計・施工工事を落札した。

都政改革本部調査チーム 有明アリーナ建設中止も
 都政改革本部調査チームでは、バレーボール会場は既存のアリーナや大規模展示場を改修するなどして開催は可能とし、まず競技開催計画の変更を検討すべきと提言した。
 既存の会場変更する場合の候補として、「横浜アリーナ」を改修して使用する案を有力視した。
 また新設する場合でも、五輪開催後は他の既存施設でバレーボール競技大会の開催は十分運用可能なことから、有明アリーナの利用があまり見込めないとし、イベントやコンサートなど多目的展示会場の施設を目指すべきだとした。関東圏ではコンサートなどの利用に関しては、数万人を収容するアリーナクラスへの需要は高い水準が続くと見込まれているとしている。
 しかしイベント会場を目指すにしても、建設費については類似施設に比べ高く、404億円からさらにコストダウンの努力が必要とし、大会後の適切な座席数を見積もる必要や、コンサート会場として施設整備など民間事業者を巻き込んだ事業計画の詰めが必要と指摘した。
 既存施設を利用する開催計画の変更や、新設の場合にもイベント利用に向けた計画の詰めやコストの見直しが求めた。
 これに対し、日本バレーボール協会の木村憲治会長は、都政改革本部の調査チームのヒアリングに出席し、「国際基準である1万5000人を収容できる体育館が欲しい」と述べ、計画通り有明アリーナの建設を求めた。
 有明アリーナ建設用地については、約183億円の用地取得費を有明アリーナの整備費とは別枠で処理していることから、「五輪経費隠し」として批判されている。
 2016年12月21日、東京大会の会場見直しや開催費削減などを協議する国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、前回結論を先送りしたバレーボール会場は小池都知事が「有明アリーナ」を計画通り建設する方針を表明した。
 “ARIAKE LEGACY AREA”と名付けて、その拠点に「有明アリーナ」に据えて、有明地区を再開発して“五輪のレガシー”にする計画を示した。
 計画では、「有明アリーナ」はスポーツ・音楽などのイベント会場、展示場として活用し、周辺には商業施設や「有明体操競技場」も整備するとした。
 焦点の整備費は404億円を339億円に圧縮し、民間企業に運営権を売却する「コンセッション方式」を導入して、民間資金を活用し経費圧縮に努める計画だ。


有明アリーナ  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

海の森水上競技場
 海の森水上競技場(ボート、カヌー)は、防波堤内の埋立地の間を締め切る形で競技施設を建設するが、会場レイアウトの変更や護岸延長の縮小などにより整備費を大幅に圧縮し、延床面積3万2170平方メートル規模とする。建設費については、招致ファイルでは、約69億円としたが、地盤強化や潮流を遮る堤防の追加工事が必要とわかり、五輪開催決定後、改めて試算すると、約1038億円の膨れ上がることが明らかになり、世論から激しい批判を浴び、“無駄遣い”の象徴となった。舛添元都知事は防波堤工事などを見直して約491億円に縮減した。
 五輪開催後は、国際大会開催可能なボート、カヌー場として活用するとともに、海の森公園と連携した緑のネットワークを構成し、サイクリングコースや整備都民のレクリエーションの場、憩いの場とする計画だ。水辺を生かした水上イベントなどのイベントも開催して、多目的に活用するとしている。
 海の森水上競技場の本体工事については、大成・東洋・水ing・日立造船異業種特定建設共同企業体が248億9832万円(税込価格)で設計・施工を落札し着工した。
 しかし、その後も、整備費が巨額に上る上に、埋め立て地の先端に立地するた強風や波の影響を受けやすく、海水によるボートへの塩害の懸念や航空機の騒音問題などでも批判が止まず、小池都知事が設立した都改革本部の五輪調査チームは宮城県の長沼ボート場に会場変更をして建設中止をする提案をした。
 2016年11月29日、国際オリンピック委員会(IOC)、東京都、大会組織委員会、政府の4者のトップ級会合が東京都内で開かれ、小池都知事海の森水上競技場を20年程度存続の「スマート施設」(仮設レベル)として、整備費は当初の491億円から298億円に縮減して建設することを明らかにした。都の調査チームがボート・カヌー会場に提案していた長沼ボート場は事前合宿地とすることをコーツIOC副会長が確約し、小池都知事も歓迎した。


海の森水上競技場  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心

カヌー・スラロームセンター(葛西臨海公園隣接地)
 カヌー(スラローム)の競技場は、水路に人工的に流れを作り出し、競技を実施することができる国内で初めてのカヌー・スラロームコースである。葛西臨海公園に建設する計画だったが、隣接地の都有地(下水道処理施設用地)に建設地を変更した。葛西臨海公園は貴重な自然環境を後世に残すという目的で整備された施設であることを配慮した。 大会後は、葛西臨海公園と一体となったラフティングも楽しめるレジャー・レクリエーション施設となるように計画を練り直した。整備経費、約73億円は東京都が負担する。




カヌー・スラロームセンター  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

大井ホッケー競技場
 大井ホッケー競技場は、大井ふ頭中央海浜公園内のサッカー用の第一球技場敷地にメーンピッチ(決勝など)を新設、サッカーやアメフト用の第二球技場敷地にサブピッチ(予選)を改修整備する計画である。
 座席数は、メーンピッチが大会時には仮設を含めて約1万席、大会後は約2600席、サブピッチは仮設を含めて大会時5000席、大会後は536席とする。
 立候補ファイルでは、公園内の球技場と野球場、6面をつぶしてメーンピッチ、サブピッチを整備する計画でいたが、地元の軟式野球連盟などから3万8千人分の反対署名が出され、東京都は見直し作業を進めた。野球場は残し、五輪開催時は大会運営に使うが、大会後はこれまでどおり4面の野球場が利用が可能となった。
 総事業費は約48億円を見込んでいる。


大井ホッケー競技場  提供 TOKYO2020

夢の島公園アーチェリー場
 夢の島公園内(新木場)に建設するアーチェリー場は、当初計画では緑地エリアを潰して建設する計画だったが、批判を浴びて、緑地を極力減らさない方向で会場計画を見直して整備することになった。
 予選会場は円形広場(多目的コロシアム)に、決勝会場は公園内にある陸上競技場にスタンドを仮設するなどして整備をする計画に変更し、緑地を極力残すことになった。また取り壊す予定だった「東京スポーツ文化館」も選手控室などで活用する。整備費は約24億円。
 夢の島公園は、運河と水路に囲まれた43ヘクタールの総合公園、ごみの最終処分場であった東京港埋立地夢の島を整備して作られた。熱帯植物館や競技場や野球場などのスポーツ施設やバーベキュー広場などが整備され、四季折々の花が咲き乱れる緑のオアシスに生まれ変わっている。せっかく整備した緑地を潰して五輪施設を建設することに対しては都民から強い批判を受けていた。


手前が決勝会場 奥が予選会場(竣工済) 提供 TOKYO2020

武蔵野の森総合スポーツプラザ
 武蔵野の森総合スポーツ施設(仮称)は、東京都調布市の東京スタジアムの隣接地の約3万3500平方メートルの敷地にメインアリーナとサブアリーナを建設する。
 メインアリーナは、バレーボール4面、バスケットボール4面が可能な競技フロアを備え、観客席は固定席で6662席、仮設席対応も含めると約11000席が収容可能である。大規模なスポーツ大会やイベントの開催も可能である。
 サブアリーナは、バレーボール2面、バスケットボール2面が設営可能なフロアが整備され、可動畳で武道競技の開催も可能である。屋内プールも設置し、50m、8コースの国際公認プールとなる。さらにトレーニングルームやフィットネススタジオ、カフェ等も設ける。 隣接地には東京スタジアムや「西競技場[陸上トラック]」がある。
 整備費は351億円。 バドミントンと近代五種[フェンシング(ランキングラウンド)]の競技場となる。


武蔵野の森総合スポーツプラザ  出典:東京都

有明テニスの森公園
 有明テニスの森公園は、当初計画では既存の屋内外のコート計49面を、35面のコートや観客席などに再整備し、ショーコートを2面(観客席5000席と3000席付きコート)やインドアコートを建設するとしていた。しかし、日本プロテニス協会などから「コートの減少を最小限にとどめてほしい」といった要望や、ショーコートを整備予定のイベント広場についても、近隣住民らから存続を希望する声が寄せられていた。こうした要望を受けてコートの配置を変更することで、大会開催時には37面を整備し、大会終了後には元の49面に復元。また、2面整備予定のショーコートは1面を大会後撤去し、イベント広場に戻すとした。また観客席を仮設とすることで34億円縮減し、改修費は約110億円となった。


有明テニスの森公園  提供TOKYO2020

建設中止や会場変更をする競技施設
 恒久施設では、「夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」、「夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」、「若洲オリンピックマリーナ(セーリング)」、仮設施設では、「ウォーターポロアリーナ(水球)」、「有明ベロドローム(自転車・トラック)」、「有明MTBコース(マウンテンバイク)」、「夢の島競技場(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)」は建設中止となり、他の既存施設に振り替える。
 「夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」と「夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」は、招致計画では、建設費を364億円としたが、見直しの結果、683億に膨張し建設中止に追い込まれた。
 バトミントンは、武蔵野森総合スポーツ施設(東京都調布市)、バスケットはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)に会場変更された。
 「若洲オリンピックマリーナ(セーリング [ヨット・ウンドサーフィン])」は、招致計画では建設費を92億円としたが、見直しの結果、土手の造成費が新たに必要となることが明らかになり、417億円に膨れ上がり建設は取りやめられた。会場は江の島ヨットハーバー[藤沢市]に変更となった。
 水球は「東京辰巳国際水泳場」で開催する。
 自転車(トラック)は、日本サイクルスポーツセンター内の「伊豆ベロドローム」に会場変更し、マウンテンバイク(MTB)は同じ日本サイクルスポーツセンター内のMTBコースを改修して開催することが決まった。
 また馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)は馬事公苑(世田谷区)に会場を変更し、カヌー・スラローム会場は、葛西臨海公園から公園に隣接する都有地に建設地が変更された。

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仮設施設の競技場

 「仮設施設」では、皇居外苑コース(自転車・ロードレース)、お台場海浜公園(トライアスロン・マラソン水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、海の森クロスカントリーコース(馬術・クロスカントリー)、有明アーバンスポーツパーク(自転車[BMX]、スケートボード)、青海アーバンスポーツパーク(バスケットボール[3×3]、スケートボード)、陸上自衛隊朝霞訓練場(射撃)が整備される。当初計画では整備にかかる経費は原則として五輪組織員会が負担するとしていたが、結局、大会組織員会が約950億円を負担し、東京都が2100億円を負担することになった。 これとは別に東京都は周辺整備費や道路などの交通基盤整備費の負担も背負うことになる。
 馬術(障害馬術、馬場馬術、総合馬術)は夢の島競技場内に仮設施設を建設する予定だったが、建設を中止し馬事公苑に会場を変更した。
 一方、馬術(クロスカントリー)については、計画通り、「海の森クロスカントリーコース」が仮設施設として整備される。
 マラソンは、スタート、ゴール共に新国立競技場で、競歩は、皇居外苑の周回コースで行う計画だったが、2019年12月、暑さ対策で札幌に会場が変更された。
 そのほかの「仮設施設」では、お台場海浜公園(トライアスロン[水泳]、マラソン水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、青海アーバンスポーツ会場(バスケットボール3×3、スポーツクライミング)が整備される。
 自転車(ロードレース)は、当初計画ではスタート地点が皇居、ゴール地点が武蔵野の森公園としていたが、テレビ映りや景観を重視した国際自転車連合(UCI)から富士山を背景に走るコースを強く要請され、スタート地点を武蔵野の森公園、ゴール地点を富士スピードウェイ(静岡県小山町)とすることが決まった。



有明体操競技場
 有明体操競技場は鉄骨造・一部木造の地上3階建てで、敷地面積は約9万6400平方メートル(都有地)、延べ面積約3万9300平方メートル、観客席1万2000席の計画で整備される。3万2000平方メートルの体操競技場と約5000平方メートルのウオームアップ施設などが建設される。
 大会後は、敷地面積を3万6500平方メートル、延べ面積を約2万7600平方メートルに縮小し、面積は約1万平方メートルの展示場とする。ウオームアップ施設は撤去され、バックスペースは駐車場となる。
 有明体操競技場は当初計画では、「仮設施設」として、組織委員会が総工費約89億円で整備し、大会後は取り壊す方針だったが、「大会後に有効活用せずに取り壊すのはもったいない」との意見が出ていた。その後、資材の高騰などでさらに総工費が膨れ上がり、「恒久施設」として建設する場合と比較してもあまり経費に大きな差がなくなったが判明し、大会終了後、10年間をメドに存続させ、再活用する「半恒久」施設として整備することになった。 展示場やイベント会場などで10年程度利用され、都の関連企業の「東京ビッグサイト」が管理運営を行う。
 東京都では、組織委員会が管理する「仮設施設」として仕分けしているので、「五輪開催費用」に計上していない。
 整備費の総額は「約253億円」とし、「後利用に相当する部分」を「193億円」、「大会時のみ使用する部分」を「60億円」に仕分けすることで東京都と組織委員会で合意している。「193億円」は東京都が負担することが決まったが、「60億円」の負担の割合は調整がついていない。
 2016年11月、清水建設が本体工事を205億2000万円で落札した。


有明体操競技場  提供 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

海の森クロスカントリーコース
 海の森クロスカントリーコースは、東京湾の最先端にある中央防波堤の埋め立て地に建設される。この埋め立て地では緑化事業が進められ、海の森公園が整備され、公園内に馬術のクロスカントリーコースが仮設施設で整備され、総合馬術(クロスカントリー)が開催される。
 海の森公園からは東京ゲートブリッジなど東京湾と巨大都市、東京の景観が一望に見渡すことができ、大会開催後は、「海の森」として、都民のレクレーション・エリアにしたいとしている。
 ボートとカヌー競技が開催される海の森水上競技場が隣接している。


海の森クロスカントリーコース  提供 TOKYO2020

青海アーバンスポーツ会場 
 選手村からも近い青海エリアの敷地に、仮設で整備される競技会場。東京湾が見える場所に位置し、都市型スポーツ競技のバスケットボールの3×3やスポーツクライミングが開催され、世界各国の若者のアスリートが集う東京2020大会を象徴する会場のひとつとなる。
パラリンピックでは、5人制サッカーの競技会場となる。


青海アーバンスポーツ会場の建設地(現駐車場)  筆者撮影

潮風公園
 潮風公園の前身は、東京港改造計画に基づいて造成された13号埋立地の一画の「13号地公園」で、この地域が臨海副都心として整備されるに伴い、全面改修工事が行われ「潮風公園」として生まれ変わった。臨海副都心内では最大の海辺の公園で、レインボーブリッジを背景とした東京湾の景観も素晴らしい。お台場海浜公園と隣接している。
 潮風公園の中心にある「太陽の広場」にビーチバレーボールの競技会場が仮設で建設される。


潮風公園 ビーチバレー競技会場 提供 TOKYO2020

有明アーバンスポーツパーク(自転車[BMX] スケートボード)
 若者に人気のあるBMX競技については、江東区有明地区に仮設会場を整備する計画だったが、大会組織員会は自転車(トラック・MTB)と共に既設施設の「日本サイクルスーツセンター」に会場を変更したいとした。しかし国際自転車連合は観客が集まりやすい首都圏での開催にこだわって難色を示し、結局、有明地区で開催することが決まった。約5000席の観客席を備えたBMXコースを、ゆりかめめ・有明テニスの森駅の隣接地に仮設で建設する。さらにスケートボードの競技会場も建設し、周辺を「都市型スポーツ」の拠点、アーバンスポーツパークとして整備する


有明アーバンスポーツパーク 完成予想図  提供 TOKYO2020


陸上自衛隊朝霞訓練場
 陸上自衛隊朝霞訓練場は、陸上自衛隊朝霞駐屯地に隣接して設置された施設で、訓練場内は自動車教習所、屋内射撃場、弾薬庫等が設置されており、一部の区域で陣地構築等の小規模な訓練も可能である。3年に一度、自衛隊記念日に中央観閲式が実施されことで知られている。
 屋内射撃場は、射撃の競技場・練習場として使用され、1964年東京五輪大会では射撃競技の会場となった。
 2020東京五輪大会時には訓練場内に仮設施設が整備され、オリンピックとパラリンピックの射撃競技が開催される。


陸上自衛隊朝霞訓練場  出典 東京2020大会招致委員会

既存施設の競技場

東京辰巳国際水泳場
 水球の競技会場となる東京辰巳国際水泳場は、東京都の水泳競技場の代表的な施設として建設され、1993年にオープンした。
50m×25mで公認8レーンで、水深を1.4mから3mまで変えられる可動床が設置されているメインプールや50m×15mで7レーンのサブプール、25m×25mで水深5mの国際公認ダイビングプールを備え、全国規模の大会などが多数開催されている。観覧席は固定で3,600席、仮設で1,400席、あわせて5,000席がある。ダイビングプールの観客席はメインプールと共通である。
 このメインプールは2008年に北島康介選手が世界新記録を樹立したり、2017年には渡辺一平選手がその記録を塗り替えるなどの舞台となった。


東京辰巳国際水泳場  出典 東京2020大会組織委 

お台場海浜公園 

マラソン水泳・トライアスロン 深刻な東京湾の水質汚染
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソンの水泳とトライアスロンの会場で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。
 組織委では、雨期に海岸から流出する細菌の量を抑制するために、お台場マリンパークに水中スクリーンを設置するなど多数の実験を行い、水質改善に努めているとした。
 コーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。大会組織委から水のスクリーニング・カーテンの入れ方などの実験について説明を受けが、この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。


お台場海浜公園  提供 TOKYO2020

江の島ヨットハーバー
 江の島ヨットハーバーは神奈川県藤沢市の沖にある「江の島」の中にある。
 1964東京オリンピックのヨット競技の会場となり、江の島の北東側海岸にあった岩場を埋め立てて、ヨットハーバーを整備した。
 埋め立て地の内、約330平方メートルにヨット係留施設を建設し、鉄筋3階建クラブハウスや約500台駐車可能の駐車場なども整備された。また2000t級の観光船なども発着できる岸壁も建設した。
 2020東京五輪大会ではセーリング(ヨット ウインドサーフィン)の競技会場となる。

シラス漁に影響 江の島セーリング会場
 セーリング競技については、国際セーリング連盟は、バンコクの会議で、「準備が1年遅れている」と指摘し、地元の漁業者との交渉が進まず、レース海面決定が遅れていることや津波対策や警備対策に懸念を持っているとした。
 コーツ副会長も、記者会見で、2020東京大会組織委員会に対し、地元の漁業者へ与える影響について懸念を表明したと付け加えた。
 江の島で開催されるセーリング競技では、ディンギー5艇種によるヨットとウインドサーフィンが行われる。海上に設置された3つのブイ(三角形のコース)を周回して争われる競技である。
 レース海面は、鎌倉市沖から葉山町沖の海域に、直径1852メートルと1574メートルの円形の5つのエリアの設定が計画されている。
 一方この海域は、古くから湘南名物のシラス漁の好漁場として知られている。
 セーリング競技団体はレース海面をなるべく沿岸に近い浅瀬に設定することを求めているのに対し、漁業者はシラス漁への影響を懸念してなるべく沖合にしたいとして調整が継続されていて、未だにレース海面が決まっていない。
 シラス漁の操業海域は、5市1町の8漁業組合に独占的に認めている「共同漁業権」エリアが設定され、さらにその沖合にはどの漁協も操業できる海域が広がっている。
 シラス漁は、元旦から3月10日までは禁漁だが、五輪セーリング競技の公式練習や大会開催期間はシラス漁の漁期と重なり、漁業者への影響は必至である。
 そこで浮上するのが漁業補償の問題だが、神奈川県と関連漁協の間の具体的な協議は始まっていない。
 漁業補償がからんでレース海面の決定は難航が予想され、セーリング開催準備も難問を抱えている。


江の島セーリング会場  提供 TOKYO2020


江の島沖のセーリング会場  提供 TOKYO2020  

釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ
 釣ヶ崎海岸(通称志田下ポイント)は九十九里浜(千葉県一宮町)の南端の海岸で、「世界最高レベル」ともいわれる良質な波が、年間を通じて打ち寄せる海岸として知られ、多くのサーファーが訪れる。
 プロサーファーやハイレベルなサーファーが集まることから「波乗り道場」とも呼ばれ、地元出身の多くの有力選手が活躍している。
ハイレベルな大会も多数開催されており、平成28年5月と平成29年5月にはこれまで国内で開催された国際大会の中でも最高レベルにあたる「QS6000 ICHINOMIYA CHIBA OPEN」が開催され、世界トップレベルの選手達がライディイグを披露した。
 2020東京五輪大会ではサーフィン競技の会場になる。


釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ  提供 TOKYO2020

 
釣ヶ崎海岸 サーフィン  提供 TOKYO2020
 

迷走 霞ケ浦CCゴルフ会場
 2017年1月4日、森喜朗組織委会長は、ゴルフ会場の霞ケ関カンツリー倶楽部(埼玉県川越市)について「輸送を計画通りにできるのかどうか。選手の疲労なども考えると、運営側としては心配だ」と述べ、アクセス面の懸念を示した。
 東京晴海の選手村から会場までは40キロ以上も離れている上に、渋滞の激しい関越自動車道を通るため、期間中に設置される五輪専用レーンを設置しなければならない。専用レーンを利用しても1時間半程度かかるとし、「強い(上位)選手ほど帰るのが遅くなる。遅ければ選手村に午後10時ごろ。翌朝6時(始動)となれば大変だ」と述べ、4日間の日程で選手の疲労度を懸念した上で、輸送計画の精査を求めた。 
さらに、内陸部で真夏には気温が40度近くになることもあり暑さ対策の懸念も指摘した。
 森会長は、問題の解決が難しい場合、2012年招致計画の会場だった江東区の若洲ゴルフリンクス(都営パブリックコース)や、千葉県などにゴルフ場があることも指摘し、会場変更の検討にも言及した。
 一方、小池都知事は、「21世紀に女性が正会員になれないということに違和感がある」と述べ。男女平等をうたう五輪憲章に反するという懸念を示した。国際オリンピック委員会(IOC)は日本ゴルフ協会(JGA)など4団体で構成する五輪ゴルフ対策本部や大会組織委員会に対応を求めた。
また2013年の立候補ファイルでは、若洲から霞ケ浦へ変更されたが、なぜ変更されたのか、その経緯が不明朗だという批判がこれまでも巻き起こっていた。「誰がどう考えても若洲の方が良い」とする意見も強い。
 2017年3月20日、「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は、臨時の理事会を開き、規則を改定し、女性正会員を容認することを出席した理事が全員一致で議決した。
 これまで霞ヶ関カンツリー倶楽部は、女性がすべての営業日を通じて利用できる正会員になることを認めていなかった。
 「霞ヶ関カンツリー倶楽部」は「時代に沿った対応をすすめるため、自主的に改定の判断をした」とのコメントを出した。


霞ヶ関カンツリー倶楽部  提供 TOKYO2020

伊豆ベロドローム
 伊豆ベロドロームは、国際自転車競技連合(UCI)規格の周長250m木製走路を有する屋内型自転車トラック競技施設として2011年に開業した。観客席は、常設で1,800席、仮設で1,200席。全日本選手権自転車競技大会トラック・レースなど多くの国内主要大会で使用されている。また ナショナルトレーニングセンターとしての役割を果たすとともに、広く一般の方も利用できる施設になっている。
 自転車(トラック)は当初計画では、「有明ベロドローム」(仮設施設)を建設する予定だったが、建設費の高騰で、計画見直しを大会組織委員会が提案し、伊豆・修善寺にある「日本サイクルスポーツセンター」内にある「伊豆ベロドローム」に変更することが承認された。「伊豆ベロドローム」では、パラリンピックの自転車競技(トラック)も開催する。
 またマウンテンバイク(MTB)も、「海の森マウンテンバイクコース」(仮設)の建設を中止して、「日本サイクルスポーツセンター」内の既存の「伊豆MTBコース」を改修して使用することが決まった。
 このコースは全長2,500m、高低差85mのオフロードコースで全日本選手権大会なども開催され、初級者から上級者までが利用できるようにエリアやルートが分かれている。コースの途中には、富士山を望むことができるビューポイントもある。
 五輪大会のマウンテンバイク(MTB)競技は、クロスカントリーで行われ、起伏に富む山岳コースを舞台に全選手が一斉にスタートして着順を競うものでパワーとテクニックが必要となる。
 1周5km以上のコースを使用し、周回数は予想競技時間(男子2時間)にあわせた周回数となる。

* 「ベロドローム」とは自転車競技場の意味で、『Velo(ベロ)』はラテン語が語源のフランス語で自転車、『drome(ドローム)』はラテン語で競技場を意味する。




伊豆ベロドローム  


日本サイクルスーツセンター全景 出典 日本サイクルスーツセンター

富士スピードウェイ
 ロードレースのコースは、当初は、スタートとゴール共に、観客の集まりやすい皇居外苑としていた。
 しかし、ロードレースのコースは選手の実力差が出るように勾配のある難しいコース設定が求められ、リオ五輪では終盤は高低差約500メートルの山岳ルートを周回するコースが選ばれている。競技団体から、こうした条件を満たす富士山麓のコースが求められた。しかもテレビ映りの絶好な富士山を背景にすることができることも大きな要因だった。ゴールは富士スピードウェイ(静岡県小山町)が決まり、出発点は武蔵の森公園となった。
 組織委員会としても、都内の周回コースは一般交通への影響や警備の負担が大きく、富士山コースを受け入れた。
 それにしても「テレビ五輪」を象徴する計画変更である。


富士スピードウェイ  提供 TOKYO2020

サッカーの予選開催競技場 
 サッカーの予選開催競技場は、札幌ドーム(札幌市)、宮城スタジアム(宮城県利府町)、埼玉スタジアム2002(さいたま市)、横浜国際総合競技場(横浜市)の4か所がすでに決まっていた。組織員会では、茨城県立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)、豊田スタジアム(愛知県豊田市)、吹田市立スタジアム(大阪府吹田市)の3か所を追加したいとして国際サッカー連盟と調整したが、最終的に、茨城立カシマサッカースタジアム(茨城県鹿嶋市)、新国立競技場、東京スタジアムの4か所が追加開催競技場として決まり、全国7カ所で開催されることになった。
 決勝は男子が横浜国際総合競技場、女子は新国立競技場」で開催する。
 
選手村
 中央区晴海の東京ドーム3個分に及ぶ広大な都有地、約13万4000ヘクタールの敷地に、14~17階建ての21棟のマンション型の選手村と商業施設が建設される。工事費は約954億円。選手村の居住ゾーンは3街区に分けて、約1万7000人の五輪関係者が宿泊可能な施設となる。各住戸は、東京湾の風景が望めるつくり。周辺環境、海からのスカイラインを考慮し、様々な高さの建物を配置するとしている。
 大会終了後は分譲マンションとして販売する計画で、超高層住宅棟2棟を建設し、住宅棟21棟、商業棟1棟に整備して、5650戸のニュータウンに衣替えする。2016年7月、三井レジデンスなど11社で構成する民間事業者グループが開発事業を受注し、2017年1月には着工する。基本的に国や都の財政負担なしに整備する方針だ。日本の気候に応じた伝統的な建築技術と最先端の環境設備と融合した環境負荷の少ない街づくりを体現する1つのモデルとなることを目指す。
 しかし、東京都は選手村用地の盛り土や防潮堤の建設を始め、上下水道や周辺道路の整備に410億円を投入する計画だ。大会後は臨海ニュータウンになるので、社会資本整備投資経費として理解できるが、東京都の五輪開催経費、選手村整備費にはまったく算入していない。
 また都有地約13万4000ヘクタールを、周辺価格の約10分の1という「破格の優遇措置」で事業者グループに売却したという疑念が生まれて批判が集まった。


選手村  提供 TOKYO2020

IBC/MPC
 東京オリンピックの世界の報道機関の拠点、国際放送センター(IBC International Broadcasting Center)とメインプレスセンター(MPC Main Press Center)は東京ビッグサイト(江東区有明地区)に設置される。
 国際放送センター(IBC / International Broadcasting Center)は、世界各国。の放送機関等のオペレーションの拠点となる施設である。IBCの設営・運営は五輪大会のホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)であるOBS(Olympic Broadcasting Services )が行う。
 IBCには、国際映像・音声信号のコントロール(Contribution)、分配(Distribution)、伝送(Transmission)、ストレージ(VTR Logging)など行うシステムが設置されるOBSエリアや各放送機関等がサテライト・スタジオや放送機材、ワーキング・ブースなどを設置する放送機関エリアなどが整備される。
 メインプレスセンター(MPC / Main Press Center)は、新聞、通信社、雑誌等の取材、編集拠点である。共用プレス席、専用ワーキングスペース、フォト・ワーキングルーム、会見室・ブリーフィングルームなどが整備される。
 IBCとMPCには、約2万人のジャーナリストやカメラマン、放送関係者などのメディア関係者が参加する。
 
 東京ビックサイトは、江東区有明地区の東京湾ベイエリアにある国際展示場で、敷地面積24万平方メートル、延べ床面積23万平方メートル、会議棟、西展示棟、東展示棟からなる日本で最大のコンベンションセンターで、毎年さまざな業種の約230の見本市・展示会が開催されている。
 五輪大会開催のために、西展示棟南側に、延床面積約6万5000平方メートルの5層階の「拡張棟」を、約228億円の整備費で建設している。展示ホールや会議施設、事務所などが設けられる。さらに床面積約1万平方メートルの東展示棟の「増設棟」を約100億円で建設した。
 東京ビッグサイトは、当初はフェンシングなど3つの競技場として使用する予定だったが、その後の調整で、IBCのスペースが狭隘なことから、3競技会場を幕張メッセに変更して、IBCは東展示棟に集約して配置することになった。また、MPCの配置については、ICの配置変更に伴って余裕が生まれた会議棟と西展示棟のスペースで配置が可能になり、「拡張棟」は、MPCとしては使用しないことが決まった。
 東京ビックサイトにIBC/MPCに設置すると、最大20カ月に渡って占有されるため、見本市・展示関連企業から約2兆円の売り上げを失うとして反発を受けている。


国際放送センター・メインプレスセンター  提供 TOKYO2020



何処へ行った「世界一コンパクトな大会」
 新規に競技場を建設すると、建設費はもとより、維持管理費、補修修繕費などの後年度負担が確実に生まれる。施設利用料などの収入で賄えるのであれば問題ないが、巨額の赤字が毎年生まれるのでは、“レガシー”(未来への遺産)どころか次世代への“負の遺産”になる懸念が大きい。五輪開催期間は、オリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。新規の施設整備は極力止めるのが基本だろう。
 また忘れてはならないのは、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致計画のキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、ヘリテッジゾーンと東京ベイゾーンの選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置して開催するとしていた。「世界一コンパクトな大会」の公約は消え去ってしまった。

 それにしても東京五輪の「招致ファイル」は一体、なんだったのだろうか?
 舛添要一前都知事は、「とにかく誘致合戦を勝ち抜くため、都合のいい数字を使ったということは否めない」と述べている。結局、杜撰な招致計画のツケを負担させられるのは都民であり国民である。



東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌



月刊ニュメディア「東京オリパラ」連載 加筆
2016年12月7日  初稿
2019月1月12日   改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)

***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
***************************************


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4 コメント

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強制撤去される街がある (どかされる住民の想いは)
2015-10-23 04:00:34
記事内容は確かに 国立競技場建設課題ではあるが その近隣区住民達の課題は東京都が 観客ための避難場所・バリアフリ-にと豪語しているが 前東京オリンピックで住民達の土地を買収。東京都にたいし 建物を建てるように要求。それで今の町が縮小されたが残ったわけ。しかし現代に至っては、その恩すらも忘れている。住民達をないがしろの政策に激怒する。国立問題を取り上げるなら、そのオリンピック開催によって 強制移転させられる住民達のことをもっと取り上げていただきたい。住民達のを土地から追い出すことに対し怒りを覚えます。あの場所は住民達の物。
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オリンピックについて (浅沼 宗)
2015-12-09 22:03:41
東京で開催するから東京オリンピックなんじゃないですか?埼玉とか千葉とか神奈川とか辞めたらいいと思います!もっと国民の意見聞くべきだと思います!復興も進んでないのに!
返信する
経済シュミレーションは出来ているのか (会社員)
2016-11-02 18:22:19
サラリーマンから見て、偉い人達は2020年以降の日本経済、グローバル経済のシュミレーションはできているのか・・・本当に疑問に思う。日本は既に貧乏の仲間入りをしているはず。大手、中小、正社員、非正規社員等々の格差は政策も見えず国民の安心できる生活観は見えにくい。計画維持派の偉い人達は、一般人の実生活、将来への不安の現実を理解しているのか?東京五輪以降の経済、国民の生活不安が続いた場合、偉い人達「経費拡大に異議なし」の人達は苦しむ国民に責任を取ってくれるのだろうか。寄付を惜しまない海外のお金持ちと、日本のお金持ちのポリシーの差も含め、非常に将来に不安を感じる。聞きたい。2020年以降の経済シュミレーションはできて真剣に考えてますか!理解に苦しんでます。
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頑張ってくれているんだろうが… (多摩の住民)
2016-12-09 09:10:32
ホントにこのままだと、
オリンピック開催するメリットって何だろう?
と思ってしまう。
同じ東京でも多摩には何の恩恵もないし、巻き込まれて借金まみれになる不安を感じる。
『未来に残る負債のレガシー』とか洒落にならん。
何とかしよう、と頑張ってはいるんだろうが…。
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