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五輪開催経費 3兆円! 会計検査院 1兆600億円 五輪予算隠し 青天井五輪予算

2020年02月03日 05時35分43秒 | 東京オリンピック


五輪関連支出、1兆600億円 会計検査院指摘 開催経費3兆円超
2019年12月4日、会計検査院は2020年東京五輪・パラリンピックの関連支出が18年度までの6年間に約1兆600億円に上ったとの調査報告書をまとめ、国会に提出した。この中には政府が関連性が低いなどとして、五輪関連予算に計上していない事業も多数含まれている。検査院は、国民の理解を得るためには、「業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して公表に努めるべき」とし、「大会終了後のレガシーの創出に努めること」と指摘した。

 2018年10月、会計検査院は政府の2020東京五輪大会についての「取組状況報告」に記載された286事業を調査して初めて「五輪関連経費」の調査結果を明らかにして、2017年度までの5年間に国は約8011億円を支出したと指摘した。しかし、大会組織委員会が公表したV3予算では国の負担額は約1500億円、その乖離が問題になった。
 今回、会計検査院が指摘した関連支出額は、前回指摘した8011億円から2018年度の1年間で約2580億円増え、約1兆600億円になったとした。
 大会組織員会では、2018年12月、総額1兆3500億円のV3予算を明らかにしている。それによると、大会組織委員会6000億円、東京都6000億円、国1500億円とし、1兆3500億円とは別枠で予備費を最大3000億円とした。
 東京都は、V3予算とは別に「五輪開催関連経費」として約8100億円を支出することを明らかにしているため、約1兆600億円も合わせると、すでに「五輪関連経費」の総額は約3兆円を優に上回ることが明らかになった。

 これに対して、内閣官房の大会推進本部は指摘された約1兆600億円について、大会への関連度を3段階で分類し、Aは「大会に特に資する」(約2669.億円/65事業)、Bは「本来の行政目的のために実施する事業であり、大会や大会を通じた新しい日本の創造にも資するが、大会に直接資する金額を算出することが困難な事業大会に直接資する金額を算出することが困難」(約6835億円/239事業)、Cは「本来の行政目的のために実施する事業であり、大会との関連性が低い」(約1097億円/42事業)と仕分けし、「五輪関連経費」はAの約2669億円だけだと反論し、残りの「B・C分類」は本来の行政目的の事業などとして、五輪関連経費には当たらないとした。
 しかし、Bのカテゴリーは、「大会や大会を通じた新しい日本の創造にも資する」として五輪開催関連支出でもあることを認めながらが、「直接資する金額を算出することが困難」として金額の算定は困難だからすべてを五輪関連支出としないとしているのは、余りにも乱暴な仕分けである。
 国は、せめて五輪関連支出を、AとBのカテゴリーを合計した約9504億円とするのが適切だと筆者は指摘したい。
 「2669億円」のままでは、会計検査院が指摘した1兆600億円との隔たりは余りにも大きく、国民の納得が得られないだろう。

 会計検査院が指摘した1兆600億円の内訳は、約7900億円が「大会の準備や運営経費」として、セキュリティー対策やアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れ、暑さ対策・環境対策、メダル獲得にむけた競技力強化などの経費で占められている。この内、暑さ対策・環境対策が最も多く、2779億円、続いてアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れが2081億円となっている。
 2018年度はサイバーセキュリティー対策やテロ対策、大会運営のセキュリティ対策費の支出が大幅に増え、2017年度の倍の約148億円に上った。
 また今回も公表されていない経費が明らかになった。警察庁が全国から動員する警察官の待機施設費用として約132億円が関連予算として公表していなかったと指摘した。
 さらに会計検査院は大会後のレガシー(遺産)を見据えた「大会を通じた新しい日本の創造」の支出、159事業、約2695億円を「五輪関連経費」とした。
 被災地の復興・地域の活性化、日本の技術力の発信、ICT化や水素エネルギー、観光振興や和食・和の文化発信強化、クールジャパン推進経費などが含まれている。
 こうした支出はいずれも政府は「五輪関連経費」として認めていないが、政府予算の中の位置づけとしては「五輪関連予算」として予算化されているのである。
 問題は、「五輪便乗」予算になっていないかの検証だろう。東日本大震災復興予算の使い方でも「便乗」支出が問題になった。次世代のレガシーになる支出なのか、無駄遣いなのかしっかり見極める必要がある。
 その他に国会に報告する五輪関連施策に記載されていないなどの理由で非公表とされた支出も計207億円あり、五輪関連支出の不明朗な実態の一部が明らかになった。
 検査院はオリパラ事務局を設置している内閣官房に対し、「オリパラ事務局は、国が担う必要がある業務について、各府省等から情報を集約して、業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して公表することについて充実を図っていくこと」と指摘して、各府省から情報を集約、業務内容や経費を把握して公表するよう求めた。
 内閣官房は「指摘は五輪との関連性が低いものまで一律に集計したものと受け止めている。大会に特に資する事業についてはしっかりと整理した上で分類を公表していきたい」としている。






出典 会計検査院




「レガシー経費」は「五輪開催経費」
 国際オリンピック委員会(IOC)は、開催都市に対して、単に競技大会を開催し成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求め、開催都市に対して、レガシー(Legacy)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けている。大会開催は、大会開催運用経費や仮設の施設だけでは不可能である。幅広い「レガシー経費」で支えなければなければならない。
 レガシーを実現する経費、「レガシー経費」は、開催都市に課せられた「五輪開催経費」とするのが当然の帰結だ。
 五輪大会は、一過性のイベントではなく、持続可能なレガシー(Legacy)を残さなければならないことが開催地に義務付けられていることを忘れてはならない。

 政府は「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(Bカテゴリー)は「五輪開催経費」から除外したが、事業内容を見るとほとんどが「レガシー経費」に入ることが明らかだ。
 気象衛星の打ち上げ関連費用も首都高速などの道路整備費も水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費も、ICT化促進や先端ロボット、自動走行技術開発、外国人旅行者の訪日促進事業、日本文化の魅力発信、アスリート強化費、暑さ対策、バリアフリー対策、被災地の復興・地域活性化事業、すべて2020東京大会のレガシーとして次世代に残すための施策で、明らかに「レガシー予算」、「五輪開催予算」だろう。被災地関連予算も当然だ。2020東京五輪大会は「復興五輪」を掲げているのである。

 一方、新国立競技場は「大会の準備、運営に特に資する事業」に分類し、「五輪開催経費」だとしている。しかし、国立競技場は大会開催時は、開会式、閉会式、陸上競技などの会場として使用されるが、その期間はオリンピックで17日間、パラリンピックで13日、合わせて30日間にすぎない。ところが新国立競技場は大会開催後、50年、100年、都心中心部の「スポーツの聖地」にする「レガシー」として整備するのではないか。 
 国の「五輪開催経費」仕分けはまったく整合性に欠け、ご都合主義で分類をしたとしか思えない。五輪大会への関与の濃淡で、恣意的に判断をしている。「レガシー経費」をまったく理解していない姿勢には唖然とする。
 東京都が建設するオリンピックアクアティクスセンターや有明アリーナ、海の森水上競技場なども同様で、「レガシー経費」だろう。しかし、この経費は五輪開催経費に算入されている。

 通常の予算では通りにくい事業を、五輪を「錦の御旗」にして「五輪開催経費」として予算を通し、膨れ上がる開催経費に批判が出ると、その事業は五輪関連ではなく一般の行政経費だとする国の省庁の姿勢には強い不信感を抱く。これでは五輪開催経費「隠し」と言われても反論できないだろう。
 2020東京大会のレガシーにする自信がある事業は、正々堂々と「五輪開催経費」として国民に明らかにすべきだ。その事業が妥当かどうかは国民が判断すれば良い。
 東京都は、「6000億円」のほかに、「大会に関連する経費」として、バリアフリー化や多言語化、ボランティアの育成、「大会の成功を支える経費」として無電柱化などの都市インフラ整備や観光振興などの経費、「8100億円」を支出することをすでに明らかにしている。国の姿勢に比べてはるかに明快である。過剰な無駄遣いなのか、次世代に残るレガシー経費なのか、判断は都民に任せれば良い。

 「3兆円」、かつて都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用の総額だ。今回の会計検査院の指摘で、やっぱり「3兆円」か、というのが筆者の実感だ。いまだに「五輪開催経費」の“青天井体質”に歯止めがかからない。

肥大化批判に窮地に立つIOC
 巨額に膨らんだ「東京五輪開催経費」は、オリンピックの肥大化を懸念する国際オリンピック委員会(IOC)からも再三に渡って削減を求められている。
膨張する五輪開催経費は、国際世論から肥大化批判を浴び、五輪大会の存続を揺るがす危機感が生まれている。
巨大な負担に耐え切れず、五輪大会の開催都市に手を上げる都市が激減しているのである。2022年冬季五輪では最終的に利候補した都市は、北京とアルマトイ(カザフスタン)だけで実質的に競争にならなかった。2024年夏季五輪でも立候補を断念する都市が相次ぎ、結局、パリとロサンゼルスしか残らなかった。
2014年、IOCはアジェンダ2000を策定し、五輪改革の柱に五輪大会のスリム化を掲げた。そして、2020東京五輪大会をアジェンダ2000の下で開催する最初の大会として位置付けた。
 「東京五輪開催経費」問題でも、問われているのは国際オリンピック委員会(IOC)である。「開催経費3兆円超」とされては、IOCは面目丸潰れ、国際世論から批判を浴びるのは必須だろう。
 こうした状況の中で、「五輪開催経費」を極力少なく見せようとするIOCや大会組織委員会の思惑が見え隠れする。
 その結果、「五輪経費隠し」と思われるような予算作成が行われているという深い疑念が湧く。
 V3「1兆3500億円」は、IOCも大会組織委員会も死守しなければならい数字で、会計検査院の国の支出「1兆600億円」の指摘は到底受け入れることはできない。
 「五輪開催経費」とは、一体なになのか真摯に議論する姿勢が、IOCや大会組織委員会、国にまったく見られないのは極めて残念である。

どこへ行った「コンパクト五輪」
 筆者は、五輪を開催するためのインフラ整備も、本当に必要で、大会後のレガシー(遺産)に繋がるなら、正々堂々と「五輪開催経費」として計上して、投資すべきだと考える。
 1964東京五輪大会の際の東海道新幹線や首都高速道路にように次の世代のレガシー(遺産)になる自信があるなら胸を張って巨額な資金を投資して整備をすれば良い。問題は、次世代の負担になる負のレガシー(負の遺産)になる懸念がないかである。また「五輪便乗」支出や過剰支出などの無駄遣いの監視も必須だろう。そのためにも「五輪開催経費」は、大会への関連度合いの濃淡にかかわらず、国民に明らかにしなければならい。
 2020東京五輪大会は招致の段階から、「世界一コンパクトな大会」の理念を掲げていた。大会の開催運準備が進む中で、開催経費はあっという間に、大会組織員会が公表する額だけでも1兆3500億円、関連経費も加えると3兆円を超えることが明らかになった。
 新国立競技場の建設費が3000億円を超えて、白紙撤回に追い込まれるという汚点を残したことは記憶に新しい。「錦の御旗」、東京五輪大会を掲げたプロジェクトの予算管理は往々にして甘くなる懸念が大きく、それだけに経費の透明性が求められる。
 2020年度の予算編成が本格化するが、まだまだ明るみに出ていない「五輪開催経費」が次々に浮上するに違いない。全国の警察官などを動員する史上最高規模の警備費やサイバーセキュリティー経費などは千億円台になると思われる。さらに30億円から最大100億円に膨れ上がるとされている暑さ対策費や交通対策費も加わる。一方、7道県、14の都外競技場の仮設費500億円は計上されているが350億円の警備費や輸送費(五輪宝くじ収益充当)、地方自治体が負担する経費は計上されていない。マラソン札幌開催経費もこれからだ。最早、「3兆円」どころか最大「4兆円」も視野に入っている。
 「コンパクト五輪」の理念は一体どこへ行ったのか。


竣工したした国立競技場  筆者撮影



東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011億円支出 会計検査院指摘

 2018年10月4日、会計検査院は2020東京オリンピック・パラリンピックの開催経費ついて、平成25年度から29年度までの5年間に国が支出した開催経費が約8011億円に上ったと指摘した。
 これまで大会組織委員会が明らかにしていた開催経費は、総額約1兆3500億円で、このうち大会組織員会は約6000億円を、東京都が約6000億円、国が新国立競技場の建設費の一部、1200億円やパラリンピック経費の一部、300億円の合わせて約1500億円を負担するとしていた。
 これに対し会計検査院は、各省庁の関連施策費を集計した結果、国は1500億円を含めて平成25~29年度に8011億9000万円を支出していると指摘した。
 今回の指摘で、組織委が公表した国の負担分1500億円から除外した競技場周辺の道路輸送インフラの整備(国土交通省)やセキュリティー対策(警察庁)、熱中症に関する普及啓発(環境省)などの約280事業に対し、約6500億円が使われていたことが明らかにした。
 五輪開催費用については、今年1月、東京都は組織委公表分の都の予算約6000億円とは別に約8100億円を関連予算として支出する計画を明らかにしている。検査院によると、組織委が公表した予算、1兆3500億円には「大会に直接必要なもの」に限られ、国の省庁や都庁が、五輪開催経費とせず、一般の行政経費として組んだ予算は含まれていないという。
 組織員会、東京都、国の五輪関連経費を改めて合計すると、約2兆8100億円となり、今後に支出が予定される経費も含めると、「3兆円」超は必至である。




出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院

東京2020競技会場マップ 最新画像付き




五輪大会開催経費 「1725億円」 国、会計検査院に反論

 11月30日、桜田義孝五輪担当相は、2020東京五輪大会に、国が2013~2017年の5年間に支出した経費は53事業で「1725億円」とする調査結果を公表した。会計検査院の「8011億円」という指摘に対し、内閣官房が精査した。
 桜田氏は、五輪関係の経費とそれ以外の経費の線引きを明確に示したと説明し、「透明性を確保し、国民の理解を得るために今後も支出段階で集計、公表していく」と述べた。
 2020東京五輪大会に開催経費については、2017年12月22日、大会会組織委員会は、総額「1兆3500億円で、東京都が「6000億円」、大会組織委員会が「6000億円」、国が「1500億円」を負担するとした。
 これに対し、11月4日、会計検査院は「1500億円」を大幅に上回る「8011億円」が、すでにこの5年間で支出されたとの指摘を国会に報告し、政府に経費の全体像を分かりやすく示すよう求めた。

 東京都は、すでに「8000億円」の他に、五輪関連経費として「8100億円」を投入することを明らかにしていて、会計検査院の指摘の「8011億円」や、今後支出する経費も加えて試算すると、「3兆円」に膨れあがることが明らかになった。
 
 内閣官房では、大会に関連すると指摘された計8011億円の286事業について、(1)選手への支援など「大会の準備、運営に特に資する事業」(1725億円)(2)気象衛星の打ち上げなど「本来の行政目的のために実施する事業」(826億円)(3)道路整備など「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(5461億円)の三つに分類し、五輪大会開催のための国の支出は(1)の「1725億円」だとした。

 (1)には、新国立競技場の整備費の国の負担分(744億円)やパラリンピックの準備費(300億円)が、(2)は気象衛星の打ち上げ関連費用(371億円)など29事業、826億円が含まれている。
 (3)は首都高速などの道路整備費(1390億円)、水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費(569億円)など208事業で合わせて5461億円と大半を占めている。
 このほか、会計検査院が指摘した8011億円に含まれていないが、大会に直接関連する事業として国立代々木競技場など5施設の整備や改修のための国庫補助金を直近5年間で約34億円支出したと明らかにした。
 しかし、五輪大会開催経費を「1725億円」する国の主張は、明らかに「五輪経費隠し」、膨れ上がった五輪開催経費をなるべく低く見せかけて、世論の批判をかわそうとする姿勢が見え隠れする。

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「青天井体質」は止まらない!
 やはり懸念していた通り、一気に「1兆3500億円」の倍以上に膨らむことが明らかになった。五輪開催経費は、国民の批判を避けるために、本来は経費に含めるのが妥当な支出も、一般の行政経費に潜らせる国や都の姿勢を筆者は疑問視していた。五輪開催経費を不透明化しブラックボックスにして、「青天井体質」を許すのは絶対に避けなければならない。
 「3兆円」の経費の中には、五輪との関連性が薄い施策があり、開催経費とするよ、一般の行政投資とするのが適切だと指摘する声がある。しかし、五輪開催との関連性の「濃淡」の問題で、その施策がもっぱら五輪開催ためだけではなくて、大会後の日本にとって有益な施策であったにしても、大会開催時に利用される項目であれば五輪開催経費に組み入れるべきだと考える。これが五輪開催の“レガシー”で、“レガシー”創出経費も含めるべきだ。新国立競技場も、五輪開催だけのものではない。その後、50年、100年使用する“レガシー”そのものだろう。同様に暑さ対策に役立つとしている「気象衛星の予測精度向上の費用」(約371億円)や環境に配慮した五輪実現のためとする「電気自動車などの購入補助金」(約568億円)、「無電柱化の促進」、「天然痘ワクチン対策事業」、「エネファーム実用化推進技術開発」など、すべて五輪開催を契機として実現させる2020東京大会の“レガシー”である。なぜ新国立競技場は五輪開催経費に組み入れて、その他は除外するのかまったく理解に苦しむ。 真に次世代の“レガシー”にする施策であれば、各省庁は胸を張って堂々と支出の必要性を主張して、国民の納得を得れば良い。「隠し立て」する必要はまったくない。要は説明性の問題だ。
 一方で、五輪の便乗支出も大量に生まれていると思われる。五輪開催を「錦の御旗」にして、なりふり構わず予算獲得に奔走した省庁の姿が見え隠れする。東日本大震災の復興予算の際も、その予算項目が本当に被災地の復興に役立つのか、疑問視される項目が続出したのは記憶に新しい。
 
「五輪便乗」? すべての施策を精査する必要
 会計検査院では、「大会の円滑な準備・運営に資する」関連施策(8分野45施策)と「大会を通じた日本の創造」資する関連施策(7分野45施策)に分けて各省別にリストアップしている。
 「大会の円滑な準備・運営」に資する関連施策では、セキュリティーの万全と安全・安心の確保(10施策)、アスリート、顧客等の円滑な輸送及び外国人受け入れ対策(13)、暑さ対策、環境問題への配慮(3)、メダル獲得に向けた競技力の強化(4)、アンチ・ドーピング対策の体制整備(4)、新国立競技場の整備(1)、教育・国際貢献等によるオリンピックムーブメントの普及、ボランティア等の機運醸成(4)、その他(9)の合計148事業、5879億1300万円(平成25年~29年)とした。
 項目を見る限り、「濃淡」に差はあると思えるが、すべてが東京五輪開催経費そするのが当然だろう。この経費は、組織委員会は、「直接経費ではない」として、除外している。また、個別の施策は詳細に精査し、「五輪便乗」の不要な施策かどうかもチェックしなければならないだろう。 




出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院


 一方、「大会を通じた新しい日本の創造」に資する関連施策では、「被災地の復興・地域の活性化」(4施策)、「日本の技術力の発信」(7)、「外国人旅行者の訪日促進」(2)、「日本文化の魅力発信」(4)、「スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現」(1)、「ユニバーサルデザイン・心のバリアフリー」(5)の136事業、2330億180万円としている。
 「大会の円滑な準備・運営」の施策とは明らかに有意差があって、ほとんどが五輪開催をきっかけに事業がする必要があるかどうかの疑念がある。「日本の技術力の発信」、「外国人旅行者の訪日促進」、「日本文化の魅力発信」は、今の日本の成長戦略の骨格で、毎年、各省庁は最優先で取り組みを進め、しっかり予算化している。五輪開催に合わせてさらに何を事業化しようとしてるのだろうか。「スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現」や「ユニバーサルデザイン・心のバリアフリー」も継続して取り組んでいる課題だろう。「五輪便乗」の「無駄遣い」になっていないだろうか。その成果は大会開催後、しっかり精査すべきだ。










会計検査院の検査結果に対する所見は?
▼ 大会組織員会
 国が担う必要がある業務について国民に周知し、理解を求めるために、大会組織委員会が公表している大会経費の試算内容において国が負担することとされている業務や、オリパラ事務局がオリパラ関係予算として取りまとめて公表している業務はもとより、その他の行政経費によるものを含めて、大会との関連性に係る区分及びその基準を整理した上で大会の準備、運営等に特に資すると認められる業務については、各府省等から情報を集約して、業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して、対外的に示すことを検討すること

▼ JSC
 JSCは、新国立競技場の整備等の業務に係る確実な財源の確保等のために、財源スキームに基づく東京都の負担見込額395億円について東京都と協議を進めて、速やかに特定業務勘定への入金時期等を明確にするなどしていくこと
 (JSCの財政状況については、会計検査院は懸念を示している)

▼ 新国立競技場 
 早期に新国立競技場の大会終了後の活用に係る国及びJSCの財政負担を明らかにするために、JSCは、大会終了後の改修について文部科学省、関係機関等と協議を行うなどして速やかにその内容を検討して、的確な民間意向調査、財務シミュレーション等を行うこと、また、文部科学省は、その内容に基づき民間事業化に向けた事業スキームの検討を基本的考え方に沿って遅滞なく進めること
 (新国立競技場の大会開催後の維持管理には課題が多いと指摘している)

▼ 地方自治体
 大会の関連施策を実施する各府省等は、大会組織委員会、東京都等と緊密に連携するなどして、その実施内容が大会の円滑な準備及び運営並びに大会終了後のレガシーの創出に資するよう努めること。また、オリパラ事務局は、引き続き大会の関連施策の実施状況について政府の取組状況報告等の取りまとめにより把握するとともに、各府省等と情報共有を図るなどしてオリパラ基本方針の実施を推進すること

 会計検査院としては、大会が大規模かつ国家的に特に重要なスポーツの競技会であることなどに鑑み、要請後、大会の準備段階のできるだけ早期に、大会の開催に向けた取組等の状況及び各府省等が実施する大会の関連施策等の状況について分析して報告することとした。そして、今後、大会の開催に向けた準備が加速化し、32年には大会の開催を迎えることになることから、引き続き大会の開催に向けた取組等の状況及び各府省等が実施する大会の関連施策等の状況について検査を実施して、その結果については、取りまとめが出来次第報告することとする。


 会計検査院の指摘に関して大会関係者は、「関連するにしてすべて五輪経費として積み上げるのはおかしい」とか「数字が一人歩きしているだけで、これで無駄遣いしていると思われたらミスリードになる」など、反発する声が上がっているとされている。
 しかし、五輪開催経費は、五輪開催との関連性の「濃淡」に関わらず、組織委や東京都や国はすべてを明らかにすべきだ。そして国民に対しその施策の必要性を説明する責任を負うだろう。その上で、その支出項目が無駄遣いなのか、妥当なのかどうかは国民が判断していくべきだ。全体像の実態が見えなければ経費膨張のコントロールも不可能で、五輪開催経費の「青天井体質」は止められない。



“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
 

2018年10月23日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail
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