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平昌五輪 4K NBC HDR NHK 8K OBS

2022年01月19日 12時51分16秒 | 4K8K
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC



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 NBCユニバーサルは、平昌冬季五輪の開会式や、アイスホッケー、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)の4K HDRコンテンツを、一日遅れでケーブルテレビや衛星放送、インターネットでサービスする。
 2月10日から2月26日まで、毎日、一日最大4つのイベントが全米の視聴者に届けられる。



 NBCユニバーサルが、五輪競技映像をUHD(4K HDR)で全米で配信するのは五輪史上、初めてで、臨場感あふれた繊細画質、UHD(4K HDR)映像サービスを、ケーブルテレビや衛星放送を通して視聴者に届けられる。
 リオデジャネイロ五輪では、ホストブロードキャスターのOBSは五輪競技中継4K映像をライツホルダーに初めて配信したが、NBCユニバーサルは4K映像・音声信号は技術的な検証・テストを行うとして、一般の視聴者サービスまでは実施しなかった。 
 NBCユニバーサルの五輪映像は、従来通りHD画質で配信し、地上波放送局やケーブルテレビ、衛星放送、インターネットでサービスされた。
平昌冬季五輪では、NBCユニバーサルは、OBSが配信した4K HDの競技映像を、使用し、で一括して4K HD五輪特別番組を制作した。
4K HD五輪コンテンツは、ケーブルテレビ・サービスを行っているComcast、AT&Tの一部門全米第一で2100万件の契約者がいるDirecTV、全米第二位で約1300万件の契約者を抱えるDish Networkに提供され、競技開催から“1日遅れ”で放送された。HDで放送されるチャンネル・サービスに影響を与えないように配慮したと思われる。
 視聴者が4K HDRコンテンツを楽しむためには、ケーブルテレビや衛星放送プロバイダーと契約し、各社専用の4K HDRセットボックスを設置して、4K HDR対応のテレビ受像機を購入しなければならない。
 スポーツ中継はライブが基本、1日遅れでサービスする4K HDRは、臨場感あふれた高品質の映像が売り物にしても、魅力的なコンテンツにはならないだろう。競技の結果を知ってからから見るスポーツ中継は、醍醐味がない。全米で平昌冬季五輪を4K HDRで視聴した人は極めて限定的だと思える。

脚踏み状態が続く米国内の4Kサービス
 ケーブルテレビのComvastや、米国では地上波には4K放送の計画なし、コムキャストや衛星放送のDirecTV 、Dish Networkは4Kサービスに積極的だが、テレビ放送サービスのABC、CBS、NBSの三大ネットワークは、4Kサービスに乗り出す計画を明らかにしていない。これに対し、OTTサービスのNetflixやAmazonTVやYutubeなどインターネットを利用するコンテンツ・プロバーダーは4Kサービスに積極的で4Kサービスを開始している。
米国では、SD画質の映像からHD画質への移行が、日本に比べてゆっくりしたスピードで進み、放送機関はHD化の設備投資がようやく終わり、各家庭にもHDテレビ浸透した段階だとされている。
 その一方で、NetflixやAmazonTVなどのOTTサービスに押されて、“放送離れ”が深刻になり、各放送機関の視聴率と広告売り上げが減少していくという危機感が生れている。こうした状況の中で、各放送機関は、もう一度、4Kサービスに乗り出すために、カメラを買い替えたり、放送設備の更新したりする4K投資をしても、広告や配信料などの収入は増える見込みはほとんどないとしている。
 “HD化”の際も、各放送機関はHD化投資の重荷を背負い経営難に苦しんだことを忘れていはいない。
各放送機関のスタンスは、4Kが十分に視聴者に普及するまでは4K放送を始める計画はないし、直ぐに4Kが普及するとは考えらず、現時点では4Kへの投資の負担は見合わないとしている。4Kコンテンツの配信をする帯域が十分あるCATVや衛星テレビが先行して4Kサービスを開始して、十分4K 視聴者を増やすことに成功してからでも遅くはない。その時にK4サービスに見合う配信料(ケーブルテレビや衛星放送)の値上げをしてくれたら、4K投資は採算に合うとする姿勢なのである。
 米国では、2010年に華々しく登場した3Dテレビが、地上波テレビ放送局も巻き込んで次世代のテレビとして旋風を巻き起こしたが、結局、わずか2年足らずで放送中止に追い込まれ、大量の3Dテレビが家庭に残されたという“失態”演じられた。
4Kテレビの普及にもこの“失態”が後遺症として残っている懸念も指摘されている。


DIRECTV 4K ULTRA HDのHP
エンタテインメント、ドキュメンタリー、旅番組を始め、4Kスポーツ中継では、NCAA Basketball,Ntional Hockey Assosiation,Premier League Soccer(イギリス)などをサービスする


平昌冬季五輪 IBC(国際放送センター)    出典 SVG


平昌冬季五輪 IBC(国際放送センター)CDR   出典 SVG

初めてUHD(4K)の映像制作に乗り出したOBS
 平昌冬季五輪で、OBSは初めて、4K中継車を配置して、アイスホッケー、カーリングフリースタイル(モーグル)、スノーボード(ハーフパイプ)の4つの競技と閉会式の4K SDRのライブ中継を実施する。
 これに対し、NHKは8K HDR中継車2台、22.2サラウンド音声中継車2台を、平昌の五輪会場に送り込み、開会式、フィギアスケート、ショートトラック、スキージャンプ、スノーボード(ビックエア)を、それぞれ10台の8K中継カメラを配置して、合計90時間の8K HDR、22.2サラウンド音声のライブ中継を実施する。
 NHKが中継した8K HDR映像・音声は、OBSがIBCで4K HDRにダウンコンバートして、ホスト映像として配信された。
 また、8K HDR映像は、4K SDRに変換して、OBSが制作した4K SDR映像・音声信号と共に、ライツホルダーにホスト映像として配信された。
 8K HDRは、現在の技術水準で実現できる世界最高のクォーリティを誇り、その臨場感あふれる繊細な映像は4Kをはるかに凌ぐ圧倒的な迫力がある。
 NHKはIBCの中に350インチの8K HDR大スクリーンを設置した“8K Theater”を設け、世界のメディアに8K HDR映像の素晴らしさをアピールしている。
 IBCで配信された8K HDR映像を、NHKはこれを日本に伝送し、昨年開始した8K試験放送(衛星放送)で、OBSが制作した4K競技映像(4K SDR)と共に放送した。
 また、全国のNHKの放送局や全国5か所の会場でパブリック・ビューイングを開催して、8K HDR映像の迫力を視聴者に実感してもらった。
 ただし、家庭用の8K専用の衛星チューナーや受像機はまだ市販されていないため一般の家庭では視聴できない。
 NHK以外のライツホルダーで、8K HDRを視聴者サービスに利用した放送機関はなかったが、いくつかの放送機関は調査・研究目的で8Kコンテンツの配信を受けて、2020年の東京五輪では、8Kシネマやパブリック・ビューイング・サービスの検討を始めていると伝えられている。
 アメリカのNBCユニバーサルは、ホスト映像として配信された開会式や、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)の4K HDR競技映像を使用して、4K HDRの五輪中継番組を制作し、ケーブルテレビや衛星放送局に配信した。米国内で人気の競技、アイスホッケーについては、OBSが制作した4K SDRコンテンツを、NBCが独自に4K HDRに変換して配信に、視聴者に送り届けたのである。
 勿論、NBCユニバーサルにとっては、ソチ五輪を上回る冬季五輪では最大の2600時間に及ぶHDの五輪映像が主力で、4K HDRサービスは極めて限定的なものに留まっている。
 一方、BBCは、iPlayeでは、すでに自然番組など4Kサービスを開始しているが、平昌冬季五輪の4Kサービスの実施は見送った。ワールドカップ・モスクワ大会でのBBCの対応が注目される。

 結局、OBSは、8K HDR; 4K HDR; 4K SDR; HD1080iの4種類のホスト映像をライツホルダーに配信した。OBSは独自で、小型の4K中継車も使用して、4K SDR中継コンテンツも制作したのである。

 OBS技術責任者のサラムーリス氏は、「世界の放送機関を見ると、日本や韓国などアジアでは4K HDRにシフトしているが、他の地域では視聴者のテレビは、まだSDRが主流である。こうした地域の視聴者は4K SDRが魅力的だろう。しかし、こうした地域でも4K HDRは次世代のメディアとして重要だろう。そこで、すべてのニーズを満たすために、我々はライツホルダーと真剣な議論を行うことが必要だと考えている」と語っている。

8K/4Kの中継コンテンツ制作
 NHKは開会式、フィギアスケート、ショートトラック、スキージャンプ、スノーボード・ビックエアの5競技で8K中継を実施し(HSSM[High Speed Slow Motion]映像は4Kのアップコンバート)、8K HDRコンテンツで制作した。
 フィギアスケートとショートトラックでは、メインの中継カメラとして池上通信機製のSHK-810 8Kカメラが使用された。
HSSM(High Speed Slow Motion)再生用の中継カメラとしてはSONY 製の2台の4K・8倍速スローモーション映像撮影用カメラ、HDC-4800が使用された。このHSSM映像 は、8Kにアップコンバートされ、SHK-810 8Kカメラの8K映像とミックスされた。8KのHSSM中継カメラも初登場し、NHK技術研究所が開発した8K 120-fps camera のNHK STRL中継カメラ、1台が設置された。
 スキージャンプでは、池上通信機製のSHK-810 8K camerasとHSSM(High Speed Slow Motion)再生用としてSONY 製の4Kカメラ、HDC-4800 カメラが使用された。
 今回のオペレーションに課せられた重要な課題は、8K HDRコンテンツを制作しても、それを放送利用するのはNHKだけで、他の放送機関で、放送コンテンツをしてサービスするところなない。OBSとしては、8K HDRを4K HDRや4K SDRにダウンコンバートして、最終的には4K SDRとして世界各国の視聴者に配信できるように、互換性を持たせた信号フォーマットでオペレーションを行うことが必要だった。 そこで今回のオペレーションでは、NHKとBBCが共同開発したHLG(ハイブリッドログガンマ)HDR規格が採用された。
 NHKはUHD衛星試験放送で、8K HDRと4K SDR(OBS制作の中継コンテンツ)を放送し、NBCユニバーサルは、全米のケーブルテレビや衛星放送に4K HDRを配信した。
 
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、あと2年、HDに代わって4Kが主役の座に就くのか、4K HDRと4K SDRはどちらが主流になるのか、8Kは世界にどれだけ浸透するのか、まだまだ不透明だ。


NHK 8K中継車


NHK 8K中継カメラ 出典 SVG

4K HDRサービスを開始したXfinity
 ComcastグループのXfinityは、ケーブルテレビで平昌冬季五輪の4K HDRサービスに乗り出した。
Xfinityは、全米で最大のメディア企業、Comcast社の子会社、ケーブルTV、インターネット、電話のいわゆる“Triple Play”を推進する情報・通信の中核企業である。
 NBCユニバールはComcast社に買収され、2013年3月には、Comcast社の子会社となっている。XfinityはNBCと並んで、Comcast社グループの情報・通信戦略を担っている。
 NBCオリンピックの社長のGary Zenkel氏は、「五輪は常に最先端の放送技術の幕開けを創る。平昌五輪の開会式や競技の4K HDRサービスは、米国内で、高品質のスポーツ番組の実現を示す偉大なショーケースとなるだろう」と語った。
また、Xfinityの副社長のMatthew Strauss氏は、「Xfinityサービスは、スポーツとエンタテインメントで、視聴者が高画質・高音質の映像を体験できる最も強力なツールだ。オリンピックは、息を飲むような圧倒的な感動が得られるスポーツ・イベントである。Xfinityが、NBCユニバーサルと提携して、オリンピック競技を4K HDRを全米で初めて視聴者にサービスすることができることになり光栄だ」と話した。



平昌冬季五輪で、NBCが行う4K HDRサービスは、開会式や、ホッケー、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)などで、2月10日から2月26日まで、競技開催から一日遅れで、毎日最大4つのイベントが視聴者に提供される。
4K HDRの映像は、Xfinityから提供される4K UHDセットボックス X1を設置し、市販の4K HDR対応のテレビ受像機で視聴する。
視聴者は、高画質のHigh-Dynamic Range (HDR) と高音質の Dolby Atmos の三次元音声で、臨場感があふれたコンテンツを楽しむことが可能だ。
XfinityのX1は、双方向・多機能のエンターテインメント・セットボックスで、ライブの放送からXfinityオンディマンド・サービス、さらにNetflixや音楽アプリを一つのセットボックスで利用できる。


Xfinityの4K UHDセットボックス X1(XG1v4 TV Box) 
出典 Xfinity

4K HDR
 4K HDRは、現在のHD(1,920 x 1,080 pixels)の4倍の800万ピクセル(3,840 x 2,160 pixels)の高画質で、さらにWide Color Gamut (WCG)という画像表現技術を利用して、画面で表現可能な色(色域)やコントラスト(輝度)の領域を、これまでより飛躍的に拡張して、より臨場感あふれたクリヤーな映像を視聴者に提供可能にした。
HDRとは“High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)”の頭文字を取ったものである。これまでは、HD(1920×1080)や4K(3,840 x 2,160)といった「解像度」や自然界の色再現を目指した「色域」は性能が飛躍的に向上させたが、HDRは、“明るさ情報”、「輝度」の性能を改善し、表現できるダイナミックレンジを拡張して、高画質化を実現したものである。
ハイダイナミックレンジにより、輝く光の色彩から髪の毛の色まで、明るい部分や暗い部分の映像の明暗や色表現がクリヤーに再現できる。
4K HDRが次の時代の映像フォーマットの主流になるのはかどうかが焦点だ。


出典 情報通信審議会資料







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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月15日
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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サステナブルサイエンス (ラマン分光ファン)
2020-12-07 01:05:01
ダイセルの久保田邦親博士(工学)がついに境界潤滑メカニズムを解明、CCSCモデルと命名。今後の機械工学における科学技術的発展が大いに見込まれる。
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