出典 ラグビーワールドカップ2019組織委員会
出典 Rugby World Cup 2019
南アフリカ優勝 三大会ぶり三度目 32-12でイングランドに完勝
南アフリカがイングランドを32ー12で下し、ニュージーランドに並ぶ大会最多タイとなる3度目の優勝を飾った。
南アフリカ(Springbaks)は1次リーグ、プール戦の初戦でニュージーランドに敗戦、黒星スタートだったが、決勝まで勝ち上がった。
決勝戦は、開始21分で両軍のFW3人が負傷退場する激しい当たり合いが続き、ともにキックを多用するが攻めの口火をつかめないまま展開した。
しかし南アはスクラムで優勢に立ち、イングランドのPKを誘い、SOのハンドレ・ポラードが10、26、39、43分、後半6分と先へ先へと5PGを立て続けに決めて15-6とリードした。
これに対してイングランドもPGを決めて、18-12に追い上げ、一進一退の息詰まるPG戦が続いた。
しかし、南アフリカは26分に、WTBのマカゾレ・マピンピが左タッチ際を突進してゴール前にパントして、競り勝ち待望のトライをものにした。
さらにCTBのルカニョ・アムから再びマピンピがもらって、自身今大会5本目となるトライを左中間に押さえた。これが勝利を決定づけるトライとなり、気落ちしたイングランドを押しまくり、残り6分にもWTBのチェスリン・コルビのトライでダメ押しをした。
南アフリカ初の黒人主将のシヤ・コリシは、「僕たちの国にはいろいろな問題があるいろいろなバックグラウンドや民族から選手が集まり、一つの目標に向かって一丸となった」と語り、「監督が『われわれは自分たちのために戦っているのではない。母国の人々のために戦っているんだ』と言っていた。今日はその通りの戦いがしたかった」と勝利をかみしめた。
名将エディー・ジョーンズ率いるイングランドは、初めて1次リーグ敗退の屈辱をなめた前回大会から立ち直り、オーストラリア、ニュージーランドの南半球勢などを連破して4度目の決勝に進んだが、南アフリカに予想外にスクラムやモールで圧倒されて地力を発揮できなかった。
CTBのオーウェン・ファレルの4PGで先行する南アに必死に食らいつきが、唯一のトライチャンスだった前半30分過ぎも南アフリカの堅いディフェンスに阻まれ、一度もリードすることなく最後は力尽きて2度目の制覇は果たせなかった。
南アフリカ初の黒人主将となって今回の大会に臨んだんシア・コリシは、南アフリカ南部の旧黒人居住区で生まれた。貧しい家庭で祖母に育てられ、満足に食べるものもない日々をおくっていたという。父親の影響で8歳からラグビーを始め、12歳の時にラグビーの名門校に奨学金付きでスカウトされ、旧居住区外の学校へ入学した。プロ選手を夢見て必死に英語も学び、20歳で念願のスーパーラグビー、ストーマーズに入団した。
そして、今日、表彰式で高々とウェブ・エリス・カップを掲げた。人種差別や貧困を乗り越えてラグビーW杯で栄冠を手にしたシア・コリシはまさに南アフリカの光輝く星である。
南アフリカ イングランドに完勝 World Rugby via Getty Images
表彰式でメダル拒否 首から外す選手 イングランドに批判殺到
イングランドは、事前の予想では優勢という声が強かったが、想定外の完敗。そのショックと悔しさからか、表彰式で銀メダルを首にかけられることを拒否したり、授与された直後に銀メダルを首から外したりする選手が相次ぎ、スポーツマン精神に反する態度だとして批判を浴びている。
表彰式のメダル授与で、FWマロ・イトジェは、首に銀メダルをかけられることを拒否、カイル・シンクラーは銀メダルを受け取った後、即座に首から外し、キャプテンのオーウェン・ファレルは、南アフリカが優勝トロフィーを掲げる前にメダルを首から外した。
さらに最後に銀メダルを首からかけられたエディ・ジョーンズ・ヘッドコーチも、表彰台から降りる際にメダルを外した。
英国内でも批判が相次ぎ、デイリーメール紙は「大会の最後にメダルを即座に外すという汚名を残した」とし、ザ・サン紙は「イングランドの代表は負けを認められない敗者」と伝えた。
日本バスケットボール協会の川淵三郎エグゼクティブアドバイザーもツイッターで「GOOD LOSER(潔い敗者)の取るべき態度ではない」と批判した。
ラグビー発祥の地のイングランド代表は身をもってラグビー精神を世界に示さなければならいだろう。南アフリカの優勝を祝福できない今回の振る舞いはイングランドのラグビーの歴史に大きな汚点を残した。
ウェブ・エリス・カップ 出典 Rugby World Cup 2019
三位決定戦 ニュージーランドvsウェールズ戦 ニュージランドが47-10で完勝
11月1日、東京スタジアムで行われた三位決定戦で、ュージーランドが、ウェールズを40-17で下して1991、2003年大会に次ぐ3位を確保した。ウェールズには1963年以降、3度のワールドカップ(W杯)での対戦を含めて31連勝となった。
ニュージーランドは開始5分にFW勢の突進からFWのジョー・ムーディーがポスト右に先制トライ。13分にもラック脇に走り込んだFBのボーデン・バレットが20メートルを突破してポスト右に押さえて14-0とした。
ウェールズに1トライ、1PGを返されたが、素早いパスワークで上回って攻め込み続け、33、41分と相手のミスや油断に乗じてWTBベン・スミスが連続トライを挙げ、前半を28ー10とリード。
後半2分にも相手ラインアウトのボールを奪って、CTBのライアン・クロッティがトライ。35-10と差を広げた。ウェールズの懸命の反撃で1トライを返されたが最後は残り4分にSOのリッチー・モウンガが甘くなったウェールズの守りを突破して左隅にダメ押しトライを挙げた。
ウェールズは相手ゴール前に攻め込み続けた前半19分、FBのハラム・エーモスがトライ。27分のPGで10ー14と食い下がった。
後半も15分過ぎから相手ゴール前に居座って攻め、19分にWTBのジョシュ・アダムズが今大会の最多を更新する7本目となるトライをマーク。17ー35と差を縮めたのが精いっぱい。1953年以来の打倒ニュージーランドを期したが、66年ぶりの勝利はならなかった。
この試合を最後に引退する名将、スティーブ・ハンセン・ヘッドコーチは「素晴らしいプレーだった」としたが、決勝進出を逃したことについて、「たった1度、良くない試合(イングランドとの準決勝)があり、そのせいで脱落した。しかしそれがトーナメント戦だ。このチームの選手たちを誇りに思う」と大会を振り返った。ハンセン・ヘッドコーチは7年間に渡ってオールブラックスを引いてラグビーW杯二連覇を果たした。
この三位決定戦を最後にメンバーの新旧交代が大幅に進む。
司令塔No8のキーラン・リード、CTBライアン・クロティ、FLマット・トッドなどは日本のトップリーグに参加、世界最高のFBの一人とされるベン・スミスはフランスのトップ14リーグのポー(Pau:Section Paloise)に移籍する。CTBソニービル・ウィリアムズもオールブラックスから退く。
準決勝 南アフリカが19-16でウェールズに勝利 イングランドが王者NZに19-7で完勝
強豪国の主力選手 相次いで来日し日本でプレー
ラグビーワールドカップ2019日本大会が閉幕し、大会で活躍した強豪国の主力選手が続々と来日し、世界のトッププレーヤーの醍醐味ある試合が楽しめる。トップリーグなどで、W杯で活躍した選手が世界一流のプレーが日本で観戦できる。
今回の大会で優勝した南アフリカからは、NO8ドウェイン・フェルミューレン(クボタピアーズ)、FBウィリー・ルルー(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、FLクアッガ・スミス(ヤマハ発動機ジュビロ)、FOマルコム・マークス(NTTコミュニケーションズシャイングアークス)、CTBダミアン・デアレンテ(パナソニックワイルドナイツ)が参戦する。
ニュージランドからは、オールブラックスの主将を務めたNO8キアラン・リード(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、LOサム・ホワイトロック(パナソニックワイルドナイツ)、CTBライアン・クロッティ(クボタピアーズ)、LOマット・トッド(東芝ブレイブルーパス)、ブロンディ・レタリック(神戸製鋼コベルコスティラーズ)の来日が決定。
リードとクロッティは2019年W杯を最後にNZ代表から引退しての参加となる。
一方、ホワイトロックは2019年W杯後もNZ代表の選手としてテストマッチに出場しながら来日する。
オーストラリアからは、SO/CTBクリスチャン・リアリーファノ(NTTコミュニケーションズシャイングアークス)、CTBサム・ケレビ(サントリーサンゴリアス)、FLデービット・ボーコック(パナソニックワイルドナイツ)、SOバーナード・フォーリー(クボタピアーズ)がトップリーグに参加する。
サモアからは、主将のNO8ジャック・ラム(NECグリーンロケッツ)が入団。
トップチャレンジーリーグでは、近鉄ライナーズにオーストラリアからSHウィル・ゲニア、SOクウェイド・クーパーが参戦する。
ゲニアとクーパーは、共に31才で長い間オーストラリア代表「ワラビーズ」のSH-SOのコンビとしてチームを引っ張ってきた選手だ。
ゲニアは豪代表100キャップの大ベテラン選手、クーパーは70キャップで、今大会の代表入りは逃したが現在も華麗なステップや確度の高いキックは健在だ。
豊田自動織機シャトルズには、サモアのSHトゥシ・ピシが参加する。
ラグビーW杯を契機に巻き起こったラグビー熱で、トップリーグの人気はかつてない高まりを見せている。来年1月12日に秩父宮ラグビー場で開催される開幕戦の東芝ブレイーブルーパスVSサントリーサンゴリアス戦のチケットは早くも完売、その他の試合のチケットの売れ行きも好調という。
日本、3-26で南アフリカに敗退 後半突き離される 「ブライトンの奇跡」再現ならず
10月20日、東京スタジアムで開催された準々決勝、日本vs南アフリカ戦で、3度目の優勝を狙う南アフリカが、初めて準々決勝に勝ち上がった日本をパワーで圧倒、26-3で勝利しベスト4進出を決めた
開始直後4分、スクラムのブラインドを突いて南アフリカの快速WTB、マカゾレ・マピンピがトライを決めて5-0とした。日本はここからは、南アフリカに押されながらも堅守を見せて、得意の素早いパス回しで反撃して南アフリカのファールを誘い、20分、SO田村優のPGで3点を返した。その後、前半、南アフリカの猛攻を防ぎ、2点差をキープして前半を終了し、接戦に持ち込んだ。前半の日本のボールの支配率は68%で南アフリカを上回り、大健闘したが、あと一歩が届かず、ノートライに終わった。
ハーフライムに日本代表の様子を見たジョセフ・ヘッドコーチは、南アフリカの猛攻に押しまくられて、疲れ果てて消沈している姿を見たという。
日本代表は、プール戦の最終戦、スコットランド戦の死闘から中6日、疲労の回復は十分ではない。これに対して南アフリカは、最終戦の8日のカナダ戦は13人を入れ替え、決勝トーナメントに備える余裕を見せた。主力選手は、4日のイタリア戦から中15日、日本戦までの体力回復は十分だった。
後半は地力とスタミナに勝る南アがその圧倒的な攻撃力とフィジカルの強さを見せつけた。モールやスクラムでは日本を押しまくり、ハーフ陣やFBのスピードにあふれた突進力やタックルをはねつける破壊力を十二分に発揮して、日本を自陣のゴール前に釘付けにした。ラインアウトでも2メートルを超える長身選手のいる南アフリカが優勢で、マイボールの保持率は100%、日本のボールも5回に渡って奪った。
またディフェンスも完璧で、再三ゴール前に迫る日本の攻撃をかわし、日本の誇る快速WTBコンビ、松島幸太朗と福岡堅樹の突進を完全に抑え込んだ。
後半開始早々の4分に、南アフリカのキックボールのキャッチを巡って争った松島幸太朗がファールをとられ、南アフリカにペナルティキックを決められ、8-3に差を広げられると、流れは一気に南アフリカに傾いた。
後半8分には接触プレーで負傷した田村優や稲垣啓太、12分には姫野和樹が退き、南アフリカも相次いで控えの選手を出場させた。
フィジカルの強さを発揮した南アフリカは、劣勢に立った日本のファールを誘い、9、24分に立て続けに、SOハンドレ・ポラードがPGを決めて、リードを14-3に広げ、優位に立って戦いを進めた。
最後は実力を見せつけ、26分にモールを一気に押し込んだあと、SHファフ・デクラークがトライ。30分にマピンピが左タッチ際を抜いてとどめのトライを奪い、2大会連続して4強入りを果たした。
4万8831人の超満員のスタンドは、ジャパン・コールで包まれたが、4年前の「ブライトンの奇跡」の再現はならなかった
試合後、南アのヨハン・エラスムス監督は後半の猛攻を振り返り、「とても確固とした決意を持っていた。交代選手が頑張ってくれた」とコメント。「決勝戦までいきたい。次の2週間がタフになる」と前を向いた。
準決勝は、イングランド-ニュージーランド(10月26日)、ウェールズー南アフリカ(10月27日)の顔合わせで行われる。会場はいずれも横浜国際総合競技場。
日本vs南アフリカ戦 10月20日 東京スタジアム 筆者撮影
日本vs南アフリカ戦 10月20日 東京スタジアム World Rugby via Getty Images
なぜラグビーでは外国人選手が多いのか? 多様性の象徴 日本代表
ラグビーW杯 日本代表 登録メンバー 31名発表
福岡は東京五輪の7人制ラグビー参加 その後医師へ、トンプソンは今季限りで現役引退
医師の祖父と父を持つ福岡堅樹は、東京五輪で7人制代表にチャレンジした後、ラグビーを引退し、医師の道を目指す。
一方、一度代表から引退しながら今年復帰した38歳のトンプソンは、今季限りで現役引退を表明。この日は先発出場し、後半13分にベンチへ下がった。
試合後、福岡堅樹は「もうこの15人制の代表としてプレーするのは、これが最後だと改めて思った時に、今までやってきてよかったって心の底から思えるような状態だったので、今までやってきたことに本当に悔いはありません」、トンプソンは「このチームは特別なチームだった。日本人がみんなすごく応援してくれて感動した。僕のラグビーのキャリヤは終わったが素晴らしかった」と話し、それぞれ代表引退を明言した。
松島幸太朗との「快足フェラーリ」でコンビでトライを量産し、世界を沸かせた福岡堅樹、献身的なプレーで強力FWを牽引したトンプソン・ルーク、史上初のベスト8へ導いた2人が、ラグビーW杯の舞台の幕を下ろした。
スコットランド戦でトライをきめる福岡堅樹 RCW2019 News
ジョセフHCに続投要請決定、4年延長へ協会交渉
10月24日、日本ラグビー協会は、都内で次期日本代表ヘッドコーチ(HC)の選考委員会を開き、W杯日本大会で日本代表を史上初の8強に導いたジェイミー・ジョセフ氏(49)に続投を要請することを決めた。4年契約を提示する考えで、交渉がまとまれば2023年W杯フランス大会まで指導を任せることになる。
ジョセフ氏の続投は、W杯開幕直前に基本的に合意して既定路線とみられていたが、協会内の足並みがそろわずジョセフHC以外の候補を模索する動きもあって、決勝トーナメント進出後も同協会が正式要請をしなかったことから、ジョセフ氏は協会の対応に不信感を抱いたとされる。
しかし、24日の選考委では続投要請することが満場一致で決まり、待遇面で優遇して契約期間も4年とした。
藤井雄一郎強化委員長は、攻撃担当のトニー・ブラウン・コーチ、防御を担当するスコット・ハンセン・コーチ、長谷川慎スクラムコーチにも続投を要請したいとする意向も示した。
4万8831人の観客で埋め尽くされたスタジアム さくらジャパンのユニフォームであふれる 筆者撮影
さくらジャパンのユニフォーム(レプリカ)は20万枚作製、95%を完売
試合終了後、円陣を組む日本代表 筆者撮影
観客席の声援に答える日本代表 筆者撮影
日本vs南アフリカ戦 平均視聴率41・6% 今年の全番組で一位
10月20日、NHK総合で生放送されたラグビーW杯の準々決勝、日本vs南アフリカ戦の平均視聴率(ビデオリサーチ調べ、午後7時10分~9時26分)は、関東地区で41・6%、関西地区で41・4%、北部九州地区で28・6%、名古屋地区で39・7%だった。
関東地区の瞬間最高視聴率は、後半に南アがペナルティーゴールを決めて14―3と差を広げた午後8時55分の49・1%だった。
13日に日本テレビ系で生放送された1次リーグ最終戦・日本-スコットランドで記録した39・2%でそれをさらに2・4ポイント上回った。
当初の放送計画では、NHKはBS1での放送を予定していたが、急遽、大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」を休止して、総合テレビでの生中継放送に変更した。
10月23日、NHKの木田幸紀放送総局長は記者会見で、「選手たちの活躍と観客の熱い応援、あとテレビの前での声をからして応援した視聴者の皆さんの全部が合わさったパワーが視聴率の数字になった」とし、「30年前、50年前だったらわかるが、令和元年のこの時代に、リアルタイムでここまで視聴率が取れるということは、あらためてテレビの同時性に強みがあるとまざまざと感じた」と述べた。
今回の大会で注目されるのは日本戦以外の海外のチーム同士の試合中継も高視聴率を上げたことである。
プール戦の序盤の優勝候補同士の一戦、ニュージーランドvs南アフリカ戦(18:45 横浜)は12:3%(日本テレビ)を記録し、準々決勝のニュージーランドvsアイルランド戦(19:15 東京)は16:5%(日本テレビ)、ウェールズvsフランス戦は13.9%(日本テレビ)、準決勝のイングランドvsニュージランド戦は17:00 横浜)16・3(後半戦 NHK総合)、ウェールズvs南アフリカ戦(18:00 横浜)は19:5%、決勝戦の南アフリカvsイングランド戦は20.5を達成、週間視聴率トップを記録した。
またRugby World Cup 2019のデジタルビデオサービスへのアクセスも17億ビューを達成し、史上最高を記録した。
軒並み高視聴率を達成したW杯中継の後押しで日本テレビ系列は民放系列各社の視聴率競争で一気に優位に立った。
ラグビーW杯の生中継が高視聴率を挙げたことで、テレビのキラーコンテンツとしてスポーツ中継の威力が改めて示された。
日本vsスコットランド戦 今年最高の視聴率39.2% サモア戦32・8% ロシア戦18.3%
NHKは31試合 日本テレビは19試合放送 BS日テレ4Kでも放送 J Sportsは全48試合 HD/4Kで放送
「おもてなし」日本列島 世界から絶賛
日本代表の快進撃は世界から称賛の声が上がっているが、称賛されているのはラグビー選手だけではない。日本の「おもてなし」が世界から称賛されている。
スタジアムなどで外国チームの国歌やアンセムを日本人観客が一緒になって歌って応援するという「おもてなし」が広がっている。
埼玉県の熊谷ラグビー場では、1次リーグの3試合が行われ、10月9日は最後の試合、アルゼンチンvsアメリカ戦が行われた。スタンドを埋めた日本人の観客は、歌詞カードを見ながら二つの国の国歌を歌ってアルゼンチンとアメリカの選手を激励した。その歌声はスタンドに響きわたったという。
熊谷市では大会を盛り上げようと市民が中心となって出場チームの国歌やアンセムを歌う合唱団を立ち上げてスタジアムで歌う取り組みを進めてきた。
試合前にはJR熊谷駅や会場に向かうシャトルバスの乗り場などで、合唱団の人たちがアルゼンチンとアメリカの国歌の歌詞を印刷したカードおよそ1万2000枚を配ったという。そして試合前の国歌斉唱ではスタンドの多く観客が歌詞カードを手にして大きな声で両チームの国歌を歌って、「おもてなし」をした。
中でも、市内の小学生がアルゼンチンの国家をスペイン語で、アメリカの国家を英語で、大合唱して、外国人サポーターの喝采を浴びた。ピッチの選手はその歌声に励まされたであろう。
ラグビーW杯の初戦、日本vsロシア戦で、世界中から注目を浴びたのは、開幕戦直前に対戦相手ロシアの国歌を日本のサポーターが練習する姿だった。
スコットランド戦では、スコットランド代表のアンセム(応援歌)を日本のラグビーファンが歌って選手を迎えた。
海外の選手は、「今までいろんな国に行ったが日本のような歓迎にあったことはない。まるでホームにいるような感じがした」と話した。
こうした「おもてなし」の姿に、外国人サポーターからは「日本は本当に優しい!」「最高!」「素晴らしいホスト国」といった絶賛の声が続出しているという。
実は、W杯開幕に、海外から来日する選手やサポーターを歓迎しようと、参加チームの国歌を歌うたうプロジェクト「スクラムユニゾン」が立ち上がっていた。「スクラムユニゾン」を呼よびかけたのは、元日本代表の広瀬俊朗氏や、音楽家、歌手の3人。
3人は、代表チームのユニホームのレプリカを着きて、その国や地域歌うたを歌うたった動画をインターネットで公開して「スクラムユニゾン」の参加を呼びかけていた。歌詞は誰でも歌いやすいようにカタカナ表記だった。
釜石では、鵜住居駅前でボランティアが外国人サポーターに対して、列を作ってハイタッチをして歓迎した。言葉のいらない交流が自然と生まれていた。
ラグビーには、「ノーサイド」というラグビー精神がある。肉体を激しくぶつけあう競技だからこそ生まれた相手をお思いやる精神である。
釜石のボランティアのハイタッチ 鵜住居駅前広場 2019年9月15日 筆者撮影
史上初の3連覇を目指すニュージーランドなどが試合後に応援への感謝を示す「おじぎ」を始めるなど各チームが日本の文化を積極的に受け入れ始めた。
ニュージーランドは大会前のキャンプを千葉県柏市で行ったが、地元の子どもたちが先住民族の伝統的な踊り「ハカ」を披露して歓迎した。
子どもたちの「ハカ」に選手たちは感銘を受け、日本の「おもてなし」に対してニュージーランドは試合後に応援への感謝を示す日本流の「おじぎ」を始めた。
10月6日に横浜市で行われたニュージーランドとナミビアの試合でも両チームの選手が一列に並び、会場のファンたちにおじぎを繰り返していた。
ニュージーランド代表選手は「日本の文化には『リスペクト』というものがあるので、それに返したいと思って終わったときに『おじぎ』をしようと思った。子どもたちのハカでも、非常に歓迎されて、サポートをもらっている気持ちになった」と話した。
柏市内の子どもたちが披露した「柏ハカ」 Rugby World Cup 2019 公式ツイッター
「日本は台風の直撃を受けながらも世界に反骨精神と団結力を示す」、10月13日に英ガーディアン紙に掲載されたコラムが話題になっている。
日本vsスコットランドの一戦は台風19号の直撃で各地の被害が続々と明らかになっている中で、最後まで開催が危ぶまれていた。横浜国際総合競技場では大雨で増水した水が溢れ、暴風で瓦礫や土砂が散乱していた、周辺地域では多くの人が避難し、死者や負傷者が続々と明らかになっていた。大会関係者は会場に泊まり込み、台風の被害に備え、夜明けと共に復旧作業に全力を尽くして開催にこぎつけた。試合の結果は、劇的な勝利、被災者に多くの勇気と元気を与えた一戦となったとガーディアン紙は伝えた。
「“おもてなし”をどう訳した良いのか私にはわからないが、とにかくベスト尽くしてやれることはすべてやるということだろうと私なりに理解した」と感銘を受けたとコメントした。
ラグビーワールW杯の開催は、日本列島に「おもてなし」と「思いやりの心」の大切さというかけがえのないレガシーを残したようである。
The Guardian 2019年10月13日
カナダ代表 台風で被災した釜石でボランティア活動
10月13日、岩手県釜石市でのナミビア戦に出場予定だったカナダ代表の選手たちが、これまでの応援などに対する感謝を示そうと、道路にたまった土砂などを片づける復興支援のボランティア活動に参加した。
今月10日から釜石市内で合宿を行っていたカナダ代表のチームは、台風19号の影響で試合が中止になったが、市民の応援やもてなしに対する感謝を示したいと、選手やコーチなど17人が、台風で被災した釜石市の市街地で土砂を片づける清掃ボランティアに参加した。
市街地は一時、冠水したため、土砂やがれきで覆われていて、選手たちは地元の住民と一緒にスコップやブラシで使って片付けを行った。
カナダ代表のアンドリュー・コー選手は「釜石の思いやりに触れ、すばらしい時間を過ごすことができました。日本で貴重な経験をすることができたことを感謝したい」と話した。
W杯のツイッター公式アカウントには、カナダ代表の選手たちが清掃作業を手伝う動画が掲載され、「釜石での試合が中止になったことを受け、カナダ代表選手たちは復興の取り組みの支援に向かい、ゲームの真価を発揮した」と称賛している。
一方、ナミビアの代表チームは、試合が中止になったことを受けて、岩手県宮古市の駅前広場や市民交流センターを訪問しました。
宮古市のフェイスブックによると、チーム側から台風の被害を受けた市民を元気づけたいという打診があって、実現しました。キャプテンのヨハン・デイセル選手など25人が、市民や市の職員と交流した。
日本代表の決勝トーナメント進出で沸いているラグビーW杯2019、こうした選手たちと地元住民の交流で、心に残る1ページが残された。
11月4日、ワールドラグビー(WR)の年間表彰式が行われ、開催地の釜石市がラグビーの価値を世界に広めたとして、「キャラクター賞」を受賞した。東日本大震災からの復興を掲げラグビーW杯を誘致、ラグビーを通して街づくりを推進して市民に感動と勇気を与えたことが評価された。
Rugby World Cup 2019 公式ツイッター
記録的で猛烈な勢力を携える台風19号関東地方を直撃 プール戦の3試合は中止 注目の日本vsスコットランド戦はかろうじて開催
記録的な大雨で冠水したスタジアム 開催を支えた懸命の復旧作業 横浜国際総合競技場
ラグビーW杯2019日本大会終わる ラグビー人気が沸騰した日本列島
11月2日(土)、ラグビーW杯日本大会は決勝戦が行われ、南アフリカがイングランドに完勝し、3度目の優勝を果たして幕を閉じた。台風19号の影響でプール戦の3試合が中止なり、45試合が開催された。
日本代表が、スコットランドに劇的な勝利を挙げ、全勝で初めて決勝トーナメントに進出を果たし、日本列島はラグビー一色に染まった。ワールドラグビー(WR)と組織組織員会は大会を終えての総括を明らかにした。
観客動員数は170万人超
注目されていた観客動員数は、中止となった3試合を除く45試合で、延べ170万4443人、1試合の平均観客数は、37,877人を達成した。
横浜国際総合競技場で行われた決勝戦は、今大会で最多となる70,103人を記録した。
チケットの売れ行きは、発売枚数185万3000枚に対して、184万枚、99.3%が完売した。
今回のラグビーW杯中継で注目されるのは、日本戦以外の海外チーム同士の試合でもスタジアムが観客で埋まったことである。
決勝戦の70,103人を始め、準決勝イングランドvsニュージーランド戦は68,853人、ウェールズvs南アフリカ戦は67,750人と横浜国際総合競技場は満員となった。海外から訪日した観客は40万人、世界各国のテレビ視聴者は約4億人に上った。
来場者で埋まったファンゾーン
全国の開催都市の16カ所で開催されたファンゾーンは、開幕から全会場とも来場者でほぼ埋め尽くされて入場制限が行われた日も現れ、113万7千人が訪れ史上最高を記録した。幅広い市民のW杯に対する注目度の高さが表れている。
チケットを買ってスタジアム観戦するファン以外に、誰でも来場してラグビーW杯の醍醐味と感動を味わえるファンゾーンの設置は、日本全国のラグビーW杯人気沸騰に大きく寄与したと思われる。ファンゾーン展開は素晴らしいスキームだった。
「過去最高のラグビーW杯」 ワールドラグビーのボーモント会長
ワールドラグビー(World Rugby:WR)のビル・ボーモント(Bill Beaumont)会長は、ラグビーW杯日本大会を「おそらく過去最高のラグビーW杯として記憶されるだろう」と称賛した。
◆ワールドラグビー ビル・ボーモント会長コメント
ラグビーワールドカップ2019は、最高の大会の1つであり、私たちが愛するラグビーに新たな観客をもたらしたという点で非常に画期的だった。
全世界のラグビーファンを代表して、このような素晴らしく、謙虚で、歴史的なホスト国であった日本と日本人に、心の底から感謝したいと思う。
南アフリカ代表は傑出したラグビーを続け、ウェブ・エリス・カップを掲げるに相応しいチームでした。そして、日本代表の驚くべきパフォーマンスも、間違いなく大会の最も記憶に残る瞬間でした。
台風ハギビスという非常に困難な災害に対する日本の対応は、この素晴らしい国の人々の回復力と復興への決意の表れであると感じた。
◆ラグビーワールドカップ2019組織委員会 嶋津昭事務総長コメント
今大会における数々の熱戦、名勝負は、世界中から注目を集め、日本中を夢中にさせ、多くの人にとって永く記憶される素晴らしい大会となった。
日本中のファンゾーンの盛り上がりも驚くべきもので、各試合会場周辺の盛り上がりも含めて、これは12会場19自治体の全ての皆様が主催者意識を持って取り組んでいただけた結果だと考えている。
10月31日、日本ラグビー協会は、東京都内で開かれた国際統括団体ワールドラグビー(WR)の総会で、将来的にワールドカップ(W杯)を再招致したい意向を表明した。日本協会の森重隆会長や岩渕健輔専務理事が明らかにした。アジア初開催だった今大会の盛り上がりを今後につなげるのが狙いで、森会長は「目標は20年以内」と述べた。
開催国として大会を総括するプレゼンテーションを行った日本協会は「もう一度チャンスがあれば、ぜひW杯をやらせてほしい」との趣旨を説明したという。プレゼンでは映像も使用し、東日本大震災の被災者でW杯や開催地の岩手県釜石市の魅力をPRしてきた県立釜石高3年の洞口留伊さんも、映像を通じて再招致への思いを語った。
総会にはWR幹部や各国・地域の協会関係者が出席。今大会では各スタジアムがほぼ満員になるなどラグビーW杯に沸いた日本列島の熱気が海外からも高く評価されている。
出典 ラグビーワールドカップ2019組織委員会
日本、宿敵スコットランドを28-21で猛反撃を振り切り、全勝でA組を一位通過、念願の決勝トーナメント進出
日本戦「日程変更してでも」 スコットランド協会が訴え
開催国に圧倒的有利な日程に不満 中3日で対戦のスコットランド監督が思わず本音
日本vsスコットランド戦 出典 World Rugby via Getty Images
日本vsスコットランド戦 出典 World Rugby via Getty Images
ラグビーW杯 日本 サモア 38-19で三連勝 ボーナスポントも獲得
日本vsサモア戦 RCW2019 News
日本vsサモア戦 スタンドの観客に「おじぎ」をする両チームの選手 RCW2019 News
日本、アイルランドに19-12で劇的勝利 決勝リーグ進出に大きく前進
強豪アイルランドに「劇的勝利」を果たした日本代表 RCW2019 News 9月28日
勝利に喜ぶサポーター World Rugby via Getty Images
初戦ロシア戦 苦しみながらも勝利で発進
RCW2019 News 9月20日
ラグビーワールW杯 東日本大震災の被災地釜石で開催 鵜住居に大漁旗がはためく
釜石鵜住居復興スタジアム 観客収容数 1万6020人 ラグビーワールW杯2019で唯一新設されたスタジアム
9月25日、秋晴れの釜石鵜住居復興スタジアムで、W杯初の試合、ウルグアイvsフィジー戦が開催され、ウルグアイが格上のフィジーに大接戦の上、30-27で勝利した。2015イングランド大会では45-15で完敗、今回「大金星」を挙げて雪辱を果たした。フィジーは2連敗で大きく後退した。
釜石鵜住居復興スタジアムは、かつて鵜住居小学校と釜石東中学があった跡地である。2011年、東日本大震災で鵜住居地区は高さ11メートルの巨大津波に襲われた。小中学校は全壊し、町のほとんどは瓦礫に化した。鵜住居地区の死者と行方不明者は580人、被害家屋1851戸、釜石市内で最も大きな被害を受けた。
なかでも地区の防災拠点だった鵜住居地区防災センターでは悲劇が生まれた。大津波警報を聞いて住民が避難してきたが、2階まで達する津波にのみこまれ、162人が犠牲になった。生存者はわずか34人だった。
一方、小中学校では、日常の防災教育が生かされ、地震直後、高台の避難場所に懸命に走って逃げて命を守った。津波から身を守る「てんでんこ」が活かされたのである。
釜石市では、小中学校の跡地に、ラグビーの街釜石の象徴として総合球技場を建設し、ラグビーワールW杯を震災復興を誓って誘致した。
鵜住居駅前には、「うのすまい・トモス」と名付けた広場が建設された。「トモス」とは、復興の明かりを「灯す」、「共に」、「親友」の言葉の響きと鉄の街釜石の炉をイメージしたという。
「トモス」の一角には、「いのちをつなぐ未来館」が開館し、津波の記憶や教訓を伝えている。ラグビーワールW杯で海外から訪れた多くの外国人も展示に見入っていた。
フィジーの選手団は震災遺構となった「たろう観光ホテル」(宮古市)を試合前日に訪れた。フィジーのマッケー・ヘッドコーチは記者会見で、「釜石が津波で多な被害を受けたことは選手全員が知っている。この地で試合を行うことで、震災の復興に歩んでいる釜石にリスペクトしたい」と語った。
試合開始前には、犠牲者への黙祷が行われた。
台風19号の影響で、釜石鵜住居復興スタジアムで開催を予定していたプール戦最終日のナミビアVSカナダ戦は残念ながら中止になりW杯開催は1試合だけになったが、釜石市はラグビーワールW杯の開催をきっかけにして、東日本大震災からの復興に取り組んでいる釜石市民に大きな感動と勇気を与えた意義は大きい。また国内はもとより世界に津波の記憶や教訓、防災の大切さを訴えることにつなげた。
11月4日、ラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」の年間表彰式が都内で行われ、ワールドカップ日本大会で優勝した南アフリカが最優秀チームに選ばれたが、ラグビー界に貢献した個人・団体に贈られる「キャラクター賞」には、ワールドカップの開催都市となった岩手県釜石市が、東日本大震災からの復興を通じてラグビーの価値を高めたとして受賞した。
表彰式に出席した地元の高校3年生の洞口留伊さんは震災を語り継ぐ活動に携わっている。「8年前は考えられなかった大会が釜石で大成功したので、これからも自分のことばで防災や復興支援への感謝を世界に伝えていきたい」と話した。
「うのすまい・トモス」で大漁旗で歓迎 9月25日 筆者撮影
三陸鉄道リアス線鵜住居駅
遠くに見えるのが新しく建設した巨大な水門と防潮堤 高さ14.6メートル、2倍以上の高さに嵩上げ(旧防潮堤は6.4メートル) 防潮堤の先は津波が押し寄せた太平洋
日本では「タトゥー隠して」
2018年9月、ラグビーの国際統括団体、ワールドラグビー(WR)は、、来年日本で開催されるワールドカップ(W杯)に出場する選手やサポーターに、
入れ墨が反社会的印象を与えがちな日本の事情に配慮して、公共施設ではタトゥーを隠すよう参加国に要請した。日本では一般的に入れ墨が暴力団関係者と関連づけられることを紹介。温泉などで入れ墨を理由に入浴を断る例があると説明した。タトゥーをする選手が多いのは、ニュージーランドをはじめ、ラグビーが盛んな豪州、サモア、トンガ、フィジーなどの太平洋地域の国々である。
W杯統括責任者アラン・ギルピン氏は「1年ぐらい前に提案した際に、多分不満が出るだろうと思ったが、今のところ全くない」と述べた。ニュージーランドのメディアによると、同国協会幹部は「どの遠征に行くときも私たちは地元文化を尊重する。それは来年日本に行く時も何ら変わらない」と、WRの方針に賛成する意思を示した。
9月16日、米国が来日し、出場全20か国が集結する中で、ラグビーW杯組織委員会は、各国の代表選手に、水着などの上に着て肌を隠す「ラッシュガード」(マリンスポーツ用アンダーウエア)を配布した。プールや温泉施設で使用してもらうことを想定している。
別府温泉 入浴可能な施設を案内
国内有数の温泉地・大分県別府市では、旅館ホテル組合連合会はタトゥーがある外国人の受け入れを検討し、3~6月、日本人客約2000人にアンケートしたが、入浴を「認めてもいい」との回答は12%に過ぎず、全面受け入れは見送った。連合会はタトゥーをした外国人が旅館などを訪れた場合、入浴可能な市営温泉などを案内することにした。また別府温泉のサイト「ENJOY ONSEN」でも、タトゥー客が入浴できる約100か所を紹介している。
公衆浴場や温泉旅館で、入れ墨(タトゥー)を容認する動きが出ている。2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、政府は入れ墨だけを理由に利用を拒むのは「不適切」との方針を打ち出した。
観光庁は16年3月、入れ墨がある外国人観光客への対応を一般社団法人「日本温泉協会」などに通知した。文書で「入れ墨をしていることのみをもって、入浴を拒否することは適切ではない」と明言。シールで覆う▽入浴時間を分ける▽貸し切り風呂を案内する――といった対応事例を紹介した。安倍政権も2017年2月、入れ墨だけを理由に拒むことは難しいとの答弁書を閣議決定している。
これに対して、静岡県の熱海温泉ホテル旅館協同組合は政府の考えに理解を示すが、入れ墨入浴拒否の方針を維持する方針だ。
大会組織委員会の嶋津昭事務総長は「それぞれの国の文化を理解することが必要。話し合いは進んでいる」と語り、タトゥー文化を理解していく必要もあるとした。
しかし日本では、タトゥーは、入れ墨と同様に反社会的なイメージが根強くタトゥー容認がどこまで広がるかは未知数だ。2020東京五輪大会ではさらに多数の外国人が訪れる。タトゥーへの対応は難問である。
サモア代表はタトゥーを隠すスキンスーツを着用 2019年9月17日 RCW2019 News
ビデオ判定 TMO
ラグビーでは、「テレビジョンマッチオフィシャル(TMO)」というビデオ判定システムを導入している。主審が、別室で映像でチェックTMO審判に判定を要請する。TMOの合図は、主審がTのサインを出し、空中にモニターを意味する四角を描く。
2名体制のTMO審判は、4~5台のカメラであらゆる角度から撮影された映像をリプレーして検証し、ビデオ判定を行う。判定の決め手となった映像は、スタジアムのジャイアントスクリーンでも映し出され、観客は見ることができる。
ラグビーは、主審(レフリー)と副審(タッチジャッジ/アシスタントレフリー)2名の3名体制の「マッチオフィシャル」で試合を進行する。しかしラグビーでは選手が入り混じる密集プレーが多く 、死角となって肉眼で判定するのが困難なケースが頻繁に起きる。審判の判定ひとつで試合の勝敗が左右されるため、より客観的な判断を行うためにTMOが導入された。ラグビーW杯では、サッカーに先駆けて「試験実施ルール」として2003年に開始、現在のラグビー競技規則でもTMOは「試験実施ルール」とされている。
TMOの対象となる判定は以下の項目である。
・密集状況のトライなどの正確なグラウンディングの判定
・ゴールキックの可否判定
・ライン際の判定
・審判が反則と判断したプレイの検証
・正確な反則の決定
TMOで使用する判定システムは、ホークアイ (Hawk-Eye)、2018FIFA ワールドカップで使用されているシステムと同じである。
Hawk-Eye は、イギリスの企業、ホーク・アイ・イノベーションズが開発した審判補助システム(ゴールライン・テクノロジー)で、2011年3月7日にソニーが買収した。
球技の試合中にボールの位置や軌道を分析し、それらをコンピューターグラフィックスで再現することにより、審判が下す判定の補助を行うコンピューター映像処理システムである。テニスのウィンブルドンなどの国際大会でも採用されている。
サッカーのビデオ判定システムは「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」と呼ばれ、2018FIFA ワールドカップロシア大会で導入された。
決勝戦では、フランスの勝ち越しゴールはVARでハンドと判定されて得たPKだった。ロシア大会でVARが使用されたのは20回、そのうち17回で主審の判定が覆った。 VARでPKが激増した結果、セットプレーからの得点が73点となり1998年大会の61点を更新した。
ビデオ判定は、試合を長時間化させてしまうデメリットもある。TMOの導入でアディショナルタイムが5分を超えることも多くなった。「中断」によって試合の流れが止まって相手に一息つく間を与えるので、スピードが持ち味のチームにとっては不利になるといわれている。
一方で、映像で確認できるという透明性が確保できるのでのメリットは大きい。
ビデオ判定の運用については、実績を積み重ねながら改良が必要かもしれない。
ウェールズvsオーストラリア戦でTMOを要請する審判 時計を止めて、両手で四角のサインを出す 出典 RWC2019国際映像画面/TVer
日本vsロシア戦で松島のトライの成否を巡ってのTMO判定 スタジアム内の大スクリーンや中継映像で伝えられる 判定の結果ノートライとなった。
ラグビーの試合はこうして行われる 得点・反則・ペナルティ・プレー
アジアで初の開催 ラグビーワールドカップ2019日本大会
ラグビーワールドカップは、4年に1度行われるラグビーの世界チャンピオンを決める大会である。優勝チームには、優勝トロフィー、「ウェブ・エリス・カップ」が渡される。 ラグビーの国際統括団体、World Rugby(WR)が主催する。
ラグビーワールドカップは、夏季オリンピック、2018FIFA ワールドカップと並ぶ世界3大スポーツイベントの1つとされ、前回の2015年のイングランド大会では、約250万人がスタジアムで観戦し、テレビ放送やインターネットを通じて世界で40億人が試合を視聴するというビック・スポーツ・イベントなのである。
2019年の日本大会は9回目、アジアでは初めての開催である。これまで、ラグビーワールドカップは、これまではラグビーの伝統国の英国、アイルランド、フランスやオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカで開催されていた。日本での開催は、まさに画期的である。
大会は、各地域の予選を勝ち抜いたアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、イングランド、フィージー、フランス、ジョージア、アイルランド、イタリア、ナミビア、ニュージーランド、ロシア、サモア、スコットランド、南アフリカ、トンガ、ウルグアイ、アメリカ、ウエールズ、そして開催国の日本の20チームが参加し、9月20日から11月2日までの約7週間に渡って、全国12の会場で、48試合の熱戦が繰り広げられる。
試合形式は、出場20チームが5チームずつA、B、C、Dの4つのプールに分かれて1次リーグ戦はプール内の総当たり戦で40試合を行い、上位2チームが決勝トーナメントに進み、準々決勝、準決勝、三位決定戦、決勝の試合が行われる。
開幕戦は、東京スタジアム(東京・調布市)で、日本対ロシア戦が9月20日に開催され、決勝戦は横浜国際総合競技場(横浜市)で行われる。
ラグビーワールドカップ2015日本大会の予算は?
2018年9月、ラグビーワールドカップ2019組織委員会は、大会開催予算の概要を明らかにした。
それによると、収入は、チケット収入260億円、日本スポーツ振興センター(JSC)助成金79億円、協賛くじ収益金100億円万円、開催都市分担金39億円、民間資金55億5000万円、合計533億5000万円とした。
チケット収入260億円の内訳について、チケットの平均単価を約2万円、売上枚数を全180万枚のうちの7割強と見込んでいるとしている。
支出は、会場整備等で134屋7500万円、大会運営等120億9500万円、チケット販売・広報28億6100万円、管理等84億1900万円、大会保証料135億円、予備費30億円としている。
このうち、会場整備費は、試合会場の仮設施設整備等や試合会場等におけるICTやネットワークの整備、公認キャンプ地の整備に充てられる。
大会運営等は、チーム、大会ゲスト、大会スタッフ等の宿泊や交通費、貨物の輸送費や、警備費などに充てられ、管理費等には全国各地で大会を支えるボランティア、1万3000人の経費も含まれる。
ラグビーワールドカップ大会組織委員会の予算規模は、2020東京五輪大会組織委員会が約6000億円なのに対し、約530億円で、約10分の一以下である。
ラグビーワールドカップ大会組織委員会の収入は主としてチケット収入に支えられていて、スポンサー収入や放送権料収入がない。これらの収入はすべて主催者のラグビーの国際統括団体、World Rugby(WR)に入る仕組みになっている。また、大会保証料として、大会組織委員会はWRに135億円を支払うことになっている。
これに対して、2020東京五輪大会組織委員会は、スポンサー料(国に会いスポンサー料)、3200億円は組織委員会の収入とすることができる。さらに、国際オリンピック委員会(IOC)から、IOCが受け取るスポンサー料(TOPスポンサー料)や放送権料などの「割り戻し金」、1410億円を東京五輪大会組織委員会が受け取る仕組みになっている。チケットの売上収入はわずか820億円、全体の収入の15%以下に過ぎない。
ラグビーワールドカップ2019日本大会は、チケット収入の比率が約半分、大会運営が黒字になるかどうは、まさにチケットの売れ行き次第にかかっている。
ラグビーW杯2019日本大会 経済波及効果は約4,300億円
ラグビーワールドカップ2019日本大会開催地 全12スタジアム情報
ラグビーワールドカップ大会ボランティア 「TEAM NO-SIDE」 1 万 3 千人
スーパーラグビーから外されるサンウルブズ
森喜朗氏の悲願 ラグビーW杯日本大会開催
記録的な大観衆を集めたラグビー黄金期 早稲田・明治
絶頂ラグビー人気 新日本製鐵釜石と神戸製鋼 ラグビーのリジェンド 松尾雄二と平尾誠二
月刊ニュメディア連載「ラグビーW杯」加筆
2019年5月10日 初稿
2019年10月20日 改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR
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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
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