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G7広島サミット 国際放送センター(IBC) 検証 岸田首相はリーダーシップを発揮できるか? 成果は?

2023年05月31日 11時43分03秒 | 国際放送センター(IBC)
G7広島サミット 国際放送センター(IBC) 
検証 岸田首相はリーダーシップを発揮できるか? 成果は? 政権の浮上は?


国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



内閣支持率46%に急上昇 G7で「指導力を発揮」60%

G7広島サミットの総括会見に臨む岸田首相 Source G7 HIROSHIMA2023
 岸田内閣の支持率は、46%と前回4月調査から8%も急上昇し、不支持率42%を始めて上回った(朝日新聞調査)。サミット効果が支持率を押し上げた。
 ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃訪問で、G7広島サミットの注目度は意気に上がり、岸田首相は「国際社会の結束を高める、歴史を刻むサミットになった」と意義を強調、自民党内では「首相のリーダーシップが評価されている」という声が広がり、「大成功だ」と自賛 焦点は衆院解散・総選挙に移った。

非核の道筋は示されず
 被爆地・広島での初の主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」を発表、米英仏の核保有国を含むG7首脳が広島に集い、平和記念公園への訪問で「被爆の実相」に触れたうえで、広島から核軍縮を訴えた。
 核兵器削減の継続をうたった一方で、一方的な核軍縮を否定、核兵器の役割について「防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、戦争や威圧を防止する」として、自らの核抑止力維持の正当性を強調している。
 「核のリスク軽減」を強調したこれまでの宣言よりも、後退したとも思われる内容で終わったのは残念である。 
 一方、毎回サミットでは議論をリードして主役となる米国は、米債務上限問題を抱えたバイデン大統領が存在感を欠き、F16のウクライナ提供容認問題を除き、ほとんど発言が注目されることはなかった。米国が表に出ない異例の展開となった。

「公邸忘年会」報道 岸田首相、秘書官の長男更迭 「異次元の親ばか」の声も 
 5月29日、岸田文雄首相が、長男で政務秘書官を務める翔太郎氏の更迭に追い込まれた。翔太郎氏は昨年末に首相公邸で親族らと「忘年会」を開いて記念撮影をしていたことが報じられ、批判を浴びた。ようやく事実上の更迭、しかし判断は遅きに失した。
 G7広島サミット閉幕後、各社の世論調査では内閣支持率が急上昇したが、翔太郎氏の公邸「忘年会」問題で支持率は一気に急落、5月26日~28日に日本経済新聞が実施した世論調査では、「支持する」が5%急降下して47%、「支持しない」が4%上昇して44%となった。G7広島サミット効果は完全に帳消しとなった。

G7広島サミットは“ウクライナ・サミット” 主役の座を奪ったゼレンスキー大統領 対ロシアの結束で成果

G7広島サミット閉会後、国際会議場で会見するゼレンスキー大統領



ウクライナ特別セッション 以下 Source Zelensky Twitter

5月21日、午前11時前からウクライナのゼレンスキー大統領が参加して、「ウクライナ情勢」をテーマにした特別セッションが1時間近く行われた。

G7首脳との集合写真 Source Zelensky Twitter
米国がF16提供容認、欧州要望受け転換
 5月21日、米国バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と広島市内で会談した。米国は欧州からウクライナへの米F16戦闘機の提供を認める方針に転じ、今回のG7で欧州首脳に表明した。さらに米国は、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」用の弾薬や対戦車兵器、装甲車両など3億7500万ドル(約517億円)の軍事支援も発表し、バイデン氏はウクライナ支援を続ける姿勢を明らかにした。

Source Presudent Biden Twitter

ゼレンスキー大統領はG7首脳に熱烈な歓迎を受けた Source Ursula von der Leyen Twitter


岸田首相、ゼレンスキー大統領会談 Source G7 HIROSHIMA2023

ゼレンスキー大統領、平和記念公園の慰霊碑に Source G7 HIROSHIMA2023
ゼレンスキー大統領 G7で対ロ包囲網 積極攻勢
20日午後にフランスが提供した政府機で広島に到着したウクライナのゼレンスキー大統領は、イタリア・メローニ首相、英国・スナク首相、フランス・マクロン大統領、ドイツ・ショルツ首相、インド・モディ首相と相次いで精力的に会談、ウクライナへの支援を訴えた。今日は岸田首相と会談する。米国・バイデン大統領との会談があるかどう5月21日、午前11時前からウクライナのゼレンスキー大統領が参加して、「ウクライナ情勢」をテーマにした特別セッションが1時間近く行われた。かはいまのところ不明。ロシア。プーチン大統領を刺激するを警戒か。
ゼレンスキー大統領の“サプライズ登場”で、G7広島サミットはさながら“ウクライナ・サミット”となった。


英国・スナク首相と抱き合うゼレンスキー大統領 Source UK Prime Minister

英国・スナク首相と会談するゼレンスキー大統領 Source UK Prime Minister

フランス・マクロン大統領と会談するゼレンスキー大統領 フランスはゼレンスキー大統領の訪日にあたって政府専用機を提供した  Source Zelensky Twitter

インド・モディ首相と会談するゼレンスキー大統領 Source Zelensky Twitter


Source Zelensky Twitter
ゼレンスキー大統領、広島空港に到着…G7広島サミットに出席へ
 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日午後、フランス政府の航空機で広島空港に到着した。
 今月14日にゼレンスキー大統領がパリを訪問した際、フランスのマクロン大統領にG7広島サミットに出席する意向を示し、航空機の手配を頼んだことがわかった。フランス外交筋が明らかにした。ゼレンスキー氏は、訪問先のサウジアラビア西部ジッダから、フランスの政府専用機で広島に20日午後到着した。
 フランス外交筋によると、今回の準備が始まったのは、ゼレンスキー氏が今月14日、G7サミットを前に、イタリアとドイツに続いてパリを訪問した時だった。ゼレンスキー氏とマクロン仏大統領は同日夜にフランス大統領府で夕食をともにしながら会談。この際に、ゼレンスキー氏が「G7に出席したい」と述べ、マクロン氏に航空機の手配を直接依頼したという。(以上朝日新聞)


G7首脳ファミリーフォト 広島グランドプリンスホテル 宇品島 Source G7Hiroshima2023


Source G7Hiroshima2023
G7首脳の原爆資料館視察 慰霊碑に献花
 G7広島サミット初日、G7首脳が、広島平和記念資料館(原爆資料館)を視察、G7首脳がそろって資料館を訪れるのは初めてだ。被爆者とも対話し、慰霊碑に献花も行った。原爆投下した米国の現職大統領であるバイデン氏や核保有国の英仏首脳への配慮から、具体的な視察の内容やどんな展示を見たかは非公表とされた。
資料館の視察は約40分にわって行われたが、原爆が投下され、爆発する様子を再現した模型展示など原爆の悲惨さが展示されている本館はまわらず東館だけにとどまった。さらにG7首脳の視察する様子の取材は認めず、館内のどこで、何を見たのか、詳細も公表しない。
 米国内では、原爆投下を正当化する意見が根強くあり、大統領選が来年に控えている中で、こうした意見に配慮せざるを得なかっただろう。
 また米英仏は核保有国、ロシアのプーチン大統領が核攻撃の威嚇を再三にわたってちらつかせている中で、核抑止力の存在を堅持する必要があり、核廃絶の発信には慎重にならざるをえない。
 G7首脳がそろって資料館を訪れるのは実現したが、なにかすっきりしない印象が色濃く残る。


3月21日、岸田首相、 ウクライナ電撃訪問 Source Ukraine Presidency Office
ゼレンスキー大統領が21日訪日へ
 ウクライナ政府で安全保障を担当する国家安全保障 ・国防会議のダニロフ書記は19日、現地の公共放送のインタビューに対し、ゼレンスキー大統領が来日し、G7広島サミットに対面で出席することを明らかにした。
 ダニロフ氏は、「非常に重要なことがサミットで決まる。ウクライナの利益を守るためにも、ゼレンスキー大統領が現地に行くことが重要だ」と述べ、サミットに出席する意義を強調した。
 政府関係者によると、20日に来日し、21日に開かれるウクライナ情勢を議題とするセッションに参加する方向とされている。
ゼレンスキー氏は訪日すればロシアによるウクライナ侵攻後、初めて。G7サミットではウクライナ情勢も主要議題の一つで支援強化を訴えるとみられる。岸田首相やバイデン米大統領との個別会談も調整する。(各紙、NHK)
 G7広島サミットは、“ウクライナ・サミット”になりそうな情勢となった。


Souce 首相官邸
5月18日、G7広島サミットの開幕を明日に控えて、岸田首相とバイデン大統領との日米首脳会談を市内のリーガロヤル広島で開催した。サミット前に日米間で事前のすり合わせを行ったと思われる。ウクライナのゼレンスキー大統領は21日に、特別セッションでオンラインで参加するとしているが、“サプライズの訪日”の可能性も一部に取りざたされている。


Bakhmut Source MilitaryLandnet
ウクライナ軍 東部要衝のバクムト戦線で反転攻勢 ロシア軍を撃退して一部の重要拠点を奪還
 ウクライナの反転攻勢が始まろうとしている。ウクライナ侵略戦争は重大な局面を迎えている。
 ドイツを訪問中のウクライナのゼレンスキー大統領は、「(反転攻勢)を非常に真剣準備している。ロシアは確実に実感することになる」と明言。ウクライナの反転攻勢の成否は欧米の兵器支援がカギとなる。米国に続いて、ドイツは兵器支援を倍増、イギリスは射程250km以上の長距離巡行ミサイル「ストーム・シャドウ」を提供、クリミア半島全域が攻撃可能に。イタリアも支援強化を表明。欧米が支援を約束した戦車などの兵器の98%がウクライナに到着したとされる。こうした中でG7はどんな表現でロシアに対して強固な声明を出すか。岸田首相の議長としてリーダーシンップが問われる。

Russian President Vladimir Putin Source Lapinou Twitter


岸田首相と尹錫悦大統領 出典 内閣広報室
日韓首脳会談 「シャトル外交」再開
5月7日、岸田首相は訪韓し、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領とソウルの大統領府で首脳会談を行った。「シャトル外交」が再開された。焦点の徴用工問題では、岸田首相は「心が痛む思い」と述べ、「個人的な思い」として踏み込んだ発言をして韓国側に配慮した。「シャトル外交」は2012年に竹島問題や慰安婦問題で中断、12年ぶりに再開された。G7広島サミットを前に、日韓関係の改善を果たした岸田首相の外交手腕を高く評価したい。


権力の中枢、クレムリンに2機のドーン攻撃
 ロシアの「自作自演」の「偽旗作戦」か、ロシア国内のパルチザンの攻撃の可能性が強い。いずれにしてもロシアはこの攻撃を口実に、ウクライナに対する報復攻撃を宣言しておりウクライナ戦争は緊迫度を増す。5月10日はロシアの戦勝記念日、ロシア軍とワグネルは10日までに国民に戦果をアピールするためにバクムトの完全制圧を果たすとしており、ここ数日間の戦況は目を離せない。 
画像出典 MilitaryLandnet


衆参補選 自民「薄氷」の勝利 4勝一敗
 自民党幹部の評価は、辛勝でも「勝ちは勝ち」、とりわけ立憲民主には完勝したの大きい。岸田首相は「選挙の顔」として十分。維新の勢いは脅威だが、その勢いが増す前に解散総選挙に打って出る。野党共闘が整わない内に、早ければG7広島サミット後、通常国会会期末の6月末との見方も浮上。
画像 在留邦人スーダン退避の記者会見(4月24日) 出典 首相官邸


2023年3月21日、岸田首相はウクライナの首都キーウを電撃訪問、ゼレンスキー大統領と会談。各国首脳がいずれもキーウを訪問している中で、ようやくG7会合の議長としての「体面」を保つ 画像出典 Defense of Ukraine


ANNの世論調査(4月)で岸田内閣の支持率は先月より10.2ポイント上昇、45.3%に急上昇。 「支持しない」は34.6%。G7広島サミットの成果をアピールして、支持率低迷を脱してさらに支持率アップを果たし解散総選挙を狙うという岸田首相の目論見は果たせるか? 画像出典 首相官邸


G7サミット誘致、被爆地・広島は3回目の挑戦でようやく成功
 2021年11月30日、広島市は、悲願の被爆地で初となる主要7カ国首脳会議(G7サミット)の実現に向け、2023年サミットの誘致に名乗りを上げた。3度目の挑戦である。
 2021年9月、菅義偉前首相の任期満了に伴い自民党の総裁選挙が行われ、岸田文雄氏が対抗馬の高市早苗氏や河野太郎氏を破り、自民党総裁のポストを手中にした。首相に就任した岸田氏は、衆議院を解散、10月31日に行われた総選挙で「大勝」して岸田政権は信任された。
 そして、広島市は、2023年サミットの誘致に正式に名乗りを上げた。
 広島市は、これまでに2回、誘致に挑んだが、2000年は沖縄、2016年は伊勢志摩に敗れた。
 松井一実・広島市長は 「開催基準をおおむね満たしたと思っていたが、他都市に競り勝てなかった」として肩を落とす場面が続いた。
 今回が3回目の挑戦、近年の国際都市としての実績を強調し、16年のG7外相会合や米オバマ大統領の訪問、19年のローマ教皇の訪問などを例に出し、要人を受け入れる態勢が整っていることを強調、また湯崎英彦知事は被爆地で開催する意義を指摘。「核兵器保有国を含む首脳が集う。核廃絶への具体的な進展への新たな一歩を踏み出せる」として、誘致成功に自信満々の様子だった。
 G7サミットの開催地は、伝統的に時の首相の専決案件ととされている。
 広島が地元の岸田氏が首相に就任したことで、広島開催に一気に追い風が吹いて「本命」されることなった。
 広島県と市は12月中旬に、具体的な誘致計画などをまとめ、を外務省に提出した。ライバルはすでに誘致に名乗りを上げている福岡や名古屋である。

首脳会合場となる広島グランドプリンスホテル 瀬戸内海の小島、宇品島に立地し、本土とは一本の橋で結ばれる。警備には格好の条件。 画像出典 日本ホテル協会

国際メディアセンターの設置される広島県総合体育館、広島グリーンアリーナ 約5000人のメディアが参加する取材拠点 画像出典 広島グリーンアリーナ

筆者撮影

国際メディアセンターは約3500平方メートルのアリーナを占有して設置

開催地誘致に一番で名乗りを上げた名古屋
 G7サミット開催地に最初に名乗りを上げたのは名古屋市、2020年12月に市議会で意向を表明した。愛知県などと官民一体で誘致をめざす推進協議会が昨年12月9日に設立され、河村たかし市長が会長に就任した
 河村氏は「国際的知名度や都市ブランドが上がるための大きなチャンス。コロナ禍で落ち込んだ地域経済を復興させる起爆剤になる」と誘致のねらいを説明した。
 名古屋市の誘致計画案では、首脳会議の会場は熱田区の名古屋国際会議場、国内外の記者が集まる国際メディアセンターは港区の市国際展示場を想定している。
 名古屋市も2016年のG7サミット開催地にも応募したが、決まったのは三重県・伊勢志摩だった。2019年の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では愛知県が立候補したが大阪市に敗れた。
 しかし、名古屋市は県との連携に問題を抱えているという重大な欠陥を抱えている。愛知県の大村秀章知事は推進協の顧問に就いたものの、設立総会には出席しなかった。昨年、大村氏への解職請求(リコール)の署名活動を河村氏が支援するなど、両氏は激しく対立している。さらに2016年が隣県・三重だったため同じ東海地方での開催は難しいという見方が支配的である。

福岡 弱点の高級ホテル不足「克服」、リベンジには熱気
 福岡市、福岡県は、広島より早く2021年10月にG7サミットの誘致を表明した。高島宗一郎市長は「G20サミットを大阪に取られた悔しい思いが残っている。リベンジしたい」と述べた。2022年1月には首相官邸を訪れ、「アジアと世界をつなぐ日本の役割を国際社会に強くアピールできる」などと岸田首相に「誘致」を直談判した。
大阪、愛知と争った19年のG20サミットは当初、福岡市が最有力と目されたが、土壇場で大阪に苦杯を喫し、財務相・中央銀行総裁会議の開催にとどまった。
海外の要人が宿泊できる高級ホテルの不足がネックになったとされる。
 弱点解消に向けて福岡市が期待を寄せるのが、2023年春に開業する外資系高級ホテルのザ・リッツ・カールトンである。
 市は、ほかの高級ホテルと合わせて計3万2千室の確保を見込み、G7開催の要件は満たせるし、福岡空港から中心部まで車で約10分というアクセスの良さも要人警護の観点から強みだとアピールしている。
 誘致計画の詳細な内容は非公表だが、首脳会議の会場は、G20財務相・中央銀行総裁会議でも主会場だったホテル「ヒルトン福岡シーホーク」(中央区)、取材拠点のメディアセンターは隣接する「福岡ペイペイドーム」を想定しているという。

G7サミット2023、広島開催表明
 2022年5月23日、岸田文雄首相は2023年に日本で予定される主要7カ国首脳会議(G7サミット)について、被爆地で首相の地元の広島市で開催する方針を表明した。日米首脳会談でバイデン米大統領に伝え、支持を得たと会談後の共同会見で明らかにした。
 首相は会見で、「来年のG7サミットでは武力侵略も、核兵器による脅かしも、国際秩序の転覆の試みも断固として拒否するというG7の意思を歴史に残る重みをもって示したい」と強調。「広島ほど平和へのコミットメントを示すのにふさわしい場所はない」と述べた。
 日米首脳会談の場で、「広島開催」を明らかにしたのは、米国に対する配慮の現れである。米国内には、原爆投下は戦争終結を早めたとして、広島、長崎の原爆投下を肯定する意識が未だに根強く残る。こうした米国内の世論に配慮したものと見られる。G7伊勢志摩サミットの際に、オバマ大統領(当時)はサミット終了後、広島を訪問したが、政権内部でも異論を示す向きがあり、調整は難航したが、結局、オバマ大統領の英断で広島訪問が実現した。「広島」は米国にとっってはセンシティブな案件だ。
 松野博一官房長官は同日午後の会見で、広島開催について核保有国の英仏を含む全てのG7各国の支持を得たと明らかにした。首相は衆院広島1区の選出で「核兵器のない世界」をライフワークに掲げる。外相時代の16年には、G7外相会合を広島で開催し、当時のオバマ米大統領の広島訪問の実現にも尽力した。

日米首脳会談 2023年5月23日 出典 首相官邸

G7サミット、広島で2023年5月開催 「核兵器のない世界」がテーマに
 G7サミットの開催地や日程は、開催の前年のG7会合の席で、各国首脳に明らかにするのが慣例である。
 2022年6月、岸田文雄首相はドイツ・エルマウで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)の閉幕後に記者会見を行い、次回の広島サミットを2023年5月19~21日に開催すると表明した。ウクライナに侵攻するロシアへの制裁強化のほか、インド太平洋地域でも中国を念頭に国際秩序の堅持に向けてG7の連携を進める考えを示した。
 首相はG7サミットの議論を振り返り、ウクライナ侵攻などによる物価高について「世界の平和秩序の枠組みに突きつけられた挑戦だ」と指摘。「国際社会と連携して、この困難を乗り越えていく決意を共有した」と述べた。
 広島を開催地としたことにについては、「G7首脳が広島の地から核兵器の惨禍を二度と起こさない、武力侵略は断固として拒否するとの力強いコミットメントを世界に示したい」とし、「核兵器のない世界」に向けた議論を主導するとした。
 岸田首相としては、広島を開催地に選んだ以上、「核廃絶」で指導力を発揮して、会合の成果をアピールしなければならない。しかし、プーチン大統領がウクライナ戦争を巡り核使用の可能性を唱えて頻繁に威嚇している中で、核抑止力の重要性がますます増し、G7各国首脳にも「核廃絶」に対する意識の変化も現れている。日本もアメリカの「核の傘」に頼っている以上、どこまで踏み込んだ「核廃絶」のアピールが出せるか、岸田首相は正念場を迎える。

G7エルマウ・サミット2022

G7首脳ファミリーフォト 背景はドイツ最高峰のツークシュピッツェ山(Zugspitze)の山並み ドイツとオーストリアの国境線にある 出典 G7-gipfel-elmau

G7首脳ファミリーフォト 出典 G7-gipfel-elmau

議長国ドイツのショルツ首相と岸田首相

G7サミットの数奇な「ジンクス」
 G7サミットと政権には、数奇な「ジンクス」があるとされてきた。
 2000年九州・沖縄サミットは、開催地を決めたのは小渕恵三首相(当時)、しかし小渕氏は開催直前の4月に脳梗塞を発症して辞任、5月に逝去した。代わって会合で議長を務めたのは森喜朗首相(当時)だった。森内閣は任期を通して内閣支持率は低く、とにかく人気がなかった。「神の国発言」など「失言」がたび重なり、支持率は急降下していった。そして「えひめ丸事故」の危機管理対応が批判され、2001年4月、辞任に追い込まれた。
 2008年北海道洞爺湖サミットでは、開催地を決めたのは安倍晋三首相(当時)、しかし安倍氏は2007年7月に参議院選挙で大敗、過半数を下回ってしまった。9月には体調が悪化して入院、そして首相を辞職した。代わって会合で議長を務めたのは福田康夫首相(当時)だった。福田政権は、「衆参のねじれ国会」の打撃を抱え、連立を組む公明党の軋轢が表面開始、党内に「福田おろし」が巻き起こりサミット直後の9月に退陣する。
 2016年伊勢志摩サミットでは、開催地を決めたのは再び安倍晋三氏、安倍氏は2012年9月の自民党総裁選で、石破茂氏を破り、自民党総裁の座に戻る。12月の総選挙で自民党は圧勝して、公明党と連立を組み政権に復帰して第二次安倍内内閣が発足した。
 安倍首相は二回目の挑戦で、宿願の伊勢志摩ミットの議長を務めた。
 第二次安倍政権は安定した長期政権となって2020年8月24日、首相の連続在職日数が2799日となり、それまで最長だっ佐藤栄作氏(2798日)を抜き歴代最長となった。
 政権は盤石かと思われ、安倍氏は東京五輪2020の成功を手中して、自民党総裁選での4選も視野に入れていたが、2020年8月、安倍氏は持病の潰瘍性大腸炎が再発したとして辞任を発表した。コロナ感染拡大で安倍氏が力を入れていた東京五輪は「1年延期」となったいた。翌年の2021年に開催された五輪の開会式に首相として参列したのは菅義偉首相(当時)だった。
 そして2023年、安倍氏は参議院選挙の応援演説中に凶弾に倒れ命を失う。
 2023年5月、G7広島サミットが開かれ、岸田文雄首相が議長を務める。サミット後の岸田氏には果たしてどんな運命が待ち構えているいるのだろうか。

議長会見に臨む安倍首相(当時) 背景は英虞湾 演出効果満点のローケーション 筆者撮影


アウトリーチ首脳 インド・韓国など8各国首脳 ゼレンスキー大統領はオンラインで参加
 G7広島サミットへの招待国は、G20(主要20カ国・地域)議長国のインドのほか、インドネシア、オーストラリア、韓国、クック諸島、コモロ、ブラジル、ベトナムの各国。
 韓国は、両国の最大の懸案だった徴用工問題をめぐり、韓国側が「解決策」を発表。日本側もこれを評価して4月16日に首脳会談が開かれた。関係改善が急速に進み、両国の首脳が互いに相手国を訪問する「シャトル外交」の再開でも合意し、G7で来日し関係改善にはずみがつくことが期待される。
 オーストラリアは「準同盟国とも言える存在」され、岸田首相は2022年10月にオーストラリアを訪問し、アルバニージー首相と2007年以来となる新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に署名。クアッド(日米豪印)メンバーの各国が広島にそろうことになる。
 インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)、クック諸島は太平洋諸島フォーラム(PIF)、コモロはアフリカ連合(AU)のそれぞれの議長国を務めている。ベトナムはASEANの主要国で高い経済成長を記録している。日本は途上国援助(ODA)などを通じて支援に力を入れている。
 中南米からはブラジルを招く。日本は、中南米諸国を「重要なパートナー」と位置づけて、関係を深めたいとしている。ブラジルは中ロを含む新興5カ国(BRICS)のメンバーでもあり、日米欧側に引き寄せたい狙いもある。
 国際機関は、国連、国際エネルギー機関(IEA)、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)が参加する。


2016年伊勢志摩サミットの外相会合は広島で開催、一行は厳島を訪問。当時、岸田氏は外相でホストを務めた。 2023広島サミットでは、首脳会合の一部のセッションやフォトセッションなどの開催が計画されている。画像出典 外務省フォト


G7広島サミットの開催経費は?
 外務省は、G7広島サミットの開催経費として、2023年度、170億8000万円を計上、2022年度分の88億6000万円を合わせると約259億4000万円に上る。
伊勢志摩サミット(231億6千万円)と比べると12・0%(27億8千万円)増加した。都市部での開催などで経費が膨らんだとしている。
 また年々急増している警備費については、今年度、警察庁は120億8800万円を計上、これまでの累計で300億円程度されている。
 警備態勢については、2016年のG7伊勢志摩サミットの約2万3000人(全国応援1万5000人)、4年前のG20大阪サミットの約3万2000人(全国応援1万8000人)規模とされているが、昨年7月の安倍元首相の銃撃事件、そして4月15日に和歌山県の漁港で発生した岸田首相襲撃事件を受けて、警備体制はさらに強化されることが予想され、史上最高の4万人に規模に膨らむことが予想され、警備費はさらに増える懸念が大きい。
 さらに首脳会合場の広島グランドプリンスホテルは、瀬戸内海に面しているため海上警備も重要となる。海上保安庁は全国から巡視船を集め史上最大の警備体制をとるとしてその警備費も加えると約400億円近くに上る可能性がある。
 ちなみに伊勢志摩サミット2016の警備は約340億円、北海道洞爺湖サミット2008では約331億円。
 地元広島県が負担する開催経費もうなぎ昇り、広島県は約83億円の予算を計上した。2016年の伊勢志摩サミットで三重県が負担したとされる約94億円に迫る勢いである。県とは別に広島市も約30億1千万円を補正予算で計上、県と市を合算すれば100億円を優に超える。
 外務省、警察省、海上保安庁、広島県、広島市の経費を合計すると開催経費の総額は700~800億円程度になる可能性がある。
 伊勢志摩サミット2016は約600億円、北海道洞爺湖サミット2008では約606億円だった。今回はこれを上回るのは確実だろう。
 また近年、外務省は開催地の決定にあたり地元自治体の負担を求める姿勢を打ち出している。2000年の九州・沖縄サミット(G8)では沖縄県が約77億円を負担、2008年の北海道洞爺湖サミット(G8)では北海道が約22億2千万円を負担している。今回は、広島県と市は、約100億円の地元負担金を背負う。
 今回のサミットでは、警備費の増加だけでなく、宮島でセッションやイベントの開催や各国の関係者が平和記念公園を訪問する機会予想され、経費はさらに膨張する思われる。
 700~800億円を投じて開催されるG7広島サミット、国際社会に強固な日本のリーダーシップを示してしっかりとした成果を上げないと国民は納得しない。

G7広島サミットの経済効果 約924億円
 G7広島サミット開催による経済効果が約924億円に上るとの試算を、関西大の宮本勝浩名誉教授が20日発表した。
 理論経済学が専門の宮本教授は「大都市での開催で警備費がかさむほか、世界的インフレによる経費高騰も考慮して計算した」と説明。「経済効果を最大限発展させるには、サミット後の観光客誘致に一層の力を入れるなど、地域を継続的に盛り上げる方策が必要」と指摘する。
 試算では、国や自治体による開催費の支出や、増加が見込まれる観光客の消費拡大で、広島県内に約674億4千万円の直接的な経済効果があると算出した。
 ちなみに、2016年伊勢志摩サミットでは、三重県は直接的な経済効果として1070億円、「ポストサミット」の経済効果として1489億円と数字を明らかにしている。

会場運営業務 委託先はコングレ 五輪談合事件で電通「排除」
 2023年3月9日、外務省は、G7広島サミットの会場運営業務を、会議場運営企業のコングレ(東京)に決めた。これまで会場運営業務を受注してきた広告最大手の電通が東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件に関わり指名停止処分を受けたため選定作業を急遽やり直した。サミット開会まで70日、「突貫作業」を余儀なくされている。
 外務省によると、グランドプリンスホテル広島(南区)での主会場設営や会議運営などを委託する。2月24日付で契約した。現時点で金額は明らかにしていないが、2016年G7伊勢志摩サミットで電通が受注した会議運営費は12億円だったという。
 外務省はは2022年11月に委託先を選ぶ入札手続きを始めたが、「万全な実施体制を確保するため」との理由で翌月に中止した。電通が五輪談合事件で東京地検特捜部の強制捜査を受けた後、入札仕様を変えたという。電通は伊勢志摩サミットのほか、大阪市で19年にあった20カ国・地域首脳会議(G20サミット)の会議運営も担っていた。
 再入札を告示したのは2023年1月で、ようなく委託先が決まった。コングレは伊勢志摩サミットでも一部関連業務を担っており、外務省G7広島サミット事務局は「業務遂行に十分な能力がある」としている。

伊勢志摩サミット わずか3日間のために28億5000万円かえてIMCアネックスと建設 「無駄遣い」の批判を浴びる
 G7サミットでは、「無駄遣い」とも思われる支出が横行する懸念が毎回つきまとう。
 2016年伊勢志摩サミットでは、外務省はIMCが設置されたメインアリーナに隣接する駐車場に、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの“アネックス”を仮設で建設した。日本の先端技術や伝統文化を発信するのがその目的である。建設工事は鴻池組が受注し総工費は28億5000万円、サミット開催の4日前に駆け込みで完成した。開催後は3億円の解体費用をかけて取り壊す予定である。
 アネックスには、日本庭園や政府広報展示、三重情報館、屋外展示場を設けた。
政府広報展示については、「医療・保健」コーナーでは介護ロボット・HONDAの歩行アシストやヒト型ロボット、「インフラ・交通」コーナーでは三菱リージョナルジェット、超電導リニア、新幹線E7系、「環境・エネルギー」では温室効果ガス観測技術衛星、エネループ(ソーラーストレージ装置)など、「復興・防災」では、地震観測システムや東日本大震災の現状や復興、「宇宙・深海」では、深海探査用ドローン・ほばりん、H3ロケット、8Kスーパーハイビジョンなどを展示した。
また屋外展示場では、TOYOTAやHONDAの水素自動車や電気自動車が展示されれ試乗も行われた。
サンアリーナから首脳会合場の志摩観光ホテル(賢島)までの距離は約二十キロ。三重県は日本の環境技術を各国にアピールしようと、報道関係者らの送迎にハイブリッド・バスを利用した。
 またプレス用レストランでは、地元の海産物や伊勢うどん、地酒などの「美しの国」、三重県をアピールする料理をずらりと並べて国内外のメディア担当者に地元グルメをアピールした。プレス用レストランで提供するメニューの8割以上が三重県産食材を使用したという。
 IMCアネックス(付属棟)が利用されたのはわずか3日間、延べ8000人のメディア関係者などが訪れたが、一般市民には解放されなかった。 
 G7サミット終了後、市民からわずか3日のために28億5000万円かけて建設し、取り壊すのは“無駄遣い”の象徴だと批判が高まり、三重県と外務省では、10日間程度、地元の小学生や一市民に公開をし、11月上旬、予定通り壊された。
 28億5000万円かけて、IMCアネックスを建設する必要が本当にあったのか、しっかりと検証して今回の広島サミットを開催するにあたって教訓にしてほしい。

新設されたIBC・アネックス G7首脳会合の3日間だけのために28億5000万円をかけて新設 閉幕後解体、解体費3億円 筆者撮影

新設されたIBC・アネックス 筆者撮影

展示フロア 筆者撮影


国際放送センター(IBC)と国際放送センター(IMC)
■ 国際メディアセンター((IMC:International Media Centre)とは何か?
 国際メディアセンター(IMC)は、新聞・放送・通信社・雑誌・インターネットなどすべての報道関係者の取材・編集・送出拠点である。
 放送機関等が使用する国際放送センター(IBC  International Broadcasting Center)が通常、同一の建物内に整備される。オリンピックやFIFAワールドカップなどではIBCの利用は高額の放送権料を支払って権利を取得しているRHBs(Right Holder Broasdcastings)に限定されている。IBCエリアは完全に分離されて、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが可能となる。
 これに対してG7サミットなどの国際会議では、放送機関、新聞、通信社、ウエッブメディアなどすべてのメディアがIBCの機能を利用でき、ホスト映像・音声の配信を無償で受けることが可能。
 国際放送センター(IBC)が、放送関係者用の施設であるのに対し、国際メディアセンター(IMC)は、幅広いメディア関係者の施設の総称である。
 国際メディアセンターに参加するプレスは、最も大規模な国際会議であるG7サミットの場合、邦人プレス3000人、海外プレス1000人、合わせて4000人程度)とされている。議長会見場1か所と各国首脳会見場(米国は除く)5か所程度が設置され、英、仏、独、伊の同時通訳が準備される。国際メディアセンターの延べ床面積は約1万平方メートル程度が必要となる。
 米国の主要放送局(ABC、CBS、NBC、CNN、FOX)は、大統領が出席する国際会議にあたっては“US Pool”を組み、ホスト国が準備する国際メディアセンターには参加せず、独自に別個、“US Pool”専用のプレスセンターを設立し、取材・編集・送出拠点とする。米国大統領の会見も国際メディアセンターの首脳会見場では行わず、別途、“US Pool”専用会見場で行われ、映像・音声は“US Pool”が管理する。
 “US Pool”が管理する映像・音声を世界各国の放送機関が利用する場合は、ABC、CBS、NBC、CNN、FOXのいずれかに提供としてもらう必要がある。たとえばNHKはABCから映像・音声の提供を受ける。
 既設の建造物で、国際メディアセンター(IMC)の十分なスペースが確保できて利用可能な場所が確保できない場合には、仮設で新たに建設する場合もある。
 北海道洞爺湖サミットでは、洞爺湖町のリゾート施設の駐車場に建設した。総床面積1万1000平方メートル、プレスセンター棟とサミット議長・各国首脳会見棟からなる仮設の建物で、総工費は28億2000万円、サミット開催後は取り壊された。
 伊勢志摩サミットでは、既存施設の三重県立サンアリーナに設置された。

G7北海道洞爺湖サミット IMC ルスツ・リゾート(洞爺湖町)2008年7月 筆者撮影

伊勢志摩サミット 国際メディアセンター 三重県立サンアリーナ 筆者撮影

国際放送メディアセンター内部 三重県営サンアリーナ 筆者撮影

■ 国際放送センター(IBC:International Broadcasting Centre)とは何か?
 国際放送センター(IBC)は、オリンピックやFIFAワールドカップ、世界陸上などの国際スポーツ競技大会やG7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議の開催時に設置される放送サービス・システム。
 IBCには、会議場や競技会場、イベント会場からのライブ中継映像・音声やENG取材映像が集められ、世界各国の放送機関等に配信される。IBC内には、IBCの“心臓部”であるマスター・コントロール・ルーム(MCR:Master Control Room)が設置され、各ベニューからライブで伝送されてくる映像・音声信号の調整・配信・録画などを行う。また世界各国の放送機関等の専用ブースや特設スタジオが設置され、全世界に向けて、会議や競技、イベントの中継映像・音声や記者リポート、ニュース素材等が発信される。最初に本格的な国際放送センターが設けられたのは1964年東京オリンピック大会で、現在のNHK放送センターにIBCが設置され、世界各国の放送機関等に映像・音声が配信され、放送を通して視聴者に届けられた。
 国際メディアセンター(IMC)と共用で、各種の会見が頻繁に行わる多言語同通サービス付きの複数の会見場やプレスデスク、レストランや銀行、郵便局、各ベニューへのシャトルバス・サービスなどが整備される。
 オリンピックやFIFAワールドカップ、国際陸上などで大規模なスポーツ・イベントで設置されるIBCは、高額の放送権料を支払い放送権を獲得したライツホルダー(RHBs)しか参加できない。競技映像・音声の権利は厳密に管理されRHBsのみが利用可能である。
 これに対して、G7サミットやG20サミット、APEC、気候変動枠組条約締約国会議(COP)、IMF世銀総会などの大規模な国際会議では、主催者が発行するアクレディを取得すれば、新聞社、通信社、放送機関などすべてのメディアが、すべて無償でホスト映像・音声の取得が可能である。
 国際放送センター(IBC)の設置は、国際メディアセンター(IMC)[以下参照] と同じ建物内に設置されることが多いが、ホスト映像・音声の利用がRHBsに限定されているオリンピックやFIFAワールドカップなどでは、IBCエリアを完全に分離して、IBCエリアにはRHBs関係者のみ立ち入りが限定される。
 一方、国際会議では、IBCエリアとプレスエリアは、同一エリアに整備されて分離はされず、すべてのプレス関係者の取材拠点となる。

東京オリンピック・パラリンピック大会のメディア施設(MPC/IBC)は東京ビックサイトに設営された。向かって左側がIBCエリア、右側がMPCエリア。オリンピックの場合、国際メディアセンター(IMC)と呼ばず、メインプレスセンター(MPC)と呼ぶ。機能的には同質の施設である。世界で最大規模のIBC/MPCを設置するのはオリンピック。筆者撮影

FIFAワールドカップQatar2022 では、ドーハ市内のWEST BAY地区にある世界最大級の展示場を有するドーハ見本市・会議場(Doha Exhibition and Convention Center)にIBC/MPCが設置された。 オリンピックに次ぐ規模である。出典 Qatar2022

■ ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)
 国際放送センター(IBC)を設置・運営する担当者をホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)と呼ぶ。ホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)は、会議やイベントの主催者から指名され、国際放送センター(IBC)の設置準備、システムの設計、機材の準備、設営、運用を担い、ホスト映像(国際映像)の制作・配信を、全責任を持って対応する。さらに首脳会議場やフォトセッション、関連イベント、記者会見などについては、中継車や機材を配置し、ライブで映像・音声を中継して、IBCに伝送する。またENGクルーを複数、配置して各種の関連イベントなどを撮影しIBCに送り込む。
 国際会議の場合は、国営放送がある国では、国営放送がホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)の指名を受けることが多い。日本では、サミットやAPECなどの大型国際会議では、これまでは、外務省の要請を受けて、NHKが担当していた。
G7広島サミットでは、外務省が公募(随意契約)を行い、NHKをホスト・ブロードキャスターとして指名した。契約金額は約6億5000万円程度。
これに対して、COP10名古屋やIMF・世銀総会では、競争入札でホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)が決まった。欧州ではEBU(欧州放送連合)が指名される場合が多い。一方、米国や東南アジア、オセアニア等では、競争入札が行われ、落札した企業が担当するが、必ずしも放送事業者とは限らず、民間のメディア企業がIBC設営・運用業務を担うことが多い。
 スポーツ・イベントの場合は、主催者からイベントの放送権を独占取得した場合には、その放送事業者やメディア企業がホスト・ブロードキャスターとなる。ホスト・ブロードキャスターは、放送権を、世界各国の放送事業者やメディア企業に譲渡してビジネスにする。
 オリンピックのホスト・ブロードキャスター(Host Broadcaster)はオリンピック放送機構(OBS)、FIFAワールドカップはホスト・ブロードキャステヒング・サービス(HBS)が独占的に担当している。

■ G7広島サミットのIBCシステムは一世代前の旧態依然としたシステム
 オリンピックやFIFAワールドカップなどのホスト映像は、4K高精細映像で制作・配信するのがデフォルトとなっている。これに対し、G7広島では、一世代前のHD画質対応、4K8K高精細映像の取り組みが一切ない。世界最先端を自負する日本の映像技術をG7各国のメディアに示す格好の機会なのに、その意気込みがまったく感じられない。
 総務省は、2018年12月、世界に先駆けて4K8K衛星放送を立ち上げ、4K8Kの普及拡大に国を挙げて邁進している。 4K8Kテレビの普及は1500万台を超え、順調に推移している。こうした中で、4K映像の取り組みを行わないのはお余りにも粗末である。
 NHKは、膨大な予算を投じて、8K高精細映像の制作・編集設備を構築した。財源は受信料。これまでオリンピックやFIFAワールドカップ、ビックイベントで8Kパブリックビューイングを実施して視聴者に還元してきた。
 G7各国の首脳やメディアが集まる場で、8K映像の威力を示すパブリックビューイングなど実施するのがNHKの責務だろう。
 それにしても、NHKは受信料値下げやBS放送の1波削減に奔走して、8Kサービスへの取り組みは完全に放棄しているように見える。
 このままの状態では、NHKは受信料の「無駄遣い」と非難されてもいたしかたない。



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2023年4月20日
Copyright (C) 2021 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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