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東京五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (4)

2023年03月01日 18時21分07秒 | 政治
東京都 海の森水上競技場などの競技場整備見直しで413億円削減 V2予算1兆3500億円に 東京都「五輪関連経費」 8100億円を公表
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (4)





東京都の五輪施設整備費 1828億円 413億円削減
 2017年11月6日、東京都は新たに建設する8つ競技会場の整備費は合計1828億円で、これまでの2241億円から413億円削減すると公表した。
 五輪施設整備費は、五輪招致後の策定された当初計画では4584億円だったが、2014年11月、舛添元都知事が経費削減乗り出し、夢の島ユース・プラザ゙・アリーナA/Bや若洲オリンピックマリーナの建設を中止するなど2241億円に大幅に削減した。
 2016年夏、舛添氏の辞任を受けて都知事に就任した小池百合子知事は、五輪施設整備費の「見直し」に再び乗り出し、合計2125億円の巨費が投じられる「オリンピック アクアティクスセンター」(水泳)、「海の森競技場」(ボート/カヌー)、「有明アリーナ」(バレーボール)の3競技場の整備計画の再検討に取り組んだ。とりわけ「海の森競技場」は、巨額の建設費に世論から厳しい批判を浴び、「見直し」対象の象徴となった。
 小池都知事は都政改革本部に調査チーム(座長上山信一慶応大学教授)を設置し、開催計画の“徹底”検証を進め、開催費総額は「3兆円を超える可能性」とし、歯止めがなく膨張する開催費に警鐘を鳴らした。そして3競技場の「見直し」を巡って、五輪組織員会の森会長と激しい“つばぜり合い”が始まる。
 一方、2020年東京大会の開催経費膨張と東京都と組織委員会の対立に危機感を抱いた国際オリンピック委員会(IOC)は、2016年末に、東京都、国、組織委員会、IOCで構成する「4者協議」を立ち上げることで、森氏と小池氏の対立を解消する「調停」に乗り出した。
 「4者協議」の狙いは、肥大化する開催経費に歯止めをかけることで、組織委員会が開催経費の総額を「2兆円程度」としたが、IOCはこれを認めず削減を求め、「1兆8000億円」とすることで合意した。しかし、IOCは“更なる削減”を組織委員会に強く求めた。
 小池都知事は、結局、焦点の海の森競技場は建設計画は大幅に見直して建設することし、水泳、バレーボール競技場も見直しを行った上で整備することで「妥協」する。「アクアティクスセンター」(水泳)は、514~529億円、「海の森水上競技場」(ボート/カヌー)は 298億円、「有明アリーナ」(バレーボール)は339億円、計1160億円程度で整備するして、「4者協議」で明らかにした。

 小池知事は、その後さらに見直しを行い、水泳、バレーボール、ボート・カヌーの3競技会場の整備費は計1232億円として、「4者協議」で公表した案より約70億円増えた。
 「アクアティクスセンター」では、着工後に見つかった敷地地下の汚染土の処理費38億円、「有明アリーナ」では、障害者らの利便性を高めるためエレベーターなどを増設、3競技場では太陽光発電などの環境対策の設備費25億円が追加されたのが増加した要因である。
 一方、経費削減の努力も見られた。
 「有明テニスの森」では、一部の客席を仮設にして34億円を減らしたり、代々木公園付近の歩道橋新設を中止したりして23億円を削減した。
 この結果、計413億円の削減を行い、8つ競技会場の整備費は合計1828億円となった。
 五輪大会の競技場整備費は、当初計画では4584億円、舛添元都知事の「見直し」で2241億円、そして今回公表された計画では1828億円と大幅に削減された。

 新たな競技場の整備費が相当程度削減されたことについては評価したい。
 しかし最大の問題は、“五輪開催後”の利用計画にまだ疑念が残されていることである。
 海の森競技場では、ボート/カヌー競技大会の開催は果たしてどの位あるのだろうか。イベント開催を目指すとしているが成果を上げられるのだろうか。
 「アクアティクスセンター」は、すぐ隣に「辰巳国際水泳場」に同種の施設があり過剰な施設をどう有効に利用していくのか疑念が残る。
 さらに8つの競技場の保守・運営費や修繕費などの維持費の負担も、今後、40年、50年、重荷となってのしかかるのは明らかである。
 2016年9月、小池東京都知事は、リオデジャネイロ五輪に出席して帰国後に日本記者クラブで記者会見に臨み、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックの仮設競技会場が解体されて公立学校の建設資材に使われることに触れて、2020年東京大会では「リデュース(削減)、リユース(再使用)、リサイクル(再生利用)の3Rをベースにして、『もったいない』という言葉を世界語にしていきたい」と述べた。そして、2020東京五輪大会を開催するにあたって、「もったいない Mottainai」のコンセプトを掲げて国際的に発信していくと宣言した。
 8つの競技会場を“負のレガシー”(負の遺産)にしないという重い課題が東京都は背負った。


舛添元都知事の競技場整備見直し
出典 都政改革本部 五輪調査チーム調査報告書 Ver.0.9 “1964 again”を越えて 2016年9月29日


小池都知事の見直し計画 1828億円に削減 2017年11月
IMSSR作成

負のレガシー(負の遺産)の懸念 五輪新設競技場
 五輪開催後は、整備された壮大な競技施設の大会後“赤字”にならないのだろうか? 利用料収入などで賄える展望が果たしてあるのだろうか? 
 巨額の“赤字”が毎年生まれるのであれば、今後約50年間以上に渡って、東京都民は負担し続けなければならない。 五輪開催期間はオリンピックが17日、パラリンピックが13日、合わせてわずか30日間である。施設の新設は極力抑制しなければならないのは明らかである。
 海の森水上競技場と東京アクアティクスセンター、有明アリーナの3会場について、東京都が大会開催後の維持管理費を現時点で計約958億円と試算していたことが明らかになった。整備費の約8割にのぼる。(朝日新聞 2016年12月4日)
 大規模修繕費の内訳は、東京アクアティクスセンターが562億円、海の森水上競技場が102億円、有明アリーナが294億円で、耐用年数を50~65年として試算した。東京都は東京体育館など既存施設の維持管理費を参考にして、毎年の補修費や大規模修繕費などの経費を参考にして算出した。
 都が5月にまとめた運営計画の中間案では、3施設の来場者は年35万~140万人。小池氏が選んだ調査チームの報告によると、「アクア」と「海の森」は赤字が見込まれ、黒字見込みはコンサート会場の需要がある「有明」のみだった。
 日本は確実に少子高齢化社会を迎える。五輪大会で整備される壮大な施設は確実に次世代の負担となる。五輪大会開催は、“レガシー”(未来への遺産)どころか“負のレガシー(負の遺産)”になる懸念が強まった。

「350億円」縮減 「1兆3500億円」(V2予算)
 2017年12月22日、東京2020大会組織委員会は、大会開催経費について、1兆3500億円(予備費を含めると最大で1兆6500億円)とする新たな試算(V2)を発表した。2017年5月に東京都、組織委、国で総額1兆3850億円とした大枠合意から更に350億円削減した。
 施設整備費やテクノロジー費など会場関係費用については仮設会場の客席数を減らしたり、テントやプレハブなど仮設施設の資材については海外からも含めて幅広く見積もりを取り、資材単価を見直したりして250億円を削減して8100億円とし、輸送やセキュリティーなどの大会関係費用については100億円削減して5400億円とした。
 開催経費の負担額は東京都と組織委が6000億円、国が1500億円でV1予算と同様とした。
 国際オリンピック委員会(IOC)は10億(約1100億円)ドルの経費節減を求めていたが、V2では「350億円」縮減に留まった。組織委の武藤敏郎事務総長は来年末発表するV3では削減にさらに努める考えを示した。



東京都 五輪関連経費 8100億円計上
 2018年1月、東京都は新たに約8100億円を、「大会関連経費」として計上すると発表した。これまで公表していた大会開催の直接経費の東京都負担分の6000億円以外の大会開催に関連する経費である。
 この結果、2020東京五輪大会の開催経費の総額は、大会組織委員会が公表している1兆3500億円に約8100億円を加えると約2兆1600億円に達することが明らかになった。
 東京都は、五輪開催経費を、「大会開催に伴い、専ら大会のために行われる大会に直接必要となる業務」(大会経費)と「大会にも資するが大会後もレガシーとして残るものか引き続き展開され業務」(大会に直接関わる事業)、「大会にも資するが大会の有無にかかわらず、そもそも行政目的のために行われる業務」(大会に直接関わらないが開催に資する事業)の3つのカテゴリーに分類した。
 「大会経費」には、仮設施設の整備、競技場等の賃貸料、電力や水道、通信などのユーティリティ、警備や輸送、オペレーション、開閉式や聖火リレーなどの大会直接経費が入る。「大会に直接関わる事業」は、バリアフリー対策、関連文化事業、都市ボランティア3万人の育成、英語道路標識などで、「大会に直接関わらないが開催に資する事業」は、都内の無電柱化などの都市インフラ整備、観光振興、東京・日本の魅力発信などである。
 今回公表した約8100億円の経費は、「大会に直接関わる事業」が約4400億円、「大会に直接関わらないが開催に資する事業」が約3700億円としている。
 五輪大会は、「狭義」の直接経費の「大会経費」だけでは開催できないのは常識であろう。「大会にも資するが大会後のレガシーとして残る業務」や「大会にも資するが行政目的で行われる業務」も含めて総合的に基盤整備をどう行うかが、大会成功のキーポイントとなる。
 東京都は、五輪開催経費を幅広く捉え、その総額の情報を開示することで、都民に誤解を招かないようにしたいとしている。都政改革本部の調査チームが指摘した「とどめなく費用が増える懸念」を頭に置いた対応だと言えよう。五輪経費隠しや五輪便乗支出が横行する歯止めにもなる。
 東京都のこうした姿勢は、大いに評価したい。情報を幅広く開示して、無駄な経費かどうかは都民に判断に委ねるべきである。
 これに対して国の姿勢は、極めて問題が多い。各省庁の行政経費に五輪開催経費を極力潜り込ませる「五輪経費隠し」が常套化している。国の五輪開催経費は、新国立競技場の建設費、1200億円とパラリンピック開催経費300億円の合計1500は闇に包まれている。
 これでは、国民が五輪開催経費の肥大化を監視することができない。
 2020東京五輪大会の開催にあたって世界に宣言したスローガンは「世界一コンパクトな大会」である。その約束はどこに行ったのだろうか。
 未だに明らかにされていない国の五輪開催経費も含めると3兆円は優に超えることは必至だろう。それは都政改革本部の調査チームが指摘した「3兆円」と合致する。
 依然として五輪開催経費の「青天井体質」に歯止めがかからない。


出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局

2020東京大会 33競技339種目決まる
 2017年6月9日、国際オリンピック委員会(IOC)は、ローザンヌ(スイス)で理事会を開催し、2020東京オリンピック競技大会の種目プログラム(すべての実施種目)と選手数の上限を発表した。
 IOCは、当初、競技数は28競技とし、新たにバスケットボール3×3や自転車BMXフリースタイルなどの種目を加えて、種目数は321種目、選手数の上限は10,616人としていた。
 今回、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を含め、競技数は33競技、種目数は339種目とし、選手数の上限を11,900人とすると正式に決定した。

水泳/アーチェリー/陸上競技/バドミントン/バスケットボール/ボクシング/カヌー/自転車競技/馬術/フェンシング/サッカー/ゴルフ/体操/ハンドボール/ホッケー/柔道/近代五種/ボート/ラグビー/セーリング/射撃/卓球/テコンドー/テニス/トライアスロン/バレーボール/ウエイトリフティング/レスリング
(追加種目)
野球・ソフトボール/空手/スケートボード/スポーツクライミング/サーフィン

自転車(ロードレース)は富士スピードウェイ、野球・ソフトボール(予選)は福島あづま球場
 2018年2月3日、平昌(韓国)で行われた国際オリンピック委員会(IOC)理事会において、東京大会の競技会場について、競歩は皇居外苑とし、自転車競技(ロードレース)のスタート地点を武蔵野の森公園、ゴール地点を富士スピードウェイとすることを決めた。
 自転車ロードレースは、当初、スタート地点が皇居、ゴール地点が武蔵野の森公園としていたが、スタートとゴール共に都心で大勢の観客が訪れやすい皇居外苑に変更していた。その後、競技団体の要望で、富士山を背景にしてテレビ映りが良く、選手の実力差が出る勾配のある難しいコースが設定できるとして富士山麓が選ばれた。 また個人タイムトライアルも富士スピードウェイで開催する。
 これでサッカー会場を除く37(パラリンピックを含めると38)か所の競技会場が決まった。
 サッカー会場については、国際サッカー連盟(FIFA)が競技スケジュールと会場を一体的に承認する方針で、競技スケジュールの調整に時間を要するとし、決定が先送りなっている。
 追加5競技の会場については、ソフトボールの主会場は横浜スタジアム、空手が本武道館(東京都千代田区)、スポーツクライミングとスケートボードは仮設の青海アーバンスポーツ会場(東京都江東区)、サーフィンは釣ケ崎海岸サーフィン会場(千葉県一宮町)することで、2017年12月に承認されている。
 野球・ソフトの福島開催については、WBSCと大会方式や球場選びで調整がついていないことから結論は先送りにされたが、2017年3月、福島あずま球場で野球とソフトボールの予選を開催することが決まった。最終的にソフトボール6試合、野球を1試合、合計で7試合開催になった。

「準備は1年遅れている」「誠実に疑問に答えない」 警告を受けた2020東京大会組織委
 
「誠実に疑問に答えを」 コーツIOC副会長
 2018年4月24日、2020東京五輪大会の準備状況をチェックするIOC調査チームの(委員長 コーツIOC副会長)は、2020年東京大会組織員会に対し、開催準備の進捗状況と計画について、より誠実に質問に答えるように要請した。
 4月15日から20日、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機(GAISF)のスポーツ・アコード(Sport Accord)会議などで、複数の国際競技連盟(International Sports Federations IFs)が、2020東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判した。
 これを受けて、IOC調査チームが来日し、4月23日24日の2日間に渡って2020東京大会の準備状況のチェックを行った。
 コーツ副会長は、準備作業は、大部分は順調に進んでいるが、2020東京大会組織員会は進行状況を完全に説明することを躊躇していると懸念を示した。
 その理由について、 コーツ副会長は、直接的で明快な表現をするオーストラリア人と、多くのポイントを留保する曖昧な表現をする日本人の文化的相違があるのではと述べたが、婉曲表現で日本の姿勢を批判した。
 2018年2月に開催された平昌冬季五輪が成功を収め、スポットライトが東京に移る中、大会準備に関して答えを得られない五輪関係者のいら立ちはさらに増すだろうという警告である。

柔道、セーリング、トライアスロンに批判
 国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟は、柔道とセーリング、トライアスロンの種目について、開催準備の遅れに懸念を表明している。国際柔道連盟は、2019年に開催される柔道競技のプレ大会の準備状況の遅れを指摘し、国際セーリング連盟は、江の島で開催されるセーリング競技について、地元漁業者との調整が進まず、コース決定が遅れていることに不満を示した。またトライアスロン競技連盟は東京湾の水質汚染問題について強い懸念が示された。


お台場海浜公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

マラソン水泳・トライアスロン 深刻な東京湾の水質汚染
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソン水泳とトライアスロンが行われるお台場周辺の海域で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。
 この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、オリンピック開催時期の21日間、パラリンピック開催時期のうち5日間、トライアスロンとマラソンスイミングの競技会場になっているお台場海浜公園周辺の水質・水温を調査したものだ。
 調査を行った2017年8月は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
 調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化すること分かった。今回の調査期間では、国際競技団体の定める水質・水温基準達成日数は、マラソンスイミング基準では10日で約半分、トライアスロン基準はで6日で約3分の1に留まった。
 お台場海浜公園周辺の競技予定水域は、競技を開催する水質基準をはるかに上回る汚水が満ち溢れていることが示されたのである。
参加選手の健康問題を引き起こす懸念が深まった。


お台場海浜公園における水質・水温調査地点  出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局

 組織委では、雨期に東京湾から流れ込む細菌の量を抑制するために、競技予定水域を水中スクリーンを設置して東京湾から遮断するなど様々の実験を行い、水質改善に努めているとした。
 コーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。今年と来年に行われる水のスクリーニング、カーテンの入れ方などの実験についてプレゼンテーションを受けた。この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。




お台場海浜公園における水質・水温調査  出典 東京都オリンピック・パラリンピック事務局

 東京湾の水質改善は、着々と進んではいるが、とても海水浴ができるような“きれいな海”とはいえない。東京湾に流れ込む川からは大量の汚染水が流れ込む。海底にはヘドロが蓄積している。オリンピック開催期間は真夏、ゲリラ豪雨は避けられない。東京湾は、“汚水の海”になることは必至だ。
そもそも東京湾に、選手を泳がせて、マラソンスイミングやトライアスロンを開催しようとすること自体、無謀なのではないか。

「水面に顔をつけない」が条件の海水浴場
 2017年夏、葛西臨海公園に海水浴場がオープンした。水質改善が進んだ東京湾のシンボルとして話題になった。
かつては東京湾には葛西のほか大森海岸、芝浦など各所に海水浴場があったが、高度経済成長期に臨界工業地帯の工場排水や埋め立て工事で1960年代に水質悪化が進み、海水浴場は姿を消した。
東京湾では、約50年間海水浴が禁止され、房総半島や三浦半島までいかないと海水浴ができなかった。
 港区では、「泳げる海、お台場!」をスローガンに掲げ、お台場海浜公園に海水浴場を開設しようとする取り組みに挑んでいる。
 現在は、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため通常は遊泳禁止である。2017年7月29日(土曜)・30日(日曜)の2日間、範囲を限定し、安全面等に配慮しながら行う“海水浴体験”を開催し、訪れた親子連れは、“海水浴”ではなく、ボート遊びや水遊びを楽しんだという。
 しかし、なんと「水面に顔をつけない」ことが条件の“海水浴体験”だった。
 これでは海水浴場と到底、言えないだろう。
 お台場の海は、「水面に顔をつけない」程度の水質しか保証されていないのである。この海で、マラソンスイミング(水泳)やトライアスロンの競技を開催すれば、参加選手は“汚染”された海水に顔をつけ、海水を口に含まざると得なない。選手の健康問題を組織委員会はどう考えているのだろうか。
 なぜ、素晴らしい自然環境に囲まれたきれいな海で開催しないのか。それまでしてお台場の開催にこだわる姿勢には“良識”を疑う。

東京オリンピック・パラリンピックの全競技会場決まる IOC承認
 2018年5月2日、国際オリンピック委員会(IOC)は、スイス・ローザンヌで開いた理事会で2020年東京五輪大会のサッカー7会場を一括承認した。これで東京オリンピック・パラリンピックの43競技会場がすべて決まった。(オリンピッの競技会場としては42会場)。
開催される競技数は、東京大会組織委員会が提案した追加種目、5競技18種目を加え、合計競技数は33競技、種目数は339種目で、選手数の上限を11,900人とすることが決定されている。
 今回、承認されたのは「札幌ドーム」、「宮城スタジアム」、「茨城カシマスタジアム」、「埼玉スタジアム」、「横浜国際総合競技場」、「新国立競技場」、「東京スタジアム」の7会場で、決勝は男子が「横浜国際総合競技場」、女子は「新国立競技場」で行う案が有力とされている。
 今回承認された43の競技会場の内、新設施設18か所(恒久施設8/仮設施設10)、既設施設25か所を整備するとしている。既設施設の利用率は約58%となり、大会組織委員会では最大限既存施設を利用したと胸を張る。
 しかし、競技会場の決定に至る経過は、相次いだ“迷走”と“混迷”繰り返した結果である。国際オリンピック委員会(IOC)や世界各国からも厳しい視線が注がれた。
 当初計画の約3倍の「3088億円」の建設に膨張し世論から激しい批判を浴び、ザハ・ハディド案を撤回して“仕切り直し”に追い込まれた「新国立競技場」、東京都の整備費が「4584億円」にも達することが判明して、「建設中止」や「会場変更」、「規模縮小」が相次いだ競技会場建設、「無駄遣い」の象徴となった「海の森水上競技場」の建設問題、唖然とする混乱が繰り返された。
 2020東京大会の開催にあたって掲げられたキャッチフレーズは、「世界一コンパクトな大会」、そのキャッチフレーズはどこかに吹き飛んでしまった。
 競技場やインフラを建設すると、建設費だけでなく、維持管理、修繕費などの膨大な後年度負担が生れることは常識である。施設の利用料収入で収支を合わせることができれば問題は生まれないが、「赤字」になると、今後40年、50年、大きな負担を都民や国民が背負わされることになる。
 日本は、今後、超高齢化社会に突入することが明らかな中で、コンパクトでスリムな社会の求められている中で、競技場やインフラ整備は必要最小限にとどめるべきであろう。

東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011億円支出 会計検査院指摘
 2018年10月4日、会計検査院は2020東京オリンピック・パラリンピックの開催経費ついて、平成25年度から29年度までの5年間に国が支出した開催経費が約8011億円に上ったと指摘した。
 これまで大会組織委員会が明らかにしていた開催経費は、総額約1兆3500億円で、このうち大会組織員会は約6000億円を、東京都が約6000億円、国が新国立競技場の建設費の一部、1200億円やパラリンピック経費の一部、300億円の合わせて約1500億円を負担するとしていた。
 これに対し会計検査院は、各省庁の関連施策費を集計した結果、国は1500億円を含めて平成25~29年度に8011億9000万円を支出していると指摘した。
 今回の指摘で、組織委が公表した国の負担分1500億円から除外した競技場周辺の道路輸送インフラの整備(国土交通省)やセキュリティー対策(警察庁)、熱中症に関する普及啓発(環境省)などの約280事業に対し、約6500億円が使われていたことが明らかにした。
 五輪開催費用については、今年1月、東京都は組織委公表分の都の予算約6000億円とは別に約8100億円を関連予算として支出する計画を明らかにしている。検査院によると、組織委が公表した予算、1兆3500億円には「大会に直接必要なもの」に限られ、国の省庁や都庁が、五輪開催経費とせず、一般の行政経費として組んだ予算は含まれていないという。
 組織員会、東京都、国の五輪関連経費を改めて合計すると、約2兆8100億円となり、今後に支出が予定される経費も含めると、「3兆円」超は必至である。




出典「東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組状況等に関する会計検査の結果についての報告書」 会計検査院

五輪大会開催経費 「1725億円」 国、会計検査院に反論
 2018年11月30日、桜田義孝五輪担当相は、2020東京五輪大会に、国が2013~2017年の5年間に支出した経費は53事業で「1725億円」とする調査結果を公表した。会計検査院の「8011億円」という指摘に対し、内閣官房が精査した。
 桜田氏は、五輪関係の経費とそれ以外の経費の線引きを明確に示したと説明し、「透明性を確保し、国民の理解を得るために今後も支出段階で集計、公表していく」と述べた。
 2020東京五輪大会に開催経費については、2017年12月22日、大会会組織委員会は、総額「1兆3500億円で、東京都が「6000億円」、大会組織委員会が「6000億円」、国が「1500億円」を負担するとした。
 これに対し、11月4日、会計検査院は「1500億円」を大幅に上回る「8011億円」が、すでにこの5年間で支出されたとの指摘を国会に報告し、政府に経費の全体像を分かりやすく示すよう求めた。
 
 内閣官房では、大会に関連すると指摘された計8011億円の286事業について、(1)選手への支援など「大会の準備、運営に特に資する事業」(1725億円)(2)気象衛星の打ち上げなど「本来の行政目的のために実施する事業」(826億円)(3)道路整備など「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(5461億円)の三つに分類し、五輪大会開催のための国の支出は(1)の「1725億円」だとした。

 (1)には、新国立競技場の整備費の国の負担分(744億円)やパラリンピックの準備費(300億円)が、(2)は気象衛星の打ち上げ関連費用(371億円)など29事業、826億円が含まれている。
 (3)は首都高速などの道路整備費(1390億円)、水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費(569億円)など208事業で合わせて5461億円と大半を占めている。
 このほか、会計検査院が指摘した8011億円に含まれていないが、大会に直接関連する事業として国立代々木競技場など5施設の整備や改修のための国庫補助金を直近5年間で約34億円支出したと明らかにした。
 しかし、五輪大会開催経費を「1725億円」する国の主張は、明らかに「五輪経費隠し」、膨れ上がった五輪開催経費をなるべく低く見せかけて、世論の批判をかわそうとする姿勢が見え隠れする。





 会計検査院の指摘に関して大会関係者は、「関連するにしてすべて五輪経費として積み上げるのはおかしい」とか「数字が一人歩きしているだけで、これで無駄遣いしていると思われたらミスリードになる」など、反発する声が上がっているとされている。
 しかし、五輪開催経費は、五輪開催との関連性の「濃淡」に関わらず、組織委や東京都や国はすべてを明らかにすべきだ。そして国民に対しその施策の必要性を説明する責任を負うだろう。その上で、その支出項目が無駄遣いなのか、妥当なのかどうかは国民が判断していくべきだ。全体像の実態が見えなければ経費膨張のコントロールも不可能で、五輪開催経費の「青天井体質」は止められない。

五輪開催経費(V3予算)「1兆3500億円」維持 削減できず
 2018年12月21日、大会組織委員会と東京都、国は、東京2020大会の開催経費の総額を1兆3500億円(予備費1000億円~3000億円除く)とするV3予算を公表した。
 1年前の2017年12月22日に明らかにしたV2予算、1兆3500億円を精査したもので、経費圧縮は実現できず、V2予算と同額となった。
 武藤敏郎事務総長は、国際オリンピック委員会(IOC)の要請に答えて、V3ではさらに経費削減に努める考えを示していたが、開催計画が具体化する中でV2では計上していなかった支出や金額が明らかになったほか、新たに発生した項目への支出が増えて「圧縮は限界」として、V2予算と同額となった。
 さらに問題なのは、2018年10月に会計検査院が指摘した開催経費、「8011億円」について、V3予算を策定する中で、一切、無視して反映しなかったことである。国際オリンピック委員会(IOC)からV2予算、「1兆3500億円」からの更なる削減を求められていいた中で、「1兆3500億円」は何が何でも死守しなければならない額であった。会計検査院の「8011億円」の指摘に耳を貸す余裕はなかった。国は、「8011億円」の内、選手への支援など「大会の準備、運営に特に資する事業」として「1725」億円は認めているのである。V3予算では、国の支出は新国立競技場と整備費とパラリンピックの開催経費の一部しか計上していない。 一方。東京都は、大会組織委員会が計上している「6000億円」の他に、五輪関連経費「8100億円」を予算化していることを明らかにしている。
 こうして、V3予算は、「1兆3500億円」となり、五輪開催経費の実態からは遠くかけ離れた予算となった。
 「五輪経費隠し」の体質はまったく改まらない。2020東京五輪大会の開催経費は一体いくらになるのか国民に明らかにすべきだ。
 果てしなく膨張する五輪開催経費、これでは五輪大会開催のレガシーを語る資格はない。

大会組織委員会 約1200億円の仮設オーバーレイ工事を発注
 2019年9月24日、大会組織委員会は全43競技会場の内、41会場の仮設オーバーレイ工事の契約を締結したと発表した。残りの1件は契約手続き中で、もう1件は価格交渉中としている。
 41会場の中で、最高額は馬事公苑で約114.2億円(大成建設)、次は国立競技場で62.8億円(内部・周辺の神宮外苑地区 大成建設)、三番目は陸上自衛隊朝霞訓練場の約57.8億円である。
 その他、有明テニスの森が約49.4億円(大和ハウス)、伊豆ベロドロームが47.7億円(整備工事 清水建設/仮設建物 大和ハウス)、海の森水上競技場が42.9億円(大和ハウス)、潮風公園が40.4億円(大和リース)、東京国際フォーラムが37.3億円(戸田建設)、有明アーバンスポーツパークが37億円(大和リース)、夢の島公園アーチェリー場が36.4億円(ピコ・日本建設)となっている。
 仮設オーバーレイ工事の工事費は、昨年の四者協議でコーツ調整委員長から高額過ぎるとして、仕様や発注方式の見直しを図り、経費削減に努めるように要請をされていた。
 それでも工事費の総額は、1200億円という巨額の経費が支出される。
 仮設工事なので、大会終了後は取り壊される。オリンピックの開催期間は7月24日から8月9日までの17日間、パラリンピックが8月25日から9月6日までの13日間、合わせて30日間である。わずか30日間のために1200億円、思わず考え込まされる巨額の経費である。
 やはり五輪大会の肥大化の歯止めは史上命題だろう。

五輪関連支出、1兆600億円 会計検査院指摘 五輪開催経費3兆円超へ
 2019年12月4日、会計検査院は2020年東京五輪・パラリンピックの関連支出が18年度までの6年間に約1兆600億円に上ったとの調査報告書をまとめ、国会に提出した。この中には政府が関連性が低いなどとして、五輪関連予算に計上していない事業も多数含まれている。検査院は、国民の理解を得るためには、「業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して公表に努めるべき」とし、「大会終了後のレガシーの創出に努めること」と指摘した。

 2018年10月、会計検査院は政府の2020東京五輪大会についての「取組状況報告」に記載された286事業を調査して初めて「五輪関連経費」の調査結果を明らかにして、2017年度までの5年間に国は約8011億円を支出したと指摘した。しかし、大会組織委員会が公表したV3予算では国の負担額は約1500億円、その乖離が問題になった。
 今回、会計検査院が指摘した関連支出額は、前回指摘した8011億円から2018年度の1年間で約2580億円増え、約1兆600億円になったとした。
 大会組織員会では、2018年12月、総額1兆3500億円のV3予算を明らかにしている。それによると、大会組織委員会6000億円、東京都6000億円、国1500億円とし、1兆3500億円とは別枠で予備費を最大3000億円とした。
 東京都は、V3予算とは別に「五輪開催関連経費」として約8100億円を支出することを明らかにしているため、約1兆600億円も合わせると、すでに「五輪関連経費」の総額は約3兆円を優に上回ることが明らかになった。

 これに対して、内閣官房の大会推進本部は指摘された8011億円について、大会への関連度を3段階で分類し、Aは「大会に特に資する」(約1725億円)、Bは「大会に直接資する金額を算出することが困難」(約5461億円)、Cは「大会との関連性が低い」(約826億円)と仕分けし、「五輪関連経費」はAの約1725億円だけだと反論し、残りの「B・C分類」は本来の行政目的の事業だとして、関連経費には計上しないとした。
 その後2019年1月、内閣官房の大会推進本部は、約1380億円を「五輪関連経費」と認め、V3予算で計上している新国立競技場の整備費など約1500億円を加えた約2880億円が国の「五輪関連経費」の範疇だとした。それにしても会計検査院が指摘した1兆600億円との隔たりは大きい。

 1兆600億円の内訳は、約7900億円が「大会の準備や運営経費」として、セキュリティー対策やアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れ、暑さ対策・環境対策、メダル獲得にむけた競技力強化などの経費で占められている。この内、暑さ対策・環境対策が最も多く、2779億円、続いてアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れが2081億円となっている。
 2018年度はサイバーセキュリティー対策やテロ対策、大会運営のセキュリティ対策費の支出が大幅に増え、2017年度の倍の約148億円に上った。
 また今回も公表されていない経費が明らかになった。警察庁が全国から動員する警察官の待機施設費用として約132億円が関連予算として公表していなかったと指摘した。
 さらに会計検査院は大会後のレガシー(遺産)を見据えた「大会を通じた新しい日本の創造」の支出、159事業、約2695億円を「五輪関連経費」とした。
 被災地の復興・地域の活性化、日本の技術力の発信、ICT化や水素エネルギー、観光振興や和食・和の文化発信強化、クールジャパン推進経費などが含まれている。
 こうした支出はいずれも政府は「五輪関連経費」として認めていないが、政府予算の中の位置づけとしては「五輪関連予算」として予算化されているのである。
 問題は、「五輪便乗」予算になっていないかの検証だろう。東日本大震災復興予算の使い方でも「便乗」支出が問題になった。次世代のレガシーになる支出なのか、無駄遣いなのかしっかり見極める必要がある。

 その他に国会に報告する五輪関連施策に記載されていないなどの理由で非公表とされた支出も計207億円あったという。検査院はオリパラ事務局を設置している内閣官房に対し、各府省から情報を集約、業務内容や経費を把握して公表するよう求めた。
 内閣官房は「指摘は五輪との関連性が低いものまで一律に集計したものと受け止めている。大会に特に資する事業についてはしっかりと整理した上で分類を公表していきたい」としている。






出典 会計検査院

「レガシー経費」は「五輪開催経費」
 国際オリンピック委員会(IOC)は、開催都市に対して、単に競技大会を開催し成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求め、開催都市に対して、レガシー(Legacy)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けている。
 レガシーを実現する経費、「レガシー経費」は、開催都市に課せられた「五輪開催経費」とするのが当然の帰結だ。
 五輪大会は、一過性のイベントではなく、持続可能なレガシー(Legacy)を残さなければならないことが開催地に義務付けられていることを忘れてはならない。
 政府は「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(Bカテゴリー)は「五輪開催経費」から除外したが、事業内容を見るとほとんどが「レガシー経費」に入ることが明らかだ。
 気象衛星の打ち上げ関連費用も首都高速などの道路整備費も水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費も、ICT化促進や先端ロボット、自動走行技術開発、外国人旅行者の訪日促進事業、日本文化の魅力発信、アスリート強化費、暑さ対策、バリアフリー対策、被災地の復興・地域活性化事業、すべて2020東京大会のレガシーとして次世代に残すための施策で、明らかに「レガシー予算」、「五輪開催予算」だろう。被災地関連予算も当然だ。2020東京五輪大会は「復興五輪」を掲げているのである。

 一方、新国立競技場は「大会の準備、運営に特に資する事業」に分類し、「五輪開催経費」だとしている。しかし、国立競技場は大会開催時は、開会式、閉会式、陸上競技などの会場として使用されるが、その期間はわずか2週間ほどである。ところが新国立競技場は大会開催後、50年、100年、都心中心部の「スポーツの聖地」にする「レガシー」として整備するのではないか。 
 国の「五輪開催経費」仕分けはまったく整合性に欠け、ご都合主義で分類をしたとしか思えない。五輪大会への関与の濃淡で、恣意的に判断をしている。「レガシー経費」をまったく理解していない姿勢には唖然とする。
 東京都が建設するオリンピックアクアティクスセンターや有明アリーナ、海の森水上競技場なども同様で、「レガシー経費」だろう。

 通常の予算では通りにくい事業を、五輪を「錦の御旗」にして「五輪開催経費」として予算を通し、膨れ上がる開催経費に批判が出ると、その事業は五輪関連ではなく一般の行政経費だとする国の省庁の姿勢には強い不信感を抱く。これでは五輪開催経費「隠し」と言われても反論できないだろう。
 2020東京大会のレガシーにする自信がある事業は、正々堂々と「五輪開催経費」として国民に明らかにすべきだ。その事業が妥当かどうかは国民が判断すれば良い。
 東京都は、「6000億円」のほかに、「大会に関連する経費」として、バリアフリー化や多言語化、ボランティアの育成、「大会の成功を支える経費」として無電柱化などの都市インフラ整備や観光振興などの経費、「8100億円」を支出することをすでに明らかにしている。国の姿勢に比べてはるかに明快である。過剰な無駄遣いなのか、次世代に残るレガシー経費なのか、判断は都民に任せれば良い。

 「3兆円」、かつて都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用の総額だ。今回の会計検査院の指摘で、やっぱり「3兆円」か、というのが筆者の実感だ。いまだに「五輪開催経費」の“青天井体質”に歯止めがかからない。

肥大化批判に窮地に立つIOC
 巨額に膨らんだ「東京五輪開催経費」は、オリンピックの肥大化を懸念する国際オリンピック委員会(IOC)からも再三に渡って削減を求められている。
膨張する五輪開催経費は、国際世論から肥大化批判を浴び、五輪大会の存続を揺るがす危機感が生まれている。
巨大な負担に耐え切れず、五輪大会の開催都市に手を上げる都市が激減しているのである。2022年冬季五輪では最終的に利候補した都市は、北京とアルマトイ(カザフスタン)だけで実質的に競争にならなかった。2024年夏季五輪でも立候補を断念する都市が相次ぎ、結局、パリとロサンゼルスしか残らなかった。
 2014年、IOCはアジェンダ2000を策定し、五輪改革の柱に五輪大会のスリム化を掲げた。そして、2020東京五輪大会をアジェンダ2000の下で開催する最初の大会として位置付けた。
 「東京五輪開催経費」問題でも、問われているのは国際オリンピック委員会(IOC)である。「開催経費3兆円超」とされては、IOCは面目丸潰れ、国際世論から批判を浴びるのは必須だろう。
 こうした状況の中で、「五輪開催経費」を極力少なく見せようとするIOCや大会組織委員会の思惑が見え隠れする。
 その結果、「五輪経費隠し」と思われるような予算作成が行われているという深い疑念が湧く。
 V3「1兆3500億円」は、IOCも大会組織委員会も死守しなければならい数字で、会計検査院の国の支出「1兆600億円」の指摘は到底受け入れることはできない。
 「五輪開催経費」とは、一体なになのか真摯に議論する姿勢が、IOCや大会組織委員会、国にまったく見られないのは極めて残念である。

どこへ行った「コンパクト五輪」
 筆者は、五輪を開催するためのインフラ整備も、本当に必要で、大会後のレガシー(遺産)に繋がるなら、正々堂々と「五輪開催経費」として計上して、投資すべきだと考える。
 1964東京五輪大会の際の東海道新幹線や首都高速道路にように次の世代のレガシー(遺産)になる自信があるなら胸を張って巨額な資金を投資して整備をすれば良い。問題は、次世代の負担になる負のレガシー(負の遺産)になる懸念がないかである。また「五輪便乗」支出や過剰支出などの無駄遣いの監視も必須だろう。そのためにも「五輪開催経費」は、大会への関連度合いの濃淡にかかわらず、国民に明らかにしなければならい。
 2020東京五輪大会は招致の段階から、「世界一コンパクトな大会」の理念を掲げていた。大会の開催運準備が進む中で、開催経費はあっという間に、大会組織員会が公表する額だけでも1兆3500億円、関連経費も加えると3兆円を超えることが明らかになった。
 新国立競技場の建設費が3000億円を超えて、白紙撤回に追い込まれるという汚点を残したことは記憶に新しい。「錦の御旗」、東京五輪大会を掲げたプロジェクトの予算管理は往々にして甘くなる懸念が大きく、それだけに経費の透明性が求められる。
 2020年度の予算編成が本格化するが、まだまだ明るみに出ていない「五輪開催経費」が次々に浮上するに違いない。全国の警察官などを動員する史上最高規模の警備費やサイバーセキュリティー経費などは千億円台になると思われる。さらに30億円から最大100億円に膨れ上がるとされている暑さ対策費や交通対策費も加わる。一方、7道県、14の都外競技場の仮設費500億円は計上されているが350億円の警備費や輸送費(五輪宝くじ収益充当)、地方自治体が負担する経費は計上されていない。マラソン札幌開催経費もこれからだ。最早、「3兆円」どころか最大「4兆円」も視野に入っている。
 「コンパクト五輪」の理念は一体どこへ行ったのか。


2020東京五輪大会に一石を投じた都政改革本部調査チーム
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (1)


小池都知事vs森会長 対立激化 小池氏「海の森」見直しに動く 舛添前知事 競技場整備に大ナタ 五輪巨大批判でバッハ会長窮地に
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (2)


海の森、アクアスティックセンターは建設、バレー会場先送り 開催経費「2兆円」IOC拒否 組織委「1兆8000億円」再提示 組織のガバナンス欠如露呈
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (3)


東京都 海の森水上競技場などの競技場整備見直しで413億円削減 V2予算1兆3500億円に 東京都「五輪関連経費」 8100億円を公表
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (4)


五輪マラソン札幌移転の攻防 V4予算1兆3500億円維持 会計検査院報告 開催経費1兆600億円
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (5)


“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
大会経費総額1兆6440億円  V5公表
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (6)


東京五輪経費1兆4238億円 招致段階から倍増 最終報告
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (7)




2020年1月1日
Copyright (C) 2020 IMSSR

*************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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東京オリンピック 都政改革本部 調査チーム 小池都知事 東京五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (1)

2023年03月01日 18時07分26秒 | 政治
2020東京五輪大会に一石を投じた都政改革本部調査チーム
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (1)




小池百合子氏 都知事選に圧勝 五輪開催経費の検証へ
 「最近では1兆、2兆、3兆と。お豆腐屋さんじゃない。五輪にかかるお金でございます」。東京都知事選に立候補した元防衛相の小池百合子氏は選挙期間中の街頭演説で聴衆にこう呼びかけた。
 2016年7月31日、東京都知事選が投開票されて無所属の小池百合子氏が初当選を果たした。小池氏は政党の枠を超えた幅広い支持を集め、自民党や公明党などが推薦する元総務相の増田寛也氏や、民進、共産、社民、生活の党と山本太郎となかまたちなど推薦が推薦したジャーナリストの鳥越俊太郎氏を大差で破りった。
 女性知事は全国で7人目、東京都では初めて。既成政党の支援を受けない都知事の誕生は、1999年に石原慎太郎氏が鳩山邦夫氏(民主推薦)、明石康氏(自民推薦)らを破って初当選して以来となる。
 投票率は59・73%で、都心に大雪が降った2014年の前回(46・14%)を大きく上回り、得票は2,912,628票、圧勝だった。

 東京都知事選の初当選から一夜明けた1日午前、小池百合子氏は豊島区の事務所で記者会見を開き、公約に掲げた「都政の透明化」に向けた新組織を立ち上げる考えを明らかにした。東京五輪・パラリンピックなど都の事業に関する情報公開を進めるという。
 小池氏が選挙期間中に掲げたスローガンは「東京大改革」、2020年東京五輪・パラリンピックの費用問題や、都政や都議会の透明化に向き合うとしている。
 新組織の核となる「利権追及チーム」については、東京五輪・パラリンピックなどの都の事業を対象に、「内部告発を含め情報をいただく受け皿づくりを進めたい」と述べた。都政にからむ公私混同や利益誘導の有無をチェックする方針で、具体的な体制は今後検討するという。   
 とりわけ東京五輪の費用問題については、予算額が不明朗に膨らんでいるとして徹底検証に乗り出す考えを明らかにした。
 2020東京五輪大会の開催費用は立候補ファイルでは7350億円としたが、見積もりの甘さや工事費の高騰で経費は膨張し続けている中で、森喜朗組織委会長は「施設の建設や交通インフラの整備などで総額は最終的に2兆円を超える」と発言、舛添要一前都知事は「このままでは3兆円になる」と警告、「2兆円」、「3兆円」という言葉が飛び交っていた。
 小池氏は、「積算根拠を出していただき、都民の負担を明らかにしたい。都民のための都政を取り戻すため、五輪の予算負担は試金石になる」と宣言した。

都政改革本部を設置
 2016年8月2日、小池新東京都知事は、記者会見で、公約に掲げた「東京大改革」の実現に向け「最も重要なことは徹底した情報公開。知事主導であらゆる情報を『見える化』していきたい」と強調し、都庁などの組織、予算を見直す「都政改革本部」を設ける方針を示した。
 都政改革本部は都知事の私的懇談として設置して、知事を本部長に、都職員や外部の有識者で「調査チーム」を構成し、「情報公開調査チーム」と「東京オリンピック・パラリンピック調査チーム」の2つを設置する。
 「東京オリンピック・パラリンピック調査チーム」では、「オリパラ予算や工程表・準備態勢の妥当性」や東京都、大会組織委員会、国の役割分担を検討するとし、「情報公開調査チーム」では都の情報公開を実態調査し、情報公開のルールの見直しに取り組むとした。
 小池知事は「都政を都民ファーストで改善していく」と述べ、都や関連団体の業務や予算を点検し、事業見直しや廃止を含めた抜本策を検討し、9月下旬に開会する次の都議会までに中間報告をまとめる予定を明らかにした。


小池百合子東京都知事 出典 東京都 知事の部屋


都政改革本部第一回 2016年9月1日 出典 東京都 知事の部屋

小池知事、都政改革本部に5人任命 庁内の公的組織に
 8月12日、東京都の小池百合子知事は定例記者会見で、「都政改革本部」のメンバーに、大阪府・大阪市特別顧問の上山信一慶応大教授ら5人を任命すると発表した。当初は私的懇談会に位置付けていたが、「公的な意味合いを持たせて強力なものにしたい」と述べ、庁内の組織として立ち上げる考えを示した。
 メンバーに任命されるのは上山教授のほか、加毛修弁護士、小島敏郎青山学院大教授、坂根義範弁護士、須田徹公認会計士。上山教授は橋下徹・前大阪市長を支えた「維新ブレーン」の一人である。
 小池知事は5人の選定理由について「情報公開や自治体改革などに知見がある方。いろんな経験を積んでいる」と説明した。9月初旬の始動を予定しているという。
 本部の下には「情報公開調査チーム」と「東京五輪・パラリンピック調査チーム」を設置。五輪調査チームは大会組織委員会の予算も調査対象にするとした。


上山信一慶応大教授 出典 Youtube/JCC
 慶應義塾大学総合政策学部教授 企業、政府、NPOの経営改革や地域開発、行政改革を手掛ける。
 2008年4月、大阪府特別顧問、2011年6月 - 12月、大阪維新の会政策特別顧問、2011年12月 、大阪市特別顧問となり、橋本徹氏や大阪維新の会の政策運営を支えた。
 上山氏の著書「大阪維新」は、地域政党・大阪維新の会の「基本的な考え方と指針」となり、大阪都構想の理論的支柱。

東京五輪費用「3兆円超」 調査チーム報告書 3施設見直し案 ボート・カヌー会場は長沼(宮城県)を提言
 「結果から申し上げると今のやり方のままでやっていると3兆円を超える、これが我々の結論です」
 2016年9月29日、2020年東京五輪・パラリンピックの開催経費の検証する都政改革本部の調査チーム座長の上山信一慶応大学教授はこう切り出し、大会経費の総額が「3兆円を超える可能性がある」とする報告書を小池都知事に提出した。
 大会経費は、新国立競技場整備費(1645億円)、都の施設整備費(2241億円)、仮設整備費(約2800億円)、選手村整備費(954億円)に加えて、ロンドン五輪の実績から輸送費やセキュリティー費、大会運営費などが最大計1兆6000億円になると推計。予算管理の甘さなどによる増加分(6360億円程度)も加味し、トータルで3兆円を超えると推計した。 招致段階(13年1月)で7340億円とされた大会経費は、その後、2兆円とも3兆円とも言われたが、これまで明確な積算根拠は組織委員会や国や東京都など誰も示さず、今回初めて明らかにされた。
 調査チームは「招致段階では本体工事のみ計上していた。どの大会でも実数は数倍に増加する」と分析。その上で、物価上昇に加えて、国、都、組織委の中で、全体の予算を管理する体制が不十分だったことが経費を増加させたと結論付けた。


都政改革本部 五輪調査チーム調査報告書 Ver.0.9 “1964 again”を越えて 2016年9月29日







「司令塔」不在
 上村座長は、「お金の管理ですが、そもそも一体いくらかかるのか誰も計算していない。内訳なども全く情報開示されず積み上げもどれだけされているのかよく分からない。都民の負担を考えるとこれでは際限なく各組織が良い仕事をすればするほど請求書が全部東京都に回ってくる」とし、「今回の準備体制は驚いたことに社長がいない、財務部長がいないという構造になっている。全体を『こう変えていこう』、『こうしよう』と先取りしてビジョンを出す役割
 これまでは国、都、日本オリンピック委員会(JOC)、日本パラリンピック委員会(JOC)、大会組織委員会で構成する調整会議で準備体制が議論されてきたが、その調整会議がまったく機能を果たしていないと批判した。
 そして、「問題は国と都と組織委員会が別々に予算を管理する『持ち寄り方式』にある。総額に上限を定めた上で、国か都が予算を一元管理すべき」と提言した。
 また、東京2020大会のレガシーについて、「広義」のレガシーについては、2020年を契機に東京、日本、社会の在り方を見直す戦略の検討がなく、スマートシティ、ダイバーシティ、セーフシティなどの具体的なビジョンが見当たらないとした。
 そして、立候補ファイルで宣言した「復興五輪」の理念が希薄化していると批判した。
 小池都知事も「ガバナンスの問題が、結局、ここ一番、難しいところだと思っている。この辺も加速度的に進めていくためにガバナンスの問題は極めて大きな問題だ」と語り、東京都が主導権をとっていく姿勢を明確にした。


都政改革本部 五輪調査チーム調査報告書 Ver.0.9 “1964 again”を越えて 2016年9月29日

組織委、「3兆円」に異例の反論
 2016年11月、大会組織委員会は都政改革本部の「3兆円」の指摘に対して異例の反論を公表した。
▼東京都の都政改革本部の調査報告書では大会経費が「3兆円」としたが、この数字には具体的な積み上げがないため、現在、四者協議においては現段階の各分野ごとの積算を基に全体経費を積み上げながら、コスト縮減に向けた議論を行っている。
▼「約8000億円」をまとめたのは4年前で、運営の詳細はまだ決まっていない段階での経費の積み上げで、国際オリンピック委員会(IOC)の定めた規準に従って、一定の仮定で積算を行ったものである。また(当時)必要と想定されるものを積み上げた額である。
▼立候補ファイルは組織委員会ではなく、招致委員会が作成したもので、約8,000億円」という数字は、開催都市や国が行うインフラ投資や警備・輸送・技術経費等が基本的に含まれておらず、現在作業している全体経費との直接の比較は適当ではない。
 そして組織委員会は、全体経費(V1)は年内にも取りまとめを行う予定だとし、焦点はV1で説得力のある開催経費の総額を示すことができるかどうかになった。

ロンドン大会では、招致段階では「8000億円」としてが、開催都市や国が行うインフラ投資や、輸送・警備等の経費が含まれておらず、最終的に「2.1兆円」となった。Tokyo2020の開催経費も、招致段階の「8000億円」と「3兆円」とは「異次元の数字」で比較すべきものでないと主張。
出典 Tokyo2020
 
3施設の整備見直しを提言
 ボート、カヌー・スプリント会場「海の森水上競技場」については、当初計画の7倍の約491億円に膨れ上がった経費に加えて、「一部の競技者が会場で反対している」「大会後の利用が不透明」だとして、宮城県長沼ボート場を代替地に提言した。「復興五輪」の理念にも合致するとしている。
 観客席2万席で設計した水泳会場「オリンピックアクアティクスセンター」は、大会後に74億円という巨額の経費をかけて5000席に減築する計画を疑問視し、規模縮小や近くにある「東京辰巳国際水泳場」の活用の検討を提言した。
 バレーボール会場の「有明アリーナ」は、規模縮小のほか、展示場やアリーナの既存施設の活用を提案した。
 仮設施設整備については、約2800億円に膨れ上がった整備について、国や組織委、東京都の費用負担の見直しにも言及し、都内に整備する仮設施設の内、最大1500億円は都が負担し、都外については「開催自治体か国」が負担するよう提言した。
 さらに東京都は、組織委に58億5000万円の拠出金を出し、245名もの東京都職員を出向させていることから、組織委を「報告団体」から「管理団体」にすることを求め、都の指導監督を強化する必要性も指摘した。
 これに対し、9月29日、森組織委会長は、文部科学省で開かれた東京五輪・パラリンピックの調整会議で、東京都の調査チームの報告書に言及した小池百合子知事に対し、大会組織委員会の森喜朗会長は強い不快感を示した。「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べた。
 また海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)がいいと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いしてみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と語った。
 組織委の武藤敏郎事務総長も、都の影響力の背景となっている都の出資金58億5千万円のうち、57億円を返還する意向を表明した。
 森氏は閉会後、別室で待機していた報道陣のもとに自ら歩み寄り、予定にはなかった取材に応じた。「独断専行したら困る」「われわれの立場は東京都の下部組織ではない。都と民間、みんなで作り、内閣府に認可された組織だ。都知事の命令でああせいこうせいということができる団体ではない」。静かな口調ながら約20分間、怒りをぶちまけた。
 また「三兆円超」とする開催費用の推計については、「『一兆だ二兆だ三兆だと豆腐屋ではあるまいし…』といった選挙の時に使うような言葉を、公式な議論で出すべきではない」と憮然として述べた。
 2カ月近く前の8月9日、知事に就任したばかりの小池氏と森氏は笑顔で握手を交わし、開催費用を削減していく方向で協力していくことで一致した。だが、小池氏は組織委への監督・指導を強め、会計監査に踏み込む手段を選び、次々と先手を打つ。
 「出資法人である組織委員会を調査対象といたしました」。8月29日に小池氏は森氏に対して文書で通知し、その後に発足した調査チームが組織委幹部にヒアリングを実施。さらに都の組織委への出資比率が97・5%に及んでいることや、組織委の職員の3割超を都の派遣組が占めることに着目し、水面下でより強い監督権限を持つ「監理団体」になるよう要請した。小池氏の狙いは「組織委から権限を取り戻す」ことである。
  この日の都政改革本部に提出された調査チームの報告書には「組織委は司令塔になりにくい」と明記した。座長の上山信一慶応大教授は組織委が最終的に赤字になれば都と国が損失を補填することを踏まえ、「各組織が良い仕事をすればするほど、請求書が全部都庁に回ってくる」と皮肉った。
 小池氏は報告書の内容について「組織委がIOCなどとの調整に汗をかいてこられたので総合的に考えていきたい」と述べ、「負の遺産を都民に押しつけるわけにはいかない」締めくくった。
 もともと小池東京都知事と森喜朗大会組織委会長は「犬猿の仲」、以降、小池東京都知事と森喜朗大会組織委会長との間で激しいバトルが繰り広げられる。


海の森水上競技場 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


オリンピック アクアティクスセンター 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


有明アリーナ 東京都オリンピック・パラリンピック準備局
 
ボート・カヌー会場見直し 3案に絞り込み検討 彩湖は除外
 ボート・カヌーの会場について「海の森水上競技場」を現在の計画どおり整備するだけでなく、大会後に撤去する仮設施設として整備することを新たな提案として加え、宮城県のボート場に変更する提案とともに、3つの案に絞り込んで検討を進めることを明らかにした。
 1案は、海の森水上競技場をコストを削減したうえで現在の計画どおり恒久的な施設として整備するという案、2案は、海の森水上競技場を大会後に撤去する仮設施設として整備する案、3案は、宮城県登米市にある「長沼ボート場」に変更する案でこの3つの案に絞り込んで検討を進めているとした。
 また調査チームは、これまで候補地として提案していた埼玉県の彩湖については、洪水や渇水対策のための調整池であり、国土交通省の管轄のため難しいという見解を示し、検討をすすめる候補地から除外するとした。
 都政改革本部の上山信一特別顧問は「海の森水上競技場は工事が始まっているので明らかに本命であるが、今回はそれ以外も考えようとしている。アスリートの声は大前提として重要だが、実現可能性の確率が高く、時間がかからないことが絶対的な条件だ」と述べた。
 さらに都の調査チームは、3つの案について、公表されている資料を基に、整備費用などを示した。
 「海の森水上競技場」を現在の計画どおり、恒久的な施設として整備する場合は、都がコストを見直した結果として300億円前後とする試算に加え、観客席など仮設の設備のための整備費用が加わるとしている。
 経費削減のために「海の森水上競技場」を大会後に撤去する仮設施設として整備する案も検討し始め、どのような施設にするかなどについて、チームで精査している状況とした。
 宮城県の「長沼ボート場」に変更する場合は、県の試算として150億円から200億円としている。
 調査チームでは、今後の課題と必要なアクションとして以下の項目を上げた。
▼海の森競技会場のコスト削減、レガシー収支改善の再検討
例:水位維持のための恒久的な締切堤、遮水工は必要か? 例:仮設化によるコストダウンは可能か?
▼ボート協会(NF)と都オリンピックパラリンピック準備局による具体的なレガシーとしての需要予測の精査
例:ボート施設利用競技団体、利用者予測は? 例:恒久施設としてのランニングコストと収入予測は?
▼代替候補地の再検討
例:候補会場の整備費用、大会後のランニングコストと収入予測は? 例:仮設シナリオの場合コスト試算の再検討 (高額な仮桟橋設備は本当に必要か?等)
 調査チームでは建設費や、大会後にレガシー・遺産として残るか、大会後に必要な維持費も検討したうえで、さらに詳細な報告書を小池知事に提出して判断材料にしてもらうとしている。


アイエス総合ボートランド(宮城県長沼ボート場)  宮城県登米市
延長2000m、幅13.5m、8コース  (日本ボート協会A級コース認定)


都政改革本部 五輪調査チーム調査報告書 Ver.0.9 “1964 again”を越えて 2016年9月29日







猛反発した大会組織委員会、国際ボート連盟
 都政改革本部の調査チームは調査報告書のこうした提言に対し、激しい反発が起きた。
 森組織委会長は、「IOCの理事会で決まり総会でも決まっていることを日本側からひっくり返すということは極めて難しい問題」と述べ、海の森水上競技場については、「宮城県のあそこ(長沼ボート場 登米市)がいいと報道にも出ているが我々も当時考えた。しかし選手村から三百何十キロ離れて選手村の分村をつくることはダメなことになっているし経費もかかる。また新しい地域にお願いしてみんな喜ぶに決まっているが、金をどこから出すのか。東京都が代わりに整備するのか。それはできないでしょう法律上」と否定的な考えを示した。
 10月3日、海の森水上競技場の視察に来日していた国際ボート競技連盟のロラン会長は、視察後、「(海の森水上競技場は)ボート会場には適切だ。非常に満足しているし、このプロジェクトにも満足だ。今のところ、1つのプロジェクトしか存在しない」と述べた。さらにロラン会長は、「立地もよく、検討すべき点もあるが、最良ということで決定され、現在の準備状況に満足している」と強調した。
 その後、ロラン会長は小池都知事と会談し、小池都知事は「都政改革を訴えて今回の知事選に当選をした私として、もう一度オリンピック・パラリンピックにかかる経費、そしてまた、さまざまな環境整備を見直すべきではないか、実はこのことを訴えて知事になったようなものだ。費用の見直しについての世論調査は、80%以上の方が見直しということに賛成をしている。東京オリンピック・パラリンピックを成功させる最善の方法を見出すことを短期間で努めたい」と述べた。
 これに対し、ロラン会長は「直前に海の森から変わるかもしれないと報道で知って驚いた。承認済みのことに関して、我々に事前に相談がなかったことが残念。なぜこうなったのか深く知りたい」と不快感を示した。
 そして「決定ではなくこれから検証段階であると聞いたが、これは非常に重要なことだ。この報告書は第1ステップであり、報告書を改善するための手伝いをしたい。一部分だけでなく、すべての要素を全面的に検討して結論を出してもらいたい」とけん制した。長沼ボート場に変更する案については、「競技会場は、いろいろな基準を満たさないといけないが、東京から遠く、アスリートにとってベストの経験にならないのではないか。2年前にIOCや東京都などが調査をして専門家がまとめた分析では、宮城開催が将来にわたって地元によい効果をもたらすのかという点で、ほかの候補地に比べて評価が低かった」とした。
 また日本ボート協会の大久保尚彦会長は、「長沼(ボート場)、あまりにも田舎だからどんなコースを作ったって、後を使うかという可能が非常に小さい。単に東北復興支援ということでは本当にワンポイントになってしまう。将来のレガシーにまったくならない。私はまだまったく理解できない」と強く反発している
 一方、IOCのバッハ会長は、東京五輪の開催費用の増加について、「東京における建設費の高騰はオリンピック計画だけでなく、東日本大震災からの復興など、そのほかの理由もあるだろう」とし「建設的な議論をしたい」として柔軟に対応する姿勢で、今後東京都や組織委員会と協議を始める意向を示した。
 報告書の提案を実行していくためには、国際競技団体や国際オリンピック委員会(IOC)の承認を受け直す必要がある上に、海の森水上競技場にこだわっている国内の競技団体や大会組織委員会、そして国などとの調整も必要で、実現には難関は多いと思われる。
 小池都知事は難しい決断を迫られた。

小池都知事 村井宮城県知事と会談 海の森水上競技場見直し
 海の森水上競技場の建設を中止して、長沼ボート場開催に小池都知事は強くこだわった。五輪改革のシンボルにしようしたむきがある。
 2016年10月12日、小池都知事は海の森水上競技場の見直しを巡り村井宮城県知事と会談した。村井宮城県知事は、都政改革本部が宮城県登米市の長沼ボート場を代替候補地として提案したことを歓迎するとしたうえで、長沼ボート場での開催へ協力を求めた。
 会談では、村井氏は用意していた資料を差し示して説明しながら、東日本大震災の仮設住宅をボート・カヌー競技選手の選手村として再利用することや、整備中の自動車道による交通アクセスの確保、大会関係者の宿舎に近隣のホテルを活用するなどの計画を示した。 また高校総体のボート会場として毎年活用したいという構想も明らかにした。
 会談後、村井宮城県知事は、「被災者の皆さまと話をすると忘れ去られてしまう記憶の風化が非常に怖いとおっしゃる。2020年はちょうど震災から丸10年、多くの皆さまに来ていただいて改めて被災地の復興した姿を見ていただき、改めて被災者を激励してもらいたい」と語った。
 会談終了後、小池知事は、「選択肢としての一つだが、思い入れは十分に受け止めた」と述べた。
 
 これに先立ち、村井宮城県知事は前オリンピック・パラリンピック担当大臣で組織委員会理事の遠藤利明氏や武藤敏郎事務総長と会談した。
 会談では、組織委が長沼ボート場について9つに課題を指摘した。
▼選手村の分村の設置
長沼ボート場は東京・有明地区の選手村から遠距離にあるため、選手村の分村の設置が必要で、オリンピックで1300人以上、パラリンピックで250人以上の宿泊施設を用意しなければならない。仮設住宅の転用で対応すると、パラリンピックの選手に使ってもらうためには利便性に課題が残る。
▼パラリンピックへのバリアフリー対応
 競技会場には車いすの選手が利用できる間口の広いトイレや、すぐ横にシャワースペースも必要になるとし、会場についても高低差10メートルほどの斜面もあり、パラリンピックの開催に適さない。
▼輸送に難あり
仙台から85キロあり、パラリンピックの選手に負担が大きく、最寄り駅の1つにはエレベーターやエスカレーターがない。
▼会場に斜面が多く、整備が困難
 会場周辺は斜面が多く、放送設備を置くためのスペースの確保などが難しく、周辺道路も狭い。
▼電力通信インフラが未整備
国際映像を配信するための電力や通信関係のインフラが整備されていない。
▼観客や大会関係者の宿泊施設不足
▼選手の移動などに負担大
 空港から距離があり、選手の移動に負担がかかることや、カヌーはスラロームとスプリントが別の会場で実施されることになるためコーチなどスタッフの対応が難しくなる。
▼整備経費増大の可能性
都政改革本部の調査チームの試算ではおよそ350億円とされているが、バリアフリー化や電力・通信、宿泊関係などにかかる費用が含まれていないので整備経費は更に膨れ上がる可能性がある。一方、海の森水上競技場はコスト削減の余地があり結果的に低コストになるのではないか。
▼レガシー(遺産)が残らない
 会談後、遠藤理事は、「東京都を含めてそれぞれの組織や団体が時間をかけて丁寧に精査し、現在の計画が最良の場所だと決めた。その中でIOC=国際オリンピック委員会などの理解を得られるのかどうか、難しい課題がいっぱいある。問題点のうち、いくつかはすでにクリアしているということだが、いちばん大きい問題は、現地で負担する費用の問題だと思う」と述べた。

 これに対して村井宮城県知事は「組織委員会は消極的で『しょせん無理だ』という感じだった。長沼のボート場でできない9つの理由を挙げていたが、すべてクリアできると考えている」として、▼選手や大会関係者、1300人の宿泊施設は空いている仮設住宅を改修して整備、▼会場内にバリアフリー対応の道路を整備、▼長沼では毎年2万人が来場するマラソン大会を開催しており、輸送には実績、▼観客の宿泊施設は隣接する仙台市や南三陸町のホテルで対応、▼選手の移動の負担は、成田空港からの乗継便や新幹線を利用することで軽減可能、▼高校総体の会場とするなどレガシーにすると反論した。
 そして「1000年に一度と言われる震災から立ち直ったのだから、やる気を出せば4年あればできる。できない理由よりもやれる方法を考えるべきで、森会長のリーダーシップに期待したい」と述べた。
 
小池都知事 長沼ボート場視察
 2016年10月15日、小池都知事は宮城県登米市の南方仮設住宅と長沼ボート場を視察した。
 小池知事は、村井宮城県知事と共にボート選手の宿舎を想定してリフォームした南方仮設住宅を訪れ、その後、長沼ボート場に到着した知事は、ボートに乗船し水上からボート場の視察した。
 視察を終えた知事は、「被災地で使われた仮設が、今度はオリンピック・パラリンピック用によみがえるというのは、一つの大きなメッセージになりうる。調査チームの分析も進んでおり、今日の現地視察をベースに、東京都としての選択をしっかりと定めていきたい」と述べて長沼開催に意欲を示した。
 「無駄遣い」のシンボルとなってきた海の森水上競技場の建設を中止して、五輪改革の成果としようとする小池都知事の姿勢をアピールして国際オリンピック委員会(IOC)や大会組織委員会に揺さぶりをかけた。
 しかし、海の森水上競技場の建設を中止すると、工事担当企業への補償や原状復帰工事費などで約100億円が必要となることが明らかになり、長沼ボート場に移転しても経費削減には余りつながらないとして、海の森水上競技場の経費を削減して現状通り整備する方向が有力となっていた。


ボートに乗船して長沼ボート場を視察する小池都知事と村井宮城県知事 出典 東京都 知事の部屋

雲消霧散「復興五輪」
 2013年9月7日、2020夏季五輪の開催都市を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会がブエノスアイレスで開かれ、各都市の最終プレゼンが行われた。 
 最終プレゼンの冒頭では、高円宮妃久子さまが「震災復興支援へのお礼」を述べ、続いて被災地の宮城県気仙沼市出身のパラリンピアン、佐藤真海選手も「復興におけるスポーツの力」を訴えた。
 招致委員会は、東京大会の開催意義について、復興に向かう姿を世界に発信する「復興五輪」を前面に押し出して、大会招致を進めていた。
 しかし、総会の直前、7月に福島第一原発から大量の高濃度放射線汚染水がタンクから漏れるという汚染水事故が発生していたことが明らかになり、各国から東京開催を危ぶむ声が激しく沸き上がっていた。
 安倍首相は、最終プレゼンで、汚染水問題は「アンダーコントロール(管理下にある)」と懸念払拭に懸命になるという一幕もあった。
 結果、競争相手のマドリードとイスタンブールに圧勝して、東京大会開催を勝ち取った。

 政府は、東京大会を「復興五輪」と位置付け、2015年11月に、「大会の準備・運営に関する基本方針」で「復興五輪」を明文化して閣議決定をし、国や組織委員会は「復興五輪」繰り返し強調した。2020年度は、政府が復興の総仕上げと位置づける「復興・創生期間」の終了年度でもある。
 しかし、開催準備が進む中で、「復興五輪」は雲消霧散してしまっている。
 カヌー・ボート競技会場の見直し問題で、小池都知事は「復興五輪」のコンセプト重視を訴えた。「スポーツの力で被災地を元気にする」という「復興五輪」の理念が問われた。

 2015年1月23日、大会組織委員会(森喜朗会長)は、大会開催基本計画を決めた。
 基本計画では、開催開催のスローガンとして““DISCOVER TOMORROW”を掲げ、大会ビジョンの3つのコンセプト、「全員が自己ベスト」、「多様性と調和」、「未来への継承」を示し、アクション&レガシープランの基本理念を示した。そして「2020年は市場最もイノベーティブで、世界にポジティブな変革をもたらす大会」を目指すと宣言した。
 この基本理念に基づいて、(1)スポーツ・健康(2)街づくり・持続可能性(3)文化・教育(4)経済・テクノロジー(5)復興・オールジャパン・世界への発信-を「5本の柱」とし、地域スポーツの活性化やスマートエネルギーの導入、東日本大震災の復興状況の世界への発信などに取り組むとし、アクションプランのロードマップも明らかにした。
 「5本の柱」の内、(1)から(4)は、ありふれた内容でまったくインパクトもないし、なぜ2020年に大会を開催するのかその意義を理解するのはまったく困難である。
 唯一、具体的で内容が明確なのは、(5)復興・オールジャパン・世界への発信だろう。「復興五輪」は大会開催意義の重要な柱であることを忘れてはならない。
 カヌー・ボート競技会場の見直し問題をきっかに「復興五輪」というスローガンにどう取り組むのか、もう一度、考え直す契機にすべきであると考える。「復興五輪」への取り組みを牽引するのは、組織委員会や都ではなくて国であろう。丸川五輪相は、組織委員会や都の取り組みに委ねるのではなく、主体的に「復興五輪」に向けて手腕を発揮する責任がある。


アクション&レガシープラン 2020東京五輪大会組織委員会

「杜撰」の象徴 海の森水上競技場
  海の森水上競技場(スマート施設)や海の森クロスカントリーコース(仮設)が建設される「海の森公園」は、東京湾の埋め立て地の突端、中央防波堤内側の埋立地に東京都が整備している。この埋め立て地は、昭和48年(1973年)から昭和62年(1987年)にかけて1230万トンのごみで埋め立てられ、建設残土などで表面を覆って高さ約30メートルの「ごみ山」を造成した。
 この「ごみの山」に苗木を植えて、緑あふれる森林公園にして東京湾の玄関口にふさわしい臨海部のランドマークにしようとするのが「海の森プロジェクト」である。「東京らしいみどりをつくる新戦略」を掲げて「水と緑のネットワーク」「海辺の回廊」の新たな拠点として位置付けた。工事は東京都港湾局が2007年に始めた。広さ約88ヘクタール、日比谷公園の約5.5倍の広大な面積に約48万本の木々が植えられる計画である。
 苗木は、市民や民間企業からの募金で購入するほか、小学生や苗木づくりボランティアがドングリから育てたシイの木やスダジイ、タブノキ等の苗木、24万本をこれまでに植樹した。
 「海の森プロジェクト」の賛同者には建築家の安藤忠雄氏、石原慎太郎元都知事、高島直樹都議、江東区の山崎孝明区長、大田区の松原忠義区長、アルピニストの野口健さんらが名を連ねた。
 「海の森公園」のある中央防波堤埋立地(約500ヘクタール)は、江東区と大田区が帰属を主張して互いに譲らず、訴訟になっていたが、2019年10月、江東区に帰属するということでようやく決着した。
 しかし「海の森公園」エリアは、東京湾の埋め立て地の再突端、1年中、海からの強風が吹き、砂ぼこりが舞い上がる。また羽田空港への離発着コースの真下にあるため航空機の轟音が4、5分間隔で響き渡る。周辺の道路は、港湾施設に向かう大型トラックで溢れている。周辺には建設発生土再処理センターや粗大ごみ処理施設などのほかに建物がなく、荒涼とした光景が広がっている。「公園」が整備される環境としては決して良好とは言えない。
 また交通アクセスの悪さも指摘され、「陸の孤島」とされている。最寄りの駅のりんかい線「東京テレポート駅」まで約4.5キロ、自家用車やバスでの移動になるが、今の所、路線バスは運行されていない。平日は誰も訪れる人はなく、休日でも490台の駐車場は閑散としている。
 東京都では、2020東京五輪大会を開催するにあたって、海の森水上競技場や海の森カントリーコース、海の森マウンテンバイクコースをこのエリアに整備して「海の森プロジェクト」に弾みをつけることを狙った。 その中核として位置づけたのが海の森水上競技場である。
 当時の開発関係者の間では「あの場所の開発ありきで進んだ話。政治的に決着している場所」と囁かれていたという。

 「海の森プロジェクト」が掲げた高度成長期の「負の遺産」を「レガシー」(未来への遺産)に変えようというコンセプトは、筆者は大いに評価したい。
 ところが、海の森水上競技場は迷走に迷走を重ねて2020東京五輪大会の競技場整備計画の「杜撰さ」の象徴となり、海の森マウンテンバイクコースは経費削減で建設が中止された。海の森カントリーコースは仮設施設なので大会終了後は取り壊される。
 東京都では、大会後の「海の森公園」エリアは、海の森水上競技場を中核にして水上スポーツや水上レジャー・イベントが楽しめる市民の憩いの場としたいとしているが、都心部からの交通アクセスが悪い上に、エリアにはレストランや商業施設もなく、殺伐とした風景が広がっている。市民の憩いの場というには余りにも寂しい光景だ。
 海の森水上競技場は、もともと水路だった場所に、水門を設置して護岸工事を行い、波を防止する消波装置を備えた大規模な工事で建設される。海水で建物の腐食が進むことから維持管理費はかさむ。大規模な国際大会を開催するとしているが、誘致できる保証もない。イベント開催も参加者が余り見込めないためほとんど可能性がない。
 海の森水上競技場は、「臨海部のランドマーク」どころか、「負の遺産」になる懸念が強まった。


海の森公園 海の森カントリーコースが仮設で整備される 後方は東京ゲートブリッジ 出典  東京都


中央防波堤外側の埋立地では現在も埋め立てが続いいる 出典 東京都環境公社

バレーボールの横浜アリーナ開催を本格検討
 都政改革本部の調査チームが、バレーボール会場を「有明アリーナ」から既存施設の「横浜アリーナ」(横浜市)に変更する案について本格検討に入ったことが明らかになった。有明アリーナの整備費は400億円を超すと試算されており、変更で大幅なコスト削減が実現すれば、小池百合子知事の五輪改革の象徴例になりそうだ。
 有明アリーナはメインアリーナに客席1万5千、サブアリーナにコート2面を確保する計画で、整備費は招致時の176億円から2.3倍の404億円に膨れ上がっている。
 都政改革本部の調査チームの報告書では、バレーボールについて北京、ロンドン、リオデジャネイロの3大会で既存施設が活用されたことを挙げた上で、東京大会でも既存の展示場・アリーナの改修などでの対応も検討すべきだと提案、既存施設の具体例として横浜アリーナやパシフィコ横浜(横浜市)などを挙げた。
 この内、横浜アリーナが移転先として最有力視され、都政改革本部の試算では7億円程度の改修費で開催が可能という試算を出している。
 横浜アリーナは、新横浜市に隣接している観客席1万3000席の多目的アリーナで、音楽コンサート、アイススケートショー、スポーツ・文化イベント開催などで高い評価を得ている。過去にバレーボールの国際大会の開催実績もある。
 しかし、繁華街にあるため、五輪大会などの大規模な競技大会を開催をするためにはスペースが少ないのが欠点である。
 バレーボールの五輪大会を開催するためには、国際オリンピック委員会(IOC)や国際バレーボール(FIBV)の基準では、観客席1万5000席以上、ウオーミングアップ・コート2面以上が必要としている。横浜アリーナは、観客席が1万3000席、ウオーミングアップ・コートは1面なので、拡充・改修工事が必要となる。またメディア施設などの仮設施設や駐車場を整備するスペースを新たに確保する必要があり、周辺の民有地の使用が必須となる。警備上の問題も難問である。アリーナ周辺地域を封鎖する必要があり施設や住民の理解を得なければならない。
 これに対し、日本バレーボール協会の木村憲治会長は、国際大会開催には客席1万5千以上の施設が必要と強調し、「当初案通り、五輪基準の体育館を用意願いたい」とし、国際バレーボール連盟は「有明会場は最も費用効果が高い。変更案が大会成功に悪影響を与えることについて懸念している」と声明を出した。またバレーボールを含めて9競技団体が加盟している日本トップリーグの川淵三郎会長は「夢と希望を与えるアリーナが子供たちと選手にどれだけレガシーになるかを理解してほしい」として見直し手撤回を求めた。
 横浜市の林文子市長は、9月30日の記者会見で「(都側から)実際に正式な申し出があれば、私どもはもちろんしっかり検討してご協力していきたい」述べたが、競技団体が足波を揃えて移転反対を唱えている中で、「時間も短く、競技団体の理解を得るのはかなり難しいというのが私の考えだ」として、誘致に否定的な姿勢を示した。
 小池都知事は、報告書を受けて、都が整備を進めるボート会場など3施設の抜本的見直しや国の負担増、予算の一元管理などを推し進めるとしているが、各提案を実行するには、国際競技団体や国際オリンピック委員会(IOC)の承認を受け直す必要がある上、国や大会組織委員会などと調整が必要で、実現には難関は多い。
 「五輪改革」を高らかに宣言して五輪準備体制の主導権を握ろうとした小池都知事、果たして実績として何を上げられるか、その手腕が問われることになった。

都政改革本部報告書の要旨
(読売新聞 2018年 9月29日)

 【基礎事実の確認】
 ▽組織委員会が負担しきれない分の財政責任は、開催都市の東京都が負う。最終的な財政保証は国が負う
 ▽競技施設には、都、国、他自治体、民間団体が所有するものを活用する。不足分は各機関が恒久施設を新設するほか、組織委が「仮設施設」を建設する
 ▽都が負担する費用は、組織委への寄付(58・5億円)、恒久施設の建設、警備や輸送インフラなどの経費、組織委が資金不足に陥った際の補填(ほてん)
 【調査でわかったこと】
 ▽今のままでは開催総費用が3兆円を超える可能性
 ▽費用の大半は警備、輸送、広報などソフトの経費で、残りの約4割は施設投資などのハードの経費
 ▽ハードの経費のうち見直しの余地があるのは、〈1〉都が新規につくる七つの恒久施設(計2241億円)と〈2〉組織委の仮設施設(計約2800億円)の計約5000億円
 〈1〉について、多くは既に着工済みだが、他県への立地や既存施設の改修の可能性を探るべき。特に以下の3施設は対応を急ぐべき。
(1)海の森水上競技場=宮城県への移転の可能性を探り、できない場合は仮設に(2)アクアティクスセンター=辰巳水泳場の改修を検討。無理な場合は規模を縮小(3)有明アリーナ=既存の展示場・アリーナの改修で対応できる可能性。無理な場合は規模を縮小し、不足分は仮設で対応
 〈2〉について、立候補ファイルでは組織委の分担だが、非現実的。組織委、都、国や他自治体も参加し、分担ルールを検討すべき
 ▽都は地方自治法や都民への説明責任の立場から、組織委の出費、投融資のあり方や経営全般のあり方を指導、監督すべき
 【都の施設建設】
 ▽(2012年に五輪が開催された)ロンドンと比較し、臨海部に各施設が散在し、輸送と警備のコストがかさむ。ほとんどが駅から遠く、都民の後利用には不便
 ▽競技団体の要請や時間的制約などの理由で、他の場所への立地や既存施設の改修などの代替案に関する調査が不十分であった可能性が高い
 ▽恒久施設は軒並み座席数が過剰
 【課題】
 ▽施設のあり方の見直しには、組織委のほか、国際オリンピック委員会(IOC)や国際競技連盟(IF)などでの協議が必要

大会組織委員会の「管理団体」化を求める小池都知事 猛反発する森喜朗会長
 9月29日、小池都知事は、2020東京五輪大会の調整会議で、組織委員会を「報告団体」から「管理団体」にすることを求めた。「組織委員会は都の外郭団体で都政改革本部の調査対象となる」と述べ、組織委員会対し指導監督を強化して、事業・収支を必要に応じて調査に入るとした。 東京五輪の運営体の主導権を東京都が掌握しようとするものである。
 これに対し、森組織委会長は、猛反発した。
「我々の立場は東京都の下部組織ではない。これは何度も前にこう仕上げたと思うが内閣府で認可されている。東京都知事の命令でああしろ、こうしろということができる団体ではない」と述べ、東京都が拠出している57億円を返却する(武藤事務総長)とした。
「管理団体になるのがいやというわけではない。営業努力でお金がたまったから返す」と事実上の“開戦”宣言をした。
関係者によると、森氏の意向を受けた武藤氏が数日前、小池氏と秘密裏に会談して57億円の返還を打診した際、小池氏は「だったら人も返してくれるの?」と突き放したとされる。(2016年9月29 日 産経新聞)
 森組織委会長は、リオデジャネイロ五輪に出席した際に、記者団に対して、「(小池都知事の)ご意向を僕は聞く必要はないだろう。知事の下請けでやっているわけはない。私はボランティアでやっている。奉仕のつもりでやっているのだから。それをお汲み取り頂けなければ考えなければならない」と述べている。
 その後、知事に就任したばかりの小池氏と森氏は笑顔で握手を交わし、開催費用を削減していく方向で協力していくことで一致し、表面上は協調姿勢を装った。しかし、小池氏は組織委への監督・指導を強め、会計監査に踏み込む方向で、次々と先手を打っていたのである。
 森喜朗会長として、小池都知事の“配下”に入るのは到底、耐えられないということだろう。それなら東京都の拠出金57億円を返還すると抵抗した。森喜朗会長の小池都知事に対する激しい反発が窺われる。
 しかし、小池都知事は「“負の遺産”を都民におしつけるわけにはいきませんので」として、一歩も引く気配はない。
 「都民ファースト」を掲げ五輪開催計画の見直しを求める小池都知事、主導権をあくまで確保したい森組織委会長、激しいつばぜり合いが激化した。


小池百合子都知事と森喜朗組織委会長

組織委員会は東京都とJOCが出資している公益財団法人
 開催都市(東京都)と国内オリンピック委員会(日本オリンピック委員会 JOC)は、国際オリンピック委員会(IOC)とオリンピック憲章に基づき「開催都市契約」を結び、大会の準備及び運営を委ねられて、組織委員会を設立することが求められことになっている。
2014年1月24日、東京都と日本オリンピック委員会は、それぞれ1億5千万 円を「出えん」し、一般財団法人として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会を設立した。
 組織委員会は設立後当初、数年間は収入が見込めないため、財団法人をしても存続条件の「2事業年度連続で 純資産が300万円未満の場合解散となる」をクリヤーして、安定的な運営基盤を確立するために、2014年6月、東京都が57億円を追加で「出えん」して、組織委員会の基本財産を積み増した。
その後、行政改革の一環として、財団法人と公益法人を分離して、整理を行う「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律)」が施行され、組織委員会は、公益認定の手続きを行い、2015年1月1日、公益財団法人に認定された。

 東京都が拠出している58億5000万円については、1億5000万円が「出資」、57億円が「寄付」のカテゴリーの「出えん」である。(下記 表を参照)
 「出えん」とは、「財団法人の設立行為となる基本財産に財産を拠出すること」で、「通常の出資の場合に認められている株式、持ち分等の地位を取得することはなく、寄付の性格を有する」とされている。
 「出えん」を受け入れる財団法人は、基本財産に組み入れるので、“出資”の性格を持つ拠出金で、「株式、持ち分等の地位を取得」しないが、“出えん”は緩やかな事実上の“出資”の意味合いを持つと考えるのが妥当だろう。
 東京都は組織委員会に対し、事実上97.5%を“出資”しているのである。


都政改革本部 東京都総務局

組織委員会は東京都の関与が弱い「報告団体」
 東京都は、「都が基本財産に出資等を行っている」または「都からの財政的支援又は人的支援が大きい」団体のうち、東京都が指導監督を行う必要がある団体を「監理団体」としている。
 しかし、国や他の団体による関与が強く、都が指導監督する範囲が狭いなどの団体に対しては、監理団体として指定しない適用除外規定を設け、より指導監督権限の緩やかな「報告団体」とする規定を設けている。
東京都は、都が基本財産に「出えん」し、東京都の職員の派遣など都からの人的支援が継続的に行われることなどから、「監理団体」の要件に該当するものと当初はしていた。
 しかし、組織委員会の設置がIOCに義務付けられていることやオリンピッ区検証やIOC・NOC・開催都市の間で取り交わす合意書の存在や、IOC理事会の指示に従い全ての活動を進めるとされているため、組織委員会の事業活動に対してIOC等から非常に強い関与があることなどから「監理団体の適用除外規定」にあたると判断し、最終的に「報告団体」として整理した。

東京都は「報告団体」や「管理団体」に何をするのか
 東京都では、自律的経営の促進を目的に指導監督を行う「監理団体」と、自らの経営責任のもと自主的な経営を行う「報告団体」に対して、それぞれ指導監督スキームを整理している。

◆「監理団体」と「報告団体」は、団体運営の状況を把握するため、年1回、役員・管理職名簿、事業計画・予算書、事業報告・決算書等を提出求められる。

◆組織委員会については、「報告団体」とされ、毎年度、役員・管理職名簿、事業計画・予算書、事業報告・決算書等を提出させることで東京都は団体運営の把握に努めることにとどまっている。
 年1回程度とされているため、さまざまな団体で行われている事業報告・会計報告といった極めて“緩やかな”指導監督スキームである。

◆「監理団体」に対しては、組織・職員等の調整など組織に関する関与のほか、情報公開やセキュリティ対策の実施、また、必要に応じて団体運営に係る事業及び収支等に係る調査等の指導監督を行うことが定められている。
 「必要に応じて」という規定なので、東京都は随時、必要が生じれば、組織委員会に対してヒアリング、調査、指導監督などを頻繁に行うことが可能だ。
 組織委員会は、都政改革本部の調査チームの調査に対し、きちんとした対応が義務付けれ、指導監督が随時可能なので、東京都は組織委員会の施設整備計画や運営計画に変更や修正を要求することが保証されことになる。
 東京都が上部団体、組織委員会が下部団体、上下関係が明確となる。
 
 組織委員会の事務局本部は、新築の52階の高層ビルの「虎の門ヒルズ・森タワー」にある。組織委員会のメンバーは森喜朗組織委会長、武藤敏郎事務総長を始め、733名が業務に従事している。内訳は東京都の派遣が245名(33.4%)、国が32名(4.4%)、地方自治体が113名(15.4%)、団体(JOC/JPC、民間事業者)が260名(35.5%)、契約職員等が83名(11.3%)である。民間事業者は、電通やJTBが大挙して要員を派遣している。
 東京都の派遣の245名は、五輪開催準備作業の中核部隊となっているのは明白だろう。東京都からの出向なので、給与などは基本的に東京都が全額負担する。年間約20億円を超える巨額な経費だ。
 これだけ組織委員会にコミットしている東京都は、組織委員会に対して監督指導権限を発揮するのは当然で、むしろその権限を行使しないと、東京都民に対しての説明性が欠落して、「怠慢」と批判されても止む得ないだろう。
 組織委員会の「58億5000万円」は返還するとしているが、返せは済むという問題なのは明らかである。問われるのは組織委員会に違いない。


都政改革本部 東京都総務局 

 競技場整備のかかわる仮設施設を誰が負担するかも大きな問題となっている。
 組織委員会は、仮設施設の整備費が招致段階の計画の約723億円から4倍相当の約2800億円に膨らむ見通しとなっていることを明らかにした。
 招致段階では、新国立競技場は国、大会後も使う恒久施設は東京都、仮設施設は、組織委が担うことになっていたが、仮設施設の整備費が組織委員会では負担しきれないほどの額になっていたのである。
 仮設として整備する施設は、有明体操競技場、皇居外苑コース(自転車〔ロードレース〕)、お台場海浜公園(トライアスロン・水泳)、潮風公園(ビーチバレー)、海の森クロスカントリーコース(馬術・クロスカントリー)、有明BMXコース(自転車[BMX])、陸上自衛隊朝霞訓練場(射撃)の7施設だ。それに既設施設などの「オーバーレイ」整備が加わる。
 森喜朗大会組織委員会長は、「東京都が招致をしたオリンピックなので、東京都がまず会場を用意するということが第一義でなければならない」と述べ、東京都も仮設施設の整備費の負担をすべきだとした。
 これに対して、舛添前都知事は協議に応じる姿勢を示し、東京都と組織委員会で協議が開始されていたが、小池都知事に代わって協議は頓挫している。
 都政改革本部の調査チームの報告書では、仮設施設を「大規模暫定施設」と「オーバーレイ」の2種類に分類した。
「大規模暫定施設」(仮設インフラ:組織委員会の表現)は、「大会期間中使用し、大会後は撤去するものでオリンピックに施設として必要な水準まで整備する建物設備」とし、競技場、観客席、照明、空調、電源、フェンスなどである。これに対し「オーバーレイ」は「オリンピック施設に追加されるもので、大会運営上、大会期間中だけ一時的に付加されるもの」とし、テント、プレハブなどが該当する。
 その上で、約2800億円の負担の内訳を、組織委員会が約400~800億円、国が約500億円以上、東京都以外の自治体が約150億円以上、民間が150億円以上、そして東京都は約1000~1500億円とした。
 東京都は、恒久施設に2241億円負担した上で、仮設施設に最大1500億円を負担するべきだとした。組織委員会の窮状を東京都が救済した格好である。
 組織委員会は、仮設施設の経費問題でも、東京都に「頭が上がらない」のは明白だろう。


出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局




都政改革本部 五輪調査チーム調査報告書 Ver.0.9 “1964 again”を越えて 2016年9月29日

すでに破たんしている組織委員会
 致命的な問題は、組織委員会の収支の破たんが明白なことであろう。
 2015年12月、組織委員会の準備や運営に必要な費用を試算したところ、およそ1兆8000億円と当初の見込みの6倍に上ることが明らかになった。
 招致の段階での見通しは約3000億円だった。
1兆8000億円費用の内訳は、
・仮設の競技会場の整備費などが3000億円
・会場に利用する施設の賃借料などが2700億円
・警備会社への委託費などセキュリティー関連の費用が2000億円
・首都高速道路に専用レーンを設けるための営業補償費など選手や大会関係者の輸送に関する経費が1800億円
 首都高の営業補償など当初、想定していなかった経費が加わったことや、資材や人件費の高騰などが要因だとしている。
こうした経費は、準備作業が進むに従って更に膨らんでいくことが容易に想定される。
 
 これに対して組織委員会の収入はスポンサー収入が好調に推移して、当初の見込みは上回るものの、で約4500~5000億円としている。
 組織委員会は1兆円を超える大幅な財源不足が必至の状況である。
 組織委員会が赤字になった場合に、財源の補てんは一義的には東京都が行い、それでも負担できない場合は国が負担することになっている。
 組織委員会は、東京都に「1兆円なんとかして欲しい」と頭を下げる立場なのである。
 組織委員会の森会長や武藤事務総長は、このことを理解して発言をしているのだろうか?

五輪開催経費はまだまだ“青天井”
 調査チームの「3兆円」の試算では明らかにされていない東京都の五輪関連経費はまだまだありそうだ。五輪開催とは直接関係はなくもともと都市の基盤整備として必要と見なし、五輪開催経費から除外しているインフラ整備経費だ。
 選手村の周辺整備費関連では、道路等の基盤整備費、防潮堤建設費として約186億円、巨額の工費に批判が集まった海の森水上競技場は、コースをまたぐ中潮橋の撤去費で約38億円、新しい橋「海の森大橋」の建設費や周辺道路との立体交差工事で300億円以上、さらに有明アリーナの用地取得費約183億円、IBC/MPCが設営される東京ビックサイトに建設する増設棟の建設費で約228億円などである。これは氷山の一角だろう。
 一方、国はいまだに新国立競技場の建設費の一部約1300億円とパラリンピックの開催負担金200億円以外の開催経費は一切、明らかにしていない。
 すでに国が全額負担するハンドボールなどの会場となる代々木競技場の第一体育館と第二体育館の改修費を、スポーツ庁は総額180億円を予算化している。
 五輪の会場基準を踏まえたバリアフリー化のほか、耐震工事や老朽化した設備を更新工事である。
 こうした国の五輪開催経費が次々に表面化していくのは間違いない。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、後4年余り、いまだに開催費用が総額で一体いくらになるのか、示されていない。
 誰が巨額の開催経費を負担するのか、次世代に巨額の負担を残すのか、2020東京オリンピック・パラリンピックは“負のレガシー(負の遺産)”になる可能性はさらに強まった。
 2020年東京オリンピック・パラリンピックの“混迷”と“迷走”がさらに深刻化した。新国立競技場問題、五輪エンブレム問題は、その終わりではなく始まりだった。


国立競技場と五輪マーク 筆者撮影

2020東京五輪大会に一石を投じた都政改革本部調査チーム
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (1)


小池都知事vs森会長 対立激化 小池氏「海の森」見直しに動く 舛添前知事 競技場整備に大ナタ 五輪巨大批判でバッハ会長窮地に
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (2)


海の森、アクアスティックセンターは建設、バレー会場先送り 開催経費「2兆円」IOC拒否 組織委「1兆8000億円」再提示 組織のガバナンス欠如露呈
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (3)


東京都 海の森水上競技場などの競技場整備見直しで413億円削減 V2予算1兆3500億円に 東京都「五輪関連経費」 8100億円を公表
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (4)


五輪マラソン札幌移転の攻防 V4予算1兆3500億円維持 会計検査院報告 開催経費1兆600億円
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (5)


“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」
大会経費総額1兆6440億円  V5公表
小池都知事の五輪改革 迷走「3兆円」のレガシー (6)




2020年1月1日
Copyright (C) 2020 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
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東京2020大会 競技会場マップ 競技会場配置図 競技会場リスト 新設 仮設 既存施設

2023年02月24日 11時36分04秒 | 政治
東京2020大会 競技会場マップ 競技会場配置図 最新情報


東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 競技会場の全貌
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 「3兆円」!の衝撃



(注)OV/オリンピック選手村(晴海)
   IBC/MPC/国際放送センター/メインプレスセンター(東京ビックサイト)










緑色 恒久施設(新設)
赤色 仮設施設
青色 既設施設


(注) マラソン・競歩は札幌会場に変更
(注) 武蔵野の森公園は自転車競技(ロード)のスタート地点、富士スピードウェイはゴール地点

朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき

東京2020大会 43の競技会場の全貌(画像付き)


新設の競技会場(恒久施設)
オリンピックスタジアム(新国立競技場)(開会式 閉会式 陸上競技 サッカー)


提供 日本スポーツ振興センター(JSC) 2019年11月撮影
 迷走に迷走を重ねた新国立競技場が、全体工期36か月を経て、工事計画通り11月30日に竣工した。
 新国立競技場の整備経費については、1590億円を上限として、賃金や物価変動が発生した場合のスライド、消費税10%の反映、設計変更に伴う修正などを行う契約で工事が開始されたが、最終的に21億円下回る1569億円となった。
 問題は、「陸上の聖地」として存続させるのか、陸上トラックなどを撤去して、サッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムにするのか、五輪大会開催後の後利用の計画が未だに示されていないことである。
 収益性の確保のカギとなる「多機能スタジアム」化は、経費削減で、屋根の設置が取りやめになり挫折した。
 「木と緑のスタジアム」、新国立競技場は、五輪のレガシーどころか大会後は赤字を背負ってのスタートとなるのは避けられない。
 負の遺産になる懸念は拭えない


竣工した国立競技場「杜のスタジアム」 提供 JSC


筆者撮影 2019年12月15日
日本の伝統建築の技法、「軒庇」を取り入れる。縦格子には全国47都道府県の木材を使用


筆者撮影 2019年12月15日


筆者撮影 2019年12月15日
国産木材を使用した巨大屋根 観客席を覆う


筆者撮影 2019年12月15日
南北の3層に設置された大型スクリーン 南/9.7m×32.3m 北9.7m×36.2m フルHD画質


筆者撮影 2019年12月15日
五色に塗り分けられた観客席 木漏れ日を表現 約6万席(五輪大会開催時) 


トラック、ピッチの芝生工事は完了 日照不足に対応する芝生養生用の投光器に照らされて芝生の一部がオレンジ色に 


東京アクアティクスセンター(競泳 飛込 アーティスティックスイミング)

出典 IOC NEWS


READY STEADY TOKYO パラリンピック競泳 筆者撮影


READY STEADY TOKYO パラリンピック競泳 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 飛込 提供 TOKYO2020


有明アリーナ(バレーボール)



提供 TOKYO2020


海の森水上競技場(ボート カヌー[スプリント])

完成予想図  出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


グランドスタンド棟とフィニッシュタワー 背景は東京ゲート・ブリッジ 以下 筆者撮影


(左) グランドスタンド棟 経費削減で屋根の設置が約半分に縮小 (右) フィニッシュワター


新設された艇庫


2019世界ボートジュニア選手権大会(2020東京五輪大会テストイベント) 2019年8月7日~11日


2019世界ボートジュニア選手権大会(2020東京五輪大会テストイベント) 正面は新設された臨港道路南北線の臨港中央橋  2019年8月7日~11日


岸壁の両側に設置された消波装置

 建設経費削減の影響で、屋根付きの観客席が大幅に削減され、炎天下の観客席や立見席が大半を占めることになった。観客の熱中症対策が大きな課題として残った。また海風が強く、風の影響や、消波装置を設置したものの波の影響が懸念される。



カヌー・スラロームセンター(カヌー[スラローム])

完成予想図 出典 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


日本で初のカヌー・スラローム・コースが完成、仮設の観客席はこれから建設される。 以下筆者撮影




7月8日から7月31日まで、この競技コースを使用してラフティング体験イベントが開催され、あわせて約530が参加した。




大井ホッケー競技場(ホッケー)

大井ホッケー競技場 メインピッチ 提供 TOKYO2020
 

2019年8月17日、完成披露式典を開催 8月17日から21日まで、2020東京五輪大会のテストイベント、READY STEADY TOKYOとして初の国際試合が行われ、男子はインド、ニュージーランド、マレーシア、日本、女子はオーストラリア、インド、中国、日本が参加した。
 メインピッチは、恒久施設の屋根付き観客席は完成したが、その他の仮設の観客席はまだ工事が始まっていない。 筆者撮影






高温になったピッチの放水して冷却 筆者撮影


夢の島公園アーチェリー場(アーチェリー) 

夢の島公園アーチェリー場 完成予想図 (左が決勝会場 右が予選会場) 提供 TOKYO2020


2020東京五輪大会テストイベント 決勝会場 競技場や観客席(仮設)の整備はまだ行われていない。 筆者撮影






予選会場は完成  出典 READY STEADY TOKYO Test Events


筆者撮影


武蔵野の森総合スポーツプラザ(バドミントン 近代五種[フェンシング(ランキングラウンド RR)])



武蔵野の森総合スポーツプラザ  筆者撮影


ダイハツ・ヨネックスジャパンオープン2019バドミントン選手権大会(2020東京五輪大会テストイベント) 筆者撮影






近代五種(フェンシング)(2020東京五輪大会テストイベント) 筆者撮影




東京スタジアム(サッカー ラグビー[7人制]、近代五種[水泳、フェンシング(ボーナスラウンド BR)、馬術、レーザーラン])



READY STEADY TOKYO 近代五種(水泳自由形200m) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 近代五種(フェンシング ボーナスラウンド BR) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 近代五種(馬術) 筆者撮影


有明テニスの森公園(テニス)

有明テニスの森公園 完成予想図 提供 TOKYO2020


屋外サブコート(新設)


READY STEADY TOKYO テニス メイン室内コート 筆者撮影


READY STEADY TOKYO テニス メイン室内コート 筆者撮影


新設の競技会場(仮設施設)
有明体操競技場(体操)

大会終了後、10年間をメドに存続させ、再活用する「半恒久」施設として整備する。 展示場やイベント会場などで10年程度利用され、都の関連企業の「東京ビッグサイト」が管理運営を行う。
完成予想図 東京都オリンピック・パラリンピック準備局


提供 TOKYO2020


国技館を彷彿とさせる「和風」の外観
READY STEADY TOKYO 新体操 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 新体操 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 新体操 筆者撮影


座席はすべて木製 木のぬくもりは感じられるが長時間座っていると「お尻」が痛くなる
READY STEADY TOKYO 新体操 筆者撮影


海の森クロスカントリーコース(総合馬術[クロスカントリー])

完成予想図 右端は海の森水上競技場  提供 TOKYO2020



 8月13日、2020東京五輪大会のテストイベントが開催され、総合馬術の耐久レース(野外騎乗)が行われた。猛暑の影響で馬の体調悪化が見られ、暑さ対策が最大の懸案課題となった。テストイベントは、約3000メートルのコースで行われたが、本番は約2倍の5600~5800メートルで行われる。また出場選手も、テストイベントの16人から、本番は約65人に増える。競技時間は大幅に長くなる。選手からは、馬には非常に厳しいコンデションで、競技開始時間を午前10時から大幅に早めて欲しいという意見が強く出されている。 筆者撮影






提供 TOKYO2020


潮風公園(ビーチバレー)

完成予想図  提供 TOKYO2020


完成予想図  提供 TOKYO2020


FIVBビーチバレーボールワールドツアー2019 4-star 東京大会(2020東京五輪大会テストイベント)開催 2019年7月24日~28日


コートの砂はベトナムのビーチの砂を輸入




東京都は、暑さ対策を試行的に実施し、観客に暑さ対策グッズの配布や、入り口に救護所、ミスト装置の設置、冷房完備の休憩所(仮設テント)を設置した。


青海アーバンスポーツパーク(バスケットボール[3×3]、スポーツクライミング)

2020東京五輪大会で、野球・ソフトボール、空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの5種目が新しく追加された。
スポーツクライミングはその一つ。五輪大会に若者を引き付ける狙いがある。
READY STEADY TOKYO スポーツクライミング 筆者撮影


READY STEADY TOKYO スポーツクライミング 筆者撮影


屋根は、鉄骨の骨組みだけでまだ完成していない
READY STEADY TOKYO バスケットボール3×3 筆者撮影


READY STEADY TOKYO バスケットボール3×3 筆者撮影


READY STEADY TOKYO バスケットボール3×3 筆者撮影


READY STEADY TOKYO バスケットボール3×3 筆者撮影


有明アーバンスポーツパーク(自転車競技[BMX] スケートボード)

若者に人気のあるBMX競技については、大会組織員会は経費節約のために自転車(トラック)と共に既設施設の「日本サイクルスーツセンター」(伊豆)に会場を変更したいとした。しかし国際自転車連合は観客が集まりやすい首都圏での開催にこだわって難色を示し、結局、有明地区で開催することが決まった。約5000席の観客席を備えたBMXコースを、ゆりかめめ・有明テニスの森駅の隣接地に仮設で建設した。さらにスケートボードの競技会場も建設し、周辺を「都市型スポーツ」の拠点、アーバンスポーツパークとして整備した。
完成予想図  提供 TOKYO2020


有明アーバンスポーツパークに立ち並ぶ仮設の観客席


自転車競技[BMX] レーシング会場  提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO BMXレーシング 筆者撮影


READY STEADY TOKYO BMXレーシング 筆者撮影


READY STEADY TOKYO BMXレーシング 筆者撮影


自転車競技[BMX] フリースタイル会場  提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 自転車競技[BMX] フリースタイル 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 自転車競技[BMX] フリースタイル 筆者撮影


スケートボード会場  提供 TOKYO2020


コースデザイン (左パーク 右ストリート)


スケートボード会場 筆者撮影 (手前パーク 後ストリート)


スケートボード会場 筆者撮影 パークと仮設観客席


陸上自衛隊朝霞訓練場(射撃)

射撃会場完成予想図 提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 射撃競技 Qualification Range 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 10メートルエアピストル 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 10メートルエアピストル Qualification Range 筆者撮影


READY STEADY TOKYO クレー射撃 Shotgun Range 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 50メートルライフル射撃 Final Hall 筆者撮影

札幌大通公園(マラソン・競歩)

札幌マラソンフェスティバル 2021 出典 TOKYO2020


マラソン(男子・女子」コース 出典 TOKYO2020

既存施設の競技会場
東京体育館(卓球)



国立代々木競技場(ハンドボール)



日本武道館(柔道 空手)



国技館(ボクシング)




出典 READY STEADY TOKYO  ボクシング 筆者撮影


出典 READY STEADY TOKYO  ボクシング 筆者撮影



東京辰巳国際水泳場(水球)



東京国際フォーラム(ウエイトリフティング)


東京国際フォーラム 出典 TOKYO2020


競技会場になるホールA 出典 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO ウエイトリフティング 筆者撮影


READY STEADY TOKYO ウエイトリフティング 筆者撮影


馬事公苑 (馬術 [障害馬術・馬場馬術・総合馬術(クロスカントリー除く)])

完成予想図 出典 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 馬術 筆者撮影


正面はインドアアリーナ(室内練習場)とその上部階にあるオブザーベイション・デッキ 筆者撮影


新しく建設された厩舎  筆者撮影



武蔵野の森公園(自転車[ロードレース] スタート地点)

READY STEADY TOKYO 自転車[ロードレース] スタート地点 提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 自転車[ロードレース]  提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 自転車[ロードレース]  提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 自転車[ロードレース]  提供 TOKYO2020


自転車[ロードレース]コース 提供 TOKYO2020


富士スピードウエイ(自転車[ロードレース] ゴール地点)

出典 TOKYO2020 


READY STEADY TOKYO 自転車[ロードレース]  提供 TOKYO2020



東京スタジアム (7人制ラグビー サッカー[予選] 近代五種[水泳200m自由形・フェンシングボーナスラウンド・馬術・レーザーラン])

東京スタジアム 提供 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO 近代五種[フェンシングボーナスラウンド] 筆者撮影
*近代五種[フェンシングランキングラウンド]は武蔵野の森総合スポーツプラザ


READY STEADY TOKYO 近代五種[水泳200m自由形] 筆者撮影 


READY STEADY TOKYO 近代五種[馬術] 筆者撮影


幕張メッセ A・Bホール(フェンシング・テコンドー・レスリング)

幕張メッセ 出典 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO テコンドー 筆者撮影


READY STEADY TOKYO テコンドー 筆者撮影 


READY STEADY TOKYO レスリング 筆者撮影 


横浜スタジアム(野球・ソフトボール)

横浜スタジアム 出典 NBC


出典  TOKYO2020


さいたまスーパーアリーナ(バスケットボール)

出典  TOKYO2020


お台場海浜公園(トライアスロン)

トライアスロン会場 完成予想図 出典 TOKYO2020


READY STEADY TOKYO トライアスロン(水泳[スイム]) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO トライアスロン(水泳[スイム]) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO トライアスロン(自転車[バイク]) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO トライアスロン(自転車[バイク]) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO トライアスロン(ランニング[ラン]) 筆者撮影


READY STEADY TOKYO マラソンスイミング  筆者撮影


READY STEADY TOKYO マラソンスイミング  筆者撮影


出典 TOKYO2020


江の島ヨットハーバー(ヨット・ウインドサーフィン)

江の島ヨットハーバー 出典 TOKYO2020


江の島ヨットハーバー 筆者撮影


ヨットとウインドサーフィンの種目が開催される 筆者撮影


出典 TOKYO2020


出典 TOKYO2020


出典 TOKYO2020


建設された津波避難所 筆者撮影


釣ヶ崎海岸サーフィンビーチ(サーフィン)

釣ヶ崎海岸 出典 TOKYO2020


出典 TOKYO2020


出典 TOKYO2020


出典 TOKYO2020


霞ヶ関カンツリー倶楽部(ゴルフ)



伊豆サイクルスポーツセンター (伊豆ベロドローム[自転車」トラック・伊豆MTBコース[マウンテンバイク])

伊豆サイクルスポーツセンター 提供 TOKYO2020


伊豆ベロドローム 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 自転車[トラック] 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 自転車[トラック] 筆者撮影


READY STEADY TOKYO 自転車[トラック] 筆者撮影


伊豆MTBコース(マウンテンバイク) 完成予想図 出典 TOKYO2020


福島あづま球場



サッカー競技会場



宮城スタジアム


茨城カシマスタジアム

女子準決勝 男子準決勝 女子三位決定戦

埼玉スタジアム2002

男子準決勝 男子三位決定戦

東京スタジアム


国立競技場

女子決勝

横浜国際総合競技場


男子決勝



オリンピック選手村


選手村 IOC NEWS


コートヤード 提供 TOKYO2020


ツインルーム 提供 TOKYO2020


東京国際フォーラム 国際放送センター(IBC)

東京国際フォーラム  出典 TOKYO2020


出典 IOC NEWS


IMC CDR 出典 OBS




2018年11月22日
2019年8月29日改訂
2021年5月20日改訂


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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
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反安倍政権 風が吹いた 小池都知事 都民ファースト 過半数確保 歴史的惨敗 反自民の受け皿 安倍1強

2020年01月17日 10時14分22秒 | 政治
小池氏勢力過半数獲得 自民、歴史的惨敗





“風”は「反安倍政権」に激しく吹いた
 2016年7月2日、東京都議選挙(定数127)で、 小池都知事が代表を務める地域政党「都民ファーストの会」が49議席を獲得し、都議会第1党となった。公明党などと合わせ、小池知事を支持する勢力は79議席を確保し、過半数の64議席を大きく超えた。自民党は過去最低の38議席を下回る23議席にとどまり、歴史的惨敗となった。安倍政権にとって大きな打撃で、厳しい政権運営を強いられる。
 今回の都議選は、昨年8月に就任した小池知事に対する事実上の審判として注目を集め、投票率は前回を7・77ポイント上回る51・27%だった。
 期日前投票を行った人は135万5163人で、前回(4年前)の選挙と比べて45万人余り、率にして51%も増えた。
「共謀罪」法案の強行採決、「森友学園」や「加計学園」問題への政権の対応、稲田防衛相の発言、豊田議員の暴言など、安倍政権に対する批判が都議会選挙で強烈な逆風となった。
“風”は「反安倍政権」に激しく吹いた。

自民党と圧倒した小池都知事

 都民ファーストは、50人の公認候補者のうち、島部の1人を除く49人が当選。また同会は、当選した6人の無所属の推薦候補について、公認に切り替えることを決めた。
 小池都知事と選挙協力を結んだ公明党は、今回23人を擁立し、7回連続で全員当選を果たした。
 一方、自民党は、都議会議長などが相次いで落選。過去最低の38議席を下回り、改選前の57議席の半分以下の23議席に終わった。都連は「連帯責任」として、下村博文会長や高島直樹幹事長ら5役全員が辞任するとしている。
 37人を擁立した共産党は、改選前の17議席を上回る19議席を獲得。離党者が相次いだ民進党は改選前の7議席から5議席に減らした。

 小池都知事に初の選挙となる今回の東京都議会選挙では、「都議会自民党」への批判姿勢や「豊洲市場移転」や「東京五輪」などが焦点になるはずであった。とりわけ「豊洲市場移転」問題では、結論を先延ばした上に、築地市場も残存を図るとした曖昧な計画に示し、「いつまでも決められない小池都知事」と批判を浴びた。
 その結果、6月下旬の朝日新聞の都民調査では、小池知事支持は、74%(2017年4月)から急落して59%、 都議選投票先は都民ファーストと自民と同じ25%と、両者は拮抗してしまう。
小池都知事への「風」は失速していた。
 こうした情勢を激変させたのは、選挙前1カ月の「森友学園」や「加計学園」問題への政権の対応、稲田防衛相の発言、豊田議員の暴言など安倍政権に対する国民の激しい“憤り”であった。小池都知事にとっては、まさに“神風”であった。
今回の敗因について、自民党の閣僚経験者は「THIS IS敗因」と述べたと伝えられている。T=豊田真由子衆議院議員、H=萩生田光一官房副長官、I=稲田朋美防衛相、S=下村博文都連会長が「THIS」であるとしている。

“安倍政権の支持は、“消極的支持” 他に“受け皿”がない!
 安倍政権が世論調査では、高い支持率を誇っていた。朝日新聞の調査では47%5月24、25日実施)と「共謀罪」強硬採決に対する批判が高まっているなかで、50%近い高い水準を維持していた。もっとも6月17、18日に実施した世論調査では、安倍内閣の支持率は41%でと大幅に下落して、政権に動揺が走ったとされている。

これまで、安倍政権が高支持率を保持して背景は、選挙民は安倍政権を“積極的に支持”してわけではないと筆者は考える。あくまで“消極的な支持”で、「他に支持できる政党がない」からだろう。
とりわけ、本来は自民党政権の“受け皿”になるはずの民進党への信頼感が喪失しているのが大きな要因だ。
今回の東京都議選挙では、民進党は、安倍政権への逆風で、恰好の場を得て、議席数拡大の絶好の機会だったのに逆に議席を減らした。
選挙民は民進党を自民党政権の“受け皿”として認めていなかったのである。
しかし、忘れてはならないのは、国民は安倍政権に対して、100%信頼を置いていたのではなく、その政権運営の手法に、「批判」と「不満」を頂いていたのに違いない。
ところが、余りにも頼りなく感じられる野党に向かうのは躊躇していた。

“小池都知事が「反自民」の受け皿に
 今回の東京都議選で、小池都知事と都民ファーストの登場は、こうした「批判」と「不満」を抱いていた国民にとって、絶好の自民党政権の“受け皿”となったとなったのである。国民は、信頼できそうな“受け皿”を探していたのである。

 次の国政選挙で、自民党政権の“受け皿”として幅広く支持を得られる政党が現れたなら、自民党は“大敗”する可能性がある。今の既成野党、民進党や共産党などはその役割は担えない。

 国政選挙でも、「風」は反安倍政権に吹く可能性は十分にある。重要なのはその“受け皿”となる新たな政党が生まれることだ。政党再編の軸になるのは、小池都知事の政治勢力かもしれない。
「安倍1強」に終わりを告げる日は、そう遠くないかもしれない。



2017年07月03日

Copyright (C) 2017 IMSSR

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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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東京オリンピック 輸送対策 交通渋滞マップ 交通規制 交通量削減 「30%削減」はできるか?

2020年01月16日 08時41分14秒 | 政治
最大の難問 交通渋滞は克服できるのか 2020東京五輪大会



首都高値上げ、都内全域 日中は1千円上乗せ
 8月26日、2020東京五輪大会の渋滞対策で、政府と大会組織委員会、東京都は、都内の首都高速道路の料金(ETC利用の普通車で300~1300円)に日中は1千円を上乗せをして値上げし、深夜から未明は料金を半額にする「ロードプライシング」を導入する方針を決めた。
 値上げ期間は五輪開会式の4日前の20年7月20日から閉会式翌日の8月10日までと、パラ期間中の8月25日から9月6日までの午前6時~午後10時の間、都内全域で、1千円値上げする。自家用車が対象で物流トラックやタクシーなどは除外される。一方、午前0~4時は首都高全線でETC搭載車をすべて半額とする。
 また過去大会で実績のあるナンバープレート規制や、複数人が相乗りした車両(HOV)の専用レーンを設ける対策は、本線料金所等で誤進入した車両の転回スペースがないことや、首都高本線が片側2車線で渋滞を発生させることなく、専用レーンを確保することが困難なことから、導入は困難であるとした。
 しかし、あくまで任意での協力を求めることは検討したいとした。
 今年の7月に、大会開催に備えて交通規制など大規模な交通渋滞対策の試行を行ったが、その効果は、首都高速道路で交通量が約7%減、一般道で約4%減にとどまったことが明らかになった。ときわけ首都高速道路では大会関係者料の円滑な輸送を実現するために「30%削減」を目指しているが、遠く及ばす、さらに強力な交通量削減追加策が求められていた。 
 しかし、7月の試行でも、首都高速道路は、渋滞解消に向かったものの、その影響で一般道の渋滞が激しくなることが分かっている。料金1000円上乗せで、首都高速道路の通行量抑制に効果が上がっても、そのしわ寄せで一般道の渋滞が激しくなる懸念が大きい。一般道の渋滞激化は、市民生活への影響が極めて多い。宅配便やコンビニへの配送にも大きな影響は必至である。
 結局、交通量の十分な削減が実現しない限り、「1000円値上げ」も「ランプ閉鎖」も、むしろ都内の一般道路の渋滞を悪化させることにつながりかねない。
 首都高速道路の渋滞が解消されて約5500千台とされている大会関係車両のスムーズな通行は確保されるが、一般市民は渋滞に苦しむという構図も見えてきた。
 東京都は、8月27日から1カ月間、都民や企業に対しパブリックコメント(意見公募)を行った上で、関係機関や関連自治体と調整を進めて年内に方針を固めるとしている。


試行の検証について 交通輸送技術検討委資料





閉鎖された首都高速渋谷線三軒茶屋料金所 7月26日午前10時 筆者撮影


三軒茶屋料金所閉鎖のしわ寄せで国道246号線は大渋滞

「首都高の通行量はわずか7%減 一般道の渋滞は悪化
 2020年東京五輪の開幕まで1年となった7月24日と26日の二日間に渡って、本番での都心部の混雑緩和に向けた大がかりな交通規制実験が行われた。競技会場への主要ルートとなる首都高速道路では、通勤時間帯を中心に最大で33カ所の入口を閉鎖し、環状7号線では都心方向への流入を抑制した。交通規制の試行としては過去に例のない規模である。大会組織委員会ではこの結果を検証し、大会開催時の交通対策を詰めることにしている。
 首都高では終日、新国立競技場(東京・新宿)最寄りの「外苑」(上り・下り)と選手村(同・中央)近くの「晴海」など4カ所の入り口を閉鎖。さらに高速道への流入量が多く、渋滞発生に影響を与えやすい三軒茶屋などの料金所入口が最大で約33カ所が閉鎖された。
 また、東名高速や中央高速、東北自動車道などから首都高へ入る計11カ所の料金所ではレーン数を減らし、流入台数を抑制した。
 一般道では幹線の環状7号の交差点118カ所で、早朝5時から正午まで、都心に向かう「青信号」の時間を、最大10秒程度、短縮して流入を抑えた。警視庁幹部は「交通規制のテストとしては過去最大」と話している。
 その結果、首都高各線では通行台数が激減し、警視庁によると、24日では、昨年同時期比で、臨海部の湾岸線は、午前8時から午後3時までの間は、東行きは94%、西行きで84%の混雑度が大幅に減少、新国立競技場付近を通る新宿線では上りで78%、下りで89%減り、スムーズな通行が実現した。
 しかし、交通規制のしわ寄せも大きかった。レーン規制が行われた料金所手前では渋滞が発生し、東名高速では一時15キロ、東北自動車道で6キロの渋滞が発生した。
 また首都高に入れなかった車両が一般道に迂回し、国道246号では191%、国道1号線では200%、混雑度が増えた。特に信号規制が行われた環状7号線周辺などでは渋滞が激しくなる個所が目立ったという。
 国交省は、24日に首都高を通った車は、昨年同時期と比べて7.3%少ない101万4000台で、26日は6.8%減の107万5000台、一般道の都内15地点を通った車はいずれも約4%減で、24日は63万8000台、26日は66万5000台だったことを明らかにした。 
 首都高速の交通量は、朝や日中の時間帯はかなり減少したように見えたが、ピーク時の交通量が分散しただけで1日平均するとさほど全体の交通量は減っていなかったのである。
 また、大会組織委員会は、選手村と国立競技場間の所要時間については、晴海から外苑までが約24分となり、目標としていた20分の達成はできなかったとした。
 二回目の7月26日の実験では、警視庁によると、朝方、都心に向かう一般道の上りが渋滞し、去年の同じ時期の金曜日に比べ、国道1号線は約3倍、国道20号線と246号線は約1.5倍の混雑となった。
 交通量全体を十分に減らさないで首都高の交通規制を行うと、一般道へ迂回する車が押し寄せて渋滞がむしろ悪化して、経済活動や市民生活に大きな影響を及ぼす。
 大会開催時の交通量は、選手や大会関係者、1000万人が見込まれている観客や観光客、激増する物流などで、通常時より10%以上は、交通量が増えるとされている。
 大会開催時に増加する交通量を見込んだ上に、通常時の「30%」減の目標を達成するのは、極めて厳しい状況になってきた。 

「スムーズビズ」始まる  2020東京五輪大会の交通混雑緩和対策
 2019年7月22日、2020東京五輪大会開催1年前にあわせて、東京都は企業や官公庁、団体に協力を求め、混雑時間を避ける時差出勤やテレワークなどに取り組む「スムーズビズ推進期間」を開始した。2020東京五輪大会の交通対策に活かそうとする取り組みである。
 大会開催期間中は、参加選手や大会関係者や観光客など首都圏には1000万人以上が訪れ、首都圏の鉄道は、乗客が通常時より1割程度増えると予想され、とりわけ朝夕の通勤時間帯の混雑悪化が懸念される。東京都では、山手線、京王線、臨海部の路線では、乗車率が最大で約180%に達すると予想している。
 東京都の取り組みに合わせて、通勤時間帯の混雑緩和のために、JR東日本は7月22日~26日、山手線と中央・総武線で午前5、6時台の列車を増発し、東急電鉄も7月22日~31日のうちの平日の6時台に臨時列車を運行する。
 東京都は、こうした取り組みを「スムーズビズ」と名付け、企業や官公庁、団体には「テレワーク」や「時差Biz」、物流企業には配送時間やルート変更などで交通量を削減する「2020TDM」への取り組みを呼びかけ、約3000社の企業が協力する予定だ。しかし、東京商工会議所が都内の企業475社にアンケート調査を実施したところ、物流面の対策について社内や取引先との間で何らかの検討を始めたと答えたのは約11%にとどまり、「企業単独での対応は難しい」としているという。(NHKニュース 7月23日)。物流企業の対応の難しさが浮き彫りとなった。
 「スムーズビズ推進期間」は7月22日から9月6日まで行われる。



五輪専用・優先レーン、競技会場周辺一般道に 交通規制
 2019年6月19日、東京都と大会組織委員会は輸送連絡調整会議を開き、大会開催期間中に競技会場周辺の一般道に専用・優先レーンを設けるなどの輸送運営計画案をまとめた。今夏、様々な渋滞対策を試行し、年末までに計画を完成させる。
 これによると、新国立競技場周辺や有明地区の2カ所に関係車両以外の通行を禁止する専用レーン(計約3・5キロ)を設置し、7カ所に優先レーン(計約19・8キロ)を設ける。競技会場周辺には一般車両に迂回を要請する区域を設置するとともに、進入禁止や通行制限などの規制も行う。
 首都高速道路は、車線が少ないこともあり、専用・優先レーンを設けるとむしろ渋滞が加速して、大会関係車両の通行に影響がでることが予想され、専用・優先レーンは見送られる方向だ、また一般高速道路への専用・優先レーンの設置は、当面は検討していないとしている。

東京五輪大会の交通渋滞対策 本番さながらの規模で今年の夏に試行
2019年夏の交通マネジメントの試行計画
▼ 大会本番並みの目標を掲げ、交通混雑緩和に向けた取組を総合的にテストする期間を設定
・一般交通
 東京圏に広域における一般交通は、大会前の交通量の一律10%減を目指す。特に重点取組地区は、出入りする交通量の30%減を目指す。
・首都高速道路の交通量の更なる減
 首都高速道路は、交通量を最大30%減とすることで、休日並みの交通環境を目指す。

▼ オリンピック・パラリンピックの期間に相当する期間を集中取組期間とし、一回目を7月22日~8月2日に、二回目を8月19日~8月30日に設定し、企業や団体に重点的な取組を依頼する。一回目の 7月22日~8月2日の内、前半の7月22日~26日は「チャレンジウィーク」とし、その中で集中取組期間の「コア日」とした7月24日や、週末で交通量が多い7月26日(金)に、大会開催時と同規模で交通規制や信号調整などを行う。

▼各社取組のピークを合わせる「チャレンジウィーク」(7月22日~26日)、及びコア日(7月24日)には、効果測定を実施 する。

▼交通規制や信号調整(TSM)は、7月24日と26日の二日間に渡って実施し、課題や確認事項があれば8月23日(金)にも実施する計画である、また開会式・閉会式を想定して、8月25日には選手村~競技会場間でバス20台~30台の隊列走行を試みる。

▼交通規制や信号調整(TSM)の内容
・高速道路において終日実施する対策(7月24日と26日)
  都心方向への高速道路における11箇所(圏央道内側の32か所の内)の本線料金所でレーン数を終日制限
  選手村周辺等の4つの入口(新国立競技場近くの「外苑」の上下、選手村付近の「晴海」とさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)最寄りの「新都心」の上りの計4カ所)については終日閉鎖
・環状七号線上の信号機を、午前5時から正午にかけて都心方向の青信号時間を短縮


・交通状況によって段階的に行う交通規制
 交通状況をモニタリングし、交通量が基準を超えた場合は、渋滞を未然に防ぐために入口閉鎖を行う。それでも交通量が増加する場合は、入口閉鎖の箇所を追加していく。渋滞等が発生する恐れがなくなった際は閉鎖解除。
 閉鎖対象の入口は50カ所(首都高速49カ所、中央高速1カ所 [圏央道内側の302か所の内])


出典 警視庁


出典 警視庁


出典 2020東京オリンピック・パラリンピック輸送連絡会議 2019年6月19日

 交通規制や信号調整(TSM)を有効に機能させる前提として、全体の交通量を削減(TDM)須である。全体の交通量が十分に削減されないままで、交通規制や信号調整(TSM)を実施すると、むしろ深刻な大渋滞が発生し、都心の交通はマヒ状態になる可能性がある。
 輸送連絡調整会議では、交通量を、重点取組地区や首都高速道路では、約30%の削減を目指す。
 約30%の削減を実現するために、企業や物流関係者、団体、官公庁に時差出勤やテレワーク(在宅勤務)、休暇の取得、会議・打ち合わせ・商談時期の変更、商品納品時期をずらす、まとめ発注といった交通量削減へ取組を求めている。
 東京都では、「2020TDM推進プロジェクト」を立ち上げ、企業や団体に対し交通量削減への取り組みを呼び掛けているが、現在(2019年6月)、1636社が参加を表明している。
 しかし、こうした交通量削減の取り組み(TDM)は、「協力ベース」なので強制力はなく、結果としてどの程度の削減に結び付くのか読めないのが課題として残る。



 そこで併用しなければならない交通対策は、強制力を持つ交通規制や信号調整などの「交通システムマジメント」(TSM)導入である。
 「交通システムマジメント」(TSM)は、自主的な協力を前提にした「交通需要マネジメント(TDM)」と異なって、強制力のある交通規制が基本となるだけに企業や団体、とりわけ市民生活への影響が大きい。
 これまでの検討で、都心部の高速道路では、車線数が少なくて合分流が多いことから、大会専用・優先レーンの設置は、むしろ渋滞を深刻化させて、逆に大会関係車両にも影響を与えることが明らかになっていた。
 一方、競技会場周辺の一般道路については、専用・優先レーンの設置は可能とし、今回のその案が公表された。
 大会専用・優先レーンの設置に代わる手法として、料金所の閉鎖やレーン規制よる流入規制、首都高速道路の料金上乗せ課金をする「ロードプライシング」、ナンバープレート末尾の数字で通行を規制する「ナンバープレート規制」、複数人が相乗りした車両を優先する「相乗り専用レーン」(HOVレーン)などが検討されている。
 いずれにしても、一般車両の通行が制限されることになり、都市の経済活動や市民生活へ大きな影響がでると思われる。

 東京都と組織委は、新たに大会開催期間中の鉄道の混雑予測も明らかにした。
 首都圏の鉄道は、朝のピーク時間帯には、「ラッシュアワー地獄」が連日、常態化しているが、通常時の混雑区間(朝7時~10時で混雑率150%以上を超える区間)に比べて大会開催時は観客増が加わり、混雑区間約13%増加して、混雑は更に拍車がかかるとしている。乗客数を「10%」削減できれば、通常時に比べて混雑区間は約38%削減可能とした。

 それでも局所的にはピーク時の混雑は解消不可能で、ゆりかもめ(新橋―日の出)で7日間で15回(30分単位で計上)、JR京葉線(西船橋-南船橋)は6日間で6回、京王線(調布―飛田給)で5日間で9回が、混雑率150%以上となるなど一部で深刻な混雑が発生するとしている。

 鉄道の混雑解消策は、輸送力の増強は限界があり、不慣れな乗客に対する案内・誘導などを改善することも必要だが、あくまで、乗客の任意の協力ベースに頼らざるを得ないため、情報発信に力を入れ理解を求めることが重要となる。


首都高料金 1000円上乗せへ
 2020東京五輪大会の交通渋滞対策として、国、東京都、大会組織委員会は、大会開催期間中の首都高速道路の交通量を抑制する対策案をまとめた。
 首都高速道は、大会開催期間中の選手や大会間関係者の輸送の幹線ルートで、こうした車両が交通渋滞に巻き込まれれると大会運営に支障が起きる懸念が大きい。
 対策案よると、首都高速道路の大会期間中の通行料金を、深夜午前0時から早朝午前4時までは、全車両を対象に半額程度に引き下げる一方で、午前6時から午後10時までは、バスやタクシーなど公共交通や物流を担うトラックなどを除き、マイカーなどは東京都内で1000円程度上乗せするとしている。
 さらに、開会式や閉会式が行われる日は、大会関係者や選手を輸送する車両を除き、ほぼ全車両を対象に、午後4時から深夜までの長時間の通行禁止を実施する。
 渋滞に関する試算では、選手村から新国立競技場まで(約10キロ)、何も手を打たない場合で午後5~6時ごろに最大で80分かかる。時差出勤など企業への呼びかけで40分に減り、さらに首都高の1千円の上乗せと料金所の一部閉鎖などで約20分に短縮できるなどの結果が出た。
 通行料金引き上げの他に、過去の五輪大会で導入されたナンバープレートの奇数、偶数で通行を規制したり、複数人が相乗りした車両の専用レーンを設けたりする対策も検討したが、それぞれ課題が多く実施は難しいとされている。唯一現実的な対策は通行料金値上げだろう。
 今年の夏、7月22日~8月2日と8月19日~30日(土日を除く)に渋滞対策の総合テストを実施し、首都高速道路の料金所閉鎖やレーン規制などの交通規制を大会開催時と同じ規模を想定して、その効果や影響を検証するとしている。
 国、東京都、大会組織委員会では、この対策案を元に議論を進め、8月にも大会開催期間中の交通渋滞策を決めるとしている。
 企業や物流関係者、市民が交通量削減に自主的に協力してもらい交通渋滞を解消しようとする「交通需要マネジメント(TDM)」では十分な効果が得らず、市民生活に影響が大きい直接的な交通渋滞規制が現実となってきた。
 (参考 NHKニュース 5月29日、報道ステーション 5月31日 朝日新聞 6月8日)



G20大阪サミット開催 史上空前の警備体制 大規模な交通規制で交通量50%削減 経済活動や観光、市民生活を直撃
 G20大阪サミットでは、全国から3万2千の警察官を動員し、大阪は厳戒態勢に置かれた。メイン会場となったインテック大阪のある大阪湾の人工島・咲洲は、「封鎖」状態、阪神高速道などは通行止め、大阪市内の9エリアでは、一般道でも大規模な規制を実施した。
 阪神高速環状線を中心に、6月27日から6月30日まで早朝から深夜まで通行止め規制が行われた。
 またVIPが往来する関西空港と大阪市内を結ぶ高速道路は、6月27日(木)と6月28日(金)は関西空港から大阪市内に向かう車線がVIPの通行時は通行止めになり、6月28日(金)と6月29日(土)は、大阪市内から関西空港に向かう車線が通行止めとなった。
 一般道路では、首脳が宿泊するホテル周辺の9エリアに、迂回エリアや煩雑に交通規制を行うエリアが設けられた。
 37の国や国際機関の首脳、政府代表団、海外メディアなど関係者は約3万人に上り、各国首脳や関係者は大阪市内のホテル13カ所に分散して宿泊したため、大規模な交通規制が必要となった。ホテル周辺などで規制が行われた一般道では、想定よりも通行止めが長期化した。当初は短時間で規制と解除が繰り返される見込みだったが、ホテルが集中するJR大阪駅周辺は連日、早朝や夕方に2時間半~3時間半ほど連続して通行止めになった。28日に晩餐会の会場となった大阪城公園周辺は、午後5時ごろから約7時間半、通行止めが続いた。
 大規模な交通規制が行われると激しい渋滞が発生する可能性があるが、地元の13機関と団体で構成する「G20大阪サミット交通総量抑制連絡会」では、サミット開催金の総交通量を50%削減を掲げ、企業や物流関係者、市民に協力を呼び掛けた。
 連絡会では渋滞を回避するためには50%削減が必要だとした。
 府警は昨年10月から企業や業界団体をまわり、開催中の休業や営業車の利用自粛を呼びかけた。
 府警によると、4日間の平均で前週と比べ大阪市中心部の交通量は4日間平均で51・2%減で、府警は目標を達成できたとしている。G20開催中の大阪市内の一般道路は、閑散として交通規制による渋滞は発生しなかったいう。
 しかし、大阪市周辺の経済活動や観光、市民生活への影響も大きかった。
 好調な観光業が直撃を受けた。
 大阪城の天守閣では開催前日の27日と、28日の2日間、臨時休館を決めた。サミット期間中には各国の首脳らが出席し、大阪城にある迎賓館で晩さん会が行われる予定で、厳重な警備態勢に加え大阪市内を中心に大規模な交通規制が行われるからだ。
 大阪市内でも営業を見合わせる観光施設が相次いでいる。1日4000人近くが訪れる梅田スカイビル屋上の空中庭園展望台は、外国人観光客に人気のスポットだが、サミット開催前後の27日から30日までの4日間休館する。
 大阪中心街を川面から見る水上バス「アクアライナー」も同じく4日間、運航を中止する。
 百貨店の客足にも影響が出た。阪急梅田本店では、4日間の客数が前年同期に比べ約2割減った。大丸梅田店でも、雨の影響もあり、同期間の客数が前年より10~15%ほど減った。「交通規制の影響で、車で来るお客様が少なかった」という。
 府警交通部の幹部は「結果的に市民の移動や経済活動に影響が生じ課題が残った」と述べているという。

 G20大阪サミットは、わずか3~4日間程度だが、2020東京五輪大会は17日間に渡って開催される。警備体制や交通規制はさらに大規模で長期間に渡る。大会開催期間の経済活動や市民生活は一体どうなるのだろうか、懸念は深まるばかりだ。


大阪府警


出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日


出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日


「50%交通量削減」の効果? 一般道はガラガラ 出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日


「50%交通量削減」の効果? 一般道はガラガラ 出典 ANNニュース 「“超厳戒”大阪から人・車が消えた!」 2019年6月27日

“超厳戒”大阪から人・車が消えた!首脳が続々到着(19/06/27)



2020東京大会開催時に首都高通行料金上乗せや通行制限、専用レーン設置へ
 2019年2月6日、大会組織委員会と東京都は、国や有識者らを交えた交通輸送技術検討会を都庁で開き、大会時の渋滞緩和策として、首都高速道路の通行料金を五輪大会の競技時間帯には500円から3000円を上乗せして交通量を調整する「ロードプライシング」や、ナンバーによる通行制限、「相乗り」専用レーンの導入に向け、検討を本格化することを確認した。「ロードプライシング」は、中央環状線の内側を中心に行われ、物流への影響を考慮して中型以上のトラックなど物流関係の車両は対象から除外する方向で検討するとしている。
 首都高速道路の平日の交通量は、現在、1日約110万台で、通行料金は距離や時間帯に応じて300円から1300円(ECT普通車)で設定されている。仮に3000円上乗せが実施される区間の通行料金は最大で4300円という破格の高額となり、利用者からの反発は必至で、都市活動にも大きな影響を及ぼす。

 五輪大会開催中は、選手や大会役員の輸送で専用バスや乗用車など約6千台が選手村や競技場、成田・羽田空港などを往来する。さらに、観光客の輸送や食料品や飲料、日用品など貨物を輸送する車両が都心に溢れるだろう。
 交通量抑制など何も対策を取らなければ、1日約110万台が通る首都高では交通渋滞が現状の2倍近くになるという試算が明らかになった。大会運営はもとより、経済活動や都市活動、市民生活に大きな影響が出るのは必至で、交通渋滞対策が五輪大会成功の最大の難問になっている。

破綻した「交通需要マネジメント(TDM)」 交通渋滞緩和は達成できず
 交通渋滞を緩和させる方策として、これまで大会組織委や都は、大会開催期間中、都心部の首都高速道路や一般道の平日の交通量を「15%減」(休日並み)とするという目標を掲げ、企業や物流関係者、市民に呼びかけ、時差出勤や物流ルートの変更などで交通量を抑制する「交通需要マネジメント(TDM)」による交通渋滞緩和を目指していた。
 従来から「交通需要マネジメント(TDM)」の効果が一体どの位のあるのか懸念されていたが、今回、都心部などで一律に10%の交通量の削減が達成されても、23区内の一般道では利用台数が11%減るのに対し、首都高では6%減にとどまるとの試算結果を明らかになった。
 とりわけ問題なのは、大会開催期間中に選手や大会関係者の基幹輸送ルートとなる首都高の渋滞緩和効果が極めて薄いことが明らかになったことである。
 さらに問題なのは、こうした「交通需要マネジメント(TDM)」の取り組みは、あくまで企業や物流業界、市民の協力ベースよる交通量の削減策で、実際、どれくらいの交通量削減が達成できるのか、まったく未知数だという弱点がある。ようするに、大会を開催期間中にならないとその効果はよく分からないのである。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、「交通需要マネジメント(TDM)」による交通量削減策について、「定量的」に効果を把握できないとして疑問視する指摘を繰り返していた。 昨年、11月下旬に開催された大会の準備状況を検証する「調整委員会」でも、「交通需要マネジメント(TDM)」では不十分だという指摘を大会組織委員会は受けたと思われる。
 今回、開催された「交通輸送技術検討会」では、国際オリンピック委員会(IOC)の指摘も踏まえて、大会期間中の首都高渋滞解消の検討を行ったが、自主的な協力を前提にした「交通需要マネジメント(TDM)」では交通渋滞抑制の効果が不十分と判断し、追加対策の必要性を確認したのである。
 これまで組織員会と都が進めてきた自主的な取り組みによる「交通需要マネジメント(TDM)」は破綻し、結局、強制力を伴う交通量削減策が導入されることになった。
 その結果、登場した追加対策が、首都高速道路の料金上乗せ課金をする「ロードプライシング」や、ナンバープレート末尾の数字で通行を規制する「ナンバープレート規制」、複数人が相乗りした車両を優先する「相乗り専用レーン」(HOVレーン)などである。
 いずれも海外でも実績があり、この日の会合でも「ロードプライシング」については海外でも実績があり、「ETCなどのインフラもあり、導入したらいいのではないか」との意見が出て、反対はなかったという。
 これまで協力ベースで懸命に交通量削減に努力してきた経緯をどう考えているのだろうか。
 さらにこうした追加対策に加えて、首都高速道路などに「オリンピック優先レーン」の設置も検討されている。首都高速の一般車両の通行が1車線に制限されたら、たとえ交通量の削減を図ったにしても、激しい渋滞が発生して、都心の交通は麻痺する可能性が強く、大混乱するのは必至だろう。 

 組織委や都などで今後協議を進め、3月中にも方向性を取りまとめ、首都高の料金変更に必要となる沿線自治体の同意などについては19年末頃までには得たいとしている。
 2018年4月、大会組織委員会と東京都は、交通マネージメント推進するにあたって、その理念の最初に、「大会運営と都市活動の安定との両立」を上げた。「ラッシュアワーを中心に激しい渋滞や混雑が発生している状況の下、東京 2020 大会に当たっては、安全・円滑かつ効率的で信頼性の高い輸送と都市活動の安定と の両立を目指します」と宣言し、五輪開催にあたっては、大会輸送と都市活動の両立を最重要課題として掲げている、
 しかし、高速道路料金上乗せ課金やナンバープレート規制、相乗り規制などが実施されれば、明らかに都市活動や市民生活に大きな影響を及ぼすのは間違いない。
 これでは「大会輸送と都市活動の両立」ではなく、「都市活動」や「市民生活」へのしわ寄せの上に「大会輸送」が成り立っていると言っても良い。
 一体、誰のための五輪大会開催なのか、また、一つ「負のレガシー」が生まれそうだ。



出典 第4回交通輸送技術検討会資料

五輪渋滞マップ公開 重点取組地区指定 都内16地区
 2018年10月31日、大会組織委員会と東京都は、交通輸送技術検討会(第3回)を開き、東京2020大会期間中の交通渋滞や鉄道の混雑状況について、「大会輸送影響度マップ」をまとめて公表した。
 期間中で最も渋滞・混雑が激しいとされている7月31日のシミュレーションでは、何も対策を講じないと、高速道路、一般道では広範囲に渋滞や混雑が発生し、鉄道では、朝夕の都心のターミナル駅や日中の競技会場を中心に、激しい混雑が出ることが明らかになった。
 交通輸送技術検討会では、「大会輸送影響度マップ」は、今後、競技日程がより具体的になっていくのに合わせて更新していくとしている。


東京2020大会における交通マネジメントの検討状況について 交通輸送技術検討会(第3回)

 また交通渋滞解消に向けての交通量抑制に重点的に取り組む必要がある16地区を指定し、物流の抑制や配送ルート、配送時間の調整、時差出勤、夏季休暇などを企業や個人に協力を要請し、物流業界や企業には、交通量抑制の「アクションプラン」を作成してもらうとしている。
 16地区は、競技会場が多い臨海部や新国立競技場周辺の新宿、渋谷や、道路・鉄道の混雑箇所を通過する交通が多いエリアである。都心の繁華街のほぼ全域が指定された。

■重点的に対策に取り組む16地区
▼ ヘリテッジゾーン
 (1)新宿(2)渋谷(3)品川(4)浜松町・田町(5)新橋・汐留(6)大手町・丸の内・有楽町(7)八重洲・日本橋(8)神田・秋葉原・お茶の水(9)九段下・飯田橋(10)番町・麹町(11)青山・表参道(12)赤坂・六本木(13)霞が関・虎ノ門
▼ 東京ベイゾーン
(14)晴海・有明・台場・豊洲・大井ふ頭
▼ その他
(15)池袋(16)大崎


東京2020大会における交通マネジメントの検討状況について 交通輸送技術検討会(第3回)

“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心



首都高速道路の渋滞 「1.8倍」に
 2018年1月19日、2020年東京五輪・パラリンピックの交通・輸送を検討している「輸送連絡調整会議」で、大会組織委員会と東京都は、大会開催時の交通の見通しについて、「交通対策を行わない場合、 一般交通に大会関係車両が加わること で交通状況は厳しくなる見通しであり、 首都高の渋滞は現況の約2倍近くまで 悪化する」とし、「首都高の渋滞で無駄になる時間が約1.8倍に悪化する」との想定を明らかにした。そして「都市活動、 大会輸送ともに影響が大きいことから、 交通マネジメントの導入が不可欠」とした。
 首都高速道路は大会関係者の円滑な輸送を担う基幹道路として位置づけられている。都心環状線、11号台場線、3号渋谷線、4号新宿線、9号深川線、10号晴海線、湾岸線がオリンピック・ルート・ネットワーク(ORN)に指定されている。首都高速道路の広範囲に渡る渋滞対策が最重要となっている。 

 交通マネジメントの導入にあたっては、大会輸送と都市活動の両立を最重要課題として掲げて、輸送を安全・円滑に行うために3つの柱を明らかにした。

① 交通需要抑制・分散・平準化を行う「交通需要マネジメント」(TDM)
② 道路状況に応じて交通の需給関係を高度に運用管理する「交通システムマジメント」(TSM)
③ 鉄道等の安全で円滑な輸送を実現する「公共交通輸送マネジメント」



「15%程度交通量減」
 大会期間中は、大会関係者や夏休みの旅行客が加わり、通行量は大きく増える見込みだ。
 市民の日常生活や都市活動を妨げることなく、円滑かつ安全で確実な大会輸送を確保するためには、全体の交通量を削減する必要があるとし、交通量を、全体で「休日並み」の「15%減」にするという目標に掲げた。
 「15%減」の目標を達成するために、全体として、「交通需要マネジメント」(TDM)で「10%減」を行った上で、それでも混雑が残る「重点取組地区」などは、TDMでの削減目標を「15%減」に引き上げ、さらに「交通システムマジメント」(TSM)を導入して、交通規制を行い、「20~30%削減」を図るとしている。
 
 TDMで全体の平均で「10%減」を実現しても、その効果は一般道路では「12%減」となるが、高速道路ではわずか「6%減」、さらに最も重要な首都高速道路ではわずか「1%減」にとどまることが明らかになっている。一般道路では混雑・渋滞はかなりの程度、解消するが、首都高速道路など局所的にしてもかなりの混雑・渋滞が残る。そこでこうした地域では、TDMの目標値を「15%減」に引き上げ、混雑・渋滞の解消を図る。しかし、「15%減」を達成しても、首都高速道路では、局所的に時速20キロメートル以下の渋滞や時速20~40キロメートルの混雑が解消できない。何も対策を行わない場合には、首都高速道路の渋滞は現況の2倍になると想定されている。渋滞を通り越して「麻痺」である。
 首都高速道路の大会開催時の通行台数は最大で117万7000台が予想されるが、同時期の休日の通行台数は88万7000台(2018年)、「休日並み」の通行台数に削減するためには、平日の通行量の3割程度、大幅に削減する必要があるとしている。
 一般車両に対して、首都高速道路のランプ閉鎖などの流入規制や車線規制などを行う「交通システムマネジメント」(TSM)」の導入が必須の状況だ。首都高速道路は大会関係者の輸送ルートの根幹となる輸送路である。
 企業や市民が協力ベースで行う「交通需要マネジメント」(TDM)での交通量抑制では十分でないことが明らかになってきた。
 「交通システムマネジメント」(TSM)」は、一部の地域や区間で規制を実施して交通量の更なる分散・抑制を図り、局所的な渋滞や混雑を解消させ、大会開催時にも円滑な交通環境を実現させるという手法である。TSMはTDMとは基本的にコンセプトが異なり、「任意」の協力ベースではなく、「強制的」に交通規制を行うのである。
 公共交通(鉄道)では、大勢の観客が集まる競技会場周辺駅や関連路線を中心に、大混雑が発生する可能性を指摘している。
 こうした混雑エリアではさまざまな対策を実施して現状と同程度の混雑状況を維持して、安全で円滑な運行状況を目指すとした。



交通需要マネジメント(TDM)とは
 交通需要マネジメント(TDM)については、高速道路と一般道の両方について交通量の抑制・分散を図る必要があるとしている。
 首都高の渋滞・混雑は、都心部と隣接県との接点で発生する。一般道の渋滞・混雑エリアは、都心部に集中している。
 渋滞・混雑発生の大きな原因となっている物流については、臨海部の港湾物流や競技会場周辺の都心部の物流の焦点が当てられている。とりわけ、都心部と埼玉県、千葉県との往来が多い。
 大会 期間中は、物流(大会関連物流や観 光客増に伴う物流等)は増加するのが必至とされる中で、物流の業種や品目などを具体的に分析して、物流業界や企業、市民に具体的に協力を求め、効果的な交通量削減を実現していく。


東京2020大会の交通マネージメントに関する提言の概要 交通輸送技術検討会 2018年2月19日

 その際に、利用者の特性に応じた働きかけを行うのが重要で、利用者分析(発着地、移動目的等)を行い、特性に応じた呼びかけを行う。
 集荷・ 配送を担う運送企業だけでなく、荷主や配送先の企業や商店などに、集荷・配送の変更の協力を得ることが重要になる。
 具体的には集荷・配達は、混雑時間を避ける時間帯に変更したり、回数も減らしたり、在庫として置くことが可能な物資は、大会前に配送するといった協力を呼びかけることが柱に据えられている。





 交通需要マネジメント(TDM)は2017年度末までにTDM全体行動プランを策定し、試行・展開の準備を進める。
 初期は、協力企業を限定して(リーディングカンパ ニー)試行を実施し、順次対象を拡大し、勤務時間や配達方法、個人の消費行動(eコマース) の変更など、働きかけを都内から全国に向けて展開するとしている。

難題 「15%」削減
 交通需要マネジメント(TDM)の手法は、物流業界や企業、個人に対して、あくまで「お願い」ベースで、交通量削減の協力を要請する。従って交通規制のように「強制力」を伴うものではない。
 しかも、協力を要請する内容は、物流業界に対しては、輸送ルートの変更や時間変更、共同配達はまとめ調達、路上荷捌きの抑制、集荷配送の回数減などで、一般企業に対しては夏季休暇の促進やテレワークの推進、勤務時間変更、まとめ発注、出張の前倒しや延期、電話・テレビ会議の奨励、個人に対しては、休暇取得、時差出勤、買い物・レジャーの行先・時期の変更、宅配便の利用や再配達の抑制など、実に多岐多様に渡る細かな項目を積み上げている。
 ひとつひとつの項目では有効な交通量削減が期待できないが、「ちりも積もれば山となる」という作戦である。まさに「小さな努力」の積み重ねだ。
 大会組織委員会では「ちりつも作戦」(大会組織委員会輸送部長 大澤雅章氏)としている。
 問題は、「ちりつも作戦」では、一体どのくらいの交通量が削減できるのか定量的に算定することが不可能なことだ。「15%」が果たして達成できるかどうか事前にはほとんど分からない。
 大会組織委員会では、2020TDM推進プロジェクトを発足させ、30の業界団体参加に呼びかけて、約200社超の企業がこのプロジェクトに参加している。目標は1000社以上としているが、後2年果たして達成できるのだろうか。
 交通量削減の最大の課題は、物流の抑制で、そのためにはサプライチェーン全体の協力体制を得なければならない。配送・集荷を抑制するためには、発送側と受け取り側の双方の荷主が一体で取り組みを進めなければ実効性は確保できない。
 配送時間変更、まとめ配送、ルート変更など簡単には実現できない難問だ。
 そもそも、選手や五輪関係者、大量の観客であふれる都心には、飲料や食料、日常品など大量の物資を配送しなければならいのは明らかである。配送量は削減どころか大幅増は必至だろう。
 また物流の網は全国、世界とつながっており、東京圏の枠を超えて個人・企業の協力を取り付けなければならないという難問が残る。
 「15%減」は果たして達成できるのだろうか? 結局、十分な交通量削減が達成できず、渋滞・混雑が深刻化して、都市活動や市民生活を妨げる強制力を伴う交通規制に頼ることになるという懸念が極めて大きい。

交通システムマネジメント(TSM)  導入の条件
 交通システムマネジメントとは、高速道路などの流入規制や信号調整、レーン規制や通行禁止などの交通規制である。TDMのように任意の交通対策ではなく、強制的な交通規制なので効果は確実である。
 しかしTSMを効果的に実施するためには、その前提として、なにより TDMによる交通量抑制が不可欠であり、その上で渋滞・混雑の発生状況に応じ て段階的なTSMをする必要がある。 十分な交通量抑制ができないままで、TSMを実施すると、迂回する車両などでむしろ交通渋滞が深刻化してむしろ輸送環境は悪化してしまう。
オリンピック・ルートネットワーク及びパラリンピック・ルート・ネットワークについて
 大会組織委員会では、選手や大会関係者の輸送を確実にするために、 「オリンピック・ルート・ネットワーク(ORN:Olympic Route Network)」と「パラリンピック・ルート・ネットワーク(PRN)」の関係者輸送ルートを設定した。
 関係者輸送ルートは、3つのルートから構成されている。
▼ 大会ルート:選手村、宿泊施設と空港、競技会場などを結び、大会期間を通じて設定されるルート
▼ 練習会場ルート:選手を選手村から練習会場まで輸送する際に使用するルート
▼ 代替ルート:事故や渋滞等の発生により、大会ルートが使用できない時に緊急の対応として使用するルート
 そして、それぞれのルートでオリンピックレーン(専用レーン)やプライオリティレーン(優先レーン)の設置など交通規制が検討されている。
 その中で最も重要なのはオリンピック・ルート・ネットワーク(ORN)主軸となる首都高速道路のレーン規制や流入規制だが、一般道の渋滞を加速する懸念が大きい。
 一般道は道路環境が多様であることから、交通規制を実施するには難題が多く不可能に近い。













頼みの綱、オリンピック専用レーンの設置は期待できない
 オリンピック・ルート・ネットワーク(ORN)で、大会関係車両のスムーズな通行を確保するためには、オリンピック専用レーンの設置に実効性がある。ロンドン五輪やリオデジャネイロ五輪でもオリンピック専用レーンが設定された。
 しかし、首都高速道路などの都心部の高速道路でオリンピック専用レーンを全面的に導入しても、JCT では1車線のために専用レーンが設置できず、一般車両と混ざって通行せざるを得ないので大渋滞が発生する。
 その影響が全線に渡って拡大し深刻な混乱が発生し、結果、大会関係車両は渋滞に巻き込まれて、専用レーンを設置してもむしろ遅滞をもたらすことが明らかになった。
 大会関係者の輸送ルートの中核となる首都高速道路に広範囲にオリンピック専用レーンを設置することはほとんど不可能になった。
 オリンピック専用レーンの設置は、基本的に片側三車線の道路でないと極めて難しいとされている。専用レーンの設置で渋滞が悪化する可能性があり、大会関係者の輸送にむしろ遅延を招くことになるからだ。
 オリンピックレーン(専用レーン)やプライオリティレーン(優先レーン)の設置は、日本の道路事情では、極めて限定的にならざるを得ない。
 成田から都心に向かう湾岸道路や臨海部の一部の道路は片側三車線のため専用レーンの設置は部分的には可能だろう。
 また競技会場周辺部の一般道路については、局所的に専用レーンの設置が検討されている。

 全体の交通量の削減が達成できない状態で、首都高速道路や主要高速道路で流入規制などの交通規制を行うと、一般道路に迂回する大量の車両で、大渋滞が発生するのは避けられない。都市活動や市民生活に大きな影響を及ぼす流入規制は安易に行うべきではない。何のための五輪大会開催なのか、厳しい批判を浴びるだろう。 







都心部への流入車両を「強制的」に規制 都市活動や市民生活に影響
 平日の朝は、大量の車両が東名高速や中央高速、関越自動車道、東北自動車道、常磐自動車道などの路線から首都高速道路に殺到し都心へ向かう。 夕方は、逆に都心部から抜け出す大量の車両で渋滞する。
 平日の朝など料金所の閉鎖や入口で流入規制を行えば、 都心部における車両の時間的集中を緩和できるだろう。
 TDMによる交通量の総量抑制を実施しても、なおかつ交通量が交通容量を超えている場合には、朝晩のピーク 時など中心に、TSMで「強制的」な交通規制を行わざるを得ない。
 しかし、流入規制を行えば、一般道路は大渋滞になり通行に支障が出て、都市活動や市民生活に大きな影響を与えることは明らかだろう。
 TSMによる交通規制は「諸刃の刃」であることを忘れてはならない。








公共交通輸送マネジメント
 公共交通輸送マネジメントでは、3本柱を掲げる。
① 輸送力の確保
 特に混雑の激しいと予想される路線では、可能な限り輸送力 を増強させる。 また、競技会場や各駅の状況などを考慮し、各駅の対応を検討することが重要である。
② 観客の需要分散・平準化
 観客が一度に入退場に殺到するのを避けるため、入退場時間の分散を検討していくことが必要である。 観客に早め入場を呼び掛けたり、ブロック別退場を誘導したりする。周辺でのイベントへの誘導 も有効としている。
③ 一般利用者の需要分散・抑制(TDM)
観客に対して「混雑が予想されるエリア・時間帯」などについて、情報提供を行い、混雑回避の協力を得ることが必要となる。
 以上の3つの施策の組合せにより安全で円滑な観客輸送の実現を目指す。




オリンピック・パークがない東京2020大会 交通対策は難しい
 ロンドン2012大会やリオ2016大会では、オリンピック・パークが整備されて、オリンピック・パークの中やその周辺に集中的に五輪施設を建設した。
 ロンドン2012大会では、オリンピック・パークの中に、オリンピック・スタジアム、アクアティック・センター、ウオーターポロ・アリーナ、ハンドボール・アリーナ、ベロドローム、ホッケーセンター、バスケットボール・アリーナ、選手村、IBC/MPCを建設した。
 リオ2016大会では、オリンピックの中に、アクアティック・スタジアム、マリレアン・アクアティック・センター、カリオカ・アリーナ、フューチャー・アリーナ、ベロドローム、テニス・センター、IBC/MPCを建設し、近接エリアの選手村を整備した。
 選手や大会関係者は、宿舎から競技場まで移動するのにほとんど時間がかからないのである。


リオ2016 ロンドン2012における競技場配置 輸送連絡調整会議

 これに対して、東京2020大会では、招致段階から、オリンピック・パークを建設せず、都心部の“ヘリテッジゾーン”と臨海部の“東京ベイゾーン”のテーマ・ゾーンを設け、五輪施設を立地させる計画で準備が進められてきた。
 そして、晴海の選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置し、ほとんどの競技場に20分以内で移動できる「世界一コンパクトな大会」を目指すとしていた。
 2013年1月、2020東京大会招致員会はIOCに立候補ファイルを提出したが、この輸送計画によると、2020年東京大会では、競技会場の約85%を選手村から半径8kmのエリア内に配置することで、選手にとって最高の移動環境を提供すると宣言した。

 輸送計画の決め手となるのは、オリンピック・専用レーンや優先レーンの設置である。
 2000年のシドニー大会以降、 競技会場、練習会場、選手村、メディアセンター、 空港などオリンピック関連施設を結ぶ道路には、大会関係車両が専用に利用できる車線などを設置し、輸送の円滑化を図ってきた。2016年リオデジャネイロ五輪、2012ロンドン五輪でも交通対策の決め手となった。
 東京2020大会の立候補ファイルの輸送対策では、首都高速道路を中心にオリンピック・レーン及び オリンピック・プライオリティ・ルートを設置し、全ての競技会場や練習会場、関連施設を、約6000台の大会関係車両を往来させて快適な輸送サービスを確保する計画だった。指定するオリンピック・レーンは合計約317km、オリンピック・プライオリティ・ルートは約290kmにも及ぶ。
 そして最も重要とされている選手村-オリンピックスタジアムパーク間の移動には、主に環状2号線を使用し、移動距離は7kmで、所要時間は10分を達成すると公約した。
 また選手村-皇居地区の競技場への移動には、 主に首都高速道路を使用し、移動距離は19kmで、その所要時間 は25分とした。
 その結果、選手の72%が10分以内に選手村から競技場にアクセス可能で、選手の87%が20分以内にアクセス可能、すべての競技場に30分以内で移動が可能とした。
 立候補都市 がオリンピック関係者の円滑な移動を保障できるインフラと輸送計画を持つかどうかは、IOC(国際オリンピック委員会)が開催都市を決定する際の重要な判断材料とされている。立候補ファイルで宣言した輸送計画は、「国際公約」であることを忘れていはならない。
 競技会場の約85%を選手村から半径8kmのエリアに設置する計画は破綻、首都高速道路などにオリンピック・レーンを設置してすべての競技場を結ぶという計画は頓挫寸前、肝心の環状二号線は暫定開通で完全開開通は先延ばし、立候補ファイルで「公約」をした「選手にとって最高の移動環境」を実現できるかどうか、瀬戸際に追い込まれている。
「国際公約違反」という批判を浴びる懸念も生まれてきた。

 
オリンピック・レーンなどを都心に広範囲に設置を計画 立候補ファイル 2013年1月 招致委

挫折した「世界一コンパクトな大会」 各県に拡散した競技場
 「世界一コンパクトな大会」を目指して開催準備を進める中で、膨れ上がった競技場建設経費が世論の厳しい批判を浴びて、見直しをする必要に迫られ、競技場の新設を中止し、極力既存の競技場を利用する計画に変更した。そして競技場は次々に首都圏近県に拡散していった。
 セーリング会場として建設を計画した若洲オリンピックマリーナは、招致計画では建設費を92億円としたが、見直しの結果、417億円に膨れ上がり建設は取りやめられ、江の島ヨットバーバーに競技会場を変更した。
 夢の島ユースプラザ・アリーナA(バトミントン)」、夢の島ユースプラザ・アリーナB(バスケット)」は、招致計画では建設費を364億円としたが、見直しの結果、683億に膨張し建設中止に追い込まれ、バトミントンは、武蔵野森総合スポーツ施設(東京都調布市)、バスケットはさいたまスーパーアリーナ(さいたま市)に変更された。
 自転車(トラック)会場の有明ベロドロームも中止、伊豆ベロドローム(伊豆サイクルスポーツセンター 静岡県伊豆市)に変更、自転車(MTB)は海の森マウンテンバイクコースを中止して、伊豆MTBコース(伊豆サイクルスポーツセンター 静岡県伊豆市)に変更した。
 また、当初は東京ビックサイトで開催予定のレスリングやフェンシング、テコンドーの競技場は幕張メッセ(千葉市)に変更となった。

 これに加えて、ゴルフ会場は、霞ケ浦カンツリークラブ(埼玉県川越市)、射撃会場は陸上自衛隊朝霞訓練場(埼玉県朝霞市)、サーフィン会場は釣ケ崎海岸(千葉県一宮町)、野球・ソフトボール会場は横浜スタジアム(横浜市)や福島あづま球場(福島市)、バドミントン、近代五種(フェンシング)は武蔵の森総合スポーツプラザ(東京都調布市)、サッカー、ラグビー、近代五種(水泳、スイミングなど)会場は東京スタジアム(東京都調布市)、自転車(ロードレース ゴール)は富士スピードウイとなる。

 またサッカー会場として、首都圏では、埼玉スタジアム(さいたま市)、茨城カシマスタジアム(茨城県鹿嶋市)、横浜国際競技場(横浜市)が使用される。首都圏以外では、札幌ドーム(札幌市)、宮城スタジアム(宮城県利府町)、茨城カシマスタジアム(茨城県鹿嶋市)も会場となる。

東京2020競技会場マップ

 この結果、競技場は都心部や臨海部だけでなく、千葉県、埼玉県、神奈川県、静岡県、福島県に拡散し、東京2020大会のキャッチフレーズ、晴海の選手村から半径8キロメートル圏内に85%の競技場を配置し、ほとんどの競技場に20分以内で移動できる「世界一コンパクトな大会」という「公約」は挫折した。
 こうした競技場の立地条件では、きわめて広範囲に渡る高速道路や一般道路の交通対策が必須となる。選手や大会関係者、メディア関係者の円滑な輸送を確保するために、これまでの大会では前例のない大規模でかつ困難な取り組みが迫られることになった。
 羽田空港や成田空港への円滑なアクセス確保も肝要である。
 都心部をターゲットにした「交通量15%」削減だけでは、拡散した競技場への円滑な輸送が確保できないのは明らかだ。
 東京2020大会で、大会輸送と都市活動の両立をはかる交通対策は果たして実現可能なのだろうか。大会開催によって、市民生活や都市活動が大きく妨がれるようになるなら、市民から厳しい批判を浴びるのは間違いない。
 残された時間は、2年足らず、2020東京大会の最大の難題、輸送対策は正念場を迎えた。




“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」

東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011千億円支出 組織委公表の倍以上に膨張 会計検査院指摘

東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念“世界一コンパクト” 競技会場の全貌



2018年11月20日 初稿
2019年8月20日  改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR

*****************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute (IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net 
imssr@a09.itscom.net
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組織委員会 大会開催経費 1兆3500億円(V4) 苦渋の「つじつま合わせ」? 

2019年12月21日 11時16分53秒 | 政治



大会開催経費 1兆3500億円を維持 組織委員会予算 V4発表
 2019年12月20日、2020東京五輪大会組織委員会はV4予算を発表し、大会組織委員会の支出は 6030 億円、東京都は5973億円、国は1500億円、あわせて1兆3500億円で、V2、V3予算と同額とした。
 収入は、好調なマーケティング活動に伴い、国内スポンサー収入が V3 から 280 億円増の 3480 億 円となったことに加え、チケット売上も 80 億円増の 900 億円となる見込みなどから、V3 と比較して 300 億円増の 6300 億円となった。
  支出は、テストイベントの実施や各種計画の進捗状況を踏まえ、支出すべき内容の明確化や新たな 経費の発生で、輸送が 60 億円増の 410 億円、オペレーションが 190 億円増 の 1240 億円となった。一方、支出増に対応するため、あらかじめ計上した調整費を250 億円減とした。競歩の競技会場が東京から札幌に変更になったことに伴い、V3 において東京都負担とな っていた競歩に係る仮設等の経費 30 億円を、今回組織委員会予算に組み替え、組織委員 会の支出は、V3 から 30 億円増の 6030 億円となった。東京都の支出は30億円減5970 億円となった。
 焦点の、マラソン札幌開催の経費増については、引き続き精査して IOC との経費分担を調整して決めているとした
 また、東京 2020 大会の万全な開催に向けた強固な財務基盤を確保する観点から、今後予期せずに 発生し得る事態等に対処するため、270 億円を予備費として計上した。
 大会組織委員会では、今後も大会成功に向けて尽力するとともに、引き続き適切 な予算執行管理に努めるとした。
 2019年12月4日、会計検査院は、2020年東京五輪大会の関連支出が18年度までの6年間に約1兆600億円に上ったとの調査報告書をまとめて公表した。これに東京都がすでに明らかにしている五輪関連経費、約8100億円を加えると、「五輪開催経費」は「3兆円超」になる。(詳細は下記参照)
 「1兆3500億円」と「3兆円」、その乖離は余りにも大きすぎる。大会開催への関与の濃淡だけでは説明がつかない。
 政府は、来年度予算の編成作業を進めていて年内には政府案が決まるが、2020年五輪開催の本番の年の五輪関連予算が明らかになる。東京都も同様に、来年度の五輪関連予算を公表する。国や東京都の五輪関連経費は、数千億単位でさらに増えるだろう。さらに1道6県の14の都外競技場の開催費も加わる。
 「3兆円」どころか、「五輪開催経費」は「4兆円」も視野に入った。


出典 2020東京五輪大会組織委員会




五輪関連支出、1挑600億円 会計検査院指摘 五輪開催経費3兆円超へ
 2019年12月4日、会計検査院は2020年東京五輪・パラリンピックの関連支出が18年度までの6年間に約1兆600億円に上ったとの調査報告書をまとめ、国会に提出した。この中には政府が関連性が低いなどとして、五輪関連予算に計上していない事業も多数含まれている。検査院は、国民の理解を得るためには、「業務の内容、経費の規模等の全体像を把握して公表に努めるべき」とし、「大会終了後のレガシーの創出に努めること」と指摘した。

 2018年10月、会計検査院は政府の2020東京五輪大会についての「取組状況報告」に記載された286事業を調査して初めて「五輪関連経費」の調査結果を明らかにして、2017年度までの5年間に国は約8011億円を支出したと指摘した。しかし、大会組織委員会が公表したV3予算では国の負担額は約1500億円、その乖離が問題になった。
 今回、会計検査院が指摘した関連支出額は、前回指摘した8011億円から2018年度の1年間で約2580億円増え、約1兆600億円になったとした。
 大会組織員会では、2018年12月、総額1兆3500億円のV3予算を明らかにしている。それによると、大会組織委員会6000億円、東京都6000億円、国1500億円とし、1兆3500億円とは別枠で予備費を最大3000億円とした。
 東京都は、V3予算とは別に「五輪開催関連経費」として約8100億円を支出することを明らかにしているため、約1兆600億円も合わせると、すでに「五輪関連経費」の総額は約3兆円を優に上回ることが明らかになった。

 これに対して、内閣官房の大会推進本部は指摘された8011億円について、大会への関連度を3段階で分類し、Aは「大会に特に資する」(約1725億円)、Bは「大会に直接資する金額を算出することが困難」(約5461億円)、Cは「大会との関連性が低い」(約826億円)と仕分けし、「五輪関連経費」はAの約1725億円だけだと反論し、残りの「B・C分類」は本来の行政目的の事業だとして、関連経費には計上しないとした。
 その後2019年1月、内閣官房の大会推進本部は、約1380億円を「五輪関連経費」と認め、V3予算で計上している新国立競技場の整備費など約1500億円を加えた約2880億円が国の「五輪関連経費」の範疇だとした。それでも会計検査院が指摘した1兆600億円との隔たりは大きい。

 1兆600億円の内訳は、約7900億円が「大会の準備や運営経費」として、セキュリティー対策やアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れ、暑さ対策・環境対策、メダル獲得にむけた競技力強化などの経費で占められている。この内、暑さ対策・環境対策が最も多く、2779億円、続いてアスリートや観客の円滑な輸送や受け入れが2081億円となっている。
 2018年度はサイバーセキュリティー対策やテロ対策、大会運営のセキュリティ対策費の支出が大幅に増え、2017年度の倍の約148億円に上った。
 また今回も公表されていない経費が明らかになった。警察庁が全国から動員する警察官の待機施設費用として約132億円が関連予算として公表していなかったと指摘した。
 さらに会計検査院は大会後のレガシー(遺産)を見据えた「大会を通じた新しい日本の創造」の支出、159事業、約2695億円を「五輪関連経費」とした。
 被災地の復興・地域の活性化、日本の技術力の発信、ICT化や水素エネルギー、観光振興や和食・和の文化発信強化、クールジャパン推進経費などが含まれている。
 こうした支出はいずれも政府は「五輪関連経費」として認めていないが、政府予算の中の位置づけとしては「五輪関連予算」として予算化されているのである。
 問題は、「五輪便乗」予算になっていないかの検証だろう。東日本大震災復興予算の使い方でも「便乗」支出が問題になった。次世代のレガシーになる支出なのか、無駄遣いなのかしっかり見極める必要がある。

 その他に国会に報告する五輪関連施策に記載されていないなどの理由で非公表とされた支出も計207億円あったという。検査院はオリパラ事務局を設置している内閣官房に対し、各府省から情報を集約、業務内容や経費を把握して公表するよう求めた。
 内閣官房は「指摘は五輪との関連性が低いものまで一律に集計したものと受け止めている。大会に特に資する事業についてはしっかりと整理した上で分類を公表していきたい」としている。






出典 会計検査院



「レガシー経費」は「五輪開催経費」
 国際オリンピック委員会(IOC)は、開催都市に対して、単に競技大会を開催し成功することだけが目的ではなく、オリンピックの開催によって、次の世代に何を残すか、何が残せるか、という理念と戦略を強く求め、開催都市に対して、レガシー(Legacy)を重視する開催準備計画を定めることを義務付けている。
 レガシーを実現する経費、「レガシー経費」は、開催都市に課せられた「五輪開催経費」とするのが当然の帰結だ。
 五輪大会は、一過性のイベントではなく、持続可能なレガシー(Legacy)を残さなければならないことが開催地に義務付けられていることを忘れてはならない。
 政府は「本来は行政目的の事業で、大会にも資するが、大会に直接資する金額の算出が困難な事業」(Bカテゴリー)は「五輪開催経費」から除外したが、事業内容を見るとほとんどが「レガシー経費」に入ることが明らかだ。
 気象衛星の打ち上げ関連費用も首都高速などの道路整備費も水素社会実現のための燃料電池自動車などの購入補助費も、ICT化促進や先端ロボット、自動走行技術開発、外国人旅行者の訪日促進事業、日本文化の魅力発信、アスリート強化費、暑さ対策、バリアフリー対策、被災地の復興・地域活性化事業、すべて2020東京大会のレガシーとして次世代に残すための施策で、明らかに「レガシー予算」、「五輪開催予算」だろう。被災地関連予算も当然だ。2020東京五輪大会は「復興五輪」を掲げているのである。

 一方、新国立競技場は「大会の準備、運営に特に資する事業」に分類し、「五輪開催経費」だとしている。しかし、国立競技場は大会開催時は、開会式、閉会式、陸上競技などの会場として使用されるが、その期間はわずか2週間ほどである。ところが新国立競技場は大会開催後、50年、100年、都心中心部の「スポーツの聖地」にする「レガシー」として整備するのではないか。 
 国の「五輪開催経費」仕分けはまったく整合性に欠け、ご都合主義で分類をしたとしか思えない。五輪大会への関与の濃淡で、恣意的に判断をしている。「レガシー経費」をまったく理解していない姿勢には唖然とする。
 東京都が建設するオリンピックアクアティクスセンターや有明アリーナ、海の森水上競技場なども同様で、「レガシー経費」だろう。

 通常の予算では通りにくい事業を、五輪を「錦の御旗」にして「五輪開催経費」として予算を通し、膨れ上がる開催経費に批判が出ると、その事業は五輪関連ではなく一般の行政経費だとする国の省庁の姿勢には強い不信感を抱く。これでは五輪開催経費「隠し」と言われても反論できないだろう。
 2020東京大会のレガシーにする自信がある事業は、正々堂々と「五輪開催経費」として国民に明らかにすべきだ。その事業が妥当かどうかは国民が判断すれば良い。
 東京都は、「6000億円」のほかに、「大会に関連する経費」として、バリアフリー化や多言語化、ボランティアの育成、「大会の成功を支える経費」として無電柱化などの都市インフラ整備や観光振興などの経費、「8100億円」を支出することをすでに明らかにしている。国の姿勢に比べてはるかに明快である。過剰な無駄遣いなのか、次世代に残るレガシー経費なのか、判断は都民に任せれば良い。

 「3兆円」、かつて都政改革本部が試算した2020東京オリンピック・パラリンピックの開催費用の総額だ。今回の会計検査院の指摘で、やっぱり「3兆円」か、というのが筆者の実感だ。いまだに「五輪開催経費」の“青天井体質”に歯止めがかからない。





“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」

東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011千億円支出 組織委公表の倍以上に膨張 会計検査院指摘

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四者協議 世界に“恥”をかいた東京五輪“ガバナンス”の欠如 開催経費1兆3500億円で合意



2019年12月1日
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廣谷  徹
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ラグビーW杯 サンウルブス スーパーラグビー スーパーラグビーから外されるサンウルブズ

2019年10月28日 08時36分08秒 | 政治


スーパーラグビーから外されるサンウルブズ
 スーパーラグビーは、南アフリカ共和国(SA)、ニュージーランド(NZ)、アルゼンチン(A)、オーストラリア(AR)で組織される「SANZAAR」により運営されるプロ・ラグビーチームで構成される南半球では世界最高峰の国際リーグ戦。2月から8月まで期間限定で行われる。
 2015年、スーパーラグビーが参加チームを18に拡大するにあたり、日本は、ワールドカップ2019日本大会へ向けた選手のレベルアップを目標として日本代表クラスの選手などで編成するチームを参加させる方針を決め、日本で初のプロラグビーチーム、サンウルブスが結成された。サンウルブスは翌2016の大会からスーパーラグビーに参戦した。
 スーパーラグビーは、オーストラリアとニュージーランドでのラグビーリーグの人気への対応や、南アフリカ・ラグビーチームの強化を目的として結成され、1996年から2005年まで12チームが参戦した国際リーグ戦「スーパー12」が開催された。当初はオーストラリアから3チーム、ニュージーランドから5チーム、南アフリカから4チームの計12チームが参加した。
 2006年シーズンに新たに2チームが新規参入したため、「スーパー14」へと名称変更、2011年シーズンからさらに1チームが新規参入したため「スーパーラグビー」と名前を改めた。そして2016年シーズンから日本のサンウルブズと南アフリカのキングズ、アルゼンチンのジャガーズが参加して、18チームとなった。
 2018年シーズンにはオーストラリアのフォース、南アフリカのキングズとチーターズが外れ、15チームで開催。「ニュージーランド」「オーストラリア」「南アフリカ」の3カンファレンス制(各5チーム)で行われる。サンウルブズはオーストラリア、ジャガーズは南アフリカカンファレンスの所属となる。
 2019年3月、スーパーラグビーを主催する団体SANZAARは、2020年をもってサンウルブズのリーグでの活動が終了すると正式に発表した。サンウルブズをリーグ除外とする理由として、日本協会が、スーパーラグビーは日本代表強化に最善の手段でなくなったため、2021年以降はサンウルブズを財政支援するつもりがないと伝えてきたことを挙げている。
 これに対し、日本ラグビーフットボール協会の坂本典幸専務理事は、スーパーラグビー主催者から残留の条件として巨額の拠出金(日本への他チームの渡航費など)を要求され、とても合意できる額ではなく、あらに条件を出されたのが2週間ほど前で検討できる時間もなかったことを明らかにした。拠出金は約10億円とみられている。
 日本のラグビーファンにとっては、アジア初開催のラグビーワールドカップ2019に向けて盛り上がりつつある気運に水を差されたとも言えるだろう。スーパーラグビーへの参加で、強豪国のラグビーチームとの対戦を積み重ねることで、日本ラグビーの強化につながっていただけにダメージは少なくない。ラグビーW杯2019で、初の決勝トーナメント進出を果たし、2023年W杯フランス大会に向けて、世界と肩を並べるチームへの強化策が求められている中で、暗雲が立ち込めている。
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ラグビーW杯 日本 サモア 38-19で三連勝 ボーナスポントも獲得

2019年10月18日 17時04分32秒 | 政治



日本、サモアを38-19で破り、三連勝 ボーナスポントも獲得 決勝トーナメント進出に王手
 10月5日、豊田スタジアムで開催された日本vsサモア戦で、日本はサモアの強烈な当たりを跳ね返し、38━19で快勝 一次リーグ三戦連勝とし、待望のボーナス点も手にし、初の準々決勝進出は目前となった。
 日本は開始2分過ぎまでにSO田村優が3PGを決めて9━6とリード、27分には、CTBラファエレティモシーが待望のトライを奪って16━6と差を広げた。
後半開始直後、立て続けにサモアに2PGを許し16━12と迫られたが、ここで踏ん張りを見せ、田村の4本目のPGで差を開くと、13分には右隅モールを一気に押し、大奮闘のナンバー8、姫野和樹が左中間に押さえて26━12と引き離した。
 終盤はサモアの猛攻にさらされて、ポスト前からCTBタエフに飛び込まれて7点差に詰められた。日本は苦しい場面が続いたが、残り5分、見事なライン攻撃から交代WTB福岡堅樹がトライを決め勝負を決めた。
さらにボーナス点を目指して終了間際、ゴール前にサモアを釘付けにして攻め立て、最後はWTB松島幸太朗が左隅に飛び込んで執念の4トライ目を手にし、念願のボーナスポイントを執念で獲得した。
 サモアは1勝2敗で1次リーグでの敗退が決まった。

 試合後、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの第一声は「とても誇りに思うし、ほっとしている」とし、序盤は接戦となったが「試合が進むにつれて(展開を)コントロールできる気持ちになった」と手ごたえを感じてていたという。そして「選手たちが練習で何をしないといけないか、理解してやっていれば結果に表れる。チーム全体でフォーカスした結果」だと語った。
 決勝トーナメント進出が目前になったことで、「これまで誰も成し遂げていないのでわくわくしている。1試合ごとに集中し、1週間ごとにチャレンジをこなす状況。お互いを信じ、詳細な部分を理解し、細かいところを実行していく。強いスコットランド相手にその気持ちで戦う」と述べた。
 一方、リーチマイケル主将は、「やってきたことを出せた。ボーナスポイントはすごくうれしい。( チームは)すごく安定していて、声も出ていた。プレッシャーがある中、冷静に戦えた。プレッシャーがあると周りが見えなくなるので、アドバイスした。日本の強さを見せられた。(スコットランド戦は)やっちゃいます」と語った。
 またラファエレティモシー・ゲーム主将は「ボーナスポイントを取れて良かった。(母国のサモアが相手だったが家族はどっちを応援?)もちろん日本。次の試合も頑張ります」と述べた。
一夜明けて、田中史朗選手は記者会見に臨み、「うれしいし、今日もたくさん応援に来ていただいたので、本当にありがたい。最後に取り切れたことも、いいパスも放れたし、でもそれもフォワードが頑張ってくれたおかげ。チームとして良い状態でスコットランド戦に向かえる」とし、次のスコットランド戦に向けて、「変わらない。意識してしまうとプレーにも影響が出るし、まずしっかり準備することと、3勝は忘れて次に全力で挑む気持ちで戦っていきたい」
 4年前の日本代表と比較して、「自分たちで判断できるチームになった。4年前のチームはハードワークの中で、判断はあったけど元々のラグビーが決まっていた。今は相手の力、癖を試合中に見ながらみんなで判断しながらプレーできる。判断力は今の方ががすごく上がってる。リーダー中心に全員一つの方向を向くというのは、リーダーがしっかりしてくれているので、できていると思う」と述べた。
 スコットランド代表について、「フォワードが強い。ブレークダウンでもモールでもすごく強い。でも今のジャパンはしっかり対策も取ってきているし、力も4年前に比べてあるので心配ない。そこで互角以上に戦えれば勝機はある」とした。


日本vsサモア戦 RCW2019 News 10月5日

日本vsサモア戦 平均視聴率32・8%!今年のスポーツ中継でトップ 瞬間最高は46・1%
 10月5日、日本テレビ系列が5日に生中継した「日本vsサモア戦」(午後7時15分~同9時34分)の平均視聴率は32・8%を記録した。(関東地区、ビデオリサーチ調べ)
 今年のスポーツ中継では、全豪オープンテニス女子シングルス決勝「大坂なおみVSペトラ・クビトバ」(NHK総合、1月26日)の32・3%を超え1位となった。
 瞬間最高視聴率は、午後9時23分に46・1%をマーク。終了間際、WTB松島がチーム4トライ目を奪い、歓喜に沸くスタンドがSO田村のコンバージョンキックを見守る場面だった。
 また9月28日の「日本vsアイルランド・後半戦」(NHK総合、午後5時10分~6時31分)の平均視聴率は22・5%で、瞬間最高視聴率は28・9%。同20日の開幕戦「日本vsロシア戦」は平均18・3%、瞬間最高25・5%を記録していた。
 試合は、7点差に迫られた後の後半35分から、WTB福岡堅樹(27=パナソニック)、松島幸太朗(26=サントリー)の“フェラーリコンビ”がトライを相次いで上げ、4トライ以上で与えられるボーナスポイント1を獲得して38―19で劇的勝利となった。日本は開幕3連勝、勝ち点14で再び1次リーグA組首位に立った。


サモア戦 日本代表登録メンバー発表 2戦連続でラブスカフニをゲームキャプテンに指名
 10月3日、日本代表のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)はサモア戦の登録メンバー23人を発表した。アイルランドとの第2戦に続き、ゲームキャプテンをピーター・ラブスカフニに指名、リーチマイケルの負担軽減が狙いであることを明かした。
 ジョセフHCは「前回、リーチをベンチに置いたのは、まずプレーのところをしっかりしないといけないということ。彼にのしかかる責任を軽くした。前回のアイルランド戦ではうまくいったと思う」と説明。「ラピース(ラブスカフニ)は非常にフィールド内でいい働きをしてくれている。リーチがチームのキャプテンなのは間違いないが、負担を軽減することでラグビーに専念できる。この大会ではそれが非常に重要」と述べた。
 続いて会見場に姿を見せたリーチは、ゲームキャプテンについて問われると「その質問が一発目に来ると予想していた」と笑いながら、「彼(ラブスカフニ)はボールに近いし、レフェリーともコミュニケーションをすぐ取れる。僕のポジションは一番外で離れていて回数がちょっと少ない。(ラブスカフニなら)すぐラック周辺の指示だったりもできる」と指摘。「2人合わせてチームを引っ張っていくことになる。彼がゲームキャプテンで僕がチームのキャプテン。2人で今週の準備はすごくうまくできたと思う」と話した。
 プレーの面では「特に変わりはない。やることも同じ」と話し、「このチームの強さはリーダーシップ力。誰がなってもうまくいくと思う。僕の負担は少し軽くなった」と軽減の効果を強調した。
 アイルランド戦でプレーヤーオブザマッチに輝いたフッカーの堀江翔太は控えに回り、坂手淳史がW杯初先発する。ジョセフHCは「接戦が多くなっている。最後に経験者が出てきて、ゲームを締めることが大事」と起用の意図を説明した。
 アイルランド戦で負傷があったトンプソンルーク、アマナキ・レレイ・マフィはいずれも登録23人から外れ、控えのロックにヘルウヴェ、フランカーにツイヘンドリックが入った。ジョセフHCは「ロックは各選手、持ち味が違うが、競争率を高くしたいということもある。(ヘル)ウヴェはビッグでフィジカル、彼は膝もいい調子になったし、久々に良いコンディション」と期待を込めた。
「サモア戦以降も考えないといけないので、ポジション争いをさせることで全員が貪欲な気持ちで取り組んでくれることが望ましい」と先を見据えた起用であることを明言した。













ラグビーW杯2019日本大会 日本代表初の決勝トーナメント進出
~試合結果 Topics 放送予定 選手情報~


ラグビーワールドカップ2019日本大会開催地

NHKは31試合 日本テレビは19試合放送 NHKBS4K・BS日テレ4Kでも放送 J Sportsは全48試合 HD/4Kで放送

日本vsスコットランド戦 今年最高の視聴率39.2% サモア戦 32・8% ロシア戦 18・3%

ラグビーワールドカップ大会ボランティア 「TEAM NO-SIDE」 1 万 3 千人

ラグビーの試合はこうして行われる 得点・反則・ペナルティ・プレー

初戦ロシア戦 苦しみながらも勝利で発進

日本、アイルランドに19-12で劇的勝利 世界ランキング2位の強豪を撃破 勝ち点4を獲得 決勝リーグ進出に大きく前進

ラグビーW杯 日本 サモア 38-19で三連勝 ボーナスポントも獲得

日本代表 スコットランド戦の登録メンバー発表 ゲームキャプテンはリーチマイケルが復帰 堀江翔太、トンプソンルーク、福岡堅樹、ウイリアムトゥポウ先発

日本戦「日程変更してでも」 スコットランド協会が訴え
開催国に圧倒的有利な日程に不満 中3日で対戦のスコットランド監督が思わず本音


日本、宿敵スコットランドを28-21で猛反撃を振り切り、全勝でA組を一位通過、念願の決勝トーナメント進出

記録的な大雨で冠水したスタジアム 開催を支えた懸命の復旧作業 横浜国際総合競技場

記録的な大雨と暴風 台風19号 ラグビーW杯を直撃 初の開催中止3試合 日本スコットランド戦は開催

ラグビーW杯 日本代表 登録メンバー 31名発表

日本チームをけん引するコーチ・選手は?

なぜラグビーでは外国人選手が多いのか?

森喜朗氏の悲願 ラグビーW杯日本大会開催

ラグビーワールドカップはこうして始まった

記録的な大観衆を集めたラグビー黄金期 早稲田・明治

絶頂ラグビー人気 新日本製鐵釜石と神戸製鋼 ラグビーのリジェンド 松尾雄二と平尾誠二




2019年10月5日
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ラグビーW杯 日本 スコットランド 決勝トーナメント進出 28-21で勝利 全勝でA組 一位通過、

2019年10月17日 15時04分32秒 | 政治



日本、宿敵スコットランドを28-21で猛反撃を振り切り、全勝でA組を一位通過、念願の決勝トーナメント進出
 アジアで初の大会で、日本が悲願の準々決勝初進出を果たした。8強の座を競り合った強敵スコットランドの猛追を28ー21で振り切り、1次リーグA組で4戦全勝を果たして勝ち上がった。
日本は開始6分にスコットランドに先制トライを許したが、意欲的に左右幅いっぱいにボールを散らせてよく攻め続けた。17分にWTB福岡堅樹のタッチ際の力走をサポートしたWTB松島幸太朗が左中間に自身、今大会5本目となる同点のトライ。さらに25分にはプロップ稲垣啓太、39分にも左隅へ福岡が俊足を飛ばしてトライを奪った。前半を21-7で終えた。
 後半開始早々、タックルから相手ボールをもぎ取った福岡が中央から快走して4つ目のトライ、自身2本目で3試合連続となるトライを決め、28ー7と予想外の差をつけた。
しかし、ここからスコットランドの猛反撃を浴びた。ゴール前に攻め込まれた9、14分にプロップ勢のパワーでゴールを割られた。28ー21と迫られたがスタンドの「ニッポン! ニッポン!」の大声援を背に、終了間際のスコットランドの攻めを必死にしのぎ切って大金星を手にした。前回大会で唯一の黒星を喫した相手に雪辱した。
 1次リーグの全日程を終了。準々決勝は10月19日にイングランドーオーストラリア、ニュージーランドーアイルランド、20日にウェールズ━フランス、日本ー南アフリカの組み合わせで行われる。

「ジェイミー・ジョセフが本当に良かった」リーチマイケル、「8年間夢見てた瞬間 最高」田村優
 リーチマイケル主将は、「四つの試合、1試合目が一番きついとチームに伝えて。一番緊張する試合。そこから自信が付いてきてプレッシャーに慣れて、毎試合成長している感じはある。次の試合に向けて、南アフリカ戦一番大事にしないといけないのは準備。ゼロからのスタート。もう一回作り上げることが大事。毎日の積み重ねが大事になってくる」と述べ、初の8強進出を果たして、「日本の子どもたちが自分たちの試合を見て、若い人たちが日本代表になりたいという選手が増えると思う。そういう子が増えれば自然と代表は強くなると思う」と述べ、プール戦の4週間を振り返って、「この4週間の中で間違いなくジェイミー・ジョセフが本当に良かった。ロシア戦が終わってアイルランド戦、ベストなチームを選んだ。僕がベンチに戻ったり、次の試合からダブルキャプテン、ゲームキャプテンをラピースに与えたり、リーダーシップグループとジェイミーとコーチングスタッフが、アラインメントという言葉すごく大事にしてて、メッセージの一貫性を持つことが大事。この4週間を振り返ってみるとジェイミーすごく良かったなと思う」と述べた。

 また2トライを挙げて勝利の立役者となったスタンドオフ田村優は、「本当にうれしい。みんな4勝で1位通過すると信じていたし、このベスト8は8年前エディー・ジャパンが始まってからの目標でもあったので、8年間信じて良かった」とし、「いろいろメディアの方も報道があって、僕たちのことをまぐれとかもあったけど、自分たちの力を証明したいという意志が強くあって、全員ベスト8はいけると信じていて、スコットランドという素晴らしいチームを圧倒しようと話していたので」と述べた。また終盤の守備につては、「日本のチームらしい守備かなと。高校生にも大学生にも参考になる、日本チームらしいインパクトある守備ができた」と述べた。勝利のビクトリーロードを歌って、「最高。この日、8年間夢見てた瞬間。最高」と話した。

 これに対して、スコットランドのグレガー・タウンゼンド監督は、「8点以上の差をつけて勝てなかったのは残念だ。試合にはうまく入れたが、前半の残りはボールをほとんど持てなかった。日本の攻撃が良かったからだが、二つのトライはまずかった。一つはターンオーバーからで、もう一つはリスタートからだった。後半は選手が良くやった。後半18分で7点様まで追い詰めたが、最後の20分で逆転できなかった」と述べ、日本代表については、「非常に結び付きの強いチームだ。ずっと一緒に過ごしてきたことが分かる。南アフリカ戦は接戦になるだろう」と語った。
 またグレイグ・レイドロー主将は、「ともかく日本が称賛に値する。前半はボールを非常にうまくキープしトライを挙げた。日本のような相手に28点も失うと大変なことになる」と述べ、「速いゲームになることは分かっていた。それが日本のやり方だからだ。それでボールをキープするように努めた。後半は(日本の)スキを見つけたが、28点も失うと常に追う立場になってしまう」とし、スコットランドの反撃については、「前半は十分にできなかったし、スクラムがひどかった。何が起こっているのかは自分で分からなかった。ボールに触るのにきゅうきゅうとしていた」と敗因を述べた。

 日本ラグビーに新たな歴史を刻んだスコットランド戦の勝利で、日本代表の世界ランキングはフランスを抜いて過去最高の7位に浮上した。
 6位のオーストラリアにもわずか1.44ポイント差に迫った。世界ランク1位ニュージーランド、2位ウェールズ、3位イングランドは前週から変わらず。




日本代表 スコットランド戦の登録メンバー発表 ゲームキャプテンはリーチマイケルが復帰 堀江翔太、トンプソンルーク、福岡堅樹、ウイリアムトゥポウ先発

記録的な大雨で冠水したスタジアム 開催を支えた懸命の復旧作業 横浜国際総合競技場



日本戦「日程変更してでも」 スコットランド協会が訴え
 <スコットランドの1次リーグ最終戦となる日本戦(横浜国際総合競技場)は、台風19号の影響で中止になる可能性がそれがあり、大会組織委員会は、開催当時の13日の朝に開催の可否を判断するとした。これに対して10月11日、スコットランドのラグビー協会が会見し、「延期をしても、場所を変えてもかまわないので、試合を行ってほしい」と試合を開催するよう強く要請した。
 大会の規定では、1次リーグの試合が中止になって場合は、延期せず、引き分け扱いとなって、両チームに勝ち点「2」が与えられる。
 同じグループのアイルランドが12日のサモア戦で決勝トーナメント進出を決めた場合、スコットランドは日本戦で勝ち点「2」を得ても、日本を下回り、1次リーグ敗退が決まる。
 会見ではスコットランドラグビー協会のマーク・ドットソンCEOが、「われわれはこの試合に向けて4年間かけて準備してきた。開催中止は大会のインテグリティー(健全性)に関わる。日程に柔軟性を持たせるべきで、再考してほしい。試合開始を24時間遅らせてでもプレーしたい。どこのスタジアムで構わないし、無観客でも構わない」と述べ、「どのチームが勝ち抜くか、きちんと試合で決めるべきだ。多くのファンも同じ意見だと思う」と大会を主催するワールドラグビー(WR)に試合開催を強く訴えていることを明らかにした。英メディアによると、中止となった場合は主催者側への法的措置も検討しているという。
 これに対して、ワールドラグビー(WR)は、スコットランド協会も大会規定に合意していたとして「コメントにがっかりしている」と声明を出した。

開催国に圧倒的有利な日程に不満 中3日で対戦のスコットランド監督が思わず本音 
 サモア戦後の会見で、スコットランドのグレゴー・タウンゼンド監督が、1次リーグA組の試合日程が開催国に有利に組まれていることを指摘。最終戦を中3日で日本と戦わなければならないことに不満を漏らした。
 スコットランドは9日後にロシアと対戦し、その後、中3日でプール戦で最大の山場の試合、日本との最終戦に臨む。「あと2試合で計10日間の準備期間なのだが…」と言葉を詰まらせた。ロシア戦と日本戦の間は、最短の中3日、選手にとって極めて過酷なスケジュールである。
 2019イングランド大会では、日本が南アフリカに全精力を注ぎ込んで勝利を挙げた。しかし、中3日で挑んだスコットランド戦に大敗。結果的にはそれが響き、1次リーグで3勝したにもかかわらず敗退となった。
 今大会の日本はロシアとの開幕戦後、中7日でアイルランド、中6日でサモア、中7日でスコットランドと、残り3試合を十分な休養日を確保して戦う。それに対して、3戦目のサモアは中4日で日本を迎え撃つ。
 近年、ラグビーはプレーのレベルが上がり、鍛え上げられた大型選手同士が激しいぶつかり合いを繰り広げることもあり、試合後の回復時間が今まで以上に必要とされている。そんな中で、著しく日本有利に見える試合日程に関しては、一部から疑問の声も上がっている。
 W杯ではこれまで、開催国やティア1のチームに有利な日程が常識とされてきたが、フェアプレーを最も重視するラグビーの最高峰の舞台が、こんな不公平な日程でいいのか。これまでラグビーに触れたことのないファンからは、改善の余地があるのではとの指摘がされている。(出典 Rugby World Cup 2019/RNS hn/kf)





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ラグビーW杯2019日本大会 日本代表初の決勝トーナメント進出
~試合結果 Topics 放送予定 選手情報~


ラグビーワールドカップ2019日本大会開催地

NHKは31試合 日本テレビは19試合放送 NHKBS4K・BS日テレ4Kでも放送 J Sportsは全48試合 HD/4Kで放送

日本vsスコットランド戦 今年最高の視聴率39.2% サモア戦 32・8% ロシア戦 18・3%

ラグビーワールドカップ大会ボランティア 「TEAM NO-SIDE」 1 万 3 千人

ラグビーの試合はこうして行われる 得点・反則・ペナルティ・プレー

初戦ロシア戦 苦しみながらも勝利で発進

日本、アイルランドに19-12で劇的勝利 世界ランキング2位の強豪を撃破 勝ち点4を獲得 決勝リーグ進出に大きく前進

ラグビーW杯 日本 サモア 38-19で三連勝 ボーナスポントも獲得

日本代表 スコットランド戦の登録メンバー発表 ゲームキャプテンはリーチマイケルが復帰 堀江翔太、トンプソンルーク、福岡堅樹、ウイリアムトゥポウ先発

日本戦「日程変更してでも」 スコットランド協会が訴え
開催国に圧倒的有利な日程に不満 中3日で対戦のスコットランド監督が思わず本音


日本、宿敵スコットランドを28-21で猛反撃を振り切り、全勝でA組を一位通過、念願の決勝トーナメント進出

記録的な大雨で冠水したスタジアム 開催を支えた懸命の復旧作業 横浜国際総合競技場

記録的な大雨と暴風 台風19号 ラグビーW杯を直撃 初の開催中止3試合 日本スコットランド戦は開催

ラグビーW杯 日本代表 登録メンバー 31名発表

日本チームをけん引するコーチ・選手は?

なぜラグビーでは外国人選手が多いのか?

森喜朗氏の悲願 ラグビーW杯日本大会開催

ラグビーワールドカップはこうして始まった

記録的な大観衆を集めたラグビー黄金期 早稲田・明治

絶頂ラグビー人気 新日本製鐵釜石と神戸製鋼 ラグビーのリジェンド 松尾雄二と平尾誠二




2019年10月13日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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NHKニュース7 世論調査 内閣支持率 “看板”が泣いている 安保関連法ニュース

2015年09月23日 07時43分00秒 | 政治
NHKニュースの看板が泣いている!
~どこへ行った「NHKニュース7」~

☆ 安保関連法成立関連世論調査 メディアはどう対応したか
☆ 内閣支持率報道 メディアはどう伝えたか
メディア・ウオッチドッグ

 集団的自衛権の行使を可能にすることなどを盛り込んだ安全保障関連法が、19日未明の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と次世代の党などの賛成多数で可決され、成立した。戦後日本の安全保障政策は、歴史的な大転換をした。

 新聞、テレビ各社は、この安全保障関連法の成立を世論はどう受け止めたか、19日、20日で世論調査を行い、21日に紙面やTVニュースで、いずれも速報した。
 NHKニュースでは、世論調査を実施せず、安全保障関連法の成立に関する世論の動向を伝えていない。

 9月21日のNHKニュースの“看板”、「ニュース7」の項目を見よう。
「ニュース7」は、NHKのニュースに中でも“特別”な地位を与えられているNHKを代表するニュースだ。
ニュース7の“見出し”は、「この夏の猛暑」、熱中症になる人が相次ぎ、「認知症」の高齢者の搬送が相次いだというニュースである。
 続いて下記のようなニュース項目を伝えている。

▼ 「埼玉・熊谷 6人殺人事件」 
    逮捕状の男 前橋から電車で移動
▼ 「電動車いす 介護ベッド 高齢者の使う介護用品」
     5年間で49人死亡
▼ 「熱中症で搬送 49万8千人(全国)」
     その半数が65歳以上の高齢者
▼ 「関東・東北豪雨」
     復旧に向けた動き進む
▼ 「枯れ木も山のにぎわい」
     文化庁の行った国語調査 誤って理解している人 半数近く
▼ 「原発運転の未経験者」
     川内原発で約40% 安全のために人材確保課題に
▼  フラッシュ・ニュース
「難民10万人受け入れ アメリカ拡大を表明」
「フォルクスワーゲン謝罪 米の排ガス規制で不正指摘」
「佳子さま慰霊碑に献花」
「宮沢賢治をしのぶ会」
▼ スポーツ
「ラグビー・ワールドカップ 日本代表練習」
「大相撲結果」
「プロ野球」
▼ 天気情報

 「ニュース7」では安全保障関連法関連のニュースは何も伝えていない。
 一方、ニュースウオッチ9では安全保障関連法案関連ニュースを取り上げているが……。
 安保関連法は、日本の安全保障政策の歴史的な大転換という認識には異論はないだろう。その安保関連法成立にあたって、世論がどう受け止めたかは、最も重要な情報である。週末に世論調査を実施して、安全保障関連法の成立を世論はどう受け止めたか、安倍内閣の支持率がどうなったのか、月曜日の21日に結果を速報するのがメディアの“責務”だろう。とりわけ安倍内閣の支持率がどうなったか、政治家だけではなく、国民全体が注視していた。安倍政権に厳しい評価が出るのを勘案して、世論調査を実施するのを見送ったのではないかという疑念さえ生まれる。
NHKは9月14日の安全保障関連法の採決がヤマ場を迎えた時に、世論調査を実施している。結果は、「安倍内閣への支持率は6ポイント上昇して43%」、三か月ぶり“支持しない”を上回ったと報道している。参議院の“強硬採決”後、安倍内閣の支持率がどうなったかは重要な情報ではないと思ったのだろうか。定例で実施している世論調査で報道すれば充分というニュース判断だったのだろう。お粗末な編集判断だ。
「日本の安全保障政策の歴史的な大転換」の“節目”なのである。
「この夏の猛暑」が「ニュース7」の“見出し”ではない。「枯れ木も山のにぎわい」のニュースに方がニュース・バリューがあるのか? ニュース7の“看板”が泣いている。
国民が知りたがっている情報に答えようとしない報道機関はジャーナリズムとして“資格”がない。
NHKは、5月26日に始まった安全保障関連法案の衆院本会議での代表質問などを中継しなかった。「必ず中継するのは施政方針演説などの政府演説とそれに関する代表質問というのが原則」と説明する。さらに7月15日の衆院平和安全法制特別委員会の締めくくり質疑を生中継せず、視聴者から抗議や問い合わせが相次いだ。
そして、また“失態”である。

 これに対して、新聞各社は、いずれも週末の19日と20日に世論調査を実施して、安保関連法成立にあたって、世論がどう受け止めたか、安倍内閣の支持率はどうなったのかを、21日の紙面で速報している。

▼ 朝日新聞
  「安保法、反対51%・賛成30%」

 安保関連法に「賛成」は30%、「反対」は51%で、法律が成立してもなお反対が半数を占めた。国会での議論が「尽くされていない」は75%、安倍政権が国民の理解を得ようとする努力を「十分にしてこなかった」は74%に上った。
 内閣支持率は35%(9月12、13両日の前回調査は36%)で、第2次安倍内閣の発足以降、最も低かった。不支持率は45%(同42%)だった。

▼ 毎日新聞
 「毎日新聞世論調査:安保成立『評価せず』57% 強行「問題だ」65%」

成立を「評価しない」との回答は57%で、「評価する」の33%を上回った。参院平和安全法制特別委員会で与党が強行採決したことに関しては「問題だ」が65%を占めた。安倍内閣の支持率は8月の前回調査より3ポイント増の35%、不支持率は同1ポイント増の50%。不支持が支持を上回る傾向は変わっていない。

▼読売新聞
 「内閣支持41%、再び不支持を下回る…」

安倍内閣の支持率は41%で、前回調査(8月15~16日)から4ポイント下落し、不支持率は51%(前回45%)に上昇した。安保関連法の衆院通過後の7月調査で、内閣支持率は2012年12月の第2次安倍内閣発足以降、初めて不支持率を下回った。前回調査では支持率と不支持率が並んでいたが、今回は再び逆転した。
 安保関連法の成立を「評価しない」人は58%、「評価する」は31%だった。安保関連法の内容について、政府・与党の説明が不十分だと思う人は82%に達した。内閣支持率の低下は、安保関連法への理解が進んでいないためとみられ、政府には法成立後も、丁寧な説明が求められている。
 安保関連法の成立で、抑止力が高まると答えた人は34%で、「そうは思わない」は51%だった。

 そして内閣支持率が4%と小幅な下落にとどまったことについて、記事では「政府・与党内には安堵感も広がった。安倍首相周辺は『支持率の下げ幅は想定の範囲内だ。経済対策で反転攻勢に出る』と語った。首相も20日、周辺に『次は経済だ』と述べた」としている。
 また「民主党の岡田代表は秋田市で安保関連法について、「『廃止にすべきだ』という民意がはっきりした」と記者団に述べ、政府・与党批判を続ける考えを示した。党幹部は「支持率は10ポイントくらい下がるとみていた。意外だ」と語った。党内には「反対論に終始し、対案を出せなかった。国民の支持が広がらなかった」(保守系議員)との危機感もある」と伝えている。


▼ 産経新聞・FNN
 「安保法制整備は7割が『必要』でも、安保法案成立『評価しない』が6割」

産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が19、20両日に実施した合同世論調査によると、集団的自衛権の行使を限定的に可能にする安全保障関連法の成立について、56・7%が「評価しない」と答えた。「評価する」は38・3%だった。一方、日本の安全と平和を維持するための安保法制整備については、69・4%が「必要」と答え、「必要ではない」は24・5%にとどまった。
  安倍内閣の支持率は42・6%で、前回調査(12、13両日実施)より0・9ポイント低下。不支持率は47・8%で3・3ポイント上昇した。

 記事の“見出し”は、「安保法案成立『評価しない』が6割」が後ろにきて、「安保法制整備は7割が『必要』」が前面に出しているのが、いかにも安保関連法を支持している産経新聞らしい書き方である。

世論調査には、設問の仕方によって、回答の内容が著しく変わるので、回答結果の数字だけでなく、「設問」を検証することも必須である。
 「安保法制整備は7割が『必要』」の調査項目の設問は、「あなたは、日本の安全と平和を維持するために、安全保障法制を整備することは、必要だと思いますか、思いませんか」であある。今回の安保関連法案について聞いているのではなく、“一般論”として「安全保障法制の整備」の必要性について聞いているのである。次元が違う設問の設定である。筆者は、やや“公正”な姿勢を欠いた世論調査と思うが……。

▼ 日本経済新聞
 「内閣支持40%に低下、安保法54%評価せず」

 安倍内閣の支持率は40%と、8月末の前回調査を6ポイント下回った。不支持率は47%で7ポイント上昇し、再び支持、不支持が逆転した。安保関連法の今国会成立を「評価しない」は54%で「評価する」は31%にとどまった。

▼ 共同通信
 「安保法の審議不十分79%」
 共同通信社が19、20両日に実施した全国緊急電話世論調査によると、安全保障関連法に「国会での審議が尽くされたとは思わない」の回答は79・0%、「尽くされたと思う」は14・1%だった。安保法への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」は81・6%、「十分に説明していると思う」は13・0%で、政府への根強い不満が浮き彫りになった。内閣支持率は38・9%で8月の前回調査から4・3ポイント下落、不支持率は50・2%。
 安保法成立で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68・0%。「変わらない」は27・1%、「低くなる」は2・5%だった。

 また関連記事で「安倍政権は『内閣支持率の30%台後半への下落は想定内だ』(幹部)と冷静に受け止める一方、強い反対世論が持続すれば、来年夏の参院選に影響しかねないと警戒」と伝えている。

 テレビ放送各社の対応はどうだったのだろうか。
 9月21日、テレビ各社は各局とも、週末に世論調査を実施し、ニュースで安全保障関連法案成立後の世論の動向について速報している。

▼ 日テレニュース24
 「緊急世論調査 安保成立『評価せず』58%」
 
 日本テレビと読売新聞が19・20日に行った緊急世論調査で、安保関連法が成立したことに「評価する」が31%だったのに対して、「評価しない」が58%に上った。また82%の人が政府・与党が安保関連法の内容を国民に十分説明したと思わないと答えた。



▼ TBSニュース(JNNニュース)
 「安全保障関連法、76%が『審議不十分』 JNN緊急世論調査」

 集団的自衛権の行使を可能にすることなどを柱とする安全保障関連法が19日成立しましたが、国会での審議について、76%の人が「不十分」と考えていることが、JNNの緊急世論調査でわかりました。
安保関連法が、19日、成立したことを受けて、JNNは緊急世論調査をこの土日に行いました。
 それによりますと、安保関連法が成立するまでの国会での審議について、「十分だった」と答えた人が16%、「不十分だった」と答えた人が76%でした。また、安保関連法が成立したことについて、「評価する」と答えた人が33%、「評価しない」と答えた人が53%でした。
 安倍内閣の「支持率」は2週間前の前回調査より0.8ポイント下がって46.3%、「不支持率」は前回より0.7ポイント上がって52.5%でした。





▼ テレビ朝日ニュース(ANNニュース)
 「内閣支持率が低下 約8割が『安保法の説明不十分』」

 安倍内閣の不支持率が支持率を再び上回りました。安全保障関連法の成立を受けて行ったANNの緊急世論調査で、安倍内閣の支持率は3ポイント近く下げ、37.1%でした。一方、不支持率は7ポイント近く上昇し、45.4%でした。第2次安倍内閣が発足してからこれまでに支持率と不支持率が逆転したのは、衆議院で安保関連法が可決された7月以来で、先月、いったん持ち直した支持率は再び過去最低の水準になっています。

 安保関連法に賛成の人は先週に比べて2ポイント上回って27%で、反対の人は4ポイント下がって50%でした。また、安保関連法について、依然として8割近くの人が「安倍内閣の説明は不十分だ」としています。一方、民主党など法案に反対した野党が2日半余りにわたって採決の引き延ばしを図ったことについては、6割近くの人が「評価しない」としています。また、政党支持率では自民党が7ポイント余り下げて、第2次安倍内閣発足以来、初めて4割を切りました。







▼ フジテレビニュース(FNNニュース)
 「安保関連法の整備「必要」と考える人はほぼ7割に」

 FNNがこの週末に行った世論調査で、安全保障関連法の整備が「必要」と考える人は、ほぼ7割に達する一方で、審議が尽くされたと思わない人が、8割近くにのぼることが明らかになった。
調査は、9月19日と20日に、電話調査(RDD)で行われ、全国の有権者1,000人が回答した。
安倍内閣を支持する人は42.6%、支持しない人は47.8%で、先週の調査に比べて、不支持率がやや増えた。
焦点の安全保障関連法が、この国会で成立したことについて、「評価しない」と答えた人は56.7%と、6割近くに及ぶ一方、「評価する」と答えた人も38.3%と、4割近くに達した。
また、安全保障法制の必要性については、ほぼ7割にあたる69.4%の人が「必要」と答え、「必要ではない」と答えた人(24.5%)を大きく上回った。
国会での審議について、十分に尽くされたと「思わない」と答えた人が、ほぼ8割の78.4%に達し、一方で、野党は、役割を果たしたと思うかとの質問に、ほぼ8割の人が「思わない」と答えた(76.1%)。
また、委員会採決の混乱の責任について、6割近い人が「与党・野党両方にある」と答えた(57.2%)。
安保への反対集会やデモについて、「共感しない」と答えた人が50.2%で、「共感する」と答えた人(43.1%)をやや上回る結果となった。





 民放各社の主要ニュース番組も、安全保障関連法成立後の世論の動向等についていずれも取り上げている。
 
▼ 日本テレビ 「情報ライブ ミヤネ屋」
 「拍手と怒号の中 国民・世界はどう見た?」
  週末の緊急世論調査の結果を報道

▼ フジテレビ「みんなのニュース」
 「国会不信さらに “暴行疑惑”も浮上 国会混乱の余波」
  山梨でゴルフを楽しむ安倍総理 61回目の誕生日
  国会前の雑感
  FNN世論調査の結果も報道

▼ テレビ朝日「報道ステーション」
 「“選挙権18才”で高校生は 安保法成立後も続くデモ」
 山梨でゴルフを楽しむ安倍総理
 野党の動き
 緊急世論調査の結果
 元陸軍通信兵の思い
 コメンテーター 木村草太氏

▼ TBS「ニュース23」
 「国会審議『不十分』が76%」
  国会前の反対派のデモ
  週末に各地で開かれた安保関連法案反対のデモや集会
  世論調査の結果

▼ 日本テレビ「NEWS ZERO」
 「政権発足1000日=誕生日に 節目にゴルフ 安倍首相」
  世論調査の結果
  今後の政治日程

 “世界に冠たる「ニュース7」”と自負しているNHK、その“看板”はどこにいったのか?
 視聴者が知りたがっているニュース情報に目をつぶっては決してならない。
 安保関連法が成立したからといって、日本の安全保障を巡る課題は決して終結していない。共同通信の世論調査では、安全保障関連法に「国会での審議が尽くされたとは思わない」の回答は79・0%、安保法への安倍政権の姿勢に関し「十分に説明しているとは思わない」は81・6%、安保法成立で自衛隊が戦争に巻き込まれるリスクが「高くなる」は68・0%と、国民はこの法案に納得していない。NHKは実施していないが、各社の世論調査でもほぼ同様の結果が出ている。
 こうした国民の声に、NHKはどう答えるのか。安全保障関連法成立後のフォローに真摯に取り組む姿勢をどう示すのか? ジャーナリズムとしての真価がまさに問われている。






2015年9月21日
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廣谷  徹
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安保関連法成立 戦争法案? 海外メディアはどう伝えたか? 海外の反応

2015年09月22日 17時10分24秒 | 政治

安全保障関連法案 戦争法案?
~海外メディアはどう伝えたか? 海外の反応は?~

メディア・ウオッチドッグ



 2015年9月18日未明、集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法が参院本会議で成立した。自衛隊の海外での武力行使を可能にし、戦後70年、日本の安全保障政策の“歴史的転換”となった。
安倍政権は、この法案の成立により、日米同盟が更に強化され、“抑止力”が高まり、日本の安全をより確実なものになるとしている。また、自衛隊の国際平和協力活動も拡充し、人道復興支援や他国軍への後方支援を通じて、世界の平和と安定を維持するため、日本が従来以上に貢献する道を開くとしている。
安倍首相の掲げる“戦後レジームからの脱却”と“積極的平和主義”の具体策の中核である。
一方、この法案に対しては憲法違反だとの批判が根強く、国会周辺は連日、反対派のデモで埋め尽くされた。報道各社の世論調査でも反対が賛成を上回る。

 安全保障関連法案は、反対派からは“戦争法案”だと批判されていた。一方、賛成派からは“抑止力”を高める安全確保法案だとしている。
 
 この法案の最大の論点は、集団的自衛権の行使を容認したことである。集団的自衛権は自国が攻撃されていなくても他国への攻撃があった場合に反撃できる権利で、国連憲章51条で規定され、日本を含む加盟国すべてが持っている。
 歴代内閣は、集団的自衛権は、憲法が禁じる武力行使に当たるとして行使できないとしてきたが、安全保障環境の変化を理由に、2014年7月の閣議決定で“憲法解釈”を変更し、容認に踏み切った。
 集団的自衛権を容認するにあたって、“歯止め”として、武力行使の“新3要件”を掲げた。
 “新3要件”は(1)日本と密接な関係にある他国への攻撃により、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある=「存立危機事態」(2)その危険を排除するために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使−−の3点である。
“新3要件”を満たせば、自衛隊は米艦を含む味方艦船の防護のほか▽戦闘現場での補給▽強制的な船舶検査−−など集団的自衛権の行使が可能になる。
 安倍政権は、自衛隊が武力行使を行うにあたっては、“新3要件”という“制限”が厳しく課せられているので“戦争法案”という批判は当たらないとしている。
 以上のように、安全保障関連法案は、理解するのが大変に難しい。要するに、この法案をどう見たらいいのか。海外のメディアが、この法案をどう伝えたかが参考になるだろう。

 
■ BBC News

「海外での軍事活動容認 歴史的な政策」
要するに、「自衛隊を海外派遣して、軍事活動をすることを容認した」という伝え方である。




■ New York Times

「国会は海外での軍隊の戦闘を容認した」
 自衛隊の海外での戦闘行為を容認したという見出しである。




■ Washington Post
「日本は“普通”の軍隊を持つ国になる」



■ Reuters
「日本は安保法制を通過させ重要なステップを進んだ~
「日本は第二次世界大戦以来、平和憲法の制約を緩めて、初めて軍隊が海外で戦闘できるような法案を成立させるという政策変更を行った~」


World | Thu Sep 17, 2015 8:16am EDT
Related: WORLD, JAPAN
Japan takes key step to passage of security bills despite protests
TOKYO | BY LINDA SIEG
Japan took a step on Thursday towards enacting legislation for a policy shift that would allow troops to fight abroad for the first time since World War Two, part of the prime minister's agenda to loosen the limits of a pacifist constitution


■ AP News
「日本は安保法制で軍事的な役割を強化した」

Japan enhances military’s role as security bills pass
By Mari Yamaguchi | AP September 18 at 6:35 PM
TOKYO — Japan’s parliament has approved contentious legislation that enhances the role of the country’s military by loosening post-World War II constraints, as the ruling bloc defeated opposition parties’ last-ditch effort to block a vote.


■ CNN News
「強気の日本は70年の平和主義を放棄する構えだ ~日本の軍隊が海外での戦闘に加わることを可能に~」



■ The Guardian
「戦後70年初めて、軍隊を海外派兵し戦争をすることを容認する法制が成立した」



 海外の各メディアの伝え方は、要するに「日本は、戦後70年初めて、“軍隊”を“海外派兵”し“戦闘”を行うことを可能にした」ということで一致している。また、「平和主義の放棄」を伝えているメディアも複数ある。
 安全保障関連法案は、世界からは、やはり“戦争法案”として理解されていると思える。日本も海外で“戦争”ができる国になったのか、ということだ。
 戦後70年、“憲法9条”の元に、“平和主義”を掲げた日本への信頼感が世界の市民の間で崩れ始めているのではないだろうか?





2015年9月20日
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大阪都構想 住民投票 検証 反対派勝利

2015年05月24日 22時03分23秒 | 政治

大阪都構想 住民投票 検証
なぜ僅差で「反対」派が勝利したのであろうか?


 2015年5月17日、橋下徹大阪市長(大阪維新の会代表)が掲げた「大阪都構想」の是非を問う住民投票が行われ、1万741票差で反対が上回った。
都構想は廃案となり、大阪市は政令指定市として存続する。橋下氏は同日夜の記者会見で政界引退の意向を表明した。
投票率は66・83%、過去最高だった1951年の大阪市長・市議選の71・98%には及ばなかったものの、最近10年で最も高かった2009年の衆院選の65・00%や、大阪府知事選とのダブルで行われた11年の市長選の60・92%を上回った


■ 事前の世論調査では、反対派が圧倒的に優勢
 朝日新聞社と朝日放送(ABC)が実施した世論調査(電話調査)によると、大阪市をなくして五つの特別区を設けるいわゆる「大阪都構想」については、「賛成」の33%を「反対」の43%が、10%の差を付けて上回っている。
 このうち維新支持層では「賛成」が91%を占めるが、自民支持層では「反対」が61%、公明支持層では「反対」が7割強。無党派層では「賛成」は23%で、「反対」の40%が上回った。
 大阪都構想に「賛成」と答えた人に理由を四つの選択肢から一つ選んでもらうと「行政のむだ減らしにつながるから」が50%、「大阪の経済成長につながるから」が27%。
  「反対」と答えた人の理由は「住民サービスがよくならないから」27%、「橋下市長の政策だから」25%などに分散した。
 大阪市の橋下徹市長の支持率は43%、不支持率は39%だった。支持率は今年2月と4月の43%と変わらなかったが、不支持率は42%からわずかに下がったとしている。
 この世論調査を実施した5月9日と10日の時点では、橋下徹市長の「大阪都構想」への支持は得られているとは言えず、「反対」は10%の差を付けて優勢であった

 
■ 「反対派が圧倒的に優勢」の分析
 政党支持層別で見ると、維新支持層では「賛成」が91%を占めるが、自民支持層では「反対」が61%、公明支持層では「反対」が7割強。無党派層では「賛成」は23%で、「反対」の40%が上回り、維新支持層を除いて「反対」が優勢であった。
 無党派層でも「反対」が圧倒的に優勢だったのである。
 筆者の推測だが、全世代に渡って、「反対」が優勢で、「シルバー世代の反乱」というには“的外れ”であろう。
 その一方で、「女性票」の動向は、今回の住民投票の結果を見るにあたって極めて重要だろう。
「僕の態度振る舞いに対する嫌悪感」、告示後、橋下氏も女性の支持が広がらないという危機感を抱いていたという。橋本氏の人柄や政治手法については、大阪の女性層からの評判は芳しくなく、むしろ反発されていたといわれている。
都構想に反対する超党派の議員らによる女性グループは、「都構想NO」などと書かれたプラカードを掲げてパレードしたが、そのキーワードは「大阪のおばちゃんをなめたらあかんで」だった。

 出口調査でも極めて明白にその傾向が出ていることは見逃せない。
年代別・男女別の「賛成」「反対」を見てみると、60代と70代の男女の差はほとんどないが、50代では、「反対」は男性の場合は42.2%に対し、女性は50.4%、40代は、男性の場合は33.8%に対し、女性は43.9%、その差は20%という“大差”、30代は男性が28.4%、女性が44.7%、その差は“16%”、20代は男性が32・9%、女性が43.7%だった。
 ポイントは「大阪都構想」の問題よりも、橋本氏に対する“好き嫌い”だったのではないか



(出典 読売テレビ 開票特番 出口調査 2015年5月17日)

■ “風が吹いた” 好調、不在者投票・期日前投票 
 66・83%という予想外の高い投票率の要因の一つは、期日前・不在者投票。市選管によると、当日有権者数は約210万4千人の17%に当たる約35万9千人が期日前・不在者投票した。
大阪府知事選との「ダブル選」で注目を浴び、“維新旋風”を巻き起こした2013年の大阪市長選の約23万人を軽く超え、さらに民主党が政権交代を果たした2009年8月の衆院選(大阪市内の投票率65・00%)の約26万9千人をも大幅に超えた。


(注) 期日前・不在者投票期間は公示日から投票日の前日までの期間で、今回の住民投票の場合は20日間、それぞれ選挙によって期間の長さが違う
 
予想以上に不在者投票・期日前投票が増えたのは、今回の住民投票で、いわゆる“風が吹いた”と筆者は考える。

■ どんな“風が吹いた”か?
 橋下市長を先頭に、維新は、住民投票の成否に“命”をかけた。
全国から地方議員や国会議員秘書らをビラ配り要員として集め、「1千人態勢」で臨み、維新幹部は「都構想のために立ち上げた政党。持てる資源すべてを住民投票につぎ込んだ」と話していたという。
討論会やテレビ番組で答えに詰まり反対派に押された印象が残らないよう、橋下氏は自分以外の出演を原則認めなかったという。維新は市議らに「街頭演説100回、集会50回」のノルマを課し、「日報」を出すことを義務づけたと伝えらえている。
また統一地方選の前半戦直後から、テレビCMを展開。さらに日替わりで新聞にチラシを折り込むなどの広報戦略に、計約4億円を投入したという。
 終盤戦になると「負けたら辞める」と訴えかけて、“背水の陣”で臨んでいることを訴えかけた。
投票所の当日も、全国から集めた約1千人を365カ所の投票所に配置し、橋下氏の「ラストメッセージ」を載せたチラシを市民らに配り、橋下氏も宣伝カーで市内の投票所を駆け回り、最後の猛烈な運動を展開した。
こうした選挙運動が“功を制した”のだろう、無党派層の20代から50代を中心に“風が吹き”、1週間前は、10%の差があったのを一気に巻き返し、“互角”の闘いまで持ち込んだと筆者は分析する。
“風が吹いた”のは、「シルバー世代の反乱」ではなく、「賛成」に回った無党派層の20代から50代である。
“風”は投票日の当日も“吹きまくり”、投票日夕方には、投票所は“若者”が列をなしていたという情報も伝えらえている。
 また、自民党支持層では、大阪府連レベルでは都構想に反対であったが、菅官房長官が記者会見で「二重行政を解消するのは当然」などと、都構想を後押しする発言を繰り返したことも影響し、自民支持層の賛否が割れ、「賛成」が42.7%まで達したと思われる。(産経新聞 出口調査)
結果、わずかに「賛成」は及ばず、1万741票差で反対が上回った。



(出典 朝日新聞社と朝日放送[ABC] 出口調査)

■ 高齢者が政治の主導権を握る
 日本は、超高齢化社会に突入している。
 2015年、65歳以上の高齢者人口は、約3277万人、26%に達している。2025年には、約3472万人、28.7%になると予測されている。
その中軸になるのは、昭和22年、23年、24年生まれの“団塊の世代”だ。



“団塊の世代”は、「戦後復興期」の“貧しい日本”に育ち、「受験戦争」と「大学紛争」、そして「就職戦争」を生き抜いた。そして「高度成長」、「環境破壊」、「バブル経済」と「バブル崩壊」を体験している。政治でいえば、自社体制、自民党政権の崩壊、民主党圧勝、まさに日本の激動の時代を過ごしている。その意識は、きわめて“多様”で、“したたか”である。今の20代~50代に比較しても、その“たくましさ”と“自尊心”は際立っている。昔の“高齢者”と同じと思わない方が良い。“保守”だ“革新”だという線引きにはなじまない年代層である。
こうした“団塊の世代”が、この10年は、日本の年代別人口の中で、“最大多数”を占めるのである。
大阪都構想の住民投票の結果を「シルバー世代の反乱」というコメントする向きもあるが、これはミスリードだろう。  「反乱」は“少数派”、“反主流派”に対しての表現である。「シルバー世代」は、“多数派”であり、“主流派”なのである。

 「“じいじ”と“ばあば”をなめたらあかんで!」


■ “大阪都構想”住民投票の結果の意味するもの
 今回の住民投票では、“反対派”が極めて僅差で上回った。しかし、その差はわずか1万票、民意は“賛否互角”と考えた方が良い。
 大阪は、“東京一極集中”で、地盤沈下が進んでいる。日本で人口第二の都市の座は、横浜に譲って久しい。2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催で、注目度はいやがうえにも東京に集まるだろう。東京に対抗する都市として、大阪の“活性化”の新たな戦略が必要だろう。過度な“東京一極集中”は日本の“活性化”をも妨げると思う。
 また、「二重行政」の“無駄”への批判は、真摯に耳を傾ける必要がある。大阪府と大阪市は存続しても、「二重行政」是正は、大阪に課せられた大きな課題であろう。
 さらに「二重行政」は、大阪府と大阪市だけの問題ではない。国と都道府県、都道府県と市町村、各省庁間、さまざま段階で、問題が山積している。
 “日本再生”、取り組まなければならない課題は多い。





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2015年5月24日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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