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平昌五輪 負の遺産 負のレガシー レガシー 競技場 開催経費 平昌オリンピック

2022年01月20日 19時21分36秒 | 平昌冬季五輪
冬季五輪の“宿命”
“負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪


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平昌冬季五輪開会式 聖火を点灯するキム・ヨナ 出典 POCOG


平昌五輪開会式 出典 POCOG

三度目の挑戦で成功 平昌冬季五輪
 首都ソウルから東に約130キロ、韓国の北東部に位置する平昌は、2003年大会と2007年大会に立候補したが失敗し、2011年大会にようやく悲願の冬季五輪の誘致に成功した。
 平昌が属する江原道(Gangwon-do)は、日本でも大人気となった、“韓ドラ”のシンボルと、「冬のソナタ」の撮影地になったことで知られている。
 平昌は、太白山脈の山岳地帯に位置し、標高は800メートル、ジャガイモやソバの畑が広がる豊かな自然に包まれた地域で、冬は韓国内で有数のスキーリゾート地として知れれていて、各地から観光客が訪れる。わずか約80キロで北朝鮮の国境と接している町だ。
 この地域は韓国で最も寒い地域の一つとされ、真冬は零下10度を超え、山脈を下る強い北風が吹きまくる厳しい自然条件を抱えた地域として知られている。
 シベリアや中国東北地域の東北平原から吹き付ける風の影響も受けるため、体感温度は気温よりはるかに寒い。
 強風の日は、体感する寒さは激しく、施設によっては、選手や観客は零下25~30度ぐらいに感じるとされている。また、五輪期間中は平均より降雪が少ないと予想されており、たまに雪が降っても全体的には乾燥した状態が続くしている。
 2017年12月にオリンピック・スタジアムで行われたコンサートを見ていた観客6人が低体温症で治療を受けた。あまりの寒さのため、トイレでうずくまっていた観客も複数いたという。
 このため、2月9日に開催された開会式は、4万人を上回る観客の一人一人にカイロ、毛布、温熱座布団、ポンチョが配られた。また、暖房付き避難所18カ所、大型ヒーター40基、風よけが設置された。
 平昌は、ソウルからは高速バスで約3時間、2017年末には仁川(Incheon)国際空港と競技会場エリアを2時間以内で結ぶ高速鉄道(KTX)を開通した。
 韓国政府は、平昌を冬期五輪の開催地に選んだ理由について、韓国内で最も開発が遅れているとされているこの地域を再開発して、地域振興を図るためだとしている。
 平昌五輪の開催で、韓国では、1988年のソウルで開催された夏季五輪に引き続き、二回目の五輪開催となる。五輪大会は、2018年平昌冬季五輪、2020年の東京夏季五輪、2022年の北京冬季五輪と三回連続でアジアで開催することになっている。
 韓国では、最も人気のあるスポーツは、伝統的にサッカーや野球だが、冬季スポーツではスケートが最も盛んである。ソチ五輪大会では、金メダル3、銀メダル2、銅メダル2をスピード・スケートやショート・トラック、フィギア・スケートの競技で獲得している。
平昌五輪は、2018年2月9日から25日の17日間に渡って、冬季五輪では過去最多の92カ国・地域から2900人の選手が参加し、これも過去最多の15競技、102種目が行われる。


Introducing PyeongChang2018(New Version) PyeongChang2018
PyeongChang2018/Youtube

Amazing drone footage of PyeongChang 2018 venues
AIPS Media Channel/Youtube




膨張する五輪開催経費
 五輪を開催する都市は、いつも、競技場整備に膨大な経費を投入する。
 平昌冬季五輪も例外ではない。
 平昌冬季五輪では、12か所の競技場とオリンピック・スタジアムとメダル・プラザを建設した。
 開会式や閉会式を開催するオリンピック・スタジアムは、仮設施設にも拘わらず1477億ウォン(約147億円)が支出されることになっている。その内、半額は韓国政府が負担した。
 さらに開会式・閉会式のイベント経費、700億ウォン(約70億円)が加わる。
韓国国内では、オリンピックとパラリンピックの開会式・閉会式など4回のイベントで使用するだけなのに、無駄遣いだという批判が出ている。
 Alpensia ski resortの建設には、約15億ドル(約1兆6600ウォン 約1660億円)が投入された。
 政府や自治体はコスト削減に努めたとしているが、膨れ上がる平昌五輪の施設整備費は強い批判が浴びせされている。

 また平昌五輪組織委員会の予算も破たんの危機に陥った。
 平昌五輪組織委員会は2017年6月、これまでの2兆2000億ウォン(約2200億円)の予算規模では五輪開催が困難として6000億ウォン(約600億円)の追加支援を韓国政府に要請した。

 平昌五輪の開催経費は、首都ソウルから遠く離れた開催地に観客動員のための高速鉄道の建設などを加えたインフラ関連経費も含めると、約14兆ウォン(約1兆4000億円)にも達しているとされている。
2011年に招致に成功した時に立候補ファイルで示した開催経費は、8兆8000ウォン(約8800億円)、5兆ウォン(約5000億円)も膨れ上がっている。
 韓国の市民からは、「残るのは「国民の負担ばかりが膨らむ」「能力もないのになぜ五輪を誘致した」などの批判が沸き上がっている。


平昌オリンピック・スタジアム   出典  PyeongChang2018

自然環境破壊の批判を浴びた旌善アルペン・センター
 平昌冬季五輪の滑降、スーパー大回転などの競技会場となった旌善アルペン・センター(Jeongseon Alpine Centre)は、平昌の南部の山麓を切り開いて新たに建設された。滑降コースは、男子ではスタート地点で標高1370メートル、フニッシュ地点で545メートル、標高差825メートル、距離2852メートル、女子ではスタート地点で1275メートル、フィニッシュ地点で545メートル、標高差730メートル、距離2499メートル、3600人を収容する観客席と2900人の立見席スペースが整備された本格的なアルペン競技場である。
 国際スキー連盟の規定を満たすためには800メートル以上の標高差を備える巨大なスロープが必要だった。
 このアルペン・センターの建設用地は原生林の生い茂る山林保護地域、貴重な原生林を伐採して工事が進められた。建設費は約200億円、巨額の経費が投入された。
 計画が明らかになると、自然保護団体が猛反対を受け、造成面積を減らすなど計画は変更された。コースを、男女別々スタート地点とする「Y字型」コースから、男女同一のコースを滑る「I字型」にしたが、原生林の伐採面積は約78ヘクタールに及んだ。
 大会終了後のレガシープランは、観光・レジャー施設として、周辺の施設と連携させて存続を図る方向で検討中としている。
 しかし、アルペン・センターを存続させる場合は、最大55%を上限とするという規制によって、約半分は取り壊さなければならい。施設の半分がなくなれば、本格的なアルペンコースとしての存続はあり得ないことになる。
 江原道庁は、原状復帰に備えて、樹木の専門家らに意見を聞きながら斜面に生えていた草木の種や土砂などを保存しているが、完全な復元は絶望とされている。
現状復帰工事の規模はまだ検討中としているが、50年以上の時間と約50億円の経費が想定され、現時点では予算のめどもまったく立っていないという。
 旌善アルペン・センターは平昌冬季五輪での“負のレガシー”(負の遺産)の象徴になりそうな可能性が大きい。


旌善アルペン・センター  出典 POCOG

雪不足に悩んだアルペンスキー施設
 あまりに厳しい寒さのせいで、平昌の積雪量余り多くないし、めったに大吹雪にならない。日本の気象庁によると、気温が低くなるにつれて空気中に含むことができる水蒸気量が少なくなり、降水や降雪の量も少なくなるという。
しかも、通常、2月は年間で最も乾燥する時期で、降雪量も少ない。
韓国気象庁によると、五輪期間に当たる2月9~25日の17日間に、1日87センチの大雪が積もった年もあれば、通算積雪量が1センチ未満だった年もあるとしている。過去10年の平均でみると、33・5センチで積雪地帯とはいえない。昨年はわずか7センチで、5日間しか降らなかったとしている。
 回転と大回転が開催される龍平アルペン競技場では、今年になって、標高1458メートルの山頂付近から伸びる五輪コースに天然雪はあまりなかった。昨年は雪不足のため、一部のコースを閉鎖したという。この競技場は、ここ数年は、雪不足に悩まされていたアルペンコースなのである。
アルペンジア・スライディング・センターのクロスカントリー、バイアスロン、ジャンプ競技場やフェニックス・スノーパーク、旌善アルペン・センターも同様に雪不足で、このままでは大会開催も不可能な状態だった。
 五輪組織委員会は、440万ポンド(約6億7000万円)を投じて、250台にも及ぶ人工降雪機を設置し、人工の雪でアルペン競技場を覆う作戦をとった。すべてのアルペン競技場を、人工雪がメインのコースとしたのである。
 人工降雪機は冷却水と圧縮空気を「スノーガン」から発射する設備である。人工雪を作るには、大量の水が必要なため、各競技場には6万~12万トン規模の貯水施設が整備された。
 昨年12月から24時間作業で、人工雪をアルペンコースに降らし続け、圧雪などのコース整備を行った。こうした作業は五輪開幕直前までまで続けられたという。
五 輪組織委員会は龍平アルペン競技場だけで、大会期間中(2月9日から16日間)で東京ドームの約2倍、210万立方メートルの雪が必要と試算した。そこで、70台の人工降雪機を設置し、新たに貯水池も用意し、3カ所のポンプ場から給水して、人工雪を降らし続け、滑降コースを整備した。

 平昌の位置する江原道地域は、もともと、積雪地帯ではない。
 さらに韓国メディアは「韓国気象庁の統計では今後5年間積雪量は減少するばかりだろう」と報じている。
 この地域に新たに建設された競技場を維持するためには、どうしても人工降雪に頼るという宿命を負いそうだ。施設の維持管理経費は更に増えるだろう。
 平昌を五輪開催地に選んだツケを払わされる懸念が生じている。



フェニックス・スノー・パーク(アルペンスキー競技場)の人工降雪機  出典 PyeongChang2018

ゴミ処理場を再生した江陵オリンピックパーク
 江陵コースタル・クラスター(Gangneung Coastal Cluste)は、ゴミ捨て場がある土地を再生して建設された。
 このゴミ捨て場は、敷地面積12万3000平方メートル、84万7000トンの廃棄物の埋め立てが可能で、1987年から2000年まで家庭廃棄物を運び入れていた。2000年に廃棄物の搬入を止めて、この土地の再生工事を実施して、オリンピックパークの緑化エリアとして蘇らせた。オリンピックパークには、雨水を再生利用するシステムやソーラーや地熱を利用したエネルギー・システムが整備された。さらに、5か所の有害物資の除去装置や人工的に自然を再生したビオトープや水辺エリアがスポーツ施設に設置された。
 次世代に向けて、環境対策に力点を置いた施策も取り入れて、平昌冬季五輪のレガシー(遺産)を残そうとする努力も見られる。



江陵コースタル・クラスターのオリンピック・パーク

“負のレガシー”(負の遺産) 懸念深刻
 2018年平昌(PyeonChang)冬季五輪大会後、競技施設の年間維持費は210億49000万ウォン(約21億円)になるという推定が明らかになった。施設運営収入を大幅に上回る施設維持費が必要となり、開催地の江原道や自治体の年間赤字は165億ウォン(約16億5000万円)に達することが分かった。
 平昌に建設されたAlpensia Sliding Centreを大会後も維持するためには、年間31億66000万ウォン(約3億1000万円)がかかるとしている。しかし、この施設で得られる収入は7000万ウォン(約700万円)で、夏季は収入がないし、冬季でも利用客がほとんどなくとされている。この施設を所有していることだけで約30億ウォン(約3億円)近くを負担しなければならない。文化体育観光部の関係者は「スライディングセンターは撤去する方が得策」だとしているとしている。
 江陵市(Gangneung)に位置する関東大学校の中に建てられるアイスホッケー場(Kwandong Hockey Centre)と既存の施設を補修するカーリング場を除けば、新設の五輪施設は、大会後の利用計画がほとんどないとされている。江陵市(Gangneung )に建設された1万席規模のアイスホッケー場は(Gangneung Ice Hockey Centre)は施設維持費だけで29億ウォン(2億9000万円)とされいる。
 平昌五輪も、“負のレガシー”(負の遺産)を抱えるのは必至である。


「負の遺産」に苦しんだ長野市
 冬季五輪施設が「負の遺産」となった前例がある。1998年に冬季五輪を開催した長野市だ。
 長野市は五輪のためスケート会場など6施設を、約1180億円かけて新設した。
その結果、1997年度の市債残高は過去最高の約1900億円に達したが、五輪後は景気が低迷したことが追い打ちをかけて、6施設の近年の利用料などの収入は1億円に満たず、市は毎年、施設の維持管理費に約10億円を支出し続けている。
開催から約20年を経た昨年度(2017年度)に建設費返済はようやく終わった。
しかし、施設が存続する限り、維持管理費や補修費の負担は、施設を解体しない限り永久に続き、“負の遺産”となる。
そのシンボルとなったのは、ボブスレーとリュージュの競技会として、総事業費、約101億円で建設した「スパイラル」である。
五輪後、ナショナルトレーニングセンター(NTC)として活用されたが、コースの氷を製氷する電気代などで、多額の維持費がかかるのが難問である。経費は、国が年1億円、長野市が年1億2千万円を負担して維持してきた。国の補助金は平昌五輪までで、その後は打ち切られる。完成から21年も経ち、大規模修繕も必要となってきた。解体するには、13億円ほどかかりとされ、放置して廃虚にすれば冬季五輪のモニュメントとしのイメージが損なわれる。
製氷やめて、夏季のみの練習施設とすれば長野市の負担は年間2千万円以下と見られている。
「スパイラル」はボブスレーとスケルトンができる国内唯一の施設で、リュージュは72年札幌冬季五輪の練習コースがあるが老朽化が激しい。選手にとっては
競技を続ける上で、唯一の場になっている。しかし、競技人口が150人程度とされ、2015年度の利用者が選手・観客合わせても6千人程度で、収入は年間約700万円といわれている。かといって他に利用が可能な施設ではない
 こうした状況の中で、2017年4月、長野市の加藤久雄市長は、18年度以降、「製氷は休止」を決断した。夏場のトレーニングなどに使えるように施設は、当面は、存続させるとした。
 冬季五輪の施設は、冬期間に利用が限定されている上に、利用者が極めて限定されているため、施設利用料収入が少なく、維持管理経費の負担がどうしても膨大になる。ジャンプ、クロスカントリーはもちろん、アイス・アリーナ、スピード・スケート、ホッケー、カーリングなど競技施設の整備は、大会後の利用計画を慎重に、かつ冷静に見極めることが必須だろう。





長野スパイラル  出典  長野市

冬季五輪の開催に名乗りを上げる都市はいなくなった
 2015年7月31日、マレーシア・クアラルンプールで開いた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、平昌冬季五輪の次の2022年冬季五輪の開催地に北京を選んだ。北京は08年に夏季五輪を開いており、史上初めて夏と冬両方の五輪を開催する都市となる。
 IOC委員による投票の直前に行われた北京の最終プレゼンテーションで、中国の習近平国家主席がビデオメッセージで支援を約束し、豊富な財政力と運営実績を強調し、投票の結果、44票を獲得し、40票のアルマトイ(カザフスタン)に競り勝った。
 しかし、2022年大会の開催地決定までのプロセスは、国際オリンピック委員会(IOC)は、深刻な危機感を与えた。
 2022年大会の招致レースは、本命とされていた欧州のオスロやストックホルムが次々と見送りを表明し脱落した。その理由は、いずれも多額の開催経費に市民が反発したからであった。最終的に立候補した都市は、北京とアルマイトのアジアの2都市しか残らないという異例の事態となっていた。
 厳しい批判にさらされているのは膨張する五輪開催経費である。がとにかく五輪を取り巻く状況は一変しているのである。


平昌冬季五輪の立役者、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至


高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

 平昌冬季五輪開催に合わせて、競技会場エリアとソウルや仁川国際空港と結ぶ路線、韓国高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線(キョンガン)が開通した。
 最速列車、特急「ダリアン」は、首都ソウルから平昌までを、約1時間30分、仁川国際空港から終点の江陵までを約2時間50分で結び、五輪大会の観客や選手、大会関係者の輸送の主役を担う。
 開会式や閉会式が行われるオリンピック・スタジアムや、アルペン競技場、アイススケート競技場は、韓国北東部の江原道(カンウォンド)の平昌や東海岸の江陵(カンヌン)市に立地している。この地域は首都ソウルからの交通の便が悪く、“陸の孤島”とされてきた。高速バスに乗車すると約3時間半、在来線では山岳部を避けて南へ大きく迂回し、海岸線を北上するため5時間以上かかった。日帰りするには難しい地域で、五輪開催にあたって、この地域のアクセスの改善は重要な課題だった。
 韓国政府は、これを解決するために、高速鉄道、KTX(Korea Train eXpress)の建設を決めた。工事は2012年6月に着工し、5年半余りの工期をかけて、2017年12月に完成、ソウルと江陵間が開業した。総事業費、3兆7597億ウォン(約3800億円)が投じられた。
 韓国大統領府関係者は「平昌五輪は冬季五輪では過去最大の国・地域が参加する。最大の五輪を最高の五輪にしようと新線をつくった」と語っている。
 KTX京江線はソウル駅を起点に、約半分の区間は在来線を利用し、万鍾の手前で新たに建設された高速新線に入る。新線の延長区間は約120km、江陵付近の一部のみ単線だが、その他は全線複線で、万鍾、横城、屯内、平昌、珍富(五臺山)、江陵の6駅が新設された。
 珍富(五臺山)駅は、オリンピック・スタジアムやアルペン、ジャンプ、スノーボードの競技場の最寄り駅で、江陵駅の近くには、アイスアリーナ、スピードスケート場、ホッケー場がある。大会開催期間中は、江陵駅は1日、2万人余りの乗降客でにぎわったという。
2018年1月18日には、仁川国際空港第2ターミナルにKTXの駅が完成し、仁川国際空港から江陵までの全長277.91kmが開通し、韓国で初めて東西を結ぶ高速鉄道が整備された。
2月1日からは仁川国際空港駅発が16本、ソウル駅発が10本など1日に上下各51本の列車を運行し、片道約4万人の旅客輸送が可能になるという。
 運賃は、ソウル―江陵間は一般席で2万7600ウォン(約2800円)、仁川空港からでも4万700ウォン(約4700円)で、駅から各競技場へのシャトルバスにも乗車できる。
 運行車両は、2009年より導入された現代ロテム社製の「KTX ―山川」(サンチョン)の改良形で、10両編成の列車が15編成投入された。最高時速250kmで運転する。
 韓国の高速鉄道は、フランスのTGVの技術を導入して整備された。


平昌・江陵への交通アクセス  出典 POCOG


高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

 五輪大会開催中はKTXは大混雑して、列車によっては満員で乗り切れない乗客も現れたという。しかし、五輪終了後はどうなるか、誰もが懸念を抱く。
 KTX京江線の最大の問題点は、沿線人口の少ないことだ。このエリアの最大の都市、江陵市の人口は21万人、平昌郡はわずか4万人、スキーリゾートの山岳の街である。沿線一帯には、大企業の立地もなく主要な産業は見当たらない。しかも海岸部の江陵が終点で、延伸計画もなく、乗客増も見込めない。ちなみに長野冬季五輪で建設した長野新幹線は、北陸まで延伸され、乗客増につながっている。
それでも地元では、高速鉄道の開通を起爆剤にして、これまで韓国国内で最も開発が遅れていた江原道エリアの地域振興に結びつけたいと期待を寄せる。
 しかし、五輪開催のために3兆7597億ウォンという巨費を投じた高速鉄道、赤字路線に転落するのは必至だろう。
 KTXを運行するKORAILの負債が6兆7000億ウォン(約6700億円)にも達し、KTXの施設管理を行う鉄道施設公団の負債約6兆6000億ウォン(約6600億円)とあわせると約13兆3000億ウォン(約1兆3000億円)もの巨額負債を抱えているという。KTXは、建設工事の度重なる延期とそれに伴う事業費の高騰で、建設費が膨れ上がり、今後30年後は黒字化が不可能という予測もされている。
 高速鉄道KTXは「負の遺産」の象徴になりそうだ。


平昌冬季五輪後の競技施設のレガシー・プラニング
 平昌五輪開催地は、大会終了のレガシー・プラン、施設利用計画の概要を明らかにしている。スキーやスケート競技の国内大会や国際大会の開催、練習場、レジャー施設などとして利用する。選手村は、民間企業に売却してリゾートマンションなどとして販売される予定だ。
 しかし、3つの競技場は、未だに大会後の利用計画たてられないままでいる。
 利用計画が決まったにしても、一体、年間何回の競技会が開催され、施設の利用客がどれくらい訪れるのか見通しは明るくない。
 氷点下10度に達する厳しい寒さと激しい北風に包まれるこのエリアの自然条件は、冬期リゾートとして振興させるにはネックとなるだろう。
 平昌五輪で整備された壮大な競技施設の維持・運営経費、補修費は、膨大に上り、長期間に渡って地元自治体の財政を圧迫するのは必至である。
 厳しい寒さ覆われる中で、誰もいないゲレンデや競技コースが、寂しく林立する光景が目に見えている。




平昌五輪競技場・施設の利用計画
出典 POCOG / Architecture of the Games PyeongChang2018 / 東亜日報

準備完了 平昌冬季五輪五輪会場 YTN NEWS
YTN/Youtube

空から見た平昌冬季五輪会場 KBS NEWS
KBC/Youtube

The Buildings of the Winter Olympics: PyeongChang 2018
B1M/Youtube


平昌マウンテン・クラスター(PyeongChang Mountain Cluster:ピョンチャン・マウンテン・クラスター)



平昌オリンピック・パーク   出典 POCOG


PyeongChang Olympic Stadium(平昌オリンピック・スタジアム)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Opening and Closing ceremonies
Paralympic Games: Opening and Closing ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Capacity: 35,000 Seats
建設費:1477億ウォン(約147億円)
五輪後の利用計画:オリンピック・メモリアル・ホール


平昌オリンピック・スタジアムで行われた開会式  出典 IOC


PyeongChang Medal Plaza(平昌メダル・プラザ)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Medal ceremonies
Paralympic Games: Medal ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Size: 1,267 square meters


平昌メダル・プラザ  出典 IOC


Alpensia Ski Jumping Centre(アルペンジア・スキージャンプ・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Ski Jumping, Nordic Combined, Snowboard (Big Air)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 2009
Renovated: 2015-2017
Capacity: 11,000 Seats + 2,500 Standing
Slopes for Competitions: LH (125m), NH (98m)
Slopes for Practice: K60, K35, K15
五輪大会後の利用計画:国内大会、国際大会などのスポーツイベントの開催 国内の選手のトレーニング施設 公共レジャー施設 観光やイベント開催施設
五輪後の運営:




Alpensia Sliding Centre(アルペンジア・スライディング・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Bobsleigh, Skeleton, Luge
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2013-2017
Capacity: 1,000 Seats + 6,000 Standing
Course Length: 1,376.38m (Bobsleigh / Skeleton) / 1,344.08m (Luge Men) / 1,201.82m (Luge Women / Double)
Altitude Difference: 116.32m (Bobsleigh / Skeleton) / 117.12m (Luge Men) / 95.62m (Luge Women / Double)
Average Slope: 9.48% (Bobsleigh / Skeleton) / 9.69% (Luge Men) / 8.97% (Luge Women / Double)
建設費:1144億ウォン(約114億円)

五輪後の利用計画:国内・海外の選手のトレーニング施設 カリキュラムと連動した学生のスポーツ体験施設、観光やレジャー目的の体験施設
五輪後の運営:韓国国立スポーツ大学



PyeongChang 2018 Sliding Center
PyeongChang2018/Youtube


Alpensia Cross-Country Centre(アルペンジア・クロスカントリー・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Cross-Country Skiing, Nordic Combined
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2009, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 3.75km / 3.3km / 2.5km / 2km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 54m (751m~805m)

五輪大会後の利用計画:国内大会、国際大会などのスポーツイベントの開催 国内の選手のトレーニング施設 公共レジャー施設 観光やイベント開催施設
五輪後の運営:江原道開発公社



Ready to Go! #Alpensia Cross-Country Skiing Centre / Alpensia Biathlon Centre
IOC/Youtube

Alpensia Biathlon Centre(アルペンジア・バイアスロン・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Biathlon
Paralympic sports: Para Biathlon, Para Cross-Country Skiing
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2007, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 4km / 3.3km / 3km / 2.5km / 2km / 1.5km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 47m (749m~796m)
Shooting Range: 82.5 × 50m

五輪大会後の利用計画:国内大会、国際大会などのスポーツイベントの開催 国内の選手のトレーニング施設 公共レジャー施設 観光やイベント開催施設
五輪後の運営:江原道開発公社



Alpensia Biathlon Centre | Venues at the PyeongChang 2018
IOC/Youtube


Phoenix Snow Park (P,C)(Bokwang Snow Park:フェニックス スノーパーク:普光スノーパーク)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Freestyle Skiing, Snowboard
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1995
Renovated: 2015-2017
Capacity: 10,200 Seats + 7,800 Standing

五輪後の利用計画:既存の他のコースと補完・共存する付属施設 難易度に合わせて一般に開放
五輪後の運営:フェニックス・スノーパーク







Ready to Go! #Phoenix Snow Park
PyeongChang2018


Yongpyong Alpine Centre(ヨンピョン・アルペン・センター:龍平リゾート)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Slalom & Giant Slalom)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2016-2017
Capacity: 2,500 Seats + 3,500 Standing

五輪後の利用計画:スキー・リゾート施設 他の施設の付属施設
五輪後の運営:龍平リゾート 




Jeongseon Alpine Centre(チョンソン・アルペン・センター:旌善アルペン・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Downhill, Super G & Combined)
Paralympic sports: Para Alpine Skiing, Para Snowboard
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 3,600 Seats + 2,900 Standing

建設費:2064億ウォン(約206億円)
五輪後の利用計画:観光レジャー施設(検討中) 環境アセスメントを実施し55%以上を自然林に戻すことを検討
五輪後の運営:検討中



Jeongseon Alpine Centre | PyeongChang 2018 Games
PyeongChang2018



江陵コースタル・クラスター(Gangneung Coastal Cluster:カンヌン・コースタル・クラスター)







Gangneung Hockey Centre(カンヌン・ホッケー・センター:江陵ホッケー・センター)

Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: Ice Sledge Hockey
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 10,000

建設費:1123億ウォン(約112億円)
五輪後の利用計画:大会開催・練習施設 文化イベント・コンサートホール施設
五輪後の運営:検討中




Gangneung Oval(カンヌン・オーバル:江陵オーバル)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Speed Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 8,000

建設費:1324億ウォン(約133億円)
五輪後の利用計画:検討中(国内選手の練習場)
五輪後の運営:検討中




Gangneung Ice Arena(カンヌン・アイス・アリーナ 江陵アイス・アリーナ)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Short Track Speed Skating, Figure Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2016
Capacity: 12,000

建設費:1340億ウォン(約134億円)
五輪後の利用計画:公共スポーツ施設 多機能施設(文化イベント スポーツセンター スイミングプール)
五輪後の運営:江陵市




Gangneung Curling Centre(カンヌン・カーリング・センター:江陵カーリング・センター)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Curling
Paralympic sports: Wheelchair Curling
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2015-2017
Capacity: 3,500

五輪後の利用計画:多用目的スポーツセンター ユース・クラブ・センター
五輪後の運営:江陵市


Kwandong Hockey Centre(クァンドン・ホッケー・センター:関東ホッケー・センター)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: –
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 6,000

建設費:627億ウォン(約63億円)
五輪後の利用計画:カトリック関東大学校の教授オフイスやレクチャールーム 多目的スポーツやレジャー施設
五輪後の運営:カトリック関東大学校




その他の施設の利用計画

平昌選手村(PyeongChang Olympic & Paralympic Village)
五輪後の利用計画:民間企業に住居として売却 2018年内に入居開始
売却先:龍平リゾート




江陵選手村(Gangneung Olympic & Paralympic Village)
五輪後の利用計画:民間企業に住居として売却 2018年内に入居開始
売却先:韓国土地建物不動産




江陵メディア・ホテル(Gangneung Media Village)
五輪後の利用計画:民間企業に売却 2018年内に入居開始
売却先:韓国土地建物不動産








★ 2018平昌冬季五輪
平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至

★ レガシー(未来への遺産) 負の遺産
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
ロンドン五輪 東京五輪への教訓 ~周到に準備されたロンドン五輪レガシー戦略~~
新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?
“迷走”海の森水上競技場 深刻“負の遺産”





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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平昌五輪 4K NBC HDR NHK 8K OBS

2022年01月19日 12時51分16秒 | 4K8K
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC



北京冬季五輪最新情報はこちら
深層情報 北京冬季五輪2022 競技会場 国際放送センター(IBC)・4K8K 5G ・高速新幹線 最新情報




 NBCユニバーサルは、平昌冬季五輪の開会式や、アイスホッケー、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)の4K HDRコンテンツを、一日遅れでケーブルテレビや衛星放送、インターネットでサービスする。
 2月10日から2月26日まで、毎日、一日最大4つのイベントが全米の視聴者に届けられる。



 NBCユニバーサルが、五輪競技映像をUHD(4K HDR)で全米で配信するのは五輪史上、初めてで、臨場感あふれた繊細画質、UHD(4K HDR)映像サービスを、ケーブルテレビや衛星放送を通して視聴者に届けられる。
 リオデジャネイロ五輪では、ホストブロードキャスターのOBSは五輪競技中継4K映像をライツホルダーに初めて配信したが、NBCユニバーサルは4K映像・音声信号は技術的な検証・テストを行うとして、一般の視聴者サービスまでは実施しなかった。 
 NBCユニバーサルの五輪映像は、従来通りHD画質で配信し、地上波放送局やケーブルテレビ、衛星放送、インターネットでサービスされた。
平昌冬季五輪では、NBCユニバーサルは、OBSが配信した4K HDの競技映像を、使用し、で一括して4K HD五輪特別番組を制作した。
4K HD五輪コンテンツは、ケーブルテレビ・サービスを行っているComcast、AT&Tの一部門全米第一で2100万件の契約者がいるDirecTV、全米第二位で約1300万件の契約者を抱えるDish Networkに提供され、競技開催から“1日遅れ”で放送された。HDで放送されるチャンネル・サービスに影響を与えないように配慮したと思われる。
 視聴者が4K HDRコンテンツを楽しむためには、ケーブルテレビや衛星放送プロバイダーと契約し、各社専用の4K HDRセットボックスを設置して、4K HDR対応のテレビ受像機を購入しなければならない。
 スポーツ中継はライブが基本、1日遅れでサービスする4K HDRは、臨場感あふれた高品質の映像が売り物にしても、魅力的なコンテンツにはならないだろう。競技の結果を知ってからから見るスポーツ中継は、醍醐味がない。全米で平昌冬季五輪を4K HDRで視聴した人は極めて限定的だと思える。

脚踏み状態が続く米国内の4Kサービス
 ケーブルテレビのComvastや、米国では地上波には4K放送の計画なし、コムキャストや衛星放送のDirecTV 、Dish Networkは4Kサービスに積極的だが、テレビ放送サービスのABC、CBS、NBSの三大ネットワークは、4Kサービスに乗り出す計画を明らかにしていない。これに対し、OTTサービスのNetflixやAmazonTVやYutubeなどインターネットを利用するコンテンツ・プロバーダーは4Kサービスに積極的で4Kサービスを開始している。
米国では、SD画質の映像からHD画質への移行が、日本に比べてゆっくりしたスピードで進み、放送機関はHD化の設備投資がようやく終わり、各家庭にもHDテレビ浸透した段階だとされている。
 その一方で、NetflixやAmazonTVなどのOTTサービスに押されて、“放送離れ”が深刻になり、各放送機関の視聴率と広告売り上げが減少していくという危機感が生れている。こうした状況の中で、各放送機関は、もう一度、4Kサービスに乗り出すために、カメラを買い替えたり、放送設備の更新したりする4K投資をしても、広告や配信料などの収入は増える見込みはほとんどないとしている。
 “HD化”の際も、各放送機関はHD化投資の重荷を背負い経営難に苦しんだことを忘れていはいない。
各放送機関のスタンスは、4Kが十分に視聴者に普及するまでは4K放送を始める計画はないし、直ぐに4Kが普及するとは考えらず、現時点では4Kへの投資の負担は見合わないとしている。4Kコンテンツの配信をする帯域が十分あるCATVや衛星テレビが先行して4Kサービスを開始して、十分4K 視聴者を増やすことに成功してからでも遅くはない。その時にK4サービスに見合う配信料(ケーブルテレビや衛星放送)の値上げをしてくれたら、4K投資は採算に合うとする姿勢なのである。
 米国では、2010年に華々しく登場した3Dテレビが、地上波テレビ放送局も巻き込んで次世代のテレビとして旋風を巻き起こしたが、結局、わずか2年足らずで放送中止に追い込まれ、大量の3Dテレビが家庭に残されたという“失態”演じられた。
4Kテレビの普及にもこの“失態”が後遺症として残っている懸念も指摘されている。


DIRECTV 4K ULTRA HDのHP
エンタテインメント、ドキュメンタリー、旅番組を始め、4Kスポーツ中継では、NCAA Basketball,Ntional Hockey Assosiation,Premier League Soccer(イギリス)などをサービスする


平昌冬季五輪 IBC(国際放送センター)    出典 SVG


平昌冬季五輪 IBC(国際放送センター)CDR   出典 SVG

初めてUHD(4K)の映像制作に乗り出したOBS
 平昌冬季五輪で、OBSは初めて、4K中継車を配置して、アイスホッケー、カーリングフリースタイル(モーグル)、スノーボード(ハーフパイプ)の4つの競技と閉会式の4K SDRのライブ中継を実施する。
 これに対し、NHKは8K HDR中継車2台、22.2サラウンド音声中継車2台を、平昌の五輪会場に送り込み、開会式、フィギアスケート、ショートトラック、スキージャンプ、スノーボード(ビックエア)を、それぞれ10台の8K中継カメラを配置して、合計90時間の8K HDR、22.2サラウンド音声のライブ中継を実施する。
 NHKが中継した8K HDR映像・音声は、OBSがIBCで4K HDRにダウンコンバートして、ホスト映像として配信された。
 また、8K HDR映像は、4K SDRに変換して、OBSが制作した4K SDR映像・音声信号と共に、ライツホルダーにホスト映像として配信された。
 8K HDRは、現在の技術水準で実現できる世界最高のクォーリティを誇り、その臨場感あふれる繊細な映像は4Kをはるかに凌ぐ圧倒的な迫力がある。
 NHKはIBCの中に350インチの8K HDR大スクリーンを設置した“8K Theater”を設け、世界のメディアに8K HDR映像の素晴らしさをアピールしている。
 IBCで配信された8K HDR映像を、NHKはこれを日本に伝送し、昨年開始した8K試験放送(衛星放送)で、OBSが制作した4K競技映像(4K SDR)と共に放送した。
 また、全国のNHKの放送局や全国5か所の会場でパブリック・ビューイングを開催して、8K HDR映像の迫力を視聴者に実感してもらった。
 ただし、家庭用の8K専用の衛星チューナーや受像機はまだ市販されていないため一般の家庭では視聴できない。
 NHK以外のライツホルダーで、8K HDRを視聴者サービスに利用した放送機関はなかったが、いくつかの放送機関は調査・研究目的で8Kコンテンツの配信を受けて、2020年の東京五輪では、8Kシネマやパブリック・ビューイング・サービスの検討を始めていると伝えられている。
 アメリカのNBCユニバーサルは、ホスト映像として配信された開会式や、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)の4K HDR競技映像を使用して、4K HDRの五輪中継番組を制作し、ケーブルテレビや衛星放送局に配信した。米国内で人気の競技、アイスホッケーについては、OBSが制作した4K SDRコンテンツを、NBCが独自に4K HDRに変換して配信に、視聴者に送り届けたのである。
 勿論、NBCユニバーサルにとっては、ソチ五輪を上回る冬季五輪では最大の2600時間に及ぶHDの五輪映像が主力で、4K HDRサービスは極めて限定的なものに留まっている。
 一方、BBCは、iPlayeでは、すでに自然番組など4Kサービスを開始しているが、平昌冬季五輪の4Kサービスの実施は見送った。ワールドカップ・モスクワ大会でのBBCの対応が注目される。

 結局、OBSは、8K HDR; 4K HDR; 4K SDR; HD1080iの4種類のホスト映像をライツホルダーに配信した。OBSは独自で、小型の4K中継車も使用して、4K SDR中継コンテンツも制作したのである。

 OBS技術責任者のサラムーリス氏は、「世界の放送機関を見ると、日本や韓国などアジアでは4K HDRにシフトしているが、他の地域では視聴者のテレビは、まだSDRが主流である。こうした地域の視聴者は4K SDRが魅力的だろう。しかし、こうした地域でも4K HDRは次世代のメディアとして重要だろう。そこで、すべてのニーズを満たすために、我々はライツホルダーと真剣な議論を行うことが必要だと考えている」と語っている。

8K/4Kの中継コンテンツ制作
 NHKは開会式、フィギアスケート、ショートトラック、スキージャンプ、スノーボード・ビックエアの5競技で8K中継を実施し(HSSM[High Speed Slow Motion]映像は4Kのアップコンバート)、8K HDRコンテンツで制作した。
 フィギアスケートとショートトラックでは、メインの中継カメラとして池上通信機製のSHK-810 8Kカメラが使用された。
HSSM(High Speed Slow Motion)再生用の中継カメラとしてはSONY 製の2台の4K・8倍速スローモーション映像撮影用カメラ、HDC-4800が使用された。このHSSM映像 は、8Kにアップコンバートされ、SHK-810 8Kカメラの8K映像とミックスされた。8KのHSSM中継カメラも初登場し、NHK技術研究所が開発した8K 120-fps camera のNHK STRL中継カメラ、1台が設置された。
 スキージャンプでは、池上通信機製のSHK-810 8K camerasとHSSM(High Speed Slow Motion)再生用としてSONY 製の4Kカメラ、HDC-4800 カメラが使用された。
 今回のオペレーションに課せられた重要な課題は、8K HDRコンテンツを制作しても、それを放送利用するのはNHKだけで、他の放送機関で、放送コンテンツをしてサービスするところなない。OBSとしては、8K HDRを4K HDRや4K SDRにダウンコンバートして、最終的には4K SDRとして世界各国の視聴者に配信できるように、互換性を持たせた信号フォーマットでオペレーションを行うことが必要だった。 そこで今回のオペレーションでは、NHKとBBCが共同開発したHLG(ハイブリッドログガンマ)HDR規格が採用された。
 NHKはUHD衛星試験放送で、8K HDRと4K SDR(OBS制作の中継コンテンツ)を放送し、NBCユニバーサルは、全米のケーブルテレビや衛星放送に4K HDRを配信した。
 
 2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、あと2年、HDに代わって4Kが主役の座に就くのか、4K HDRと4K SDRはどちらが主流になるのか、8Kは世界にどれだけ浸透するのか、まだまだ不透明だ。


NHK 8K中継車


NHK 8K中継カメラ 出典 SVG

4K HDRサービスを開始したXfinity
 ComcastグループのXfinityは、ケーブルテレビで平昌冬季五輪の4K HDRサービスに乗り出した。
Xfinityは、全米で最大のメディア企業、Comcast社の子会社、ケーブルTV、インターネット、電話のいわゆる“Triple Play”を推進する情報・通信の中核企業である。
 NBCユニバールはComcast社に買収され、2013年3月には、Comcast社の子会社となっている。XfinityはNBCと並んで、Comcast社グループの情報・通信戦略を担っている。
 NBCオリンピックの社長のGary Zenkel氏は、「五輪は常に最先端の放送技術の幕開けを創る。平昌五輪の開会式や競技の4K HDRサービスは、米国内で、高品質のスポーツ番組の実現を示す偉大なショーケースとなるだろう」と語った。
また、Xfinityの副社長のMatthew Strauss氏は、「Xfinityサービスは、スポーツとエンタテインメントで、視聴者が高画質・高音質の映像を体験できる最も強力なツールだ。オリンピックは、息を飲むような圧倒的な感動が得られるスポーツ・イベントである。Xfinityが、NBCユニバーサルと提携して、オリンピック競技を4K HDRを全米で初めて視聴者にサービスすることができることになり光栄だ」と話した。



平昌冬季五輪で、NBCが行う4K HDRサービスは、開会式や、ホッケー、フィギアスケート、ショートトラック、スピードスケート、ジャンプ、スノーボード(ビックエア)などで、2月10日から2月26日まで、競技開催から一日遅れで、毎日最大4つのイベントが視聴者に提供される。
4K HDRの映像は、Xfinityから提供される4K UHDセットボックス X1を設置し、市販の4K HDR対応のテレビ受像機で視聴する。
視聴者は、高画質のHigh-Dynamic Range (HDR) と高音質の Dolby Atmos の三次元音声で、臨場感があふれたコンテンツを楽しむことが可能だ。
XfinityのX1は、双方向・多機能のエンターテインメント・セットボックスで、ライブの放送からXfinityオンディマンド・サービス、さらにNetflixや音楽アプリを一つのセットボックスで利用できる。


Xfinityの4K UHDセットボックス X1(XG1v4 TV Box) 
出典 Xfinity

4K HDR
 4K HDRは、現在のHD(1,920 x 1,080 pixels)の4倍の800万ピクセル(3,840 x 2,160 pixels)の高画質で、さらにWide Color Gamut (WCG)という画像表現技術を利用して、画面で表現可能な色(色域)やコントラスト(輝度)の領域を、これまでより飛躍的に拡張して、より臨場感あふれたクリヤーな映像を視聴者に提供可能にした。
HDRとは“High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)”の頭文字を取ったものである。これまでは、HD(1920×1080)や4K(3,840 x 2,160)といった「解像度」や自然界の色再現を目指した「色域」は性能が飛躍的に向上させたが、HDRは、“明るさ情報”、「輝度」の性能を改善し、表現できるダイナミックレンジを拡張して、高画質化を実現したものである。
ハイダイナミックレンジにより、輝く光の色彩から髪の毛の色まで、明るい部分や暗い部分の映像の明暗や色表現がクリヤーに再現できる。
4K HDRが次の時代の映像フォーマットの主流になるのはかどうかが焦点だ。


出典 情報通信審議会資料







暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か?
5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ

平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至





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2018年2月15日
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
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北京冬季オリンピック 競技場マップ 北京 延慶 張家口 コロナ対策

2022年01月17日 20時36分05秒 | 北京冬季オリンピック
北京冬季オリンピック 最新情報 競技場マップ(北京ゾーン 延慶ゾーン 張家口ゾーン)
国際放送センター(IBC) 4K8K 5G 高速鉄道 人権問題 コロナ対策



以下 出典 Beijing2022


北京ゾーン スピードセンター


延慶ゾーン スライディングセンター


張家口ゾーン ジャンプセンター




北京冬季五輪最新情報ポータルサイト

深層情報 Media Close-up Report 北京冬季五輪2022最新情報 ポータルサイト メインメディアセンター(MMC) 競技会場 人権問題 高速鉄道 4K/8K 5G

深層情報 Media Close-up Report 北京冬季五輪2022 競技会場 最新情報 北京ゾーン

深層情報 Media Close-up Report 北京冬季五輪2022 競技会場 最新情報 延慶ゾーン

深層情報 Media Close-up Report 北京冬季五輪2022 競技会場 最新情報 張家口ゾーン

深層情報 Media Close-up Report 五輪放送オペレーションの拠点 IBC/MPC

深層情報 Media Close-up Report 北京冬季五輪大会は「5G+4K/8K+AI」のショーケース 高速鉄道京張線

深層情報 Media Close-up Report 北京五輪の最大のアキレス権 人権問題 “外交的ボイコット”


国際メディアサービスシステム研究所(IMSSR)




2022年1月1日
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廣谷 徹
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平昌冬季五輪 NBCユニバーサル 2400時間 ケーブルテレビ NBCSN デジタルサービス ライブ中継 プライムタイム 

2022年01月16日 13時11分31秒 | 平昌冬季五輪
平昌冬季五輪
NBCユニバーサルは空前の2400時間以上の五輪番組を放送








NBCのプライム・タイム・スタジオ(平昌IBC内) 出典 SVG PyeongChang2018


NBCの五輪放送 出典 NescastStudio


NBCの五輪放送 出典 NescastStudio


NBCの五輪放送 出典 NescastStudio


NBCの五輪放送 出典 NescastStudio

空前の2400時間の五輪番組に挑んだNBCグループ
 NBCユニバーサルは、傘下にテレビ・ネットワークのNBC、ケーブル・チャンネルのNBCSN(NBC Sport Network)やCNBC、USA NETWORK、デジタル・サービスのNBCOlympics.com and the NBC Sports appを抱えるNBCグループの親会社である。
平昌冬季五輪では、NBCユニバーサルはグループのテレビ・ネットワークやケーブルテレビ、デジタル・プラットフォームを総動員して、冬季五輪では史上最高の合計2400時間の五輪競技映像を視聴者にサービスする。

 さらに注目されるのは、NBCは、平昌冬季五輪で、徹底したライブ中継を重視する作戦に出たことである。
これまでは、海外で開催される五輪大会では、開催地と米国東部時間との時差を考慮して、録画時差再生放送を行ってきたが、毎回、視聴者からは、強い反発を招いていた。
 その方針を平昌冬季五輪では大転換し、初めてNBCやケーブルテレビのプライムタイムで初めてライブ中継放送に挑んだ。
平昌冬季五輪は、海外で開催される五輪大会では、最も“ライブ感”にあふれた五輪放送となった。


米国スタンフォードにあるNBC Olympics Sports Production Operations Center (SPOC) NBCの平昌冬季五輪放送オペレーションの拠点
出典 SVG PyeongChang2018  

テレビ、ケーブル、デジタル・サービスを総動員したNBCグループ
 NBCは大会期間中の18日間連続して、初めて、毎日夜8時(または7時30分)から11時過ぎまでのプライムタイム帯に平昌冬季五輪のライブ中継番組を放送した。
 フィギアスケート、スピードスケート、ショートトラック、アルペン、フリースキー、スノーボード、スキージャンプ、ボブスレー、スケルトン、ルージュの競技がライブ中継で視聴者に提供された。但し開会式と閉会式については、従来通り録画再生時差放送とした。そして午後の時間帯や深夜時間帯には競技中継の再放送を行うことで、総放送時間は176時間に及ぶ。
 NBCユニバーサルのスポーツ専門チャンネル、NBCSN(NBC Sports Network)は、史上最高の368.5時間の五輪映像を放送し、その内、10日間はライブ中継を中心に24時間放送を実施する。
NBCSNでは、NBCと競合するプライムタイムでも、ライブ中継を始めて行った。
 経済ニュースチャンネルのCNBCは、46時間の放送を行い、人気のあるカーリング競技のハイライトをサービスする。
 エンタテインメント・チェンネルのUSA Networkは、カーリングとホッケーなど、合計40.5時間の生中継を放送する。
 NBCユニバーサル傘下の地上波やケーブルを合計した放送時間は631時間で、2014年ソチ冬期五輪の541時間を大きく上回った
 デジタル・サービスでは、NBCOlympics.com や NBC Sports appが、ケーブルテレビで放送するすべての番組のサイマル・ライブ・ストリーミングを中心に、放送しない競技も含めてすべての五輪競技を始めてサービスする。さらにオインラインのオリジナル・コンテンツを毎日2時間程度加えて、合計1800時間のサービスを行う。
 ソチ冬期五輪のインターネット・サービスは1000時間、平昌冬季五輪の対応は、ソチ冬季五輪を大幅に上回り史上最高となる。

競技開始時間は午前中に設定
 このNBCの“ライブ戦略”の下で、平昌冬季五輪の競技開始時間は、米国との時差(東海岸で14時間)を考慮した時間に設定された。
 米国内で人気のあるフィギアスケートは、午前10時開始、午後2時終了で、ニューヨークのプライムに合わせて競技スケジュールが設定されている。カーリングやスノーボード(ハーフパイプ)も午前10時開始で、午前に行われる競技が急増した。しかし、午前中の競技開始は、選手のコンディション調整の負担が大きく、他の大会では行われない異例の対応だ。
ちなみに、ジャンプ競技は、ヨーロッパの時間に合わせて夜10時過ぎからに競技時間が設定され、暗闇の夜空をバックに選手がジャンプすることになった。
2020東京夏季五輪では、東京と米国東海岸との時差は13時間(夏時間)、NBCのプライムタイムに合わせて、午前11時開始の競技が続出すると思われる。屋外で開催される種目については、まさに選手や観客の暑さ対策が問題になるのは間違いない。マラソン、競歩、自転車、トライアスロン、協議開始時間は何時に設定されるのかが焦点だ。


夜空を背景に選手がジャンプしたスキージャンプ競技  出典 Gorin.jp


NBCSN

2018年2月7日、平昌冬季五輪の前日に、カーリングのミックスダブルスのライブ中継をサービスし、ライブ中継やハイライト番組を開始する。
・ 合計368.5時間の放送を行い、230時間を放送したソチ冬期五輪の約60%増となる。
・ 24時間放送を10日間実施し、2月18日から25日の間に156時間の連続放送を行う。
・ 五輪では初めて、プライムタイムでのライブ中継を毎晩放送する。
・ バイアスロン、ボブスレー、クロスカントリー、ルージュ、ノルディック複合、スートトラック、スキージャンプ、スノーボード、スピードスケートの決勝はライブで放送する

CNBC
 CNBC は、NBCユニバーサルのケーブルテレビのビジネスチャンネルである。CNBCは、46時間のカーリング、ホッケーを2月12日から2月23日の12日間、放送する。
・ CNBCのカーリング中継は、夕方5時から8時まで、2月12日から23日まで(2月18日の日曜日は夕方4時から7時まで)放送する。
・ CNBCは、2月13日にカーリングのミックスダブルスの決勝戦を放送する。
男女のホッケー試合をプライムタイムの夜10時から12時30分まで、2月14日から16日までと2月20日に放送する。

USA NETWORK
 USA Networkは、NBCユニバーサルが放送するケーブルのエンタテインメント・チャンネルである。合計40.5時間のホッケーとカーリングの中継を、ほとんどをライブで放送する。
• USA Networkの放送は2月10日から女子ホッケーから始まる
• 男女ホッケーの準々決勝や女子三位決定戦を2月21日に放送する。
• 放送時間は、午前7時から9時30分の朝の時間帯である。何日間かは午前2時30分から9時30分に放送する。

インターネット・サービスのNBC Olympics.com や NBC Sports app
 視聴者の誰もがNBCグループの五輪インターネット・サービスで楽しむことができるわけではない。
 インターネット・サービスを見るためには、ケーブルテレビか衛星放送のPay-TV加入者番号を入力する必要がある。番号入力のいらない30分の「お試し無料視聴」も設けて、NBCユニバーサルのケーブルや衛星放送などのPay-TVの五輪チャンネルへ誘導しようという戦略なのである。
 これに対して日本国内で行われているNHKの五輪インターネット・サービスや民放のGorin.jpは、誰でもがサービスを受けることがでる。
 NBC Olympics.com や NBC Sports appのサービスはNBCグループのビジネス戦略の一環なのである。
 米国ではオンライン・ライブストリーミングの視聴者は、約40パーセントがネットに接続したテレビ(スマートテレビ)で見ているとされている。
 NBCでは、今回初めて、スマートテレビへのサービスを開始し、AmazonFireTVやApple TV,、Chromecast,、Roku,、Win10,、Comcast X1, Samsungのテレビ(機種は限定)を通じて、視聴者は1800時間の五輪コンテンツを楽しむことが可能になった。
 NBCは、2016年のリオ五輪では、約12億ドル(約1320億円)のコマーシャル収入を獲得したが、その約10パーセントがオンライン・サービスからのの収入だったとしている。平昌冬季五輪では、デジタルコンテンツ・サービスの拡充に全力を上げて、テレビを含めた全体の視聴者数の底上げを図り、デジタル・サービスでのコマーシャル収入増を達成しようとする戦略だ。

 NBC ports appでは、約300人のスタッフをデジタル専用に配置し、初めて全競技のライブストリーミング・サービスに挑む。
 またオンデマンド・サービス(VOD)のライブラリーも設けて、競技のハイライトや中継のリプレイを始め、テレビでは伝えない選手の表情や、選手のプロフィール、トピックス、オリジナル制作コンテンツなどを、VODで楽しむことができるサービスもおこなう。
 アルペン競技やフィギアスケートなどの主要な競技は、“Behind-the-scenes conten”と名付け、アルペンスキーにではスタート・ゲートの中の選手やスタート直前の選手の表情、フィギアスケートでは練習場の選手や得点を待つ選手の表情などを、ライブ中継の画面の隅に小さなウインドーを設け提供する。
 “The fact cards”では、選手の顔の似顔絵や経歴を提供する。
 “Team USA tracker”では、次に登場するUSAの選手のプロフィールを提供するUSAの選手の応援サイトである。この他、Olympic trivia(五輪あれこれ雑学情報)、競技の順位や記録などがもサービスされる。
 また毎日2時間規模のデジタル配信の独自コンテンツも制作する予定で、人気競技を中心に、その日の競技のハイライトや五輪関連トピックスで構成した“Gold Zone”や “Olympic Ice”、 “Off the Post.”の3つのコンテンツをすべてのタイムゾーンでサービスする。
 さらにNBCはSocial mediaとの連携をさらに強化した。今回もBuzzfeedやSnapchatに、若者向けの五輪関連のショート番組を制作・提供したり、Facebookではさまざまな動画コンテンツを流したり、TwitterやYouTubeに投稿したりして、五輪情報を展開するとしている。
 リオデジャネイロ五輪では「#Rio2016」というハッシュタグのツイートが1億8700万もあり、合計で750億回も読まれ、Facebookでのインタラクション数は15億回に達し、NBCのリオ五輪の特設ページだけでも6億回を超える動画の視聴があった。Snapchatでは3,500万人が22億個のスナップを閲覧している。
 平昌冬季五輪では、こうした数字が大幅に増加すると予想されている。五輪大会がソシャルメディア上で話題になって、NBCネットワークやケーブルテレビや衛星放送などのPay TV視聴者増に跳ね返り、視聴契約収入や広告収入に結びつけたいというのがNBCユニバーサルの戦略だろう。
 NBCスポーツ・グループの責任者は「メディアの状況は変化している。視聴者はあらゆる種類のデバイスで競技を楽しみたいと考えている」と語っている。


出典 NBC Sports Apps HP

開会式で躓いた視聴率
 平昌冬季五輪の開会式は、2月9日の夜8時から、平昌のオリンピック・スタジアムで行われたが、NBCでは開会式の中継録画を、プライムタイムの夜8時から11時02分の約2時間に渡って、再生時差放送で行った。
 NBCは、1992年以来、開会式と閉会式は録画時差再生で放送している。
 ニールセンの調査によると、開会式中継の世帯別視聴率は16.9%、出足から低迷し、五輪放送の視聴率低下に歯止めをかけることはできなかった。
2014ソチ冬季五輪の開会式の視聴率は18.5%で、今回の開会式はソチ冬季五輪に比べて8.6%も下落した。
開会式の中継は、1992以来、録画時差再生で行われているが、平昌冬季五輪は1994リリハンメル冬期五輪の3380万人、2014ソチ冬季五輪の3170万人に次いで、第3位を占めた
 また視聴占拠率は、平昌冬季五輪で29%、ソチ冬季五輪で30%とほぼ同じで、競争相手のテレビ局に圧勝し、五輪コンテンツの威力は健在だった。
 ちなみに2016リオデジャネイロ夏季五輪の開会式の視聴率は、16.5%を記録した。夏季五輪では1992年以来最低の視聴者だった。
しかし、米国のメディア専門家の中には、平昌冬季五輪の開会式の視聴率は、テレビ局間の激しい視聴率競争や急激に進行しているテレビ離れの中では、健闘したとする見方も出ている。
 NBCの会長、マーク・ラザス氏は、「開会式はすばらしいショーだった。17日間に渡って繰り広げられる競技への興奮を巻き起こすのに最適の演出だ。 開会式の中継の結果は、当社の多様な複数プラットフォームで展開しているメディア戦略の正しさを示したものだ」と胸を張った。


平昌冬季五輪開会式  出典 PyeongChang2018

NBCは独自に視聴者数を算出
 NBCでは、ニールセンの視聴率調査とは別に、Total Audience Delivery (TAD)という独自の手法を用い、NBCグループのテレビ放送のNBC、ケーブルテレビのNBCSN(NBC Sport Network)とNBCOlympics.com and the NBC Sports appのデジタル・サービスを合わせて、五輪コンテンツを全米で何人が見たかを推定し、その視聴者総数(放送時間帯の平均値)を公表している。
 TADの基礎になるデータはNielsenによるテレビ視聴率調査とAdobe Analyticsのデジタル・データである。
Total Audience Delivery (TAD)によると、平昌冬季五輪の開会式の視聴者数は2830万人、2014ソチ冬季五輪の3170万人に比べて、今回は約11%も下落した。
 この内、テレビでNBCとNBCSNを見た人は2780万人、一方、NBCOlympics.com and the NBC Sports appのデジタル・サービスをスマートフォンやタブレット、スマートテレビなどで見た視聴者は、44万9000人(average minute audience)だった算出している。
 NBCによると、2016リオデジャネイロ夏季五輪の開会式のデジタル・サービスの視聴者数は、18万1000万人で、今回は約2倍に急増しているという。
ちなみにソチ冬季五輪では、ライブ・ストリーミングは実施していなかった。
 テレビ放送の視聴率が低迷し、デジタル・サービスは急成長している中で、NBCはデジタル・サービスの視聴者数を可能な限り算定して、五輪の“視聴率”として反映させ、マルチプラットフォーム時代の“視聴率”として定着させる戦略だ。
 視聴者数減少のダメージを避けようとするNBCの目論見が秘められている。

空前のデジタル・サービスに挑んだNBC
 テレビの視聴率はソチ冬季五輪から8%も下落したが、デジタル・サービスは快進撃を続けている。
 NBCによると、平昌冬季五輪のライブ・ストリーミング・サービスのユニーク・ビューは、1390万人で、2012ソチ冬季五輪の630万人に比べて倍増したとしている。
 デジタル映像サービスが行われたプラットフォームは、NBC Olympics.comとNBC Sports app、NBC SPORTS SCORES appやSnapchat, Uberで、デスクトップ、スマートフォン、タブレット、スマートテレビに向けて、合計1800時間という空前のストリーミング・サービスを行われた。ソチ冬季五輪の1000時間の約2倍に激増した。
 そのサービスのほとんどがライブ・スリーミングで行うという徹底した“ライブ戦略”だった。
ちなみに2014ソチ冬季五輪では、ライブ・ストリーミングは、NBCの録画時差再生放送への影響を懸念して、実施していない。配信された五輪コンテンツは、NBCやNBCSN、CNBC、USA NETWORのケーブルテレビで放送されるライブ中継のサイマル・ストリーミングを始め、テレビでは放送しない競技も加え、初めて五輪大会の全競技のライブ・ストリーミング配信に挑んだ。また、スマートテレビへのサービスも初めておこなった。
 NBC SPORTS SCORES appは競技結果を中心に配信し、若者人気のあるSnapchatは、競技のライブ・クリップを、Uberは競技ハイライトがサービスされた。
 NBC Olympics.comとNBC Sports appでは、オンデマンド・サービス(VOD)のライブラリーも設けられ、競技のハイライトや中継のリプレイを始め、テレビでは伝えない選手の表情やプロフィール、トピックスなどのサービスもおこなう。
 アルペン競技やフィギアスケートなどの主要な競技では、“Behind-the-scenes conten”と名付け、アルペンスキーにではスタート・ゲートの中の選手やスタート直前の選手の表情、フィギアスケートでは練習場の選手や得点を待つ選手の表情などを、ライブ中継の画面の隅に小さなウインドーを設け提供する。
 “The fact cards”では、選手の顔の似顔絵や経歴を提供する。
 “Team USA tracker”では、次に登場するUSAの選手のプロフィールを提供するUSAの選手の応援サイトである。
 この他、“Olympic trivia”(五輪あれこれ雑学情報)、競技の順位や記録などがサービスされる。
 毎日2時間規模のデジタル配信の独自コンテンツも制作し、人気競技を中心に、その日の競技のハイライトや五輪関連トピックスで構成した“Gold Zone”や “Olympic Ice”、 “Off the Post.”の3つのコンテンツをすべてのタイムゾーンでサービスする。
 こうしたオペレーションを行うために、NBC Sports appでは、約300人の専従スタッフを配置した。
 また、こうしたデジタル・コンテンツの配信はNBC Sports’ Playmaker Mediaが一元的に管理した。

 2月18日日曜日、NBCOlympics.comとNBC Sports app では、ユーザーのストリーミング・ダウンロード総時間数は、ソチ冬期五輪の4億2000万分の約3倍にあたる13億1000万分という驚異的な数字を記録した。さらに、同じ日のユニーク・ビューは、1,160万人を記録し、ソチ冬期五輪に比べて174%増となった。


NBC Stmford デジタル・オペレーション・コントロールルーム 出典 SVG


デジタル・サービスが好調な原因は何か
 デジタル視聴者がこの4年間で激増した要因は何だろうか。
 インターネットに接続して、デジタル映像サービスを視聴できるスマートテレビの登場であろう。
Netflix、Fulu、Apple TV、Amazon TV、YouTubeなどのデジタル映像サービス(OTTサービス)がテレビの画面で見ることができるようになった。Rokuやアマゾンの「Fire TV」、グーグルの「Chromecast」、アップルの「Apple TV」などのセットボックスやデバイスがこの4年間で全米の家庭に急速に普及し、視聴者は自宅のテレビ画面で、テレビ見るように、デジタル映像サービスを楽しめるようになった。
平昌冬季五輪では、スマートテレビに、初めて五輪競技のライブ中継をサービスした。
 勿論、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末で、平昌冬季五輪のライブ中継を楽しむ視聴者も飛躍的に増えたが、視聴時間は、スマートテレビに比べて圧倒的に短いという。
 米国ではオンライン・ライブストリーミングの視聴者は、約40パーセントがインターネットに接続したテレビ(スマートテレビ)で視聴されているとされている。
 NBCは、平昌冬季五輪のライブ中継戦略で、テレビ放送、ケーブルテレビ、衛星放送、スマートテレビ、ラップトップ、スマートフォン、タブレットなどあらゆるプラットフォームを総動員した本格的なマルチ・メディア展開を実現させた。

 しかし、NBCグループのデジタル・プラットフォーム・サービスは、視聴者の誰もが楽しむことができるわけではない。
 このサービスを視聴するためには、ケーブルテレビや衛星放送、IPTVなどのPay-TV加入者番号を入力する必要がある。番号入力のいらない30分の「お試し無料視聴」も設けて、Pay-TVの契約に誘導しようという戦略なのである。
 これに対して、日本国内で行われているNHKの五輪インターネット・サービスや民放のGorin.jpは、誰でもがアクセスできるオープンなサービスである。
 NBCOlympics.com や NBC Sports appのサービスはNBCグループのメディア・ビジネス戦略の一環なのである。

それでも止まらない視聴率低下
 2月16日、五輪大会で最初の週末の金曜日、NBCとNBC Sport Networkの視聴率は8%も下がった。
平昌冬季五輪での二つのネットワークのプライムタイムの視聴者は2190万人で、2014ソチ冬期五輪の2370万人に比べて、180万人減少した。
スポンサーが最も注目しているのは、18歳から49歳の年齢層の視聴率だが、平昌冬季五輪ではソチ五輪に比べて、24%の下落と衝撃的な数字を記録した。NBCとNBCSNを合わせた視聴率でも17%の下落となっている。

 2月18日の日曜日のプライムタイムの視聴率は12.0%、視聴者数は2130万人で、2014ソチ冬季五輪から7%減と大幅に下落した。12.0%という視聴率は、1992年以来のすべての五輪放送の視聴率で最低を記録したという。
 ちなみに、NBCだけの視聴率は9.1%で視聴者数は1630万人で、ソチ冬季五輪と比較して25%も下落したという。
 アルペンスキー・滑降でリンゼイ・ボン(Lindsey Vonn)が銅メダル、ミカエラ・シフリンが銀メダルをとって米国中が沸いた2月21日(水曜日)に、NBCとNBCSNがプライムタイムで放送したライブ中継を見た視聴者数は1640万人で、五輪放送の中でワースト2位の記録で、ソチ冬期五輪の同じ日と比べて19%も下落した。NBCだけの視聴者と比較すると30%も下落し、散々な結果に終わった。
 視聴率の下落は、開会式以後も続いたのである。

視聴率低下の要因は、“五輪離れ”でなく“テレビ離れ”
 平昌冬季五輪の視聴者数がソチ五輪より減少した原因について、メディアの専門家は、構造的なテレビ離れが大きな原因で、五輪放送に問題が起きているわけではないとしている。
 むしろ、この4年間の間に起きたテレビを巡る環境変化を考慮すると、平昌冬季五輪放送は「大健闘」したと評価できるとしている。
デジタル・サービスはストリーミングを強化して、放送と同じようにライブで競技を視聴することができるし、ソーシャルメディアは競技結果やメダリストの情報をいつでも入手することができる。五輪中継の視聴者は、テレビの前に、長時間、じっと座って競技結果を待つ必要はなくなったのである。若年層を中心に、テレビは見ないで、デジタル・サービスやソーシャルメディアで五輪コンテンツに接する人が急増しているのが、“テレビ離れ”の要因だろう。
 しかし、デジタル・サービスを評価するのが難しいのは、テレビの視聴者数のように、どれだけ利用されているか、よくわからないことである。
NBCにとって、最大の課題は、デジタル・サービスで、スポンサーを新たに獲得して、収入増に結び付けることだろう。
 リオデジャネイロ五輪では、約12億ドルのスポンサー料の約10%が、デジタル・メディアからの収入だったといわれている。
 平昌冬季五輪で行われた空前の規模のデジタル・サービスで、NBCは、どの程度収入増に結びついたのかが注目される。

五輪の威力はいまだに健在
 それでも、五輪のコンテンツの威力は、まだまだ健在である。
NBCの平昌冬季五輪放送は、二週間に渡ってその日の最高視聴率を手に入れ、競争相手のCBS、ABC、FOXに圧勝した。NBC単独の視聴者数でも、プライムタイムで1日平均で1780万人を獲得し、CBS、ABC、FOX の3局を合計した視聴者数を83%も上回って圧倒した。
2月17日の日曜日のプライムタイムでは、NBC とNBCSNは1800万人の視聴者を獲得したのに対し、競争相手のABC、CBS、FOXは、合計でわずか990万人に留まり、NBCの独断場だった。
 NBCのMark Lazarus氏は「今日のテレビを取り巻く環境では、18日間連続で、プライムタイムで2000万人を越える視聴者を獲得できたことは大成功だ」と語った。
 NBCSNも、ライブ中継を中心にして10日間の24時間連続放送を行い、これまでで最高のペースで月間視聴者数を得ている。2月26日には、1日で76万8000人の視聴者数を記録した。
 NBCグループの五輪サービス、ケーブルテレビとデジタル・サービス時間を大幅に増やすことで、全体のサービス時間を、2600時間に、ソチ冬季五輪に比べて倍増させた。その結果、全体の視聴者数を約11%近くかさ上げしたとしている。
 五輪中継は、まだまだ全米では他に類を見ないキラーコンテンツなのである。
やはり視聴者の減少は、“五輪離れ”ではなく、“テレビ離れ”の進行というテレビというメディアを巡る構造的問題なのである。
それだけに、その解決策を見出すのは難しい。

好調なスポンサー収入
 視聴者数が減少しているにも拘わらず、NBCの五輪放送に関わる収入は好調だ。
 平昌冬季五輪では、すでに9億2000万ドル(約1120億円)の広告料を得ることに成功している。
2014ソチ冬季五輪の8億ドル(約880億円)を1億ドル以上、上回っている。
 NBCは、全米の他のネットワークと同様に、こうしたスポンサー料とケーブルテレビやローカル放送局への再送信料が収入源である。
 再送信料収入は、基本的に安定した収入だが、収入に占める割合は小さい。一方、巨額のスポンサー料収入は環境によって大きく変動する不安定な収入なので、スポンサー料収入の好不調がNBC収益を大きく左右する。
 ちなみにNBCが支払った平昌冬季五輪の放送権は11億ドル(約1210億円)と推定されている。

 過去の3大会のNBCの収支は黒字だった。リオデジャネイロ夏季五輪は史上最高の2億5000万ドル(約275億円)の黒字を達成した。平昌冬季五輪でもNBCは再び巨額の黒字達成を目論んでいる。 視聴率は低迷しても、なお“五輪神話”は、健在だ。
 NBCの親会社、Comsat(CCZ)のCEO、ブライアン・ロバーツ(Brian Roberts)氏は、「我々の長期に渡る五輪の放送権獲得は、すべてのメディアの中で、最も最良の選択だ。五輪大会のコンテンツは、放送からスナップショットまで、膨大でかつ多様な視聴者を引き付けることができる。今、メディアを取り巻く環境が激しく変化をしている。その中で、五輪大会のコンテンツは実に、ほかに見当たらない実にユニークな存在だ」とし、NBC Broadcasting and Sportsの会長のマーク・ラザルス(Mark Lazarus)氏は、「我々はこの巨額の投資に楽観的だ」と語った。

 しかし、NBCの平昌冬季五輪中継では、スポンサーが最も関心を払う18歳から49歳の視聴率が2014ソチ冬季五輪に比べて、24%も減少していることが明らかになった。若者の“テレビ離れ”が急速に進んでいることが明らかになった。
 
 NBCは、こうした若者層の“テレビ離れ”を防ぐために、NBCOlympics.comとNBC Sports appを総動員して、合計1800時間という空前のデジタル・サービス戦略に乗り出した。スマートフォンやタブレットなどで、競技中継を見て、五輪に興味を持ってもらうという作戦だ。 
 もっとも、NBCのデジタル・サービスで、五輪コンテンツを視聴するためには、NBCグループのケーブルテレビや衛星放送、IPTVなどの契約者であることが条件で、誰でもアクセス可能なサービスではない。デジタル・サービス戦略は、テレビ視聴率の低下を防ぐ戦略と連動しているのである。
 しかし、その効果は果たしてどのくらいあるのか、まったく未知数である。

薄氷”の上に立たされたNBC
 NBCにとって最大の問題は、リオデジャネイロ夏季五輪から平昌冬季五輪と続いた視聴率低下傾向が、今後も更に加速する懸念が出始め、五輪の収益性に不安視する見方が出てきたことである。
 五輪放送の視聴率は、毎回、夏季五輪は冬季五輪より高いが、2016リオデジャネイロ五輪は低調に終始した。NBCはスポンサーに約束していた視聴率が獲得できなかったため、無償のボーナス広告枠をスポンサーに提供したと伝えられている。
今回の五輪放送に巨額のスポンサー料を支払った企業は、平昌冬季五輪の視聴率低迷にどのように反応するのだろうか。

 2020年東京都オリンピック・パラリンピックまで、後、2年余りになった。
NBCは今回の平昌冬季五輪で、テレビ、ケーブル、衛星放送、デジタル・プラットフォーム、ソーシャルメディア、あらゆるメディアを総動員して2400時間という空前の五輪コンテンツ・サービスを行った。NBCグループの総力を出し切った今回のオペレーションでも十分な成果は上がらなかったという印象が拭えない。
2020東京都オリンピック・パラリンピックで、NBCはさらに打つ手は残っているのだろうか。




平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)

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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2018年2月11日
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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平昌冬季五輪 韓国高速鉄道 KTX 韓国新幹線 赤字路線

2022年01月16日 13時10分42秒 | 平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至





高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

 平昌冬季五輪開催に合わせて、競技会場エリアとソウルや仁川国際空港と結ぶ路線、韓国高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線(キョンガン)が開通した。
最速列車、特急「ダリアン」は、首都ソウルから平昌までを、約1時間30分、仁川国際空港から終点の江陵までを約2時間50分で結び、五輪大会の観客や選手、大会関係者の輸送の主役を担う。
 開会式や閉会式が行われるオリンピック・スタジアムや、アルペン競技場、アイススケート競技場は、韓国北東部の江原道(カンウォンド)の平昌や東海岸の江陵(カンヌン)市に立地している。この地域は首都ソウルからの交通の便が悪く、“陸の孤島”とされてきた。高速バスに乗車すると約3時間半、在来線では山岳部を避けて南へ大きく迂回し、海岸線を北上するため5時間以上かかった。日帰りするには難しい地域で、五輪開催にあたって、この地域のアクセスの改善は重要な課題だった。
 韓国政府は、これを解決するために、高速鉄道、KTX(Korea Train eXpress)の建設を決めた。工事は2012年6月に着工し、5年半余りの工期をかけて、2017年12月に完成、ソウルと江陵間が開業した。総事業費、3兆7597億ウォン(約3800億円)が投じられた。
 韓国大統領府関係者は「平昌五輪は冬季五輪では過去最大の国・地域が参加する。最大の五輪を最高の五輪にしようと新線をつくった」と語っている。


出典 PyeongChang2018

 KTX京江線はソウル駅を起点に、約半分の区間は在来線を利用し、万鍾の手前で新たに建設された高速新線に入る。新線の延長区間は約120km、江陵付近の一部のみ単線だが、その他は全線複線で、万鍾、横城、屯内、平昌、珍富(五臺山)、江陵の6駅が新設された。
 珍富(五臺山)駅は、オリンピック・スタジアムやアルペン、ジャンプ、スノーボードの競技場の最寄り駅で、江陵駅の近くには、アイスアリーナ、スピードスケート場、ホッケー場がある。大会開催期間中は、江陵駅は1日、2万人余りの乗降客でにぎわったという。
 2018年1月18日には、仁川国際空港第2ターミナルにKTXの駅が完成し、仁川国際空港から江陵までの全長277.91kmが開通し、韓国で初めて東西を結ぶ高速鉄道が整備された。
 2月1日からは仁川国際空港駅発が16本、ソウル駅発が10本など1日に上下各51本の列車を運行し、片道約4万人の旅客輸送が可能になるという。
 運賃は、ソウル―江陵間は一般席で2万7600ウォン(約2800円)、仁川空港からでも4万700ウォン(約4700円)で、駅から各競技場へのシャトルバスにも乗車できる。
運行車両は、2009年より導入された現代ロテム社製の「KTX ―山川」(サンチョン)の改良形で、10両編成の列車が15編成投入された。最高時速250kmで運転する。
 韓国の高速鉄道は、フランスのTGVの技術を導入して整備された。
 客車は特室(1等)1両、一般室(普通車)7両で、定員は408名、8号車の一般室のみ自由席で、それ以外は指定席車となっている
初代車両のKTX-1は座席が固定式で間隔も狭かったが、KTX ―山川では座席の方向転換も可能となり、座席の間隔も広くなってゆったり座れるようになった。
 パラリンピック期間中は、障害者用の座席を1編成あたり74席と通常の約15倍に増やす。
 すべての座席にFree Wi-Fiや電源コンセントが完備され、天井の液晶モニターで各種の情報や停車駅案内などが英語と日本語で表示される。
 走行中の揺れも少なく、乗り心地は快適だという。


高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

仁川空港から平昌までKTX開通
KBS NEWS 2017-12-21/Youtube

仁川空港から平昌まで選手団と走る
YTN NEWS 2017-1207/Youtube

先端技術の結集 KTX
YTN SCIENCE 2017/12/04/Youtube


 五輪大会開催中は、KTXは大混雑して、列車によっては満員で乗り切れない乗客も現れたという。
 しかし、五輪終了後はどうなるか、誰もが懸念を抱く。
 KTX京江線の最大の問題点は、沿線人口の少ないことだ。このエリアの最大の都市、江陵市の人口は21万人、平昌郡はわずか4万人、スキーリゾートの山岳の街である。沿線一帯には、大企業の立地もなく主要な産業は見当たらない。しかも海岸部の江陵が終点で、延伸計画もなく、乗客増も見込めない。ちなみに長野冬季五輪で建設した長野新幹線は、北陸まで延伸され、乗客増につながっている。
それでも地元では、高速鉄道の開通を起爆剤にして、これまで韓国国内で最も開発が遅れていた江原道エリアの地域振興に結びつけたいと期待を寄せる。
 しかし、五輪開催のために3兆7597億ウォンという巨費を投じた高速鉄道、赤字路線に転落するのは必至だろう。
 KTXを運行するKORAILの負債が6兆7000億ウォン(約6700億円)にも達し、KTXの施設管理を行う鉄道施設公団の負債約6兆6000億ウォン(約6600億円)とあわせると約13兆3000億ウォン(約1兆3000億円)もの巨額負債を抱えているという。KTXは、建設工事の度重なる延期とそれに伴う事業費の高騰で、建設費が膨れ上がり、今後30年後は黒字化が不可能という予測もされている。
 高速鉄道KTXは「負の遺産」の象徴になりそうだ。






平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪





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平昌五輪 競技場 競技会場 最新情報 平昌オリンピック Mountain Cluster Coastal Cluster

2022年01月16日 13時08分42秒 | 平昌冬季五輪
平昌冬季五輪 競技場の全貌
~Mountain ClusterとCoastal Cluster~


北京冬季五輪最新情報はこちら
深層情報 北京冬季五輪2022 競技会場 国際放送センター(IBC)・4K8K 5G ・高速新幹線 最新情報


オリンピック・スタジアムで開催された平昌冬季五輪開会式 出典 POCOG


平昌冬季五輪開会式 聖火を点灯するキム・ヨナ 出典 POCOG


平昌冬季五輪開会式イベント 出典 POCOG




三度目の挑戦で成功 平昌冬季五輪

 首都ソウルから東に約130キロ、韓国の北東部に位置する平昌は、2003年大会と2007年大会に立候補したが失敗し、2011年大会にようやく誘致に成功した。
 平昌が属する江原道(Gangwon-do)は、日本でも大人気となり、“韓ドラ”のシンボルとなった「冬のソナタ」の撮影地になったことで知られている。
 平昌は、ジャガイモやソバの畑が広がる豊かな自然に包まれた山麓地域で、夏は避暑地、冬はスキーリゾートとして韓国国内から多くの観光客が訪れる。ソウルからは高速バスで約3時間、2017年末にはソウルと江陵を結ぶ高速鉄道KTX(Korea Train eXpress)が開通し、今年初めからは仁川(Incheon)国際空港と競技会場エリアを約2時間で結ぶ列車の運行が始まった。
 韓国は、平昌五輪の開催で、、1988年のソウルで開催された夏季五輪に引き続き、二回目の五輪開催国となる。五輪大会は今回の平昌冬季五輪、2020年の東京夏季五輪、2022年の北京冬季五輪と、三回連続でアジアでの開催となった。
 韓国では、最も人気のあるスポーツは、伝統的にサッカーや野球だが、冬季スポーツではスケートが最も盛んである。ソチ五輪大会では、金メダル3、銀メダル2、銅メダル2をスピード・スケートやショート・トラック、フィギア・スケートの競技で獲得している。
平昌五輪は、2018年2月9日から25日の17日間に渡って、冬季五輪では過去最多の92カ国・地域から2900人の選手が参加し、これも過去最多の15競技、102種目が行われる。

膨張した五輪開催経費
 五輪を開催する都市は、いつも、競技場整備に膨大な経費を投入する。
 平昌冬季五輪の例外ではない。
 平昌五輪では、12か所の競技場とオリンピック・スタジアム(Olympic Stadium)とメダル・プラザ(Medal Plaz)を整備した。
 この内、6か所の競技場は新設し、6か所の競技場は既設の施設を改修して使用した。オリンピック・スタジアムとメダル・プラザは仮設施設として整備した。
 開会式や閉会式を開催するオリンピック・スタジアムは、仮設施設にも拘わらず、建設費は1477億ウォン(約147億円)、半額は韓国政府が負担した。 さらに開会式・閉会式のセレモニー開催予算、700億ウォン(約70億円)が加わる。
 韓国国内では、オリンピックとパラリンピックの開会式・閉会式など4回のイベントで使用するだけなのに、巨額の経費で整備するのは無駄遣いだという批判が出た。
 Alpensia ski resortの建設には、約15億ドル(約1兆6600ウォン 約1660億円)が投入された。
 政府や開催都市、組織委員会はコスト削減に努めたとしているが、膨れ上がった平昌五輪の施設整備費は強い批判が浴びせされている。

 また平昌五輪組織委員会の予算も破たんの危機に陥った。
 平昌五輪組織委員会は2017年6月、これまでの2兆2000億ウォン(約2200億円)の予算規模では五輪開催が困難として6000億ウォン(約600億円)の追加支援を韓国政府に要請した。

 また首都ソウルから遠く離れた開催地に観客や選手、大会関係者を輸送するために高速鉄道KTXを建設したが、総工費は約3兆8000(約3380億円)、
こうしたインフラ関連経費も含めると、平昌冬季五輪の開催経費は、約14兆ウォン(約1兆4000億円)にも達しているとされている。
 2011年に招致に成功した時に立候補ファイルで示した開催経費は、8兆8000ウォン(約8800億円)、5兆ウォン(約5000億円)も膨れ上がっている。
 韓国の市民からは、「残るのは「国民の負担ばかりが膨らむ」「能力もないのになぜ五輪を誘致した」などの批判が沸き上がっている。

“負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌五輪
 冬季五輪大会後、競技施設の年間維持費は210億4900万ウォン(約21億円)になるという推定が明らかになった。施設運営収入を大幅に上回る施設維持費が必要となり、開催地の江原道や自治体の年間赤字は165億ウォン(約16億5000万円)に達することが分かった。
 平昌に建設されたAlpensia Sliding Centreを大会後も維持するためには、年間31億6600万ウォン(約3億1000万円)がかかるとしている。しかし、この施設で得られる収入は7000万ウォン(約700万円)で、夏季は収入がないし冬季でも利用客がほとんど期待できないとされている。この施設を所有していることだけで約30億ウォン(約3億円)近くを負担しなければならないという。文化体育観光部の関係者は「スライディングセンターは撤去する方が得策」だとしているとしている。
 江陵市(Gangneung)エリアに整備された競技施設の内、オリンピック・パークにあるアイスアリーナ(新設)とカーリングセンター(既設)と関東大学校の中に建設されたアイスホッケー場(Kwandong Hockey Centre)(新設)は五輪後の利用計画のめどが示された。しかし、江陵アイスホッケー・センター(Gangneung Ice Hockey Centre)(新設)や江陵オーバル(Gangneung Oval)(新設)、平昌(PyeongChang)エリアの旌善アルペン・センター(Jeongseon Alpine Centre)(新設)は、未だに検討中で利用計画のめどが立っていない。
 1万席の観客席を備える江陵アイスホッケー・センターは、毎年の施設維持費だけで29億ウォン(2億9000円)となるという。
 こうした競技施設を、数十年に渡って維持するには、施設維持費だけでなく修繕費も加わって、建設費の数倍の経費が必要となるとされている。
 平昌五輪も、“負のレガシー”(負の遺産)を抱えるのは必至である。


Introducing PyeongChang2018(New Version) PyeongChang2018
PyeongChang2018/Youtube

Amazing drone footage of PyeongChang 2018 venues
AIPS Media Channel/Youtube





冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪

東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか?






Mountain ClusterとCoastal Clusterに競技会場を整備
 平昌(PyeongChang)は、ソウルから130km離れた江原道(Gangwon-do)に位置する約44,000人が住む地区である。大会を開催する競技場は、平昌地区にあるMountain Clusterと隣の江陵市(Gangneung 約230,000人)にあるCoastal Clusterの二つのエリアに整備された。
 Mountain Clusterには、2つの競技場、Coastal Clusterには4つの競技場、合わせて6つの競技場が建設された。
 Mountain Clusterでは、ランドマークの五角形のオリンピック・スタジアムに目が引き付けられる。このスタジアムは、五輪史上初の仮設スタジアムだ。
 オリンピック・スタジアムの隣にはメダル・プラザがあり、五輪のメダルの授与式が行われると共に、文化的なイベントが開催される。
 競技会場は、Alpensiaエリア,、Yongpyongエリア、Jongseonエリア、そしてBokwangエリア.に整備され、ジャンプ台は既設のAlpensiaにある施設を使用し、Sliding Centreは新たに建設した。
 Coastal clusterでは、すべてのアイススケート種目が5つの競技場で開催される。1998年に建設されたカーリング場がある江陵市(Gangneung)の北部地域を整備し、新たにアイス・アリーナやスピード・スケート場、アイス・ホッケー場の3つのスケートリンクを建設し、カーリングと合わせて江陵オリンピック・パーク(Gangneung Olympic Park)として整備した。さらにホッケー競技場を江陵市(Gangneung)南部にあるカトリック関東大学校(Kwandong Catholic University)に新しく建設した。
 選手村は平昌(PyeongChang)のMountain Clusterと江陵市(Gangneung)の Coastal clusterの二か所に建設され、この内、平昌(PyeongChang)の選手村は15階の建物が8棟建設された。江陵市(Gangneung)にはメディア用ホテルも建設された。


準備完了 平昌冬季五輪五輪会場 YTN NEWS
YTN/Youtube

空から見た平昌冬季五輪会場 KBS NEWS
KBS/Youtube

The Buildings of the Winter Olympics: PyeongChang 2018
B1M/Youtube



出典 Architecture of the Games


出典 POCOG PyeongChang2018



平昌マウンテン・クラスター
(PyeongChang Mountain Cluster)

資料 PyeongChang2018 Architecture of the Games 東亜日報


平昌オリンピック・パーク 出典 PyeongChang2018


平昌オリンピック・パーク 出典 POCOG PyeongChang2018


PyeongChang Olympic Stadium(平昌オリンピック・スタジアム)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Opening and Closing ceremonies
Paralympic Games: Opening and Closing ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Capacity: 35,000 Seats
建設費:1477億ウォン(約147億円)


平昌オリンピック・スタジアム 出典 POCOG PyeongChang2018


出典 IOC PHOTO

PyeongChang Medal Plaza(平昌メダル・プラザ)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: PyeongChang Olympic Plaza
Olympic Games: Medal ceremonies
Paralympic Games: Medal ceremonies
Type: Temporary
Built: 2017
Size: 1,267 square meters


平昌メダル・プラザ 出典 IOC News


Alpensia Ski Jumping Centre(アルペンジア・スキージャンプ・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Ski Jumping, Nordic Combined, Snowboard (Big Air)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 2009
Renovated: 2015-2017
Capacity: 11,000 Seats + 2,500 Standing
Slopes for Competitions: LH (125m), NH (98m)
Slopes for Practice: K60, K35, K15


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


Alpensia Sliding Centre(アルペンジア・スライディング・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Bobsleigh, Skeleton, Luge
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2013-2017
Capacity: 1,000 Seats + 6,000 Standing
Course Length: 1,376.38m (Bobsleigh / Skeleton) / 1,344.08m (Luge Men) / 1,201.82m (Luge Women / Double)
Altitude Difference: 116.32m (Bobsleigh / Skeleton) / 117.12m (Luge Men) / 95.62m (Luge Women / Double)
Average Slope: 9.48% (Bobsleigh / Skeleton) / 9.69% (Luge Men) / 8.97% (Luge Women / Double)
建設費:1144億ウォン(約114億円)


Alpensia Sliding Centre  出典 POCOG PyeongChang2018


Alpensia Sliding Centre  出典 Olympic Channel/IOC


Bobsleigh  出典 Olympic Channel/IOC


Skeleton  出典 Olympic Channel/IOC


Luge    出典 Olympic Channel/IOC

PyeongChang 2018 Sliding Center
PyeongChang2018/Youtube


Alpensia Cross-Country Centre(アルペンジア・クロスカントリー・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Cross-Country Skiing, Nordic Combined
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2009, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 3.75km / 3.3km / 2.5km / 2km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 54m (751m~805m)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


Ready to Go! #Alpensia Cross-Country Skiing Centre / Alpensia Biathlon Centre
IOC/Youtube


Alpensia Biathlon Centre(アルペンジア・バイアスロン・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: Alpensia Sports Park
Olympic sports: Biathlon
Paralympic sports: Para Biathlon, Para Cross-Country Skiing
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2007, 2015-2017
Capacity: 4,500 Seats + 3,000 Standing
Course length: 4km / 3.3km / 3km / 2.5km / 2km / 1.5km
Course Width: 8m
Altitude Difference: 47m (749m~796m)
Shooting Range: 82.5 × 50m


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


Phoenix Snow Park (P,C)(Bokwang Snow Park:フェニックス スノーパーク:普光スノーパーク)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Freestyle Skiing, Snowboard
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1995
Renovated: 2015-2017
Capacity: 10,200 Seats + 7,800 Standing


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


Ready to Go! #Phoenix Snow Park
PyeongChang2018/Youtube


Yongpyong Alpine Centre(ヨンピョン・アルペン・センター:龍平リゾート)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Slalom & Giant Slalom)
Paralympic sports: –
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2016-2017
Capacity: 2,500 Seats + 3,500 Standing


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


Slalom  出典 IOC PHOTO


出典 Olympic Channel/IOC


Jeongseon Alpine Centre(チョンソン・アルペン・センター:旌善アルペン・センター)
Cluster: PyeongChang Mountain Cluster
Zone: –
Olympic sports: Alpine Skiing (Downhill, Super G & Combined)
Paralympic sports: Para Alpine Skiing, Para Snowboard
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 3,600 Seats + 2,900 Standing
建設費:2064億ウォン(約206億円)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


Downhill  出典 IOC PHOTO


Downhill  出典 IOC PHOTO


Jeongseon Alpine Centre | PyeongChang 2018 Games
PyeongChang2018/Youtube


江陵コースタル・クラスター(Gangneung Coastal Cluster:カンヌン・コースタル・クラスター)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 POCOG PyeongChang2018


Gangneung Hockey Centre(カンヌン・ホッケー・センター:江陵ホッケー・センター)

Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: Ice Sledge Hockey
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 10,000
建設費:1123億ウォン(約112億円)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 POCOG PyeongChang2018


Gangneung Oval(カンヌン・オーバル:江陵オーバル)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Speed Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 8,000
建設費:1324億ウォン(約133億円)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC



Gangneung Ice Arena(カンヌン・アイス・アリーナ 江陵アイス・アリーナ)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Short Track Speed Skating, Figure Skating
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2016
Capacity: 12,000
建設費:1340億ウォン(約134億円)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


Gangneung Curling Centre(カンヌン・カーリング・センター:江陵カーリング・センター)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: Gangneung Olympic Park
Olympic sports: Curling
Paralympic sports: Wheelchair Curling
Type: Existing
Built: 1998
Renovated: 2015-2017
Capacity: 3,500


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC


Kwandong Hockey Centre(クァンドン・ホッケー・センター:関東ホッケー・センター)
Cluster: Gangneung Coastal Cluster
Zone: –
Olympic sports: Ice Hockey
Paralympic sports: –
Type: New
Built: 2014-2017
Capacity: 6,000
建設費:627億ウォン(約63億円)


出典 POCOG PyeongChang2018


出典 Olympic Channel/IOC


出典 Olympic Channel/IOC

PyeongChang Olympic Village
15階建ての建物 18棟  3894人収容
2015年7月着工 2017年12月完成 2018月2月1日開村式


出典  POCOG PyeongChang2018


出典  POCOG PyeongChang2018

Gangneung Olympic Village
22~25階建ての建物 9棟  2902人収容
2015年7月着工 2017年12月完成 2018月2月1日開村式


出典  POCOG PyeongChang2018


出典  POCOG PyeongChang2018


International Broadcasting Center(IBC)(国際放送センター)
Location: PyeongChang Mountain Cluster, Alpensia resort
Construction Start: December 2015
IBC Shell Completion: May 2017
IBC Handover to OBS: 5 June 2017
Site Area: 122,410.02 sqm
Gross Floor Area: 51,024.15 sqm
Functional Space Area
OBS and RHB broadcast space: Approx. 34,000 sqm
POCOG & OBS Offices: 5,765,54 sqm
Common Services: 1,812.04 sqm





江陵メディア・ホテル(Gangneung Media Village)
五輪後の利用計画:民間企業に売却 2018年内に入居開始
売却先:韓国土地建物不動産






江陵オリンピック・パーク(Gangneung Olympic Park)



平昌オリンピック・プラザ(PyeongChang Olympic Plaza)



Venue Data









出典 PyeongChang2018/Architecture of the Games




平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至

東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”
東京オリンピック 競技会場最新情報(下) 競技会場の全貌






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)




2018年2月8日
Copyright (C) 2018 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************

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平昌五輪 5G VR ドローン 第5世代移動通信 韓国テレコム(KT) インテル(Intel) サムスン(Samsung)

2022年01月14日 18時02分33秒 | 5G
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略
~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~


北京冬季五輪2022 北京冬季五輪 5G+4K/8K AI メインメディアセンター(MMC)競技会場 最新情報


出典 PyeongChang2018 5G White Paper




“ICT”五輪”で先を越された2020東京五輪
  開会式で握手を交わした韓国の文在寅南大統領と北朝鮮の高官代表団、南北北統一旗を掲げて入場行進を行った合同選手団、話題を独占した女性応援団、韓国と北朝鮮の融和ムードは平昌冬季五輪の象徴となった。一方、ドーピング問題も大会に影を落とした。ロシア・オリンピック委員会は、組織ぐるみのドーピング違反で五輪から締め出され、ロシアの選手は「ロシアからの五輪選手(OAR)として参加したが、国旗や国歌の使用は認められなかった。そして、日本選手団は冬季五輪では過去最高の13個のメダルを獲得して大活躍、様々な話題と感動を残して、平昌冬季五輪は、2月25日に閉幕した。
 日本国内での五輪中継番組の視聴率は、メダルラッシュに沸いて、フィギア・スケートの33%を最高に、カーリング、スキージャンプ、スピードスケート、ショートトラック、開会式などは軒並み20%を超えた。隣国韓国の開催で時差がなかったこともあり、事前の予想を覆し極めて好調だった。
 韓国は、平昌冬季五輪を開催するにあたって掲げたテーマは、“ICT五輪”、第五世代移動通信5G、超高繊細テレビUHD、モノ・インターネットIoT、人工知能AI、VR(Virtual Reality)の5つの分野で、世界最先端の“ICT五輪”を実現して、“Passion Connected”をスローガンに掲げ、世界各国にアピールする戦略である。
 “ICT五輪”は、2020東京五輪で、今、日本が総力を挙げて取り組んでいるキャッチフレーズだ。“ICT五輪”は、平昌冬季五輪に、先を越された感が否めない。


(上)2位の李相花を抱きしめる小平奈緒選手 (下)南北合同女子ホッケーチーム
出典 POCOG2018


“ICT Olympic”を掲げた平昌冬季五輪(KT Pavilion)  出典 KT

Introducing PyeongChang2018(New Version) PyeongChang2018
PyeongChang2018/Youtube


5G移動通信に挑んだ平昌冬季五輪
 韓国テレコム(Korea Telecom)は、国際オリンピック委員会(IOC)と第五世代5G移動通信ネットワークを平昌平昌冬季五輪で構築し、競技中継で利用するとともに、大会関係者や観客にサービスすることで合意した。
 世界で初めて5G通信ネットワークのサービスが平昌冬季五輪を舞台に実現したのである。
 五輪競技中継では、5G移動通信の登場で、ボブスレーのソリからの高画質映像のライブ・サービスが実現した。
 平昌のアルペンジア・スライディング・センターにあるボブスレー競技場では、5G移動通信ネットワークが整備され、時速140キロの高速でコースを滑降するソリ(Sled)の先端に4K POV(Point of View)カメラを取り付けて高画質の映像を撮影し、“遅延ゼロ”の超高速で送信し、臨場感あふれた迫力のある映像サービスに初めて挑む。
 但し、伝送はHD画質に留まるとしている。


コースを滑走するボブスレー PyeongChang2018 POCOG


ボブスレーのスレッド(そり)に取り付けられた4K POVカメラで撮影された映像  出典 Olympic Channel IOC

Exclusive 4K POV Bobsleigh run Olympics Channel IOC

Olympics Channel/Youtube

 5G移動通信サービスは、アイスアリーナやスピードスケート競技場、ホッケー競技場、オリンピック・スタジアムのある江陵オリンピック・パーク(Gangneung Olympic Park)やソウルの光化門広場(Gwanghwamun)エリアでも構築され、大会関係者や観客、ソウル市民に対象に、ギガビットで低遅延の5Gでライブ・ストリーミング映像にアクセスできるようにした。世界に先駆けて5Gサービスが実用化されたのである。
韓国は、“5G”が平昌冬季五輪のレガシーにするとして、世界各国に強力にアピールしている。

第五世代移動通信5G
 5Gは、高画質の映像など大量のデータを、低遅延(low latency)、超高速度で送信することができる次世代の無線通信技術だ。
 現在使用されている第4世代移動通信、4Gと比較して、1000倍のデータ通信量、10Gbpsという100倍の通信速度、ほとんど“ゼロ”に近い低遅延、100倍の同時接続の性能が実現される。AIロボット、自動走行自動車、ビックデータ、UHDなどの高画質映像、IoT機器の爆発的増大などで、移動通信の通信量は飛躍的に増えるとされている中で、5Gは次世代のICT社会の実現に必須のバックボーンである。日本を始めて、アメリカ、ユーロッパ各国、中国、韓国の企業がその開発競争に凌ぎを削っている。5Gの展開で世界の主導権を握れるかどうか、各国の“生き残り”がかかった競争である。


出典 情報通信審議会資料


出典 情報通信白書 総務省


五輪の舞台に登場したIntel 情報通信分野で主導権
 平昌冬季五輪で構築された5Gのプラットフォームやプロセッサー、コンピューター、それに5Gテクノロジー、FlexRANは、アメリカのIT企業、Intelが全面的に提供した。クラウドサービスの運営に使用されるサーバーもIntelが準備した。
 Intelと提携した韓国テレコム(Korea Telecom)は、韓国で最大の通信企業、光ファーバー網や移動通信ネットワークを構築した。
 Samsungもこの陣営に加わり、5G対応タブレットを開発、約1100台の試作機を製造して、競技場やパビリオンで5Gパワー体験サービスを行った。 
 平昌冬季五輪では、Intelが全面的に五輪大会に登場したのが注目される。
 Intelは、2018年平昌冬季五輪、2020東京五輪、2022年北京冬期五輪、2024年パリ五輪オリンピックのTOPスポンサーになり、五輪大会で通信関連機器やシステムを優先的にサービスする権利が認められている。
 TOPスポンサーとして初舞台となる平昌冬季五輪で、Intelは韓国テレコム(Korea Telecom)やサムスン電子(Samsung)と提携して、平昌冬季五輪を“5Gのショーケース”にするという戦略を立てて、全力を挙げて取り組んだのである。



5G Intel 出典 Intel


サムスン電子(Samsung)が開発した5G対応タブレット  出典  Samsung

Intel at the 2018 Olympics: 5G Olympic Vision
Intel/Youtube

5Gネットワークで、新たな映像中継サービスを開始
 5G移動通信の構築で、新たな五輪中継映像サービスが登場した。
韓国テレコム(Korea Telecom)は、Intelと連携して、360度のVR(Virtual Reality)映像サービスを実現した。VR(Virtual Reality)は、視聴者があらゆるアングルから競技を楽しむことができる次世代の映像技術である。
 リオデジャネイロ五輪でもVRサービスは試験的に行われたが、平昌冬季五輪では、OBSは初めてVRコンテンツをホスト映像として世界のライツホルダーに配信した。


OBSが配信した360°VR映像サービス   出典 NHKピョンチャン2018 360°VR

 さらに新しい競技中継技術も登場した。
 マルチアングルの映像を任意の時間で選択して視聴できる、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)、選択地点の疾走シーンが視聴可能な「オムニビュー」(OMNI VEIW)、高速で移動する選手や物体から高画質のUHD映像でライブ中継する"Sync View"と呼ばれる新たなサービスである。

 フィギアスケートとショートトラック競技が行われた江陵アイスアリーナには、100台の小型カメラが設置して、選手の動きをさまざま角度から撮影し、合成して連続して見せる新たな映像技術、「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion)に挑んだ。
100台のカメラは、リンクの壁面に一定の間隔で設置され、動きの速い被写体の決定的なシーンを、アングルを動かしたい方向に順番に連続撮影していく。
 撮影された画像は、一枚一枚切り出して合成し、連続して見せる映像技術である。高速で移動する被写体の動きを、少しづつアングルを変えて、スローモーションのように見せるというインパクトあふれた映像表現が可能だ。映画「MATRIX」で、この映像テクノロジー(映画ではパレットタイムと呼ぶ)で撮影されたシーンが評判を呼び、新たな映像技術のとして注目されている。
ま た観客は、さまざまなアングルのカメラを選択し、自由に撮影時間を選んで、選手の動きを見ることができる。
 「オムニビュー」(OMNI VEIW)では、多数のカメラを配置し、さまざまなアングルやポイントからの映像を、視聴者が自由に選択して、リアルタイムで見ることができる。競技結果、順位、選手のプロフィールなど情報もサービスされる。
 クロスカントリーでは、全長3.75キロメートルのコースに、17台のカメラを設置し、撮影した選手の姿を5Gネットワークで伝送し、観客は自分の見たいポイントのカメラを選んで、疾走している選手の姿を見ることができる。
 バイアスロンなどでは、選手のユニフォームに装着したGPSセンサーの位置情報を5Gネットワークで送信し、観客はスマートフォンで選手の位置などをリアルタイムで確認できるサービスも行われた。
 視聴者は、見たい選手を自由に選択し、選手が今、どこにいるかがリアルタイムで確認しながら、ライブ・ストリーミングで走行シーンを楽しむことができる。
 「シンクビュー」(Sync View)では、POV(Point of View)カメラを、選手のヘルメットやユニフォーム、スレッド(ソリ)などに取り付けて、選手視点での競技をライブで中継する技術である。ボブスレーではソリの全面にPOVカメラや5G無線通信のモジュールとアンテナを設置して、高速で迫力ある映像をライブでサービスする。
 UHD(4K)などの高画質で撮影されライブで伝送する新しい映像サービスを支えているのが、超高速の5Gネットワークである。Samsungは5G対応のデモ機を開発して、タブレットPCを各競技場に約200台を配置し、新しい映像サービスの醍醐味を観客に楽しんでもらうサービスを展開している。

 またドローンや小型カメラで会場を撮影し、選手や大会関係者、群衆を、顔認証技術を使用して解析して、データをリアルタイムでオリンピックのセキュリティ・コントロール・センターに送信し、セキュリティ管理に使用することも可能だとしている。


アルペンジア・スライディングセンター クロスカントリー  出典 IOC


フィギアスケートでサービスされた「タイムスライス」(time-sliced views of skaters in motion) 出典 Olympic Channel/IOC


スノーボードでサービスされた「タイムスライス」 出典 Intel

5G移動通信ネットワークを整備した韓国テレコム(Korea Telecom)
 こうした5Gネットワークの設営のために、韓国テレコム(Korea Telecom)は、35,000本の光ファーバーを敷設し、250,000のデバイスを使用して、5,000 個所のアクセスポイントやデータセンターを設置して5G移動通信ネットワークを整備した。
 韓国の5GネットワークのプラットフォームはIntelが構築し、2016年2月に第一世代のプラットフォームが、6GHzとミリ波を使用して構築された。そして2017年、4x4 MIMOの第二世代のプラットフォームが整備された。
 そして、2018年平昌冬季五輪でIntelの第三世代のプラットフォームが登場した。
 新しいプラットフォームは、3GPPに基づいて、5G NR規格をサポートして構築され、IntelのゲートアレイのFGPA回路とCorei7をプロセッサーとして組み込んで構築された。
 5Gの使用周波数帯域は、3GPP NRとの相互運用性を図り、600-900MHzや3.3-4.2GHz、4.4-4.9GHz、5.1-5.9GHz, 28GHz、そして39GHzの帯域を使用してテストを繰り返した。
 そして最終的には、28GHzを使用し5G実用サービスを実施した。
 5G基地局の装置は、96素子(48素子×2)のMassive Mimoを設置し、帯域幅は800MHz(100MHz×8)を使用し、ピークデータレートは5GBpsだった。


平昌冬季五輪で使用したSamsung製の5G基地局(28GHZ)

 OBSの最高技責任者のStotieis Salamouris氏は、「第五世代5Gネットワークは“進化”ではなく“革命”だ。」とし、 「4Gネットワークでは、どうしても遅延が生じるが、5Gは遅延がほとんどゼロに近い。遅延が生じる原因は、モバイル端末などの通信ではなく、爆発的に増えているIoT(Internet of Things)や自家用車のインターネットで、今後もさらに激増し、4Gネットワークで処理できる処理量を超えることは明らかだ。これまでの映像伝送の技術は、何年にもわたって開発された独自仕様のシステムが混在していて、統合された伝送技術はない。これに対し、 5Gの機能はオープンで幅広く普及が可能だ。高画質の映像を“遅延ゼロ”で伝送できる5Gは、マラソンや自転車競技、ヨットなどの競技中継やヘリコプターやドローンを使用した空撮ライブ中継の伝送技術に最適だ。次世代の放送技術の要になるだろう」と話している。

韓国 5G周波数オークションで携帯電話事業者3社に3.5GHz/28GHz帯割当て決定
 2018年6月15日、韓国科学技術情報通信部は、2019年3月の5G商用サービス開始に向けて、携帯電話事業者に対し、5G周波数オークションを実施した。
 今回のオークションは、5Gで活用する二つの周波数帯(3.5GHzと28GHz)で実施し、世界初の「5G周波数オークション」として注目を浴びた。
 具体的な周波数範囲は3.5GHz帯が3420.0~3700.0 MHzの280MHz幅、28GHz帯が26500.0~28900.0 MHzの2400MHz幅、合計で2680MHz幅である。
 周波数の割当方法はオークションで、入札単位とブロック数は3.5GHz帯が1ブロックあたり10MHz幅で28ブロック、28GHz帯が1ブロックあたり100MHz幅で24ブロックである。
 1社あたり最大でそれぞれ10ブロックまで取得を認めており、3.5GHz帯が最大100MHz幅、28GHz帯が最大1000MHz幅まで取得できる。
 3.5GHz帯および28GHz帯ともに2018年12月1日より有効になり、有効期限は3.5GHz帯が2028年1月30日まで、28GHz帯が2023年1月30日までと設定されている。
 最低入札額合計は3.5GHz帯が2兆6,544億ウォン(約2,686億円)、28GHz帯が6,216億ウォン(約629億円)で、合計3兆2,760億ウォンとした。その結果、オークションの合計落札価格は3兆6,183億ウォンで決着した。

 3社の落札内容は、3.5GHz帯では、SKテレコムは100MHz幅で1兆2,185億ウォン(約1218億円)、KTは100MHz幅で9,680憶ウォン(約968億円)、LG U+は80MHz幅で8,095億ウォン(809億円)だった。
 28GHz帯では、SKテレコムは800MHz幅で2,073億ウォン(約207億円)、KTは800MHz幅で2,078憶ウォン(約207億円)、LG U+は800MHz幅、2,072億ウォン(約207億円)となった。
 
 今回のオークションでは1MHz幅当たりの最低落札価格はこれまでと比べて最も安く設定された。特にモバイルで初めて利用される高周波数帯の28GHz帯については、現時点では使い勝手も含めて不確実性が大きい点が考慮され、利用期間を5年と短く設定し、価格は大幅に引き下げた低い水準で設定された。
 3社の中で、SKテレコムは帯域幅の拡張ができる3.5GHz帯にこだわり、他社より高い応札価格で落札した。周波数は12月1日から利用が可能となる。キャリア3社は8月までに機器事業者を選定し、秋にはネットワーク構築に着手する
 一方、商用サービス開始で提供される5Gサービスの利活用についてはまだ具体的な内容があまり明らかになっていない。韓国では国を挙げて、「世界初」の低遅延・大容量・多数接続の5Gサービス開始を目指して総力を挙げている。






5G・第5世代移動体通信 2020東京オリンピックに向けて実現に暗雲


出典 PyeongChang2018 5G White Paper

AI、5G、ドローンが支えた平昌冬季五輪開会式
 2月9日、江陵オリンピック・スタジアムで開催された平昌冬季五輪開会式は、韓国と北朝鮮の合同選手団の入場行進や、キムヨナの聖火点灯などで世界中の視聴者を沸かせた。
開会式の演出を手がけたヤン・ジョンウン監督は、メインプレスセンターで行われた「開閉会式メディアブリーフィング」で、「今回の開会式は一つの 『冬の物語』のように簡単に皆が共感できる平和の話を見せる」とし「5人の子供たちが時間旅行を通じて古代神話から出発し、人と自然が共に調和をなす場面を見て試練と苦痛を乗り越え、平和の未来へ向かう旅程を描く」と説明した。そして「開会式は人の価値に注目するが、先端技術も公演に組み合わせる」とし「人工知能(AI)と5G(5世代)技術、ドローンなどを活用したパフォーマンスを開会式公演で確認できるだろう」と胸を張った。
今や、開会式・閉会式は、AIや5Gなどの先端技術を駆使した演出が必須となってきた。




平昌冬季五輪開会式 出典 PyeongChang2018 POCOG

1218台のドローンで開会式の夜空を飾ったIntel
2月9日に開催された平昌冬季五輪の開会式、1218台のドローンが夜空に五輪マークを描く“ドローンショー”登場し、世界の人々の眼を引き付けた名場面となり、ギネスブックの世界新記録にも登録された。
しかし、結局、“ドローンショー”はライブでは展開できず、事前に収録した映像を使用するという事態となった。
平昌五輪スタジアムで行われた開会式の当日に、五輪組織委員会のサイバー攻撃を受けたのがその原因とされている。
韓国メディアなどの報道によると、開会式が始まる45分前の9日午後7時15分ごろから、組織委内部のインターネットやWi-Fi(ワイファイ)が数時間、ダウンするというトラブルに襲われた。 このため開会式では予定していた小型無人機(ドローン)を飛ばすことができず、事前に録画した映像を使用したという。
国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は「ドローンを制御するロジスティックを直前で突然変更したため、ドローンを飛行させるとこができなかった」とドローンの飛行は中止したことを認めた。システム障害の原因は明らかにしなかったが、サイバー攻撃の影響を示唆した。

 この“ドローンショー”には、インテルの「クラウド・ドローン飛行技術」が使われた。ドローンの位置を上下左右センチメートル単位で把握して伝える位置測定技術と、各ドローンの間で情報を交わす通信技術が総動員され、Intelの卓越した技術力を誇示した。
使用された1218台のドローンは、“Shooting Star drones”と呼ぶIntelが開発した無人飛行体(unmanned aerial vehicle  UAV)で、重量は330グラム、6インチのローターを備えている。機体は、Intel Falcon 8+をベースに開発した。Falcon 8+の市価は、3万5000ドル(約385万円)ほどの高価格の最高機種だ。
 開会式で使用されたドローンは、エンタテインメントで使用するためにで開発された機種で、機体には40億色の色彩が表現可能なLEDライトが取り付けられ、夜空を背景に、LEDの光で、あらゆるアニメメーションを表現することができる。
 今回のオペレーションでは、1人のオペレータで、1台のコンピューターで1218台のドローンを制御するという。

 Intelは、2014年から多数のドローンを群集飛行させるプロジェクトを始め、2015年中国のドローン会社、ユニーク(Yuneec)に6000万ドル(約66億円 1ドル=110円)を投資し、2016年にはドイツの自動パイロットソフトウェア開発企業、アセンディングテクノロジーを買収した。インテルが半導体とは距離があるドローンに関心を持つのは、ドローンから派生するICT分野の成長の可能性に注目しているからだとされている。
  ドローン・クラウド飛行技術は山火事や地震などの自然災害、作物のモニタリング・管理などの農業の分野、建設工事や地図制作など幅広い分野に適用が可能だ。
ドローンの用途も配送・撮影・防犯・救助・測量などに拡大している。特に衛星利用測位システム(GPS)とセンサーを利用して正確な位置情報に基づいて、多くのドローンを同時に制御する技術は、自動運転自動車か交通管制システムにそのまま適用可能だ。
 Intelがドローン事業に力を入れているのは、ドローンのハードウェア事業に乗りだすのではなく、あくまでコンピューティング・ソリューションのための投資と分析されている。
Intelは、五輪という世界的なイベントでドローンやバーチャルリアリティ(VR)など先端技術力を誇示し、単にパソコンの半導体企業ではなく、総合情報技術(IT)企業というイメーへの脱皮を図っているのである。


PyeongChang2018の開会式の夜空飾るドローン・ショー 出典 ABC News


PyeongChang2018の開会式の夜空飾るドローン・ショー 出典 ABC News

Intel Experience the Team in Flight at PyeongChang 2018

Intel/Youtube


Shooting Star drones 出典 Intel HP

VRにも乗り出したIntel
 今回の五輪で注目されたIntelのもう一つの技術はVRを活用した各種スポーツ競技の「VRライブ中継」である。平昌冬季五輪では、Intelが開発した“Intel True VR”が導入され、双方向の360度全方位映像をライブでサービスした。VR小型カメラを競技場の随所に設置しさまざまなアングルからの競技を撮影して配信する。 視聴者は、競技場に行かなくても、臨場感あふれた観戦体験を得ることができる。
 平昌冬季五輪のホストブロードキャスター、OBSは、冬季五輪大会では初めて、このVRコンテンツをホスト映像としてライブで配信した。音声はナチュラルサウンドに実況キャスターのコメント(英語)を加えている。開会式・閉会式を始め、アルペンスキー(滑降・大回転)、ジャンプ、フリースタイル(モーグル)、スノーボード(ビックエア・ハーフパイプ・スロープスタイル)、クロスカントリー、スケルトン、リュージュ、フィギアスケート、ショート・トラック、アイスホッケー、カーリングなどの16競技、合計55時間を1日1競技以上をサービスした。
 NBCユニバーサルはNBC Sports VR appを立ち上げ、このVRコンテンツを全米の視聴者に配信した。
 NBC Sports VR appのVRコンテンツを視聴するには、Windows Mixed Reality headsets、Samsung Gear VR、 Google Cardboard、Google Daydream and compatible iOS or Android devicesが必要で、NBCユニバーサルのケーブルテレビか、衛星放送、IPTVの契約をしなければならない。あくまで、ケーブルテレビ、衛星放送、IPTVなどの付加サービスなのである。
 NBC Sports VR appでは、ライブストリームされたVRコンテンツを、1日間は再放送を行い、翌日以降は、それぞれの競技をハイライト・コンテンツに編集してサービスする。
 一方、NHKは、「ピョンチャン2018」のホームページで、360度VR映像を「360°ライブ」(ライブストリーミング)と「見逃しハイライト」(VOD)でサービスした。日本国内であれば誰でもが利用可能なフリーサービスである・
 VRサービスによって、視聴者は平昌のオリンピック・ワールドを自由に飛び回りながら、五輪競技場のバーチャル体験を楽しむことができるようになった。VR時代の幕開けを告げる平昌冬季五輪だといえるだろう。


Intel True VRカメラ


アルペンスキー競技場に設置されたIntel True VRカメラ

Intel True VR at Olympic Winter Games PyeongChang 2018

Intel/Youtube

 Intelは、放送・コンテンツ分野にも乗り出して、VR専門会社、VOKE買収するなど積極的な姿勢をとり、2019年には米主要放送局と協力して、双方向全方位360度VR放送を実現させた。 Intelは「好みに合わせ視聴者が選択可能な映像技術の導入で、スポーツ競技視聴方式に革命を起こす」としている。

IntelがドローンやVRなどに対する投資に力を入れているのは、成熟期に入ったパソコン市場から抜け出し、新しい成長動力を見いだそうという企業戦略を抱いているからである。成長が期待できる第5世代通信、5G市場で主導権を握るという狙いもあるだろう。5Gは膨大なデータを迅速に処理するインフラとして第4次産業革命を率いる核心技術とされている。
 VR機器・ドローン・自動運転車・モノのインターネット(IoT)などにIntelが開発したチップやデバイス、ネットワークソリューションを組み込み、これらの機器がつながるプラットホームも掌握するという戦略である。
 世界初の5G技術を公開した平昌冬季五輪は、こうした Intelの戦略を明らかにする格好の舞台となった。


平昌冬季五輪のレガシーとして5G Networkを挙げている 出典 PyeongChang2018 POCOG


韓国テレコムが平昌に設置した5G Village


現代自動車、ソウル~平昌間の高速道路で自動走行実証実験
 世界各国の自動車企業は、次世代の自動車、自動走行車の開発に凌ぎを削っている。
 現代自動車は、平昌五輪で自動走行自動車のトライヤルを成功させ、世界に一歩先んじた。
 現代自動車は、平昌冬季五輪開催に先立って、ソウル~平昌間の高速道路、約190キロメートル区間で最高速度、時速100~110キロメートルの自動走行実験を成功させた。 
 この自動走行実験は、レベル4(米国自動車工学会[SAE]基準)で行われ、5Gコネクテッドカーの次世代水素電気自動車ネクソ3台とジェネシスG80自動運転車2台で行った。 レベル4は、ドライバーは同乗するが、車の走行は自動制御される。
 自動走行車両5台は、京釜高速道路のサービスエリアを出発して、新葛(シンガル)JCを経て永東(ヨンドン)高速道路に入り、大関嶺(テグァンリョン)ICを抜けて最終目的地の大関嶺まで走行した。高速道路を走る間、車線の変更や前方車両追い越し、7個のトンネル通過などがスムーズに行われた。
 現代自動車は平昌冬季五輪・パラリンピックの期間に、5Gコネクテッドカーを利用して、選手団、大会関係者、観客などを対象に、平昌市内の競技場の周辺を往来する自動運転試乗体験を実施した。 
 現代自動車は2021年までにレベル4の都心型自動運転システムの商用化を推進し、2030年までには完全自動運転技術を商用化する計画だ。


ソウル~平昌間の高速道路を走行する自動走行自動車   出典 現代自動車

“ICT五輪”のキャッチフレーズを奪われた2020東京五輪
 平昌冬季五輪組織委は、平昌五輪のもう一つの名称を「世界最初のICT五輪、平昌」に決め、韓国のICT技術力を全世界に発信する舞台にするとしている。第4次産業革命の核心となる5Gサービスをはじめ、モノのインターネット(IoT)、超高画質映像(UHD)、人工知能(AI)、バーチャルリアリティ(VR)、拡張現実(AR)など、最先端技術が五輪期間中に公開される予定だ。
 韓国テレコム(Korea Telecom)は、SamsungやIntelと協力して、「平昌冬季五輪5G広報館」を江陵オリンピックパークで、開会式に先立って、1月31日に開館した。
 韓国の5G技術力や人工知能(AI)、バーチャルリアリティ(VR)を世界にPRするためである。
 2020年東京五輪も、“ICT五輪”のキャッチフレーズを掲げているが、平昌冬季五輪に先を越されていしまった。
2020年東京五輪まで残された時間は、後2年余り、平昌冬季五輪をこえる“ICT五輪”をどう構築するのか、日本の真価が試されている。






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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年2月20日
Copyright (C) 2018 IMSSR





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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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