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東京オリンピック レガシー 国際放送センター IBC メインプレスセンター MPC 再活用策

2016年01月22日 10時59分32秒 | 国際放送センター(IBC)
国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC)
設営場所と使用後の再活用策


■ 東京ビックサイトに建設される2020東京五輪のIBC・IMC
 オリンピックの施設は、開会式・閉会式、陸上競技などが開催されるオリンピック・スタジアムを始め、サッカー競技場、水泳競技場、自転車競技場、体操競技場などの競技会場、それに選手村などが整備される。
 実は、オリンピック開催にもっとも重要な施設は国際放送センター(IBC/International Broadcasting Center)とメインプレスセンター(MPC/Main Press Center)、オリンピック報道拠点である。
 とりわけ、オリンピックなどのスポーツ・イベントでは、国際放送センター(IBC)が最重要視されている。競技映像がスポーツ・イベントでは、キーになるからである。その理由は明確、いまやIOCの収入の約25%は放送権収入だからである。放送権収入なしでは、ビックスポーツ・イベントは存在できない。
 国際放送センター(IBC)では、すべての競技会場からの独占生中継映像・音声を集め、その信号を調整・管理して、世界各国の放送機関等のライツホルダー(RHB/Rights Holding Broadcaster)に配信する。テレビスタジオ、編集、送出、伝送機能も設置され、まさに放送サービスの拠点である。

 東京オリンピックの国際放送センター(IBC)とメインプレスセンター(MPC)は東京ビッグサイトに設置されことになっている。
東京ビックサイトは、江東区有明地区の東京湾ベイエリアにある国際展示場で、延べ床面積23万平方メートル、会議棟、西展示棟、東展示棟からなる日本で最大のコンベンションセンターである。都心に隣接しているというロケーションから、人気が高い。催事開催件数や入場者数では、圧倒的に“日本一”の座を誇る。
当初計画ではこの東京ビッグサイトは、東展示棟の一部にレスリングやフェンシング、テコンドーの競技場で使用し、残りのすべてのスペースにIBC/MPCを設置するとした。
IBCは、東展示棟(競技場エリアを除く)と西展示棟の1階と2階を中心に整備される。
このスペースに、世界の各放送機関に対し国際映像(ホスト映像)を配信するOBS(Olympic Broadcasting Services )エリアや、世界の各放送機関が使用する専用スペース・エリアが用意される。
また共用サービスエリア(IBC/MPCの共用)が、会議棟を中心に設置される。24時間体制で幅広いサービスを提供し、インフォメーションデスク、ツーリスト・サービス、ショッピング・アーケード、コンビニ、カフェ、銀行、郵便局等が設置される。
 この他、メディア専用のケータリング施設(食堂)や会議室、ブリーフィングルーム、事務局スペースなども設けられる。
MPCは、東京都が新たに建設する「増設棟」に設置する計画だ。
 西展示棟の南側には新たに、敷地面積約3平方メートルに、延床面積約6万5000平方メートルの5層階の「増設棟」を、約228億円の整備費で建設する予定である。広さ約2万平方メートルの展示ホールや会議施設、事務所などが設けられる。
当初計画では、この「増設棟」の3階には約1000席の会見室、1階、2階にはプレス・ワーキング・エリアとして約3万㎡のスペースを整備し、光ファイバーを使った高速インターネット・サービスなども備えた専用オフイスも用意する計画だ。
また、IBCはOBS(オリンピック放送サービス)や放送機関等のライツホルダーがテレビスタジオの設営や機材搬入のために占有できる開始時期は、2019年7月からとしている。 MPCについは、2020年1月引渡しとした。


(出典 出典 東京オリンピック・パラリンピック招致委員会 14 メディア)

■ “迷走”を始めたIBC/MPCの配置計画
 当初計画では、東京ビックサイトは、競技会場としても利用することになっており、東展示棟の一部にレスリングやフェンシング、テコンドーの競技場として予定されていた。
 しかしその後、IBCの設営・運営の責任を持つOBS(Olympic Broadcasting Service)から当初の計画では手狭だとの指摘を受けたため、組織委はレスリングやフェンシング、テコンドーの競技場を幕張メッセ(千葉市)に移すことで、東展示場はすべてIBCで使用することとしてスペースを拡張した。
 一方、東京ビックサイトでは、東展示棟臨時駐車場に、総床面積約2万平方メートル、展示面積1万6平方メートルの仮設の「拡張棟」の建設を進めている。
 東京五輪のIBC/MPCの設置や今後予定している老朽化に伴う大規模修繕で、既存展示会場の利用が大幅に制限されることが見込まれることから、「拡張棟」の建設で、展示会開催などへの影響を最小限に抑えたいとしている。2016年10月の完成をめざして工事を行い、完成後は10年間程度、展示場として使用した後、取り壊す計画である。この「拡張棟」もIBCの設置スペースとして利用する計画としている。
 2015年10月、東京ビッグサイトは、展示会の主催団体向けに説明会を開き、展示場面積の六割前後が五輪の一年四カ月前から使えなくなる可能性があることを明らかにし、当初予定より更に長期期間、“閉鎖”される懸念が出てきた。
 2015年11月、舛添知事は、レスリングやフェンシング、テコンドーの競技場が幕張メッセに移されたことで、IBC/MPCの配置計画を見直して、IBCの設置は東展示場のみとし、MPCは西展示場に設置し、「増設棟」MPCでは使用しないとした。展示場開催への影響を最小限に抑える措置であろう。しかし、東京ビックサイトにはIBC/MPCが設置され事には変わりはないので、事実上「増設棟」も五輪開催時には展示会では使用できなくなるだろう。また「増設棟」は、展示場面積全体のわずか20%程度なので、IBC/MPC設置による影響の深刻さは変わらないとみられている。
 IBC/MPC設置を巡る“混迷”はまだ続きそうな雲行きである。


東京都オリンピック・パラリンピック準備局


東京オリンピック・パラリンピック招致委員会 14 メディア IBC/MPC配置図

■ ロンドン五輪のIBC/IBCは“オリンピック・パーク”内に新設
 2012年に開催されたオリンピック・ロンドン大会は、1908年の第4回大会、1948年の第14回に続き、3回目の開催である。この年は、エリザベス女王の即位60周年にあたり、英国にとっては記念すべき大会である。
大会のメイン会場として、オリンピック・スタジアムや競技会場や選手村施設などを備えた「オリンピック・パーク」を、ロンドンで最も貧困な地域で、開発の遅れていたロンドン東部のロウアー・リー・バレー地区(Lower Lea Valley)に建設し、この地域を再開発する戦略をとった。
 この「オリンピック・パーク」の一画に2階建ての国際放送センター(IBC)が建設された。広さ約6万平方メートル、映像素材を扱う拠点のため太陽光が入らないよう窓がほとんどない建物である。総工費約500億円(当時の為替レート)、約2年3ヶ月かけて整備された。
 IBCには、147の放送機関等のライツホルダーが参加、204ヵ国にオリンピックの映像を配信し、48億人の視聴者に向けて放送した。
 世界各国に配信した映像フォーマットはすべてHDフォーマット、2,200時間の競技映像と500時間の競技ハイライトをサービスした。
 またIBC の中に3Dのオペレーション・センターを設営し、3D映像の競技映像を配信するとともに、スーパー・ハイビジョン(8K)もパブリックビューイングも行われた。

■ デジタル・クリエイティブ・ビジネスの拠点として再生されたIBC/IMC
 IBC/IMCの建物は、五輪終了後、改修され、ヒア・イースト(Here East)と呼ばれる東部ロンドンの新たなイノベーターやデジタル企業家の拠点として再生された。
デジタル・ビジネス、クリエイティブ・ビジネス関連の企業や大学などの教育機関が進出し、起業支援スペース、コンベンションセンターなども建設されている。
 スポーツ専門放送局のBT Sportのスタジオ・放送設備や、InfinitySDCのデータセンター、ラフバラ大学(Loughborough University)大学院のビジネス・スポーツ・健康関連の研究施設、ハックニー・コミュニティ・カレッジ(Hackney Community College)のデジタル技術実習施設が設置されている。
Here Eastには、欧州で最高水準のデータ・センターと通信インフラを備えているがキャッチフレーズである。
IBC/IMCをロンドン五輪の“レガシー(未来への遺産)”にしようとする明確な戦略と周到な準備があったのである。



(出典 “Here East”ホームページ)

■ “戦略”なき東京五輪のIBC/IMC設営
 東京ビックサイトは、都心に近接した展示場ホールして、年間300会の展示会やコンベンションなどが開催され、約1400万人が訪れるエキジビション施設である。東京ビックサイトにIBC・IMCを設営するとなると最低1年間程度は、設営・準備期間で占有され、年間約300回の展示会やセミナーは開催できなくなりその影響は深刻だ。
展示会やコンベンション開催の団体、2015年9月、展示会業界の最大組織、「日本展示会協会」(日展協/石積忠夫会長)は、東京都に要望書を提出し、隣接地の空き地に、IBC/IMCを建設することを提案した。
東京五輪開催に伴い、海外からスポーツ関係者、メディア関係者、観光客など大勢の訪日者が想定される。それは大きな“ビジネスチャンス”でもある。日本の先端技術やデジタル技術、4K/8Kなどの映像技術、5Gなどの通信技術をPRする格好の場であることを忘れてはならない。1年間の空白は、余りにももったいない。


(出典 株式会社東京ビックサイト ホームページ 利用実績)

 また、五輪開催後、IBC/IMCの“遺産”を再活用する戦略は何も持っていない。
IBC/IMCの整備のために膨大な放送機器や通信インフラを設置しても、五輪終了後の利用をどうするかは何も考えていない。
 東京五輪の開催まで後5年を切った。五輪開催の“レガシー(未来への遺産)”を次世代に残すという発想を持って欲しいものだ。五輪の準備には全体で約2兆円に達するとも言われている巨額の費用が使われるのである。

★ 「月刊ニューメディア」(2015年12月号)掲載 
「TokyoOlyPara NewsCenter① 国際放送センター(IBC) メインプレスセンター(MPC) 設置場所と使用後の再活用策」 加筆修正





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ロンドン五輪 リオ五輪 北京五輪 オリンピックのメディア拠点 IBC(国際放送センター) MPC(メイン・プレス・センター)/ MPC(メイン・プレス・センター)




2015年11月1日(加筆修正 11月29日)
Copyright (C) 2015 IMSSR


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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net / imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
Mobile 81-(0)80-5059-3261
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