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大坂なおみ 全仏オープン棄権 「60億円」の女王 「驕り」

2021年06月28日 17時35分44秒 | 大坂なおみ


大坂なおみ 全仏オープン棄権 「60億円」の女王の「驕り」


全仏オープン 試合に臨む坂なおみ 出典 #大坂なおみTwitter

大坂なおみ、全仏OP棄権表明「邪魔になることだけは」うつ病も告白
 テニスの全仏オープン(パリ)に出場している世界2位の大坂なおみ(23=日清食品)が、5月31日(日本時間6月1日未明)に大会を棄権することを表明した。(*ウインブルドン大会も欠場を表明 五輪大会出場には意欲)
 自身のツイッターに英文で「トーナメントにとって最善の方法は、他の選手、そして私自身の健康のためにも、みんながテニスに集中することができるように、私がこの大会を棄権することだと思う。決して、みんなの邪魔になることだけはしたくなかった」と投稿。
 さらに、「The truth is that I have suffered long bouts of depression」とも記し、2018年の全米オープン以降、長い間、うつ病(depression)に悩まされていた事実も告白した。
 大坂は大会前の5月27日に、選手の精神状態が軽視されていると訴え、自身のSNSで記者会見には出席しないことを宣言。30日の1回戦後に、宣言通り、試合後の会見を拒否した。
 この行動に反発した、全仏オープンの主催者は1万5000ドル(約165万円)の罰金を科した上で、4大大会の主催者合同で「違反を続けると大会からの追放、4大大会出場停止もあり得る」と警告し、状況は一気に緊迫した。
 これに対して、大坂なおみは31日にツイッターに「怒りは無理解から来る。変化することは、人を不愉快にする」と批判とも取れるコメントを投稿、強気の反撃に出た。さらにインスタグラムのストーリーには、19年に亡くなった伝説的なラッパー、ジュース・ワールドの音楽アルバム「good bye & Good RIDDANCE」のジャケット写真を掲載し、その楽曲を流した。タイトルの意味は「さよなら。これでせいせいするわ」だった。主催者をまさに「挑発」する内容である。
 そして、現地時間の同日中に2ページに渡る文書(英文)をツイッターに投稿し、全仏オープンを棄権することを表明した。
 第2シードの大坂は、6月2日のシングルス2回戦で世界ランク102位のアナ・ボグダン(ルーマニア)と対戦する予定だった。


全仏オープン棄権を表明する大坂なおみのツイッター 5月31日

「黒人差別抗議」で称賛された大坂なおみの「成功体験」
 2020年8月、ニューヨークで開催された全米オープンのプレ大会、「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」に出場し、準決勝に勝ち進んだ大坂なおみは、人種差別に抗議して棄権すると表明した。
 ウィスコンシン州で黒人の男性が白人警官に背後から銃撃される事件が発生し、黒人差別に対する抗議活動が全米で巻き起こった。
 これを受けて、大会を主催するWTA(女子テニス協会)とUSTA(全米テニス協会)、ATP(男子プロテニス協会)は連名で、「テニスはスポーツとしてアメリカで再び起きた人種差別と社会的不公平に対し、結束して反対するスタンスとっている」と声明を出し、27日に予定されていたすべての試合を1日延期して28日から再開するとした。
 大坂選手は、女子ツアーを統括するWTAと協議した結果、「彼らがすべの試合の延期を申し出てくれた。棄権を撤回して出場することでより強い抗議の意思を伝えられる」とし、WTAと大会主催者に対し「感謝したい」としたという。
 準決勝に出場した大坂なおみ選手は、ベルギーのエリーゼ・メルテンス選手を破り決勝に進んだ。決勝戦の対戦相手は、ベラルーシのビクトリア・アザレンカ、2012年と2013年の全豪オープン女子シングルスの優勝者で世界ランキング1位になったこともある強豪で白熱したゲームが期待された。しかし、大坂なおみは、突如、左太ももの裏のけがのために決勝戦を棄権した。
 この時の「棄権表明」は、「黒人男性銃撃事件」という黒人差別の象徴的な事件の直後で、大坂選手の姿勢は理解できる。また決勝戦の棄権はけがが理由なのでいたしかたないだろう。
 しかし、準決勝までに大坂選手と対戦して敗れた選手に対してのリスペクトは置き去りにされた。大坂選手は対戦した選手に対して謝罪するべきである。それがスポーツマンシップの礼節であろう。

 そして昨年の全米オープンでは、黒人差別に抗議して、差別の犠牲者の名前の入った7枚の黒のマスクを着用してコートに現れた。大坂選手は試合後のインタビューの中で、大会を通して人種差別に抗議してきた自身の行動について触れ、「みんなの考えるきっかけにしたかった。SNSを通じてしか反響はわからなかったけど、情報が拡散されていって、皆が話をしてくれているのがわかってうれしかった」と述べた。
 この“Black Lives is Matter”を掲げる姿勢は世界中から支持を集めた。


全米オープン(2020年)で黒人差別に抗議して大坂選手は7枚のマスクを着用して出場

 今回の全仏オープンの「記者会見拒否」、そして「棄権」は、「黒人差別抗議」のいわば「成功体験」が、大坂なおみの頭にあったと思われる。
 しかし、全仏オープン主催者はまったく違っていた。全仏テニス協会会長は「とんでもない間違い」であり、「受け入れられない」行為であると厳しく非難し、「4大大会出場停止」も示唆された。 さらに同じプロテニス選手からも批判を浴びる。
 今回の「会見拒否」も大坂なおみは同じように支持を集めるだろうと思いこんでいたと思われる。
 「なぜ私の主張は受け入れてくれいないの」と大坂なおみの戸惑いとフラストレーションは頂点に達したのであろう。
 そして最後は、「うつ病」を告白して、自らの主張を正当化させた。


全米オープン(2020年)で優勝した大坂なおみ選手 出典US Open Twitter

苦手のクレーコート プレッシャーのフラストレーション
 大坂なおみは、爆発的なパワーで世界の頂点に上りつめ、全米オープン、全豪オープンを連覇、スポーツ経済専門の米メディアのスポーティコは、2021年版のスポーツ選手長者番付を発表し、テニスの大坂なおみ(日清食品)は女子最高額の年収5520万ドル(約60億円)と算定した。女子テニスプレーヤーとして圧倒的な人気を獲得し、「女王」に上り詰めた。
 しかし、その一方で、試合中にプレーがうまくいかないとラケットをコートにたたきつけるたりして、感情の起伏が激しく、自滅するケースが頻繁に見受けられ、メンタル面の強化が大坂の最大の課題とされてきた。
 「会見拒否」を表明した要因は、グランドスラムの2連覇がかかった全仏オープンは、大坂なおみが最も苦手とするクレーコート、そのプレッシャーのフラストレーションだと思う。
 大坂なおみは、5月中旬に開催された全仏オープンの前哨戦、イタリアオープンに出場して、初戦でライインキング31位のペグラ(米国)と対戦して、ストレートであっさり敗戦する。ローランギャルズと同じ、苦手のクレートの試合だった。
 第1セットの後半では、思うようにプレーができず、フラストレーションがたまって怒りでラケットをコートに3回たたきつけ破壊。何とか気持ちを切り替えようと努めたが、第2セットは、第1セットを失ったショックから、集中力が低下。合計37本の凡ミスを連発し、簡単に失った。
 これで、全仏前の前哨戦に2大会出場して1勝2敗。大坂なおみの全仏オープンに対する不安感は極度に高まり、自信は喪失していたと思われる。
 今回の行動で、大坂の弱点、メンタル面での弱点が浮き彫りになった。不安感にさいなまれて一人で思い悩んで、急に気持ちが「煮詰まって」この行動に出たのだろう。

* 大坂なおみは、「芝」のコートのウインブルドンも欠場を表明、一方、「ハードコート」の2020東京五輪大会には出場に意欲を示しているという。
 得意の「ハードコート」の大会を選んでいるとしたら、「女王」の称号は剥奪したい。
 
記者会見は出場選手の「義務」
 記者会見は、勝因や敗因だけでなく選手の人間味も伝えることができる貴重な場である。ファン・サービスにとって重要なツールである。時には痛烈な質問を浴びせられることもあるが、それに答えるのもプロ選手として当然の責務、勝った時だけ会見に臨み、負けた時は出席しないのでは説得力がない。

 大坂なおみは、世界中のテニスファンやスポンサーに支えられて約40億円の収入を得ているプロ選手なのである。大会に出場して多額の賞金やスポンサー料を手にする一方で、ファン・サービスや大会主催者に協力しないというのは身勝手としかいいようがない。「権利」だけを主張して、「義務」は放棄する、世界のトップ選手に上り詰めた「思い上がり」の姿勢に筆者は納得できない。

 「記者会見」制度の改革を主張するなら、大会前に申し入れるべきである。申し入れに対する回答が不満なら、全仏オープンへの参加を取りやめればよい。そもそも大会への参加は選手の自由意志である。選手はケガやコンディション不良で、出場を取りやめることは頻繁にある。
 すでに予選が始まって本選が始める直前になって、突然、「会見拒否」を持ち出すのは余りに身勝手なふるまいだろう。
 筆者はグランドスラム会見システムが100%良いとは思っていない。改革の必要性はあるかもしれない。それはそれで冷静に議論すべきだ。
 それでも、記者会見は筆者はきわめて重要な選手とメディアが接する重要な場であると考える。サーブやストロークが好調で勝利した時や優勝した時だけ、記者会見を開くのではまったく意味がない。筆者はむしろ敗戦の弁の方を聞きたい。勝利をした者の言葉より、敗者の言葉の方がはるかに美しい。
 また不祥事や問題が起きた時に、選手は説明責任を負うのは当然だろう。選手にとって都合の悪いことを聞かれるから会見は拒否するというのでは、一流のプロ選手としての資格を欠く。審判にテニスボールをぶつけたジョコビッチ、審判に暴言を重ねたセリーナ、いずれも痛烈な批判にさらされるのはいたしかたない。
 しかし、選手の人間性を否定するような質問やプライバシーを傷つけるような質問が飛び交う記者会見は聞くに堪えない。
 メディアの側の自制も必須である。選手のメンタル面での配慮も必要だということは理解できる。
 だからといって、記者会見は必要ないということではない。ツイッターやインスタグラムなどのソーシャルメディアの発達で、選手はソーシャルメディアで発信すれば十分だとするメディアもあるが、ツイッターやインスタグラムでは、選手側の都合の良い情報しか発信されない。
 スポーツ選手とトランプ元大統領をいっしょにするのも如何かと思うが、トランプ元大統領も記者会見を嫌がり、ツイッターでの発信を多用した。まさに一方通行の発信である。
 グランドスラム4大大会の主催者は、大坂なおみに問題提起を受けて、「意味のある改善」を目指す意向を表明した。今後の成り行きを中止したい。
 
大坂なおみはスポーツマンシップの「礼節」と「リスぺクト」を取り戻せ
 グランドスラムに出場するテニスプレーヤーは、なによりスポーツマンシップの「礼節」と対戦相手を「リスペクト」する姿勢を堅持しなければならない。
 全米オープンでセリーナを破り初優勝した時の表彰式で流した涙は、何だったのだろうか。
 1回戦で対戦したルーマニアのパトリシア・ティグ選手に対するリスぺクトと礼節は一切ない。大坂なおみと優勝を争う前回優勝のシフォンテクやランキング第一位のバーディ、そしてセリーナ・ウイリアムスに対しても同様にリスぺクトと礼節を欠く。
 大会を支えるスタッフやスポンサー企業に対する謙虚さも失った。
 やはり、大阪なおみは、「60億円」を手にした女王の「驕り」に陥ったとしか思えない。一人のプロテニスプレーヤーとして「謙虚」になることを望む。
 
 筆者は、毎回グランドスラムは、テレビ中継を熱心に視聴し、全仏オープンや全米オープンは、現地に赴きスタジアムで観戦したこともある自他共に許す熱烈なテニスファンである。全米オープンで大坂なおみがセリーナを破り優勝した時は、感動して思わず涙を流した。
 大坂なおみが強烈なサーブとストロークで、コートで躍動する大阪なおみの姿をまた是非見たい。
 「うつ病」に長い間、悩んでいたとする大坂なおみ選手の一日も早い回復を心から祈る。

*敬称略



全仏オープン棄権を表明する大坂なおみのツイッター全文 5月31日



*和訳

 みんな、こんにちは。この状況は数日前に私が(ツイートを)投稿したときにイメージしたものでも、意図したものでもない。大会や他の選手、私自身の健康を考えると、私が大会を棄権することがベストだと思う。そうすることで、みんながパリで開かれているテニスの大会に集中できる。
 私は邪魔になりたくなかったし、(記者会見拒否の公表が)理想的なタイミングでなかったことや、メッセージももっと明確にすべきだったことは受け止めている。それ以上に大事なのは、私はメンタルヘルスを軽視したり、この言葉を軽い意味で使ったりはしない。
 本当のことを言うと、私は2018年の全米オープン以降、長い間うつ病に苦しんでいて、このことと付き合っていくのに本当に苦労してきた。私のことを知っている人なら誰でも、私が内向的であることは分かっていると思うし、大会で私を見たことがある人なら誰でも、私がよくヘッドホンをつけて社交不安症をやわらげようとしている姿に気がついていると思う。
 テニスを取材する報道陣は、いつも優しくしてくれたけど(傷つけたかもしれないクールなジャーナリストには特に謝りたいです)、私は社交的に話せるタイプではなく、世界のメディア相手に話す前はとても大きな不安の波にさらされている。本当に緊張するし、あなた方にできる限り最善の答えを出そうとすることにストレスを感じてしまう。
 だから、パリに来てからすでに不安になり傷つきやすくもなっていたので、自身のケアにあてるために記者会見をスキップした方がいいと考えた。
 (大会が始まるより)先に公表したのは、大会の規則が時代遅れに感じていたし、それを強調したかったから。大会ではものすごく気が張り詰めるので、主催者側には大会が終わったら喜んで話し合いたいというおわびの文書を内密に送っていた。
 これからは少しの間、コートから離れようと思っている。でも正しい時期が来たら、選手や報道陣、ファンにとってより良い方向性をツアーと話し合っていきたい。
 とにかく、みんなが元気で安全に過ごされていることを願っています。みんな大好き。いつかまた会いましょう。
(出典 朝日新聞 2021年6月1日)




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2020年6月1日
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廣谷 徹
Toru Hiroya
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代表
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