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高校野球 朝日新聞批判 朝日新聞は高校野球中止を主張すべきだ

2021年08月20日 06時59分02秒 | メディア



宮崎商業 東北学院 試合を辞退 大阪桐蔭ブラスバンド 部員感染、甲子園での応援断念
 8月17日、高校野球大会本部は、選手ら5人の新型コロナウイルス陽性が確認された宮崎商業と東北学院が試合を辞退し、これを受理したと発表した。
 宮崎商業では今月14日の夕方、選手1人が発熱し、PCR検査で陽性反応を示していましたが、宿舎に入っているチーム関係者35人が医療機関で検査を受けた結果、発熱した選手を含め13人の感染がわかり、さらに保健所から8人が濃厚接触者と判断された。東北学院は、選手1人の陽性が確認され、選手3人と朝日新聞社の記者1人が濃厚接触者となった。
 高野連と朝日新聞社は、今大会で出場の可否を判断する際「個別感染」か「集団感染」かを重要視していて、宮崎商業については「集団感染」に該当すると判断し学校側に伝え、17日午前、宮崎商業から19日の初戦を前に出場を辞退するという申し出があり受理したとした。東北学院については、大会本部は「個別感染」としたが、東北学院は、出場するれば感染者や濃厚接触者が特定される恐れがありり、生徒の将来に影響を及ぼす可能性を懸念して「辞退」という判断に至ったという。東北学院副校長は「大変残念だが、生徒のプライバシーを守りたい」と述べた。
 宮崎商業と東北学園の対戦予定校は不戦勝になる。宮崎商は13年ぶり5回目の出場、東北学院が初出場だった。
 朝日新聞は、五輪大会では、コロナ感染で棄権した選手が出たことに言及し、「コロナ禍で涙をのんだ選手たちにとって、この五輪は公平だったと言えるのか。悩みながら出場した選手たちの思いは、報われたのだろうか」と主張した。高校野球については同じ主張はしないのか。高校野球の選手たちの思いは受け止めないのか。
 一方、大阪桐蔭吹奏楽部はブラスバンド演奏による応援を予定していたが、同部内に新型コロナウイルス感染者が発生したため、急きょ応援を取りやめた。同部OB会の公式ツイッターが「大切なお知らせ」と題し、「この度、吹奏楽部で新型コロナウイルス感染者が判明したため、本日予定していた甲子園での応援を取りやめる事になりました。楽しみにして頂いていた皆様には大変申し訳ございません」と投稿した。
 ついにコロナ感染は、選手や学校関係者に及び、前代未聞の2校の出場校辞退という状況に追い込まれた。
 更に悪天候の影響で、今日(8月18日)の試合開催も中止、史上最多の6度目の「延期」となり、選手の健康を守るために設けられた「休息日」も3日が設定されていたが、準々決勝後の1日だけに削減された。「強硬日程」に対しての批判記事は一切ない。
 こうした状況の中で、朝日新聞は高校野球の開催をこのまま継続することが適切なのか、論評する記事を一切掲載していない。五輪開催を激しく批判した報道姿勢はどこにいったのか。メディアとしての責任が問われる。

東海大菅生-大阪桐蔭 豪雨に見舞われ8回表でコールドゲーム 7対4で大坂桐蔭が勝利
 大会3日目の第一試合、東海大菅生-大阪桐蔭の試合は8回の表、東海大菅生の攻撃の最中に中断、甲子園球場は豪雨でグランドは水浸しになっていた。 雨は降りやまず、その後、ノーゲームが宣告され、8回表でコールドゲームとなり7対4で大坂桐蔭の勝利となった。しかし問題は、「中断」の判断は遅すぎたことだ。雨は5回頃から激しさを増し、中継映像を見ていても雨で明らかに視界がなくなり、グランドは水たまりになっていた。なぜ試合が成立する7回前に判断してノーゲームとして再試合にしなかったのだろうか。雨で延期が相次いでいる中で、強引に試合消化を優先させた運営姿勢は非難されてしかるべきだろう。とくかく大会本部は、なにがなんでも「開催ありき」、明らかにアンフェアな判断だった。
 NHKは、生中継番組で、「続行やむなし」を言い続けて、7回に入る前に「中断」について言及しなかったNHKアナウンサーと解説者の責任も問われる。

甲子園に入場認める学校関係者の範囲を制限
 8月16日、高野連と朝日新聞社は、入場を認めている学校関係者の範囲を大会第5日(17日)から制限すると発表した。
 兵庫県に緊急事態宣言が出される見通しになったことなどを踏まえ、学校関係者の定義を生徒、保護者、教職員、野球部員だった卒業生とし、校長が氏名、連絡先などを管理できる人にする。
 第7日(19日)までについては返券に応じる。この措置に伴っての移動、宿泊のキャンセル料は主催者が負担するとした。
 しかし、「校長が氏名、連絡先などを管理できる人に限る」としたことで、これまでの「学校関係者」とは一体何だったのかという疑問がわく。学校が甲子園で観戦したいという人を募って、一般市民でも幅広く観戦が可能だったのではという疑念が生まれる。だとすればなんとも杜撰な「制限」と言わざるを得ない。
 また、代表校の関係者の感染者が出ても、「個別感染」か「集団感染」かを見極めて「個別感染」と見なされれば、チームとしての試合の出場は認められる可能性があるとしている。しかし、代表校の関係者は同じ宿舎に宿泊をしていて、練習、移動などは常に同一行動、マスク着用で「密」は避けるにしても、感染者が発生したら、「個別感染」か「集団感染」にかかわらず、感染リスクは極めて高くなるのは明らかだろう。朝日新聞は五輪大会で「個別感染」か「集団感染」の区別について言及したのか。高校野球だけなぜ特別扱いするのか説明を求めたい。
 「開催ありき」の姿勢はまさに高校野球にある。

速報 宮崎商業の選手ら5人がコロナ感染
 高野連=日本高校野球連盟や朝日新聞は、宮崎商業の選手1人が14日夕方に発熱し、15日に病院でPCR検査を受けたところ陽性反応を示し、これを受けてほかの選手などもPCR検査を受けた結果、16日朝までに新たに選手など4人の感染が確認されたことを明らかにした。
 感染が確認された5人を含むチームの関係者は濃厚接触者について保健所の判断が出るまで宿舎の個室でそれぞれ待機している。
 宮崎商業は18日、第1試合で智弁和歌山高校との初戦に臨む予定になっている。
 大会主催者は、出場の可否について、濃厚接触者についての保健所の判断を待って緊急対策本部の会議を開き決定するとしている。
 一方、政府は今月31日までを期限に「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を適用している兵庫、京都、福岡にも新たに「緊急事態宣言」を発令する方向で検討が進められている。朝日新聞は、「緊急事態宣言」のが発令された東京で、五輪開催を行うことに対して強く批判をした。兵庫に「緊急事態宣言」が発令されたら、朝日新聞は「高校野球開催」を予定通り無批判に続けるのだろうか。主催者として、メディアとしての説明を強く求める。

朝日新聞は高校野球関係者のコロナ感染者を公表せよ 選手1人陽性 朝日新聞記者も濃厚接触者で待機
 コロナ禍の中で開催された甲子園大会は、停滞する前線による豪雨にも見舞われ、大会運営は大きな打撃を受けている。
 昨日は、試合開始時間が3時間も遅れ、最終試合の第四試合は、夜7時10開始、終了は9時30頃、前代未聞の競技運営となった。朝日新聞は、五輪大会の運営で夜間の競技開催について厳しく批判した。高校野球なら9時過ぎまでの開催は「目をつぶる」のか。「開催ありき」と五輪を批判した。「開催ありき高校野球」となぜ批判しない。
 さらに雨の離京であわせて4日間の延期を余儀なくされている。暑さなどから選手の健康を守るために「休息日」がほとんど消えた。朝日新聞は選手の健康問題の配慮はやめたのか。
 懸念されたコロナ感染者が発生していることも大きな問題だ。
 8月14日、1回戦で愛工大名電に勝利し、2回戦に進出した東北学院(宮城)の選手1人が新型コロナウイルスのPCR検査で陽性が判明したと発表された。
 陽性が発覚した選手は13日に発熱。13日夜と14日の朝の2回、PCR検査を行い、ともに陽性反応が出た。14日朝のPCR検査では、他に陽性者はいなかった。当該選手やチームのメンバーは濃厚接触者についての保健所の判断が出るまで、宿舎でそれぞれ個室で待機した。
 翌15日、大会本部は、選手2人と練習補助員1人に加え、チームと大会本部との調整などを担う主催者の朝日新聞記者の計4人が濃厚接触者として保健所に認定されたと発表した。4人はそれぞれの宿舎で待機中で、12日と14日に受けたPCR検査では陰性だった。陽性となった選手は15日に選手宿舎から宿泊療養施設へ移ったという。
 問題は、感染ルートである。選手2人と練習補助員1は、厳しく行動管理がなされていると思われるので、朝日新聞記者がなんらかの「感染源」となった懸念も残る。朝日新聞は、一刻も早く、調査を行い、結果を公表すべきだろう。勿論、プライバシーについては十分な配慮が必要だ。

 最大の問題は、選手やチーム関係者以外の大会関係者や学校関係者のコロナ感染情報が一切明らかにされていなことである。五輪関係者のコロナ感染者を連日報道して厳しく追及した朝日新聞は、高校野球については沈黙している。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、毎日、「選手」、「大会関係者」、「メディア」、「委託業者」などを「海外」と「国内」に分けてコロナ感染者数を公表した。朝日新聞は、同様に高校野球関係者のコロナ感染者を公表すべきだ。
 甲子園地域に開催期間中に滞在している代表校の関係者は、1校当たり約30人として計49校で約1500人、学校関係者が1日あたり最大4000人、それに大会関係者や関連業者などが加わり、1日当たり5000人近くが大会に関わっていると思われる。
 一方、開催地兵庫県のコロナ感染状況は、まさに感染爆発で「制御不能」状態に陥っている。8月12日は史上最高の728人の新規感染を出し、入院病床率は50%超である。兵庫県の陽性率は、20.4%と20%を超えている。5000人に全員にPCR検査を実施すると、20%という数字は過剰だが、数十人程度の陽性者が出るのは当然と思われる。甲子園大会の場合、PCR検査を毎日全員に対して実施していないが、それにしても大会関係者で、「感染者1人」というのは不自然である。
 なぜ朝日新聞は、関連業者やメディアを含めて大会関係者の陽性者の数と内訳を明らかにしないのか。五輪大会は厳しく批判する一方で、高校野球は「目をつぶる」のか、説明を求めたい。
 また、五輪報道については、「バブルに綻び」として、大会関係者が宿泊施設を抜け出して外出する姿を追いかけた。周辺のコンビニ等に「張り込み」取材を行い、大会関係者や外国人メディアが飲料などを買う姿を報道して批判を浴びさせた。
 高校野球関係者の「バブル体制」は実施していないが、外出自粛が求められている。甲子園エリアに滞在する大会関係者が市内に外出する様子の「張り込み」取材はしないのか。地元兵庫県は感染爆発の状況である。
 朝日新聞は、主催者としてメディアとしての責任を果たして欲しい。

朝日新聞社は「高校野球大会中止」を検討しないのか
 日本人選手のメダルラッシュで沸いている五輪大会の開催中の7月27日、東京都の新型コロナ新規感染者数が過去最多となったことを受け、菅首相は、オリンピックを中止するという選択肢はあるかとの質問に対して、オリンピック中止の可能性を否定した。
 菅首相は、コロナ感染の再拡大が進む中で、朝日新聞社を始め、メディア各社から、オリンピック中止の可能性を再三に渡って問われていた。
 8月12日、朝日新聞は、一面トップで「31都道府県『感染爆発』」とい見出しを掲げ、厚労省の専門家組織は首都圏を中心に「もはや災害時の状況に近い局面」だと強い危機感を示したと伝えた。最早、日本は「感染爆発」の危機に立たされているのである。
 こうした中で8月10日に朝日新聞社と高野連が主催する夏の甲子園大会が開催されている。今日は雨のために中止となり、試合は明日以降に順延となった。
 朝日新聞などメディアは、五輪開催については、コロナ感染者が急速に増加している中、「中止の可能性」について、必要に菅首相に迫った。
 しかし、「感染爆発」の危機に突入したという局面の中でも、主催者である朝日新聞社は「高校野球中止」問題について言及をしない。開催を懸念する記事すら一切ない。
 筆者はこうした朝日新聞の報道姿勢にまったく納得しない。
 朝日新聞やメディアが五輪に対しては「中止の可能性」について菅首相に迫ったと同様に、高校野球の「中止」の可能性を朝日新聞社に問いたい。メディアとしての良心と正義が問われている。
 コロナ感染者爆発の危機は、明らかに五輪開催時を上回っている。


8月12日 朝日新聞1面 「31都道府県『感染爆発』」

朝日新聞は「高校野球」だけを特別扱いするな!
 8月10日、夏の高校野球大会が開幕した。開会式の選手宣誓で、小松大谷(石川)の木下仁緒主将は、「1年前、甲子園という夢がなくなり、泣き崩れる先輩たちの姿がありました。しかし、私たちはくじけませんでした。友の笑顔に励まされ、家族の深い愛情に包まれ、世界のアスリートから刺激を受け、一歩一歩歩んできました」と述べ、「人々に夢を追いかけることの素晴らしさを思いだしてもらうために、気力、体力を尽くしたプレーで、この夢の甲子園で高校球児のまことの姿を見せることを誓います」力強く締めくくった。
 「夢の甲子園」で高校球児が見せる「感動」と「勇気」そして、「希望」は、コロナ禍の中で閉塞感が溢れている今の日本の中で、後世に残るレガシーになる大会になることは間違いない。
 しかし、筆者は、朝日新聞の「五輪」に対する激しい批判と「高校野球」に対する報道姿勢に大きな疑問を抱く。
 五輪大会を目指したアスリートへの思いは無視して、高校球児の思いはしっかり受け止める、五輪あるリートの思いと高校球児の思いに違いはあるのか、朝日新聞に問いたい。
 五輪大会を社説で「中止勧告」をしたり、五輪バッシングを執拗に繰り返した姿勢への反省が一切ない。五輪は開催反対で、高校野球はなぜ開催なのか明快な説明が欲しい。
 夏の甲子園大会は、夏のスポーツビックイベントして全国的に絶大な人気がある。甲子園大会の関心の高まりは、出場校のある地域などを中心に、「人流」が増え、市民のコロナ対策への「気の緩み」を誘発するのは間違いない。
 朝日新聞は、五輪開催で市民の「気の緩み」が生まれ、「人流」が増加して、コロナ感染が増加する懸念を繰り返し指摘した。しかし、夏の甲子園大会ではその懸念がないのか。朝日新聞は明快な説明をすべきだ。五輪大会だけ、批判をして高校野球の悪影響には眼をつぶる報道姿勢には、まったく唖然とする。
 新型コロナウイルスの新規感染者は、高校野球が開幕した8月9日、全国で1万2073人、重症者は1190人と五輪が開催された7月23日に比べて倍以上になり、感染状況は更に悪化している。地元大阪や兵庫の新規感染者数は、大阪で995人、兵庫で275人に及び、病床占有率は40%を超えている。コロナのパンデミックは、五輪開催の時よりも更に悪化している。

 朝日新聞は、五輪開催による医療体制逼迫を厳しく警告した。しかし、夏の甲子園大会の開催で、地元の大坂、神戸の医療体制逼迫を警告する記事は一切ない。大坂、神戸の医療体制は崩壊寸前であろう。なぜ医療体制に言及しないのか朝日新聞は説明するべきだ。ちなみに五輪関係者で、コロナ感染で入院した人は、わずか4人で、五輪関係者のコロナ感染による「医療崩壊」は起きなかった。また、海外から来日した選手や大会関係者から、日本の市民にコロナの感染が広まったというファクトは今の所はない。
 また、多くの専門家やメディアは、五輪開催で「気の緩み」が生じて、「人流」が増して感染拡大に輪をかけたとしているが、印象論に基づいた発言、エビデンスがない。五輪開催で本当に「人流」は増えたのか。むしろ「巣ごもり観戦」で外出は減ったのではないかと筆者は分析する。

 8月10日、東京都医学総合研究所は、GPS の移動パターンからレジャー目的の人流・滞留を推定して、主要繁華街にレジャー目的で移動・滞留したデータを抽出して、主要繁華街 滞留人口を推定した。
 その結果によると、夜間滞留人口は、前週より 4.5 % 減少、6週連続の減少となった。7週前(6/20-26)と比較すると 30.2 % 減 となる。昼間滞留人口や、前週より 2.5% 減少、5週連続の減少となった。6週前(6/27-7/3)に比較して:19.7% 減 である。このデータを見ると、五輪開催が「人流増」につながったとするエビデンスはない。
 五輪と「人流増」の関係は、印象論でなく、エビデンスで論議するべきだろう。

 今年の夏の甲子園大会では、一般の観客は入れないが、参加各校の関係者や応援団などは1校当たり2000人を限度に入場を認めた。全国から選手や学校関係者が、交通機関や貸し切りバスを連ねて甲子園に集まる。
 政府や専門家は、感染防止策としてお盆を迎える中で「県境超える移動」の自粛を強く要請している。高校野球の開催はこうした要請に明らかに背反していることは間違いない。主催者の朝日新聞はこれをどう説明するのか。

 朝日新聞の論説委員・郷富佐子氏は「日曜に想う 『パラレルワールド』で起きたこと」とタイトルで、ボート競技のイタリア男子代表、ブルーノ・ロゼッティ選手 
がコロナ検査で陽性となり試合への出場ができなくなったり、サーフィン男子のポルトガル代表など、コロナ感染で棄権した選手が複数いたことに言及し、「おそらく今晩の閉会式で、バッハ会長は、高らかに「困難を乗り越えた東京五輪の成功」を宣言するだろう。 だが、いま一度、問いたい。コロナ禍で涙をのんだ選手たちにとって、この五輪は公平だったと言えるのか。悩みながら出場した選手たちの思いは、報われたのだろうか」と結論づけた。
 筆者は、郷富佐子氏に問いたい。
 今年の高校野球大会では、優勝候補筆頭の東海大相模高校で関係者31人が感染するというクラスターが発生し、県大会の出場を辞退、強豪校の福井商業や星稜(金沢市)、中越(長岡市)も感染者を出して県大会の出場を辞退している。
 こうした状況の中で、今年の高校野球は、「公平」だと言えるのか。
 朝日新聞の、ファクトを無視したアンフェアな五輪バッシング報道姿勢には唖然とする。

 さらに問題なのは、社説で「五輪反対」を唱えながら、五輪大会を支援するオフイシャル・サポーターを辞退せず、「経営と記事は別」として、スポンサーとしての営業活動を続けたことだろう。日本選手のメダルラッシュに沸くと、朝日新聞は、「手のひら返し」で五輪批判記事を引っ込めて、アスリートの「感動」と「称賛」の記事で紙面は溢れかえった。開催期間中は連日号外を発行し、日本選手の活躍を讃えている。号外には、しっかりスポンサーの広告も掲載、広告料収入もしっかり得ている。五輪を激しく批判しておきながら、アスリートへの「感動」を「売り物」にしている営業姿勢は問われてしかるべきだ。

 ライバルの読売新聞が7~9日に実施した全国世論調査では、東京五輪が開催されてよかったと「思う」は64%に上り、「思わない」の28%を大きく上回った。
 朝日新聞は、8月9日の1面で、東京本社スポーツ部長・志方浩文氏は「確かな理念を伝えられぬまま、東京五輪は終わった。でも、まだできることはある。組織委がすべての反省点を洗い出し、持続可能な五輪につなげる提案ができたなら、レガシーと言えるものになる」と述べた。
 しかし、検証しなければならいのは、組織委だけでなく、五輪ネガティブ報道に終始した朝日新聞の報道姿勢にある。朝日新聞の記者はすべて五輪ネガティブ報道を支持したのか。異論はなかったのか。社内で、五輪ネガティブ報道に対して、「ものを言えない」雰囲気がなかったのか。
 激しく五輪開催を批判する記事を執筆した記者の人たちに問いたい。
 五輪開催時よりより深刻になっているコロナの感染状況の中で、高校野球を開催することに何の疑問も持たないのか? 朝日新聞が主催するイベントだから批判はしないのか。ジャーナリストとしての正義が微塵も感じられない。
 
 朝日新聞を中心とするメディアの激しい五輪バッシング報道で、社会全体に、「五輪開催支持」だがそれを唱えられないという雰囲気が蔓延した。メディアに登場する評論家や有識者の多くは、ほとんど盲目的に五輪反対に追随した。まるで五輪反対を主張しないとまづいのではと思っているがごとくの無節操な大合唱を繰り返した。冷静にファクトを見つめる姿勢がない。
 こうした五輪バッシング報道で、追い詰められたのは、五輪を目指してきたアスリートたちである。
 競泳日本代表の池江璃花子選手は、ツイッターで「(東京五輪代表を)辞退してほしい」「(五輪の開催に対して)反対の声をあげてほしい」といったメッセージが複数寄せられていることを明かした。
 池江選手は「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然のことだと思っています」としながら、2019年2月に白血病と診断されたことを受けて、「持病を持ってる私も開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています」と書いた。
 そして、「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」とコメント。「この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守ってほしいなと思います」と苦しい胸を内を明らかにした。
 アスリートの多くは、「五輪開催」を唱えたくても唱えられない状況に追い込まれたいただろう。社会全体に「ものを言えない」閉塞状況が覆った。まさに五輪反対ファシズム、冷静な議論の場を確保するデモクラシー社会を放棄した。
 こうした状況を生み出したのは朝日新聞を中心とするメディアの責任だ。メディアの責任は極めて重い。

 筆者は、改めて明快にしておきたいのは、熱烈は高校野球ファン、毎年、テレビ中継に1日中かじりついている。去年は中止になり本当にがっかりした。コロナ禍の中でも、感染防止対策を進めながら開催する姿勢を支持したい。コロナとの戦いは長期戦になるのは間違いない。コロナ禍だからこそ、スポーツイベントの開催を簡単に諦めるのではなくて、なんとか開催して、国民に「感動」と「勇気」を与えていくことが必須だろう。
 「五輪」も「高校野球」もまったく同じだ。

 一方で、筆者は五輪の在り方に全面的に賛同しているわけではない。
 止まることを知らない肥大化、膨大に膨れ上がる開催経費と地元負担の重圧、過度な商業主義、国際オリンピック委員会(IOC)の閉鎖的な体質や「浪費」体質、賄賂が横行する腐敗体質など厳しく批判を続けてきた。
 また完全に吹き飛んだ「復興五輪」の開催理念や招致を巡る贈収賄疑惑、放射能汚染水を巡る安倍前首相の発言問題も問い続けたい。この姿勢は変わることはない。
 しかし、筆者はオリンピックの開催理念、「多様性」と「調和」は支持したい。
 「分断」と「対立」を超えるツールとして「スポーツの力」を信じたい。



7月22日 朝日新聞朝刊(以下同)




7月27日 朝日新聞号外




2021年8月10日
Copyright (C) 2021 IMSSR

******************************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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羽鳥慎一モーニングショー ファクトチェック 検証 五輪ネガティブ報道 五輪ポピュリズム

2021年08月12日 08時07分56秒 | メディア



2020東京五輪大会 開会式 7月23日 出典 TOKYO2020

羽鳥慎一モーニングショー ファクトチェック 検証 反五輪バッシング報道 五輪ネガティブ報道

「羽鳥慎一モーニングショー」は「高校野球大会中止」を唱えないのか
 日本人選手のメダルラッシュで沸いている五輪大会の開催中の7月27日、東京都の新型コロナ新規感染者数が過去最多となったことを受け、菅首相は、オリンピックを中止するという選択肢はあるかとの質問に対して、オリンピック中止の可能性を否定した。
 菅首相は、コロナ感染の再拡大が進む中で、朝日新聞社を始め、メディア各社から、オリンピック中止の可能性を再三に渡って問われていた。
 8月12日、朝日新聞は、一面トップで「31都道府県『感染爆発』」とい見出しを掲げ、厚労省の専門家組織は首都圏を中心に「もはや災害時の状況に近い局面」だと強い危機感を示したと伝えた。最早、日本は「感染爆発」の危機に立たされているのである。
 こうした中で8月10日に朝日新聞社と高野連が主催する夏の甲子園大会が開催されている。今日は雨のために中止となり、試合は明日以降に順延となった。
 朝日新聞などメディアは、五輪開催については、コロナ感染者が急速に増加している中、「中止の可能性」について、必要に菅首相に迫った。
 しかし、「感染爆発」の危機に突入したという局面の中でも、主催者である朝日新聞社は「高校野球中止」問題について言及をしない。開催を懸念する記事すら一切ない。
 筆者はこうした朝日新聞の姿勢にまったく納得しない。
 五輪大会開催の批判を激しく続けた「羽鳥慎一モーニングショー」はなぜ高校野球の「中止」の可能性を追求しない。玉川徹氏は「高校野球開催」を批判しないのか。玉川徹氏の見解を聞きたい。 
 「羽鳥慎一モーニングショー」やメディアは、五輪に対しては「中止の可能性」について菅首相に迫ったと同様に、高校野球の「中止」の可能性について言及すべきだ。
 コロナ感染者爆発の危機は、明らかに五輪開催時を上回っている。


8月12日 朝日新聞1面 「31都道府県『感染爆発』」

感染者の爆発は五輪のせい 根拠のない五輪バッシング
 日本医科大学特任教授の北村教授は、8月11日放送のTBSの情報番組、「ひるおび」に出演して、五輪開催がコロナ感染者増大に影響を与えたかという問題について、「五輪開催期間だけでなく、4月頃の聖火リレー開始頃から、国民に『五輪開催』が浸透して、「気の緩み」が生じている」と、五輪開催が感染者増大に大きな影響を与えたと述べた。
 しかし、4月頃の国民の「五輪」に対する意識は、大半が「開催延期」や「開催中止」を支持し、聖火リレーも相次いで公道での実施は中止され、国民の五輪への盛り上がりはまったくなかった。こうした中で、「五輪開催」で国民に「気の緩み」が生じたとするのは、余りにもファクトを無視したお粗末な発言だろう。北村氏は、4月から開催直前の状況を忘れたのだろうか。北村氏は連日のように情報番組に出演していたので、こうした状況を知らなかったはずがない。
 これに対して、政治評論家の田崎史郎氏は、「『五輪開催』がコロナ感染者増大に影響したかは、これからの2週間の感染者数を見たい」とした。コロナ感染者の増減は、概ね2週間後程度の状況を反映するとするのが常識である。緊急事態宣言を出してもその効果が現れるのは、2週間後程度とされている。北村氏もそれは十分認識しているに違いない。田崎氏の発言は極めて的を得ている。
 コロナ感染者が一気に急増したのは、7月25日頃からで、7月27日には東京の1日の感染者は3000人を超え、7月31日には4500人を超える。この急増は概ね7月中旬の感染状況が反映しているとするのが妥当だろう。つまり、「五輪開催」はあまり関係ないのである。この時期は、日本人選手のメダルラッシュもないし、五輪に沸くている状況は一切ない。五輪に対する熱気が一気に高まったのは、7月27日ソフトボール女子が米国を破って金メダル、競泳で大橋選手が金メダルを獲得してからであろう。感染者増の原因は、筆者の推測だが、夏休みと自粛疲れ、政府のコロナ対策への不満などが重なっての「人流」増と思われる。。渋谷の繁華街や湘南ビーチの人出を、「五輪」のせいにするのは無理がある。筆者は、日本人選手のメダルラッシュが相次いて、五輪への熱気が高まると、「巣ごもりテレビ観戦」が広がり外出は減ると見ている。

 8月10日、東京都医学総合研究所は、GPS の移動パターンからレジャー目的の人流・滞留を推定して、主要繁華街にレジャー目的で移動・滞留したデータを抽出して、主要繁華街 滞留人口を推定した。
 その結果によると、夜間滞留人口は、前週より 4.5 % 減少、6週連続の減少となった。7週前(6/20-26)と比較すると 30.2 % 減 となる。昼間滞留人口や、前週より 2.5% 減少、5週連続の減少となった。6週前(6/27-7/3)に比較して:19.7% 減 である。このデータを見ると、五輪開催が「人流増」につながったとするエビデンスはない。
 五輪と「人流増」の関係は、印象論でなく、エビデンスで論議するべきだろう。

 ファクトに基づかない北村氏の無責任な発言は批判されてしかるべきだ。北村氏の反論を待ちたい。エビデンスとファクトにも続かない五輪バッシング報道は未だに収まらない。

メダリストの涙の裏に「追い詰められた1年」の苦悶を見た
 五輪開催に対してメディアは連日のように激しい「五輪バッシング」を浴びせ続けた。
 BBCニュース(6月12日)は、「(日本)国内の議論は極めて感情的なものとなった。異なる意見は許されず、開催に前向きな思いをもつ人はそれを表明するのを恐れた。その影響はアスリートにも及んだ。白血病から復帰して競泳の東京五輪代表に内定し、多くの人に感動を与えた池江璃花子選手には、出場辞退を求める声がソーシャルメディアで寄せられた。彼女は、「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事」である反面、「それを選手個人に当てるのはとても苦しい」とツイートした。中村知春選手も、「東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかってるから。 別に何も考えてない訳じゃない」とツイッターに投稿した」と伝えた。
 アスリートが五輪に出たいと言えない、開催してほしいいう声が上げられなくなっていた。
 アスリートを追い詰めたのは、「羽鳥慎一モーニングショー」を筆頭に、メディアの激しい「五輪バッシング」だったのは間違いない。
 メダルを獲得して表彰台に上がったアスリートには、笑顔と同時に涙があった。筆者は、涙の裏に、コロナ化で練習もできない一方で、目標としている五輪大会開催に激しい批判が浴びせられて苦悶し続けていた姿をアスリートの姿を見た。
 柔道、競泳、卓球、ソフトボール、そして史上最年少の金メダリストが出たスケートボード、五輪大会には、「感動」と「勇気」がもらえる。
 五輪バッシングを浴びせ続けてアスリートを苦境に追い込んだ「羽鳥慎一モーニングショー」、五輪大会の「感動」と「勇気」を伝える資格がない。


ソフトボール日本代表 上野由岐子投手の熱投で米国を下して感動の金メダル 出典 TOKYO2020

「金メダルラッシュ」 コロナ禍の中で「感動」と「勇気」を与えてくれるアスリート
 2020東京五輪大会は、開会式のNHK中継番組が、56・4%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)という「驚異的」視聴率を獲得し、1964年東京五輪の61・2%に迫った。瞬間最高は61・0%に達したという。
 序盤戦の日本人選手の活躍は目覚ましく、「金メダル」ラッシュである。柔道では阿部詩選手と阿部一二三選手の兄妹が揃って金メダルに輝く。兄妹の同時金メダルは初の快挙である。競泳400メートル個人メドレーでは大橋悠依選手が完勝して金メダル、新種目のスケートボードでは堀米雄斗選手も金メダルを獲得した。
 26日には、スケートボード女子ストリートで13歳の西矢椛選手が日本選手で史上最年少となる金メダルを獲得、また、16歳の中山楓奈選手が銅メダルを獲得した。五輪大会の新競技で2人の10代のメダリストが誕生した。夜になって柔道男子73キロ級で、大野将平選手が二連覇を達成した。
 そして、27日には、ソフトボールで、日本代表チームは、上野由岐子投手の熱投で、米国を下し、悲願の金メダルを獲得、日本列島はその快挙に沸いた。
 こうした日本人選手の大健闘で、東京五輪大会の熱気は一気に高まった。アスリートの活躍は、コロナ禍で閉塞感が溢れる中で、ひときわ感動と勇気をもたらしてくれる。
 「羽鳥慎一モーニングショー」は、ソフトボールに日本代表チームが米国を下して、悲願の金メダルを獲得した翌日の放送で、「おめとうソフトボール日本代表」と上野選手など日本代表チームをライブで出演させて、その大健闘を讃えた。五輪大会に対する「熱気」を明らかに高める内容である。
 これまで、「羽鳥慎一モーニングショーは、五輪大会に対して痛烈な批判を繰り返してきた。その姿勢はどこにいったのか? 
 金メダルラッシュが続けば五輪批判はやめるのか? 余りにも節操がないお粗末な報道姿勢である。
 作家の百田尚樹氏はツイッターで、「まず最初に、『皆さんの活躍の場を奪うために、五輪開催に反対して、すいませんでした』と謝ってから、インタビューしろや。クソモーニングショー!」と厳しく批判した。
 五輪バッシングを繰り返して、アスリートを追い詰め、五輪開催の意義すら否定したことを忘れたのだろうか。
 メディアは報道姿勢の一貫性が求められる。さもないとメディアとして最も重要な「信頼性」を失う。
 「羽鳥慎一モーニングショー」に、五輪大会でアスリートのもたらす「感動」と「勇気」を伝える資格がない。


スケートボード女子ストリートで13歳の西矢椛選手が日本選手で史上最年少となる金メダルを獲得 出典 TOKYO2020


新体操 杉原愛子選手の“ARIGATO” Twitter 8月8日

アスリートのプライバシーをないがしろにするな
 7月19日の羽鳥モーニングショーでは、昨日、大会組織委員会が主催して赤坂迎賓館で行われた「バッハ会長の歓迎会」の話題と新型コロナウイルスに感染した五輪出場選手の「実名公表」の話題を取り上げた。
 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は18日、東京・迎賓館で国際オリンピック委員会(IOC)の関係者をもてなす歓迎会を開催した。
 「バッハ会長の歓迎会」には国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長やジョン・コーツ東京大会調整委員長を始め、菅首相、丸川五輪相、東京都の小池百合子知事、日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長ら約40人が出席した。
 食事やアルコール類は振る舞われなかった。出席者によると、森喜朗・前組織委会長も出席し、ピアニストの辻井伸行さんによる演奏も披露されたという。
 組織委員会では感染対策も十分に実施した上で、開催したとしている。
 警戒宣言化で、開催や止めるべきだと主張するメディアも多いが、筆者は、「バッハ会長の歓迎会」をこうした形で実施するのは、何ら問題はないと考える。要人が来日した場合の「礼儀」としては当然だろう。コロナ化でも、この程度の集会や会議を許容しなければ、withコロナの時代に社会生活を維持できない。今、社会一般の企業や組織、家庭では、そんなにストイックな姿勢を続けているのだろうか? 羽鳥氏に問うが、やめた「音楽イベント」にメンションするだけではお粗末で、全国では無数のイベントが観戦防止策を講じながら開催されているファクトをないがしろにしている。プロ野球やJリーグは5000人まで観客を入れて開催している。
 五輪・IOCバッシング報道の典型である。
 一方、コロナに感染した南アフリカの選手の「実名公表」を取り上げた。「実名公表」は明らかに、アスリートの人権侵害である。海外のアスリートにはプライバシーへの配慮はいらないのか、差別だろう。
 組織委員会は、感染者の国籍、年齢、性別、肩書、活動経路などは公表しない。公表することで個人が特定されるからだとしている。当然の対応である。
 日本医科大学特任教授の北村教授は、「情報は出した方が良い。五輪は超大規模イベントなので特別な影響があるから記録に残すべき」とした。記録に残すのは異論はないが「公表すべき」としたのは大いに問題がある。
 北村氏の発言は、人権侵害に配慮しないお粗末な発言である。プ野球やJリーグで感染者が出たらどうような主張をするのか。北村氏は基本的に患者のプライバシーについて軽々に考えているのは問題で、医療従事者として失格だろう。日本医科大学ではこのような認識で、学生に指導しているのだろうか。
 これに対して、コメンテーターの玉川徹氏や山口真由氏は適切なコメントで歓迎したい。
 今問題にすべきなのは、五輪ではなく、7月18日、全国で3103人、東京で1008人の感染者を出して、第五波パンデミックに入りつつある危機的状況であろう。「警戒宣言」や「重点措置」が疑問視されている中で、「人流」抑制もまったく効果がなく、むしろ増大している。こうした状況の中で、感染防止策として何をすべきなのか真剣に議論をして欲しい。感染者の急増は五輪は関係ないのである。
 23日には、開会式を迎え、いよいよ五輪大会が始まる。
 テレビ朝日も、7月24日には、民放系列の先頭を切って、柔道、バレーボール、競泳などで丸一日、競技中継を行う。日本選手が活躍してメダルを獲得したら大騒ぎをするに違いない。
 「羽鳥慎一モーニングショー」では、五輪開催期間中に、日本選手の活躍などがあって大会の雰囲気が盛り上がると、「人流」が増えたり、気が緩んで感染対策が甘くなり、感染者が増える可能性があるとして、「反五輪」の主張を繰り返した。この論拠は尾身茂政府分科会長も同じである。
 しかし、大会の雰囲気を盛り上げるのはテレビである。一方で「雰囲気が盛り上がる」ことを懸念する主張をしながら、一方で「雰囲気が盛り上げ報道」をするのはまったく納得できない。「反五輪」の主張を繰り返した筋を是非貫いて、五輪の「雰囲気を盛り上げ報道」は止めるのが筋だ。
 羽鳥慎一氏も心して放送に臨んで欲しい。

「五輪後“2400人”試算」 ファクトを踏まえず五輪バッシング
 7月16日の放送の「羽鳥慎一モーニングショー」では、「東京1308人感染 連日1000人越え 五輪後“2400人”試算も」という見出しパネルを掲げて、昨日の東京都のモニタリング会議で、専門家が警告を鳴らしたというニュースを取り上げた。
 問題は、「五輪後“2400人”試算も」としたことで、あたかも五輪開催の影響で新規感染者が「2400人」人なると誤解させる見出しになっている。
 この試算は五輪開催リスクとは一切関係がない。ファクトと科学的な分析を無視した五輪バッシングの典型的な報道姿勢だろう。
 まるでコロナ禍が収まらないのはすべて「五輪」のせいで、「五輪」さえやめればコロナ禍は収束といっている感がする。「五輪」がなくても「2400人」に急増するのである。
 これに対して、NHKニュースでは、「東京都のモニタリング会議で、専門家は「都内では感染が急速に拡大している」と指摘しました。現在の増加比が続くと、4週間後には、7日間平均が2400人を超え、変異ウイルスの影響などで感染拡大が加速すると、早期に、年明けの第3波を超えると強い懸念を示しました」と報道している。
 新規感染者増加の予測は、7月14日時点の7日間平均で、約817人で、625人だった1週間前の7月7日時点の1.31倍に増加したとして、1.31倍の増加率が続いたとして「4週間後」に何人なるかを算出したのである。
 五輪開催リスクを考慮したわけではなく、五輪開催とはまったく無関係の試算である。
 「五輪」の語句は出てこない。NHKニュースのファクトについての見識は大いに評価される。
 「羽鳥慎一モーニングショー」のなにがなんでも「五輪」を「悪者」にする姿勢はお粗末極まりない。ファクトと科学を踏まえた報道をすべきだ。

問題は「東京五輪に新たな問題浮上」ではなくて「新規感染が1149人」 お粗末な五輪バッシング報道
 7月15日の「羽鳥慎一モーニングショー」は、東京の新規感染が1149人に達し、感染の再拡大が進んでいるというニュースと「東京五輪に新たな問題浮上 隔離期間中にホテル外出 『バブル方式』に早くも穴」と伝え、新規感染が1149人という感染拡大があたかも五輪関係者からの感染リスクの懸念が大きいように伝えた。新規感染が1149人については、さほど時間をかけず、「『バブル方式』に早くも穴」に時間を費やす。他局のやっているが、五輪関係者の宿泊するホテルの前やコンビニの前に取材陣が張り付き五輪関係者が外出をしたり、コンビニ買い物をする姿を「隠し」撮影している。
 ホテル周辺を散歩している人もいると伝えたが、そもそも散歩やコンビニの買い物でどれほどの感染リスクが生じるのか、大いに疑問である。モーニングショウのコメンテーターは玉川一郎氏を始め、石山アンジュ氏、羽鳥慎一氏は、コンビニ買い物に行かないのか、コンビニにいった時に感染リスクの懸をどれだけ抱いているのか? 筆者にはコンビニでの感染リスクはほとんど感じていない。
 コンビニに買い物に行って感染した人や散歩をして感染した人はほとんど聞かない。
 コンビニ買い物をする姿を「隠し」撮影しているテレビ朝日の取材陣は、まさに三流ジャーナリズムの体を成している。
 また海外メディア関係者を「目の仇」にして差別的な報道を続けている。五輪のメディア関係者は国内のメディア関係者の方がはるかに多く大半をし占める。テレビ朝日でもモーニングショーや五輪の取材陣は数多くいて、日夜取材に跳び回っているだろう。
 感染者もキャスター陣を含めて頻繁に出ている。
 まずは、テレビ朝日の五輪取材陣を圧縮して、大会組織委員会の示したメディアのルールブックの行動管理をするべきだろう。テレビ朝日の関係者のワクチン接種や検査体制はどうなっているのか公表すべきだ。レビ朝日の関係者で、夜、飲みに行っている人はいないのか? 問われているのは日本のメディアだろう。
 海外のメディアの「魔女狩り」は止めるべきだ。差別である。
 今朝、問題にしなければならないのは、「東京の新規感染が1149人」、ついに1000人を突破した「第5波」の到来をどう抑えるかだろう。「1149人」のパンデミックの原因は、五輪は一切関係ない。
 7月15日、東京は新規感染者「1300人超」を記録し、とどまることを知らない。東京都モニタリング会議で大曲貴夫氏は、東京都の新規感染者数は、今の感染者増のペース、131%増がこのまま続くと、8月11日には2406人に達し、第三波のピークを大きく超えるパンデミックとなると警告した。「人流増」と「変異株」が感染拡大の主な要因だとしている。この予測には「緊急事態宣言」の効果は含めていない。
 事態は危機的状況に陥っている。「緊急事態宣言」だけに頼る感染防止策は効果がないのは明らかだ。しかし、東京都や国は、「警戒宣言」を出し、飲食店と酒類提供規制にほか、ほとんど何もしていない。羽鳥氏も玉川氏も「1300人超」を重く受け止めて、どうしたら感染拡大を抑えることができるのか真っ向から検証する姿勢を示して欲しい。視聴者に伝えなければならないのは「五輪」ではなくて「1300人超」である。それがジャーナリズムの正義である。

「緊急事態宣言」真実 緊急度はまったくなし 海外の専門家は冷笑
 7月12放送の羽鳥真一モーニングショーでコメンテーターの玉川徹氏は、五者協議でバッハ会長が「緊急事態宣言」について、内容がよくわかないと発言したことについて、お粗末と厳しく批判を浴びせた。
 しかし、日本の「緊急事態宣言」の実態を理解していないのは玉川氏である。
 欧州が感染爆発に対してとった措置はいわゆる「ロックダウン」、すべての市民は病院に行くとか限られた外出を除き、原則、外出禁止、小売店や飲食店は閉鎖、学校も閉鎖、警察や軍隊まで繰り出して市民を取り締まった。日本の「緊急事態宣言」は欧州の「ロックダウン」とはほど遠い、緩やかな措置だ。
 今回の「緊急事態宣言」下でも、野球、サッカーなどのスポーツイベントは、「収容人数の50%」か「上限1万人」で、観客で開催が可能である。デパートやショッピングセンターは時短要請で日中は平常に変わりなく営業可、劇場や映画館、博物館もオープンしている。渋谷や銀座、新橋などの繁華街はいつもように多くの人でにぎわっている。人流は、以前より増えて、混雑ぶりは増している。飲食店の酒提供だけは禁止されたのが厳しい措置である。
 こうした現状を見ると、素直に見れば、一体なにが「緊急事態」なのか、通常の市民生活はほとんど規制されていないのではと思っても自然だろう。
 新規感染者も、日本は全国で1日2000人超、これに対して、米国や英国は10倍以上の3万人を超えている。データから見ても緊迫感は見られない。医療逼迫が懸念されているとするが、各地域によって差はあるものの、コロナ病床の使用率は、最大の感染地、東京都では軽中等症病床で32%程度、重症病床で16%程度、大阪では軽中等症病床で17%程度、重症病床で13%程度、果たして「医療逼迫」の危機が迫っているといえるのだろうか。特に重症者の数で言えば、全国で50人~60人にとどまっていて、深刻な状況ではない。
 日本が欧米に圧倒的に劣っているのはワクチン接種率、国民全体の接種率は12%程度で、欧米に遥かに及ばない。ワクチン接種率の低さが、変異ウイルスの感染拡大が進む中で、感染爆発を招き、医療逼迫を引き起こすリスクは確かにあるだろう。
 しかし、今回の「緊急事態宣言」どう見てもその危機感が感じられない。バッハ氏が「緊急事態宣言」とは一体どういうことかと疑念を持つのも当然である。
 玉川氏はこうしたファクトを理解しているのだろうか。
 反オリンピックを声高に叫ぶのはいいが、異論を許さず、恐怖を煽って視聴者を扇動する姿勢は改めて欲しい。
 ファクトを冷静に見つめることが、メディアの使命である。


「五輪開催」すべき 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末 根拠なし パンデミック・リスク 
開催実現で「Withコロナの時代のニューノルマル」をレガシーに


朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき

朝日新聞は東京五輪の「オフイシャルパートナー」を返上せよ

5月26日朝刊 朝日新聞社説 「東京五輪 中止の決断を求める」

東京オリンピック 尾身会長批判 五輪リスク 「ワクチン」「検査体制」「医療体制」一体何を提言したのか


深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 東京に4回目の緊急事態宣言 1都3県、北海道、福島は「無観客」

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2021年7月12日
Copyright (C) 2021 IMSSR

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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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新4K8K衛星放送 放送開始

2019年11月17日 19時15分29秒 | メディア

新4K8K衛星放送番組表 一般社団法人放送サービス高度化推進協会(A-PAB)


徹底検証 新4K8K衛星放送開始
NHK4K8K BSフジ4K BS-TBS4K BS朝日4K BSテレ東4K



Inter Bee2018のオープニングセッションで勢揃いした新4K8K衛星放送を開始する9事業者の代表 それぞれ新4K8K衛星放送の意気込みを語ったが……


新4K8K衛星放送開始セレモニー  APAB

新4K8K衛星放送 苦難のスタート 視聴者は4K8Kに冷やか 腰が引けている民放4K







新4K8K衛星放送の放送事業者  総務省


NHK BS 4K


出典 NHK 

 「NHK BS4K」は「超高精細映像の“入り口”となるチャンネル」と「これまでとは違った別次元の映像を、より身近に、多くの皆様に楽しんでもらう」とし、午前6時から夜0時までの一日18時間、ほぼ全て4K制作番組を放送する。
 番組コンテンツは、HD地上波やBS1、BSプレミアムの番組を4Kで制作し、サイマル放送をする。「NHK BS4K」は「ジャンル編成」を導入し、曜日ごとにジャンルを決めて、そのジャンルの番組をまとめて放送する。


NHK 平成30年度 4Kチャンネル編成イメージ

 地上波の人気番組では、「ダーウィンが来た!」、「日曜美術館」、「小さな旅」、「自然のアルバム」などを4K/HDの一体制作を行い、HD/4Kサイマル放送する。
 また、来年からは、毎週日曜日朝9時に「大河ドラマ いだてん~東京オリンピック噺~」を地上波やBSプレミアムに先行して放送する。「どこよりも早く」がキャッチフレーズだ。
 BSの人気番組からは、「岩合光昭の世界ネコ歩き」、「にっぽん百名山」、「ワイルドライフ」、「美の壺」、「新日本風土記」、日本の絶景を紹介する「ニッポン印象派」や宇宙と地球をテーマにした「コズミック フロント☆NEXT」などを一体制作を行い、HD/4Kサイマル放送する。
 さらに随時、「NHKスペシャル」や「ETV特集」をHD/4Kサイマル放送する。
 ドラマでは、「ドラマ10」(総合TV)、「BSプレミアムドラマ」(BSプレミアム)、「BS時代劇」(BSプレミアム)の定時番組ドラマや宮部みゆき原作のスペシャルドラマ「荒神」などのスペシャルドラマのHD/Kサイマル放送を行う。
 高繊細映像4Kの特色を生かした特集番組では、、葛飾北斎の幻の傑作を再現した「ロスト北斎 幻の絵に挑む男たち」、4K-CGを駆使した「ティラノサウルス 進化の謎」、新たな宮沢賢治像を浮き彫りにする「映像詩 宮沢賢治 銀河への旅 ~慟哭の愛と祈り~」や東海道の日本橋から京都までの55枚の絵の謎解きドキュメンタリー、「浮世絵EDO-LIFE 特別版 東海道五十三次」などを放送する。
 土曜の夜には「4Kスペシャル」と名付けた時間帯を設け、「スーパー4Kプレミアム」や4Kオリジナル番組を放送し、新4K8K衛星放送のキラーコンテンツを揃える。
 12月1日の「4Kスペシャル」は、開局の日に合わせて世界初の南極からの4K生中継を実施する。
 日曜の夜は、「ウイークエンド4K」、NHKスペシャルや大型ドラマ、大型特集を4Kで放送する。地上波制作番組のサイマル放送だ。
 ユニークな企画は「新日本紀行」の16mmカラーフィルムを4KHDR化した「4Kでよみがえるあの番組」を放送する。4KHDR化することで、フィルムに記録されている鮮やかな色や輝度情報などを最大限に引き出し、鮮明な映像でNHKの名作が楽しめる。
 また、放送開始50周年特集として、刑事ドラマの名作、「刑事コロンボ」のシリーズ全69作を、35mmフィルムから4Kリマスター版を製作し、順次、放送する。12月31日-1月3日には計8本を先行放送する。
 フランスと国際共同制作したシリーズ番組「フロム・ザ・スカイ~4K空紀行~」は、ドローンによる日本各地の美しい空撮を軸に、自然とともに営まれてきた日本人の心や技を描く番組である。
 NHKでは、4Kドラマの放送に備えて、今年度は大河ドラマ制作スタジオのCT105を4Kスタジオ化し、来年度は連続テレビ小説制作スタジオのCT106を4Kスタジオ化するとしている。
 また2K/4Kの一体化制作のワークフローを整備し、2K/4Kの一体化制を推進して制作体制の効率化を図りながら、4K設備の整備については、2K設備の更新のタイミングに合わせて実施することで、コスト削減に努めるとしている。

年末年始特集番組
 年末の12月28日には「やまと尼寺 精進日記 師走 ゆずの香りで冬がくる」(夜7時25分~)やSHVスペシャル「天空の“宗教都市”~チベット仏教・紅の信仰の世界~」(午後4時00分~)、12月29日は、日本橋から京まで55枚のボストン美術館所蔵のスポルディングコレクションの名作でつづる、全編浮世絵!謎解きドキュメンタリー、「浮世絵EDO-LIFE『特別版 東海道五十三次』」(夜6時30分~7時30分)、12月30日には「シルクロード 謎の民 タクマラカン砂漠 桜蘭の末裔」を放送する。
 12月31日には、4K特集「若冲VS北斎~夢の天才対決~」(午後6時15分~)やSONGスペシャル「宇多田ヒカル」(午後4時15分~)を放送する。 
 そして「平成最後の紅白」を掲げた「第69回紅白歌合戦~夢を歌おう~」を総合テレビ(HD)、衛星4K、衛星8K、3波を使って放送する。
 紅組の司会は広瀬すず、白組は櫻井翔、NHKの今年の最大のヒット番組、「チコちゃんに叱られる!」のチコちゃんと岡村隆史も登場する。4K8K放送については、地上波(HD)の映像構成とは差別化し、高繊細映像の特色を活かした4K8K独自の映像構成で番組を放送する。4K8Kの威力が発揮できる演出になるかどうかがNHKの真価が問われる。


「第69回紅白歌合戦」 出典 NHK


「岩合光昭の世界ネコ歩き」  出典 NHK


「やまと尼寺 精進日記 師走 ゆずの香りで冬がくる」   出典 NHK

 1月1日にはBS4K開局記念正月時代劇、菓子職人が挑んだ江戸の民のための上水工事のロジェクトを描いた「家康、江戸を建てる(前編)~水を制す~」(夜7時00分~8時15分)
、1月2日には京の職人が挑んだに全国に流通する小判作りを描いた「家康、江戸を建てる(後編)~金貨の町~」(夜7時00分~8時15分)を放送する。
 また1月1日に、「グレートレース 絶景を駆け抜けろ 激走富士山麓」(午後4時~5時30分)、1月2日は「グレートレース 頂上決戦 モンブラン大激走170km」(午後4時~5時30分)を二本シリーズで放送する。
 1月3日は「シリーズ 聖なる建築 地上に現れた祈りの形 ①~④」(午前11時から午後4時)を放送する。①「キリスト教会 いと高きところに光を求めて」(午前11時~)、②「アジアの宗教 寺院 人 自然 小宇宙」(午前12時30分~)、③「イスラム教 モスク幾何学模様 祈りの形」(午後2時~)、④「ユダヤ教 シナゴーグ 救い 絆 集いの場」(3時30分~)の4本シリーズ。

 刑事ドラマの不朽の名作、「刑事コロンボ」の4Kリマスター版の放送が大晦日から始まる。12月31日には(1)「殺人処方箋」(午前8時~9時40分)と(2)「死者の身代金」(午前9時40分~11時16分)、年明けの1月1日には(3)「構想の死角」(午前8時~9時16分)と(4)「指輪の爪痕」(9時16分~10時32分)、1月2日には(5)「ホリスター将軍のコレクション」(午前8時~9時16分)と(6)「二枚のドガの絵」(午前9時40分~11時16分)、1月3日には(7)「もう一つの鍵」(午前8時~9時16分)と(8)「死の方程式」(9時16分~10時32分)放送する。
 1月9日からは、毎週水曜日、夜10時10分から、全69本を4Kリマスター版で放送する。


「刑事コロンボ」の4Kリマスター版 出典 NHK

 1月6日には、いよいよ大河ドラマ「いだてん~東京オリンピック噺(ばなし)」(毎週午前9時~)が始まる。地上波、BS(HD)に先駆けての4K先行放送である。4Kを意識した新機軸の映像構成が見られるかどうか注目される。

 1月14日には、明治から戦後にかけ国宝級も含め10万点もの作品がアメリカへ渡ったが、そこに秘められた物語をひもとく、「江戸あばんぎゃるど」、「➀アメリカ人の愛した日本美術」(午後4時~5時30分)、「②ガラスを脱いだ日本美術」を放送する。NHKならでは取材力を駆使した美術番組で期待ができる。 

 待望の4Kスポーツ中継が1月から本格的に始まる。1月7日には、「第59回ラグビー日本選手権決勝 神戸製鋼対サントリー」、1月12日には、「全日本総合バスケットボール選手権 男子・女子準決勝」(午前11時~)、1月13日には「女子決勝」(午前11時~)、「男子決勝」(午後2時~)、1月19日には「全日本卓球選手権 男女ダブルス準決勝・決勝」(午後2時~)、1月20日には、「男女シングル準決勝」(午前10時~)、「男女シングル決勝」(午後3時~)をライブ中継する。いずれもBS1(HD)とのサイマル放送である。

NHK 4K8K週刊番組表

 12月1日の開局の日に合わせたスペシャル企画、南極中継も悪くはないが、NHKは南極中継をこれまでも何回も行っているし、数々の南極特集番組の名作が放送されている。ことあるごとに南極という発想の貧困が見える。また南極かというのが素直な印象だ。
 大河ドラマの先行放送も、「早く放送する」ことが視聴者サービスになるとするのは大間違いで、じっくりドラマを見る視聴時間は、週末の夜のゴールデンアワーであることは常識である。丁寧な視聴者サービスとはほど遠い。
 そもそも最近の大河ドラマは、製作費を絞っている影響か、セットで撮影された「会議」や「対談」のシーンが多く、スペクタルシーンがほとんどない。海外のコンテンツバイヤーからは「サムライ ミーティング」ドラマとして揶揄されている。せっかくの高繊細・高画質の4Kで見るコンテンツとしては物足りないだろう。大河ドラマの演出自体を4Kを視野に入れた変える必要があると思われる。
 4Kで制作した地上波の人気番組を4Kチャンネルでサイマル放送するのは、もっとも容易な手法で4Kコンテンツをラインアップする手法だが、これではモアチャンネルである4K放送の普及拡大につながらない。4Kオリジナルコンテンツをどう確保してくが課題だろう。
 一方、「新日本紀行」の4KHDR化は、NHKならでの好企画だ。NHKが保有する膨大な貴重なコンテンツを最新鋭の映像技術で蘇らせるのは意義深い。しかし、HD化の時に、同様の作業をすでに行っているので二重投資にならないようように配慮すべきだ。


キャッチフレーズは「4倍美しいBS4K 世界初 BS8K」 Inter BEE 2018 NHK/JEITAブース


4K機材一色 Inter BEE 2018 Panasonicブース


BS-TBS 4K


「吉田類の酒場放浪記」 出典 BS-TBS

 BS-TBS 4Kでは、BS-TBS HDの人気番組、「吉田類の酒場放浪記」(毎週月曜日 夜21時~22時)をBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。
 ニュース・報道番組では、BS-TBSで放送している「報道 1930」(月~金 夜19時30分~8時54分)や「サンディニュース Bizスクエア」(毎週日曜日 夜9時~9時54分)を4Kで制作して、BS(HD)とサイマル放送をする。
 12月31日から元旦にかけて、「年またぎ酒場放浪記 西国三十三カ所 観音巡り酒場巡り&樽酒開き4時間スペシャル」(夜9時~)を放送する。
 旅・紀行番組では、「極上」をキーワードに歴史の深さや、文化の豊かさに迫るこだわりの大人の旅、「極上のクルーズ紀行」(毎週木・金曜日 夜6時30分~7時30分)を放送する。新年特集では、1月3日、「ノルウエー オーロラ舞う世界で最も美しい航路を行く」(前編:午前10時~11時 後編:午前11時~12時)、そして再放送 1月15日(夜時30分~時30分)前編、1月16)日(夜時30分~時30分)後編を放送する。
 また“お洒落女子旅番組”、「タビフク+VR」(毎週水曜日 夜6時30分~7時30分、夜11時~11時30分)、阿川佐和子が17世紀を代表とする天才画家・ルーベンスの足跡をたどりベルギーを旅する「サワコの一人旅 in ベルギー~画家・ルーベンスを訪ねて~」(毎週火曜日 6時30分~7時30分)、「郷愁の街角ラーメン」(毎週月~木曜日 午後6時30分~7時)を放送する。


「タビフク+VR」     出典 BS-TBS 4K


「極上のクルーズ紀行」  出典 BS-TBS 4K

年始特集番組
 新年特集では、1月3日、「ノルウエー オーロラ舞う世界で最も美しい航路を行く」(前編:午前10時~11時 後編:午前11時~12時 再放送 前編:午後3時~4時 後篇:午後4時~5時)や、「至福の京都ぶらり旅~夏 桂川辺り~」(昼12時~12時30分)、「至福の京都ぶらり旅~秋 伏見稲荷大社辺り~」(昼12時30分~1時)、「天才絵師・伊藤若冲 世紀の傑作はこうして生まれた」(午後1時~2時)を放送する。
 1月11日には、「世紀のご成婚」が4K映像で甦る!皇居と皇室の歴史を紐解くスペシャル番組、「皇居千二百年物語 平安から平成 そして新元号へ」(夜9時~10時54分)を放送する。
 映画では、1月8日には「ダ・ヴィンチコード(吹替)」(夜9時~11時54分)や1月15日には「天使と悪魔」(夜9時~11時45分)の4K版を放送する。

4K開局特集番組
 4K開局スペシャル として「世界・黄金ミステリー 市原隼人 幻のスペイン財宝船を追え! 」を、第1夜「世紀の大発見!失われた黄金のアーク&ロイヤル金貨」はBS-TBS HD(11月17日放送)し、第2夜「大航海時代が生んだ!黄金トライアングルの謎」( 12月1日放送)をBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送した。
 また、12月15日には小田和正による恒例のコラボレーション番組「クリスマスの約束」(夜9時~10時54分)をHDと4Kでサイマル放送した。


「世界・黄金ミステリー 市原隼人 幻のスペイン財宝船を追え!」 出典  BS TBS

BS-TBS 4K番組表


BSフジ 4K


「三屋清左衛門残日録」   出典 BSフジ4K
 
 BSフジ4Kは、『超ライブ!超リアル!超オリジナル!』のキャッチフレーズを掲げる。
 『超ライブ!』では、臨場感を越える生放送を目指し、「BSフジLIVEプライムニュース」(夜8時~9時55分)の他、音楽イベント、スポーツ中継、花火中継などをBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。 
 『超リアル!』は、実際の世界を超える映像美。日本の百名山の美しい絶景を紹介する「絶景百名山」などの紀行番組の他、ドキュメンタリー、美術、自然番組などをBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。
 『超オリジナル!』は、「オリジナルを超える独自性」を掲げ、『三屋清左衛門残日録』(藤沢周平原作 北大路欣也主演)シリーズなどの特別時代劇オリジナルドラマをBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。
 また、新たに4Kで制作するオリジナルドラマの中井貴一がベテラン弁護士を演じる「連続ドラマ 記憶」(毎週月~金曜日 夜6時~7時)をBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。(12月18日 最終回で終了)

年末年始番組
 12月29日には、2018ル・マン24時間レースを描いたドキュメンタリー、「Documentary of Lemans 24H 世界で最も華麗で過酷なレースの真実」(午後2時~2時55分)、12月30日には、「岡村・亮・原西の日本爆釣り!」(夜9時~10時55分)、12月31日には、平成大晦日の最後の日没を4Kカメラ完全生中継する「4Kお天気映像大賞」(午後4時~5時55分)と「BAR レモン・ハート大晦日スペシャル」や「日本名滝探訪」(夜6時~6時55分)を放送する。

 年始特番としては、1月1日には「EARTH WAKER 9~ヒマラヤ『氷河の一滴』~」(夜7時~8時55分)や「富士山 The Great SKY」(夜6時~6時55分)、1月3日には、「辻井伸之×アイスランド~継がれゆく音楽の絆」(夜10時30分~12時55分)、1月6日には「比叡山延暦寺千二百年の息吹」(午後2時~3時55分)する。
 1月13日には、『ルミエール・ジャパン・アワード 2017「UHD部門 グランプリ」』受賞作で、250年におよぶ禁教の時代を耐え忍んだキリシタンの人々はどのように信仰を守り、継承したのか、長崎・五島の教会と史跡を巡りながら、キリシタンの記憶をたどる「Time Trip 長崎の教会群」(昼12時~12時55分)を放送する。
 新年からは「連続ドラマ 記憶」に代わり、「警視庁捜査資料管理室(仮)」(全11話)の放送が始まる。1月1日には第一話から第四話まで一挙放送(夜9時~9時55分)、1月7日から毎週月曜日、夜11時~11時30分の定時で放送する。
 1月18日には、「金曜+1 ニッポンの祭り」(夜11時~11時55分)、1月20日には、「巨大魚 秋の陣」を放送する。


「警視庁捜査資料管理室(仮)」 出典 BSフジ4K

 BSフジ 4Kでは、デイリーの4K制作定時番組は、「QVCショッピング」(58分)と「BSフジLIVEプライムニュース」(1時間55分)のみで、それに週1回のドラマ(60分)や週に3本程度の特集番組(1時間55分)が加わるが、残りはすべてHDコンテンツのアップコン番組である。4K制作のドラマや特集番組が放送されない日は、事実上、「BSフジLIVEプライムニュース」だけしか4K制作コンテンツはない。『超ライブ!超リアル!超オリジナル!』を掲げる4Kチャンネルとしては極めて寂しい。

BSフジ4K 番組表


BS朝日 4K


「土井善晴の美食探訪」    出典 BS朝日 4K

 BS朝日 4Kでは、4Kで撮影した「美しい日本の風景」を見せながら、誰もが心に刻む童謡や唱歌を紹介する「子供たちに残したい美しい日本のうた」(毎週水曜日午前11時~11時55分)や一流店の「芸術」とも呼べる究極の逸品の知られざる美味しさに迫る「土井善晴の美食探訪」(毎週月曜日夜7時~8時54分)、テレビ朝日系列局と連携して、“ふるさと創生”や“地方の魅力の再発見”をテーマにした「新・にほん風景遺産」(随時)、俳句に詠まれた土地を訪ね歩き、出演者が俳句を詠み、俳句講師を交えて「句会」を催す「てくてく俳句百景」(毎月1回程度 新作は四季折々随時)などをBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。
  また「4Kアワー」(毎週土曜日午前10時~10時55分)で、さまざまな4Kコンテンツを放送する。しかし「土井善晴の美食探訪」や「子供たちに残したい美しい日本のうた」の再放送が多いのが残念である。

年末年始番組
 2019年1月1日には、「小江戸・川越から、ビビる大木、吉行和子、宮下純一。先生は大高翔先生が出演し、鎌倉からは、東貴博、加藤一二三、朝日奈央、先生は俳人の神野紗希先生が出演して、「てくてく俳句百景 冬」(夜7時~8時54分)を放送する。
 また「土井善晴の美食探訪」のベストセレクションの5話を一挙、再放送(朝7時~夕方5時)する。
 「新・にほん風景遺産」は、1月3日に、午後時から「光の稲穂 竿燈まつり ~短くも熱い 秋田の夏~ 」(2017年9月20日放送)、午後3時から「憧れの田舎! 昭和の町 豊後高田~海・花 そして人情~」(2017年5月3日放送)、午後4時から「奇岩の秘境!大分 耶馬渓 ~大河 山国川の源流を訪ねて~」(2018年5月27日放送)、夜19時から「新・鉄道・絶景の旅 4K特別版」を4Kコンテンツで放送する。4本ともこれまでに制作してHDで放送した番組の4K版による再放送だ。
 また「4Kアワー」では、2019年1月5日に「ドキュメンタリー 札幌交響楽団 アルプス交響曲」(午前10時~11時25分)を、1月9日には、「日本の名曲 人生に歌がある 4時間スペシャル」を放送する。


「てくてく俳句百景」 出典 BS-TBS 4K


「4Kアドベンチャー 日本列島 奇跡の海を行く」

4K開局特集番組
 高繊細4Kの威力が発揮できる美術番組では、レオナルド・ダ・ヴィンチの最後の作品、キリストの肖像、「サルバトール・ムンディ(世界の救世主)」の謎に迫る「サルバトール・ムンディ 世紀の発見! 蘇った救世主キリストの謎」の4K版(BS朝日[HD]を3月29日放送済)を放送した。
 またBS民放初となる「日本の名曲 人生、歌がある5時間生スペシャル(仮)」(12月5日放送)をHDと4Kのサイマル生放送に挑む。日本歌謡史に燦然と輝く「日本の名曲」、約80曲(予定)を一挙に披露する名曲祭りである。
 ドキュメンタリーでは、「『分断と対立』から『融和と共存』へ~奥州藤原氏が描いた今日への伝言」や、海洋大国・日本列島の謎に迫る“Deep Frontier Project”として「4Kアドベンチャー 日本列島 奇跡の海を行く 第一夜 富士山と立山が育む豊かな深海 第二夜 黒潮と親潮が運ぶ海の宝」(12月8日、9日放送)を4Kで制作した。
 エンターテインメント番組では、「4Kマジック」を繰り出す凄腕マジシャンが出演する「神業革命 スーパー4Kマジック ~新時代の超絶ミステリー~」を放送した。


「日本の名曲 人生、歌がある5時間生スペシャル(仮)」 出典 BS朝日


「4Kアドベンチャー 日本列島 奇跡の海を行く」    出典 BS朝日 4K

BSテレ朝4K 番組表


BSテレ東 4K


 「日経プラス10」     出典 BSテレ東

 「BSジャパン」は社名を「BSテレビ東京」に、 サービス名称を「BSテレ東」に変更し、存在感を高める。
 BSテレ東 4Kは、BS(HD)の人気ニュース報道番組「日経プラス10」(月~金曜日 夜10時~11時)を4Kで制作し、BS(4K)でサイマル放送を開始する。また「ワールドビジネスサテライト」(月~金曜日 夜11時~)をHD制作コンテンツを4Kにアップコンして放送。
 月~金で毎晩放送するライブのニュース報道番組を4K放送することで、BSテレ東4Kのプレゼンスを示そうという戦略である。
 ドラマでは、土曜ドラマ9「サイレントヴォイス~行動心理捜査官・楯岡絵麻」(毎週土曜日 夜9時~ 再放送 午前11時30分~)や真夜中ドラマ「江戸前の旬」(毎週土曜日)をBS(HD)とBS(4K)でサイマル放送する。(年内で終了)

 BSテレ東放送スタート記念番組として、時代劇「琥珀の夢」を地上波で放送した番組のデレクターズ・カット版を放送(12月1日)。残念ながら、新作ではなくて、10月5日にすでに地上波で放送したドラマの再編集4K版である。
 12月8日には、BSテレ東・4K放送スタート記念として「第51回日本作詞大賞」を衛星HD放送とサイマル放送した。

年末年始番組
 2018年12月31日には、美味かった食い物の話でおかずを競い合う意地とプライドを賭けた美味い飯語りバトルを描く食と人情のノスタルジックドラマ、「極道めし」の第8話、第9話、最終回(午後2時30分~5時30分)を放送。

 BSテレ東4Kは、HD/4Kの一体制作で、ドラマに力を入れている。
 2019年1月からは、新宿東署刑事課の司法係を舞台に北大路欣也が刑事役を演じる「記憶捜査~新宿東署事件ファイル~」が始まる。
 1月18日には、初回の2時間スペシャル(夜8時~10時)を4K版で放送。
 また、1月12日には、一流名医が患者たちの治療のために事件解決に挑む、メディアカル・エンタメ・ミステリー、土曜ドラマ9「神酒クリニックで乾杯を」(毎週土曜日)が始まり、第一話(夜21時~21時54分)を放送する。さらに真夜中ドラマ「面白南極料理人」(毎週土曜日)も始まり、第一回「基地についたよ」が1月12日深夜0時~0時30分に放送、高畑充希主演の新グルメコメディ、「忘却のサチコ」も始まり、「第一歩」が1月6日深夜0時15分~0時50分に放送、「第二歩」が深夜0時~0時35分に放送される。
 スペシャルドラマでは、1月13日に「三匹のおっさんスぺシャル 正義の味方、史上最大 最後の戦い!」(夜7時~9時15分)を放送する。
 また韓ドラの「馬医」(月~金曜日 午前10時55分~)や「浪漫ドクター キム・サブ」(月~金曜日 午後2時56分~)も放送し、韓ドラにも力を入れる。
 映画では、1月16日には「シネマクラッシュ『2012』」(夜8時~9時54分)、1月17日には「シネマラッシュ『ツーリスト』(夜5時58分~7時55分)を放送する。

 1月2日には、「くノ一忍法帖 蛍火⑤~⑧」(午前8時~12時)、3日には、「くノ一忍法帖 蛍火⑨~⑫」(午前8時~12時)を一挙放送、1月3日には、「いい旅・夢気分~4K映像をめぐる感動の大絶景SP~」(夜6時~8時55分)を放送した。


「記憶捜査~新宿東署事件ファイル~」 出典 BSテレ東4K


「神酒クリニックで乾杯を」 出典 BSテレ東4K


BSテレ東の人気ドラマ 4Kで制作して、HDはBSテレ東、4KはBSテレ東4Kでサイマル放送 出典 BSテレ東4K

BSテレ東4K 番組表


民放4社連携、大型リレー紀行番組「大いなる鉄路16,000km走破 東京発パリ行き」
 民放4社は連携して、リレー形式による紀行番組「大いなる鉄路16,000km走破 東京発パリ行き」を、新4K8K衛星放送開始特番として放送する。最初はBSフジ4K で、12月1日、夜19時から放送し、BS朝日4Kが21時から放送、翌12月1日には、BS-TBS4Kが19時から、最後はBSテレ東で21時から放送する。東京からモスクワ、ブダペスト、ジュネーブ、パリまで、ユーラシア大陸を横断する片道切符列車の旅を紹介する。ナレーションは三浦春馬と倍賞千恵子。制作はテレビマンユニオン。
 1日目BSフジ4Kでは、東京を出発してから鳥取境港までを鉄道で、そこからフェリーでウラジオストクへ渡り、シベリア鉄道でモスクマまで。バイカル湖などロシアの自然や現地の人々の暮らしを描く。次のBS朝日4Kでは、モスクワを出てウクライナ、ポーランド、チェコ、プラハを経てブダペストまでの列車の旅を紹介。6つの世界遺産が登場する。
 2日目のBS-TBS4Kは「絶景に次ぐ絶景」としており、スイスのチューリッヒからスタートして、山岳鉄道でアルプスを越えてジュネーブへ向かう。
 最後のBSテレ東4Kでは、イタリア・ジェノバからフランスのパリ・リヨン駅を目指す。地中海料理やフランスのワイン&料理などが紹介される。



映画・スポーツで勝負するCS-4K放送
 CS-4K放送はいずれも有料放送で、「J-Sports1」、「J-Sports2」、「J-Sports3」、「J-Sports4」、「日本映画+時代劇」、「Star4K」、「スカチャン1」、「スカチャン2」の8チャンネルのサービスが始まる。いずれも、「スカパー! 4K」のプラットフォームでもサービスされる。
 「J-Sports1」では、2019年のラグビーW杯を前にラグビー人気が高まっている中で、「全国高等学校ラグビーフットボール大会」を4K生中継を行う。またフィンランド・ルカで開催される「フリースタイルスキー FISワールドカップ 男女モーグル」開幕戦を放送する。
 洋画の「Star4K」では、全世界で人気のジャングルをくぐり抜けゲームを目指すアドベンチャーシリーズ、「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」や「ジュマンジ」を4Kで放送する。
 東北新社の「ザ・シネマ4K」では、「ラ・ブーム」や「太陽がいっぱい」を、日本映画専門チャンネルの「日本映画+時代劇」では、「八甲田山・4Kデジタルリマスター版」などを放送する。
 豊富なコンテンツがある洋画や邦画の4Kデジタルリマスター版は、CS-4K放送の主力コンテンツだろう。




4K8K放送の特色は、“高繊細画質”だけでなく“高音質” 4Kでは5.1サラウンド音声、8Kでは22.2マルチチャンネル音声がサービスされる。しかし高音質音声を楽しむためにはそれぞれ専用の音響装置を設置しなければならないが……

 

 NHK BS8K



NHK BS8Kは、午前10時から午後10時10分で、毎日、約12時間、放送する。8K放送は定時枠を基本とした編成ではなく、番組の内容に応じた柔軟編成となるとしている。
 BS8Kが力を入れているのは、毎週日曜日の夜7時から時間枠で、集中的に8K大型番組を編成する。しかしほとんどの時間は、新作のリピート放送や旧作の再放送が多い。
 音楽の分野では「世界三大オーケストラの響き」と題し、「ウィーン・フィル」、「ベルリン・フィル」、「ロイヤル・コンセルトヘボウ」の三つのオーケストラの演奏会を放送、FIFAワールドカップ・ロシア大会で8K中継を行った8K中継車を、そのままヨーロッパに転戦させて収録した。NHKは8K中継車を2018年度中に2台増やし、合わせて4台にする予定だ。
 また歌劇団の公演も、5組全て新作を収録して放送する。
 美術番組では、フランスとの国際共同制作で進めている「ルーブル美術館 美の殿堂の400年」を4回にわたって放送する。
 さらに「黄金のマスク」をはじめ4,000点以上の秘宝をその魅力と秘められた物語に迫る3回シリーズのドキュメンタリー、「シリーズ ツタンカーメンの秘宝」やゴッホが描いた日没を迎える数分間に空に不思議な色が現れる「マジックアワー」の力作を描く「マジックアワー ~ゴッホが描いた空の光~」、中世の街並みが残る世界遺産の街、ベルギーのブルージュに伝わる伝統楽器、カリヨンの演奏を伝える「カリヨン 時を超えるブルージュの鐘」なども放送する。
 紀行番組では、「メキシコ・ユカタン半島 驚異の大自然 神秘の水中鍾乳洞 セノーテ」や「北米イエローストーン 躍動する大地と命」、「南米イグアスの滝」、「アジアの巨大遺跡 ミャンマー パガン遺跡」などを放送する。

 8Kは70mmで撮影された映画のリマスター版製作にも威力を発揮する。
 1968年に制作された「2001年宇宙への旅」はSF映画の「金字塔」と言われているが、この映画は当時、最高の画質を求めて70mmフィルムで撮影された。
 現在は、70mmフィルムのプロジェクターがほとんど消え去り、一部の施設でしか上映するのは不可能になった。この貴重な映像資産、70mmフィルム映画が高画質を誇る8Kで蘇ることにになる。来年3月には「マイフェアレディ」の8K版を放送する予定だ。70mmフィルム映画の8Kリマスター版製作は今後注目される。
 来年3月には、ノーベル文学賞を受賞した作家、カズオ・イシグロ原作の「浮世の画家」を8K特集ドラマで放送。カズオ・イシグロ作品のテレビドラマ化は初となる
 また「大相撲」や「NHK杯フィギュア」などの大型スポーツ中継や随時編成される。
 オデジャネイロ五輪、平昌五輪、サッカーW杯モスクワ大会などのこれまでに放送した豊富な8Kスポーツ中継・コンテンツも放送する計画だ。
 勿論、2019年の「ラグビーW杯」、2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」も8Kライブ中継されるだろう。
 NHKでは、8Kクォーリティで制作・放送する“ピュア8K”の比率は、約60%程度としている。


NHK 平成31年度8Kチャンネル編成イメージ

NHK 4K8K週刊番組表

 フランスとの国際共同制作「ルーブル美術館 美の殿堂の400年」については、“またまたルーブル美術館”かという印象が強い。ことあるごとにルーブル美術館という発想の貧困が見え隠れする。筆者も美術番組には興味があり、NHKや民放の番組はよく見るが、単なる美術館紹介番組はもう飽きた。高繊細・高画質を掲げる8K番組であるにしても、多くの視聴者の思いも同じであろう。モナリザやミロのビーナスは8Kで撮影すると、どのように見えるのか程度は興味があるが、作品を丁寧に紹介されても興味はわかない。そもそも多くの視聴者は、ルーブル美術館を訪れ、現物の作品を見ているのではと考える。もっとも8K撮影は映像資料アーカイブとしてはは意味があるだろうが、放送番組としては如何か?。
 美術番組が視聴者の興味と感心を引き付けるのは、単なる作品の紹介ではなく、作品や作者のストリー性である。それには制作者の取材力が試される。高繊細・高画質だけを「売り物」にしても、最早、視聴者はついていかないだろう。NHKの番組制作能力の真価が試される番組だ。
 コンサート番組は、22.2サラウンドの高音質が「売り物」だ。しかし、パブリックビューイングならともかく、22.2サラウンドの音響システムを備えている家庭は果たしてどの位いるのだろうか。そもそも8Kテレビ自体の家庭への普及はほとんど進まないが実態だろう。そもそも22.2サラウンドの音響システムは市販されたいない。
 一方、「ラグビーW杯」や「2020東京五輪大会」などの大型スポーツ中継は期待は持てるだろう。リオデジャネイロ五輪、平昌五輪、サッカーW杯モスクワ大会などの8Kアーカイブコンテンツも興味深い。
 NHKの8K放送の最大の問題は、一般家庭に8Kテレビがまったく普及しないと見られていることである。「究極の二次元テレビ」で超高繊細を掲げても、その威力が発揮できるのは100インチクラス以上の大型テレビとされている。日本の一般家庭で、100インチのテレビを設置可能な世帯は果たしてどの位あるのだろうか?
 NHKでは、有機ELのフイルム製の超薄型8KテレビをLGやASTROと共同開発してInter BEE2018で展示した。フィルムは厚さわずか1mm、88インチのパネルである。「壁かけテレビ」にすれば一般家庭でも設置できるのではしている。
 しかし、富裕層の豪邸なら、シアタールームなどで100インチクラスの大型画面で8Kコンテンツを楽しむことはできるだろうが、一般家庭のリビングルームでは100インチクラスの大型画面は大きすぎ、圧倒されて番組を楽しむどろこではないだろう。そもそも一般家庭で見るテレビ番組は、ニュース・情報番組、娯楽番組がほとんどで8Kでは放送していない。かといって100インチクラスの「壁掛けテレビ」と40インチクラスの液晶テレビをふたつ置くほどのスペースはない。
 8K放送を一般家庭に普及させようとするサービス・モデルは基本的に無理がある。
 膨大な受信料を投入して8K放送を開始したNHKはその普及をどう実現するのか、公共放送として大きな責任を背負った。 


NHK 8K中継車 SHC1 リオデジャネイロ五輪、平昌冬季五輪、2018FIFA ワールドカップ・ロシア大会では2台(SHC1/SHC2)を投入して8K中継を実施


22.2マルチチャンネル音声中継車 SA1 NHK

苦難の船出 新4K8K衛星放送 “ゼロ”からのスタート
 民放の新4K8K衛星放送のコンテンツは、ほとんどが、すでに放送しているBS(HD)放送のコンテンツを4Kで制作し、BS(HD)とBS(4K)のサイマル放送で対応する。BS(4K)のオリジナル・コンテンツは見当たらず、視聴者は従来のBS(HD)で同じコンテンツを楽しむことができる。
 しかも民放のキラーコンテンツである地上波のドラマ、バラエティ、エンターテイメント、情報番組、スポーツ中継などは新4K8K衛星放送では、一切、放送予定がない。予想通り、民放の収入を支える地上波の人気番組は温存した。
 しかも、新4K8K衛星放送の4Kコンテンツは「TBS系では全体の7~8%、テレビ東京系でも来年1月段階で13%程度にとどまる見込み」(朝日新聞 10月6日)で、大半がHD(2K)番組のアップコンバート・コンテンツとなる見通しだ。しかも民放系4局はいずれもショッピング番組で埋め尽くされている。
 BSフジ4Kでは、12月17日(月)から23日(日)までの1週間で、4K制作番組は、定時番組と特集番組を合わせて16時間35分、全体の約10%にすぎない。残りはすべてHD番組のアップコンコンテンツ、これでは4Kチャンネルとは到底言えないだろう。
 この状況で、「こんどのテレビは別世界」を掲げる「新4K8K衛星放送」と言えるのだろうか? 問題は深刻である。
 ライブのニュース報道番組は、チャンネルの活性化にある程度は寄与するだろう。BS TBS 4KやBS フジ 4K、BS テレ東4Kは、いずれも月曜日から金曜日の平日の夜にライブでニュース報道番組を開始するが、二局ともBS(HD)放送とサイマルサービスなので、4Kチャンネルの吸引力がどれほどあるのか疑問が多い。
 新4K8K衛星放送は、地上波放送があり、BS(HD)放送があり、そしてモアチャンネルとして誕生する。標準アナログテレビ(SD)からデジタルハイビジョンテレビ(HD)に移行した時は、SDを終了させて、ハイビジョン(HD)に切り替えた。視聴者は強制的にハイビジョンテレビを設置しなければならなかった。4Kテレビを設置して、新4K8K衛星放送を見るか見ないかは視聴者の選択に任せられる。ハイビジョン(HD)の移行の際とは環境がまったく違う。
 しかし、新4K8K衛星放送のコンテンツのラインアップには、新たに視聴者を獲得する魅力的なコンテンツが見つからない。
 テレビが視聴者を引き付けるのは、情報性、ライブ性、娯楽・エンターテイメント性にあふれたコンテンツの魅力ある。高繊細・高画質だけでは視聴者はもはや飛びつかない。
 しかも、ここ数年、若者のテレビ離れは深刻だ。スマホが映像メディアの主役になっている。テレビ番組、ネット動画、映画などもスマホで視聴する若者が急増している。こうした視聴者が求めているのは、4K8Kの高画質ではなく、スマホで気軽に楽しめる「面白い」コンテンツなのである。大画面でしか味わえない4K8Kは、いわば「重厚長大」サービス、「気軽でコンパクト」なサービスを求める若者のテレビ離れを果たして阻止することができるのだろうか。
 日本民間放送連盟・研究所では、日本の広告費は、2019年には、インターネットの広告費が地上波テレビの広告費を上回ることが確実としている。2019年の地上波テレビの広告費は1%減、これに対してインターネットの広告費は9%増と予想している。2019年はまさに象徴的な年になりそうだ。

 2018年9月、4Kテレビの累計出荷台数は約500万台に到達した。しかし、ほぼすべてが4Kチューナーが付いていない「4K対応テレビ」だ。このままでは新4K8K衛星放送は誰も見ることができない。新4K8K衛星放送の普及の最大の難関はこの500万台に、まず4Kチューナーを設置してもらうことだ。“ゼロ”からのスタートである。そして頼みの綱は2020東京五輪大会に向けての買い替え需要をあてにするほかない。果たして新4K8K衛星放送はどの位の視聴者を獲得できるのだろうか?
 Inter BEEのオープニングセッションでのキーノートスピーチで放送サービス高度化推進協会(A-PAB)の福田俊夫理事長は、「苦難のスタート」とした。またNHKの児野明彦専務理事は「東京五輪大会までの時間がタイトで、普及の面ではハンディがあった」とした。
 新4K8K衛星放送は多難な船出になった。



相次いで発売されたチューナー付き4Kテレビ 大勢の人だかりが……  Inter BEE 2018


勢揃いした4Kチューナー 果たして何台売れるか CEATECH 2018



暗雲 4K8K放送 2020年までに“普及”は可能か
8Kスーパーハイビジョン  NHK技術研究所公開 その最先端技術は? 試験放送開始準備着々
有働由美子 news zero批判 ニュースになっていないnews zero ニュースキャスター失格 あさイチの成功

5G・第5世代移動体通信 “世界に先駆け”2020年東京オリンピックに向けて実現へ
5G NR標準仕様の初版策定が完了 3GPP
5G周波数割り当ての審査方針総務省公表 地方を重視 通信事業者の重荷に







国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年10月20日 12月10日改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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news zero迷走 有働由美子 ニュースキャスター失格 ニュースは「あさイチ」ではない 報道ステーション ニュース23

2018年10月22日 07時13分01秒 | メディア
迷走! 有働由美子の「news zero」



日本テレビ「news zero」 ウエッブサイト 



「news zero」 有働由美子がメインキャスターに 村尾信尚氏は降板
 2018年10月1日、日本テレビの夜のニュース番組、「news zero」(毎週月~木曜23:00~、金曜23:30~)は、元NHKアナウンサーの有働由美子をメインキャスターに迎えて、キャスター陣も一新して、番組をリニューアルをした。
 これまで、メインキャスターを務めていた村尾信尚氏は降板し、ニュース番組では異色のキャスターを務めた女優、桐谷美玲や芥川賞作家の又吉直樹も降板した。
 筆者は、日本テレビのメインニュースである「news zero」は、テレビ朝日の「報道ステーション」、TBSの「ニュース23」、NHKの「ニュース7」と並んで、毎日のように見ていた。
 村尾信尚キャスターは、安保法制や森友加計問題、財務省セクハラ問題などの政治・社会問題で、批判精神を持ってコメントをしていたことを大いに評価したい。批判精神を持って現代社会と向き合う姿勢を失ったニュース番組は存在意義がない。
 また、桐谷美玲や又吉直樹が取材に出てリポートする積極的な演出も興味深かった。
 とりわけ桐谷美玲のリポートは、女優でありながら大健闘していると大いに評価していていたのに降板は残念である。

「news zero」  初週平均視聴率8.7%、前週比1.3ポイント上昇
 10月1日放送の初回の視聴率は10.0%で2ケタ発進となったが、タモリと有働の対談を放送した翌日はそれを上回る10.4%を記録。以降も、7.9%、8.4%、6.6%と好調に推移。
 村尾信尚キャスターが担当していた9月第4週(24~28日)は、9月28日が24時5分開始とレギュラーより時間が大幅に繰り下がっての放送となったこともあり、週平均は7.4%だった。
 その結果、「news zero」の初週(10月1日~5日)の平均視聴率は8.7%となり、前週から1.3ポイント上昇した。
 視聴率はさまざな条件を加味して比較する必要があるので、「1.3ポイント」の差は、「前週並み」か「微増」程度と考えたほうが良いだろう。とても「出足快調」とは言えない。
 テレビ関係者の間からは、視聴者の好感度が高いNHKの人気女性アナウンサーをキャスターに起用したのだから、視聴率は「10%」の大台に乗ってもよかったのではという声も聞こえる。
 しかしその後の視聴率も低迷している。
 第二週に入り、10月8日(祭日)は8.4%、9日が8.2%、10日6.3%、11日5.9%、12日4.6%で、番組リニューアルから2週間の平均視聴率は7.66%、リニューアル前の最終週の視聴率7.44%をほぼ同じで、「10%」の大台に乗せるという目論見は失敗している。

有働由美子キャスター 「あさいち」の快進撃で大きな業績
 有働由美子キャスターは、神戸女学院大学を卒業し、NHKにアナウンサーとして入局、初任地は大坂放送局、近畿ブロックのニュース・番組を担当した。
 東京のNHK放送センターに移動し、最初に担当したニュースが『NHKニュースおはよう日本』の女性キャスター、若手女性アナウンサーの登竜門である。その後はスポーツキャスターとして活躍し、『サタデースポーツ』、『サンデースポーツ』のスポーツ・ニュースのキャスターや、オリンピックの中継を担当した。
 2001年から2003年までは、『NHK紅白歌合戦』で紅組司会を担当し、アナウンサーとして幅の広さを示し、親しみ安いキャラクターで視聴者からの評価も高かった。2006年4月からは、『スタジオパークからこんにちは』の司会を務め、情報番組の司会の腕を磨いた。
 2007年6月、アナウンサー職のままで、初めてアメリカ総局(ニューヨーク)へ特派員になって赴任。
 NHK放送センターに戻って、『あさイチ』のキャスターとなり、2010年3月から2018年3月まで8年間の長期に渡って番組を支えた。2012年 - 2015年の『NHK紅白歌合戦』に再び登場し、総合司会を務めた。。
 2018年3月31日、27年間在職したNHKを退職した。「一生、現場にいたい」という思いが強かったとされている。

 有働由美子キャスターのNHK時代の最大の業績は「あさイチ」のキャスターとして、番組を支え、朝の時間帯で、これまで圧倒的に強かった民放の「ワードショー」を抑えてトップクラスに躍り出ることに成功したことである。
 これまで、NHKは「おはよう日本」から「朝の連続テレビ小説」までは、民放に常時圧勝してきたが、「連続テレビ小説」が終わると、民放の「ワードショー」に視聴者を奪われてきた。
 
 「あさイチ」では、新しいキャスター、有働由美子を迎え、番組を一新し、40代女性から50台の女性にターゲットを据え、この世代の女性に関心のある料理や家事などの生活情報や、この世代の女性の悩みや不安、不満に答えるテーマを積極的に取り上げた。
 これまでのNHKではあまり取り上げない「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」などを特集した。
 また出産後に夫婦仲が冷え込む「産後クライシス」や「発達障害特集」は大きな反響を呼び、『「あさイチ」に「有働あり」』という評価が高まった。
 「あさイチ」は、午前8時15分からの第1部で、視聴率10%前後(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で同時間帯の民放を抑えて首位に立つ。
 番組対する視聴者の評価を高めた牽引車は間違いなく、有働由美子キャスターの他には追随できない稀なキャラクターだ。
 40代女性に寄り添った目線をしっかり打ち出してテーマを扱う姿勢が視聴者の共感を集めた。有働由美子キャスターのいやみのない飾らない率直な人柄も極めて重要だ。
 そして有働由美子キャスターを支える共演者にも恵まれた。
 「イノッチ」と呼ばれ人気の高い「V6」のメンバー、井ノ原快彦の存在は極めて大きい。有働由美子キャスターに増して、視聴者との共感力が高く、視聴者の思いをしっかり受け止めていた。
 直前に放送している「連続テレビ小説」への感想を言い合う「朝ドラ受け」も、キャスター陣の発案で、視聴者の共感を得たという。
 「あさイチ」のキャスターを8年間担当したことで、有働由美子キャスターも円熟味を増して、ますます大きく成長したのは間違いない。
 キャスターが番組を育て、番組がキャスターを育てる、ポジティブなスライラルが展開した格好の例である。

有働由美子はニュースキャスターの顔にはなれない
 情報番組の「あさイチ」のキャスターとして大成功したからといって、ニュース番組のキャスターとして成功するかどうかはまったく別次元である。

 ニュース番組は、政治、経済、社会、国際、科学、文化、あらゆる分野のニュースを処理しなければならない。
 とりわけ政治、経済、国際ニュースは、キャスターは見識と知見が問われる。
 安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権、とにかく展開が早く、構図は複雑だ。ミスリードはあってはならない。
 
 「news zero」のライバル、テレビ朝日の「報道ステーション」では、元共同通信編集局長の後藤憲謙次氏とテレビ朝日の富川悠太アナウンサーと徳永有美アナウンサーがキャスターを務め、TBSの「ニュース23」では、元朝日新聞の特別編集員の星 浩氏とフリーアナウンサーの雨宮塔子氏がキャスターを務める。
 後藤憲謙次氏も星 浩氏もジャーナリストとしての見識と知見は申し分ない。
 安倍政権に対して、「ものを言う」姿勢を堅持している。
 筆者は、批判精神にないニュース番組は存在意義がないと信じている。単に情報を右から左に伝えるメッセンジャーではない。

 「news zero」には、政治、経済、社会、国際問題の今に向き合う姿勢がまったく感じられない。
 ジャーナリスト、取材者として経験が少ない有働由美子キャスターにそれを求めるのは酷であろう。
 「news zero」」には、しっかりした見識と知見を示すことができる脇を固めるニュース・キャスターが不在だ。ニュース番組は、安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権にしっかり対峙して、初めてニュース番組となる。
 生活情報や「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」といったテーマを取り上げて視聴者の共感を得ればよい情報番組とは次元が違う。
 もう一人のキャスター、櫻井翔がニュースキャスターの役割を担うのも不可能だろう。
 「ワイドショー化」、「女性週刊誌化」した「news zero」はやがて視聴者から見放されるだろう。
 もっとも民放のワイドショーは、以前は芸能情報が中心だったが、最近は小池都政問題や森友加計問題、大蔵省セクハラ問題、日大アメフト問題など政治・社会問題に積極的に取り組んでいて、「第二のニュース情報番組」に成長している。


「news zero」    日本テレビ/Youtube

検証 第一週の「news zero」は?

▼ 10月1日(月)

 「news zero」の番組の冒頭で、番組タイトルはやめて、有働由美子キャスターのワンショットのコメントでいきなり始まる。「news zero」の番組の「顔」として有働由美子キャスターを視聴者に印象付けようとする演出である。
 櫻井翔キャスターと日本テレビ解説委員で国際部デスクの小野高弘氏。小野高弘氏は「NEWS ZERO」のレギラー解説者だ。
 メイン・ニュースは「ノーベル生理・医学賞を受賞した本庶佑氏」、次は「台風24号の影響で入場規制で交通に混乱」のニュース、続いてスポーツ・ニュース。そしてようやくニュースらしいニュースが登場、「内閣改造人事固まる」で国会記者会館から日本テレビ政治部の富田徹記者がリポートした。
 しかし、焦点の沖縄県知事選については、一言も触れていない。ニュース・バリューの判断がまったく欠落している。初回から大失態だろう。
 ちなみに、テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーべル賞本庶佑氏受賞」の他に、「“日本一周”を装い逃避行」、「与党総力戦に誤算 沖縄県知事選」、TBS「ニュース23」では、「玉城氏勝利 政権に動揺広がる」、「内閣改造予想」、「48日目 ついに逮捕 “逃走男”日本縦断中に記念撮影」、「貴乃花部屋消滅」などを取り上げている。
 ニュース番組は現代社会としっかり向き合わなければならない。「news zero」にはそれが欠落している。

▼ 10月2日(火)
 有働由美子キャスターは、冒頭の挨拶では、「そもそも内閣改造、興味ありますか」と視聴者に問いかける。まるで、TwitterなどのSNSの「のり」で、ニュースキャスターならもっと伝えるべきニュース情報があると思えるが?
 この日のゲスト・コメンテーターは筑波大学准教授で若手の科学者の落合陽一氏と日本テレビ解説委員の小野高弘氏。
 落合陽一氏は「草履履き」でスタジオに登場したが、筆者は、「草履」だろうが「サンダル」だろうが、「下駄」だろうが、靴を履いていたほうがマナーとして適切だとは思うが、余り本質的な問題ではない。要はニュース報道番組のコメンテーターとして内容のある納得できるコメントをしてもらえば良いと思っているが、それができたか、いささか疑問が残る。
 メインニュースは、「静岡で続く大停電」、続いて「内閣改造」、国会記者会館から富田徹記者がリポートした。
 ここで、有働由美子キャスターの的外れな発言が早くも飛び出す。
 「そもそも内閣改造とはなんでするんですか?」、これにはさすがに富田徹記者もため息が漏れた。ニュースは短時間に情報をきちんと分析をして伝える必要がある。余計な時間を使いたくない。
 肝心の「内閣改造」の分析はほとんどなく、スタジオのコメンテーターも情報性のあるコメントを言えない。
 挙句の果ては、「大河を観ると武将人気が出るように、現役政治家のドラマを作るとか」という視聴者のお便りを紹介し、スタジオで「雑談」する。そんな時間があるなら「内閣改造」に関する本筋の情報を伝えるべきだろう。早くも、「news zero」の弱点をさらけ出した。
 そして「内閣改造」は早々に切り上げて、「特別対談 名司会者の頭の中は? タモリ×有働由美子」というスペシャル企画を放送する。
 この企画の冒頭で、有働由美子キャスターは、「3月からフリーとなって10月からZEROにお邪魔しているわけで、自分にとっては大変大きな人生の転機だったですが、この機会にどうしてもお話を聞いておきたかった人がいます」とした。
 この日のニュースの重要なテーマは「内閣改造」、有働由美子キャスターの「人生の転機」はこの日のテーマではないと思うが、有働由美子キャスターはどう考えていますか?
 「タモリ×有働由美子」のような企画は、ニュース担当者は「ヒマネタ」と呼んでいることを有働由美子キャスターも知っていると思うが如何ですか?
 ちなみに「ニュース23」では「森友文書改ざん問題 自殺職員の父が語る無念」の特集、「報道ステーション」は「『日本縦断中』の逃走を支えたものは?」を放送した。

▼ 10月3日(水)
 この日のゲストは、義足モデルとして世界で活躍してるGIMOKO氏、ニュース番組としては異色のゲスト起用で、大いに評価したい。
 トップ・ニュースは、「また台風が列島に接近 “計画運休”平日実施も」、続いて「ドウなの? 計画運休どうすればよくなる」についてスタジオでGIMOKO氏、れギラー・コメンテーターの小野高弘氏と、視聴者の声も含めて議論した。しかし、議論にに深まりはなく、情報性の薄い内容となった。議論するなら、専門性と知見を持った出演者を起用して欲しい。GIMOKO氏に“計画運休”を議論させるのは酷なような気もするが? 視聴者の共感を掲げるのはいいが、なにやら庶民の「井戸端会議」の感が否めない。
 続いて「貴ノ岩側 日馬富士に3000万円請求」や「新宿歌舞伎町 女性飛び降り巻き添え」、そして「zero culture ハロウィーン 今年は不気味グルメに注目」が登場する。ほとんど、「ワイドショー」で、とてもニュース番組とは筆者は思えない。
 NHK 「ニュース7」は、「“計画運休”平日実施」に続いて、「“全員野球内閣”本格始動」や「インドネシア地震津波」、テレビ朝日「報道ステーション」は、「中国人気女優脱税」や「トランプ大統領脱税疑惑」、TBSは「インドネシア大津波の謎」を取り上げていた。
 「「news zero」のニュースバリューに対する見識を疑う。

▼ 10月4日(木)
 今日は、日本テレビ金曜ロードSHOWプロデューサーの谷生俊美氏、トランジェンダーを公表し、日本テレビには男性として入社し現在は女性として活躍している個性的なゲストを起用した。
 谷生俊美氏は記者としてカイロ支局長も経験し、LGBT映画に向き合っているという。
 トップ・ニュースは「台風15号 沖縄に接近中」、続いての特集は「自転車で逃走48日間 カメラに顔を隠す 大胆な要求も」である。
 しかし、この「自転車で逃走48日間」のニュースは、「報道ステーション」でも「ニュース23」でも10月1日にすでに同様の内容を伝えている。二日遅れのニュースに鮮度はまったくない。
 谷生俊美氏は「容疑者は性犯罪の容疑者であることは本当に“怖い”ことだ」と指摘したが、肝心の事件の問題点の掘り下げは一切なく、印象論で終わってしまった。
 次は「元貴乃花親方 今後を語る」、「がんの免疫療法で注意 トラブル多発」、有働由美子キャスターは、癌で亡くなった母親の免疫療法についての体験を元に視聴者に注意を促した。この辺は、「あさイチ」で養った感性が発揮できたと感じた。
 「がんの免疫療法」の企画は、この週で唯一の「news zero」の独自企画だ。こうしたファクトを足で取材する地道な努力が「news zero」に課せられる。
 そして、ゲストコメンテーター用の「都がLGBT差別禁止条例案」のニュースを取り上げた。「この条例をきっかけにして市民のこの問題に対する意識が広まり、この問題を考えていくようになって欲しい」と発言した。
 レギラー解説者の小野高弘キャスターは、「これは2年後の東京五輪・パラリンピックを見据えたもので、オリンピック憲章ではいかなる差別もあってはならないとされ、その中には性別、性的志向も含まれている」と指摘した。
 これに対して、有働由美子キャスターもコメントしなければならないと思うが、「視聴者の皆さん、いろんなお考えがると思うのでお便りをお寄せください」とし、何もキャスターとしてコメントせずこの話題を終えてしまった。
 有働由美子キャスターは、「ジャーナリスト」を標ぼうするなら、ニュース番組のキャスターとしての識見と知見を示すべきだろう。
 「zero culture なぜ?タイ映画が異例のヒット!」、このコーナーは熱心に力を入れている。
 これに対して、NHK 「ニュース7」は、「会計検査院 五輪関連経費8000億円支出 五輪開催経費総額は3兆円に」や「トヨタ。ソフトバンク提携」、TBS「ニュース23」は「加計学園理事長会見へ」を取り上げた。
 「五輪開催経費3兆円」はこの日の最大のニュースだろう。


▼  10月5日(金)
 有働由美子キャスターは、「zeroは北海道を西日本豪雨から3か月の被災地を全力を上げて支えます」と冒頭で語った。
 そしてこの日のゲストは、北海道出身の人気俳優、大泉洋氏を登場させた。
 「私たちができること 地震1か月 北海道応援」というタイトルを掲げ、初めて有働由美子キャスターが、現地取材を行った。
 リポートの冒頭は、札幌の繁華街、夜のネオンが輝くすすき野、「このネオンがないと これがすすきのだなぁ」というコメントで始まる。焼き鳥屋に入って地震の影響を店長から聞く。
 そして被害の大きかった厚真町を取材し、収穫直前の稲の刈り取りもできず、未だに避難生活をしている住民を取材、「まずは厚真のコメを食べて欲しい」という農家の声に、遠く離れた場所で、「今、私たちができることは」として「① あつまの米を食べること」とした。あまりにもシンプルすぎて唖然である。わざわざ取材にいくなら、厚真町の災害復興の問題点をしっかり取材して検証して欲しい。
 続いて、被災住宅の片づけを行っているボランティアを取材、「② 土日を利用してボランティアへ」とした。その発想に納得がいかない。
 酪農農家の影響を取材し、停電で搾乳ができず、乳房炎にかかった牛がかなりの頭数になり、牛乳の出荷量は大幅に減っているという窮状を伝えた。
 そして、「③ 乳製品を飲む・食べる」。これで視聴者の共感が得られると思っているのだろうか。
 続いて、「さっぽろオータムフェスト2018」を取材し、北海道の食のフェスティバルを紹介した。会場には、北海道の海産物や厚真町のジンギスカンなど各地の名物グルメが集まる。
 礼文町のうにの踊り焼きに舌鼓を打って、「これまた濃厚な…」、いつのまにかグルメ・リポート番組になっていた。
 リポートのメッセージは「食べて応援」、余りにもお粗末はメッセージだ。地震の影響で落ち込んだ北海道の再興策にいかに取り組むか、国や北海道は何をすべきなのかを伝えようとするジャーナリストの視点が欠落している。
 続いて、西日本豪雨から3か月の被災地、広島・水尻地区を取材した。被災者の一家を訪れ、未だに物置を改装した手作りの家に住んでいる状況を伝えた。「今、私たちができることは」として「① 被災地の現状を知る」とした。その後、訪れた広島・竹原市の藤井酒造では、浸水被害を受けた築250年の蔵で、ようやく仕込みが始まる。「今、私たちができることは」として「② 買い物・観光」とした。
 いささか、「今更」という感が強い企画で、新鮮味はまったくないし、共感も最早ない。
 ちなみにNHK「ニュース7」は、「大停電で171人救急搬送 死者も」というスクープし、「築地市場あす最後の営業 日本の台所 活気に満ちた83年」という企画を放送した。テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーベル平和賞決定」のニュースを速報した。受賞したのは戦時下の性暴力と戦っている二人で、この内、イラク人女性のナディア・ムラード氏、クルド人でヤジディ教徒、過去に過激派組織、イスラム国に拉致され性暴力を受けた経験を持ち、その経験を伝えながら人身売買の撲滅を訴えてきた。もう一人は、医師のデニ・ムクエベ氏は、コンゴ民主共和国で性暴力被害にあった女性を治療し続けている。
 続いて、「五輪開催経費3兆円に」を取り上げ、さらに「麻生大臣の“強気”」、森友学園問題で自殺した近畿財務局職員の父親の告発に対し、麻生氏は「財務省に対応は間違っていなかった」としたニュースを伝えた。週末企画、「金曜特集」は、築地で引退か 寿司職人の苦悩」を伝えた。「ZERO」と違ってグルメ企画ではない、ニュース報道になっている。
 TBSの「ニュース23」では、トップ・ニュースに「原因は海水? 京成線運休に」というタイトルで、東京と成田空港を結ぶ京成電鉄が朝から全線に渡ってストップ、複数の送電線から火が出たためで、出火の原因は台風によって吹き付けられた海水とみられているとした。台風による塩害の脅威を指摘した大きなニュースである。
 「ノーベル平和賞決定」や「佐川氏は極めて有能」という麻生大臣発言などを放送した。
 「都がLGBT差別禁止条例案」を取り上げて、谷生俊美氏をゲスト起用した「NEWS ZERO」が、なぜ「ノーベル平和賞」を無視するのか、ジャーナリストとしての感性を疑う。森友加計問題、五輪開催経費問題、築地市場移転はニュースではないのか。

▼ 10月8日(月) 振替休日 (二週目を一日だけ追加)
 毎週月曜日は、櫻井翔キャスターと有働由美子キャスターが2人で番組を始める。
この日のメイン・ニュースは「築地市場移転」、「news zeroではいろんな方の視点で見ていきたい」とした。
まずは「三連休の天気 コロコロ変化 花火大会で事故 台風の影響か」のニュースを取り上げ、「ホワイトタイガーに襲われ40歳の男性飼育員が死亡」、「日本新 大迫傑 “半端ない”走りの原動力」と続く。
 そして「築地市場 83年の歴史に幕 競りストップ4日間で影響は?」、今日のメイン企画である。「いろんな方の視点」というから、これまで取り上げられていない新たな視点での取材を期待した。結果はまったく期待外れ、何度も、他局のリポートで見たい内容の「焼き直し」で、鮮度はまったくない。
最初に10月7日、夜明け前の環状二号線を通って築地市場から豊洲市場に向かうターレの列、すでに何度も放送された光景だ。続いて築地市場の歴史、これも何回もすでに見せられた。
 築地市場の移転とともに店をたたむ決断をした女性を取材、これも何度も見せられた。
 次は、移転に伴い4日間の空白の間に、築地市場から鮮魚を仕入れていた鮮魚店を取材、産地直送の航空便に頼っているとした。
 場外市場を訪れ、観光客や「場外市場は移転しない」とPRしている様子を取材したが全く鮮度はない。
 続いて豊洲市場の紹介にうつり、豊洲市場は築地市場とは違って、「閉鎖型」で空調で10.5度に保たれていることなどを伝えた。マグロの競りも衛生面に配慮して見学客はデッキの上からに見ることになるとした。同じ内容はすでに取り上げられている。
豊洲市場の屋上緑化を取材したが、この話題は、リポートの中で唯一、新しい情報だった。しかし、余り本論とは関係ない。
 築地市場の跡地利用や再開発についても説明したが、新しい情報はない。
 結果、新しい情報は、屋上緑化だけだった。「いろんな方の視点で見ていきたい」という狙いはなんだったのだろうか。新しさは何もないリポートで残念としかいいようがない。
 この次に、「落札直後“裁断”は作者のメッセージ」、ニュースそのものが極めて面白い。
 「zero culture」は、「22歳の“日本人監督”が快挙」、映画の話題だ。
 これに対し、「報道ステーション」は、「加計学園理事長会見」、安倍総理と加計学園理事長が会ったのかどうかどのように説明するか注目の会見だった。「記録を調べてもらったが事務局の方にもないといっている」としたが、疑念は晴れない。国際的に注目されている「ICPO総裁行方不明事件」も取り上げた。そして「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」、北朝鮮は核実験場に査察団を招くことを明らかにし、二回目の米朝首脳会談は早期に開く見通しになった。しかし、日程、場所の合意には至らなったとされる。さらに日朝首脳会談の可能性も開かれているとした。
 「ニュース23」でも、「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」の内容や、「加計学園理事長会見」、「ICPO総裁行方不明事件」を取り上げている。
 「news zero」はまったく素通りをしているが、祭日にも関わらず重要なニュースがあったのである。これでは、「news zero」と見ても、世の中の重要な動きはまったくわからない。さらに加計学園関連のニュースはすべて無視していて、これでは安倍政権への「忖度」ニュース番組だ。
 それでもニュースの看板を掲げるのだろうか?

 
「news zero」はいつまで続くのか?
 「news zero」は、「あさイチ」のような生活情報番組ではない。ニュース報道番組である。ニュース報道番組であるなら、ジャーナリズムとして見識と知見を示すべきだ。
 批判精神を現代社会と向き合い姿勢を失ったニュース報道番組は存在意義はない。
 鮮度のない情報を並べて、視聴者への共感だけを掲げる姿勢は納得できない。
 ニュースは「事実」を徹底して追求し、「事実」に基づいてメッセージを発信しなければならない。

 一方で、これまでのニュース番組では登場してこなかった個性的で多様なゲストが起用されているのは評価ができる。多様な意見を吸収する努力もニュース報道番組には求められるからだ。
 「news zero」がこうした戦略をとった背景には、既存のニュース報道番組とは差別化して、若者や女性など新たな視聴者層を掘り起こしたいという狙いが見える。
 とにかく、新聞を読まないしテレビニュースも見ない若者が激増しているのである。
 確かに難解な政治、経済、国際ニュースを視聴者に分かりやすく、共感を持って視聴できるようにするいう発想はニュース報道番組にとって重要な課題の一つだろう。
「news zero」は「zeroは皆さんと一緒に考えるニュース番組です」というコンセプトを掲げている。
 しかし、実態は、難解な政治、経済、国際ニュースは避けて通って、分かりやすニュースばかり取り上げるという安直な姿勢が目につく。現代社会に正面から向き合いのがニュース報道番組だろう。

 有働由美子キャスターの「news zero」は果たして視聴者に支持されるのか、一体いつまで続くのか、ジャーナリズムとは何かという視点で、大いに注目したい。





東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!
大坂なおみの初優勝を台無しにしたセリーナ 全米オープンテニス決勝戦
“陸の孤島” 東京五輪施設 “頓挫”する交通インフラ整備 臨海副都心 豊洲市場開場




「準備は1年遅れ」「誠実に答えない」 警告を受けた大会組織委
マラソン水泳・トライアスロン 水質汚染深刻 お台場海浜公園
江の島セーリング会場 シラス漁に影響 ヨットの移設や津波対策に懸念
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“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル
東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか





2018年10月22日
Copyright (C) 2018 IMSSR






******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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news zero 迷走 有働由美子 ニュースキャスター失格 ニュースは「あさイチ」とは違う 報道ステーション ニュース23

2018年10月16日 16時44分24秒 | メディア

迷走! 有働由美子の「news zero」








「news zero」 有働由美子がメインキャスターに 村尾信尚氏は降板
 2018年10月1日、日本テレビの夜のニュース番組、「news zero」(毎週月~木曜23:00~、金曜23:30~)は、元NHKアナウンサーの有働由美子をメインキャスターに迎えて、キャスター陣も一新して、番組をリニューアルをした。
 これまで、メインキャスターを務めていた村尾信尚氏は降板し、ニュース番組では異色のキャスターを務めた女優、桐谷美玲や芥川賞作家の又吉直樹も降板した。
 筆者は、日本テレビのメインニュースである「news zero」は、テレビ朝日の「報道ステーション」、TBSの「ニュース23」、NHKの「ニュース7」と並んで、毎日のように見ていた。
 村尾信尚キャスターは、安保法制や森友加計問題、財務省セクハラ問題などの政治・社会問題で、批判精神を持ってコメントをしていたことを大いに評価したい。批判精神を持って現代社会と向き合う姿勢を失ったニュース番組は存在意義がない。
 また、桐谷美玲や又吉直樹が取材に出てリポートする積極的な演出も興味深かった。
 とりわけ桐谷美玲のリポートは、女優でありながら大健闘していると大いに評価していていたのに降板は残念である。

「news zero」  初週平均視聴率8.7%、前週比1.3ポイント上昇
 10月1日放送の初回の視聴率は10.0%で2ケタ発進となったが、タモリと有働の対談を放送した翌日はそれを上回る10.4%を記録。以降も、7.9%、8.4%、6.6%と好調に推移。
 村尾信尚キャスターが担当していた9月第4週(24~28日)は、9月28日が24時5分開始とレギュラーより時間が大幅に繰り下がっての放送となったこともあり、週平均は7.4%だった。
 その結果、「news zero」の初週(10月1日~5日)の平均視聴率は8.7%となり、前週から1.3ポイント上昇した。
 視聴率はさまざな条件を加味して比較する必要があるので、「1.3ポイント」の差は、「前週並み」か「微増」程度と考えたほうが良いだろう。とても「出足快調」とは言えない。
 テレビ関係者の間からは、視聴者の好感度が高いNHKの人気女性アナウンサーをキャスターに起用したのだから、視聴率は「10%」の大台に乗ってもよかったのではという声も聞こえる。
 しかしその後の視聴率も低迷している。
 第二週に入り、10月8日(祭日)は8.4%、9日が8.2%、10日6.3%、11日5.9%、12日4.6%で、番組リニューアルから2週間の平均視聴率は7.66%、リニューアル前の最終週の視聴率7.44%をほぼ同じで、「10%」の大台に乗せるという目論見は失敗している。

有働由美子キャスター 「あさいち」の快進撃で大きな業績
 有働由美子キャスターは、神戸女学院大学を卒業し、NHKにアナウンサーとして入局、初任地は大坂放送局、近畿ブロックのニュース・番組を担当した。
 東京のNHK放送センターに移動し、最初に担当したニュースが『NHKニュースおはよう日本』の女性キャスター、若手女性アナウンサーの登竜門である。その後はスポーツキャスターとして活躍し、『サタデースポーツ』、『サンデースポーツ』のスポーツ・ニュースのキャスターや、オリンピックの中継を担当した。
 2001年から2003年までは、『NHK紅白歌合戦』で紅組司会を担当し、アナウンサーとして幅の広さを示し、親しみ安いキャラクターで視聴者からの評価も高かった。2006年4月からは、『スタジオパークからこんにちは』の司会を務め、情報番組の司会の腕を磨いた。
 2007年6月、アナウンサー職のままで、初めてアメリカ総局(ニューヨーク)へ特派員になって赴任。
 NHK放送センターに戻って、『あさイチ』のキャスターとなり、2010年3月から2018年3月まで8年間の長期に渡って番組を支えた。2012年 - 2015年の『NHK紅白歌合戦』に再び登場し、総合司会を務めた。。
 2018年3月31日、27年間在職したNHKを退職した。「一生、現場にいたい」という思いが強かったとされている。

 有働由美子キャスターのNHK時代の最大の業績は「あさイチ」のキャスターとして、番組を支え、朝の時間帯で、これまで圧倒的に強かった民放の「ワードショー」を抑えてトップクラスに躍り出ることに成功したことである。
 これまで、NHKは「おはよう日本」から「朝の連続テレビ小説」までは、民放に常時圧勝してきたが、「連続テレビ小説」が終わると、民放の「ワードショー」に視聴者を奪われてきた。
 
 「あさイチ」では、新しいキャスター、有働由美子を迎え、番組を一新し、40代女性から50台の女性にターゲットを据え、この世代の女性に関心のある料理や家事などの生活情報や、この世代の女性の悩みや不安、不満に答えるテーマを積極的に取り上げた。
 これまでのNHKではあまり取り上げない「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」などを特集した。
 また出産後に夫婦仲が冷え込む「産後クライシス」や「発達障害特集」は大きな反響を呼び、『「あさイチ」に「有働あり」』という評価が高まった。
 「あさイチ」は、午前8時15分からの第1部で、視聴率10%前後(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で同時間帯の民放を抑えて首位に立つ。
 番組対する視聴者の評価を高めた牽引車は間違いなく、有働由美子キャスターの他には追随できない稀なキャラクターだ。
 40代女性に寄り添った目線をしっかり打ち出してテーマを扱う姿勢が視聴者の共感を集めた。有働由美子キャスターのいやみのない飾らない率直な人柄も極めて重要だ。
 そして有働由美子キャスターを支える共演者にも恵まれた。
 「イノッチ」と呼ばれ人気の高い「V6」のメンバー、井ノ原快彦の存在は極めて大きい。有働由美子キャスターに増して、視聴者との共感力が高く、視聴者の思いをしっかり受け止めていた。
 直前に放送している「連続テレビ小説」への感想を言い合う「朝ドラ受け」も、キャスター陣の発案で、視聴者の共感を得たという。
 「あさイチ」のキャスターを8年間担当したことで、有働由美子キャスターも円熟味を増して、ますます大きく成長したのは間違いない。
 キャスターが番組を育て、番組がキャスターを育てる、ポジティブなスライラルが展開した格好の例である。

有働由美子はニュースキャスターの顔にはなれない
 情報番組の「あさイチ」のキャスターとして大成功したからといって、ニュース番組のキャスターとして成功するかどうかはまったく別次元である。

 ニュース番組は、政治、経済、社会、国際、科学、文化、あらゆる分野のニュースを処理しなければならない。
 とりわけ政治、経済、国際ニュースは、キャスターは見識と知見が問われる。
 安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権、とにかく展開が早く、構図は複雑だ。ミスリードはあってはならない。
 
 「news zero」のライバル、テレビ朝日の「報道ステーション」では、元共同通信編集局長の後藤憲謙次氏とテレビ朝日の富川悠太アナウンサーと徳永有美アナウンサーがキャスターを務め、TBSの「ニュース23」では、元朝日新聞の特別編集員の星 浩氏とフリーアナウンサーの雨宮塔子氏がキャスターを務める。
 後藤憲謙次氏も星 浩氏もジャーナリストとしての見識と知見は申し分ない。
 安倍政権に対して、「ものを言う」姿勢を堅持している。
 筆者は、批判精神にないニュース番組は存在意義がないと信じている。単に情報を右から左に伝えるメッセンジャーではない。

 「news zero」には、政治、経済、社会、国際問題の今に向き合う姿勢がまったく感じられない。
 ジャーナリスト、取材者として経験が少ない有働由美子キャスターにそれを求めるのは酷であろう。
 「news zero」」には、しっかりした見識と知見を示すことができる脇を固めるニュース・キャスターが不在だ。ニュース番組は、安保法制、北朝鮮問題、森友加計問題、普天間基地移転問題、トランプ政権にしっかり対峙して、初めてニュース番組となる。
 生活情報や「セックスレス」や「不妊」、「性暴力」といったテーマを取り上げて視聴者の共感を得ればよい情報番組とは次元が違う。
 もう一人のキャスター、櫻井翔がニュースキャスターの役割を担うのも不可能だろう。
 「ワイドショー化」、「女性週刊誌化」した「news zero」はやがて視聴者から見放されるだろう。
 もっとも民放のワイドショーは、以前は芸能情報が中心だったが、最近は小池都政問題や森友加計問題、大蔵省セクハラ問題、日大アメフト問題など政治・社会問題に積極的に取り組んでいて、「第二のニュース情報番組」に成長している。


「news zero」    日本テレビ/Youtube

検証 第一週の「news zero」は?

▼ 10月1日(月)

 「news zero」の番組の冒頭で、番組タイトルはやめて、有働由美子キャスターのワンショットのコメントでいきなり始まる。「news zero」の番組の「顔」として有働由美子キャスターを視聴者に印象付けようとする演出である。
 櫻井翔キャスターと日本テレビ解説委員で国際部デスクの小野高弘氏。小野高弘氏は「NEWS ZERO」のレギラー解説者だ。
 メイン・ニュースは「ノーベル生理・医学賞を受賞した本庶佑氏」、次は「台風24号の影響で入場規制で交通に混乱」のニュース、続いてスポーツ・ニュース。そしてようやくニュースらしいニュースが登場、「内閣改造人事固まる」で国会記者会館から日本テレビ政治部の富田徹記者がリポートした。
 しかし、焦点の沖縄県知事選については、一言も触れていない。ニュース・バリューの判断がまったく欠落している。初回から大失態だろう。
 ちなみに、テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーべル賞本庶佑氏受賞」の他に、「“日本一周”を装い逃避行」、「与党総力戦に誤算 沖縄県知事選」、TBS「ニュース23」では、「玉城氏勝利 政権に動揺広がる」、「内閣改造予想」、「48日目 ついに逮捕 “逃走男”日本縦断中に記念撮影」、「貴乃花部屋消滅」などを取り上げている。
 ニュース番組は現代社会としっかり向き合わなければならない。「news zero」にはそれが欠落している。

▼ 10月2日(火)
 有働由美子キャスターは、冒頭の挨拶では、「そもそも内閣改造、興味ありますか」と視聴者に問いかける。まるで、TwitterなどのSNSの「のり」で、ニュースキャスターならもっと伝えるべきニュース情報があると思えるが?
 この日のゲスト・コメンテーターは筑波大学准教授で若手の科学者の落合陽一氏と日本テレビ解説委員の小野高弘氏。
 落合陽一氏は「草履履き」でスタジオに登場したが、筆者は、「草履」だろうが「サンダル」だろうが、「下駄」だろうが、靴を履いていたほうがマナーとして適切だとは思うが、余り本質的な問題ではない。要はニュース報道番組のコメンテーターとして内容のある納得できるコメントをしてもらえば良いと思っているが、それができたか、いささか疑問が残る。
 メインニュースは、「静岡で続く大停電」、続いて「内閣改造」、国会記者会館から富田徹記者がリポートした。
 ここで、有働由美子キャスターの的外れな発言が早くも飛び出す。
 「そもそも内閣改造とはなんでするんですか?」、これにはさすがに富田徹記者もため息が漏れた。ニュースは短時間に情報をきちんと分析をして伝える必要がある。余計な時間を使いたくない。
 肝心の「内閣改造」の分析はほとんどなく、スタジオのコメンテーターも情報性のあるコメントを言えない。
 挙句の果ては、「大河を観ると武将人気が出るように、現役政治家のドラマを作るとか」という視聴者のお便りを紹介し、スタジオで「雑談」する。そんな時間があるなら「内閣改造」に関する本筋の情報を伝えるべきだろう。早くも、「news zero」の弱点をさらけ出した。
 そして「内閣改造」は早々に切り上げて、「特別対談 名司会者の頭の中は? タモリ×有働由美子」というスペシャル企画を放送する。
 この企画の冒頭で、有働由美子キャスターは、「3月からフリーとなって10月からZEROにお邪魔しているわけで、自分にとっては大変大きな人生の転機だったですが、この機会にどうしてもお話を聞いておきたかった人がいます」とした。
 この日のニュースの重要なテーマは「内閣改造」、有働由美子キャスターの「人生の転機」はこの日のテーマではないと思うが、有働由美子キャスターはどう考えていますか?
 「タモリ×有働由美子」のような企画は、ニュース担当者は「ヒマネタ」と呼んでいることを有働由美子キャスターも知っていると思うが如何ですか?
 ちなみに「ニュース23」では「森友文書改ざん問題 自殺職員の父が語る無念」の特集、「報道ステーション」は「『日本縦断中』の逃走を支えたものは?」を放送した。

▼ 10月3日(水)
 この日のゲストは、義足モデルとして世界で活躍してるGIMOKO氏、ニュース番組としては異色のゲスト起用で、大いに評価したい。
 トップ・ニュースは、「また台風が列島に接近 “計画運休”平日実施も」、続いて「ドウなの? 計画運休どうすればよくなる」についてスタジオでGIMOKO氏、れギラー・コメンテーターの小野高弘氏と、視聴者の声も含めて議論した。しかし、議論にに深まりはなく、情報性の薄い内容となった。議論するなら、専門性と知見を持った出演者を起用して欲しい。GIMOKO氏に“計画運休”を議論させるのは酷なような気もするが? 視聴者の共感を掲げるのはいいが、なにやら庶民の「井戸端会議」の感が否めない。
 続いて「貴ノ岩側 日馬富士に3000万円請求」や「新宿歌舞伎町 女性飛び降り巻き添え」、そして「zero culture ハロウィーン 今年は不気味グルメに注目」が登場する。ほとんど、「ワイドショー」で、とてもニュース番組とは筆者は思えない。
 NHK 「ニュース7」は、「“計画運休”平日実施」に続いて、「“全員野球内閣”本格始動」や「インドネシア地震津波」、テレビ朝日「報道ステーション」は、「中国人気女優脱税」や「トランプ大統領脱税疑惑」、TBSは「インドネシア大津波の謎」を取り上げていた。
 「「news zero」のニュースバリューに対する見識を疑う。

▼ 10月4日(木)
 今日は、日本テレビ金曜ロードSHOWプロデューサーの谷生俊美氏、トランジェンダーを公表し、日本テレビには男性として入社し現在は女性として活躍している個性的なゲストを起用した。
 谷生俊美氏は記者としてカイロ支局長も経験し、LGBT映画に向き合っているという。
 トップ・ニュースは「台風15号 沖縄に接近中」、続いての特集は「自転車で逃走48日間 カメラに顔を隠す 大胆な要求も」である。
 しかし、この「自転車で逃走48日間」のニュースは、「報道ステーション」でも「ニュース23」でも10月1日にすでに同様の内容を伝えている。二日遅れのニュースに鮮度はまったくない。
 谷生俊美氏は「容疑者は性犯罪の容疑者であることは本当に“怖い”ことだ」と指摘したが、肝心の事件の問題点の掘り下げは一切なく、印象論で終わってしまった。
 次は「元貴乃花親方 今後を語る」、「がんの免疫療法で注意 トラブル多発」、有働由美子キャスターは、癌で亡くなった母親の免疫療法についての体験を元に視聴者に注意を促した。この辺は、「あさイチ」で養った感性が発揮できたと感じた。
 「がんの免疫療法」の企画は、この週で唯一の「news zero」の独自企画だ。こうしたファクトを足で取材する地道な努力が「news zero」に課せられる。
 そして、ゲストコメンテーター用の「都がLGBT差別禁止条例案」のニュースを取り上げた。「この条例をきっかけにして市民のこの問題に対する意識が広まり、この問題を考えていくようになって欲しい」と発言した。
 レギラー解説者の小野高弘キャスターは、「これは2年後の東京五輪・パラリンピックを見据えたもので、オリンピック憲章ではいかなる差別もあってはならないとされ、その中には性別、性的志向も含まれている」と指摘した。
 これに対して、有働由美子キャスターもコメントしなければならないと思うが、「視聴者の皆さん、いろんなお考えがると思うのでお便りをお寄せください」とし、何もキャスターとしてコメントせずこの話題を終えてしまった。
 有働由美子キャスターは、「ジャーナリスト」を標ぼうするなら、ニュース番組のキャスターとしての識見と知見を示すべきだろう。
 「zero culture なぜ?タイ映画が異例のヒット!」、このコーナーは熱心に力を入れている。
 これに対して、NHK 「ニュース7」は、「会計検査院 五輪関連経費8000億円支出 五輪開催経費総額は3兆円に」や「トヨタ。ソフトバンク提携」、TBS「ニュース23」は「加計学園理事長会見へ」を取り上げた。
 「五輪開催経費3兆円」はこの日の最大のニュースだろう。


▼  10月5日(金)
 有働由美子キャスターは、「zeroは北海道を西日本豪雨から3か月の被災地を全力を上げて支えます」と冒頭で語った。
 そしてこの日のゲストは、北海道出身の人気俳優、大泉洋氏を登場させた。
 「私たちができること 地震1か月 北海道応援」というタイトルを掲げ、初めて有働由美子キャスターが、現地取材を行った。
 リポートの冒頭は、札幌の繁華街、夜のネオンが輝くすすき野、「このネオンがないと これがすすきのだなぁ」というコメントで始まる。焼き鳥屋に入って地震の影響を店長から聞く。
 そして被害の大きかった厚真町を取材し、収穫直前の稲の刈り取りもできず、未だに避難生活をしている住民を取材、「まずは厚真のコメを食べて欲しい」という農家の声に、遠く離れた場所で、「今、私たちができることは」として「① あつまの米を食べること」とした。あまりにもシンプルすぎて唖然である。わざわざ取材にいくなら、厚真町の災害復興の問題点をしっかり取材して検証して欲しい。
 続いて、被災住宅の片づけを行っているボランティアを取材、「② 土日を利用してボランティアへ」とした。その発想に納得がいかない。
 酪農農家の影響を取材し、停電で搾乳ができず、乳房炎にかかった牛がかなりの頭数になり、牛乳の出荷量は大幅に減っているという窮状を伝えた。
 そして、「③ 乳製品を飲む・食べる」。これで視聴者の共感が得られると思っているのだろうか。
 続いて、「さっぽろオータムフェスト2018」を取材し、北海道の食のフェスティバルを紹介した。会場には、北海道の海産物や厚真町のジンギスカンなど各地の名物グルメが集まる。
 礼文町のうにの踊り焼きに舌鼓を打って、「これまた濃厚な…」、いつのまにかグルメ・リポート番組になっていた。
 リポートのメッセージは「食べて応援」、余りにもお粗末はメッセージだ。地震の影響で落ち込んだ北海道の再興策にいかに取り組むか、国や北海道は何をすべきなのかを伝えようとするジャーナリストの視点が欠落している。
 続いて、西日本豪雨から3か月の被災地、広島・水尻地区を取材した。被災者の一家を訪れ、未だに物置を改装した手作りの家に住んでいる状況を伝えた。「今、私たちができることは」として「① 被災地の現状を知る」とした。その後、訪れた広島・竹原市の藤井酒造では、浸水被害を受けた築250年の蔵で、ようやく仕込みが始まる。「今、私たちができることは」として「② 買い物・観光」とした。
 いささか、「今更」という感が強い企画で、新鮮味はまったくないし、共感も最早ない。
 ちなみにNHK「ニュース7」は、「大停電で171人救急搬送 死者も」というスクープし、「築地市場あす最後の営業 日本の台所 活気に満ちた83年」という企画を放送した。テレビ朝日「報道ステーション」では、「ノーベル平和賞決定」のニュースを速報した。受賞したのは戦時下の性暴力と戦っている二人で、この内、イラク人女性のナディア・ムラード氏、クルド人でヤジディ教徒、過去に過激派組織、イスラム国に拉致され性暴力を受けた経験を持ち、その経験を伝えながら人身売買の撲滅を訴えてきた。もう一人は、医師のデニ・ムクエベ氏は、コンゴ民主共和国で性暴力被害にあった女性を治療し続けている。
 続いて、「五輪開催経費3兆円に」を取り上げ、さらに「麻生大臣の“強気”」、森友学園問題で自殺した近畿財務局職員の父親の告発に対し、麻生氏は「財務省に対応は間違っていなかった」としたニュースを伝えた。週末企画、「金曜特集」は、築地で引退か 寿司職人の苦悩」を伝えた。「ZERO」と違ってグルメ企画ではない、ニュース報道になっている。
 TBSの「ニュース23」では、トップ・ニュースに「原因は海水? 京成線運休に」というタイトルで、東京と成田空港を結ぶ京成電鉄が朝から全線に渡ってストップ、複数の送電線から火が出たためで、出火の原因は台風によって吹き付けられた海水とみられているとした。台風による塩害の脅威を指摘した大きなニュースである。
 「ノーベル平和賞決定」や「佐川氏は極めて有能」という麻生大臣発言などを放送した。
 「都がLGBT差別禁止条例案」を取り上げて、谷生俊美氏をゲスト起用した「NEWS ZERO」が、なぜ「ノーベル平和賞」を無視するのか、ジャーナリストとしての感性を疑う。森友加計問題、五輪開催経費問題、築地市場移転はニュースではないのか。

▼ 10月8日(月) 振替休日 (二週目を一日だけ追加)
 毎週月曜日は、櫻井翔キャスターと有働由美子キャスターが2人で番組を始める。
この日のメイン・ニュースは「築地市場移転」、「news zeroではいろんな方の視点で見ていきたい」とした。
まずは「三連休の天気 コロコロ変化 花火大会で事故 台風の影響か」のニュースを取り上げ、「ホワイトタイガーに襲われ40歳の男性飼育員が死亡」、「日本新 大迫傑 “半端ない”走りの原動力」と続く。
 そして「築地市場 83年の歴史に幕 競りストップ4日間で影響は?」、今日のメイン企画である。「いろんな方の視点」というから、これまで取り上げられていない新たな視点での取材を期待した。結果はまったく期待外れ、何度も、他局のリポートで見たい内容の「焼き直し」で、鮮度はまったくない。
最初に10月7日、夜明け前の環状二号線を通って築地市場から豊洲市場に向かうターレの列、すでに何度も放送された光景だ。続いて築地市場の歴史、これも何回もすでに見せられた。
 築地市場の移転とともに店をたたむ決断をした女性を取材、これも何度も見せられた。
 次は、移転に伴い4日間の空白の間に、築地市場から鮮魚を仕入れていた鮮魚店を取材、産地直送の航空便に頼っているとした。
 場外市場を訪れ、観光客や「場外市場は移転しない」とPRしている様子を取材したが全く鮮度はない。
 続いて豊洲市場の紹介にうつり、豊洲市場は築地市場とは違って、「閉鎖型」で空調で10.5度に保たれていることなどを伝えた。マグロの競りも衛生面に配慮して見学客はデッキの上からに見ることになるとした。同じ内容はすでに取り上げられている。
豊洲市場の屋上緑化を取材したが、この話題は、リポートの中で唯一、新しい情報だった。しかし、余り本論とは関係ない。
 築地市場の跡地利用や再開発についても説明したが、新しい情報はない。
 結果、新しい情報は、屋上緑化だけだった。「いろんな方の視点で見ていきたい」という狙いはなんだったのだろうか。新しさは何もないリポートで残念としかいいようがない。
 この次に、「落札直後“裁断”は作者のメッセージ」、ニュースそのものが極めて面白い。
 「zero culture」は、「22歳の“日本人監督”が快挙」、映画の話題だ。
 これに対し、「報道ステーション」は、「加計学園理事長会見」、安倍総理と加計学園理事長が会ったのかどうかどのように説明するか注目の会見だった。「記録を調べてもらったが事務局の方にもないといっている」としたが、疑念は晴れない。国際的に注目されている「ICPO総裁行方不明事件」も取り上げた。そして「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」、北朝鮮は核実験場に査察団を招くことを明らかにし、二回目の米朝首脳会談は早期に開く見通しになった。しかし、日程、場所の合意には至らなったとされる。さらに日朝首脳会談の可能性も開かれているとした。
 「ニュース23」でも、「ポンペオ国務長官と金正恩委員長会談」の内容や、「加計学園理事長会見」、「ICPO総裁行方不明事件」を取り上げている。
 「news zero」はまったく素通りをしているが、祭日にも関わらず重要なニュースがあったのである。これでは、「news zero」と見ても、世の中の重要な動きはまったくわからない。さらに加計学園関連のニュースはすべて無視していて、これでは安倍政権への「忖度」ニュース番組だ。
 それでもニュースの看板を掲げるのだろうか?

 
「news zero」はいつまで続くのか?
 「news zero」は、「あさイチ」のような生活情報番組ではない。ニュース報道番組である。ニュース報道番組であるなら、ジャーナリズムとして見識と知見を示すべきだ。
 批判精神を現代社会と向き合い姿勢を失ったニュース報道番組は存在意義はない。
 鮮度のない情報を並べて、視聴者への共感だけを掲げる姿勢は納得できない。
 ニュースは「事実」を徹底して追求し、「事実」に基づいてメッセージを発信しなければならない。

 一方で、これまでのニュース番組では登場してこなかった個性的で多様なゲストが起用されているのは評価ができる。多様な意見を吸収する努力もニュース報道番組には求められるからだ。
 「news zero」がこうした戦略をとった背景には、既存のニュース報道番組とは差別化して、若者や女性など新たな視聴者層を掘り起こしたいという狙いが見える。
 とにかく、新聞を読まないしテレビニュースも見ない若者が激増しているのである。
 確かに難解な政治、経済、国際ニュースを視聴者に分かりやすく、共感を持って視聴できるようにするいう発想はニュース報道番組にとって重要な課題の一つだろう。
「news zero」は「zeroは皆さんと一緒に考えるニュース番組です」というコンセプトを掲げている。
 しかし、実態は、難解な政治、経済、国際ニュースは避けて通って、分かりやすニュースばかり取り上げるという安直な姿勢が目につく。現代社会に正面から向き合いのがニュース報道番組だろう。

 有働由美子キャスターの「news zero」は果たして視聴者に支持されるのか、一体いつまで続くのか、ジャーナリズムとは何かという視点で、大いに注目したい。





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2018年10月12日
Copyright (C) 2018 IMSSR






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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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