Media Close-up Report オリンピック FIFAW杯 ラグビーW杯 放送・通信・ICT 

4K8K 5G AR/VR AI 新国立競技場 FIFAW杯 メディア評論 国際メディアサービスシステム研究所

平昌冬季五輪 韓国高速鉄道 KTX 韓国新幹線 赤字路線

2022年01月16日 13時10分42秒 | 平昌冬季五輪
“陸の孤島”解消の主役、五輪高速鉄道(KTX)は赤字必至





高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

 平昌冬季五輪開催に合わせて、競技会場エリアとソウルや仁川国際空港と結ぶ路線、韓国高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線(キョンガン)が開通した。
最速列車、特急「ダリアン」は、首都ソウルから平昌までを、約1時間30分、仁川国際空港から終点の江陵までを約2時間50分で結び、五輪大会の観客や選手、大会関係者の輸送の主役を担う。
 開会式や閉会式が行われるオリンピック・スタジアムや、アルペン競技場、アイススケート競技場は、韓国北東部の江原道(カンウォンド)の平昌や東海岸の江陵(カンヌン)市に立地している。この地域は首都ソウルからの交通の便が悪く、“陸の孤島”とされてきた。高速バスに乗車すると約3時間半、在来線では山岳部を避けて南へ大きく迂回し、海岸線を北上するため5時間以上かかった。日帰りするには難しい地域で、五輪開催にあたって、この地域のアクセスの改善は重要な課題だった。
 韓国政府は、これを解決するために、高速鉄道、KTX(Korea Train eXpress)の建設を決めた。工事は2012年6月に着工し、5年半余りの工期をかけて、2017年12月に完成、ソウルと江陵間が開業した。総事業費、3兆7597億ウォン(約3800億円)が投じられた。
 韓国大統領府関係者は「平昌五輪は冬季五輪では過去最大の国・地域が参加する。最大の五輪を最高の五輪にしようと新線をつくった」と語っている。


出典 PyeongChang2018

 KTX京江線はソウル駅を起点に、約半分の区間は在来線を利用し、万鍾の手前で新たに建設された高速新線に入る。新線の延長区間は約120km、江陵付近の一部のみ単線だが、その他は全線複線で、万鍾、横城、屯内、平昌、珍富(五臺山)、江陵の6駅が新設された。
 珍富(五臺山)駅は、オリンピック・スタジアムやアルペン、ジャンプ、スノーボードの競技場の最寄り駅で、江陵駅の近くには、アイスアリーナ、スピードスケート場、ホッケー場がある。大会開催期間中は、江陵駅は1日、2万人余りの乗降客でにぎわったという。
 2018年1月18日には、仁川国際空港第2ターミナルにKTXの駅が完成し、仁川国際空港から江陵までの全長277.91kmが開通し、韓国で初めて東西を結ぶ高速鉄道が整備された。
 2月1日からは仁川国際空港駅発が16本、ソウル駅発が10本など1日に上下各51本の列車を運行し、片道約4万人の旅客輸送が可能になるという。
 運賃は、ソウル―江陵間は一般席で2万7600ウォン(約2800円)、仁川空港からでも4万700ウォン(約4700円)で、駅から各競技場へのシャトルバスにも乗車できる。
運行車両は、2009年より導入された現代ロテム社製の「KTX ―山川」(サンチョン)の改良形で、10両編成の列車が15編成投入された。最高時速250kmで運転する。
 韓国の高速鉄道は、フランスのTGVの技術を導入して整備された。
 客車は特室(1等)1両、一般室(普通車)7両で、定員は408名、8号車の一般室のみ自由席で、それ以外は指定席車となっている
初代車両のKTX-1は座席が固定式で間隔も狭かったが、KTX ―山川では座席の方向転換も可能となり、座席の間隔も広くなってゆったり座れるようになった。
 パラリンピック期間中は、障害者用の座席を1編成あたり74席と通常の約15倍に増やす。
 すべての座席にFree Wi-Fiや電源コンセントが完備され、天井の液晶モニターで各種の情報や停車駅案内などが英語と日本語で表示される。
 走行中の揺れも少なく、乗り心地は快適だという。


高速鉄道(KTX Korea Train eXpress)京江線  出典  PyeongChang 2018 , Olympic News

仁川空港から平昌までKTX開通
KBS NEWS 2017-12-21/Youtube

仁川空港から平昌まで選手団と走る
YTN NEWS 2017-1207/Youtube

先端技術の結集 KTX
YTN SCIENCE 2017/12/04/Youtube


 五輪大会開催中は、KTXは大混雑して、列車によっては満員で乗り切れない乗客も現れたという。
 しかし、五輪終了後はどうなるか、誰もが懸念を抱く。
 KTX京江線の最大の問題点は、沿線人口の少ないことだ。このエリアの最大の都市、江陵市の人口は21万人、平昌郡はわずか4万人、スキーリゾートの山岳の街である。沿線一帯には、大企業の立地もなく主要な産業は見当たらない。しかも海岸部の江陵が終点で、延伸計画もなく、乗客増も見込めない。ちなみに長野冬季五輪で建設した長野新幹線は、北陸まで延伸され、乗客増につながっている。
それでも地元では、高速鉄道の開通を起爆剤にして、これまで韓国国内で最も開発が遅れていた江原道エリアの地域振興に結びつけたいと期待を寄せる。
 しかし、五輪開催のために3兆7597億ウォンという巨費を投じた高速鉄道、赤字路線に転落するのは必至だろう。
 KTXを運行するKORAILの負債が6兆7000億ウォン(約6700億円)にも達し、KTXの施設管理を行う鉄道施設公団の負債約6兆6000億ウォン(約6600億円)とあわせると約13兆3000億ウォン(約1兆3000億円)もの巨額負債を抱えているという。KTXは、建設工事の度重なる延期とそれに伴う事業費の高騰で、建設費が膨れ上がり、今後30年後は黒字化が不可能という予測もされている。
 高速鉄道KTXは「負の遺産」の象徴になりそうだ。






平昌五輪のメディア拠点 国際放送センター(IBC)
平昌冬季五輪 競技場の全貌 最新情報
平昌冬季五輪 NBCは2400時間以上の五輪番組を放送
平昌冬季五輪 4Kに乗り出したNBC
視聴率低下に歯止めがかからなかったNBCの平昌冬季五輪中継
平昌冬季五輪は“5Gオリンピック” 韓国の戦略~2020東京五輪は平昌五輪に先を越されたか?~
冬季五輪の“宿命” “負のレガシー”(負の遺産)を抱える平昌冬季五輪





国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年3月10日
Copyright (C) 2018 IMSSR




******************************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
******************************************************


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 平昌五輪 競技場 競技会場... | トップ | 平昌冬季五輪 NBCユニバ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿