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新国立競技場 デザインビルド方式 設計施工一括発注方式 公共事業

2015年08月30日 21時38分49秒 | 新国立競技場

デザインビルド方式
設計施工一括発注方式は公正な入札制度か?

(Design to construction system)





 デザインビルド方式(設計施工一括発注方式)は、公共事業の発注方式で、「設計」と「施工」を一括して発注する方式。
 受注者業者が保有している施工経験や建設技術を生かした設計が可能になり、工期の短縮や建設コストの削減が可能になり、「公正さ」を確保しながら、良質な成果物が得られるとしている。
 これまで、公共事業では、昭和34年の事務次官通達で、「設計コンサルティング業務の外注にあたっての設計・施工分離の原則」が示され、設計(建築設計会社等)と施工(ゼネコンなど建設会社)を別々の企業で実施させることで、設計のチェック・品質確保・建設コスト管理などを履行させることを基本としてきた。発注者は、まず設計者に設計業務を発注し、設計図を作成し、それをもとに、価格競争で行われる競争入札を行い、最低価格を提示した施工者に工事を発注する方式である。
 しかし、画一的な設計・施工分離方式では、ダンピング、入札の不調、発注者のマンパワー・ノウハウの不足、受注者の確保・育成、社会資本の維持管理などのさまざまな課題に対応しきれなくなってきた。そこで、これまで民間工事で行われたデザインビルド方式を、公共工事でも多様な入札契約方式の一つとして導入が進められていた。イギリス、アメリカ等の海外諸国では、ここ数年、デザインビルド方式の採用率が増加しているという。
 国土交通省では、平成13 年3 月に「設計・施工一括発注方式導入検討委員会」の報告書において手続き等の考え方を示し、設計・施工一括発注方式の試行が拡大された。2005年4月、「公共工事の品質確保の促進に関する法律」を施行され、企業の技術提案を踏まえた予定価格の作成が可能となったことで、「デザインビルド方式」の実施環境が整備され、2009年に「設計・施工一括及び詳細設計付工事発注方式」として基準を示し、本格的に導入を開始した。
 国土交通省では、「デザインビルド方式」のメリットとデメリットを次のように説明している。

【デザインビルド方式の主なメリット】
▼ 効率的・合理的な設計・施工の実施
・設計と製作・施工(以下「施工」という)を一元化することにより、施工者のノウハウを反映した現場条件に適した設計、施工者の固有技術を活用した合理的な設計が可能となる。
・設計と施工を分離して発注した場合に比べて発注業務が軽減されるとともに、設計段階から施工の準備が可能となる。
▼ 工事品質の一層の向上
・設計時より施工を見据えた品質管理が可能となるとともに施工者の得意とする技術の活用により、よりよい品質が確保される技術の導入が促進される。
・技術と価格の総合的な入札競争により、設計と施工を分離して発注した場合に比べて、施工者の固有技術を活用した合理的な設計が可能となる。

【デザインビルド方式の主なデメリット】
▼ 客観性の欠如
・設計と施工を分離して発注した場合と比べて、施工者側に偏った設計となりやすく、設計者や発注者のチェック機能が働きにくい。
▼ 受発注者間におけるあいまいな責任の所在
・契約時に受発注者間で明確な責任分担がない場合、工事途中段階で調整しなければならなくなったり、(発注者のコストに対する負担意識がなくなり)受注者側に過度な負担が生じることがある。
▼ 発注者責任意識の低下
・発注者側が、設計施工を“丸投げ”してしまうと、本来発注者が負うべきコストや工事完成物の品質に関する国民に対する責任が果たせなくなる。
(出典 設計・施工一括及び詳細設計付工事発注方式 実施マニュアル 2009年3月 国土交通省

東京都 競技会場整備にデザインビルド方式を導入 事業迅速化の切り札に
 東京都は、2020 年東京五輪の競技会場整備に、設計・施工一括発注(デザインビルド、DB)方式を導入した。都財務局は2014年6月、「設計・施工一括発注方式の取扱いについて」と題する文書を公表し、デザインビルド方式の基本的な考え方を提示した。
 DB方式を適用する案件では、基本設計をプロポーザル方式で建築設計事務所や建設コンサルタント会社などに委託。実施(詳細)設計と施工を一括して、建設会社などからなる建設共同企業体(JV)に発注する。基本設計では、施設に求める性能などの要求水準や受発注者間のリスク分担などを盛り込んだ発注資料を作成。案件ごとに実施要領を定めて、発注手続きに入る。
 デザインビルド方式は総合評価方式を採用する考えだ。実施(詳細)設計は、建設会社の設計部門などJVの構成員、あるいはJVと委託契約する設計協力会社が担うこととした。基本設計を担当した会社は、実施設計段階以降は発注者支援などを手掛ける「DBアドバイザリー業務」を担い、設計協力会社になることはできない。


DB方式の実施フロー。基本設計の受注者は実施設計を受注できない(資料:東京都)
(出典 日経アーキテクチャー 2014年7月14日)

 デザインビルド方式は震災復興事業や東京オリンピック施設建設で、「工期短縮」という理由で特例的に採用されている。しかし、公共事業という公正性・透明性を求められる事業において制度的に満足できる仕組みになっているとはいえないだろう。
 公共事業の調達において、透明性の確保、説明責任には設計・施工の分離方式が原則だろう。 あくまで「例外」的な手法であり、導入は「限定的」することが必要であろう。
予定価格制度との整合性、分離・分割発注との整合性、地元企業活用手法の整備、設計変更時の工事費増減ルールの整備等、解決すべき課題はまだまだ多いという。
 なによりも懸念されるのは、強力な設計部門を自社で抱え、豊富な建設実績、新しい工法などの技術力など“圧倒的”なパワーを保持する大手ゼネコンの“寡占”体制が更に増すということである。発注者、設計会社、施工者(ゼネコン)のトライアングルのチェック&バランス体制が崩れるということだろう。
 東京オリンピック施設建設で、問われているのは、「工期短縮」と「建設コスト削減」である。とりわけ労務費や資材費が暴騰している中で、「建設コスト削減」が最大の課題だ。「デザインビルド方式」を採用するにしても、「建設コスト削減」を達成するために、発注者の姿勢が厳しく問われるだろう。




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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2015年8月30日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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