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米生物医学先端研究開発局(BARDA)
BARDA (Biomedical Advanced Research and Development Authority)は、米国政府の保健福祉省(Department of Health and Human Services)の局組織。
アメリカ国内に公衆衛生上の危機が生じることが予見される際に、必要なワクチン、医薬品、治療法などの開発、購入するための支援を行う機関。 アメリカ国内外の研究機関、医薬品会社などへの資金提供、複数の研究機関の橋渡し役などを担う。2010年代から2020年代にかけては、急性放射線症候群 、エボラ出血熱、新型コロナウイルス感染症 (2019年)などへの対応を実施している。
■ ワクチン開発・製造への支援
BARDAは、イギリスの製薬会社アストラゼネカ社がオックスフォード大学と共同で開発を進めているワクチン候補の開発・製造に最大12億(約1284億円)ドル超の支援をした。資金提供の見返りに、年間3億本のワクチンの供給を受ける。
また米Modernaには、最大4億8300万ドル(約520億円)、米Johnson & Johnson に4億5600万ドル(約490億円)、仏製薬会社サノフィ社に3000万ドル(約32億円)の資金提供を支援することが明らかになっている。
さらに7月7日、Novavaxに対して16億ドル(約1712億円)のワクチン開発資金を提供すると発表した。同社が開発しているCOVID-19ワクチン、NVX-CoV2373の臨床試験(治験)や実用化、製造を支援するもので、2021年1月までに1億人分のワクチン供給を目指す。
今回の支援はコロナワクチン開発に向けた「ワープ・スピード作戦」の下で最大規模となる。
アザー米厚生長官は声明で、ワープ・スピード作戦にノババックスのワクチン候補が加わったことにより「早ければ年末にも安全で効果的なワクチンを確保できる可能性が高まった」と述べた。
これで、BARDAは総額約37億ドル(約4000億円)を超える巨額の資金をワクチン開発に投入したことになる。
さらに米保健福祉省(Department of Health and Human Services)は、6億2800万ドル(約670億円)の資金を多国籍バイオ医薬品製造会社、Emergent BioSolutionsに提供する。Emergent BioSolutionsはJohnson & Johnsonのワクチンの製造を受託している。
6億2800万ドルの内訳は、5億4300万ドルは新型コロナウイルス・ワクチンのCDMO(受託開発製造下請け)業務に対する資金で、8550万ドルはワクチン製造能力を増強するための資金である。
感染拡大が一向に収束する気配がない米国で、トランプ政権はワクチン開発の成功に最大の望みを託している。
■ ワクチン開発・製造への支援
NIH(米国立衛生研究所)は、Moderna/NIAID、Oxford/ Astra Zeneca 、Johnson & Johnson が開発する3つのワクチン候補の大規模な第3相臨床試験を7月に実施すると発表した。
さらに、仏サノフィ、米メルク、Pfizer/BioNTech/ Fusan Pharmaのワクチン候補については、開発が先行候補から1ー2カ月出遅れているが、第1/2相臨床試験の進捗状況次第では、夏には臨床試験に加わる可能性がある。
NIHは全米50カ所以上にテストサイトを設置する大規模な臨床試験で、3種類程度ワクチン候補の臨床試験を実施し、それぞれ試験に3万人程度、最大15万人の被験者を募る。
Pfizer/BioNTech/ Fusan Pharma は、自社で第3相臨床試験を開始する可能性もある。
複数の専門家によると、上記のワクチンメーカーは、お互いに治験データを共有し、自社開発が失敗した場合は治験ネットワークの利用を他社に認めることなどで合意した。
大規模臨床試験には、第1/2相臨床試験で安全性が確認されたワクチン候補を用い、1株につき3万人程度の被験者を対象に治験を実施、被験者登録数は10万人から最大15万人に上る可能性がある。
国立衛生研究所(NIH)のフランシス・コリンズ所長は「問題がなければ治験を継続する」とした上で、非常に有効なワクチンであれば6カ月程度、またあまり有効でないワクチンは9—12カ月程度の治験を要する可能性があると述べた。
また国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長は、12月までに米国内でコロナワクチンの接種を開始する可能性に自信を表明。「想定外の妨げに直面しない限り、米国内で今年12月もしくは来年1月にワクチン接種を展開することは想定可能だ」と述べた。
米国立衛生研究所 National Institutes of Health(NIH)
米国政府の保健福祉省公衆衛生局(Department of Health and Human Services)の研究機関。1887年に設立された合衆国で最も古い医学研究の拠点機関。本部はメリーランド州ベセスダに置かれている。国立癌研究所、国立心肺血液研究所、国立老化研究所、国立小児保健発達研究所、国立精神衛生研究所新型コロナウイルスで脚光を浴びている米国立アレルギー・感染症研究所など、それぞれの専門分野を扱う研究所と、医学図書館などの研究所以外の組織、合わせて全部で27の施設と事務局によって構成されている。1万8000人以上のスタッフのうち6000人以上が科学者(医師、生命科学研究者)である。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)が今年の夏、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンの新型コロナウイル・ワクチン候補を、じきじきに臨床試験すると発表している。
米国立アレルギー・感染症研究所 National Institute of Allergy and Infectious Diseases( NIAID)
米国立衛生学研究所(NIH)の傘下の27の研究所及びセンターの一つ。
所長 アンソニー・スティーヴン・ファウチ(Anthony Stephen Fauci)
アメリカ合衆国の医師、免疫学者。1984年からアメリカ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長。
新型コロナウイルスの感染拡大に対応するためワクチンの開発に着手して、米バイオ医薬企業のモデルナとmRNAワクチンの共同開発を進めている。2020年3月16日には第一層臨床試験を開始した。
アメリカ疾病予防管理センター Centers for Disease Control and Prevention:CDC
アメリカ合衆国保健福祉省管理下にある感染症対策の総合研究所。連邦政府の内閣級機関の一つで、国民の健康推進や感染症・慢性疾患の予防・管理を担う。。1992年10月に設立された。本部はジョージア州ジョージア州アトランタにあり、約1万5000人の要員を擁し、年間予算は125億5000万ドル(約1.兆3375億円)。CDCには合計12のセンター、研究所、事務所があり、海外50か国以上に拠点を設置している(中国や韓国にはCDCがあるが、日本にはない)。
所長は、Robert Redfield氏、副所長はAnne SChuchat氏。
「世界最強」の感染症対策組織といわれ、感染症が発生すると国内外を問わず駆けつけ、調査・研究や対策を講じる上で主導的な役割を果たしている。
CDC発足のルーツは、第二次世界大戦下で猛威を振るっていたマラリアの感染対策のために、1946年7月に設立された伝染病センター(Communicable Disease Center)である。当時、米国は蚊が多発する場所に軍事基地が建設し、マラリアに感染する軍人が相次いだ。伝染病センターではマラリア予防プログラムを実施して感染拡大を阻止した。
その後CDCは、チフス、赤痢、狂犬病、ペストなど他の疾病に対象を広げた。
1952年、ポリオの流行で3145人のアメリカ人が死亡し、2万1000人に麻痺が残りるという大きな犠牲が発生した。1955年までに、アメリカのジョナス・ソーク博士はCDCと共同研究を行い、初めてポリオに有効なワクチンを開発し。その結果、1979年までにアメリカはポリオを撲滅した。
以降70年以上にわたり、アメリカはもとより世界中の感染症(マラリア、結核、HIV/AIDS、エボラ出血熱、ジカ熱、MERS & SARSなど)の調査・研究、予防のための指導、難民の健康支援などを行ってきた。 感染症対策では、世界中がCDCに依存している。
中国との関係も深く、2002年に重症急性呼吸器症候群(SARS)が中国を襲った際、CDはの専門家40人を現地に送って支援したことをきっかけに、両国間の協力も加速した。2013年にはH7N9型のインフルエンザが中国で発生した際は米中が共同研究を実施し、中国が開発したワクチンが米国側に提供された。
また危険なウイルスの保存もしており、撲滅が確認された天然痘ウイルスを保存し、公式に保管されている機関はCDCとロシア国立ウイルス学・バイオテクノロジー研究センターだけである。
ちなみにCDCでは生物兵器として利用される可能性が高い病原体のリスクの格付けを行っている。カテゴリーA、B、Cの3段階で評価されており、最も危険度・優先度の高いカテゴリーAの病原体として、エボラウイルスなどの出血熱ウイルス、天然痘ウイルス、炭疽菌、ペスト菌、ボツリヌス菌、野兎病菌を挙げている。
中国の湖北省武漢で発生した新型コロナウイルス(COVID-19)に対応するために、1月20日、CDCは緊急オペレーションセンターを始動させた。センターでは状況をモニターして情報を共有するほか、公衆衛生に対する危機に備え、迅速に連携し意思決定を行う。CDCは、武漢から避難するアメリカ人に2週間の隔離期間を発令しました。CDCが隔離期間を発令したのは、50年以上の間で初めてだった。
2月21日、CDCは、猛威を振るい始めた新型コロナウイルスの感染防止のためのガイドラインを公表し、グローバルスタンダードとなった。
連邦政府はこのガイドラインに沿った健康基本方針をそのつどアップデートしながら国民に感染予防を促している。
しかし、新型コロナが大流行し始めた当初には、「健康な人はマスク不要」と発表して批判を浴びたり、CDCが開発した検査キットに不備もあり、水際対策に失敗したとされている。
トランプ政権は、国際保健分野を冷遇し、CDCの予算を削減しようとし、エボラ出血熱対策の教訓から設けられた国家安全保障会議(NSC)のパンデミック担当チームも2018年に解体された。さらに米中対立が追い打ちをかけ、CDC幹部は「トランプ政権のメッセージは『中国に協力するな。彼らは敵だ』」と述べたという。中国版CDCに派遣されていた米国の専門家ポストは昨年7月から空席で、米国は今年初めに中国側から武漢での肺炎の集団発生を伝えられて専門家派遣を申し出たが、トランプ政権はこれを認めなかった。世界保健機関(WHO)の調査団の一員として米国の専門家が中国入りしたのは2月半ばだった。
さらにトランプ米大統領は、CDCの新型コロナウイルス対応に不満を持ち、CDCを新型コロナウイルス対策の立案から排除する姿勢を示し、以降、新型コロナウイルス対応ではほとんど表立った動きを示していない。
代わって米国立アレルギー・感染症研究所( NIAID)のファウチ所長が米国の感染状況にコメントをしている。
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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)
2020年7月1日
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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
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