G7伊勢志摩サミットの成果は? 安倍首相はリーダーシップを発揮できたか?
2016年G7主要国首脳会議
2016年G7主要国首脳会議
▼ 存在感を示せなかった安倍首相 議長としてのリーダーシップは発揮できたのか?
▼ 世界経済をけん引することを目指した「伊勢志摩経済イニシアチブ」など共同声明発表 伊勢志摩サミット閉幕
▼ 圧倒的な存在感を示したオバマ大統領 広島訪問17分に及ぶ演説“核なき世界”へのメッセージ 被爆者との対話
▼ 三重県営サンアリーナに設置された国際メディアセンター(IMC)
▼ 伊勢志摩サミット 10の閣僚会合を開催
▼ 開催地選定のポイント
▼ サミットの“ジンクス”
伊勢神宮を参拝するオバマ大統領と安倍首相((2016年5月26日午前11時過ぎ)
伊勢神宮を参拝するG7首脳とEU(ヨーロッパ連合)の欧州理事会議長と欧州委員会委員長 ((2016年5月26日午前11時過ぎ)
英虞湾を背景に記念写真(午後13時30分)
ワーキングセッション2日目
G20大阪サミット2019開催 20カ国・地域首脳会議
伊勢志摩サミット・G7外相会合 広島で開催
国際放送センターIBC(International Broadcasting Centre)サービス・システム G7伊勢志摩サミット・G8北海道洞爺湖サミット
安倍首相はリーダーシップをどう発揮するのか? 伊勢志摩サミット5月26日、27日開催
2016年、今年は伊勢志摩サミット開催の年である。5月26日と27日に三重県の賢島で開催される。日本でG7主要国首脳会議が開かれるのは、2008年の北海道洞爺湖サミット以来、8年ぶりである。前回のサミットでは、安倍首相は直前に退陣し、議長を務めたのは福田首相(当時)だった。
初めて、国際政治の“晴れ舞台”、G7サミットの議長を務める安倍首相は、G7各国の中で、いかにリーダーシップを発揮し存在感を示すか、真価が問われることになる。
伊勢志摩サミットの主要議題は、議長国を務める日本で検討が進められ、参加各国との調整が行われてきた。
その結果、主要議題として、世界経済・貿易、政治・外交、気候変動・エネルギー、質の高いインフラ投資、保健、女性などが取り上げられることになった。
2016年、年明け早々、世界経済は中国株の暴落や原油価格の下落で世界同時株安に見舞われ、波乱含みのスタートとなった。資源化価格の下落で、ブラジルなどの新興国の経済は破綻寸前、アメリカの金利引き上げが追い打ちをかける懸念が生まれている。中国や新興国の経済の不透明さが更に増している中で、世界経済の立て直しが最大の焦点に浮かび上がってきた。日本経済も景気に停滞感が生まれ、株価は低迷、アベノミクスの成長戦略に懸念が囁かれ始めている。今回のサミットの最重要課題とされている世界経済の立て直しで焦点の財政出動は認識のG合意にはこぎつけたが、具体策は各国に一任として棚上げにした。
さらに北朝鮮は、突然、初の「水爆実験」と主張している4回目の核実験を行い世界に衝撃を与えた。北朝鮮にG7としてどう協調して向き合っていくか、北朝鮮問題へ対応も焦点になってった。
パリ同時テロ以降、G7各国はテロ対策の強化が至上命題になっている。テロ対策についての国際協調や過激派組織ISへの空爆強化、封じ込め策など、G7各国首脳間での突っ込んだ議論が必須だろう。その他中国の海洋進出やウクライナ情勢も重要議題になるだろう。
また、 中米パナマの法律事務所から流出した租税回避地に関する文書、“パナマ文書”が公開され、世界各国の指導者や有名人による課税逃れ疑惑が発覚し、問題になっている。「パナマ文書」とは、タックスヘイブン(租税回避地)の会社の設立などを手がける中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書。1977年から2015年にかけて作られた1150万点の電子メールや文書類とされている。
これを受けて、伊勢志摩サミットでは、税率の極めて低い“租税回避地(タックスヘイブン)”を利用した国際的な課税逃れ問題を議論する方向とされている。各国指導者らによる課税逃れ疑惑が表面化したのに加え、テロ組織の資金調達の温床になっている恐れがあり、対策強化を協議すると伝えられている。
これらの問題は、実は、伊勢志摩サミットに参加しないロシアと中国が“影の主役”と言っても過言ではない。
G7の“地盤沈下”が囁かれる原因は、ロシアと中国が首脳会合に参加しないことだろう。今回のサミットでは、G7の結束強化にとどまらず、ロシアや中国なども含めた協力体制をどう構築していくかが問われるだろう。
安倍首相は、「北朝鮮やシリア、サウジアラビアとイランの問題など、ロシアの建設的な関与が必要。G7の議長国として大統領と会って話をすることが重要だ」と語り、プーチン大統領との首脳会談に意欲を示していた。
2016年5月6日、安倍首相はロシア南部の保養地ソチでプーチン大統領と会談した。両首脳は北方領土問題や平和条約の締結問題をめぐり、双方が受け入れ可能な解決策の作成に向けて「新たな発想に基づくアプローチで交渉を進める」として交渉を加速することで一致。9月2、3日に首相がロシアのウラジオストクを訪問し、再び首脳会談を行うことも確認した。
プーチン氏の訪日について、首相は「最も適切な時期を探っていくことにしよう」と語った。一方、ロシアのラブロフ外相は会談後、記者団に「具体的な日付も含め、詳細について検討した。検討が終了したらロシアと日本の双方で発表するだろう」と述べている。
一方、2016年4月30日、岸田外相は王毅外相と北京の釣魚台国賓館で会談した。 4年半ぶりに日中外相会談の開催だった。核・ミサイル開発を進める北朝鮮に、双方が深刻な懸念を表明した。両国関係の改善のため、対話を継続することでも一致したが、中国が南シナ海での海洋進出問題をめぐっては、日中双方に溝が残った。
王毅外相は、「中日関係は絶えずギクシャクし、たびたび谷間に陥ってしまったが、原因は日本側が一番よく分かっているのではないか」と述べ、南シナ海問題などを巡る日本の対応をけん制し、岸田氏は「日中の外相往来が長きにわたって途絶えていることは望ましくない」と関係改善を呼びかけたと伝えられている。また今年後半に日本で開催予定の日中韓首脳会談についても協議したとみられる。冷え込んだ日中関係の関係改善に一歩踏み出した感はある。
G7伊勢志摩サミットが意義のあるサミットになるかどうか、安倍首相の難しいな舵取りが求められることになる。(2016年5月1日記)
オバマ氏、米現職大統領として初の広島訪問
2016年5月10日、オバマ米大統領は伊勢志摩サミット出席のため訪日した際、サミット終了後の27日に広島を訪問すると、日米両政府が発表した。71年前の原爆投下以降、現職の米大統領が広島を訪れるのは初めてである。平和記念公園の原爆死没者慰霊碑に献花し、2009年のプラハ演説で自らが提唱した「核なき世界」の理念を改めて広島から世界に発信する方針だ。
安倍首相は「唯一の戦争被爆国の首相である私と共に世界で唯一核兵器を使用した国の指導者が共に犠牲者に対して哀悼の誠を捧げる。このことがまさに犠牲になった方々、そして今も苦しむ人々の思いに答えるこのだと信じている」と語った。
オバマ氏は09年に大統領として初訪日した際、記者会見で「広島、長崎を将来訪れることができれば非常に名誉なことだ」と述べていた。しかし広島訪問の決定は米国内への影響などを慎重に検討した結果、訪日直前までずれ込んだ。
オバマ米大統領は、平和公園の原爆慰霊碑に献花したのち、17分間に及ぶ演説を行い、広島、長崎への原爆投下が引き起こした甚大な犠牲について所感や「核なき世界」への決意を示した。 その一方で、原爆投下について「謝罪」や原爆投下の是非には触れなかった。
オバマ米大統領の被爆地・広島訪問が実現したことで、世界各国のメディアの関心は、一斉に「広島」に集まった。伊勢志摩サミットのプレゼンスは急速に失われ、G7首脳会合での議論の成果への注目度が一気に消え去ってしまった。圧倒的な存在感を示したのはオバマ大統領だった。
伊勢志摩サミットの成功を謳うためには、国民を納得させる確かな成果をあげることが必須で、安倍首相の力量がまさにこれから試されることになる。
(2016年5月20日)
原爆慰霊碑に献花するオバマ大統領
被爆者との面会も実現
生中継画面に見入る報道陣(IMC)
安倍首相「リーマン・ショック級の経済危機」強調
伊勢志摩サミットで、安倍晋三首相が強調したのは、世界経済について“リーマン・ショック級の経済危機”だった
「リーマン・ショック前の状況に似ている」と安倍首相は首脳会議で4枚の資料を提示して悲観的な景気見通しを示した。
安倍首相は新興国向けの投資の伸び率がリーマン・ショック時を下回ることや、原油や穀物といった商品価格の下落率が当時に匹敵する55%になることなどを指摘して、そのうえで、リーマン・ショックの2カ月前に開いた北海道・洞爺湖サミットで危機を予見できなかったことに触れ「その轍(てつ)は踏みたくない」と訴えた。
“リーマン・ショック級の経済危機”が再来する可能性を強調することで、安倍首相がめざす財政出動を含む政策協調に各国の理解を得るという狙いがあった。
演出された「経済危機」 安倍首相の“思惑”
しかし、新興国は減速しているが、米国経済は堅調で、原油価格も持ち直しているなど、「危機前」とする安倍首相に各国首脳や海外メディアから異論が噴出した。
ドイツのメルケル首相は、 「『危機』とまで言うのはいかがなものか」と 世界経済の先行きについて、「対応を誤れば、危機に陥る」と強調する安倍首相に異議を唱えた。メルケル氏は会合後、記者団に「世界経済はそこそこ安定した成長を維持している。だが、とくに新興国に弱さがある」と述べている。
フランスのオランド大統領は会見で、今後、危機に陥る可能性は排除できないとしつつも、「今はむしろ、私たちは危機の後にいる」と述べた。
英フィナンシャル・タイムズ紙は「(英国の)キャメロン首相は世界経済について楽観的な見方だ」という英政府報道官の発言を引用し、安倍首相の世界経済の悲観的な見通しに同調していないと伝えた。
英タイムズ紙(電子版)は「世界の指導者は安倍首相の懸念に同調せず」との見出しの記事を掲載。安倍首相の「リーマン級」発言について、国内の政治的難局の打開策だと報じ、公約に反して消費増税を延期するために、差し迫った金融危機への警告にG7首脳のお墨付きを得ようとしたものだと報道した。
消費税率10%への引き再延期
5月27日、安倍首相は、G7サミットを締めくくる議長会見に臨み、「リーマン・ショック」という言葉を7回も使って「世界経済のリスク」を強調したうえで、「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率の引き上げの是非を含めて検討する」と踏み込んだ
そして、伊勢志摩サミットの直後、6月1日、安倍首相は、記者会見で消費税率10%への引き再延期を発表した。
2014年に消費税率10%への引き延期を表明した際、首相は「リーマン・ショックや東日本大震災」のような重大事がない限り再度の先送りはしないと明言した。そこで再延期にあたっての理由に、“リーマン・ショック級の経済危機”がどうしても必要だったのではないか。
消費増税は先送りしたいが、安倍政権の看板であるアベノミクスの“失敗”を認めたくない。G7首脳会合の場を利用して、各国首脳から“お墨付き”を得ようとしたと見るのが自然である。
伊勢志摩サミットの場は、安倍晋三首相にとって、消費増税を先送りする口実づくりの恰好の場であった。「世界経済のリスク」を理由に、「アベノミクスの失敗」という批判をかわしたいという思惑が見え隠れした。
しかし、安倍首相が強調した“リーマン・ショック級の経済危機”は、世界から“失笑”を買ったのは間違いない。
米国経済は堅調で、ニューヨーク株式市場は史上高値を更新し、原油価格も持ち直してしている。焦点の中国経済も、今年のGDP成長率6.5%は達成できという楽観論が出ている。また足踏み状態が続いている日本経済も成長軌道に向けて動き始めたという見方も出始め、日経平均株価も1万8000台をうかがう状況だ。
“リーマン・ショック級の経済危機”は、一体どこへいったのだろうか?
伊勢志摩サミット首脳宣言要旨(抜粋)
【世界経済】
世界経済の回復は続いているが、成長は緩やかでばらつきがあり、世界経済の見通しに対する下方リスクが高まっている。新たな危機に陥ることを回避するため、適時にすべての政策対応を行い、現在の経済に対応するための努力を強化する。すべての政策手段(金融、財政、構造改革)を個別、総合的に用いる。財政戦略を機動的に実施し、構造政策を果断に進めることについて、取り組みを強化する重要性に合意した。
過剰な生産能力は、世界的に影響がある課題だ。
議長会見(安倍首相)
伊勢志摩サミット・首脳会合の会場は?
首脳会合の会場となる三重県志摩市の賢島の志摩観光ホテルは、1951年開業のクラシック(6階建て、延べ床面積約1万8600平方メートル)と、2008年に開業のベイスイート(5階建て、同約1万800平方メートル)の二つの建物がある。 近鉄系列のホテルチェーン「都ホテル&リゾーツ」の国際観光ホテルだ。
クラシックは、本館が木造建築、創業当時のものである。故・山崎豊子さん原作の小説「華麗なる一族」の舞台になったことで知られている。大宴会場「真珠」では主要会合が行われる予定だ。2015年5月から、耐震補強工事と客室の改装のために来春まで休館中である。
ベイスイートは全50室がスイートルームで各国首脳の宿泊施設となる予定だ。志摩観光ホテルには、天皇陛下は皇太子時代を含めて5回も宿泊している。
*志摩観光ホテル・クラシック(左)、志摩観光ホテル・ベイスイート(右)は首脳会合場や首脳等の宿泊施設になる予定(出典 都ホテル&リゾート)
*志摩観光ホテルクラシック 耐震補強・改装工事のために、2015年5月から2016年春まで休館
(出典 都ホテル&リゾート)
*賢島宝生苑 賢島島内にある大型ホテル サミット事務局、各国事務局、サブ・メディア・センター、サミット議長会見場が設置される。各国随行員ホテル等での利用も想定される(出典 賢島宝生苑)
*伊勢志摩ロイヤルホテル 各国首脳会見場が複数設置される。各国随行員ホテル、事務局等での利用も想定される。(出典 志摩市観光協会 ホームページ)
G7エルマウ・サミット (出典 G7 Germany Webpage) 伊勢志摩サミットでは英虞湾を背景に撮影
伊勢志摩サミット 国際メディアセンター(IMC)は三重県営サンアリーナに設置
2015年9月8日、外務省は、伊勢志摩サミットの国際メディアセンター(IMC)を、伊勢市朝熊町の県営サンアリーナに設置すると発表した。
サンアリーナは延床面積約2万4000平方メートルの三階建て施設。延床面積約1万4000平方メートルのメインアリーナと約4900平方メートルのサブアリーナやトレーニングルーム、会議室などの施設が整備されている。
この他に隣接する駐車場に、IMCのアネックス、鉄骨2階建て、延べ約8000平方メートルの仮設増設棟を建設した。外観は伊勢の街並みの黒壁など、地元の伝統的なデザインを取り入れ、木の丸柱に囲まれた通路などを設置し、「和」を感じさせる建物で、事業費は約28億5000億円。 日本の先端技術、伝統文化を発信する展示スペースや、メディア用の食事の提供スペースも設けた。このアネックスはサミット終了後、数日間一般公開をした後、約3億円かけて取り壊される予定である。
国際メディアセンター(IMC)は、世界各国から訪れる新聞、雑誌、通信社、そして放送機関などのメディアの取材・編集拠点、約4000人のメディアの参加を見込んでいる。国際メディアセンター(IMC)には、専用ワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース(約1020席 2個所)や共用ブリーフィング・ルーム(2か所)、インフォーメーション&ITヘルプデスク、IMCシャトルバス・インフォーメーション、外務省報道官室(外務省事務局)(アネックス)、展示スペース(アネックス)、プレス用レストラン(アネックス)、そして放送機関用の国際放送センター(IBC)が設置される。施設内には、CCTV(館内共聴テレビ)で、G7サミットの様子やイベント・スケジュール、各種案内が放送され、高速のWifi環境も整備された。
国際放送センター(IBC)は、世界各国の放送機関向けに設置される施設で、首脳会合や議長会見、各国首脳会会見、関連イベントなどの映像・音声のホスト信号が配信される。映像・音声信号を調整、監視、分配するマスター・コントロール・ルーム、IBCブッキング・オフイス、共用編集室、音声ルーム、IP伝送サービスコーナーなどが設置される。 また各放送機関専用のワーキング・ブースや共用ワーキング・スペース、記者リポポジションも整備された。映像・音声メディア機関の拠点が国際メディアセンター(IBC)である。
国際放送センター(IBC)の施設は、サンアリーナだけなく、賢島内にある賢島宝生苑にサブメディアセンター1(SMC1)と議長国首脳会見場、志摩市の伊勢志摩ロイヤルホテルにサブメディアセンター2(SMC2)(各国首脳会見場)が設置された。
SMC1は、賢島内で取材活動をするメディアの拠点で、志摩観光ホテル・クラシックや志摩観光ホテル・ベイスイートで行われたG7首脳会合やワーキング・デイナー、ワーキング・ランチ、アウトリーチ首脳会合などのENG取材映像(代表取材)の伝送ポイントが設営されと共に、賢島内で取材活動を行う記者やカメラマンの待機場所となった。ENG伝送については、Japanプールは10回、米国プールは3回、ドイツプールは2回、EUは1回の伝送を行った。また、サミットの総括を行う議長国首脳会見場も設置された。
SMC2には、各国首脳会見場、3カ所が伊勢志摩ロイヤルホテル内に整備された。
国際放送センター(IBC)の設置・運営業務やホストブロードキャスター業務は、請負事業者を公募したが応募したのがNHKだけだった。NHKは、外務省と随意契約協議を行い、約7億3400万円で外務省から業務を受託した。
エルマウ サミット ドイツ G7 2015 G7 Germany2015 Schloss Elmau
北海道洞爺湖サミット(2008年) 国際放送センター(IBC)
伊勢志摩サミット 閣僚会合 全国10か所で開催
2015年7月3日、菅義偉官房長官は記者会見で、伊勢志摩サミット関係閣僚会合について、科学技術大臣会合をつくば市、情報通信関係大臣会合を高松市、教育大臣会合を倉敷市、保健大臣会合を神戸市、農業大臣会合を新潟市、エネルギー大臣会合を北九州市、交通大臣会合を軽井沢町、環境大臣会合を富山市でそれぞれ開催すると発表した。
すでに公表されている外務大臣会合(広島市)、財務大臣会合・中央銀行総裁会議(仙台市)を含めて、あわせて10会合の開催地がすべて決まった。
閣僚会合の開催地を決めるにあたっては、国際社会が直面する様々な課題や、「地方創生」の観点を踏まえたとしている。
全国各地でできるだけ多くの会合を、各地域の特色を活かして、開催することで、安倍政権の看板政策である「地方創生」を強調する狙いが込められた“開催地選定”となった。
それぞれの開催地選定のポイントとして、神戸市は、「阪神大震災からの復興と最先端医療の拠点」、つくば市は「世界で最先端の科学技術研究都市」、高松市は「情報通信を利用した遠隔地医療ネットワークの全国初の全県導入」、倉敷市は「江戸時代からの伝統的建造物や街並み、教育・文化を核にした街づくり」、新潟市は「農業特区の先進県、和食文化とおもてなし」、北九州市は「八幡製鉄所と最先端のエネルギー政策実証実験都市」、富山市は「環境モデル都市の推進、国連環境計画の事務所設置」、軽井沢町は「新幹線の開通と交通の利便性、国際的なリゾート地」を挙げている。
この他、仙台市は、「東日本大震災からの復興」、会合場は東北の名湯、秋湯温泉の温泉ホテルだ。広島市は「被爆地 平和と核廃絶」、会合場は瀬戸内海に面した宇品島のホテルである。
首脳会合が開催される伊勢志摩を念頭に入れた上で、閣僚会合の開催地は、全国各地の地域バランスにも配慮した選定結果となった。九州地方からは北九州市、中国地方からは広島市と倉敷市、四国地方からは高松市、関西地方からは神戸市、日本海側からは富山市と新潟市、関東地方からつくば市、東北地方からは仙台市が選ばれた。
札幌市は閣僚会合の開催地として立候補していたが選ばれず、唯一、北海道地方での伊勢志摩サミット関連会合の開催はない。
今回の開催地の選定で注目されるのは、高松市(情報通信関係大臣会合)、倉敷市(教育大臣会合)、北九州市(エネルギー大臣会合)、富山市(環境大臣会合)で、安倍政権の伊勢志摩サミットにかける“意欲”が伺える。
閣僚会合の会場は、各開催都市にある国際会議場や国際ホテルを使用する。
科学技術大臣会合(つくば市)は「つくば国際会議場」、情報通信会合(高松市)は「香川国際会議場」、農業大臣会合(新潟市)は「朱鷺メッセ」が会場となる。
一方、保健大臣会合(神戸市)や「神戸ポートピアホテル」、エネルギー大臣会合(北九州市)は「リーガロイヤル小倉」、外務大臣会合は「グランドプリンスホテル広島」、教育大臣会合(倉敷市)は「倉敷アイビースクエア」と大型国際ホテルなどを会場とした。
ユニークなのは、財務大臣・中央銀行総裁会議で秋保温泉の「ホテル勘助」、温泉地のホテルで開催される。年明け早々、中国経済の先行き不安と原油安で世界同時株安に見舞われた2016年、温泉でくつろぎながら各国の叡智を集めて、世界経済の安定に向けて有意義な会合になるように期待したい。
NHKニュース 2015年7月3日
外務省 伊勢志摩サミット 閣僚会議
広島外相会合 G7外相平和公園訪問が実現
伊勢志摩サミットの閣僚会合の中で、最も重要な会合でトップを切って開催されたのはG7外相会合である。
4月10日と11日、G7外相会合は被爆地、広島市で開催された。広島市は首脳会合の開催地としも立候補していた。
会合場は瀬戸内海に面した宇品島にあるグランドプリンスホテル広島で行われ、国際プレスセンター(IMC)や国際放送センター(IBC)は広島国際会議場に設営された。
広島外相会合で世界中のメディアから最も注目されたのは「広島宣言」や共同声明でもなく、核保有国の米英仏を含むG7外相がそろって平和記念公園を訪れ、原爆平和記念資料館や原爆ドーム視察し、原爆慰霊碑に献花したことであった。G7の核保有国の外相が平和記念公園を訪れるのは初めて、とりわけ原爆を投下した米国の現職の国務長官が参加する意義は大きい。
広島外相会合の開催が決まると、討議の内容もさることながらG7外相の平和記念公園を訪問が実現するかどうかが最大の焦点になった。
広島市にG7外相が訪れる以上、原爆死没者慰霊碑がある平和記念公園を訪問するのは「自然の流れ」で地元では「当然」と受け止めていた。
しかし、核保有国の米英仏が応じるかは微妙な情勢といわれていて、とりわけ原爆投下国の米国の動向が注目されていた。
仮に、G7外相の平和記念公園を訪問がなんらかの形でも実現しなければ、広島外相会合開催の意義がなくなる懸念が生まれていた。
さらに政府は、核軍縮への今後の方向をまとめた「広島宣言」を発表するため各国と調整を続けており、「核兵器の非人道性」など日本の主張をどこまで盛り込めるかが注目されていた。
次は、伊勢志摩を訪れるオバマ大統領の平和記念公園の訪問が実現するかが
最大の焦点になった。
ワシントンで開催された核セキュリティサミットの流れを引き継ぎ、伊勢志摩サミットで日本がリーダーシップをとって停滞している核軍縮・不拡散への取り組みをさらに前進させる契機にして欲しいと期待が集まった。
原爆死没者慰霊碑に献花したG7外相
広島宣言を採択して閉幕
5月末に開催される伊勢志摩サミット前に、広島市で開かれていたG7外相会合は2日間の日程を終えて閉幕した。
11日午後、岸田外務大臣が記者会見し、共同声明と注目されていた「広島宣言」を発表した。
「広島宣言」は、G7外相会合が被爆地・広島で開催されたことから、外相会合として初めて核軍縮・不拡散に特化した独立文書としてまとめられて、原爆投下を「極めて甚大な壊滅と非人間的な苦難」と表現し、世界の政治指導者に被爆地の広島や長崎への訪問を促すし核軍縮の必要性を訴えた。
核兵器自体に対して「非人道性」という指摘を避け、原爆投下の被害を「非人間的」と記述して、核保有国の米英仏との合意に持ち込んだものと見られる。核の抑止力で世界秩序の維持を掲げ核の保有を正当化する米英仏は、核兵器自体を「非人道的」とすることはできないのである。
また、核兵器の保有の実態を明らかにしていない中国を念頭に置き、「核兵器保有の透明性を向上させたG7の核保有国の努力を歓迎する」としたうえで、に、「他国にも同様の行動を求める」とし透明の向上を求めている。
共同声明では、欧州で頻発するテロの深刻化を受けて、「テロ・暴力的過激主義対策」を全面に出した内容となった。テロを「全世界的な喫緊の安全保障の脅威」として、テロへの具体的な対抗策を盛り込んだ「G7テロ対策行動計画」を伊勢志摩サミットで採択することなどを盛り込んでいる。
岸田外相は記者会見で、「G7各国外相が平和記念公園を訪れたことと合わせて、国際社会で核なき世界を作っていく機運を再び盛り上げる歴史的な一歩になった」とG7広島会合の成果を述べた。
核軍縮・核不拡散に向けて初めて独立文書を採択した点は評価できる。しかし、核廃絶に向けて、核保有国と非核保有国が一致して一歩前進できたかだどうかは「広島宣言」からは読みとれない。被爆地・広島の人々の願いは、やはり核廃絶であろう。
伊勢志摩サミットはこうして決まった!
▼ 8つの自治体が開催地に“名乗り”
2015年4月1日、菅官房長官は記者会見で、来年日本で開かれるサミット=主要国首脳会議の開催地について、現在、名乗りを上げている8つの自治体のなかから選ばれることになるという見通しを述べた。「いずれにしてもドイツで行われる、ことしのサミットに安倍総理大臣が行く前までには決定するということだ」とした。
サミット=主要国首脳会議は2016年、8年ぶりに日本で開かれることになっており、これまでに開催地として仙台市、新潟市、長野県軽井沢町、浜松市、名古屋市、三重県、神戸市、広島市の8つの自治体が名乗りを上げている。この内、三重県は、当初は関係閣僚会合の開催地として、今年1月に最後に立候補したが、その後、「首相サイドの働き掛けで」(時事通信 4月1日)首脳会合の開催地(賢島)に切り替えたと伝えられている。
■ 2016年サミットの候補地
出典 NTV News Zero 2016年、サミットはどこで? 2015年4月13日
▼ 開催地選定のポイント “警備”と“保養地”
首脳会合の開催地の選定で、ここ数年、重要視するのは“警備”のしやすさ。
反グローバルリズムの抗議デモによる混乱や、テロなど不測の事態の対処が課題である
北海道洞爺湖サミットでは、反グローバルリズムを唱える団体が、札幌市や洞爺湖町周辺に次々と集まり、サミット抗議活動を行った。7月5日には,札幌市内で行った「ピースウォーク」には、海外の団体も加わり、約2,000人が参加したという。
札幌市内と首脳会合が開かれた洞爺湖ウインザーホテルとは、かなり距離があり、会場付近はまったく混乱がなかった。
また最近、世界各地で相次いで起きているイスラム過激派組織のテロの目標にされることも懸念されている。
複数のメディアは、警察庁が警備上の観点から、開催地として三重県・賢島か長野県軽井沢町が望ましいとの報告を上げたと伝えている。
軽井沢町は、首脳会合開催の誘致活動にいち早く熱心に取り組んで、他の候補地に先行していて、“本命”視されていた。皇室の静養地でVIPの訪問が多く、警備で実績があることや、保養地として高い評価を得ていたことがその背景にある。ただ、なぜ軽井沢かという理由づけが難しいとされていた。
最近のサミットは、豊かな自然環境に囲まれた“保養地(リトリート)”を各国は好んで開催地に選んでいる。安倍首相も「美しき日本」を世界に熱心にアピールしていることも見逃せない。
今年の6月7日と8日にドイツが議長国で開催するサミットは、オーストリアとの国境に近いアルプス山麓にあるエマウル城が舞台となる。
こうした観点で誘致をした8つの候補地を見ると、長野県軽井沢と三重県賢島が“有利”だとされていた。
また「交通の便」の良さや、宿泊施設が十分に確保できるかどうかなども評価のポイントとなる。
さらに、今回の開催地選定にあったって政府首脳が繰り返し強調していたのが、“メッセージ性”である。首脳会合の開催地に政治的なメッセージを込め、国際社会に向けてG7サミットの開催の意義を発信しようとするものである。
単に、豊かな自然環境に囲まれた“保養地(リトリート)”とか、警備がしやすいだけでは要件を満たさないとされていた。
■サミット候補地の“メッセージ性”
仙台市 東日本大震災からの“復興” 防災・減災を発信
新潟市 米や日本酒 和食のもてなし文化
長野県軽井沢町 世界的なリゾート地
浜松市 世界文化遺産富士山 徳川家康ゆかりの地・歴史と文化
名古屋市 交通の利便性 国際会議の開催実績
三重県志摩市 伊勢神宮の歴史、伝統文化と自然景観や食
神戸市 国際貿易都市 阪神大震災20年の“復興”による防災・減災都市
広島市 被爆地 平和と核廃絶
▼ “急浮上”した三重県・賢島
三重県・賢島は、英虞湾に浮かぶ景勝地。海に囲まれて、本土側からは橋以外に交通手段がなく、警備上の観点で評価が高いという。北海道洞爺湖サミットの首脳会合の会場となったウインザーホテル洞爺は、洞爺湖を見渡す山頂に建ち、麓から登る道路は1本しかないという“警備”上の観点からはまたとない立地条件だった。
また伊勢神宮も付近にあることもあって、三重県は「伊勢志摩サミット」として、自然だけでなく日本の伝統文化もアピールできるとして、有力な開催地として“急浮上”しているという。
これに対して、仙台市は「東日本大震災からの復興」、国連世界防災会議の成功がアピールのポイントだ。しかし、大型国際ホテルが少なく、首脳会合を開催地としては宿泊施設の確保に懸念があるとされていた。
阪神大震災から20年を迎えた“震災復興”を掲げる神戸市は、市街地であり要人警護などの交通規制など市民生活への影響が大きくなるのが懸念材料だ。“豊かな自然環境”という点では、賢島や軽井沢には一歩及ばないと思える。
また広島市は「被爆地・平和と核兵器廃絶」、オバマ米大統領の初訪問を呼び掛けている。“ヒロシマ”の持つ政治的“メッセージ性”は鮮明ではあるが、その“メッセージ性”にG7各国が納得するかにかかっている。
▼ 難航したサミット開催地の選定
選定作業は、「警備のしやすさや話題性など、様々な要素が絡み合うだけに、一筋縄ではいきそうにない」(4月19日 讀賣新聞)という報道もされている。
サミット開催地の選定にあたっては、「警備」が、最重要のポイント、その中で軽井沢町と伊勢志摩・賢島が“有力”と見られてきた。賢島は、人の出入りが規制しやすく、軽井沢町は皇室や要人がたびたび訪れていて、要人警護の経験が豊富だとされている。
賢島については、「ただ、利便性で見ると、志摩市は首都圏から交通の便が悪く、『各国政府関係者の移動が困難』との声もある」(4月19日 読売新聞)とマイナス面を指摘する声もあったとされている。
自然豊かな保養地、警備のしやすさ、宿泊施設・交通の便という3要素を全て満たし、しかも“メッセージ性”が込められる候補地はなく、政府関係者は「どこも一長一短で決め手に欠く」と漏らしていたという。
開催地の決定は、ドイツ・エルマウ・サミットに安倍総理が出発する日までギリギリまで延ばされた。
最終的には安倍首相の判断で、賢島が2016G7首脳会合の開催地に選ばれたとされている。。
▼ 伊勢志摩サミットを選択した安倍首相
2015年6月5日夕方、安倍首相はウクライナとG7ドイツ・エルマウに出発したが、羽田空港で記者団に対し、来年のサミット開催地は、三重県志摩市賢島と決定したと表明した。「世界のリーダーたちに、日本の美しい自然と豊かな文化や伝統を肌で感じてもらいたい」と述べ、「伊勢・志摩サミット」とするとした。
安倍首相の「日本の文化や伝統」を重視するという強い意向が感じられる。
サミット開催地の発表は、前の年の首脳会合(ドイツ・エルマウ・サミット)で、次の議長国(日本)が各国首脳に正式に発表するのが慣例なっている。一方、サミット開催の準備には、会議場や施設の確保や通信・交通などのインフラ工事、警備体制などで最低1年以上の期間が必要とされている。
開催地の決定をぎりぎりまで待って発表するというのは異例と言えるだろう。
「今回の選定作業は、安倍総理と菅官房長官らの間で極秘裏に進められた。5日、総理に会った政府与党幹部の一人は、発表を控え気合の入った様子に驚いたと語るなど、安倍政権として5日のサプライズ発表を演出するために相当力を入れていたことが伺える」(JNNニュース 2015年6月5日)と伝えている。
G7エルマウ・サミット ワーキング・ディナー (出典 G7 Germany Webpage)
伊勢志摩サミット 警備対策が最大の課題に
2015年9月17日、政府は伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)準備会議の第2回会合を開き、「警備対策の基本方針」を決定し公表した。無人機「ドローン」によるテロやサイバーテロへの対策強化などを指摘している。政府主催の大規模国際会議に向けた警備対策の基本方針を公表するのは初めてとしている。
基本方針では、各国首脳・要人の安全確保に加えて会議の円滑運営を目的としている。世界のサミットで多発する反グローバリズム勢力による暴動のほか、日本特有の極左・右翼集団によるテロ事件、重要インフラに対するサイバー攻撃などを想定。不審者の入国やテロ関連物資流入を防ぐ水際対策や、民間企業を含めた関連機関との連携強化も掲げた。
(参考 毎日新聞 2015年09月18日 東京朝刊)
11月に発生したパリ同時多発テロが伊勢志摩サミットの警備対策強化を加速させている。
テロの標的が警備の手薄ないわゆる「ソフトターゲット」向けられたことが衝撃を与えている。サミット開催地周辺や政府機関、空港だけでなく、国内各地の市民が集まる繁華街や広場、スタジアム、商業施設などの警備をどうするかが課題になっている。
伊勢志摩サミット サイバー攻撃 2016年サミットは格好の標的に テロの主戦場は“サイバー空間”
国際政治の晴れ舞台、2016年伊勢志摩サミットや2020年東京オリンピック・パラリンピックはサイバー攻撃の恰好の標的になると思われる。攻撃者にとってのデモンストレーション効果は極めて大きい。
日本年金機構が“サイバー攻撃”を受け、国民年金や厚生年金などの加入者と受給者の個人情報、約125万件が外部に流出した事件は、改めて、高度化したネットワーク社会の“危うさ”を露呈した。
“世界最高水準のICT”をキーワードに日本は、今、一斉に動き出している。超高速ブロードバンドやワイヤレスブロードバンド(5G・WiFi)、さらに4K、8Kの高繊細放送も実施して、“世界で最高水準”の「ICT立国”を目指そうとする計画である。2020年東京オリンピック・パラリンピックがターゲットだ。
こうした中で、“サイバー攻撃”をどう撃退していくのか、日本の最大の課題である。2016年サミットは、その“前哨戦”だろう。
「ICT立国」を掲げるなら「サイバーセキュリティ立国」を同時に掲げなければならいことを忘れてはならない。
2015年6月17日
伊勢志摩サミット サイバー攻撃 2016年サミットは格好の標的に” テロの主戦場は“サイバー空間
伊勢志摩サミットの開催経費は?
伊勢志摩サミット開催に要する予算総額が約600億円に上り、うち警備関連費が約340億円になる見通しだとされている。前回2008年の北海道洞爺湖サミットとほぼ同水準だが、政府筋によると、国際会議開催に関しては、既存の資機材やノウハウを活用できるため前回より減額されるのが通例で、総額、警備費の水準維持は実質的な増額に当たるという。 (毎日新聞 2015年11月24日)
パリ同時多発テロ後の緊迫した情勢の中で、セキュリティ対策で、情報収集強化や警備態勢に万全を期すためだとしている。
しかし、全体のサミット関連の予算の執行にあたっては経費節約に最大限努力をしなければならない。サミットで整備される施設が利用されるのは、首脳会合で約3日、閣僚会合(10か所)では約2日程度で、会議が終了したらすべて撤去する施設であることを忘れてはならない。
過去のサミット開催では不祥事も発生したり、民主党政権時代には「事業仕分け」でサミット開催経費の無駄遣いが指摘されたりした。
サミットやオリンピックなどの国家的イベントの予算管理は往々にして“甘え”が生まれる。建設費を巡って“迷走”を繰り返した新国立競技場の失態を忘れてはならない。約340億円とされる警備費も聖域ではない。
すべてのサミット開催経費には透明性、説明性を徹底する必要があるだろう。
伊勢志摩サミットの経済効果、開催後5年間で1110億円
百五銀行のシンクタンク、百五経済研究所は、外国人観光客数の増加や国際会議開催件数の増加などで、三重県内の経済効果は、開催後の5年間で約1110億円に上るとの試算を発表している。
試算では、外国人観光客の宿泊者数は2014年に比べ5倍の年90万人になると想定。観光消費額は131億円増え、外国人観光客の増加による経済効果は年185億円とした。
そして三重県の国際会議開催件数は2009~2013年の5年間の平均で2.6回と低水準だが、サミット後は、数百人規模の国際会議が年30回開催されるとし、その効果を37億円とした。
以上を合計すると年222億円の経済効果があり、5年間で1110億円になると試算した。
さらに国内観光客数の増加による経済効果も試算。県外からの観光客数が年240万人増え、その経済効果は年495億円になり、開催後1~2年は持続すると試算した。
また同研究所では、運営事業費などによるサミットの直接的な経済効果が全国で510億円あり、このうち三重県内は130億円に上るとの試算も発表している。
しかし、北海道洞爺湖サミットの開催地洞爺湖地域を見ると、サミット開催後5年間も観光客の増加など波及効果が持続すると想定するのは現実的ではなさそうである。伊勢志摩地域で、持続的な波及効果を得るには、相当の努力が必須だろう。サミット開催の経済効果が“夢物語”にしないためにも……。
「伊勢志摩サミット」で何をアピールするのか?
安倍首相は、伊勢志摩サミット決める際に、「世界のリーダーたちに、日本の美しい自然と豊かな文化や伝統を肌で感じてもらいたい」と述べ、「日本の文化や伝統」を重視したいという強い意向を示した。
すぐに連想されるのは、伊勢志摩の風光明媚な自然や伊勢神宮、伊勢海老などの海の幸の和食だろう。
しかし、2016年、日本がG7首脳にアピールしなければならないのは、次世代の日本の成長戦略のカギを握るICTやIOT、人工知能AI、第五世代移動通信システム5G、そして4K/8Kの超高精細映像技術などだろう。G7首脳が一堂に会するサミットは日本の先端技術をアピールする格好のショールームだろう。
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サミットの“ジンクス”
サミット開催には、最近、奇妙な“ジンクス”がある。
2000年の九州・沖縄サミットは、開催地に選定した小渕恵三首相が、病に倒れ、森喜朗首相が議長役を務めた。
2008年の北海道洞爺湖サミットでは、開催地に決めたのは安倍晋三首相(第1次政権)、しかし、「健康問題」で退陣し、福田康夫首相が議長役を果たした。サミット開催地を決めた首相と議長役を務めた首相は違っていたのである。
また、サミットの議長役を務めた首相は、いずれも1年以内に退陣している。
安倍首相は7月の参院選前に、消費増税をどうするのかを決定するとした。一気に政局の季節に突入する。
果たして安倍首相は国際政治での晴れ舞台で「サミット議長」という大役を確実に果たし、日本のプレゼンスを世界に示すことに成功したのだろうか。伊勢志摩サミットの開催経費は600億円、“実り豊かな”サミットになったといえるのだろうか。オバマ大統領の“広島訪問”にすっかり主役の座を奪われた気がするのは言い過ぎだろうか。
国際メディアサービスシステム研究所
2016年8月1日改訂
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廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
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