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新国立競技場 球技専用 陸上競技の聖地 サッカー ラグビー  

2020年01月16日 11時47分10秒 | 新国立競技場
迷走!球技専用か陸上の聖地か 新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)?(6)



新国立競技場竣工
 迷走に迷走を重ねた新国立競技場が、全体工期36か月を経て、工事計画通り11月30日に竣工した。
 新国立競技場の整備経費については、1590億円を上限として、賃金や物価変動が発生した場合のスライド、消費税10%の反映、設計変更に伴う修正などを行う契約で工事が開始されたが、最終的に21億円下回る1569億円となった。
 厳しいとされていた36カ月の工期は悠々達成し、工費も上限を下回ることで、日本の建築技術の高さが実証されてといっても良い。
 計画段階の唖然とした迷走ぶりに比べて、一転して見事な施工管理で完了した。
 問題は、五輪大会開催後の後利用の計画が未だに示されていないことである。
 計画では、今年中に後利用の計画を策定して大会後の改修工事の方向を決めて、指定管理者の選定を開始する予定だった。
 新国立競技場の後利用については、文科省が「大会後の運営管理に関する検討ワーキングチーム」を設立して、文部科学副大臣が座長となり、スポーツ庁、内閣官房、日本スポーツ振興センター(JSC)、東京都で議論を重ね、2017年11月に「基本的な考え方」を取りまとめ、政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)で了承された。
 これによると、陸上トラックなどを撤去して、観客席を増設して国内最大規模の8万人が収容可能な球技専用スタジアム改修してサッカーやラグビーの大規模な大会を誘致するとともに、コンサートやイベントも開催して収益性を確保する。観客席は6万8千席(五輪大会終了後)から国内最大規模の8万席に増設し、改修後の供用開始は2022年を目指すとした。
 しかし、陸上競技関係者などから、陸上トラックを残して、新国立競技場を「陸上競技の聖地」として存続するべきだという声が強く出され、陸上トラックは残して陸上と球技の兼用にする方向で調整も進んでいることが明るみにでた。新国立競技場の後利用の方向性が再び混迷を始めている。
 こうした中で、11月19日、萩生田光一文部科学相は、新国立競技場の後利用について、民営化の計画策定時期を大会後の2020年秋以降に先送りし、その後に指定管理者の公募を行うと明らかにした。今年半ばごろに計画を固める予定はあっさり放棄した。
 先送りした理由については、大会の保安上の理由で現時点では詳細な図面を開示できず、運営権取得に関心を持つ民間事業者側から採算性などを判断できないとの声が上がったためだと説明した。しかし、真相は後利用の事業性にめどがつかず、結論を出せないからでろあろう。
 また萩生田氏は、焦点となっている陸上トラックの存続可否については「民間の方の意見を聞いた上で最終方向は決めるが、基本的には球技専用スタジアムに改修する方向性で継続して検討を続けていきたいと思っている」と述べた。しかし、政府関係者にも「今のままでは手を挙げるところがない」という声が出ているという。
 一方、橋本聖子五輪相は後利用について「トラックを残すべきだという意見もあるというのは承知している。新国立にふさわしい運営をしていただけるような検討をお願いしたい」と語った。(11月19日 共同通信)
 新国立競技場の改修後の供用開始、2022年は大幅に遅れることは必至である。その間も、新国立競技場は年間24億円の維持管理費が必要となるとされている。当面所有者の日本スポーツ振興センター(JSC)は毎年24億円の赤字を背負うことになる。
 陸上トラックを存続して「陸上競技の聖地」として出発しても、陸上トラックを撤去してサッカーなどの球技専用のスタジアムになるにしても、6万8000人(五輪大会時6万人)収容の巨大スタジアムを維持するのは至難の業である。フランチャイズチームもたないスタジアム経営はなりたたないというのが常識である。
 一方、収益性の確保のカギとなる「多機能スタジアム」化は、経費削減で、屋根の設置が取りやめになり挫折した。
 「木と緑のスタジアム」、新国立競技場は、五輪のレガシーどころか大会後は赤字を背負ってのスタートとなるのは避けられない。
 負の遺産になる懸念は拭えない。


提供 日本スポーツ振興センター(JSC) 2019年11月撮影


トラック、ピッチの芝生工事は完了 日照不足に対応する芝生養生用の投光器に照らされて芝生の一部がオレンジ色に

聖火台「夢の大橋」設置へ 新国立競技場内は開閉会式時のみ使用の仮設聖火台


新国立競技場 「陸上の聖地」 復活か?
 2019年11月末に完成する新国立競技場について、大会後に改修して球技専用とする方針を変更し、陸上トラックを残して陸上と球技の兼用にする方向で調整が進んでいることが明らかになった。
 これを受けて、小池百合子都知事は会見で、「国から変更したとはまだ聞いていないが、球技、陸上、エンタメの3つで使えることになれば、国の施設として有効に利用できるのではないか」と話した。「球技専用になると世界大会並みの国際標準の大会ができないと、陸上ファンの方からいろんな声を聞いていた」とも述べた。(日刊スポーツ 7月6日)

 新国立の後利用については、文科省が「大会後の運営管理に関する検討ワーキングチーム」を設立して、文部科学副大臣が座長となり、スポーツ庁、内閣官房、日本スポーツ振興センター(JSC)、東京都で議論を重ね、2017年11月に「基本的な考え方」を取りまとめ、政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)で了承された。
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 基本運営方針として、(1)ラグビーW杯の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(4)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げ、大会後に陸上トラックなどを撤去して、観客席を増設して国内最大規模の8万人が収容可能な球技専用スタジアム改修してサッカーやラグビーの大規模な大会を誘致するとともに、コンサートやイベントも開催して収益性を確保するとした。陸上競技のトラックを撤去し、収益性を確保するため観客席を6万8千席から国内最大規模の8万席に増設する。改修後の供用開始は2022年を目指すとしている。

 しかし、その後の検討で、陸上トラックなどを撤去して客席を増設する改修工事には、100億円程度が必要な上に、サッカーの試合の開催は天皇杯や日本代表戦などに極めて限定され、頼みにしていたJリーグの公式試合の開催は絶望となり、利用効率の改善が期待できないことが明らかになった。
 またFIFA ワールドカップの開催を目指すとしてもまだまったく目途がたっていない。ラグビーW杯は今年開催され新国立競技場は完成が間に合わず、決勝トーナメントは横浜国際総合競技場と東京スタジアムで開催されることになっていて、また開催される可能性は遠い先である。
 日本スポーツ振興センター(JSC)は、民間事業化に向けて行った民間事業者へのヒアリング(マーケットサウンディング)を行ったが、球技専用に改修してもあまり収益が見込めないことが明らかになってきた。
 また収益性を高める柱となるコンサートやイベントの開催については、経費節減で屋根の設置が取りやめになり、観客席の冷房装置も設置されなかったことが大きなマイナス要素となる。
 屋根がない新国立競技場では天候に左右される上に、近隣への騒音も問題になる。8万人の大観衆を集めることができる集客力のあるイベントは自ずから限定されるのは明らかだ。
 また、コンサートなどイベント開催は、傷みやすい天然芝の上にステージや観客席を設置しなければならないことで開催回数は増やせない。イベント関係者はむしろトラックを存続した方が芝生へのダメージは防げるとしている。
 一方、陸上関係者からは、2020東京五輪大会のレガシーとして新国立競技場は陸上競技場として存続して欲しいという声は根強い。
 旧国立霞ヶ丘競技場は、「陸上の聖地」として歴史あるナショナル・スタジアムとして国民の評価を受けてきた。「陸上の聖地」が消えるのは余りにも無念ということだろう。
 陸上トラックを残しておけば、陸上競技大会開催だけでなく、イベントのない日などに市民にトラックを開放したり、市民スポーツ大会を開催したりして市民が利用できる機会が生まれて、2020東京五輪大会のレガシーにもなるだろう。
 国際的にも最高クラスの9レーンの陸上トラックを、2020東京五輪大会だけのため整備するのでは余りにももったいない。
 しかし、国立霞ヶ丘競技場の陸上トラックを存続させ、陸上競技大会や市民スポーツ大会開催を目指しても、収益性の改善にはほとんどつながらないし、そもそも陸上競技では、6万人規模のスタジアムは大きすぎて、観客席はガラガラだろう。全国大会クラスでも数万人収容規模のスタジアムで十分である。
 日本スポーツ振興センター(JSC)は、新国立競技場の長期修繕費を含む維持管理を年間約24億円としている。大会開催後の新国立競技場の収支を黒字にするのは簡単ではない。

 日本スポーツ振興センター(JSC)では、事業スキームに民間の創意工夫を最大限反映させるため、民間事業者へのヒアリング(マーケットサウンディング)を進めながら、文科省と協議して新国立競技場の大会後の在り方の検討を進め、指定管理者を公募して新国立競技場の運営管理を委託するとしている。
 新国立競技場は球技専用スタジアムになるのか、陸上競技場として存続するのか、新国立競技場の迷走は、まだまだ終わらない。

 12月21日は、「国立競技場オープニングイベント~HELLO, OUR STADIUM~」を開催することが決まった。そして2019年元旦の天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会が「こけら落とし」の大会となる。


竣工した国立競技場 「杜のスタジアム」 提供 JSC


筆者撮影 2019年12月15日
日本の伝統建築の技法、「軒庇」を取り入れる。縦格子には全国47都道府県の木材を使用


筆者撮影 2019年12月15日


筆者撮影 2019年12月15日
国産木材を使用した巨大屋根 観客席を覆う


筆者撮影 2019年12月15日
南北の3層に設置された大型スクリーン 南/9.7m×32.3m 北9.7m×36.2m フルHD画質


筆者撮影 2019年12月15日
五色に塗り分けらられた観客席 木漏れ日を表現 約6万席(五輪大会開催時)


筆者撮影 2019年12月15日
9レーンの最新鋭の「高速トラック」
 大会組織委員会はイタリアのモンド社とソールサプライヤー契約を結び、陸上競技トラックなどの陸上競技の備品の独占的供給を受ける契約を結んだ。モンド社は11大会連続で陸上競技トラックの公式サプライヤーとなった。トラックは二層の合成ゴム製で、表層はノンチップエンボス仕上げ、下層はハニカム構造のエアクッション層となっている。


提供 JSC
 芝生は鳥取県の天然の砂丘の砂地で生産された「北条砂丘芝」を採用。2019年7月、暖地型芝草(バミューダグラス系)の「ティフトン」を敷き詰めて、秋には冬芝の種をまいて冬期間の芝生の緑も保つ。

迷走! ロンドン五輪スタジアム サッカー専用か陸上競技場か



最難関の屋根工事完了 フィールド・トラック工事へ
 2019年5月17日、日本スポーツ振興センター(JSC)は2020年東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の屋根が完成したと発表した。木材と鉄骨を組み合わせる最難関の工事とされたが、2月に工事は順調に終了したとした。
 屋根の工事がほぼ終了したことでフィールド内に置かれていた重機が撤去され、フィールド工事が本格化している。基礎工事である排水路工事を行い、玉砂利を敷き詰め、土壌を入れて天然芝を張る工事が行われる。トラック部分では9レーンの最新鋭のトラックの敷設が始まる。
 またスタンドでは約6万席の観客席の取り付け工事や歩行者デッキなどの周辺工事を行い、9月末までに主な工事を完了し、11月末の完成を目指す。



出典 新国立整備スケジュール 2019年5月17日 JCS スタンドを覆う屋根は完成


出典 新国立整備スケジュール 2019年5月17日 JCS 工事用重機は撤去されている


出典 新国立整備スケジュール 2019年5月17日 JCS


■ 新国立競技場 2019年2月12日

全容を現した新国立競技場 工期・コストも順調 工事はピーク 一日2500人の作業員が従事 出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS


屋根の鉄骨工事はヤマを越す 5月中旬には完成  出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS


フィールド工事は3月に開始  出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS


6万席の観客席の内、1万席の設置が終了  出典 新国立整備スケジュール 2019年2月12日 JCS



陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに
 2017年11月14日、「新国立競技場」の整備計画を検討する政府の関係閣僚会議(議長・鈴木俊一五輪担当相)は14日、五輪大会後はサッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムに改修する計画案を了承した。22年後半の供用開始をめざす。
 計画案では、大会後はサッカーのワールドカップ(W杯)開催などにも対応可能するとともに収益性を確保するために、陸上競技のトラックを撤去して観客席を設けたり、スタンド上部に観客席を増設したりして、観客席を6万8000席から1万2000席増やし、国内最大規模の8万席にする。
 運営方針として、(1)サッカーのワールドカップ(W杯)の招致にも対応できる規模の球技専用スタジアムに改修し、サッカーやラグビーなどの日本代表戦や全国大会の主会場とするともに、国際大会を誘致する。(2)イベントやコンサート、子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会等を積極的に開催する(3)運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入し、契約期間は10~30年間を想定して、20年秋頃に優先交渉権者を選定する。(3)収益を確保するためにJSCが管理する秩父宮ラグビー場と代々木競技場と合わせて運営することや命名権の導入も今後検討するなど掲げた。
 老朽化した国立霞ヶ丘競技場の建て替えが検討された時に、新しい国立競技場を建設して、東京の新たな“ランドマーク”にし、陸上競技の“聖地”として2020東京大会の“レガシー”にすると意気込んだ。
 しかし、陸上競技では、8万席の観客席を埋めるのは、絶望的で、オリンピックや陸上世界選手権などを除けば、せいぜい1~2万人程度が集まる程度で、スタンドはがらがらだろう。
 また陸上競技の主要大会の開催には必要不可欠なサブトラックが確保できないため、陸上競技の“聖地”にはなれないことは当初から指摘されていた。
 国際規格に適合した9レーンの最高品質のトラックは、取り壊され、まったく無駄になる。
 サッカーやラグビーなどの球技専用スタジアムなら3万~5万人程度の観客が期待できる。日本代表戦のほか、天皇杯、皇后杯や国際カップ戦の決勝、大学選手権の決勝などで使用することを想定しているが、開催回数は限られている。
 年間の稼働率を上げて収益性を高めるには、Jリーグの開催を実現したいところだが、Jリーグの各チームのホーム・スタジアムは、日産スタジアム(横浜)や味の素スタジアム(調布)、埼玉スタジアム(浦和)があり、新国立競技場の開催ができるかどうか今の段階では「未定」とされ、先行き不透明だ。
 イベントやコンサートの開催は集客もあり収益性も高いことから魅力的ではあるが、イベント開催に必須な屋根の設置は取りやめた。雨天対策や近隣への騒音問題で、屋根のないスタジアムでは、自ずからイベント開催も限られる。
 子供向けスポーツ教室、市民スポーツ大会の積極開催を掲げているが、「8万人」の観客席を備えた巨大なスタジアムはこうしたイベントにはまったく適さない。
 大会後に新国立競技場で開催するスポーツ競技大会は年間80日、その内通常の競技会は44日で、ビックイベントは36日(サッカー20日、ラグビー5日、陸上11日)程度を見込み、コンサートや展示会などのイベントは12日程度と見込んでいる。残りの約270日は、一体、何に利用するのか。
 新国立競技場の使用料は破格に高額になることも懸念材料だ。
 イベント使用の場合、新国立競技場は、1日で「5000万円」程度を想定している。同じ都心にある東京ドームは「2000万円」、しかも屋根付きのドームスタジアムである。日産スタジアム(横浜)は「1440万円」、さいたまスタジアムは「959万円」、味の素スタジアム(調布)は「1080万円」で、とにかく新国立競技場の利用料は飛びぬけて高額だ。コンサートの開催で人気のある武道館は「480万円」、横浜アリーナは「650万円」、「5000万円」を掲げる新国立競技場のイベント会場としての競争力は果たしてどの程度あるのだろうか。
 スポーツ競技大会についても、日産スタジアム(横浜)ではアマチュア・スポーツ競技の場合は、わずか48万円、1964東京五輪のサッカー予選会場となった駒沢陸上競技場は収容人数約2万人の適正規模のスタジアム、利用料は23万円、入場料を徴収する場合でも27万3000円である。これに対して新国立競技場は通常の競技大会では200万円、サッカーやラグビー、陸上競技などのビックイベントともなると800万円程度、サッカーW杯クラスの超ビックイベントでは2000万円程度されている。
 増築後は収容人数「8万人」を有する巨大スタジアムを、破格に高額な利用料を払って、一体、誰が利用するのだろうか。
 五輪後の展望はまったく見えない。

 新国立競技場の維持管理費は長期修繕費を含めて年間約24億円とされている。これには約5億円程度とされている人件費や公租公課が含まれていないので、実質的には年間30億円程度になるだろう。経費を上回る収入確保できなければ、50年、100年、延々と赤字を背負うことになる。
 陸上競技の“聖地”とし、2020東京大会の“レガシー”するために国立競技場を立て直すのではなかったのか。本当に1984東京大会の“レガシー”になった旧国立競技場(国立霞ヶ丘陸上競技場)を取り壊す必要があったのだろうか。余りにも杜撰な計画に唖然とさせられる。
 結局、新国立競技場が“負のレガシー”(負の遺産)になるのは避けられそうもない。

JSC 794億円の資金不足に 五輪大会開催後の改修計画に見通し立たず
 新国立競技場は、2019年11月末の完成に向けて、順調に工事が進み、2017年度中に地上躯体工事が完了し、現在は屋根工事、内装仕上工事等に着手している。
 新国立競技場の整備は日本スポーツ振興センター(JSC)が実施しているが、スタジアム本体の工事だけではなく、周辺整備や設計・監理に加えて、旧競技場の解体工事、埋蔵文化財調査、計画用地内に所在する日本青年館・JSC本部棟移転、新国立競技場の通信・セキュリティ関連機器や什器の整備など幅広い業務を担う。JSCは2013年度から2017年度までの支払額はすでに計738億余円に達した。
  
 東京都の負担見込額395億円については、29年度末時点では協定書等は締結されておらず、東京都からの支払も行われていない。JSC法によれば、費用の額及び負担の方法はJSCと東京都が協議して定めることとされており、また、支払等の期限は定められていない。JSCや東京都によると、今後JSC法に基づいて協議を進めて支払うこととしているが、29年度末時点でJSCへの入金時期や入金方法等は未定となっている。
 また、JSCは、2017年度に五輪特定業務勘定から国立代々木競技場の耐震改修等工事に必要な費用として約7296万円、ナショナルトレニンセンター(NTC)の拡充整備のための用地取得等に係る費用として46億余円が支出している。
 JSCは、29年度中に支払のための資金が不足したことから、スポーツ振興くじ勘定から五輪特定勘定へ50億1000万円の資金を融通した。そして2017年度の決算に当たりスポーツ振興くじ勘定へ返済するために民間金融機関から同額の融資を受けた。

 JSCによると、新国立競技場の五輪特定勘定の収入は2020年度までは毎年、110億円程度の収入がある。また2019年度には東京都から分担経費負担額と道路上空連結デッキの整備費用の残額の約431億円が支払わられるとしている。しかし、支払いをめぐるJSCと東京都が協議は終わっていないので、入金時期の目途はたっていない。
 第Ⅱ期業務では、Wi-Fi設備、監視カメラ、入場ゲート等の通信・セキュリティ関連機器整備を約27億2715万円で整備したり、国立代々木競技場の耐震改修等工事を実施したりして、支出が膨れ上がり、その結果2018年、2019年の2年度でJSCは794億円の資金不足に陥ることが見込まれている。
 JSCは、スポーツ振興くじ勘定などからの資金の融通はこれ以上不可能なことから、2018年4月に311億円を民間金融機関から長期借入金として借り入れた。
 311億円については2023年度までに返済する計画だが、今後借り入れる予定の約500億円の借入金の返済については、返済が始まる2024年度以降はスポーツ振興くじからのJSCの収入が売上金額の5%に戻され減少するので、返済期間は長期にわたるり、難航することが見込まれている。
 この収支の見通しはまだ不確定で、想定どおり毎年度110億円程度の収入があるかは不明である。また東京都からの支払が想定どおり31年度中に行われるかはまだ決定していない。
 こうしたJSCの危機的な財務状況で、膨大な経費が必要な新国立競技場の「球技専用」改修工事は本当に実現可能なのだろうか、疑念は深まる。
 「世界に誇れる日本らしいスタジアム」の迷走は、まだ止まらない。

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(7) 新国立競技場に暗雲 破綻寸前日本スポーツ振興センター(JSC)



迷走 ロンドン五輪スタジアムの再出発 サッカースタジアムへの転用は?


ロンドン・オリンピック・スタジアム 出典 LOCOG

 2006年10月、ロンドン・オリンピック組織委員会は、McAlpine(建設会社)、POPULOUS、Buro Happold(建設コンサルタント)のコンソーシアムによるオリンピック・スタジアム設計案を採用した。スタジアムは屋根が建物をまるごと覆う独特の外観で、「筋肉が人体を支持するのと同じ構造で、スタジアム自体が人体を表現する」と、デザイン案を評価した。
 設計者のPOPULOUSは、アメリカ・ミズーリ州・カンザスシティに本社を持つ、スポーツ施設及びコンベンションセンターなどの設計を専門とする設計事務所、建設コンサルタント。スポーツ施設やコンベンションセンターの設計から大規模イベントの企画までを専門とする建築設計事務所である。

 ロンドン・オリンピック・スタジアムは、オリンピックパークの敷地の一画にあった廃止されたドッグレース場の跡地に建設された。
 着工は2007年、2011年の竣工まで4年間を要した。 オープンは2012年5月。
 スタジアムは、広さ310メートル×260メートル、高さ67.7メートルの建物で、観客席は8万席、1層の恒久エリアの観客席が2万5000席、2層の仮設エリアの観客席が5万5000席とした。
 固定式の屋根で観客席を覆っているが、全体の観客席のうち1層前方の約40%が屋根に覆われていない構造だった。

 施工者は、ロンドン五輪の競技場や交通機関などのインフラ建設・整備を担当するODA(Olympic Delivery Authority)である。
 建設費は、ロンドン五輪招致時は、2億8000万ポンド(約381億2000万円)だったが、2011年には約4億8600万ポンド(733億円)、2013年には4億2900万ポンド(約655億円)とした。
 9レーンの陸上トラックはイタリアの会社Mondoによって設計され、最新のMondotrack FTXを使用された。
 2012年のロンドン夏季オリンピックの主競技場として、開閉会式と陸上競技が開催された。
 五輪大会終了後は、観客席を5万4000席に減築して、夏季期間は陸上競技やコンサートなどのイベントで使用、冬季期間はサッカー専用スタジアムとして使用する計画とした。
 改修工事は、約2万5000席の上層部の観客席の撤去や、サッカー試合の観戦環境を改善するために陸上トラックの上を覆う「収納式」可動席の設置(約2万1000席)、観客席の全てを覆う屋根の設置(五輪大会開催時は約40%の観客席が屋根なし)をLLDC側の責任で実施する。
 2016年に改修工事は終えて、可動席を含めると約6万人収容のスタジアムとして再出発することになった。


ロンドン・スタジアム 出典 ARC 5824 Advanced Studio2 Case Study
 
英プレミアムリーグ、ウエストハムの本拠地へ
 2013年3月23日、ボリス・ジョンソンロンドン市長とニューハム評議会のロビン・ウェールズ市長は、最終的にウェストハムを長期アンカー・テナントとして選定し、ウェストハムとテナント契約を仮締結した。紆余曲折を経て難航したコンペは、ようやく決着した。
 ロンドン市側とウェストハムは、陸上トラックは残し、夏季期間は陸上競技やコンサート、その他のイベントをスタジアムで開催し、サッカーシーズンは、ウェストハムがサッカースタジアムとして使用する「多目的スタジアム」にするスキームで合意した。
 ウェストハムはこれを条件に99年間の占有使用権(テナント料)を、年間250万ポンド(約38億2000万円)を支払うことでホームスタジアムとして使用する権利を手にした。ウェストハムは年間250日程度、サッカーの試合で使用するとしている。
 仮締結が行われた際に見積もられた改修経費は、スタジアムとしては全座席を覆う最大級の片流れ式の屋根や陸上競技場のスタジアムを「サッカーモード」に改修するために整備する「格納式」可動座席、21,000席の設置などで、総額1億5400万ポンド(約235億1000万円)とした。すべてLLDC側で改修工事を行う。
 スタジアムを所有するLLDC(Boris Johnson議長)とニューハム評議会は、スタジアムの改修工事や運営を担うために、「E20スタジアムパートナーシップ」を設立した。
 * 為替レート  £=152.70円  2013年の平均レート

 ウエストハムが支払う年間250万ポンドのテナント料は、インデックス連動で変動し、2016年/ 17年に支払ったテナント料は210万ポンド(約30億3000万円)で、2017年4月1日の増税後には230万ポンド(約33億2000万円)に増えた。
 これに対し、ウエストハムのライバルのアーセナル(Arsenal Football Club)は、エミレーツスタジアム(Emirates Stadium 収容人数 6万260人)のテナント料を、300万ポンド(約44億2000万円)を支払い、新しいプレミアリーグチャンピオン、チェルシー(Chelsea Football Club)は、スタンフォードブリッジ(Stamford Bridge 収容人数 4万1631人)に200万ポンド(約29億5000万円)を支払っている。
 * 為替レート  当時の年平均レート
 ウエストハムとの契約では、スタジアムの運営経費はスタジアムを所有するロンドンレガシー開発公社(LLDC)とニューハム評議会が全額負担をするになっている。
 LLDCは、運営はコンセッション方式を採用し、フランスのインフラ運営会社、ヴィンチ(Vinci)に25年契約で委託することとした。 ヴィンチへ委託することで、五輪スタジアムの運営コストはさらに膨れ上がったとして批判が巻き起こっている。
 またウェストハムは、ホスピタリティ施設やケータリングから収入を得ることが認められた。
 こうした取引に対して、ウェストハムが納税者の費用で「今世紀の取引」を手に入れたとして批判を浴びた。
 また夏季期間(6月~7月末)の運営は、英国陸上競技連盟(UK Athletics)に対して、30年間のコンセッションを委託した。


ウェストハムのホームスタジアムになったロンドンスタジアム 出典 e-Architect

膨張した改修経費にロンドン市長、スキームの見直しを表明
 2016年5月、労働党のサディク・カーン(Sadiq Khan)氏はロンドン市長に選出された。前任者の保守党のボリス・ジョンソン氏の後任である。カーン氏はロンドン五輪スタジアムの改修費用が膨張したのは、「すべて前市政による混乱が責任」と批判した。
 2016年11月、カーン市長は、「前市長は2015年、スタジアムを改修費用が2億7200万ポンド(約401億5000万円)と発表したが、 実際には、5100万ポンド(約73億8000万円)以上の多い、3億2300万ポンド(約476億8000万円)であることが明らかになった」と述べて、スタジアム改修費用に関わるあらゆる問題について詳細な調査を指示した。
 改修費用は、当初は
 3億2300万ポンド(約476億8000万円)に増えた主な原因を、サッカーの観戦体験を改善するために設置する可動座席の費用が 1億2300万ポンド(181億6000万円)増えたことだと明らかにした。また大画面デジタルスクリーンやスタジアムの外壁を覆う「ラップ」の整備費用などが増加したこともその原因としてあげている。

 改修費用膨張の主因となった「格納式」可動座席は、設置後も座席を移動するごとに多額の経費がかかることが明らかになって、問題化している。
 カーン市長が発表したデータによると可動座席の出し入れに必要な推定年間運用コストは800万ポンド(約11億8000万円)に膨れ上がるとした。夏の一ヶ月間、陸上競技などのイベント開催のために座席を移動する経費である。
 2017年夏にはスタジアムの座席の移動作業にかかった運用経費が1180万ポンド(約17億4000万円)だったことが明らかになっている。これだけの経費をかけてもそれを上回る収入が陸上競技の開催で確保できれば問題はないが、果たして達成できるのか問題視された。
 改修工事費は、当初は1億5400万ポンド(約235億2000万円)と見積もられていたが、可動席の設置や屋根の設置費用が増えたとして2億7200万ポンド(約401億5000万円)に増えて、最終的には3億2300万ポンド(約493億2000万円)に膨れ上がった。
 * 為替レート  £=152.70円  2013年の平均レート
 3億2300万ポンド(約476億8000万円)に膨れ上がった改修経費の原資は、LLDCが拠出する1億4880万ポンド(約219億7000万円)を中核に、ニューハム評議会が4000万ポンド(約59億円)(E20スタジアムパートナーシップへの35%の出資を振替)を融資、五輪開催予算の93億ポンドから4000万ポンド(約59億円)、さらに政府が2500万ポンド(約39億9000万円)を拠出した。また英国陸上競技は100万ポンド(約14億8000万円)を投資し、ロンドンマラソン慈善信託は350万ポンド(約51億7000万円)を提供すること賄うことが決まった。
 スタジアムを本拠地にするウェストハムは、世論から巨額に膨れ上がった改修費の負担もすべきだと激しい批判を浴び、冬季期間のスタジアムのアンカーテナントとしての契約料、年間250万ポンド(約36億9000万円)を支払うことに加えて、改修費用としてさらに総額1500万ポンド(約22億1000万円)を寄付することを表明した。
 * 為替レート  £=147.62円  2016年の平均レート


ウェストハムのホームスタジアムになったロンドンスタジアム 出典 e-Architect
 
 大会終了後の改修費用が3億2300億円(約476億8000万円)に膨らんだことで、建設費用の4億2900万ポンド(633億3000万円)を加えると五輪スタジアムの総額は7億5200万ポンド(約1110億1000万円)という巨額の経費に達することが明らかになった。
 2017年12月1日、ロンドン市長は、独立調査員会の報告を公表した。

■ 報告書の骨子
•元市長はスタジアムの改修計画を適切な分析をせずに決定し、納税者にとって「高価で厄介な」取引につながった。その結果、スタジアムの改修費は3億2300万ポンド(約476億8000万円)
に膨れ上がりユナイテッドと英国陸上競技連盟との拘束力のある契約を結び、現市長の選択肢を厳しく制限した。
•2015年にラグビーワールドカップ大会を開催するが決定され、改修費用は更に膨らんだ。改修工事の追加や遅延、混乱、そしてコスト増が経費膨張の要因となった。またプレミアリーグが開始に先立って2016年7月に再オープンしなければならないというタイトな工期もコスト増につながっている。
•スタジアムは2017年から2018年の間に2400万ポンド(約34億8000万円 2017年 £=144.46円)赤字が出ると予測。今後に何らかの措置が取られなければ、スタジアムは毎年約2000万ポンド(約28億9000万円 2017年 £=144.46円)の赤字を計上すると予測し、投資額の回収は不可能である。
•ロンドン市長は、損失を最小限に抑えるための再交渉を、ニューハム評議会(Newham Council)と共に開始する。
 2016年に改修工事は終了し、スタジアムは再オープンした。
 2017年8月4日から8月13日には「世界陸上競技選手権大会」が開催され、2015年9月18日から10月31日まで開催された「ラグビーワールドカップ2015 イングランド大会」ではプール戦(予選)や三位決定戦の5試合が行われた。
 2019年6月29、30日の2日間、米大リーグ、MLBは、リーグ史上初めてロンドンで公式戦を開催し話題を集めた。歴史的な試合だったこともあり、MLBはリーグ屈指の好カードのヤンキース対レッドソックス戦を用意し、ロンドンスタジアムには2試合で約12万人(MLB発表11万8718人)の観客でスタンドは埋まった。
 MLBではすでに来年もロンドン開催を決定しており、カブス対カージナルス戦を2020年6月13、14日に行う予定になっている。


London Stadium transformed into MLB ballpark
Youtube

 ロンドンスタジアムの状況を見ると、陸上競技、サッカー、その他のスポーツやコンサートなどイベント開催を目指す巨大「多目的スタジアム」の運営は、極めて難問なことが明らかになった。


筆者作成 各種資料を参照



新国立競技場建設が浮上したのはラグビーW杯開催
 国立競技場の建て替えの突破口を開いたのはラグビーW杯である。2009年に長年の悲願であった日本大会の招致に成功。2011年に「ラグビーW杯2019日本大会成功議員連盟」が建て替えを決議し、その後、国が調査費を計上して建て替え計画が動き出した。
 ラグビーW杯は2019年9月から11月に開催される。  
 関係者が新国立競技場の2019年春の完成にこだわるのも、ラグビーW杯に間に合わせるためだ。6月28日に退任するまで10年間、日本ラグビー協会長を務めた森五輪組織委会長の存在は極めて大きかった。
 そして、建設計画が急速に具体化したのは、勿論、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致である。
 2020東京オリンピック・パラリンピック招致委員会では、招致を成功させる“切り札”の一つに新国立競技場の建設を位置付けた。開会式、閉会式、陸上競技を都心に整備される最新鋭のスタジアムで開催することで各国の指示を得ようとしていた。
 新国立競技場の建設は、国際“公約”になっていた
 1964のオリンピック・スタジアムとなった国立霞ヶ丘競技場(旧国立競技場)は、老朽化が激しく、耐震強度にも問題があり、建て替えか改修工事が迫られていた。
 新しい国立競技場を建設して、東京の新たなランドマークにし、陸上競技の“聖地”として2020東京大会のレガシーにすると意気込んだ。
 一方で、2011年、日本スポーツ振興センター(JSC)は大規模改修を検討していたことが明らかになっている。市民グループが情報公開で入手した内部資料によると、JSCが設計会社に詳細な耐震補強調査を依頼し、7万人収容規模への改修工事を4年の工期、総工費770億円で行えるとの試算結果がまとめられていた。
 改修案が一掃されたのは、ラグビーW杯の開催と2020東京五輪大会の招致に間違いない。
 新築か改築か、十分に議論を行わなわずに、2012年新国立競技場建設に向けて国際コンクールが行われ、建設計画が始動した。
 そして、国立霞ヶ丘競技場は、2015年3月、解体工事が開始され、9月には跡形もなく取り壊された。
 しかし、新国立競技場建設計画を巡る“迷走”と“混迷”を繰り返した結果、
招致活動の“象徴”として使用したザハ・ハディド氏の斬新な流線形のデザインの白紙撤回に追い込まれた。さらに「2019年春の完成」が間に合わなくなり、「ラグビーW杯2019」の開催も断念した。
約1500億円を投じて新たに建設する意味の半分近く失われた。
 まったくお粗末な経緯に、唖然とするほかない。


取り壊された旧国立競技場  出典 日本スポーツ振興センター(JSC)

“迷走”と“混迷”を重ねた 新国立競技場
 2020東京五輪大会の競技場の整備経費については、「新国立競技場」は国(主管は日本スポーツ振興センター[JSC])、その他の恒久施設は東京都、仮設施設は2020東京五輪大会大会組織員会が責任を持つことが決められていた。
 「新国立競技場」の設計デザインは、国際デザインコンクールを行い、幅広く国内外から斬新なアイデアを求めることになった。2012年、募集が行われ世界中から46の作品が応募された。募集にあたって掲げられたスローガンは「『いちばん』をつくろう」、審査員長の安藤忠雄氏のコンセプトである。コンクール実施するにあたって、想定した総工費は「1300億円を目途」としていた。審査は紙一重の激戦だったが、安藤忠雄氏の最終的な決断で、「スポーツの躍動感を思わせるような流線形の斬新なデザイン」を評価してザハ・ハディド氏のデザインが採用された。
 ザハ・ハディド氏は、斬新なデザインの建築物を設計することで知られていたが、ユニークさが批判を浴びたり、建設費が膨大になったりして、建設中止になるケースが相次ぎ、「アンビルドの女王」と揶揄されていた。 
 「ザハ・ハディド案」も、斬新な流線型のデザインの巨大な屋根付きスタジアムは「明治神宮の景観を壊す」として反対論が巻き起こった。さらに総工費が施工予定者のゼネコンが見積もると「3000億円超」に膨張することが明らかになって、世論から激しい批判が集中した。また斬新なデザインを実現するためには難工事が見込まれて、工期も「50か月程度」が必要で、2019年3月の完成予定が8か月程度延びるとされた。2019年9月開催のラグビー・ワールドカップに間に合わない可能性も浮上して関係者に衝撃が走った。
 2015年7月、建設計画を見直し、建物の面積を22万2000平方メートルに約13%削減したり、8万人観客席のうち1万5000席を仮設席に変更したりするとともに、焦点のグランド上部の開閉式屋根については、屋根を支える2本のキールアーチは設置するが屋根の設置は五輪後に先送りにするなどして費用を圧縮して、総工費「2520億円」にするとした。
 しかし「2520億円」に縮減しても、当初予定「1300億円」の倍近い額に膨らみ、世論の批判は一向に収まらなかった。
 最終的に安倍首相が収拾に乗り出し、2015年8月、総工費を「1100」億円削減し、「1550億円」(上限)とする方針が示された。
 「ザハ・ハディド案」は、“迷走”に“迷走”を重ねた上に、結局、白紙撤回に追い込まれた。

■ 見直しの骨子
▽ 観客席は6万8000程度とし、サッカーのワールドカップも開催できるように1万2千席を増設し8万席にすることを可能にする。
▽ 屋根は観客席の上部のみで、「キールアーチ」は取りやめる。
▽ 観客席の冷暖房施設は設置しない。
▽ スポーツ博物館や屋外展望通路の設置は取りやめて、地下駐車場も縮小する。
▽ 総面積は22万2000平方メートルから約13%減の19万4500平方メートルに縮小する。

 あれだけこだわった可動式屋根の設置は完全になくなった。
 そしてコンサートやイベント開催を視野に入れた「多目的スタジアム」も消え去った
“迷走”に“迷走”を繰り返し醜態を演じた文科省と日本スポーツセンター(JSC)の責任は重大でだろう。
 東京オリンピック・パラリンピックは、準備段階で早くも大きな汚点を残した。

 2015年9月、「ザハ・ハディド案」は白紙撤回され、新たな整備計画を作成し、総工費と工期を重視した入札事業者向けの募集要項を公開して、再公募を実施することになった。
 新整備計画ではコンサートやイベントなども開催する「多目的利用」は放棄され、陸上競技やサッカー、ラグビーなどのスタジアムへ転換することを打ち出した。
 観客席は五輪開催時には約6万8000席とし、五輪後に陸上トラック上部などに観客席を増設して8万席以上確保し、FIFA ワールドカップの開催を可能にする。屋根は開閉式を取りやめ、固定式にして観客席全体(増設後を想定)を覆うようにする。建物の最高高さは70メートル以下。フィールドを含む面積は約19万4500平方メートルで、2014年5月に策定された旧整備計画の約22万2000平方メートルから、更に約3万平方メートルを削減するとした。
 ザハ・ハディド案の当初計画では約29万平方メートル(駐車場を含む)、結局、当初計画と比べると、約9万5000平方メートル、約30%削減されることになった。
 公募には、大成建設を中心に梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループと、竹中工務店、清水建設、大林組の3社の共同企業体と日本設計、建築家の伊東豊雄氏で構成するグループが応募した。注目されたザハ・ハディド氏は、意欲は示したが、結局応募しなかった。
 2015年12月22日、審査の結果が公表され、「木と緑のスタジアム」をコンセプトにした大成建設、梓設計、建築家の隈研吾氏で構成するグループが選ばれた。
 木材と鉄骨を組み合わせた屋根で「伝統的な和を創出する」としているのが特徴のデザインで、地上5階、地下2階建て、スタンドはすり鉢状の3層にして観客の見やすさに配慮する。高さは49・2メートルと、これまでの案の70メートルに比べて低く抑え、周辺地域への圧迫感を低減させた。
 総工費は約1490億円、完成は2019年11月末としている。
 しかし当初計画のラグビー・ワールドカップの開催は頓挫した。 





技術提案書A案のイメージ図  新国立競技場整備事業大成建設・梓設計・隈研吾建築都市設計事務所共同企業体作成/JSC提供

資金難深刻JSC 新国立競技場の改修計画は宙に浮く懸念
 東京オリンピック・パラリンピックのメインスタジアムとなる「新国立競技場」の整備をめぐり、事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)が今後2年間で790億円程度の資金不足を見込んでいることが会計検査院の調べで明らかになった。
 会計検査院によると、JSCは昨年度、「新国立競技場」の整備費や国立代々木競技場の耐震改修工事などの支払いに必要な資金が不足し、50億円余りを民間の金融機関から一時的に借り入れた。
 さらに、来年度までの2年間で790億円程度の巨額の資金不足が見込まれ、民間金融機関からの借り入れで対応しようとしていることが明らかになった。790億円の返済長引くことが予想されていて、JSCの資金難は深刻化しそうだ。
 国は、大会終了後、新国立競技場の9レーンの陸上競技のトラックを取り外し、観客席を張り出してサッカーやラグビーなど球技専用のスタジアムに改修する方針を決めている。そして、FIFAワールドカップ(8万席)やワールドラグビー競技が開催可能な臨場感あるスタジアムにしたいとしている。五輪大会開催後の運営については、民間事業者のノウハウと創意工夫を活用して、ボックス席の設置などホスピタリティ機能を充実する計画も打ち出している。大会終了後にすみやかにこうした改修を行い、運営については指定管理者制度を導入して、2024年後半以降の供用開始を目指すとしている。
 しかし、未だに財源や工事の内容、スケジュールについては何も決まっていない。
 そして今回の会計検査院の調査で日本スポーツ振興センター(JSC)の資金不足の深刻化が明らかになった。新国立競技場の改修計画は挫折寸前である。
 新国立競技場は、「負の遺産」に転落する瀬戸際に立たされている。





新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(7) 新国立競技場に暗雲 破綻寸前日本スポーツ振興センター(JSC)

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委

巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト

デザインビルド方式 設計施工一括発注方式は公正な入札制度か?

審査委員長の“肩書き”が泣いている 新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏

東京五輪開催経費「3兆円超」へ 国が8011千億円支出 組織委公表の倍以上に膨張 会計検査院指摘

「1725億円」は五輪開催経費隠し 検証・国の会計検査院への反論 青天井体質に歯止めがかからない

“もったいない” 五輪開催費用「3兆円」 小池都知事の“五輪行革に暗雲

東京オリンピック 競技会場最新情報(上) 膨張する開催経費 どこへいった競技開催理念 “世界一コンパクト”

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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2018年5月1日  初稿
2019年7月10日  改訂
Copyright (C) 2018 IMSSR


***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
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国立競技場は陸上競技場のまま (トトロ)
2019-06-08 18:33:08
国立競技場は、音楽イベント団体が大型重機搬入するのに陸上トラックが必要不可欠を強力に主張してそのまま!
そして、秩父宮ラグビー場の神宮第二球場を敷地面積狭さで断念して4年前の覚書内容に戻る。第二球場・建国記念文庫碑か霞ヶ丘アパート跡地に織田フィールド移転がクローズアップされる。
https://www.oita-press.co.jp/1004000000/2019/03/13/KA20190311/DH0581500022
https://www.jcptogidan.gr.jp/wp-content/uploads/2018/03/SCAN-2684.pdf
https://www.cla.or.jp/news/1349/
国立競技場は陸上競技場! (トトロ)
2019-06-09 11:11:26
今月の広島市議会でイメージ図・配置図を基に予算を議論ををするが、未だに秩父宮ラグビー場のイメージ図・配置図を公開しないのは異常!
https://diamond.jp/articles/-/204521
http://bulestyle.livedoor.biz/archives/52465101.html
http://building-pc.cocolog-nifty.com/map/2019/05/post-ad2c5.html
https://www.asahi.com/articles/ASM643PHZM64PITB006.html
第二球場と吹田スタジアムを重ねると秩父宮ラグビー場建設不可能が明確になるから、4年前の覚書にもどるのが確実!
https://i.imgur.com/CmNrCJC.jpg
https://blogos.com/article//259973/
国立競技場は陸上競技場! (トトロ)
2019-06-09 11:33:03
瑞穂陸上競技場の追加と打ち直し。イメージ図が公開できない話は撤回になる。
https://blogos.com/article/259973/
https://www.kentsu.co.jp/webnews/view.asp?cd=190531300054
http://building-pc.cocolog-nifty.com/map/2019/05/post-3ad2c5.html.html
http://bluestyle.livedoor.biz/archives/52465101.html

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