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2018FIFAワールドカップ  放映権料 高騰 暴騰 放送権料

2018年07月28日 06時58分14秒 | 2018FIFAワールドカップ
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料
FIFAの収入の約62%は放送権料


▼ W杯高騰する放送権料 ロシア大会 テレビ東京はW杯から撤退 
▼ 危機に立たされた民放 ロシア大会も“赤字”確定
▼ Fox/ Telemundoが12億ドル(約1320億円)で獲得 2018/2022 FIFA World Cup 米国内放映権料
▼ 放送権料の暴騰を支える米国テレビ業界の事情
▼ W杯の優勝賞金は破格の3800万ドル(約41億8000万円)
▼ FIFAの収入 約80%が放送権料収入とスポンサー収入
▼ 止まらない巨大スポーツビジネスの“負の連鎖”



Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?


W杯高騰する放送権料 ロシア大会 民放は赤字“確定”へ
テレビ東京はW杯から撤退

 FIFA World Cup Russiaの放送権は、2002年日韓大会からジャパン・コンソーシアム(JC=NHKと民間放送局の共同制作機構)が電通を通じFIFA(国際サッカー連盟)から放送権を購入し、NHKと民放各局はW杯の中継を放送する。
JCの支払う放送権料は、毎回、高騰し続け、関係者によると、2014年ブラジル大会では約400億円、2018年ロシア大会では、ブラジル大会から1.5倍にはね上がり、約600億円といわれている。
 日本で初めてW杯が放送されたのは1970年のメキシコ大会、東京12チャンネル(現テレビ東京)の単独放送で放送権料は8000万円、1974年の西ドイツ大会も東京12チャンネルで、2億円だった。
 1978年のアルゼンチン大会から、FIFAはアジアでの普及を掲げて6大会一括の放送権をアジア放送連合(ABU)を通じてNHKに提供、NHKが1998年のフランス大会まで単独放送し、放送権料は6億円だったされている。
 その放送権料が2002年の日韓大会から急激に高騰する。JCが電通を通じてFIFAから放送権を一括購入する形式が始まり、日韓大会はこれまでの10倍の60億円に跳ね上がった。
 そして2006年ドイツ大会は140億円、2010年南アフリカ大会が170億円。2014年ブラジル大会は400億円にまで暴騰した。
 「スカパー!」は、2002年日韓大会(JCとは別に放送権を獲得)、2006年ドイツ大会(JCと合同 録画のみ)、2010年南アフリカ大会(JCと合同 約100億円を負担してライブ中継もサービス)と3大会連続してW杯の放映権を獲得たが、2014年ブラジル大会は暴騰した放送権料を理由に撤退した。
 ちなみにブラジル大会は、全世界での放送権料の総額は2000億円とされ、その5分の1、400億円をJCが支払っったとされている。
 そして、ロシア大会では、JCの放送権料は、1.5倍程度の500~600億円に暴騰したといわれている。
 ちなみに、米国内の独占放送権を取得したFOXやスペイン語チェンネルのTelemundoは、2018年ロシア大会と2022カタール大会の2大会で約12億ドル(約1320億円)を支払ったと伝えられている。(AP 2011年10月21日) 
 12億ドルは2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会の放送権料、4億2500万ドル(約470億円)の約2.8倍である。
 そして、今回のロシア大会では、テレビ東京が「編成上の理由」として中継を断念した。

 FIFA World Cup のJCの放送権料は、NHKが70%、民放が30%負担するのが慣例と言われている。今回は、テレビ東京が撤退し、民放は日本テレビ、フジTV、TBS、テレビ朝日の4系列となった。
 仮に、この比率で換算すると、2018 FIFA World Cup RussiaのJCの放送権料、約600億円を、NHKは420億円、民放は日本テレビ、TBS、フジTV、テレビ朝日の4系列で180億円、一社あたり60億円負担することになる。民放3者の負担は倍以上に膨らむ可能性がある。
 放送する試合数は、NHKが32試合、民放三系列で32試合で、これまでの慣例通りである。
 
暴騰する放送権料 危機に立たされた民放
 暴騰する放送権料で、民放各局は危機に立たされている。
 日本民間放送連盟(民放連)は、南アフリカ大会から2大会連続でW杯の民放収支が赤字になったと発表している。放送権料の民放負担分と番組制作費の合計が広告収入を上回り、ロシア大会も「赤字確定」としている。
 民放にとって大きな収入源となるゴールデンタイム(午後7時から同10時)、プライムタイム(午後7時から同11時)に放送するレギュラー番組には、巨額のCMを出す大企業(提供スポンサー)が確定している。
 W杯をこの時間帯に放送しても、日本戦を除き高視聴率を獲得するのは難しく、高額の放送権料に見合ったCM収入を確保ができずペイしないのだろう。 しかも午後9時、午後11時開始の試合は、試合前後の1時間、合計2時間のハイライト番組をつけるルールが設けられている。この時間帯のレギラー番組休止に伴う減収はダメージも大きい。
 逆に深夜3時開始の放送では、日本戦を除き、視聴率が獲得できず、提供スポンサーの確保はメドが立たない。W杯を放送しても収入はほとんどないが、収入源のゴールデンタイムのレギラー番組は休止しないで済むのでダメージは少ない。
 民放間の放送権の割り当ては、抽選で行われるのが慣例で、日本テレビは日本戦の第2戦セネガル(6月24日 24:00)を獲得、フジTVは日本戦の第3戦ポーランドを手に入れた。TBSは準々決勝(7月6日深夜3時)を、テレ朝はブラジル対コスタリカ(6月22日午後9時)を選んだ。
 日テレビは日本戦以外、すべて深夜3時の試合を選び、NTVは好調なレギュラー番組の収入を休止せずに、深夜時間帯にライブでW杯中継を放送する 戦略をとった。TBSは決勝トーナメントの1回戦は準々決勝、テレビ朝日は、決勝トーナメントの1回戦、準決勝、三位決定戦の放送に力を入れる。

2018FIFAワールドカップ ロシア大会 NHK・民放 放送予定


Fox/ Telemundoが12億ドル(約1320億円)で獲得
2018/2022 FIFA World Cup 米国内放映権料

 2011年10月21日、FIFAとフォックス(Fox)、スペイン語放送局のテレムンド(Telemundo)、スペイン語のラジオ局のFutbol de Primera Radioは、FIFAワールドカップの米国内の独占放送権を12億ドル(約1320億円)で獲得した。
 この契約でFoxは英語のテレビ放送権を約4億2500万ドルで獲得し、英語のラジオ放送権も確保した。
一方、NBCユニバーサル/Comcastが所有するスペイン語放送局のテレムンド(Telemundo)は、スペイン語中継の契約で約6億ドル(約660億円)を支払う。
 スペイン語チェンネルのTelemundoは、Foxより高額の放送権料を支払ったが、スペイン語を話す視聴者は、FIFAワールドカップへの関心が極めて高いことを反映している。
 スペイン語のラジオ放送権は、Futbol de Primera Radioが1億ドル(約110億円)以上で譲渡された。

 放送権の入札は、10月20日と21日、スイスのチューリッヒで行われたが、ESPNは入札価格を約3億5000万ドル(約385億円)から約4億ドル(約440億円)へ引き上げたが、FOXはそれを上回る額を提示したとされている。(New York Times 2011年10月21日)
 また、テレムンド(Telemundo)は、2010年〜2014年のスペイン語放送権獲得に3億2,500万ドルを支払ったユニビジョン(Univision)に、打ち勝った。
 フォックなど3社が取得した独占放送権は、2015年から2022年までのFIFAの全てのイベント、2018FIFAワールドカップ・ロシア大会 と2022FIFAワールドカップ・カタール大会、2015年と2019年の女子ワールドカップ、すべてのアンダー20とアンダー17の大会が含まれる。
フォックス・スポーツ会長のデイビッド・ヒル氏(David Hill)は、「FIFAがフォックス・スポーツ・メディア・グループにこれらの極めて重要な権利を授与されたことは本当に光栄だ」と語った。

 2010南アフリカ大会と2014ブラジル大会では、ESPNが1億ドル、スペイン語ネットワーク、Univisionが3億2,500万ドル、合計4億2500万ドルを支払い、放送権を獲得したが、今回の契約額は、約12億ドルとその3倍近くに暴騰した。
 米国内のネットワークやケーブルテレビは、テレビ離れやネットフリックス、Fuluなどのインターネット映像サービス(OTTサービス)に押されて苦境に立たされている。
 とりわけケーブル・オペレーターは契約者減が死活問題、契約者獲得を巡る競争が激化し、ケーブルテレビのキラー・コンテンツであるスポーツ中継の放送権争奪戦が熾烈になった。
 FIFAワールドカップは、2010年南アフリカ大会と2014年ブラジル大会は、ABCと ESPN、Univision(スペイン語放送)が放送権を獲得した。
 ESPNとESPN2の契約者は合わせて約9000万人、これに対しFox Sportsの契約者は4000万人とされている。
 ESPNは、UEFAヨーロッパサッカー選手権、英国プレミアリーグ、ラリガ、MLS、他のトップリーグとトーナメントの放送権を得ている。
これに対して、フォックスはUEFAチャンピオンズリーグ、英国プレミアリーグ、イタリアのセリエAの放送権を持っている。
 Fox Sportsは、FIFAワールドカップの放送権獲得を契約者増のターゲットに置き、ESPN/ABCに 戦いを仕掛けて、2018年と2022年の放送権を奪いとるという“クーデター”を成功させたのである。
 FIFAは、入札額を公表していないが、記録的な放送権料の暴騰で、米国のスポーツ放送ビジネスは新たな難題を抱えることになる。
 巨額の放送権料に見合う広告収入をどうやって確保するのか、その基盤となる視聴者数を確保できるのかどうか、FoxやTelemundoにとって、極めて厳しい局面が待ち構えているのは間違いない。

 米国の放送機関は巨額の放送権料を支払うFIFAにとって最大のクライアントで、財政基盤を支えている。米国の放送事業者がFIFAと契約する放送権料の相場が、そのまま世界の放送事業者の放送権料に反映されるのが慣例だ。
 2022年カタール大会のFoxやTelemundoの放送権契約は終了しているが、2026年米国・メキシコの共同開催大会のFIFAとの放送権交渉はこれからだ。
 FIFAは2026年大会から参加国をこれまでの32カ国から48カ国に増やし、大会開催期間を延ばすとしている。これに伴い放送権料が更に増えるのは当然であろう。
 さらに問題なのは、米国内のメディア間の放送権争奪戦である。米国内の開催とあって米国チームは必ず開催国として予選なしで参加が保障されている。また米国内の開催とあって、視聴者数の増大が予想される。
 Fox/Telemundoは、引き続き放送権を獲得しようとするだろうし、2018年と2022年ではFoxに敗退したESPN/ABCは、放送権奪還を目指し、両グループの間で、激烈な競争が行われるだろう。放送権料は再び暴騰するのは必至である。
 そして、放送権料の暴騰は世界の放送機関に及ぶ。
 巨大スポーツビジネスの“負の連鎖”は止まらない。


Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?


W杯の優勝賞金は破格の3800万ドル(約41億8000万円)
 FIFAの出場チームに対する“厚遇”は目を見張るものがある。
2018年FIFAの予算では、クラブチームへの助成金2億900万ドルを始め、ロシア大会は全出場チームへの準備金150万ドル(約1億6500万円)や、1次リーグ敗退でも800万ドル(約8億8000万円)が支払われる。結果に関係なく出場するだけで約10億円以上が支払われる。
2002年の日韓大会は、準備金が100万スイスフラン(約7500万円)、1次リーグ敗退でも460万スイスフラン(約3億4500円)の出場給で、約3倍に増えた。
 また決勝リーグに進出したチームには1600万ドル(約17億6000万円)、4位には2200万ドル(約24億4200万円)、3位には2400万ドル(約26億4000万円)、2位には2800万ドル(約30億8000万円)、優勝賞金は3800万ドル(約41億8000万円)と破格の賞金が支払われる。
 さらにFIFAは、全参加チームの支援予算として、2018年で6億5700万ドル(約722億円)を拠出するとしている。





出典 FIFA FINANCIAL REPORT 2017

FIFAの収入 約80%が放送権料収入とスポンサー収入
 2017年6月に公表されたFIFAFINACIAL REPORT 2017からFIFAの収支構造をしてみよう。
FIFAの収支は、4年ごとに開催されるW杯大会の開催年に収入がまとまって入る構造なので、FIFA World Cup Russiaの開催される2018年と2015-2018年の“4年間”サイクルで収支を検証する。
 2017年のリポートでは、2018年は予算として、2015年-2017年サイクルは実績値で示されている。
 これによると、収入は、2018年は38億7600万ドル(約4260億円)、2015年-2018年サイクルで56億5600万ドル(約6220億円)である。

 収入の内訳は、
▼ 放送権料収入(Television Broadcasting Rights)は、2018年で24億1700万ドル(約2660億円)、2015年-2018年で30億万ドル(約3300億円)
▼ スポンサー収入(Marketing Rights)は、2018年で9億3300万ドル(約1030億円)、2015年-2018年で14億5000万ドル(約1600億円)
▼ ライセンス収入(Licensing Lights)は2015年-2018年で3億6300万ドル(約400億円)
▼ 入場料収入等(Hospitality/accomodation right and tickets sales)は2018年で5億5300万ドル(約610億円)、2015年-2018年で5億7500万ドル(約630億円)

 放送権収入は、2018年では全収入の約62%を上回っている。2015年-2018年でも収入の約53%、半分以上を占める。
 続いてスポンサー収入は2018年で約24%、2015年-2018年でも収入の約25%を占めている。
 放送権収入とスポンサー収入で、FIFAの全収入の約80%も占める。
 これに対し、入場料収入は10%程度でわずかな割合だ。
 このデータを見ると、FIFA World Cup は放送権料抜きには成立しないイベントになっていることがはっきりと分かる。

 2017年で見ると、放送権料収入は2016年の約2.4倍に大幅に増え、2017年の収入の20%増収の牽引車となった。
 放送権料収入が飛躍的に増加した理由は、サハラ砂漠の南部地域(Sub-Saharan)の42の国と地域にメジャーのメディアが放送権を新たに獲得したことや、ロシアの2つのメディアが2018FIFA Confideration CupとW杯)の放送権を取得、スペインやイタリア、ギリシャ、CCTV、アジア各国がサービスを拡大したことだとしている。
 スポンサー収入も好調で、カタール航空や、Hisense、Vivo(ヴィーヴォ)、Mengiu(蒙牛乳業)、Chaina PR(中国サッカー組織)などと1億4500万ドル(約160億円)で4年間契約したとしている。
 空前の汚職スキャンダルのダメージからFIFAを救ったのは、放送機関とスポンサー企業だった。











出典 FIFA FINANCIAL REPORT 2017

 これに対し、支出は、9億2300万ドル(約1015億円)で、サッカーの振興・教育費に4億7700万ドル(約約525億円)、支出の半分以上、約52%、競技会開催費に2億1900万ドル(約240億円)、FIFAの運営費1億6500万ドル(約180億円)となっている。
FIFA加盟の各国の連盟や参加クラブチームへの助成、女子サッカー振興への支援、レフリーの養成、スポーツ教育、人権尊重・差別防止運動、アンチドーピング、世界サッカー博物館などに支出している。
 発展途上国へのボールの寄付などのボランティア活動や支援や全世界の被災地への寄付なども行っている。

膨張体質の止まらないFIFA World cup 
 2026年大会は、米国を中心にカナダ、メキシコで共催し、出場国は、現状の32カ国から48カ国に増やすことが決まったが、関係者は「初出場の国や地域では盛り上がるだろうが、試合数が増えることでさらに高騰する」と危惧を抱く。
 FIFAは2019年-2022年の放送権料収入を35億ドル(約3850億円)としている。またJCの支払う放送権料も上がるのは必至である。
 日本戦の初戦、日本対コロンビア戦は、試合開始直後、一発レッドカード退場というアクシデントが起きて10人で90分戦うという不運に見舞われたコロンビアに2対1で劇的な勝利を手にした。事前の“劣勢”の予想は覆され、国民のFIFA World Cupへの関心は一気に盛り上がり、NHKのテレビ中継は、平均で48.7%、最高で55.4%の視聴率を記録し、今年放送された全番組の中で最高となった。
 さらに日本戦第2戦、セネガル戦を生中継した6月24日深夜の日本テレビ(後11時40分〜深夜2時10分)の平均視聴率は30.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。
 日曜深夜の生中継だったにもかかわらず、驚異的な数字が出た。
 瞬間最高視聴率は深夜0時44分に記録した37.1%。1−1で迎えた前半の終盤だった。
 事前の2018 FIFA World Cup Russiaに関心は日本国内では低調とされていたが、日本チームの活躍で一気にFIFA World Cup人気が高まり、テレビ中継を行う民放関係者もほっと胸をなでおろしているだろう。
 しかし、今回のW杯の中継オペレーションも、高騰した放送権料の負担がのしかかり、民放は“赤字”が必至とされている。
 テレビ東京は今回から撤退し、スカパー!はブラジル大会に引き続き、放送をしない。Jリーグの放送権を取得して積極策を展開しているDAZNもスカパー!も放送取得を見送った。放送権料の高騰は、日本のメディアに大きな影響を与えている。
 もっとも豊富な受信料収入に支えられたNHKだけは別格で、高額の放送権料も問題にせず、視聴者サービス重視の姿勢をとる。4K/8K高繊細放送やインターネット・サービスも充実させ、苦境の民放をしり目に、快調なオペレーションを続けNHKと民放の格差は開く一方だ。
 ますます膨張する大会規模、膨れ上がる開催経費、高騰する放送権料、FIFA World Cupの“バブル体質”は留まることを知らない。
 世界のメディアはどう対応するのであろうか。





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巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
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止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料
FIFAのスポンサーは中国企業が席捲







国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)





2018年6月20日
Copyright (C) 2018 IMSSR




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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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2018FIFAワールドカップ  開催費用 スタジアム建設費 負の遺産 赤字 経済効果

2018年07月28日 06時55分43秒 | ワールドカップ
巨額を投入したスタジアム建設
“負の遺産”に転落するのは必至




2018 FIFA World Cup Russia™ - OFFICIAL TV Opening (EXCLUSIVE)
FIFA TV/Youtube
Russia 2018: Magic is in the air
FIFA TV/Youtube

ロシア大会の開催費用は6780億ルーブル(約1兆2760億円)
 2018FIFAワールドカップ ・ロシア大会の4年前の2014年4月4日、ロシア・スポーツ省は、2018年のサッカーW杯の開催費用を改めて算定し、これまでより440億ルーブル(約13億ドル 約1230億円)減って、6200億ルーブル(約160億ドル 約1兆7300億円 2014年の為替レート)になると発表した。この内、スタジアム整備費は、約1250億ルーブル(約33億ドル 約3500億円 2014年の為替レート)に上るとしたが、最終的な費用は、現時点では、予想するのは困難だとしている。
 2018年4月26日、ヴィタリー・ムトコ・スポーツ相は、「スタジアムのほか、私たちは、選手の宿泊施設、通信設備、エネルギー施設など、300以上の施設を建設する予定だ。予算の着服や建設の遅滞などの問題が生じているが、いつものことなので気にすることはない。オリンピックやサッカーのワールドカップといったイベントは、多くの雇用を創出し、国を新たな水準へ至らせてくれる」と2018FIFAワールドカップ ロシア大会の準備は順調に行われていると語った。(出典 ロシア NOW)
 そして、ロシア国内における大会の経済効果は、2013年から23年までに最大で308億ドル(約3兆3800億円)に達するという試算を発表した。
 また最新のロシア・スポーツ省の開催費用の見込みは約6780億ルーブル(約1兆2760億円)になると明らかにし、4年前の試算の6200億ルーブルに比べて10%近く増えるとした。開催費用は、リオデジャネイロ大会では150億ドル(約1兆6500億円)とされ、ロシア大会はリオデジャネイロ大会よりは下回るとした。
 しかし、プーチン大統領は開催予算を少なく見せるために、W杯開催のために巨額の経費を投入して建設したいくつかの輸送プロジェクトを除外しているとされていて、ロシア大会の開催費用は不明確のままだ。
 ちなみのソチ冬季五輪では、史上空前の510億ドル(約5兆6100億円)を費やしたとされている。(2018年6月9日 AP/WSP)




開幕戦のロシア戦、決勝戦が行われる「ルジニキ・スタジアム」(モスクワ) 出典 Wikipedia


 ロシアは2018 FIFA World Cup Russiaの開催にあたって、国の威信にかけて8年間に渡って11の都市に12の競技場整備に取り組んだ。
 FIFAの基準では、収容4万人以上の会場が12カ所必要で、開幕戦と決勝戦は8万人以上・準決勝は6万人以上の収容人数が可能な競技場で行う事が決められている。
 W杯ロシア大会組織委員会の委員長を務めるアレクセイ・ソローキン氏によると、国家予算から4800億ルーブル(約127億ドル 約1340億円)が支出されたという。
 その内、建設済みのスタジアムで改修を行わないで使用するのは「オトクルィチエ・アリーナ」(モスクワ)と「カザン・アリーナ」(カザン)の2つ、既存設備だが改修工事を行うスタジアムが、「フィシュト」(ソチ)、「ツェントラーリヌィ」(エカテリンブルク)、「ルジニキ」(モスクワ)の3つ、残り7つのスタジアムが新設である。

 新設するスタジアムの内、準決勝が行なわれるサンクトペテルブルクの「ゼニト・アリーナ」の総工費は、当初計画より増額され618億円に上ると2016年6月、サンクトペテルブルクの当局は明らかにした。
 「ゼニト・アリーナ」は、格納式のフィールド、可動式の屋根を持ち、6万8000人を収容する屋内競技場。2006年の着工から10年で、予算は当初の6倍超に増大し、ついに「ゼニト・アリーナ」は世界で最もお金のかかるサッカー・スタジアムのひとつとなった。
 サンクトペテルブルク市長グリゴリア・ポルタフチェンコ氏によると、追加費用はFIFAおよび治安機関のセキュリティ要件の変化にともなうものだという。
 ロシアNOWは新設される12のスタジアムの建設費用を概算している。

▼ ゼニト・アリーナ(サンクトペテルブルグ 収容人数 69000人) 建設費用  618億円

▼ コスモス・アリーナ(サマラ 収容人数 45000人)       建設費用  264億円

▼ ポベーダ・アリーナ(ヴォルゴラード 収容人数 45015人)   建設費用  260億円

▼ ヴォルガ・アリーナ(ニジニ・ノヴゴロド 収容人数 44899人) 建設費用  276億円

▼ ロストフ・アリーナ(ロストフ・ナ・ドヌー 収容人数 44000人)建設費用  305億円

▼ カーリングラード・スタジアム(カーリングラード 収容人数 35000人)建設費用  264億円

▼ モロドヴィア・アリーナ(サランスク 収容人数 45000人)   建設費用  253億円

(出典 RUSSIA BEYOND)


ツェントラーリヌィ・スタジアム(エカテリングブルグ)出典 FIFA TV


フィシュト・スタジアム(ソチ) 出典 FIFA TV


モロドヴィア・アリーナ(サランスク) 出典 FIFA TV


ヴォルガ・アリーナ(ニジニ・ノヴゴロド) 出典 FIFA TV

FIFA World Cup Russia 2018 | All 12 Completed tadiums
FIFA TV/Youtube

 12のスタジアムのうち、「カザン・アレーナ」(カザン)は、改修工事も行わないでそのまま使用する。
 45000人の観客を収容できる「カザン・アレーナ」は、世界最高峰のスタジアムの一つであるロンドンの「アーセナル」の本拠地「エミレーツ・スタジアム」に似ているが、同じ設計会社が、カザンのスタジアムを設計している。
 建設費用は、143億ルーブル(約4億200万ドル 約462億円)だった。
 ブラジルで建設された収容人数がが同規模のスタジアムは、「アレーナ・ダス・ドゥーナス」(45000人収容)は2億500万ドル、「アレーナ・アマゾニア」(44000人収容)は2億6000万ドル、「アレーナ・パンタナール」(44000人収容)は2億5500万ドルと、かなり低コストで建設されている。

 オリンピックとパラリンピックの開閉会式が行われたソチの「フィシト・スタジアム」も、すでにサッカーの試合を行える。ニューヨークの「ヤンキー・スタジアム」やシカゴのオリンピック・スタジアム、「ソコンポ・スタジアム」などの設計を担当したポピュラス設計事務所が担当した。
 
 2018 FIFA World Cup Russiaの開幕戦や決勝戦が開催されるメインのスタジアム、「ルジニキ・スタジアム」は、1980年の五輪のメイン会場で、“伝説”のスタジアムと呼ばれ、モスクワのスポーツ競技場の象徴である。
 「ルジニキ・スタジアム」は、190億ルーブル(約5億3400万ドル 約587億円)の巨額の費用を投入して、サッカー・スタジアムに改修された。
 新しいスタジアムを一つ建設する経費をはるかに上回る空前の改修費用だ。

“不正”が絶えなかったスタジアム建設
 「W杯の開催費用が高すぎるという議論は開催が決定した直後からあった」とし、例えば、「サンクトペテルブルク・スタジアム」の建設費は67億ルーブル(約116億円)から480億ルーブル(約837億円)まで7倍以上に膨れ上がっている。その原因の一つが使途不明金、あまりにも巨額に上り、不正は告発されたが、国民はその事実に驚かなかったという。
また「カリーニングラード・スタジアム」も7億5200万ルーブル(約13億円)の使途不明金が横領として告発された。「サマラ・アレーナ」でも25億ルーブル(43億円)が消え、「ロストフ・アリーナ」でも横領があったとしている。

巨大なスタジアムは “負の遺産” 
 2018 FIFA World Cup Russiaのホスト国ロシアは、国の威信をかけて8年間に渡って開催準備に取り組み、新スタジアムの建設やインフラの整備などに巨額の費用を投入した。ロシア紙「versia」は大会後の維持費なども含めて、「ロシアはどれだけ損をするのか」と特集。大会後のスタジアム維持費などを考えると赤字が予想されていると警告した。
 コンサルティング会社がW杯に向けて建設されたスタジアムを分析し、一番の問題として指摘したのは、あまりにも巨大すぎるスタジアムの規模だった。
 FIFA(国際サッカー連盟)の条件に適合したスタジアムとはいえ、大会開催後の維持管理は大きな課題として残る。
 「例えば、2002年のW杯で使われたソウルのスタジアムは、今では最大でも35%しか集まらない。サッカーが国民の魂であるブラジルでも、一試合当たりのスタジアムの総収容集客率があまり高くない。ロシアもそうなるだろう」とロシア紙「versia」は警告している。

W杯開催後のスタジアム維持費は年間10億円…赤字の予想
 関係者の分析データに基づくと、W杯終了後、スタジアムによっては総観客数の10%から20%程度しか埋まらないと見られている。スタジアムの維持費は、4万から5万人規模のスタジアムでおよそ6億ルーブル(約10億円)。仮にスーパースターのコンサートやスポーツイベントに使用されたとしても、収入は4億ルーブル(約7億円)程度しか見込めないとしている。
 記事では、赤字分は国家予算から捻出しなければならないだろうと指摘。「実際、地方は政府にスタジアム維持費を捻出するように依頼した」と報じている。
 ロシアスポーツ省は4月初頭、スポーツ施設の維持を目的とした「レガシー・プログラム」を発表。2023年までの間に、スタジアム維持費として129億5000万ルーブル(約225億円)を拠出するとしている。
ロシア紙「versia」は、「2010年12月にW杯開催国に決定した時、ロシアには潤沢な資金があり問題なかった」とし、その結果、「レガシー・プログラム」は壮大なものとなったが、情勢が一変して一部のプロジェクトは頓挫したと伝えている。
(出典 Football ZONE web)

W杯開催の経済効果は「3兆円」
 2018年4月25日、ロシア大会の組織委員会は、今回のW杯がロシアのGDPに与える経済効果は、2013年から2023年までの間で、260億米ドル(約2兆8600億円)から最大308億米ドル(約3兆3880億円)に達するとしている。その要因に観光客の増加と大規模建設への投資を挙げている。
 “3兆円”と聞くと巨額のように感じるが、ロシアは経済規模が大きいので、ロシア全体に与える経済的な影響に鑑みるとあまり大きいとは言えないだろうという分析がある。(三井住友アセットマネジメント 調査部)
 ロシアの名目GDPは2017年で大体1兆5000億米ドル、300億米ドルはGDPの2%程度となる。これは10年間の合計なので、1年の効果を単純平均で求めればGDPの0.2%となり、ほとんど経済へのインパクトはないと考えるのが自然だ。
 米国の格付け機関のムーディーズは、ロシア大会の経済効果を検証し、「経済刺激効果はあるものの、その大半はインフラ関連投資であり、その果実の多くは既に実現している。また、ロシアの経済規模は大変大きいため、ワールドカップがもたらす経済的効果は国全体では限られたものとなろう」としている。
 一方、大会開催経費については、約約6780億ルーブル(約110億ドル 約1兆2千億円)と見積もり、一時は約7000億ルーブルまで暴騰したの経費を約1000億ルーブル程度圧縮するのに成功したとしている。
 2014年の当初計画、6200億ルーブル(約160億ドル 約1兆7300億円 2014年の為替レート)の水準に収まると見込んでいる。 
 しかし、巨額の費用をかけた整備された12のスタジアムは、大会後の利用計画のメドは立たず収支は赤字が予想され、とりわけ維持管理を任される地方財政を圧迫し続ける懸念が多い。

 国の威信をかけて開催するビックスポーツ・イベントが生み出す“負の遺産”、その構図は、五輪大会もFIFA World Cup大会もまったく同じである。
 巨大なスタジアムや競技施設を建設したのはいいが、大会後の利用計画もなく、維持管理費の重圧に耐えきれず、荒れ果てて打ち捨てられる競技施設が世界各地で後を絶たない。
 この構図を抜本的に変革する時が来ているのではないだろうか。





2018FIFAワールドカップ 国際放送センターはクロクス・エキスポに設置
VARが“勝敗の分かれ目”を決める その威力と功罪

Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia
巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
空前の汚職スキャンダルに見舞われたFIFA 再生は果たせるか?
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料
Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?
FIFAのスポンサーは中国企業が席捲
2022カタール大会 65億6000万ドル(約7200億円)の巨額収入 目を見張る新スタジアム建設 新機軸eスポーツ






国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)







2018年6月19日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
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2018FIFAワールドカップスポンサー料 中国企業 FIFAパートナー ワールドカップスポンサー リージョナルサポーター

2018年07月28日 06時53分16秒 | 2018FIFAワールドカップ
FIFAのスポンサーは中国企業が席捲




止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料
Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?
巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
2018FIFAワールドカップ 国際放送センターはクロクス・エキスポに設置
VARが“勝敗の分かれ目”を決める その威力と功罪

2022カタール大会 65億6000万ドル(約7200億円)の巨額収入 目を見張る新スタジアム建設 新機軸eスポーツ





 4年に1度開催されるワールドカップ大会は、FIFAにとって最大の収入源である。W杯の広告効果は五輪よりも高いとされていて、世界各国のスポンサー企業はW杯に最高レベルの広告価値を与えていた。五輪と違ってほぼすべての試合に世界各国の視聴者の関心が集まる。また、アフリカ、南米、アジアなどの新興国が多く含まれ、新たな市場として企業が注目して国や地域が対象に含まれているので企業にとっては魅力的だ。
 FIFAでは2014年ブラジル大会では、世界207の国と地域で合計9万8078時間のサービスが行われ、家庭で視聴した人は、決勝戦で約10億1300万人に上り、1試合平均の視聴者数は1億8670万人、全試合の合計は32億人(1分以上視聴)に上ったとしている。(FIFA Audience Summary 2017)
 そして、今回のロシア大会では全試合で34億人に達したとし、世界の人口の約76億人の約45%を占めているとしている。(出典 GlobalWebIndex)

 しかし、2015年に発生した空前の汚職スキャンダルで、FIFAへの信頼感が完全に失われている。
 国際サッカー連盟(FIFA)が得たスポンサー収入は、2014年ブラジル大会では16億2900万ドル(約1797億円)だったが、今大会では14億5000万ドル(約1600億円)に減少した。
 長年に渡ってFIFAの最高ランクのスポンサーに就いていたSONYや、エミレーツ航空(Emirates Airline)、自動車エンジンオイルのカストロール(Castrol)、タイヤや自動車部品のコンチネンタル(Continental)、製薬・医療機器のジョンソン&ジョンソン(Johnson & Johnson)は腐敗の発覚を受けて、2014年、スポンサー契約を打ち切った。巨大多国籍企業は苦労して築き上げた自社のブランドイメージが、“泥沼”に陥ったFIFAと一緒になって評価が下がることを恐れたのである。当然の帰結であろう。
 ちなみに日本企業では、1982年以来、キャンノン、富士フイルム、日本ビクター、セイコーがスポンサー企業になったことがあったが、SONYの撤退で日本企業は消えた。
 さらに2018年は、欧州で3番目の巨大なテレビ市場で、世界のサッカービジネスの中でも大きなウェイトを占めてきたイタリアで異変が起きた。
 予選でまさかの敗退をして、ロシア大会の出場権を得られなかったのである。
 2014年のブラジル大会では、イタリア放送協会とスカイイタリアがFIFAに支払ったテレビの放映権料は、約1億8千万ユーロ(約230億円)に達した。しかし、イタリア放送協会とスカイイタリアはW杯の放送から撤退してしまった。
 代わってPay-TVのMediasetが放映権を7800万ユーロ(約100億円)で獲得しが、この結果、FIFAの貴重な収入源の放送権料は1億ユーロ(約130億円程度減ったと思われる。
 一連の腐敗スキャンダルが露呈して、FIFAは収入が激減し、2015年から3年連続赤字が続き、累積赤字は約7億ドル(約770億円)に上っている。
 しかし、2018年6月21日ロシア大会では40億ドル(約4400億円)の収入、10億ドル(110億円)の純利益を上げることを目標に掲げ、財務状況を一機に改善したいとしている。

衰えていない世界のサッカー熱 サッカー市場は高成長
 ところが、FIFAの汚職スキャンダルで信頼感が喪失したのにも関わらず、世界のサッカー熱は決して衰えていない。
 ニールセンが6月12日に発表した年度ごとの世界サッカー調査報告によると、回答者の10人に4人以上が「自分はサッカーファン」と答えており、サッカーは今でも世界一の人気スポーツである。この調査の統計は世界18のスポーツ市場をカバーし、回答者の43%が2017年にサッカーに対して「興味があった」、「とても興味があった」と答えたという。
 膨大なサッカーファンが存在すれば、巨大なサッカー市場が生まれ、市場があればスポンサー企業はビジネス・チャンスをうかがって動き出すという構図が生まれる。

新会長インファンティーノ氏の改革
 ゼップ・ブラッター氏がスキャンダルで辞任したあと新たにFIFA会長に就任したジャンニ・インファンティーノ氏(Gianni Infantino)は、FIFAの組織改革と財政収支の透明化、各国協会(特に中小国)への分配金大幅アップ、ワールドカップ参加国の拡大(32から40へ=FIFA加盟国の19パーセントが本大会に出場できる)などを打ち出している。一連の改革には、スポンサーの拡充という新たな取り組みも含まれていた。
 これに対し、スポンサー企業は2016年2月、就任したインファンティーノ新会長に対し、改革の速やかな実行と、過去の汚職文化を一掃するための独立監視機関設置を求めた。
 米クレジットカード大手のビザ(Visa)はさらなる措置を講じなければ対応は不十分であるとFIFAに警告していた。
 ビザはウェブサイトに掲載された声明で、「われわれはFIFAの新たな指導部に対し、実行力に比重を置くよう求める。FIFA、ファン、スポンサー、そしてすべての関係者にとって最大の利益は、この改革を長期的に独立して監視する機関の存在である。われわれが期待しているのは、FIFAが迅速かつ直接的に透明性、信頼性、完全性が約束された文化の浸透に着手することだ」とコメントを公表していた。
 FIFAの新執行部の改革への実行力に対し、大手のスポンサー企業はまだ疑念を持っていることの現れである。
 FIFAの信頼性の回復はまだまだ時間がかかりそうだ。

最高位のスポンサー、「FIFAパートナー」は1億2000万ドル(約130億円)から1億8000万ドル(約200億円)
 FIFAのスポンサーには、最高位の「FIFAパートナー(FIFA Partner)」と「ワールドカップスポンサー(WORLDCUP SPONSORS)」、「リージョナルサポーター(Regional Supporters)」(2018年までは「ナショナル・スポンサー」)の三種類がある。
 この内、最高位の「FIFAパートナー」は、枠は6つで(2018ロシア大会だけの資格で1枠増やし7枠)スポンサー料は1億2千ドル(約130億円)から1億8000万ドル(約200億円)と言われている。FIFAのすべての試合・イベントにおける広告と周辺ビジネスの権利が与えられ、FIFAロゴを8年間(2大会分)使用できる。
 これまでのAdidas、CocaCola、現代・起亜自動車(Hyundai/Kia)、Visaに加えて、新たにロシアのエネルギー企業、ガスプロム(Grazprom)、Qtar Airways、中国のサッカーから映画、不動産などのコングマット企業、万達グループ(Wanda)が加わり、7社が最高位の「FIFAパートナー」になった。このうちガスプロムはロシア大会(2015年~2018年)だけの「FIFAパートナー」である。
 これに対し、2014年の汚職スキャンダルを受けて、2014ブラジル大会を最後にSONYは撤退し、エミレーツ航空やコンチネンタル(タイヤ・自動車部品)、ジョンソン&ジョンソン(製薬・医療機器)も撤退した。
 SONYは、2億8000万ドル(約310億円)という巨額のスポンサー料を支払って、2007年から2014まで8年間に渡って「FIFAパートナー」となっていた。
 この結果、FIFAは10億ドル(約1100億円)の減収になり、財政危機に陥った。

 次のクラスが「ワールドカップスポンサー」で8つの枠があり、スポンサー料は6800万ドル(約75億円)から1億ドル(約110億円)程度とされている。契約期間に行われるW杯と直接関連するスポンサーとしての権利を有し、FIFAロゴを4年間使用できる。
 Budweiser、Macdonard、海信(Hisense)、蒙牛乳業、Vivoが「ワールドカップスポンサー」になっている。
 「FIFAパートナー」と「ワールドカップスポンサー」で、合計14枠あるが、ロシア大会ではようやく12枠が埋まったが、まだ2枠空いている。
 
 最後が以前の「ナショナルスポンサー」(National Supporters)で、開催国の企業に限り、自国での開催期間中の試合・イベントにおいてのみ広告と周辺ビジネスを行えると規定される。
 今回のロシア大会から、「ナショナルスポンサー」に代わって「リージョナルサポーター」が初めて導入され、スポンサーシステムの最下位に位置づけられた。欧州、北米、南米、中東、アジアの5つの地域に分けて、それぞれに地域に5社づつ、20枠を設けた。開催期間中のLED掲示板での広告、チケットの優先的配分、所在地域におけるブランド広告権を有する。枠も20に拡大された。このスポンサー料は、公表されていて2000万ドル(約22億円)である。
 現在の「リージョナルサポーター」は、アジア地域では帝牌(Diking)、稚迪(Yadea)、Luci、ヨーロッパ地域では、ロシアの振興銀行、アルファ銀行、ロシアの鉱山企業、アルサロ、電話・通信企業、ロステレコム、ロシア鉄道、アフリカ地域ではエジプト観光局となっている。
 しかし「リージョナルサポーター」になったのはロシアと中国企業だけにとどまった。
 スポンサーの枠は過去の大会より増えて34になったが、スポンサーになった企業は19社だけで、15の枠が埋まらなかった。
 欧米や日本の企業は関心を示さず、空前の汚職スキャンダルの影響は未だに解消されていない。




「FI FIFA Worldcup Sponsors」になった中国の家電メーカー、海信(Hisense) 液晶テレビでは世界第三位 4Kテレビに力を入れている


「FIFA Partner」になった中国の不動産コングロマリットの万達(Wanda)グループ スタジアムの広告には万達(Wanda)が目立つ

中国企業の大躍進
 空前の腐敗スキャンダルで崩壊したスポンサー・システムを支え、空白のスポンサー枠を埋めたのは、中国企業だった。主要スポンサー枠、17枠の内、過去最高の7枠を手に入れ、世界に存在感を誇示した。
 不動産コングロマリットの万達グループは「FIFA Partner」に、食品の蒙牛乳業、家電の海信(Hisense)、スマートフォンのvivoは、「FI FIFA Worldcup Sponsors」になった。
 また紳士服の帝牌(Diking)とバイクメーカーの稚迪(Yadea)、VR技術企業の指点芸境(Luci)がアジアリージョナル(地域)の「Regional Supporters」になった。
 7社のうち、最も早くスポンサーになったのは大連万達グループで、2016年に年間スポンサー料1億5千万ドル(約165億円)支払い「FIFAパートナー」になった。万達グループは、ハリウッドに映画製作に投資をしたり、世界最大の映画村を建設したりして、注目を集めている新興企業である。
 蒙牛は、アルゼンチンのスーパースター、メッシをイメージキャラクターに起用するなど意欲的だ。
 海信(Hisense)は、4Kハイブリッドテレビで欧米市場への進出を狙っている。
 海信(Hisense)は1億ドル(約110億円)、蒙牛は5000万ドル(約55億円)のスポンサー料を支払ったと伝えられている。
 この結果、中国企業は、ロシア大会のスポンサー企業の約半分を占め、市場調査会社ゼニスインターナショナルがまとめた統計によると、今回のW杯開催中の中国企業の広告料は8億3500万ドル(約920億円)に達し、世界一になるという。米国の4億ドルの2倍で、ロシアの6400万ドルを大きく引き離す。
 新華社通信は「中国企業はサッカーW杯の新たな『金主』(主な出資者)になった」と誇らしげに伝えた。

 中国の習近平国家主席は、2008年北京五輪大会のサッカー競技場を視察した際、フリーキックをして見せるなど大のサッカーファンとして知られている。中国は、▽本大会への出場、▽W杯の開催国になる、▽世界制覇を果たすという3つの目標を掲げ、2049年の中国建国100年に合わせて2050年までにW杯優勝を果たすとしている。

 W杯は、スポンサーにとってみれば自社のブランドの認知度を高める絶好の機会である。
 2002年日韓共催W杯に向けて、2010年、韓国の現代自動車(Hyundai)は15億ユーロ(約1875億円)という天文学的なスポンサー料を支払って、12年契約でワールドカップスポンサーになり、2010年の米国市場での販売量は40%も増加し、ブランド認知度は大会前の32%から67%に跳ね上がったという。今回、中国企業が名乗りを上げた狙いも、こうした計算があったからに違いない。
 2018FIFA ワールドカップは中国企業に支えられてようやく成立しているといってもいいだろう。
 

ロシア大会のFIFAの収入は好調 61億ドル
 FIFAが最近行ったレビューによると、ロシア大会のFIFAの収入は61億ドル(約6710億円)で、2014年ブラジル大会より13億ドル(約1430億円)の増収となり、FIFAのこれまでの予測を約10%上回ったしている。(New York Tomes) 
 増収の主な原因は、中国企業のスポンサー料である。
 スポンサー料収入は、16億5000万ドル(1815億円)を確保し、FIFAの予想を2億ドル(220億円)も上回った。
 今後も中国の動向は台風の眼になりそうな気配だ。
 

* ススポンサー料はすべて推定

(参考 BBC NEWS 2018年06月14日 「人民網日本語版」2018年6月15日 The Telegraph 2015年5月29日 AP/Washington Post 2018年6月8日 FIFA Finacial Report 2017)







2018FIFAワールドカップ 4K/HDRサービスに乗り出したHBS
国際放送センターはクロクス・エキスポに設置

Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia
巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
空前の汚職スキャンダルに見舞われたFIFA 再生は果たせるか?
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料
Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?






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2018FIFAワールドカップ  視聴率 フォックス スペイン語放送 テレムンド フォックスの悪夢

2018年07月09日 20時45分28秒 | 2018FIFAワールドカップ
Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会


▼ 瀬戸際のFox 一次リーグ初戦の視聴者数は44%減
▼ 背水の陣 史上最大の放送計画
▼ ワールドカップの視聴率は意外に好調
▼ 牽引車はスペイン語放送のTeremondo
▼ 米国のサッカー人気を支えているのは、米国内のスペイン語人口の増加
▼ スペイン本国抜いて米国が世界2位に
▼ Foxの英語放送も、視聴率は回復傾向
▼ 決勝リーグに入り、視聴率は好調を維持


瀬戸際のFox 一次リーグ初戦の視聴者数は44%減
全米の視聴率調査会社のNielsenのデータによると、2018年のFIFAワールドカップの一次リーグ・第1戦では、米国のテレビ視聴数は2014年ブラジル大会に比べて約44%減少した。
 2018FIFAワールドカップの放映権を核としたのは、Fox(英語放送)とNBCユニバーサルのTelemundo(スペイン語放送)(NBC Iniversal/Comcastが所有)、その双方とも同じように下落している。
 Foxの平均視聴者数は188万人で、2014年ブラジル大会のESPN/ABCの平均視聴者数は355万人で大幅に減少している。
 Telemundoの中継の平均視聴者数が187万人で、4年前のUnivision(スペイン語放送)の視聴者数は330万人だった。


出典 2018‎年‎6月‎22‎日 Bloomberg

 2つのネットワークは、2011年、ESPN/ABC(英語放送)とUnivision(スペイン語放送)と放送権獲得を巡って熾烈な争いを演じ、 12億ドル(約1320億円)という巨額の放送権料を支払って、2018ロシア大会と2022カタール大会の放送権を獲得したが、今、激しい逆風に直面している。
 最も深刻なダメージは、米国チームがロシア大会の出場権を逃したことである。またロシアの米国タイムゾーンは、2014ブラジル大会のタイムゾーンに比べて条件が悪いのもマイナス要素だ。

▼ Telemundo
アメリカ合衆国 フロリダ州 マイアミに本部のあるスペイン語専門放送局。
NBC Universalの傘下で、親会社は全米で最大のCATV企業、Comcast。
 スペイン語放送の競争相手はUnivision。

 スポーツメディア・コンサルタントのChris Bevilacqua氏によると、2018FIFAワールドカップ 中継は、視聴者の急速なテレビ離れの影響を受けている可能性もある指摘している。
 テレビ離れの原因は、視聴者のケーブル・テレビからNetflixやamazon、huluなどのインターネット・動画サービス(OTTサービ)に向かう流れが加速したことに加えて、Youtubeなどのソーシャルメディアの普及とされている。
Bevilacqua氏は「この数値は必ずしもショックではない。こうした流れは米国内のネットワークに当然起こるだろうと誰もが予想していた」とした。

 Fox Sportsの戦略担当の副社長、Michael Mulvihill氏は、「テレビ離れはインターネット・動画サービス(OTTサービス)の視聴者にも当てはまるだろう。パブリック・ビューイングやバーなどで視聴者が見るようになっているのでそれに期待している」とした。

 米国のチームが予選で敗退したことで、FOXは広告主に保証した視聴者数を20%も下げ、ブルームバーグは広告売上額の予測を約2,000万ドル(約22億円)下方修正した。
 Fox SportsのMulvihill氏は、いまのところは広告主からの反応は肯定的だとしたが、同社は12人のキャスターのうち4人だけをロシアに派遣し、他の8人がロサンゼルスのスタジオから中継に参加するスキームに切り替え、経費削減を図っている。
FoxとTelemundoは、出場しない米国チームに代わって、メキシコやブラジルなどの南米チームに注目し、スペイン語系市民の視聴者の獲得に乗り出している。
 一次リーグの最初の16試合でフォックスが最も多くの視聴者数を獲得した試合は、ブラジル対スイス戦で、6月17日の日曜日の午後(東海岸)に、400万人の観客を獲得した。
 もっとも、4年前のブラジル大会では、ESPNが放送した米国対ガーナ戦は970万人の視聴者数を記録していた。
調査会社の副社長、Lia Silkworthは、Telemundoを最も注目されているスペイン語ネットワークとしてランク付けして高い評価を与えている。

出典 World Cup Ratings Are a Complete Nightmare for Fox and Comcast
2018年6月22日 Bloomberg


背水の陣 史上最大の放送計画
 Foxは2018FIFAワールドカップ ロシア大会の放送に際して、野心的な計画を立てていた。米国の予選敗退が決まった2週間前、Foxは「前例のない」放送計画を発表し、2014ブラジル大会でABCが放送した試合数を大幅に上回る全64試合を中継し、合計350時間の番組制作を行うことを明らかにした。
 「これまで4大会のワールドカップに比べて最高のサービスを保障する」と胸を張り、「サッカー人気は引き続き米国内で高まっていて、米国内の視聴者は、米国以外の多くの国々の試合に興味を持っている」と強気だ。
 Foxは、モスクワの象徴的な赤の広場に2階建ての最新鋭のサテライト・スタジオの建設を計画している。
ちなみに2014ブラジル大会では、ESPNとESPN2は54試合を放送した。

 しかし米国チームが出場を逃したことで、2018FIFAワールドカップ の視聴者が減少する可能性が高い。さらにモスクワと米国東海岸は7時間の時差があり、熱心なサッカーファンは引き付けるが、一般のカジュアルな視聴者を獲得するのは困難だと予想されている。
 「タイムゾーンの影響は大きく、最初は一般のカジュアルな視聴者を得るは難しいので明らかにFoxにとってはダメージだ。しかし、全体としてはそれほど大きなダメージではないだろう」と広告アナリストのBrian Wieser氏は楽観視している。
2014年ブラジル大会は、米国の視聴者にとってライブ中継を見るには、はるかに便利で、東海岸からわずか1時間の時差で楽しむことができた。
 ニールセンによると、男子ワールドカップ決勝戦で、ドイツがアルゼンチンに勝ち優勝杯を手にした試合は、視聴者数は平均で1732万人を記録した。
 また、たとえ米国がモスクワ大会の出場したにしても、昨年の大統領選挙でロシアが干渉したという疑惑の捜査が進められている中で、ワシントンとモスクワの緊張関係はロシア大会の人気に水を差すだろう。
Foxは、極めて厳しい状況の中で、視聴者数を確保し、莫大な放送権料に見合う広告料収入を確保しなければならいという難題に直面する。

ワールドカップの視聴率は意外に好調 牽引車はスペイン語放送のTeremondo
 米国チームが出場しないモスクワ大会は、米国内での中継番組の視聴率は惨憺たる結果に終わると予想されていた。しかし、一次リーグが終わって、予想外に視聴率は健闘している。
 その牽引車はメキシコの活躍である。6月17日、一次リーグの初戦で、メキシコは2014年ブラジル大会の覇者、ドイツに1-0で勝利するという大金星を上げた。
 この試合を放送したFoxのFS1チャンネルは450万人の視聴者を獲得し、NBCユニバーサルのTelemundo(テレムンド・スペイン語放送))チャンネルの視聴者数は650万人を記録し、1994年以来、最も多くの視聴者(米国の試合を除く)を獲得した。
この視聴者数は、2014年ブラジル大会の米国対ポルトガル戦をESPNが中継した際に獲得した1,732万人視聴者には及ばないが大健闘したと言っても良い。 
 日本を含めどこの国でも同じだが、自国のチームの試合の視聴率はまったく別格だから比較しても無意味だ。
6月22日、メキシコは、一次リーグの第2戦で、今度は韓国に2-1で勝利したが、この試合でスペイン語放送の歴史のなかで最も視聴者を集め、Telemundoも“勝利”したようである。
 この試合で、メキシコ代表のエース・ストライカー、エルナンデスは、自らの持つ最高得点記録を書き換え、50得点とした。メキシコはドイツ戦に続き2連勝し、決勝リーグへの進出を決めた。
 NielsenのデータとAdobe Analyticsのデジタルデータによると、Telemundo、Telemundo Deportes.com、Telemundo Deportes En VivoとNBC Sportsアプリ全体で、この試合の合計平均視聴者数は720万人を記録した。
 Telemundoのテレビだけの平均視聴者数は660万人で最高記録を塗り替えた。
 またTelemundo Deportesのデジタルサービスでは、合計10億分のライブストリームを配信し、Telemundo Deportesにとってマイルストーンとなった
 さらに同時ライブストリームは665,000記録し、NBC Sports Digitalの歴史のなかで、スーパーボウル以外で最大の視聴者数を記録した
また平均分視聴者(Average minute audience:AMA)は574,000人で、過去最高のスペイン語放送のAMA視聴者数を記録した。
 Telemundoの経営陣はこの結果に大いに満足しているという。


米国のサッカー人気を支えているのは、米国内のスペイン語人口の増加 スペイン本国抜いて米国が世界2位に
 Telemundoの好調さの要因は、米国内のスペイン語圏の国からの移民の増加で、サッカー人気を支える原動力になっている。その中心になっているのはメキシコからの移民で、ヒスパニック系と呼ばれる米国市民である。
 米国のスポーツ・ビジネスの専門家は、「米国はサッカー国家か? 明らかにYesだ」と述べ、「米国への移民の増加で、20代、30代、40代の若者たちにとってサッカーは第1位のスポーツになった。スポーツ界に“嵐”が起きている」と指摘している。
2015年7月4日、 スペインに本部がある非営利機関「セルバンテス文化センター」は米国がスペイン語人口でメキシコに次ぎ世界2位に浮上したとの新たな報告書を公表した。
 米国でスペイン語を母国語とする人口は約4100万人、バイリンガル人口は約1160万人、スペイン語人口は合計5260万人となったとした。
 報告書は米国勢調査局や他の国々のデータに基づいてまとめたとしている。
 スペイン語圏の国は、世界第一位がメキシコで、総人口1億2200万人、続いてスペインで総人口は4770万人、コロンビアが4620万人となっている。
 いまや世界で第二のスペイン語圏の国は、米国なのである。
 さらに、報告書では、米国勢調査局の数字を引用し、現在は米国の総人口は3億1890万だが、その内、米国のスペイン語人口は2050年までに1億3280万人に達し、メキシコも抜いて、世界第一のスペイン語人口を抱える国になると予想した。 
米調査機関ピュー・リサーチ・センターの最近の報告書によると、米国内のヒスパニック(中南米系)人口の昨年の伸び率は2.2%と減速したものの、総人口の17.4%を占めた。1995年から2000年にかけての平均増加率は4.8%、10年から14年にかけては2.2%だった。
 伸び率の鈍化は、メキシコを中心にした中南米諸国からの移民減少が要因と指摘した。
 トランプ大統領は、メキシコ移民に対して厳しい姿勢を示し、メキシコ国境3200キロ沿いに「国境の壁」を建設すると公約し、アメリカ下院は2017年7月、メキシコとの国境沿いに「壁」を建設する費用16億ドル(約1780億円)を含む歳出法案を可決している。また、メキシコ国境から不法入国した移民を逮捕し、訴追・収監するという「ゼロトレランス」(不寛容)政策を始めた。トランプ政権は11月の中間選挙に向けて、強硬姿勢を保つことは間違いない。
(出典 2015年7月4日 CNN)

Foxの英語放送も、視聴率は回復傾向
 6月17日のドイツ - メキシコとブラジル - スイスの試合は、序盤戦でFOXのスポーツ専門CATVチャンネル、FS1が、最も多くの視聴者を獲得し、ワールドカップ中継は、ゴルフのUSオープンの中継と相まって、ESPNのメインチャンネルよりもユニーク・ビューでFS1が上回った。
2018年6月28日、一次リーグの11日間を通じて、2018年のFIFAワールドカップのFOXとFS1の試合を次のように総括した。

・一次リーグの平均視聴者数は、過去4回のワールドカップの31%アップした。(米国の試合を除く)
・モスクワ大会と同じタイムゾーンで開催された2010年のワールドカップ・一次リーグの平均よりも+ 20%アップ(米国の試合を除く)した。

 6月23日のポーランド対コロンビア戦で、コロンビアが3-0の勝利した試合は、日曜日に最も視聴者数を得た試合で、Foxの放送ネットワークとデジタル・ストリーミングの合計視聴者数は455万5000人、 Foxの放送ネットワークだけで438万4000人の視聴者を獲得した。米国の試合を除いた2010年の一次リーグ平均よりも+ 135%、米国の試合を除いた2014年の一次リーグ平均よりも+ 69%高い数字を記録した。
Fox SportsのMulvihill氏は予想以上に、2018FIFAワールドカップ は強力なコンテンツだったとしている。
 一次リーグの最初の段階では、過去4回の大会での平均視聴者数と比較して32%増加(過去4大会の米国の試合を除く)したとしている。

 一次リーグで最も視聴者を獲得したのは、6月23日に放送したドイツ 対スウェーデンの試合で約540万人(ストリーミングを含めると約564万人)の視聴者を集め、1990年以来、米国で最も視聴されている英語放送の中継番組(米国戦を除く)になった。
この試合の世帯視聴率4.2%(テレビ視聴率12%)を記録した。
 また6月22日のメキシコ対韓国戦では、フォックス・スポーツは464万6000人(IPテレビでは443万3000人)の視聴者を獲得した。メキシコの大健闘は、米国チームに代わって、視聴者を引き付けている。
しかし、Foxの中継制作体制は、経費節減で、ロシアにサッカー中継のキャスターを派遣せず、米国内のFoxのスタジオで放送を行ったのである。 “penny-pinching”、“しみったれた”二流のスポーツ中継だと厳しい批判が浴びせられている。
 さらにFS1の夜間のハイライトショーも批判を浴びている。アルゼンチンのフェルナンド・フィオーレをキャスターに起用したが、番組の流れを悪くしていると評判が悪い。プレミアリーグのNBCSNのスタジオショーに比較してお粗末すぎるとされている。

 Fox Sportsの戦略担当副社長のMike Mulvihill氏は、「視聴者数の低水準の数字は心配してない。我々はワールドカップの最初の8日間のパフォーマンスに“かなり満足”している。特にFS1のケーブルテレビで見ている視聴者数の数字に満足している」と語った。
Foxは、モスクワ大会の全体の視聴率に対して強気の姿勢を示し、スペイン語放送のパートナーのテレムンドもこれからさらに回復するだろうと楽観視している。   
F oxは「空が落ちている “sky is falling” panic”」というパニックモードにはなく、決勝ラウンドを、期待を持って迎えるとした。

決勝リーグに入り、視聴率は好調を維持
 6月30日、決勝リーグ戦1回戦、ウルグアイがポルトガルに勝利した試合を放送したフォックス・スポーツ(Fox or Fox Sports 1)は、680万人の視聴者を獲得し、2018年ロシア大会で最大の視聴者数を得た。
また世帯視聴率でも、4.4%(テレビ視聴世帯は12%)記録した。(DEADLINE Hollywood 2018年7月2日)
ちなみにテレビを設置している世帯数は全米で1億1960万人(2017/2018年)である。 
もっとも、2014年ブラジル大会の決勝ではドイツがアルゼンチンを1-0で勝ち優勝杯を手にした試合では、ABCは1732万人の視聴者数を獲得し、この記録はいまだに破られていない。
 サッカー中継全体で見ると、2015年の女子ワールドカップでチームUSAが日本に勝利した試合で、2540万人の視聴者数を獲得し、米国で最も視聴されたサッカー中継(英語放送)となっている。
 米国チームの試合は、他の試合に比べて圧倒的な視聴者数を誇る。
 米国チーム抜きのモスクワ大会のダメージは大きいことに変わりはない。
 総額約12億ドルの巨額の放送権料を支払って、獲得した2018FIFAワールドカップ 、FoxとTelemundoにとってどんな結果がでるのか、大いに注目される。





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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)






2018年7月8日
Copyright (C) 2018 IMSSR



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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
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2018FIFAワールドカップ 放送予定 NHK 民放

2018年07月02日 20時10分32秒 | 2018FIFAワールドカップ
2018FIFAワールドカップ ロシア大会 NHK・民放 放送予定


Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?


グループリーグ
▼ 6月14日(木)
24:00 ロシア vs サウジアラビア(NHK/NHK BS1)

▼ 6月15日(金)
21:00 エジプト vs ウルグアイ(フジテレビ/NHK BS1)
24:00 モロッコ vs イラン(NHK/NHK BS1)
27:00 ポルトガル vs スペイン(NHK/NHK BS1)

▼ 6月16日(土)
19:00 フランス vs オーストラリア(NHK/NHK BS1)
22:00 アルゼンチン vs アイスランド(NHK/NHK BS1)
25:00 ペルー vs デンマーク(フジテレビ/NHK BS1)
28:00 クロアチア vs ナイジェリア(日本テレビ/NHK BS1)

▼ 6月17日(日)
21:00 コスタリカ vs セルビア(フジテレビ/NHK BS1)
24:00 ドイツ vs メキシコ(NHK/NHK BS1)
27:00 ブラジル vs スイス(NHK/NHK BS1)

▼ 6月18日(月)
21:00 スウェーデン vs 韓国(NHK/NHK BS1)
24:00 ベルギー vs パナマ(フジテレビ/NHK BS1)
27:00 チュニジア vs イングランド(NHK/NHK BS1)

▼ 6月19日(火)
21:00 コロンビア vs 日本(NHK/NHK BS1)
24:00 ポーランド vs セネガル(NHK/NHK BS1)
27:00 ロシア vs エジプト(日本テレビ/NHK BS1)

▼ 6月20日(水)
21:00 ポルトガル vs モロッコ(テレビ朝日/NHK BS1)
24:00 ウルグアイ vs サウジアラビア(NHK/NHK BS1)
27:00 イラン vs スペイン(日本テレビ/NHK BS1)

▼ 6月21日(木)
21:00 デンマーク vs オーストラリア(フジテレビ/NHK BS1)
24:00 フランス vs ペルー(NHK/NHK BS1)
27:00 アルゼンチン vs クロアチア(日本テレビ/NHK BS1)

▼ 6月22日(金)
21:00 ブラジル vs コスタリカ(テレビ朝日/NHK BS1)
24:00 ナイジェリア vs アイスランド(NHK/NHK BS1)
27:00 セルビア vs スイス(NHK/NHK BS1)

▼ 6月23日(土)
21:00 ベルギー vs チュニジア(フジテレビ/NHK BS1)
24:00 韓国 vs メキシコ(テレビ朝日/NHK BS1)
27:00 ドイツ vs スウェーデン(TBS/NHK BS1)

▼ 6月24日(日)
21:00 イングランド vs パナマ(NHK/NHK BS1)
24:00 日本 vs セネガル(日本テレビ/NHK BS1)
27:00 ポーランド vs コロンビア(TBS/NHK BS1)

▼ 6月25日(月)
23:00 ウルグアイ vs ロシア(TBS/NHK BS1)
23:00 サウジアラビア vs エジプト(NHK/NHK BS1)
27:00 イラン vs ポルトガル(NHK/NHK BS1)
27:00 スペイン vs モロッコ(日本テレビ/NHK BS1)

▼ 6月26日(火)
23:00 デンマーク vs フランス(テレビ朝日/NHK BS1)
23:00 オーストラリア vs ペルー(NHK/NHK BS1)
27:00 ナイジェリア vs アルゼンチン(NHK/NHK BS1)
27:00 アイスランド vs クロアチア(日本テレビ/NHK BS1)

▼ 6月27日(水)
23:00 メキシコ vs スウェーデン(TBS/NHK BS1)
23:00 韓国 vs ドイツ(NHK/NHK BS1)
27:00 セルビア vs ブラジル(NHK/NHK BS1)
27:00 スイス vs コスタリカ(フジテレビ/NHK BS1)

▼ 6月28日(木)
23:00 日本 vs ポーランド(フジテレビ/NHK BS1)
23:00 セネガル vs コロンビア(NHK/NHK BS1)
27:00 パナマ vs チュニジア(日本テレビ/NHK BS1)
27:00 イングランド vs ベルギー(NHK/NHK BS1)

決勝トーナメント1回戦
▼ 6月30日(土)
23:00 C組1位 vs D組2位(TBS/NHK BS1)
27:00 A組1位 vs B組2位(NHK/NHK BS1)
▼ 7月1日(日)
23:00 B組1位 vs A組2位(TBS/NHK BS1)
27:00 D組1位 vs C組2位(テレビ朝日/NHK BS1)
▼ 7月2日(月)
23:00 E組1位 vs F組2位(NHK/NHK BS1)
27:00 G組1位 vs H組2位(NHK/NHK BS1)
▼ 7月3日(火)
23:00 F組1位 vs E組2位(テレビ朝日/NHK BS1)
27:00 H組1位 vs G組2位(NHK/NHK BS1)

準々決勝

▼ 7月6日(金)
23:00 未定 vs 未定(TBS/NHK BS1)
27:00 未定 vs 未定(TBS/NHK BS1)
▼ 7月7日(土)
23:00 未定 vs 未定(NHK/NHK BS1)
27:00 未定 vs 未定(NHK/NHK BS1)

準決勝
▼ 7月10日(火)
27:00 未定 vs 未定(テレビ朝日/NHK BS1)
▼ 7月11日(水)
27:00 未定 vs 未定(NHK/NHK BS1)

3位決定戦
▼ 7月14日(土)
23:00 未定 vs 未定(テレビ朝日/NHK BS1)

決勝
▼7月15日(日)
24:00 未定 vs 未定(NHK/NHK BS1)



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2018FIFAワールドカップ 国際放送センターはクロクス・エキスポに設置
VARが“勝敗の分かれ目”を決める その威力の全容

Ultra HDとVRサービスに挑むBBC 2018 FIFA World Cup Russia
巨額を投入したスタジアム建設 “負の遺産”に転落するのは必至
空前の汚職スキャンダルに見舞われたFIFA 再生は果たせるか?
止まらないW杯の膨張体質を支える放送権料 FIFAの収入の約62%は放送権料
Foxの“悪夢” 米国チーム抜きのモスクワ大会 視聴率は?
FIFAのスポンサーは中国企業が席捲






2018年6月25日
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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
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