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東京オリンピック 水質汚染 トライアスロン お台場海浜公園 マラソンスイミング

2023年01月04日 17時29分13秒 | 東京オリンピック
水質汚染深刻 お台場海浜公園 トライアスロン・マラソン水泳


深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 東京都に4回目目の「緊急事態宣言」 「無観客」1都3県・北海道・福島

東京オリンピック 開会式 異例の開会式に 小山田~賢吾氏(楽曲担当)辞任、小林賢太郎氏(演出チーフ)解任




台風8号、明日未明東北地方に上陸へ 強い雨のおそれ
 気象庁によると、 関東の東にある台風8号は、27日午前6時には千葉県銚子市の南東230キロの海上をゆっくりした速さで進み、このあと進路を北寄りに変えて27日夜遅くから28日未明に東北に接近し、上陸する見込みである。
 東北や関東甲信ではしだいに風や雨が強まっていて、28日にかけて台風の中心から離れた場所でも大雨になるおそれある。
 2020東京五輪大会のトラアスロン競技は、7月26日に男子が開催され、今日(7月27日)女子がお台場海浜公園で開催された。
 今日の女子トラアスロン競技は、台風8号の影響による風と雨の中で、開始時間を遅らせてスタートし、バミューダのF.ダフィー選手が優勝して競技は無事終了した。
 大会事務局は、7月26日の水温は「30度」、7月27日は「28度」と発表した。しかし、最も懸念されている水質については検査データの発表がない。 
 台風8号の影響で、断続的強い雨が降り、27日朝までの24時間に降る雨量は多い所で、関東甲信で80ミリが予想されていた。
 東京都が豪雨に襲われると、隅田川沿いの下水処理場は下水処理能力を超えると、未処理の下水を隅田川に放出する。その影響でお台場海浜公園の水質が急速に悪化する可能性が大きい。東京都は早急に、トライアスロン(スイム)とマラソンスミングの会場となるお台場海浜公園の水質検査を実施して公表すべきである。
 猛暑下では水温の上昇も問題で、競技実施海域の海域の水温は、「31度C」が安全基準とされている。7月26日の水温はギリギリの「30度」。お台場の競技海域は、「汚染水」の流入を抑えるために2重の「水中スクリーン」が張り巡らされているが、この影響で海域が「温水プール」状態になり、夜間でも水温が下がらない可能性が大きい。国際競技団体は、安全基準を超えた高水温下での競技実施を避けるために、2019年12月、異例の早朝6時30分競技開始を決めている。
 8月4日、同じお台場海浜公園でオープンウォータースイミング(女子)が開催された。台風8号の接近以後は、雨は降っていなので水質汚染は進んでいないが、これまでに流れ込んだ未処理の下水の影響は残っていると思われる。選手はこの中を10キロメートルも泳がなければならない。4日は海水温は29.3度と発表され、依然として高水温は続いて選手への悪影響が懸念される。8月5日は、オープンウォータースイミング(男子)が朝6時30分スタートで開催される。懸念は海水温である。



台風8号  出典 tanki.jp


女子トライアスロン(スイム) お台場海浜公園 トラアスロン競技(男女 7月26日/7月27日)は、水温と水質は問題ないとして「無事」開催された
出典 IOC MEDIA



ロケーション抜群 お台場海浜公園
 「お台場海浜公園」は、東京湾に数多くある海浜公園の中でNO1のロケーション。とにかく眺めは抜群。
 ここで五輪大会のトライアスロンやマラソンスイミング開催される。キャッチフレーズは「史上最も都会的コース」である。国際トラアスロン連盟は「お台場海浜公園」を会場にすることを熱望したという。 
 レインボーブリッジが目の前に広がり、対岸の都心の高層ビル街、東京タワー、晴れていると真っ青な空と海が広がる。海辺にはきれいな砂浜が続く。砂浜は人工的に造成されたものだ。向かいの島は、江戸時代末期、ペリー黒船襲来に備えて建設されたお台場の一つ、砲台が設置されていた。今は史跡になっている。とにかく最高のロケーション。
 夏には花火大会が開催されたり、今年の1月下旬には「お台場海浜公園」の会場に「五輪のシンボルマーク」を設置された。夜間はライトが点灯され、五輪大会のランドマークになっている。
 素晴らしいビーチだが、実は深刻な水質汚染問題を抱えている。
 レインボーブリッジ向こう側に隅田川の河口があり、大雨になると大量の未処理の下水道排水が東京湾に流れ込む。かつての東京湾の水質汚染の原因は工場排水だった。今は工場排水は規制が厳しく強化され、水質汚染の主役は、生活排水となった。
「お台場海浜公園」の海は下水道排水が原因の深刻な水質汚染に襲われている。


レインボーブリッジや都心の高層ビル街が見渡せる景観は素晴らしいが… 筆者 撮影 2018年11月

海水浴場として認められていない「お台場海浜公園」
 実は、「お台場海浜公園」は東京都の条例で、水質基準が満たされていないために、海水浴場として認められていないのである。
 海面に顔をつけて泳ぐのは禁止で、足だけを海水に入れるいわゆる「磯遊び」を楽しむ砂浜になっている。
 港区は、この「お台場海浜公園」を区民の憩いの海浜公園にしようと力を入れている。「泳げる海、お台場」の実現が悲願なのである。
 かつては貯木場だった入り江に、昭和40年代から海浜公園としての整備が行われ、1996年(平成8年)に現在の形でオープンした。
 2013年に東京が2020夏季五輪の開催地に選定され、お台場海浜公園でトラアスロンやマラソンスイミングの会場になることが決まると、港区ではお台場海浜公園の整備を更に加速した。
 2017年(平成29年)から毎年、夏の1週間程度、期間を区切って特別に海水浴場にするイベント、「お台場プラージュ」の開催を始めた。去年も8月10日から9日間開催し、砂浜は多くの市民でにぎわった。た。その他、トライアスロンなど特別なイベント開催時は、遊泳を認めている。
 しかし、港区の熱意は理解できるが、いかんせん、お台場の水質を改善しないことには、恒常的な海水浴場にはならない。
 そのためには、水質汚染の原因となっている隅田川から流れ込む未処理の水洗トイレなどの生活排水を止めないことには抜本的な解決にはならない。下水処理場の能力を改善して100%処理を達成することでしょう。
 「お台場海浜公園」は、水質問題という爆弾を抱えていたのである。


お台場海浜公園に掲示されている遊泳禁止の立て札 海水浴場として水質基準を満たしていない
「公園内で許可の無い」という追加の張り紙が張られていた  筆者 撮影 2018年11月

大腸菌が基準値を超えて中止になった五輪テストイベント 「トイレの臭い」がするという苦情も
 その懸念が、昨年の夏についに表面化した。 
 昨年の8月中旬、この「お台場海浜公園」を会場に、トライアスロンとパラトライアスロンのワールドカップ大会(W杯)、そしてマラソンスイミング(オープンウオータースイミング)が開催された。この大会は2020東京夏季五輪大会のテストイベントも兼ねていた。
 この内、パラトライアスロンは、競技海域の大腸菌の数が基準値を超えたとしてスイムは中止になってしまった。大会は自転車とラン(長距離走)のデュアスロンになった。
 前日に、温帯低気圧にかわった台風10号が首都圏を襲い大雨を降らした。
 隅田川沿いにある下水処理場の処理能力を上回り未処理の水洗トイレなどの生活排水が未処理で東京湾に流れ込んだ。東京都の下水道処理は、雨水(あまみず)と汚染水を分離しない合流式の処理システムなので、大雨が降って下水道処理場の処理能力が超えると、大量の汚染水を未処理で放出する。
 競技前日に主催者が行った水質調査では、国際トライアスロン連盟の基準値(100ミリリットル以下で250個)の約2倍の大腸菌が検出され、「レベル4」、競技中止と判定されたのである。
 さらにトライアスロンやマラソンスイミングに参加して、コースを泳いだ選手からは、「トイレの臭いがする」、「臭い」などの苦情が続出した。
 「臭い」の問題は、個人差があり、「臭いは気にならなかった」という選手もいたが、外国人選手を中心に「臭い」を指摘する声が複数でたことで、「悪臭」の問題も深刻だ。
 また海水の汚濁がひどく、海の中は濁っていて視界がほとんどない。泳いだ選手からは自分の手の先も見えなかったという声も出された。
 「お台場海浜公園」の周辺の海の海底には、これまで東京湾に流れ込んだ生活排水の膨大な量のヘドロが堆積していることが明らかになっている。
 こうした海底のヘドロが悪臭や汚濁の原因となっている可能性がある。
 きわめつけはトイレットペーパーの残滓のような浮遊物が海の中にウヨウヨ漂っているということだ。
 こうした海を、トライアスロンやマラソンスイミングの会場にしていいのだろうか、大きな疑問がわく。

大量の砂を投入 水質改善効果は?


伊豆諸島の神津島から砂の投入工事 2020年2月14日 お台場海浜公園 筆者撮影

 先週から、東京都は伊豆諸島の神津島から砂を運び込み、海底に投入する作業を開始した。海底のヘドロを砂で覆い、海水の汚濁や「臭い」を抑え水質改善をしようとするものだ。砂は汚物を吸着したり、濾過(ろか)する効果もあるという。貝などがすみつくことで、水質を浄化する効果も期待できるとしている。3月末までに、約2万立方メートル砂を約6000万円かけて投入する予定である。
 五輪大会開催まで半年を切っている中で、水質汚染への批判が出ている中で、急遽始めた工事である。半年で水質改善の効果が出るという到底思えない。なぜもっと早く手を打たなかったのか問題だろう。
 しかし、「臭い」や「汚濁」の問題には効果があるかもしれないが、大腸菌などの水質汚染の改善にはほとんど役立たない。
 一度、大雨に見舞われると、大量の下水道の汚染水が東京湾に流れ込み、せっかく投入した砂も汚染され、再びヘドロで覆われる可能性が大きい。
 大雨で未処理の下水道排水が東京湾に流れ込むのは、年間約100回に達するという。
 
「アスリートファースト」はどこへいった
 小池都知事は、たびたび「アスリートファースト」という言葉を繰り返す。
 一度、大雨が降ると大腸菌がうようよし、「トイレの臭い」が立ち込める。海底にはヘドロが堆積して、1メートル先も見えないほど濁り、浮遊物が舞っている。こうした海で世界各国から訪れる選手に泳がす大会運営は、何が「アスリートファースト」なのだろうか。
 マラソンと競歩は、国際オリンピック委員会(IOC)の英断により、暑さ対策で選手の健康に配慮して札幌開催に踏み切った。まさに「アスリートファースト」である。
 お台場海浜公園の汚染された海を、トライアスロンでは1.5kM、マラソンスイミングでは10km、選手は周回コースで泳ぐことなる。
 「アスリートファースト」という言葉をもう一度思い起こしてほしい。


お台場海浜公園の会場に設置された巨大な五輪マーク 夜間は点灯される 筆者撮影




トライアスロン、スイム(女子) 五輪テストイベント 2019年8月 お台場海浜公園 筆者撮影


トライアスロン、スイム(女子) 五輪テストイベント 2019年8月 お台場海浜公園  選手の後ろに見えるオレンジ色のラインは汚染水の流入を防ぐために設置された「水中スクリーン」 筆者撮影

パラトライアスロン、スイム競技中止 大腸菌が基準の2倍に
 2019年8月、2020東京夏季五輪大会とほぼ同じ時期に合わせて、トライアスロンとパラトライアスロンのワールドカップ(W杯)、マラソンスイミング(OWS マラソンスイミング)の国際大会が開催された。この大会は、五輪大会のテストイベントを兼ねていた。
 8月17日、パラトライアスロンのワールドカップ(W杯)は、お台場海浜公園のスイムコースの水質が悪化したとして、急遽、スイムを中止してランとバイクのデュアスロンに変更されるという事態が発生した。
 主催者の国際トライアスロン連盟(ITU world triathlon)は、競技前日の8月16日金曜日の午後1時に実施された最新の水質検査で、大腸菌のレベルが基準値を大幅に越え、ITU競技規則の水質基準で「レベル4」に上昇したことが明らかになり、当日のの8月17日、午前3時に危機管理会議を実施して協議の結果、パラトライアスロン競技をランとバイクのデュアスロンのフォーマットに変更することに決定した。
 ITUによると、お台場海浜公園のスイム会場内で、8月16日金曜日の午前5時と午後1時に二回海、海水を採取して水質検査を行った。午前5時のサンプルでは、数値は上昇したもののITUが定めた基準値内に収まったが、午後1時に採取されたサンプルでは、ITU基準の大腸菌が上限の2倍を越える数値(基準値:大腸菌 250個/100ml以下)が示された。両サンプルとも、腸球菌の数値(基準値:腸球菌数 100個/100ml以下)は基準値内に収まっていた。
 これらの結果や前日のデータを考慮し、ITUは水質リスクが「レベル4」という判定を行い、メディカル代表や3名の技術代表がスイムの中止を決定してパラトライアスロンはデュアスロン競技とすることが決まった。
 8月15日と16日に予定したトライアスロンの大会(健常者)は、それぞれ前日に行われた水質検査に問題はなく、予定通り実施された。
 一方、8月11日に同じ会場で開催したオープンウオータースイミング(マラソンスイミング)の大会では、参加した複数の選手が、「トイレの臭いがする」、「異臭がする」など悪臭を指摘する声が相次いだ。

 「お台場海浜公園」の水質が急激に悪化した原因はゲリラ豪雨である。前日の8月16日、大型の台風10号は温帯低気圧に変わったが、東京は断続的に強い雨が降った。大量の雨が降ると、雨水と生活排水を一緒に処理する下水道処理場の処理能力が
オーバーして、未処理の生活排水が隅田川から東京湾に流れ込み、お台場海浜公園の海域に達したものと思われる。懸念されていた豪雨による水質汚染悪化が現実のものとなった。
 問題は、お台場海浜公園が、「安全・安心」な海域ではなく、水洗トイレ排水などの生活排水源と直接つながっている水質の安全性が確保されていない「危険」な海であることが改めて明らかになったことである。大腸菌は、自然界に出ると1日程度で死滅する。その大腸菌が基準以上に検出された事実は重い。
 大会終了後の8月20日や21日にも東京は激しいゲリラ豪雨に襲われた。お台場海浜公園の大腸菌のレベルは、再び数倍に上昇したのは間違いないだろう。
 毎年、夏の東京は、何度となく台風や豪雨に見舞われる。2020東京大会の開催時期も例外ではない。お台場海浜公園の水質が基準を満たして大会が開催できるかどうか、まさに綱渡り、「神頼み」である。

水温、水質で懸念噴出 オープンウオーター(OWS マラソンスイミング)のテスト大会開催
 2019年8月11日、連日猛暑が続く中で、マラソンスイミングの2020東京五輪大会のテスト大会が、男女約40名の選手が参加して、お台場海浜公園で行われたが、参加した選手から水温や水質を懸念する声が相次いだ。
 テスト大会は5キロの周回コースで行われた。本番では男女ともに10キロを泳ぐ。
 前日の10日、大会の主催者の組織委員会は、急遽、午前10時スタートで予定していた男子5kmの競技開始時間を3時間早めて、午前7時に変更し、女子のスタートを7時2分とした。
 その理由は、猛暑での水温の上昇の懸念だった。マラソンスイミンを統括する国際水泳連盟(FINA)は、選手が健康的に泳げる水温の上限の基準は31度以下(水深40センチ)と定めている。この日は午前5時の時点で29・9度だったという。水温上昇は選手の体力を消耗させるのである。
 五輪本番は午前7時のスタートを予定してが、FINAのコーネル・マルクレスク事務総長は水温次第で午前5時~6時半に変更することも示唆している。
 レース終了後、2012年ロンドン五輪金メダルのウサマ・メルーリ(チュニジア)は「これまで経験した中で最も水温が高く感じた」とぐったりとした様子。女子の貴田裕美(コナミスポーツ)は「熱中症の不安が拭えなかった」と漏らしという。(共同通信 8月11日)
 さらに深刻なのは、水質問題である。競技会場のお台場海浜公園は、大腸菌汚染だけでなく、悪臭や海水汚濁の問題を抱えている。
 このコースを泳いだ複数の選手は、「正直臭いです。トイレのような臭さ」という感想を明らかにし、「検査で細菌がいないとなれば、信じてやるしかない」と述べたという。また海水の汚濁がひどく、泳いでる自分の手先も見えないほど汚れているという。
 組織委は今回のテスト大会で、約400メートルにわたってポリエステル製の膜を海中に張る「水中スクリーン」を設置し、大腸菌類などで汚染された海水が入り込むのを防いだ。五輪大会本番ではこの「水中スクリーン」を3重に張る計画である。しかし、「水中スクリーン」では悪臭や汚濁の水質改善にはならない。
 台風や豪雨に見舞われた場合には、隅田川から流れ込む大量の汚染水が、お台場海浜公園にも流れ込み、3重の「水中スクリーン」を設置しても、水質の維持は可能かどうか未知数である。
 さらに、「水中スクリーン」を3重に張ると、汚染水の流入は抑えられるかもしれないが、競技区域の海水温は、照り付ける太陽熱で「温水プール状態」になるのは必須だろう。連日の猛暑の中では夜間でも海水温が下がらず、国際水泳連盟(FINA)の上限、「31度」は早朝でも達成するのは困難になるという懸念が大きい。 2019年12月、国際トライアスロン連盟は、トライアスロン競技の開始時間を、男女個人は1時間前倒して午前6時30分開始とし、混合リレーは午前8時30分から7時30分に繰り上げることを決めた。


競技会場に設置された「水中スクリーン」 2019年8月8日 筆者撮影


競技会場に設置された「水中スクリーン」と外側を航行する水上バス 2019年8月8日 筆者撮影




「お台場海浜公園」の水質汚染問題はいまに始まったことではない

大腸菌基準越え 英タイムズ紙報道
 2020夏季五輪大会の開催都市を決めるIOC総会の直前の2013年8月、英国タイムズ紙は、お台場海浜公園周辺の海水に安全基準を超える大腸菌が含まれ、水質汚染が懸念されると報じた。
 タイムズ紙は競技が実施される8月に最も水質が悪化すると指摘。2012年と2013年8月に測定された大腸菌の数値は、国際トライアスロン連合が定める大会開催基準値の上限の数百倍に達していたと伝えた。
 調査で東京湾に潜った大学教授が体調を崩した事例を紹介し「一晩中、下痢や嘔吐(おうと)が続いたとし、大量の貝や魚の死骸があり、腐敗した物質が口から入ったのだと思う」とのコメントを掲載した。
 これに対して東京招致委員会は、これまでにトライアスロンや水泳オープンウオーターの大会がお台場で開催されたが、「問題が起きたことはない」と反論した。

水質問題に懸念を表明した舛添前知事
 五輪大会関係者が公式に「お台場海浜公園」の水質問題に言及したのは舛添要一前都知事である。
 2014年6月、都知事に当選した舛添要一氏は、東京都が担当する競技場整備計画を大幅に見直すことを表明した。招致計画では約1538億円だったが、改めて試算すると当初予定の約3倍となる約4584億円まで膨らむことが判明したのである。
 そして8月には、舛添前知事は記者会見で「お台場海浜公園」の移転を検討したいと表明した。
 その理由として、まず「大腸菌の基準値が超えている水質問題」を挙げ、さらに「羽田の管制空域の下にあって、取材用のヘリコプターが飛べない」ことを挙げた。
 「水質問題」への懸念は6年前に問題化していたのである。
 移転先として横浜の山下公園などを挙げたが、地元の港区などから猛反対にあい移転案はこれ以上動かなかった。


出典 TOKYO MX NEWS  2014年8月14日

組織委員会も横浜移転を検討
 2015年5月、今度は、森大会組織委員会が国際トライアスロン連合のカサド会長と東京都内で会談し、競技会場を「お台場海浜公園」から、横浜市の山下公園での実施を検討するよう要請した。カサド会長は「可能性を検討していく」と述べた。
 森会長は「横浜市の強い希望もあった」と述べ、武藤敏郎事務総長は「費用面は関係なく、大きな大会の開催経験がある所でやったらどうかということ」と説明した。山下公園は2009年から世界シリーズの開催実績がある。ただし、この時は表向きには水質汚染問題を特に理由に挙げていない。

国際競技団体やIOCも水質問題への懸念を表明
 2017年10月になると、今度は国際トライアスロン連合(ITU)が、お台場海浜公園周辺の水質に懸念を示して、東京都に下水対策の強化を求めていることが明らかになった。
 大会組織委員会の水質調査で、国際大会開催の基準値を20倍も超える大腸菌群などが検出されたいたことが明らかになったからである。
 この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、2020東京五輪大会と同じ時期の2017年8月に、お台場海浜公園周辺の海域の水質・水温を測定したものである。
 調査を行った期間は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
 調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化することはっきりと示された。(調査結果の詳細は下記参照) 
 2020五輪大会が開催されるのは時期は真夏、毎年、台風や集中豪雨の襲われるのは必至である。お台場海浜公園周辺の水域の水質レベルは、依然として極めて危険なレベルにあることが明らかになった。
 これに対して大会関係者は「会場変更の可能性はない」とし、今後、都が中心となって水質改善の取り組むとした。
 ところが翌年の2018年4月、タイのバンコクで開かれた国際スポーツ連盟機構(GAISF)の会議などで、複数の国際競技連盟が、東京大会の準備状況に不満を抱き、公然と批判し、国際トラアスロン連盟は「お台場海浜公園」の水質問題を指摘した。
 これを受けて、IOCのコーツ副会長を代表とする調査チームが来日し、2020東京大会の準備状況のチェックが行われた。
 「お台場海浜公園」については、コーツ副会長は「トライアスロンについては引き続き水質に問題があるが、今年と来年にもっと詳しい水質調査や、水中に幕を設置する実験を行うとの報告を受けている」と述べ。2020年東京五輪の一部会場の水質に懸念が残るとして改善するよう求めた。

 「お台場海浜公園」の水質汚染問題は、最近浮上した問題ではなく、2020東京五輪大会招致の段階から、関係者の間では懸念されていた問題だった。さらに開催準備が本格化した2014年当時、舛添前知事は、会場変更について言及しているのである。大会開催まで5年以上の期間がありながら、対策に乗り出さず、事実上、問題を放置していた責任は大きい。
 
本番は3重の『水中スクリーン』を検討 「大腸菌等の抑制」を目指す 大会組織委員会
 大会組織委員会は、大会終了後、記者団に対して、「五輪大会本番と同じコースと設備で、今回の大会を、国際競技団体(IF)や国内競技団体(NF)、大会組織委員会が一体となって運営した。今回、気象予報士1名を含む2名の気象専門家が常駐し、気象条件を常時把握する体制をとり、暑さ指数(WBGD)の予測をして、競技開始時間の変更を行った。また水質検査の結果を踏まえてパラトライアスロンのスイムを中止して、バイク、ランのデュアスロンに変更したが、変更の判断は、ワールドカップ(W杯)のテクニカルチームとメディカルチームが行い、大会組織委員会はオブザーバーの立場だった」と述べた。
 また、水質汚染防止対策の「水中スクリーン」の設置については、「昨年の実験で、1重の『水中スクリーン』で十分な効果があってので、今回の大会では、1重の『水中スクリーン』で対応した。来年の本番の大会では、3重の『水中スクリーン』の設置で準備を始める」とした。
 「水中スクリーン」を設置すると水温が上昇する懸念があるのではという質問に対しては、「昨年の実験では、そういうファクトはなかった。実験では狭いエリアで行ったのに対し、本番では広いエリアになるので、水温上昇への影響は少ないのでは思う」とし、『水中スクリーン』を開けたり、閉めたりすることが可能な開閉式にして、水温上昇の影響を抑えることを検討したいとした。

 昨年、オリンピック期間7月24日~8月9日、パラリンピック期間8月25日~8月31日の計22日間、東京都と大会組織委員会では、お台場海浜公園の競技エリアの水質検査を行うと共に、競技エリアの一部に、1重の「水中スクリーン」と3重の「水中スクリーン」を設置して、「大腸菌等の抑制効果」を検証する実験を行った。
 その結果、台風等の影響を直接受けたことなどより、お台場海浜公園の海域では、大腸菌類の数値が27日間のうち12日間で、2つの競技においての水質基準を超過したことが明らかになった。なにも対策を講じななければ、この海域での競技は開催できなかったと可能性が大きい。
 一方、「水中スクリーン」設置区域内では、「1重」の区域内では、水質基準を超過したのは2日間で、3重の「水中スクリーン」設置区域内では、すべての期間で水質基準をクリヤーし、「水中スクリーン」は「大腸菌等の抑制効果」があることが明らかになった。
 水温については、実験を行った17日間の平均で、「1重」では、1.1°C、「3重」では、1.4°C高く、最高では1重、3重ともに2.7°C高くなるという結果がでた。
 「水中スクリーン」の設置エリアは、実験とは違い、本番ではより広いエリアになるので、水温上昇にどの程度の影響かあるが分かっていないが、3重の「水中スクリーン」を設置すれば、水温上昇の懸念が高まるのは当然だろう。最後のチャンスになり今年のテストイベントで3重の「水中スクリーン」をテストしなかったことが悔やまれる。
 また3重の「水中スクリーン」は、構造が複雑で設置に時間がかかり、開閉式にすることが現実的に可能なのかどうか、疑念が残る。
 さらにマラソンスイミングの選手から出された、「トイレのような臭いがする」とか「異臭がする」といった「臭い」の問題についても、組織委員会は「トライアスロンの選手からは苦情が出ていない」として問題視する姿勢が見られない。
 「大腸菌」、「水温」、「臭い」、3つの課題を後1年で解決できるだろうか。
 2020東京五輪大会のスローガンは「アスリートファースト」、世界各国から訪れるトライアスロンやマラソンスイミング選手に、「安全・安心」な競技エリアを準備するのは大会組織委員会の責務である。
 

出典 水質調査結果 東京都


東京都の下水道処理場(水再生センター) 隅田川水系に集中している 出典 東京都




お台場周辺の海域 大腸菌が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌が上限の7倍も検出
 2017年10月、2020東京大会組織員会は、マラソン水泳とトライアスロンが行われるお台場周辺の海域で、大腸菌(Coli)が水質許容基準の上限の20倍、便大腸菌(faecal coliform bacteria)が上限の7倍も検出されたと公表した。まさに衝撃的な数値である。
 この調査は、東京都と大会組織委員会が行ったもので、オリンピック開催時期の21日間、パラリンピック開催時期のうち5日間、マラソンスイミングとトライアスロンの競技会場になっているお台場海浜公園周辺の水質・水温を調査したものである。
 調査を行った2017年8月は、21日間連続で雨が降り、1977年に次いで、観測史上歴代2位の連続降水を記録した。
 調査結果によると、降雨の後は、水質が顕著に悪化すること分かった。今回の調査期間では、国際競技団体の定める水質・水温基準達成日数は、マラソンスイミング基準では10日で約半分、トライアスロン基準はで6日で約3分の1に留まった。
 お台場海浜公園周辺の競技予定水域は、競技を開催する水質基準をはるかに上回る汚水が満ち溢れていることが示されたのである。
 参加選手の健康問題を引き起こす懸念が深まり、国際競技団体などから批判が強まった。
 これに対して、組織委は、雨期に東京湾から流れ込む細菌の量を抑制するために、競技予定水域を水中スクリーンを設置して東京湾から遮断するなど様々の実験を行い、水質改善に努めるとした。
 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長は「トライアスロン競技連盟は依然として水質を懸念している。今年と来年に行われる水のスクリーニング、カーテンの入れ方などの実験についてプレゼンテーションを受けた。この姿勢には非常に満足している」としたが、水質問題に依然として懸念が残るとして改善を求めた。
 東京湾の水質改善は、着々と進んではいるが、とても海水浴ができるような“きれいな海”とはいえない。東京湾に流れ込む川からは大量の汚染水が流れ込む。海底にはヘドロが蓄積している。オリンピック開催期間は真夏、ゲリラ豪雨は避けられない。東京湾は、“汚水の海”になることは必至だ。
 そもそも東京湾に、選手を泳がせて、マラソンスイミングやトライアスロンを開催しようとすること自体、無謀なのではないか。


お台場海浜公園における水質・水温調査地点  東京都オリンピック・パラリンピック事務局


水質調査結果(トライアスロン) 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


水質調査結果(マラソンスイミング) 東京都オリンピック・パラリンピック事務局


お台場海浜公園における水質・水温調査地点  東京都オリンピック・パラリンピック事務局

「水面に顔をつけない」が条件の海水浴場
 2017年夏、葛西臨海公園に「海水浴場」がオープンした。水質改善が進んだ東京湾のシンボルとして話題になった。
 かつては東京湾には葛西のほか大森海岸、芝浦など各所に海水浴場があったが、高度経済成長期に臨界工業地帯の工場排水や埋め立て工事で1960年代に水質悪化が進み、海水浴場は姿を消した。東京湾では、約50年間海水浴が禁止され、房総半島や三浦半島までいかないと海水浴ができなかった。
 港区では、「泳げる海、お台場!」をスローガンに掲げ、お台場海浜公園に海水浴場を開設しようとする取り組みに挑んでいる。
 ところが、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため通常は遊泳禁止である。
 港区では、2017年7月29日(土曜)・30日(日曜)の2日間、範囲を限定し、安全面等に配慮しながら行う“海水浴体験”を開催、訪れた親子連れは、“海水浴”ではなく、ボート遊びや水遊びを楽しんだという。なんと「水面に顔をつけない」ことが条件の“海水浴体験”だった。
 お台場の海は、「水面に顔をつけない」で足を海に入れる「磯遊び」程度の水質しか保証されていないのである。この海で、マラソンスイミングやトライアスロン(スイム)の競技を開催すれば、参加選手は“汚染”された海水に顔をつけ、海水を口に含まざると得ない。選手の健康問題を組織委員会はどう考えているのだろうか。
 なぜ、素晴らしい自然環境に囲まれたきれいな海で開催しないのか。日本には素晴らしいビーチが豊富にある。これまでしてお台場の開催にこだわる姿勢には良識を疑う。

「水中スクリーン」設置で水質改善


お台場海浜公園  出典 東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会

 お台場海浜公園は、2017年夏に行われた水質調査で競技団体が定める基準値を大幅に上回る大腸菌などが検出され、水質対策が迫られていた。
 東京都では、2018年夏、ポリエステル製の膜、「水中スクリーン」を海中に張って大腸菌などが流れ込むのを防ぐ実証実験を行った。3重の「水中スクリーン」で囲った水域ではすべての日で基準値を下回り、「水中スクリーン」で囲う水質対策は効果的だとした。


出典 東京都


出典 東京都

 今回の実証実験は、組織委員会と東京都が、2020東京五輪大会の開催期間にあたる7月から9月にかけての27日間で行い、お台場海浜公園の入り江内の2か所にポリエステル製の「水中スクリーン」を張って、大腸菌などが流れ込むのを防ぐ実験を実施した。
 「水中スクリーン」は1重に張ったエリアと3重に張ったエリアの2か所を設け、それぞれのエリアで水質改善効果を検証した。
 今年の夏は、首都圏は台風や豪雨に見舞われ、首都圏の下水が東京湾に流れ込み、「水中スクリーン」が張っていない水域では、半数近い13日間で大腸菌が基準値を上回った。7月29日には台風の影響で、国際トライアスロン連盟の基準値を142倍も上回る数値を示した。
 五輪大会が開催されるのは時期は真夏、毎年、台風や集中豪雨の襲われるのは必至である。依然としてお台場海浜公園周辺の水域の水質レベルは、極めて危険なレベルにあることが明らかになった。
 一方、「水中スクリーン」スクリーンを1重に張ったエリアでは大腸菌の基準値を上回ったのがわずか2日で、3重に張ったエリアではすべての日で基準値を下回った。
 組織委員会と東京都は「『水中スクリーン』の効果が確認できた」として、2年後の東京大会で「水中スクリーン」を設置する方向で進めるとした。


出典 東京都

 しかし、今回の実証実験では、泳げる範囲がわずか60メートル四方で設置経費は7500万円だったとされる。
 トライアスロンのスイム(水泳)のコースは1.5キロメートル、オープンウォータースイミング(OWS(マラソンスイミング)コースは10キロメートルの周回コースで、台場海浜公園の入り江のほぼ全域に設定される。水質改善効果を上げるためには3重の「水中スクリーン」が必須だが、広範囲に設置した場合、水質改善効果が維持できるかどうかは未知である。また設置経費も膨大なり、10億円近くにも達する懸念もある。
 トライアスロンの水質基準は、大腸菌数、250個/100ミリリットル以下、水温32度C(水深60センチ)以下マラソンスイミングの水質基準は、トライアスロンとは異なり、糞便性大腸菌群、1000個/100ミリリットル以下、水温31度C(水深40センチ)以下などが国際水泳連盟(FINA)によって定められている。
 例年、首都圏の夏は台風や集中豪雨にたびたび襲われる。2020年、8月も同様であろう。大雨が降ると、お台場海浜公園周辺の海域は大腸菌がウヨウヨする海となる。猛暑で海水温は高温となる。悪臭や汚濁対策も必要だ。まさに選手の健康を脅かす危険と隣合わせた競技会場である。
 こうした大会運営は、「アスリートファースト」とは到底言えない。
 東京湾には、雨が降ると、隅田川などの河川から、生活排水などの汚水が浄化処理されないまま流れ出ることが原因で、首都圏の下水浄化システムを改善しない限り、抜本的な水質改善は不可能である。

 そもそも、お台場海浜公園は、水質基準を満たさないため、「遊泳禁止」、海水浴場として認められていないのある。海に入って、いわゆる「磯遊び」は可能だが、「顔を海水につけて」遊ぶことはできないのである。
 しかし、港区はトライアスロンなどのイベント開催は特別に許可をしている。
 2016年にトライアスロンにお台場海浜公園を泳いだ井ノ上陽一氏によると、「トライアスロンのスイムは、レースによっては、それほどきれいな海で泳げず、それに耐えることも大事」としている。特に東京、関東近辺の大会では、きれいな海は望めず、川や湖だともっと視界が悪い場合もあるという。必ずしも、きれいな水域を選んでレースが開催されるのではないようだ。
 井ノ上陽一氏のウエッブには、お台場海浜公園の泳いだ様子の写真が掲載されている。


お台場海浜公園の水中  出典 井ノ上陽一氏 「お台場で泳いでみた!トライアスロンスイム(海)の現実」
 
 筆者は、ほとんど泥水の中を泳いでいる様子に唖然としたが、井ノ上陽一氏によると視界が悪いのは別に驚くには当たらないとしている。トライアスロンスイムは世界各地で行われているが、必ずしも自然環境に恵まれた会場で行われるとは限らないという。
 しかし、問題なのは、視界の良し悪しもさることながら、水質汚染が悪化しているかどうかで、海水浴場として環境基準を満たしていない「汚染水域」で、五輪大会の競技を開催して、選手を泳がせることである。
 これまでにたびたび、小池都知事や森組織委員会長から「アスリートファースト」という言葉を聞いた。「アスリートファースト」を掲げるなら、競技会場を水質基準をクリヤーしている鎌倉や房総半島のビーチに変更したら如何か? いまからでも遅くはない。マラソンと競歩は暑さ対策札幌開催を決断した。





水質汚染問題に直面したリオデジャネイロ五輪
 2016リオデジャネイロ五輪では、セーリングやトライアスロン、ボートなどの会場となるコパカバーナ地区の湾岸部、グアナバラ湾の水質汚染が深刻で選手の健康被害が懸念され、競技の開催が危ぶまれのは記憶に新しい。
 AP通信が行った独自調査によると、2015年3月以降に競技会場で採取された水から、高い数値のアデノウイルスのほか、複数のウイルスや細菌も検出されという。
 汚染の原因は下水処理整備の遅れだ。人口1000万人のリオデジャネイロの生活排水の7割近くがグアナバラ湾に最終的に流れ込むという。
さらに汚染に拍車をかけるのが、リオデジャネイロの貧民街。リオデジャネイロは世界でも有数の観光地だが、人口632万人の23%を占める143万人が貧民街に暮らしているという。ブラジルで最も貧富の差が大きい都市でもある。貧民街では下水処理施設の整備はほとんど手が付けられていない。
 グアナバラ湾は「巨大なトイレ」と揶揄されている。
 招致段階でリオデジャネイロ州政府は五輪開幕までにグアナバラ湾に流入する汚水の80%を下水処理できるようにすると公約した。この処理事業を支援しているのが日本の国際協力機構(JICA)で、現在四つの下水処理場が稼働している。 しかし、各家庭から処理場まで下水を集める配管の整備が遅々として進んでいない。リオ五輪組織委員会は、開催前年の2015年7月、公約としていた水質浄化が開幕まで不可能と認めている。
 大量のゴミが海面を覆い尽くしているのも汚染の原因とされているが、リオデジャネイロ市では、湾内のごみを回収する「エコポート隊」を投入するなど窮余の対策に追われた。大量のゴミを片付けても、下水処理を行わなければ水質改善はほとんど絶望的である。
 水質汚染問題の抜本的な解決はできなかったが、国際オリンピック委員会(IOC)は「環境基準は満たされた」して競技は予定通り行われた。


ゴミが散乱するグアナバラ湾 Antonio Scorza / Agência O Globo


リオデジャネイロ五輪のマラソンスイミング 出典 Rio2016/Youtube


リオデジャネイロ五輪のマラソンスイミング 出典 Rio2016/Youtube




東京湾をきれいな海に これこそ2020東京大会のレガシー!

 東京23区の下水道のほとんどが合流式で整備され、雨水と汚水を一緒に処理するシステムである。雨が大量に降ると下水道が処理できずに、そのまま河川に放流される可能性がる。東京都は下水処理能力の向上に取り組んでいるが、一瞬で大量の雨が降るようなゲリラ豪雨が発生すると処理能力の限界を超えてしまう。
 再オープンした葛西海浜公園も、大雨が降ればで、COD濃度が一気に跳ね上がり水質基準を超えて、海水浴場が再び閉鎖になる懸念と隣り合わせている。
 水質改善の抜本的な対策は、下水道を合流式から分流式に切り替えることで、分流式は雨水・汚水を区別して処理する方式のため、雨が降っても汚水が未処理のまま雨水に混ざることはない。
 東京23区は、下水道整備を急ぎ、昭和30年代に経費のかからない合流式で下水道を整備した。1970年に下水道法が改正されて、下水道はようやく分流式で建設されるようになったが、現在でも合流式で整備した下水道が広いエリアで稼働している。東京都内の下水道が分流式に切り替わるには、あと30年以上は必要とされている。
 さらに東京湾には、埼玉県や千葉県、茨城県からの生活排水も流れ込む。
 東京湾の海底には、過去の環境汚染の“負の遺産”である汚染物質が大量に含まれているヘドロが海底には堆積したまま、水質改善は滞り、未だに年間約40回程度の赤潮や4~5回程度の青潮が発生している。東京湾に本格的に海水浴場が蘇るのはまだまだ先になる。
 2020東京五輪大会の開催経費は、関連経費を含めると「3兆円」、膨大な額の資金が投入される。
 大会開催を契機に、この資金の一部を投入して下水道処理施設の改良を行い100%の下水処理を達成すれば、東京湾の水質改善は一気に進む。長年悲願の「東京湾に海水浴場」が実現するだろう。
 これこそ、2020東京五輪大会のレガシーになると考える。大会後、赤字が見込まれ負の遺産になる懸念が大きい競技場建設より、東京湾がきれいな海になるほうがはるかに都民の未来の遺産、レガシーになることは間違いない。
 2020年東京大会まであと半年、この間に東京湾の水質改善が飛躍的に進むことはありえないだろう。
 “汚染”された海、東京湾で選手を泳がす2020東京大会、何が「アスリートファースト」なのだろうか。




江の島セーリング会場 シラス漁に影響 ヨットの移設や津波対策に懸念


“迷走”海の森水上競技場 負の遺産シンボル

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東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 動員 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2018年5月9日
Copyright (C) 2018 IMSSR


***************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
****************************************







コメント (4)
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東京オリンピック ボランティア批判 タダ働き やりがい搾取 暑さ対策 ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!

2023年01月04日 17時26分55秒 | 国際放送センター(IBC)
東京オリンピック ボランティア タダ働き やりがい搾取 「ただ働き」労働力ではない 
新型コロナウイルス・暑さ対策は? ボランティアの安全・安心は守られるのか? コロナ感染28人 熱中症20人以上発生



新型コロナウイルス(COVID-19) 出典 NYT/NIAID

北京冬季五輪最新情報はこちら
深層情報 北京冬季五輪2022 競技会場 国際放送センター(IBC)・4K8K 5G ・高速新幹線 最新情報




大会ボランティアにPCR検査実施 大半は1回だけ PCR検査体体制の杜撰な実態が明るみに 「フィールドキャスト 新型コロナウイルス感染症ガイドライン」組織委公表
* 大会ボランティアの皆さんは必読 詳細資料を添付

ボランティア7万人全員にワクチン接種へ 十分な免疫獲得は間に合わず
 6月26日、東京2020大会組織委員会は、大会ボランティアの全員約7万人にワクチン接種の案内を行うと発表した。  これまでは国際オリンピック委員会(IOC)による米ファイザー社製のワクチン無償提供により、大会関係者、職員、国内メディアなど約3万8000人の接種が進められていたが、都の協力によりモデルナ社製のワクチンや接種会場の確保ができたという。新たな対象となったボランティアは6月30日から7月3日に1回目の接種を行い、2回目の接種は五輪期間中の7月31日からとなる。接種会場 は、1回目東京都築地ワクチン接種センター、 2回目代々木公園内を予定している。
 しかし、モデルナの効果は、2回目の接種から約2週間後程度で十分な免疫が生成されるとされ、7月31日からの2回目の接種では五輪期間中に十分な免疫獲得はできない。
 丸川五輪相は、「まず1回目の接種で、1次的な免疫をつけていただく」と述べて批判を浴びている。
 後手後手に回ったボランティアへの感染防止対策の遅れのツケが顕在化した。

 参加選手や大会関係者、観客などと接触する機会が多く、感染リスクが高いボランティアの「安全・安心」の確保は置き去りにされたと言わざるを得ない。変異株の感染は、20代や30代の若者を中心に広がっている。
 選手団には、ワクチン接種、毎日の検査、選手村でのバブル環境、競技場には専用バスで送迎、相当のレベルのコロナ感染防止対策が講じられる。一方、ボランティアは、毎日、公共交通機関を使用し、人によっては片道、1~2時間かけて競技会場などに1週間以上通う。宿泊施設が必要な場合は、自力で確保する。市民と接触する場も多く、破格に感染リスクが高い。しかしその格差はあまりにも大きすぎる。
 ボランティアの「安全・安心」を確保するのは組織委員会の当然の責務だ。
 また都市ボランティアはワクチン接種や検査の対象にまったく入っていない。

ボランティア1万人辞退 コロナ感染不安

ファイザー社とビオンテック社、東京五輪選手にワクチン寄贈
 5月8日、国際オリンピック委員会(IOC)は、米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ企業ビオンテックが今夏の東京五輪・パラリンピックに出場する各国・地域の選手団向けに、共同開発した新型コロナウイルスワクチンを寄贈することで合意したと発表した。
 日本オリンピック委員会(JOC)は、日本選手団への接種を6月1日に開始した。医療現場への影響を考慮し、競技団体ごとにチームドクターなどへ接種業務を依頼するよう指示をしたという。
 五輪とパラで選手1000人程度、監督・コーチ1500人程度の計約2500人が対象で、6月中の完了を想定している。
 検査体制については、感染防止対策などのルールをまとめた「プレーブック(規則集)V2」で、選手は毎日検査することが明記された。選手団に同行する監督やコーチらなどの関係者も毎日検査を受けることになった。

組織委のコロナ対策 「感染症対策リーフレット」と「マスク」、「消毒液」、「体調管理ノート」だけ
 3月1日、東京2020大会組織委員会は、ボランティアの新型コロナ対策として、日本ボランティアサポートセンターが制作協力した「感染症対策リーフレット」を始め、選択可能なマスク2枚、携帯用アルコール消毒液、体調管理ノートをボランティアに配布すると発表した。
▼ 「感染症対策リーフレット」
「基本行動」として、マスク着用、手洗い・消毒、フィジカルディスタンス(2m)の確保を上げる。
 そして「活動の場面の注意」として、「食事中・休憩中」は、密を避けて、会話を控え、なるべくマスク着用とし、「観客や仲間のコミュニケーション」では、握手・ハイタッチはしない、「観客の手荷物・写真撮影」では、使い捨て手袋着用を推奨する。
 活動中は、密集の回避、共用品の除菌、換気が重要とし、活動前には体調管理ノートをつけて体調の自主管理をすることとした。
 記載されている内容は、ごくごく一般的な感染防止対策を記載しているだけに過ぎない。
 この程度では大会組織委員会がボランティアの感染防止対策を本気で考えているどうか疑問が大きい。「安全・安心」とはほど遠いのは明らかである。


「感染症対策リーフレット」 出典 TOKYO2020

 組織委員会は、競技会場などで活動する大会ボランティア約8万人のうち、約1万人が辞退したことを明らかにした。理由は個別に聞き取っていないというが、「新型コロナウイルスの感染拡大に対する不安があるのは間違いない」と述べている。
 応募したボランティアの皆さんは、大会組織委員会のコロナ対策に不安を感じたら、辞退をして欲しい。大会運営に関わるボランティアは感染リスクは高い。各持ち場でしっかりした感染防止体制がとられているかどうか、是非、見極めて欲しい。

森会長、女性蔑視発言 ボランティアの辞退相次ぐ
 2月3日、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長は、JOC臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は、時間がかかります」「女性っていうのは競争意識が強い。誰か1人が手をあげていうと、自分もいわなきゃいけないと思うんでしょうね。それでみんな発言されるんです」などと発言した。この発言に対して出席者で異論を唱える人はいなく、笑い声が出たとされている。
 森氏の発言は、女性を蔑視したと受け取られ、国内内外から激しい批判を浴びた。
 翌2月4日、森会長は記者会見を開き、女性を蔑視したと受け取れる発言をしたことについて、「深く反省している。発言は撤回したい」と謝罪した。会長職については「辞任する考えはない」と述べた。
 質疑応答では「女性が多いと時間が長くなるという発言を誤解と表現していたが、誤った認識ではないのか」との質問に、「そういう風に(競技団体から)聞いておるんです」などと答え、競技団体全体にこうした認識が広がっていることを示唆した。
 これに対して、組織委員会は8日、4日以降に大会ボランティア(約8万人)辞退申し出が、約390人に上り、2人が聖火リレーランナーへの辞退を申し出たと発表した。組織委は辞退理由を公表していないが、3日に森喜朗会長が女性蔑視の発言をした影響とみられる。
 また、東京都は都市ボランティア(約3万人)の辞退申し出が93人になったと発表してている。
 こうしたボランティア辞退の動きについて、自民党の二階俊博幹事長は8日の会見で、「瞬間的」なもので、「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と語った。今後の対応については「どうしてもおやめになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と述べ、「そのようなことですぐやめちゃいましょうとかとかいうことは一時、瞬間には言っても、協力して立派に仕上げましょうということになるんじゃないか」と発言した。
 組織委員会では「五輪大会開催の成否は『大会の顔』となるボランティアの皆さんにかかっている」と高らかに唱えている。開催を半年に控えている中で、約11万人のボランティアの人たちの思いを踏みにじった女性蔑視発言、森会長の責任は重い。


オリンピックの延期を決めたバッハ会長は「東京五輪がウイルスに打ち勝った象徴的な祝典になることを願う」と述べたが…… 出典 IOC NEWS 3月30日




緊急課題 ボランティアの暑さ対策はどうなる? 五輪史上最大級の猛暑に警戒

 1999年の夏は、梅雨明けは例年に比べて遅かったが、梅雨明け後は、一転して猛暑が続き、夜になっても気温が下がらず、連日熱帯夜となった。
 来年の東京五輪大会開催期間(7月24日~8月9日)も同様の猛暑が予想され、とりあけ都心は、ヒートアイランド現象による気温上昇に加えて湿度も高く、過去の大会で最も厳しい「酷暑五輪」になると思われる。
 TOKYO2020を見据えて、1999年7月から8月にかけて、本番の大会運営を検証するためにテストイベント、「READY STEADY TOKYO TEST EVENTS」が相次いで開催された。
 7月には、近代五種(武蔵野の森総合スポーツプラザ)やウエイトリフティング(東京国際フォーラム)、アーチェリー(夢の島公園アーチェリー場)、自転車競技
(ロード)(スタート:武蔵野の森公園、ゴール:富士スピードウェイ)、バドミントン(武蔵野の森総合スポーツプラザ)、ビーチバレー(潮風公園)、8月になって、ボート(海の森水上競技場)、馬術(海の森クロスカントリーコース、馬事公苑)、ゴルフ(霞ヶ関カンツリー倶楽部)、マラソンスイミング(お台場)、トライアスロン(お台場)、セーリング(江の島ヨットハーバー)の競技大会が開かれた。
 テストイベントを行う中で、明らかになった最大の問題は、「暑さ対策」である。またトライアスロン(水泳)やマラソンスイミングでは水質や水温の問題が浮かび上がった。

連日暑さ指数31°C超「危険」
 環境庁のデータによると、テストイベントが集中した8月11日の週の暑さ指数(WGBT 環境省発表)は、31.6°C(11日)、31.2°C(12日)、32.4°C(13日)、31.4°C(14日)、31.4°C(15日)といずれも31°Cを超え、16日は台風10号の影響で、30.4°C、17日は逆にフェーン現象で33.5°Cと今年最高を記録した。
 環境省の指針によると、31°C以上は、「危険」とし、「すべての生活活動でおこる危険性」があり、「高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する」としている。
 8月11日からの1週間はほぼ連日「危険」の猛暑続いたのである。
 
 記録的な猛暑は、五輪大会開催にとって大きな脅威となった。
 出場する選手は勿論、大会関係者、大会を支えるボランティア、そして競技場を訪れる大勢の観客、十分な暑さ対策を実施しないと熱中症で体調を崩す人が続出する懸念が大きい。
 
猛暑の直撃を受けるボランティア
 猛暑の直撃うけるのは、大会の運営を支えるボランティアである。大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を確保する計画である。

 この内、特に猛暑のダメージが大きいのは、屋外で行われるビーチバレーやボート、カヌー、トライアスロン、馬術クロスカントリー、アーチェリー、セーリング、ウインドサーフィン、それにマラソンや競歩、自転車(ロード)などの大会ボランティアである。長時間、猛暑の炎天下で業務にあたらなければならない。
 屋内のアリーナで開催される競技についても、観客整理、交通整理などで大勢のボランティアが炎天下で業務になる。

 五輪大会テストイベントが行われた海の森公園から帰るバスに乗り合わせたボランティアの人が、「この暑さはもう体力の限界を超える。テストイベントは本番の半分の時間、これが二倍になるになると耐えられない。是非、シフト体制を考えてもらいたい」と話していた。
 まさにボランティアの「命を守る」ための施策が迫られているのである。

ボランティアの「命を守る」対策を
 来年の夏も猛暑は避けることができないだろう。
 ボランティアを猛暑から守るためには、炎天下で業務にあたる時間を短くするほかないだろう。それぞれの担当セクションで、配置ボランティアの数を倍に増やし、休憩時間を大幅に増やすシフト体制を組む必要があるだろう。1時間、炎天下で業務に従事したら、1時間は冷房完備のシェルターで休憩する。ボランティアの「命を守る」ためには必須の条件となってきた。
 また、大会ボランティアを志望した人には、高齢者や家庭の主婦、いつも冷房の効いたオフイスで仕事をしているサラリーマンなど、猛暑の中の業務に慣れていない人が大勢いると思われる。炎天下、体感温度は35度を楽に超え、強烈な日差しが照り付ける。その中でのボランティア業務である。

 さらに問題なのは、暑さ対策、競技の開始時間が次々と早められ、早朝に競技開始が変更されていることだ。マラソンは午前6時、男子50キロ競歩は午前5時30フィン、ゴルフも午前7時、さらに今回のテストイベントの結果を踏まえて、オープンスイミングでは午前5時開始、トライアスロンも7時30分開始を検討している。今年の猛暑を鑑みて、その他の競技の開始時間も早められる可能性は大きい。
 かりに7時競技開始の会場のボランティアになると、その2時間前程度、午前5時前には会場に集合し、配置につく準備をしなければならない。自宅を出発するのは3時過ぎになるだろう。連日、3時起きで半日から1日、炎天下にさらされたら、ほとんどの人が体力の限界に達する。そもそも交通機関が動いていないので早朝に会場に来ること自体が不可能になる可能性が大きい。前日の終電で会場に入り、徹夜で朝まで周辺で待機することになるだろう。それも1日だけでなく、競技によっては10日以上は続く。今は所待機場所を確保していると情報はない。熱帯夜が連日続く中で徹夜での待機、それこそ人権問題である。大会ボランティアは「一日8時間以上、10日間以上」、こうした中で業務を行わなければならないのである。
 ボランティアに応募した人たちは、猛暑の中での業務の過酷さを冷静に見つめて欲しい。猛暑は確実に来年もやってくる。
 炎天下の仕事に自信のない人は、屋外での業務は断り、室内の涼しい場所への配置転換を希望しよう。また、集合時間を確認して、始発電車に乗っても間に合わない場合は変更を希望しよう。勿論、業務シフトや休憩時間を確認しよう。「命を守る」ための選択だ。
 大会ボランティアの場合は、「10日間以上」が条件となっている。ボランティアに応募した皆さん、連日暑さ指数、31°Cを超える中で、10日間以上、炎天下でボランティアを続ける自身がありますか? 
 奉仕精神に溢れた高い志を持ってボランティアに応募した人たちを猛暑から守る責任が課せられたのは大会組織委員会である。まさか、暑さ対策は「自己責任」とは、大会組織委員会は言わないと信じたい。同様の対応は都市ボランティアを募集した東京都にも求められる。
 あと1年、暑さ対策は早急に手を打たなければならない緊急課題となった。


暑さ対策ではついに「降雪機」も登場 海の森水上競技場 筆者撮影 9月13日


清涼感を味わえる程度で気温を下げる効果はない 報道陣に公開した実験では300kgの氷を使用してわずか5分間で終了


ビーチバレーの会場(潮風公園)の入り口に設置されたミスト 観客のラストワンマイル(駅から会場までの間)の暑さ対策で設置 ミストにあたっている間は涼しさを感じるが熱中症防止の体全体を冷やす効果はない  筆者撮影 2019年7月25日


ビーチバレーの会場内に設置された休憩所 テントの中は冷房されている こうした休憩所を各競技場に多数設置する必要がある 筆者撮影 2019年7月25日





五輪ボランティア説明会・面談会場 東京スポーツスクエア 東京都千代田区有楽町
8万人採用 12万人不採用 
  2019年9月12日、大会組織委員会は、書類選考と面談による「第一次選考」(マッチング)が終了し、大会ボランティア(フィールドキャスト)約8万人が決まったと発表した。応募した人は、約20万人、12万人が不採用となった。月内に、応募した約20万人全員に結果を通知するという。
 大会組織委員会によると、採用された人の約6割は女性で、40~50歳代が約4割に上った。応募段階では全体の36%だった20歳代は、面談への出席率が低く、採用は16%だった。
 また外国籍の人は12%で、中国、韓国、英国など約120の国と地域から採用された。
 採用された人は10月から共通研修に参加して、来年3月以降に具体的な役割と活動する会場が決まる。

五輪ボランティア説明会始まる 480名が参加
 2019年2月9日、2020東京五輪大会の応募者に対する説明会と面談が、東京都千代田区有楽町の東京スポーツスクエアで始まった。こうした説明会と面談は、北海道から九州まで全国11か所で7月末まで開かれる。
 この日は、首都圏は雪に見舞われたが、大会ボランティア(フィールドキャスト)が360人、都市ボランティア(シティキャスタト)が約120人、合わせて約480人の応募者が参加した。
 説明会は、活動内容やスケジュールについての説明をするオリエンテーションだけでなく、応募者同士の自己紹介やクイズ、ゲームなども交えて和やか雰囲気の中で進められ、ボランティア同士のコミュニケーションを図った。
 その後、大会組織委員会の担当者は応募者との面談を行い、第一回目のマッチングの審査を実施した。20万人を超える応募者から8万人に絞り込む「第一次選考」である。「第一次選考」でどの程度の絞り込みが行われるかは大会組織委員会では明らかにしていない。
 マッチングが成立した応募者には、9月頃までに研修のお知らせのメールが、順次、送付され、次の段階に進んで2019年10月から始まる共通研修に臨む。いわば「第二次選考」である。この段階で約8万超程度に絞り込みが行われると思われる。
 共通研修終了後、2020年3月以降に、大会ボランティアについては、「役割・会場のお知らせ」、都市ボランティアについては「採用通知」が送付されることで、最終的にボランティアとして採用されるかどうかが決められる。採用されたボランティアは、2020年6月から、大会ボランティアについては会場別研修、都市ボランティアについては配置場所別研修を受ける。
 なお海外在住の大会ボランティア応募者、約7万人については、2019年3月から7月にかけてテレビ電話等でオリエンテーションで行る。事実上の選考であるマッチングの審査は個別に連絡を取りながら実施すると思われるが、面談を行わないので作業は難航が予想される。マッチングが成立して採用された応募者は、来日して2020年6月以降に実施される会場別研修から参加する。渡航費用も必要となるので、果たして何人が実際に会場別研修に参加するのか懸念は残る。


大会ボランティアの受付 都市ボランティアの受付は背中合わせの隣に


大会ボランティアの説明会


都市ボランティアの面談 大会組織委員会担当者2名と応募者2名が一つのテーブルで面談


大会ボランティアの面談 事実上の「面接試験」 説明会とは違って応募者は緊張した表情


面談会場にはボランティアのユニフォームや帽子、靴が展示 試着可能


都外の説明会と面談開催スケジュール 東京スポーツスクエアでは、2月9日から5月下旬まで、90日程度開催予定


出典 東京2020大会組織員会

東京2020大会ボランティア 応募完了者20万4680人
 2019年1月25日、大会組織委員会は東京2020大会ボランティアについて、視覚に制約のある方等の募集を締め切り(2019年1月18日)、応募者完了者の合計は、204,680人となったとした。
 応募者の構成については、男性が 36%、女性が 64%、国籍は、日本国籍64%、日本国籍以外 36%、活動希望日数は、10日未満 2%、10日 37%、11~19日 33%、20~29日 12%、30日以上 16%としている。
 日本国籍以外の外国人が約4割近くも占め、応募完了者の総数を押し上げに大いに貢献した。活動希望日数が多かった理由も日本国籍以外の応募者が多かったことが上げられるだろう。
 昨年12月21日に募集は締め切られたが、応募登録手続きのプロセスにトラブルが発生し、約2万6000人が登録できなかった可能性があることが明らかになった。
 募集最終日にアクセスが集中し、応募者に最終認証用の電子メールが送れないなどの不具合が発生したのが原因とした。
 大会組織員会は、これまでに対象者には個別に連絡を取り、手続きの完了を依頼するなどの対応を完了した。

 応募完了者には、2019年1月からオリエンテーションの案内が送られ、2月以降、東京、大阪、名古屋など全国12カ所で面接や説明会などのオリエンテーションが始まる。そして応募者の希望活動分野とのマッチング(すり合わせ)が行われ、共通研修を受ける人の採用可否が決まる。採用された人は、10月以降に共通研修が行われ、2020年3月に正式に採用が決まり、活動場所や役割が通知される。

都市ボランティア、応募者は3万6649人 2万人の募集枠を大幅に上回る 
 2018年12月26日、東京都は2万人の募集枠に対し、3万6649人の応募者があったことを発表した。
 約1カ月前の11月21日では、応募者は1万5180人にとどまり、まだ約5000人足りなかったが、終盤になって一気に応募者が増え、1週間前の12月19日に発表した応募者数は2万8689人と募集枠の2万人を上回った。さらに最後の1週間で約1万人の駆け込み応募があった。
 応募者の性別は、男性が約40%で女性が60%で、幅広い世代に広がっているという。また外国籍の応募者は約10%とした(小池都知事 12月17日)。
 2019年1月には、応募者に対して案内状が送られ。2月から面接・説明会などのオリエンテーションが始まる。そして共通研修を受ける人の採用者が決まり、採用された人は9月から共通研修を受ける。2020年3月に、正式に採否が決まり、採用された人には活動場所や活動内容が通知される。
 
 12月21日、都教育委員会は、「都市ボランティア」の募集をめぐって、ある都立高校で担任の教諭がクラスの生徒に応募用紙を配り、「全員出して」と言っていたを明らかにした。担任の教諭に強制する意図はなかったとする一方、「強制と感じた生徒もいるようで、参加は任意だという説明が足りなかった」と指摘した。
 「都市ボランティア」は」、2020年4月時点で18歳以上の人が参加可能だ。募集締め切りの直前、12月19日にツイッター上で応募用紙の写真を添えて「とりあえず書いて全員出して!って言われたんだけど都立高の闇でしょ!」との投稿があり、「学徒出陣だ」といったコメントとともに拡散したという。(朝日新聞 12月22日)

東京2020大会ボランティア、目標の8万人達成 外国籍の応募者44% 新たな課題浮上
 2018年11月21日、大会組織委員会は、大会ボランティアの応募者が、20日午前9時時点で8万1035人に上り、目標の8万人を達成したと発表した。 注目されるのは応募者の44%が外国籍で半数近くに達したことである。希望活動分野は「競技」が最も多く、「式典」「運営サポート」も人気が高かった。これに対して「移動サポート」などは希望者が少なく12月21日まで募集を継続するとしている。
 大会ボランティアの募集は2018年9月26日に開始し、当初は「1日8時間程度、合計10日以上」といった応募条件が「厳しすぎる」との懸念が出ていたが、2カ月弱で目標に達した。
 応募完了者の8万1035人に対し、応募登録者は132,335人に達している。
 募集にあたっては、英語サイトも開設し応募を受け付けた。日本語を話せることは条件はない。結果、外国籍に応募者が半数近くの44%にも達した。 
 大会組織委員会の武藤敏郎事務総長は「多くの方に応募していただき、感謝している」と述べた上で、外国籍の人が多かった理由については「確たることを言うのは難しい。海外でのボランティア活動への積極的な受け止め方もあるのだろう」との見方を示し、「(応募者と活動内容の)マッチングを適切にしたい」と語った。
 組織委によると過去の大会では、採用された外国籍の人の割合は10%以下が多かったという。
 応募者の全体で見ると、男女別では女性が60%、男性が40%。年齢層は20代が最多の32%で、10代から80歳以上まで幅広い年代にわたった。
 しかし、日本国籍の応募者に限ると50代(22%)が最も多く、20代(12%)、30代(11%)は少なかったという。
 応活動希望日数は、10日が33%、11日以上が65%で、30日以上が19%となっている。
 応募締切は、2018年12月21日(金)17時だが、視覚に制約がある応募者は、2019年1月18日(金)17時の締切(専用の応募フォーム提出期限)となっている。

 東京2020大会のボランティア募集がこれだけ海外から注目を浴びたのは喜ばしいことではあるが、日本語を話せることが条件ではないため、活動分野のカテゴリーによっては、大会関係者とのコミュニケーションがうまく行かない懸念も生じる。また、「土地勘」がない場所でのボランティア体験には、ボランティア自身がとまどう状況も十分想定しなければんらない。
 さらに、国内籍の応募者は、2019年1月~7月の間にオリエンテーション(説明会・面接)や2019年10月からは共通研修、2020年4月からは役割別・リーダー研修、そして6月からは会場別研修に参加しなければならないが、外国籍の応募者は2020年6月の会場別研修から参加すれば良いことになっている。明らかに日本籍と外国籍の応募者の間には研修内容に有意差があり、十分なトレーニングが行うことができるか疑念が残る。(下記 ボランティアジャーニー参照)
 大会運営上の観点だけで考えると、日本国籍の応募者を主体にする方が効率的かもしれない。
 また来日する外国籍のボランティアに対して、宿泊などは自己責任としながらも、大会組織委員会はきめ細かなサポート体制を整える必要も迫られてきた。
 外国籍のボランティア、長期に渡る滞在施設の確保や航空券の手配などハードルが高いため、ボランティアに採用されても来日を断念するケースも多発する懸念がある。
 大会組織委員会では、「マッチングを適切にしたい」とし、暗に外国籍ボランティアの採用を厳しく審査する方向性を示唆している。
 しかし、応募者の半分近くに達した外国籍のボランティアの採用数が、日本国籍と外国籍との間で大幅な格差が生じた生じると、国際社会からは「差別」だと見られて大きな批判を招く可能性がある。大会組織委員会が採用の審査を適切に実施した結果だと説明にしても、審査の結果、外国籍の採用数が何人になるかが問われることになるだろう。外国籍のボランティアの採用数を抑えることは、国境を越えた連帯を掲げるオリンッピク精神に明らかに背くことになる。
 「外国籍の応募者44%」、大会組織委員会は大きな難題を抱えた。 

東京2020競技会場マップ


都市ボランティアの募集 出典 東京都
東京都は広瀬すずが出演したボランティアの募集のCMの制作に約4000万円かけた。



ボランティアは「タダ働き」の労働力ではない!


東京2020大会ボランティア募集開始
 2018年9月26日、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会と東京都は、大会を支えるボランティアの募集を開始した。インターネットなどで12月上旬まで応募を受け付け、計11万人の人員確保を目指す。
 大会組織委は競技会場や選手村などで競技や運転など各種運営をサポートする「大会ボランティア」8万人、東京都は空港や駅、観光地で、国内外から訪れる人たちへ観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」3万人を募集する。
 「都市ボランティア」3万人の内、1万人は東京都観光ボランティアや2019年に開催されるワールドカップで活動したボランティア、都内大学からの希望による参加者、都内区市町村 からの推薦者(5,000 人程度)などが含まれるとしている。
 対象は20年4月1日時点で18歳以上の人。原則として大会ボランティアは休憩や待機時間を含めて1日8時間程度で計10日以上、都市ボランティアは1日5時間程度で計5日以上の活動が条件となる。
 食事やユニホーム、けがなどを補償する保険費用は支給され、交通費補助の名目で全員に1日1000円のプリペイドカードを提供するが、基本的に交通費や宿泊費は自己負担となる。また、大会ボランティアは希望する活動内容を三つまで選択できるが、希望順を伝えることはできない。
 ボランティアの応募者は、書類選考を得て、説明会や面接、研修などに参加した後、2020年3月頃に最終的に採用が決まる。4月からは役割や会場に応じて複数回の研修を受けて、7月からの本番に臨む。
 いずれもユニホームや食事が提供されるほか、交通費についても有識者会議で「近郊交通費ぐらいは出せないか」との意見が出たため、1日1千円のプリペイドカードを支給するこことが決まった。
 応募期間は12月上旬までとしているが、必要数に達しない場合は再募集も行う。
 大会ボランティアは組織委ホームページ(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/)から、都市ボランティアはボランティア情報サイト「東京ボランティアナビ」(http://www.city-volunteer.metro.tokyo.jp/)などで申し込みができる。
 組織委と都は26日午後1時の募集開始に合わせ、新宿駅西口広場でPRチラシを配布し、応募を呼びかけた。
 募集担当者は「今後はボランティアに関する情報をきちんと伝えていきたい。大会を自分の手で成功させたいと思っている人にぜひ応募してほしい」と話している。
 しかし、東京2020大会ボランティア募集については、早くから「10日以上拘束されるのに報酬が出ない」とか「交通費や宿泊費が自己負担」などの待遇面や募集条件が厳しいことで、「タダ働き」、「やりがい搾取」、「動員強制」との批判が渦巻いている。
 東京オリンピックは、果たしてボランティアが支える対象としてふさわしい大会なのだろうか、疑念が湧いてくる。

大会ボランティアの活動内容は?
 大会ボランティアは、競技会場や選手村、その他の大会関連施設で、観客サービスや競技運営のサポート、メディアのサポート等、大会運営に直接携わる活動をする。
 大会ボランティアの活動分野は9つのカテゴリーに分かれている。








出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

大会ボランティアは「経験」と「スキル」を要求する業務 ボランティアの役割の域を超えている
 大会ボランティアの活動分野の内、「案内」(1万6000人~2万5000人)は、“日本のおもてなし”の思いやりあふれたホスピタリティを実現させるサービスとして、ボランティアの本来活動分野としてふさわしいだろう。また「式典」(1000人~2000人)も同様と思える。
 しかし、「競技」(1万5000人~1万7000人)、「移動サポート」(1万人~1万4000人)、「アテンド」(8000人~1万2000人)、「運営サポート」(8000人~1万人)、「ヘルスケア」(4000人~6000人)、「テクノロジー」(2000人~4000人)、「メディア」(2000人~4000人)ともなると、相応の経験をスキルが要求され、明らかにボランティアの活動領域を超えている。大会運営に関わるまさに根幹業務で基本的に大会スタッフが担当すべきだ。
 「運営サポート」では、IDの発行もサポートするとしているが、IDの発行は、セキュリティ関わるまさに重要な業務で、個人情報の管理も厳しく問われる。ボランティアが携わる業務として適切でない。組織委員会が責任を持って雇いあげた大会専任スタッフが行うべきだ。
 また「案内」のセキュリティーチェックに関わる業務もボランティアがやるべきではない。大会専任スタッフが担当すべきだ。
 「競技」では、競技の運営そのものに関わるとしているが、これは競技運営スタッフが行うものでボランティアが担う役割ではないだろう。競技運営スタッフは事前に十分なトレーニングと習熟を得なければならない。当然、経験とスキルが要求される。
 「移動サポート」は、運転免許証を要求するので、「補助」ではなく、「ドライバー」なのである。大会開催時には、組織委員会は輸送バス2200台、輸送用車両2500台を運行する予定で、ドライバーなどの輸送支援スタッフを3万人/日を有償で確保する。さすがに輸送用バスをボランティアのドライバーが運転することはないだろうが、8人乗り程度のVANの運転はボランティアに頼ることになりそうだ。大会車両の運転は安全性の確保の責任が大きく、運転はボランティアではなく、大会運営スタットとして雇われた「ドライバー」が担うべきだ。安易なボランティア頼みは問題である。
 海外からの選手が多い五輪大会の「アテンド」は語学のスキルが要求される。英語はもとより、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、中国語、韓国語、アラビア語、多様な言語のスキルを持ったスタッフを揃えなければならない。言語のスキルを持つ人に対しては、スキルに対して相応の報酬を払うが当然だ。
 例えば、大会スタッフとして雇用された通訳には1日数万円の報酬が支払わられ、その一方でボランティア通訳は「ただ働き」、これは差別としかいいようがない。スキルと経験に差があるというなら、スキルと経験や業務内容に応じて報酬は支払うべきだろう。仕事の内容は程度に差はあれほぼ同一なのに、「現場監督」は有償で、「部下」はボランティアという名目で「タダ働き」、あまりにも理不尽である。
 「ヘルスケア」、「テクノロジー」はまさに専門職のスキルが必要で、ボランティアの活動領域に当たらない。
 「メディア」対応も、運営スタッフの専門領域だ。もっともメディアの人混み整理程度の仕事ならボランティアで可能だろう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の期間(ソチ五輪、リオデジャネイロ五輪)に、世界の放送機関から41億5700万ドル(約4697億円)という巨額の放送権料を手に入れている。国際オリンピック委員会(IOC)や組織員会は、責任を持ってメディア対応スタッフを有償で雇い上げて、メディアにサービスをしてしかるべきだ。

 大会の運営にあたって、組織委員会はさまざまな分野で大勢の大量の大会運営スタッフを雇い入れる。輸送、ガードマン、医師・看護婦、通訳、競技運営、その数は10万人近くになるだろう。大会運営スタッフは、業務経験やスキル、業務内容に応じてその待遇は千差万別だが、報酬が支払わられ、交通費や出張を伴う業務を行う場合には宿泊費、日当も支払われるだろう。
 業務内容に程度の差はあれ、ほとんど同じ分野の業務を担って、ボランティアは無報酬で「タダ働き」、交通費も宿泊費も自己負担というスキームは納得がいかない。有償の大会運営スタッフとボランティアの差は一体なにか、組織委員会は果たして明確に説明でるのだろうか?

ウエッブの応募サイトを開くと更に疑問が噴出 
 「東京2020大会ボランティア」の応募登録サイト(https://tokyo2020.org/jp/special/volunteer/method/)
を開くと、まず驚くのは「応募フォームの入力には約30分かかります」という注意書きが赤い文字で書かれていることだ。
 入力フォームは、STEP 6まであり、入力しなければならない情報はかなり多い。
▼ STEP1 氏名、性別、生年月日、写真、必要な配慮・サポート 等
▼ STEP2 住所・連絡先、緊急連絡先 等
▼ STEP3 ボランティア経験、就学・就労状況
▼ STEP4 語学、スポーツに関する経験、運転免許証の有無 等
▼ STEP5 希望する活動(期間、日数、場所、分野) 等
▼ STEP6 参加規約・プライバシーポリシーへの同意
 STEP 1とSTEP2は、常識的な入力項目だが、STEP3になると、これがボランティア応募の入力フォームかと疑念がわき始めた。
 STEP3では、「ボランティア経験がありますか?」とボランティア経験が聞かれる。
 「はい」と答えると、「ボランティア経験の種類」、「活動内容」が聞かれる。
 また「ボランティアリーダーの経験ありますか?」と聞かれ、同様に「活動内容」が訊ねられる。
 さらにスポーツに関わる活動を選択した人に対しては、「国際レベルの大会に選手として参加」、「全国レベルの大会に選手として参加」、「その他の大会に選手として参加」など選手として競技大会に参加経験があるが聞かれる。
 そして「審判としての経験」、「指導経験」、「競技運営スタッフとしての経験」などが問われる。
 語学のスキルや希望する活動分野(10項目から選択)についても聞かれる。
 これを元に書類選考し、まずふるいにかけるのである。

 この「応募フォーム」はまるで大会スタッフ応募のエントリーシートのようである。就職試験のエントリーシートとも見間違う。
 業務経験とスキルを重視する姿勢は、善意と奉仕を掲げるボランティア精神とはまったくかけ離れている。
 やはり、「大会ボランティア」の募集とは到底考えられず、「大会スタッフ」の募集フォームなのである。
 本来は、大会スタッフとして、報酬を払い、交通費、宿泊費を支払って雇用すべき業務分野なのである。
 それを「ただ働き」させるのは、筆者はまったく納得がいかない。
 「大会ボランティア」は善意と奉仕の精神を掲げボランティアの活動領域ではない。ボランティアに応募する善意と奉仕の精神に甘えきった「やりがい搾取」である。

事前の説明会、研修で大幅に拘束されるボランティア
 ボランティアとして採用されるには、事前に何回も説明会や研修に参加することが義務付けられている。
 大会ボランティアの場合、2019年1月から7月頃までに、オリエンテーション(説明会)や面談に呼び出される。
 10月からは共通研修が行われ、2020年4月からは役割別の研修やリーダーシップ研修が始まる。6月からは会場別の研修が行われ、ようやく本番に臨むことになる。
 実は、ボランティアとして活動するためには、オリンピック開催期間中に最低10日間(都市ボランティアは5日間)を確保すれば済むわけではないのである。頻繁に、説明会や面談、研修などに参加しなければならない。そのスケジュールは、現時点ではまったく不明で、組織委員会の都合で、一方的に決められるだろう。
 約1年半程度、あれこれ拘束されるのである。
 仮に地方からボランティアとして活動しようとしている人は、そのたびに交通費や宿泊費などの自己負担をしいられる。首都圏在住の人も交通費は負担しなければならないし、なによりスケジュールを空けなければならない。1日1000円のプリぺードカードが支給されるかどうかも不明だ。
 組織委員会が雇い上げる大会スタッフには、事前のオリエンテーション(説明会)や研修に対しても1日いくらの報酬が支払わられるだろう。
 要するに、大会開催経費を圧縮するために、ボランティアというツールを利用する構図なのである。
 「オリンピックの感動を共有したい」、「貴重な体験をしたい」、「人生の思い出に」、ボランティアに応募する人は、善意と奉仕の精神に満ち溢れている。
 こうしたボランティアの人たちへの「甘え」の構図が見えてくる。
 やはり、「やりがい搾取」という疑念が筆者には拭い去れない。
 ボランティアは「自発的」に「任意」で参加しているから問題ないとするのではなく、オリンピックが「やりがい搾取」という構図で成り立っていることが問題なのである。
 無償のボランティアが11万人も働く一方で、オリンピックというビック・ビジネスで膨大な利益を上げている企業や最高で年間2400万円とされる高額の報酬を得ている組織委員会関係者を始め、ボランティアとほぼ同様の業務を担う有償で雇う膨大な数の大会スタッフが存在することが問題なのである。
 ちなみに森組織委会長は、報酬を辞退して、「ボランティア」として大会組織委員会業務を担っている。
 
 
出典 2020東京大会組織員会 募集リーフレット 

都市ボランティアは、ボランティアにふさわしい活動領域
 経験とスキルが要求される大会ボランティアに比べて、東京都が募集している都市ボランティアの活動領域は、本来ボランティアが担うのにふさわしい領域だろう。世界最高の「おもてなし」、優しさあふれたホスピタリティ、まさに東京大会レガシーにしたい。世界各国や日本各地から東京を訪れる人たちに、東京のよさをアピールする恰好の機会だ。
 筆者も海外各国を出張や旅行でたびたび訪れたが、初めての都市では、地下鉄やバスの切符の買い方、目的地までの道順など戸惑うことがたびたびである。空港や駅、繁華街、観光地、競技場周辺など、ボランティアが活躍する場は多い。
 外国人に接する場合も、簡単な日常会話ができれば問題なく、高度な語学力の専門知識も不要で、年齢、職業、スキルを問わず活動ができる。
 「5日間以上」とか事前の説明会や研修等への出席などの要求条件は若干厳しいが、ボランティアの本来の概念に合致している。
 東京大会でボランティアの参加を目指す学生の皆さん、「ブラックボランティア」の疑念が多い大会ボランティアでなく、都市ボランティアを目指すのをお勧め!

「企業ボランティア」はボランティアではない
 9月7日、大会ボランティアとして参加予定の社員324人を集めてキックオフイベントを開いて気勢を上げて話題になった。
 富士通は東京大会に協賛するゴールドパートナーで、語学力などなどを生かしたボランティア活動を社員に呼びかけ、手を挙げた約2千人から選抜したという。
 今後、リーダー役を担うための同社独自の研修や、他イベントでの実地訓練などを行う予定という力の入れようだ。
 ボランティア活動には積み立て休暇や有休を利用して参加してもらう予定だという。
 富士通の広報担当者は「当社はこれまでにも、さまざまなボランティア活動に参加しており、今回もボランティア活動を通じて良い経験を積んで、仕事に生かして欲しい」と話している。
 大会組織委員会は、8万人のボランティアの公募に先だって、大会スポンサーになっている45社の国内パートナーに1社当たり300人のボランティアを参加してほしいと要請を出したという。公募だけで8万人を確保するのが難しいと考えたと思える。

 しかし、冷静によく考えてみると、富士通のボランティアは、「企業派遣ボランティア」で、本来のボランティアではなく、企業のイメージアップを狙う「社会貢献」の範疇だろう。富士通のボランティアは、休暇を利用するにしても、有給休暇で、給料は保証されているである。
 大会組織委員会には、電通、JTB、NTT、東京都などから派遣されたスタッフが大量に働いている。いずれも、組織委員会からは報酬を受け取っていない。しかし、給料は派遣元の組織からしっかり支払われているので「奉仕」でもなんでもない。
 電通、JTB、NTTからボランティアが参加したにしても、富士通のボランティアと同様に給料はしっかり保証されている。さらに、こうした企業は、大会開催の業務を組織員会から受注し、数千億円の収入を得る「業者」なのである。
 もはや、そこには善意も奉仕も感じ取ることはできない。
 巨大なオリンピック・ビジネスの一端を担っている企業のビジネス活動の一環と見なすのが妥当だろう。

「平成の学徒動員」? 文科省とスポーツ庁 ボランティア参加を促す通知
 7月26日、文部科学省とスポーツ庁は、東京オリンピックのボランティアの参加を促す通知を全国の大学や高等専門学校に出した。
 通知では、東京オリンピックのボランティアの参加は、「競技力の向上のみならず、責任感などの高い倫理性とともに、忍耐力、決断力、適応力、行動力、協調性などの涵養の観点からも意義がある」とし、「学生が、大学等での学修成果等を生かしたボランティア活動を行うことは、将来の社会の担い手となる学生の社会への円滑な移行促進の観点から意義がある」とした。そして「特例措置」として、東京オリンピック・パラリンピックの期間中(2020年7月24日~8月9日、8月25日~9月6日)は、「授業・試験を行わないようにするため、授業開始日の繰上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能であり、学則の変更や文部科学大臣への届出を要しない」とした。
 学生がボランティアに参加しやすくするために、大会期間中は授業は休みにし、期末試験も行わなず、連休などの祝日に授業を行って欲しいという要請で、こうした対応は文科省への届け出なしに各大学や高等専門学校の判断で自由にできるとしたのである。
 また、これに先立って、4月下旬には、「各大学等の判断により、ボランティア活動が授業の目的と密接に関わる場合は、オリンピック・パラリンピック競技大会等の会場や、会場の周辺地域等におけるボランティア活動の実践を実習・演習等の授業の一環として位置付け、単位を付与することができる」とする通知を出し、学生のボランティア参加を促すために、単位認定を大学に求めるている。
 とにかく異例の通知である。
 東京オリンピックのボランティアは、大会ボランティアが8万人、都市ボランティアが3万人、合計11万人を確保する計画だが、これだけ大量の人数が確保できるかどうか疑問視する声が起きて、危機感が漂っていた。
 ボランティアの要求条件は、大会ボランティアで「10日間以上」、都市ボランティアで「5日間以上」、さらに事前の説明会や研修への参加義務があり、働いている人にとってはハードルが高い。一方で「2020年4月1日で18歳以上」という年齢制限がある。そこで大学生や高等専門学校、専門学校の学生が「頼みの綱」となる。
 この「特例措置」対して、明治大、立教大、国士舘大などが東京五輪期間中の授業、試験の取りやめを決定した
 明治大は「自国でのオリンピック開催というまたとない機会に、本学学生がボランティア活動など、様々な形で大会に参画できる機会を奪ってしまう可能性がある」(7月26日)として、五輪期間中の授業を取りやめ、穴埋めとして同年のゴールデンウィークの祝日をすべて授業に振り替えるという。
 立教大も「学生のボランティア活動をはじめとする『東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会』への多様な関わりを支援するため」(8月9日)休講に。国士舘大も「学生の皆さんがボランティアに参加しやすいよう2020年度の学年暦では以下の特別措置を準備しています。奮って応募してください」(18年8月9日)と呼びかけている。(WEBRONZA 小林哲夫 8月31日)
 しかし、一方で「平成の学徒動員」と反発する声も強い。
 大会組織委員会や東京都が、ボランティアへの参加を呼びかけるのは当然だが、文科省やスポーツ庁が乗り出し、「特例措置」まで設けてボランティアの参加を後押しするのは行き過ぎだろう。「平成の学徒動員」という批判だ巻き起きるのも理解できる。
 善意と奉仕の精神と自発性を重んじるボランティアの理念と相いれない。


ボランティア募集 大会組織委員会/日本財団

オリンピックは巨大なスポーツ・ビジネス
 国際オリンピック委員会(IOC)は、2013年から2016年の4年間(ソチ冬季五輪とリオデジャネイロ夏季五輪)で51億6000万ドル(約5830億8000万円)の収入を得た。2017年から2020年の4年間(平昌冬季五輪、東京夏季五輪)では60億ドルを優に超えるだろう。また、IOCとは別に2020東京大会組織員会の収入は6000億円を見込んでいるので両者を合わせると1兆円を上回る巨額の収入が見込まれているのである。
 もはやオリンピックは巨大スポーツ・ビジネスで、非営利性とか公共性とは無縁のイベントといっても良い。スポーツの感動を商業化したビック・イベントなのである。
 オリンピックの過度な商業主義と膨張主義は、批判が始まってから久しい。
 そもそも、善意と奉仕を掲げるボランティアの精神とオリンピックは相いれない。
 東日本大震災や熊本地震、北海道胆振地震、西日本豪雨で活躍している災害ボランティアとは本質的に違う。
 
 2012年ロンドン五輪では、7万人の大会ボランティアと8000人に都市ボランティアが参加し、2016年リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアと1700人のシティ・ホストが参加した。
 リオデジャネイロ五輪では、5万人の大会ボランティアの内、1週間で1万5000人が消えてしまい、大会運営に支障が出て問題になったのは記憶に新しい。
 また平昌冬季五輪では、2万2000人のボランティアが参加したが、組織委員会から提供された宿泊施設(宿泊料は組織委員会が提供し無料)の温水の出る時間が制限されたり、氷点下の寒さの中で1時間以上、送迎バスを待たされたりして、2400人が辞めてしまった。
 勿論、ボランティアは無償(リオ五輪のシティ・ホストは有償 但しリオ市内の貧困層を対象とした福祉政策の一環)、報酬は一切支払われていない。国際オリンピック委員会(IOC)の方針なのである。
 無報酬のボランティアの存在がなければオリンピックの開催は不可能だとIOCは認識しているのである。
 東京大会組織委の担当者が日当を払うことの是非について、IOCに尋ねた際、「それだとボランティアではなくなる」などと言われたという。IOCのコーツ副会長は9月12日の記者会見で「今後もボランティアに日当を払うことはない。やりたくなければ応募しなければいい」と強い調子で話した。(朝日新聞 9月27日)
 一方、「ブラックボランティア」の著書がある元広告代理店社員の本間龍氏は「今のオリンピックはアマチュアリズムを装った労働詐欺だ」と多額の金が集まるオリンピックでボランティアは大きな役割を担うのだから必要な人員は給料を払って雇うべきだと主張する。(TBS ニュース23 9月26日 「五輪ボランティア募集開始 『ブラックだ』批判のワケ」)
 これに対し、小池東京都知事は、「ボランティアへの待遇は過去の大会と遜色のないものになっている。何をもってブラックだと言うのか分からない」と真っ向から反論した。

 
五輪開催経費、1兆3500億円の削減を迫られている大会組織委と東京都
五輪開催経費(V3) 1兆3500億円維持 圧縮はできず
  12月21日、大会組織委員会と東京都、国は、東京2020大会の開催経費の総額を1兆3500億円(予備費1000億円~3000億円除く)とするV3予算を公表した。
 1年前の2017年12月22日に明らかにしたV2予算、1兆3500億円を精査したもので、経費圧縮は実現できず、V2予算と同額となった。
 2017年5月、IOCの調整委員会のコーツ委員長は10億ドル(約1100億円)の圧縮し、総額を1兆3000億円以下にすることを求めたが、これに対し大会組織委の武藤敏郎事務総長はV3ではさらに削減に努める考えを示した。
 しかし開催計画が具体化する中で、V2では計上していなかった支出や金額が明らかになったほか、新たに生まれた項目への支出が増えたとして、「圧縮は限界」としV2予算と同額となった。
 
 支出項目別で最も増えたのは組織委負担分の輸送費(350億円)で、選手ら大会関係者を競技会場や練習会場へ輸送するルートなどが決まったことで計画を見直した結果、100億円増となった。一方で、一度に多くの人が乗車できるよう大型車に変更するなど輸送の効率化も図ったとしている。
 また、交通費相当で1日1000円の支給が決まったボランティア経費増で管理・広報費は50億円が増え、1050億円となり、さらに猛暑の中で食品を冷やし、安全に運ぶためのオペレーション費も50億円が増え、650億円となり、支出の増加は合わせて200億円となった。
 これに対して収入は、国内スポンサー収入が好調で、V2と比較して100億円増の3200億円となった。しかし、V2予算では、今後の増収見込みとして200億円を計上していたため、100億円の縮減となり、収支上では大会組織員会の収入は6000億円でV2と同額となっている。
 支出増の200億円については、新たな支出に備える調整費などを200億円削減して大会組織委員会の均衡予算は維持した。
 1兆3500億円の負担は、大会組織委員会と東京都が6000億円ずつ、国が1500億円とする枠組みは変えていない。
 今回の予算には、酷暑対策費や聖火台の設置費、聖火リレーの追加経費、さらに今後新たに具体化する経費は盛り込まれておらず、今後、開催経費はさらに膨らむ可能性もある。
 組織委は今後も経費削減に努めるとしているが、「数百億円単位、1千億円単位の予算を削減するのは現実的に困難」としている。
 大会開催までまだ1年以上もあり来年が開催準備の正念場、さらに支出が増えるのは必至だろう。今後、V3予算では計上することを先送りにした支出項目も次々に明るみになると思われる。「1兆3500億円」を守るのも絶望的だ。
 とにかく「1兆3500億円」は「つじつま合わせ」の予算というほかない。
 
 東京2020大会の開催費用は、「3兆円」に達するとされ、とどまることを知らない経費膨張に強い批判が浴びせられている。国際オリンピック委員会(IOC)もオリンピックの膨張主義批判を意識して、2020東京大会の開催費用の膨張に危機感を抱いて、その削減を強く要請しているのである。
 大会ボランティアの8万人に、仮に1日8000円で10日間、一人当たり8万円を支払うと総額は64億円に達する。
 組織委員会が無償ボランティアにこだわる背景が見えてくる。
 有償の大会スタッフの雇い上げをなるべく少なくして、無償のボランティアで対応し、人件費を削減する、そんな思惑が垣間見える。

 一方、2020東京大会の組織委員会が手に入れるローカル・スポンサー料収入は極めて好調で、V3予算では昨年より100億円増の3200億円を確保したとしている。
 2020東京大会の大会組織員会の予算は6000億円、64億円はそのわずか1%なのである。東京都や国も含めた開催費総額はなんと1兆3500億円、なんとか捻出できる額と思えるが……。
 2020東京大会は、巨大スポーツビジネスイベント、オリンピックの「甘えの構造」を転換するチャンスだ。

 2012ロンドン大会、2016リオデジャネイロ大会にはともに20万人を超えるボランティアの応募があったとされている。
 2020東京大会のボランティアに果たして何人の応募があるのだろうか。


“もったいない”五輪開催費用「3兆円」 青天井体質に歯止めがかからない! どこへ行った「世界一コンパクトな大会」

東京オリンピック レガシー(未来への遺産) 次世代に何を残すのか




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2018年9月27日 初稿
2020年3月8日 改訂
Copyright (C) 2019 IMSSR

***************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
***************************************




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東京オリンピック 朝日新聞社説批判 開催支持 メディア批判

2023年01月04日 10時04分00秒 | 国際放送センター(IBC)


東京オリンピック 朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 「五輪開催」支持


朝日新聞社説 2021年5月26日

5月26日朝刊 朝日新聞社説 「東京五輪 中止の決断を求める」(全文)


8月8日 2020東京五輪大会は閉会式 日本の獲得メダル数 金メダル27 銀メダル14 銅メダル17 過去最高 五輪のバトンは北京冬季五輪2022とパリ夏季五輪2024に  出典 TOKYO2020


大竹しのぶさんが子供たちと一緒に登場し、宮沢賢治作曲作詞の「星めぐりの歌」を合唱し,聖火が消える場面を飾った。
閉会式終了後にInstagramに投稿した大竹さんのコメントはまさに筆者のTOKYO2020への思いと重なる。

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東京オリパラ閉幕 朝日新聞は東京オリパラに対する報道姿勢を検証せよ
 9月5日、東京パラリンピックの閉会式が、13日間の熱戦に幕を閉じた。大会では22競技539種目が開催され、日本は前回リオデジャネイロ大会でゼロだった金メダルを13個獲得。銀は15個、銅23個で、総メダル数は51と過去3大会を大きく上回り、史上最多だった2004年アテネ大会の52個に迫り、パラアスリートの活躍で、多くの「感動」と「勇気」をもらった。
 閉会式は、「多様性の街」をテーマにした演出だったが、なにか雑然とパーフォーマンスが続き、開会式の「片翼のない飛行機」のようなインパクトはなかった印象を持った。
 その中で強烈なインパクトがあったのは「Paris2024」のパラ・アスリートたちのパーフォーマンス、五輪の閉会式に引き続き、「Paris2024」の圧勝。さすが「文化と芸術」の国、フランスには脱帽。
 五輪・パラの閉幕を迎え、最大の問題はメディアの報道姿勢である。五輪に対しては徹底的なバッシングを浴びせ、パラリンピックに対してはまったく沈黙する。その「手のひら返し」姿勢には唖然である。
 コロナ感染状況は、五輪開催時よりパラリンピック開催時の方がはるかに悪化、東京の感染者数は、パラリンピック開催直前には5000人(8月18日)を突破、医療逼迫は現実化して、感染しても治療も受けられない状況に陥っていた。五輪開催時に朝日新聞は、繰り返し医療逼迫の懸念を唱えていた。パラリンピック開催については医療逼迫は黙認するのか。
 パラリンピックの参加者は約4400人、規模は五輪の約半分以下だが、超ビックな国際イベントには変わりはない。
 障害者の祭典、「共生社会」の実現という大義名分があれば、コロナ感染拡大のリスクを黙認していいのか。五輪バッシングに奔走したメディアは、パラリンピック開催に沈黙した「手のひら返し」報道姿勢を明快に説明すると共に、報道対応を冷静に検証すべきだろう。
 朝日新聞は、一面で東京本社社会部長・隅田佳孝の署名記事で「大会を通して突きつけられた社会の自画像から目を背けず、選手たちがまいてくれた気づきの種を育てよう。その先に大会のレガシーはある」と五輪レガシーについて言及する始末。
 また社説では、「パラ大会閉幕 将来に何をどう残すか」と見出しで、「障害の内容や程度は違っても、自らが秘めている能力に気づき、伸ばすことによって、新たな世界が開ける。13日間にわたる選手たちの躍動を通じて、人間のもつ可能性を肌で感じ取った人は多いだろう」として、「選手のプレーに感動し、それをただ消費して終わるのではなく、次代につながる、まさにレガシー(遺産)を残すことに英知を集めねばならない」とレガシー論を述べている。
 まさに「なにをかいわんや」である。朝日新聞は、東京オリンピック・パラリンピックを全否定して「開催中止」を主張したのではないか。

 女子マラソンの道下美里選手やボッチャ個人での杉本英孝選手は、メディアのインタビューで、涙を流して、悲願の金メダルを勝ち取った喜びとコロナ禍で1年延期された上に、開催されるかどうかわからないという不安に包まれる中で、苦悶しながら大会に向けてトレーニングを積んだ苦しさにさいなまれた日々を語った。
 メディアの五輪バッシングが激しく浴びせされる中で、アスリートの五輪大会開催を願う声は完全に封殺された。
 BBCニュースは、「東京五輪、国民が支持を表明しにくい日本」と見出しを掲げ、「アスリートが五輪に出たいと言えない、やってほしいという声があげられなくなっている」と「異論が許されない」日本の異常さを指摘している。
 競技後のインタビューで、アスリートは、口々に、この1年、コロナ禍で練習の場の確保もままならず、歯をくいしばって大会を目標にしてトレーニングを続けた苦悶の日々を語っている。アスリートたちを追い詰めたのはメディアの激しい五輪バッシング報道だ。
 こうしたアスリートたちの活躍で、メダルラッシュに沸き、大きな「感動」と「勇気」がもたらされた。コロナ禍で閉塞した社会に陥っていた日本にほっとする「清涼剤」になったのは間違いない。
 産経新聞は、パラリンピックが閉幕した9月6日の「主張」で、「開催は間違っていなかった。可能性を示した選手に拍手を」と述べた。筆者はこの「主張」を全面的に支持する。
 東京オリンピック・パラリンピック大会については、消え去った「復興五輪」、開催経費の肥大化、女性蔑視発言、開会式演出担当者の相次ぐ辞任など多くの問題点を抱え、批判されてしかるべきである。
 しかしながら、東京オリンピック・パラリンピック大会を全否定をするメディアの報道姿勢には納得できない。

 東京パラリンピック大会終了を待たずに、菅首相は突如、退陣表明。日本は一転して政局の季節に突入した。安倍長期政権とそれ引き継いだ菅政権、日本の政治は節目を迎える。
 いずれにしてもコロナ禍で開催された2020東京オリンピック・パラリンピックは、1964大会に並ぶ、「歴史に残る」大会になったのは間違いない。


9月6日 朝日新聞社説 「パラ大会閉幕 将来に何をどう残すか」

東京パラリンピック開幕 パンデミックの中での「強行」ではないのか?
 朝日新聞は、五輪開会式の日(7月23日)の朝刊で、「五輪きょう開会式 分断と不信、漂流する祭典」という見出しで社説を掲載、「東京五輪の開会式の日を迎えた。鍛え抜かれたアスリートたちがどんな力と技を披露してくれるか。本来ならば期待に胸躍るときだが、コロナ禍に加え、直前になって式典担当者の辞任や解任が伝えられ、まちには高揚感も祝祭気分もない。(中略)
 社説はパンデミック下で五輪を強行する意義を繰り返し問うてきた。だが主催する側から返ってくるのは中身のない美辞麗句ばかりで、人々の間に理解と共感はついに広がらなかった。分断と不信のなかで幕を開ける、異例で異様な五輪である」とした。
 そして、「感染防止を最優先で この1年4カ月は、肥大化・商業化が進んで原点を見失った五輪の新しい形を探る好機だった。実際、大会組織委員会にもその機運があったという。ところがいざ実行に移そうとなると、関係者の思惑が絡み合い、何より国際オリンピック委員会(IOC)と、その背後にいる米国のテレビ局や巨大スポンサーの意向が壁となって、将来につながる挑戦にはほとんど手をつけられなかった」と厳しく批判した。
 これに対して、パラリンピックの開催式が行われた翌日、朝日新聞は、1面で「<視点>共生社会へ、人々つなぐ大会に」という見出しの記事を掲載した。
 パラリンピック・アスリートに対しては、「大会延期決定から1年。選手たちは自国開催への思いを声高に語ることはできず、もどかしさを抱く」としてアスリートを思いやるコメントをのせた。
 そして、「残された体の機能を最大限に生かし、競技で表現する選手の姿は、たしかに心に響くものがある。それでも、新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、大会を開く意義は何か。記者も問い直す日々が続く。この大会が、違いを認め合い、わたしたちが生きる希望を見いだせるきっかけになれば、と願う。(中略)4400人の選手たちがそれぞれの思いを胸に臨む。人々がつながるための気づきがきっとある」とパラリンピック開催を「歓迎」し「賛美」するコメントで締めくくった。
 「五輪」と「パラリンピック」に対するこの違いは一体、どうなっているのだろうか。まったく納得できない。「五輪」のアスリートの思いにはまったく「無視」して、「パラリンピック」のアスリートには「共感」を寄せる、朝日新聞はその姿勢の違いを論理的に説明すべきだ。
 「五輪」に対する批判記事を執筆した朝日新聞の記者や論説委員、それに有識者や外部評論家は、パラリンピック開催についてどう考えているかコメントすべきだ。沈黙するのはあまりにもお粗末な対応だろう。
 パラリンピックもさらに深刻化したコロナ・パンデミックの中で「強行」された国際スポーツイベントなのである。

朝日新聞社説 パラリンピック開催は支持「安全対策に万全期して」


朝日新聞社説(8月24日) 「東京パラ大会 安全対策に万全期して」 上記の「東京五輪 中止の決断を求める」の社説と読み比べて欲しい

 今日(8月24)、東京パラリンピックは開会式を開催する。
 朝日新聞は、五輪開催については激しく攻撃を繰り返していたが、パラリンピック開催についてこれまで沈黙を続けていた。
 新型コロナウイルスの「感染爆発」という危機的な状況の中で、「世界各地から選手を招き、万単位の人を動員して巨大な祭典を開くことに、疑問と不安を禁じ得ない」としたが、開催については、「手のひら返し」をして「延期」や「中止」を主張せず、「安全対策に万全期して」して開催して欲しいとする。
 その一方で、「五輪を強行しながらパラを見送れば、大会が掲げる共生社会の理念を否定するようで正義にもとる。そんな思いも交錯して、五輪が終わった後、議論を十分深める機会のないまま今日に至ったというのが、率直なところではないか」と「言い訳」をした。
 「議論を十分深める機会」がなかったとして、世論の責任に転嫁しているが、朝日新聞はパラリンピック開催については「議論を十分深める」ことを行ったのか。これまで沈黙していたのではないか。メディアとしての責任を問う。
 そして、パラリンピック大会開催意義として「選手たちの輝き」を上げ、「大会では障害の程度に応じて多様な競技が展開される。一人ひとりが向き合っているハンデやその前に立ちはだかる壁を、自らに重ね合わせてプレーを見れば、人間のもつ可能性に驚き、励まされることだろう」とし、「純粋なスポーツとしてパラに関心を寄せ、楽しむ人も広がっている。選手たちの安全と健闘を心から祈る」と締めくくった。「五輪」とは一変して「暖かさ」にあふれたコメントだ。
 五輪大会中止を掲げた社説と読み比べて、五輪大会とパラリンピック大会に対する報道姿勢の違いに唖然とする。五輪のアスリートには「輝き」や「人間のもつ可能性に驚き、励まされる」ことはないのか。偏見に満ち溢れた不公正な論評に対して筆者はまったく納得しない。朝日新聞は五輪大会でのアスリートの姿に「感動」や「勇気」を感じ取っていないのか。
 繰り返すが筆者は、障害者の世界最大のスポーツの祭典であるパラリンピックの開催意義は高く評価し、コロナ禍でもその開催を強く支持している。コロナ禍だからこそ「感動」と「勇気」がもらえる大会開催は極めて大きな意味がある。
 朝日新聞は、朝日新聞のコマーシャルで、「スポーツは希望になる」として、1964東京大会の開催に尽力した朝日新聞記者の田畑政治氏を取り上げ、「若者が世界に挑戦する舞台を作り続けた」とし、「憧れを絶やすな」「スポーツのすそ野を広げていく」と宣言している。五輪バッシングを激しく続けた姿勢はどこにいったのか。
 しかし、新型コロナウイルスの感染状況は五輪開催時より更に深刻化して、「感染爆発」、「災害クラス」、医療崩壊は現実化して中での開催を批判しない朝日新聞などのメディアは糾弾に値する。

パラリンピック明日開幕 朝日新聞は、パラリンピックの開催中止をなぜ主張しない
 明日8月24日から、8月8日に閉幕した2020東京五輪大会に引き続き、8月24日から9月5日まで、パラリンピックが開催される。22競技、539種目が1都3県の21の競技会場で開催され、約4400人が参加する世界最大の障害者スポーツの祭典である。
 コロナ禍の大会開催となり、一般観客はすべての会場で受け入れないが、「学校連携プログラム」による小中高生の感染は認めることになった。

 五輪閉幕後も新型コロナウイルスの感染拡大は、更に加速し、「感染爆発」、「制御不能」、「災害レベルの感染猛威」という事態を迎えている。
 全国の新規感染者数(8月20日)は2万5876人、五輪が開幕した時は4377人(7月23日)は4377人、約6倍増、東京では1359人に対して5405人で約4倍と感染爆発が止まらない。
 8月22日、組織委員会は、東京パラリンピックの選手2人を含む、大会関係者30人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表した。パラリンピック関係者の1日の陽性者数としては、過去最多を記録した。
 医療逼迫の懸念は五輪時よりはるかに高まっている。
 東京の入院者数(軽傷中等症)は3968人に達し、病床使用率は66.5%、重症者数は271人に重症床使用率は69.1%、入院が必要な患者が病床が足らなくて入院できないケースが常態化している。医療崩壊が現実化しているのである。
 競技会場で大会関係者に傷病者が出た場合に受け入れる「指定病院」の都立墨東病院が、救急で重症者を受け入れは行うが、「新型コロナウイルス感染症を最優先としながら対応する」という。苦渋の選択である。こうした動きは他の病院にもあるという。都立墨東病院は「開催の是非」を議論すべきだとした。(8月19/20日 朝日新聞)
 こうした状況の中で、朝日新聞はパラリンピック開催の是非を論評する記事を掲載しない。唯一、「パラ学校観戦 割れる判断」(8月18日朝刊)だけが論評記事である。
 あれだけ、五輪開催については激しく批判していた報道姿勢とは一変をしたのには唖然とする。
 五輪開催時には、医療崩壊を理由に五輪開催を激しく批判したに対し、パラリンピック開催については、医療崩壊が現実化しているにも関わらす、開催を一切批判しない。
 朝日新聞はメディアとしての責任をどう考えているか。パラリンピック開催に関する批判をファクトを踏まえて掲載すべきだ。
 新型コロナウイルスの感染状況は、五輪開催を直前に控えた7月上旬より、今の方がはるかに深刻化している。もはや「感染爆発」、「制御不能」、「災害レベル」の感染猛威なのである。
 「オリンピック」と「パラリンピック」とでは開催の理念が異なり、「パラリンピック」は障害者スポーツの祭典であることは十分理解した上で、その開催意義は高く評価したい。
 にもかかわらず、残念だが、今の深刻なコロナ禍の中では、五輪大会以上に、アスリートや大会関係者の感染拡大リスクは「制御不能」と言わざるを得ない。
 また五輪開催で、国民の感染対策に「気の緩み」が生じると激しく批判したが、パラリンピック大会の開催で「気の緩み」は懸念しなくてよいのか。論理的に説明して欲しい。
 朝日新聞は、こうした状況を踏まえて、「パラリンピック」開催是非について、社説などで見解を表明すべきだろう。「沈黙」はメディアとしての責任放棄である。

宮崎商業 東北学院 試合を辞退 大阪桐蔭ブラスバンド 部員感染、甲子園での応援断念
 8月17日、高校野球大会本部は、選手ら5人の新型コロナウイルス陽性が確認された宮崎商業と東北学院が試合を辞退し、これを受理したと発表した。
 宮崎商業では今月14日の夕方、選手1人が発熱し、PCR検査で陽性反応を示していましたが、宿舎に入っているチーム関係者35人が医療機関で検査を受けた結果、発熱した選手を含め13人の感染がわかり、さらに保健所から8人が濃厚接触者と判断された。東北学院は、選手1人の陽性が確認され、選手3人と朝日新聞社の記者1人が濃厚接触者となった。
 高野連と朝日新聞社は、今大会で出場の可否を判断する際「個別感染」か「集団感染」かを重要視していて、宮崎商業については「集団感染」に該当すると判断し学校側に伝え、17日午前、宮崎商業から19日の初戦を前に出場を辞退するという申し出があり受理したとした。東北学院については、大会本部は「個別感染」としたが、東北学院は、出場するれば感染者や濃厚接触者が特定される恐れがありり、生徒の将来に影響を及ぼす可能性を懸念して「辞退」という判断に至ったという。東北学院副校長は「大変残念だが、生徒のプライバシーを守りたい」と述べた。
 宮崎商業と東北学園の対戦予定校は不戦勝になる。宮崎商は13年ぶり5回目の出場、東北学院が初出場だった。
 朝日新聞は、五輪大会では、コロナ感染で棄権した選手が出たことに言及し、「コロナ禍で涙をのんだ選手たちにとって、この五輪は公平だったと言えるのか。悩みながら出場した選手たちの思いは、報われたのだろうか」と主張した。高校野球については同じ主張はしないのか。高校野球の選手たちの思いは受け止めないのか。
 一方、大阪桐蔭吹奏楽部はブラスバンド演奏による応援を予定していたが、同部内に新型コロナウイルス感染者が発生したため、急きょ応援を取りやめた。同部OB会の公式ツイッターが「大切なお知らせ」と題し、「この度、吹奏楽部で新型コロナウイルス感染者が判明したため、本日予定していた甲子園での応援を取りやめる事になりました。楽しみにして頂いていた皆様には大変申し訳ございません」と投稿した。
 ついにコロナ感染は、選手や学校関係者に及び、前代未聞の2校の出場校辞退という状況に追い込まれた。
 更に悪天候の影響で、今日(8月18日)の試合開催も中止、史上最多の6度目の「延期」となり、選手の健康を守るために設けられた「休息日」も3日が設定されていたが、準々決勝後の1日だけに削減された。「強硬日程」に対しての批判記事は一切ない。
 こうした状況の中で、朝日新聞は高校野球の開催をこのまま継続することが適切なのか、論評する記事を一切掲載していない。五輪開催を激しく批判した報道姿勢はどこにいったのか。メディアとしての責任が問われる。

東海大菅生-大阪桐蔭 豪雨に見舞われ8回表でコールドゲーム 7対4で大坂桐蔭が勝利
 大会3日目の第一試合、東海大菅生-大阪桐蔭の試合は8回の表、東海大菅生の攻撃の最中に中断、甲子園球場は豪雨でグランドは水浸しになっていた。 雨は降りやまず、その後、ノーゲームが宣告され、8回表でコールドゲームとなり7対4で大坂桐蔭の勝利となった。しかし問題は、「中断」の判断は遅すぎたことだ。雨は5回頃から激しさを増し、中継映像を見ていても雨で明らかに視界がなくなり、グランドは水たまりになっていた。なぜ試合が成立する7回前に判断してノーゲームとして再試合にしなかったのだろうか。雨で延期が相次いでいる中で、強引に試合消化を優先させた運営姿勢は非難されてしかるべきだろう。とくかく大会本部は、なにがなんでも「開催ありき」、明らかにアンフェアな判断だった。
 NHKは、生中継番組で、「続行やむなし」を言い続けて、7回に入る前に「中断」について言及しなかったNHKアナウンサーと解説者の責任も問われる。

甲子園に入場認める学校関係者の範囲を制限
 8月20日、高野連と朝日新聞社は、阪神甲子園球場に来場できる代表校の学校関係者を、野球部員とその家族らに制限すると発表した。新型コロナウイルス感染の急拡大や、球場がある兵庫県が緊急事態宣言の対象になったことを受けた措置で、22日から適用する。
 来場者は代表校の校長が健康状態を管理できる野球部員や家族(選手・指導者1人につき3人まで)、教職員のみとする。吹奏楽部員やチアリーダー、一般の生徒らは来場できなくなる。
 これに先立って大会本部は16日に、学校関係者を生徒、保護者、教職員、野球部OB・OGらに限定し、それ以外の卒業生などを対象から外し、入場を認めている学校関係者の範囲を大会第5日(17日)から制限すると発表した。学校関係者の定義を生徒、保護者、教職員、野球部員だった卒業生とし、校長が氏名、連絡先などを管理できる人にした。
 第7日(19日)までについては返券に応じ、この措置に伴っての移動、宿泊のキャンセル料は主催者が負担するとした。
 しかし、「校長が氏名、連絡先などを管理できる人に限る」としたことで、これまでの「学校関係者」とは一体何だったのかという疑問がわく。学校が甲子園で観戦したいという人を募って、一般市民でも幅広く観戦が可能だったのではという疑念が生まれる。だとすればなんとも杜撰な「制限」と言わざるを得ない。
 また、代表校の関係者の感染者が出ても、「個別感染」か「集団感染」かを見極めて「個別感染」と見なされれば、チームとしての試合の出場は認められる可能性があるとしている。しかし、代表校の関係者は同じ宿舎に宿泊をしていて、練習、移動などは常に同一行動、マスク着用で「密」は避けるにしても、感染者が発生したら、「個別感染」か「集団感染」にかかわらず、感染リスクは極めて高くなるのは明らかだろう。朝日新聞は五輪大会で「個別感染」か「集団感染」の区別について言及したのか。高校野球だけなぜ特別扱いするのか説明を求めたい。
 「開催ありき」の姿勢はまさに高校野球にある。

朝日新聞は高校野球関係者のコロナ感染者を公表せよ 選手1人陽性 朝日新聞記者も濃厚接触者で待機

速報 宮崎商業の選手ら5人がコロナ感染
 高野連=日本高校野球連盟や朝日新聞は、宮崎商業の選手1人が14日夕方に発熱し、15日に病院でPCR検査を受けたところ陽性反応を示し、これを受けてほかの選手などもPCR検査を受けた結果、16日朝までに新たに選手など4人の感染が確認されたことを明らかにした。
 感染が確認された5人を含むチームの関係者は濃厚接触者について保健所の判断が出るまで宿舎の個室でそれぞれ待機している。
 宮崎商業は18日、第1試合で智弁和歌山高校との初戦に臨む予定になっている。
 大会主催者は、出場の可否について、濃厚接触者についての保健所の判断を待って緊急対策本部の会議を開き決定するとしている。
 一方、政府は今月31日までを期限に「蔓延(まんえん)防止等重点措置」を適用している兵庫、京都、福岡にも新たに「緊急事態宣言」を発令する方向で検討が進められている。朝日新聞は、「緊急事態宣言」のが発令された東京で、五輪開催を行うことに対して強く批判をした。兵庫に「緊急事態宣言」が発令されたら、朝日新聞は「高校野球開催」を予定通り無批判に続けるのだろうか。主催者として、メディアとしての説明を強く求める。

朝日新聞社は「高校野球大会中止」を検討しないのか
 日本人選手のメダルラッシュで沸いている五輪大会の開催中の7月27日、東京都の新型コロナ新規感染者数が過去最多となったことを受け、菅首相は、オリンピックを中止するという選択肢はあるかとの質問に対して、オリンピック中止の可能性を否定した。
 菅首相は、コロナ感染の再拡大が進む中で、朝日新聞社を始め、メディア各社から、オリンピック中止の可能性を再三に渡って問われていた。
 8月12日、朝日新聞は、一面トップで「31都道府県『感染爆発』」とい見出しを掲げ、厚労省の専門家組織は首都圏を中心に「もはや災害時の状況に近い局面」だと強い危機感を示したと伝えた。最早、日本は「感染爆発」の危機に立たされているのである。
 こうした中で8月10日に朝日新聞社と高野連が主催する夏の甲子園大会が開催されている。今日は雨のために中止となり、試合は明日以降に順延となった。
 朝日新聞などメディアは、五輪開催については、コロナ感染者が急速に増加している中、「中止の可能性」について、必要に菅首相に迫った。
 しかし、「感染爆発」の危機に突入したという局面の中でも、主催者である朝日新聞社は「高校野球中止」問題について言及をしない。開催を懸念する記事すら一切ない。
 筆者はこうした朝日新聞の報道姿勢にまったく納得しない。
 朝日新聞やメディアが五輪に対しては「中止の可能性」について菅首相に迫ったと同様に、高校野球の「中止」の可能性を朝日新聞社に問いたい。メディアとしての良心と正義が問われている。
 コロナ感染者爆発の危機は、明らかに五輪開催時を上回っている。


8月12日 朝日新聞1面 「31都道府県『感染爆発』」

朝日新聞は「高校野球」だけを特別扱いするな!
 8月10日、夏の高校野球大会が開幕した。開会式の選手宣誓で、小松大谷(石川)の木下仁緒主将は、「1年前、甲子園という夢がなくなり、泣き崩れる先輩たちの姿がありました。しかし、私たちはくじけませんでした。友の笑顔に励まされ、家族の深い愛情に包まれ、世界のアスリートから刺激を受け、一歩一歩歩んできました」と述べ、「人々に夢を追いかけることの素晴らしさを思いだしてもらうために、気力、体力を尽くしたプレーで、この夢の甲子園で高校球児のまことの姿を見せることを誓います」力強く締めくくった。
 「夢の甲子園」で高校球児が見せる「感動」と「勇気」そして、「希望」は、コロナ禍の中で閉塞感が溢れている今の日本の中で、後世に残るレガシーになる大会になることは間違いない。
 しかし、筆者は、朝日新聞の「五輪」に対する激しい批判と「高校野球」に対する報道姿勢に大きな疑問を抱く。
 五輪大会を目指したアスリートへの思いは無視して、高校球児の思いはしっかり受け止める、五輪あるリートの思いと高校球児の思いに違いはあるのか、朝日新聞に問いたい。
 五輪大会を社説で「中止勧告」をしたり、五輪バッシングを執拗に繰り返した姿勢への反省が一切ない。五輪は開催反対で、高校野球はなぜ開催なのか明快な説明が欲しい。
 夏の甲子園大会は、夏のスポーツビックイベントして全国的に絶大な人気がある。甲子園大会の関心の高まりは、出場校のある地域などを中心に、「人流」が増え、市民のコロナ対策への「気の緩み」を誘発するのは間違いない。
 朝日新聞は、五輪開催で市民の「気の緩み」が生まれ、「人流」が増加して、コロナ感染が増加する懸念を繰り返し指摘した。しかし、夏の甲子園大会ではその懸念がないのか。朝日新聞は明快な説明をすべきだ。五輪大会だけ、批判をして高校野球の悪影響には眼をつぶる報道姿勢には、まったく唖然とする。
 新型コロナウイルスの新規感染者は、高校野球が開幕した8月9日、全国で1万2073人、重症者は1190人と五輪が開催された7月23日に比べて倍以上になり、感染状況は更に悪化している。地元大阪や兵庫の新規感染者数は、大阪で995人、兵庫で275人に及び、病床占有率は40%を超えている。コロナのパンデミックは、五輪開催の時よりも更に悪化している。

 朝日新聞は、五輪開催による医療体制逼迫を厳しく警告した。しかし、夏の甲子園大会の開催で、地元の大坂、神戸の医療体制逼迫を警告する記事は一切ない。大坂、神戸の医療体制は崩壊寸前であろう。なぜ医療体制に言及しないのか朝日新聞は説明するべきだ。ちなみに五輪関係者で、コロナ感染で入院した人は、わずか4人で、五輪関係者のコロナ感染による「医療崩壊」は起きなかった。また、海外から来日した選手や大会関係者から、日本の市民にコロナの感染が広まったというファクトは今の所はない。
 また、多くの専門家やメディアは、五輪開催で「気の緩み」が生じて、「人流」が増して感染拡大に輪をかけたとしているが、印象論に基づいた発言、エビデンスがない。五輪開催で本当に「人流」は増えたのか。むしろ「巣ごもり観戦」で外出は減ったのではないかと筆者は分析する。

 8月10日、東京都医学総合研究所は、GPS の移動パターンからレジャー目的の人流・滞留を推定して、主要繁華街にレジャー目的で移動・滞留したデータを抽出して、主要繁華街 滞留人口を推定した。
 その結果によると、夜間滞留人口は、前週より 4.5 % 減少、6週連続の減少となった。7週前(6/20-26)と比較すると 30.2 % 減 となる。昼間滞留人口や、前週より 2.5% 減少、5週連続の減少となった。6週前(6/27-7/3)に比較して:19.7% 減 である。このデータを見ると、五輪開催が「人流増」につながったとするエビデンスはない。
 五輪と「人流増」の関係は、印象論でなく、エビデンスで論議するべきだろう。

 今年の夏の甲子園大会では、一般の観客は入れないが、参加各校の関係者や応援団などは1校当たり2000人を限度に入場を認めた。全国から選手や学校関係者が、交通機関や貸し切りバスを連ねて甲子園に集まる。
 政府や専門家は、感染防止策としてお盆を迎える中で「県境超える移動」の自粛を強く要請している。高校野球の開催はこうした要請に明らかに背反していることは間違いない。主催者の朝日新聞はこれをどう説明するのか。

 朝日新聞の論説委員・郷富佐子氏は「日曜に想う 『パラレルワールド』で起きたこと」とタイトルで、ボート競技のイタリア男子代表、ブルーノ・ロゼッティ選手 
がコロナ検査で陽性となり試合への出場ができなくなったり、サーフィン男子のポルトガル代表など、コロナ感染で棄権した選手が複数いたことに言及し、「おそらく今晩の閉会式で、バッハ会長は、高らかに「困難を乗り越えた東京五輪の成功」を宣言するだろう。 だが、いま一度、問いたい。コロナ禍で涙をのんだ選手たちにとって、この五輪は公平だったと言えるのか。悩みながら出場した選手たちの思いは、報われたのだろうか」と結論づけた。
 筆者は、郷富佐子氏に問いたい。
 今年の高校野球大会では、優勝候補筆頭の東海大相模高校で関係者31人が感染するというクラスターが発生し、県大会の出場を辞退、強豪校の福井商業や星稜(金沢市)、中越(長岡市)も感染者を出して県大会の出場を辞退している。
 こうした状況の中で、今年の高校野球は、「公平」だと言えるのか。
 朝日新聞の、ファクトを無視したアンフェアな五輪バッシング報道姿勢には唖然とする。

 さらに問題なのは、社説で「五輪反対」を唱えながら、五輪大会を支援するオフイシャル・サポーターを辞退せず、「経営と記事は別」として、スポンサーとしての営業活動を続けたことだろう。日本選手のメダルラッシュに沸くと、朝日新聞は、「手のひら返し」で五輪批判記事を引っ込めて、アスリートの「感動」と「称賛」の記事で紙面は溢れかえった。開催期間中は連日号外を発行し、日本選手の活躍を讃えている。号外には、しっかりスポンサーの広告も掲載、広告料収入もしっかり得ている。五輪を激しく批判しておきながら、アスリートへの「感動」を「売り物」にしている営業姿勢は問われてしかるべきだ。

 ライバルの読売新聞が7~9日に実施した全国世論調査では、東京五輪が開催されてよかったと「思う」は64%に上り、「思わない」の28%を大きく上回った。
 朝日新聞は、8月9日の1面で、東京本社スポーツ部長・志方浩文氏は「確かな理念を伝えられぬまま、東京五輪は終わった。でも、まだできることはある。組織委がすべての反省点を洗い出し、持続可能な五輪につなげる提案ができたなら、レガシーと言えるものになる」と述べた。
 しかし、検証しなければならいのは、組織委だけでなく、五輪ネガティブ報道に終始した朝日新聞の報道姿勢にある。朝日新聞の記者はすべて五輪ネガティブ報道を支持したのか。異論はなかったのか。社内で、五輪ネガティブ報道に対して、「ものを言えない」雰囲気がなかったのか。
 激しく五輪開催を批判する記事を執筆した記者の人たちに問いたい。
 五輪開催時よりより深刻になっているコロナの感染状況の中で、高校野球を開催することに何の疑問も持たないのか? 朝日新聞が主催するイベントだから批判はしないのか。ジャーナリストとしての正義が微塵も感じられない。
 
 朝日新聞を中心とするメディアの激しい五輪バッシング報道で、社会全体に、「五輪開催支持」だがそれを唱えられないという雰囲気が蔓延した。メディアに登場する評論家や有識者の多くは、ほとんど盲目的に五輪反対に追随した。まるで五輪反対を主張しないとまづいのではと思っているがごとくの無節操な大合唱を繰り返した。冷静にファクトを見つめる姿勢がない。
 こうした五輪バッシング報道で、追い詰められたのは、五輪を目指してきたアスリートたちである。
 競泳日本代表の池江璃花子選手は、ツイッターで「(東京五輪代表を)辞退してほしい」「(五輪の開催に対して)反対の声をあげてほしい」といったメッセージが複数寄せられていることを明かした。
 池江選手は「このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然のことだと思っています」としながら、2019年2月に白血病と診断されたことを受けて、「持病を持ってる私も開催され無くても今、目の前にある重症化リスクに日々不安な生活も送っています」と書いた。
 そして、「私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません」とコメント。「この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守ってほしいなと思います」と苦しい胸を内を明らかにした。
 アスリートの多くは、「五輪開催」を唱えたくても唱えられない状況に追い込まれたいただろう。社会全体に「ものを言えない」閉塞状況が覆った。まさに五輪反対ファシズム、冷静な議論の場を確保するデモクラシー社会を放棄した。
 こうした状況を生み出したのは朝日新聞を中心とするメディアの責任だ。メディアの責任は極めて重い。

 筆者は、改めて明快にしておきたいのは、熱烈は高校野球ファン、毎年、テレビ中継に1日中かじりついている。去年は中止になり本当にがっかりした。コロナ禍の中でも、感染防止対策を進めながら開催する姿勢を支持したい。コロナとの戦いは長期戦になるのは間違いない。コロナ禍だからこそ、スポーツイベントの開催を簡単に諦めるのではなくて、なんとか開催して、国民に「感動」と「勇気」を与えていくことが必須だろう。
 「五輪」も「高校野球」もまったく同じだ。

 一方で、筆者は五輪の在り方に全面的に賛同しているわけではない。
 止まることを知らない肥大化、膨大に膨れ上がる開催経費と地元負担の重圧、過度な商業主義、国際オリンピック委員会(IOC)の閉鎖的な体質や「浪費」体質、賄賂が横行する腐敗体質など厳しく批判を続けてきた。
 また完全に吹き飛んだ「復興五輪」の開催理念や招致を巡る贈収賄疑惑、放射能汚染水を巡る安倍前首相の発言問題も問い続けたい。この姿勢は変わることはない。
 しかし、筆者はオリンピックの開催理念、「多様性」と「調和」は支持したい。
 「分断」と「対立」を超えるツールとして「スポーツの力」を信じたい。


7月27日 朝日新聞号外

メダリストの涙の裏に「追い詰められた1年」の苦悶を見た
 五輪開催に対してメディアは連日のように激しい「五輪バッシング」を浴びせ続けた。
 BBCニュース(6月12日)は、「(日本)国内の議論は極めて感情的なものとなった。異なる意見は許されず、開催に前向きな思いをもつ人はそれを表明するのを恐れた。その影響はアスリートにも及んだ。白血病から復帰して競泳の東京五輪代表に内定し、多くの人に感動を与えた池江璃花子選手には、出場辞退を求める声がソーシャルメディアで寄せられた。彼女は、『このコロナ禍でオリンピックの中止を求める声が多いことは仕方なく、当然の事』である反面、『それを選手個人に当てるのはとても苦しい』とツイートした。中村知春選手も、『東京オリンピック・パラリンピックをやりたい、と声を大にして言えないのは、それはアスリートのエゴだとわかってるから。 別に何も考えてない訳じゃない』とツイッターに投稿した」と伝えた。
 アスリートが五輪に出たいと言えない、開催してほしいいう声が上げられなくなっていた。
 アスリートを追い詰めたのは、メディアの激しい「五輪バッシング」だったのは間違いない。
  メダルを獲得して表彰台に上がったアスリートには、笑顔と同時に涙があった。筆者は、涙の裏に、コロナ化で練習もできない一方で、目標としている五輪大会開催に激しい批判が浴びせられて苦悶し続けていた姿をアスリートの姿を見た。
 柔道、競泳、卓球、ソフトボール、そして史上最年少の金メダリストが出たスケートボード、五輪大会には、「感動」と「勇気」がもらえる。
 朝日新聞は、五輪大会の「感動」と「勇気」を伝える資格がない。

「金メダルラッシュ」 コロナ禍の中で「感動」と「勇気」を与えてくれるアスリート
 2020東京五輪大会は、開会式のNHK中継番組が、56・4%(ビデオリサーチ調べ 関東地区)という「驚異的」視聴率を獲得し、1964年東京五輪の61・2%に迫った。瞬間最高は61・0%に達したという。
 序盤戦の日本人選手の活躍は目覚ましく、「金メダル」ラッシュである。柔道では阿部詩選手と阿部一二三選手の兄妹が揃って金メダルに輝く。兄妹の同時金メダルは初の快挙である。競泳400メートル個人メドレーでは大橋悠依選手が完勝して金メダル、新種目のスケートボードでは堀米雄斗選手も金メダルを獲得した。
 そして、今日(7月26日)は、スケートボード女子ストリートで13歳の西矢椛選手が日本選手で史上最年少となる金メダルを獲得、また、16歳の中山楓奈選手が銅メダルを獲得した。五輪大会の新競技で2人の10代のメダリストが誕生した。夜になって柔道男子73キロ級で、大野将平選手が二連覇を達成した。
 こうした日本人選手の大健闘で、東京五輪大会の熱気は一気に高まった。アスリートの活躍は、コロナ禍で閉塞感が溢れる中で、ひときわ感動と勇気をもたらしてくれる。
 朝日新聞は、7月26日の朝刊の1面トップで初めて、「大橋 堀米 阿部一 阿部詩 金 兄妹で『金』 家族とともに」という見出しで、五輪大会での選手の活躍を讃える記事を掲載した。スポーツ面でも同様な趣旨の特集記事を掲載している。五輪大会に対する「熱気」を明らかに高める記事だ。
 これまで、朝日新聞は、五輪大会に対して痛烈な批判を繰り返してきた。その姿勢はどこにいったのか? 金メダルラッシュが続けば五輪批判はやめるのか? 余りにも節操がない「手のひら返し」のお粗末な報道姿勢である。
 朝日新聞は「五輪開催中止」を声高に社説に掲げて、五輪開催の意義すら否定したことを忘れたのだろうか。
 メディアは姿勢の一貫性が求められる。さもないとメディアとして最も重要な「信頼性」を失うだろう。


「大橋 堀米 阿部一 阿部詩 金 兄妹で『金』 家族とともに」 一転して日本選手の活躍を1面トップで報道 朝日新聞 7月26日 朝刊1面 

夏の高校野球大会 一般観客はなし 学校関係者は入場は認める
 7月22日、朝日新聞社と日本高等学校野球連盟は、第103回全国高等学校野球選手権大会を8月9日から25日まで(雨天順延)、北海道、東京から2校ずつ、45府県から1校ずつの計49代表校が出場して、阪神甲子園球場(西宮市)で開催すると発表した。選手や大会役員・スタッフらがPCR検査を複数回受けるなどの新型コロナウイルス感染防止対策に万全を期すとしている。
 焦点の観客の受け入れについては、一般の観客の入場は止めて、代表校の学校関係者に限り受け入れることとした。
 観客受け入れの可否については、政府や兵庫県などの大規模イベント実施の指針、「観客上限1万人」を踏まえた上で、入場者数を大幅に制限するケースを検討してきたが、全国各地から観客が来場し、長時間観戦することで感染リスクが高まる恐れがあることから、今回の判断になったという。
 なお、各代表校の生徒や保護者らについては当該試合に限り、入場可能とした。
朝日新聞社は「五輪中止」と主張して「高校野球」は「開催」するのか
 新型コロナウイルスの新規感染者は、東京で約2000人、全国で約5000人と爆発的増加が止まらない。お盆が終わる8月末には、更に増えるという予測がされている。
 状況は更に悪化しているのは間違いない。
 「五輪中止」の根拠として、大会を開催すると、県境を越えて全国からの「人流」が増加することを上げている。高校野球を開催したら、全国各都道府県から49代表校が甲子園に集まる。さらに1校当たり約2000人の学校関係者の入場を認めるために、全国から延べ10万人近い人が甲子園にやってくる。参加者の満載した専用バスを何十台も連ねて、甲子園から遠い地域では12時間以上かけて往復する光景が繰り広げられる。狭い社内に缶詰状態になり感染リスクは極めて高い。
 政府や感染が拡大している首都圏は、「県境をまたぐ不要不急の移動は控える」、「ステイホーム」を訴えている。
 高校野球の開催は、こうした方針に明らかに背くもものである。
 「五輪開催」は、こうした「人流」増は、感染者の増加を招き、医療の逼迫を招くと主張していたのではないか。
 また、「五輪開催」で、大会の雰囲気が高まり、気が緩むのが問題とする論拠も出された。高校野球は夏のスポーツイベントとして、絶大な人気を誇る。地元の高校が勝ち進めば、熱気が沸き上がるのは当然であろう。高校野球で熱気が沸き上がるのは許されて、五輪大会ではなぜだめなのか。納得のいく説明が欲しい。
 また高校野球の宿舎は、西宮周辺の旅館やホテルだが、選手たちは個室ではなく、「大部屋」と宿泊となる。五輪の選手村の環境よりはるかに悪い。
 筆者は、高校野球を「中止」を主張しない。高校球児の夢と希望をかなえるために是非開催すべきだと考える。学校関係者を受け入れるのも賛成である。
 同様に、五輪開催は支持、無観客ではなくて限定的ではあるが有観客で開催すべきだ。
 五輪に参加する世界のアスリートの夢と希望は、高校野球球児と同様に大切にすべきだろう。
 朝日新聞は、五輪報道、そして高校野球報道で、こうした疑問に答えて欲しい。 


朝日新聞 7月22日 「全国高校野球選手権大会 8月9日開幕 ころな対策に万全を期します」



「前例なき五輪、光も影も報じます」 朝日新聞表明
 7月21日、朝日新聞は、「前例なき五輪、光も影も報じます」という見出しで、ゼネラルエディター兼東京本社編集局長の坂尻信義氏の署名入り記事を1面で掲載した。
 「緊急事態宣言下の東京を主な舞台に、過去に例のない五輪が始まろうとしています。(中略)選手や関係者たちは、延期が決まってからの1年4カ月間、不安や葛藤にさいなまれてきたはずです。今日から始まる競技では、選手たちが重ねてきた努力の成果を存分に発揮してほしいと心から願っています」とした。
 一方で、選手や関係者は、外部との接触が制限される「バブル」の状況にほころびが目立ち、クラスター(感染者集団)が発生する恐れがあるとして、医療体制に負担をかけ、「平和の祭典」が、人々の健康や生命を脅かしかねないとした。
 五輪開催による感染拡大の批判は、当初は、大量の観客がスタジアムに押し寄せることに感染リスクに対してであった。しかし、「無観客」となって、「1万人」ともされた大会関係者の参加に批判が向けられたが、大会関係者が大幅に縮減されることになり、五輪リスクを主張する根拠がなくなった。そもそも、国立競技場などスタジアムの感染リスクはほとんどない。プロ野球やJリーグで観客のパンデミックが発生したことはない。科学的なファクトを無視している。
 そうすると、今度は、五輪開催で国民の間に高揚感が高まり、「人流」増可や、気が緩んで感染防止対策が甘くなり感染リスクが増すと主張が変わった。まさに、感情的な印象論での批判で、科学的なファクトの裏付けがない。
 問題は、五輪ではなくで、全国で3758人、東京で1387人に達した新規感染者の「爆発」だろう。渋谷や新宿の繁華街の「人流」は緊急事態宣言が出されたにも拘わらず、減少する様子はない。この「感染爆発」は、五輪は関係なく、五輪はむしろ「感染爆発」の被害者なのである。
 選手や大会関係者の「バブル体制」には、確かに「ほころび」があるが、それが原因でパンデミックが広がっている状況はない。選手や大会関係者の陽性者連日のように報告され、計67人(内選手3人、7月20現在)が出ているが、連日検査体制を実施すればある程度の陽性者が出るのは「想定内」だろう。
 2012ロンドン大会で公衆衛生ディレクターを務めたブライアン・ライアン氏は、IOCの会見で、「感染者は想定より少ない。選手村は安全だ」と語った。
無症状感染者は有症症状感染者の数割以上は存在すると考えるのが常識だ。東京で検査体制を充実させたら、連日300人近い、陽性者が新たに検出されるに違いない。
 五輪開催で医療体制の崩壊を指摘しているが、今の所、選手や大会関係者で入院している人はいない。医療体制に対する負荷はない。
 医療体制の逼迫は、全国で3758人、東京で1387人の新規感染者で引き起こされるのである。五輪のせいにするのは筋違いだ。
 坂尻氏は、「無謀な続行は、五輪の精神にもとる」として、「パンデミックのさなかに再延期や中止を選択しなかったことの是非は、問われ続ける」と明言した。
 筆者は、コロナ禍で社会全体を覆っている閉塞感を拭いさるため、少しでも「感動」と「勇気」がもらえる五輪大会は開催すべきと考える。勿論、感染防止対策は、最大限、実施するのは条件だ。
 新型コロナウイルスとの闘いは、長期間になることは必至の情勢だ。そこで必要になるのは、「withコロナの時代のニューノーマル」への模索である。五輪大会も、スポーツイベントも「中止」ではなくて開催の道を模索すべきだろう。感染防止策を講じながら、飲食店、酒類の提供、ショッピングセンター、劇場、コンサートの再開を目指し、市民生活を極力もとに戻すための知恵が求められる。
 「緊急事態宣言」、「重点措置」、「人流」の抑制、飲食店規制の手法では、最早、国民の支持は得られず、「コロナに打ち勝つ」ことはできない。
 コロナ・パンデミックの中で、開催をやり遂げることで、感染症の脅威にさらされ続ける時代へのレガシーにして欲しい。
それにしても「大会中止」を主張した朝日新聞は、五輪報道を自粛して、スポンサーを辞退すべきだ。


7月21日朝刊 朝日新聞 「前例なき五輪、光も影も報じます」

朝日新聞は「大会を盛り上げる」記事の掲載は止めるべきだ
 いよいよ23日には、開会式を迎え、五輪大会が始まる。
 朝日新聞を始め、各紙やテレビは、「反五輪」の主張を繰り返し、その論拠として、五輪開催期間中に日本選手の活躍などがあると五輪大会の機運醸成が巻き起こり、「人流」が増えたり、市民の気が緩んで感染対策が甘くなり、感染者が急増して医療崩壊が起きることを上げている。尾身茂政府分科会の論拠も同じである。
 しかし、大会の雰囲気を盛り上げるのは新聞各紙やテレビなどのメディアであろう。片方で懸念を示しながら、片方で「雰囲気を盛り上げ報道」に加担するのは納得がいかない。「反五輪」の主張を繰り返した筋を是非貫いて、五輪の「雰囲気を盛り上げ報道」は止めるべきだろう。
 日本人選手が金メダルをとろうが、日本代表チームが大健闘しようが、大会の雰囲気を盛り上げる報道は、自粛してほしい。
 社説で、「五輪開催反対」を唱えたことを忘れるべきでなない。

東京オリンピック メディア批判 「五輪開催」すべき 盲目的に「中止」唱えるメディアのお粗末
開催実現で「Withコロナの時代のニューノルマル」をレガシーに


羽鳥慎一モーニングショー批判 玉川徹批判 ファクトチェック 検証五輪バッシング報道 五輪ポピュリズムを廃す 
 

朝日新聞「夏の東京五輪 中止の決断を首相に求める」 社説掲載。
 5月26日掲載された社説では「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」主張した。
 これまで、朝日新聞は、五輪開催に関しては「疑問」は提起したが、「中止」を明確に掲げることはなかった。
 しかし、この社説は、「冷静」に事実を認識する姿勢に欠ける思考停止状態のメディアの典型で、納得できない。
 五輪を中止すれば、コロナ感染拡大は収まる、すべては五輪が「悪者」とする単純化した構図が透けて見える。
 しかし、五輪を中止しても感染は収まらない。感染拡大が収まらないのは、未だに「三密回避」、「マスク着用」、「人流抑制」に頼る前世紀型のコロナ対策のお粗末さである。ワクチンや検査体制で、世界で圧倒的に遅れたツケである。批判すべきなのは、政府の感染防止対策の失敗だろう。
 筆者はあくまで「開催支持」、TOKYO2020を開催して「Withコロナの時代のニューノルマル」を示すべきだと考える。
 
 社説では、「生命・健康が最優先」を掲げ、「国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長が先週、宣言下でも五輪は開けるとの認識を記者会見で述べた。
 だが、ただ競技が無事成立すればよいという話ではない。国民の感覚とのずれは明らかで、明確な根拠を示さないまま「イエス」と言い切るその様子は、IOCの独善的な体質を改めて印象づける形となった」とする。
 「生命・健康が最優先」は当然だが、五輪開催が引き金になって「生命・健康」が脅かされる可能性はどの位のリスクがあるか印象論ではなく、科学的に冷静に分析してほしい。
 4月下旬に国際オリンピック委員会(IOC)と大会組織委員会が発表した「プレイブックV2」はこれまでにない厳格なコロナ対策が示された。さらに、来日する選手などの約80%はワクチン接種を終えているという。
 こうした対策で感染拡大が発生するリスクは少ないと考える。印象論で五輪開催を批判するのは誤りだ。
 5月23日に発表された東大院准教授のグループの「感染者試算」によれば、海外の選手や関係者ら入国者数は10万5千人、ワクチン接種率が50%として試算した結果、都内における1週間平均の新規感染者数で約15人、重症患者数で約1人、上昇させる程度にとどまり、「入国・滞在の影響は限定的」と結論づけた。
 こうした分析を朝日新聞はどう分析しているのか。

「開催中止」を主張しながら、「五輪のレガシー」論を展開した支離滅裂の紙面
 朝日新聞社が社説で、「中止の決断を首相に求める」という記事を掲載した同じ日の朝刊では、「ジェンダー平等を五輪のレガシーに 橋本聖子・大会組織委会長に聞く」という朝日新聞が開催してフォーラムを元にした記事を掲載している。フォーラムには大会組織委ジェンダー平等推進チームの小谷実可子氏や元女子サッカー日本代表の大滝麻未氏なども加わっている。
 社説で「開催中止」を主張しておきながら、もう一方で、「ジェンダー平等」を2020東京五輪大会開催のレガシーにしようと訴える記事を掲載するのは、どう考えても矛盾する。大会を中止するなら。レガシー論はまったく不要である。東京2020大会の開催経費は、組織委の予算だけでも1兆6440億円、開催を中止すれば、この膨大な金額が吹き飛ぶ。まさに空前の「負のレガシー」となるのは必須である。「開催中止」を主張するなら、「ジェンダー平等を五輪のレガシーに」ではなくて、次世代に重くのしかかる「負のレガシー」を検証する記事を掲載すべきだろう。
 今後、朝日新聞は、紙面で「開催中止」を念頭に置いた五輪報道紙面を構成すべきだ。さもないとジャーナリズムとしての信頼は喪失するだろう。

 社説とコラムなどの評論記事は基本的に違う。コラムなどの評論記事は、さまざまな意見を持つ人々が活発に議論を展開する場である。五輪開催支持論、中止論、双方が記事されるのが望ましい。読者は多角的な主張を期待している。
 一方、社説は、「新聞社」としての主張である。コラムなどの評論記事とは位置づけが違う。朝日新聞社は社説の重みを理解しているのだろうか。

東京オリンピック 朝日新聞は東京五輪の「オフイシャルパートナー」を返上せよ
 朝日新聞社は、2020東京五輪大会の「オフイシャルパートナー」になり、東京五輪大会の協賛社に名を連ねている。朝日新聞社が大会組織委員会に支払う協賛金は、約60億円(推定)以上とされ、昨年末、「1年延期」に伴い、追加の協賛金を支払うことに合意している。
 朝日新聞社は、「tier2」の「オフイシャルパートナー」になることで、呼称の使用権(東京2020オリンピック競技大会、東京2020パラリンピック競技大会など)やマーク類の使用権(東京2020大会エンブレム、東京2020大会マスコット)を得て、朝日新聞のPRに利用することができる。
 60億円以上支払って五輪開催をサポートをすることで、五輪のブランド力を利用して部数拡大やメディアとしてのプレゼンスに寄与させるのがその狙いであろう。
 ライバルの読売新聞社、毎日新聞社、産経新聞社もいずれもスポンサーに加わっており、朝日新聞社としても五輪で遅れをとるわけにはいかない。
 5月26日、朝日新聞は「中止の決断を首相に求める」という社説を掲載。「誰もが安全・安心を確信できる状況にはほど遠い」として、「五輪を開く意義はどこにあるのか」と疑問を投げかけ、「そもそも五輪とは何か。社会に分断を残し、万人に祝福されない祭典を強行したとき、何を得て、何を失うのか。首相はよくよく考えねばならない」として、五輪開催をほぼ全否定した。
 しかし、朝日新聞社は「オフイシャルパートナー」を続けて、五輪のブランド力をフルに活用することで営業力の強化につなげる一方で「五輪中止」を社説で掲げるのは、まったく納得できない。
 朝日新聞社は、社としての方針と紙面は違うと釈明するが、「見識」が求めらるジャーナリズムとしては、余りにも恥ずべき発言だろう。
 朝日新聞は、今後、紙面で五輪開催を後押しするようなポジティブな内容の記事は掲載するべきでない。社説の主張と相反する記事も排除してほしい。
 「オフイシャルパートナー」は即刻、撤退すべきだ。

 テレビや新聞は、連日のように「五輪中止」の大合唱を繰り広げて、選手や大会関係者の感染防止対策「頑や五輪の観客問題などで徹底したネガティブ報道を重ねているが、五輪大会が始まり、日本選手の活躍が目覚ましくなってきたら、手の平を返したように「頑張れ!日本」と報道するのだろうか。筆者はまったく納得がいかない。テレビや新聞で五輪批判を続けるコメンテーター、ジャーナリスト、評論家は、五輪大会でのアスリートの活躍を見る資格がない。道理が通らない。
 とりわけ、五輪のスポンサーでありながら、五輪中止を唱えた朝日新聞はどうするのか。「頑張れ!日本」、「日本、金メダル獲得!」を掲げた紙面が踊るようだったら、無節操の誹りは免れない。メディアとしての信頼感を喪失する。それ位の覚悟を持った上で、「五輪中止」、「五輪バッシング」の大合唱を繰り広げるべきだ。

「東京2020オフィシャルパートナーとして」(朝日新聞 5月26日)


購読料値上げを明らかにした朝日新聞(6月10日) 五輪「オフイシャルパートナー」の60億円問題を放置して読者へ負担増をしいる姿勢は疑問

「Withコロナの時代のニューノルマル」を示せ
 コロナとの長期戦で、世界はコロナ感染リスクをある程度抱えながら、社会・経済活動を維持していかなければならない。
 Withコロナの時代のニューノルマルの確立が、社会全体に求められる。スポーツイベントやコンサート、飲食産業、ショッピングセンター、どうやって維持していくか、その知恵と努力が問われている。
 TOKYO2020は。「安全・安心な大会」を達成して、「Withコロナの時代のニューノルマル」を世界に示すべきた。五輪開催で得るものはある。
 2020東京五輪大会開催のレガシーは「Withコロナの時代のニューノルマル」に違いない。


東京オリンピック 尾身会長批判 五輪リスク 「ワクチン」「検査体制」「医療体制」一体何を提言したのか

「ぼったくり」は米国五輪委員会 バッハ会長は「ぼったくり男爵」ではない メディアはファクトを凝視せよ




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


2021年5月26日
Copyright (C) 2021 IMSSR



******************************************************
廣谷 徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
******************************************************
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新国立競技場 安藤忠雄 ザハ・ハディド 審査委員長の“肩書き”が泣いている 

2023年01月04日 10時02分49秒 | 新国立競技場
審査委員長の“肩書き”が泣いている
新国立競技場デザイン決めた安藤忠雄氏


北京冬季五輪最新情報はこちら
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新国立競技場問題 安藤忠雄氏が記者会見 (2015年7月16日)   出典 PAGE Youtube


 総工費が「2520億円」に高騰して、世論から厳しい批判を受けている新国立競技場建設問題について、新競技場のデザインを決めた国際デザイン・コンクールの審査委員長を務めた安藤忠雄氏(73)が経緯について初めて記者会見を行い、「デザインの選定までが仕事でコストの決定議論はしなかった」と述べた。
冒頭に、7月7日に開かれた新国立競技場の計画を公に議論する最後の機会となった「有識者会議」に欠席した理由について「大阪で別の会合があったので欠席した」と釈明した。
 「私たちが頼まれたのはデザイン案の選定まで、実際にはアイデアのコンペなんですね。こんな形でいいなというコンペですから、徹底的なコストの議論にはなっていないと思う。私自身こんなに大きなものは造ったことがない。流線形で斬新なデザインでした。なによりもシンボリックでした。この難しい建築工事を日本ならできると私は思いました」
 また、政府内で総工費2520億円の削減に向け、計画を見直す検討に入ったことについて、「建築家、ザハ・ハディド氏のデザインは外すわけにはいかないと思うが、2520億円は高すぎる。もっと下がらないかと私も聞きたい。徹底的議論して調整して欲しい」と述べた。
 新競技場の総工費が問題になってから、安藤氏が公の場で発言するのは初めてで、JSCによると、安藤氏からJSCに会見の要望があったという。
 安藤氏は、総工費が正式に示された7日の有識者会議を欠席したことから、下村文部科学相から「選んだ理由を堂々と発言してほしい」と指摘されていた。
 安藤忠雄氏は新国立競技場建設のデザインコンクールの責任を負う審査委委員長、その対応には唖然とさせられる。「世界でいちばん」をめざす新国立競技場にはザハ・ハディド氏のデザインが「いちばん」相応しく、高額の経費がかかっても建設すべきだと主張してこそ「世界で一流」の建築家であろう。
 審査委員長の“肩書き”が泣いている。

(2015年7月16日)


朝日新聞社説批判 「中止の決断を」に反論する 五輪は開催すべき

朝日新聞は東京五輪の「オフイシャルパートナー」を返上せよ


朝日新聞社説 2021年5月26日

東京オリンピック 渡航中止勧告 開催に影響なし 過剰反応 メディア批判

深層情報 Media Close-up Report 「呪われた」2020東京五輪 速報 「緊急事態宣言」下でも五輪開催明言 コーツIOC副会長

国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)


新国立競技場問題 安藤忠雄氏が記者会見 (2015年7月16日)
PAGE Youtube



安藤忠雄氏擁護論 ザハ・ハディド作品には“目を見張った”
 新国立競技場の二つのデザインを見比べて欲しい。
 1枚目は、国際デザイン・コンクールで最優勝賞を受賞したザハ・ハディド氏の作品、二枚目は建設費の高騰を批判されて変更縮小したデザイン案、どちらがインパクトのあるデザインだと思いますか?



国際デザイン・コンクールで最優秀賞となったザハ・ハディド作品  出典  日本スポーツ振興センター(JSC)


縮小変更案   出典 日本スポーツ振興センター(JSC)

 筆者は、ザハ・ハディド氏のデザインが、はるかに斬新で近未来を彷彿とさせるインパクトがあるデザインだと思う。その意味で、ザハ・ハディド氏のデザインを採用した安藤忠雄氏の“眼力”を高く評価したい。勿論、膨れ上がった建設費の問題や余りにも斬新デザインは景観を損なうという景観問題があるのも理解している。
 また膨れ上がった建設費の問題は致命的であることも理解した上だ。
 それに比べて、縮小変更デザイン案はなんとも“お粗末”な“見栄えのしない”デザインだと筆者は思う。「自転車のヘルメット」とか、「古墳」、「ロボット掃除機」、はてまた「便器の蓋」とか酷評されている。なんとも冴えないデザインである。
 このデザインで新国立競技場を建設するなら、いっそのこと横浜の「日産スタジアム」や大阪の「ヤンマースタジアム長井」のように「普通」のスタジアムで建設した方がはるかに良い。 
 そして周辺整備費をしっかり使って、神宮外苑エリアを五輪開催の“レガシー”(未来への遺産)にしたらどうか?


スポーツの躍動感を思わせるような流線形の斬新なデザイン」
 Zaha Hdid Architecsの作品が評価されたポイントは、「スポーツの躍動感を思わせるような流線形の斬新なデザイン」である。極めてシンボリックな形態で、「背後には構造と内部の空間表現の見事な一致があり、都市空間とのつながりにおいても、シンプルで力強いアイデアが示されている」としている。また可動式の屋根も“実現可能”で、イベント等の開催時には、「祝祭性」に富んだ空間が演出可能で、「大胆な建築構造がそのままダイナミックなアリーナ空間の高揚感、臨場感、一体感は際立ったものがあった」としている。
 さらに「橋梁ともいうべき象徴的なアーチ状主架構の実現は、現代日本の建設技術の粋を尽くすべき挑戦となる」と評価している。
 これに対して、当初から、Zaha Hdid Architecsのデザインは、「景観」を壊すとして強い批判があった。ジャパン・タイムズは社説で「美しい神宮外苑の公園に、うっかり落とされた醜いプラダのバッグのようだ」とし、「ザハ・ハティドの呪い」とコメントしている。「歴史ある外苑の雰囲気に溶け込まない」、議論が未だに終息していない。
 それにしても、経費を削減するために、急遽、見直しを行って作成された縮小変更デザイン案は余りにもお粗末。 「便器の蓋」、「古墳」、「自転車のヘルメット」、痛烈な批判が浴びせられている


次世代を見据えた建築デザインの難しさ
 次世代の見据える建築物のデザインを考えるのは極めて難しい。インパクトを求める未来派志向と景観との調和を求める環境志向、日本文化の伝統を求める伝統志向、それぞれ価値観や評価基準がまったく異なり、意見はまとまらない。
 筆者は、ザハ・ハディド氏のデザインを批判するつもりは一切ない。彼女は建築デザイン家として、「近未来感覚の斬新さ」をあくまで追求してプロフェッショナルのデザインを創造する芸術家である。自由な発想で世界各国に斬新なデザイン作品を提示しているのは素晴らしいことだ。
 筆者がかつて勤務していたオフイスの隣に1964年の東京オリンピックの競泳会場となった国立代々木競技場第一体育館がある。この体育館の設計をしたのは建築家の丹下健三氏である。実に時代の先端を行く吊屋根形式のデザインで体育館を設計した。当時の建設技術では極めて難度が高く、実現が難しいのではないかと言われていた工法に挑戦した。その斬新なデザインにまったく批判がなかったわけではないだろう。しかし、その優美な曲線を持った外観は東京オリンピックのシンボルの一つとして評価されるようになり、代々木のランドマークとなった。建築物の先端性とはこのように理解するのが適切なのではないか。時代”の一歩先を行けば評価されるし、二歩先を行くと誰も理解してくれないが世の常である。ザハ・ハディド氏は、そのギリギリの境界を狙っている挑戦的な建築家だと思う。但し建設費を無視しているのが致命的な欠点だ。




新国立競技場のデザイン募集 国際コンペ実施
 「8万人を収容する観客席、開閉式の屋根、大規模な国際大会のほか、コンサートなども開ける多機能型の“新国立競技場”を建設する……2012年7月20日、国立競技場を運営する独立行政法人日本スポーツ振興センター」(JSC)が、“新国立競技場”のデザインを募集する国際コンペを実施した。
 “新国立競技場”のキャッチフレーズは、「『いちばん』をつくろう」である。
「日本を変えたい、と思う。新しい日本をつくりたい、と思う。もう一度、上を向いて生きる国に。そのために、シンボルが必要だ。日本人みんなが誇りに思い、応援したくなるような。世界中の人が一度は行ってみたいと願うような。世界史に、その名を刻むような。世界一楽しい場所をつくろう。それが、まったく新しく生まれ変わる国立競技場だ。世界最高のパフォーマンス。世界最高のキャパシティ。世界最高のホスピタリティ。そのスタジアムは、日本にある。「いちばん」のスタジアムをゴールイメージにする。だから、創り方も新しくなくてはならない。私たちは、新しい国立競技場のデザイン・コンクールの実施を世界に向けて発表した。そのプロセスには、市民誰もが参加できるようにしたい。専門家と一緒に、ほんとに、みんなでつくりあげていく。『建物』ではなく『コミュニケーション』。そう。まるで、日本中を巻き込む『祝祭』のように。
この国に世界の中心をつくろう。スポーツと文化の力で。そして、なにより、日本中のみんなの力で。世界で「いちばん」のものをつくろう。」
国際デザイン・コンクールを実施するにあたって日本スポーツ振興センターが宣言したコメントである。
建築家の安藤忠雄氏(建築家 東京大学名誉教授)が審査委員長となった。
審査員は、鈴木博之(建築家 青山学院大学教授)、岸井隆幸(建築家 日本大学教授)、内藤 廣(建築家 前東京大学副学長)、安岡正人(建築家 東京大学名誉教授)、都倉俊一(作曲家 日本音楽著作権協会会長)、小倉純二(日本サッカー協会会長)、河野一郎(医学博士 日本スポーツ振興センター理事長)の7名に加えて、世界的に著名な建築家のノーマン・フォスター(イギリス)、リチャード・ロジャース(イギリス)の2名が務めた。
 しかし、ノーマン・フォスター氏とリチャード・ロジャース氏は2次審査から加わるとしていたが、結局、一度も来日せず、JSCの担当者が作品のパネルや資料を持参してイギリス国内で別途、審査を行ったという。
 両氏の不誠実な姿勢には良識を疑うと共に、日本スポーツ振興センター(JSC)の杜撰な審査運営にも唖然とする。


新国立競技場 国際デザイン・コンクールの“キーワード”は、“「いちばん」をつくろう”と“FOR ALL”
以下出典 新国立競技場 国際デザイン・コンクール ホームページ


新国立競技場 国際デザイン・コンクールの“メッセージ”


取り壊された旧国立競技場   出典:日本スポーツ振興センター(JSC)

イベントも開催する多機能スタジアム 総工費は1300億円程度
 新国立競技場は、東京都新宿区霞ヶ丘町にある現在の国立競技場を解体した跡地につくる。観客席の収容人数を今の約5万4000人から8万人規模へと大幅に増やす。
 敷地面積も拡張して、現在の約7万2000平方メートルから約11万3000平方メートルに増やし、隣接する日本青年館を取り壊すほか、現在ある公園も敷地に加えた。
総工事費は解体費を除いて1300億円程度とした。
新競技場にはラグビーやサッカー、陸上競技の大規模な国際大会が実施できる最高水準の機能を求める。例えば、現在8レーンある陸上用トラックを国際規格の9レーンに増やすことなどを想定する。2019年に開催されるラグビーのワールドカップ、またFIFAワールドカップの開催も視野に入れた。
 さらに、コンサートや展覧会などのイベントの開催も可能にし、「芸術・文化の発信基地」を目指す「多機能スタジアム」がキーワードである。開閉式の屋根を設けて、大会やイベントが天候に影響されず開催できるようにする。芝生の育成に必要な太陽光や風、水、温度を調整できる機能も求めた。
 観客席は陸上競技を催す際に8万人を収容。ラグビーやサッカーでは選手と観客に一体感や臨場感が生まれるようにピッチに近い場所せり出す可動式の観客席も設置する。コンサート会場にも使える多機能型スタジアムとして、優れた音響環境も備え、屋根には遮音装置を備える。
世界水準の「ホスピタリティー」も要求する。バリアフリーはもちろん、バルコニー席が付いた個室の観戦ボックスや要人向けのラウンジ、レストランなどを整備する。大会やイベントを開催していないときでも来場者が楽しめるように、商業や文化施設を備えた競技場を目指す。
 新競技場の施設だけでなく、JR千駄ヶ谷駅や東京メトロ外苑前駅といった周辺駅から歩行者が快適にアクセスする動線の確保や、周辺に再配置する公園や公開空地についての提案も求めるのが特徴である。
 まさに、“未来への遺産・レガシー”を追い求めた“夢”のようなコンセプトである。
 完成すれば、東京の新たな“ランドマーク”になると期待も集めた。

 しかし、問題は、その“実現性”をどこまでプロポーザルに求めたかである。事業費および工期についての考え方も提出することにしていたが、その内容はA4版1枚、または1000字以内と定められていたという。
 「1300億円」の巨大建設プロジェクトの国際コンペの募集要項としては、“破格”に簡略な扱いであったと思われる。
 “デザイン・コンクール”なので、提案者にはデザインの卓越性だけを求めて、“実現性”は厳格に求めず、審査する側が検証するという姿勢だったのだろうか。それならば審査する段階で“実現性”を精緻に検証しなければならない。




ザハ・ハディド アーキテクスの作品    出典 新国立競技場 国際デザインコンクール 最優勝賞

46作品が応募 最優秀作品はザハ・ハディド氏のデザイン
 国際デザイン・コンクールの募集は、2012年5月30日に開始、9月25日に締め切られた。このような大規模な建築物の国際デザイン・コンクールとしては“異例”の約4か月間という短期間だったが、世界中から46作品が集まった。
 1次審査では、作品の匿名性を確保した上で、日本人の8人の審査員がそれぞれ推薦した作品について審査し、11作品に絞り込んだ。
 2次審査では、ノーマン・フォスター、リチャード・ロジャースの両氏も審査に加わり、10名の審査委員で投票を行い、上位作品について、「未来を示すデザイン性」、「技術的なチャレンジ」、「スポーツイベントの際の臨場感」、「施設建設の実現性」などの観点から詳細に議論を行った。
 その結果、Zaha Hdid Architecs、COX Architecture、SANAA(Seijima and Nishizawa and Associates)+Nikken Sekkeiの3つの作品に絞られた。
 3つの作品については、審査員の間で評価が分かれて、激しい議論が繰り広げられたという。そして再投票を実施したが、Zaha案とCOX案が同率で1位、決着がつかなかった。結局、審査委員長の安藤忠雄氏が最終的な判断を一任され、安藤氏はZaha案を選んだ。安藤忠雄氏は 「インパクトのあるデザインは、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致の後押しになる」と強くザハ・ハディド氏の案を押したという。
 最優勝賞にZaha Hdid Architecs、優勝賞にCOX Architecture、入選SANAA(Seijima and Nishizawa and Associates)+Nikken Sekkeiを、審査員員会の総意として決定した。
  2012年11月15日、Zaha Hdid Architecsの作品が、最終的に「日本が世界に発信する力」や「実現性を含めた総合力」が評価され、日本スポーツ振興センター(JSC)は正式に決定した。
一方、建設費について強い懸念を表明した審査委員もいた。
 しかし審査会では、経費の問題については、「掘り下げた議論をすることはなかった」とし、「経費はまあなんとかなるだろう」と空気が支配的だったという。
 「予算1300億円」は曖昧にされたのは間違いない。拙速、杜撰というそしりは免れないだろう。
新国立競技場のデザインは、2013年9月の2020年オリンピック開催地を決めるIOC総会までに決める必要に迫られていた。2020年東京オリンピック・パラリンピック招致競争で“勝利”を収める切り札の一つしようとしたのである。
 2013年1月にIOCに提出した東京五輪招致ファイルに記載する必要があった。




ザハ・ハディド作品を選んだ審査委員会の責任
 審査講評では、Zaha Hdid Architecsの作品は、「実現性を含めた総合力」が評価されたとしているので、実現性も議論されたに違いない。実現性には、建築工法、工期、そして「1300億円」の総工費という条件がクリヤーできるかどうかも含まれていなければならい。審査では、総工費に懸念を示す意見を表明する審査員もいたが、結局、「1300億円」はほとんど“議論”されず、無視されていたようである。2020東京五輪大会は今世紀を代表する国家プロジェクトだから、経費は気にしなくても何とかしてくれるだろうという甘えが審査委員会を支配したいたと思える。「1300億円」ではとうていできないことを知っていながら、夢だけを語れば良いと思ったのだろうか?
 審査に加わった10名の内、都倉俊一氏と河野一郎氏を除く8名は、超一流の建築専門家である。応募作品を審査すれば、総工費がおおまかに1000億程度なのか、2000億なのか、3000億なのか位の見当は簡単につけることはできたと思うのが自然だろう。
 安藤忠雄氏は、記者会見で「『1300億円でいけると思っていたか?』という質問ですが、それが条件でしたけど、私自身はそんなに大きなものを造ったことがないですからね。『(そんなに)要るんだな、すごいな』ということぐらいしか思っていなかった」と述べている。
 これでは建築について素人の筆者とまったく同じレベルである。安藤氏は「世界一流」の建築家、唖然である。「世界一流」の看板が泣いている。
 基本設計に入ってからの経費問題の迷走は、専ら、文科省と日本スポーツ振興センター(JSC)にあるのはいうまでもない。しかし、安藤忠雄氏には、経費問題も耳に入っていたと思うのが自然だろう。これまで沈黙を守っていた責任は負うべきだと思う。




新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(1) “迷走”と“混迷”を重ねる新国立競技場 “国際公約”ザハ・ハディド案 縮小見直し「2520億円」

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(2) 白紙撤回ザハ・ハディド案 仕切り直し「1550億円」 破綻した“多機能スタジアム”

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(3) 新デザイン「木と緑のスタジアム」決定 大成建設・梓設計・建築家の隈研吾氏のチーム “赤字”への懸念 巨額の負担を次世代に残すのか? 

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(4) 検証新デザイン 維持管理費・長期修繕費 ライフサイクルコストはどうなる?

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(5) 新国立競技場“迷走” 文科省とJSCに責任 検証委

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(6) 陸上競技の“聖地”は無残にも消えた 新国立競技場はサッカーやラグビーの球技専用スタジアムに

新国立競技場は“負のレガシー”(負の遺産)になるのか?(7) 新国立競技場に暗雲 破綻寸前日本スポーツ振興センター(JSC)


破格に高額 新国立競技場「1550億円」

巨額の負担が次世代に 日本は耐えきれるか? ライフサイクルコスト

デザインビルド方式 設計施工一括発注方式は公正な入札制度か?




国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)

2015年7月20日
Copyright (C) 2015 IMSSR


*****************************************
廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute(IMSSR)
President
E-mail
thiroya@r03.itscom.net
imssr@a09.itscom.net
*****************************************
コメント (2)
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2024年五輪開催都市 ロサンゼルス パリ 2024年オリンピック 招致レース 相次いだ撤退 リマIOC総会

2023年01月04日 10時01分59秒 | 東京オリンピック
相次いだ“撤退” 迷走 2024年夏季五輪開催都市




夏季五輪開催都市 2024年パリ・2028年ロスで合意

 2017年7月31日、米メディアは、夏季五輪招致を巡り、ロサンゼルスが2028年開催で国際オリンピック委員会(IOC)と合意したと伝えた。これにより、2024年大会の開催地はパリに決定する。
 IOC理事会は7月、2024年夏季五輪招致に立候補したパリとロサンゼルスを24年と28年の2大会の開催都市に振り分ける異例の同時決定案を承認した。
 ロサンゼルスの夏季五輪の開催は1932年と1984年に続き3回目。パリは1924年パリ五輪から100周年の節目に夏季五輪を開くことになる。
 開催都市は、9月13日に開催されるリマ総会でIOC委員の投票で正式に決定される。
 

2024年五輪開催都市 パリ・ロスの評価報告書 両都市共にIOC高評価
加速する2024年、2028年、2大会同時開催決定

 2017年7月5日、国際オリンピック委員会(IOC)は、2024年夏季五輪開催を目指すパリとロサンゼルスの評価報告書を公表した。既存施設を最大限に活用して財政負担を抑える両都市の開催計画をともに高く評価した。 開催都市の決定は9月13日に開催されるリマ総会でIOC委員の投票で決定される。IOCは、すでに6月の理事会で「2大会同時決定」の提案を承認しており、7月11日と12日に開かれる臨時総会に決められる。
 報告書は2017年5月の現地調査を踏まえたもので、IOC委員の判断材料となる。評価委員会のバウマン委員長は「2都市とも素晴らしい大会を開催できる十二分の能力がある。五輪は安泰だ」(共同通信 7月6日)と述べ、IOCの中長期改革「五輪アジェンダ2020」に沿った計画を歓迎した。
 報告書では、競技場施設に占める既存施設や仮設施設の割合は、ロサンゼルスは97%とし、パリも93%としている。また両都市とも国際大会の開催実績が豊富な点を評価した。課題としては、パリは市民の開催支持率が63%でロサンゼルスの78%に比べて低く、会場となるセーヌ川の水質改善指摘した。ロサンゼルスは四つの会場群を結ぶ観客の輸送態勢などに言及した。
 2024年五輪大会には、ブダペスト、ローマ、ロサンゼルス、パリの4都市が立候補したが、暴騰する開催経費の懸念や住民の反対運動などでブダペスト、ローマが相次いで撤退し、結局残ったのはロサンゼルス、パリの二都市となっている。
 両都市で、2024年と2028年の2大会を振り分けて開催するという異例の対応が現実化しそうである。
 2024年大会はパリ、2028年大会はロサンゼルスが有力との観測が広がっている。


2024 Los Angeles 97%の競技場施設は既存施設や仮設施設で対応


2024 Paris 93%の競技場施設は既存施設や仮設施設で対応

出典 Roport of IOC Evaluation Commission 2024




前代の未聞の展開 2024年夏季五輪開催都市招致
 2024年の夏季五輪開催都市選定は、前代の未聞の展開を見せている。
立候補に意欲を示したハンブルグやボストンなどの有力都市が相次いで招致活動の途中で撤退を表明、その理由はいずれも巨額に上る開催費用の負担である。
 国際オリンピック委員会(IOC)はこのままでは五輪大会に立候補する都市はなくなってしまうのではという危機感を抱き始めている。五輪大会の肥大化、巨額に膨れ上がる開催経費にどう歯止めをかけるか、五輪の持続性を確保するための至上命題になっているのである。
 2016年2月17日、国際オリンピック委員会(IOC)はブダペスト、ローマ、ロサンゼルス、パリの4都市が 2024年夏季五輪誘致のためのビジョン、コンセプト、戦略を記した第1段階の申請書類、「立候補ファイル」を提出したと発表した。
 ローマは1960年以来2回目の開催を狙う。パリは1924年の前回大会から“100年”記念の開催を狙う。ロサンゼルスは“競技場は一つも新設しない”と公言、徹底した開催費用削減に挑む。ブダペストは東ヨーロッパでの初開催をアピールしている。いずれも有力な都市が正式に手を挙げた。
 2024年の五輪大会招致レースはこうして幕を開けた。


各都市の五輪招致ロゴ 出典  graffica   http://graffica.info/logos-juegos-olimpicos-2024

住民投票に敗れたハンブルグ バッハかIOC会長の“お膝元”ドイツの反乱 2015年3月、ドイツオリンピック委員会(DOSB)は、ベルリンとハンブルグの2都市から国内選考を行い、立候補都市をハンブルグに決定した。
ドイツで最大、欧州第2位の規模を誇るハンブルク港、その港湾地区の再開発とセットで五輪開催を計画した。ハンブルグはサッカーなどスポーツが盛んで、受け入れ体制は十分、しかもドイツは1972年のミュンヘン大会から50年以上も夏季五輪から遠ざかっていた。条件はそろっていた。しかし………
 2015年11月、ハンブルク五輪招致委員会は、招致の是非を問う住民投票を行った。その結果、反対51.6%、賛成48.4%で反対が過半数を占めた。反対派は112億ユーロ(約1兆5000億円)の費用は無駄遣いだと批判していた。
 まさかの敗戦である。ショルツ市長は「望んだ決定ではないが、結果は明白だ」と述べ、招致を断念すると発表した。
ドイツでは、2022年冬季五輪招致で夏季冬季五輪開催を目論んだミュンヘンが、住民投票で反対派が多数を占め、立候補を断念した経緯がある。
バッハ国際オリンピック委員会(IOC)会長の“お膝元”であるドイツでは、住民の反対で五輪招致が相次いで頓挫している。ドイツでは五輪大会の開催はもう不可能なのでないかという懸念も生まれている。
こうした状況の中で、バッハ会長は五輪大会の継続に深刻な危機感を抱いているのに間違いない。

赤字負担を拒否 立候補を断念したボストン
 米国で立候補したのはロサンゼルスだが、その選定の経緯は極めて異例で、今の五輪をめぐる問題の“混迷”を象徴している。
 米国内での立候補都市は、米国オリンピック委員会(USOC)が国内選考を実施して一つの都市に絞る。
2015年1月、五輪立候補都市をボストンに決定した。競争相手はロサンゼルスやサンフランシスコ、ワシントンD.C.だった。
 しかし地元では、巨額の経費負担の懸念から、五輪開催反対の意見が根強く、地元のメディアが行った世論調査で支持率は36%にとどまっていたとされている。住民の納得が得られない五輪開催にボストン市は苦悶していた。
こうした状況を察して、米国オリンピック委員会(USOC)は大会運営で赤字が生じた場合、ボストン市が全額を補償するよう求めた。
 これに対して2015年7月、ウォルシュ・ボストン市長は、「市の将来を担保に入れることを拒否する」と述べ、現時点では市の予算で大会の赤字を補うことはできないとし、住民の理解の得られない五輪招致に難色を示した。
 米国オリンピック委員会(USOC)は立候補を取りやめることでボストン側と合意したと発表した。
2015年9月、米国オリンピック委員会(USOC)は、辞退したボストンに代わり、ロサンゼルスが立候補すると発表した。ロサンゼルスは1932年と84年に五輪を実施しており、ロンドンに並ぶ3度目の開催を目指す。
 ロサンゼルスのガーセッティ市長は「この街は世界最高のステージだ」と意欲を示した。

「さらに借金を背負うことを良しとしない」 招致から撤退したローマ
 ブダペスト、ロサンゼルス、パリと共に立候補ファイルを提出して五輪大会招致に意欲を燃やしたローマの撤退は、欧州諸国の五輪開催巡る政治状況や世論の厳しさを象徴するできごとだった。
ローマのマリーノ前市長は五輪開催に意欲的で、2014年12月、開催都市として立候補することを発表した。 招致委員会の責任者に元フェラーリ会長のルカ・ディ・モンテゼーモロ氏が就任し、招致活動を開始した。レンツィ前首相もこれを支持した。
 2016年6月、民主党の前市長が公費流用疑惑で辞任したのを受けて、ローマ市長選挙が行われ、ローマで史上初の女性市長、ビルジニア・ラッジ氏(37)が当選した。ラッジ氏は、新興政党「五つ星運動」の女性候補で、レンツィ前首相率いる中道左派の与党の民主党候補を破って当選したのである。
 2016年9月、ラッジ新市長は財政難を理由に2024年夏季五輪の招致を断念する考えを表明した。ラッジ氏は会見で、「立候補に賛成するのはいかにも無責任だ。さらに借金を背負うことを、我々は良しとしない」とし、「我々は未だに1960年ローマ五輪に対して借金を返済している。五輪とスポーツに対しては何の反感もないが、町に新たなセメントを注ぎ込むための口実としてスポーツが使われることは望まない」と述べた。ローマの撤退で、2024年夏季五輪の開催都市候補として残ったのは、パリとロサンゼルス、ブタペストの3都市になってしまったのである。

「競技場は一つもつくらない」 ロサンゼルスのしたたかな挑戦
 五輪招致を辞退したボストンに代わって、米国の五輪大会招致都市として名乗りを上げたロサンゼルスは、次の時代の五輪のコンセプトを先取りした“コンパクト”五輪を掲げて、招致をアピールしている。
 2016年11月29日(日本時間)に東京で開かれた4者協議で、コーツIOC副会長が、東京大会の開催費用、「2兆円」は受け入れられないと発言したわずか数時間後に、ロサンゼルス招致委員会は、大会開催経費は「53億ドル」(約6000億円)と発表した。しかもこの中に、4億9100万ドル(約540億円)の予備費も計上済だ。破格の低予算である。「約53億ドル」は、リオデジャネイロ大会の約半分、東京大会の約3分の1である。
 開催費用削減をターゲットにするIOCの意向を巧みに取り入れ、世界各国にアピールする作戦だ。
 開催費用の削減は、ロサンゼルスにとって、最有力の強敵、パリとの競争に勝ち抜く“切り札”になってきた。
 「53億ドル」は、大会運営費と競技場(恒久施設)などのインフラ投資経費(レガシー経費)の合算、ロサンゼルス周辺に30以上の既存施設があり、競技場は新設する必要がなく、低予算に抑えられたとしている。選手村はカリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)の学生寮を利用する計画だ。
 1984年に開催されたロサンゼルス五輪では、徹底した経費の削減と収入確保戦略で2億1500万ドル(約400億円)の黒字を出し、世界を驚かせた。
 ロサンゼルス五輪招致委員会のケーシー・ワッサーマン会長は「もしロサンゼルスが五輪開催地に選ばれたら、IOCは開催予算や競技会場変更問題から解放されるだろう」と胸を張る。

 2024年夏季五輪開催に立候補をしている都市は、ローマも脱落して最終的にパリ、ロサンゼルス、ハンブルグの3都市だけになった。パリは、1924年の前回大会から“100年”の開催を狙う。ロサンゼルスは“競技場は一つも新設しない”と公言、徹底した開催費用削減に挑む。ブダペストは東ヨーロッパでの初開催をアピールしている。

2024夏季五輪 パリ、ロサンゼルス、ブダペストの周到なメディア施設整備戦略
 パリは1924年の前回大会から“100年”記念の開催を狙う。ロサンゼルスは“競技場は一つも新設しない”と公言、徹底した開催費用削減に挑む。ブダペストは東ヨーロッパでの初開催をアピールしている。 
 立候補ファイルの提出で、各都市による国際プロモーション活動が解禁となり招致レースが本格化した。7月にはIOC委員や国際競技連盟に向けた3都市のプレゼンテーションが行われる。そして9月13日にリマで開かれるIOC総会で2024年夏季五輪開催地が決められる。
 提出された立候補ファイルで各都市のメディア施設の整備戦略が明らかになった。

ターゲットは航空産業 パリ五輪
 パリは、2012年大会招致では“大本命”といわれながら、ロンドンに敗退をしてしまった。今度こそという国民の期待は強い。パリの抱える懸念材料は、テロ対策だ。 イスラム過激派のテロ標的にされた事件は記憶に新しい。セキュリティの確保が最大の課題になっている。
 オランド仏大統領と会談を行ったIOCのバッハ会長は、「テロは世界中の共通した課題」とパリだけが直面する問題ではないとし、パリを「非常に強力な候補」で「スポーツ界と政府の結束が強く、絶大な支援を受けている」と高く評価した。
 IBC/MPCは、パリで、3番目に広い国際展示場、ブルジェ・エキシビション・センター(Paris Le Bourget exhibition centre)に設置される。
 ブルジェ展示場は、パリ郊外のシャルル・ドゴール国際空港の近くにある施設で、延べ床面積10万平方メートル、ほぼ東京ビックサイトと同規模の施設である。ちなみにパリには、24万2千平方メートルの展示場を備えるParis Nord Villepinte や22万8千平方メートルのParis expo Porte de Versaillesを始め数多くの国際展示場がある国際エキシビション都市だ。
 このブルジェ展示場は、世界で最も有名な航空産業見本市、“Paris Air Show”が開催されることで知られている。2年ごとに開催され、出展数は2300、展示される航空機150機、参加者は世界各国から15万人に及ぶ。
展示場に隣接して、欧州でNO1のビジネス空港Paris- Le Bourgetや、Air and Space museumが整備されている。ブルジェ(Bourget)地区は、まさに世界の航空産業エキシビションの象徴的な存在を誇っている。
IBCの延べ床面積は、7万2千平方メートル、MPCは3万平方メートル、共通エリアとして1万8千平方メートルの施設が整備される。
 オリンピック・スタジアムからは10分以内の距離としている。
五輪開催後のレガシーとしては、IBC/MPCとして強化されたインフラをフルに活用して航空産業などの見本市会場として世界中に更にアピールしていくとしている。
パリのIBC/MPC戦略のターゲットは航空産業、したたかなフランスの開催計画である。


ブルジェ・エギシビション・センター 2024パリ五輪立候補ファイル


Paris Air show-Le Bourget  Paris Air show ホームページ


ハリウッドの戦略と連動 ロサンゼルス五輪
 ロサンゼルス組織委員会は、「五輪の歴史の中で、最も革新的なレガシーとして輝く理想的な場所を選んだ」と胸を張った。
 IBCをロサンゼルス郊外にある世界の映像メディアのシンボル、NBC Universalの中に設置するのである。五輪開催をハリウッドの映像戦略に見事に結び付けた。さすがロサンゼルスである。
IBC/MPCは合わせて延べ床面積8万5千平方メートルの施設を整備する。
 そのうちIBCは5万5千平方メートルの2階建の建物で、6つのメインスタジオが設置される。IBCオフイスの専用スペースはメインスタジオの建物の隣に独立した建物として建設される。IBCの南側には、広さ6000平方メートルの衛星中継スペースが準備される。メインスタジオに隣接したスペースにケータリングやサポートサービスのエリアが整備される。IBC/MPCは交通機関や駐車場と直結している。
 一方、MPCは南カリフォルニア大学(USC)のキャンパスに設置される。MPCはIBCに近接しているが、離れた所に立地する施設である。
 メイン・プレス・ワーキング・ルームや記者会見室は仮設施設として整備され、サポート・サービスやケータリングは大学のキャンパスに設置される。MPCの延べ床面積は3万平方メートル。
 IBC/MPCから各競技場へのアクセスは、オリンピック専用道路を設置し30分以内で移動可能だ。
 IBC/MPCは、Universal Studiosの開発計画と連動したスキームで整備が行われ、スタジオ建設などの新規投資も実施される。五輪大会後は、NBCUniversalの音響スタジオや制作フロア、オフイスとしてIBC/MPCを再生し、ハリウッドの映像・音響インフラの強化を図る戦略だ。「レガシーと密接にリンクさせた野心的な開催計画は未だかつてない」としている。
 しかし、ロサンゼルスの突然襲っている悩みのタネは、難民受け入れ停止やイスラム圏7カ国からの一時入国禁止令を出したトランプ大統領である。
 ロサンゼルスは立候補ファイルで「世界は前例のない変化と不確実な時代に突入している」とし、「ロサンゼルス、そして米国は並外れた文化の多様性を持つ。ロサンゼルスでの開催は、歴史上、最も必要とされるときに人々、国家をまとめられる。五輪とパラリンピックほど、世界、そして国家を一つにするものはない」と訴えている。
しかし、イスラム圏諸国からの反発は必至で、果たしてこの逆風を乗り越えることができるのだろうか。


IBCが設置されるユニバーサル・スタジオ 2024ロス五輪立候補ファイル

“荒れ地”の再開発の拠点に ブタペスト五輪
 世界の大都市以外からの立候補したブタペスト、その課題は、競技施設やインフラ整備の整備に費やされる巨額の開催経費に耐えられるかであろう。リオデジャネイロ五輪の開催を巡って起きた問題が思い起こされる。
 ブタペストの招致委員会は「ブダペストでの大会こそが、これまで五輪が開催されていない国や都市に門戸を開き、オリンピックのムーブメントを広げることにつながる」とし、「豊かな大都市しか開催できない」と批判される五輪を改革すべきだとアピールしている。
IBC/MPCは、オリンピック・パークに近接した20haの敷地に整備される。
 IBC/MPCの整備経費は政府が全額負担する。施設の設計や建設は、オリンピック施設庁(Budapest Olympic Dilivery Authority)が担当し、五輪開催後のレガシー利用のための改装工事も担当する。
 IBC/MPCが建設される用地は、個人所有の土地を政府が取得して再開発する。
 この用地はいわゆるブラウン・フィールド、土壌汚染などが原因で売却や再開発ができずに放置されている土地で、貴重な歴史的建造物も存在する。
 IBCは、延べ床面積5万5千平方メートル、4階建ての建物で、ホスト・ブロードキャスターとライツホルダーが使用する。MPCは、延べ床面積3万平方メートル、プレス・ワーキング・ルームや各社の専用ブースが設けられる。
 共通スペースにはケータリングやショッピング・エリアが設けられる。 五輪後のレガシーとしては、ブタペストの中心部における複合オフイスと商業施設に再生さする計画である。

ブダペスト 2024年五輪招致から撤退

 2017年2月22日、 2024の夏季五輪に候補していた、オルバン首相は、ハンガリー・ブダペストのタルローシュ市長と会談し、会談後、招致活動からの撤退を表明した。ブダペスト撤退の引き金になったのは、招致反対派の運動で、招致の是非を問う住民投票を求めて活動を展開していた。2月18日、招致反対派は、住民投票求める署名が市の人口の約15%に当たる26万を超えたと発表した。これを受けて、ハンガリー政府は、会談後声明を出し、「五輪開催に必要な一体性が失われた」とし、招致撤退を表明した。
 五輪招致を巡っては、巨額の開催経費がかかることから立候補する都市が極めて少なくなってきた。2022年緒冬季五輪では、最終的には、招致に成功した北京と落選したアルマトイ(カザフスタン)の2都市しか残らなかった。
 夏季で2都市しか候補が残らないのは、名古屋がソウルに敗れた1988年大会以来である
 これで2024年五輪招致に残ったのは、ロサンゼルス(米)とパリの二都市になってしまった。
 五輪大会を持続可能な大会に改革を目指す国際オリンピック委員会(IOC)の危機感は、更に増した。



2024年五輪、2028年五輪の同時“決定”を目論む国際オリンピック委員会(IOC)
 こうした危機感を乗り越えるために国際オリンピック委員会(IOC)は、“秘策”を明らかにしている。五輪大会の安定的な開催を目論む“苦肉の策”である。
 2016年6月、国際オリンピック委員会(IOC)の理事会は、2024五輪大会都市と2028の五輪大会都市を今年同時に決着することを総会に提案することを決めた。事実上ロサンゼルスとパリとで分け合って開催しようとするものである。バッハIOC会長はどちらの国が先に開催するのかは、9月13日にリマで行わるIOC総会で決められるとした。
 ロサンゼルスとパリの招致関係者は、IOCの理事会を歓迎し、今後両者との間で話し合いを進めるとした。
 パリは、前回大会開催からの「100年記念」の2024年の開催にこだわっているのに対し、ロサンゼルスは、より柔軟な姿勢を示し、2028年開催が可能かどうか協議を開始しているとしている。ロサンゼルスは代わりに2024年ユース五輪開催を国際オリンピック委員会(IOC)に要請することを視野に入れているようである。
 しかし、バッハIOC会長は、2024年と2028年の開催地設定はまったく対等であると述べている。
 2024五輪大会都市と2028の五輪大会都市を同時に選ぶことで、五輪招致にかかる招致費用や開催準備費用を削減することが可能になり、五輪開催の安定性を確保できるとしている。
また、理事会では2026年冬季五輪の招致プロセスとコスト削減を改善する方策も議論された。 2026年冬季五輪にはスイスのシオン、カナダのカルガリー、オーストリアのインスブルック、札幌などが意欲を示しているとされている。

2024年、2028年五輪大会は9月に決定
 最終的に立候補都市として残ったロサンゼルスとパリについては、IOC評価委員会が今年の春からそれぞれの都市を訪問して報告書を作成して公表し、両都市に高い評価を与えている。
 7月11と12日にはIOC委員や国際競技連盟に向けた二都市のプレゼンテーションが行われると共に、2024年と2028年五輪大会開催都市を同時に決める方式についても採決が行わる。
そして9月13日にリマで開かれるIOC総会で2024年、2028年五輪大会の開催都市が同時に決まる可能性が強い。
 2大会同時決着を行うIOC総会は、これまでの総会とはまったく違う雰囲気の中で行われると思われる。
 肥大化、開催経費膨張、商業主義批判、「曲がり角」に立ったオリンピックは、まさに正念場を迎えた。



2024 Los Angeles オリンピックスタジアム


2024 Paris オリンピックスタジアム


2024 Los Angeles 組織委員会(OCOG)予算


2024 Paris 組織委員会(OCOG)予算


2024 Los Angeles 競技場整備費


2024 Paris 競技場整備費

出典 Roport of IOC Evaluation Commission 2024







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国際メディアサービスシステム研究所 International Media Service System Research Institute(IMSSR)



2017年7月3日

Copyright (C) 2017 IMSSR


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廣谷  徹
Toru Hiroya
国際メディアサービスシステム研究所
代表
International Media Service System Research Institute
(IMSSR)
President
E-mail thiroya@r03.itscom.net  /  imssr@a09.itscom.net
URL http://blog.goo.ne.jp/imssr_media_2015
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