保存鉄道車両巡りの旅2

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北海道内の貨車改造駅舎 地域による形態差

2024-07-19 14:46:00 | 貨車改造駅

役目を終えた貨車を改造した駅舎。全国で見られますが、特に北海道で多く見られました。そんな北海道内の貨車改造駅舎でも地域によって形態に差があります。

各貨車改造駅をご紹介するたびに触れてきた内容ですが、近年多くが廃駅になり記事が散逸してしまったため改めてご紹介します。各地域や担当したと思われる国鉄職場の固定概念のようなものも見えてきて興味深いです。

 

【本社管轄エリア】

かつての国鉄北海道総局、現在のJR北海道本社が管轄する地域です。

 

(2016年3月27日 札沼線石狩金沢駅にて)※廃止済

ヨ3500形を改造した駅舎で本社管轄エリアの標準的な形態です。

 

(2016年3月27日 札沼線石狩金沢駅にて)※廃止済

種車の両端のデッキを生かして出入口とし、トイレはありません。妻面にアクリル板が取り付けられていますが、尾灯はそのままなど最低限の改造で転用されています。

 

(2016年3月27日 札沼線石狩金沢駅にて)※廃止済

室内は元の椅子や机を撤去してプラベンチが置かれていますが、内装は塗装したかもしれませんが種車のまま使用されています。室内の一部を仕切って物置や配電盤室にしていますが、この箇所の窓は埋められていません。

 

(2016年1月28日 日高本線鵜苫駅にて)※廃止済

ヨ3500だけではなくワフを改造した駅舎もありました。デッキを出入口とするとともに元の貨物室側引戸もサッシを入れて出入口にしています。旧貨物室部分に窓が追加されていますが、本社管轄エリアの貨車改造駅はあまり手を加えることなく転用されている印象です。

 

本社管轄エリアで特異な貨車改造駅に石勝線夕張駅(廃止済)がありました。ワム80000とワフ29500を合計3両改造したもので車輪付きのまま置かれていました。しかし夕張駅の移転により5年程で使われなくなりました。

 

【旭川支社エリア】

現在のJR北海道旭川支社エリアにある貨車改造駅舎です。かつて全国一といえるほど貨車改造駅が存在しましたが、駅の廃止により急速に数を減らしています。

 

(2015年12月16日 留萌本線幌糠駅にて)※廃止済

ヨ3500形を改造したもので旭川支社標準の形態です。駅舎やホームの位置関係に関わらずほぼ全ての貨車改造駅で同様に改造したものが置かれています。「貨車改造駅舎はみんな同じでつまらない」というイメージを作った原因かもしれません・・・。

雪でよく分かりませんが、旭川支社では旧来の木造駅舎を取り壊した土台の上に貨車改造駅舎が置かれているケースをよく見かけます。

 

(2015年12月16日 留萌本線幌糠駅にて)※廃止済

デッキは片側のみ生かして出入口とし、もう片側は閉鎖してトイレと物置に改造されています。分かりにくいですが、室内中央部の屋根にはストーブ用煙突が付いています(ただし後年はほとんどの駅でストーブは取り付けられませんでした)。

トイレは汲み取り式でしたがこれも近年ほとんどの駅で閉鎖されています。幌糠駅では臭突も撤去されています。

 

(2015年12月8日 函館本線伊納駅にて)※廃止済

室内に入り、右の扉がトイレで左は物置です。トイレへは室内から入ります。

伊納駅では珍しくストーブがありますが、元の煙突を使わず壁に穴をあけてFF式のものが取り付けられています。

 

(2015年12月29日 宗谷本線問寒別駅にて)

問寒別駅を始めとする宗谷本線名寄~稚内間ではこのように大規模に改修された駅がいくつかあります。問寒別駅ではかなり厚手のサイディング材が貼られています。

 

(2015年12月29日 宗谷本線歌内駅にて)※廃止済

改修された貨車改造駅が多い一方、ボロボロのまま放置された駅も多かったのが名寄~稚内間でした。歌内駅では臭突が残っています。トイレは使用可能というより鎖錠されていないだけといった方が正しいかもしれません。

 

旭川支社エリアは統一した改造が行われた貨車改造駅がほとんどでしたが、特異なものとして留萌本線瀬越駅(廃止済)がありました。自分が使用できる画像はないのですが、ヨ3500改造ながらトイレ無し、室内は内装を取り払っただけのドンガラ状態に木のベンチが置かれただけでした。

 

【釧路支社エリア】

現在のJR北海道釧路支社エリアにある貨車改造駅舎です。全て釧路・根室地方にあり十勝地方にはありません。

 

(2016年3月21日 釧網本線美留和駅にて)

釧路支社の標準的な形態です。ヨ3500を改造しており旭川支社のものと似ていますが、デッキ側妻面部分の窓は種車の開口部を1カ所のみそのまま生かしています(旭川支社は全て埋めてから小さな窓を開け直し)。

 

(2016年3月21日 釧網本線美留和駅にて)

片側デッキを閉鎖してトイレと物置を設けたことも旭川支社と同じですが、トイレは室外側から入るように変更されています。画像の電話機横のドアがトイレの入口です。

また、貨車改造駅舎になってからは使用するはずがないのに妻面には尾灯が残されたものが多いです。

 

(2015年12月8日 根室本線花咲駅にて)※廃止済

壁に作り付けた木のベンチも旭川支社のものと酷似していますが、室内には物置に入るドアしかありません。

 

(2016年3月21日 根室本線別当賀駅にて)

釧路支社エリアでは特異な駅はあまり無いですが、あえて挙げるならこの別当賀駅は外壁に薄いサイディング材が貼られており妻面の尾灯が無くなっています。

 

【函館支社エリア】

現在のJR北海道函館支社エリアにある貨車改造駅舎です。廃線や廃駅により数を減らし、一部は第三セクター鉄道の道南いさりび鉄道に移管されたものもあります。

 

(2016年1月5日 函館本線蕨岱駅にて)※廃止済

ヨ3500形を改造したもので、これが函館支社の標準的な形態です。旭川支社や釧路支社と似ていますがトイレがありません。

 

(2016年1月5日 函館本線蕨岱駅にて)※廃止済

妻面の窓が埋められている部分が物置と配電盤室です。出入口の戸は住宅用のアルミ引戸を使っており、それに合わせて開口部を広げています(旭川と釧路はアルミ引戸に交換したものの開口部の幅は原形のまま)。

 

(2016年1月5日 函館本線蕨岱駅にて)※廃止済

片側デッキの一部を埋めているため、種車に4カ所出入口があったとすれば3カ所に減ったという感じです。他地区の貨車改造駅舎と異なり天井まで内装板が貼られています。

 

(2016年1月5日 函館本線二股駅にて)

函館支社エリア独自のものとして、有蓋車を改造した貨車改造駅舎が存在します。二股駅は道内唯一のワラ1形を改造した駅舎です。

 

(2016年1月5日 函館本線尾白内駅にて)

こちらはワム80000形を改造したものです。

別の記事でも書いていますが、函館支社エリアは他地区よりも手の込んだ改造をした貨車改造駅舎を多く見かけます。これは国鉄末期に余剰人員を稼働させるためだったのではないでしょうか?

改造に必要な材料費や人件費を度外視出来るとすれば、他地区の改造より工作点数を多くしたり、もっと踏み込んだ言い方をすれば「あえて手間の掛かる有蓋車を選んだ」のではないでしょうか?

 

(2012年9月27日 江差線中須田駅にて)※廃止済

函館支社エリアのもう一つの特徴として、ホームと同じレベルに貨車改造駅舎を置いたものが多いということです。これは道北や道東地区と比べて使える土地に余裕がなかったからかもしれません。

中須田駅でもホームに直接アクセス出来るように駅舎が持ち上げられていますが、動線がクランク状になり標準的な蕨岱駅と比べてさらに1カ所出入口を埋めています。これならホームのスロープを降りたところに置いた方が良かったのでは?

 

以上駆け足ですが道内各地の貨車改造駅舎の傾向をご紹介しました。

ここ10年弱で多くの貨車改造駅が廃止されたことは寂しいことですが、貨車改造駅舎で事足りる程度の駅なら廃止されるのは必然だったのかもしれません。現存する貨車改造駅の様子もしっかりと記録していきたいです。


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