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ホタルの独り言 Part 2(はてなブログに引っ越しました)

はてなブログに引っ越しました。
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折爪岳のヒメボタル

2017-07-17 22:38:07 | ヒメボタル

 折爪岳のヒメボタルを紹介したい。本ブログでは、昆虫の記事に関しては撮影地の表記をしていないが、今回は、広く知られた場所であり、また、ヒメボタルと自然環境の保全・保護のために、あえて場所を表記して紹介することにした。
  折爪岳は、岩手県二戸市、九戸郡軽米町、同郡九戸村を山域に持つ標高852.2mの山であり、東北でも有数のヒメボタル生息地となっている。7月上旬から中旬頃には、山頂から中腹にかけて、総数100万匹とも言われるヒメボタルが飛び交うことで知られている。

 折爪岳のヒメボタルには、2006年、2008年、2010年と訪れているが、いずれも良い写真がが撮れていなかったため、今回、7年ぶりに行くことにした。
 16日、朝4時半に自宅を出発し、途中で親友を乗せて650km先の岩手へ向かった。東京は晴れであったが、岩手県に入ると猛烈な雨。十和田方面は、雨で通行止めになるほどである。九戸ICを降りて折爪岳に到着すると、雨は小降りになったが、今度は台風であるかのような強風。そして濃霧。宿泊する山の家で、とりあえず待機である。
  雨が止み霧も薄くなった18時半。撮影ポイントでスタンバイする。風は時折強く吹くが、ヒメボタルは光ってくれることを願うしかない。森の中が暗くなった19時44分。ようやくヒメボタルが光り始めた。前日は、大乱舞であったようだが、この日は風が吹いていることと気温が低めであることから、多くの数が飛翔することはなかった。それよりも、車のヘッドライトが発光と飛翔の妨げになっていた。本来は通行止めになるのだが、この日は悪天候であったため通行止めにしていなかったのだ。車のライトが当たると一斉に発光を止めてしまい、しばらく発光しない。こんな状況が続けば、大きな影響がある。私も車で来たが、通ったのは14時半。帰るのは翌朝である。車で来る場合は、ホタルが光り出す時間より前に来ること、そして光り終わってから帰ることが必要だ。これは、どの場所でも同じで、ゲンジボタル、ヘイケボタルでも同様である。これは、マナーではなく鉄則である。鑑賞者には厳守頂きたい。勿論、手に懐中電灯を持ってもいけない。明るい時間から、ホタルが舞う場所で待機していれば、懐中電灯はいらない。

 天候と車のライトという悪条件が重なったが、十分な観察はできた。また、他地域を含めたヒメボタルの写真において、昨今多く見かける「光の絨毯」のような作り上げたものではなく、品位のある「折爪岳のヒメボタル」の風景を描くことができたと思う。(ほとんどのヒメボタルは飛翔することなく、同じ葉上で発光しているだけであることが写真からも分かる。)

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お願い:なるべくクオリティの高い写真をご覧頂きたく、すべて1024*683 Pixelsで掲載しています。

折爪岳のヒメボタルの写真

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark Ⅱ / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE / バルブ撮影 F1.4 14分多重 ISO 1600(撮影地:折爪岳/2017.7.16)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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ヒメボタル(山梨)

2016-07-17 17:01:36 | ヒメボタル

 ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874 の発生もそろそろ全国的に終盤。5年ぶりに山梨県内の生息地を訪れた。例年よりも一週間ほど早い訪問だが、予想通りにヒメボタルの飛翔が観察できた。
 ヒメボタルは、活動時間の違う2タイプに分けられる。1つは、ゲンジボタルと同じ時間帯に発光飛翔する宵の口型と、もう1つは23時頃から発光飛翔する深夜型である。今回の生息地のヒメボタルは宵の口型である。過去の観察では、19時半から発光を開始したが、今回は曇天のため空が明るく、発光は19時45分からであった。まだ、メスが確認できないため発生初期なのだろう、飛翔数も少なく、10数頭が周囲を行き交うといった様子であった。

 ヒメボタルの写真は、リバーサル・フィルムでは相反則不軌の影響で感度の低下と色再現性の低下があり、またラチチュードが狭いため、なかなか綺麗に撮ることが難しく、ISO1600のネガ・フィルムで30~60分の長時間露光でようやく撮影できるといったものであった。(参照:ホタル写真の変遷)しかしながら、デジタル・カメラの技術進歩によって、昨今では簡単に撮影することができるようになった。そのため、独特の発光から写しだされる写真の人気が急上昇し、各地の生息地で多くのカメラマンが撮影をし、パソコンでの作品づくりを楽しんでいる。
 ネット上で公開されているヒメボタルの写真を拝見すると、そのほとんどが、ヒメボタルの光をより多く重ねることに主眼が置かれているように思う。地面を光の絨毯で覆うばかりである。 昔のフィルムでも、発生数の多い生息地において適正露出になるまで30分も露光すれば、やはり同じように光の絨毯になるし、デジタルでも、1つの作品ならばそれも良いと思う。中には、昼間に飛んでいるのか?と思うような背景の明るい写真もあるが、それらの写真を見て、嘆くこともなければ言いたい文句もない。(勿論、見た目でそんな感じには見えない。)
 私の場合は、撮影を開始した昭和50年(1975年)当初から一貫して、ホタルの生態と生息環境の調査研究の一部として、1つは「生態写真」、そして、こうした飛翔風景に関しては、ホタルがどのような自然環境で、どのように飛翔するのか、そしてどのような発光なのかを写す「記録写真」という考えで撮影を行ってきている。デジタル・カメラを使用するようになってからは、その利点を活かして、それぞれのホタルの発光色と同じになるように現像している。ヒメボタルに関しては、他の多くの写真をみると、黄緑色やとても明るいレモン・イエローに写っているものがほとんどであるが、測光微光度計A型でヒメボタルの発光スペクトルを分析すると、530~660nmの波長の光を含んでおり(神田左京)、ピークは橙色に近い黄色である。ヒメボタルをかごに入れて観察すれば分かるが、見た目では黄金の発光色に見える。 しかし、飛翔しているときは、違う色合いに見えることもあり、人によっても見える色が違う。白っぽかったり、黄緑色にみえたり・・・これは、湿度の違いや人の色覚の違いによるものだ。

お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメボタル

ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 240秒多重 ISO 1600(2016.7.16)

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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ヒメボタル(埼玉)

2016-06-06 20:33:36 | ヒメボタル

 ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874 は、ホタル科ホタル属(Genus Luciola Laporte, 1833)でゲンジボタルやヘイケボタルと同属であるが、幼虫が陸地で生活する陸生ホタルである。青森県から九州まで分布し、平地から高い山地の雑木林、竹林、ブナ林、畑、河川敷など様々な環境に生息している。体長は6mm~9mmほどで、メスは下翅がなく飛ぶことができない。そのため、分布地の移動性は小さく地域により遺伝的特性や体長の差などが著しい。発光は、黄金色のフラッシュ光の点滅が特徴で、活動時間にも地域差がある。日没30分後くらいから発光を始め、21時~22時頃まで活動するタイプと22時頃から発光を始め、深夜2時頃まで活動するタイプに分かれる。

 4年ぶりに埼玉県の生息地を訪れた。この場所は2010年に発見し、その当時は、地元の方は勿論、撮影者は誰一人といなかった。しかしながら、 5年ほど前に近隣の生息地に生息を案内する看板が設置され、インターネットやSNS等の情報で当該生息地も知られるようになり、一晩に20人~30人ほどの撮影者が訪れるようになったようである。
 ここのヒメボタルは、深夜型で21時を過ぎた頃から徐々に発光をはじめ、午前0時過ぎをピークに午前2時頃まで活動が続く。かなり広範囲に生息しており、地域全体では数千という単位であると思われる。また、他地域に比べ、メスの体長や前胸背板の赤斑に大きな違いが見られる。更には、オスは林の中から出てきて開けた畑の上を飛ぶという特徴がある。また、関東のヒメボタル生息地では、一番発生が早い場所である。

 4日、21時半に現地に到着すると、暗がりでちらほらとヒメボタルが発光を始めていた。4年前にはなかった家が建ち、少し様変わりしていたが、全体的には当時のまま。いくつかのポイントを廻って観察すると、発生場所に若干の違いが見られたものの、一番乱舞する場所は、2010年の初訪の時と変わっていない。22時を過ぎると、かなりの数のヒメボタルが乱舞を始めた。撮影者も多く20人以上はいただろう。人の多さにヒメボタルが可哀想に思えたことと、名古屋での講演の疲れもあり、ピーク前の23時で引き上げることにした。
 森の中で発光するヒメボタルの写真は、7月に東京都内でも山梨県でも撮影できる。この場所の一番の生態的特徴は、開けた畑の上を飛ぶことなので、今回もその様子を撮影した。また、ヒメボタルの発光色である黄金色が出るようにした。
 フィルム時代には、ヒメボタルの飛翔風景撮影を成功させるのに6年もかかったが、今のデジタルカメラでは、初心者でも簡単に撮れる。ソフトで合成すれば、光の数は無限大に増やせる。「風景、光景としての写真」という1つの作品ではあるが、生態学的な観点から過度な表現はすべきではないとも思う。

参照:ヒメボタル(秩父2012年)

注釈:ヒメボタルのマクロ写真(写真2~6)は、同じ生息地の個体ですが、2011年に研究用として雌雄1頭ずつを採集し自宅で撮影したものです。

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ヒメボタル

ヒメボタルの乱舞
Canon 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 5秒×50 ISO 1600(2016.06.04 22:30)

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル

ヒメボタル(交尾)

ヒメボタル

ヒメボタル(メス)

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ホタル写真の変遷

2016-02-17 20:18:28 | ヒメボタル

 シリーズ「ホタルの写真を撮る」その1

 まだ、ホタルの季節にはかなり早いが、決して季節はずれの話題ではない。今から準備することが望ましいのである。今回は、「ホタル写真における撮影方法の変遷について」。後に、実際の季節になったら、生態写真も含めた実践的な話を記していきたいと思う。

 私は、今年でホタルの研究を始めて44年になる。写真は、ホタルの生態を記録に残しておく必要性を感じてから撮り始め、40年ほど前からありとあらゆる「図鑑写真」と「生態写真」を撮影してきた。ホタルの生態撮影では、ホタルの生態に関する詳細な知識と撮影機材及び特殊な技術も必要になる。しかしながら、成虫が飛びまわる光景においては、フィルム時代では難しかったものの、昨今のデジタルカメラの性能とPCソフトの向上は、特に知識や技術がなくても比較的簡単に撮影でき「写真」としての結果を出せるようになり、プロ・アマを問わず多くの方々が撮影している。
 ホタルが乱舞する光景は、生態写真であり、風景写真でもあり、自然の芸術作品とも言えよう。本記事では、作例として「ヒメボタルが乱舞する光景」の写真10点を掲載し、ホタル写真における撮影方法の変遷について記したいと思う。

 ヒメボタル(Luciola parvula Kiesenwetter 1874)は、ホタル科ホタル属で、ゲンジボタルやヘイケボタルと同じ仲間であるが、一生を陸地で生活しており、水辺ではなく、森の中などに生息しているホタルである。メスは後翅がないために飛ぶことができない。発光しながら飛ぶのはオスだけで、その発光は、ゲンジボタルやヘイケボタルと違って、黄金色のフラッシュ明滅が大きな特徴となっている。岡山県の哲多町では「金ボタル」といも呼ばれているほどである。写真に撮ると光が点として写り幻想的なことから被写体として人気がある。

1.フィルムで撮る

 ヒメボタルが乱舞する光景を撮るには、かつてはフィルムで撮影しなければならなかった。フィルムは大きく分けて2種類ある。リバーサル・フィルムとネガ・フィルムである。当時、私はすべての写真をリバーサル・フィルムで撮影しており、ゲンジボタルにおいては美しく撮ることができていたが、ヒメボタルの撮影は容易ではなかった。プロビア400で30分の長時間露光、そして増感現像しても写るのは光だけで、背景は全く写らなかったのである。更には、ヒメボタルの発光色が金色ではない。(写真1)
 明るい時間帯に背景を撮影しておき、ホタルが飛び始めたら、同じコマに多重露光する方法もあったが、1枚の写真の中に大きな時間の空白が存在すれば生態写真にはならないと考え、それは行わなかった。
 ヒメボタルの生息環境は、ゲンジボタルと違って全く明りのない山林の中で、目の前のカメラさえ見えないほどの暗闇である。その暗闇において、体長9mmほどのホタルが放つ光と背景を綺麗に写すことは、不可能と思われた。そこで一週間後に、同じ場所においてフィルムをネガに変え、露光時間を60分にして撮影したところ、ホタルの光と背景を捉えることができた。(写真2)
 ようやく、ヒメボタルの撮影方法が分かったところで、翌年、どうしても撮影しておかなければならない場所へ向かった。東京都奥多摩町の山奥である。国道から沢沿いの道を5Kmほど進み、さらにデコボコの林道を3Km弱登った峠近くである。2004年から通っているが、なかなか良い写真を撮ることができなかった。2004年は、雨が降っておりヒメボタルも数匹しか飛んでいなかった。2005年は、数え切れないほどのヒメボタルが乱舞していたが、撮影技術が確立しておらず、まったく写らなかった。2006年に訪れた時は、発生がゼロの状態。この場所でのヒメボタルの発生期間は、およそ10日ほど。私は週末の土曜日しか訪れることができない。つまり、ヒメボタルの発生ピークと私の都合が合致しなければならない。そして次に天候状況がよくなければならない。結局、6年の月日が過ぎ、ようやく2009年7月に何とか満足できるヒメボタルの飛翔風景を撮影することができたのである。(写真3および4)
 実は、この2枚の写真を撮影中に、すぐ背後を野生のツキノワグマが歩き回っていた。このチャンスを逃すまいと逃げるより撮影を優先した。もし襲われて死んだとしても、生態学的にもたいへん貴重な東京都奥多摩町のヒメボタルの写真が残れば良いと思った。幸い、襲われることはなかった。余談だが、山梨県内の山林で、晴れた午前中にチョウの撮影をしている時にもツキノワグマに遭遇したことがある。距離30m。逃げるかどうしようか迷った末、クマにカメラを向けたが、その時には、クマの方が遠ざかっていった。ちなみに大きなイノシシには3回遭遇している。
 さて、一週間後に山梨県のヒメボタル生息地で再び撮影を試みた。(写真5) 写真2と数メートルと違わない位置で撮影しているが、ヒメボタルの飛び方に大きな違いが見られた。2008年(写真2)では地上から1mくらいの高さを発光しながら飛んでいたが、2009年は地上から50cmくらいの高さを飛んでいたのである。その理由は分かっていないが、これも、生態学的に貴重な記録である。

注釈:写真は、フィルムスキャナー(Nikon COOLSCAN V ED)でスキャンしたものを掲載しています。
お願い:写真は、1024*683 Pixels で掲載しています。Internet Explorerの画面サイズが小さいと、自動的に縮小表示されますが、 画質が低下します。Internet Explorerの画面サイズを大きくしてご覧ください。

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真1)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / バルブ撮影 F1.8 30分
FUJICHROME Provia400X Professional (撮影日:2008.07.19)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真2)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / バルブ撮影 F1.8 60分
ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICOLOR NATURA 1600 (撮影日:2008.07.26)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真3)
OLYMPUS OM-2 / ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / バルブ撮影 F1.8 60分
ZUIKO AUTO-S 50mm F1.8 / FUJICOLOR NATURA 1600 (撮影日:2009.07.11)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真4)
CANON EOS-3 / EF 50mm F1.4 USM / バルブ撮影 F1.4 60分
FUJICOLOR NATURA 1600 (撮影日:2009.07.11)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真5)
CANON EOS-3 / EF 50mm F1.4 USM / バルブ撮影 F1.4 60分
FUJICOLOR NATURA 1600 (撮影日:2009.07.18)

2.デジタルで撮る

 現在でも富士フィルムでは、ネガ・フィルムの FUJICOLOR NATURA 1600 は販売されているが、リバーサル・フィルムに至っては、Velvia50、Velvia100、PROVIA100F(35mmおよびブローニー)しか入手できず、コダックでは、リバーサル・フィルム全てが2012年から製造されていない。その理由は、デジタル・カメラの普及に他ならないが、デジタル・カメラの性能が向上し、画素数も大きくなり、フィルムに限りなく近づいた昨今では、デジタルならではの撮影方法により、フィルムでは表せなかったものが容易に写せるようになってきている。
 写真6と7は、フィルムと同じ長時間露光で撮影した写真であるが、露光時間が短いがゆえにホタルの光が少なく、写真という結果に物足りなさを感じる方もいるかもしれない。デジタル・カメラでは、3~4分も露光するとデジタル特有のノイズが出てしまい、それ以上の露光時間ではノイズ・キャンセリングも効かなくなってしまうので、長時間露光は、これくらいが限界だろう。
 しかしながら、背景を適正露出で撮影した後に、感度を上げてホタルの光だけを数秒ずつ何枚も撮影し、PCの画像処理ソフトのレイヤー機能を使って合成する方法を行うと写真8~10のように見栄えの良い見応えのある写真に仕上がる。この「合成」という方法は、昨今の「ホタルの成虫が飛びまわる光景」においては、一般的に行われており、美しい写真にすることができるが、撮影する時にカメラの特性上1枚1枚の間に少なくとも1秒という空白が入ってしまう。写真は、「空間芸術であると同時に時間芸術である。」故に「不連続の時間を一枚にまとめて見せるのは浅慮、浅薄にすぎない」とも言われているので、その観点からは「創作」であり、「生態写真ではない」とも言えるが、これまで難しかったことが、美しく表現できるようになったことにより、ホタルの生息環境や生態の研究に役立つこともある。例えば、写真9と10は、これまで「森のホタル」と言われていたヒメボタルが、開けた畑の上を乱舞しているところをハッキリと捉えており、ヒメボタルの生息環境や飛翔行動を知る上では、貴重な画像となっている。参考までに、同場所の同日時に撮影した動画も掲載しておきたい思う。ヒメボタルの発光の様子しか映っていないが、実際にどのように発光しているのかは分かっていただけるだろう。

 本記事掲載時期は、ホタルの季節にはかなり早い。しかし、決して季節はずれの話題ではない。今から準備することが望ましいのである。ホタルの撮影は簡単だがスマートフォンでは撮ることができない。それなりの機材が必要なので準備しなければならない。またホタルは、その年の気候にとって発生時期が若干異なるので、一番多い発生月日に合わせて出かけるために、様々な情報収集のみならず自身で積算温度の計算も必要になる。更には、選定した生息地の環境状況を把握するための事前ロケハンも必要であろう。
 そして、実際に撮影に出向かれたら、ホタル鑑賞にも言えることだが、ホタルの生態を事前に良く学んだうえで、次の項目を守っていただきたい。

  • ホタルに向けて懐中電灯を照らさない。
  • 絶対にストロボを焚かない。
  • 歩道以外に、踏み入れない。
  • 採集はしない。

 これは単なるマナーの押し付けではなく、ホタル観賞、撮影上での鉄則である。なぜならば 現在、多くのホタル生息地において問題となっており、ホタルが減少している実態があるからである。特に人口光による光害は重大な影響を与えているである、これは、科学的にも証明されている。(参考:ゲンジボタル・ヘイケボタル幼虫に対するLED照明の影響 宮下 衛 独立行政法人国立環境研究所 生物圏環境研究領域)ホタルの生息地全体の発生期間は2~3週間でも、羽化した個体の寿命は3~4日ほどしかない。気温が低かったり、月が出ていたり、風が強く吹いている夜は、繁殖活動が抑制されるから、雌雄が交尾できる日は、ほんの数日しかないのである。そのチャンスを鑑賞者や写真家が、自分に都合のよい考え方と自分勝手な行動で奪ってよいのだろうか?

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ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真6)
Canon 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 256秒 ISO 1600(撮影日:2011.07.23)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真7)
Canon 7D / SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
バルブ撮影 F1.4 30秒 ISO 200(撮影日:2011.7.23)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真8)
Canon 7D / SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
バルブ撮影 F1.4 15秒×42カット合成 ISO 200(撮影日:2011.7.23)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真9)
Canon 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 2秒×62カット合成 ISO 1600(撮影日:2012.06.09)

ヒメボタルが乱舞する写真

ヒメボタル(写真10)
Canon 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 3秒×69カット合成 ISO 1600(撮影日:2012.06.08)

ヒメボタルの乱舞映像/Fireflies experience (Hime Fireflies)
Canon 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE

東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.

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東京に生息するヒメボタル

2009-07-22 19:50:12 | ヒメボタル


 東京奥多摩には、ヒメボタルが生息している。この5年ほど毎年観察に訪れているが、ようやく満足できる写真が撮影できた。(画像は、クリックすると大きなサイズで見ることが出来る。)

 これは、オリンパスOM-2とキャノンEOS-3、それぞれ3カットずつ撮ったものの1枚。フィルムは、ISO1600のネガカラーを用いた。合成や多重露光ではなく、長時間露光で撮影。この時は、暗闇の峠に一人でツキノワグマにも遭遇。恐怖と戦いながらも、じっくりと腰を据えたことで、杉林の斜面を明滅しながら飛び交うヒメボタルを捉えることができた。

 群生地に比べれば数は少ないが、東京都にもヒメボタルが生息しているということ、その光景を紹介することには大きな意味があると思う。



 こちらのヒメボタルの写真は、先日、山梨県で撮影したものである。ここはまさに乱舞で、「光のナイアガラ」ともいうべき光景が、雑木林の斜面に広がっている。

東京にそだつホタル>東京ゲンジボタル研究所/古河義仁

恐怖のヒメボタル観察

2009-07-12 01:31:42 | ヒメボタル
 11日~12日は岩手県までヒメボタル観察に行く予定を立てていたが、まだ発生の初期段階で数が少ないことから、今年は見送ることにした。少々残念な気もするが、代わりに先週訪れた東京奥多摩のヒメボタル生息地に再び行って来た。

 ホタルの観察は、ほとんど親友と一緒のことが多いのだが、今日は別行動。つまり一人である。自殺の名所でもある渓谷沿いの道を進んだ後、細い砂利道の林道を2kmほど登ると峠だ。そこから急勾配の登山道を数十メートル上がったところがポイントになる。

 もちろん明るい時間(18時)に到着。懐中電灯は持たずに、ポイントでひたすら待つ。気温18℃、無風、天候は曇り。19時半。時折、星も見える。先週よりも暗いなと思うと、1匹のヒメボタルが登山道脇の茂みで光る。また1匹。次第に発光するヒメボタルの数が増え、20時には、およそ50匹のヒメボタルが谷を登り始めた。

 ヒメボタルの発光色は、黄金色に見えるときもあれば、黄緑色に見える時もある。湿度による光の屈折の影響やヒメボタルとの距離も関係ない。ヒメボタル自身が発光色を変化させているとしか思えないのであるが、確かではない。急斜面の杉林を登ったり降りたり、或いは登山道を行き来するものもいる。かなりのスピードで斜面を降りていくものを追いかけるように後に続くもの、時には垂直に飛ぶものもいる。規則正しいリズムで発光していたかと思えば、光り続けながら下草めがけて下降したり、何匹もがバラバラに発光していたかと思うと、同期明滅する場合もある。15分ほどたつと、まったくいなくなる時もある。またしばらくたつと1匹の光が見え始め、またあちらこちらで発光する。何とも興味深い。

 観察途中、不思議な体験があった。山側の斜面の数メートル先でサ~と音がする。一箇所ではなく、音に奥行きがある。昨年、山梨にヒメボタル観察に行った時に、やはり数メートル先でサ~と音がした。この時は雨の音だったが、今日は違う。風の音でもない。1~2分でその音はパタリと止んだ。この音は、その20分後に再び聞こえたが、その後は聞くことはなかった。一体、何だったんだろうか?
 こんな山奥に一人というのは、何とも心細い。今日は、フクロウも鵺も鳴かない、とても静まりかえった夜だ。

 21時半。発光するヒメボタルの数が減ってきた。また、しばらくすれば光るだろう、せめて22時までし居ようと思った瞬間、背後の山側の茂みからガサ、ガサ、ガサと大きな音が聞こえてきた。
最初、人が歩いてきたのかと思ったが、そんな訳がない。イノシシか?いや、それにしては、下草を踏みしめる音が大きい。音の長さから、足のでかい奴だ。一体、何だ・・・?
「ツキノワグマの出没が確認されていますので、十分ご注意ください。」峠に建てられた看板を思い出した。やばい。その足音は、次第に近づいてくる。今度は向きを変え、左方向にノシノシと動いている。
「こっちには来るな!」心で叫びながら、身動き出来ないでいた。「まじで、やばい。」とりあえず、逃げるしかない。セットしていたカメラ2台を三脚ごと担いで、登山道を降りた。
 結局、暗闇なのでその姿を見ることはなかったが、過去の経験から鹿やイノシシとは違う。やはり熊か?ホタル観察どころではない恐怖の一時であった。


東京にそだつホタル>東京ゲンジボタル研究所/古河義仁

ヒメボタル観察

2009-07-05 02:10:59 | ヒメボタル
 4日に東京都内に生息するヒメボタルの観察に行ってきた。(上記の写真は、2006年に撮影したものである。)

 美しい渓流沿いの細い道を3.5km程進み、そこからさらに細い砂利道の林道を2kmほど登ると峠に着く。峠から急な登山道を少し登った所がヒメボタル生息地である。急斜面には、よく管理された杉林がみごとに続いている。例年では、7月7日~10日の間1,2日間をピークとして、その前後3日ほどがヒメボタルの発生期間である。たった1週間しか見ることも観察することもできない。昨年は、7月5日時点では発生していなかった。私は会社員であるため、休日の土日しか来ることが出来ない。今年は運良く、6月の土曜日は4回とも天候がよく、ゲンジボタルの観察が出来たので、ヒメボタルが飛ぶことを祈るばかりである。18時に現地に到着したが、気温は20℃で結構涼しい。ただ、谷から吹き上げてくる風もなく、たいへん穏やかである。
 さて、どうだろう。19時半。まだ光らない。曇っているためか、結構明るい。いつもならそろそろ光り出す頃なのであるが・・・ヒメボタルは、ゲンジボタル以上に明かりに敏感だ。

 20時。ようやくヒメボタルが光り出した。例年よりも数日早い発生である。数はそれほど多くはないが、谷から徐々に上がってくる。気温18℃。無風。急斜面の杉林の下草の上を黄金色のフラッシュ発光が、近づいてくる。ゲンジボタルと比べてヒメボタルは、また格別である。ヒメボタルの発光も同調しているように思われる一瞬がある。斜面を登る時や横に移動する時は比較的ゆっくりだが、斜面を降りる時は、かなり早いスピードである。僅かな下降気流に乗るのだろうか。
21時。とても静かである。ゲンジボタルの観察時は、せせらぎの音が絶えず聞こえているが、ここは静寂そのものである。友人と私以外誰も来ることはない。暗黒と静寂の中に黄金色の明滅が行き交う。何とも不思議な時が流れる。鵺(ヌエ)の鳴く夜は恐ろしい・・・横溝正史の小説の一節だが、時折、トラツグミの「ヒョー」という鳴き声が、不気味に響いてくるだけだ。


 22時。靄が立ちこめ、より一層幻想的な空間を演出してくれる。これまで地上すれすれを飛び交っていたヒメボタルは、飛翔高度を上げ、中には垂直方向に飛び始めるものもいる。とても興味深い行動である。22時半。ヒメボタルは発光を止め、それぞれ下草の中に隠れてしまった。
 帰りがけ、沢ではまだゲンジボタルが飛び交っており、その光りの大きさと優雅さに圧倒されたが、ヒメボタルはまた格別である。

 今年撮影した写真は、こちら ヒメボタル写真

ヒメボタル-光りのナイアガラ

2008-07-20 00:11:58 | ヒメボタル
 昨日19日(土)に、山梨県のヒメボタル生息地に行って来た。まだ明るい時間にかなり急な山道を登る。蒸し暑さと日頃の運動不足のために汗だくになりながらおよそ15分。赤松林を抜けると雑木林になり、下草もいきなり少なくなった。たぶんこの辺りだろうと予想し、暗くなるのを待つ。すると19時15分。1匹のヒメボタルが光り出した。しばらくするとあちらこちらで光りだし、19時45分頃には、数え切れないほどのヒメボタルが黄金のフラッシュ光を発しながら飛び交っていた。山の斜面を見れば、上から谷の方へ光りが流れている。まるで光りのナイアガラだ。尾根伝いに続く山道も右から左へ、左から右へ、下から上へ、上から下へ。私自身もヒメボタルに取り囲まれている状態だ。何という光景だろうか。いつしか暗闇になり、1m先の友人さえも見えない状況のなかで、森のあちらこちらで光りの明滅が広がっていた。生息数は岩手県二戸市ほどではないが、マナーの悪い鑑賞者は誰もいない。たいへん興味深い飛翔行動も観察できた。ここのヒメボタルを保護するための方法は1つだ。誰にも知られることないよう静かに見守ることだ。原生林に生きるホタルには、人々を絶対に近寄らせてはいけない。
 乱舞の風景は、オリンパスOM-2とリバーサルフィルムで撮影した。今夜は、興奮で眠れそうにない・・・

ホタルの写真は、東京にそだつホタル (東京ゲンジボタル研究所/古河義仁)


ヒメボタル

2008-07-13 20:13:36 | ヒメボタル
7月9日は、東京奥多摩のヒメボタル観察に行ってきたが、この土日は、片道700Km、7時間かけて岩手県と青森県の県境までヒメボタルの観察に行ってきた。ここは、100万匹が生息しているといわれている場所である。今年は、一昨年に訪れた時ほどではないが、天候にも恵まれ、多くのヒメボタルが飛翔していた。ここのヒメボタルはフラッシュ発光にしては発光時間が長く、写真に撮ると光りが帯びになる特徴がある。また、ブナ林だけでなく、コンクリート道路の脇の茂みにも大量に発光している変わり者である。乱舞の風景写真は、鑑賞者のマナーの悪さから、ほとんど撮影できなかったが、今回の目的であるメスのヒメボタルの観察とクロマドボタルの観察が出来たので、行った甲斐があった。
今度の週末は、山梨県にヒメボタル観察に行く。そこは初めて行くところなので、どのくらいの数が発生するのかは、まったくわからないが、岩手のヒメボタルとの比較等とても楽しみである。

ホタルの写真は、東京にそだつホタル(東京ゲンジボタル研究所/古河義仁)

ヒメボタル

2007-07-07 23:54:43 | ヒメボタル
 東京の某ヒメボタル生息地を訪れて今年で5年目になる。今年は極めて少なかった。約15匹が飛んでいたにすぎなかった。時期が早いのか遅いのかは解らないが、2004年と2006年の発生数がとても多かったことと、ヒメボタルは成虫になるのに2年かかることを考えれば、今年は少ない年と言える。写真こそ撮れなかったが、それでも東京で懸命に生きているヒメボタルに昨日に引き続き会うことができた。きっと来年は多いことだろう。(写真は昨年のもの)

 これで、今年のホタル成虫観察はすべて終えた。毎年そうだが、ホタル成虫の時期が終わるとちょっと寂しく、空虚感もある。やりたいことはたくさんあったが、とりあえず千葉県において源平合戦が見られる新たな生息地を発見し、念願だったオオオバボタルを観察することができた。出来なかったことは、また来年である。

東京ゲンジボタル研究所/古河義仁    ホタルの写真はこちら/「ホタルの写真


100万匹のヒメボタル写真

2006-08-05 10:22:30 | ヒメボタル
 当ブログは移転しております。こちらにご訪問ください。「ホタルの独り言

 7月15日に片道700kmを車で駆け抜けて、日帰りでヒメボタル達に会いに行ってきた。そのときの写真の一部はすでに掲載しているが、今回、未公開のポジフィルムをスキャンし直して、ホームページ「ホタルの写真」に公開した。レンズは50mmの標準レンズだから、捉えられる景色の幅はけして広くないが、実際は、掲載した写真のヒメボタルの発光数が、見渡す限り広がっていると思って良い。本当に100万匹のヒメボタル達が暮らしていると思うほど、すばらしい場所であった。
 中部地方の岡山では、ヒメボタルを別名「金蛍」と呼ぶほど、ヒメボタルは、黄金色のフラッシュでほぼ0.9秒ごとに発光する。写真でその黄金色が表現できているが、一部の発光色が緑色に見える。これは、30分という長時間露光中に霧が何度も立ちこめたために、霧を通して写し出される色が変化したのだと思われる。


100万匹のヒメボタルに会いに行く

2006-07-17 17:03:43 | ヒメボタル

ヒメボタルの大乱舞

ヒメボタルの写真

 写真は、先日撮影した「東京のヒメボタル乱舞」の写真である。今回の場所では、ファインダー内に掲載写真の5~6倍のヒメボタルが乱舞していたが、きれいに撮影出来たのは、たったの1枚だけ。ホームページ「ホタルの写真」に掲載している。

 ヒメボタルが100万匹生息している場所があるということで、友人と二人で片道約700kmを車で往復してきた。事前情報では、一週間前ほどにちらほら発生しており、この3連休がピークであるという。
 早朝に出発し、15時に到着。明るい内に周囲を散策すると、ヒメオオクワガタやオバボタルが飛んでいる、湿度の多い鬱蒼としたブナ林が広がっていた。そして19時半。ヒメボタルが光り始めたが、まだ少ない。時折、山の麓から霧が上ってくるが、心配された雨も降ることなく、風もほとんどない。20時を過ぎた頃から発光数が増え始めた。とても数えられない。ブナ林の中はもちろん、車道脇の草むら、林道の上、駐車場脇の芝生の上まで、いたるところヒメボタルだらけといった感じである。山頂から少し下った山腹全体に生息しているようで、100万匹という数は嘘ではないだろう。

 先日に観察した東京のヒメボタルとは、若干、発光の仕方が違うようである。フラッシュのような閃光が少し間延びしたような感じといえる。地域特性なのか、気温によるものなのかは分からない。東京のヒメボタルを写真に撮影すると、発光が1つの点となって、その点が等間隔に描かれていくが、ここのヒメボタルの様子では、もしかしたら、点ではなく、少しだけ線になるかもしれない。これは、撮影したフィルムを現像してみないと分からない。上手く撮れていれば、すばらしい写真になっているに違いない。光のジュータンである。
 22時を過ぎるとヒメボタルは飛翔をやめて草むらに止まり始めた。その後は、葉の上で発光している。23時。発光の数もかなり減ってきたので、また700kmを走り、翌朝7時に無事帰宅した。

 伊豆に行ったときもそうだが、今回も鑑賞者のマナーには悩まされた。地元観光協会主催のヒメボタルまつりが行われていたので、鑑賞者が多かった。観光協会は、懐中電灯の代わりとして、ホタルには影響の最も少ない赤い色をした電灯を貸し出していたのは良いと思うが、やはり、普通の懐中電灯や、強力なサーチライトに近い電灯を持っている人々もいた。もちろん、ヒメボタルの舞う場所は暗闇だから電灯がなければ、観察遊歩道を歩くことさえできない。しかしながら、人々の足下だけを照らせば事済むことなのに、ヒメボタルが舞う森の中を照らす人々が多い。それまで、発光していたヒメボタルは、電灯が照らされると全く光らなくなってしまう。一体、人々は何をしにきたのだろうか?

 そればかりではない。皆、車で帰るわけだが、自分たちの鑑賞が終われば、ヒメボタルの舞う森へヘッドライトを当てながら帰っていく。もうヒメボタルのことなどどうでも良いのだろうか?

100万匹のヒメボタルの写真は、こちら「ヒメボタル(岩手県折爪岳)

by 東京にそだつホタル