ヒメボタル Luciola parvula Kiesenwetter, 1874 の発生もそろそろ全国的に終盤。5年ぶりに山梨県内の生息地を訪れた。例年よりも一週間ほど早い訪問だが、予想通りにヒメボタルの飛翔が観察できた。
ヒメボタルは、活動時間の違う2タイプに分けられる。1つは、ゲンジボタルと同じ時間帯に発光飛翔する宵の口型と、もう1つは23時頃から発光飛翔する深夜型である。今回の生息地のヒメボタルは宵の口型である。過去の観察では、19時半から発光を開始したが、今回は曇天のため空が明るく、発光は19時45分からであった。まだ、メスが確認できないため発生初期なのだろう、飛翔数も少なく、10数頭が周囲を行き交うといった様子であった。
ヒメボタルの写真は、リバーサル・フィルムでは相反則不軌の影響で感度の低下と色再現性の低下があり、またラチチュードが狭いため、なかなか綺麗に撮ることが難しく、ISO1600のネガ・フィルムで30~60分の長時間露光でようやく撮影できるといったものであった。(参照:ホタル写真の変遷)しかしながら、デジタル・カメラの技術進歩によって、昨今では簡単に撮影することができるようになった。そのため、独特の発光から写しだされる写真の人気が急上昇し、各地の生息地で多くのカメラマンが撮影をし、パソコンでの作品づくりを楽しんでいる。
ネット上で公開されているヒメボタルの写真を拝見すると、そのほとんどが、ヒメボタルの光をより多く重ねることに主眼が置かれているように思う。地面を光の絨毯で覆うばかりである。
昔のフィルムでも、発生数の多い生息地において適正露出になるまで30分も露光すれば、やはり同じように光の絨毯になるし、デジタルでも、1つの作品ならばそれも良いと思う。中には、昼間に飛んでいるのか?と思うような背景の明るい写真もあるが、それらの写真を見て、嘆くこともなければ言いたい文句もない。(勿論、見た目でそんな感じには見えない。)
私の場合は、撮影を開始した昭和50年(1975年)当初から一貫して、ホタルの生態と生息環境の調査研究の一部として、1つは「生態写真」、そして、こうした飛翔風景に関しては、ホタルがどのような自然環境で、どのように飛翔するのか、そしてどのような発光なのかを写す「記録写真」という考えで撮影を行ってきている。デジタル・カメラを使用するようになってからは、その利点を活かして、それぞれのホタルの発光色と同じになるように現像している。ヒメボタルに関しては、他の多くの写真をみると、黄緑色やとても明るいレモン・イエローに写っているものがほとんどであるが、測光微光度計A型でヒメボタルの発光スペクトルを分析すると、530~660nmの波長の光を含んでおり(神田左京)、ピークは橙色に近い黄色である。ヒメボタルをかごに入れて観察すれば分かるが、見た目では黄金の発光色に見える。
しかし、飛翔しているときは、違う色合いに見えることもあり、人によっても見える色が違う。白っぽかったり、黄緑色にみえたり・・・これは、湿度の違いや人の色覚の違いによるものだ。
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ヒメボタル
Canon EOS 5D Mark2 / Carl Zeiss Planar T* 1.4/50 ZE
バルブ撮影 F1.4 240秒多重 ISO 1600(2016.7.16)
東京ゲンジボタル研究所 古河義仁/Copyright (C) Yoshihito Furukawa All Rights Reserved.
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