本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

殯(もがり)

2016-08-10 22:00:02 | 漢字

先日の天皇陛下のお言葉で

気になった言葉が「殯」です。

本当に天皇陛下も大変だと思います。

私のないすべてが公に生きられる

本当に気が休まる時がないのでしょう。

 

「殯」

お言葉の中では「もがり」とおっしゃって

おられました。

辞書で引くと、

ヒン、という音で

かりもがり、というのが訓読みです。

字の構成は、

かばね編の歹(ガツ)に賓が

付いたものです。

 

賓という字は、

来賓とか主賓、賓客と使うように

敬いもてなすような客

という意味です。

 

歹(がつ)、というかばね編は

代表的な文字に

「死」があります。

「死」という字も、本来は

野にさらした死体が損なわれて

肉がおちて白骨になる、

という意味です。

 

「殯」という言葉も本来は

死者を棺に入れて賓客として

待遇する、ということのようです。

そこから、

死者を埋葬するまでのしばらくの間

棺におさめて安置し、賓客として

もてなしじっと見守る、

その朽ち果てていく姿を

心にとどめて

別れを惜しむということでしょう。

 

同じようなことで、

仏教には「九想観」(くそうかん)

ということがあります。

人が亡くなって、その変化していく様を

じっと見つめ、無常ということを

心に念じ迷いを絶つという

観想の行です。

古い時代はお坊さんは

墓場というか死体捨て場で

瞑想したといいます。

 

今は、見たくないもの

いやなもの、自分に都合の悪いこと

それは極力見ないように

蓋をしてしまうというのが

私たちの生活のようです。

「老・病・死」が身近でなくなって

しまったところに現代の問題も

潜んでいるようです。

 

 

 

九想観を簡単に書きますが

今の話ではないですが、

読みたくなければここまでにしてください。

 

1.新死想(しんしそう)

 死んだ直後の様子です。

 瞳孔が開き、心臓と呼吸は

 止まっています。

2.膨張想(ぼうちょうそう)

 死後、七日もすると死体は次第に

 ふくれあがり、皮膚は蒼黒く、

 乱れた髪が草にまとわりついてきます。

3.血塗想(けっとそう)

 皮膚は腐り、血液が流れ出し、

 臭さがあたり一面に漂います。

4.蓬乱想(ほうらんそう)

 腐敗はさらに進み、ハエがたかり

 無数のウジ虫があちこちで

 うごめいています。

5.噉食想(たんじきそう)

 カラスがつっつき、犬が食いちぎる。

 噉は「食う」という意味で、

 動物に食べられるということです。

6.青瘀想(せいおそう)

 食い残された皮膚や肉の一部が

 風に吹かれて青黒く変色し、

 ぽろりぽろりと土に落ちて

 土に帰っていく。

7.白骨連想(はっこつれんそう)

 骨だけになってしまう。

8.骨散想(こつさんそう)

 手足の骨がバラバラになって、

 どこかに転がっていく。

9.古墳想(こふんそう)

 お墓らしきものとして、石がポツンと

 あるだけ、名前も刻まれてないから

 誰が死んだのかもわからない。

 

というような、ことを観想していくのです。

「殯」かりもがり、ということでは

納める宮もつくり、棺に入れて

その刻々と変化していく姿に

別れを惜しみ、本当に死ということを

我がこととしてとらえたのでしょう。

 

「殯」なかなか考えさせられる

言葉です。

 

 

 

 

     

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 六道珍皇寺の精霊迎え | トップ | お盆のお花 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

漢字」カテゴリの最新記事