酔い日は佳い日

日々の食卓、晩酌事情。by こたりん

キムチの憂鬱。

2013-03-21 | 酒風景
肴をこさえるのによく用いる納豆とキムチであるが、先日、これはけっこう究極ではないかと思わせる一品に。


焼き納豆キムチ目玉焼き。

農学博士がキムチについて言及した書籍に載っていたメニュー。まさにその名の通りの料理である。納豆を下地にして細切りにしたキムチを乗せ、中央にくぼみをつくり卵をお年巣ごもりふうにして焼く。
焼けたら鰹節を散らし、醤油をちょちょっとかけて。


ちょっと焦げた納豆の香ばしさと卵でまったりとなったキムチが相まって、得も言われぬ美味しさ。また鰹節が実によい。
納豆に刻んだキムチを混ぜた納豆キムチというのを時々やるが、今回のはそれのグレードアップ版というか加熱バージョンとでもいうか。
これ、今回は皿に盛ったが、ご飯に盛り「焼き納豆キムチ目玉焼き丼」も絶対にアリだ。

ところで、

知らなきゃ知らないでいて良かったが知ってしまったことがある。博士の本によれば日本人が食べているキムチの多くは本物にあらず。国内で流通しているものの多くは本場キムチではなくキムチ風漬物だという。
20世紀末、キムチは日本で急速に広がり定着もした。それはキムチが日本人の口に合ったからである。というよりは日本人の口に合うように作ったからだ。
日本のキムチは白菜漬けにキムチのタレをかけて作るものが多いらしく(本場の作り方とはまったく違う)、またタレを韓国に運び、そこで漬けたものを韓国産キムチとして販売しているものも多いという。
博士はそれを和製キムチと呼び、本物と区別されるべきと強調していた。日本のメーカーが作るキムチ風漬物そのものを悪者とは言っていない。キムチは、韓国では家庭で作るもので、家それぞれのレシピや工夫のある「韓国の文化」であることが無視されているのを博士は憂いておられた。博士の論点はそこである。

で、ラベルを見てみたが、韓国産とは書いてあるが、博士の言う本物かキムチ風かは要領を得ない。日本の酒類は材料や仕込み方を明記するよう義務付けられているが、キムチもそうすべきと博士は言ってもいる。(賛成!漬物好きな国民だもの。自分は、キムチ風は必ずしも否定しない)

考えすぎるとせっかくの本物はおろかキムチ風まで猜疑心で食欲がそげてしまうので、話はこれくらいにしておくとして、

以前、知人の経営(在日の方)する焼肉屋で食べたキムチは衝撃的だった。店で出すキムチは地元の漬物屋のものだが、特別にと言って出してくれたのは社長のお母さんが家で漬けた物。バイトさんに食べさせるために持ってきたという。
唐さとその中にある確固たる甘さというか、味の深さに恐れ入った。
思えば、あれが間違いなく本物のキムチだったのだと思う。正確に言えば、韓国何百万世帯とある、その中の1軒の味。