伊勢の神宮は千数百年にわたり
獣による汚れを禁じるために
式年遷宮等の神事の前には大規模な
「犬狩り」
を行っていました。
当時は野良犬が多く、神領内でのそそうや
出産が日常茶飯事だったそうです。
犬を寄せ付けないはずの神宮において
江戸時代後半、犬が単独で伊勢参りを行ったと
にわかには信じられない事実があります。通称
おかげ犬
です。
白色の犬が多かったそうです。
そういえばおかげ横丁の近くにあるこの店は
白犬が飾ってありました。
▲スヌーピー茶屋
▲「犬の伊勢参り」平凡社(2013年刊)
犬の伊勢参りが最初に記録されたのは
明和9年(1772年)4月16日。
その昔、参拝者のために
食事や宿泊のお世話をすることを
施行(せぎょう)
といって徳が上がると信じられていました。
今で言うボランティアですね。
握り飯の炊き出しがあり
犬がふらっと来たので与えると
おいしそうに食べたといいます。
その後その犬はまっすぐ外宮の鳥居をくぐると
手水を飲みました。
そして拝殿前にすすみ
ぴったりと身を伏せたのです。
この犬の神妙な様子を見た神官は
追い払うどころか感心な犬だとして
お祓を首にくくりつけたとか。
そして飼い主の元へ無事に帰還したそうです。
「犬の伊勢参り」には
牛や豚も参拝したとあります。
飼い主の代参とはいえ長い距離を移動するため
その宿場ごとにお世話をする人々がいてのこと。
首に路銀と出身地を書いた札を下げて歩く犬を
おかげ犬
としてもてなした当時の庶民のおおらかさに
感激します。
▲おかげ横丁で売っています
ちなみに
路銀の文銭が重いだろうからといって
銀銭や金銭に替えてやり
さらに駄賃をあたえたため
帰路では持金が数倍になったともあります。
当時の日本の人口、3000万人に対し
参拝者が500万人を超えていた、つまり
6人に1人が伊勢を訪れていたことになります。
伊勢はこころのふるさと。
久しぶりに
朔日参りに行ってこようと思います。