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「岩船神社」の岩船・磐座と「山面古墳群」~滋賀県東近江市~

2020-04-05 16:42:22 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 東近江市(旧能登川町)にある猪子山(別名:上山)は、繖山(別名:観音寺山)・伊庭山・瓜生山と連なる山塊に含まれ、山塊の最北端にある標高268mの山になります。
頂上には岩窟の中に観世音菩薩石像を祀る「北向岩屋十一面観音」があり、渡りのシーズンには渡りのタカが観察できる野鳥ポイントとなっています。

猪子山の頂上へと向かう林道には「上山天満天神社」が祀られてあり、麓寄りにある「岩船神社」は「岩船」や「磐座」などの巨石崇拝の遺品が見られる神社です。
東近江市から栗東市にかけては“石の文化”があったといい、それは甲賀市を経て伊賀市の辺りまで続くといいます。
また、猪子山および繖山には聖徳太子にゆかりのある寺院・神社が多く、信仰の深い霊山と言えると思います。



「岩船神社」は、天慶年間(938~946年)に創建された「上山天満天神社」の境内社として創建されたと伝えられており、御祭神として「津速霊大神」を祀る。
津速霊大神は、728年に高島比良の山から湖上を岩船に乗って渡ってきた「比良大神(白髭明神)」を先導した神だとされています。



祠の後方に祀られているのが「岩船」であるが、巨石としての神々しさもさることながら、確かに船の形に見えるというのが興味深い。
“728年に湖上を渡ってきた”という伝承のある岩船を、海を渡ってきた渡来人が多かった湖東地方で、渡来人の末裔たちに伝わる渡海の記憶のメモリアルと考えてみるのも面白い。



東近江市には「百済寺(ひゃくさいじ)」という聖徳太子が開基した寺院があり、聖徳太子は百済(くだら)と関係が深かったとされている。
百済からの渡海ルートとして若狭から湖東を経て斑鳩に至るルートがあったとされ、渡来人が近江地方に大陸の文化を持ち込んだ痕跡は多い。



岩船の正面、船首にあたる部分から見ると、この巨石の大きさがよく分かる。
注連縄が張られている岩船からは、巨石崇拝・自然信仰から神道へとつながっていった信仰の歴史を感じざるを得ない。



林道を少し登っていくと山の斜面に看板らしき物が見え、看板には「磐座」を示す説明文が書かれてあった。
“天慶年間(神社の創建と同じ)菅原道真公の御神霊 比良より繖山の勝菅の岩屋に鎮まり給うとあるが、この磐座をさすものと思われる。”とある。



「岩船」では比良大神(白髭明神)、「磐座」では菅原道真となっているが比良から繖山にやって来たという話は同じ伝承となっています。
比良大神と菅原道真公が同一の人物というよりも、当地にゆかりのある人物を象徴的な存在として伝承しているのかと思われます。



ところで、道真公には“学問の神”と称されるように学者であり、政治家でもあり、あるいは“日本三大怨霊”の一人に数えられている人物ですが、その出自は土師氏と関係があるといわれる説があります。
土師氏は、古墳造営、埴輪・土師器を製作する集団とされ、東近江の地にもその一族が居住していたとされます。

繖山には6世紀後半に築造されたと考えられている古墳が180基以上確認されているといい、古墳群としても12の古墳群が確認されているそうです。
猪子山の麓から山頂にかけての一帯には「山面(猪子山)古墳群」と呼ばれる33基の古墳があり、幾つかの古墳が見学出来ます。



林道から逸れて道を下りていくとすぐに「猪子山23号墳」が開口している場所が見えてきます。
猪子山に表示された「古墳位置図」では5つの古墳が案内されていますが、今回はこの23号墳と14号墳の2つの古墳に立ち寄りました。



猪子山23号墳は直径約14mの円墳で古墳時代後期に築造されたものだそうです。
石室の規模は約9mで、玄室の長さ4.4m・幅は2m・高さ2.3mあるといいます。
羨道は長さ4.6m・幅1.4mで床面には石が敷かれていたそうです。



「猪子山23号墳」から林道に戻り少し登って行った先に「猪子山14号墳」があるようで案内板がありました。
23号墳の周囲に他の古墳はないようですが、14号墳の北側には14基の円墳が確認されており、こちらの古墳の方が古墳群の中心部に近いのかもしれない。



14号古墳は横穴式石室(両袖式)を持つ、直径16~17m・高さ8.5mの古墳時代後期に築造された円墳だといいます。
玄室内から鉄釘が出土していることから木棺で埋葬されたのではと考えられています。



玄室の長さは3.4m・幅2.8m・高さが2.6mと23号墳と規模的には同じくらいですが、感覚的には23号墳の玄室の方が広く感じた。
内部は湿気があるのは兎も角として、林道を歩く人の声が古墳の中から聞こえてくるように感じてしまうのは少し怖くて気味が悪い。



「山面(猪子山)古墳群」からは金環・メノウ製の勾玉や丸玉・ガラス製の菅玉や小玉が発掘された古墳があるといいます。
ガラス玉は中国・朝鮮半島を経由して輸入されていたといいますから、有力な一族がこの地を治めていたと考えられているようです。



猪子山の林道を歩くと、斜面の低い所にショウジョウバカマがあちこちに咲いていて美しい。
花を眺めていると地元のウォーキング中のおばさんから声をかけられて、猪子山の季節の花についていろいろと教えていただけました。
ショウジョウバカマが終わるころには○○が咲き、あそこを登った所に○○、もっと上まで登っていくと○○...名前を知らない花もあったが、植生の豊かな山のようです。

また、野鳥の声もよく聞けて、“この山に来ると五感が研ぎ澄まされるのです。”と納得の言葉も聞ける。
この山でバードウォッチングしている人が“この山で99種まで見つけたけどキリのいい100羽まであと1羽が見つからない。”と聞かれた話をお伺いしました。
この山だけでその数の野鳥を見つけられているとは、かなり年季の入ったバーダーだと思います。



“この山でカタクリの花は見れませんか?”と聞くと“この山では聞いたことがないが、他の山で咲いていると聞いたことがある。でも結構登らないといけないよ。”とのこと。
改めて馴染みの場所へカタクリの花を探しに行くと、ひとつだけ花弁が開いているカタクリがあった。



カタクリの花を見るといつも思うのは“こんなに小さな花だったっけ。”ってこと。
小さいながらも可憐なカタクリの花ですが、この群生にはギフチョウは来てはくれません。
カタクリの花に留まるギフチョウにも会いに行きたいですね。





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