出走十日前心得

これは以前書いた記事をアップする前に当日がやってきてしまったために編集したものです。
リアルタイムで見ていた「３年Ｂ組金八先生」にこれに似たタイトルがあった。私にとっては入試にあたる緊張感のあるイベントが久しくないが、第５回湘南藤沢市民マラソンが迫ってきた。正月太り直後ということもあり、意識し始めるのは割と早く２ヶ月くらい前から海岸線や海浜公園などで「ただ走るだけ」の練習を始める。１ヶ月くらい前になるとむしろ「練習し過ぎて故障」する愚を避けるため、３０分程度軽く走り残りはヨーガなどストレッチしたりリラックスする運動を主体とする。１０キロ以上走るのは「スーパーランニングシャッター」編と正月にマシンジムで箱根駅伝を見ながら走った時のみである。マスクいらずの「ブロッカー」を常に身に着け、１時間程度のスタジオプログラムや散歩などで調整しつつ開催十日前というところになった。この頃からアルコール類などもかなり制限し、内臓に余計な負担をかけないようにするのと、高濃度炭酸泉で血圧を正常に維持できるように努める。

できればアルコールはゼロにしてもよいのだが、仕事上「機会」そのものをゼロにするのは難しい。その場においてウーロン茶だけ飲み続けるという芸当はできないし、よほど緊張する付き合いでなければ機関１００％で飲んでしまう習慣である。「怪獣酒場」を最後に十日前に突入したが、週明けにグンマを訪れる予定があった。打合せの時間を１５時からとし、懇親会やる気十分の元同僚たちを相手にスパークしないわけがない。そしてその週半ばは同業の経営者達が集う意見交換会後の気取った懇親会だったが、おまけのようにいた私も３回目ともなると何故かすっかり意気投合する「シャチョー」さんが現れ、気が付いたら輪の中心で大騒ぎしていた。１/２２は息子甘辛が沖縄への修学旅行で不在となっており、「いーふうふの日」（ホントは１１月２２日だけど）ということで、妻とＢＹＯＤレストランに食事に出かけオーガニック（だから残らぬだろうと期待して）ワインを飲み、さらに帰宅してお友達に教えてもらった「イメージが変わる」とまで絶賛されたお店の生ハムをつまみにワイングラスを傾けた。この時点で開催３日前なんだが、寒空の中を会社のイベント参加で歩き回ったせいか、翌日外出先でまさかの発熱・・・！？予想外の苦境に立たされた。

これまで毎回ではないが、正体不明の腰痛、激太りと直前に何らかの障害の起きやすいレースだったが、まさか悪寒が走るとは夢にまでおもっていなかった。金曜日は大した予定もなかったので、外出先から早退させてもらい、神社でお参りして静かに療養・・・体調は何とかなりそうだった。後のことを考えなければ１時間半くらい走るのは可能だが、体力の衰弱は心配だ。走るのは走ってもあまりに遅いとスタート後２時間１５分で「回収バス」という世にも惨めな乗り物のお世話になることになる。某ＳＮＳサイトでお友達がつぶやく・・・「ヘタレさんはバスに拾われてドナドナドーナードーナーらしいですね」（アイツ！縁起でもないこと書きやがって・・・）ヘタレ呼ばわれされている彼女は昨年、お子さんと親子マラソンで２ｋｍしか走らなかっので冷やかされたが、陸上選手だったらしく甘辛と仲良くしてくれるご長男の受験応援ということもあり、まずもって完走するだろう。「がんばれー！」私も受験生の応援マラソンを名乗りたいところだったが、もしずっこけると縁起が悪いので「終わった時に」カミングアウトする、という小ずるい戦法を選んだ。

しかし結果は当然仲間内で広められてしまうから、「途中でめげでドナドナ」なんてのはやはり縁起が悪い。こうなったら手段を選んではいられない。。。私は前日に体調がほぼ戻ったのを確認するとスーパー銭湯で短時間湯治を図った。体力切れにならないようにエネルギードリンクと初めて見る「スポーツようかん」を購入した。ボディコンディショニングプログラム６０分で筋肉に軽い刺激とストレッチを施すためにスポーツジムを訪れたが、「２月６日までの限定販売！お早目に」というポスターに目を奪われた。しばらく眺めているとスタッフの女性が寄ってきた。
「これ、ファイテンみたいなものですか？」「そうですね。普通のスポーツ店では買えないんですよ。ネット購入はできるみたいですけど。今回は期間限定でまとめて扱っています」身体のパフォーマンスを「運動能力、バランス力、回復力、集中力」という観点から様々なシーンで引き出すもので、ブレスレット型のものや、ネックレス、アンクレット、テーピングなど色々なスタイルがある。パンツ型のものもあり、「履いてしまうのが効きそうだ」とも思ったが、今回は販売対象になっていない。
「ちょっと身に着けてみていいですか？」女性スタッフは色々な種類のリストバンドを持ってきてくれた。サイズはＳＭＬとあり、きつくない程度にフィット感がある方がよいという。Ｍサイズだけ無かったので彼女がしていたものを借りた。「ぶっちゃけ、これ効きますか？明日マラソン走るんで、少しでも足しになればと目をつけたんですが」「私にはすごい効いてます。何か身体が軽くなるんです。」
そりゃー、スタッフだったらそう言うわなー。以前、ファイテンで試してみたことはあるが、目をつむって２リットルのペットボトルを持ち上げるのに装着すると信じられないくらい軽くなる。これは実体験済だがやはり根拠の薄い疑似科学の域は出ないように感じていた。しかしこういう機会に目を引いたのも何かの縁だろうと思い、一番安いストリングブレスレットを購入し装着してスタジオ向かった。

　　

実際、かなり身体が軽くなりバランス感覚がよくなったような気がした。これならいっそのこと、両足用にアンクレットにした方がよかったかも・・・スタジオを終え、しかし「集中力を高める」はずなのにゴルフレッスンでは全く効果を発揮しなかった。練習を積み重ねる技能自体を向上することはないようだ。「磯辺さん、買っちゃったの？それ、ただのゴムですよ。要は気の持ちようということです」（プロの言葉がトドメを刺した）さっきまで軽かった身体が急に重みを増したような気がしてきて、なおかつ風呂で汗を流して出てくるとまた発熱しているような気がしてきた。
今回はどうもツモの流れがよくないようだ。昨年同様、一緒に出場するつもりだった「しんさん」は仕事の関係で（もしかしてヘタレ？）でまさかの欠場、甘辛は修学旅行直後の試合を控え「お断り」と逃げ回っている。今度、東京マラソンを走るというタイソンさんにダメ元で声をかけたが、あいにく会議でＮＧ。

これまでお友達家族で完走後に我が家で打上げを行っていたが、今回はそれもなし。ドナドナと回収されるくらいだったら、いっそのことしんさんの分も合わせて参加賞のＴシャツだけ貰ってこようか・・・雨でも降らないかと天気予報を見ると、ずばり快晴！もはや逃げ隠れできぬ。考えてみれば家のすぐそばを通るこれ以上馴染み深い道路はない１３４号を１万人近い軍勢が通過するのだ。三方が原の徳川家康同様、これを見過ごしては武将（いつから？）として恥ずかしいことこの上ない。我が家が「熱い男」と呼んでいるＫちゃんパパは某ＳＮＳサイトでまさかの警備員ボランティア（ホントは自分が走ってほしかったが）を宣言、「声援送りますからねー」と書いていた。ジムでは挨拶を交わすくらいの顔見知りの人に「明日は走るんですか、磯辺さん？ボク、応援しますよー」（そう言えばこの人、昨年派手派手メイクでメガホンを手に大声を上げていた。。。

私は覚悟を決めて最後の策を立てた。Ｋちゃんパパの書き込みやジムで声かけられてヒントを得た、名付けて「沿道の応援パワー吸収作戦」である。確かにローカルなレースだが沿道にはたくさんのボランティアや応援隊がひしめいており、彼らの声援がかなりの力になるのは経験済みのことだ。誰にでも明るく贈られるこの声援のベクトルを「自分だけに」向かうようにできないものか？ここで閃いたのが「ウルトラマンとなる」ことである。と言っても本物のスーツを使っては窒息するし、たまにいる戦隊シリーズのコスプレも「イタい」だけだ。私はコレクションの中から「子供が見てもそれと分かるヤツ」を引っ張り出してきて、ゼッケンを下の方に着けてみるといかにも初代マンが胸にゼッケンをしているように見える。これに昨年も使用した「鳩サブレ応援てぶくろ」をセットし、念のため「この姿で走っている者を沿道から見かけたら声をかけてください」と某ＳＮＳサイトに投稿しておいた。

　　

この時点でもはや逃げ道はない。結局アルコール摂取のコントロールはわずか２日間になってしまった。妻にリクエストした茅ヶ崎北京亭製法の特製中華丼（三河産にら入り）をがっつりほおばり、当日は６時に起床して朝ごはん、ストレッチを行うために「アド街ック天国」の途中で床に就いたのだった。しかし心配していた通りベッドの上では頭の中」を「ドナドナ」が駆け巡り、仔牛を載せた荷馬車が揺れていた。何故か不思議に頭をよぎるシーンは子供の頃日曜夜にたまに見た「唄子・啓助のおもろい夫婦」のエンディングだった。たしか荷車の後ろにのった母親が赤ん坊に乳をあげていた。もはや体調や天候のせいにはできないが、様々な悪あがきは功を奏するのか？！

次回本レースレポートに続く。。。