超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

大台の誕生日を祝う

2016-02-20 13:05:14 | 出来事
実家の母親とバレンタインが近接しており、我が家では2月は意外にプレゼントを贈ったり贈られたりと、やり取りの多い季節である。最初に今年大台に上る母親の誕生日がやってきた。我が家では何か贈るのは誕生日と母の日に決まっている。数年前の喜寿祝いは兄妹親類を集めて結構盛大なイベントとし、それ以来「従兄妹会」として続いており、この節目の年齢も一応「祝」があるらしいのだが、高齢と呼ばれるゾーンだし何度も遠方に行ったり呼んだりするのも大変なので、今回は家族だけで御祝いを行うことにした。キリのいい年齢だから普段よりはグレードアップしたお祝いにしようと、食事の場所やプレゼントなど妻とあれこれ考えていた。夫婦で記念日に訪れる70Fのラウンジや68Fレストラン群、甘辛の好きな鉄板焼、その向かいの高級ファミリーブッフェなどが上がったがどうもピンとこない。プレゼントにしても「何か思い出に残るモノ」と妻は多少値が張るものも視野に入れていたようだが、これといって閃くモノがない。。。

本人は普段一人で住んでいるから、孫も含めて皆が集まるなら何でも嬉しいようだが、ちょっと前に下田まで旅行してきたばかりである。自分のために我々が度々スケジュールを合わせてお出掛けしたりすると気が引けるらしく、プレゼントなどにしても「お金だって墓場までは持って行けないんだから」と言い出していた。正月にとある人のブログに書いてあった「孝行は子がするものではなく、親がさせてやるもの」をみていたく共感していた私は日にちが迫ってくるに連れ少し考え方の角度を変えたのである。それはしばらく足を運んできていない「我が家でそれぞれ各自が何か作って食べさせる」というものである。妻は正月やそれ以外でも母の喜ぶものを色々作っているから問題なし、私は片瀬漁港の鮮魚直売で朝採れの魚を仕入れ、自分で下した刺身を出してやるつもりだった。問題は一番母が喜びそうだが、普段から料理らしいことは何もしない息子で「甘辛よ。何か作れるものないのか?」「ま、考えてみるさ。家庭科は得意だぜ」

甘辛は妻と相談しどうも「クリームシチュー」を製作することに決めたらしい。明らかに自分の好みが入っていると思われたが、寒い時期作り置きもできるので悪い選択ではあるまい。前日に妻と食材を買い込んでくるとともに何もないのも何なので、ちょっとしたプレゼントと乾杯用シャンパンも用意したようだ。私は念のために漁港のHPで確認してみると、まさかの臨時休業・・・・?!近隣エリアの直売所も営業しておらず、一番近いのは「小田原さかなセンター」だった。この日のこのエリア、漁そのものが休業だとしたらわざわざ小田原まで行ってもあまり意味がない。私は駅前でそこそこクオリティの高い水産店で鮮魚を入手して捌き、また母の好きな「金目鯛」の煮付けを製作することにした。「煮付け」など作ったこともないのだが、今は便利なものでインターネットで数々のレシピが紹介され、動画サイトで実際に調理している様子まで見ることができる。料亭などで「煮付け」部門を見るとかなり高級料理のようでびっくりするくらい値が張るものというイメージがあったが、ネットで見る限り特別な調理方法を用いているわけでもない。どちらかというと簡単そうな動画付きレシピをお手本にすることにした。

当日、息子甘辛は昼からサッカー部の練習があったらしく、午前中にバタバタ仕込んで出かけて行ったらしい。私は朝からすぐ近くのスポーツクラブにポインター号を走らせ、午前中のうちに件の魚屋に寄って鮮魚を物色した。開店したばかりで真鯛もヒラメも、はたまたホウボウなどの高級魚も見かけたがどうもうまく刺身に捌ける自信がない。立派なサイズの魚だったが失敗して台無しにするリスクを恐れ、やはり経験のあるアジを選ぶことにした。店員に良さそうな魚を選んでもらったが、「何かやっときますか?」と聞かれて思わず「じ、じゃあ、3枚に下しといてもらえますか?」とついつい保険をかけてしまった。自分で下すところが大事だと思っていたのに、土壇場でプロの腕を頼りにしてしまったのである。「あのーぅ、金目鯛の切り身ってありますか?」見たところ全身像は見当たらなかったので恐る恐る聞いてみたら、「ありますよー。冷凍のヤツだけど、煮付けにするとすごく美味しいですよ」私はフライパンに一度で乗り切るサイズを想像して3枚選んだのだった。

帰宅してアジとキンメの切り身を冷蔵庫に入れ、実家まで赤いライオン号を走らせた。手料理だけ食わせに迎えに行くのもなんだし、甘辛は夕方まで帰ってこないので、天気も良かったこともありスーパー銭湯に行く前に少しだけ出掛けることにした。これまでいくつか巡ってきた「相模六社」のうち、未だ訪れたことのない平塚の「前鳥神社」である。一之宮が寒川、二之宮が国府津の川勾、三之宮がちょっと遠く秦野の比々多、五之宮に相当するのが平塚八幡宮、総社が二宮の六所ということで四之宮が「前鳥神社」にあたる。境内にメイン?となる社殿の他に神戸神社、奨学神社と三柱の神様が祀られている。それぞれ学問、仕事、厄除けなどの神様だそうだ。いつもの通り私は無病息災系の御守り、母親は自分の生まれ月である2月の「貝合わせ守」というのを購入した。お祝いの日に神社にお参りしスーパー銭湯でリフレッシュして一応家族の手料理を食わせるというコースとしたのである。

夕方母を連れて帰ると、既に甘辛は帰宅していてクリームシチューや妻のローストビーフ、私の買ってきた鯵もタタキになっていて、残るは未着手の「煮付け」だけである。次々とテーブルに出される手料理に結構焦りを感じながら切り身を取り出した。いつもならそれこそ実験用白衣を取り出して、フラスコやビーカーで分量をきっちり計算し、秒針を見ながらフライパンとにらめっこするのだが、どうもそんな暇はなさそうだ。フライパンに買ってきた金目鯛の切り身を置き、料理用酒をどぼどぼ入れてその身を浸し砂糖の容器を取り出した。どのレシピを見ても酒(レシピによっては味醂も少し)と砂糖と醤油、ショウガをぶち込んで落し蓋をして煮詰めるだけである。「なんだこの砂糖、固まっちゃって全然取れねえじゃんか・・・」凝ったレシピだと「ザラメ」とか「メープルシロップ」なども使用するようだが「ようするに砂糖だろ」とがりがり削って切り身の上にふりかけ、アルコール分が飛んだタイミングで醤油をどぼどぼ注ぎ込んで煮立たせ、レシピにあったようにアルミホイルで上を覆ってさらにその上に蓋を置いた。「ああーっ、切り身に切れ目を入れんの忘れてたぁ!」慌てて包丁の刃を立てるも滑ってしまって役に立たず・・・やがてアルミホイルの下で「しょわーしょわー」と盛大に煮立っている泡が見え始めた。

      

分量も時間もろくに計っていない、落し蓋形式なので下で何が起こっているか知る由もない・・・「あんまり煮過ぎると固くなるよ」という妻の言葉を聞いて恐る恐る蓋を取るとそれなりに「煮付け」っぽい香りはしているようだ。ちょうど他の準備も整ったようなので慌てて適当に皿に盛りテーブルに持って行った。「あかんかったら、オレが責任持つからとりあえず箸をつけてみろ」しかし意外にも甘辛は「お、結構コレ美味いじゃんか・・・」繰り返し箸でつついているところを見ると、結果オーライだったようだ。ホントに煮詰めるともっとドロドロベタベタするようなのだが、中途半端に取り出してしまったからかえって味があっさりして魚の高級感が出たらしいのだ。クリームシチューにローストビーフ、鯵のタタキに金目鯛の煮付けとは統一感のないメニュー構成だが、日常使えるちょっとしたプレゼントも渡して、とりあえず母には満足してもらえたようだ。「クルマで送って行く」という妻に対して「タクシー呼ぶから」とビールを飲ませ、抱えきれない荷物を持って玄関を出て行くのを見ていると「やっぱり親がさせてくれてるんだよな」と感じざるを得ない1日となった。

    


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2 コメント

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Unknown (小夏)
2016-02-23 00:29:14
お母様の大台のお誕生日、まことにおめでとうございます。
先日長嶋三奈さんが大台を迎えた父・茂雄さんを語るという記事を読みました。同じお年かしら。それとも怒られちゃうかな^^
息子さん一家が招いてくれ銘々お料理を作ってお祝いしてくれるなんて聞いたことがありませんよ~!素晴らしいです!!
特に男性陣、がんばりましたね~とってもおいしそうです。金目鯛も上手に仕上がりましたね。

↓で、オムライスの話をしたとき、、無性に食べたくなり作りましたよ。盛り付けたお皿が、奥様のローストビーフのお皿と似ています、同じかな^^私のはパン屋さんの景品(笑)

「やっぱり親がさせてくれてるんだよな」、、
ここ、よくわかります、^^
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Unknown (磯辺太郎)
2016-02-23 07:09:52
小夏さま

お祝いいただいてありがとうございます。
ははは。実は長嶋さんとは誕生日が数日違いなのです。もう結構な高齢ですよねえ。
色々お出掛けも考えたのですが、まあたまには我が家でtぴうことで。。。実は男性陣は企画はあったのですが、かなり妻のフォローに助けられているんです。
金目鯛だけ結果オーライかな・・・

オムライスの香りがしてホントに辛くて・・・・食べ物の恨みは恐ろしいですねえ。(笑)
今年は「させてもらっている」と考えることにしています。少しExceedしたつもりで。
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