超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

試練多き自然相手のホビー

2016-01-23 12:56:59 | ホビー
大陸からの寒波に覆われ、連日最低気温記録を更新している時期、寒風吹き荒ぶ未明の庭で震えること2時間・・・そんな無茶なチャレンジがここ数日続いている。「カタリナ彗星」を観察・撮影するためである。アイソン彗星のようにニュースにもなるほどメジャーなものではなく、ラブ・ジョイ彗星のように肉眼でも見える美しいものでもないが、一応天文マニアの中では今年の目玉となる大物彗星ということだ。明け方の空で昨年の暮れ前から輝きが増し、星空の綺麗な場所ならぎりぎり肉眼でも見られる程度に増光したらしい。昨年の前半に超兵器A-VX号、主砲M20号が登場し整備計画も一段落したのだが、いくつかの天体ショーもあったのだが天気にも恵まれず月面や一部の惑星観察以外には戦艦大和の46cm主砲のようにその威力を発揮することなく今に至っていた。以前に比べて少し地味な彗星だが、マニアの投稿した写真などを見ると「尾っぽが二つに分かれている」珍しい形をしており、ぜひ超兵器を活躍させたいものだとチャンスを狙っていた。

大昔から星の海というものは「変わらないもの」とされていると思うが、天体の観察や撮影となると「一期一会」、チャンスは一度きりと思ったほうがよい。何万年も同じ姿であっても(簡単な話だが)雲っていたら見られないし、月が光っていたら淡い星雲は消えてしまう。月齢と天気、そして観察時間の組み合わせによってあっという間に条件が狭くなってしまう。惑星はその軌道によって見られる季節が毎年異なるし、流星群や月食などの天体ショーは決まった日しか見られない。写真は東の空に輝く金星と月が同じように欠けている珍しいシーンでこういうことも滅多にはない。前回のラブ・ジョイ彗星など次に見られるのは8000年後だし、大抵の彗星は一度地球(太陽)に接近したら生きているうちに再びその姿を拝めることはない。月面などもまだまだ奥が深くて色々な表情があるし、撮影も素人さながらままにならないのだが、やはり何百何千年を経てやってきた星の光や太陽系の彼方から、前触れもなくやってきて短い時間だけその姿を現して去って行く彗星などにロマンを感じてしまうのだ。

    

本格マニアなどの間で話題に上っている彗星は毎年何個かあるが、比較的明るい「カタリナ彗星」は暮れのころ朝方の東の空で見えると報じられた。私は朝5時には起きているので、早く庭に出るのはわけもないことだが、ちょうど東側には道路の街灯など邪魔な光が多く、低い位置だと何も見えない。A-VX号赤道儀は夜空の名のある星や星雲など対象物の自動導入機能があるから地軸を正しくセットすると自動的に視界に入れてくれるのだが、彼方から突如現れる彗星の類は内蔵DBリストにないので、予め調べて置いて手動で探さなければならない。星図の座標を使うなどもっとよい方法があるのだが、まだモノにできていない。結局彗星の姿を主砲M20号で捕捉することができず、方角のあたりだけつけて203号のレンズを向けて追尾撮影してみたが、画像に写り込んではくれなかった。淡い対象物はファインダー越しに姿を見ることができないので、ピントを合わせて手探りで追いかけるところが辛いところだ。

何度かトライしてダメだったので諦め、年末年始は忙しくて星空どころではなくなって、そのうちに忘れてしまっていた。1月中旬になって地球に最接近したころはだいぶ夜空の中を移動していて、北斗七星の近くとなっていたのをたまたまとあるサイトで見つけたのだ。200�望遠レンズでうまく撮ると渦巻き状銀河M101と同じ視野に入れることができるという。北斗七星の尻尾からその下側を通過して北極星に向かうような軌道のようである。時間は午前3時から4時くらいである。正月は海にも入れるくらいに暖かく「久々の暖冬だ」と思っていたのに、成人の日くらいからすごい寒波がやってきて、強い風に身体を振るわせるのが最近のことだ。彗星捕捉作戦は大きく2種類考えられる。A-VX号赤道儀を使用して我が家から望遠鏡観察する方法とポラリエ1号を使用して星空の綺麗な場所まで足を運ぶことである。我が家からのA-VX号は精密な追尾性能があるから、主砲M20号で捕捉できれば大迫力画像も夢ではないが、何と言っても空が明るすぎるし周囲の建物もあって方向に限りがある。一方、赤いライオン号に大型赤道儀は搭載できないから、携帯のポラリエ1号を使用することになるが、お馴染みの星ヶ丘までは車で40分、真っ暗闇の怖さに耐えなければならない。天気さえよければ203号の望遠で十分その姿を撮影はできると思われる。

寒風吹き荒ぶ屋外で一人きりお化けの恐怖には耐えがたいので、まずは我が家の庭から追いかけてみることにした。まずは4時に起床し、万全の防寒対策にくるまってA-VX号に68mm屈折鏡筒と203号をダブル搭載して望遠レンズで「カタリナ彗星」撮影を試みた。自動追尾するには赤道儀の軸を正しく北極星(正しくは天の北極)に向けなければならず、これが容易くできるようにデッキ上にマジックで三脚をセットすべきマークをつけてある。しかし真っ暗闇でこれを探し出すのは至難の業でかなり手間取った。この後明るい木星で星を自動導入するための「アラインメント」という設定を行い、北斗七星にレンズを向ける。双眼鏡や屈折望遠鏡を低倍率にして周辺を探ってみたが、それらしい姿を拝むことはできなかった。我が家の光を全部消して真っ暗にしても街の光に邪魔されてやはり淡い姿は中々見られない。そのうち空が白み始め東に金星が輝くような時間になってしまったので、その日の観察は断念した。

翌日、さらに冷え込みと風が強く、「モノ好き」を超えてほとんど「狂気の沙汰」でA-VX号をセットした。起床したのは前回の反省を踏まえ午前3時とした。私にとっては極寒の世界だったが、その恩恵か我が家周辺にしては綺麗な星空が広がっていた。インターネットサイトで詳しく位置を調べると、どうも自分の想像以上に激しく移動している。どうも前夜は見当違いの場所を探していたようなのだ。どんずば「その日」という位置はネット上では見つけられなかったが、北斗七星のミザールから気持ち左下方面というあたりを当たってみた。屈折鏡筒は40年前の古いものだからか、やはり望遠鏡で見つけ出すことはできなかった。ちなみにミザールという星は北斗七星の後ろから二つ目の星で小さな星が横に引っ付いている。それが昔はその星を見分けられるかどうかが軍隊の視力試験にもされたようだが、「北斗の拳」で登場するところの「死兆星」である。望遠距離を短くして1分ほど露出していると、どうやらうすぼんやりとそれらしい姿が写りこんだ。私は大喜びで250�フル望遠にし、拡大撮影に意気込んだところ、思わぬアクシデントが発生した。ほとんど真上に近い状態で203号をセットしシャッター開きっぱなしで追尾撮影すると、なんとレンズ自身の重みでズームが動いてしまい、星がピンボケになってしまうのである。そんなこんなで悪戦苦闘しているうちに寒さで身体が動かなくなり外での活動はもはや限界となってしまった。。。

        

こうなったら根気勝負である。翌日も天気予報では降水確率0%でしかも恐ろしい寒風がようやく止むようだ。雨は絶対降らないことを前提に私は明かるいうちからA-VX号を庭に出し、極軸合わせだけを済ませておいた。さらにAMAZONから届いた軸受用雲台を使用してダブル搭載が可能となった主砲M20号を屋外に出しておく。実はM20号は反射式と屈折式のあいのこのような構造で、鏡筒の中の空気と外気を同じ同じ温度にしておかないと内部に気流が発生し星が揺らいでしまうらしいのである。万を持して起床したのはさらに早い午前2時。203号の望遠レンズはピントを合わせてズーム部をガムテープで固定した。しかし残念ながら2時間の奮闘も空しくこの日もわずかに小さな白い姿を写し出せただけで、主砲でその雄姿を捕捉することはできなかった。一番低倍率の接眼レンズを使ってもM20号の焦点距離は2000�と長いので、視野に入る範囲が極端に狭く、かなり広範囲に動かしても「カタリナ彗星」を見つけることはできなかったのである。その日もやはり2時間くらいで身体が芯から冷え込んでしまい、埜庵のかき氷を一気食いしたように頭がきんきんしてきたので作戦は終了した。

  

「カタリナ」彗星は1日経つと星空をかなり移動する。2月1日に北極星付近まで見かけ上接近する軌道になっているからまだチャンスはあるが、明るさが下がってきているから、時間が限られているのは間違いない。次なる作戦は、もう少し正確に位置を調べておいて焦点距離の短い10cm反射鏡筒で直接撮影を試みるのと、ポラリエ1号携帯の星ヶ丘遠征である。「今度こそは迫力画像をGETしてやる」と考えうるイメージトレーニングを繰り返し臨もうとしたら、数日ぶりに雲で覆われてしまった。しばらくは夜空の星の海は期待できそうにない天気予報だ。こうなると彗星の光度のように途端に衰弱し、この寒さに懲りてしまうのか、超兵器群には全く手を触れなくなってしまうのである。

とにかく自然相手の趣味(と言えるかどうか自信なし)とはしんどいものだ。寒グレ釣りやカワハギ船釣りなどもそうだが、それこそ寒空の下、時には水しぶきを浴びることもある。星も魚も「大物」を得ようとしたら、人があまりいない奥へ奥へ進まなければならないのが共通の試練だ。特に私は根気に乏しく物事にすぐにとりあえずその場は満足してしいまい、冬釣りや寒空の天体撮影など一区切りすると「もういいや」としばらく離れてしまう。趣味の境地にいる人と比べるとあっという間に「懲りて」しまうのである。とりあえず今は、毎年恒例の湘南藤沢市民マラソンが近いから、寝不足にはならないようおとなしくしている。2月に入ってしばらくは一晩中「カタリナ彗星」は北の空にいるようだ。今年のテーマはEXCEEDだから昨年のラブ・ジョイ彗星画像より優れたモノをGETしたいものだ。


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