超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

不思議なコラボの実現

2015-07-04 08:57:31 | 出来事
★本編は現在上映中映画のネタバレとなる可能性がありますのでご注意ください。

人から薦めてもらった本を読んでその感想を話し合ったり、それを別の人に薦めたら別の感想を聞くことができたり、そういう本のつながりが(決して広くはないが)面白いと、このサイトで書いた記憶がある。(どのタイトルでいつだったかは忘れてしまった)本が好きな人なら、相手が一人で話題がたった一冊の本でもストーリー展開や登場人物評、印象に残ったセリフや結末などについて語ることは尽きず、「(なるほどこの人はこういう読み方をするのか、ではこういう本は結構好みなんじゃないか?)」と次の本を薦めずにはいられないようになる。逆に人から薦められた書物というのは、自分で選んだ本に加えて、既に読んだ「かの人」を思い浮かべる分読み込みが深く、後で色んなことが語れるような「残像」が多い。先にあった「駅を語る会」のように時代モノの要素が強い時は同年代仲間でわいわい集うのもよいが、読書に関してはこれに加え「世代を超えた」つながりが意外に面白いものだ、ということも以前書いたと思う。最近は何か突拍子もないことを思いつくことがあり、前回に続き「ちょっと変わったコラボレーション」が実現した話である。

書物というのは活字だから、基本的に読む時には一人きりであり、物語に表現される全ての情景や登場人物、音やイメージなどは全て自分の頭で作りだす。例えば主人公のプロフィール(年齢や出身、職業や家族構成など)や外見を表す事柄がかなり物語中に記述されていても、顔つきが都会的なのか田舎もんなのか、ファッションはどうなのか、背丈やプロポーションなどは?と書かれてないところは自分で勝手に想像する。話しているとこれだけでも個人ごとにかなりの違いがあり興味深いことが分かる。イラストにしてみたり、俳優にあてはめてみたりするともっと面白いと思う。ただこう言った会話はメールやSNS、ツイッターやLINEなど様々なネット介在のコミュニケーションで足りることが多い。「読書会やろうか」という話も持ち上がったが、直接時間を拘束してしかもダイレクトに話をするにはその緊張感やプレッシャーに気後れしてしまう人も多いのが中々「リアル会」として実現しない原因でもあろう。

ところが今回、それこそひょんな思いつきから奇跡とも思えるコラボレーションが実現した。「映画(館)感」編で「こそ読」紹介したのは「キネマの神様」というタイトルで、年に数回ある社内の「同門の会」でかつての同僚に貸してあげるとともに、数少ない貴重な本友である知人とAKB改め「あまちゃん」(仮称)に「面白いよ」と紹介した。そしてついでだが、我々の共通話題となりえる「例の書」について「何と、映画になったよねえ」と軽く振ってみたらすぐに反応してくれた。面白いのは全く年代も違う二人が同じように「『○っちゃんかよ・・・』と思った」と返してきたことだ。元々は古くからの知人が教えてくれた本で知性的な彼女が薦めてくれてきた中ではちょっと異色の物語だった。198x年代の若い男女の恋愛物語で、当時流行りのドラマやミュージック、ファッションがふんだんに現れ、ど真ん中ストライクの我々には当時の風俗を見ているだけでも懐かしく楽しめた。

物語自体はトレンディドラマ(死語?)的なもので、ドキリとする官能表現なども結構あり「男子的にはエロ物語も歓迎だけどねー」などと冷やかしていたが、当時を懐かしむ以外には「まあ、こんな時代もあったわな」的な感想が湧きつつあったやさきに衝撃(というか戦慄の)ラストセリフである。。。「えっ?そんなバカな・・・」と慌ててもう一度読み返し、紙と鉛筆を持ち出すという顛末だったことはどこかで書いた。福山ガリレオでも一発では解き明かせないであろうほどに巧妙なストーリートリックとミスリードを解明した時には嬉しくて誰かに教えたくてしょうがなかった。あまちゃんはすぐに読んでみたらしく、しばらくたってから「新鮮で面白いですねえ・・・」と感想を返してくれた。彼女にとっては伝説のバブル期の物語を興味深く読んだのだろうが、「アイツ、絶対気付いてないな。。。」と見抜いた私は「もっと熟読せよ!特に最後のほう・・・」とヒントを与えたらまたしばらくして「あーっ、ホントだー!!!」ときた。(やっと気づいたか。このオレが単なるラブストーリー(死語?)など薦めるはずないだろ?)

この本を教えてくれた知人、あまちゃんと私はこの著書の巧妙な仕掛けを知るに至ったのだが、「自分なりの感性で情景を思い浮かべながら先に進む」という読書という特性ならでは有効となるトリックで「映像にしてしまったら一発でネタバレしちゃうじゃん」というところが3人共通の新しい興味となったのだ。一体どのようにしてストーリーをカムフラージュしたのか、原作と異なる結末とされているようだが、どんな仕掛け、どんでん返しが企画されたのか・・・・?世間話のついでに「3人で見に行こうか?」と(笑)マーク付きでメールしてみたら、古くからの友人はなんとノッてくれたのである。あまちゃんはノリからしてたぶんこういうのは「嫌いじゃない」だろう。ただ友人と私はほぼ同じ年代、あまちゃんは約20も年齢が下になるので、下手に3人並ぶとCMの似非家族のようになってしまう・・・「同僚とか男友達を連れておいで」と言っておいた。

かくして私の期待通りアクティブ「あまちゃん」は「映画鑑賞会」を企画してくれ、不思議なコラボレーションが実現するのである。ドンピシャ世代が私と友人、あまちゃんは20歳下、そして連れてきたのはちょうど真ん中世代にあたる彼女から見れば10際年上の男子だったのだ(でかした!)。ちなみに仕事の関係で色々と世話になっている人らしく、私とも少しだけ仕事を共にしたことがあるそうだ(全然忘れていた)。あまちゃんの綿密な企画に合わせ集合した4人は誰もが一人以上初対面の人がいる、という不思議なグループとなった。あまちゃんとも久しぶりの再会となったが、友人の女性と並ぶと想像以上に似非家族となり、このサイトでは初登場のタカさん(仮称)の存在が光っていた。「(これがあまちゃんと同年代男子だったら、なおさら『両親にボーイフレンドを紹介するの図』になっちゃうから、更にまずいわな)」と何となく思っていた。自己紹介もかねて簡単にランチをご一緒しいよいよシアターに向かう。初めて又は久々に会うぎこちなさよりも、どんな仕掛けが待ち構えているかに興味の中心があった。

一体、映像としての物語に何が起こったのか?!これについてはもう少しほとぼりが冷めてから書くことにしよう。結果だけいうと4人とも「海外で待望の日本食を注文したら、出てきた味噌汁の出汁が取ってなかった・・・」ような気分だった。仕事も年齢も生活スタイルも違う4人が半分初顔合わせだったのに「あの映像は一体何だったのか?!」タイ料理店の飲み放題コースで熱く語り合うこととなった。タカさんは小説を読んだ時から主人公の女性がお気に入りで、その分物語の全貌を理解したときはショックだったそうだが、やはり映画を見ても彼女の擁護派だった。暴力じみたことをされたり寂しい思いをさせられるところに胸を痛めていたらしい。私と友人はあの時代ど真ん中なので何を話題にしてもすぐにリンクアップしたが、あまちゃんは何と生まれた年!時々ポカンとした顔をするときがあり、そういう時は「何かここから、こう、見えない線があるんだよなー」とテーブル上で手刀を切り苦笑したものだ。

女性軍は最初から比較的冷やかだったが、私は主演に抜擢された「●っちゃんはまり役説」を披露した。素直な女神のように誘惑する顔もあれば彼氏一筋の健気な顔も見せるが、どれも「何となくわざとらしくてウソっぽい」ところが演技なのか素なのか微妙でストーリーにはまっていたような気がしたのである。魔性というほど深くはなく、小悪魔というほど可愛らしくもない何とも言えない中途半端さんがすごかった。(●っちゃんってすごい女優なのかもしれないぞ)「こいつはちょっと危ないかも」と本能が訴えても男子は儚げな眼差しに弱いのだ。主人公の正当性についてタカさんとは一致したが、女性軍は「ええーっ?」と不満げだった。彼女たちは「やっぱり●っちゃんかよ」説から移ってはいなかったが、同性と異性の評価がこんなに分かれる演技自体が結構すごいことではなかろうか?

4人とも何となく消化不良だったのは事実だが、それぞれの感想を語り尽して話題はこれまで読んだ本のことに移ってゆく。タカさんはこれまで仕事関係やビジネス本ばかりで小説はほとんど縁がなかったが、あまちゃんから薦められた「阪急電車」で結構火がつき、今回の「映画とセット」談義ではおおいに引き込まれたという。「おーっ、オレも『阪急電車』で罠にはまったー!」と思わず膝を打った。私もタカさんくらいの頃「●間本」などビジネス書の類を読み漁り、しきりに仕事や人間関係などに活かそうと燃えた時があったが、あの手の本を読んですぐに適用、結果を出せるくらいなら誰もエリートビジネスマンになっている。スピーチする機会が増えると「ネタの引き出し」には役に立つが、むしろビジネスとは全く関係ない古典や今回の小説などから「ヒントを見出す」ことが大事なのである、と多少おじさんの説教っぽく自説を披露した。調子にノッて「あまちゃん」がこのサイトで当初AKBという仮称だったいきさつをカミングアウトした。「AKB48にいそうな可愛いお嬢さんだが、おじさん皆同じ顔に見えて誰だかよく分からな~い」というのは表向きの所以だったのだが、実は(メークの光加減なのか)いつもほんのり赤く上ずった顔に見えたので心の中で「赤兵衛(あかべえ)」と読んでおり、これこそがAKBだったのである。(ごめん!)

不思議なコラボレーションだったが、最後はそれぞれ持ち寄ったお薦め本を交換しあうことになった。あまちゃんが私の元同僚からパスされて読み終わったので持ってきたあの「キネマの神様」はタカさんにダイレクトパス、そのあまちゃんには同じ原田マハ本で面白いと言われた「楽園のカンヴァス」を壁パス、久しぶりの友人には「凄まじき昆虫の世界」編で書いた「風の中のマリア」をスルーパスした。私は欲張ったことにあまちゃんからも友人からもお薦め本を借りることができた。見事な本のパスワークだが、これから先は読み終えるのにどれだけ時間をかけてもよいし、自分の持つ本ネットワークにいる他人に貸してあげてもよい。(私のはね)今回はタカさんのいうような「小説と映画のセット話題」というのが不思議なつながりを実現させた。次回はいつになるか?メンバーは誰になるか?スローライフで忘れた頃になりそうだが、こんなつながりも「亦楽しからずや」である。

  


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