超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

オフシーズン

2015-02-13 23:51:23 | ホビー
「ご主人、最近釣りに行ってますか?」お気に入りのイタリアンに久々お友達とランチに行った時、妻が訪ねられたそうだ。腰越から江ノ島の方に移転したあの店のマスターは「三度の飯よりも釣りが好き」で、仕事以外は釣りさえできれば何もいらないとさえ豪語していた。以前も我々が入店するといきなりテーブルにやってきてスマホを取り出して画面を開いてみせた。「今、調子いいんですよ」パラパラめくる(という表現がよいのか)画面には、私が出会ったこともない大型のメジナや黒鯛など磯の人気者を抱えて笑う彼がいた。「今ね、熱海港の岸壁、すごいんですよ。排水溝の暖かい水に集まるらしくて、良型が入れ食い状態!」「ホント、ホント?どのあたり?船着き場?」私が乗り出して聞くとさらに興奮し、紙と鉛筆を出してきてポイントを詳しく解説してくれた。別の日には「片瀬港の赤い方の灯台、今周辺に山ほど黒鯛がいますよ。30cmくらいはあるかなー。上から見えますもん」この手の話で盛り上がると厨房をすっぽかしてノッてくるので妻は「(また始まりやがった、仕事戻れよ・・・)」という顔をしている。

お店が休みの時には伊豆半島の先端まで行って来るというから、情報も確かなんだと思うが、いかにも「バカスカ釣れる」ように聞こえて、喜び勇んで釣行しても今までほとんど釣れたことがない。熱海港には妻も付き合わせたのにわずか2匹程度、江ノ島周辺などそれ以外のところはほぼ坊主である。「アイツの言ってるところ、全然釣れねえじゃんか」とぶーぶー文句たれて帰ってきても、妻は「ふーん、そういう時もあるんじゃない」と言うが明らかに「(腕の違いだろ)」という顔をしている。冷静に分析すると朝暗いうちから夜まで釣りをしているマスターと半分観光気分で数時間しかいない飽きっぽい私との差ではないかと思う。しかし30cmの黒鯛がうようよ泳いでるなんて絶対かましている。散歩がてら何十回も偵察に訪れている片瀬漁港で魚影を見たことなど一度もない・・・

さておすすめポイントは全く当てにならないマスターだが、自分で釣った獲物もメニューに出すときがあるだけあって、魚料理に関しては抜群のセンスを持つというのは我々の一致した意見である。刺身やカルパッチョなどは魚介そのものの質に依存することが多いが、彼の技はグリルの塩加減などが絶妙で、洋食ではほとんど肉ばかり食べる私が「魚」をメインに注文する唯一の店であることは以前書いた。日によって食材が異なるが、これまで「カジキマグロ」「アンコウ」「イサキ」「金目鯛」・・・どれも素晴らしかった。実は常備メニューとして「ミヤジ豚」、甘辛の好物な「阿波尾鶏」なども絶品なのだが、私は何となく魚介系を注文してしまう。ちなみに黒板に書かれた「その日のメニュー」は聞いたこともない調理法?が多く、「一体、その魚をどうするのか?」マスターに尋ねないとどんなものかさっぱり分からないものが多い。

マスターに聞かれて妻は「釣りはやってないけど、星をやってるみたいですよ」と答えたそうだ。向かいの川で日向ぼっこをしながら釣り糸を垂れることはあっても、あまり釣果も期待できないこの近辺の岩場で、極寒に震えながらウキを睨み続ける気合が中々入らないのである。「ここならまず釣れる」というポイントは赤いライオン号を2時間ほど走らせなければならず、「車が臭くなるから釣行禁止(ただし船釣りは可)」とされている中、自然とメジナ狙いからは遠のいている。「あの車がきて、オレは趣味の一つを失ったんだよ」とささやかな抵抗を試みるが、軽くスルーされて終わっている。そう言えば本格的に釣行したのは昨年クリスマス前までさかのぼると思う。(実は途中まで書いて忘れていた・・・)

エサ取り名人のカワハギは1年を通して釣れるようだが、最も美味しいのは秋から冬にかけてである。一昨年の秋に同僚のセッシーに誘われてデビューし、ビギナーズラックも手伝ってまずまずの成績を収めた。茅ヶ崎港からもカワハギ船は出ているようだが、最初は横須賀長井港からの出船だった。その後極寒の昨年末、千葉岩井港からプライベート船での釣行を最後に約1年ぶりとなった。実は前月に一度セッシー達に誘われたのだが、例の母との東北旅行が入っており、断らざるを得なかった(実際は中止になったらしい)のだ。12月に入ってたまたま松山でセッシー達と久々に会って飲んだ時、かなり後半にヘロヘロになりながら「ねぇん、せっしー、カワハギ行こうよぅ・・・」とくねくね誘い、ちょうど年内にもう一度は行くつもりだった彼は「じゃー、20日に決めときましょか!」と軽くノッてきた。

その後、全く音沙汰なしで月も半ばとなった。「さすがに飲んだ席でお互い盛り上がっていたから覚えてないのかな」前の週にいつもの片瀬漁港直売朝市を偵察してみると、小ぶりだがたくさんのカワハギが上がっていた。「小さいけど血抜きしてあるから美味しいよー」係のおっさんに言われて取り上げると確かに少し小さめだが、100g100円だった。一人2枚ずつの勘定で6枚買って帰り、小さいので妻に下してもらった。ほぼ1年ぶりでやはり肝は美味この上なかったが、刺し身自体はどうもささくれていて、正直大した食感ではなかった。「(ま、こんなもんだったっけ?)」と多少首を傾げていた。折から日本列島に猛烈な寒波が到来し、北海道のすぐ右上に目の詰まった低気圧が2個もあるという見たこともない天気図で関東地方も強風が吹き荒れた。早朝ゴルフもしんどかったが(色んなことやってるな)早朝洋上で強風に震えるなど耐えられなさそうだったので、連絡が来ないことをいいことにこのまま自然消滅?と思っていた。

  

恐らく私が酔っ払って覚えていないと考えていたのか、ホントに計画が決まらなかったのか分からないが、せっかくそういう話になったのだからそーっと(寝た子を起こさないように)「あのーぅ、記憶が定かじゃないんですけど、松山で今週末カワハギ釣りに行く話ってしませんでしたっけ?あ、別の機会でも全然OKなんですが・・・」」と控えめに尋ねたら、すぐに「連絡が遅くてすいません!予定通り20日に行きます。」と蕎麦屋の出前みたいなメールの後に、「やっぱ天気が悪そうなので、21日に変更しましたぁ。都合大丈夫ですよね!」と威勢のいい連絡が・・・前回同様、午後船から合流すると伝え今回は赤いライオン号で駆け付けることにした。ネットで釣り船店を調べると、前日のカワハギ船は午前船のみで釣果は「0〜12」・・・・ぜっゼロだと?!私は下船後釣った魚の数を聞いて回っていたおばちゃんに「オレ、初心者なんで、坊主です・・・」とSTAP細胞ができなかったことを報告するようにうな垂れる自分の姿を思い浮かべた。

幸い、日曜日は最近では久々に寒さも和らぐ予報だった。午後船は11時半出船だから1日で一番暖かい時間帯だし、ヒートテック&マイクロフリースのユニクロコンビに貼るホッカイロ、スノーボードウェアという重装備を固めた。その日は朝から天気は良く確かに寒さは和らいだようだったが、我が家を出ようとした矢先、午前船先発のセッシーからいきなり「寒いし、釣れてません。1匹だけです」という悲報が・・・・こりゃー、マジで釣りは期待できないなー。私は赤いライオン号を発進させながら、「そう言えば、以前『どこまで湘南か?』というのを話題にしたことがあったっけ・・・」いずれ実際に自家用車でも走らせて体感的にレポートすることにしよう。その日は前日まであった低気圧の余韻なのか結構波がたっていてこの寒いのにたくさんのサーファが浮かんでいる。はるか向こうの海の上に神のご降臨のように光輝いているところがあるぞ。午前船はあの辺で釣ってるのかな。

        

長井港に到着し受付を済ませて午前船の帰還を待っていると、11時過ぎになって遠く江ノ島をバックに一隻の釣り船が入港してきた。セッシーは後半に調子を上げたらしく、「つねけ」(つまり10枚以上)の竿がしらとなったらしい。3回目となるが、いつものメンバのジュンちゃんから竿とリールを借り、かじかむ手でエサのアサリを針につけて錘を垂らした。教わった通り忠実に誘いをかけているといきなり「たんたんたんっ!」と特有のアタリが・・・!「おおーっ!磯辺さん、きましたかぁ!」第一投でいきなりあの感触を思い出した私は「ひゃっほーぅ!」とリールを巻き上げたが、「あ、あれ?」真ん中あたりですっぽ抜けてしまった。。。しかしその後、意外にも粘り強さを見せて午後船だけの出場なのに8枚というまずまずの戦績だった。自分が不調だとマジで焦りまくるくせに「さすが、だいぶコツをつかみましたねえ」と余裕の上から目線は午後も絶好調で30枚近くあげたセッシーだった。誘い方のスタイルに相性があると言われたが、その日は「セッシーの日」だったらしい。

        

船宿で地元でとれた新鮮そうな大根やみかんをお土産にいただき、獲物をクーラーBOXに入れて意気揚々と帰路にたった。最大20cmくらいとちょっと小ぶりだが、肝はどれもパンパンでぎりぎりシーズンなのが伺える。私は教わった方法で全ての魚を3枚に下ろし、最後の薄造りだけは妻に頼んだ。下ろした残りは全て鍋にぶち込んで出し汁にしてみたのである。漁港で買ってきた魚とは比べ物にならないくらいの美味だった。刺身に勝るのは難しいかもしれないが、仮にこれら魚をかのマスターに委ねたらどんな料理になって出てくるだろう。今度あの店に行った時に聞いてみよう。あまり盛り上がると肝心の料理がそっちのけになってしまうが・・・今年は暖かくなったらゆるゆる釣行を再開しようと思う。 

            


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2 コメント

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Unknown (小夏)
2015-02-14 09:22:23
師匠、おはようございます!
ひぃーーっと身体じゅうが反乱起こしそうな(最近いただいてないゆえ)カワハギ画像をご馳走さんですっ!!肝のコク、、あの上品の、、、あわぁぁ~
それに、このお味噌汁っ!どんな濃いお出汁のお味となっているんでしょう~
「くねくね」のおかげですね(笑)

洋食でお魚に強いお店は超貴重ですよね。お店のマスターと話が盛り上がっちゃうなんて、、ホホ、楽しいなぁ~

↓の消防署ですが、
「あれ、川のところにあるのイメージできるんだけど、、」で考えてみましたら、確か海の通りにありますよね!!
私が書いたのはJRの駅の方から南下した市民館(図書館?)のような建物の近くにあった消防署です。
そこを走って江の島方面にできくるときに、突然目の前に電車ガァーーーっと出てきたような気がします^^
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Unknown (磯辺太郎)
2015-02-14 16:55:23
小夏様

こんにちは。師匠。
たまたまかもしれませんが、漁港で買ってきた魚とは全然違うものでした。この肝を刺身に乗せてもみじおろしポン酢またはワサビ醤油で贅沢にいただきましたぁ。。。
味噌汁もすごい出汁でしたねー。私の下ろし方が下手なので肉はたっぷり付いてましたし・・・(苦笑)

そうそう、洋食で魚に強い店ってホントに貴重だと思います。マスターと釣りの話は盛り上がりますが、厨房そっちのけですからねえ。、、

ああ、太平台ではなく、海沿いの消防署ですね。あのすぐそばってハゼがたくさん釣れるんです。息子と海練してる時に入水してしまった女性がいて、119番したら出動したのがこの消防署。
師匠がお書きになったのは南図書館の隣にある消防署ですね。そのずーっと先が龍口寺前交差点です。
江ノ電が突如路面に出現する緊張感溢れるところですねー。
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