超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

技能競技会

2011-10-19 08:06:06 | 職場
職場では年に1回、拠点ビルの中庭などを使って普段仕事で使う技能を競う競技会が行われる。それが「予選」というわけでもないが、同様な競技会は全国規模でも行われ、「現場力」の確認として経営TOPは必ずずらりと顔を見せる。
時勢に合わせ毎年少しずつ内容は変えてきたが、扱う対象に関わる基本的な技能、安全作業の履行、顧客へのヒューマンスキル等を中心に競うスタイルは変わっていない。
以前は筆記試験などもあったのだが、あまり結果が改善にフィードバックされないので廃止した。
今年は大きく高所作業、屋内での異常探索・正常化に分け、「今の水準を維持」するためのレベルと「より高い職人技」のレベルでそれぞれ競技は行われた。

競技会そのものは私の直接管轄する分野なので「主催者」ということになるが、他にもCS(顧客満足度)管理セクションが顧客役を演じ、競技者の採点を営業セクションが行うに加え、法人営業や普段顧客とは電話でしかコンタクトをとらないコールセンターセクションなども熱心に見学にやってくる。
毎年、地方新聞社も取材にやってくるし、優秀賞の4名は正月の新聞にその写真を掲載されるほどだ。(かなり名誉に思うらしく、この新聞に載ることを励みに出場する選手もいるらしい)
インタビューは私かと思いきや、事務局の初登場マーロン課長に決まっているようだ。

開会式で一言挨拶し、競技開始の準備が始まった会場でずらりと6台並んだ高所作業車を見て私は
「ねえねえ、1年に1回なんだからさ。アレ乗せてよ」
年々、改良されていると聞く最新式の高所作業車の機能を確認するため(単に上から見下ろしたいため)、スティーブに頼むことを忘れなかった。
ヘルメットを着けて安全ベルトを装着し、指導役の人と二人でバケットに乗り込んでウィーンとアーム(ブームというらしい)を上昇させた。
最高約9.9メートルまで上がることができる。様々な安全対策が施され、ちょっとでも危険の可能性があると止まってしまう・・・並んでたから撮れたがバケット車って上から見るとこんな感じだ。バケット車の上からバケット車を撮ることって中々ないよね。

     

高所作業は一人の黙々としたものだが、メンテナンス分野は異常探索やその正常化と言ったテクニカルな部分だけでなく、顧客役の人への挨拶、作業内容の説明やそのタイミング、気配りなども審査員が細かくチェックしている。
午後になって「プロ部門」の競技となったが、たくさんの人の目の前でやりづらそうだったが、その手際は素晴らしかった。やはりどの世界でも「職人の技」というのは見事なものだ。
頼もしかったのは超ベテラン風の選手の中に20代の若手選手も交じっていたことだ。今時「先輩の技を盗む」というシーンも減ってきたとは思うが、彼らがたくさんの技術を引き継いでくれることだろう。

競技が終わり採点されている間、「お客様役」だった人や審査員の営業の人達と色々おしゃべりしていた。実はこの競技会は「技能を維持促進する」以外に二つの意味を持っている。
一つは「顧客目線での課題やちょっとした気遣いの与える影響」を見出せることだ。
ある選手(プロ)は訪問してさっとシステム周りを探索し、故障内容と修理にかかる大よその時間をズバリ説明し、その後「今、何をやっていて、あとどれくらいかかる」というのを場所を変えるたびに説明してくれたという。
またある選手はキーボードを叩くときに、「触ってよろしいか」あらかじめ御断りした上でウェットティッシュで指先をきれいにしてから作業を始めたとか・・・
作業終了後にその内容と料金の説明をした後、アンケート葉書を置いてくることになっているのだが、その葉書の最下部に手書きで「ご面倒をおかけしてすみませんでした」というメッセージがあって「感激した」というユーザ役がいた。
社内で内輪褒めしてもしょうがないが、あらためて「うちの会社でよかったと思うわー」とマジ顔で言われると、何となくくすぐったいような鼻が高いような気分だった。

もう一つの意味は競技者独自の「カイゼン」を随所に見ることができることである。この言葉は日本を代表する自動車メーカーが発祥で「kaizen」と言えば世界のビジネス共通語になっている。
我が社も個々の職場でかなり力を入れて仕事の改善活動は持続しているほうだと思う。ソフトウェア、ハードウェア、注意喚起、コスト削減など色々な面で「カイゼン」を繰り広げこれを形にしている。中には商品化、特許化したものまである。
ちょっと横道に逸れてしまうが、何とも無骨(というか素朴)なのはそのネーミングだ。(スティーブと八兵衛が命名することが多い)

●「分度君」:高所作業者を駐車する際に安全な傾斜角度範囲内かどうかを簡単に判別する角度計
●「みつかーる」:昔からある様々な施設の検索を一発でできるツール
●「一人で出来た君」:高所作業中に今まで二人でしかできなかった微妙な作業を単独作業として可能にした器具
●「バケピカ君」:高所作業者を清掃するキット一式
●「落下せん」:高所に設置された器具が腐食等により落下しないように措置する補助具
●「ハタボウ」:細かい配線やスイッチの設定、端末コマンドなど「ここでミスるとやばい!」という時に注意喚起するための目印
●「ゴッドハン」ド:屋外施設を保護するための細長いカバーを締めるときにものすごい力と手間が必要だったのだが、ヤットコを改良して片手一本で簡単にできるようにした工具。
●「スグトール」:障害物などが多い屋内で細い通信ケーブルなどを突っかえずに奥の配管などに通すための誘導パイプ。
●「サギョチュー」:デリケートな作業をしている最中に携帯などが鳴って一旦中断しなければならないとき、再開時に間違えた箇所からやらないようにピカチューが指をさしている。
●「とまりま線」:「電線にスズメが3羽とまってた・・・」下が駐車場などの場合鳥の糞をうけないように細い線を平行に走らせ「とまれないようにする」線。

毎年、秋口になると様々な部署で考案された新兵器が展示される発表会がある。前半はその昔からあったが、後半は私が着任してから考案されたものだ。
最後の「とまりま線」のネーミングについては私案として「ストッ糞(プン)」というのを主張したのだが、採決の結果却下となってしまった・・・
社内で一定期間以上実地作業の講習などがあると閉講式では覚えた作業に関して自身で工夫したアイテムやアイディアを披露することになっている。
兄弟会社のルーキーズであることが多いが、昨年は身体中に工具、部材などを張り巡らしさながら「ランボー」のような姿をしている人もいた。

メーカーが大金をかけて開発したものではないが、現場作業の中で直接生まれたものだから、工程にドンピシャフィットし(当たり前か)、個人の知恵が集積されている。夏休みの自由工作が大の苦手だった私はこれらの「ものつくりアイテム」を見るのが大好きだ。ネーミングはイマイチのセンスと思うけど。。。
長嶋茂雄さんの名言「必要は発明のマザー」を思い出す。。。
そんな競技者の様々な工夫も盛り込んで採点が終了し成績発表となった。素人(じゃないけど)の部、プロの部、上位2名ずつの計4名は来年の正月、新聞にその姿が掲載されるから皆、内心かなり期待している。
プロの部では何と20代の元ルーキーズがワンツーフィニッシュ!いやあ、世代が「つながって」良かった。。。

ヒューマンスキルの審査員はすべて女性・・・顧客のオフィスなどの屋内外で作業するときに「ヘルメットをしたまま建物に入るべきか?」などと色々と意見交換していた。
「なーんか、競技と競技の間の準備の時、時間を持て余しましたねえ。バケット車でも上ってみますか?」
私が軽く聞くと一人の女性審査員は真っ先に手を挙げ、「乗りたい!今日も思ったけどスカートだったので・・・」
「次回は作業服をお貸ししますよ・・・」
確かにあの「待ち時間」は退屈だ。。。何か大道芸のような余興でもやるかなあ。屋外で立ちっ放しだから「太極拳」などもリフレッシュにいいかも。