超兵器磯辺2号

幻の超兵器2号。。。
磯辺氏の文才を惜しむ声に応えてコンパクトに再登場。
ウルトラな日々がまたここに綴られる。

きのこ

2011-10-06 13:06:21 | 食べ物
10月1日、重要なパートナー会社が県北の拠点として新事務所を開設した。開所式は月曜日に最初の営業日にあたる月曜日に行われた。
週明けはほぼ毎週自宅からの遠距離通勤となる私はこの開所式に出席するために、東海道線始発2本目の電車に乗り、新幹線をいつもより余計に乗って事務所に向かうことにした。
スティーブが会社を表すユニフォームを用意して駅まで迎えにきてくれた。(こういうあたり「形」を重んじる集団だなー)
駅から社用車で約20分、何度か足を運んだことのある事務所が拡張され式の準備が進められていた。

初代所長は先日まで同僚だった先輩、名付けて「きのこテラピー」である。(長いからて「てらぴー」と呼ぶ)
いつも明るく大きな声でハキハキとものを話す、明治人(ではもちろんないが)の気質をもった信頼できる先輩である。
この秋、我が社を退社し晴れてパートナー会社の新設拠点の所長に就任したのである。ついこの前まで同じユニフォームを着ていたのに、デザインも色もその会社のモノに変わっており、なんか不思議な感じがした。

エリア支店長の開所の挨拶に続き、一応来賓として一言挨拶申し上げた後、てらぴーは所長としての所信表明を行った。
40分ほどで恙無く開所式を終え、休憩室でコーヒーをごちそうになっていたら、向こう側でスティーブ、やーさん、隊長らが何やら箱の中を物色している。「まいたけ」と書いてある箱が傍らにあった。
いつか「まいたけセンター」「なめこセンター」なる施設に立ち寄ったことがある。無料で「汁」を食べさせてくれるのだ。このあたりはきのこの特産地なのかな。
もう一つの箱の中には「魔物」のようなきのこがどっさり入っていた。スティーブらはそれを物色していたのだ。

実はこのてらぴー、山菜採りやきのこ採りが趣味の一つなのである。いつかここでも紹介した、「秋の収穫祭」色々な種類のきのこの天ぷらが登場したが、すべて店頭販売で買ってきたものだ。
そう、数年前、てらぴーのきのこにあたって何人もが病院送りになったそうなのだ。(実際そこにはいなかったから都市伝説かも)
しかし総務のブラック将軍からその収穫祭前に「食中毒に気を付けるように」と一斉メールが来たくらいだから、かなり事実に近いのだろう。
てらぴー産のきのこは別のざるに分別されているから、決して手を出してはいけない。。。まことしやかに注意されたものだ(もしかしてからかわられてる?)
「今度のは全く安全ですよー」てらぴーはにっこり箱を指差すが、どこからどう見たって魔窟だよ・・・
でもさすがにベテラン、中身については色々教えてくれた。ネットのきのこ図鑑のプリントも見せてくれた。
まずむやみにでかく、毒々しくも感じる黄色いきのこ、これは「コガネタケ」というそうだ。
てらぴーは高速の脇にある道端からとってきたという。説明によると「可食だが中毒の報告例もあり注意が必要。黄色味が強い系統が危険と言われているがはっきり解っていない。・・・・・・無味で汗臭いような異臭がある」
恐る恐る臭いを嗅いで見たが、それほど異臭というわけでもない。。。しかし時には下痢・嘔吐を伴うこともあり、解説には「美味しい」とは一言も書いてない。誰も手を出そうとしなかった・・・

次に思わずのけ反りたくなるような、イソギンチャク風(サンゴにも見える)のきのこ、これは「ネズミタケ」と言うそうだ。正しくはホウキタケと言うらしい。一応食べられる(しかもてらぴーは美味しいという)これはその場にいた色々な人が知っていた。結構ポピュラーなもののようだ。でも解説にはやはり「弱い毒性を持ち、個人差があって下痢や嘔吐する人もいる・・・」とも書いており、100%安全というものではないようだ。
「この黒いヤツは何か大丈夫そうですねえ・・・・」私は小さい黒いきのこをつまみ上げて呟いた。
「そうそう、磯辺さん、それだけは絶対大丈夫!お店でもよく売られている『黒しめじ』ですよ」

さっきから聞いていると、「今度のは・・・」「それだけは・・・」「中には・・・」とか気になる文節が多いんだよなー。
「きのこって店頭に並んでない怪しげなヤツを食べることあるんですねー。だって『中には食中毒・・・』ってのはさすがに売れないでしょ?」私が訝しげに聞くと、
「そうですねー。絶品なのとひどい目に合うのが微妙なところなんですね。でも『生』で食べては絶対にダメ!念のため煮汁を少し飲んでみるんですよ。妙なのが混じってると数十秒で『腹にきます』から。」
てらぴーによると毒性の強いきのこは取り分けられて直接入っていなくても煮汁に胞子が入っているだけで「腹にくる」という。。。。うーっ、恐ぇー。。。

漬物類が全然食べられないという私の性質はそもそも「偏食」の次元を超えているが、いわゆる好きでない食べ物というと、缶詰の白いアスパラガス、ブロッコリー、しいたけ・・とくる。
「きのこの山」は好きだが、本物のきのこにはそれほど興味がない。。。菜っ葉類はまだしも「胞子」という言葉の響きがどうも日陰でじめっとしており、身体からも生えてきそうで嫌なのである。
一本何千円もする「マツタケ」を有難がってそのまま焼いて食うのを至高の喜びとするのがよく理解できない。(亡き父親は結構信奉派だったが、それでも細かく刻んでマツタケご飯にしていた)

そのうちどこからか山菜の煮物のようなモノが皿に盛られてきた。真っ黒で一本一本がやけに長く、あまり見たことのない山菜のようだが、きのこ類ではないらしい。箸を用意されたのでどうも食わされる雰囲気だ・・・
「こっ、これは何ですか?」すっかり疑心暗鬼になっていた私は恐る恐る聞くと、「いやだなー磯辺さん、これ蕨ですよ。ちょっと大きいけどねー。新潟で採ってきたんですよ」
ポン酢とマヨネーズを付けてそーっと食したがこれは正真正銘の山菜のようでしゃきしゃきした歯ごたえで中々美味だった。

てらぴー産のきのこ箱だが、誰も手を出す者がなく彼も「こりゃー、持ち帰りだなー」と苦笑いしていたが、パートナー会会社のエリア支店長は例の「ネズミタケ」を取り出し、「オレ、子供の頃これ食ったことあるんだよ」と袋に詰め始めた。(何て命知らずな!)「じゃあ、ボクももらっていきます。でも支店長が試してみてOKだったら食べます。何年か前に隣の拠点事務所が全滅してしまって、応援に行ったことあるんですよ・・・」
工事長も袋に詰めだした。全滅だと・・・?(もちろんしばらく寝込んでいただけらしいが)そうまでなっても「きのこ」ごときに手を出すものなのか?!

昼休み時間に毒きのこについて少し調べてみた。「ベニテングタケ」など私でも知っている毒きのこの他に色々な種類があるのだな。特にテングタケ類は食後15分~30分後に発症し、酒に酔ったような興奮状態になり、精神錯乱、幻覚、視力障害の症状が起こるという。。。
つまり「ハイ」になるということか?!シンナーみたいに「ラリ」るということでもあるな。
色々なサイトにあったが、どこにも記述されていたのが「昔からの迷信を信じてはいけない」
●縦に裂けるキノコは食べられる。
 縦に裂ける毒キノコの例:クサウラベニタケ・カキシメジ・ニガクリタケなど多数。
●色の鮮明なものは毒で、おとなしい色のものは食べられる。
 おとなしい色の毒キノコの例:カキシメジ・クサウラベニタケはじめ多数。
●ナスと煮れば中毒は起こらない。
 ナスに解毒作用はない。
●塩漬けにすれば食べられる。
 ドクツルタケ・ツキヨタケなどには全く効果はない。
●虫に食われていれば食べられる。
 キノコを主食としている虫は、毒キノコも平気で食べている。
●煮汁の中に銀サジを入れて黒変するものは食べられない。
 銀サジを黒変させる毒キノコは1種類もない。
●油で炒めれば食べられる。
 例えばツキヨタケは油で炒めると、毒成分がよく溶けだし、逆に症状が重くなる。
●乾燥すれば食べられる。
 カキシメジとドクツルタケを乾燥させて食べ、中毒になった事例がある。

うーむ。。。秋の味覚としては魅力的なモノで、また山を散策していて「食べられる」きのこが分かると楽しさ倍増にはなるだろうがなー。
フグを代表として、キタマクラ、ゴンズイ、アイゴやカサゴなど魚にも毒を持つものが結構あるが、パッ見てほとんどはすぐに分かる。しかしきのこ類はよく似たものが多く、下手に食べると死ぬ猛毒もあるみたいだ。
やはり指差して「食べられる」「られない」と空想の世界で楽しむのはよいが、実際に腹に入れるのは「売っているヤツ」にしといた方がええんちゃうかなー。
最後になぞなぞをひとつ。
「1975年、8代目坂東三津五郎氏をその中毒によって急死させたトラフグはどれくらいの大きさだったか?」