息子甘辛は6年生になってから「塾」に通うようになった。土日も含めてサッカーばかり、家ではゲームばかりで全く勉強しない(なんと勉強部屋もないが)ので、まずは勉強する習慣を作るため週イチで始めたんだって。
どこがよいのか全くわからなかったが、たまたま小さい頃から通っている駅の近くの英会話教室と同じフロアに聞いたことのある塾があったのでそこにしたようだ。
1学期も終わりに近づき、夏休みの学習計画も含めて面談を行うという。妻は何故かあまり気が進まないようだし、逆に私は学習塾というものにやけに惹かれたので会社帰りに寄ってみることにした。
私は「塾」というところに通ったことがない。「そんなの行かなくてもデキたからさ」と言いたいところだが、そうでもない。。。
小学5,6年という甘辛と同じくらいのときに、私のクラスは男女が仲がよく、しばしば放課後、公園に集まって遊んでいた。
私は隣の席に座ってた女子とも仲がよかったが、その子はある日の集合に「用事があって来れない」という。
「何だよ。これねえのかよ。。。」
と残念がる少年、太郎のノートの隅に彼女は小さい字で「塾」と書いた。。。
ふーん。当時でも高学年ともなれば半数くらいは塾通いがいたように思う。ただ、何となく「ガリ勉」のイメージがあって後ろめたいらしく、あまり大っぴらに言うヤツはいなかった。
「女子はみーんな勉強ができるものだ」と疑わずに思い込んでいた太郎は「そんなものか。大変だな」と全くの他人事だった。
その頃から小中学校の教育では昔のように試験の成績順位を校内に張り出すようなことは無くなっていた。
それが、とある日に算数のテストを先生がひとりひとりに返し、
「今回のテストは難しかったはずなんだ。でも珍しく、磯辺太郎が一人だけ100点。。。」
むろん、インチキはしていない。限りなくマグレなのは確かだが。隣の女子はニッコリ笑い、クラスの大半は驚き、後ろに座っていた背の大きな女子が・・・
「すっごーい!塾にも行かないでできるなんて。。。」
「そっ、そっか?」
その言葉が後の数年間、とりあえず実家から通える大学に入学するまで、私にとっての「呪縛」となる。。。
中学、高校と部活が忙しくて、帰りに勉強しにどこかへ行くなんて体力的にも無理があったのは確かだが、「やっぱ塾とか行かなきゃ駄目かなあ」なんて思うときにあの「呪縛」が邪魔をする。
あのときの女子の羨望の眼差しとスターになった気分がよみがえり、「塾」へ行ったら自分に負けるような気がしたのだ。プライドみたいなものか。。。
中学になると「家庭教師」なるものがつく生徒もおり、もはや大半が塾通いとなっていた。
部活の帰りに悪友が、通っている塾の話をしだすと、そこに気になっていた女子の名が出てきた。
「そうか!クラスが違っても塾なら同じ教室になれるじゃんか。。。」いかにも思春期らしい邪な動機で「塾行きてえなあ」と思ったものだが、やはり呪縛を解くことはできなかった。
話を戻すが、そんな憧れもあった「学習塾」だから息子の話よりも一般的な話に興味があったのだ。
生まれつきの商人じゃないの?と思われる室長に手を取らんばかりに案内され、副室長と名乗るこれまた関西弁なまりの丁寧な人が出てきた。
以前、母子で話を聞きにきたときに、この地方出身の私の話題になったようで・・・
「塾にも行かず、勉強もせずにあの高校行ったんならお父さんは天才だよ!」
と「酒飲んで怪我ばかりしている」と私を評した息子をたしなめたらしい。。。
むふふ。。。そんなわけねえだろ!最後の夏休みに骨折しちゃってやること無かったから、頭ぁ破裂するほど勉強してジャンプ一番救命梯子に飛び付いたのさ!これぞ入ったもん勝ち。
副室長は県内の高校が内申点でマッピングされた表を取り出し、現在の進学システムを細々と説明し始めた。
そんな話は右から左で(ごめんなさい!)、どれどれ我が母校は。。。。うむ、結構健闘してんじゃんか。今年は名物の体育祭でも行ってみっか。
ただの県立校だし、海が近いと遊んじゃうしね。まあこんなもんだろ。ん?何の話されてんだっけ。。。
とりあえず、漢検、英検(あともう一つは忘れた)を持ってると内申ポイントというのをもらえるんだな。生徒会長とか部活で優勝したりしてもポイントだという。Jリーグのジュニアユースじゃダメかな。(そもそも無理か)
「このあたり(ランク)の高校の生徒だと、3年の夏休み前に間違いなく『MARCH』に行きたいって言うんですよ。この仕事結構やってんですが、100%というのが面白いですね」
何のことかさっぱりわからん。。。聞くとM(明治)、A(青山)、R(立教)、C(中央)、H(法政)なんだって。そんな受験用語を素人に言われたって・・・この人苦手かも。。。
一応息子の勉強態度はちゃんと聞いておいた。そこそこ真面目にやってるようだ。
「遅刻が多い」、(間違ったと納得するまで)「自説を曲げない」、「暗算を適当にやっている」・・・
ぎゃーはっはっは!間違いなくオレだよ!大事なのはツキと集中だぜ。人生結果オーライ!
最後に夏休みの予定表みたいなものを出して何やら提案された。
「『チュージュ』お考えじゃなかったんですよね。週2回くらいで復習を中心にすれば算数は全然問題ないと思います」
チュージュ?何のことだ?そうか中学受験か。。。しかしそんな業界用語みたいなヤツ使う意味あんのか?妻が面談に気が進まなそうだったのがわかるような気がする。
A3判の予定表を見ながら、たしか「こことここは合宿」、ここは「選抜の練習」、「県内選抜大会」。。。アイツも結構忙しいんだな。
ん?8月4日の夕方は休みになってるぞ。。。
「あっはっは。江の島花火大会の日は先生が見物に行っちゃっていないからお休みですかあ?」と聞くと、副室長は怖い顔して
「そんなことでは休めません!藤沢駅が人であふれて危険なんですよ。講師も生徒も来れないときがあるんです」
どうも、失礼しました。。。
うーむ。花火大会自体は大したことないんだがな。ロケーション効果恐るべし。。。
どこがよいのか全くわからなかったが、たまたま小さい頃から通っている駅の近くの英会話教室と同じフロアに聞いたことのある塾があったのでそこにしたようだ。
1学期も終わりに近づき、夏休みの学習計画も含めて面談を行うという。妻は何故かあまり気が進まないようだし、逆に私は学習塾というものにやけに惹かれたので会社帰りに寄ってみることにした。
私は「塾」というところに通ったことがない。「そんなの行かなくてもデキたからさ」と言いたいところだが、そうでもない。。。
小学5,6年という甘辛と同じくらいのときに、私のクラスは男女が仲がよく、しばしば放課後、公園に集まって遊んでいた。
私は隣の席に座ってた女子とも仲がよかったが、その子はある日の集合に「用事があって来れない」という。
「何だよ。これねえのかよ。。。」
と残念がる少年、太郎のノートの隅に彼女は小さい字で「塾」と書いた。。。
ふーん。当時でも高学年ともなれば半数くらいは塾通いがいたように思う。ただ、何となく「ガリ勉」のイメージがあって後ろめたいらしく、あまり大っぴらに言うヤツはいなかった。
「女子はみーんな勉強ができるものだ」と疑わずに思い込んでいた太郎は「そんなものか。大変だな」と全くの他人事だった。
その頃から小中学校の教育では昔のように試験の成績順位を校内に張り出すようなことは無くなっていた。
それが、とある日に算数のテストを先生がひとりひとりに返し、
「今回のテストは難しかったはずなんだ。でも珍しく、磯辺太郎が一人だけ100点。。。」
むろん、インチキはしていない。限りなくマグレなのは確かだが。隣の女子はニッコリ笑い、クラスの大半は驚き、後ろに座っていた背の大きな女子が・・・
「すっごーい!塾にも行かないでできるなんて。。。」
「そっ、そっか?」
その言葉が後の数年間、とりあえず実家から通える大学に入学するまで、私にとっての「呪縛」となる。。。
中学、高校と部活が忙しくて、帰りに勉強しにどこかへ行くなんて体力的にも無理があったのは確かだが、「やっぱ塾とか行かなきゃ駄目かなあ」なんて思うときにあの「呪縛」が邪魔をする。
あのときの女子の羨望の眼差しとスターになった気分がよみがえり、「塾」へ行ったら自分に負けるような気がしたのだ。プライドみたいなものか。。。
中学になると「家庭教師」なるものがつく生徒もおり、もはや大半が塾通いとなっていた。
部活の帰りに悪友が、通っている塾の話をしだすと、そこに気になっていた女子の名が出てきた。
「そうか!クラスが違っても塾なら同じ教室になれるじゃんか。。。」いかにも思春期らしい邪な動機で「塾行きてえなあ」と思ったものだが、やはり呪縛を解くことはできなかった。
話を戻すが、そんな憧れもあった「学習塾」だから息子の話よりも一般的な話に興味があったのだ。
生まれつきの商人じゃないの?と思われる室長に手を取らんばかりに案内され、副室長と名乗るこれまた関西弁なまりの丁寧な人が出てきた。
以前、母子で話を聞きにきたときに、この地方出身の私の話題になったようで・・・
「塾にも行かず、勉強もせずにあの高校行ったんならお父さんは天才だよ!」
と「酒飲んで怪我ばかりしている」と私を評した息子をたしなめたらしい。。。
むふふ。。。そんなわけねえだろ!最後の夏休みに骨折しちゃってやること無かったから、頭ぁ破裂するほど勉強してジャンプ一番救命梯子に飛び付いたのさ!これぞ入ったもん勝ち。
副室長は県内の高校が内申点でマッピングされた表を取り出し、現在の進学システムを細々と説明し始めた。
そんな話は右から左で(ごめんなさい!)、どれどれ我が母校は。。。。うむ、結構健闘してんじゃんか。今年は名物の体育祭でも行ってみっか。
ただの県立校だし、海が近いと遊んじゃうしね。まあこんなもんだろ。ん?何の話されてんだっけ。。。
とりあえず、漢検、英検(あともう一つは忘れた)を持ってると内申ポイントというのをもらえるんだな。生徒会長とか部活で優勝したりしてもポイントだという。Jリーグのジュニアユースじゃダメかな。(そもそも無理か)
「このあたり(ランク)の高校の生徒だと、3年の夏休み前に間違いなく『MARCH』に行きたいって言うんですよ。この仕事結構やってんですが、100%というのが面白いですね」
何のことかさっぱりわからん。。。聞くとM(明治)、A(青山)、R(立教)、C(中央)、H(法政)なんだって。そんな受験用語を素人に言われたって・・・この人苦手かも。。。
一応息子の勉強態度はちゃんと聞いておいた。そこそこ真面目にやってるようだ。
「遅刻が多い」、(間違ったと納得するまで)「自説を曲げない」、「暗算を適当にやっている」・・・
ぎゃーはっはっは!間違いなくオレだよ!大事なのはツキと集中だぜ。人生結果オーライ!
最後に夏休みの予定表みたいなものを出して何やら提案された。
「『チュージュ』お考えじゃなかったんですよね。週2回くらいで復習を中心にすれば算数は全然問題ないと思います」
チュージュ?何のことだ?そうか中学受験か。。。しかしそんな業界用語みたいなヤツ使う意味あんのか?妻が面談に気が進まなそうだったのがわかるような気がする。
A3判の予定表を見ながら、たしか「こことここは合宿」、ここは「選抜の練習」、「県内選抜大会」。。。アイツも結構忙しいんだな。
ん?8月4日の夕方は休みになってるぞ。。。
「あっはっは。江の島花火大会の日は先生が見物に行っちゃっていないからお休みですかあ?」と聞くと、副室長は怖い顔して
「そんなことでは休めません!藤沢駅が人であふれて危険なんですよ。講師も生徒も来れないときがあるんです」
どうも、失礼しました。。。
うーむ。花火大会自体は大したことないんだがな。ロケーション効果恐るべし。。。