中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

休職・復職の基本シリーズ③

2020年03月24日 | 情報

部下や後輩の様子に、「いつもではない」様子が窺えたら、まず面談をしましょう。
何気ない内容の会話で十分です。

ただし、「事例性」と「疾病性」を区別することが大切です。
管理職やリーダーは、医療職ではありませんから、病気のことには立ち入らないようにしましょう。
「うつ病ではないか」と素人診断をしてはいけません。
例えば、睡眠は十分に摂れているか、食欲はあるか、悩みはないのか、というレベルです。
そして反応に疑問をもったら、産業医につなぎましょう。
もし、産業医へのつなぎを嫌がるようでしたら、無理強いをすることはありません。
しばらく様子を見ることにしましょう。
立振る舞いや勤務内容に改善が見られれば、そのままで良いのですが、
改善が見られなければ、再度、産業医面談につなぎましょう。

当該従業員に、産業医面談の感想を聞きましょう。そして、産業医に面談の結果を聴きましょう。
産業医が専門医の受診を勧めるのであれば、当該従業員に、医療機関の受診を指示します。
併せて、産業医の見解を聴き、経過を人事労務部門に情報提供しておきます。

ここで、問題になることがあります。
通常のケガや病気であれば、当該従業員は黙っていても、医療機関を受診するはずです。
しかし、うつ病等を疑う場合、当該従業員は医療機関の受診を拒否することが考えられます。

ところが、就業規則に、会社の受診命令を規定していないことが多いようです。
就業規則に規定していないことを強制することは、トラブルにつながりかねません。
ですが、民法第1条第2項に規定されている信義誠実の原則(信義則)を援用して、
医療機関への受診を指示することは可能です。
また、労働契約法第5条の安全配慮義務を根拠にすることもできます。

ただし、無理強いすることは問題ですので、
その場合には、例えば、人事異動を発令し業務に支障を来たさない職務に異動させることも検討します。
このような事態になることは、当該従業員も予測していませんから、
渋々でも医療機関への受診に繋がることになるでしょう。

医療機関の診断書を産業医に提出し、産業医が休職の必要性を認めれば、
会社は当該従業員に休職を発令することになります。
休職させるかどうかを最終的に決めるのは、会社です。
たとえ病欠でも従業員が勝手に休めば、無断欠勤になります。

二つ目の問題なのですが、通常のケガや病気であれば、当該従業員は休職するのが通例ですが、
うつ病等の精神疾患の場合には、休職したがらないことがおきます。
しかし、この場合も上述の信義則の原則や安全配慮義務を援用して、休職を命じることは可能です。

なお、就業規則に休職命令、医師への受診命令と休職命令ができる権利と、
これに従わなければならない従業員の義務について、
あらかじめ就業規則に規定しておけば問題が起こりません。

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