はじめに、小職の講演資料より引用し、スタートします。
マスコミは、精神疾患をり患する原因として、長時間労働だけを取り上げますが、長時間労働だけが、問題なのでしょうか。
例えば、最近起きた「入社2年目の女性社員の自死」の事案です。
マスコミ報道では、長時間労働だけに焦点が当たっていますが、
その背後には、ハラスメントを始めとする多くの複合的な要因が絡んでいることを見逃しています。
確かに、残業時間が月60時間を超えると、体調に悪影響があるというエビデンスがあります。
長時間労働を「目の敵」のようにするのは、分かりやすいからでしょうか。
ストーリーを簡単にしたいという、マスコミ特有の悪癖でしょうか。
しかし、よく考えてください。皆さんの周囲をよく見まわしてください。
マスコミも、皆さんもいわゆる「労働者」のみを対象にしてませんか。
わが国において「働く人」は、労働者だけではありません。
農林漁業に携わる人々、あるいは、小売業、飲食業に携わる人々はどうでしょうか。
いわゆる「自営業」の方々です。米農家の皆さんの労働時間はどうでしょうか。
田植え期などの繁忙期における労働時間は、睡眠時間以外の全てが該当するでしょう。
また、飲食業、例えば「ラーメン屋さん」などはどうでしょうか?毎日、睡眠時間を惜しんで仕込みに取り組んでいますよ。
つまり、一般的な労働者に例えるならば、月150時間、200時間程度の残業は、珍しくないと想像できます。
このような、いわゆる自営業のみなさんには、メンタルヘルスのトラブルは少ないそうです。
ただし、水産業に携わる方々は、精神疾患の罹患率が、
労働者の中でも極めて高いとされているIT業界より高いという数字が紹介されています。
このような現象から、どのようなことが推測できるのか。
いわゆる自営業の方々と、労働者とでは、何が違うのか、違いを生じる原因は何か?
個人的な見解ですが、「働く人」と「働かされる人」の違いではないかと考えています。
労働者=働かされる人、自営業の方々=働く人、この違いではないかと。
水産業の皆さんは、長期間の遠洋漁業の関係者が多いようです。
長期間にわたり、船という閉鎖的な空間に留まると、人間関係にいろいろなトラブルが生じるのだろうということは、
容易に想像できます。このことは、小職の推論の傍証にもなります。
以上の小職の推論を、学問的に追及をされているのが、「ジョブクラフティングJob Crafting」の研究でしょう。
現在、東京大学大学院医学系研究科の博士課程に所属されている櫻谷あすか氏の講演を聞きました。
やらされ感をやりがいの変える手法、即ちワークエンゲイジメントを高める手法が、
「ジョブクラフティングJob Crafting」であると。
ジョブクラフティングとは、「個々人が仕事や人間関係を物理的・心理的・認知的に変化させること」と定義されました
(Wrzesniewski and Dutton,2001)。
即ち「働く人が自ら働き方に工夫を加えること」。そして、ジョブクラフティングは、
「作業クラフティング(仕事のやり方への工夫)」
「人間関係クラフティング(周りの人への工夫)」
「認知クラフティング(仕事の考え方への工夫)」から、成り立っているそうです。
ジョブ・クラフティング介入研究
担当者連絡先
•櫻谷あすか(東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野・博士課程院生)
•e-mail: asuka-tky@umin.ac.jp
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