中小企業の「うつ病」対策ー人、資金、時間、情報に余裕がない

企業の労働安全衛生、特にメンタルヘルス問題に取り組んでいます。
拙著「中小企業のうつ病対策」をお読みください。

メンタルヘルス対策の難しさ(5)

2018年04月10日 | 情報

企業の実務担当者が悩む、最大の問題点と云っても過言ではない課題です。
それは、精神疾患をり患した原因は、労災に該当するのか、私傷病に該当するのかの、判断、判別なのです。
結論は、専門的な医学知識のない実務担当者では、分かりません、当然のことです。

パワハラ、セクハラ等のハラスメントの場合には、争いの場においては、言った・言わない、
やった・やらない、の水掛け論になるのですが、社内的には、意外と分かる、分かっているものです。
しかし、経営トップは、明かな私傷病であると分かるのらともかく、
労災ではないかとの疑いがあっても、私傷病で処理するように判断をするでしょう。
精神疾患をり患した原因は、労災に該当するのか、私傷病に該当するのかの、俄かに判断できないことは、
ほぼ公に認められていますので、自ら「労災に該当します」などと、労基署に申告するようなことはしませんし、させません。
さて、明かな労災ではないかとの疑いがあっても、経営トップからは、労災申請をしないで済ませる方法は
ないのかと、人事労務部門には課題を与えられることでしょう。
人事労務部門として、コンプライアンスの観点、並びに企業イメージを保持するためには、
どのような対応をとったらよいのか、悩みは深いことでしょう。

因みに、最近の典型的な失敗例を紹介します。
東芝(うつ病・解雇)事件(東京⾼裁 平23.2.23判決)です。
会社側は私傷病として処理しようとしましたが、労働者側は、労災であると主張し、結果は会社側の「完全」敗訴でした。
会社側は、最高裁、差し戻し審と長年にわたり争ってきました。膨大な時間と労力を投入してきたにもかかわらず、
企業名が長期間にわたり、マスコミ、ネットにさらされ、結果、企業イメージを大きく棄損してしまいました。
しかし、この事案でも、会社側が、いわゆる「労災かくし」をしたという判断はありませんでした。

 

 

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