法改正を前に、実施態勢をおつくりになることをお勧めします。
100時間超の残業 産業医に報告 罰則なし 実効性の確保課題
2017/2/5付日本経済新聞 朝刊
厚生労働省は6月から、企業に対して月100時間を超えて残業をしている従業員の情報などを産業医に報告することを義務付ける方針だ。
新入社員が過労自殺した電通問題などを受け、長時間労働の是正は喫緊の課題。
同省は産業医がこうした情報をもとに企業上層部に改善を呼び掛けるとともに、企業が過重労働をさせないよう律する効果を見込む。
50人以上が働く事業所は産業医を選任する義務があり、50人未満は努力義務になっている。
厚労省によると、日本医師会の研修を受けるなどして労働安全衛生法に基づく産業医の要件を満たした医師は全国で約9万人。
健康診断の実施やその後の指導、メンタルヘルスの相談などが役割だ。
厚労省は今年度中に省令を改正し、月100時間超の残業がある従業員を産業医に伝えることを企業に義務付ける。
運用開始は6月からの予定だ。厚労省幹部は「産業医から企業の上層部に残業削減を働きかけてもらうのが狙いだ」と話す。
労働安全衛生法は、月100時間を超えて働く社員が申し出た場合、医師による面接をしなければならないと定めている。
厚労省によると、自主的に長時間労働の従業員を産業医に伝えて面接するよう促し、
その結果を踏まえて産業医が残業削減などを事業所に提案しているケースもある。
ただ専属の産業医を置く必要がある1000人以上の事業所と違い、それ未満の事業所はこうした取り組みが遅れている。
このため情報提供の義務化を通じ、意識変革が必要と判断した。
健康診断で異常が見つかった社員についても、産業医の求めに応じて残業時間や夜勤の回数などを提供させることを決めた。
定期健康診断で何らかの異常があった人の割合は2015年が53.6%で年々増えている。
「血圧や血糖値などが高く、そこに過重労働が重なると過労死のリスクが高まる」(厚労省幹部)
ただ同省はこうした報告義務について、守らなくても労働安全衛生法の罰則規定を適用しない方向で検討している。
実効性をどう確保するかが課題となりそうだ。