熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

滅亡へのカウントダウン(下): 日本の場合

2020年06月06日 | 書評(ブックレビュー)・読書
   NHKで放映していたが、日経の記事「19年の出生率1.36、12年ぶり低水準 少子化加速」を見て、積ん読のアラン ワイズマンの「滅亡へのカウントダウン(下): 人口大爆発とわれわれの未来 」を引っ張り出して、第13章の「縮小と繁栄――日本」を読んでみた。
   この本は、Countdown: Our Last, Best Hope for a Future on Earth?
   すなわち、人口の大爆発で、我々の未来は、大破局を迎えるという超弩級のマルサス論なのだが、日本の問題は、その逆の人口減少。
   少子高齢化は、日本の最大の課題だが、19年の1年間で、日本人の人口が51万人減った勘定で、このままだと、早晩、日本の人口は、1億人を切る。

   この人口減少で、最も日本にとって深刻な問題は、経済成長との関連である。
   経済成長の要因は、1)労働力(人口増加)、2)機械・工場などの資本ストック(蓄積)、3)技術進歩など労働・資本以外の要因による「全要素生産性(TFP)」だと考えられているので、当然、人口の減少は、労働力の低下を意味するので、少子高齢化は、日本経済の成長にとっては、極めて重要な役割を演じると同時に、人口減によって総需要をも減少させ成長の足を引っ張る。
   膨大な国家債務を抱えている日本においては、その解消には、ハイパーインフレーションの到来や、政府の徳政令の発令等々のドラスチックな悲劇を伴った手段などを避けるなら、経済成長を図って、税収を高めて債務を償却する以外に平和的な解決法は考えられないので、日本経済の成長にとっては、人口の減少は、死活問題なのである。

   ワイズマンは、冒頭、日本の介護ロボット開発を紹介しながら、経済成長と繁栄との関係について言及し、日本の成長なき繁栄について論じている。
   奈良県の山岳地帯で、渓谷を生かして在来農法で育てるワサビ職人や、長野県松本市の里山で自給自足する若い夫婦、豊岡市のコウノトリの繁殖とコメの価格が2倍になった話を紹介しながら、日本の人口減によって、自然資源と人間生活とのバランスシートが逆転して、自然資源が勢いを盛り返して、人々がより健全でさらに幸せな生活を送れるチャンスが来る。と結んでいるのだが、アイロニーと取るべきか・・・?

   ところで、日本の人口減について、論じているのだが、その説明は、日本人のセックスレスの話。
   シンガポールでは、「ナショナル・ナイト」と称して、この夜には、男性は「旗を揚げ」、夫婦は「シンガポールのためにとことん励むべし」と、テレビで愛国的夫婦生活を呼びかけたが、日本では、無理であろうという。
   毎年、赤ん坊のみならず結婚も減っており、結婚せずに子供を産むことがごくまれな文化故に、出生率は下がる一方だし、終身雇用が保障されなくなった所為で、雇用の安定がないために家庭を持つというリスクを負いたがらない人が増えている上に、政府の予測では、現在の若い女性の世代では、36%が子供を産まないと言う。
   興味深いのは、高輪のタワーマンションの住人たちの若い女性たちにインタビューして、究極の避妊法として、セックスをしないこと、そして、日本人はセックスしなくなっているし、自分たちもセックスには興味もないし、夫婦の愛を証明する方法でもない。と彼女たちに語らせている。
   2011年の日本政府の調査では、16歳から19歳までの日本人男性の36%がセックスに関心がないか、なんと「セックスを嫌悪している」という。のである。
   これほど、日本人がセックスレスだとは思えないし理解に苦しむのだが、何となく、ムードとしては分かるような気もしている。

   根本的な問題は、若い人々が、喜んで子供を育てて幸せを感じられる生活を送れるような環境を、日本社会が作りだせるかどうかだと思う。
   貧困率が、先進国でも最悪の状態であり、困窮する母子家庭が多くて、待機児童が存在するような極めて苦しい経済社会環境であって、若い人々が安心して働けないような状態では、子育ての負担が、生活を即直撃する。
   新型コロナウイルス騒ぎで、弱い日本国民を、更に、圧迫していて、今年の出生率など、想像以上に悪化するであろう。
   我々の時代には、1年に赤ちゃんは200万人ほど生まれていたと思うが、19年は87万人弱、
   その後、団塊の世代があってもっと出生数がふえたのだが、今昔の感である。

   最近は、GDPベースでは、経済成長が鈍化しているが、経済の成長は、ボリュームではなく、質の向上に体現されていて、その進化発展には、目を見張るものがある。
   金利が暴騰すれば、目も当てられなくなってしまうが、低金利に期待して、国家債務の解消は当分諦めて、成長のない繁栄とはどう言うことか、真剣に考えてみるのも、一つの日本の生きる道ではないかと思っている、
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« わが庭・・・バラ:コルデス... | トップ | 滅亡へのカウントダウン(下):... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

書評(ブックレビュー)・読書」カテゴリの最新記事