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ぽかぽか春庭「刺繡絵画の世界 in 日本橋高島屋

2022-10-04 00:00:01 | エッセイ、コラム


20221004
ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩工芸の美(1)刺繡絵画の世界 in 日本橋高島屋 

 着物に華麗な刺繍が施されているのは、東博ほかの着物展示でも見てきて、染色や織物とともに服飾文化の華であるとはわかっていましたが、「刺繍絵画」となると、あまり目にしたことはありませんでした。
 日本橋高島屋で「刺繍画」の展示をやっている、という情報、私のアート情報源であるテレビ番組「日美」で知りました。

会期:2022年8月24日(水)~9月12日(月)

 高島屋の口上
 明治期を中心に、日本を代表する美術工芸品として盛んに製作された刺繍絵画。技巧の限りが尽くされた作品群は、日本刺繍の最高峰とも評されています。しかしながらそれらの多くは、輸出され日本に残されておらず、日本人が作品に出会う機会はほとんどありません。当時各国で盛んに開催されていた万国博覧会にも出品され、世界の人々の賞賛を受け、作品の多くが海外に渡ることとなり、ほとんどの作品が海外に流出したままなのです。本展では、国内にある貴重な刺繍絵画作品を中心に、ビロード友禅やそれらの下絵を展示することで、製作不可能といわれる繊細な職人技をご堪能いただきながら、一堂に会した日本の美をお楽しみください。

 私が刺繍絵画を「今まで見たことなかったなあ」と思うのも当然で、明治時代を中心に制作された刺繍絵画は、明治大正の「重要輸出品」としてほとんどの作品が海外に流出していたからです。高島屋は、自社資料館に残っていたもの他、日本国内に残されていた刺繍画を集め、展示しました。

 どの作品も、下図の画家は名が残っている場合もありますが、ひと針ひと針糸を通した職人の名は残っていません。飽くことなく朝から晩まで針を持ち続けた職人の技こそ見事なものであると感じました。

 たとえば、たてがみのいっぽんいっぽんの描写が見事なライオン。元絵は西欧の絵画です。それを模写や写真で映し取り、元絵とは左右反転の図柄にして刺繍しました。
 ライオンも孔雀も、いかにも西欧美術愛好家たちが好みそうな画題です。少し離れて糸目が見えない距離だと、色のグラデーションも見事で糸と針の表現とは思えません。 

「獅子図」刺繍絵画 明治~大正時代 高島屋史料館蔵 

「桜に鳩図掛布」刺繍絵画 大正~昭和時代 清水三年坂美術館蔵


「松に孔雀図」刺繍絵画 明治~大正時代 西念寺蔵
 

 西陣の友禅着物も展示されていましたが、現代では輸出されていった刺繍絵画を作り得る職人の数は圧倒的に不足。明治時代の水準での刺繍絵画を作るのはむずかしいと思います。

 奈良時代に創立されてから1400年「会社組織」として続いてきた宮大工集団「金剛組」によって寺社建築の技術は継承されてきたけれど、今、継承者不足により多くの手仕事の技が消えていくかもしれません。

 うつくしく見事な作品を見ると、それを生み出す「手」も受け継いでいってほしいなあと思います。





<つづく>
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ぽかぽか春庭「ボストン美術館展 in 東京都美術館」

2022-10-02 00:00:01 | エッセイ、コラム

20221002

ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩夏(8)ボストン美術館展 in 東京都美術館

 ボストン美術館展、7月23日にはじまっていつになく早めに、8月16日お盆休みを利用して見にいけました。

  明治時代に海外流出してしまった数多くの日本の美術品。国宝級の日本画や仏像も多く、海外の個人コレクター所蔵となった作品は、ほとんど見るチャンスがありません。
 美術館博物館所蔵品の中に、「里帰り展示」が行われることがあると、この機会に見ておかないと、一生見るチャンスがないかも、という気分になって焦ります。今回のボストン美術家展でも、日本に残っていれば国宝子弟間違いなし、といわれる『吉備大臣入唐絵巻4巻』と、13世紀後半、鎌倉時代の傑作『平治物語絵巻 三条殿夜討巻』とあれば、見たい、見たい。
 2020年に開催する予定でしたが、コロナ禍のため中止になったボストン美術館展、ようやく開催です。
 今回のボストン美術は、「芸術と権力」をテーマにしており、皇帝や王侯たちが、芸術をどのように自分の権力の拡大や維持に利用してきたか、感じられる展示にした、ということです。

 いろいろよい作品がならんでいましたが、なにはともあれ、吉備大臣と阿倍仲麻呂がいっしょに空飛んでる姿をみたり、上皇の乗った牛車をサムライどもが取り囲んでいるようすをみたりするだけでも眼福。



 東京都美術館の口上
 古今東西の権力者たちは、その力を示し、維持するために芸術の力を利用してきました。威厳に満ちた肖像画は権力を強め、精緻に描写された物語はその力の正統性を示します。また、美しい工芸品は宮廷を彩り、ときに外交の場で活用されてきました。一流の画家や職人につくらせた芸術品は、今も見る人々を圧倒する荘厳な輝きを放っています。そして、多くの権力者たちは、自らも芸術をたしなみ、またパトロンとして優れた芸術家を支援したほか、貴重な作品を収集しました。彼らが築いたコレクションは、今日の美術館の礎ともなっています。本展覧会では、エジプト、ヨーロッパ、インド、中国、日本などさまざまな地域で生み出された約60点の作品をご紹介します。私たちが鑑賞する芸術作品が本来担っていた役割に焦点を当て、力とともにあった芸術の歴史を振り返ります。新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年に中止となった本展。いよいよ待望の開催です。

 お盆休みなので、もっと混みこみかと思ったのですが、案外ゆったり見ることができました。これは、いつもなら東京都美術館の地階1階2階のフロアに200点くらい絵を並べるのに、今回は全部で60点の展示なので、壁がスカスカ、広々ならんでいる感じ。まあ、こんなスカスカ展示もありかな。

 ゆったりと見る「吉備大臣入唐絵巻」吉備真備が高い塔の上に閉じ込められる


 カメラを持って行かなかったので、「ポスターと私」は、10月1日に撮りました。

<おわり>

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ぽかぽか春庭「キース・ヴァン・ドンゲン展 in パナソニック汐留美術館」

2022-10-01 00:00:01 | エッセイ、コラム

20221001
ぽかぽか春庭アート散歩>2022アート散歩夏~秋(3)キース・ヴァン・ドンゲン展 in パナソニック汐留美術館

 8月20日に、キース・ヴァン・ドンゲン展 を観覧しました。
 会期2022年7月9日(土)〜9月25日(日)

 西洋美術館で「ターバンを巻いた女」や「カジノのホール」を見てきて、好きな画家ではありましたが、作品をまとめてみたのは初めてでした。(ぐるっとパス利用)。

 ドンゲンは、1877年にオランダのロッテルダム郊外で生まれ、1968年に91歳で没しました。その生涯のうち、パリに拠点を起き、最も輝かしい時間を過ごした1900年頃から1920年代の画業の67点が展示されており、西洋美術館の「ターバンを巻いた女」も貸し出されていました。 

 パナソニック汐留美術館の口上 
 キース・ヴァン・ドンゲン(1877―1968)はオランダに生まれ、ロッテルダムの美術アカデミーに学びながら、20歳の頃に初めてパリに数か月滞在します。その2年後にモンマルトルに移り住み、アトリエを構えました。オランダ時代から力強い筆致の作品を描いていたヴァン・ドンゲンは、すぐに新印象派に関心を抱き、やがて濃密で表情豊かな強烈ともいえる色彩でフォーヴィスムの画家たちの一員となります。華麗な色調でありながら、内的な表情を感じさせる色を用い、なかでも女性を描く場合の身体の優美さや官能性を訴える画面は、ヴァン・ドンゲンの代名詞になっていきます。
 本展は、この稀有な芸術家がフォーヴィスムの画家へと成長する過程を紹介し、その後の第一次世界大戦までの時期に取り組んだ色彩と形態の研究に加え、人物表現というテーマ、そして大戦終結後の狂騒の20年代(レザネフォル)における画家の歩みに焦点をあてるものです。
 1920年代に入ると社交界との交流から、肖像画家として多数の注文を受けるようになります。ヴァン・ドンゲンならではのスタイルである、華奢で細長くデフォルメされたしなやかな人物像は、きわめて洗練された色彩で表現され、当時の上流階級の人々から絶大な人気を博しました。
日本の美術館においては44年ぶりの開催となる、ヴァン・ドンゲンの個展である本展では、巧みな人物デッサンと官能的表現という全時代を通じて見られる画家生来の資質と、各時代に特徴的な色彩、形、そしてそれらが調和する姿を、新印象派からフォーヴィスムの時代、フォーヴィスムの余波の時代、そしてレザネフォルの時代と3章に分け、国内外の優れたコレクションを通じてご覧いただきます。


第1章 新印象派からフォーヴィスムへ
第2章 フォーヴィスムの余波
第3章 レザネフォル

 ドンゲンの画業の出発点、オランダロッテルダム時代は、アナキストらとつながりがあり、社会の底辺層の人々などを描いたこともあるけれど、パリに出て、やがて、新印象派、フォービズムという大きな画壇の流れにのり、上流社会の肖像画などを手掛けるようになります。
 ひとかどの財産をえると、アフリカやオリエントなどを旅行し画題を広げます。
 
 第一次世界大戦後、「レザネフォル(狂騒の20年代)」と呼ばれる好景気の時代に、パリで最も名声を得た画家の一人になり、ほっそりとして美しく描かれた女性像は、ドンゲンの代名詞にもなりました。上流層の女性はこぞってドンゲンに肖像を描いてもらいたがったのです。

 私は、レザネフォルという語を初めて目にしました。第1次大戦後の、藤田嗣治らがどんちゃん騒ぎで舞い上がっていた「狂騒の時代」をレザネフォルと呼ぶのだと知りました。

 第2次大戦後は一時人気が落ちたのですが、もちまえの「上層階級くいこみ術」も駆使して復活を遂げ、1968年に91歳で亡くなるまで肖像画の第一人者として活躍しました。

 ドンゲンが描いたお金持ち女性たちの肖像、ドンゲンらしいフォルムや色彩で、描かれた女性たちは支払った画料に見合う美しい自分の姿に満足したことでしょう。

 私がいいな、と思った肖像は、「女曲馬師」。高額な画料を支払って肖像を描いてもらった女性肖像ではなく、ドンゲンから「モデル料」を受け取ってキャンバスの前に立ったのではないかと勝手に思う絵です。
 女曲馬師というタイトルに「Sayonara Miss Edmée Davis ! 」という副題がついています。エドメ・デイヴィスという曲馬の芸人が引退するというところだったのでしょうか。「Sayonara」という日本語がつけられたのも、ドンゲンの日本への関心を物語っていると思います。
 当時の画家たちにとって、日本はあこがれの浮世絵の国ですし、パリなどに日本の女芸人や女優が名を残しています。貞奴などが人気を博していました。
 女曲馬師エドメ・デイヴィス Sayonara Miss Edmée Davis ! 

 
 横に流した足と伏目がちな流し目で、男性を魅了したであろうことが感じられました。
 

 今回もぐるっとパスで楽しめました。

<つづく>
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