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ぽかぽか春庭「ブレード」

2022-10-16 00:00:01 | エッセイ、コラム
20221015
ぽかぽか春庭日常茶飯辞典>2022ふたふた日記秋冬(2)ブレード

 ジャパンオープン2022。録画しておいたものを、のんびり見返しています。生観戦は、リンク全体を見渡し、移動の軌跡を追うのもの楽しみのひとつです。スケーターが美しいスパイラルのポーズをとってリンクの端からはしまで滑っていくなど、爽快です。

 テレビ録画では選手のアップが中心になるので、ジャンプが成功した時の表情を見たり、衣装のデザインをあれこれ比べたり、また違う楽しみがあります。
 ジャパンオープン2022のテレビ録画では。ジャパンオープンの解説を町田樹が担当していました。スポーツ科学の博士になった町田の落ち着いたトーンの説明、選手の滑りのよさがよくわかりました。

 ジャパンオープンのエキシビジョンに当たるカーニバルアイスも楽しかったです。


 今年「羽生結弦展」を日本橋高島屋で見たとき、衣装に縫い付けるビーズや羽飾りの繊細な手仕事に見入ったことを思い出します。
 衣装ももちろんですが、フィギュアスケートにとって、ジャンプやスピンの華麗な技を支える大事なアイテムは、なんといっても、スケート靴の「刃=ブレード」です。革製の靴に刃を取り付け、0.1ミリの単位で研いでいく。その刃の出来によって、ジャンプが成功したりスピンがうまく回らなかったり。

 靴に刃をとりつけ、研ぐ職人さんの世界。ほんとうにすごい職人技だと思います。
 私も、ことばの世界を研ぎ続ける職人でありたい、と思ってはいるのですが、このところ忙しくアウトプットするばかりで、インプットが減っており、「言葉職人」の貯金が目減りしている気がします。

 通勤電車でパラパラとめくる本の中で「あ、こんなことば初めて出会った」と、思っても、電車を降りて、バタバタと留学生に日本語をアウトプットしているうちに、「なんか、新しいことばを見つけた気がするのに、もう忘れちゃった」ということも増えてきました。忘れてしまったことも忘れることが多いので、自分の脳力が3A(3回転アクセル)から2Aにダウングレードした、なんて嘆いている時間もないのですが。

 さて、革で作られるスケート靴は樹脂の靴底がつけられ、氷の上に乗るのは「ブレード」と呼ばれる「刃」です。選手の体格やどんな滑り方をするのかによっても、職人はよい結果が出せるように研いでいく。足との相性もあるのですが、だいたい1シーズンには1本の刃をならしていくのだそうです。

 よい演技を支える刃。


 高橋大輔がシングルからアイスダンスに転向したとき、「シングルスケート靴は男女で変わらないのだけれど、アイスダンスはまったく別の靴を使用するので、スキーにたとえれば、スキージャンプの選手がスノボに変更するくらい違いがある、ということをアイスダンスの解説で知りました。

 「ブレード」についてあれこれネットサーチしているうち、「あらら、ブレードランナー」は、どうして「刃の走者」っていうのだろう、と気になりました。
 1982年の映画。公開からちょうど30年。映画人には30年から「常識」だったことなのでしょうに。私は何も思わずに「ブレードランナー」という語が最初からあったのだと思っていたのです。

 「録画でブレードランナー2049」を見たこともあって、にわかに原作「アンドロイドは電気羊の夢を見るか? 」の映画化にあたって、映画のタイトルを「ブレードランナー」にしたのはなぜか、と気になりました。

 原作とは別のSF小説のなかに出てくる主人公の職名が「ブレ―ドランナー」です。
 近未来の世界で「医療用の刃(メスやハサミなど)を非合法に運ぶ運び屋」の職名でした。
 アンドロイドを狩って「解任(抹殺)」する職業に対して、原作になかった「刃の運び屋」という職業名を採用したのです。主人公の捜査官ハリソン・フォードは「解任」の刃を携えた警察官でした。

 ブレードは「刃」であり、ブレードランナーは「刃の運び屋」と、わかってすっきりしました。明日には忘れてしまうこともおおいので、ここにメモしておきました。

 言葉を追跡する職人として、鋭い刃を研いでおきたいと思うのですが、すり減る一方の73歳。

 ・氷盤のブレードきらめきクルクルとスピンもジャンプも回れよまわれ <春庭
 ・4Aをおりるブレード氷盤を削りかなたへと飛ぶ氷片 <春庭

<おわり>
コメント
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