医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

ガン戦略と免疫について 栄養医学ブログ 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-05-22 21:12:32 | 健康・病気

今までのガンに対する戦略では、ガン細胞を殺し、体からガン細胞をなくすことが、主流でしたが、そうすると正常細胞まで殺し、逆にガン患者の寿命を縮めることになり、また、副作用などで患者を苦しめる場合が多い状態でした。これとは全く逆の、ガンの進行を止め、永久に休眠状態にガンを導き、ガンと共生することにより、寿命を延ばす方法がガン患者の寛解に結びつくのではないか、と世界のガン研究者は考えるようになりました。ドイツのチュウリンゲン大学のMartin Rocken博士らのグループもそう考える研究者の一人でした。

彼らは、免疫システムはガンを操ることができ、永久に休眠状態へガン細胞を誘導することが可能であることを、世界で初めて証明しました。今までも、抗酸化栄養素やビタミンC,マックス・ゲルソン栄養療法、それに漢方療法などでガン患者の免疫力を高め、寛解や延命効果は報告されましたが、それらの裏付けとなるのはMartin Rocken博士らの研究です。

ガンの永久の進行停止は、科学的にはsenescence(老齢化)として知られており、個体の生命を持続できる可能性があります。ガン細胞を破壊するのではなく、コントロールする免疫療法は、ガンの進行を阻害できます。特に、フェーズ1や2のガンでは有効性を発揮できるのではないか、と考えています。

免疫反応はガンをsenescence(老齢化)させ、ヒトの発生の状態にします。ヒトの体はガンの増殖を阻害することにより、ガン細胞のsenescenceプログラムを引き出し、ガンからヒトを防護します。この点に関しては、ガン療法の、信号分子と感染症の免疫学が、再び、注目の中心になります。

Rocken博士らは、信号分子のインターフェロンとガン壊死因子(サイトカインなど)の両方が、ガンの兆候もしくは組織の破壊なしに、in vivoでガンの増殖をストップさせることを、発見しました。動物実験でも、免疫療法によるsenescenceの効果は、抗ガン剤より優れ、ガン細胞が永久の休眠とsenescenceの方向へ変化することが分かりました。更に、臨床で延命効果と副作用のないガン治療として可能性が出ることが、期待されています。今後は、体の免疫力を高める分子栄養学、分子免疫学による治療法に的が絞られると考えられます。更なる研究が増えることを期待しています。なお、ビタミンCには、インターフェロンやガン壊死因子の産生を高める作用があると報告されていますが、更なる追試が必要です。また、腸内環境を善玉菌優位の環境にし、免役能が十分発揮されるよう、プロバイオティクスやプレバイオティクスを含む発酵食品や乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌を含むサプリメントの摂取も必要です。

References.

Milestone of cancer research: Arresting cancers rather than killing them:Science Daily, Feb. 1, 2013

T-helper-1-cell cytokines drive cancer into senescence. Braumuller et al. Nature, in press.2013

Early tumor dissemination , but late metastasis : insight into dormancy.J.:Rocken, M. Clin. Invest. 120, 1800-1803(2010)

藤井毅彦:ガンを予防し、治すビタミンC療法)、日本ビタミンC研究会、1982年

藤井毅彦:ガンと栄養、 日本ビタミンC研究会、1980年