医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

高脂肪食とアルツハイマー病(認知症)の進行について 日本ビタミンC研究会 藤井毅彦

2013-05-19 23:04:28 | 健康・病気

アルツハイマー病(認知症の一つ)は、遺伝的関係と食生活の洋風化が関係している,と以前から指摘されていましたが、そのことを、更に証明する動物実験が行われましたので、ポイントを紹介したい、と考えています。そして、これらの研究数が増えて、確証に至ることを期待しています。



2008年、Laval大学の研究チームは、アルツハイマー病の主たる神経学的マーカーは、動物脂肪(肉類に含まれる飽和脂肪酸)が多く、オメガ3-不飽和脂肪酸(魚に含まれるEPAやDHA,
亜麻仁油に含まれるアルファーリノレン酸など)が少ない食餌を与えられたマウスの脳に悪影響を与えることを、証明しました。この動物による研究から、最も工業化された国々に特有の食事は、アルツハイマー病の進行を促進することが、示唆されます。



Frederic Calon博士らは、タウ(tau)蛋白質とアミロイドーβ蛋白質を産生する遺伝子移入マウスを用いて、アルツハイマー病の脳に見出される、正常神経機能を阻害するタウ(tau)蛋白質と
脳内の老人性プラ―クの形成に結び付いたアミドイドーβ蛋白質を発見しました。



博士らは、9ケ月間、異なった食餌を遺伝子移入マウスとそうでないマウスに与え、その後、
動物の脳に及ぼす影響を比較しました。食餌にオメガー3不飽和脂肪酸が少なく、動物性脂肪(消費カロリーの60%)の多い餌を与えられたマウスは、対照グループのマウスに比べて、
アミロイドーβ蛋白質とタウ(tau)蛋白質濃度が、それぞれ、8.7倍と1.5倍を示していました。
また、高脂肪食は、アルツハイマー病のその他の特徴である、脳のドレブリン(drebrin)蛋白質値の減少を示しました。このような食餌によりもたらされた代謝上の変化は、脳の炎症反応にも影響を及ぼしました。



欧米諸国では、飽和脂肪酸が多く、オメガー3不飽和脂肪酸の少ない食事が一般的で、日本国でも戦後、食生活が欧米化し、戦前の、海産物、豆、イモ、雑穀、野菜などが中心の食生活が一変しました。戦前の食事は、飽和脂肪酸が少なく、オメガー3不飽和脂肪酸が多かったようです。
もう一度、日本的食事への回帰が望まれるゆえんです。ところで、抗生物質などの発見により、感染症対策は、戦前に比べて格段に進歩しましたが、食生活が関係した病気への対策が遅れているのが現状です。とりあえず、肉中心から、魚、野菜中心に変え、動物性脂肪やリノール酸の多い油の摂取を減らしましょう。



Reference



High -fat diet could promote development of Alzheimer's disease: Oct.31, 2008, Science Daily