医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

老齢期の脳の委縮対策とビタミンB12について 栄養医学ブログ

2012-10-30 14:42:09 | 健康・病気

魚などに含まれるビタミンB12が、老齢期の脳の委縮を防ぐ可能性が、オックスフォード大学のVogiatzoglou博士らの研究で出てきました(Neurology, Sep 9, 2008)。

その研究では、61歳から87歳の107名の脳のCTスキャン、記憶力テスト、それに身体の診察が実施されました。ビタミンB12(VB12)値を調べるため、血液サンプルが集められ、脳のCTスキャンと記憶力テストは、五年後、再び実施されました。濃度がより高い血中VB12値の人々は、より低い血中VB12値の人々に比べて、脳の容積の減少が1/6ほど少ない事がわかりました。彼らは全員VB12欠乏症ではありませんでした。

脳の健康に影響する多くの因子はコントロールが難しいと考えられます。しかし、肉、魚、強化シリアル、ミルクなどを食べることにより、また、VB12栄養サプリメントを摂取することにより、脳の委縮は防がれ、記憶力は回復される可能性が出てきました。しかし、他のビタミンや必須ミネラルのベストの摂取量、蛋白質、炭水化物、脂肪などのバランスもVB12の効果に影響します。

VB12の欠乏は公衆の健康問題であり、特に老人では、VB12の適正量摂取は、認知症を含めて、脳の健康問題の解決に役立つと考えられますが、過剰・長期摂取は問題がある可能性があります。

VB12に関する以前の研究では、結果がいろいろで、老人群での脳のスキャンに関する研究は少しも有りませんでした。Vogiatzoglou博士らは、血中のVB12に対し二つのマーカーを調べることにより、更に正しい方法でVB12値を調べました。しかし、VB12の栄養サプリメントを補給することが、記憶力に対し同じ良い結果をもたらすかどうかは、研究では調べられていません。なお、帯状疱疹後神経痛で高単位のビタミンB12を4年にわたって医師の指示で摂取し、膀胱がんを発症した症例が報告されており、ビタミンB12の大量、長期摂取が関係している可能性があります。また、いろんな研究論文でも、高単位ビタミンB12の長期摂取は膀胱がんのリスクを高めると、報告されています。更なる研究を期待しています。

Reference

Vitamin B12 may protect tha brain in old age: Science Daily, Sep.11, 2008

筆者の栄養医学ブログは、ブログアドレスnutr-blog.blogspot.comとblog.goo.ne.jp/h35p39の両ブログで見られます。