医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

認知症と栄養素(ビタミン)の不足について  栄養医学ブログ

2012-10-02 18:33:08 | 健康・病気

認知症対策は、現在、国家的な喫緊の課題となっています。そこで今回は、食品などに含まれる栄養素と認知症の関連について考えていきたいと思います。

認知症は記憶力、判断力、言語能力、行動などを司る脳の領域にダメージを与える多要因の、進行性の病気です。ビタミンB複合体のような必須栄養素の不足は、老人での認識機能の悪化をもたらします。ビタミンB12の血中低値は認識機能の衰えをもたらします。認知症の予防には、食事での総脂肪量、飽和脂肪酸量、それにコレステロール量の制限が必要です。そして、オメガー3不飽和脂肪酸など必須脂肪酸の摂取を増やすことです。

抗酸化栄養素の豊富な食事を摂取することは、認知症やアルツハイマー症の進行リスクを減らすのに役立つ可能性が有ります。ビタミンA(肝油などに含まれます)やビタミンCのような抗酸化栄養素は、いろんな疾患を予防するのに役だって、有害なフリーラジカルを体から消去するのに役立ちます。天然型ビタミンEはホウレン草や全粒穀物などと同様、野菜やナッツなどに含まれる脂溶性ビタミンです。ビタミンCはトマト、ホウレン草、赤トウガラシなどと同様、ミカンなどのかんきつ類に含まれる水溶性ビタミンです。

ビタミンB1、B3、B6、B12の不足は、認知症の発症と結び付いています。ビタミンB1の不足は、精神機能と認識機能の悪化と記憶の喪失をもたらす可能性が有ります。ビタミンB6の不足では、ナイアシンと同様、ペラグラをもたらし、それは認知症に伴う神経の障害です。ビタミンB12の不足もしくは悪性貧血では、うつ症状、興奮、それに人格の変化をもたらし、一連の認知症が関係した可能性があります。ビタミンB12は魚、肉、トリ肉、卵、ミルク、それにミルク製品など、動物性食品に含まれます。ビタミンB3(ナイアシン)は、糠、小麦胚芽、ビール酵母などに含まれ、細胞代謝機能の維持と酸化ストレスの予防に有益です。重度のビタミンB3不足は精神錯乱と認知症の発症の可能性を有します。

αーリノレン酸、ωー3不飽和脂肪酸(EPA,DHAなど)の必須脂肪酸(以前はビタミンFと呼ばれていた)は、アルツハイマー症、認知症の進行リスクを減らすことが、わかっています。コレステロール、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸の摂取を減らすことが大切です。なお、ωー3不飽和脂肪酸は、学習能力と記憶力を増やし、抗炎症作用が有ります。その供給源は、サバ、マス、イワシ、二シン、マグロ、それに鮭などの魚です。さらに認知症ではこれらの栄養素が十分必要なので、これらの栄養素を食品から十分摂取し、不足分は栄養サプリメントから摂取するのが賢明でないか、と考えます。

References

Nutritional Deficiencies In Dementia: LIVESTRONG. COM,Jun 21, 2010

食品化学概論:藤野安彦、しょ華房